JPWO2019176695A1 - 皮脂との親和性が高い有機ポリマーを含む層を備えた物品 - Google Patents

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Abstract

人体からの皮脂の付着に伴う外観の劣化の抑制又はその回復に適した膜をその表面に有する物品を提供する。提供される物品10は、基材1とその上に形成された膜2とを備え、膜はその表面に露出した層12を含み、この表面の表面粗さRaは0.5nm〜50nmである。本発明の一形態において、膜2の表面の水の転落角は30度以下であり、露出した層12は有機ポリマーを含みうる。有機ポリマーは、例えば、ポリジアルキルシロキサン構造を含む主鎖を有する。

Description

本発明は、汚れの付着に伴う外観の劣化への対処を容易にする層を備えた物品に関し、特に皮脂の付着への対処を容易にする層を備えた物品に関する。
汚れの付着は、種々の物品、特に金属、プラスチック、セラミックス、ガラス等により構成された表面を有する物品においてその外観を劣化させる要因となっている。この問題に対処とするための手段としては、防汚性のコーティングが知られている。防汚性のコーティングは、フッ素含有ポリマーを含む膜を形成することにより実施されることが多い。水性の汚れに加えて油性の汚れの付着を防止するために、撥油性を有するフッ素系ポリマーが使用されることもある。フッ素含有ポリマーを含む防汚性の膜は、例えば特許文献1、2に開示されている。
特開2014−196455号公報 特開2014−196456号公報
しかし、本発明者の検討によると、人体との接触によって付着する皮脂を含む汚れに対応するためのコーティングとしては、従来の防汚性の膜には改善の余地がある。例えば、転写された指紋として観察される皮脂は、フッ素含有ポリマーを含む膜によってもその付着を防止しがたい。また、フッ素含有ポリマーを含む膜によって、皮脂を含む汚れが、身近にある乾布や紙による拭き取りによって、簡単に除去できるようになるわけでもない。
本発明の目的の一つは、皮脂の付着に伴う外観の劣化の抑制又はその回復に適した膜をその表面に有する物品を提供することにある。
鋭意検討した結果、本発明者は、汚れの付着を防止するために撥油性を高める従来のコーティングとは全く異なるアプローチにより、上述の目的が達成されることを見出した。
本発明は、その一形態として、
基材と、前記基材上に形成された膜とを備え、
前記膜は、前記膜の表面に露出した層を含み、
前記表面の表面粗さRaが0.5nm〜50nmであり、
前記表面に質量4mgの水滴を滴下して測定した水の転落角が30度以下であり、
下記a)〜c)の少なくとも1つが成立する、物品、を提供する。
a)前記層は、ポリジアルキルシロキサン構造を含む主鎖を有する有機ポリマーを含む。
b)前記層は有機ポリマーを含み、前記有機ポリマーはパーフルオロアルキル又はパーフルオロアルキレン基を含まない。
c)前記表面に質量4mgのオレイン酸の液滴を滴下して測定した接触角が15度以上である。
a)〜c)は少なくとも1つが成立すればよく、いずれか1つのみが成立しても、その任意の2つのみが成立しても、そのすべてが成立してもよい。
本発明は、別の一形態として、
基材と、前記基材上に形成された膜とを備え、
前記膜は、前記膜の表面に露出した層を含み、
前記表面の表面粗さRaが0.5nm〜50nmであり、
前記層は、ポリジアルキルシロキサン構造を含む主鎖を有する有機ポリマーのポリマーブラシを含む、物品、を提供する。
上述した物品は、人体からの皮脂の付着に伴う外観の劣化の抑制又はその回復に適した膜をその表面に有している。上述した物品の表面は、水の転落角も十分低く抑えられており、付着した液滴から供給される汚れの防止にも適している。
本発明の一形態に含まれるポリマーブラシを模式的に示す図である。 実施例2により形成した膜の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果を示す図である。 実施例3により形成した膜の表面をSEMで観察した結果を示す図である。 実施例3により形成した膜の表面を原子間力顕微鏡(AFM)で観察した結果を示す図である。 実施例4により形成した膜の表面をSEMで観察した結果を示す図である。 実施例4により形成した膜の表面をAFMで観察した結果を示す図である。
以下、本発明の実施形態を説明するが、以下の説明は、本発明を特定の実施形態に制限する趣旨ではない。
本発明の一形態において、物品は基材と基材上に形成された膜とを備えている。膜は膜の表面に露出した層を含んでいる。この層は、物品の表面の少なくとも一部を被覆している。膜の表面に露出した層は、好ましくは有機ポリマーを含んでいる。なお、本明細書では、ポリジアルキルシロキサン構造のように主鎖が(−O−Si−)の繰り返し単位であるポリマーも、有機基(ポリジアルキルシロキサン構造では側鎖のアルキル基)を含む限り、有機ポリマーに含めることとする。
(基材)
