JPWO2019117297A1 - 転動部品の検査方法及び転動部品の検査装置 - Google Patents

転動部品の検査方法及び転動部品の検査装置 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2019117297A1
JPWO2019117297A1 JP2019534432A JP2019534432A JPWO2019117297A1 JP WO2019117297 A1 JPWO2019117297 A1 JP WO2019117297A1 JP 2019534432 A JP2019534432 A JP 2019534432A JP 2019534432 A JP2019534432 A JP 2019534432A JP WO2019117297 A1 JPWO2019117297 A1 JP WO2019117297A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
eddy current
detection
determination step
inspection
detection signal
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2019534432A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6601599B1 (ja
Inventor
大輔 小林
大輔 小林
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NSK Ltd
Original Assignee
NSK Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NSK Ltd filed Critical NSK Ltd
Application granted granted Critical
Publication of JP6601599B1 publication Critical patent/JP6601599B1/ja
Publication of JPWO2019117297A1 publication Critical patent/JPWO2019117297A1/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N27/00Investigating or analysing materials by the use of electric, electrochemical, or magnetic means
    • G01N27/72Investigating or analysing materials by the use of electric, electrochemical, or magnetic means by investigating magnetic variables
    • G01N27/82Investigating or analysing materials by the use of electric, electrochemical, or magnetic means by investigating magnetic variables for investigating the presence of flaws
    • G01N27/90Investigating or analysing materials by the use of electric, electrochemical, or magnetic means by investigating magnetic variables for investigating the presence of flaws using eddy currents

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Electrochemistry (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Investigating Or Analyzing Materials By The Use Of Magnetic Means (AREA)

Abstract

転動部品に対面して配置した励磁コイルに励磁電流を印加して磁場を発生させ、検出コイルから検出された渦電流の検出信号に応じて転動部品を検査する。励磁電流には、転動部品の表層部に渦電流を浸透させる周波数の表層検出用電流、及び表層部より深い深層部に渦電流を浸透させる周波数の深層検出用電流があり、表層検出用電流によって検出される表層検出信号と、深層検出用電流によって検出される深層検出信号を用いて、第1判定工程、第2判定工程、第3判定工程を実施する。そして、各工程の判定結果を組み合わせて転動部品の表面状態を判定する。

Description

本発明は、転動部品の検査方法及び転動部品の検査装置に関する。
転がり軸受の軌道輪などのような転動部品は、素材の切り出し加工、旋盤加工、熱処理、研削加工等の多くの加工工程を経て製作される。量産品においては、各工程で各種の要因により一定数の不良品が発生することが避けられない為、製品の検査により不良原因の特定と対策を施すことで不良率の低減が図られている。このため、生産性向上を目的として、さまざまな不具合の原因を短時間で正確に判定することが望まれている。
製品検査を行う技術として、高周波焼入等が施された鋼材の部品について、渦電流を用いて焼入パターン(焼入硬化層の分布)を検査し、この焼入パターンから良否を判別する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、渦電流測定法により得られる測定結果を変化率で比較して、金属材料中に斜めに傾いた欠陥が存在する場合、欠陥の傾きの検出、欠陥のサイズ及び位置の検出を可能とする渦電流検査方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。さらに、複数の周波数が設定された励磁電流を流して、該励磁電流の周波数に応じた浸透深さの透磁率を測定可能な磁気センサにより、工作物の表面の加工変質層を非破壊で検出する加工変質層検出装置が知られている(例えば、特許文献3参照)。そして、高周波の電流で外観キズの検査を行い、低周波の電流で異種材料の判別と焼入れ状態の判定を行う鋼球の検査方法(特許文献4参照)や、高周波磁化、超音波探傷、低周波励磁、磁粉探傷を順番に実施する管の非破壊検査方法(特許文献5)も知られている。
日本国特開2008−134106号公報 日本国特開昭62−36555号公報 日本国特許第5445054号公報 日本国特開2001−272379号公報
しかしながら、特許文献1の技術によれば、焼入が施された鋼材の部品について、非破壊検査によって焼入パターン切れの全数検査が可能となる。しかし、渦電流測定の測定値が閾値に超えるかの判断だけでは検出できない不具合が存在する。特許文献2の技術によれば、金属材料中の渦電流測定法で渦電流の変化を把握することで、欠陥のサイズ及び位置の検出は可能であるが、熱処理や研削などにより発生する不具合を検出することはできない。また、特許文献3の技術では、透磁率を検出できるセンサを利用して加工変質層(研削焼け又は切削焼け)を検出すると記載されているが、研削再焼入れによる不具合と、研削焼戻りによる不具合とを見分けることはできない。更に、透磁率以外の測定値を利用していない為、研削焼け、切削焼け以外の不具合を検出することができない。
さらに、特許文献1,2,3のいずれの検査方法も、転動部品の不具合の検出に特化するものではない為、転動部品の素材の切り出し加工、旋盤加工、熱処理、研削加工等の各加工工程で発生し得る不具合を夫々検出することができず、また、具体的な不具合の内容まで把握することもできない。
量産品の製造工程においては、工程起因の不具合が多種存在し、その検査には時間がかることが問題となっている。特に、転がり軸受の軌道輪のような転動部品は、被検査面の形状が複雑な為、通常に採用される目視検査には時間がかかる。また、目視だけでは検出できない不具合もある。
また、特許文献4は、漏洩磁束探傷、超音波探傷、磁粉探傷等を組み合わせた検査技術であるが、主に外観の検査に過ぎず、熱処理に伴う欠陥を検出することはできない。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、転動部品に生じた不具合の内容を特定でき、しかも、検査時間を短縮して生産性を向上できる転動部品の検査方法及び転動部品の検査装置を提供することにある。
本発明は下記構成からなる。
