JPWO2019187236A1 - レーダ画像処理装置及びレーダ画像処理方法 - Google Patents
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Abstract
Description
レーダ装置を実装しているプラットフォームから散乱体の高い位置までの距離は、散乱体の高さの分だけ、プラットフォームから散乱体の低い位置までの距離よりも短くなる。
プラットフォームから散乱体の高い位置までの距離が、散乱体の低い位置までの距離よりも短くなることで、散乱体の高い位置で反射された信号が、プラットフォーム側に倒れ込む現象であるレイオーバが発生する。
レイオーバが発生することで、散乱体の高い位置で反射された信号は、倒れ込んだ先の別の反射信号と重なるため、レーダ画像において、複数の反射信号が1つの画素に混在してしまうことがある。
レーダ画像処理装置は、差分を算出することで、1つの画素に混在している複数の反射信号のうち、第1の電波受信地点に対する位相と、第2の電波受信地点に対する位相との位相差が零である反射信号については抑圧することができる。
第1の電波受信地点は、第1のレーダ画像を撮像したときのプラットフォームの位置であり、第2の電波受信地点は、第2のレーダ画像を撮像したときのプラットフォームの位置である。
しかし、1つの画素に混在している複数の反射信号のうち、抑圧可能な反射信号が散乱された位置と同じ高さの位置で散乱されている反射信号は、第1の電波受信地点に対する位相と、第2の電波受信地点に対する位相との位相差が零にならない。
第1の電波受信地点に対する位相と、第2の電波受信地点に対する位相との位相差が零でない反射信号については、抑圧することができないという課題があった。
図1は、実施の形態1によるレーダ画像処理装置10を示す構成図である。
図1において、レーダ1は、合成開口レーダ(SAR:Synthetic Aperture Radar)又は実開口レーダなどが該当し、地球等を観測するプラットフォームに実装されている。レーダ1は、レーダ画像を撮像するとともに、レーダ画像の撮像時のパラメータを取得する。プラットフォームとしては、人工衛星又は航空機などが該当する。
レーダ1は、或る電波受信地点から、観測領域を撮像した後、プラットフォームが、上記の電波受信地点と近い電波受信地点にあるときに、上記の観測領域を再度撮像する。
リピートパス撮像の場合、プラットフォームが人工衛星であれば、レーダ1が、或る電波受信地点から、観測領域を撮像した後、プラットフォームが地球を周回して、上記の電波受信地点と近い電波受信地点に戻ったときに、レーダ1が、同じ観測領域を再度撮像してレーダ画像を取得する。プラットフォームが航空機であれば、同じ軌道を繰り返し通過するように操縦されており、プラットフォームが、概ね同じ電波受信地点にあるときに、レーダ1が、同じ観測領域を撮像してレーダ画像を取得する。
シングルパス撮像の場合、複数のレーダ1が同じプラットフォームに実装されており、複数のレーダ1が、或る電波受信地点から、同じ観測領域を撮像してレーダ画像を取得する。このとき、複数のレーダ1は、同じプラットフォームの異なる位置に設置されている。
また、波長などの撮像パラメータの等しい複数のレーダ1のそれぞれが、異なるプラットフォームに実装されており、複数のレーダ1が、或る電波受信地点から、同じ観測領域を撮像してレーダ画像を取得する。
したがって、レーダ1は、互いに異なるそれぞれの電波受信地点から、同じ観測領域を2回撮像することで、2つレーダ画像として、第1のレーダ画像と第2のレーダ画像とを取得する。
第1のレーダ画像の解像度と第2のレーダ画像の解像度とは、同じ解像度である。したがって、第1のレーダ画像に含まれている複数の画素の画素位置と、第2のレーダ画像に含まれている複数の画素の画素位置とは、同じ(pixel,line)で表される。
pixelは、第1のレーダ画像及び第2のレーダ画像のそれぞれにおけるスラントレンジ方向の画素の位置を示す変数、lineは、第1のレーダ画像及び第2のレーダ画像のそれぞれにおけるアジマス方向の画素の位置を示す変数である。
レーダ1は、第1のレーダ画像及び第2のレーダ画像を含んでいるレーダ画像群2をレーダ画像処理装置10に送信する。
レーダ1は、第1のレーダ画像に対応する第1の撮像パラメータと、第2のレーダ画像に対応する第2の撮像パラメータとを含んでいる撮像パラメータ群3をレーダ画像処理装置10に送信する。
第1のレーダ画像の撮像及び第2のレーダ画像の撮像に用いられるそれぞれの偏波の種類は限定されないため、第1のレーダ画像及び第2のレーダ画像のそれぞれは、単偏波レーダ画像、二偏波レーダ画像又は四偏波レーダ画像のいずれであってもよい。
第1のレーダ画像及び第2のレーダ画像のそれぞれは、レーダ1から電波が放射されたのち、観測領域に反射されて、レーダ1により受信された上記電波の強度分布を示すレーダ画像である。
第1のレーダ画像に含まれている複数の画素及び第2のレーダ画像に含まれている複数の画素は、それぞれ複素数の画素値を有している。
複素数の画素値は、レーダ1と観測領域に存在している散乱体との距離を示す情報のほか、レーダ1から放射された電波が散乱体に反射された際に発生する位相シフトを示す情報を含んでいる。以降特に断りが無い場合、「画素値」とは複素数の値を持つとする。
第1の撮像パラメータは、レーダ1によって第1のレーダ画像が撮像されたときのプラットフォームにおける軌道の位置情報と、センサ情報とを含んでいる。
第2の撮像パラメータは、レーダ1によって第2のレーダ画像が撮像されたときのプラットフォームにおける軌道の位置情報と、センサ情報とを含んでいる。
軌道の位置情報は、レーダ1によって、第1のレーダ画像又は第2のレーダ画像が撮影されたときのプラットフォームの緯度、経度及び高度を示す情報である。したがって、軌道の位置情報は、第1の電波受信地点又は第2の電波受信地点を示す情報として用いられる。
センサ情報は、第1のレーダ画像又は第2のレーダ画像が撮像されたときのレーダ1のオフナディア角θを示す情報、レーダ1からの放射電波の波長λを示す情報及びレーダ1から観測領域までの距離の平均値Rを示す情報を含んでいる。
レーダ画像取得部11は、レーダ1から送信されたレーダ画像群2及び撮像パラメータ群3のそれぞれを取得する。
レーダ画像取得部11は、レーダ画像群2を画像処理部13に出力し、撮像パラメータ群3を位相処理部12に出力する。
位相処理部12は、レーダ画像取得部11から出力された撮像パラメータ群3と、グランドレンジ方向に対する2次元の傾き面51(図7を参照)の傾き角度αとを取得する。
また、位相処理部12は、傾き面51と、傾き面51と平行な面である平行面52(図7を参照)との距離z0を取得する。
傾き面51及び平行面52の詳細については後述する。
位相処理部12は、第1の撮像パラメータと、第2の撮像パラメータと、傾き角度αと、距離z0とを用いて、平行面52における傾き面51に対する位相ρ(z0)を算出する処理を実施する。
