JPWO2019124519A1 - エチレンの製造方法 - Google Patents

エチレンの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2019124519A1
JPWO2019124519A1 JP2019560575A JP2019560575A JPWO2019124519A1 JP WO2019124519 A1 JPWO2019124519 A1 JP WO2019124519A1 JP 2019560575 A JP2019560575 A JP 2019560575A JP 2019560575 A JP2019560575 A JP 2019560575A JP WO2019124519 A1 JPWO2019124519 A1 JP WO2019124519A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
catalyst
zeolite
ethylene
less
propylene
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2019560575A
Other languages
English (en)
Other versions
JP7251481B2 (ja
Inventor
雅寛 原
雅寛 原
青島 敬之
敬之 青島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Chemical Corp filed Critical Mitsubishi Chemical Corp
Publication of JPWO2019124519A1 publication Critical patent/JPWO2019124519A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7251481B2 publication Critical patent/JP7251481B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01JCHEMICAL OR PHYSICAL PROCESSES, e.g. CATALYSIS OR COLLOID CHEMISTRY; THEIR RELEVANT APPARATUS
    • B01J29/00Catalysts comprising molecular sieves
    • B01J29/04Catalysts comprising molecular sieves having base-exchange properties, e.g. crystalline zeolites
    • B01J29/06Crystalline aluminosilicate zeolites; Isomorphous compounds thereof
    • B01J29/70Crystalline aluminosilicate zeolites; Isomorphous compounds thereof of types characterised by their specific structure not provided for in groups B01J29/08 - B01J29/65
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01JCHEMICAL OR PHYSICAL PROCESSES, e.g. CATALYSIS OR COLLOID CHEMISTRY; THEIR RELEVANT APPARATUS
    • B01J35/00Catalysts, in general, characterised by their form or physical properties
    • B01J35/50Catalysts, in general, characterised by their form or physical properties characterised by their shape or configuration
    • B01J35/56Foraminous structures having flow-through passages or channels, e.g. grids or three-dimensional monoliths
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07CACYCLIC OR CARBOCYCLIC COMPOUNDS
    • C07C11/00Aliphatic unsaturated hydrocarbons
    • C07C11/02Alkenes
    • C07C11/04Ethylene
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07CACYCLIC OR CARBOCYCLIC COMPOUNDS
    • C07C4/00Preparation of hydrocarbons from hydrocarbons containing a larger number of carbon atoms
    • C07C4/02Preparation of hydrocarbons from hydrocarbons containing a larger number of carbon atoms by cracking a single hydrocarbon or a mixture of individually defined hydrocarbons or a normally gaseous hydrocarbon fraction
    • C07C4/06Catalytic processes
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07BGENERAL METHODS OF ORGANIC CHEMISTRY; APPARATUS THEREFOR
    • C07B61/00Other general methods
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P20/00Technologies relating to chemical industry
    • Y02P20/50Improvements relating to the production of bulk chemicals
    • Y02P20/52Improvements relating to the production of bulk chemicals using catalysts, e.g. selective catalysts
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P20/00Technologies relating to chemical industry
    • Y02P20/50Improvements relating to the production of bulk chemicals
    • Y02P20/584Recycling of catalysts

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Oil, Petroleum & Natural Gas (AREA)
  • Crystallography & Structural Chemistry (AREA)
  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)
  • Catalysts (AREA)

Abstract

プロピレンを原料として、エチレンを製造するに際し、エチレン収率の低下を最小限に抑え、長時間にわたって、安定にエチレンを製造する方法を提供することを課題とする。反応器にプロピレンを供給し、触媒と接触させてエチレンを生成させる工程(I)と、前記工程(I)を経た触媒を再生させる工程(II)を有することを特徴とするエチレンの製造方法。