(1) 励磁コイルに励磁電流を印加して転動部品の内部に浸透させた渦電流を、前記転動部品と相対移動する検出コイルにより検出し、前記検出コイルから検出した検出信号に基づいて、前記転動部品の不具合を判定する転動部品の検査方法であって、
前記励磁電流には、前記転動部品の表層部に前記渦電流を浸透させる第1周波数の表層検出用電流、及び前記表層部より深い深層部に前記渦電流を浸透させる第2周波数の深層検出用電流があり、
前記表層検出用電流によって前記検出コイルから検出される電圧信号を表層検出信号、前記深層検出用電流によって前記検出コイルから検出される電圧信号を深層検出信号とした場合に、
前記表層検出信号の電圧値が、予め定めた第1の許容範囲内であるかを判定する第1判定工程と、
前記転動部品の一定距離を隔てた検査位置でそれぞれ検出される前記表層検出信号の変化率が、予め定めた第2の許容範囲内であるかを判定する第2判定工程と、
同一の前記検査位置における前記表層検出信号と前記深層検出信号との差が、予め定めた第3の許容範囲内であるかを判定する第3判定工程と、
前記第1判定工程、前記第2判定工程、前記第3判定工程の各判定結果を組み合わせて前記転動部品の不具合の有無と不具合内容を判定する状態判定工程と、
を有する転動部品の検査方法。
この転動部品の検査方法によれば、第1判定工程、第2判定工程、及び第3判定工程による、それぞれ異なる判定結果の組み合わせに応じて転動部品の表面状態を判定するので、不具合の具体的な内容を把握できる。これにより、判定結果を直ちに生産ラインにフィードバックして、転動部品の品質及び生産性を向上できる。
(2) 前記転動部品と前記検出コイルとを相対移動させて、前記転動部品の複数箇所から前記表層検出信号と前記深層検出信号を検出する(1)に記載の転動部品の検査方法。
この転動部品の検査方法によれば、転動部品と検出コイルとを相対移動させて表層検出信号と深層検出信号を検出するため、転動部品の複数箇所を個別に検査でき、転動部品の部分的な不具合を発見できる。
(3) 前記転動部品と前記検出コイルとの相対移動は、前記検出コイルを前記転動部品の周方向に沿って螺旋状に走査させる(2)に記載の転動部品の検査方法。
この転動部品の検査方法によれば、検出コイルを螺旋状に走査することで、一度に検出信号を取得でき、検査時間をより短縮できる。
(4) 前記転動部品は転がり軸受の軌道輪であり、
前記転動部品の検査方法は、磁場を発生させる前記励磁コイルと、前記渦電流を検出する前記検出コイルとを有する少なくとも一つの渦電流探傷プローブを前記転がり軸受の軌道輪に対面させ、前記渦電流探傷プローブから発生させた磁場により前記軌道輪の内部に浸透される渦電流を前記渦電流探傷プローブにより検出して、得られた検出信号に応じて前記軌道輪を検査する方法であり、
前記励磁コイルには、前記表層検出用電流と前記深層検出用電流とが印加され、
前記渦電流探傷プローブを、前記軌道輪の周方向に沿って螺旋状に走査させる請求項3に記載の転動部品の検査方法。
この転動部品の検査方法によれば、転がり軸受の軌道輪を、螺旋状に走査される渦電流探傷プローブによって効率よく検査できる。
(5) 前記転動部品は転がり軸受の軌道輪であり、
前記転動部品の検査方法は、磁場を発生させる前記励磁コイルと、前記渦電流を検出する前記検出コイルとを有する少なくとも一つの渦電流探傷プローブを前記転がり軸受の軌道輪に対面させ、前記渦電流探傷プローブから発生させた磁場により前記軌道輪の内部に浸透される渦電流を前記渦電流探傷プローブにより検出して、得られた検出信号に応じて前記軌道輪を検査する方法であり、
前記励磁コイルには、前記表層検出用電流と前記深層検出用電流とが印加され、
前記渦電流探傷プローブを、少なくとも前記軌道輪の周方向に沿って相対移動させる周方向走査によりステップ移動させ、
前記ステップ移動毎に前記検出コイルと対面する前記軌道輪の検査位置で、前記励磁コイルに前記表層検出用電流を印加して得られる前記表層検出信号と、前記深層検出用電流を印加して得られる前記深層検出信号とを取得する信号取得工程と、
取得された前記表層検出信号及び前記深層検出信号に応じて前記転がり軸受を検査する検査工程と、
を備え、
前記信号取得工程は、前記第1判定工程と、前記第2判定工程と、前記第3判定工程とを実施し、
前記検査工程は、前記状態判定工程を実施して、前記軌道輪の不具合の有無と不具合内容を判定する
(1)に記載の転動部品の検査方法。
この転動部品の検査方法によれば、第1判定工程、第2判定工程、及び第3判定工程による大量の検出信号を、第1工程、第2工程、及び第3工程の3つに分けた検出信号群として取得できる。その結果、判定工程毎の検出信号群の記憶処理や判定処理が簡単に行える。
(6) 前記渦電流探傷プローブを、前記検査位置における測定対象面の母線方向一端で前記周方向走査させて、前記軌道輪一周分の前記第1判定工程、前記第2判定工程、前記第3判定工程をそれぞれ実施し、
前記周方向走査の後、前記渦電流探傷プローブを更に前記母線方向に沿った母線方向走査によりステップ移動させ、当該ステップ移動後の位置で前記渦電流探傷プローブを前記周方向走査させて、前記軌道輪一周分の前記第1判定工程、前記第2判定工程、前記第3判定工程をそれぞれ実施することを、前記測定対象面の母線方向他端まで繰り返す、
(5)に記載の転動部品の検査方法。
この転動部品の検査方法によれば、軌道輪の同一周における第1判定工程、第2判定工程、及び第3判定工程の検出信号が母線方向の各位置において一度に取得される。したがって、各判定工程の母線方向に関する位置ずれが生じず、高精度な検査が行える。また、検出信号を取得するための渦電流探傷プローブの相対移動が、往動のための1回で終了するため、渦電流探傷プローブを複数回往復動させる場合に比べて、検査時間を短縮できる。
(7) 前記第1判定工程、前記第2判定工程は、前記軌道輪の前記検査位置における表層組織の厚さに応じて、前記検出コイルによる前記渦電流の検出感度を増減させる(4)〜(6)のいずれか一つに記載の転動部品の検査方法。
この転動部品の検査方法によれば、表層組織の厚さに応じて検出感度を増減させることで、より多くの表層組織から検出信号を取り出せ、測定精度を向上できる。
(8) 前記第1判定工程、前記第2判定工程、前記第3判定工程を、前記第1判定工程、前記第2判定工程、前記第3判定工程の順、又は前記第3判定工程、前記第1判定工程、前記第2判定工程の順で実施する(1)〜(6)のいずれか一つに記載の転動部品の検査方法。
この転動部品の検査方法によれば、第1判定工程では転動部品全体の再焼入れの可能性、焼き戻りの可能性の有無を判定し、第2判定工程では転動体部品の部分的な不具合の有無を判定する。また、第3判定工程では転動部品の深さ方向に関する変化の有無を判定する。このため、第1判定工程と第2判定工程とはこの順で実施することができるが、第3判定工程の実施は、第1、第2判定工程より先又は後のいずれであってもよい。これによれば、検査現場の諸事情によっては、第1判定工程及び第2判定工程と、第3判定工程との実施順序を適宜に変更でき、フレキシブルな対応が可能となる。
(9) 前記渦電流探傷プローブを前記検査位置の測定対象面の母線方向一端に配置して前記周方向走査させ、前記軌道輪一周分の前記第1判定工程を実施し、
前記渦電流探傷プローブを前記母線方向に沿った母線方向走査によりステップ移動させ、当該ステップ移動後の位置で前記渦電流探傷プローブを前記周方向走査させて、前記軌道輪一周分の前記第1判定工程を実施することを前記測定対象面の母線方向他端まで繰り返す第1工程と、
前記渦電流探傷プローブを前記測定対象面の母線方向一端で前記周方向走査させて、前記軌道輪一周分の前記第2判定工程を実施し、
前記渦電流探傷プローブを前記母線方向走査によりステップ移動させ、当該ステップ移動後の位置で前記渦電流探傷プローブを前記周方向走査させて、前記軌道輪一周分の前記第2判定工程を実施することを、前記測定対象面の母線方向他端まで繰り返す第2工程と、
前記渦電流探傷プローブを前記測定対象面の母線方向一端で前記周方向走査させて、前記軌道輪一周分の前記第3判定工程を実施し、
前記渦電流探傷プローブを前記母線方向走査によりステップ移動させ、当該ステップ移動後の位置で前記渦電流探傷プローブを前記周方向走査させて、前記軌道輪一周分の前記第3判定工程を実施することを、前記測定対象面の母線方向他端まで繰り返す第3工程と、をこの順で実施する(5)に記載の転動部品の検査方法。
この転動部品の検査方法によれば、大量の検出信号を、第1判定工程、第2判定工程、及び第3判定工程の3つに分けた検出信号群として取得できる。その結果、判定工程毎の検出信号群の記憶処理や判定処理が簡単に行える。
(10) 前記軌道輪は、一方の端面から他方の端面に向けて径方向の厚さが異なっており、