位相処理部12は、第1及び第2のレーダ画像に含まれている画素毎に、1つの画素に混在している複数の反射信号のそれぞれにおいて、第1の電波受信地点に対する位相と第2の電波受信地点に対する位相との位相差Δφ(x,z0)を算出する処理を実施する。
画像処理部13は、位相処理部12より出力されたそれぞれの位相差Δφ(x,z0)から、第2のレーダ画像に含まれている複数の画素の位相の回転量exp[j・Δφ(x,z0)]をそれぞれ算出する処理を実施する。
画像処理部13は、算出したそれぞれの回転量exp[j・Δφ(x,z0)]に基づいて、第2のレーダ画像に含まれている複数の画素の位相を回転させる処理を実施する。
画像処理部13は、第1のレーダ画像に含まれている複数の画素と、第2のレーダ画像に含まれている位相回転後の複数の画素とのうち、それぞれ画素位置が対応している画素同士の画素値の差分を算出する処理を実施する。
図3は、実施の形態1によるレーダ画像処理装置10の画像処理部13を示す構成図である。
図4は、位相処理部12及び画像処理部13におけるそれぞれのハードウェアを示すハードウェア構成図である。
位相変化成分算出部21は、レーダ画像取得部11から出力された撮像パラメータ群3と、傾き角度αとを取得する。
位相変化成分算出部21は、第1の撮像パラメータと、第2の撮像パラメータと、傾き角度αとを用いて、傾き面51におけるx軸方向の位相変化成分φ(x)を算出する処理を実施する。
位相変化成分算出部21は、x軸方向の位相変化成分φ(x)を位相差算出部23に出力する。
位相算出部22は、レーダ画像取得部11から出力された撮像パラメータ群3と、傾き角度αと、距離z0とを取得する。
位相算出部22は、第1の撮像パラメータと、第2の撮像パラメータと、傾き角度αと、距離z0とを用いて、平行面52における傾き面51に対する位相ρ(z0)を算出する処理を実施する。
位相算出部22は、位相ρ(z0)を位相差算出部23に出力する。
位相差算出部23は、位相変化成分φ(x)と位相ρ(z0)とから、第1及び第2のレーダ画像に含まれている画素毎に、1つの画素に混在している複数の反射信号のそれぞれにおいて、位相差Δφ(x,z0)を算出する処理を実施する。
位相差Δφ(x,z0)は、それぞれの反射信号において、当該反射信号における第1の電波受信地点に対する位相と、当該反射信号における第2の電波受信地点に対する位相との位相差である。
位相差算出部23は、それぞれの位相差Δφ(x,z0)を画像処理部13に出力する。
回転量算出部31は、位相差算出部23より出力されたそれぞれの位相差Δφ(x,z0)から、第2のレーダ画像に含まれている複数の画素の位相の回転量exp[j・Δφ(x,z0)]をそれぞれ算出する処理を実施する。
回転量算出部31は、それぞれの回転量exp[j・Δφ(x,z0)]を位相回転部33に出力する。
位相回転部33は、例えば、図4に示す位相回転回路45で実現される。
位相回転部33は、レーダ画像取得部11から出力されたレーダ画像群2の中から、第2のレーダ画像を取得する。
位相回転部33は、回転量算出部31から出力されたそれぞれの回転量exp[j・Δφ(x,z0)]に基づいて、第2のレーダ画像に含まれている複数の画素の位相を回転させる処理を実施する。
位相回転部33は、位相回転後の複数の画素を含む第2のレーダ画像を差分算出処理部34に出力する。
差分算出処理部34は、レーダ画像取得部11から出力されたレーダ画像群2の中から、第1のレーダ画像を取得し、位相回転部33から出力された第2のレーダ画像を取得する。
差分算出処理部34は、第1のレーダ画像に含まれている複数の画素と、第2のレーダ画像に含まれている位相回転後の複数の画素とのうち、それぞれ画素位置が対応している画素同士の画素値の差分ΔS(pixel,line)を算出する処理を実施する。
差分ΔS(pixel,line)は、不要な散乱体の反射信号が抑圧された抑圧画像の画素である。
差分算出処理部34は、それぞれの差分Δs(pixel,line)を含む抑圧画像を外部に出力する。
また、図3では、画像処理部13の構成要素である回転量算出部31、位相回転部33及び差分算出処理部34のそれぞれが、図4に示すような専用のハードウェアで実現されるものを想定している。
即ち、位相処理部12及び画像処理部13が、位相変化成分算出回路41、位相算出回路42、位相差算出回路43、回転量算出回路44、位相回転回路45及び差分算出処理回路46で実現されるものを想定している。
ソフトウェア又はファームウェアは、プログラムとして、コンピュータのメモリに格納される。コンピュータは、プログラムを実行するハードウェアを意味し、例えば、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、あるいは、DSP(Digital Signal Processor)が該当する。
位相処理部12が、ソフトウェア又はファームウェアなどで実現される場合、位相変化成分算出部21、位相算出部22及び位相差算出部23の処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムがメモリ61に格納される。
また、画像処理部13が、ソフトウェア又はファームウェアなどで実現される場合、回転量算出部31、位相回転部33及び差分算出処理部34の処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムがメモリ61に格納される。
そして、コンピュータのプロセッサ62がメモリ61に格納されているプログラムを実行する。
しかし、これに限るものではなく、例えば、位相処理部12における一部の構成要素及び画像処理部13における一部の構成要素が専用のハードウェアで実現され、残りの構成要素がソフトウェア又はファームウェアなどで実現されるものであってもよい。
レーダ1は、第1のレーダ画像及び第2のレーダ画像を含んでいるレーダ画像群2と、第1の撮像パラメータ及び第2の撮像パラメータを含んでいる撮像パラメータ群3とをレーダ画像処理装置10に送信する。
レーダ画像取得部11は、レーダ1から送信されたレーダ画像群2及び撮像パラメータ群3のそれぞれを取得する。
レーダ画像取得部11は、レーダ画像群2を画像処理部13に出力し、撮像パラメータ群3を位相処理部12に出力する。
式(1)において、Av(pixel,line)は、画素位置が(pixel,line)の画素の振幅である。
Ψ(pixel,line)は、画素位置が(pixel,line)の画素の位相(偏角)である。
jは、虚数単位を示す記号である。
図6は、位相処理部12の処理内容を示すフローチャートである。
以下、図6を参照しながら、位相処理部12の処理内容を具体的に説明する。
位相算出部22は、レーダ画像取得部11から出力された撮像パラメータ群3と、傾き角度αと、距離z0とを取得する(図6のステップST2)。
傾き角度αは、例えば、ユーザによって事前に設定されるパラメータであり、図7のように表される。
距離z0は、例えば、ユーザによって事前に設定されるパラメータであり、図7のように表される。