基材は、典型的には、金属、プラスチック、セラミックス又はガラスにより構成された表面を有する。この表面の表面粗さRaは、2nm未満、さらには1nm未満であってもよい。この程度に平滑な表面に付着した皮脂は、表面に入射する光を局部的に拡散させ、その存在が汚れとして視認されやすい。
基材は、金属、プラスチック、セラミックス及びガラスから選ばれる少なくとも1種から構成されていてもよい。基材は透明であっても不透明であってもよい。基材の一例は、可視光透過率が70%以上でヘイズ率が10%以下の透明材料、例えばプラスチックやガラスである。基材の別の一例は、可視光反射率が70%以上の高反射材料、例えば鏡面研磨された表面を有する、或いは平滑な膜として蒸着された金属である。透過率又は反射率がこの程度に高い基材の表面に付着した皮脂は、視認されやすく、外観に影響を及ぼしやすい。基材の形状に特に制限はないが、基材は、典型的には、互いに平行な一対の平坦な表面を有する形状、すなわち板材である。基材のサイズ及び厚さにも特段の制限はない。
皮脂の付着が問題となる代表的な板材はガラス板である。ガラス板は、窓ガラス、ドア等の建築用途;パーティション、ショーケース等の家具・店装用途;業務用冷蔵庫、タッチパネル等の産業用途等において、皮脂の汚れによる外観の劣化への対処が求められている。この要求が最も顕在化している用途の一つはスマートフォンのカバーガラスである。この用途には、化学強化処理されたガラス板が使用されることが多い。
(膜)
基材上に形成される膜は、単一の層であっても複数の層から構成されていてもよい。膜が複数の層からなる場合、膜の表面を構成する層以外の層を、以降、下地層という。下地層は、単一の層であってもよく、複数の層から構成されていても構わない。
膜の表面の表面粗さRaは、0.5nm以上、さらには0.7nm以上が好ましく、1nm以上であってもよい。Raは、50nm以下、40nm以下、30nm以下、さらには20nm以下、特に15nm以下が好ましく、10nm以下であってもよい。Raを小さく制御すれば、表面に触れる指に滑らかさを感じさせること、さらには膜の表面の外観上のギラツキを抑制すること、が容易となる。この特性を重視するべき場合には、Raを12nm以下、さらに10nm以下、特に8nm以下に制御するとよい。ただし、Raが0.5nmを下回ると、指に滑らかさを感じさせることが難しくなる。なお、Raは、周知のとおり、算術平均粗さを意味し、日本工業規格ではJIS B0601:2013に規定されている。
膜の表面は、凸部と平坦部とを有することが好ましい。凸部は、平坦部によって囲まれていてもよい。この場合、平坦部は凸部のそれぞれを囲んでいても、複数の凸部の周囲を囲んでいてもよい。このような好ましい表面では、凸部に代えて凹部を有する表面よりも、微細なダストの堆積による表面粗さRaへの影響が小さくなる。なお、平坦部は完全に平坦である必要はない。本明細書では、膜厚が±0.8nm、さらには±1nmの範囲で膜の表面の高さが局部的に変動しても「平坦」とみなすこととする。
膜の表面は、凸部と平坦部とから実質的に構成されていてもよい。ただし、この場合でも、膜の表面の5%未満において凸部又は平坦部とみなせない領域(通常は凹部)が存在していてもよい。
凸部の形状はドーム状が好ましい。この好ましい形状は、表面に触れる指に滑らかさを感じさせる点で有利である。凸部の形状やサイズはSEM観察により測定できる。本明細書において、ドーム状とは、その頂点を通過する断面プロファイルが、膜の表面に垂直な方向から観察できる部分において上方に凸の曲線となり、同方向からその表面の70%以上を観察できる形状をいう。ドーム状の凸部は、例えば、球形の微粒子の上方の一部が露出するようにその下方の残部をバインダで埋めることによって形成することができる。
凸部が高すぎると、表面に触れる指の感触を損なうことがある。これを重視するべき場合、凸部は、その高さが、100nm以下、さらには80nm以下、特に60nm以下であることが好ましく、場合によっては50nm以下であってもよい。凸部の高さは、5nm以上、特に8nm以上が好適である。完全に平坦でない表面は、皮脂その他の汚れの付着の程度を低下させる上で望ましい。
凸部の径は、その大きさが、200nm以下、さらには150nm以下、特に120nm以下であることが好ましく、場合によっては100nm以下であってもよい。凸部の径は、10nm以上、特に20nm以上が好適である。なお、凸部の径は、膜の表面に垂直な方向から観察し、その底部の面積と同面積の円の直径により定めることとする。また、凸部の径に対する高さの比は、例えば10〜85%、さらには15〜75%である。
膜の表面において、凸部が占める面積の合計と平坦部の面積との比は、15:85〜80:20、さらには20:80〜75:25が好ましく、場合によっては30:70〜70:30であってもよい。