Description

本発明は、エチレンの製造方法に関する。詳しくは、主として、プロピレンを、反応器中で触媒と接触させてエチレンを製造する方法において、反応器にプロピレンを供給し、触媒と接触させてエチレンを生成させる工程(I)と、触媒を再生させる工程(II)と、を有するエチレンの製造方法に関する。また、プロピレンと触媒とを反応器中で接触してエチレンを製造する方法において、水素を含むガスに接触した触媒を用いる、エチレンの製造方法に関する。
従来、主なエチレンの製造方法としては、ナフサを原料とするスチーム分解法が知られている。しかし、ナフサのスチーム分解法では、プロピレンやブテン等のエチレン以外のオレフィンが多量に生成し、また各オレフィンの生成比率を大きく変えることは難しい。そこで、エチレン以外のオレフィンをエチレンに変換する技術が検討されている。特に、副生量の多いプロピレンからエチレンを製造する方法が望まれている。
例えば特許文献1では、エチレン、プロピレン及びブテン等の各種のオレフィンをシリコアルミノリン酸塩と接触させ、別のオレフィンに変換する方法が検討されている。
例えば非特許文献1では、リン修飾MFI型ゼオライト触媒による、プロピレンを原料としたエチレンの製造方法が開示されている。
特開昭60−166639号公報
Catalysis Today,303(2018),86−92
しかしながら、特許文献1の技術は、シリコアルミノリン酸塩SAPO‐34触媒とプロピレンと反応させることで、エチレンを最高8%の収率で製造できるとしているが、触媒の活性低下が大きく、長時間にわたって安定にエチレンを製造することができず、実用に耐えうる製造方法ではない。
また、非特許文献1の技術は、MFI型ゼオライト触媒をリン酸により修飾することにより、プロピレン転化率36%において、エチレン選択率を70C‐mol%程度まで高められるとしているが、非常に低いプロピレン濃度(6.5mol%,窒素希釈)においても、継時的に触媒活性が低下していることが判明した。
本発明は、プロピレンを原料として、エチレンを製造するに際し、エチレン収率の低下を最小限に抑え、長時間にわたって、安定にエチレンを製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、反応器にプロピレンを供給し、触媒と接触させてエチレンを製造する方法において、反応器にプロピレンを供給し、触媒と接触させてエチレンを生成させる工程(I)と、前記工程(I)を経た触媒を再生させる工程(II)を有することにより、長時間にわたって、安定にエチレンを製造することができることを見出し、本発明を達成するに至った。
すなわち本発明の第1の要旨は、以下の通りである。
(A1)反応器にプロピレンを供給し、触媒と接触させてエチレンを生成させる工程(I)と、前記工程(I)を経てプロピレンの転化率が低下した触媒を再生させる工程(II)を有することを特徴とするエチレンの製造方法。
(A2)前記工程(II)において、酸素、水素、及び水蒸気から選択される少なくとも1種を含有するガスにより、前記プロピレンの転化率が低下した触媒を再生する、(A1)に記載のエチレンの製造方法。
(A3)前記工程(II)において、水素を含有するガスにより、前記プロピレンの転化率が低下した触媒を再生する、(A1)又は(A2)に記載のエチレンの製造方法。
(A4)前記工程(II)の温度が300℃以上800℃以下である、(A1)〜(A3)のいずれかに記載のエチレンの製造方法。
(A5)前記工程(II)を経た触媒に蓄積されたコーク量が、触媒質量に対して0.1質量%以上30質量%以下である、(A1)〜(A4)のいずれかに記載のエチレンの製造方法。
(A6)前記触媒が、ゼオライトである、(A1)〜(A5)のいずれかに記載のエチレンの製造方法。
(A7)前記ゼオライトの細孔径が0.5nm未満である、(A6)に記載のエチレンの製造方法。
(A8)前記ゼオライトが、酸素8員環構造を有する、(A6)又は(A7)に記載のエチレンの製造方法。
(A9)前記ゼオライトが、少なくともアルミニウムを含有するアルミノケイ酸塩である、(A6)〜(A8)のいずれかに記載のエチレンの製造方法。
(A10)前記工程(I)におけるプロピレンの転化率が、5%以上80%以下となるように、前記工程(II)を実施する、(A1)〜(A9)のいずれかに記載のエチレンの製造方法。
また、本発明の第2の要旨は以下のとおりである。
(B1)プロピレンと、触媒とを反応器中で接触してエチレンを製造する方法であって、前記触媒が、水素を含むガスに接触した触媒である、エチレンの製造方法。
(B2)前記触媒が、プロピレンとの接触により生成したコークを含む触媒と水素を含むガスとを接触した、触媒である、(B1)に記載のエチレンの製造方法。
(B3)前記触媒と、水素を含むガスとを、300℃以上の温度で接触した触媒である、(B1)又は(B2)に記載のエチレンの製造方法。
(B4)前記触媒が、水素分圧絶対圧で0.001MPa以上の水素を含むガスに接触した触媒である、(B1)〜(B3)のいずれかに記載のエチレンの製造方法。
(B5)前記触媒がゼオライトを含む、(B1)〜(B4)のいずれかに記載のエチレンの製造方法。
(B6)前記ゼオライトが、細孔径0.5nm未満の細孔を有する、(B5)に記載のエチレンの製造方法。
(B7)前記ゼオライトが、酸素8員環構造を有する、(B5)又は(B6)に記載のエチレンの製造方法。
(B8)前記ゼオライトが、少なくともアルミニウムを含有するアルミノケイ酸塩を含む、(B5)〜(B7)のいずれかに記載のエチレンの製造方法。
(B9)プロピレンの転化率が5%以上80%以下となる条件で、プロピレンと、前記触媒とを接触させる、(B1)〜(B8)のいずれかに記載のエチレンの製造方法。
また、本発明の第3の要旨は以下のとおりである。
(C1)炭化水素と触媒とを、原料導入口と生成ガス排出口とを有する反応器中で接触させてエチレンを製造する方法であって、
前記炭化水素が少なくともプロピレン及び炭素数4以上の炭化水素を含み、
前記炭化水素中に含まれる、プロピレンに対する炭素数4以上の炭化水素の質量比が、0.01以上10以下である、エチレンの製造方法。
(C2)前記炭素数4以上の炭化水素は、ブテンを含む、(C1)に記載のエチレンの製造方法。
(C3)前記炭素数4以上の炭化水素に含まれるブテンの割合が、前記炭素数4以上の炭化水素全量に対し10mol%以上である(C2)に記載のエチレンの製造方法。
(C4)前記ブテンは、直鎖ブテンを10mol%以上含む(C2)又は(C3)に記載のエチレンの製造方法。
(C5)前記反応器における反応温度が、300℃以上800℃以下である、(C1)〜(C4)のいずれかに記載のエチレンの製造方法。
(C6)前記反応器の生成ガス排出口から排出される生成ガス中に含まれる炭素数4以上の炭化水素のうち、少なくとも10%を反応器に循環させる、(C1)〜(C5)のいずれかに記載のエチレンの製造方法。
(C7)前記触媒がゼオライトを含む、(C1)〜(C6)のいずれかに記載のエチレンの製造方法。
(C8)前記ゼオライトが、細孔径0.8nm以下の細孔を有する、(C7)に記載のエチレンの製造方法。
(C9)前記ゼオライトが、酸素8員環構造を有する、(C7)又は(C8)に記載のエチレンの製造方法。
(C10)前記ゼオライトが、少なくともアルミニウムを含有するアルミノケイ酸塩を含む、(C7)〜(C9)のいずれかに記載のエチレンの製造方法。
(C11)前記ゼオライトのSiO/Alモル比が、5以上500以下である、(C10)に記載のエチレンの製造方法。
(C12)前記ゼオライトの構造が、International Zeolite Association(IZA)で規定されるコードでCHAである、(C7)〜(C11)のいずれかに記載のエチレンの製造方法。
また、本発明の第4の要旨は以下のとおりである。
(D1)炭化水素と、ゼオライトを活性成分とする触媒と、を原料導入口と生成ガス排出口とを有する反応器中で接触させてエチレンを製造する方法であって、
前記炭化水素が少なくとも炭素数4以上の炭化水素を含み、かつ、
前記ゼオライトが少なくとも酸素8員環構造を有し、全酸量に対する外表面酸量の割合が3%以下である、エチレンの製造方法。
(D2)前記ゼオライトが、少なくともアルミニウムを含有するアルミノケイ酸塩を含む、(D1)に記載のエチレンの製造方法。
(D3)前記ゼオライトのSiO/Alモル比が、5以上500以下である(D1)又は(D2)に記載のエチレンの製造方法。
(D4)前記ゼオライトが、シリル化処理されている、(D1)〜(D3)のいずれかに記載のエチレンの製造方法。
(D5)前記ゼオライトの構造が、International Zeolite Association(IZA)で規定されるコードでCHAである、(D1)〜(D4)のいずれかに記載のエチレンの製造方法。
(D6)前記炭素数4以上の炭化水素として、少なくともブテンを含む、(D1)〜(D5)のいずれかに記載のエチレンの製造方法。
(D7)前記ブテンに含まれる直鎖ブテンの割合が、10mol%以上である、(D6)に記載のエチレンの製造方法。
(D8)前記反応器における反応温度が、300℃以上800℃以下である、(D1)〜(D7)のいずれかに記載のエチレンの製造方法。
(D9)前記反応器の生成ガス排出口から排出される生成ガス中に含まれる炭素数3以上の炭化水素のうち、少なくとも10%を反応器に循環させる、(D1)〜(D8)のいずれかに記載のエチレンの製造方法。
本発明の第1の要旨によれば、反応器にプロピレンを供給し、触媒と接触させてエチレンを製造する方法において、エチレン収率の変動幅を最小限に抑えて、安定にエチレンを製造することができる。
また、本発明の第2の要旨によれば、プロピレンを触媒と接触させてエチレンを製造する方法において、前記触媒が水素を含むガスに接触させた触媒とプロピレンを反応させることにより、高い収率でエチレンを安定に製造することができる。
また、本発明の第3の要旨によれば、反応器にプロピレンを供給し、触媒と接触させてエチレンを製造する方法において、プロピレンとともに炭素数4以上の炭化水素を所定量供給することにより、生成物中のエチレン/プロピレン比率の変動幅を最小限に抑え、安定に高収率でエチレンを製造することができる。
また、本発明の第4の要旨によれば、炭素数4以上の炭化水素を原料としてエチレンを製造するに際し、原料としてのリサイクルに不向きな分岐オレフィンの副生量を増やすことなく、高いエチレン収率でエチレンを製造する方法を提供することができる。
実施例A−1及び比較例A−1により得られた累積時間に対するエチレン収率変化を示すグラフである。 実施例A−2における、反応時間に対するプロピレン転化率の変化、およびプロピレン転化率−エチレン選択率の関係を示すグラフである。 実施例A−3における、累積反応時間に対するエチレンの収率の変化を示すグラフである。 実施例A−4における、反応時間に対するプロピレン転化率およびエチレン選択率の変化をに示すグラフである。 実施例B−1、比較例B−1、B−2のエチレン収率の結果を示すグラフである。
以下に本発明を実施するための代表的な態様を具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の態様に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
本発明の第1の実施形態は、反応器にプロピレンを供給し、触媒と接触させてエチレンを製造する方法において、反応器にプロピレンを供給し、触媒と接触させてエチレンを生成させる工程(I)と、前記工程(I)を経てプロピレンの転化率が低下した触媒を再生させる工程(II)の少なくとも2工程を有するエチレンの製造方法である。
<A1.触媒>
本発明の第1の実施形態で用いる触媒について説明する。本実施形態に係る反応に用いられる触媒としては、ブレンステッド酸点を有する固体状のものであれば特に限定されず、従来公知の触媒が用いられ、例えば、カオリン等の粘土鉱物、酸性型イオン交換樹脂、ゼオライト、メソポーラスシリカアルミナ等の固体酸触媒が挙げられる。第1の実施形態においては、プロピレン転化率が低下した触媒を再生させる工程を導入することにより、プロピレンの転化によって蓄積したコーク成分の量を低減し、エチレンを安定した収率で製造することができる。
これらの固体酸触媒のうちでも、分子篩効果を有するものが好ましく、ゼオライトがより好ましい。なお、上記触媒は公知の触媒を使用することができるが、以下、触媒として好ましい形態であるゼオライトについて詳細に説明する。
ゼオライトとは、四面体構造をもつTO単位(Tは中心原子)がO原子を共有して三次元的に連結し、開かれた規則的なミクロ細孔を形成している結晶性物質を指す。具体的には国際ゼオライト学会(International Zeolite Association;以下これを「IZA」ということがある。)の構造委員会データ集に記載のあるケイ酸塩、リン酸塩、ゲルマニウム塩、ヒ酸塩等が含まれる。
ここで、ケイ酸塩には、例えばアルミノケイ酸塩、ガロケイ酸塩、フェリケイ酸塩、チタノケイ酸塩、ボロケイ酸塩等が含まれる。
リン酸塩には、例えばアルミノリン酸塩、ガロリン酸塩、ベリロリン酸塩等が含まれる。
ゲルマニウム塩には、例えばアルミノゲルマニウム塩等が、ヒ酸塩には、例えばアルミノヒ酸塩等が含まれる。
さらに、アルミノリン酸塩には、例えばT原子をSiで一部置換したシリコアルミノリン酸塩や、Ga、Mg、Mn、Fe、Co、Znなど2価や3価のカチオンを含むものが含まれる。
ゼオライトの平均細孔径は特に限定されず、通常0.80nm以下、好ましくは0.55nm以下、より好ましくは0.50nm以下、さらに好ましくは0.45nm以下、特に好ましくは0.40nm以下であり、通常0.25nm以上、好ましくは0.30nm以上、より好ましくは0.33nm以上であり、さらに好ましくは0.35nm以上である。
ここで、平均細孔径とは、IZAが定める結晶学的なチャネル直径(Crystallographic free diameter of the channels)を示す。平均細孔径が0.55nm以下とは、細孔(チャネル)の形状が真円形の場合は、その平均直径が0.55nm以下であることをさすが、細孔の形状が楕円形の場合は、短径が0.55nm以下であることを意味する。
ゼオライトを用いることにより、プロピレンを原料として、高収率でエチレンを製造することができる。すなわち、平均細孔径が上記範囲であれば、ゼオライト結晶内へのプロピレンの拡散を促進し、かつエチレンをより選択的に生成させることができる。さらに、水素を含むガスとの接触により、触媒に蓄積されたコーク成分の量を適度に低減しつつ、コーク成分の質を改質することができるためのより好ましいと考えられる。
上記の観点から、本実施形態において、ゼオライトは、酸素8員環構造ゼオライトであることが好ましい。
酸素8員環構造ゼオライトとしては、IZAが定める構造コード(Framework Type Code)で、例えば、好ましくはAEI、AFX、CHA、ERI、KFI、LEV、SAS、SAV、SZR、PAU、RHO、LTAなどが挙げられる。
ゼオライトのフレームワーク密度(単位:T/nm)は特に限定されず、通常20.0以下、好ましくは18.0以下、より好ましくは17.0以下、さらに好ましくは16.0以下であり、通常12.0以上、好ましくは14.0以上、より好ましくは14.5以上である。
ここで、フレームワーク密度(単位:T/nm)とは、ゼオライトの単位体積(1nm)当たりに存在するT原子(ゼオライトの骨格を構成する原子のうち、酸素以外の原子)の個数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まる。
これらの観点から、酸素8員環構造ゼオライトは、International Zeolite Association(IZA)がcomposite building unitとして定めるd6rを骨格中に含むゼオライトであることが好ましく、さらに好ましくは、AEI、AFX、CHA、ERI、KFI、LEV、SAVであり、より好ましくはAEI、AFX、CHA、又はERIであり、殊更好ましくはAEI、CHA、又はERIであり、特に好ましくはCHA又はERIであり、最も好ましくは、CHAである。
酸素8員環構造ゼオライトとしては、具体的にはケイ酸塩とリン酸塩が挙げられる。上記のとおり、ケイ酸塩としては、例えば、アルミノケイ酸塩、ガロケイ酸塩、フェリケイ酸塩、チタノケイ酸塩、ボロケイ酸塩等が、リン酸塩としては、アルミニウムと燐からなるアルミノリン酸塩、ケイ素とアルミニウムと燐からなるシリコアルミノリン酸塩等が挙げられる。これらの中で、アルミノケイ酸塩、シリコアルミノリン酸塩が好ましく、アルミノケイ酸塩がより好ましい。
ゼオライトは、通常、そのイオン交換サイトがプロトン(H)のプロトン交換型が用いられるが、その一部がLi、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類金属、Cr、Cu、Ni、Fe、Mo、W、Pt、Re等の遷移金属に交換されていてもよい。なお、この場合、ゼオライトに後述するイオン交換処理を施せばよい。
これらイオン交換サイト以外に、Na、K等のアルカリ金属;Ca、Sr等のアルカリ土類金属;Cr、Cu、Ni、Fe、Mo、W、Pt、Re等の遷移金属に金属担持されていてもよい。ここで、金属担持は、通常、平衡吸着法、蒸発乾固法、ポアフィリング法等の含浸法で行うことができる。
ゼオライトがケイ酸塩の場合、SiO/M(ただし、前記モル比の分母はAl、Ga、BおよびFeの合計量を表す)モル比は通常5以上であり、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上であり、通常100未満、好ましくは80以下、より好ましくは60以下であり、さらに好ましくは40以下である。なお、前記の比率は、ゼオライト中のSi原子が全てSiOとして含まれ、ゼオライト中に含まれる前記MがすべてMとして含まれると仮定して求める値である。SiO/Mモル比が上記範囲にあることで、強酸点及び弱酸点由来の酸量が十分得られ、高いプロピレンの転化活性が得られる。またコーク付着による触媒の失活、ケイ素以外のT原子の骨格からの脱離、酸点当たりの酸強度の低下といった現象を防ぐことができる。本発明のゼオライトのSiO/Mモル比は、通常、ICP元素分析や蛍光X線分析で測定できる。蛍光X線分析は、標準試料中の分析元素の蛍光X線強度と分析元素の原子濃度との検量線を作成し、この検量線により、蛍光X線分析法(XRF)でゼオライト試料中のケイ素原子、アルミニウム、ガリウム、鉄原子の含有量を求めることができる。なお、ホウ素元素の蛍光X線強度は比較的小さいため、ホウ素原子の含有量はICP元素分析で測定することが好ましい。
ゼオライトがリン酸塩の場合、シリコアルミノリン酸塩の(Al+P)/Siモル比あるいは2価の金属をもつメタロアルミノリン酸塩の(Al+P)/M(但し、Mは2価の金属を示す。)モル比は、通常は5以上、好ましくは10以上であり、通常500以下、好ましくは100以下である。なお、2価の金属は、具体的には、Ga、Mg、Mn、Fe、Co又はZnが挙げられる。前記下限以上とすることにより触媒の耐久性の低下を防ぐことができ、また前記上限以下以上とすることにより、触媒活性が低下を防ぐことができる。
本実施形態で用いられるゼオライトの全酸量(以下、全酸量という)は、ゼオライトの結晶細孔内に存在する酸点の量と、ゼオライトの結晶外表面酸点の量(以下、外表面酸量という)の総和である。全酸量は、特に限定されるものではないが、通常0.01mmol/g以上、好ましくは0.1mmol/g以上、より好ましくは0.3mmol/g以上、さらに好ましくは0.5mmol/g以上である。また、通常2.5mmol/g以下、好ましくは1.5mmol/g以下、より好ましくは1.2mmol/g以下、さらに好ましくは0.9mmol/g以下である。全酸量を上記の範囲とすることで、プロピレンの転化活性が担保されるとともに、ゼオライトの細孔内部におけるコーク生成が抑制され、エチレン生成を促進することができる。なお、ここでの全酸量は、アンモニア昇温脱離(NH−TPD)における脱離量から算出される。具体的には、前処理としてゼオライトを真空下500℃で30分間乾燥させた後、前処理したゼオライトを100℃で過剰量のアンモニアと接触させて、ゼオライトにアンモニアを吸着させる。得られたゼオライトを、100℃で真空乾燥、または、100℃で水蒸気と接触させることにより、該ゼオライトから余剰アンモニアを除く。次いでアンモニアの吸着したゼオライトを、ヘリウム雰囲気下、昇温速度10℃/分で加熱して、100−600℃におけるアンモニア脱離量を質量分析法で測定する。ゼオライト当たりのアンモニア脱離量を全酸量とする。但し、本発明における全酸量は、TPDプロファイルをガウス関数によって波形分離し、そのピークトップを240℃以上に有する波形の面積の合計とする。この「240℃」は、ピークトップの位置の判断のみに用いる指標であって、240℃以上の部分の面積を求めるという趣旨ではない。ピークトップが240℃以上の波形である限り、当該「波形の面積」は、240℃以外の部分も含む全面積を求める。240℃以上にピークトップを有する波形が複数ある場合には、それぞれの面積の和とする。なお、本実施形態の全酸量には、ピークトップを240℃未満に有する弱酸点由来の酸量は含めないものとする。これは、TPDプロファイルにおいて、弱酸点由来の吸着と物理吸着との区別が容易ではないためである。
ゼオライトの外表面酸量は、特に限定されるものではないが、通常、ゼオライトの全酸量に対して8%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下、最も好ましくは0%である。外表面酸量が大きすぎる場合には、外表面酸点で起こる副反応によりエチレンの収率が低下する傾向がある。これは、外表面酸点で目的物以外の炭化水素を生成する反応が進行するためと推測される。また、前記ゼオライトの細孔内で生成したエチレンが外表面酸点で更に反応してしまうことも選択率低下の一因であると推測される。
なお、本実施形態で用いられるゼオライトの外表面酸量の値は、国際公開2010/128644号パンフレットに記載の方法で測定することができる。具体的には、前処理としてゼオライトを真空下500℃で1時間乾燥させた後、前処理したゼオライトを150℃でピリジン蒸気と接触させてゼオライトにピリジンを吸着させ、150℃で減圧排気及びヘリウムフローにより該ゼオライトから余剰ピリジンを除いて得られた、ピリジンを吸着したゼオライトの、昇温速度10℃/分の昇温脱離法による150〜800℃におけるゼオライト単位重量当たりのピリジンの脱離量から決定される。
なお、前記ゼオライトの外表面酸量等は、特に限定はされないが、シリル化処理、水蒸気処理、熱処理、酸処理、イオン交換処理等により調整することができる。金属元素の担持処理等の方法が挙げられる。また、ゼオライトを成形する際にバインダーと前記ゼオライトの外表面酸点を結合させる、といった方法が挙げられる。
<シリル化処理>
ゼオライトをシリル化処理する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を適宜用いることができ、具体的には液相シリル化や気相シリル化等を行うことができる。
ゼオライトは、シリル化処理により、通常、外表面の酸点が被覆され、不活性化されることにより、外表面酸量が低下するものと考えられる。外表面酸量が低下すると、前記ゼオライトの外表面で起こる副反応が抑制される。具体的には、プロピレンの転化反応により、ゼオライト細孔内で生成したエチレン、ブテン類等の低級オレフィンがゼオライトの外表面の酸点と接触することで、目的物以外の成分が生成する反応を抑制する効果があると考えられる。また、外表面酸点のシリル化では、前記ゼオライトが有する細孔を構成する酸点にもシリル基が結合するため、外表面開口部の細孔径が僅かに縮小し、結晶外への分子拡散を抑制する効果もあると考えられる。これにより、より大きい分子である炭素数5以上の炭化水素の生成を抑制することができ、エチレンの選択率が向上するものと考える。
以下、シリル化処理を、液相シリル化を例に取り、具体的に説明する。
シリル化剤としては、特に限定されるものではなく、通常はゼオライトの外表面をシリル化することができ、かつゼオライトの細孔内をシリル化することができないものを使用する。具体的には、シリコーン類、クロロシラン類、アルコキシシラン類、シロキサン類、シラザン類などが使用できる。これらのうち、気相シリル化には通常クロロシラン類、液相シリル化には通常アルコキシシラン類が用いられ、より好ましいシリル化剤は、反応性が高く、取り扱いが比較的容易であるという点で、アルコキシシラン類である。
シリコーン類としては、具体的にはジメチルシリコーン、ジエチルシリコーン、フェニルメチルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、エチルハイドロジェンシリコーン、フェニルハイドロジェンシリコーン、メチルエチルシリコーン、フェニルエチルシリコーン、ジフェニルシリコーン、メチルトリフルオロプロピルシリコーン、エチルトリフルオロプロピルシリコーン、テトラクロロフェニルメチルシリコーン、テトラクロロフェニルエチルシリコーン、テトラクロロフェニルハイドロジェンシリコーン、テトラクロロフェニルシリコーン、メチルビニルシリコーン及びエチルビニルシリコーン等が用いられる。
クロロシラン類としては、具体的には、テトラクロロシラン、トリクロロシラン、トリクロロメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、クロロトリメチルシラン、トリクロロエチルシラン、ジクロロジエチルシラン、クロロトリエチルシラン等が用いられる。
アルコキシシラン類としては、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等;の4級アルコキシシラン、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリエトキシエチルシラン等;の3級アルコキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシジエチルシラン等;の2級アルコキシシラン、メトキシトリメチルシラン、メトキシトリエチルシラン、エトキシトリメチルシラン、エトキシトリエチルシラン等;の1級アルコキシシランが用いられる。好ましくは2級以上のアルコキシシランであり、より好ましくは3級以上のアルコキシシランであり、さらに好ましくは4級アルコキシシランである。
シロキサン類としては、具体的には、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ペンタメチルジシロキサン、テトラメチルジシロキサン等が挙げられ、ヘキサメチルジシロキサンが好ましい。
シラザン類としては、具体的には、ヘキサメチルジシラザン、ジプロピルテトラメチルジシラザン、ジフェニルテトラメチルジシラザン、テトラフェニルジメチルジシラザン等が挙げられ、ヘキサメチルジシラザンが好ましい。
前記ゼオライトに対するシリル化剤の量は、特に限定されるものではないが、前記ゼオライト1モルに対して、通常0.001モル以上、好ましくは0.01モル以上、より好ましくは0.1モル以上である。また、通常5モル以下であり、好ましくは3モル以下、より好ましくは1モル以下である。シリル化剤の量を上記の範囲とすることで、外表面酸点のシリル化被覆が効率的に進行し、かつ過度なシリル化被覆による触媒活性低下を抑制できる点で好ましい。なお、上記シリル化剤の量は、シリル化剤に含まれるSi原子のモル数で表すこととし、分子内に複数のSi原子を有するシリル化剤では、そのSi原子の合計のモル数をシリル化剤のモル数として扱うことにする。
液相シリル化を行う場合、溶媒を使用することができ、溶媒としては、特に限定されないが、へキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素や水を使用することができる。また、水溶媒で液相シリル化を行なう場合は、シリル化反応を促進するために、硫酸や硝酸等の酸を添加した酸性水溶液を使用することができる。
液相シリル化を行う場合、前記液相シリル化反応を行なう溶液中のシリル化剤の濃度は、特に限定されるものではないが、通常0.01質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。また、通常80質量%以下であり、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下である。シリル化剤の濃度を上記の範囲とすることで、シリル化剤同士の縮合を抑制し、かつシリル化速度を維持できる点で好ましい。
液相シリル化を行なう場合の前記ゼオライトに対する溶媒の量は、特に制限されるものではないが、前記ゼオライト1gに対して、通常1g以上、好ましくは3g以上、より好ましくは5g以上である。また、通常100g以下、好ましくは80g以下、より好ましくは50g以下である。溶媒の量を上記の範囲とすることで、スラリーの十分な撹拌効率を得るとともに、一定の生産性を確保することができる点で好ましい。
液相シリル化を行う場合、シリル化処理に供するゼオライトに特定の範囲の水分を付与しておいてもよい。前記ゼオライトが含有する水分は、ゼオライトが元々含有しているものであっても、人為的に水分を供給して、特定の範囲に調整してもよい。通常、本実施形態で用いられるゼオライトは水熱合成により得られたものを焼成し、さらに必要に応じてアンモニウム型へ変換してから焼成することによりプロトン型に変換したものを使用する。したがって、通常シリル化処理前のゼオライトの水分含有量は、通常非常に少ないと想定され、そのままシリル化処理に供してもよいし、ゼオライトに特定の水分含有量となるように水分を供給し、水分含有量を調整して使用してもよい(以下、調湿処理ということがある)。
前記水分含有量は、特に制限されるものではないが、ゼオライト中に含まれる水分重量を乾燥ゼオライトの重量に対する質量%で表し、通常30質量%以下、好ましくは25質量%以下であり、下限としては完全乾燥状態の0質量%である。水分含有量を上記の範囲とすることで、外表面酸点のシリル化被覆が効率的に進行し、かつ過度なシリル化による細孔閉塞を防ぐことができる点で好ましい。
前記調湿処理方法は、所定の水分量に調整することができれば、特に限定されるものではない。例えば、ゼオライトを適当な相対湿度を有する大気中に放置する方法、ゼオライトを、密閉容器(デシケーター等)中に、水または無機塩の飽和水溶液とともに共存させ、飽和水蒸気雰囲気下で放置する方法、ゼオライトに、適当な水蒸気圧のガスを流通させる方法等が挙げられる。なお、前記の方法においては、より均一な調湿を行うために、ゼオライトを混合または攪拌しながら調湿処理を行ってもよい。
シリル化処理をする温度は、使用するシリル化剤や溶媒の種類により適宜調整され、特に限定されるものではないが、通常20℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上である。また、通常140℃以下、好ましくは120℃以下であり、より好ましくは100℃以下である。シリル化処理温度を上記の範囲とすることで、外表面酸点のシリル化被覆が効率的に進行し、かつシリル化速度を維持できる点で好ましい。
シリル化剤を添加してからシリル化温度まで昇温するのに要する時間は、特に限定されるものではなく、シリル化温度にてシリル化剤を添加してもよいが、通常0.01時間以上、好ましくは0.05時間以上、より好ましくは0.1時間以上であり、昇温に要する時間の上限は特にない。シリル化温度が高い場合、昇温に要する時間を上記の範囲とすることで、溶液中のシリル化剤の加水分解及び重合反応が抑制され、前記ゼオライトのシリル化が効率的に進行する点で好ましい。
シリル化の処理時間は、反応温度にもよるが、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上であり、より好ましくは1時間以上であり、触媒の性能を阻害しない限りにおいて処理時間の上限は特にない。処理時間を上記の範囲とすることで、前記ゼオライトの外表面酸点のシリル化被覆が進行し、外表面酸量が十分に減少する点で好ましい。
<水蒸気処理>
水蒸気処理方法は、特に限定されるものではないが、本発明の効果を損なわない範囲において水蒸気を含む気体に接触させることができる。具体的には水蒸気、空気又は不活性ガスで希釈した水蒸気、エチレンやプロピレン等の低級オレフィンとともに水蒸気を含む反応雰囲気、または水蒸気を生成する反応雰囲気等に接触させる方法などが挙げられる。水蒸気を生成する反応とは、アルコールの脱水反応のように脱水が起こって水蒸気を生成する反応のことである。なお、条件によって水蒸気が部分的に液体の水として存在しても構わないが、前記ゼオライトに一様な水蒸気処理効果を与えるために、全体が水蒸気の状態で存在していることが好ましい。
前記ゼオライトは水蒸気処理により、その骨格を形成するケイ素以外のT原子の骨格からの脱離が結晶全体で起こるため、前記の外表面酸量だけでなく、前記全酸量も減少すると考えられる。この全酸量の減少により、ゼオライトの細孔内部におけるコーク生成が抑制され、分子の結晶内拡散性が向上する。このため、反応原料であるプロピレンの反応性が相対的に上昇するものと推測される。なお、過度な水蒸気処理を行うと、全酸量の低下に伴う活性低下、及び、分子の結晶内拡散性の過度な上昇により、ブテンやペンテン、ヘキセン等の炭素数4以上の炭化水素分子の生成量が増加する傾向がある。
水蒸気処理温度は、特に限定されるものではないが、通常400℃以上であり、好ましくは500℃以上、より好ましくは600℃以上である。また通常1000℃以下であり、好ましくは900℃以下、より好ましくは800℃以下である。水蒸気処理温度を上記の範囲とすることで、骨格構造の崩壊を起こさずに、短い処理時間で効率的にケイ素以外のT原子を骨格から除去することができる点で好ましい。
水蒸気処理に用いる水蒸気(スチーム)は、空気や、ヘリウム、窒素等の不活性ガスで希釈して使用することができる。その際の水蒸気濃度は、特に限定されるものではないが、前記ゼオライトを水蒸気処理する際に用いる気体全体に対して通常5体積%以上、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上であり、さらに好ましくは30体積%以上であり、通常100体積%以下、好ましくは90体積%以下、より好ましくは80体積%以下、さらに好ましくは70体積%以下である。上限は特に制限されず、100体積%の水蒸気を用いることができる。水蒸気濃度を上記範囲にすることで、短い処理時間で効率的に前記T原子を骨格から除去することができる点で好ましい。
水蒸気処理の圧力(希釈ガスを含む全圧)は特に制限されるものではないが、通常0.05MPa以上(絶対圧、以下同様)、好ましくは0.075MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上であり、通常2MPa以下、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.5MPa以下である。水蒸気処理の圧力を上記圧力範囲にすることで、短時間で効率的に前記T原子を骨格から除去することができる点で好ましい。
水蒸気の分圧は特に制限されるものではないが、通常0.01MPa以上(絶対圧、以下同様)、好ましくは0.03MPa以上、より好ましくは0.05MPa以上であり、通常2MPa以下、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.5MPa以下、さらに好ましくは0.2MPa以下である。水蒸気の分圧を上記圧力範囲にすることで、短時間で効率的に前記T原子を骨格から除去することができる点で好ましい。
水蒸気処理時間は、特に限定されるものではないが、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上であり、より好ましくは1時間以上である。また触媒活性を著しく阻害しない限りにおいては処理時間の上限はない。水蒸気処理温度及び水蒸気濃度により、処理時間は適宜調整することができる。
水蒸気処理は、その細孔内部に有機物が存在している状態で行ってもよい。有機物が細孔内部に存在することで、特に強い水蒸気処理を行なった場合に、細孔内部の酸点の極端な減少を防ぎつつ、外表面酸点の大幅な減少をはかることができる。
前記有機物としては、特に限定されないが、ゼオライトの水熱合成時に使用する構造規定剤、及び反応によって生成するコーク等が挙げられる。これら有機物は、水熱合成後のゼオライト(以下、焼成前ゼオライトということがある)に水蒸気処理を行った後、空気焼成等の燃焼工程を経て除去することもでき、または空気等の酸素含有ガスで希釈した水蒸気で処理することにより、有機物を除去しながら水蒸気処理することもできる。
<熱処理>
熱処理する方法は、特に限定されるものではないが、具体的には、前記ゼオライトを、空気及び不活性ガスから選ばれる少なくとも1つの雰囲気下で高温処理する方法などが挙げられる。これにより、ゼオライトの全酸量を減少させることができる。
熱処理温度は特に限定されるものではないが、通常500℃以上、好ましくは600℃以上、より好ましくは700℃以上であり、通常1200℃以下、好ましくは1000℃以下、より好ましくは900℃以下である。熱処理温度を上記の範囲とすることで、骨格構造の崩壊を起こさずに、短い処理時間で効率的に前記T原子を骨格から除去することができる点で好ましい。
熱処理の際に使用するガス種としては、ヘリウム、窒素、空気等を使用することができる。
熱処理も水蒸気処理同様に、細孔内部に有機物が存在している状態で行ってもよい。ヘリウムや窒素等の不活性ガスを用いた場合、熱処理により有機物が炭化する場合があるが、空気での焼成により、除去することができる。
なお、熱処理は上記のゼオライトを製造する際に行われる焼成と同時に行っても別個に分けて行ってもよい。熱処理は骨格内の前記T原子の脱離等を目的とするため比較的高温で行われ、特に限定はされないが、具体的には、上記の焼成と熱処理を別個に行なう場合であれば、熱処理は、通常、焼成よりも高い温度で行なわれる。
熱処理の時間は、特に限定されるものではないが、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1.0時間以上である。また触媒活性を著しく阻害しない限りにおいては処理時間の上限はなく、熱処理温度により、処理時間は適宜調整することができる。
<酸処理>
本実施形態で用いられるゼオライトの酸処理の方法は、特に限定されるものではないが、具体的には、酸性水溶液を用いる方法が挙げられる。
前記酸性水溶液に用いる酸の種類としては、特に限定されるものではないが、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸、シュウ酸、マロン酸などのジカルボン酸などを使用することができる。これらのうち好ましいのは、硫酸、硝酸、塩酸である。
前記酸性水溶液の酸の濃度としては、特に限定されるものではないが、通常0.01M以上、好ましくは0.1M以上、より好ましくは1M以上であり、通常10M以下であり、好ましくは8M以下であり、より好ましくは6M以下である。酸の濃度を上記の範囲とすることで、骨格構造の崩壊を起こさずに、短い処理時間で効率的に全酸量を低減することができる点で好ましい。
ゼオライトに対する酸性水溶液の量としては、特に制限されるものではないが、ゼオライト1gに対して、酸性水溶液の総量で通常3g以上、好ましくは5g以上、より好ましくは10g以上であり、通常100g以下、好ましくは80g以下、より好ましくは50g以下である。酸性水溶液の量を上記の範囲とすることで、スラリーの十分な撹拌効率を得るとともに、一定の生産性を確保することができる点で好ましい。