傾き角度α及び距離z0のそれぞれは、例えば、ユーザによる手動の操作で位相算出部22に与えられるようにしてもよいし、図示せぬ外部機器によって位相算出部22に与えられるようにしてもよい。
図7において、傾き面51は、第1のレーダ画像及び第2のレーダ画像のそれぞれに含まれている共通の2次元面である。
傾き面51の第1の軸であるx軸の方向は、グランドレンジ方向から傾き角度αだけ傾いている方向であり、傾き面51の第2の軸の方向は、アジマス方向(図7において、紙面奥行き方向)である。
平行面52は、傾き面51と平行な面であり、傾き面51との距離がz0である。
傾き面51が、例えば、水平な地面に垂直に建てられている建物の水平屋根である場合、傾き角度αとして、0度が設定される。
傾き面51が、例えば、水平な地面に垂直に建てられている建物の壁面である場合、傾き角度αとして、90度が設定される。
第1の電波受信地点P1は、第1のレーダ画像が撮像されたときのプラットフォームの軌道の中心位置であり、第2の電波受信地点P2は、第2のレーダ画像が撮像されたときのプラットフォームの軌道の中心位置である。
B1,2は、第1の電波受信地点P1と第2の電波受信地点P2との距離のうち、レーダ1から放射される電波の方向(以下、「スラントレンジ方向」と称する。)に対して垂直な方向の距離成分である。
θは、オフナディア角であり、オフナディア角は、プラットフォームの鉛直直下方向と、スラントレンジ方向とのなす角である。
Rは、第1の電波受信地点P1及び第2の電波受信地点P2のそれぞれと、観測領域との距離の平均値である。
距離成分B1,2、オフナディア角θ及び距離の平均値Rは、撮像パラメータに含まれている情報である。
Swは、観測対象を撮像している第1のレーダ画像の範囲及び第2のレーダ画像の範囲である。
第1のレーダ画像の範囲Swと第2のレーダ画像の範囲Swとは、同じ範囲である。
即ち、第1の撮像パラメータに含まれているオフナディア角θと、第2の撮像パラメータに含まれているオフナディア角θとが同じ値である。
また、第1の撮像パラメータに含まれている距離の平均値Rと、第2の撮像パラメータに含まれている距離の平均値Rとが同じ値である。
また、第1のレーダ画像に含まれている複数の画素のうち、画素位置が(pixel,line)の画素と、第2のレーダ画像に含まれている複数の画素のうち、画素位置が(pixel,line)の画素とは、同じ画素位置の画素である。
図8において、レーダ画像のニアレンジに対応するスラントレンジ方向の位置から、レーダ画像の中心位置に対応するスラントレンジ方向の位置までの距離は、(Sw/2)・sinθである。
したがって、距離slは、以下の式(2)のように表される。
スペーシングΔsl及びレーダ画像の範囲Swのそれぞれは、撮像パラメータに含まれている情報である。
式(4)に代入する位置pixelにある画素には、複数の散乱体の反射信号が混在している。
式(4)に代入する位置pixelは、例えば、ユーザによる手動の操作で位相変化成分算出部21に与えられるようにしてもよいし、図示せぬ外部機器によって位相変化成分算出部21に与えられるようにしてもよい。
観測パスパラメータpは、レーダ画像撮像時の観測パスが、リピートパスであるのか、シングルパスであるのかを区別するパラメータであり、リピートパスの場合、p=2、シングルパスの場合、p=1となる。観測パスパラメータpは、例えば、ユーザによる手動の操作によって、位相変化成分算出部21及び位相算出部22に与えられるようにしてもよいし、図示せぬ外部機器によって、位相変化成分算出部21及び位相算出部22に与えられるようにしてもよい。
以下の式(5)は、位相変化成分算出部21が用いる位相変化成分φ(x)の算出式である。
位相変化成分算出部21は、x軸方向の位相変化成分φ(x)を位相差算出部23に出力する。
以下の式(6)は、位相算出部22が用いる位相ρ(z0)の算出式である。
位相算出部22は、位相ρ(z0)を位相差算出部23に出力する。
位相差Δφ(x,z0)は、それぞれの反射信号において、当該反射信号における第1の電波受信地点P1に対する位相と、当該反射信号における第2の電波受信地点P2に対する位相との位相差である。
以下の式(7)は、位相差算出部23が用いる位相差Δφ(x,z0)の算出式である。
位相差算出部23は、それぞれの位相差Δφ(x,z0)を画像処理部13に出力する。
図9は、画像処理部13の処理内容を示すフローチャートである。
以下、図9を参照しながら、画像処理部13の処理内容を具体的に説明する。
回転量算出部31は、それぞれの位相差Δφ(x,z0)から、第2のレーダ画像に含まれている複数の画素の位相の回転量exp[j・Δφ(x,z0)]をそれぞれ算出する(図9のステップST11)。
回転量算出部31は、それぞれの回転量exp[j・Δφ(x,z0)]を位相回転部33に出力する。
位相回転部33は、回転量算出部31から出力されたそれぞれの回転量exp[j・Δφ(x,z0)]に基づいて、第2のレーダ画像に含まれている複数の画素の位相を回転させる処理を実施する(図9のステップST12)。
以下の式(8)は、位相回転部33による位相の回転処理を示す式である。
式(8)において、S2(pixel,line)は、レーダ画像取得部11から出力された第2のレーダ画像に含まれている画素の画素値、S2’(pixel,line)は、位相回転部33によって、画素の位相が回転された第2のレーダ画像に含まれている画素の画素値である。
位相回転部33は、位相回転後の複数の画素を含む第2のレーダ画像を差分算出処理部34に出力する。
差分算出処理部34は、第1のレーダ画像に含まれている複数の画素と、第2のレーダ画像に含まれている位相回転後の複数の画素とのうち、それぞれ画素位置が対応している画素同士の画素値の差分ΔS(pixel,line)を算出する(図9のステップST13)。
以下の式(9)は、差分算出処理部34が用いる差分ΔS(pixel,line)の算出式である。
式(9)において、S1(pixel,line)は、第1のレーダ画像に含まれている画素の画素値である。
差分算出処理部34は、それぞれの差分Δs(pixel,line)を含む抑圧画像を外部に出力する。
図10において、“1”が付されている反射信号については、当該反射信号を散乱している散乱体から第1の電波受信地点P1までの距離と、当該反射信号を散乱している散乱体から第2の電波受信地点P2までの距離とが等しい。したがって、“1”が付されている反射信号については、第1の電波受信地点P1に対する位相と第2の電波受信地点P2に対する位相との位相差Δφ(x,z0)が零である。
よって、“1”が付されている反射信号についての差分ΔS(pixel,line)が零になるため、“1”が付されている反射信号は、抑圧される。
よって、“2”が付されている反射信号についての差分ΔS(pixel,line)が零以外になるため、“2”が付されている反射信号は、抑圧されない。
よって、“3”が付されている反射信号についての差分ΔS(pixel,line)が零以外になるため、“3”が付されている反射信号は、抑圧されない。