下地層は、その表面に、膜の表面に付与するべき表面粗さRaの好適な範囲内にあるRaを有することが好ましい。この好ましい形態によれば、有機ポリマーを含む層をごく薄く形成する場合であっても、膜の表面に好適なRaを付与することができる。下地層の表面も、平坦部と凸部とから構成されていることが好ましい。この凸部の好ましい形状やサイズ、平坦部と凸部との面積比は上述したとおりである。例えば、下地層の表面は、ドーム状の凸部と平坦部とを有することが好ましい。
下地層は、その表面に、有機ポリマーに含まれる官能基と反応して有機ポリマーを下地層に固定するための官能基を有することが好ましい。この官能基は、有機ポリマーに含まれる反応性官能基と反応できる限りその種類に制限はないが、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルデヒド基、アミノ基であり、ヒドロキシ基が好ましい。ヒドロキシ基は、シラノール基(Si−OH)として下地層の表面に存在していてもよい。
ゾルゲル法により形成した金属酸化物膜は、成膜した状態でその表面に豊富なヒドロキシ基を有し、下地層に適している。金属酸化物を構成する金属原子は、Si、Ti、Al、Zr、Ta、Nb、Nd、La、Ce及びSnから選ばれる少なくとも1つ、特にSi、Ti及びAlから選ばれる少なくとも1つが好ましい。特に好適な金属酸化物膜は、Siの酸化物膜、すなわちシリカ膜である。なお、慣用に従って便宜上、本明細書では、Siの酸化物を金属酸化物、Siを金属原子の1種として扱う。
ゾルゲル法による金属酸化物膜の成膜には、以下の式(1)によって示される加水分解性金属化合物を使用するとよい。
qMXp-q(1)
式(1)において、Mは金属原子であり、その好ましい例は上述したとおりである。Rは、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3の炭化水素基である。好ましい炭化水素基はアルキル基、特に鎖状アルキル基である。Xは、加水分解可能な官能基又はハロゲン原子である。加水分解可能な官能基は、好ましくはアルコキシル基、アセトキシ基、アルケニルオキシ基、及びアミノ基から選ばれる少なくとも1つである。好ましいハロゲン原子はClである。pは金属原子の価数であり、MがSiの場合は4である。qは、0以上(p−1)以下の整数である。MがSiの場合、qは、0〜3、好ましくは0〜2、より好ましくは0又は1である。
膜の凸部は、下地層に含まれる微粒子に由来するものであってもよい。微粒子は、金属酸化物微粒子が適している。金属酸化物微粒子を構成する金属酸化物の好ましい例は、金属酸化物膜について上述したとおりである。特に好ましい金属酸化物微粒子は、シリカ微粒子である。金属酸化物微粒子は、例えば、ゾルゲル法による成膜用の液にコロイダルシリカを添加することにより膜に導入すればよい。この好ましい形態において、加水分解性金属化合物から生成する金属酸化物は、金属酸化物微粒子のバインダとなり、平坦部を構成する。金属酸化物微粒子の径は、目標とする凸部の径及び高さに応じて定めればよく、例えば目標とする凸部の径に一致するように定めるとよい。微粒子は、一次粒子が会合した二次粒子を含まないものが好ましい。
金属酸化物膜には、必要に応じ、金属酸化物以外の副成分、例えば紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、着色料、シランカップリング剤が添加されていてもよい。シランカップリング剤は、プラスチックである基材と下地層との接着力の向上をもたらす。なお、本明細書では、金属酸化物膜を、質量基準で最も多い成分が金属酸化物である膜を指す用語として使用しており、有機物である副成分や加水分解性化合物に由来する炭化水素基(R)は許容される。シランカップリング剤は、金属酸化物膜を形成する前に、プライマー層として基材上に塗布してもよい。
(膜の表面に露出している層)
膜の表面に露出している層は、以下の特徴a)〜c)から選ばれる少なくとも1つを具備することが好ましい。
a)ポリジアルキルシロキサン構造を含む主鎖を有する有機ポリマーを含む。
b)有機ポリマーを含み、この有機ポリマーはパーフルオロアルキル又はパーフルオロアルキレン基を含まない。
c)質量4mgのオレイン酸の液滴を滴下して測定した接触角が15度以上となる表面を有する。
この層は、複数の上記特徴、例えばa)及びb)、a)及びc)、b)及びc)、或いは上記特徴のすべてであるa)〜c)を有しうる。
膜の表面に露出している層は、以下の特徴i)〜iv)から選ばれる少なくとも1つを具備する有機ポリマーを含むことが好ましい。
i)ハンセン全溶解度パラメータδtotalが10〜20MPa1/2の範囲にある、及び/又は、ハンセン空間におけるオレイン酸との座標間の距離が8MPa1/2以下である。
ii)ポリジアルキルシロキサン構造を含む主鎖を有する。
iii)一端が有機ポリマーを含む層とは別に膜に含まれる下地層又は基材に固定され、他端が膜の表面に露出している。
iv)パーフルオロアルキル又はパーフルオロアルキレン基、さらにはフルオロアルキル基などのフッ素含有基を含まない。
(特徴i)について)