前記第1判定工程、前記第2判定工程、及び前記第3判定工程を実施する際に、前記軌道輪の測定対象面の母線方向一端から他端までの軌道輪幅内の領域を複数の分割領域に分割し、前記軌道輪幅の中間点よりも前記径方向の厚さが薄肉側となる前記分割領域の検査位置を、厚肉側となる前記分割領域の検査位置よりも先に判定する(4)〜(6)、(9)のいずれか一つに記載の転動部品の検査方法。
この転動部品の検査方法によれば、損傷の生じる確率が高い薄肉側が最初に判定される。薄肉側で許容範囲外の判定となれば、その時点で検査を終了させることができる。このため、損傷の生じる確率が高い転動部品の薄肉側を、いち早く判定を完了させ、判定結果が許容範囲外となった場合には、その転動部品における他の部位の検査を省略できる。よって、無駄な判定処理を省略でき、全ての部位を検査する場合と比較して、多数の転動部品を検査する場合のトータルの検査時間を短縮できる。
(11) 前記第1判定工程、前記第2判定工程は、前記軌道輪の前記検査位置における表層組織の厚さに応じて、前記励磁コイルに前記表層検出用電流に代えて前記深層検出用電流を印加し、前記表層検出信号に代えて前記深層検出信号を用いて判定する(4)〜(6)、(9)のいずれか一つに記載の転動部品の検査方法。
この転動部品の検査方法によれば、表層組織の厚さが渦電流を浸透させる高周波の限界浸入深さを超える厚さである場合に、励磁電流を高周波から低周波に切り替えることで、表層組織のより深い領域までを検査対象にできる。その結果、検査精度を低下させずに不具合の判定が可能となる。
(12) 転動部品の内部に渦電流を浸透させる励磁コイルと、
前記転動部品に誘導された前記渦電流を検出する検出コイルと、
前記転動部品と前記検出コイルとを相対移動させ、前記転動部品の検査位置を変更する相対移動機構と、
前記転動部品の表層部に前記渦電流を浸透させる第1周波数の表層検出用電流、及び前記表層部より深い深層部に前記渦電流を浸透させる第2周波数の深層検出用電流を、前記励磁コイルに印加する励磁コイル駆動部と、
前記検出コイルを前記相対移動させた前記転動部品の各検査位置で、前記励磁コイルに前記表層検出用電流を印加したときに前記検出コイルで得られる表層検出信号と、前記深層検出用電流を印加したときに前記検出コイルで得られる深層検出信号を取得する信号取得部と、
取得された前記表層検出信号と前記深層検出信号に応じて、前記転動部品の不具合の有無と不具合内容を判定する判定部と、
を備え、
前記判定部は、
前記表層検出信号の電圧値が、予め定めた第1の許容範囲内であるかを判定した第1判定結果と、
前記転動部品の一定距離を隔てた検査位置でそれぞれ検出される前記表層検出信号の変化率が、予め定めた第2の許容範囲内であるかを判定した第2判定結果と、
同一の前記検査位置における前記表層検出信号と前記深層検出信号との差が、予め定めた第3の許容範囲内であるかを判定した第3判定結果と、を組み合わせて前記転動部品の不具合の有無と不具合内容を判定する、
転動部品の検査装置。
この転動部品の検査装置によれば、転動部品の表面状態を判定する判定部が、第1判定結果と、第2判定結果と、第3判定結果とを組み合わせて転動部品の表面状態を判定するので、表面状態の不具合の有無とその具体的な内容とを、正確に把握することができる。
(13) 前記転動部品は転がり軸受の軌道輪であり、
前記励磁コイルと前記検出コイルとを有する少なくとも一つの渦電流探傷プローブを前記転がり軸受の軌道輪に対面させ、前記渦電流探傷プローブから発生させた磁場により前記軌道輪の内部に浸透される渦電流を前記渦電流探傷プローブで検出して、検出された前記渦電流の検出信号に応じて前記軌道輪の不具合を判定する転動部品の検査装置であって、
前記相対移動機構は、前記軌道輪と前記渦電流探傷プローブとを相対移動させ、前記軌道輪の検査位置を変更し、
前記励磁コイル駆動部は、前記表層検出用電流及び前記深層検出用電流を前記励磁コイルに印加し、
前記判定部は、前記軌道輪から検出された前記表層検出信号と前記深層検出信号に応じて、前記軌道輪の不具合の有無と不具合内容を判定する(12)に記載の転動部品の検査装置。
この転動部品の検査装置によれば、渦電流探傷プローブが軌道輪と相対移動して、各検査位置から検出信号を効率よく取得するので、検査時間を短縮して生産性を向上できる。
(14) 前記表層検出信号の電圧値が前記第1の許容範囲内であるかを判定する第1判定工程と、
前記表層検出信号の変化率が前記第2の許容範囲内であるかを判定する第2判定工程と、
同一の前記検査位置における前記表層検出信号と前記深層検出信号との差が前記第3の許容範囲内であるかを判定する第3判定工程とを、前記第1判定工程、前記第2判定工程、前記第3判定工程の順、又は前記第3判定工程、前記第1判定工程、前記第2判定工程の順で実施する(12)又は(13)に記載の転動部品の検査装置。
この転動部品の検査装置によれば、第1判定工程では転動部品全体の再焼入れの可能性、焼き戻りの可能性の有無を判定し、第2判定工程では転動体部品の部分的な不具合の有無を判定する。また、第3判定工程では転動部品の深さ方向に関する変化の有無を判定する。このため、第1判定工程と第2判定工程とはこの順で実施することが好ましいが、第3判定工程の実施は、第1、第2判定工程より先又は後のいずれであってもよい。これによれば、検査現場の諸事情によっては、第1判定工程及び第2判定工程と、第3判定工程との実施順序を適宜に変更でき、フレキシブルな対応が可能となる。
本発明によれば、転動部品に生じた不具合の内容を特定でき、しかも、いずれの不具合項目にも該当しない合格品の判別もできる。さらに、従来の目視検査と比べて、検査時間を短縮して生産性を向上できる。
本発明に係る転がり軸受の検査装置の概略構成図である。 図1のA方向矢視図である。 渦電流探傷プローブにより、つば付き内輪の軌道面、つば部内側面、内周面における渦電流をそれぞれ測定する様子を示す説明図である。 軌道輪の渦電流値を後述するX−Y座標系に変換した状態を模式的に示す説明図である。 渦電流探傷プローブを、フェライトコアの直径分ずつ移動させる様子を示す説明図である。 渦電流探傷プローブを複数備える場合の構成例を図1のA方向から見た矢視図である。 軌道輪の検査方法の手順を示すフローチャートである。 第1判定工程における軌道輪の回転角度に対する検出信号の電圧変化の様子を、第1の許容範囲と共に模式的に示す説明図である。 第1判定工程における第1の許容範囲内に表れた微小な不具合部を模式的に示す説明図である。 第2判定工程において一定距離を隔てた検査位置からの検出信号により、検出信号の変化率を求める様子を模式的に示す説明図である。 第2判定工程における軌道輪の回転角度に対する検出信号の変化率の分布を模式的に示す説明図である。 第3判定工程における表層検出信号と深層検出信号との差を求める様子を模式的に示す説明図である。 第3判定工程における軌道輪の回転角度に対する表層検出信号と深層検出信号との差の分布を模式的に示す説明図である。 (A)〜(G)は第1実施形態の検査順序を模式的に示す工程説明図である。 (A)〜(D)は第2実施形態の検査順序を模式的に示す工程説明図である。 (A)〜(D)は第3実施形態の検査手順を模式的に示す工程説明図である。 第4実施形態の検査の様子を模式的に示す工程説明図である。 被検査面における深さ方向の組織分布が、表層組織と深層組織とで互いに異なる場合の検査の様子を模式的に示す工程説明図である。 (A),(B),(C)は図18の各位置P,P,Pにおける高周波と低周波による渦電流の浸透深さを模式的に示す断面図である。 軌道面の電圧値を基準として渦電流の測定順を模式的に示す説明図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
ここでは、本発明に係る転動部品の検査方法及び検査装置を、転がり軸受の軌道輪を検査する場合を例に説明するが、検査対象となる転動部品は以下の各図面に示されるものに限らない。また、軌道輪の表面状態の不具合は、磁性の変化を伴う場合が多い。そこで本構成の転動部品の検査装置(以下、転がり軸受の検査装置と呼称する。)では、軌道輪における磁性の変化を磁気センサにより検出し、複数の異なる種類の検出信号から、軌道輪の表面状態の不具合の有無と、不具合の内容を判定している。
図1は転がり軸受の検査装置の概略構成図である。図2は図1のA方向矢視図である。
転がり軸受の検査装置100は、図1に示すように、転動部品である軌道輪11を移動自在に支持する載置台13と、渦電流探傷プローブ15と、軌道輪11と渦電流探傷プローブ15とを相対移動させる相対移動機構17と、励磁コイル駆動部19と、信号取得部21と、各部を統括して制御する制御部20と、を備える。
載置台13は、複数のローラ14が並設されてなり、ローラ14の上方に軌道輪11が載置される。軌道輪11は、各ローラ14と転がり接触してスムーズな移動が可能となっている。