“1”が付されている反射信号については、図10に示すように、当該反射信号を散乱している散乱体から第1の電波受信地点P1までの距離と、当該反射信号を散乱している散乱体から第2の電波受信地点P2までの距離とが等しい。したがって、“1”が付されている反射信号については、第1の電波受信地点P1に対する位相と第2の電波受信地点P2に対する位相との位相差Δφ(x,z0)が零であり、回転量算出部31によって算出される位相の回転量exp[j・Δφ(x,z0)]は零である。
“1”が付されている反射信号については、位相の回転量exp[j・Δφ(x,z0)]が零であるであるため、図10及び図11に示すように、位相回転部33によって、回転されない。したがって、“1”が付されている反射信号については、位相差Δφ(x,z0)が零のままであるため、差分ΔS(pixel,line)が零になり、“1”が付されている反射信号は、抑圧される。
“2”が付されている位相回転後の反射信号は、図11に示すように、位相回転部33によって、回転量exp[j・Δφ(x,z0)]だけ回転されても、第1の電波受信地点P1までの距離と、第2の電波受信地点P2までの距離とが等しくない。したがって、“2”が付されている位相回転後の反射信号については、第1の電波受信地点P1に対する位相と第2の電波受信地点P2に対する位相との位相差Δφ(x,z0)が零以外である。
よって、“2”が付されている位相回転後の反射信号についての差分ΔS(pixel,line)が零以外になるため、“2”が付されている位相回転後の反射信号は、抑圧されない。
“3”が付されている反射信号については、図11に示すように、位相回転部33によって、回転量exp[j・Δφ(x,z0)]だけ回転されることで、第1の電波受信地点P1までの距離と、第2の電波受信地点P2までの距離とが等しくなっている。したがって、“3”が付されている位相回転後の反射信号については、第1の電波受信地点P1に対する位相と第2の電波受信地点P2に対する位相との位相差Δφ(x,z0)が零である。
よって、“3”が付されている位相回転後の反射信号についての差分ΔS(pixel,line)が零になるため、“3”が付されている位相回転後の反射信号は、抑圧される。
実施の形態1のレーダ画像処理装置10は、第1のレーダ画像及び第2のレーダ画像を含んでいるレーダ画像群2を取得して、抑圧画像を出力する例を示している。
実施の形態2では、互いに異なるそれぞれの電波受信地点から同じ観測領域が撮像されている2つ以上のレーダ画像を含んでいるレーダ画像群2を取得して、抑圧画像を出力するレーダ画像処理装置10について説明する。
具体的には、位相変化成分算出部21、位相算出部22及び位相差算出部23は、2つのレーダ画像の全ての組み合わせiについて、位相差Δφi(x,z0)の算出処理が終了するまで、位相差Δφi(x,z0)の算出処理を繰り返し実施する。iは、2つのレーダ画像の組み合わせを示す変数である。
回転量算出部31、位相回転部33及び差分算出処理部34は、2つのレーダ画像の全ての組み合わせiについて、差分ΔSi(pixel,line)の算出処理が終了するまで、差分ΔSi(pixel,line)の算出処理を繰り返し実施する。
実施の形態2における位相処理部12の構成は、実施の形態1の位相処理部12と同様に、図2である。
ただし、レーダ画像群2は、2つ以上のレーダ画像を含んでおり、撮像パラメータ群3は、2つ以上の撮像パラメータを含んでいる。
図12は、実施の形態2によるレーダ画像処理装置10の画像処理部13を示す構成図である。
図13は、位相処理部12及び画像処理部13におけるそれぞれのハードウェアを示すハードウェア構成図である。
図12及び図13において、図3及び図4と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
画像合成部35は、例えば、図13に示す画像合成回路47で実現される。
画像合成部35は、抑圧画像の生成に用いる重みパラメータwiを取得する。
画像合成部35は、重みパラメータwiを用いて、差分算出処理部34により組み合わせi毎に算出されたそれぞれの差分のうち、それぞれ画素位置が対応している差分ΔSi(pixel,line)同士を合成する処理を実施する。
画像合成部35は、それぞれの合成後の差分Ssup(pixel,line)を含む抑圧画像を外部に出力する。
また、図12では、画像処理部13の構成要素である回転量算出部31、位相回転部33、差分算出処理部34及び画像合成部35のそれぞれが、図13に示すような専用のハードウェアで実現されるものを想定している。
即ち、位相処理部12及び画像処理部13が、位相変化成分算出回路41、位相算出回路42、位相差算出回路43、回転量算出回路44、位相回転回路45、差分算出処理回路46及び画像合成回路47で実現されるものを想定している。
ここで、位相変化成分算出回路41、位相算出回路42、位相差算出回路43、回転量算出回路44、位相回転回路45、差分算出処理回路46及び画像合成回路47のそれぞれは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又は、これらを組み合わせたものが該当する。
位相処理部12が、ソフトウェア又はファームウェアなどで実現される場合、位相変化成分算出部21、位相算出部22及び位相差算出部23の処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムが図5に示すメモリ61に格納される。
また、画像処理部13が、ソフトウェア又はファームウェアなどで実現される場合、回転量算出部31、位相回転部33、差分算出処理部34及び画像合成部35の処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムがメモリ61に格納される。
そして、コンピュータのプロセッサ62がメモリ61に格納されているプログラムを実行する。
位相処理部12は、レーダ画像群2に含まれている2つ以上のレーダ画像のうち、2つのレーダ画像の組み合わせi毎に、位相差Δφi(x,z0)の算出処理を実施する。
位相変化成分算出部21は、レーダ画像取得部11から出力された撮像パラメータ群3の中から、2つのレーダ画像に対応する2つの撮像パラメータの組み合わせを取得する。
ここでは、組み合わせiに含まれる一方のレーダ画像が第1のレーダ画像、組み合わせiに含まれる他方のレーダ画像が第2のレーダ画像であるとする。
或る組み合わせに含まれる第1のレーダ画像に係る電波受信地点と、他の組み合わせに含まれる第1のレーダ画像に係る電波受信地点とは、互いに異なる地点である。しかし、ここでは、説明の便宜上、どちらの電波受信地点も、第1の電波受信地点P1であるとする。
また、或る組み合わせに含まれる第2のレーダ画像に係る電波受信地点と、他の組み合わせに含まれる第2のレーダ画像に係る電波受信地点とは、互いに異なる地点である。しかし、ここでは、説明の便宜上、どちらの電波受信地点も、第2の電波受信地点P2であるとする。
