JPWO2019172197A1 - 光ファイバ - Google Patents

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Abstract

光ファイバは、シリカガラスからなる光ファイバであって、コアと、前記コアを取り囲み前記コアの屈折率より低い屈折率を有する第一クラッドと、前記第一クラッドを取り囲み前記コアの屈折率より低く前記第一クラッドの屈折率より高い屈折率を有する第二クラッドと、を含む。前記第二クラッドは、前記第一クラッドに接する内側領域と、前記内側領域を取り囲み前記第二クラッドの厚さの半分以下であって5μm以上の厚さを有する外側領域と、に区分される。前記外側領域の少なくとも一部における残留応力は圧縮応力であり、前記第二クラッドにおける屈折率の径方向の変動は純シリカガラスの屈折率に対する相対値で0.05%以下である。

Description

本開示は、光ファイバに関する。
本出願は、2018年3月6日出願の日本出願第2018−039358号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用する。
シリカガラスからなる低損失な光ファイバとしてW型屈折率構造の光ファイバが知られている。W型屈折率構造の光ファイバは、コアと、このコアを取り囲みコアの屈折率より低い屈折率を有する第一クラッドと、この第一クラッドを取り囲みコアの屈折率より低く第一クラッドの屈折率より高い屈折率を有する第二クラッドと、を含む。例えば、コアは実質的にGeを含まず、第一クラッドおよび第二クラッドはフッ素を含む。特許文献1には、W型屈折率構造の光ファイバが記載されている。
特開2014−238526号公報
本開示の光ファイバは、シリカガラスからなる光ファイバであって、コアと、前記コアを取り囲み前記コアの屈折率より低い屈折率を有する第一クラッドと、前記第一クラッドを取り囲み前記コアの屈折率より低く前記第一クラッドの屈折率より高い屈折率を有する第二クラッドと、を含む。前記第二クラッドは、前記第一クラッドに接する内側領域と、前記内側領域を取り囲み前記第二クラッドの厚さの半分以下であって5μm以上の厚さを有する外側領域と、に区分される。前記外側領域の少なくとも一部における残留応力は圧縮応力であり、前記第二クラッドにおける屈折率の径方向の変動は純シリカガラスの屈折率に対する相対値で0.05%以下である。
図1は、W型屈折率構造の光ファイバの径方向の屈折率分布の一例を示す図である。 図2は、光ファイバのロスの波長依存性を示す図である。 図3は、第二クラッドにおける内側領域の最大屈折率と外側領域の屈折率との差ΔPとハンプピークの強度との間の関係を示すグラフである。 図4Aは、光ファイバ母材および光ファイバそれぞれの径方向の屈折率分布を示す図である。 図4Bは、光ファイバの径方向の残留応力分布を示す図である。 図5は、シリカガラスにおける残留応力(引張応力)と比屈折率差の変化分との間の関係を示すグラフである。 図6は、第二クラッドの外側領域の最大屈折率と内側領域の最小屈折率との差と、波長1550nmにおける曲げロスとの間の関係を示すグラフである。 図7は、光ファイバ製造方法を説明するフローチャートである。 図8は、アニール炉の温度と残留応力の大きさとの間の関係を示すグラフである。
[本開示が解決しようとする課題]
上述のようなW型屈折率構造の光ファイバにおいて、特に実効断面積を大きく(例えば120μm以上に大きく)した場合、曲げロスを小さくするには第一クラッドの比屈折率差を−0.25%より低くし、一方で、カットオフを調整するため第二クラッドの比屈折率差を−0.25%より高くする必要がある。このことから、第二クラッドのフッ素含有濃度が非常に小さくなる。
このような光ファイバを線引により製造する為の光ファイバ母材においても、第二クラッド部のフッ素含有濃度を非常に小さくする必要がある。低濃度のフッ素を含有するシリカガラスからなる第二クラッド部を合成するには、一般的に、Heガスなどで希釈した低濃度のSiFガス中でガラススス体を焼結する。しかし、低濃度のSiFはガラススス体に拡散する速度が遅いことから、ガラススス体が焼結した透明ガラスは、中心に向けて薄くなるようなフッ素の濃度分布を持つことが多い。そのため、図1に示されるように第二クラッドのうちの内側領域の屈折率が外側領域の屈折率より高くなることがある(特許文献1参照)。