渦電流探傷プローブ15は、励磁コイル22aと検出コイル22bとが一体に内蔵された円柱状の部材である。励磁コイル22aは、励磁コイル駆動部19に接続され、所定の周波数の交流電流(励磁電流)が、制御部20からの指令により励磁コイル駆動部19から印加されることで磁場を発生させ、その磁場により軌道輪11の内部に渦電流を浸透させる。
検出コイル22bは、軌道輪11の外周面11aに接触して、又は外周面11aの近傍に配置され、励磁コイル22aによって軌道輪11内に浸透された渦電流を、渦電流によるインピーダンス変化で検知する。検出コイル22bは信号取得部21に接続され、信号取得部21は、検出コイル22bのインピーダンス変化を検出信号として制御部20に出力する。
相対移動機構17は、軌道輪11と渦電流探傷プローブ15との相対移動により、軌道輪11の検査位置を変更する。具体的には、相対移動機構17は、制御部20からの指令に基づいて駆動される駆動モータ23と、駆動モータ23により回転駆動される駆動ローラ25と、一対の従動ローラである補助ローラ27,27(図2参照)とを備える。駆動ローラ25及び一対の補助ローラ27,27は、周方向に略等間隔で軌道輪11の外周面11aに接触して配設される。また、渦電流探傷プローブ15は、不図示の移動機構により軌道輪11の軸方向、周方向等、任意方向に移動可能に支持される。
駆動モータ23は、駆動ローラ25を回転駆動して、軌道輪11を図1に示す軸線Ax回りに回転させる。また、不図示の移動機構は、所定のタイミングで渦電流探傷プローブ15を軌道輪11の周方向に直交する方向にステップ移動させる。これにより、軌道輪11と渦電流探傷プローブ15との周方向、及び周方向に直交する方向の相対位置が変更される。なお、相対移動機構17は、軌道輪11と渦電流探傷プローブ15との相対位置が変更可能なものであればよく、図示例の構成に限らない。例えば、軌道輪11を周方向に直交する方向に移動させ、渦電流探傷プローブ15を軌道輪11の周方向に移動させるもの等、種々の相対移動機構が使用可能である。
励磁コイル駆動部19は、詳細を後述する互いに異なる第1周波数(高周波)と第2周波数(低周波)の励磁電流を渦電流探傷プローブ15の励磁コイル22aに選択的に印加する。
本実施形態では、透磁率、導電率及び結合係数の測定が可能な渦電流探傷プローブを使用している。導電率は電流の流れやすさを表し、結合係数は相互誘導の起こしやすさを表すものである。渦電流探傷プローブ15としては、例えば電子磁気工業のMT−7001を使用することができる。
信号取得部21は、励磁電流が渦電流探傷プローブ15の励磁コイル22aに印加されたときの、検出コイル22bで検出される検出信号を制御部20に出力する。制御部20は、信号取得部21から出力された検出信号に応じて、軌道輪11の表面状態を判定する判定部としても機能する。
つまり、転がり軸受の検査装置100は、渦電流探傷プローブ15の励磁コイル22aに励磁電流を流し、励磁電流によって誘導された磁場により軌道輪11に渦電流を浸透させる。そして、その渦電流により誘導された磁場によって変化する検出コイル22bのインピーダンス特性として得られる電圧値を、検出信号として検出する。
図3は渦電流探傷プローブ15により、つば付き内輪の軌道面、つば部内側面、内周面における渦電流をそれぞれ測定する様子を示す説明図である。
以下の測定例では、軌道輪11(図1参照)として内輪31を用いて説明するが、外輪であってもよい。被測定面は、軌道輪が内輪31の場合、軌道面33、つば部35、内周面37の少なくともいずれかであり、軌道輪が外輪(図示略)である場合、軌道面、つば部、外周面の少なくともいずれかである。また、本実施形態の内輪31は、一方の端面から他方の端面に向けて径方向の厚さが異なっている。
ここでは、内輪31を回転駆動するとともに、回転駆動される内輪31の被検査面に対面する渦電流探傷プローブ15を移動させて測定する形態を説明する。ただし、内輪31と渦電流探傷プローブ15との相対移動は上記例に限らず、渦電流探傷プローブ15を内輪31の周りで回転させる等、適宜変更が可能である。
軌道面33の測定においては、渦電流探傷プローブ15を軌道面33の母線方向一端に対向させて配置し、内輪31を回転させて周方向走査する。その間、渦電流探傷プローブ15は移動を停止したままで渦電流を測定する。
ここでいう母線とは、軌道輪の軸方向断面において測定面を示す線分を意味する。母線を軌道輪の軸線回りに一周回転させることで得られる面が測定対象面となる。
内輪31を1周回転させた後、渦電流探傷プローブ15を、軌道面33に沿って軌道面33の母線方向他端に向けてステップ走査(矢印s)する。そして、内輪31を回転させることにより渦電流探傷プローブ15を周方向走査させながら、渦電流を測定する。この周方向走査及び渦電流測定と、矢印sのステップ走査とを、軌道面33の母線方向一端から他端まで繰り返し実施する。
そして、内輪31の内周面37の測定においては、渦電流探傷プローブ15を、内周面37の母線方向一端に対向させて配置し、内輪31を回転させることにより渦電流探傷プローブ15を周方向走査させる。その間、渦電流探傷プローブ15により渦電流を測定する。内輪31を1周回転させた後、渦電流探傷プローブ15を内周面37の母線方向他端に向けて内周面37に沿ってステップ走査(矢印t)させる。そして、内輪31を回転させて渦電流探傷プローブ15を周方向走査させながら渦電流を測定する。この周方向走査及び渦電流測定と、矢印tのステップ走査とを、内周面37の母線方向一端から他端まで繰り返し実施する。
さらに、内輪のつば部35においては、渦電流探傷プローブ15を、つば部35のつば面に対面させて配置(矢印r方向への移動)し、内輪31を回転させることで渦電流探傷プローブを周方向走査させて渦電流を測定する。
これら周方向走査、矢印s,t方向の走査(測定対象面の母線方向走査)、及び矢印r方向の移動は、制御部20が相対移動機構17及び信号取得部21を駆動制御することにより行われる(信号取得工程)。
制御部20は、上記の周方向走査と母線方向走査とを組み合わせて、ステップ移動毎に得られる被検査面の渦電流測定結果に応じて、被検査面の表面状態を判定する(状態判定工程)。この推定結果により、内輪31の不具合を検査する(検査工程)。
次に、渦電流探傷プローブ15の構成及び渦電流を検出する手順について説明する。
図4は軌道輪の渦電流値を後述するX−Y座標系に変換した状態を模式的に示す説明図である。
軌道輪11からの検出信号は、電圧値として図4に模式的に示すように、X−Y座標上にプロットされる。図4には、焼入れ後、焼戻し処理 をしない軌道輪、及び異なる焼戻し温度で処理した軌道輪からの信号をプロットする手順を示してある。
このX−Y座標は、励磁コイル22aに励磁電流を印加したとき検出コイル22bから得られる検出信号(電圧信号)の大きさ(振幅値)を表すY値と、検出信号の励磁電流に対する位相差(位相遅れ)φに起因する値を表すX値(Ycosφ)とから定まる座標平面であり、検査位置における導電率及び透磁率に対するインピーダンスの関係を示す。
図1に示す信号取得部21による渦電流探傷プローブ15の検出コイル22bからの検出信号の取得に際しては、まず、検査する軌道輪11と同じ材料、同じ条件で熱処理したサンプルを基準試料として準備する。そして、基準試料の任意の1点において0点補正(ブリッジ回路のバランス調整)を行って出力電圧が0Vとなるように調整する。
即ち、検出信号には、例えば、リフトオフの影響等による電圧変化が現れる(図4の直線L参照)。このリフトオフの影響等を打ち消すためには、回転移動又は平行移動により0点補正をすればよい。具体的には、渦電流探傷プローブ15を、検査位置に接触する位置から離間させて測定し、測定結果が0点になるように補正する。
ここで、Y値は検査位置の導電率及び透磁率を反映する。検査位置の導電率及び透磁率が高くなると、渦電流発生に伴う磁束が増して検出信号(Y値)が大きくなり、逆に検査位置の導電率及び透磁率が低くなると、渦電流発生に伴う磁束が減って検出信号(Y値)が小さくなる。なお、軌道輪11のような導電性が高い材料ほど渦電流は大きくなるため、検出信号(Y値)も大きくなる。
このように、導電率及び透磁率は、軌道輪11の表面状態によって変化するので、導電率及び透磁率を、渦電流探傷プローブ15の検出コイルで測定することにより、軌道輪11の表面状態を判定することが可能となる。
渦電流の測定においては、軌道輪11を回転させ、軌道輪11の被検査面全体を測定する。渦電流探傷プローブ15は、被検査面全体を測定できるように、一周毎に渦電流探傷プローブ15を若干量、被検査面の母線方向(例えば軌道輪11の軸方向)へ移動させながら測定する。例えば、図5に示すように、渦電流探傷プローブ15を、コイルに用いたフェライトコアの直径d分ずつ、周方向と直交する方向(例えば軸方向)に移動させる。これにより、軌道輪一周分の測定が軸方向に繰り返され、被検査面の全面を測定することができる。測定は非接触で実施することが好ましく、渦電流探傷プローブ15と被検査面との距離を一定に保つようにする。この一定距離は、例えば±0.1mmまでを許容範囲とする。なお、上記した渦電流の検出は、渦電流探傷プローブ15を被検査面に接触させて行う接触式で実施してもよい。