第1のレーダ画像に対応する撮像パラメータが第1の撮像パラメータ、第2のレーダ画像に対応する撮像パラメータが第2の撮像パラメータであるとする。
また、位相変化成分算出部21は、傾き角度αを取得する。
位相算出部22は、第1の撮像パラメータと、第2の撮像パラメータと、傾き角度αと、距離z0とを取得する。
式(4)に代入する位置pixelにある画素は、複数の散乱体の反射信号が混在している画素である。
位相変化成分算出部21は、距離成分B1,2と、オフナディア角θと、距離の平均値Rと、放射電波の波長λと、傾き角度αと、観測パスパラメータpとを用いて、傾き面51におけるx軸方向の位相変化成分φi(x)を算出する。
以下の式(10)は、位相変化成分算出部21が用いる位相変化成分φi(x)の算出式である。
位相変化成分算出部21は、x軸方向の位相変化成分φi(x)を位相差算出部23に出力する。
以下の式(11)は、位相算出部22が用いる位相ρi(z0)の算出式である。
位相算出部22は、位相ρi(z0)を位相差算出部23に出力する。
以下の式(12)は、位相差算出部23が用いる位相差Δφi(x,z0)の算出式である。
位相差算出部23は、それぞれの位相差Δφi(x,z0)を画像処理部13に出力する。
回転量算出部31は、組み合わせi毎に、それぞれの位相差Δφi(x,z0)から、第2のレーダ画像に含まれている複数の画素の位相の回転量exp[j・Δφi(x,z0)]をそれぞれ算出する。
回転量算出部31は、それぞれの回転量exp[j・Δφi(x,z0)]を位相回転部33に出力する。
位相回転部33は、回転量算出部31から出力されたそれぞれの回転量exp[j・Δφi(x,z0)]に基づいて、取得した第2のレーダ画像に含まれている複数の画素の位相を回転させる処理を実施する。
以下の式(13)は、位相回転部33による位相の回転処理を示す式である。
位相回転部33は、位相回転後の複数の画素を含む第2のレーダ画像を差分算出処理部34に出力する。
差分算出処理部34は、取得した第1のレーダ画像に含まれている複数の画素と、取得した第2のレーダ画像に含まれている位相回転後の複数の画素とのうち、それぞれ画素位置が対応している画素同士の画素値の差分ΔSi(pixel,line)を算出する。
以下の式(14)は、差分算出処理部34が用いる差分ΔSi(pixel,line)の算出式である。
差分算出処理部34は、それぞれの差分ΔSi(pixel,line)を画像合成部35に出力する。
回転量算出部31、位相回転部33及び差分算出処理部34は、2つのレーダ画像の全ての組み合わせiについて、差分ΔSi(pixel,line)の算出処理が終了するまで、差分ΔSi(pixel,line)の算出処理を繰り返し実施する。
重みパラメータwiは、例えば、ユーザによる手動の操作で画像合成部35に与えられるようにしてもよいし、図示せぬ外部機器によって画像合成部35に与えられるようにしてもよい。
画像合成部35は、重みパラメータwiを用いて、差分算出処理部34により組み合わせi毎に算出されたそれぞれの差分のうち、それぞれ画素位置が対応している差分ΔSi(pixel,line)同士を合成する。
画像合成部35は、それぞれの合成後の差分Ssup(pixel,line)を含む抑圧画像を外部に出力する。
相加平均を求める方法を用いる場合、画像合成部35は、以下の式(15)によって、全ての組み合わせの差分ΔSi(pixel,line)同士を合成する。
相乗平均を求める方法を用いる場合、画像合成部35は、以下の式(16)によって、全ての組み合わせの差分ΔSi(pixel,line)同士を合成する。
式(15)及び式(16)において、Nは、2つのレーダ画像の組み合わせ数である。
レーダ画像群2に含まれているレーダ画像が2つだけの場合、図14に示すように、差分算出処理部34が差分ΔSi(pixel,line)の算出処理を実施することで、複数のnull点が形成されることがある。
図14の例では、“1”が付されている反射信号、“2”が付されている反射信号及び3”が付されている反射信号の全てにnull点が形成されている。
したがって、図14の例では、“1”が付されている反射信号、“2”が付されている反射信号及び“3”が付されている反射信号の全てが抑圧されてしまう。
図15では、レーダ画像群2に含まれているレーダ画像がM個であり、PMは、第Mのレーダ画像が撮像されたときのプラットフォームの位置である。
レーダ画像群2に含まれているレーダ画像が2つ以上であり、画像合成部35が、それぞれ画素位置が対応している差分ΔSi(pixel,line)同士を合成することで、形成されるnull点の数が、レーダ画像が2つの場合よりも減少する。
図15の例では、形成されるnull点の数が1つであり、“2”が付されている反射信号には、null点が形成されていない。
実施の形態2のレーダ画像処理装置10は、合成後の差分Ssup(pixel,line)を抑圧画像として出力する例を示している。
実施の形態3では、画像合成部35による合成後の差分Ssup(pixel,line)から、1つの画素に混在している複数の反射信号が抽出された画像を算出するレーダ画像処理装置10について説明する。
実施の形態3における位相処理部12の構成は、実施の形態1,2の位相処理部12と同様に、図2である。
ただし、レーダ画像群2は、2つ以上のレーダ画像を含んでおり、撮像パラメータ群3は、2つ以上の撮像パラメータを含んでいる。
図16は、実施の形態3によるレーダ画像処理装置10の画像処理部13を示す構成図である。
図17は、位相処理部12及び画像処理部13におけるそれぞれのハードウェアを示すハードウェア構成図である。
図16及び図17において、図3、図4、図12及び図13と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
抽出画像算出部36は、例えば、図17に示す抽出画像算出回路48で実現される。
抽出画像算出部36は、レーダ画像取得部11から出力されたレーダ画像群2の中から、第1のレーダ画像を取得し、画像合成部35から出力されたそれぞれの合成後の差分Ssup(pixel,line)を取得する。
抽出画像算出部36は、第1のレーダ画像に含まれている複数の画素の画素値と、それぞれの合成後の差分Ssup(pixel,line)とから、1つの画素に混在している複数の反射信号が抽出された画像を算出する処理を実施する。
また、図16では、画像処理部13の構成要素である回転量算出部31、位相回転部33、差分算出処理部34、画像合成部35及び抽出画像算出部36のそれぞれが、図17に示すような専用のハードウェアで実現されるものを想定している。
即ち、位相処理部12及び画像処理部13が、位相変化成分算出回路41、位相算出回路42、位相差算出回路43、回転量算出回路44、位相回転回路45、差分算出処理回路46、画像合成回路47及び抽出画像算出回路48で実現されるものを想定している。