図1は、W型屈折率構造の光ファイバの径方向の屈折率分布の一例を示す図である。第二クラッドは内側領域と外側領域とに区分される。本例では、外側領域の屈折率は略一定である。内側領域の屈折率は外側領域の屈折率より高い。この図中に示された各パラメータは次のとおりである。Rは、内側領域の径方向の厚みである。ΔPは、内側領域の最大屈折率と外側領域の屈折率との差である。ΔDは、内側領域の最大屈折率と第一クラッドの屈折率(第二クラッド部との界面部に位置する第一クラッド部での屈折率)との差である。ΔJは、第二クラッド部との界面部に位置する第一クラッド部での屈折率と外側領域の屈折率との差である。ΔD=ΔJ+ΔPである。
このような屈折率分布において、第二クラッドの内側領域において外側領域より屈折率が高い領域は「コブ」(refractive index bump)と呼ばれる。実質的に製造可能な焼結時間においては、内側領域の最小フッ素濃度と外側領域の最大フッ素濃度との差は、1,000atomic ppmから2,000atomic ppmの範囲である。これにより。ΔPは0.04%〜0.07%の大きさとなる。ここでいうatomic ppmとは、ガラスのSiOユニット100万個に対する評価対象原子の個数の割合である。
図1に示されるように第二クラッドのうちの内側領域の屈折率が外側領域の屈折率より高くなると、主にコアに光が閉じ込められて伝搬する基底モードの他、コアおよび内側領域に光が閉じ込められて伝搬する高次モードも導波が可能となる場合がある。その結果、カットオフ波長にハンプ(hump)と呼ばれる波形異常が発生し、カットオフ波長は長くなる場合がある(Recomendation ITU-T G.650.1 (07/2010), p.24)。図2は、光ファイバのロスの波長依存性を示す図である。この図に示されるように、カットオフの主ピークより長波長側に、主ピークより強度が弱いピーク(ハンプ)が見られる。
また、第二クラッドのうちの内側領域の屈折率が外側領域の屈折率より高くなると、カットバック測定による伝送損失測定時に、高次モード由来の損失を発生させて損失を増加させる場合がある。
コブ発生を抑制する方法として、フッ素の拡散を進める為に低濃度のSiF雰囲気中で1200℃以下の低温でガラススス体を長時間保持し、徐々に昇温しながらガラススス体を焼結することで、ガラススス体内部まで均一なフッ素濃度にする方法がある。しかし、この方法は製造に時間がかかりコスト増の問題がある。
このように屈折率のコブの発生を抑えつつ実効断面積の大きな光ファイバを製造することは困難であった。
本開示は、上記問題点を解消する為になされたものであり、屈折率のコブの発生を抑えつつ実効断面積の大きな光ファイバを提供することを目的とする。
[本開示の効果]
本開示によれば、屈折率のコブの発生を抑えつつ実効断面積の大きな光ファイバを提供することができる。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。本開示の一態様は、シリカガラスからなる光ファイバに関する。この光ファイバは、コアと、前記コアを取り囲み前記コアの屈折率より低い屈折率を有する第一クラッドと、前記第一クラッドを取り囲み前記コアの屈折率より低く前記第一クラッドの屈折率より高い屈折率を有する第二クラッドと、を含む。前記第二クラッドは、前記第一クラッドに接する内側領域と、前記内側領域を取り囲み前記第二クラッドの厚さの半分以下であって5μm以上の厚さを有する外側領域と、に区分される。前記外側領域の少なくとも一部における残留応力は圧縮応力であり、前記第二クラッドにおける屈折率の径方向の変動は純シリカガラスの屈折率に対する相対値で0.05%以下である。
この光ファイバにおいて、前記内側領域の少なくとも一部における残留応力が引張応力であり、前記内側領域における引張応力の最大値が前記外側領域における引張応力の最大値より大きいのが好適である。前記内側領域における引張応力の最大値が30MPa以上であるのが好適である。前記コアが実質的にGeを含まないのが好適である。本開示において「コアが実質的にGeを含まない」とは、EPMA法での検出下限に相当する50 atomic ppm未満であることを意味する。前記コアがアルカリ金属元素を含み、前記コアにおけるアルカリ金属元素の濃度の平均値が1 atomic ppm以上100 atomic ppm以下であるのが好適である。