ハンセン溶解度パラメータ(HSP)は、物質相互の溶解性を説明するパラメータとして知られている。HSPでは、分子間の分散力を示す分散項dD、分子間の双極子相互作用を示す分極項(極性項)dP、分子間の水素結合を示す水素結合項dHにより構成されるベクトルによって物質の溶解性が示される。上記3つの項を座標軸とするハンセン空間におけるHSPの座標間の距離が小さい物質の組み合わせほど、親和性が高くなって相互に溶解しやすい。
オレイン酸は皮脂を構成する代表的な脂肪分である。皮脂には種々の成分が含まれているが、外観低下の主因となる成分は脂肪分である。このため、皮脂との親和性の評価基準としてはオレイン酸が適している。具体的には、有機ポリマーのHSPとオレイン酸のHSPとのハンセン空間における距離(HSP距離とも呼ばれる)が、好ましくは7MPa1/2以下、より好ましくは6MPa1/2以下、さらに好ましくは5MPa1/2以下となるように、有機ポリマーを選択するとよい。
有機ポリマーとしては、ハンセン全溶解度パラメータδtotalが10〜20MPa1/2の範囲にあるものが適している。δtotalは、12〜19MPa1/2の範囲内にあってもよい。例えば、ポリジメチルシロキサンのδtotalは15.1MPa1/2程度であり、オレイン酸のδtotal18.0MPa1/2程度と近い範囲にある。
上述した溶解度パラメータを有し、オレイン酸との親和性が高い有機ポリマーは、皮脂の汚れへの対処を容易にする層の表面の提供を可能とする。
(特徴ii)について)
ポリジアルキルシロキサン構造を構成するアルキル基は、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3、より好ましくは炭素数1又は2であることが好ましい。アルキル基は、直鎖の又は分岐を有する鎖状アルキル基であってもよく環状アルキル基であってもよい。
ポリジアルキルシロキサン構造を含む主鎖は、好ましくは式(2)により示される。
−(Si(R1)(R2)−O−)n− (2)
1及びR2はそれぞれSiに直接結合している。R1及びR2は、互いに独立して、上述した炭素数(1〜6、好ましくは1〜3、より好ましくは1又は2)を有するアルキル基である。nは、3〜2000、さらには4〜1000、特に5〜750の範囲内にある自然数である。なお、式(2)中の酸素原子(−O−)は、その一部が、後述する反応性官能基により生成しうる結合、例えばエステル結合(−C(=O)−O−)、アミド結合(−C(=O)−N(−H)−)等に置換されていてもよい。
主鎖にポリジアルキルシロキサン構造を有する有機ポリマーは、皮脂を構成する脂肪分との親和性に優れている。この親和性により発現する特筆するべき特性は、重合度を示すnが相対的に小さい有機ポリマーが示す、皮脂の吸収性、言い換えると皮脂の消失性である。皮脂の消失性を有する膜は、例えばその表面に人の指が接触しても、少なくとも所定の時間が経過した後に視認が困難になり、場合によっては全く視認できなくなる。消失性の発現には、3〜50、特に4〜20、とりわけ5〜10のnを有する有機ポリマーが適している。
重合度が大きいポリジアルキルシロキサン構造を有する有機ポリマーは、皮脂の消失性においては重合度が小さい有機ポリマーに劣るが、皮脂の拭き取り性については実用的に十分な特性を示す。皮脂は、乾いた布や紙で完全に拭き取ることは難しいと考えられてきた。しかし、重合度nが大きい有機ポリマー、例えば50〜1000、特に100〜500のnを有する有機ポリマーは、乾布等による拭き取りによって、残存していた皮脂を視認できなくなる程度にまで消去することに適している。
ポリジアルキルシロキサン構造を含む主鎖を有する有機ポリマーは、その一端が下地層又は基材に固定され、その他端が膜の表面に露出していてもよい。固定される一端は主鎖の一端であり、主鎖の他端が膜の表面に露出する。一端が固定された形態は、有機ポリマーを含む層の耐久性の向上に寄与しうる。
一端を固定されて他端が自由端である並列した有機ポリマーの集合は、ポリマーブラシと呼ばれることがある。汎用の撥油膜には、パーフルオロアルキル鎖の群により構成されたポリマーブラシが含まれることがある。これに対し、本実施形態において構成されうるポリマーブラシはポリジアルキルシロキサン鎖の直鎖を含みうる。
(特徴iii)について)
この特徴を備えた有機ポリマーは、一端が下地層又は基材に固定され、他端が膜の表面に露出して、ポリマーブラシを構成しうる。ポリマーブラシの表面は、皮脂の消失性や拭き取り性の向上に適している。特に、柔軟性を消失させる要因となるパーフルオロアルキル基を含まない柔軟な有機ポリマーは、相対的に柔軟で微視的に平滑な表面を有するポリマーブラシを形成することができる。
(特徴iv)について)