位相処理部12の構成要素及び画像処理部13の構成要素は、専用のハードウェアで実現されるものに限るものではない。位相処理部12及び画像処理部13が、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現されるものであってもよい。
ただし、レーダ画像処理装置10が、抽出画像算出部36を備えている点以外は、実施の形態2のレーダ画像処理装置10と同様であるため、ここでは、抽出画像算出部36の動作だけを説明する。
抽出画像算出部36は、第1のレーダ画像に含まれている複数の画素の画素値と、それぞれの合成後の差分Ssup(pixel,line)とから、複数の反射信号が混在している画素の画素値Sext(pixel,line)を算出する。
以下の式(17)は、抽出画像算出部36が用いる画素値Sext(pixel,line)の算出式である。
抽出画像算出部36は、1つの画素に混在している複数の反射信号が抽出された画像として、画素値Sext(pixel,line)を有する画素を含む画像を外部に出力する。
実施の形態4では、第1の組み合わせC1におけるそれぞれ画素位置での差分ΔSC1(pixel,line)と、第2の組み合わせC2におけるそれぞれ画素位置での差分ΔSC2(pixel,line)とから、それぞれの画素位置での位相を干渉位相ΔγC1,C2(pixel,line)として算出するレーダ画像処理装置10について説明する。
実施の形態4における位相処理部12の構成は、実施の形態1〜3の位相処理部12と同様に、図2である。
ただし、レーダ画像群2は、互いに異なるそれぞれの電波受信地点から同じ観測領域が撮像されている3つ以上のレーダ画像を含んでおり、撮像パラメータ群3は、3つ以上の撮像パラメータを含んでいる。
図18は、実施の形態4によるレーダ画像処理装置10の画像処理部13を示す構成図である。
図19は、位相処理部12及び画像処理部13におけるそれぞれのハードウェアを示すハードウェア構成図である。
図18及び図19において、図3、図4、図12、図13、図16及び図17と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
第1の組み合わせC1に含まれる2つのレーダ画像と、第2の組み合わせC2に含まれる2つのレーダ画像とは、異なっている。ただし、第1の組み合わせC1に含まれる2つのレーダ画像の中の1つのレーダ画像は、第2の組み合わせC2に含まれる2つのレーダ画像のいずれか1つと同じであってもよい。
実施の形態4のレーダ画像処理装置10では、差分算出処理部34が、第1の組み合わせC1におけるそれぞれの画素位置での差分ΔSC1(pixel,line)と、第2の組み合わせC2におけるそれぞれの画素位置での差分ΔSC2(pixel,line)とを算出する。
干渉位相算出部37は、差分算出処理部14により第1の組み合わせC1について算出されたそれぞれの画素位置での差分ΔSC1(pixel,line)と、第2の組み合わせC2について算出されたそれぞれの画素位置での差分ΔSC2(pixel,line)とを取得する。
干渉位相算出部37は、差分ΔSC1(pixel,line)と差分ΔSC2(pixel,line)とから、それぞれの画素位置での位相を干渉位相ΔγC1,C2(pixel,line)として算出する。
また、図18では、画像処理部13の構成要素である回転量算出部31、位相回転部33、差分算出処理部34及び干渉位相算出部37のそれぞれが、図19に示すような専用のハードウェアで実現されるものを想定している。
即ち、位相処理部12及び画像処理部13が、位相変化成分算出回路41、位相算出回路42、位相差算出回路43、回転量算出回路44、位相回転回路45、差分算出処理回路46及び干渉位相算出回路49で実現されるものを想定している。
位相処理部12の構成要素及び画像処理部13の構成要素は、専用のハードウェアで実現されるものに限るものではない。位相処理部12及び画像処理部13が、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現されるものであってもよい。
位相処理部12は、第1の組み合わせC1についての位相差ΔφC1(x,z0)の算出処理を実施し、第2の組み合わせC2についての位相差ΔφC2(x,z0)の算出処理を実施する。
以下、位相処理部12による位相差の算出処理を具体的に説明する。
ここでは、第1の組み合わせC1に含まれる一方のレーダ画像が第1のレーダ画像、第1の組み合わせC1に含まれる他方のレーダ画像が第2のレーダ画像であるとする。
また、第1のレーダ画像に対応する撮像パラメータが第1の撮像パラメータ、第2のレーダ画像に対応する撮像パラメータが第2の撮像パラメータであるとする。
また、位相変化成分算出部21は、傾き角度αを取得する。
位相算出部22は、第1の撮像パラメータと、第2の撮像パラメータと、傾き角度αと、距離z0とを取得する。
位相変化成分算出部21は、第1の組み合わせC1について、距離成分B1,2と、オフナディア角θと、距離の平均値Rと、放射電波の波長λと、傾き角度αと、観測パスパラメータpとを用いて、傾き面51におけるx軸方向の位相変化成分φC1(x)を算出する。
以下の式(18)は、位相変化成分算出部21が用いる位相変化成分φC1(x)の算出式である。
位相変化成分算出部21は、x軸方向の位相変化成分φC1(x)を位相差算出部23に出力する。
ここでは、第2の組み合わせC2に含まれる一方のレーダ画像が第1のレーダ画像、第2の組み合わせC2に含まれる他方のレーダ画像が第2のレーダ画像であるとする。
また、第1のレーダ画像に対応する撮像パラメータが第1の撮像パラメータ、第2のレーダ画像に対応する撮像パラメータが第2の撮像パラメータであるとする。
また、位相変化成分算出部21は、傾き角度αを取得する。
位相算出部22は、第1の撮像パラメータと、第2の撮像パラメータと、傾き角度αと、距離z0とを取得する。
位相変化成分算出部21は、第2の組み合わせC2について、距離成分B1,2と、オフナディア角θと、距離の平均値Rと、放射電波の波長λと、傾き角度αと、観測パスパラメータpとを用いて、傾き面51におけるx軸方向の位相変化成分φC2(x)を算出する。
以下の式(19)は、位相変化成分算出部21が用いる位相変化成分φC2(x)の算出式である。
位相変化成分算出部21は、x軸方向の位相変化成分φC2(x)を位相差算出部23に出力する。
以下の式(20)は、位相算出部22が用いる位相ρC1(z0),ρC2(z0)の算出式である。
位相算出部22は、位相ρC1(z0),ρC2(z0)を位相差算出部23に出力する。
位相差算出部23は、第1の組み合わせC1について、位相変化成分φC1(x)と位相ρC1(z0)とを用いて、1つの画素に混在している複数の反射信号のそれぞれにおいて、位相差ΔφC1(x,z0)を算出する。
以下の式(21)は、位相差算出部23が用いる位相差ΔφC1(x,z0)の算出式である。
位相差算出部23は、それぞれの位相差ΔφC1(x,z0)を画像処理部13に出力する。
以下の式(22)は、位相差算出部23が用いる位相差ΔφC2(x,z0)の算出式である。