酸処理の温度としては、特に限定されるものではないが、常圧においては通常室温から100℃、耐圧容器内では100℃以上で行うことも可能であり、通常40℃以上、好ましく60℃以上、より好ましくは80℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下である。酸処理の温度を上記の範囲とすることで、骨格構造の崩壊を抑制しながら、短い処理時間で効率的に全酸量を低減することができる点で好ましい。
酸処理の処理時間は、特に限定されるものではなく、酸の濃度や反応温度にもよるが、通常0.01時間以上、好ましくは0.1時間以上であり、触媒の性能を阻害しない限りにおいて処理時間の上限は特にない。酸の濃度や反応温度により、処理時間は適宜調整することができる。
酸性水溶液中に、シリル化剤を添加することにより、酸処理とシリル化処理を同時に行うこともできる。その際に用いるシリル化剤は、前記シリル化剤と同じである。
<イオン交換処理>
ゼオライトのカウンターカチオンは、通常、ナトリウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム(NH)あるいはプロトン(H)である。これらのカウンターカチオンはイオン交換可能であり、適宜、金属イオン交換して使用することができる。交換する金属としては、特に限定されるものではないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属が挙げられる。好ましくはナトリウム、カリウム、カルシウム、ストロンチウムであり、より好ましくはナトリウム、カリウム、カルシウムであり、さらに好ましくはカルシウムである。
イオン交換することで、ゼオライトの酸量を調整することができ、さらには、ケージ空間容積を調整することができるため、反応時のコーク蓄積を抑制することができる。また熱的/水熱的安定性が高くなり劣化を抑制することができる点でも好ましい。金属イオン交換の方法は、特に限定されるものではないが、既知のイオン交換法によって行うことができる。イオン交換法に用いる際の、ゼオライトのカチオンは特に限定されず、通常、ナトリウム型、アンモニウム型、あるいはプロトン型が用いられる。
金属源としては、通常、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩等が用いられ、好ましくは硝酸塩、硫酸塩、塩化物塩であり、より好ましくは硝酸塩である。用いる溶媒としては、金属源が溶解するものであれば、特に限定されるものではないが、通常、水が用いられる。
金属源溶液の濃度は、特に限定されるものではないが、通常0.1M以上、好ましくは0.5M以上、より好ましくは1M以上であり、また上限は、通常10M以下、好ましくは8M以下、より好ましくは6M以下である。金属源の溶解度見合いで濃度を調整することが望ましい。
イオン交換を行う温度は、室温から溶媒の沸点程度である。処理時間は、イオン交換が十分平衡に達する時間であればよく、通常1〜6時間程度である。金属の交換率を高めるため、イオン交換を複数回繰り返すことも可能である。
イオン交換後のゼオライトを乾燥する際の雰囲気は特に限定されず、例えば空気中、不活性ガス中、真空中などで行われる。乾燥温度は、通常、室温から溶媒の沸点程度である。イオン交換後のゼオライトは、適宜焼成を行って使用する。焼成温度は金属源の分解温度よりも高温であればよく、通常200℃〜600℃、好ましくは300℃〜500℃である。焼成温度が低すぎると金属源が残留しやすく、焼成温度が高すぎるとゼオライトの構造崩壊や、金属のシンタリングが進行し易くなる。
また、上記以外にも、金属元素の担持処理、又はゼオライトを成形する際にバインダーと前記ゼオライトの外表面酸点を結合させる、といった方法により外表面酸量を調整することもできる。
本実施形態で用いられるゼオライトの平均一次粒子径は、特に限定されるものではないが、通常0.01μm以上、好ましくは0.03μm以上、より好ましくは0.05μm以上であり、通常10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下、特に好ましくは0.3μm以下である。上記範囲とすることで、触媒反応におけるゼオライト結晶内の拡散性及び触媒有効係数が十分高くなり、ゼオライト結晶性が十分なものとなり、耐水熱安定性が高い点で好ましい。
なお、本明細書における平均一次粒子径とは、一次粒子の粒子径に相当する。したがって、光散乱法などで測定される凝集体の粒子径とは異なる。平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(以降、「SEM」と略記する。)又は透過型電子顕微鏡(以降、「TEM」と略記する。)による粒子の観察において、粒子を任意に20個以上測定し、その一次粒子の粒子径を平均して求められる。該粒子が長方形の場合、該粒子の長辺・短辺を計測して(奥行は計測せず)、その和の平均、つまり(長辺+短辺)÷2を算出して、該粒子の一次粒子径とする。
(BET比表面積)
本実施形態で用いられるゼオライトのBET比表面積は、特に限定されるものではないが、通常300m/g以上、好ましくは400m/g以上、より好ましくは500m/g以上であり、通常1000m/g以下、好ましくは800m/g以下、より好ましくは750m/g以下である。上記範囲にあることで、細孔内表面に存在する活性点が十分多く、触媒活性が高くなるため好ましい。なお、BET比表面積は、JIS8830(ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法)に準じた測定方法によって測定できる。吸着ガスとして窒素を使用し、1点法(相対圧:p/p0=0.30)でBET比表面積を求められる。
本実施形態で用いられるゼオライトの細孔容積は、特に限定されるものではないが、通常0.1ml/g以上、好ましくは0.2ml/g以上であり、通常3ml/g以下、好ましくは2ml/g以下である。上記範囲にあることで、細孔内表面に存在する活性点が十分多く、触媒活性が高くなるため好ましい。細孔容積は相対圧法により得られる窒素の吸着等温線から求める値であることが好ましい。
本実施形態で用いられるゼオライトは、一般的に水熱合成法により調製することが可能である。例えば、ケイ酸塩であれば、水にアルミニウム源、ガリウム源、ホウ素源、及び鉄源から選ばれる少なくとも1種類と、ケイ素源やアルカリ水溶液等を加えて均一なゲルを生成させ、これに必要に応じて構造規定剤を加えて攪拌し、原料ゲルを調製する。得られた前記原料ゲルを、密閉容器中で加熱し、自圧下反応させることにより、結晶化させる。このときの反応温度は特に限定されないが、通常100〜200℃に保持して結晶化させる。結晶化の際に、必要に応じて種結晶を添加してもよく、製造性の面では種結晶を添加する方が、反応時間を短縮できる点や結晶粒子を微粒子化できる点で好ましい。次いで結晶化した固形成分を濾過および洗浄した後、固形分を乾燥し、引き続き焼成することによって、アルカリ(土類)金属型のゼオライトとして得ることができる。前記の乾燥温度は限定されないが、通常100〜200℃である。また前記の焼成温度は限定されないが、通常400〜700℃である。その後、酸性溶液やアンモニウム塩溶液でイオン交換し、焼成することにより、H型のゼオライトを得ることができる。
具体的に、CHA型ゼオライトとしては、米国特許第4544538号公報に記載の方法等の公知の方法で製造することができる。また、ERI型ゼオライトとしては、米国特許第7344694号公報に記載の方法等の公知の方法で製造することができる。
前記構造規定剤として用いられるカチオンは、本実施形態のゼオライトの形成を阻害しないアニオンを伴うものである。前記アニオンは、特に限定はされないが、具体的には、Cl、Br、Iなどのハロゲンイオンや水酸化物イオン、酢酸塩、硫酸塩、カルボン酸塩が含まれる。中でも、水酸化物イオンは特に好適に用いられる。
また、構造規定剤として、リン含有系構造規定剤又は窒素系構造規定剤を使用することもできる。リン含有系構造規定剤としては、例えばテトラエチルホスホニウム水酸化物、テトラエチルホスホニウムブロミドのような物質が挙げられる。しかし、リン化合物は、合成ゼオライトから焼成により構造規定剤を除去する際に、有害物質である五酸化二リン等を発生する可能性があるため、好ましくは窒素系構造規定剤である。
水熱合成及び焼成後、得られたゼオライトに適宜、上述したような、シリル化処理、水蒸気処理、熱処理、酸処理及びイオン交換から選ばれる少なくとも1つの処理を施すことが好ましい。このうち、好ましくはシリル化処理、水蒸気処理、熱処理、イオン交換から選ばれる少なくとも1つの処理を施したものであり、より好ましくはシリル化処理、水蒸気処理、イオン交換から選ばれる少なくとも1つの処理を施したものであり、さらに好ましくはシリル化処理、水蒸気処理から選ばれる少なくとも1つの処理を施したものであり、特に好ましくはシリル化処理を施したものである。
ゼオライトは触媒活性成分であるために、ゼオライトをそのままゼオライト触媒として反応に用いてよいし、反応に不活性な物質やバインダーを用いて、造粒・成型して、或いはこれらを混合して反応に用いてもよい。
該反応に不活性な物質やバインダーとしては、アルミナまたはアルミナゾル、シリカ、シリカゾル、石英、およびこれらの混合物等が挙げられる。
ゼオライト触媒全体の全酸量及び外表面酸量は、上述のゼオライトの全酸量及び外表面酸量と同様の方法にて測定することができる。ゼオライト触媒の全酸量は、特に限定されるものではないが、通常0.01mmol/g以上、好ましくは0.1mmol/g以上、より好ましくは0.3mmol/g以上、さらに好ましくは0.5mmol/g以上である。また、通常2.5mmol/g以下、好ましくは1.5mmol/g以下、より好ましくは1.2mmol/g以下、さらに好ましくは0.9mmol/g以下である。ゼオライト触媒の全酸量を上記の範囲とすることで、プロピレンの転化活性が担保されるとともに、ゼオライトの細孔内部におけるコーク生成が抑制され、エチレンの生成を促進することができる点で好ましい。
ゼオライト触媒の外表面酸量は、特に限定されるものではないが、通常、触媒の全酸量に対して8%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下、最も好ましくは0%である。外表面酸量が大きすぎる場合には、外表面酸点で起こる副反応によりエチレンの選択率が著しく低下する傾向がある。
なお、ゼオライト触媒の全酸量及び外表面酸量を調整するには、酸点を有さないシリカやアルミナ等バインダーとして用いることが好ましい。なお、アルミナ等の、酸点を有するバインダーを使用した場合には、触媒の全酸量及び外表面酸量の測定方法では、ゼオライトの酸量と共にバインダーの酸量も含んだ合計値として測定される。その場合はバインダー由来の酸量を別法により求め、触媒の酸量からその値を差し引くことによって、バインダー由来の酸量を含まないゼオライトのみの酸量を求めることが可能である。前記バインダーの酸量は、27Al−NMRにおいてゼオライトの酸点に由来する4配位Alのピーク強度からゼオライトの酸量を求め、アンモニア昇温脱離法により求まる触媒の酸量からその値を差し引く方法で求められる。
ゼオライト触媒に含有されるリン化合物の量としては、特に限定されるものではないが、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0.01質量%以下である。なお、ここでのリン化合物とは、リン酸化物等の物質を指し、アルミノリン酸塩やガロリン酸塩等のゼオライト自体そのものを意味するものではない。
ゼオライト触媒の平均粒子径は、ゼオライトの合成条件、特には造粒・成型条件により異なるが、通常、平均粒子径として、通常0.01μm〜500μmであり、好ましくは0.1〜100μmである。ゼオライト触媒の平均粒子径が大きくなり過ぎると、触媒の有効係数が低下する傾向があり、小さすぎると取り扱い性が劣るものとなる。この平均粒子径は、SEM観察等により求めることができる。
<A2.エチレンの製造方法>
エチレンの製造方法は、触媒と接触させてエチレンを生成させる工程(I)と、工程(I)を経た触媒を再生させる工程(II)と、を有する。以下に各工程について詳細に説明する。
<A2−1.工程(I)>
上述の通り、プロピレンを、ゼオライトなどの触媒と接触させることで、エチレンを生成することができる。
原料であるプロピレンの製造由来は特に限定されない。例えば、スチーム分解法または接触分解法によりナフサの分解により得られるもの(以下、ナフサ分解物という)、エタン、プロパン、n‐ブタン、常圧軽油(AGO)、減圧軽油(VGO)、天然ガス液(NGL)等の熱分解により製造されるもの(以下、熱分解物という)、減圧軽油や残油の流動接触分解法(FCC)により製造されるもの、MTO(Methanol to Olefin)反応により製造されるもの、ETO(Ethylene/Ethanol to Olefin)反応により製造されるもの、プロパン等のアルカンの脱水素反応により製造されるもの、石炭のガス化により得られる水素/一酸化炭素混合ガスを原料としてフィッシャートロプシュ合成を行うことにより製造されるもの等が挙げられる。このうち上記ナフサ分解物および上記熱分解物が好ましく、ナフサ分解物がより好ましい。
なお、原料は、プロピレンに加えて、プロピレン以外の炭化水素(以下、「その他の炭化水素」ということがある。)を含有していてもよい。すなわち、プロピレンを含む原料であればよい。プロピレン以外の化合物としては、例えばエチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン等の、プロピレン以外のオレフィン類;メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等のパラフィン類;アセチレン、メチルアセチレン等のアルキン類;プロパジエン、ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン等のジエン類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を含んでいてもよい。上記のオレフィン類、パラフィン類、アルキン類、ジエン類は、直鎖状構造でも環状構造でもよく、また分岐状の異性体を任意の比率で含んでいてもよい。また、プロピレン以外に、メタノールやジメチルエーテルを含んでいても良く、その混合割合に制限はない。
通常、プロピレンからのエチレン製造において、目的生成物であるエチレンは、触媒との接触によりブテンやヘキセン等の別のオレフィンに変換されやすいため、エチレンを分離した状態のプロピレンを原料として用いることが好ましい。原料中に含まれるエチレンに対するプロピレンの質量比は、特に限定されるものではないが、通常1以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上であり、特に好ましくは30以上であり、大きければ大きいほどよい。
また、ブテン以上の炭素数の多いオレフィン類は、同一の触媒との接触により、一部エチレンに変換され、エチレン収率を向上させることができるため、原料中にプロピレンとともに含まれていてもよく、本反応により生成したブテンをリサイクルして利用することができる。原料中に含まれるブテンに対するプロピレンの質量比は、特に限定されるものではないが、通常1以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上であり、通常1000以下、好ましくは100以下、より好ましくは50以下である。
エチレン製造に使用する反応器としては、プロピレン供給原料が反応域において気相であれば特に限定されないが、固定床反応器、移動床反応器や流動床反応器が選ばれる。プロピレン転化率の変動が大きい場合には、一定のエチレン収率で製造するために、流動床反応器が好ましい。
また、バッチ式、半連続式または連続式のいずれの形態でも行われ得るが、連続式で行うのが好ましく、その方法は、単一の反応器を用いた方法でもよいし、直列または並列に配置された複数の反応器を用いた方法でもよい。
なお、流動床反応器に前述の触媒を充填する際、触媒層の温度分布を小さく抑えるために、石英砂、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ等の反応に不活性な粒状物を、触媒と混合して充填してもよい。この場合、石英砂等の反応に不活性な粒状物の使用量には特に限定されない。なお、粒状物は、触媒との均一混合性の面から、触媒と同程度の粒径であることが好ましい。
また、反応器には、反応に伴う発熱を分散させることを目的に、反応基質(反応原料)を分割して供給してもよい。
(基質濃度)
反応器に供給する全供給成分中の、プロピレンの濃度は特に制限されないが、全供給成分中、通常3モル%以上、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、さら好ましくは20モル%以上であり、通常100モル%以下、好ましくは80モル%以下、より好ましくは60モル%以下、さらに好ましくは40モル%以下である。基質濃度を上記範囲にすることで、芳香族化合物やパラフィン類の生成を抑制することができ、エチレン収率を向上させることができる。また反応速度を維持できるため、触媒量を抑制することができ、反応器の大きさも抑制可能となる。
従って、このような好ましい基質濃度となるように、必要に応じて以下に記載する希釈剤で反応基質を希釈することが好ましい。
(希釈剤)
反応器内には、プロピレンを含む原料の他に、ヘリウム、アルゴン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、水、パラフィン類、メタン等の炭化水素類、芳香族化合物類、および、それらの混合物などを存在させることができるが、この中でも水素、ヘリウム、窒素、水(水蒸気)が共存しているのが好ましく、エチレン収率を高められる点で、水素が共存していることが最も好ましい。このような希釈剤は、反応原料に含まれている不純物をそのまま希釈剤として使用してもよいし、別途調製した希釈剤を反応原料と混合して用いてもよい。また、希釈剤は反応器に入れる前に反応原料と混合してもよいし、反応原料とは別に反応器に供給してもよい。
(重量空間速度)
ここで言う重量空間速度とは、触媒(触媒活性成分)の重量当たりの反応原料であるプロピレンの流量(重量/時間)であり、ここで触媒の重量とは触媒の造粒・成形に使用する不活性成分やバインダーを含まない触媒活性成分の重量である。
重量空間速度は、特に限定されるものではないが、通常0.01Hr−1以上、好ましくは0.1Hr−1以上、より好ましくは0.2Hr−1以上、さらに好ましくは0.5Hr−1以上であり、通常50Hr−1以下、好ましくは10Hr−1以下、より好ましくは5Hr−1以下、さらに好ましくは3Hr−1以下である。重量空間速度を前記範囲に設定することで、反応器出口ガス中の未反応のプロピレンの割合を減らすことができ、芳香族化合物やパラフィン類等の副生成物を減らすことができるため、エチレン収率を向上させることができる点で好ましい。また、一定の生産量を得るのに必要な触媒量を抑えることができ、反応器の大きさを抑えられるため好ましい。
(反応温度)
反応温度は、プロピレンが触媒と接触してエチレンを生成する温度であれば、特に制限されるものではないが、通常300℃以上、好ましくは400℃以上、より好ましくは425℃以上、さらに好ましくは450℃以上、特に好ましくは475℃以上、最も好ましくは500℃以上であり、通常800℃以下、好ましくは700℃以下、より好ましくは650℃以下、さらに好ましくは600℃以下である。反応温度を上記範囲にすることで、芳香族化合物やパラフィン類の生成を抑制することができるため、ワンパスのエチレンの収率を向上させることができる。また、プロピレンの転化活性を高いレベルで維持することができ、さらに反応ガス中にプロピレンとともに水素を含む場合、その接触効果を最大限に高めることができるため、長時間にわたって高いエチレン収率で製造することができる。さらに、ゼオライトがケイ酸塩の場合、ゼオライト骨格からの脱アルミニウムが抑制されるため、触媒寿命を維持できる点で好ましい。なお、ここでの反応温度とは、触媒層出口の温度をさす。
(反応圧力)
反応圧力(全圧)は特に制限されるものではないが、通常0.01MPa(絶対圧、以下同様)以上、好ましくは0.05MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上、さらに好ましくは0.2MPa以上であり、通常5MPa以下、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.7MPa以下、さらに好ましくは0.4MPa以下である。反応圧力を上記範囲にすることで芳香族化合物やパラフィン類等の副生成物の生成を抑制することができ、エチレンの収率を向上させることができる。また反応速度も維持できる。
(プロピレン分圧)
プロピレンの分圧は特に制限されるものではないが、通常0.001MPa以上(絶対圧、以下同様)、好ましくは0.005MPa以上、より好ましくは0.0075MPa以上、さらに好ましくは0.010MPa以上、特に好ましくは0.015MPa以上、最も好ましくは0.020MPa以上であり、通常1MPa以下、好ましくは0.5MPa以下、より好ましくは0.2MPa以下、さらに好ましくは0.1MPa以下である。原料の分圧を上記範囲にすることでコーキングを抑制することができ、エチレンの収率を向上させることができる。
(コーク成分)
プロピレンの転化によって、その一部が結晶の内部/外表面に、再生処理による除去が必要なコーク(多環芳香族などの重質成分)として蓄積し、触媒活性が低下する傾向がある。そのため、前記のコークの含有量(コーク含有量)としては、適度な触媒活性と高いエチレン選択率を得るためには、活性成分である触媒に対して、通常30質量%以下であり、20質量%以下に保つことが好ましく、15質量%以下に保つことがより好ましく、また通常0.1質量%以上であり、1.0質量%以上に保つことが好ましく、3.0質量%以上に保つことがより好ましく、5.0質量%以上に保つことがさらに好ましい。触媒中コーク含有量が上記下限値以上であれば、触媒内の分子拡散を抑制することができ、炭素数4以上のオレフィンからのエチレンへのクラッキングを促進することができ、エチレン製造の際に、エチレン選択率を高く維持することができるため、触媒は上記下限値以上のコーク含有量を維持することが好ましい。一方、触媒に蓄積されたコーク量が上記上限値以上になると触媒活性が低下する傾向がある。したがって、後述の再生方法により、触媒に蓄積されたコーク量を上記の範囲内となるよう、再生条件を調整することが好ましい。
なお、本実施形態において触媒に蓄積されたコーク量とは、プロピレンの転化反応によりコークが蓄積した触媒を、ヘリウム等の不活性ガス流通下(50cc/min)、550℃まで昇温速度10℃/分で加熱し、30分間保持することで、吸着水及び軽沸炭化水素成分を除去し、続いて、空気流通に切り替え(50cc/min)、600℃まで昇温速度10℃/分で加熱し、60分間保持し、このときの550℃以上の温度領域での酸化燃焼による重量減少を求めることで算出することができる。
(転化率)
本実施形態において、プロピレンの転化率は特に制限されるものではないが、通常転化率は5%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上であり、通常100%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは60%以下、さらに好ましくは50%以下である。本実施形態では、プロピレンの転化率が上記範囲になるように調整することで、ブテン類や芳香族化合物やパラフィン類の副生、および細孔内へのコークの蓄積を抑制することができ、エチレンの収率を向上させることができる。また、生成物中からのエチレンやプロピレン等の成分の分離効率を高めることができる。すなわち、本実施形態においては、プロピレンの転化率が上述の範囲となるように、触媒に再生工程を施すことが好ましい。
通常、反応時間の経過とともにコークの蓄積が進行し、プロピレンの転化率は、低下する傾向にあるため、後述の通り、触媒に蓄積されたコーク量が増加した段階で、該触媒を再生工程に供することが好ましい。また、上記の転化率の範囲で運転する方法としては、特に制限されない。
(収率)
本実施形態において、エチレンの収率は特に制限されるものではないが、通常収率は5%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上であり、通常100%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは60%以下である。エチレンの収率が上記範囲にあることで、反応器出口における目的生成物の割合が十分なものとなり、原料コスト及び分離・精製の負荷を低減することができる点で好ましい。
副生物であるブテン類の収率としては特に制限されるものではないが、通常50%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下、特に好ましくは5%以下、少なければ少ないほどよい。ブテン類の収率が上記範囲にあることで、ブテン成分の分離及びリサイクル負荷を低減することができる点で好ましい。
転化率は次の式により算出される値である。
プロピレン転化率(%)=〔[反応器入口プロピレン(mol/Hr)−反応器出口プロピレン(mol/Hr)]/反応器入口プロピレン(mol/Hr)〕×100
本明細書における選択率とは、以下の各式により算出される値である。下記の各式において、エチレン、ブテン、C5+、パラフィンおよび芳香族化合物等の炭化水素の「由来カーボン流量(mol/Hr)」とは、各炭化水素を構成する炭素原子のモル流量を意味する。尚、パラフィンは炭素数1から4のパラフィンの合計、芳香族化合物はベンゼン、トルエン、キシレンの合計、C5+は前記芳香族化合物を除いた炭素数5以上の炭化水素の合計である。
・エチレン選択率(%)=〔反応器出口エチレン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[反応器出口総カーボンモル流量(mol/Hr)−反応器出口プロピレン由来カーボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
・ブテン選択率(%)=〔反応器出口ブテン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[反応器出口総カーボンモル流量(mol/Hr)−反応器出口プロピレン由来カーボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
・C5+選択率(%)=〔反応器出口C5+由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[反応器出口総カーボンモル流量(mol/Hr)−反応器出口プロピレン由来カーボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
・パラフィン選択率(%)=〔反応器出口パラフィン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[反応器出口総カーボンモル流量(mol/Hr)−反応器出口プロピレン由来カーボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
・芳香族化合物選択率(%)=〔反応器出口芳香族化合物由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[反応器出口総カーボンモル流量(mol/Hr)−反応器出口プロピレン由来カーボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
なお、本明細書における収率とは、前記原料転化率と、生成した各成分の選択率の積により求められ、具体的にエチレン収率、ブテン収率は、それぞれ次の式で表される。
・エチレン収率(%)=プロピレン転化率(%)×エチレン選択率(%)/100
・ブテン収率(%)=プロピレン転化率(%)×ブテン選択率(%)/100
(反応生成物)
反応器出口ガス(反応器流出物)としては、反応生成物であるエチレン、原料であるプロピレン、副生物であるブテン類、パラフィン、芳香族化合物、及び希釈剤を含む混合ガスが得られる。前記混合ガス中のエチレンの濃度は、特に限定されないが、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、通常95質量%以下、好ましくは90質量%以下である。
反応条件によっては反応生成物中に未反応原料としてプロピレンが含まれるが、エチレンの選択率が低い場合、すなわち、副生物の選択率が高い場合には、原料ロスにつながり、製造コストが高くなるため、プロピレンの転化率を下げた条件でも、エチレンの選択率が高くなる条件で運転することが好ましいケースもある。本実施形態では、所望により、エチレン以外の成分を分離・回収してもよい。所望の成分を分離・回収した残分には、軽質パラフィン、軽質オレフィン、芳香族化合物等を含む。この残分の少なくとも一部を、前述した原料ガスの一部に混合して、いわゆるリサイクルガスとして用いることができる。
(生成物の分離)
反応器出口ガスとしての、反応生成物であるエチレン、未反応原料、副生成物及び希釈剤を含む混合ガスは、公知の分離・精製設備に導入し、それぞれの成分に応じて回収、精製、リサイクル、排出の処理を行えばよい。
(リサイクル)
エチレン以外の成分(オレフィン、パラフィン等)、特に炭素数3以上の炭化水素の一部または全ては、上記分離・精製された後に反応原料と混合するか、または直接反応器に供給することでリサイクルしてもよい。また、副生成物のうち、反応に不活性な成分は希釈剤として再利用することができる。
<A2−2.工程(II)>
工程(I)を経てプロピレンの転化率が低下した触媒を再生させることにより、エチレン収率の変動幅を最小限に抑えて、安定にエチレンを製造することができる。なお、本実施形態において、触媒の再生とは、プロピレン転化率の低下した状態の触媒を、再生処理前よりも高いプロピレン転化率を示す状態にすることを意味するものとする。
プロピレンの転化に伴い、触媒に蓄積されたコーク成分の量が増加する。該コーク成分の蓄積量が増加した触媒を、触媒を再生させる工程(II)に供する際の、触媒に蓄積されたコーク成分の量としては、通常0質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上、特に好ましくは3.0質量%以上、特に好ましくは5.0質量%以上であり、通常30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以下である。触媒に蓄積されたコーク成分の量が上記下限値以上であれば、触媒活性が低下した状態にあり、再生工程において効果的に触媒活性を回復できるため好ましい。一方、触媒に蓄積されたコーク成分の量が上記上限値を超えると、再生工程における再生ガス及び分解ガスの触媒中の拡散が阻害され、再生効率が著しく低下する傾向にあるため、上記上限値以下で再生ガスと接触させることが好ましい。この再生工程では、触媒に蓄積されたコーク成分の量を適度に低減しつつ、触媒活性を回復させることができるため、エチレンを高い収率で安定的に製造することができる。
触媒を再生させる工程(II)に特段の制限はない。例えば、プロピレンからエチレンを製造する際に、触媒のコーク含有量が増加した段階で、プロピレンの供給を停止した後に、反応器内に再生に用いるガス(以後、再生ガスということがある)を供給することにより、コーク含量が増加した触媒を、再生ガスに接触させることができる。また、コーク含量が増加した触媒を、プロピレンを触媒と接触させる工程(I)の反応器から取り出して、触媒を再生させる工程(II)の反応器に移動させ、該触媒に再生に用いるガスを供給して触媒を再生させてもよい。
特に、固定床反応器を使用して上記工程(I)を行う場合、触媒に蓄積されたコーク量が上記の上限値以上となった場合に、プロピレンの供給を停止した後に、反応器内に再生ガスを供給して該触媒と接触させることができる。また、触媒を、上記反応器から抜きだして、反応器とは別の反応器に該触媒を充填してから再生ガスに接触させてもよい。
また、移動床反応器又は流動床反応器を使用して工程(I)を行う場合、前記反応器とは別に再生ガスと触媒を接触させるための装置を付設し、該反応器から抜き出した触媒を連続的に該装置に送り、該装置において触媒を再生ガスに接触させて、その後、再生ガスに接触させた触媒を連続的に反応器に戻しながらエチレン製造の反応を行うことが好ましい。
なお、触媒を再生させる工程(II)に用いるガスとしては特段の制限はないが、好適な例として、酸素、水素、及び水蒸気から選択される少なくとも1種を含有するガスが挙げられる。具体的な再生方法としては、酸素を含む再生ガスとして用いる燃焼再生、水蒸気(水)を再生ガスとして用いる水蒸気改質再生、水素を再生ガスとして用いる水素化クラッキングなどが挙げられる。これらの中でも、再生ガスとして、好ましくは、酸素又は水素を含むガスであり、より好ましくは水素を含むガスである。
酸素の製造方法としては特に限定されず、大気中の空気から深冷分離された酸素、過酸化水素より生成した酸素などが挙げられ、大気中の空気から回収されたものが好ましい。
水蒸気(水)の製造方法としては特に限定されず、通常の水を蒸発させたものを使用することができる。水道水、脱塩水、プラントのプロセスウォーター等、各種の製造方法により得られる水を任意に用いることができる。
水素を含むガスに含まれる水素の製造方法は特に限定されず、例えば、メタンおよびメタノールの水蒸気改質による得られるもの、炭化水素の部分酸化で得られるもの、炭化水素を二酸化炭素で改質することにより得られるもの、石炭のガス化によって得られるもの、IS(Iodine−Sulfur)プロセスに代表される水の熱分解によって得られるもの、光電気化学反応より得られるもの並びに水の電気分解で得られるもの等、各種の製造方法により得られるものを任意に用いることができる。
これら以外のガスが任意に混合されているものを用いてもよく、精製した水素を用いてもよい。
酸素、水素、水蒸気を含むガスに含まれるこれら以外のガスとしては、安全上問題のない場合には、例えば、ヘリウム、アルゴン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、パラフィン類、メタン等の炭化水素類等が含まれていても良い。このうち、反応性が低い点で、ヘリウム、窒素、二酸化炭素、およびパラフィン類、メタンが好ましい。
再生ガス全体の圧力(全圧)は、特に限定されるものではないが、絶対圧で、通常0.01MPa(絶対圧、以下同様)以上、好ましくは0.05MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上、さらに好ましくは0.2MPa以上であり、通常5MPa以下、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.7MPa以下、さらに好ましくは0.5MPa以下である。圧力を上記範囲にすることで、再生効率を高めつつ、処理ガス中の炭化水素成分の分圧を低く抑えることができるため、高い触媒活性を維持することができる。
(水素分圧)
再生ガス中に、水素を含むガスは、特に限定されるものではないが、水素分圧が絶対圧で、通常0.001MPa以上、好ましくは0.01MPa以上であるが、より好ましくは0.03MPa以上、さらに好ましくは0.05MPa以上、特に好ましくは0.1MPa以上であり、通常4MPa以下、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.7MPa以下、さらに好ましくは0.5MPa以下、特に好ましくは0.3MPa以下である。水素分圧を上記の範囲とすることにより、触媒に蓄積されたコーク成分の除去・再形成が速やかに進行するため、高いプロピレン転化活性、及び高いエチレン選択率を与える触媒状態に効率的にすることができる。また、高圧水素を製造するための設備・エネルギーを削減することができる。
再生ガスの空間速度は、特に限定されるものではないが、通常0.001Hr−1以上、好ましくは0.01Hr−1以上、より好ましくは0.1Hr−1以上であり、通常20Hr−1以下、好ましくは10Hr−1以下、より好ましくは5Hr−1以下である。重量空間速度を前記範囲に設定することで、触媒中に含まれる炭化水素成分や水蒸気の濃度を低減することができるため、プロピレン転化活性を高いレベルで維持することが可能となる。さらに、触媒に蓄積されたコーク成分の分布を均一にすることができるため、触媒内での不均一な反応を抑制することができ、エチレン選択率を高めることが可能となる。
空間速度とは、触媒(触媒活性成分)の重量当たりの再生ガスの流量である。また、触媒の重量とは、触媒の造粒・成型に使用する不活性成分やバインダーを含まない活性成分(ゼオライト)の重量である。
再生工程(II)の供給ガス中の再生ガスの濃度としては、特に限定されるものではないが、通常5体積%以上、好ましくは10体積%以上、より好ましくは30体積%以上であり、通常100体積%以下、好ましくは90体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。再生ガス濃度は高い方が好ましく、通常5体積%以上、好ましくは30体積%以上、より好ましくは60体積%以上であり、通常100体積%以下である。再生ガス濃度を前記範囲とすることで、触媒と再生ガスとの接触が十分なものとなり、コーク成分の除去・再形成が速やかに進行するため、高いプロピレン転化活性、及び高いエチレン選択率を与える触媒状態に効率的にすることができる。
触媒と再生ガスとを接触させる温度(以下、「再生温度」と称することがある)としては、特に限定されるものではないが、通常300℃以上、好ましくは400℃以上、より好ましくは500℃以上、さらに好ましくは525℃以上、特に好ましくは550℃以上であり、通常800℃以下、好ましくは700℃以下、より好ましくは650℃以下、さらに好ましくは600℃以下である。再生度を前記の範囲とすることで、コーク成分の除去が速やかに進行するため、触媒活性を高い状態で保つことができる。さらに、触媒の構造崩壊が抑制されるため、触媒寿命を維持できる点で好ましい。
再生ガスと接触させる時間としては、特に限定されるものではないが、通常1秒以上、好ましくは10秒以上、より好ましくは1分以上、さらに好ましくは5分以上であり、通常5時間以下、好ましくは2時間以下、より好ましくは1時間以下である。再生ガスの濃度や処理温度によっても適切な時間は変わるため、適宜調整することが好ましい。再生ガスと接触させる装置が流動床装置である場合には、上記の処理時間は、該装置内の触媒の滞留時間を意味する。
本発明の第2の実施形態は、プロピレンを、反応器中で触媒と接触させてエチレンを製造する方法において、前記触媒として水素を含むガスに接触させた触媒を用いてエチレンを製造する方法である。以下、本実施形態について詳細に説明するが、第1の実施形態と異なる点を説明し、その他は第1の実施形態の説明を適宜参照できる。
<B1.触媒>
本実施形態に係る反応に用いられる触媒としては、ブレンステッド酸点を有する固体状のものであれば特に限定されず、従来公知の触媒が用いられ、例えば、カオリン等の粘土鉱物、酸性型イオン交換樹脂、ゼオライト、メソポーラスシリカアルミナ等の固体酸触媒が挙げられる。なお、プロピレンからエチレンを製造する際に、触媒にベンゼン、ナフタレン、アントラセン等の骨格を有する芳香族化合物等のコーク成分が蓄積されるが、該触媒と、水素を含むガスとを接触させることにより、触媒に蓄積されたコーク成分である上記芳香族化合物等が分解し、再反応が進行することで、触媒に蓄積されたコーク量を適度に低減させつつ、コーク成分の質を改質することができる。これにより、触媒が再生され、効率よくプロピレンからエチレンを製造することができる。
これらの固体酸触媒のうちでも、分子篩効果を有するものが好ましく、ゼオライトがより好ましい。なお、上記触媒は公知の触媒を使用することができるが、触媒として好ましい形態であるゼオライトについては、第1の実施形態の説明<A1.触媒>を参照できる。