図6は渦電流探傷プローブを複数備える場合の構成例を図1のA方向から見た矢視図である。
渦電流探傷プローブは複数箇所に設けてもよい。その場合、複数箇所の検査位置にそれぞれ渦電流探傷プローブ15A,15Bを対面させて配置する。これにより、各検査位置における測定を同時に実施することができる。
本構成では、渦電流探傷プローブ15Aと15Bとが互いに異なる位置、即ち、所定の中心角θとなる周方向位置に配置される。渦電流探傷プローブ15Aと15Bとは、同時に作動させても、交番に作動させてもよい。
また、渦電流探傷プローブ15A,15Bは、詳細を後述する高周波の励磁電流を印加する高周波用プローブ(第1プローブ)と、低周波の励磁電流を印加する低周波用プローブ(第2プローブ)であってもよい。これら高周波用プローブと低周波用プローブとを個別に備え、双方による測定を同時に行ってもよい。
また、高周波と低周波とを同時に測定する場合は、周波数が異なっていても同等の測定ができるように、検出感度を調整してから測定を実施する。このようにして取得された異なる位置における2つの検出信号は、検出と同時に、或いは全ての検出信号が取得された後に、同一位置での検出信号として扱えるように、データ処理がなされる。
次に、軌道輪11の検査方法の手順について説明する。
図7は軌道輪の検査方法の手順を示すフローチャートである。
まず、軌道輪11を、図1に示す載置台13上の駆動ローラ25と、一対の補助ローラ27とにより位置決めして、転がり軸受の検査装置100にセットする(S1)。その後、駆動モータ23により駆動ローラ25を回転させて軌道輪11を回転させる(S2)。
そして、軌道輪11の外周面に渦電流探傷プローブ15を接近させる(S3)。渦電流探傷プローブ15の先端部は、軌道輪11の測定面に、前述した±0.1mmを許容範囲とする一定距離で配置される。なお、軌道輪11の磁性の変化を精度よく測定するためには、測定に先立って測定対象である軌道輪11を脱磁するか、鉄などの磁性紛が測定部に付着しないように洗浄するとよい。そのため、この渦電流探傷プローブ15の接近動作時には、渦電流探傷プローブ15を洗浄することが望ましい。
次に、軌道輪11を回転させながら励磁コイル駆動部19から励磁電流を出力させる。そして、この励磁電流によって、渦電流探傷プローブ15の検出コイル22bから出力される検出信号、即ち、軌道輪11に発生した渦電流を測定する(S4)。
実際には、連続回転する軌道輪11に渦電流探傷プローブ15を対面配置して、所定のサンプリング周期で渦電流探傷プローブ15の検出コイル22bから検出信号を出力させる。これによれば、軌道輪11の回転方向に沿った一定間隔(好ましくは渦電流探傷プローブ15の直径d)毎に検出信号が検出される。
そして、軌道輪11が一周回転する毎に、渦電流探傷プローブ15を、フェライトコアからなる検出部位の径(プローブの直径)ずつ、不図示の移動機構により母線方向へ移動させる。このようにして、軌道輪11の測定面全面に対して検出信号を検出し、軌道輪11に発生した渦電流を測定する。
ここで、励磁コイル駆動部19からは、互いに異なる周波数である高周波数の励磁電流(表層検出用電流)と、低周波数の励磁電流(深層検出用電流)とが出力される。励磁電流が高周波の場合、軌道輪11の表層部に渦電流を浸透させ、低周波の場合、軌道輪11の深層部に渦電流を浸透させる。本実施形態では、高周波として100kHz〜1MHzの範囲、例えば200kHz程度の周波数に設定する。また、低周波として1kHz〜10kHzの範囲、例えば8kHz程度の周波数に設定する。具体的には、励磁電流が200kHzである場合は、軌道輪11の表面から約100μmの深さ位置を測定できる。また、励磁電流が8kHzである場合は、軌道輪11の表面から約600μmの深さ位置を測定することができる。
なお、励磁電流の周波数は、上記した設定例に限らず、高周波数として50kHz以上、低周波数としては0〜50kHzの範囲に設定されてもよい。
一般に、軌道輪11の材料の導電率が大きいほど、渦電流は表面欠陥に敏感に反応する。また、渦電流の浸透深さは、励磁電流の周波数にも依存する。励磁電流の周波数を高くすると、渦電流の浸透深さが浅くなり、表面近傍での検査分解能が向上する。周波数を低くすると、渦電流が材料の深くまで浸透する。そのため、低周波数の励磁電流では、高周波数の励磁電流を印加した場合よりも更に深層の材料中の探傷が可能となる。
つまり、材料中の探傷可能な体積を大きくする(磁界をより深く浸透させる)観点からは、励磁電流の周波数を低くした方が好ましい。また、材料表面の微細な不具合を検出する観点からは、励磁電流の周波数を高くした方がより敏感に反応するため好ましい。
測定の際、励磁コイル駆動部19は、高周波数と低周波数を含む励磁電流を渦電流探傷プローブ15の検出コイルに同時に印加してもよく、時間差を有して印加してもよい。高周波数の励磁電流は、軌道輪11の表層部に渦電流を浸透させる。また、低周波数の励磁電流は、軌道輪11の深層部に渦電流を浸透させる。即ち、高周波数による渦電流によって軌道輪11の表層部の状態が検査され、低周波数による渦電流によって軌道輪11の深層部の状態が検査される。このように、励磁電流の周波数の違いによって、検査対象領域を選択的に決定できる。
信号取得部21は、渦電流探傷プローブ15の検出コイル22bにより高周波数の励磁電流が印加された場合の検出成分を表層検出信号とし、低周波数の励磁電流が印加された場合の検出成分を深層検出信号とし、それぞれの信号を制御部20に出力する。
そして、制御部20は、検出された表層検出信号と深層検出信号とに基づいて軌道輪11の表面状態の良否を判定し(S5)、その良否判定の結果から不具合内容を判定する(S6)。
制御部20による表面状態の良否判定は、概略的には次の各工程を有する。
まず、制御部20は、表層検出信号の電圧値が予め定めた第1の許容範囲内であるかを判定する(第1判定工程)。また、軌道輪11におけるステップ移動前後の互いに一定距離を隔てた検査位置でそれぞれ検出された表層検出信号の変化率が、予め定めた第2の許容範囲内であるかを判定する(第2判定工程)。さらに、同一の検査位置における表層検出信号と深層検出信号との差が予め定めた第3の許容範囲内であるかを判定する(第3判定工程)。
上記の第1判定工程、第2判定工程、第3判定工程について、順次詳細に説明する。
軌道輪11の研削時においては、発熱と冷却によって表層部に焼入れ、又は焼戻りが発生するおそれがある。第1判定では、上記のような研削による再焼入れが生じた可能性のある場合は許容範囲内となり、焼戻りが発生した可能性のある場合は許容範囲外となる。
図8は第1判定工程における軌道輪の回転角度に対する検出信号の電圧変化の様子を、第1の許容範囲と共に模式的に示す説明図である。
第1の許容範囲を設定するには、良品であることが確認されている多数個の軌道輪11に、高周波数の励磁電流によって渦電流を浸透させたときに測定される検出信号(図8のOKで示す線)の、電圧値の平均値a1及び標準偏差σ1を求める。求めた平均値a及び標準偏差σから、a1±4σ1の範囲を求め、これを第1の許容範囲(良品範囲)に設定する。
全体が異なる品質、又は異材からなる軌道輪11では、軌道輪11の回転角度に対する検出信号(図8のNGで示す線)の電圧変化の様子を模式的に示すように、良品の場合とは大きく異なる電圧値となる。このNGの場合での検出信号の他、電圧値が第1の許容範囲の限界値から一部(部分的に)でも外れている場合には、第1判定工程で許容範囲外と判定される。
図9は第1判定工程における第1の許容範囲内に表れた微小な不具合部を模式的に示す説明図である。
第1の許容範囲は、ある程度の幅を持っているため、微小な不具合部を取り逃す可能性がある。例えば、図9に示すSn部のように突起となって現れている箇所は取り逃しの可能性がある。このような取り逃しを第2判定工程で確実に検出する。
図10は第2判定工程において一定距離を隔てた検査位置からの検出信号により、検出信号の変化率を求める様子を模式的に示す説明図である。
図10には、周方向に沿って配置される検査位置を、検査位置P0〜P6 として模式的に示している。まず、軌道輪11表面の検査位置P0と、この検査位置P0から周方向に一定距離cを隔てた他の検査位置P1とで検出される表層検出信号から、表層検出信号の変化率αを求める。以降同様に、検査位置P1と検査位置P2とで検出される表層検出信号の変化率αを求める処理を繰り返す。この処理を、変化率αの+側(図中左側)と−側(図中右側)の双方から同時に実施する。即ち、+側ではP0→P1→P2→P3の順で、−側ではP6→P5→P4→P3の順でそれぞれ変化率αを求める。これにより、検査位置全体を検査する時間を短縮できる。