この光ファイバにおいて、前記コアの屈折率と前記第一クラッドの屈折率との差が純シリカガラスの屈折率に対する相対値で0.25%以上であるのが好適である。直径50mmで10ターンだけ巻いたときの波長1550nmにおける曲げロスが0.1dBより小さいのが好適である。波長1550nmにおける実効断面積が140μmより大きいのが好適である。ガラス外径が125μmより小さく80μmより大きいのが好適である。
[本開示の実施形態の詳細]
以下、添付図面を参照して、本開示の一実施形態を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本実施形態の光ファイバは、シリカガラスからなる光ファイバであって、コアと、コアを取り囲みコアの屈折率より低い屈折率を有する第一クラッドと、第一クラッドを取り囲みコアの屈折率より低く第一クラッドの屈折率より高い屈折率を有する第二クラッドと、を含む。第二クラッドは、第一クラッドに接する内側領域と、内側領域を取り囲み第二クラッドの厚さの半分以下であって5μm以上の厚さを有する外側領域と、に区分される。
そして、外側領域の少なくとも一部における残留応力が圧縮応力であり、第二クラッドにおける屈折率の径方向の変動が、純シリカガラスの屈折率に対する相対値で0.05%以下である。内側領域の少なくとも一部における残留応力が引張応力であるのが好適である。内側領域における引張応力の最大値は外側領域における引張応力の最大値より大きいのが好適である。内側領域における引張応力の最大値(最大残留応力)が30Mpa以上であるのがさらに好適である。コアの屈折率と第一クラッドの屈折率との差は、純シリカガラスの屈折率に対する相対値で0.25%以上であるのが好適である。
本実施形態の光ファイバは、線引工程後の残留応力の径方向分布を適切に設定して、第二クラッドにおけるフッ素濃度に起因する屈折率変化量を残留応力に起因する屈折率変化量で相殺することで、第二クラッドの屈折率を均一化したものである。これにより伝送特性に優れた光ファイバを提供することができる。
光ファイバ母材を線引して光ファイバを製造する際に、光ファイバに残留する応力の径方向分布を適切にコントロールすることにより、第二クラッドの外側領域の少なくとも一部における残留応力が圧縮応力となるようにする。また、内側領域の少なくとも一部における残留応力が引張応力となるようにする。このような残留応力に因る光弾性効果によりガラス屈折率が増減し、第二クラッドにおける内側領域の最大屈折率と外側領域の屈折率との差ΔPを小さくすることができる。第二クラッドにおける屈折率の径方向の変動を、純シリカガラスの屈折率に対する相対値で0.05%以下に抑えることができる。図3は、ΔPとハンプピークの強度との間の関係を示すグラフである。この図に示されるように、ΔPが0.05%以下であれば、ハンプの発生を抑制することができる。
図4Aは、光ファイバ母材および光ファイバそれぞれの径方向の屈折率分布を示す図である。この図では、残留応力が無視できる純シリカコアの比屈折率差を0%としている。光ファイバ母材においてΔP=0.06%であったのに対し、この光ファイバ母材を線引して製造された光ファイバにおいてはΔP=0.02%であった。図4Bは、光ファイバの径方向の残留応力分布を示す図である。この図の縦軸において、正方向が引張応力であり、負方向が圧縮応力である。
図4Aと図4Bとを対比して分かるように、光ファイバ母材と比較して光ファイバの比屈折率差が低くなった領域は、残留応力が引張応力である領域と一致している。光ファイバ母材と比較して光ファイバの比屈折率差が高くなった領域は、残留応力が圧縮応力である領域と一致している。このように、残留応力によって、比屈折率差を増減することができる。内側領域の残留応力を引張応力とすることにより、内側領域の比屈折率差を低くすることができる。外側領域の残留応力を圧縮応力とすることにより、外側領域の比屈折率差を高くすることができる。これによりΔPを小さくすることができる。
図5は、シリカガラスにおける残留応力(引張応力)と比屈折率差の変化分との間の関係を示すグラフである。この図に示されるとおり、引張応力が大きいほど、比屈折率差は小さくなる。比屈折率差の減少量は引張応力の大きさに略比例している。