パ−フルオロアルキル又はパーフルオロアルキレン基を含む有機ポリマー、特に炭素数が8程度以上のパーフルオロアルキル又はパーフルオロアルキレン基は高い撥油性の発現に寄与する。この種のフッ素含有ポリマーは、水性の汚れやある種の油性の汚れの付着を防止するための膜としては利用価値がある。なお、パーフルオロアルキル基はCF3-(CF2r−で示される1価の基であり、パーフルオロアルキレン基は-(CF2r+1-で示される2価の基である。ここで、rは0以上の整数である。しかし、パーフルオロアルキル又はパーフルオロアルキレン基を有するフッ素含有ポリマーは、付着した皮脂の除去特性においては十分でない。これは、パーフルオロアルキル基等が、特にそれが長い場合に高い結晶性を発現することと関連していると考えられる。
撥油性を高める従来のアプローチと異なり、本実施形態ではパ−フルオロアルキル基又はパーフルオロアルキレン基を含まない有機ポリマー、さらにはフッ素含有基を含まない有機ポリマーの使用が好ましい。この有機ポリマーは、上述したように、好ましくは、一端が下地層又は基材に固定され、他端が膜の表面に露出し、柔軟なポリマーブラシを形成しうる。柔軟なポリマーブラシは、その軸が容易に撓むため、膜中への皮脂の吸収に適していると考えられる。柔軟なポリマーブラシの構成に適した有機ポリマーの主鎖の一つは上述したポリジアルキルシロキサン構造であるが、有機ポリマーの主鎖が同構造を有するものに限られるわけではない。
以上では便宜上、特徴i)〜iv)を項に分けて説明したが、有機ポリマーは、各項に記載した特徴を任意に有しうる。
膜の表面に露出している層は、有機ポリマーにより実質的に構成された層であってもよい。上述したケースと同様、本明細書において、実質的に構成された、は、その他の成分を一切許容しない趣旨ではなく、その他の成分の含有量の合計を質量基準で5%未満の範囲で許容する趣旨である。
有機ポリマーは、例えば、式(3)により示される反応性官能基含有ポリマーを用いて形成することができる。
1Si(R3)(R4)−O−(Si(R1)(R2)−O−)m−Si(R5)(R6)Z2 (3)
1〜R6はそれぞれSiに直接結合している。R1〜R6は、それぞれ独立して、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3、より好ましくは炭素数1又は2のアルキル基である。アルキル基は、直鎖の又は分岐を有する鎖状アルキル基であってもよく環状アルキル基であってもよい。mは、3〜2000、4〜1000、さらに5〜750、特に5〜200、場合によっては5〜100の範囲内にある自然数である。Z1及びZ2は、反応性官能基であり、例えば、互いに独立して、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルデヒド基、アミノ基、又はグリシジル基であり、好ましくはヒドロキシ基である。
上述のポリマーは、その一端に存在する官能基Z1又はZ2が下地層又は基材の表面に存在する官能基と反応して固定され、その他端は単分子層の表面を形成する。場合によっては、固定されたポリマーの他端と別のポリマーの一端との反応の繰り返しにより、ポリジメチルシロキサン構造を有するポリマー鎖が伸長していく。この重合反応では、立体障害が顕著であるため、ポリマー鎖間の架橋は実質的に排除される。
有機ポリマーが式(3)の単量体の重合により生成する場合、有機ポリマーには反応性官能基の種類に応じた結合が含まれることになる。この結合は、例えばカルボキシル基とヒドロキシ基とが反応した場合にはエステル結合になり、カルボキシル基とアミノ基とが反応した場合にはアミド結合になる。ヒドロキシ基同士の脱水縮合が生じる場合はそれによって生じる結合がシロキサン結合になる。この場合は、シロキサン結合のみを化学結合として含む主鎖が生成する。ただしいずれにしても、得られる有機ポリマーの主鎖は、ポリジアルキルシロキサン構造を含むことになる。
有機ポリマーを含む層の厚さは、1nm〜30nm、さらには1.5nm〜20nmであることが好ましく、場合によっては2nm〜10nm、さらには2nm〜8nmであってもよい。
膜の面積1cm2あたりの有機ポリマーに含まれる炭素原子の含有量は、0.01μg〜0.2μg、特に、さらには0.02μg〜0.1μgであることが好ましい。炭素原子の含有量は、例えば、表面をよく洗浄し、EPMA(電子線マイクロアナライザ)により測定することができる。
(膜の表面の接触角及び転落角)
膜の表面に露出している有機ポリマーを含む層は、この表面における水の接触角を上昇させ、転落角を低下させる。膜の表面において、質量4mgの水滴を滴下して測定した水の接触角は、90度以上、さらに95度以上、特に100度以上、場合によっては110度以上にまで到達しうる。ただし、水の接触角は、140度以下、さらに130度以下、特に120度以下であってもよい。
膜の表面において、質量4mgの水滴を滴下して測定した水の転落角は、30度以下、さらに25度以下、特に20度以下にまで低下しうる。ただし、水の転落角は、3度以上、さらに5度以上、特に8度以上であってもよい。