図11は第2判定工程における軌道輪の回転角度に対する検出信号の変化率の分布を模式的に示す説明図である。
図11に示すように、検査位置毎に得られた変化率αに対して第2の許容範囲を設定する。この第2判定工程では、各検査位置(始点のP0を除く)において、変化率αが第2の許容範囲か否かの第2判定を行う。
第2の判定は、軌道輪の部分的な不具合の有無を判定する為である。具体的には、第2の許容範囲は、部分的に発生した研削再焼入れ、キズ、割れ、研削焼戻り、熱処理異常(硬度不良、過剰なオーステナイト析出)等の不具合を検出する閾値となる。つまり、第2の判定により、第1の判定で判別できなかった部分的不具合を判別する。
第2判定工程では、渦電流探傷プローブ15の検出部位の位置と、この位置から所定距離(例えば、プローブ直径の距離)を隔てた位置との測定電圧値の変化(変化率α)が、第2の許容範囲を外れているか否かが判定される。具体的には、検出信号の変化率αが第2の許容範囲を超えているか否かが判定される。
さらに、第1判定工程及び第2判定工程でも捕えられない不具合として、軌道輪11の表面全周に略均―な不具合が発生しているにも関わらず、磁性の変化が良品と同等のレベルになること、が考えられる。そこで、同一の検査位置における表層検出信号と深層検出信号との差を求め、この差に基づく第3の許容範囲を設定して第3判定工程を行う。
図12は第3判定工程における表層検出信号と深層検出信号との差を求める様子を模式的に示す説明図である。
図12に示すように、軌道輪11の表層部の状態を表す表層検出信号と、軌道輪11の深層部までの状態を表す深層検出信号との差δは、表層部と深層部とで共通する信号成分が取り除かれる。そのため、表層部と深層部が互いに異なる組織である場合に信号値が高くなると推定できる。
図13は第3判定工程における軌道輪の回転角度に対する表層検出信号と深層検出信号との差の分布を模式的に示す説明図である。
第3判定工程においては、部分的な研削再焼入れ、及び部分的な研削焼戻り、硬度不良、キズ、割れなどに起因して軌道輪11の表層部と深層部との磁性が異なって、表層検出信号と深層検出信号との差が第3の許容範囲から超えるか否かが判定される。
第3の許容範囲を設定するには、第1判定及び第2判定にてそれぞれの許容範囲内であることが確認されている多数個の軌道輪11に対して、同一の検査位置における表層検出信号と深層検出信号との差の平均値a、及び標準偏差σ3を求める。求めた平均値a、及び標準偏差σから、a3±4σ3の範囲を求め、これを第3の許容範囲(良品範囲)に設定する。軌道輪11の表面部と深層部との磁性が第3の許容範囲を超えた場合でも、深層部が良品の判定であれば、最表面部における表面部を後処理として研磨仕上げ等をすれば良品になり得る。
上記の第1判定結果、第2判定結果、及び第3判定結果の全ての判定結果に基づいて不具合を判定することで、各判定の判定結果を細分化できる。これにより、それぞれ個別の判定結果のみで判定した場合には見落としてしまう虞のある不具合も確実に検出でき、不具合の原因を細分化できる。
なお、第1判定工程、第2判定工程、第3判定工程の実施順は、上記した第1判定工程、第2判定工程、第3判定工程の順に限らず、任意の順にすることができる 。
次に、第1判定結果、第2判定結果、及び第3判定結果の組み合わせから、具体的な不具合内容を判定する状態判定工程を説明する。
第1判定結果、第2判定結果、及び第3判定結果の組み合わせと、推定される不具合内容と、を表1に纏めて示す。
Figure 2019117297
表1に示すように、第1判定結果、第2判定結果、及び第3判定結果がいずれも許容範囲内である場合、軌道輪11は良品と判定される。
第1判定結果及び第2判定結果が許容範囲内であり、第3判定結果が許容範囲外の場合は、軌道輪の全周に部分的な焼入れが再発したものと推定できる。
第1判定結果が許容範囲内、第2判定結果が許容範囲外、且つ第3判定結果が許容範囲内の場合は、焼入れは再発していないものと推定できるが、次のように推定することもできる。(1)表面部にて検出コイルのインピーダンスが急激に減少した場合には、表面層の炭素量が増加していることがある。そのため、軌道輪に炭化物が過剰に析出したものと推定できる。(2)表面部にて検出コイルのインピーダンスが急激に増加した場合には、表面層における炭素量が減少していることがある。その場合、軌道輪の表面に軟点が存在すると推定できる。
第1判定結果が許容範囲内、第2判定結果及び第3判定結果が許容範囲外の場合は、第1判定にて表面部は許容範囲内と判定されたため、焼入れは再発していないものと推定できる。しかし、第2判定、第3判定で許容範囲外と判定されたため、表面層の研削時に部分的な発熱と冷却が発生し、これが深層部に影響して、軌道輪に部分的な再焼入れが生じたと考えられる。その結果、深層部の炭素量が増加したと推定できる。
第1判定結果が許容範囲外、第2判定結果及び第3判定結果が許容範囲内である場合は、例えば、軸受材料製造過程において混入した異材が存在していると推定できる。
第1判定結果が許容範囲外、第2判定結果が許容範囲内、第3判定結果が許容範囲外である場合は、軌道輪の全周に焼戻りが発生したものと推定できる。そのために、検出コイルのインピーダンスが急激に減少して許容範囲外になったとすると、軌道輪全周に研削焼戻りが発生したと推定できる。
第1判定結果及び第2判定結果が許容範囲外、第3判定結果が許容範囲内である場合は、例えば、表面部において検出コイルのインピーダンスが急激に減少する。このことは、表面部に非磁性体であるオーステナイトが過剰に析出したと推定できる。
第1判定結果、第2判定結果、及び第3判定結果がいずれも許容範囲外である場合は、例えば、表面部及び深層部において、検出コイルのインピーダンスが急激に減少し、表面部及び深層部において炭化物が析出したと推定できる。その場合、軌道輪に部分的な研削焼戻り、硬度不良、キズ、割れが生じていると推定できる。
以上の表1に示す3つの判定の判定結果を踏まえて、不具合を解消し、研削工程の改善を図ることができる。よって、軌道輪11に発生している不具合の有無、及び不具合の内容が特定され、検査結果を直ちに不具合の原因にフィードバックして品質の向上及び生産効率の向上を図ることができる。
上記した判定理由はあくまで一例であって、他の理由により判定結果に差が生じることも考えられる。例えば、検査対象の材料、形状、サイズ等の諸条件、加工環境等を一定に定めると、発生する不具合の種類がある程度限られるようになる。その場合、上記条件の違いに応じて、第1〜第3判定の判定基準を適宜調整することで、想定した不具合要因を正確に特定できる。これにより、転がり軸受の検査装置の汎用性が高められる。
[第1実施形態]
以上のとおり説明した測定原理に基づく転がり軸受の検査方法の第1実施形態を説明する。
図14(A)〜(G)は第1実施形態の検査順序を模式的に示す工程説明図である。ここでは、軌道輪である内輪31の軌道面33に、渦電流探傷プローブ15を対面させて走査し、測定する。
第1実施形態の検査方法においては、図14(A)に示すように、渦電流探傷プローブ15を内輪31の軌道面33の母線方向一端に対向させて配置して、この位置で周方向走査させ、軌道面33の一周分の第1判定工程を実施する。
次いで、渦電流探傷プローブ15を軌道面33に沿った母線方向走査によりステップ移動させる。そして、渦電流探傷プローブ15のステップ移動後の位置で、渦電流探傷プローブ15を周方向走査させる。これにより、軌道面33の次の一周分の第1判定工程が実施される。上記のステップ移動と、周方向走査とを、図14(B)に示すように、軌道面33の母線方向他端まで繰り返し実施する。以上で第1判定工程(J1)が完了する(第1工程)。
続いて、図14(C)に示すように、渦電流探傷プローブ15を軌道面33の母線方向一端に再び配置して、この位置で周方向走査させ、軌道面33の一周分の第2判定工程を実施する。
次いで、第1工程と同様に、図14(D)に示すように、ステップ移動と、周方向走査とを、軌道面33の母線方向他端まで繰り返し実施する。以上で第2判定工程(J2)が完了する(第2工程)。
そして、図14(E)に示すように、渦電流探傷プローブ15を軌道面33の母線方向一端に再び配置して、この位置で周方向走査させ、軌道面33の一周分の第3判定工程を実施する。
次いで、第1、第2工程と同様に、図14(F)に示すように、ステップ移動と、周方向走査とを、軌道面33の母線方向他端まで繰り返し実施する。
最後に、図14(G)に示すように、渦電流探傷プローブ15を軌道面33の母線方向一端に再び配置する。以上で第3判定工程(J3)が完了する(第3工程)。