なお、非特許文献1には、MFI型ゼオライト触媒をリン酸により修飾することにより、エチレン選択率を向上させることが記載されているが、本実施形態においては、触媒を水素を含むガスに接触することにより、触媒をリン酸等により修飾しなくても、高収率でエチレンを得ることができる。従って、本実施形態においては、触媒中のリン化合物の量を第1の実施形態の説明で記載する上限値以下とすることで、リン化合物による反応器の腐食を抑制しつつ、高収率でエチレンを得ることができる。
<B2.エチレンの製造方法>
プロピレンを含む原料を、ゼオライト触媒と接触させることで、エチレンを生成することができる。本実施形態は、エチレン製造及び直鎖ブテン製造において適した方法であり、特に、エチレン製造に適した方法である。エチレンの製造方法に関しても、第1の実施形態の説明<A2−1.エチレンの製造方法>を参照できる。
本実施形態においては、第1の実施形態の説明で記載するプロピレンの転化率となるよう、触媒を、水素を含むガスに接触させて使用することが好ましい。通常、反応時間の経過とともにコークの蓄積が進行し、プロピレンの転化率は、低下する傾向にあるため、触媒に蓄積されたコーク量が増加した段階で、該触媒を水素と接触させて該触媒を再生することが好ましい。なお、当該方法以外の再生方法を併用して用いてもよい。
<B3.触媒の水素を含むガスとの接触方法>
本実施形態では、プロピレンを反応器中で触媒と接触させてエチレンを製造する方法において、前記触媒として、水素を含むガスに接触させた触媒を用いることにより、エチレンを高い選択率かつ高い収率で安定に製造することができる。
なお、公知の日本国特許第5545114号を参照すると、エチレンを原料としてプロピレンを製造する反応において、触媒を水素により処理することで触媒を再生することは知られている。しかしながら、エチレンに比べて、反応性及び吸着能の高いプロピレンを原料とする本実施形態においては、逐次反応が進みやすいため、生成するコーク成分はより重質化した成分であり、水素処理により容易にコーク成分が除去されるとは考えにくい。また、プロピレンが共存する条件においては、触媒と水素の吸着が相対的に抑制されるため(触媒とプロピレンの吸着が優先)、水素と接触させる効果は十分に得られないと考えられる。しかしながら、驚くことに、本実施形態のように、プロピレンからエチレンを製造する方法においても、触媒に水素を含むガスを接触させることにより触媒が再生されて、エチレンを収率高く製造できることが判明した。この理由は明らかではないが、触媒を、水素を含むガスと接触させることにより、触媒に蓄積されたコーク成分である上記芳香族化合物等が分解し、再反応が進行することで、触媒に蓄積されたコーク量を適度に低減させつつ、コーク成分の質を改質することができたものと考えられ、この結果、触媒が再生され、収率高くプロピレンからエチレンを製造することができたものと考えられる。
とりわけ、プロピレンの転化に伴い、使用した触媒にはコーク成分の含有量が増加するが、該コーク成分の含有量が増加した触媒を、水素を含むガスに接触させることで、コーク成分の含有量を適度に低減しつつ、コーク成分の質を改質し、その結果、エチレンを高い収率で安定的に製造することができる。したがって、触媒と水素を含むガスとの接触は、触媒がコーク成分を含有する状態で行うことが好ましく、水素ガスと接触するときの触媒に蓄積されたコーク成分の量としては、通常0質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上、特に好ましくは3.0質量%以上、特に好ましくは5.0質量%以上であり、通常30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以下である。触媒に蓄積されたコーク成分の量が上記下限値以上であれば、触媒活性が低下した状態にあり、水素接触により効果的に触媒活性を回復できるため好ましい。一方、触媒に蓄積されたコーク成分の量が上記上限値を超えると、水素ガス及び分解ガスの触媒中の拡散が阻害され、再生効率が著しく低下する傾向にあるため、上記上限値以下で水素ガスと接触させることが好ましい。
なお、水素を含むガスに触媒を接触させる方法に特段の制限はない。例えば、プロピレンからエチレンを製造する際に、触媒のコーク含有量が増加した段階で、反応器内にプロピレンと同時に水素を含むガスとを供給してコークが増加した触媒を、水素を含むガスに接触させることができる。また、プロピレンの供給を停止した後に、反応器内に水素を含むガスを供給することにより、コーク含量が増加した触媒を、水素を含むガスに接触させることができる。さらには、コーク含量が増加した触媒を、該反応器から取り出して、水素に接触させてもよい。
特に、固定床反応器を使用してプロピレンからエチレンを製造する場合は、エチレン製造用反応器から触媒を抜き出さずに、プロピレンと、水素を含むガスを、同時又は別に、供給する方法が好ましく用いられる。すなわち、触媒に蓄積されたコーク量が上記の上限値以上となった場合に、水素を含むガスを、プロピレンと同時、又はプロピレンの供給を停止した後に、反応器内に供給してコーク量が増加した触媒と水素を含むガスとを接触させることができる。
また、触媒を、上記反応器から抜きだして、反応器とは別の反応器に該触媒を充填してから水素ガスに接触させることが好ましい。
また、プロピレンからエチレンを製造する際に、移動床反応器又は流動床反応器を使用する場合、前記反応器とは別に水素を含むガスと触媒を接触させるための装置を付設し、該反応器から抜き出した触媒を連続的に該装置に送り、該装置において触媒を水素ガスに接触させて、その後、水素を含むガスに接触させた触媒を連続的に反応器に戻しながらエチレン製造の反応を行うことが好ましい。
なお、触媒に水素を含むガスを接触させる時間は、特段の制限はなく、触媒に蓄積されたコーク量を考慮して適宜選択すればよい。
本発明の水素を含むガスに含まれる水素の製造方法は特に限定されず、例えば、メタンおよびメタノールの水蒸気改質による得られるもの、炭化水素の部分酸化で得られるもの、炭化水素を二酸化炭素で改質することにより得られるもの、石炭のガス化によって得られるもの、IS(Iodine−Sulfur)プロセスに代表される水の熱分解によって得られるもの、光電気化学反応より得られるもの並びに水の電気分解で得られるもの等、各種の製造方法により得られるものを任意に用いることができる。
水素以外のガスが任意に混合されているものを用いてもよく、精製した水素を用いてもよい。
水素以外のガスとしては、例えば、ヘリウム、アルゴン、窒素、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、パラフィン類、メタン等の炭化水素類等が含まれていても良い。このうち、反応性が低い点で、ヘリウム、窒素、二酸化炭素、およびパラフィン類、メタンが好ましい。
水素を含むガスによる処理に用いた後のガスには、水素の他に、炭化水素成分(オレフィン、パラフィン等)が含まれるが、これをそのままリサイクル使用してもよいし、水素以外のガスを一部または全部除去したものをリサイクル使用してもよい。
プロピレンとともに水素を含むガスを供給する場合、水素を含むガス全体の圧力(全圧)は、特に限定されるものではないが、絶対圧で、通常0.01MPa(絶対圧、以下同様)以上、好ましくは0.05MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上、さらに好ましくは0.2MPa以上であり、通常5MPa以下、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.7MPa以下、さらに好ましくは0.5MPa以下である。圧力を上記範囲にすることで、水素ガスとの接触効率を高めつつ、処理ガス中の炭化水素成分の分圧を低く抑えることができるため、高い触媒活性を維持することができる。
プロピレンと同時に水素を含むガスを反応器中に供給する場合、水素を含むガスの圧力は、特に限定されるものではないが、水素分圧が絶対圧で、通常0.001MPa以上、好ましくは0.01MPa以上であるが、より好ましくは0.03MPa以上、さらに好ましくは0.05MPa以上、特に好ましくは0.1MPa以上であり、通常4MPa以下、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.7MPa以下、さらに好ましくは0.5MPa以下、特に好ましくは0.3MPa以下である。水素分圧を上記の範囲とすることにより、触媒に蓄積されたコーク成分の除去・再形成が速やかに進行するため、高いプロピレン転化活性、及び高いエチレン選択率を与える触媒状態に効率的にすることができる。また、高圧水素を製造するための設備・エネルギーを削減することができる。
水素を含むガスの空間速度は、特に限定されるものではないが、通常0.001Hr−1以上、好ましくは0.01Hr−1以上、より好ましくは0.1Hr−1以上であり、通常20Hr−1以下、好ましくは10Hr−1以下、より好ましくは5Hr−1以下である。重量空間速度を前記範囲に設定することで、触媒中に含まれる炭化水素成分の濃度を低減することができるため、プロピレン転化活性を高いレベルで維持することが可能となる。さらに、触媒に蓄積されたコーク成分の分布を均一にすることができるため、触媒内での不均一な反応を抑制することができ、エチレン選択率を高めることが可能となる。また、水素を含むガスを回収する場合、その分離精製負荷を抑えることができる。また、水素ガスの使用量を抑えることができるため、製造コストを低減することができる。
空間速度とは、触媒(触媒活性成分)の重量当たりの水素の流量である。また、触媒の重量とは、触媒の造粒・成型に使用する不活性成分やバインダーを含まない活性成分(ゼオライト)の重量である。
水素を含むガス中の水素濃度としては、特に限定されるものではないが、通常5体積%以上、好ましくは10体積%以上、より好ましくは30体積%以上であり、通常100体積%以下、好ましくは90体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。触媒と水素を含むガスを接触させる工程が、反応器中で触媒とプロピレンとを接触させてエチレンを製造する方法する工程の前段あるいは後段にある場合には、水素濃度は特に高い方が好ましく、通常5体積%以上、好ましくは30体積%以上、より好ましくは60体積%以上であり、通常100体積%以下である。水素濃度を前記範囲とすることで、触媒と水素分子との接触が十分なものとなり、コーク成分の除去・再形成が速やかに進行するため、高いプロピレン転化活性、及び高いエチレン選択率を与える触媒状態に効率的にすることができる。また、水素ガスの使用量を低減することができ、かつ分離精製負荷を抑えることができる。
触媒と水素を含むガスとを接触させる温度(以下、「水素接触温度」と称することがある)としては、特に限定されるものではないが、通常300℃以上、好ましくは400℃以上、より好ましくは450℃以上、さらに好ましくは500℃以上、特に好ましくは525℃以上であり、通常800℃以下、好ましくは700℃以下、より好ましくは650℃以下、さらに好ましくは600℃以下である。水素接触温度を前記の範囲とすることで、コーク成分の除去が速やかに進行するため、触媒活性を高い状態で保つことができる。さらに、触媒の構造崩壊が抑制されるため、触媒寿命を維持できる点で好ましい。
水素を含むガスと接触させる時間としては、特に限定されるものではないが、通常1秒以上、好ましくは10秒以上、より好ましくは1分以上、さらに好ましくは5分以上であり、通常5時間以下、好ましくは2時間以下、より好ましくは1時間以下である。水素ガスの濃度や処理温度によっても適切な時間は変わるため、適宜調整することが好ましい。水素を含むガスと接触させる装置が流動床装置である場合には、上記の処理時間は、該装置内の触媒の滞留時間を意味する。
本発明の第3の実施形態は、炭化水素と、触媒とを、反応器中で接触させてエチレンを製造する方法であって、前記炭化水素が少なくともプロピレン及び炭素数4以上の炭化水素を含み、該炭化水素中に含まれる、プロピレンに対する炭素数4以上の炭化水素の質量比が、0.01以上10以下である。
<C1.触媒>
本実施形態で用いる触媒について説明する。本実施形態に係る反応に用いられる触媒としては、プロピレンを含む炭化水素からエチレンを製造できるものであり、ブレンステッド酸点を有する固体状のものであれば特に限定されず、従来公知の触媒が用いられる。例えば、カオリン等の粘土鉱物、酸性型イオン交換樹脂、ゼオライト、メソポーラスシリカアルミナ等の固体酸触媒が挙げられる。本実施形態においては、プロピレン及び炭素数4以上の炭化水素の転化率が低下した触媒を再生させる工程を導入してもよく、当該再生工程の導入により、原料転化によって蓄積したコーク成分の量を低減し、エチレンを安定した収率で製造することができる。
これらの固体酸触媒のうちでも、分子篩効果を有するものが好ましく、ゼオライトがより好ましい。なお、上記触媒は公知の触媒を使用することができるが、以下、触媒として好ましい形態であるゼオライトについて詳細に説明する。
ゼオライトとは、四面体構造をもつTO単位(Tは中心原子)がO原子を共有して三次元的に連結し、開かれた規則的なミクロ細孔を形成している結晶性物質を指す。具体的には国際ゼオライト学会(International Zeolite Association;以下これを「IZA」ということがある。)の構造委員会データ集に記載のあるケイ酸塩、リン酸塩、ゲルマニウム塩、ヒ酸塩等が含まれる。
ここで、ケイ酸塩には、例えばアルミノケイ酸塩、ガロケイ酸塩、フェリケイ酸塩、チタノケイ酸塩、ボロケイ酸塩等が含まれる。
リン酸塩には、例えばアルミノリン酸塩、ガロリン酸塩、ベリロリン酸塩等が含まれる。
ゲルマニウム塩には、例えばアルミノゲルマニウム塩等が、ヒ酸塩には、例えばアルミノヒ酸塩等が含まれる。
さらに、アルミノリン酸塩には、例えばT原子をSiで一部置換したシリコアルミノリン酸塩や、Ga、Mg、Mn、Fe、Co、Znなど2価や3価のカチオンを含むものが含まれる。
ゼオライトの平均細孔径は特に限定されず、通常0.80nm以下、好ましくは0.55nm以下、より好ましくは0.50nm以下、さらに好ましくは0.45nm以下、特に好ましくは0.40nm以下であり、通常0.25nm以上、好ましくは0.30nm以上、より好ましくは0.33nm以上であり、さらに好ましくは0.35nm以上である。
ここで、平均細孔径とは、IZAが定める結晶学的なチャネル直径(Crystallographic free diameter of the channels)を示す。平均細孔径が0.55nm以下とは、細孔(チャネル)の形状が真円形の場合は、その平均直径が0.55nm以下であることをさすが、細孔の形状が楕円形の場合は、短径が0.55nm以下であることを意味する。
上記平均細孔径を有するゼオライトを用いることにより、プロピレンを原料として、高収率でエチレンを製造することができる。すなわち、平均細孔径が上記範囲であれば、ゼオライト結晶内へのプロピレンの拡散を促進し、かつエチレンをより選択的に生成させることができる。
上記の観点から、本発明において、ゼオライトは、酸素8員環構造ゼオライトであることが好ましい。
酸素8員環構造ゼオライトとしては、IZAが定める構造コード(Framework Type Code)で、例えば、好ましくはAEI、AFX、CHA、ERI、KFI、LEV、SAS、SAV、SZR、PAU、RHO、RTH、LTA、UFIなどが挙げられる。
ゼオライトのフレームワーク密度(単位:T/nm)は特に限定されず、通常20.0以下、好ましくは18.0以下、より好ましくは17.0以下、さらに好ましくは16.0以下であり、通常12.0以上、好ましくは14.0以上、より好ましくは14.5以上である。
ここで、フレームワーク密度(単位:T/nm)とは、ゼオライトの単位体積(1nm)当たりに存在するT原子(ゼオライトの骨格を構成する原子のうち、酸素以外の原子)の個数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まる。
これらの観点から、酸素8員環構造ゼオライトは、International Zeolite Association(IZA)がcomposite building unitとして定めるd6rを骨格中に含むゼオライトであることが好ましく、さらに好ましくは、AEI、AFX、CHA、ERI、KFI、LEV、SAVであり、より好ましくはAEI、AFX、CHA、又はERIであり、殊更好ましくはAEI、CHA、又はERIであり、特に好ましくはCHA又はERIであり、最も好ましくは、CHAである。
酸素8員環構造ゼオライトとしては、具体的にはケイ酸塩とリン酸塩が挙げられる。上記のとおり、ケイ酸塩としては、例えば、アルミノケイ酸塩、ガロケイ酸塩、フェリケイ酸塩、チタノケイ酸塩、ボロケイ酸塩等が、リン酸塩としては、アルミニウムと燐からなるアルミノリン酸塩、ケイ素とアルミニウムと燐からなるシリコアルミノリン酸塩等が挙げられる。これらの中で、アルミノケイ酸塩、シリコアルミノリン酸塩が好ましく、アルミノケイ酸塩がより好ましい。
ゼオライトは、通常、そのイオン交換サイトがプロトン(H)のプロトン交換型が用いられるが、その一部がLi、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類金属、Cr、Cu、Ni、Fe、Mo、W、Pt、Re等の遷移金属に交換されていてもよい。なお、このようなゼオライトは、ゼオライトに後述するイオン交換処理を施せば調製することができる。
これらイオン交換サイト以外に、Na、K等のアルカリ金属;Ca、Sr等のアルカリ土類金属;Cr、Cu、Ni、Fe、Mo、W、Pt、Re等の遷移金属に金属担持されていてもよい。ここで、金属担持は、通常、平衡吸着法、蒸発乾固法、ポアフィリング法等の含浸法で行うことができる。
ゼオライトがケイ酸塩の場合、SiO/M(ただし、前記モル比の分母はAl、Ga、BおよびFeの合計量を表す)モル比は通常5以上であり、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上であり、通常500以下、好ましくは100以下、より好ましくは80以下、さらに好ましくは60以下であり、特に好ましくは40以下である。なお、前記の比率は、ゼオライト中のSi原子が全てSiOとして含まれ、ゼオライト中に含まれる前記MがすべてMとして含まれると仮定して求める値である。SiO/Mモル比が上記範囲にあることで、強酸点及び弱酸点由来の酸量が十分得られ、プロピレンの転化活性がより高くなる。また、コーク付着による触媒の失活、ケイ素以外のT原子の骨格からの脱離、ならびに酸点当たりの酸強度の低下等を抑制できる傾向がある理由からSiO/Mモル比が上記範囲にあることが好ましい。ゼオライトのSiO/Mモル比は、通常、ICP元素分析や蛍光X線分析で決定される。蛍光X線分析は、標準試料中の分析元素の蛍光X線強度と分析元素の原子濃度との検量線を作成し、この検量線により、蛍光X線分析法(XRF)でゼオライト試料中のケイ素原子、アルミニウム、ガリウム、鉄原子の含有量を求めることができる。なお、ホウ素元素の蛍光X線強度は比較的小さいため、ホウ素原子の含有量はICP元素分析で測定することが好ましい。
ゼオライトがリン酸塩の場合、シリコアルミノリン酸塩の(Al+P)/Siモル比あるいは2価の金属をもつメタロアルミノリン酸塩の(Al+P)/M(但し、Mは2価の金属を示す。)モル比は、通常は5以上、好ましくは10以上であり、通常500以下、好ましくは100以下である。なお、2価の金属は、具体的には、Ga、Mg、Mn、Fe、Co又はZnが挙げられる。前記下限以上とすることにより触媒の耐久性を向上させることができ、また前記上限以下とすることにより、触媒活性高く保つことができる。
ゼオライトの全酸量(以下、全酸量という)は、ゼオライトの結晶細孔内に存在する酸点の量と、ゼオライトの結晶外表面酸点の量(以下、外表面酸量という)の総和である。全酸量は、特に限定されるものではないが、通常0.01mmol/g以上、好ましくは0.1mmol/g以上、より好ましくは0.3mmol/g以上、さらに好ましくは0.5mmol/g以上である。また、通常2.5mmol/g以下、好ましくは1.5mmol/g以下、より好ましくは1.2mmol/g以下、さらに好ましくは0.9mmol/g以下である。全酸量を上記の範囲とすることで、プロピレンの転化活性が高く維持され、且つゼオライトの細孔内部におけるコーク生成が抑制され、エチレン生成を促進することができる。なお、ここでの全酸量は、アンモニア昇温脱離(NH−TPD)におけるアンモニアの脱離量から算出される。具体的には、前処理としてゼオライトを真空下500℃で30分間乾燥させた後、前処理したゼオライトを100℃で過剰量のアンモニアと接触させて、ゼオライトにアンモニアを吸着させる。得られたゼオライトを、100℃で真空乾燥、または、100℃で水蒸気と接触させることにより、該ゼオライトから余剰アンモニアを除く。次いでアンモニアの吸着したゼオライトを、ヘリウム雰囲気下、昇温速度10℃/分で加熱して、100−600℃におけるアンモニア脱離量を質量分析法で測定し、ゼオライト当たりのアンモニア脱離量を全酸量とする。但し、全酸量は、TPDプロファイルをガウス関数によって波形分離し、そのピークトップを240℃以上に有する波形の面積の合計とする。この「240℃」は、ピークトップの位置の判断のみに用いる指標であって、240℃以上の部分の面積を求めるという趣旨ではない。ピークトップが240℃以上の波形である限り、当該「波形の面積」は、前記波形分離した波形の全面積とする。240℃以上にピークトップを有する波形が複数ある場合には、それぞれの面積の和とする。なお、本発明の全酸量には、ピークトップを240℃未満に有する弱酸点由来の酸量は含めないものとする。これは、TPDプロファイルにおいて、弱酸点由来の吸着と物理吸着との区別が容易ではないためである。
ゼオライトの外表面酸量は、特に限定されるものではないが、通常、ゼオライトの全酸量に対して8%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下、最も好ましくは0%である。外表面酸量をこれら上限値以下にすることにより、目的外炭化水素を発生させる副反応を減らし、エチレンの収率をより向上させることができる。
ゼオライトの外表面酸量の値は、国際公開2010/128644号パンフレットに記載の方法で決定される。
具体的には、前処理としてゼオライトを真空下500℃で1時間乾燥させた後、前処理したゼオライトを150℃でピリジン蒸気と接触させてゼオライトにピリジンを吸着させ、150℃で減圧排気及びヘリウムフローにより該ゼオライトから余剰ピリジンを除いて得られた、ピリジンを吸着したゼオライトの、昇温速度10℃/分の昇温脱離法による150〜800℃におけるゼオライト単位重量当たりのピリジンの脱離量から決定される。
なお、前記ゼオライトの外表面酸量等は、特に限定はされないが、シリル化処理、水蒸気処理、熱処理、酸処理、イオン交換処理等により調整することができる。また、金属元素の担持処理等の方法でも調整できる。更に、ゼオライトを成型する際にバインダーと前記ゼオライトの外表面酸点を結合させる、といった方法でも調整できる。
ゼオライトがアルミノケイ酸塩を含む場合、XPSより求められる結晶表面層のSiO/Alは特に限定されるものではないが、通常、ICP元素分析より求められる結晶全体のSiO/Alの1.0倍以上であり、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2.0倍以上、さらに好ましくは3.0倍以上、最も好ましくは5.0倍以上である。この範囲にすることで、結晶表面層での副反応を抑制し、ゼオライト結晶内部でのエチレン生成を促進することができる。
ゼオライト結晶表面層のSiO/Al比は、X線光電子分光法(XPS)により得られる数値である。XPSは結晶表面の情報を得る分析法であり、この分析法により、結晶表面層のSiO/Alを求めることができる。測定方法は特に限定されるものではないが、通常、Si、Alの含有量は、それぞれSi2pスペクトル、Al2pスペクトルより算出することができる。
ゼオライトは、特段の処理をせずにそのまま用いてもよいが、シリル化、水蒸気処理、熱処理、酸処理及びイオン交換から選ばれる少なくとも1つの処理により全酸量、外表面酸量及び/又は外表面開口部の細孔径を適切に調整したゼオライトを用いると、生成物中のエチレン/プロピレン比率の変動幅を最小限に抑え、安定して高収率でエチレンを製造できる場合がある。これらのうち、ゼオライトの全酸量を調整する為には、水蒸気処理、熱処理、イオン交換から選ばれる少なくとも1つの処理を施す方法が好ましく、その中でも水蒸気処理、イオン交換から選ばれる少なくとも1つの処理を施す方法、特に水蒸気処理を施す方法は処理が簡便である理由から好ましい場合がある。一方、外表面酸量を調整する為にはシリル化処理、水蒸気処理から選ばれる少なくとも1つの処理を施すと効果的である場合がある。また、外表面開口部の細孔径を調整する為にはシリル化処理を施すと効果的である場合がある。このように、上記の処理を適宜組み合わせて行うと、ゼオライトの全酸量、外表面酸量及び/又は外表面開口部の細孔径を適切に調整できるため好ましい場合がある。
以下、これらの処理方法について述べる。
<シリル化処理>
ゼオライトをシリル化処理する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を適宜用いることができ、具体的には液相シリル化や気相シリル化等を行うことができる。
ゼオライトは、シリル化処理により、通常、外表面の酸点が被覆され、不活性化されることにより、外表面酸量が低下するものと考えられる。外表面酸量が低下すると、前記ゼオライトの外表面で起こる副反応が抑制される。具体的には、プロピレンの転化反応により、ゼオライト細孔内で生成したエチレン、ブテン等の低級オレフィンがゼオライトの外表面の酸点と接触することで、目的物以外の成分が生成する反応を抑制する効果があると考えられる。また、外表面酸点のシリル化では、前記ゼオライトが有する細孔を構成する酸点にもシリル基が結合するため、外表面開口部の細孔径が僅かに縮小し、結晶外への分子拡散を抑制する効果もあると考えられる。これにより、より大きい分子である炭素数5以上の炭化水素の生成を抑制することができ、エチレンの選択率が向上するものと考える。
以下、シリル化処理を、液相シリル化を例に取り、具体的に説明する。
シリル化剤としては、特に限定されるものではなく、通常はゼオライトの外表面をシリル化することができ、かつゼオライトの細孔内をシリル化することができないものを使用する。具体的には、シリコーン類、クロロシラン類、アルコキシシラン類、シロキサン類、シラザン類などが使用できる。これらのうち、気相シリル化には通常クロロシラン類、液相シリル化には通常アルコキシシラン類が用いられ、より好ましいシリル化剤は、反応性が高く、取り扱いが比較的容易であるという点で、アルコキシシラン類である。
シリコーン類としては、具体的にはジメチルシリコーン、ジエチルシリコーン、フェニルメチルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、エチルハイドロジェンシリコーン、フェニルハイドロジェンシリコーン、メチルエチルシリコーン、フェニルエチルシリコーン、ジフェニルシリコーン、メチルトリフルオロプロピルシリコーン、エチルトリフルオロプロピルシリコーン、テトラクロロフェニルメチルシリコーン、テトラクロロフェニルエチルシリコーン、テトラクロロフェニルハイドロジェンシリコーン、テトラクロロフェニルシリコーン、メチルビニルシリコーン及びエチルビニルシリコーン等が用いられる。
クロロシラン類としては、具体的には、テトラクロロシラン、トリクロロシラン、トリクロロメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、クロロトリメチルシラン、トリクロロエチルシラン、ジクロロジエチルシラン、クロロトリエチルシラン等が用いられる。
アルコキシシラン類としては、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等;の4級アルコキシシラン、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリエトキシエチルシラン等;の3級アルコキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシジエチルシラン等;の2級アルコキシシラン、メトキシトリメチルシラン、メトキシトリエチルシラン、エトキシトリメチルシラン、エトキシトリエチルシラン等;の1級アルコキシシランが用いられる。好ましくは2級以上のアルコキシシランであり、より好ましくは3級以上のアルコキシシランであり、さらに好ましくは4級アルコキシシランである。
シロキサン類としては、具体的には、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ペンタメチルジシロキサン、テトラメチルジシロキサン等が挙げられ、ヘキサメチルジシロキサンが好ましい。
シラザン類としては、具体的には、ヘキサメチルジシラザン、ジプロピルテトラメチルジシラザン、ジフェニルテトラメチルジシラザン、テトラフェニルジメチルジシラザン等が挙げられ、ヘキサメチルジシラザンが好ましい。
前記ゼオライトに対するシリル化剤の量は、特に限定されるものではないが、前記ゼオライト1モルに対して、通常0.001モル以上、好ましくは0.01モル以上、より好ましくは0.1モル以上である。また、通常5モル以下であり、好ましくは3モル以下、より好ましくは1モル以下である。シリル化剤の量を上記の範囲とすることで、外表面酸点のシリル化被覆が効率的に進行し、かつ過度なシリル化被覆による触媒活性低下を抑制できる点で好ましい。なお、上記シリル化剤の量は、シリル化剤に含まれるSi原子のモル数で表すこととし、分子内に複数のSi原子を有するシリル化剤では、そのSi原子の合計のモル数をシリル化剤のモル数として扱うことにする。
液相シリル化を行う場合、溶媒を使用することができ、溶媒としては、特に限定されないが、へキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素や水を使用することができる。また、水溶媒で液相シリル化を行なう場合は、シリル化反応を促進するために、硫酸や硝酸等の酸を添加した酸性水溶液を使用することができる。
液相シリル化を行う場合、前記液相シリル化反応を行なう溶液中のシリル化剤の濃度は、特に限定されるものではないが、通常0.01質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。また、通常80質量%以下であり、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下である。シリル化剤の濃度を上記の範囲とすることで、シリル化剤同士の縮合を抑制し、かつシリル化速度を維持できる点で好ましい。
液相シリル化を行なう場合の前記ゼオライトに対する溶媒の量は、特に制限されるものではないが、前記ゼオライト1gに対して、通常1g以上、好ましくは3g以上、より好ましくは5g以上である。また、通常100g以下、好ましくは80g以下、より好ましくは50g以下である。溶媒の量を上記の範囲とすることで、スラリーの十分な撹拌効率を得るとともに、一定の生産性を確保することができる点で好ましい。
液相シリル化を行う場合、シリル化処理に供するゼオライトに特定の範囲の水分を付与しておいてもよい。前記ゼオライトが含有する水分は、ゼオライトが元々含有しているものであっても、人為的に水分を供給して、特定の範囲に調整してもよい。通常、本発明のゼオライトは水熱合成により得られたものを焼成し、さらに必要に応じてアンモニウム型へ変換してから焼成することによりプロトン型に変換したものを使用する。したがって、通常シリル化処理前のゼオライトの水分含有量は、通常非常に少ないと想定され、そのままシリル化処理に供してもよいし、ゼオライトに特定の水分含有量となるように水分を供給し、水分含有量を調整して使用してもよい(以下、調湿処理ということがある)。
前記水分含有量は、特に制限されるものではないが、ゼオライト中に含まれる水分重量を乾燥ゼオライトの重量に対する質量%で表し、通常30質量%以下、好ましくは25質量%以下であり、下限としては完全乾燥状態の0質量%である。水分含有量を上記の範囲とすることで、外表面酸点のシリル化被覆が効率的に進行し、かつ過度なシリル化による細孔閉塞を防ぐことができる点で好ましい。
前記調湿処理方法は、所定の水分量に調整することができれば、特に限定されるものではない。例えば、ゼオライトを適当な相対湿度を有する大気中に放置する方法、ゼオライトを、密閉容器(デシケーター等)中に、水または無機塩の飽和水溶液とともに共存させ、飽和水蒸気雰囲気下で放置する方法、ゼオライトに、適当な水蒸気圧のガスを流通させる方法等が挙げられる。なお、前記の方法においては、より均一な調湿を行うために、ゼオライトを混合または攪拌しながら調湿処理を行ってもよい。
シリル化処理をする温度は、使用するシリル化剤や溶媒の種類により適宜調整され、特に限定されるものではないが、通常20℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上である。また、通常140℃以下、好ましくは120℃以下であり、より好ましくは100℃以下である。シリル化処理温度を上記の範囲とすることで、外表面酸点のシリル化被覆が効率的に進行し、かつシリル化速度を維持できる点で好ましい。
シリル化剤を添加してからシリル化温度まで昇温するのに要する時間は、特に限定されるものではなく、シリル化温度にてシリル化剤を添加してもよいが、通常0.01時間以上、好ましくは0.05時間以上、より好ましくは0.1時間以上であり、昇温に要する時間の上限は特にない。シリル化温度が高い場合、昇温に要する時間を上記の範囲とすることで、溶液中のシリル化剤の加水分解及び重合反応が抑制され、前記ゼオライトのシリル化が効率的に進行する点で好ましい。
シリル化の処理時間は、反応温度にもよるが、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上であり、より好ましくは1時間以上であり、触媒の性能を阻害しない限りにおいて処理時間の上限は特にない。処理時間を上記の範囲とすることで、前記ゼオライトの外表面酸点のシリル化被覆が進行し、外表面酸量が十分に減少する点で好ましい。なお、かかるシリル化や次に述べ水蒸気処理に関しては、ゼオライト単体の紛体の時点で処理してもよいし、バインダー等により成形されてゼオライト触媒として用いられる状態になったものに対して行ってもよい。
<水蒸気処理>
水蒸気処理方法は、特に限定されるものではないが、本発明の効果を損なわない範囲において水蒸気を含む気体に接触させることができる。具体的には水蒸気、空気又は不活性ガスで希釈した水蒸気、エチレンやプロピレン等の低級オレフィンとともに水蒸気を含む反応雰囲気、または水蒸気を生成する反応雰囲気等に接触させる方法などが挙げられる。水蒸気を生成する反応とは、アルコールの脱水反応のように脱水が起こって水蒸気を生成する反応のことである。なお、条件によって水蒸気が部分的に液体の水として存在しても構わないが、前記ゼオライトに一様な水蒸気処理効果を与えるために、全体が水蒸気の状態で存在していることが好ましい。
前記ゼオライトは水蒸気処理により、その骨格を形成するケイ素以外のT原子の骨格からの脱離が結晶全体で起こるため、前記の外表面酸量だけでなく、前記全酸量も減少すると考えられる。この全酸量の減少により、ゼオライトの細孔内部におけるコーク生成が抑制され、分子の結晶内拡散性が向上する。このため、反応原料であるプロピレンの反応性が相対的に上昇するものと推測される。なお、過度な水蒸気処理を行うと、全酸量の低下に伴う活性低下、及び、分子の結晶内拡散性の過度な上昇により、ブテンやペンテン、ヘキセン等の炭素数4以上の炭化水素分子の生成量が増加する傾向がある。
水蒸気処理温度は、特に限定されるものではないが、通常400℃以上であり、好ましくは500℃以上、より好ましくは600℃以上である。また通常1000℃以下であり、好ましくは900℃以下、より好ましくは800℃以下である。水蒸気処理温度を上記の範囲とすることで、骨格構造の崩壊を起こさずに、短い処理時間で効率的にケイ素以外のT原子を骨格から除去し、全酸量及び外表面酸量を低減することができる点で好ましい。
水蒸気処理に用いる水蒸気(スチーム)は、空気や、ヘリウム、窒素等の不活性ガスで希釈して使用することができる。その際の水蒸気濃度は、特に限定されるものではないが、前記ゼオライトを水蒸気処理する際に用いる気体全体に対して通常5体積%以上、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上であり、さらに好ましくは30体積%以上であり、通常100体積%以下、好ましくは90体積%以下、より好ましくは80体積%以下、さらに好ましくは70体積%以下である。上限は特に制限されず、100体積%の水蒸気を用いることができる。水蒸気濃度を上記範囲にすることで、短い処理時間で効率的に前記T原子を骨格から除去し、全酸量及び外表面酸量を低減することができる点で好ましい。
水蒸気処理の圧力(希釈ガスを含む全圧)は特に制限されるものではないが、通常0.05MPa以上(絶対圧、以下同様)、好ましくは0.075MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上であり、通常2MPa以下、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.5MPa以下である。水蒸気処理の圧力を上記圧力範囲にすることで、短時間で効率的に前記T原子を骨格から除去し、全酸量及び外表面酸量を低減することができる点で好ましい。
水蒸気の分圧は特に制限されるものではないが、通常0.01MPa以上(絶対圧、以下同様)、好ましくは0.03MPa以上、より好ましくは0.05MPa以上であり、通常2MPa以下、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.5MPa以下、さらに好ましくは0.2MPa以下である。水蒸気の分圧を上記圧力範囲にすることで、短時間で効率的に前記T原子を骨格から除去し、全酸量及び外表面酸量を低減することができる点で好ましい。
水蒸気処理時間は、特に限定されるものではないが、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上であり、より好ましくは1時間以上である。また触媒活性を著しく阻害しない限りにおいては処理時間の上限はない。水蒸気処理温度及び水蒸気濃度により、処理時間は適宜調整することができる。
水蒸気処理は、その細孔内部に有機物が存在している状態で行ってもよい。有機物が細孔内部に存在することで、特に強い水蒸気処理を行なった場合には、細孔内部の酸点の極端な減少を防ぎつつ、外表面酸点の大幅な減少をはかることができる。
前記有機物としては、特に限定されないが、ゼオライトの水熱合成時に使用する構造規定剤、及び反応によって生成するコーク等が挙げられる。これら有機物は、水熱合成後のゼオライト(以下、焼成前ゼオライトということがある)に水蒸気処理を行った後、空気焼成等の燃焼工程を経て除去することもでき、または空気等の酸素含有ガスで希釈した水蒸気で処理することにより、有機物を除去しながら水蒸気処理することもできる。
<熱処理>
熱処理する方法は、特に限定されるものではないが、具体的には、前記ゼオライトを、空気及び不活性ガスから選ばれる少なくとも1つの雰囲気下で高温処理する方法などが挙げられる。これにより、ゼオライトの全酸量及び外表面酸量を減少させることができる。