光ファイバの第二クラッドの一部領域で残留応力を引張応力とするには、その光ファイバのコアおよび第一クラッドの広い領域において残留応力を圧縮応力とする必要がある。コアに強い引張応力が残留する場合、相対的にクラッドには圧縮応力が残留するので、第二クラッドに引張応力を残留させることは難しい。そこで、Ge、アルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素などシリカガラスの粘性を下げる元素をコアに添加することが望ましい。ここで、アルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素として、例えば、Na,K,Rb,Cs,Be,Mg,Caなどが挙げられる。
コアにGeを添加する場合、残留応力を制御するには適しているものの、Ge濃度を0.5%以上とする必要があることから、高濃度に添加したしたことによるGe濃度揺らぎに因る散乱損失が発生する懸念がある。これに対して、コアが実質的にGeを含まず、コアがアルカリ金属元素を含む場合、100 atomic ppm以下の低濃度でもコアの残留応力を十分に低減することができることから、低損失な光ファイバを得ることができる点で優れている。コアにおけるアルカリ金属元素の濃度の平均値は、1 atomic ppm以上100 atomic ppm以下であるのが好ましい。
ただし、異なる濃度のフッ素または塩素などのハロゲンを添加して3層以上の複雑なクラッド構造とすることでクラッド内の一部に粘性の高い領域を形成する等の方法でも、第二クラッドの内側領域に引張応力を与えることも可能であると考えられることから、コアへの添加物は必ずしも必要ではない。
一方、第二クラッドにおいて内側領域より外側領域の比屈折率差が0.05%より大きくなる場合は、直径50mmより小径での曲げに対して光ファイバのロスが大きくなることから、第二クラッドの内側領域の比屈折率差が低ければ低いほど良いということではない。第二クラッド内での比屈折率差の変動が小さいことが最適であるといえる。
図6は、第二クラッドの外側領域の最大屈折率と内側領域の最小屈折率との差と、波長1550nmにおける曲げロスとの間の関係を示すグラフである。曲げロスは、光ファイバを直径50mmのマンドレルに10ターンだけ巻いたときのロスと、曲げを解放したときのロスとの差分である。この図に示されるように、外側領域の最大屈折率が内側領域の最小屈折率より比屈折率差で0.05%より大きくなると、曲げロスが急激に悪化する。すなわち、第二クラッドにおける屈折率の径方向の変動は、純シリカガラスの屈折率に対する相対値で0.05%以下であるのが好ましい。
粘性を低下させる元素をコアに添加した光ファイバにおいて第二クラッドの外側領域に圧縮応力を発生させた場合、コア、第一クラッドおよび第二クラッドの外側領域が圧縮応力となるので、線引工程において第二クラッドの内側領域のみに線引張力がかかることになる。このときの残留応力は、その光ファイバの牽引張力を張力がかかる面積で割った値である単位面積当たりの張力に依存する。第二クラッドを薄くしてガラス外径を125μmより小さくした場合、より強い引張り応力を内側領域に付与することができることから、効率的にコブを小さくすることができる。
本実施形態の光ファイバは、直径50mmで10ターンだけ巻いたときの波長1550nmにおける曲げロスが0.1dBより小さい。波長1550nmにおける実効断面積が140μmより大きい。また、ガラス外径が125μmより小さく80μmより大きい。
次に、本実施形態の光ファイバを製造する方法の一例について説明する。図7は、光ファイバ製造方法を説明するフローチャートである。本実施形態の光ファイバ製造方法は、準備工程(ステップS1)、添加工程(ステップS2)、縮径工程(ステップS3)、エッチング工程(ステップS4)、中実化工程(ステップS5)、延伸研削工程(ステップS6)、ロッドインコラプス工程(ステップS7)、VAD工程(ステップS8)および線引工程(ステップS9)を順に行って、光ファイバを製造する。なお、以下の説明では製造条件の一例について記載するが、これに限られない。
準備工程(ステップS1)では、アルカリ金属元素を拡散させるべき石英系ガラスパイプを準備する。この石英系ガラスパイプは、100 atomic ppmの塩素(Cl)および6,000 atomic ppmのフッ素(F)を含み、その他のドーパント及び不純物の濃度が10mol ppm以下である。この石英系ガラスパイプの外直径は35mmであり、内直径は20mm程度である。