位相差算出部23は、それぞれの位相差ΔφC2(x,z0)を画像処理部13に出力する。
回転量算出部31は、第1の組み合わせC1について、それぞれの位相差ΔφC1(x,z0)から、第2のレーダ画像に含まれている複数の画素の位相の回転量exp[j・ΔφC1(x,z0)]をそれぞれ算出する。
回転量算出部31は、それぞれの回転量exp[j・ΔφC1(x,z0)]を位相回転部33に出力する。
次に、回転量算出部31は、第2の組み合わせC2について、それぞれの位相差ΔφC2(x,z0)から、第2のレーダ画像に含まれている複数の画素の位相の回転量exp[j・ΔφC2(x,z0)]をそれぞれ算出する。
回転量算出部31は、それぞれの回転量exp[j・ΔφC2(x,z0)]を位相回転部33に出力する。
位相回転部33は、回転量算出部31から出力されたそれぞれの回転量exp[j・ΔφC1(x,z0)]に基づいて、取得した第2のレーダ画像に含まれている複数の画素の位相を回転させる処理を実施する。
以下の式(23)は、位相回転部33による位相の回転処理を示す式である。
位相回転部33は、位相回転後の複数の画素を含む第2のレーダ画像を差分算出処理部34に出力する。
位相回転部33は、回転量算出部31から出力されたそれぞれの回転量exp[j・ΔφC2(x,z0)]に基づいて、取得した第2のレーダ画像に含まれている複数の画素の位相を回転させる処理を実施する。
以下の式(24)は、位相回転部33による位相の回転処理を示す式である。
位相回転部33は、位相回転後の複数の画素を含む第2のレーダ画像を差分算出処理部34に出力する。
また、差分算出処理部34は、位相回転部33から出力された第1の組み合わせC1についての位相回転後の複数の画素を含む第2のレーダ画像を取得する。
差分算出処理部34は、取得した第1のレーダ画像に含まれている複数の画素と、取得した第2のレーダ画像に含まれている位相回転後の複数の画素とのうち、それぞれ画素位置が対応している画素同士の画素値の差分ΔSC1(pixel,line)を算出する。
以下の式(25)は、差分算出処理部34が用いる差分ΔSC1(pixel,line)の算出式である。
差分算出処理部34は、それぞれの差分ΔSC1(pixel,line)を干渉位相算出部37に出力する。
また、差分算出処理部34は、位相回転部33から出力された第2の組み合わせC2についての位相回転後の複数の画素を含む第2のレーダ画像を取得する。
差分算出処理部34は、取得した第1のレーダ画像に含まれている複数の画素と、取得した第2のレーダ画像に含まれている位相回転後の複数の画素とのうち、それぞれ画素位置が対応している画素同士の画素値の差分ΔSC2(pixel,line)を算出する。
以下の式(26)は、差分算出処理部34が用いる差分ΔSC2(pixel,line)の算出式である。
差分算出処理部34は、それぞれの差分ΔSC2(pixel,line)を干渉位相算出部37に出力する。
また、干渉位相算出部37は、差分算出処理部14により第2の組み合わせC2について算出されたそれぞれの画素位置での差分ΔSC2(pixel,line)を取得する。
干渉位相算出部37は、以下の式(27)又は式(28)を用いて、差分ΔSC1(pixel,line)と差分ΔSC2(pixel,line)とから、それぞれの画素位置での位相を干渉位相ΔγC1,C2(pixel,line)として算出する。
式(27)及び式(28)において、∠は、複素数の偏角を示す記号である。
干渉位相ΔγC1,C2(pixel,line)は、1つの画素に混在している複数の反射信号のうち、抑圧されずに残っている反射信号のみの位相である。
干渉位相算出部37は、干渉位相ΔγC1,C2(pixel,line)を外部に出力する。
実施の形態5では、干渉位相算出部37により算出された干渉位相ΔγC1,C2(pixel,line)を用いて、観測領域に存在している散乱体の位置を推定するレーダ画像処理装置10について説明する。
位相処理部12の構成は、実施の形態1〜3と同様に、図2である。
図20は、実施の形態5によるレーダ画像処理装置10の画像処理部13を示す構成図である。
図21は、位相処理部12及び画像処理部13におけるそれぞれのハードウェアを示すハードウェア構成図である。
図20及び図21において、図3、図4、図12、図13、図16〜図19と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
位置推定部38は、例えば、図21に示す位置推定回路50で実現される。
位置推定部38は、干渉位相算出部37により算出された干渉位相ΔγC1,C2(pixel,line)を用いて、観測領域に存在している散乱体の位置を推定する。
また、図20では、画像処理部13の構成要素である回転量算出部31、位相回転部33、差分算出処理部34、干渉位相算出部37及び位置推定部38のそれぞれが、図21に示すような専用のハードウェアで実現されるものを想定している。
即ち、位相処理部12及び画像処理部13が、位相変化成分算出回路41、位相算出回路42、位相差算出回路43、回転量算出回路44、位相回転回路45、差分算出処理回路46、干渉位相算出回路49及び位置推定回路50で実現されるものを想定している。
位相処理部12の構成要素及び画像処理部13の構成要素は、専用のハードウェアで実現されるものに限るものではない。位相処理部12及び画像処理部13が、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現されるものであってもよい。
ただし、レーダ画像処理装置10が、位置推定部38を備えている点以外は、実施の形態4のレーダ画像処理装置10と同様であるため、ここでは、位置推定部38の動作だけを説明する。
また、第2の組み合わせC2に含まれる第1のレーダ画像に係る電波受信地点が、電波受信地点Pcであり、第2の組み合わせC2に含まれる第2のレーダ画像に係る電波受信地点が、電波受信地点Pdであるとする。
また、位置推定部38は、位相差算出部23から出力されたそれぞれの位相差ΔφC1(x,z0),ΔφC2(x,z0)を取得する。
位置推定部38は、以下の式(29)に示すように、干渉位相ΔγC1,C2(pixel,line)と、位相差算出部23から出力されたそれぞれの位相差Δφ1(x,z0),Δφ2(x,z0)とを用いて、観測領域に存在している散乱体の位置zハットを推定する。
明細書の文章中では、電子出願の関係上、文字「z」の上に、「^」の記号を付することができないため、zハットのように表記している。
式(29)において、Ba,cは、電波受信地点Paと電波受信地点Pcとの距離のうち、スラントレンジ方向に対して垂直な方向の距離成分である。
Bb,dは、電波受信地点Pbと電波受信地点Pdとの距離のうち、スラントレンジ方向に対して垂直な方向の距離成分である。
Rは、電波受信地点Pa、電波受信地点Pb、電波受信地点Pc及び電波受信地点Pdのそれぞれと、観測領域との距離の平均値である。
距離成分Ba,c、距離成分Bb,d、オフナディア角θ及び距離の平均値Rは、撮像パラメータに含まれている情報である。