熱処理温度は特に限定されるものではないが、通常500℃以上、好ましくは600℃以上、より好ましくは700℃以上であり、通常1200℃以下、好ましくは1000℃以下、より好ましくは900℃以下である。熱処理温度を上記の範囲とすることで、骨格構造の崩壊を起こさずに、短い処理時間で効率的に前記T原子を骨格から除去することができる点で好ましい。
熱処理の際に使用するガス種としては、ヘリウム、窒素、空気等を使用することができる。
熱処理も水蒸気処理同様に、細孔内部に有機物が存在している状態で行ってもよい。ヘリウムや窒素等の不活性ガスを用いた場合、熱処理により有機物が炭化する場合があるが、空気での焼成により、除去することができる。
なお、熱処理は上記のゼオライトを製造する際に行われる焼成と同時に行っても別個に分けて行ってもよい。熱処理は骨格内の前記T原子の脱離等を目的とするため比較的高温で行われ、特に限定はされないが、具体的には、上記の焼成と熱処理を別個に行なう場合であれば、熱処理は、通常、焼成よりも高い温度で行なわれる。
熱処理の時間は、特に限定されるものではないが、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1.0時間以上である。また触媒活性を著しく阻害しない限りにおいては処理時間の上限はなく、熱処理温度により、処理時間は適宜調整することができる。
<酸処理>
ゼオライトの酸処理の方法は、特に限定されるものではないが、具体的には、酸性水溶液を用いる方法が挙げられる。
前記酸性水溶液に用いる酸の種類としては、特に限定されるものではないが、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸、シュウ酸、マロン酸などのジカルボン酸などを使用することができる。これらのうち好ましいのは、硫酸、硝酸、塩酸である。
前記酸性水溶液の酸の濃度としては、特に限定されるものではないが、通常0.01M以上、好ましくは0.1M以上、より好ましくは1M以上であり、通常10M以下であり、好ましくは8M以下であり、より好ましくは6M以下である。酸の濃度を上記の範囲とすることで、骨格構造の崩壊を起こさずに、短い処理時間で効率的に全酸量及び外表面酸量を低減することができる点で好ましい。
ゼオライトに対する酸性水溶液の量としては、特に制限されるものではないが、ゼオライト1gに対して、酸性水溶液の総量で通常3g以上、好ましくは5g以上、より好ましくは10g以上であり、通常100g以下、好ましくは80g以下、より好ましくは50g以下である。酸性水溶液の量を上記の範囲とすることで、スラリーの十分な撹拌効率を得るとともに、一定の生産性を確保することができる点で好ましい。
酸処理の温度としては、特に限定されるものではないが、常圧においては通常室温から100℃、耐圧容器内では100℃以上で行うことも可能であり、通常40℃以上、好ましく60℃以上、より好ましくは80℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下である。酸処理の温度を上記の範囲とすることで、骨格構造の崩壊を抑制しながら、短い処理時間で効率的に全酸量及び外表面酸量を低減することができる点で好ましい。
酸処理の処理時間は、特に限定されるものではなく、酸の濃度や反応温度にもよるが、通常0.01時間以上、好ましくは0.1時間以上であり、触媒の性能を阻害しない限りにおいて処理時間の上限は特にない。酸の濃度や反応温度により、処理時間は適宜調整することができる。
酸性水溶液中に、シリル化剤を添加することにより、酸処理とシリル化処理を同時に行うこともできる。その際に用いるシリル化剤は、前記シリル化剤と同じである。
<イオン交換処理>
ゼオライトのカウンターカチオンは、通常、ナトリウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム(NH)あるいはプロトン(H)である。これらのカウンターカチオンはイオン交換可能であり、適宜、金属イオン交換して使用することができる。交換する金属としては、特に限定されるものではないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属が挙げられる。好ましくはナトリウム、カリウム、カルシウム、ストロンチウムであり、より好ましくはナトリウム、カリウム、カルシウムであり、さらに好ましくはカルシウムである。
イオン交換することで、ゼオライトの酸量を調整することができ、さらには、ケージ空間容積を調整することができるため、反応時のコーク蓄積を抑制することができる。また熱的/水熱的安定性が高くなり劣化を抑制することができる点でも好ましい。金属イオン交換の方法は、特に限定されるものではないが、既知のイオン交換法によって行うことができる。イオン交換法に用いる際の、ゼオライトのカチオンは特に限定されず、通常、ナトリウム型、アンモニウム型、あるいはプロトン型が用いられる。
金属源としては、通常、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩等が用いられ、好ましくは硝酸塩、硫酸塩、塩化物塩であり、より好ましくは硝酸塩である。用いる溶媒としては、金属源が溶解するものであれば、特に限定されるものではないが、通常、水が用いられる。
金属源溶液の濃度は、特に限定されるものではないが、通常0.1M以上、好ましくは0.5M以上、より好ましくは1M以上であり、また上限は、通常10M以下、好ましくは8M以下、より好ましくは6M以下である。金属源の溶解度見合いで濃度を調整することが望ましい。
イオン交換を行う温度は、室温から溶媒の沸点程度である。処理時間は、イオン交換が十分平衡に達する時間であればよく、通常1〜6時間程度である。金属の交換率を高めるため、イオン交換を複数回繰り返すことも可能である。
イオン交換後のゼオライトを乾燥する際の雰囲気は特に限定されず、例えば空気中、不活性ガス中、真空中などで行われる。乾燥温度は、通常、室温から溶媒の沸点程度である。イオン交換後のゼオライトは、適宜焼成を行って使用する。焼成温度は金属源の分解温度よりも高温であればよく、通常200℃〜600℃、好ましくは300℃〜500℃である。焼成温度が低すぎると金属源が残留しやすく、焼成温度が高すぎるとゼオライトの構造崩壊や、金属のシンタリングが進行し易くなる。
また、上記以外にも、金属元素の担持処理、又はゼオライトを成形する際にバインダーと前記ゼオライトの外表面酸点を結合させる、といった方法により外表面酸量を調整することもできる。
ゼオライトの平均一次粒子径は、特に限定されるものではないが、通常0.01μm以上、好ましくは0.03μm以上、より好ましくは0.05μm以上であり、通常10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下、特に好ましくは0.3μm以下である。上記範囲とすることで、触媒反応におけるゼオライト結晶内の拡散性及び触媒有効係数が十分高くなり、ゼオライト結晶性が十分なものとなり、耐水熱安定性が高い点で好ましい。
なお、本実施形態における平均一次粒子径とは、一次粒子の粒子径に相当する。したがって、光散乱法などで測定される凝集体の粒子径とは異なる。平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(以降、「SEM」と略記する。)又は透過型電子顕微鏡(以降、「TEM」と略記する。)による粒子の観察において、粒子を任意に20個以上測定し、その一次粒子の粒子径を平均して求められる。該粒子が長方形の場合、該粒子の長辺・短辺を計測して(奥行は計測せず)、その和の平均、つまり(長辺+短辺)÷2を算出して、該粒子の一次粒子径とする。
(BET比表面積)
ゼオライトのBET比表面積は、特に限定されるものではないが、通常300m/g以上、好ましくは400m/g以上、より好ましくは500m/g以上であり、通常1000m/g以下、好ましくは800m/g以下、より好ましくは750m/g以下である。上記範囲にあることで、細孔内表面に存在する活性点が十分多く、触媒活性が高くなるため好ましい。なお、BET比表面積は、JIS8830(ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法)に準じた測定方法によって測定できる。吸着ガスとして窒素を使用し、1点法(相対圧:p/p0=0.30)でBET比表面積を求められる。
ゼオライトの細孔容積は、特に限定されるものではないが、通常0.1ml/g以上、好ましくは0.2ml/g以上であり、通常3ml/g以下、好ましくは2ml/g以下である。上記範囲にあることで、細孔内表面に存在する活性点が十分多く、触媒活性が高くなるため好ましい。細孔容積は相対圧法により得られる窒素の吸着等温線から求める値であることが好ましい。
ゼオライトは、一般的に水熱合成法により調製することが可能である。例えば、ケイ酸塩であれば、水にアルミニウム源、ガリウム源、ホウ素源、及び鉄源から選ばれる少なくとも1種類と、ケイ素源やアルカリ水溶液等を加えて均一なゲルを生成させ、これに必要に応じて構造規定剤を加えて攪拌し、原料ゲルを調製する。得られた前記原料ゲルを、密閉容器中で加熱し、自圧下反応させることにより、結晶化させる。このときの反応温度は特に限定されないが、通常100〜200℃に保持して結晶化させる。結晶化の際に、必要に応じて種結晶を添加してもよく、製造性の面では種結晶を添加する方が、反応時間を短縮できる点や結晶粒子を微粒子化できる点で好ましい。次いで結晶化した固形成分を濾過および洗浄した後、固形分を乾燥し、引き続き焼成することによって、アルカリ(土類)金属型のゼオライトとして得ることができる。前記の乾燥温度は限定されないが、通常100〜200℃である。また前記の焼成温度は限定されないが、通常400〜700℃である。その後、酸性溶液やアンモニウム塩溶液でイオン交換し、焼成することにより、H型のゼオライトを得ることができる。
具体的に、CHA型ゼオライトとしては、米国特許第4544538号公報に記載の方法等の公知の方法で製造することができる。また、ERI型ゼオライトとしては、米国特許第7344694号公報に記載の方法等の公知の方法で製造することができる。
前記構造規定剤として用いられるカチオンは、ゼオライトの形成を阻害しないアニオンを伴うものである。前記アニオンは、特に限定はされないが、具体的には、Cl、Br、Iなどのハロゲンイオンや水酸化物イオン、酢酸塩、硫酸塩、カルボン酸塩が含まれる。中でも、水酸化物イオンは特に好適に用いられる。
また、構造規定剤として、リン含有系構造規定剤又は窒素系構造規定剤を使用することもできる。リン含有系構造規定剤としては、例えばテトラエチルホスホニウム水酸化物、テトラエチルホスホニウムブロミドのような物質が挙げられる。しかし、リン化合物は、合成ゼオライトから焼成により構造規定剤を除去する際に、有害物質である五酸化二リン等を発生する可能性があるため、好ましくは窒素系構造規定剤である。
ゼオライトは触媒活性成分であるために、ゼオライトをそのままゼオライト触媒として反応に用いてよいし、反応に不活性な物質やバインダーを用いて、造粒・成型して、或いはこれらを混合して反応に用いてもよい。
該反応に不活性な物質やバインダーとしては、アルミナまたはアルミナゾル、シリカ、シリカゾル、石英、およびこれらの混合物等が挙げられる。
ゼオライトを、ゼオライト単体で使用するのではなく、バインダー等を用いて成形して使用するような場合であっても、全酸量や外表面酸量の測定方法は前述と同じ方法で測定することができ、好ましい範囲もまた同じ値になる。
以下、上述のようにゼオライト単体で使用するのではなく、バインダー等を用いて成形して使用するような場合の好ましい態様を、ゼオライト触媒という言葉を用いて説明する。
ゼオライト触媒全体の全酸量及び外表面酸量は、上述のゼオライトの全酸量及び外表面酸量と同様の方法にて測定することができる。ゼオライト触媒の全酸量は、特に限定されるものではないが、通常0.01mmol/g以上、好ましくは0.1mmol/g以上、より好ましくは0.3mmol/g以上、さらに好ましくは0.5mmol/g以上である。また、通常2.5mmol/g以下、好ましくは1.5mmol/g以下、より好ましくは1.2mmol/g以下、さらに好ましくは0.9mmol/g以下である。ゼオライト触媒の全酸量を上記の範囲とすることで、プロピレンの転化活性が高いレベルで維持され、ゼオライトの細孔内部におけるコーク生成が抑制され、エチレンの生成をより促進することができる点で好ましい。
ゼオライト触媒の外表面酸量は、特に限定されるものではないが、通常、触媒の全酸量に対して8%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下、最も好ましくは0%である。前記上限値以下とすることで、副反応を抑制しエチレンの選択率を高い状態で維持しやすい。
なお、ゼオライト触媒の全酸量及び外表面酸量を調整するには、酸点を有さないシリカやアルミナ等バインダーとして用いることが好ましい。なお、アルミナ等の、酸点を有するバインダーを使用した場合には、触媒の全酸量及び外表面酸量の測定方法では、ゼオライトの酸量と共にバインダーの酸量も含んだ合計値として測定される。その場合はバインダー由来の酸量を別法により求め、触媒の酸量からその値を差し引くことによって、バインダー由来の酸量を含まないゼオライトのみの酸量を求めることが可能である。前記バインダーの酸量は、27Al−NMRにおいてゼオライトの酸点に由来する4配位Alのピーク強度からゼオライトの酸量を求め、アンモニア昇温脱離法により求まる触媒の酸量からその値を差し引く方法で求められる。
ゼオライト触媒に含有され得るリン化合物の量としては、特に限定されるものではないが、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0.01質量%以下である。なお、ここでのリン化合物とは、リン酸化物等の物質を指し、アルミノリン酸塩やガロリン酸塩等のゼオライト自体そのものを意味するものではない。
ゼオライト触媒の平均粒子径は、ゼオライトの合成条件、特には造粒・成型条件により異なるが、通常、平均粒子径として、通常0.01μm〜500μmであり、好ましくは0.1〜100μmである。ゼオライト触媒の平均粒子径が大きくなり過ぎると、触媒の有効係数が低下する傾向があり、小さすぎると取り扱い性が劣るものとなる。この平均粒子径は、SEM観察等により求めることができる。
<C2.エチレンの製造方法>
本実施形態のエチレンの製造方法は、少なくともプロピレンと炭素数4以上の炭化水素を含む原料炭化水素を、触媒と接触させてエチレンを製造する方法であり、原料炭化水素において、前記プロピレンに対する炭素数4以上の炭化水素の質量比が0.01以上10以下の範囲である。以下に各工程について詳細に説明する。
原料であるプロピレンの製造由来は特に限定されない。例えば、スチーム分解法または接触分解法によりナフサの分解により得られるもの(以下、ナフサ分解物という)、エタン、プロパン、n−ブタン、常圧軽油(AGO)、減圧軽油(VGO)、天然ガス液(NGL)等の熱分解により製造されるもの(以下、熱分解物という)、減圧軽油や残油の流動接触分解法(FCC)により製造されるもの、MTO(Methanol to Olefin)反応により製造されるもの、ETO(Ethylene/Ethanol to Olefin)反応により製造されるもの、プロパン等のアルカンの脱水素反応により製造されるもの、石炭のガス化により得られる水素/一酸化炭素混合ガスを原料としてフィッシャートロプシュ合成を行うことにより製造されるもの等が挙げられる。このうち上記ナフサ分解物および上記熱分解物、MTO反応生成物が好ましく、ナフサ分解物がより好ましい。
炭素数4以上の炭化水素としては、ブテン、ペンテン、ヘキセン等のオレフィン類;ブタン、ペンタン、ヘキサン等のパラフィン類、ブチン、ペンチン、ヘキシン等のアルキン類;ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン等のジエン類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を含んでいてもよい。上記のオレフィン類、パラフィン類、アルキン類、ジエン類は、直鎖状構造でも分岐状構造、環状構造の異性体を含んでいてもよいが、反応性の点で、直鎖状構造が好ましい。また、反応性の点で、オレフィン類であることが好ましく、好ましくは炭素数8以下(ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン)、より好ましくは炭素数6以下(ブテン、ペンテン、ヘキセン)、さらに好ましく炭素数5以下(ブテン、ペンテン)、最も好ましくは炭素数4のブテンである。ブテンとしては、4種の異性体のいずれもが使用可能である。
なお、原料である炭化水素は、プロピレン及び炭素数4以上の炭化水素以外の炭化水素(以下、「その他の炭化水素」ということがある。)を含有していてもよく、例えばメタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、メチルアセチレン等の炭素数3以下の炭化水素を含んでいてもよい。また、プロピレン以外に、メタノールやジメチルエーテルを含んでいてもよく、その混合割合に制限はない。
通常、プロピレンからのエチレン製造において、目的生成物であるエチレンは、原料である炭化水素中に含まれていてもよいが、触媒との接触によりブテンやヘキセン等の別のオレフィンに変換されやすいため、エチレンを分離した状態のプロピレンを原料として用いることが好ましい。原料である炭化水素中に含まれる、エチレンに対するプロピレンの質量比は、特に限定されるものではないが、通常1以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上であり、特に好ましくは30以上であり、大きければ大きいほどよい。上記比率が高いほど、目的生成物であるエチレンの消費を抑えることができ、効率的にエチレンを製造することができる。
エチレン製造に使用する反応器としては、原料導入口と生成ガス排出口とを有する反応器であって、プロピレン供給原料が反応域において気相であれば特に限定されないが、固定床反応器、移動床反応器や流動床反応器が選ばれ得る。プロピレン転化率の変動が大きい場合には、一定のエチレン収率で製造するために、流動床反応器が好ましい。
また、バッチ式、半連続式または連続式のいずれの形態でも行われ得るが、連続式で行うのが好ましく、その方法は、単一の反応器を用いた方法でもよいし、直列または並列に配置された複数の反応器を用いた方法でもよい。
なお、流動床反応器に前述の触媒を充填する際、触媒層の温度分布を小さく抑えるために、石英砂、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ等の反応に不活性な粒状物を、触媒と混合して充填してもよい。この場合、石英砂等の反応に不活性な粒状物の使用量には特に限定されない。なお、粒状物は、触媒との均一混合性の面から、触媒と同程度の粒径であることが好ましい。
また、反応器には、反応に伴う発熱を分散させることを目的に、反応基質(反応原料)を分割して供給してもよい。
(基質濃度)
反応器に供給する全供給成分中の、プロピレン及び炭素数4以上の炭化水素の合計の濃度は特に制限されないが、全供給成分中、通常3モル%以上、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、さら好ましくは20モル%以上であり、通常100モル%以下、好ましくは80モル%以下、より好ましくは60モル%以下、さらに好ましくは40モル%以下である。基質濃度を上記範囲にすることで、芳香族化合物やパラフィン類の生成をより低く抑制し、エチレン収率を向上させることができる。また反応速度を高く維持できるため、触媒量を減らすことができ、反応器の大きさも小さくできる。
従って、このような好ましい基質濃度となるように、必要に応じて以下に記載する希釈剤で反応基質を希釈することが好ましい。
(希釈剤)
反応器内には、プロピレンを含む原料の他に、ヘリウム、アルゴン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、水、パラフィン類、メタン等の炭化水素類、芳香族化合物類、および、それらの混合物などを存在させることができるが、この中でも水素、ヘリウム、窒素、水(水蒸気)が共存しているのが好ましく、エチレン収率を高められる点で、水素が共存していることが最も好ましい。このような希釈剤は、反応原料に含まれている不純物をそのまま希釈剤として使用してもよいし、別途調製した希釈剤を反応原料と混合して用いてもよい。また、希釈剤は反応器に入れる前に反応原料と混合してもよいし、反応原料とは別に反応器に供給してもよい。
(重量空間速度)
本明細書で言う重量空間速度とは、触媒(触媒活性成分)の重量当たりの反応原料であるプロピレン及び炭素数4以上の炭化水素の合計流量(重量/時間)であり、ここで触媒の重量とは触媒の造粒・成型に使用する不活性成分やバインダーを含まない触媒活性成分の重量である。
重量空間速度は、特に限定されるものではないが、通常0.01Hr−1以上、好ましくは0.1Hr−1以上、より好ましくは0.2Hr−1以上、さらに好ましくは0.5Hr−1以上であり、通常50Hr−1以下、好ましくは10Hr−1以下、より好ましくは5Hr−1以下、さらに好ましくは3Hr−1以下である。重量空間速度を前記範囲に設定することで、反応器の生成ガス排出口から排出される生成ガス中の未反応のプロピレンの割合をより減らすことができ、芳香族化合物やパラフィン類等の副生成物をも減らすことができ、エチレン収率を向上させることができるため好ましい。また、一定の生産量を得るのに必要な触媒量を抑えることができ、反応器の大きさを抑えることができる。
(反応温度)
反応温度は、プロピレン及び炭素数4以上の炭化水素が触媒と接触してエチレンを生成する温度であれば、特に制限されるものではないが、通常300℃以上、好ましくは400℃以上、より好ましくは425℃以上、さらに好ましくは450℃以上、特に好ましくは475℃以上、最も好ましくは500℃以上であり、通常800℃以下、好ましくは700℃以下、より好ましくは650℃以下、さらに好ましくは600℃以下である。反応温度を上記範囲にすることで、芳香族化合物やパラフィン類の生成を抑制することができるため、ワンパスのエチレンの収率を向上させることができる。また、プロピレンの転化活性を高いレベルで維持することができ、さらに反応ガス中にプロピレン及び炭素数4以上の炭化水素とともに水素を含む場合、その接触効果を最大限に高めることができるため、長時間にわたって高いエチレン収率で製造することができる。さらに、ゼオライトがケイ酸塩の場合、ゼオライト骨格からの脱アルミニウムが抑制されるため、触媒寿命を維持できる点で好ましい。なお、ここでの反応温度とは、触媒層出口の温度をさす。
(反応圧力)
反応圧力(全圧)は特に制限されるものではないが、通常0.01MPa(絶対圧、以下同様)以上、好ましくは0.05MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上、さらに好ましくは0.2MPa以上であり、通常5MPa以下、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.7MPa以下、さらに好ましくは0.4MPa以下である。反応圧力を上記範囲にすることで芳香族化合物やパラフィン類等の副生成物の生成を抑制することができ、エチレンの収率を向上させることができる。また反応速度も維持できる。
(反応原料分圧)
プロピレン及び炭素数4以上の炭化水素の分圧は特に制限されるものではないが、通常0.001MPa以上(絶対圧、以下同様)、好ましくは0.005MPa以上、より好ましくは0.0075MPa以上、さらに好ましくは0.010MPa以上、特に好ましくは0.015MPa以上、最も好ましくは0.020MPa以上であり、通常1MPa以下、好ましくは0.5MPa以下、より好ましくは0.2MPa以下、さらに好ましくは0.1MPa以下である。原料の分圧を上記範囲にすることでコーキングを抑制することができ、エチレンの収率を向上させることができる。
(プロピレンに対する炭素数4以上の炭化水素成分の比)
原料である炭化水素中に含まれる、プロピレンに対する炭素数4以上の炭化水素の質量比は、0.01以上10以下である。好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.5以上であり、好ましくは5以下であり、より好ましくは2以下であり、さらに好ましくは1以下である。
炭化水素中における、プロピレンに対する炭素数4以上の炭化水素の質量比を前記範囲とすると原料プロピレンからのエチレンへの転換効率を高め、反応器生成ガス排出口のエチレン/プロピレン比の経時的な変化を軽減することができる理由は、未だ詳らかではないが、以下のように推察される。本発明のようなオレフィン間の熱力学的平衡制約を受ける高温触媒反応においては、プロピレンは、エチレンや炭素数4以上の炭化水素へ転換される。一方、炭素数4以上の炭化水素もまたその一部が、プロピレン及びエチレンへ転換される。触媒活性が高まると、オレフィン間の熱力学平衡組成に近づく傾向にあるため、原料プロピレン中に炭素数4以上の炭化水素を前記範囲で供給炭化水素中に混合させておくと、反応平衡の制約から、プロピレンからの炭素数4以上の炭化水素への転換が抑制され、また、炭素数4以上の炭化水素からのプロピレンへの転換が抑制されるため、プロピレンならびに炭素数4以上の炭化水素からのエチレンへの転換がより効果的に促進される傾向があるため、エチレンへの転換効率を相乗的に高めることができ、高いエチレン/プロピレン比でエチレンを製造することができる。
なお、上記の効果が得られる触媒は限定されないが、細孔径による形状選択性が効き易いゼオライトが好ましく、目的生成物の分子サイズに近い細孔径の小さい酸素8員環構造を有するゼオライトがより好ましい。
(ブテンの割合)
炭素数4以上の炭化水素に含まれるブテンの割合としては、特に限定されるものではないが、前記のように反応平衡制約からプロピレンからエチレン変換を効率的に進行させるためには、通常10mol%以上、好ましくは30mol%以上、より好ましくは50mol%以上、さらに好ましくは80mol%以上、上限は100mol%である。
(直鎖ブテンの割合)
ブテンに含まれる直鎖ブテン(1−ブテン、2−ブテン)の割合としては、特に限定されるものではないが、通常10mol%以上、好ましくは30mol%以上、より好ましくは50mol%以上、さらに好ましくは80mol%以上、上限は100mol%である。ゼオライト細孔内への拡散性の観点から、直鎖ブテンの割合が大きい方が、エチレン収率が向上しやすく、好ましい。
(コーク成分)
プロピレン及び炭素数4以上の炭化水素の転化によって、その一部が結晶の内部/外表面に、再生処理による除去が必要なコーク(多環芳香族などの重質成分)として蓄積し、触媒活性が低下する傾向がある。そのため、前記のコークの含有量(コーク含有量)としては、適度な触媒活性と高いエチレン選択率を得るためには、活性成分である触媒に対して、通常30質量%以下であり、20質量%以下に保つことが好ましく、15質量%以下に保つことがより好ましく、通常少なければ少ないほど好ましいが、前述の酸素8員環構造を有し、かつInternational Zeolite Association(IZA)がcomposite building unitとして定めるd6rを骨格中に含むゼオライト(例えば、AEI、AFX、CHA、ERI、KFI、LEV、SAV)においては、細孔内部の広い空間(ケージ空間)を一定量のコークで占有される程、細孔内空間を狭めることができるため、高いエチレン選択性を発現する場合があり、通常0.1質量%以上であり、1.0質量%以上に保つことが好ましく、3.0質量%以上に保つことがより好ましく、5.0質量%以上に保つことがさらに好ましい。触媒中コーク含有量が上記下限値以上にすることにより、触媒内の分子拡散をより抑制することができ、また、炭素数4以上の炭化水素からのエチレンへの転換を促進することができ、エチレン製造の際に、エチレン選択率を高く維持することができるため、触媒は上記下限値以上のコーク含有量を維持することが好ましい。一方、触媒に蓄積されたコーク量が上記上限値以上になると触媒活性が低下する傾向がある。したがって、後述の再生方法により、触媒に蓄積されたコーク量を上記の範囲内となるよう、再生条件を調整することが好ましい。
なお、本発明において触媒に蓄積されたコーク量とは、コークが蓄積した触媒を、ヘリウム等の不活性ガス流通下(50cc/min)、550℃まで昇温速度10℃/分で加熱し、30分間保持することで、吸着水及び軽沸炭化水素成分を除去し、続いて、空気流通に切り替え(50cc/min)、600℃まで昇温速度10℃/分で加熱し、60分間保持し、このときの550℃以上の温度領域での酸化燃焼による重量減少を求めることで算出することができる。
(転化率)
本発明において、プロピレンおよび炭素数4以上の炭化水素の転化率は特に制限されるものではないが、通常転化率は5%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上であり、通常100%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは60%以下、さらに好ましくは50%以下である。プロピレンの転化率が上記範囲になるように調整することで、ブテンや芳香族化合物やパラフィン類の副生、および細孔内へのコークの蓄積を抑制することができ、エチレンの収率を向上させることができるため好ましい。また、生成物中からのエチレンやプロピレン等の成分の分離効率を高めることができる。すなわち、本発明においては、プロピレンの転化率が上述の範囲となるように、触媒に再生工程を施すことが好ましい。
通常、反応時間の経過とともにコークの蓄積が進行し、プロピレン及び炭素数4以上の炭化水素の転化率は、低下する傾向にあるため、後述の通り、触媒に蓄積されたコーク量が増加した段階で、該触媒を再生工程に供することが好ましい。また、上記の転化率の範囲で運転する方法としては、特に制限されない。
(収率)
本発明において、エチレンの収率は特に制限されるものではないが、通常収率は5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上であり、通常100%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは60%以下である。エチレンの収率が上記範囲にあることで、反応器出口における目的生成物の割合が十分なものとなり、原料コスト及び分離・精製の負荷を低減することができる点で好ましい。
本明細書における収率は、以下の各式により算出される値である。下記の各式において、エチレン、プロピレン、ブテン、C5+、パラフィンおよび芳香族化合物等の炭化水素の「由来カーボン流量(mol/Hr)」とは、各炭化水素を構成する炭素原子のモル流量を意味する。尚、パラフィンは炭素数1から4のパラフィンの合計、芳香族化合物はベンゼン、トルエン、キシレンの合計、C5+は前記芳香族化合物を除いた炭素数5以上の炭化水素の合計である。
・エチレン収率(%)=反応器生成ガス排出口エチレン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/反応器生成ガス排出口総カーボンモル流量(mol/Hr)×100
・プロピレン収率(%)=反応器生成ガス排出口プロピレン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/反応器生成ガス排出口総カーボンモル流量(mol/Hr)×100
・ブテン収率(%)=反応器生成ガス排出口ブテン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/反応器生成ガス排出口総カーボンモル流量(mol/Hr)×100
ここでのブテン由来カーボンモル流量は、異性体を区別せずに扱うこととする。
・C5+収率(%)=反応器生成ガス排出口C5+由来カーボンモル流量(mol/Hr)/反応器生成ガス排出口総カーボンモル流量(mol/Hr)×100
・パラフィン収率(%)=反応器生成ガス排出口パラフィン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/反応器生成ガス排出口総カーボンモル流量(mol/Hr)×100
・芳香族化合物収率(%)=反応器生成ガス排出口芳香族化合物由来カーボンモル流量(mol/Hr)/反応器生成ガス排出口総カーボンモル流量(mol/Hr)×100
(反応生成ガス)
反応器生成ガス排出口ガス(反応器排出ガス)としては、反応生成物であるエチレン、原料であるプロピレン、炭素数4以上の炭化水素、パラフィン、芳香族化合物、及び希釈剤を含む混合ガスが得られる。前記混合ガス中のエチレンの濃度は、特に限定されないが、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、通常95質量%以下、好ましくは90質量%以下である。前記混合ガス中のエチレン濃度が上記範囲にあることで、分離・精製の負荷を低減することができる点で好ましい。
反応条件によっては反応生成ガス中に未反応原料としてプロピレンが含まれるが、エチレンの選択率が低い場合、すなわち、副生物の選択率が高い場合には、原料ロスにつながり、製造コストが高くなるため、プロピレンの転化率を下げた条件でも、エチレンの選択率が高くなる条件で運転することが好ましいケースもある。本発明では、所望により、エチレン以外の成分を分離・回収してもよい。所望の成分を分離・回収した残分には、軽質パラフィン、軽質オレフィン、芳香族化合物等を含む。この残分の少なくとも一部を、前述した原料ガスの一部に混合して、いわゆるリサイクルガスとして用いることができる。
(反応生成ガスの分離)
反応器出口ガスとしての、反応生成物であるエチレン、未反応原料、副生成物及び希釈剤を含む混合ガスは、公知の分離・精製設備に導入し、それぞれの成分に応じて回収、精製、リサイクル、排出の処理を行えばよい。
(リサイクル)
エチレン以外の成分(オレフィン、パラフィン等)、特に炭素数4以上の炭化水素の一部または全ては、上記分離・精製された後に反応原料と混合するか、または直接反応器に供給することでリサイクルしてもよい。好ましくは、反応器の生成ガス排出口から排出される生成ガス中に含まれる炭素数4以上の炭化水素のうち、少なくとも10%を、反応器に循環させることが好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上が更に好ましい。また、副生成物のうち、反応に不活性な成分は希釈剤として再利用することができる。
(触媒再生)
前記のプロピレン及び炭素数4以上の炭化水素(C4+とも称する。)の転化を経て、転化率が低下した触媒を再生させることにより、エチレン収率の変動幅を最小限に抑えて、安定にエチレンを製造することができる。なお、本発明において、触媒の再生とは、プロピレン及びC4+の転化率の低下した状態の触媒を、再生処理前よりも高い転化率を示す状態にすることを意味するものとする。
プロピレン及び炭素数4以上の炭化水素の転化に伴い、触媒に蓄積されたコーク成分の量が増加する。該コーク成分の蓄積量が増加した触媒を、触媒を再生させる工程に供する際の、触媒に蓄積されたコーク成分の量としては、通常0質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上、特に好ましくは3.0質量%以上、特に好ましくは5.0質量%以上であり、通常30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以下である。再生工程に供する触媒に蓄積されたコーク成分の量が前記範囲にあることで、再生工程において、再生ガス及び分解ガスの触媒中の拡散を担保することができ、効果的に触媒活性を回復できるため好ましい。この再生工程では、触媒に蓄積されたコーク成分の量を適度に低減しつつ、触媒活性を回復させることができるため、エチレンを高い収率で安定的に製造することができる。
触媒を再生させる工程に特段の制限はない。例えば、プロピレン及び炭素数4以上の炭化水素からエチレンを製造する際に、触媒のコーク含有量が増加した段階で、プロピレン及び炭素数4以上の炭化水素の供給を停止した後に、反応器内に再生に用いるガス(以後、再生ガスということがある)を供給することにより、コーク含量が増加した触媒を、再生ガスに接触させることができる。また、コーク含量が増加した触媒を、プロピレン及び炭素数4以上の炭化水素を触媒と接触させる工程の反応器から取り出して、触媒を再生させる工程の反応器に移動させ、該触媒に再生に用いるガスを供給して触媒を再生させてもよい。
特に、固定床反応器を使用して上記のプロピレン及び炭素数4以上の炭化水素の転化工程を行う場合、触媒に蓄積されたコーク量が上記の上限値以上となった場合に、原料の供給を停止した後に、反応器内に再生ガスを供給して該触媒と接触させることができる。また、触媒を、上記反応器から抜きだして、反応器とは別の反応器に該触媒を充填してから再生ガスに接触させてもよい。
また、移動床反応器又は流動床反応器を使用して、プロピレン及び炭素数4以上の炭化水素の転化工程を行う場合、前記反応器とは別に再生ガスと触媒を接触させるための装置を付設し、該反応器から抜き出した触媒を連続的に該装置に送り、該装置において触媒を再生ガスに接触させて、その後、再生ガスに接触させた触媒を連続的に反応器に戻しながらエチレン製造の反応を行うことが好ましい。
なお、触媒を再生させる工程に用いるガスとしては特段の制限はないが、好適な例として、酸素、水素、及び水蒸気から選択される少なくとも1種を含有するガスが挙げられる。具体的な再生方法としては、酸素を含む再生ガスとして用いる燃焼再生、水蒸気(水)を再生ガスとして用いる水蒸気改質再生、水素を再生ガスとして用いる水素化クラッキングなどが挙げられる。これらの中でも、再生ガスとして、好ましくは、酸素又は水素を含むガスであり、より好ましくは水素を含むガスである。
酸素の製造方法としては特に限定されず、大気中の空気から深冷分離された酸素、過酸化水素より生成した酸素などが挙げられ、大気中の空気から回収されたものが好ましい。酸素を含有するガスとして、大気中の空気をそのまま使用してもよい。
水蒸気(水)の製造方法としては特に限定されず、通常の水を蒸発させたものを使用することができる。水道水、脱塩水、プラントのプロセスウォーター等、各種の製造方法により得られる水を任意に用いることができる。
水素を含むガスに含まれる水素の製造方法は特に限定されず、例えば、メタンおよびメタノールの水蒸気改質による得られるもの、炭化水素の部分酸化で得られるもの、炭化水素を二酸化炭素で改質することにより得られるもの、石炭のガス化によって得られるもの、IS(Iodine−Sulfur)プロセスに代表される水の熱分解によって得られるもの、光電気化学反応より得られるもの並びに水の電気分解で得られるもの等、各種の製造方法により得られるものを任意に用いることができる。
これら以外のガスが任意に混合されているものを用いてもよく、精製した水素を用いてもよい。
酸素、水素、水蒸気を含むガスに含まれるこれら以外のガスとしては、安全上問題のない場合には、例えば、ヘリウム、アルゴン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、パラフィン類、メタン等の炭化水素類等が含まれていても良い。このうち、反応性が低い点で、ヘリウム、窒素、二酸化炭素、およびパラフィン類、メタンが好ましい。
再生ガス全体の圧力(全圧)は、特に限定されるものではないが、絶対圧で、通常0.01MPa(絶対圧、以下同様)以上、好ましくは0.05MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上、さらに好ましくは0.2MPa以上であり、通常5MPa以下、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.7MPa以下、さらに好ましくは0.5MPa以下である。圧力を上記範囲にすることで、再生効率を高めつつ、処理ガス中の炭化水素成分の分圧を低く抑えることができるため、高い触媒活性を維持することができる。