膜の表面に露出している有機ポリマーを含む層は、この表面におけるオレイン酸の接触角を低下させる。膜の表面において、質量4mgのオレイン酸の油滴を滴下して測定したオレイン酸の接触角は、50度以下、さらに45度以下、特に40度未満にまで低下しうる。オレイン酸の接触角は、15度以上、20度以上、さらには25度以上であってもよい。この程度の接触角は、パーフルオロアルキル(アルキレン)基を含む有機ポリマーが示し得るオレイン酸の接触角(典型的には10度未満である)よりやや高い。
(一形態の断面)
図1に本発明による物品の一例の断面を示す。図示した物品10は、基材1とその表面に形成された膜2を備え、膜2は下地層11とその表面に形成された層12とを備えている。層12は有機ポリマーのポリマーブラシ20を含み、ポリマーブラシ20が層12の表面12sに露出している。ポリマーブラシ20は、一端が下地層11の表面11sに固定され、他端が層12の表面12sに露出した鎖状ポリマーにより構成されている。表面12sは膜2の表面でもある。基材1の表面1sは平坦であるが、下地層11の表面11sにはドーム状の凸部11pと平坦部11fとが存在している。凸部11pは、平坦部11fによって囲まれている。凸部11pは、下地層11にその下部が埋め込まれた微粒子が表面11sから突出して形成されている。表面12sには、表面11sの凸部11pに由来するドーム状の凸部12pが形成され、凸部12pは平坦部12fによって囲まれている。膜2の表面12sのRaは0.5nm〜50nmの範囲にある。
ポリマーブラシ20は、好ましくはポリジアルキルシロキサン構造を含む主鎖を有し、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキレン基を有するポリマーブラシとは異なり、柔軟である。このため、ポリマーブラシ20は、その全体が変形しながら皮脂等の油滴を受け入れること、言い換えると油滴を吸収することに適している。また、ポリマーブラシ20を構成する有機ポリマーを式(3)に示したポリマーから形成した場合、ポリマーブラシ20の表面には、ヒドロキシ基に代表される親油性が高くない官能基(Z1又はZ2)が露出することになる。このため、ポリマーブラシ20の表面は、フルオロアルキル基が露出したポリマーブラシの表面よりも油滴との親和性が高くはなく、油滴の接触角がやや大きくなる。その一方、膜中には疎水性のアルキル基(R1及びR2)が豊富に存在し、親油性が高い。したがって、このようなポリマーブラシでは、皮脂等の油滴が膜の表面から膜中に移動して吸収されやすい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例及び比較例では、膜付きガラス板を作製した。まず、膜付きガラス板の特性の評価方法を説明する。
(1)顕微鏡観察による特性評価
電界放射型走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−4500)を用いて膜の表面を斜め上方から観察し、5万倍の拡大像において膜の凸部の直径及び高さと膜の平坦部の厚みとを測定した。また、原子間力顕微鏡(THERMOMICROSCOPE製、走査型プローブ顕微鏡)を用いて膜の表面を観察し、視野1μm角四方の像から表面粗さRaを算出した。
(2)水の接触角及び転落角
膜の表面が水平となるように置いた膜付きガラス板の膜表面に4mgの水滴を滴下し、水の接触角を測定した。また、同様に滴下した4mgの水滴の転落角も測定した。具体的には、膜付きガラス板の表面と水平面とがなす角度を0度から十分にゆっくりと増加させ、水滴が移動しはじめた角度を水の転落角とした。
(3)オレイン酸の接触角(油の接触角)
4mgの水滴に代えて4mgのオレイン酸の油滴を用いたことを除いては、水の接触角と同様にして油の接触角を測定した。
(4)有機ポリマーを含む層の厚さの測定(ポリマー厚さ)
エリプソメータ(J. A. Woollam製、VASE)を用いて反射率を測定し、反射率の実部と虚部とから有機ポリマーの分子鎖部分の厚さを測定した。
(5)指紋消失性(皮脂消失性)
4mgのオレイン酸の液滴を滴下した2cm×2cmの綿布に300gの荷重をかけて膜表面に押し付け、綿布を除去してから10秒後に、綿布を押し付けた表面の拡散反射色を測定した。押し付け後の拡散反射色と、押し付け前に予め測定した拡散反射色とから、2つの測定値のL***表色系における色差ΔE*ab(SCE)を評価した。拡散反射色の測定は、分光測色計(コニカミノルタ製、CM−2500d)を用い、直径8mmの円形の視野について実施した。また、綿布除去後10秒後において、綿布を押し付けた部分と押し付けなかった部分とを肉眼で区別できるかを判定した。なお、色差ΔE*abは、L***表色系の座標2点(L1、a1、b1)及び(L2、a2、b2)から以下の式に基づいて算出することができる。
ΔE*ab=((L1−L22+(a1−a22+(b1−b221/2
(6)指紋除去性(皮脂拭き取り性)