xは、位置pixelに対応する傾き面51での位置であり、位相変化成分算出部21から出力される。
位置推定部38は、推定した散乱体の位置zハットを外部に出力する。
例えば、第1の組み合わせC1に含まれる第2のレーダ画像と、第2の組み合わせC2に含まれる第2のレーダ画像とが、同じレーダ画像であってもよい。
第1の組み合わせC1に含まれる第2のレーダ画像と、第2の組み合わせC2に含まれる第2のレーダ画像とが、同じレーダ画像である場合、Bb,d=0となるため、位置zハットの推定に用いる式(29)は、以下の式(30)のように、簡略化される。
Claims (7)
- 互いに異なるそれぞれの電波受信地点から同じ観測領域が撮像されている第1及び第2のレーダ画像に含まれている画素毎に、1つの画素に混在している複数の反射信号のそれぞれにおいて、それぞれの電波受信地点に対する位相の差である位相差を算出する位相差算出部と、
前記位相差算出部により算出されたそれぞれの位相差から、前記第2のレーダ画像に含まれている複数の画素の位相の回転量をそれぞれ算出する回転量算出部と、
前記回転量算出部により算出されたそれぞれの回転量に基づいて、前記第2のレーダ画像に含まれている複数の画素の位相を回転させ、前記第1のレーダ画像に含まれている複数の画素と、前記第2のレーダ画像に含まれている位相回転後の複数の画素とのうち、それぞれ画素位置が対応している画素同士の画素値の差分を算出する差分算出部と
を備えたレーダ画像処理装置。 - 前記第1のレーダ画像と前記第2のレーダ画像とに含まれている2次元の傾き面の第1の軸が、グランドレンジ方向から傾いている方向であり、前記傾き面の第2の軸が、アジマス方向であるとき、前記傾き面における前記第1の軸方向の位相変化成分を算出する位相変化成分算出部と、
前記傾き面と平行な面における前記傾き面に対する位相を算出する位相算出部とを備え、
前記位相差算出部は、前記位相変化成分算出部により算出された位相変化成分と、前記位相算出部により算出された位相とから、前記複数の反射信号のそれぞれにおいて、前記位相差を算出することを特徴とする請求項1記載のレーダ画像処理装置。 - 互いに異なるそれぞれの電波受信地点から同じ観測領域が撮像されている2つ以上のレーダ画像を含むレーダ画像群があり、
前記位相変化成分算出部は、
前記レーダ画像群に含まれる2つのレーダ画像の組み合わせ毎に、それぞれの組み合わせに含まれる一方のレーダ画像を前記第1のレーダ画像、それぞれの組み合わせに含まれる他方のレーダ画像を前記第2のレーダ画像として、前記傾き面における前記第1の軸方向の位相変化成分を算出し、
前記位相差算出部は、
前記2つのレーダ画像の組み合わせ毎に、前記位相変化成分算出部により組み合わせ毎に算出された位相変化成分と、前記位相算出部により算出された位相とから、前記複数の反射信号のそれぞれにおいて、前記位相差を算出し、
前記回転量算出部は、
前記2つのレーダ画像の組み合わせ毎に、前記位相差算出部により組み合わせ毎に算出されたそれぞれの位相差から、前記第2のレーダ画像に含まれている複数の画素の位相の回転量をそれぞれ算出し、
前記差分算出部は、
前記2つのレーダ画像の組み合わせ毎に、前記回転量算出部により組み合わせ毎に算出されたそれぞれの回転量に基づいて、前記第2のレーダ画像に含まれている複数の画素の位相を回転させ、前記第1のレーダ画像に含まれている複数の画素と、前記第2のレーダ画像に含まれている位相回転後の複数の画素とのうち、それぞれ画素位置が対応している画素同士の画素値の差分を算出し、
前記差分算出部により組み合わせ毎に算出されたそれぞれの差分のうち、それぞれ画素位置が対応している差分同士を合成する画像合成部を備えたことを特徴とする請求項2記載のレーダ画像処理装置。 - 第1のレーダ画像に含まれている複数の画素の画素値と、前記画像合成部によるそれぞれの合成後の差分とから、前記複数の反射信号が抽出された画像を算出する抽出画像算出部を備えたことを特徴とする請求項3記載のレーダ画像処理装置。
- 互いに異なるそれぞれの電波受信地点から同じ観測領域が撮像されている3つ以上のレーダ画像のうち、いずれか2つのレーダ画像を含む第1の組み合わせと、前記3つ以上のレーダ画像のうち、前記第1の組み合わせに含まれる2つのレーダ画像と少なくとも1つが異なる2つのレーダ画像を含む第2の組み合わせとがあり、
前記位相変化成分算出部は、
前記第1及び第2の組み合わせ毎に、それぞれの組み合わせに含まれる一方のレーダ画像を前記第1のレーダ画像、それぞれの組み合わせに含まれる他方のレーダ画像を前記第2のレーダ画像として、前記傾き面における前記第1の軸方向の位相変化成分を算出し、
前記位相差算出部は、
前記第1及び第2の組み合わせ毎に、前記位相変化成分算出部により組み合わせ毎に算出された位相変化成分と、前記位相算出部により算出された位相とから、前記複数の反射信号のそれぞれにおいて、前記位相差を算出し、
前記回転量算出部は、
前記第1及び第2の組み合わせ毎に、前記位相差算出部により組み合わせ毎に算出されたそれぞれの位相差から、前記第2のレーダ画像に含まれている複数の画素の位相の回転量をそれぞれ算出し、
前記差分算出部は、
前記第1及び第2の組み合わせ毎に、前記回転量算出部により組み合わせ毎に算出されたそれぞれの回転量に基づいて、前記第2のレーダ画像に含まれている複数の画素の位相を回転させ、前記第1のレーダ画像に含まれている複数の画素と、前記第2のレーダ画像に含まれている位相回転後の複数の画素とのうち、それぞれ画素位置が対応している画素同士の画素値の差分を算出し、
前記差分算出部により第1の組み合わせについて算出されたそれぞれの画素位置での差分と、前記差分算出部により第2の組み合わせについて算出されたそれぞれの画素位置での差分とから、それぞれの画素位置での位相を干渉位相として算出する干渉位相算出部を備えたことを特徴とする請求項2記載のレーダ画像処理装置。 - 前記干渉位相算出部により算出された干渉位相を用いて、観測領域に存在している散乱体の位置を推定する位置推定部を備えたことを特徴とする請求項5記載のレーダ画像処理装置。
- 位相差算出部が、互いに異なるそれぞれの電波受信地点から同じ観測領域が撮像されている第1及び第2のレーダ画像に含まれている画素毎に、1つの画素に混在している複数の反射信号のそれぞれにおいて、それぞれの電波受信地点に対する位相の差である位相差を算出し、
回転量算出部が、前記位相差算出部により算出されたそれぞれの位相差から、前記第2のレーダ画像に含まれている複数の画素の位相の回転量をそれぞれ算出し、
差分算出部が、前記回転量算出部により算出されたそれぞれの回転量に基づいて、前記第2のレーダ画像に含まれている複数の画素の位相を回転させ、前記第1のレーダ画像に含まれている複数の画素と、前記第2のレーダ画像に含まれている位相回転後の複数の画素とのうち、それぞれ画素位置が対応している画素同士の画素値の差分を算出する
レーダ画像処理方法。
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