(水素分圧)
再生ガス中に、水素を含むガスは、特に限定されるものではないが、水素分圧が絶対圧で、通常0.001MPa以上、好ましくは0.01MPa以上であるが、より好ましくは0.03MPa以上、さらに好ましくは0.05MPa以上、特に好ましくは0.1MPa以上であり、通常4MPa以下、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.7MPa以下、さらに好ましくは0.5MPa以下、特に好ましくは0.3MPa以下である。水素分圧を上記の範囲とすることにより、触媒に蓄積されたコーク成分の除去・再形成が速やかに進行するため、高い原料転化活性、及び高いエチレン選択率を与える触媒状態に効率的にすることができる。また、高圧水素を製造するための設備・エネルギーを削減することができる。
再生ガスの空間速度は、特に限定されるものではないが、通常0.001Hr−1以上、好ましくは0.01Hr−1以上、より好ましくは0.1Hr−1以上であり、通常20Hr−1以下、好ましくは10Hr−1以下、より好ましくは5Hr−1以下である。重量空間速度を前記範囲に設定することで、触媒中に含まれる炭化水素成分や水蒸気の濃度を低減することができるため、原料転化活性を高いレベルで維持することが可能となる。さらに、触媒に蓄積されたコーク成分の分布を均一にすることができるため、触媒内での不均一な反応を抑制することができ、エチレン選択率を高めることが可能となる。
空間速度とは、触媒(触媒活性成分)の重量当たりの再生ガスの流量である。また、触媒の重量とは、触媒の造粒・成型に使用する不活性成分やバインダーを含まない活性成分(ゼオライト)の重量である。
再生工程の供給ガス中の再生ガスの濃度としては、特に限定されるものではないが、通常5体積%以上、好ましくは10体積%以上、より好ましくは30体積%以上であり、通常100体積%以下、好ましくは90体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。再生ガス濃度は高い方が好ましく、通常5体積%以上、好ましくは30体積%以上、より好ましくは60体積%以上であり、通常100体積%以下である。再生ガス濃度を前記範囲とすることで、触媒と再生ガスとの接触が十分なものとなり、コーク成分の除去・再形成が速やかに進行するため、高い原料転化活性、及び高いエチレン選択率を与える触媒状態に効率的にすることができる。
触媒と再生ガスとを接触させる温度(以下、「再生温度」と称することがある)としては、特に限定されるものではないが、通常300℃以上、好ましくは400℃以上、より好ましくは500℃以上、さらに好ましくは525℃以上、特に好ましくは550℃以上であり、通常800℃以下、好ましくは700℃以下、より好ましくは650℃以下、さらに好ましくは600℃以下である。再生度を前記の範囲とすることで、コーク成分の除去が速やかに進行するため、触媒活性を高い状態で保つことができる。さらに、触媒の構造崩壊が抑制されるため、触媒寿命を維持できる点で好ましい。
再生ガスと接触させる時間としては、特に限定されるものではないが、通常1秒以上、好ましくは10秒以上、より好ましくは1分以上、さらに好ましくは5分以上であり、通常5時間以下、好ましくは2時間以下、より好ましくは1時間以下である。再生ガスの濃度や処理温度によっても適切な時間は変わるため、適宜調整することが好ましい。再生ガスと接触させる装置が流動床装置である場合には、上記の処理時間は、該装置内の触媒の滞留時間を意味する。
本発明の第4の実施形態は、炭化水素と、ゼオライトを活性成分とする触媒と、を反応器中で接触させてエチレンを製造する方法であって、前記炭化水素が少なくとも炭素数4以上の炭化水素を含み、かつ、前記ゼオライトが少なくとも酸素8員環構造を有し、全酸量に対する外表面酸量の割合が3%以下である。以下、本実施形態について詳細に説明するが、第3の実施形態と異なる点を説明し、その他は第3の実施形態の説明を適宜参照できる。
<D1.触媒>
本実施形態で用いる触媒について説明する。本実施形態に係る反応に用いられる触媒としては、炭化水素からエチレンを製造できるものであり、少なくとも酸素8員環構造を有するゼオライトであり、かつ、全酸量に対する外表面酸量の割合が3%以下であれば、特に限定されない。ゼオライトについては、第3の実施形態での説明を参照できる。
本実施形態では、ゼオライトの外表面酸量は、ゼオライトの全酸量に対して3%以下である。ゼオライトの全酸量に対する外表面酸量の割合は、小さければ小さいほど好ましく、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%、最も好ましくは0%である。外表面酸量の割合を上記の範囲とすることで、原料として用いる炭素数4以上の炭化水素中に含まれる直鎖オレフィンが、酸素8員環細孔の形状選択性が発現するゼオライト結晶内部でのみ反応することで、分子サイズの小さいエチレン(動的分子径:0.39nm)、プロピレン(動的分子径:0.45nm)が高選択的に得られ易く、イソブテン(動的分子径:0.50nm)のような分子サイズの大きい分岐オレフィンは酸素8員環細孔を拡散し難いため、副生を抑制することができる。また、同様に、反応点が結晶内部に制限されるため、原料である炭素数4以上の炭化水素中に含まれる直鎖オレフィン(直鎖ブテン、直鎖ペンテンなど)の分岐オレフィン(イソブテン、イソペンテンなど)への異性化を抑制することができる。さらに、結晶内部で生成したエチレンやプロピレンが、ゼオライトの形状選択性が効かない外表面酸点での副反応により消費されることを抑制することができるため、高いエチレン選択率を維持してエチレンを製造することができる。
<D2.エチレンの製造方法>
本実施形態のエチレンの製造方法は、炭化水素と、ゼオライトを活性成分とする触媒とを反応器中で接触させてエチレンを製造する方法であって、前記炭化水素が少なくとも炭素数4以上の炭化水素を含み、かつ、前記ゼオライトが少なくとも酸素8員環構造を有し、全酸量に対する外表面酸量の割合が3%以下である。以下に各工程について詳細に説明するが、第3の実施形態と異なる点を説明し、その他は第3の実施形態の説明を適宜参照できる。
炭素数4以上の炭化水素原料の製造方法についても限定されるものではなく、例えば、石油供給原料から接触分解法または蒸気分解法等により製造されるもの(C4ラフィネート−1、C4ラフィネート−2等)、石炭のガス化により得られる水素/CO混合ガスを原料としてFT(フィッシャートロプシュ)合成を行うことにより得られるもの、エチレンの二量化反応を含むオリゴマー化反応により得られるもの、炭素数4以上のパラフィンの脱水素法または酸化脱水素法により得られるもの、MTO反応によって得られるもの、アルコールの脱水反応によって得られるもの、炭素数4以上のジエン化合物の水素化反応により得られるもの等の、公知の各種方法により得られるものを使用することができる。このとき各製造方法に起因する炭素数4以上のオレフィン以外の化合物が任意に混合した状態のものをそのまま用いてもよいし、精製したものを用いてもよい。
なお、原料である炭化水素は、炭素数4以上の炭化水素以外の炭化水素(以下、「その他の炭化水素」ということがある。)を含有していてもよく、例えばメタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、メチルアセチレン等の炭素数3以下の炭化水素を含んでいてもよい。また、メタノールやジメチルエーテルを含んでいてもよく、その混合割合に制限はない。
通常、炭素数4以上の炭化水素からのエチレン製造において、目的生成物であるエチレンは、原料である炭化水素中に含まれていてもよいが、触媒との接触によりプロピレン、ブテンやヘキセン等の別のオレフィンに変換されやすいため、エチレンを分離した状態の原料として用いることが好ましい。原料である炭化水素中に含まれるエチレンに対する炭素数4以上の炭化水素の質量比は、特に限定されるものではないが、通常1以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上であり、特に好ましくは30以上であり、大きければ大きいほどよい。上記比率が高いほど、目的生成物であるエチレンの消費を抑えることができ、効率的にエチレンを製造することができる。
また、プロピレンは、同一の触媒との接触により、一部エチレンに変換され、エチレン収率を向上させることができるため、原料中に含まれていてもよく、本反応により生成したプロピレンをリサイクルして利用することもできる。原料である炭化水素中に含まれる炭素数4以上の炭化水素に対するプロピレンの質量比は、特に限定されるものではないが、通常0以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.2以上であり、通常1000以下、好ましくは100以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下である。
本実施形態において、転化率は次の式により算出される値である。なお、C4+成分とは、炭素数4以上の炭化水素の合計を示す。
炭素数4以上の炭化水素(C4+成分)転化率(%)=〔[反応器原料投入口C4+成分(mol/Hr)−反応器生成ガス排出口C4+成分(mol/Hr)]/反応器原料投入口C4+成分(mol/Hr)〕×100
なお、ここでの転化率の算出は、炭素数4以上の炭化水素として導入した成分を基準として算出することとし、その異性体については同一成分として扱うことにする。例えば、1−ブテンのみを原料として用いた場合、上記の転化率は、以下の通り算出する。このとき、ブテン以外の炭素数4以上の炭化水素は、「原料以外の炭素数4以上の炭化水素」として生成物として扱うこととする。
炭素数4以上の炭化水素(C4+成分)転化率(%)=〔[反応器原料投入口1−ブテン(mol/Hr)−反応器生成ガス排出口ブテン(異性体混合物)(mol/Hr)]/反応器原料投入口1−ブテン(mol/Hr)〕×100
本実施形態における選択率とは、以下の各式により算出される値である。下記の各式において、エチレン、プロピレン、原料以外の炭素数4以上の炭化水素(原料以外C4+)、パラフィンおよび芳香族化合物等の炭化水素の「由来カーボン流量(mol/Hr)」とは、各炭化水素を構成する炭素原子のモル流量を意味する。尚、パラフィンは炭素数1から4のパラフィンの合計、芳香族化合物はベンゼン、トルエン、キシレンの合計、原料以外のC4+は、原料及び前記芳香族化合物を除いた炭素数4以上の炭化水素の合計である。
・エチレン選択率(%)=〔反応器生成ガス排出口エチレン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[反応器生成ガス排出口総カーボンモル流量(mol/Hr)−反応器出口C4+成分由来カーボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
・プロピレン選択率(%)=〔反応器生成ガス排出口プロピレン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[反応器生成ガス排出口総カーボンモル流量(mol/Hr)−反応器生成ガス排出口C4+成分由来カーボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
・原料以外のC4+選択率(%)=〔反応器生成ガス排出口原料以外のC4+由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[反応器生成ガス排出口総カーボンモル流量(mol/Hr)−反応器生成ガス排出口C4+成分由来カーボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
・パラフィン選択率(%)=〔反応器生成ガス排出口パラフィン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[反応器生成ガス排出口総カーボンモル流量(mol/Hr)−反応器生成ガス排出口C4+成分由来カーボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
・芳香族化合物選択率(%)=〔反応器生成ガス排出口芳香族化合物由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[反応器生成ガス排出口総カーボンモル流量(mol/Hr)−反応器生成ガス排出口C4+成分由来カーボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
なお、本実施形態における収率とは、前記原料転化率と、生成した各成分の選択率の積により求められ、具体的にエチレン収率、プロピレン収率は、それぞれ次の式で表される。
・エチレン収率(%)=C4+成分転化率(%)×エチレン選択率(%)/100
・プロピレン収率(%)=C4+成分転化率(%)×プロピレン選択率(%)/100
以下に実施例A〜D(それぞれ第1の実施形態〜第4の実施形態に対応)を示して、本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
(実施例A)
<触媒調製例A1>
水酸化ナトリウム(キシダ化学製)2.09gおよび25重量%のN,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムハイドロキサイド水溶液(セイケム製、25質量%)47.3gを順次、水89.6gに溶解し、次に水酸化アルミニウム(Aldrich製、酸化アルミニウム換算で50〜57重量%)4.27gを加え混合した後に、シリカ源としてコロイダルシリカSI−30(SiO 30重量%、Na 0.3重量%、日揮触媒化成製)111gを加えて十分攪拌した。さらに加えたSiOに対して10重量%のCHA型ゼオライト(SiO/Al比25、平均一次粒子径約200nm)を種結晶として加えてさらに攪拌した。次いで、このゲルを1000mlのオートクレーブに仕込み、自圧下、250rpmで攪拌しながら、160℃で20時間、水熱合成を行った。生成物を濾過、水洗した後、乾燥させた。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がCHA相であることを確認した。XRF分析より、SiO/Al比は22であった。ゼオライトの平均一次粒子径は、SEM(JSM−6010LV)より、約100nmであった。
水熱合成により得られたCHA型ゼオライトを、空気流通下580℃で6時間焼成を行い、次いで、1Mの硝酸アンモニウム水溶液で80℃、1時間のイオン交換を2回行い、100℃で乾燥した後、空気流通下、500℃で6時間焼成し、プロトン型のCHA型ゼオライトを得た。
上記プロトン型のCHA型ゼオライト2.0gに対して、溶媒としてトルエン20ml、シリル化剤としてテトラエトキシシラン5mlを加えて、攪拌しながら70℃で4時間加熱処理を行った。反応終了後、濾過によって固液を分離し、固形分を100℃で乾燥させることにより、シリル化されたプロトン型のCHA型ゼオライトを得た(触媒A)。このゼオライトの全酸量は0.66mmol/g、外表面酸量は0.002mmol/gであった。さらに、650℃で、常圧にて50%水蒸気(水蒸気/空気=50/50(体積/体積))流通下、5時間処理することにより、水蒸気処理及びシリル化されたプロトン型のCHA型ゼオライトを得た(触媒A1)。
<触媒調製例A2>
水酸化ナトリウム(キシダ化学製)0.570gおよび25重量%のN,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムハイドロキサイド水溶液(セイケム製、25質量%)13.5gを順次、水15.8gに溶解し、次に水酸化アルミニウム(Aldrich製、酸化アルミニウム換算で50〜57重量%)0.152gを加え混合した後に、シリカ源としてコロイダルシリカST−40(SiO 40重量%、Na 0.4重量%、日産化学工業製)12.0gを加えて十分攪拌した。さらに加えたSiOに対して5重量%のCHA型ゼオライト(SiO/Al比25、平均一次粒子径約200nm)を種結晶として加えてさらに攪拌した。次いで、このゲルを100mlのオートクレーブに仕込み、自圧下、15rpmで攪拌しながら、140℃で6日間、水熱合成を行った。生成物を濾過、水洗した後、乾燥させた。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がCHA相であることを確認した。XRF分析より、SiO/Al比は53であった。ゼオライトの平均一次粒子径は、約300nmであった。
上記水熱合成により得られたCHA型ゼオライトを、空気流通下580℃で6時間焼成を行い、次いで、1Mの硝酸アンモニウム水溶液で80℃、1時間のイオン交換を2回行い、100℃で乾燥した後、空気流通下、500℃で6時間焼成し、プロトン型のCHA型ゼオライトを得た(触媒A2)。
<実施例A1>
触媒A1を用いて、プロピレンを原料として、エチレンの合成反応を行った。反応には、常圧固定床流通反応装置を用い、内径6mmの石英反応管に、上記触媒200mgと石英砂300mgの混合物を充填した。プロピレンと窒素を、プロピレンの重量空間速度が0.12Hr−1で、プロピレン10体積%と窒素90体積%となるように反応器に供給し、500℃、0.1MPa(絶対圧)でエチレンの合成反応を3.33時間実施した。次いで、100体積%の水素ガスを、空間速度25mmol/(Hr・g−cat)で反応器に供給し、525℃、0.1MPa(絶対圧)の条件で1.00時間処理した(触媒再生工程)。再び上記の反応条件にて、エチレンの合成反応を1.58時間実施した。この反応工程と再生工程を繰り返すことで、エチレンの合成反応を累積6.50時間実施した。反応器出口ガスは、ガスクロマトグラフィーにより分析した。エチレンの合成反応の反応成績を表1に示した。また、累積反応時間に対するエチレンの収率の変化を図1に示す。反応工程後の触媒に蓄積されたコーク量は17質量%であり、再生工程後の触媒に蓄積されたコーク量は14質量%であった。
Figure 2019124519
<比較例A1>
実施例A1の反応条件にて、触媒再生工程を経ることなく、エチレンの合成反応を7.08時間実施した以外は、実施例A1と同様の操作を行った。反応成績を表2に示した。また、累積反応時間に対するエチレンの収率の変化を図1に示す。
Figure 2019124519
<実施例A2>
触媒A2を用いて、プロピレンを原料として、エチレンの合成反応を行った。反応には、常圧固定床流通反応装置を用い、内径6mmの石英反応管に、上記触媒90mgと石英砂300mgの混合物を充填した。プロピレンと窒素を、プロピレンの重量空間速度が5.0Hr−1で、プロピレン40体積%と窒素60体積%となるように反応器に供給し、550℃、0.1MPa(絶対圧)でエチレンの合成反応を30分間実施した。次いで、室温まで降温した後、空気ガスを、0.1MPa(絶対圧)の条件で、空間速度100mmol/(Hr・g−cat)で反応器に供給し、昇温速度20℃/分で500℃まで昇温して、1分間保持した後、放冷した(触媒再生工程)。再び上記の反応条件にて、エチレンの合成反応を5分間実施した。反応器出口ガスは、ガスクロマトグラフィーにより分析した。エチレンの合成反応における、反応時間に対するプロピレン転化率の変化、およびプロピレン転化率−エチレン選択率の関係を図2に示す。反応工程後の触媒に蓄積されたコーク量は18質量%であり、再生工程後の触媒に蓄積されたコーク量は13質量%であった。なお、図2中、白抜き丸プロットは、エチレンの合成反応を30分間実施した後、触媒を再生させ、再度5分間反応を行った時の結果を示す。
<実施例A3>
触媒Aを用いて、プロピレンを原料として、エチレンの合成反応を行った。反応には、常圧固定床流通反応装置を用い、内径6mmの石英反応管に、上記触媒200mgと石英砂300mgの混合物を充填した。プロピレンと窒素を、プロピレンの重量空間速度が1.0Hr−1で、プロピレン20体積%と窒素80体積%となるように反応器に供給し、550℃、0.1MPa(絶対圧)でエチレンの合成反応を5分間実施した(反応工程)。次いで、100体積%の水素ガスを、空間速度100mmol/(Hr・g−cat)で反応器に供給し、550℃、0.1MPa(絶対圧)の条件で20分間処理した(触媒再生工程)。この反応工程と再生工程を繰り返すことで、エチレンの合成反応を累積18時間実施した。反応器出口ガスは、ガスクロマトグラフィーにより分析した。累積反応時間に対するエチレンの収率の変化を図3に示す。
<実施例A4>
触媒Aを用いて、プロピレンを原料として、エチレンの合成反応を行った。反応には、常圧固定床流通反応装置を用い、内径6mmの石英反応管に、上記触媒200mgと石英砂300mgの混合物を充填した。プロピレンと窒素を、プロピレンの重量空間速度が5.0Hr−1で、プロピレン20体積%と水素50体積%と窒素80体積%となるように反応器に供給し、650℃、0.1MPa(絶対圧)でエチレンの合成反応を3分間実施した(反応工程)。次いで、100体積%の水素ガスを、空間速度500mmol/(Hr・g−cat)で反応器に供給し、650℃、0.1MPa(絶対圧)の条件で40分間処理した(触媒再生工程)。この反応工程と再生工程を繰り返すことで、エチレンの合成反応を累積6時間実施した。反応器出口ガスは、ガスクロマトグラフィーにより分析した。エチレンの合成反応における、反応時間に対するプロピレン転化率およびエチレン選択率の変化を表3及び図4に示す。反応工程後の触媒に蓄積されたコーク量は16質量%であった。
Figure 2019124519
実施例A1〜A4では、触媒とプロピレンとの接触工程(I)でエチレン収率の低下した触媒を触媒再生工程(II)に供することにより、長時間にわたって、高いエチレン収率を維持してエチレンを製造することができることが分かった。一方、工程(II)を経ない比較例A1では、エチレン収率を維持することができず、エチレン収率は5%まで低下した。これより、プロピレンからのエチレンの製造方法において、プロピレンとの接触工程(I)と、触媒再生工程(II)を有することで、安定に効率的にエチレンを製造することができることが分かった。
(実施例B)
<触媒調製例B1>
水酸化ナトリウム(キシダ化学製)2.09gおよび25重量%のN,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムハイドロキサイド水溶液(セイケム製、25質量%)47.3gを順次、水89.6gに溶解し、次に水酸化アルミニウム(Aldrich製、酸化アルミニウム換算で50〜57重量%)4.27gを加え混合した後に、シリカ源としてコロイダルシリカSI−30(SiO 30重量%、Na 0.3重量%、日揮触媒化成製)111gを加えて十分攪拌した。さらに加えたSiOに対して10重量%のCHA型ゼオライト(SiO/Al比25、平均一次粒子径約200nm)を種結晶として加えてさらに攪拌した。次いで、このゲルを1000mlのオートクレーブに仕込み、自圧下、250rpmで攪拌しながら、160℃で20時間、水熱合成を行った。生成物を濾過、水洗した後、乾燥させた。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がCHA相であることを確認した。XRF分析より、SiO/Al比は22であった。ゼオライトの平均一次粒子径は、約100nmであった。
水熱合成により得られたCHA型ゼオライトを、空気流通下580℃で6時間焼成を行い、次いで、1Mの硝酸アンモニウム水溶液で80℃、1時間のイオン交換を2回行い、100℃で乾燥した後、空気流通下、500℃で6時間焼成し、プロトン型のCHA型ゼオライトを得た。
上記プロトン型のCHA型ゼオライト2.0gに対して、溶媒としてトルエン20ml、シリル化剤としてテトラエトキシシラン5mlを加えて、攪拌しながら70℃で4時間加熱処理を行った。反応終了後、濾過によって固液を分離し、固形分を100℃で乾燥させることにより、シリル化されたプロトン型のCHA型ゼオライトを得た。さらに、650℃で、常圧にて50%水蒸気(水蒸気/空気=50/50(体積/体積))流通下、5時間処理することにより、水蒸気処理及びシリル化されたプロトン型のCHA型ゼオライトを得た(触媒B1)。
<触媒調製例B2>
触媒B1を650℃で、常圧にて50%水蒸気(水蒸気/空気=50/50(体積/体積))流通下、5時間処理することにより、水蒸気処理及びシリル化されたプロトン型のCHA型ゼオライトを得た(触媒B2)。
<実施例B1>
触媒B1を用いて、プロピレンを原料として、エチレンの合成反応を行った。反応には、常圧固定床流通反応装置を用い、内径6mmの石英反応管に、上記触媒200mgと石英砂300mgの混合物を充填した。プロピレンと水素を、プロピレンの重量空間速度が0.23Hr−1で、プロピレン10体積%と水素90体積%となるように反応器に供給し、500℃、0.1MPa(絶対圧)でエチレンの合成反応を実施し、反応器出口ガスをガスクロマトグラフィーにより分析を行った。反応成績を表4に示した。反応後の触媒に蓄積されたコーク量は12質量%であった。
<比較例B1>
水素の代わりに窒素を用いて、プロピレン10体積%、窒素90体積%とした以外は、実施例B1と同様の操作を行った。反応成績を表4に示した。反応後の触媒に蓄積されたコーク量は18質量%であった。
<比較例B2>
水素の代わりに、水蒸気及び窒素の混合ガスを用い、プロピレン10体積%、水蒸気40体積%、窒素50体積%とした以外は、実施例B1と同様の操作を行った。反応成績を表4及び図5に示した。
Figure 2019124519
<実施例B2>
触媒B2を用いて、プロピレンを原料として、エチレンの合成反応を行った。反応には、常圧固定床流通反応装置を用い、内径6mmの石英反応管に、上記触媒200mgと石英砂300mgの混合物を充填した。プロピレンと窒素を、プロピレンの重量空間速度が0.12Hr−1で、プロピレン10体積%と窒素90体積%となるように反応器に供給し、500℃、0.1MPa(絶対圧)でエチレンの合成反応を3.33時間実施した。このときのプロピレン転化率は28.9%、エチレン選択率は55.7%、ブテン選択率は27.0%、エチレン収率は16.1%であった。上記反応後の触媒(以下これを「触媒B2A」という)に対して、100体積%の水素ガスを、水素の空間速度25mmol/(Hr・g−cat)で反応器に供給し、525℃、0.1MPa(絶対圧)の条件で1.00時間処理した。次いで、水素と接触させた触媒を用いて、再び上記の反応条件にて、エチレンの合成反応を実施した。0.33時間後の反応成績を表5に示した。
<比較例B3>
触媒B2Aに対して、100体積%の水素ガスの代わりに、100体積%の窒素ガスを用いて、窒素の空間速度25mmol/(Hr・g−cat)で反応器に供給した以外は実施例B2と同様の操作を行った。反応成績を表5に示した。
<比較例B4>
触媒B2Aに対して、100体積%の水素ガスの代わりに、50%水蒸気ガス(水蒸気/窒素=50/50(体積/体積))を、空間速度25mmol/(Hr・g−cat)で反応器に供給した以外は実施例B2と同様の操作を行った。反応成績を表5に示した。
Figure 2019124519
実施例B1より、キャリアガスとして水素を含むガスを用いて、プロピレンを触媒と接触させてエチレンを製造することにより、コーキング劣化が大きく抑制されたことで、触媒活性が安定し、比較例B1の窒素ガス、比較例B2の水蒸気/窒素ガスを希釈ガスとして用いた場合と比較して、高い収率で安定してエチレンを製造できることが分かった。
また、実施例B2では、プロピレン転化により継時的にエチレン収率の低下した触媒に対して水素ガスを接触させることで、窒素ガスを用いた比較例B3や水蒸気/窒素ガスを用いた比較例B4に対して、エチレン選択率を低下させることなく、効率的にエチレン収率を大幅に回復させることができることが分かった。
(実施例C)
<触媒調製例C1>
水酸化ナトリウム(キシダ化学製)2.09gおよび25重量%のN,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムハイドロキサイド水溶液(セイケム製、25質量%)47.3gを順次、水89.6gに溶解し、次に水酸化アルミニウム(Aldrich製、酸化アルミニウム換算で50〜57重量%)4.27gを加え混合した後に、シリカ源としてコロイダルシリカSI‐30(SiO 30重量%、Na 0.3重量%、日揮触媒化成製)111gを加えて十分攪拌した。さらに加えたSiOに対して10重量%のCHA型ゼオライト(SiO/Al比25、平均一次粒子径約200nm)を種結晶として加えてさらに攪拌した。次いで、このゲルを1000mlのオートクレーブに仕込み、自圧下、250rpmで攪拌しながら、160℃で20時間、水熱合成を行った。生成物を濾過、水洗した後、乾燥させた。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がCHA相であることを確認した。XRF分析より、SiO/Al比は22であった。ゼオライトの平均一次粒子径は、約100nmであった。
水熱合成により得られたCHA型ゼオライトを、空気流通下580℃で6時間焼成を行い、次いで、1Mの硝酸アンモニウム水溶液で80℃、1時間のイオン交換を2回行い、100℃で乾燥した後、空気流通下、500℃で6時間焼成し、プロトン型のCHA型ゼオライトを得た。
上記プロトン型のCHA型ゼオライト2.0gに対して、溶媒としてトルエン20ml、シリル化剤としてテトラエトキシシラン5mlを加えて、攪拌しながら70℃で4時間加熱処理を行った。反応終了後、濾過によって固液を分離し、固形分を100℃で乾燥させることにより、シリル化されたプロトン型のCHA型ゼオライトを得た(触媒C1)。このゼオライトの全酸量は0.66mmol/g、外表面酸量は0.002mmol/gであった。
<実施例C1>
触媒C1を用いて、プロピレン及びtrans−2−ブテンを原料として、エチレンの合成反応を行った。反応には、常圧固定床流通反応装置を用い、内径6mmの石英反応管に、上記触媒90mgと石英砂400mgの混合物を充填した。プロピレンの重量空間速度4.2Hr−1、trans−2−ブテンの重量空間速度0.8Hr−1、プロピレン35体積%、trans−2−ブテン5体積%、窒素60体積%となるよう反応器に供給し、500℃、0.1MPa(絶対圧)でエチレンの合成反応を10‐12分間実施した。反応器から排出される生成ガスは、ガスクロマトグラフィーにより分析した。エチレンの合成反応の反応成績を表6に示した。
<実施例C2>
プロピレンの重量空間速度3.5Hr−1、trans−2−ブテンの重量空間速度1.5Hr−1、プロピレン30体積%、trans−2−ブテン10体積%となるよう反応器に供給した以外は、実施例C1と同様の操作を行った。反応成績を表6に示した。
<実施例C3>
プロピレンの重量空間速度2.1Hr−1、trans−2−ブテンの重量空間速度2.9Hr−1、プロピレン20体積%、trans−2−ブテン20体積%となるよう反応器に供給した以外は、実施例C1と同様の操作を行った。反応成績を表6に示した。
<実施例C4>
プロピレンの重量空間速度1.0Hr−1、trans−2−ブテンの重量空間速度4.0Hr−1、プロピレン10体積%、trans−2−ブテン30体積%となるよう反応器に供給した以外は、実施例C1と同様の操作を行った。反応成績を表6に示した。
<比較例C1>
プロピレンのみを原料として、プロピレンの重量空間速度5.0Hr−1、プロピレン40体積%となるよう反応器に供給した以外は、実施例C1と同様の操作を行った。反応成績を表6に示した。
これらの実施例より、プロピレンとともに、特定量の炭素数4以上の炭化水素としてブテンを含む原料を用いると高いエチレン/プロピレン比率を安定して維持してエチレンを製造することができることが分かった。これらの結果は、炭素数4以上の炭化水素としてブテンを特定の割合含む原料を用いることにより、エチレン‐プロピレン‐ブテン間の平衡組成がエチレン側にシフトしたことに起因することを示唆する結果である。すなわち、プロピレン及び炭素数4以上の炭化水素を含む原料を用いることで、プロピレンからエチレンへの転換効率を高めることができ、かつ高いエチレン/プロピレン比の変動を緩和し、安定にエチレンを製造することができたものと考えられる。
Figure 2019124519
本実施形態により、プロピレン原料からの高い収率でエチレンを製造することができる。また、安定して高いエチレン/プロピレン比率を維持することができるため、プロセスの煩雑さや分離・精製の負荷を軽減することができる。
(実施例D)
<物性測定>
なお、以下の調製例において、合成で得られたゼオライトの結晶のX線回折(XRD)パターンは、PANalytical社製のX’Pert Pro MPDを用いて得た。X線源はCuKαであり(X線出力:40kV、30mA)、読込幅は0.016°である。
蛍光X線分析(XRF)は、島津製作所社製Rayny EDX−700を用いた。
ICP法による組成分析においては、フッ酸で試料を溶解して試料溶液を調製した。当該試料溶液を誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−AES)で測定した。得られたSi、Alの測定値から、試料のSiO/Al比を求めた。
ゼオライトの平均一次粒子径は、日本電子社製SEM(走査型電子顕微鏡)JSM−6010LVを用いて行った。
ゼオライト結晶表面のXPS(X線光電子分光法)測定は、PHI社製 Quantum2000を用いて、下記の条件にて行った。X線源:単色化Al−Kα、出力 16kV−34W(X線発生面積170μmφ)、帯電中和:電子銃(2μA)、イオン銃(1V)併用、分光系:パルスエネルギー 187.85eV@ワイドスペクトル,29.35eV@ナロースペクトル(C1s、Al2p),11.75eV@ナロースペクトル(O1s、Si2p)、測定領域:照射面積300μm□、取り出し角:45°(表面より)。
得られたSi、Alの測定値から、ゼオライト結晶表面のSiO/Al比を求めた。
<触媒調製例D1>
水酸化ナトリウム(キシダ化学製)2.09gおよび25重量%のN,N,N‐トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムハイドロキサイド水溶液(セイケム製,25質量%)47.3gを順次、水89.6gに溶解し、次に水酸化アルミニウム(Aldrich製,酸化アルミニウム換算で50〜57重量%)4.27gを加え混合した後に、シリカ源としてコロイダルシリカSI‐30(SiO 30重量%,Na 0.3重量%,日揮触媒化成製)111gを加えて十分攪拌した。さらに加えたSiOに対して10重量%のCHA型ゼオライト(SiO/Al比25、平均一次粒子径約200nm)を種結晶として加えてさらに攪拌した。次いで、このゲルを1000mlのオートクレーブに仕込み、自圧下、250rpmで攪拌しながら、160℃で20時間、水熱合成を行った。生成物を濾過、水洗した後、乾燥させた。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がCHA相であることを確認した。XRF分析より、SiO/Al比は22であった。ゼオライトの平均一次粒子径は、約100nmであった。
水熱合成により得られたCHA型ゼオライトを、空気流通下580℃で6時間焼成を行い、次いで、1Mの硝酸アンモニウム水溶液で80℃、1時間のイオン交換を2回行い、100℃で乾燥した後、空気流通下、500℃で6時間焼成し、プロトン型のCHA型ゼオライトを得た(触媒DA)。
上記プロトン型のCHA型ゼオライト2.0gに対して、溶媒としてトルエン20ml、シリル化剤としてテトラエトキシシラン5mlを加えて、攪拌しながら70℃で4時間加熱処理を行った。反応終了後、濾過によって固液を分離し、固形分を100℃で乾燥させることにより、シリル化されたプロトン型のCHA型ゼオライトを得た(触媒D1)。
<触媒調製例D2>
N,N,N‐トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムハイドロキサイド水溶液(セイケム製,25質量%)59.2g及び1M水酸化ナトリウム水溶液145.6gを順次、水371gに溶解し、次に水酸化アルミニウム(Aldrich製,酸化アルミニウム換算で50〜57重量%)8.90gを加え攪拌した後に、シリカ源としてフュームドシリカ42.1gを加えて2時間攪拌した。さらに加えたシリカ源由来のSiOに対して10重量%のCHA型ゼオライト(SiO/Al比15、平均一次粒子径約100nm)を種結晶として加えてさらに攪拌した。次いで、このゲルを1000mlのオートクレーブに仕込み、自圧下、150rpmで攪拌しながら、160℃で42時間、水熱合成を行った。生成物を濾過、水洗した後、乾燥させた。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がCHA相であることを確認した。XRF分析より、SiO/Al比は14であった。ゼオライトの平均一次粒子径は、約100nmであった。
水熱合成により得られたCHA型ゼオライトを、空気流通下580℃で6時間焼成を行い、次いで、1Mの硝酸アンモニウム水溶液で80℃、1時間のイオン交換を2回行い、100℃で乾燥した後、空気流通下、500℃で6時間焼成し、プロトン型のCHA型ゼオライトを得た(触媒DB)。
上記プロトン型のCHA型ゼオライト1.0gに対して、溶媒としてヘキサメチルジシロキサン10ml、シリル化剤としてテトラエトキシシラン2.5mlを加えて、攪拌しながら100℃で6時間加熱処理を行った。反応終了後、濾過によって固液を分離し、固形分を100℃で乾燥させることにより、シリル化されたプロトン型のCHA型ゼオライトを得た(触媒D2)。ICP分析より結晶全体のSiO/Al比は14であり、XPS分析より結晶表面のSiO/Al比は30であった。また、走査型電子顕微鏡の測定により、平均一次粒子径はおよそ100nmであった。
<実施例D1>
触媒D1を用いて、trans−2−ブテンを原料として、エチレンの合成反応を行った。反応には、常圧固定床流通反応装置を用い、内径6mmの石英反応管に、上記触媒90mgと石英砂400mgの混合物を充填した。trans−2−ブテンと窒素を、trans−2−ブテンの重量空間速度が5Hr−1で、trans−2−ブテン40体積%と窒素60体積%となるように反応器に供給し、500℃、0.1MPa(絶対圧)でエチレンの合成反応を8−10分間実施した。反応器から排出される生成ガスは、ガスクロマトグラフィーにより分析した。エチレンの合成反応の反応成績を表7に示した。
<実施例D2>
触媒D2を用いた以外は、実施例D1と同様の方法にて、エチレンの合成反応を10分間実施した。エチレンの合成反応の反応成績を表7に示した。
<比較例D1>
触媒DAを用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、エチレンの合成反応を10分間実施した。エチレンの合成反応の反応成績を表1に示した。
触媒として、形状選択性が効かない外表面酸点の割合を3%以下に低下させたゼオライトを使用したことにより、エチレン選択率が高く、エチレン収率自体は同等以上であり、かつイソブテン、すなわち原料としてリサイクルの難しい分岐オレフィンになってしまう割合は、大きく低下していることがわかる。
Figure 2019124519
本実施形態により、炭素数4以上の炭化水素、特にブテンやペンテン類を原料としてエチレンを製造する際、副反応を抑えて、高いエチレン選択率で製造することができ、かつ、原料炭化水素の分岐オレフィンへの異性化を抑制することができるエチレンの製造方法を提供する。これにより、直鎖オレフィンと分岐オレフィンの分離・精製に要する設備やエネルギーを削減することができ、炭素数4以上の炭化水素のリサイクル利用を容易にすることができる。