添加工程(ステップS2)では、アルカリ金属元素としてカリウム(K)を石英系ガラスパイプの内表面に添加する。原料として臭化カリウム(KBr)を用いる。外部熱源でKBrを温度840℃に加熱してKBr蒸気を発生させる。酸素を1SLM(標準状態に換算して1リットル/min)の流量で導入したキャリアガスと共にKBr蒸気を石英系ガラスパイプに導入しながら、外部から酸水素バーナによって石英系ガラスパイプの外表面が温度2150℃となるように石英系ガラスパイプを加熱する。このとき、40mm/minの速さでバーナをトラバースさせて合計15ターン加熱し、カリウム金属元素を石英系ガラスパイプの内表面に拡散添加させる。このアルカリ金属添加パイプのカリウム濃度の最大値は1,000 atomic ppmである。
縮径工程(ステップS3)では、カリウムが添加された石英系ガラスパイプを縮径する。このとき、石英系ガラスパイプの内部に酸素を0.5SLM流しながら、外部熱源によって石英系ガラスパイプの外表面が2250℃となるように石英系ガラスパイプを加熱する。外部熱源をトラバースさせて合計6ターン加熱し、カリウムが添加された石英ガラスパイプを内直径が5mmになるまで縮径する。
エッチング工程(ステップS4)では、石英系ガラスパイプの内面をエッチングする。このとき、SF(0.2SLM)および塩素(0.5SLM)の混合ガスを石英ガラスパイプの内部に導入しながら、外部熱源で石英ガラスパイプを加熱して気相エッチングを行う。このようにすることで、アルカリ金属元素と共に添加された不純物を高濃度に含むパイプ内面を削ることができ、この不純物を除去することができる。
中実化工程(ステップS5)では、石英系ガラスパイプを中実化する。中実化工程では、酸素(0.1SLM)およびHe(1SLM)の混合ガスを石英ガラスパイプの内部に導入し、石英ガラスパイプ内の絶対圧を97kPa以下に減圧しながら表面温度を2150℃として石英ガラスパイプを中実化する。この中実化工程により、アルカリ金属元素を含むコアロッド(外径25mm)を得る。このコアロッドの周りに別のガラスをコラプス法のような既知の方法で付与することでコア材のサイズを大きくしても良い。
延伸研削工程(ステップS6)では、外径が23mmになるまでコアロッドを延伸した後、外径が17mmになるまでコアロッドの外周を研削することで、後のロッドインコラプス工程において使用するパイプの内径との比が3倍以上で4倍以下となるように、コアロッドの外径を調整する。
ロッドインコラプス工程(ステップS7)では、コアロッド(コア部)の外側にクラッド部を設ける。このとき、フッ素が添加された石英系ガラスパイプ(第一クラッド部)の内部にコア部を挿入して、外部熱源によって両者を加熱し一体化するロッドインコラプス法を用いる。コア部と第一クラッド部との間の相対比屈折率差は最大で0.34%程度である。このロッドインコラプス法による合成の結果、コア部及びその近傍のクラッド部の水分量は十分に低く抑制することが可能である。
VAD工程(ステップS8)では、コア部およびクラッド部が一体化されてなるロッドを延伸して所定径とした後、そのロッドの外側に第二クラッド部をVAD(vapor phase axial deposition)法により合成する。そして、SiFガス中で900℃〜1200℃の温度でフッ素添加を行った後、1500℃以上に昇温しガラス化することで、光ファイバ母材を製造する。得られた光ファイバ母材において、第一クラッド部の外直径は30mmであり、第二クラッド部の外直径は120mmである。ここで、比屈折率差の測定を行い母材状態での屈折率構造を測定するとΔPは0.07%となる。
続く線引工程(ステップS9)では、以上までの光ファイバ母材製造方法により製造された光ファイバ母材を線引することで光ファイバを製造する。線引速度は100m/minであり、線引張力は0.5Nである。さらに、光ファイバに紡糸する線引炉の下にアニール炉を設けて光ファイバを再加熱する。このとき、線引炉とアニール炉との間に空間を設ける。空間の間隔は50cm以上1m以下とする。この間隔は、線引速度と光ファイバ温度との間の関係により最適化する値であり、アニール炉に入る前の光ファイバの温度を1000℃以上1200℃以下としてガラス転移温度以下に冷却することが適している。また、光ファイバの外側が溶融して応力が圧縮となるのに1秒以上加熱することが必要であるので、アニール時間が十分となるように線引速度およびアニール炉の長さを調整する。