4mgのオレイン酸の液滴を滴下した2cm×2cmの綿布に300gの荷重をかけて膜表面に押し付けた後、綿布を除去した。その表面に紙製ウエス(日本製紙クレシア製、キムワイプ(登録商標))に1kgの荷重をかけ、往復10cm、往復速度1秒/往復で10回往復させた後、表面の拡散反射色を測定した。拭き取り後の拡散反射色と、綿布押し付け前に予め測定した拡散反射色とから、2つの測定値のL***表色系における色差ΔE*ab(SCE)を評価した。拡散反射色の測定は(5)と同様にして実施した。また、拭き取り後において、綿布を押し付けて紙製ウエスで拭き取った部分と綿布を押し付けなかった部分とを肉眼で区別できるかを判定した。
(7)耐摩耗性
2cm×2cmのスチールウール(番手#0000、オイルフリー)に1kgの荷重をかけて膜表面に押し付けながら、振幅19cm、往復頻度1秒/往復で1000往復させた。その後、水の接触角と指紋消失性及び/又は除去性とを測定した。
(実施例1)
市販の厚み3mmのフロートガラス板を10cm角に切断し、表面をよく洗浄して乾燥させた。一方、テトラエトキシシラン7.05質量部、濃塩酸1.79質量部、水2.5質量部、エタノール19.7質量部、シリカ微粒子分散液(扶桑化学工業製、PL−7)0.8質量部を混合し、25℃で4時間攪拌して原液を得た。なお、PL−7には、実質的に球形、平均粒径100nmで中実のシリカ微粒子が固形分濃度23重量%で含まれている。また、原液の固形分は6質量%である。固形分中、微粒子に含まれる酸化ケイ素成分と、微粒子のバインダとなるテトラエトキシシラン由来の酸化ケイ素成分とのSiO2に換算した質量基準での比率は、8:92である。原液にエタノール37質量部を添加して下地層形成用塗布液を得た。なお、PL−7は二次粒子を含まない。
この塗布液を、バーコーターを用いて前述のガラス板に塗布し、100℃に設定した電気炉で2時間保持して塗布液を乾燥させ固化させ、凸部と平坦部とから実質的に構成された凹凸表面を有する下地層をガラス板上に形成した。
下地層付きガラス板を平型容器に入れ、両末端に1つずつのシラノール基を有するポリジメチルシロキサン(Gelest Inc.製、DMS−12、平均分子量550)を、下地層の凹凸表面を覆うように滴下し、そのまま120℃に設定した電気炉で24時間保持した。その後、ガラス板をアセトン、エタノール、水の順で用いて洗浄し、さらに上記紙製ウエスで表面を拭うことで、反応残余のポリジメチルシロキサンを除去し、膜付きガラス板を得た。
(実施例2)
実施例1と同じガラス板を同様に洗浄し乾燥させた。このガラス板に、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(poly (diallyl dimethyl ammonium chloride)、PDDA)を0.5重量%含むメタノール溶液を流しかけ、100℃の乾燥機で30分乾燥させた。その後、実施例1とは異なるシリカ微粒子分散液(日産化学工業株式会社製、IPA−ST−UP)を乾燥させた表面に流しかけ、余分の液を流下させた後で、550℃の電気炉で3時間保持して焼成させ、その後室温まで8時間かけて徐冷した。なお、このシリカ微粒子分散液には、一次粒径10nmで中実のシリカ微粒子が会合して形成された平均粒径40nmの二次粒子が、固形分濃度25重量%で含まれている。また、PDDAで処理したガラス板表面は、PDDAにより正に帯電し、シリカ微粒子表面の負に帯電するシラノール基によりガラス表面にシリカ微粒子を吸着させる。その後の焼成によりPDDAは焼失し、シリカ微粒子はガラス表面に強く結合し、ガラス表面に凸部からなる下地層を形成する。以降、この下地層付きガラス板について、実施例1と同様にして、膜つきガラス板を得た。
(実施例3)
平均分子量550のジメチルシリコーンに代えて、同じく両末端がシラノール基で平均分子量26000のジメチルシリコーン(Gelest Inc.製、DMS−S45)を用いた以外は実施例1と同様にして、膜付きガラス板を得た。
(実施例4)
シリカ微粒子分散液PL−7に代えて、シリカ微粒子分散液(IPA−ST−UP)を用いた以外は実施例3と同様にして、膜付きガラス板を得た。
(比較例1)
まず、実施例1と同様にして、凹凸表面を有する下地層をガラス板の表面に形成した。次に、フッ素含有ポリマーをパーフルオロヘキサンで20質量%に希釈した、市販の指紋付着防止用塗布液(ダイキン工業製、オプツールDSX)を、さらにパーフルオロヘキサンで希釈して0.1質量%溶液を調製した。この処理液3mLを綿布につけ、下地層の表面に塗り込んだ後、過剰に付着した処理剤を、新しい乾いた綿布で乾拭きして拭き取り、膜付きガラス板を得た。なお、オプツールDSXに含まれているフッ素含有ポリマーは、パーフルオロポリエーテルであり、多くのパーフルオロアルキレン基を含んでいる。
(比較例2)
実施例1と同様にして切断し、洗浄し、乾燥させたフロートガラス板を得た。このガラス板をそのまま評価した。
評価結果を表1にまとめて示す。なお、各実施例では、耐久性試験前後とも、ΔE*ab(SCE)が1.0以下であり、指紋消失性又は除去性試験において肉眼でオレイン酸の残存を確認できなかった。これに対し、各比較例ではオレイン酸の存在が視認できた。また、各実施例では、耐久性試験後も、水の接触角は90度以上に保たれていた。