Claims (7)

  1. 反応器にプロピレンを供給し、触媒と接触させてエチレンを生成させる工程(I)と、前記工程(I)を経た触媒を再生させる工程(II)を有する、エチレンの製造方法。
  2. 前記工程(II)において、酸素、水素、及び水蒸気から選択される少なくとも1種を含むガスを触媒に接触させることにより、前記触媒を再生する、請求項1に記載のエチレンの製造方法。
  3. 前記工程(II)において、水素を含むガスを触媒に接触させることにより、前記触媒を再生する、請求項1又は2に記載のエチレンの製造方法。
  4. プロピレンと、触媒と、を反応器中で接触させてエチレンを製造する方法であって、
    前記触媒が、水素を含むガスに接触させた触媒である、エチレンの製造方法。
  5. 前記触媒が、プロピレンとの接触により生成したコークを含む触媒と、水素を含むガスと、を接触させた触媒である、請求項4に記載のエチレンの製造方法。
  6. 前記触媒と、水素を含むガスと、を、300℃以上の温度で接触させた触媒である、請求項4又は5に記載のエチレンの製造方法。
  7. 前記触媒が、水素分圧絶対圧で0.001MPa以上の水素を含むガスに接触させた触媒である、請求項4〜6のいずれか1項に記載のエチレンの製造方法。
JP2019560575A 2017-12-20 2018-12-20 エチレンの製造方法 Active JP7251481B2 (ja)