図8は、アニール炉の温度と残留応力の大きさとの間の関係を示すグラフである。この図は、第二クラッドの外側領域における最小残留応力のアニール温度依存性、および、内側領域における最大残留応力のアニール温度依存性を示している。アニール炉の温度が1000℃より低い場合には、光ファイバガラスの溶融が起こらないので、線引炉から光ファイバが出て冷え固まったときに応力は決まってしまい、第二クラッド内で径方向に残留応力の差が付きにくいと推測される。一方、アニール炉の温度が1200℃より高い場合には、第二クラッド全体が溶融してしまい、第二クラッド内での応力差が付きにくくなると推測される。第二クラッドの外側領域における最小残留応力が負値となる(すなわち、第二クラッドの外側領域の一部で圧縮応力が残留する)ようにアニール炉の温度を1000℃以上1270度以下とすれば、第二クラッドの内側領域における最大残留応力は30Mpa以上になる。これにより、フッ素濃度の不均一性に起因する0.005%の比屈折率差を補償することができる。
製造された光ファイバの特性の一例は次のとおりであった。波長1550nmにおける伝送損失は0.142dB/kmであった。波長1380nmにおける伝送損失は0.4dB/kmであった。波長1550nmにおける実効断面積は150μmであった。直径50mmで10ターンだけ巻いたときの波長1550nmにおける曲げロスは0.15dBであった。ΔPは0.02%であった。また、第二クラッドの外側領域の残留応力は圧縮応力であった。
比較例として、線引工程(ステップS9)において、アニール炉による再加熱を行うことなく、線引炉から出た光ファイバを冷却した。これにより製造された比較例の光ファイバの特性は次のとおりであった。残留応力は最外層の外側ほど高い分布となった。これにより、ΔPは0.07%であり、母材状態よりファイバ状態の方がΔPは大きくなった。この光ファイバは、カットオフにハンプが発生し正確に測定することができなかった。また、高次モードの影響によると推測されるロスにより、1550nmでの伝送損失は0.145dB/kmとわずかに増加した。
以上のとおり、本実施形態は、線引工程後の残留応力の径方向分布を適切に設定して、第二クラッドにおけるフッ素濃度に起因する屈折率変化量を残留応力に起因する屈折率変化量で相殺することで、第二クラッドの屈折率を均一化し、これにより、屈折率のコブの発生を抑えつつ実効断面積の大きな光ファイバを提供することができる。

Claims (9)

  1. シリカガラスからなる光ファイバであって、
    コアと、前記コアを取り囲み前記コアの屈折率より低い屈折率を有する第一クラッドと、前記第一クラッドを取り囲み前記コアの屈折率より低く前記第一クラッドの屈折率より高い屈折率を有する第二クラッドと、を含み、
    前記第二クラッドが、前記第一クラッドに接する内側領域と、前記内側領域を取り囲み前記第二クラッドの厚さの半分以下であって5μm以上の厚さを有する外側領域と、に区分され、
    前記外側領域の少なくとも一部における残留応力が圧縮応力であり、
    前記第二クラッドにおける屈折率の径方向の変動が純シリカガラスの屈折率に対する相対値で0.05%以下である、
    光ファイバ。
  2. 前記内側領域の少なくとも一部における残留応力が引張応力であり、
    前記内側領域における引張応力の最大値が前記外側領域における引張応力の最大値より大きい、
    請求項1に記載の光ファイバ。
  3. 前記内側領域における引張応力の最大値が30MPa以上である、
    請求項2に記載の光ファイバ。
  4. 前記コアが実質的にGeを含まない、
    請求項1〜3の何れか1項に記載の光ファイバ。
  5. 前記コアがアルカリ金属元素を含み、
    前記コアにおけるアルカリ金属元素の濃度の平均値が 1 atomic ppm以上100 atomic ppm以下である、
    請求項1〜4の何れか1項に記載の光ファイバ。
  6. 前記コアの屈折率と前記第一クラッドの屈折率との差が純シリカガラスの屈折率に対する相対値で0.25%以上である、
    請求項1〜5の何れか1項に記載の光ファイバ。
  7. 直径50mmで10ターンだけ巻いたときの波長1550nmにおける曲げロスが0.1dBより小さい、
    請求項1〜6の何れか1項に記載の光ファイバ。
  8. 波長1550nmにおける実効断面積が140μmより大きい、
    請求項1〜7の何れか1項に記載の光ファイバ。
  9. ガラス外径が125μmより小さく80μmより大きい、
    請求項1〜8の何れか1項に記載の光ファイバ。
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