この手順によれば、第1判定工程(J1)、第2判定工程(J2)、及び第3判定工程(J3)による大量の検出信号を、第1工程、第2工程、及び第3工程の3つに分けた検出信号群として取得できる。その結果、判定工程毎の検出信号群の記憶処理や判定処理が簡単に行える。したがって、本実施形態によれば、軌道輪の不具合の内容を特定でき、しかも、検査時間を短縮して生産性を向上できる。
[第2実施形態]
次に、転がり軸受の検査方法の第2実施形態を説明する。
図15(A)〜(D)は第2実施形態の検査順序を模式的に示す工程説明図である。
第2実施形態の検査方法においては、図15(A)に示すように、渦電流探傷プローブ15を内輪31の軌道面33の母線方向一端に配置して、この位置で周方向走査させ、軌道面33の一周分の第1判定工程(J1)を実施する。次に、そのまま周方向走査させて、図15(B)に示すように第2判定工程(J2)を実施する。さらに、そのまま周方向走査させて、図15(C)に示すように第3判定工程(J3)を実施する。
次に、図15(D)に示すように、渦電流探傷プローブ15を軌道面に沿った母線方向走査によりステップ移動させる。そして、上記した周方向走査による第1判定工程(J1)、第2判定工程(J2)、第3判定工程(J3)と、軌道面に沿った母線方向走査とを、軌道面33の母線方向他端まで繰り返し実施する。
この手順によれば、内輪31を3周させることで、同一の母線方向位置で第1判定工程(J1)、第2判定工程(J2)、及び第3判定工程(J3)の検出信号が取得される。つまり、軌道面に沿った母線方向走査の度に、各検出信号が一度に取得される。したがって、各判定工程において、母線方向走査による検査位置の位置ずれが生じず、高精度な検査が行える。また、検出信号を取得するための渦電流探傷プローブの相対移動が、往動のための1回で終了できる。そのため、渦電流探傷プローブを複数回往復動させる場合に比べて、検査時間を短縮でき、生産性を向上できる。
[第3実施形態]
次に、転がり軸受の検査方法の第3実施形態を説明する。
図16(A)〜(D)は第3実施形態の検査手順を模式的に示す工程説明図である。
第3実施形態の検査方法においては、第1判定工程、第2判定工程、及び第3判定工程を、内輪31の軌道面33の母線方向一端から他端までの軌道輪幅内の領域を複数の領域(図示例では2つの領域)に分割し、それぞれの分割領域で実施する。
図16(A)に示すように、渦電流探傷プローブ15を軌道面33の母線方向一端に対面して配置して、前述同様に周方向走査と、軌道面33に沿った母線方向走査を行いながら、第1判定工程、第2判定工程、第3判定工程を実施する。本実施形態においては、軌道面33の母線方向一端から軌道輪幅の中間点38までの間を最初の工程として実施し、残りの領域を次の工程で実施する。
また、内輪31の内周面37についても同様に、内周面37の母線方向一端から中間点38の高さ位置まで第1判定工程、第2判定工程、第3判定工程を実施する。さらに、図16(B)に示すように、小径つば部35Aのつば面についても各判定工程を実施する。なお、上記の軌道面33、内周面37、小径つば部35Aのつば面の判定実施順は、この順に限らず任意である。
次に、図16(C)に示すように、内輪31の中間点38よりも軌道面33の厚肉側に対して、第1判定工程、第2判定工程、第3判定工程を実施する。即ち、小径つば部35Aの判定終了後であれば、大径つば部35Bに対して各判定工程を実施し、図16(D)に示すように、内輪31の中間点38よりも厚肉側の軌道面33,内周面37に対して各判定工程を実施する。この場合も、軌道面33、内周面37、大径つば部35Bの判定実施順は任意である。
上記のように、軌道面33が軌道輪幅の中間点38よりも薄肉側の検査位置を、軌道面33の厚肉側の検査位置より先に実施する。
ここで、内輪31の中間点38から内輪31の薄肉側となる側の端部までの距離Haは、中間点38から内輪31の厚肉側となる側の端部までの距離Hbよりも短く設定する(Ha<Hb)ことが好ましい。これにより、最も損傷の生じる確率が高い(強度が小さい)薄肉側の軌道面33、内周面37、小径つば部35が最初に判定される。薄肉側でNG判定となれば、その時点で表面状態の判定を終了してもよい。その場合、NG判定後にその内輪31における他の部位の検査を省略できる。よって、全ての位置を検査する場合と比較して、無駄な判定処理を省略でき、検査時間を短縮して生産性を向上できる。
[第4実施形態]
次に、転がり軸受の検査方法の第4実施形態を説明する。
本実施形態は、渦電流探傷プローブ15は、励磁電流を高周波数と低周波数に切り換える切り換え機能を有する。同じ測定箇所に対して、渦電流探傷プローブ15の励磁コイルに印加する高周波数(表層検出用)と低周波数(深層検出用)の励磁電流を夫々与え、電圧値を取得する。
図17は第4実施形態の検査の様子を模式的に示す工程説明図である 。ここでは、軌道輪11(図1参照)である内輪31の軌道面33に、渦電流探傷プローブ15を対面させて、軌道面33の周方向に螺旋状に走査して測定する。螺旋状に走査する際に、螺旋走査軌道上の特定の高周波数の渦電流信号による電圧値、低周波数渦電流信号による電圧値を取得するとともに、特定箇所中の任意2箇所の高周波数の渦電流信号による電圧値と低周波数の渦電流信号による電圧値の差を求めることもできる。
つまり、第4実施形態の検査方法においては、内輪31の回転とともに、渦電流探傷プローブ15を母線方向一端から他端まで走査して、内輪31の軌道面33を連続的に走査する。これによれば、螺旋状のプローブ移動経路PSに沿って、渦電流探傷プローブ15を走査するだけで、内輪31の軌道面33の全体を測定できる。これによれば、渦電流探傷プローブ15の母線方向のステップ移動が必要ないため、測定中に内輪31を停止させることなく、母線方向一端から他端まで連続して測定を行うことができる。
これにより、検査時間を更に短縮でき、生産性をより向上することができる。なお、上記例では内輪31の軌道面33を検査する場合であるが、内輪の内周面や端面、外輪の内周面(軌道面等)や外周面についても同様に、螺旋状の走査によって検査が可能である。
[変形例1]
次に、第1〜3の実施形態の第1変形例を説明する。
図18は被検査面における深さ方向の組織分布が、表層組織と深層組織とで互いに異なる場合の検査の様子を模式的に示す工程説明図である。
被検査面の内部組織は、熱処理等の諸条件によって表層と深層とで、厚さや性状が異なる場合がある。一方で、前述した第1判定工程、第2判定工程においては、渦電流探傷プローブ15の励磁コイルに印加する励磁電流は一律に高周波にされる。すると、検査対象にしたい表層組織の実際の厚さによらず、略一定の表層検出用電流(高周波)による渦電流の浸透深さまでの領域から渦電流信号が検出されることになる。
図18に示す例では、位置Pでは表層組織の厚さが高周波による渦電流の浸透深さLtより浅く、位置Pでは表層組織と高周波による渦電流の浸透深さLtとが等しく、位置Pでは表層組織の厚さが高周波による渦電流の浸透深さLtよりも深い。
そこで、本変形例では、表層組織が高周波による渦電流の浸透深さLtより深くなる位置Pよりも位置P側においては、渦電流探傷プローブ15の励磁コイルに印加する励磁電流を、高周波に代えて低周波に切り替える。この場合、励磁コイル駆動部19を、励磁電流を高周波と低周波に切り換える切り換え部として機能させる。
図19(A),(B),(C)は図18の各位置P,P,Pにおける高周波と低周波による渦電流の浸透深さを模式的に示す断面図である。
本変形例によれば、位置Pを示す図19(A)と位置Pを示す図19(B)の場合は、高周波用プローブ15aの励磁コイルに高周波の励磁電流を印加することで、被検査表面から高周波による渦電流の浸透深さLtまでの領域Kからの渦電流信号が得られる。一方、位置Pを示す図19(C)の場合は、低周波用プローブ15bの励磁コイルに低周波の励磁電流を印加することで、表層組織の領域Kより更に深層の領域Kからの渦電流の検出信号が得られる。
そのため、特に熱処理等による表層組織の特性を検出したい場合に、表層組織の厚さに応じて励磁電流を高周波から低周波に切り替えることで、実際に存在する表層組織からの情報がより広い(深い)領域から得られるようになる。その結果、表層組織の特性検出精度を向上できる。
さらに、図19(A)に示す場合には、表層組織の厚さが高周波による渦電流の浸透深さLtより浅く、実質的な表層組織の情報量が少なくなる。そこで、第1、第2判定工程で用いる高周波の励磁電流による渦電流の検出信号の検出感度を増加させることで、少ない表層組織からの情報をより強調することができる。つまり、被検査面の表層組織の厚さに応じて渦電流の検出感度を増減させることで、より適正な表層組織の特性検出が行える。