Applications Claiming Priority (9)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017244103 2017-12-20
JP2017244103 2017-12-20
JP2017244104 2017-12-20
JP2017244104 2017-12-20
JP2018078463 2018-04-16
JP2018078494 2018-04-16
JP2018078494 2018-04-16
JP2018078463 2018-04-16
PCT/JP2018/047090 WO2019124519A1 (ja) 2017-12-20 2018-12-20 エチレンの製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2019124519A1 true JPWO2019124519A1 (ja) 2020-12-10
JP7251481B2 JP7251481B2 (ja) 2023-04-04

Family

ID=66993515

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019560575A Active JP7251481B2 (ja) 2017-12-20 2018-12-20 エチレンの製造方法

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP7251481B2 (ja)
WO (1) WO2019124519A1 (ja)

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011078962A (ja) * 2009-08-11 2011-04-21 Mitsubishi Chemicals Corp 触媒の再生方法

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3072348B2 (ja) * 1997-12-16 2000-07-31 工業技術院長 低級オレフィンの製造方法
US8314280B2 (en) * 2009-03-20 2012-11-20 Lummus Technology Inc. Process for the production of olefins
JP2015131778A (ja) * 2014-01-10 2015-07-23 三菱化学株式会社 プロピレンの製造方法

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011078962A (ja) * 2009-08-11 2011-04-21 Mitsubishi Chemicals Corp 触媒の再生方法

Non-Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
CATALYSIS TODAY, vol. 303, JPN6022031612, 4 October 2017 (2017-10-04), pages 86 - 92, ISSN: 0004915113 *
JOURNAL OF CATALYSIS, vol. 314, JPN6022031613, 2014, pages 10 - 20, ISSN: 0004915114 *

Also Published As

Publication number Publication date
WO2019124519A1 (ja) 2019-06-27
JP7251481B2 (ja) 2023-04-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5545114B2 (ja) 触媒の再生方法
JP5614401B2 (ja) プロピレンの製造方法
JP2020505346A (ja) プロペン生成のための多段触媒系およびプロセス
JP7087636B2 (ja) ゼオライト触媒の処理方法及び低級オレフィンの製造方法
JP6699336B2 (ja) Aei型アルミノケイ酸塩の製造方法、該aei型アルミノケイ酸塩を用いたプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法
JP7156455B2 (ja) プロピレン及び直鎖ブテンの製造方法
US10155665B2 (en) Zeolite synthesis with dominant and secondary templates
JP6693095B2 (ja) Aei型ゼオライト、その製造方法、及びそれを用いた低級オレフィンの製造方法
WO2017151845A1 (en) High charge density silicometallophosphate molecular sieves
JP2002519281A (ja) モレキュラーシーブcit−6
WO2017204993A1 (en) High charge density metallophosphate molecular sieves
WO2017151864A1 (en) High charge density silicometallophosphate molecular sieves sapo-69
JP5978887B2 (ja) プロピレン及び直鎖ブテンの製造方法
CN113646081B (zh) 中孔催化剂化合物及其用途
JP2011079815A (ja) p−キシレンの製造方法
JP5811750B2 (ja) プロピレン製造用触媒の製造方法及びプロピレンの製造方法
JP2016098149A (ja) Aei型ゼオライトの製造方法
JP6977251B2 (ja) Aei型メタロケイ酸塩、その製造方法、及びそれを用いたプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法
JP6641705B2 (ja) プロピレン及び直鎖ブテンの製造方法
JPWO2011018966A1 (ja) 芳香族炭化水素の製造方法および前記製造方法に用いられる遷移金属含有結晶性メタロシリケート触媒
JP5499918B2 (ja) 触媒の再生方法
JP2011079818A (ja) プロピレンの製造方法
JP7251481B2 (ja) エチレンの製造方法
JP2017119267A (ja) 芳香族化合物製造触媒及び芳香族化合物の製造方法
JP2014042914A (ja) 変性ゼオライト触媒および該変性ゼオライト触媒を用いた不飽和炭化水素類の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210628

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220809

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20221007

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20221108

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20221214

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230221

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230306

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 7251481

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151