有機ポリマーを構成する主鎖の重合度nは、層の厚さから換算して、実施例1及び2において7、実施例3及び4において350である。また、膜の面積1cm2あたりの炭素原子の含有量は、実施例1及び2において0.04μg、実施例3及び4において0.07μgである。この炭素原子は有機ポリマーの側鎖に由来する。また、各実施例で用いた有機ポリマーは、ハンセン全溶解度パラメータδtotalは10〜20MPa1/2の範囲にあり、ハンセン空間におけるオレイン酸との座標間の距離が8MPa1/2以下であった。
また、各実施例の膜付きガラス板を−15℃に設定した冷凍庫内に3時間保持した後、その表面に同じ冷凍庫内に保持していた氷を接触させたところ、氷は膜つきガラス板の表面を滑らかに滑って付着することがなかった。各実施例の表面は防氷性を有する。一方、各比較例では氷が表面に固着してしまった。
Figure 2019176695

Claims (19)

  1. 基材と、前記基材上に形成された膜とを備え、
    前記膜は、前記膜の表面に露出した層を含み、
    前記表面の表面粗さRaが0.5nm〜50nmであり、
    前記表面に質量4mgの水滴を滴下して測定した水の転落角が30度以下であり、
    下記a)〜c)の少なくとも1つが成立する、物品。
    a)前記層は、ポリジアルキルシロキサン構造を含む主鎖を有する有機ポリマーを含む。
    b)前記層は有機ポリマーを含み、前記有機ポリマーはパーフルオロアルキル又はパーフルオロアルキレン基を含まない。
    c)前記表面に質量4mgのオレイン酸の液滴を滴下して測定した接触角が15度以上である。
  2. 前記有機ポリマーは、一端が前記層とは別に前記膜に含まれる下地層又は前記基材に固定され、他端が前記表面に露出している、請求項1に記載の物品。
  3. 前記有機ポリマーがポリマーブラシを構成している、請求項2に記載の物品。
  4. 基材と、前記基材上に形成された膜とを備え、
    前記膜は、前記膜の表面に露出した層を含み、
    前記表面の表面粗さRaが0.5nm〜50nmであり、
    前記層は、ポリジアルキルシロキサン構造を含む主鎖を有する有機ポリマーのポリマーブラシを含む、物品。
  5. 前記表面に質量4mgの水滴を滴下して測定した水の転落角が30度以下である、請求項4に記載の物品。
  6. 前記水の転落角が20度以下である、請求項1又は5に記載の物品。
  7. 前記表面に質量4mgのオレイン酸の液滴を滴下して測定した接触角が40度未満である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の物品。
  8. 前記表面に質量4mgの水滴を滴下して測定した水の接触角が90度以上である、請求項1〜7のいずれか1項の記載の物品。
  9. 前記表面に質量4mgの水滴を滴下して測定した水の接触角が140度以下である、請求項1〜8のいずれか1項の記載の物品。
  10. 前記有機ポリマーは、ハンセン全溶解度パラメータδtotalが10〜20MPa1/2の範囲にある、請求項1〜9のいずれか1項に記載の物品。
  11. 前記有機ポリマーは、ハンセン空間におけるオレイン酸との座標間の距離が8MPa1/2以下である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の物品。
  12. 前記ポリジアルキルシロキサン構造に含まれるアルキル基の炭素数が1〜6である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の物品。
  13. 前記層の厚さが1nm〜30nmである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の物品。
  14. 前記表面は、ドーム状の凸部と平坦部とを有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の物品。
  15. 前記表面は、凸部と平坦部とを有し、前記凸部は、10nm〜200nmの径と、5nm〜100nmの高さとを有する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の物品。
  16. 前記表面は、凸部と平坦部とを有し、前記凸部が占める面積の合計と前記平坦部の面積との比が15:85〜80:20の範囲にある請求項1〜15のいずれか1項に記載の物品。
  17. 前記膜は、前記層とは別の層として下地層を含み、
    前記下地層は、金属酸化物膜である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の物品。
  18. 前記下地層の表面が、ドーム状の凸部と平坦部とを有する、請求項17に記載の物品。
  19. 前記a)、前記b)及び前記c)が成立する、請求項1に記載の物品。
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