本変形例の場合、図1に示す制御部20は、各検査位置における表層組織の厚さの情報が、軌道輪のサンプルを測定する等して、予めデータベースとして用意されている。制御部20は、用意された表層組織の厚さの情報に応じて、励磁電流を高周波から低周波に切り替える制御を実施する。また、制御部20は、表層組織の厚さに応じて、渦電流探傷プローブ15における高周波の検出感度、低周波の検出感度を増減制御するものであってもよい。
[第2変形例]
次に、上記の転がり軸受の検査装置100によって、つば付き軌道輪の各部を検査する際に、第1〜4の実施形態の測定時間を短縮させる変形例の検査手順について説明する。
ここでは、図2に示したつば付き内輪31の軌道面33、つば部内側面(つば部)35、及び内周面37を検査部位とし、それぞれの表面状態を検査する。
この場合、渦電流探傷プローブ15の検出コイルからの検出信号は、軌道輪の品質(表面状態)が同じであっても、凸状面、平坦面、凹状面等の形状の違いによって変化するため、測定面の形状により検出信号の出力値は異なる。例えば、内輪31の軌道面33、つば部35、内周面37では、それぞれの出力値が一致しなくなる。
そこで、精度のよい測定を行うには、出力値(電圧値)の0点調整を行うことが好ましい。一例として、軌道面33、つば部35、内周面37を測定する場合の各検出信号の電圧値を図20に模式的に示す。
図20に示すように、つば付き内輪31の場合には、凸状面である軌道面33、平坦面であるつば部35、次いで凹状面である内周面37の順序で測定する。つば部35については、一対のうち両方を同時に、又は一方を別々に、上下のつば部35A,35Bとの測定順序は関係なく測定するものとする。これによれば、電圧値に殆ど差がない軌道面33(凸状面)とつば部35(平坦面)とが続けて測定されるため、軌道面33とつば部35との間では電圧値が等しいとみなし、判定基準値の変更(0点調整)を省略できる。一方、つば部35(平坦面)と内周面(凹状面)とは、検出信号の電圧値の差が比較的大きいため、つば部35と内周面37との間で0点調整を行う必要がある。つまり、この場合の0点調整は、つば部35と内周面37との間で1回行うだけで済む。
これに対して、軌道面33、内周面37、つば部35の順序で測定する場合には、軌道面33と内周面37との間、内周面37とつば部35との間で検出信号の電圧値の差が大きくなるため、それぞれの間で0点調整が必要となり、0点調整を2回実施する必要がある。
このように、測定面の形状に応じて測定順序を適切に設定することで、判定基準値の変更(補正)回数を低減でき、測定時間を短縮できる。
ところで、軌道面に存在する不具合により軸受に生じる損傷として、軸受回転中の転動体と軌道面、又は、つば面と転動体におけるはく離等がある。特に、転動体と軌道面との間には、はく離等の損傷が多いことが知られている。そのため、軌道面33は、他の部位よりも特に精度よく測定することが望まれる。そこで、各部を連続して測定する場合には、軌道面33を他の部位よりも先に測定し、軌道面33の電圧値を基準(0V)にして他の部位を測定するのが好ましい。これによれば、軌道面33に対しては、正確な0点補正が施され、特に正確に測定が行える。
なお、測定順序は、上記と逆の順序、即ち、内周面37、軌道面33、つば部35の順であってもよい。その場合でも、同様に判定基準値の補正回数を削減して測定時間を短縮できる。
また、つば付き外輪の場合も同様に、軌道面、つば部内側面、外周面、又は、その逆の順序で測定することで、一つの検査対象における判定基準値の補正回数を1回にすることができる。このように、検査順序を適切に設定することで、転がり軸受の生産性を更に向上できる。
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
上記の実施形態では、つば部を有する内輪や外輪の表面状態を推定して不具合の検査を行う例を説明したが、つば部を有しない内輪や外輪であっても同様に、上記した表面状態の推定及び不具合の検査が可能である。例えば、ずぶ焼入れ、浸炭、浸炭窒化処理して得られる円筒、円錐、球面(自動調心)軸受にも本発明に係る検査が適用可能である。
また、渦電流探傷プローブ15は、励磁コイルと検出コイルとが一体に構成されているが、励磁コイル22aと検出コイル22bとがそれぞれ別体に配置される構成であってもよい。
また、渦電流探傷プローブは、第1周波数(高周波)と第2周波数(低周波)の励磁電流を渦電流探傷プローブ15の励磁コイル22aに選択的に印加する1つのプローブではなく、第1周波数(高周波)と第2周波数(低周波)が夫々印加可能な2つ、又は2つ以上のプローブを採用してもよい。その場合、本検査方法においては、同じ位置における測定結果の比較が必要な為、2回、又は2回以上の測定を行う際には、同じ測定位置で測定する。
なお、本出願は、2017年12月15日出願の日本特許出願(特願2017−240538)、及び2018年5月15日出願の日本特許出願(特願2018−93805)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。
11 軌道輪(転動部品)
15、15A,15B 渦電流探傷プローブ
15a 高周波用プローブ(第1プローブ)
15b 低周波用プローブ(第2プローブ)
17 相対移動機構
19 励磁コイル駆動部
20 制御部(判定部)
21 信号取得部
22a励磁コイル
22b検出コイル
31 つば付き内輪(軌道輪)
33 軌道面(内輪の軌道面)
35 つば部(つば面)
37 内周面
38 中間点
100 転がり軸受の検査装置(転動部品の検査装置)
本発明は下記構成からなる。
(1) 励磁コイルに励磁電流を印加して転動部品の内部に浸透させた渦電流を、前記転動部品と相対移動する検出コイルにより検出し、前記検出コイルから検出した検出信号に基づいて、検査対象である前記転動部品の良品・不良品を判定する転動部品の検査方法であって、
前記励磁電流には、前記転動部品の表層部に前記渦電流を浸透させる第1周波数の表層検出用電流、及び前記表層部より深い深層部に前記渦電流を浸透させる第2周波数の深層検出用電流があり、
前記表層検出用電流によって前記検出コイルから検出される電圧信号を表層検出信号、前記深層検出用電流によって前記検出コイルから検出される電圧信号を深層検出信号とした場合に、
前記表層検出信号の電圧値が、予め定めた第1の許容範囲内であるかを判定する第1判定工程と、
前記転動部品の一定距離を隔てた検査位置でそれぞれ検出される前記表層検出信号の変化率が、予め定めた第2の許容範囲内であるかを判定する第2判定工程と、
同一の前記検査位置における前記表層検出信号と前記深層検出信号との差が、予め定めた第3の許容範囲内であるかを判定する第3判定工程と、
前記第1判定工程において前記第1の許容範囲内であり、前記第2判定工程において前記第2の許容範囲内であり、且つ、前記第3判定工程において前記第3の許容範囲内であるとき、検査対象の前記転動部品を良品と判定し、
前記第1判定工程、前記第2判定工程、前記第3判定工程の少なくとも一つの判定結果が許容範囲外であるとき、検査対象の前記転動部品を不良品と判定し、前記第1判定工程、前記第2判定工程、前記第3判定工程の各判定結果を組み合わせて前記不良品の不良原因を判定する状態判定工程と、
を有する転動部品の検査方法。
この転動部品の検査方法によれば、第1判定工程、第2判定工程、及び第3判定工程による、それぞれ異なる判定結果の組み合わせに応じて転動部品の表面状態を判定するので、不具合の具体的な内容を把握できる。これにより、判定結果を直ちに生産ラインにフィードバックして、転動部品の品質及び生産性を向上できる。
(5) 前記転動部品は転がり軸受の軌道輪であり、
前記転動部品の検査方法は、磁場を発生させる前記励磁コイルと、前記渦電流を検出する前記検出コイルとを有する少なくとも一つの渦電流探傷プローブを前記転がり軸受の軌道輪に対面させ、前記渦電流探傷プローブから発生させた磁場により前記軌道輪の内部に浸透される渦電流を前記渦電流探傷プローブにより検出して、得られた検出信号に応じて前記軌道輪を検査する方法であり、
前記励磁コイルには、前記表層検出用電流と前記深層検出用電流とが印加され、
前記渦電流探傷プローブを、少なくとも前記軌道輪の周方向に沿って相対移動させる周方向走査によりステップ移動させ、
前記ステップ移動毎に前記検出コイルと対面する前記軌道輪の検査位置で、前記励磁コイルに前記表層検出用電流を印加して得られる前記表層検出信号と、前記深層検出用電流を印加して得られる前記深層検出信号とを取得する信号取得工程と、
取得された前記表層検出信号及び前記深層検出信号に応じて前記転がり軸受を検査する検査工程と、
を備え、
前記信号取得工程は、前記第1判定工程と、前記第2判定工程と、前記第3判定工程とを実施し、
前記検査工程は、前記状態判定工程を実施して、前記軌道輪の良品・不良品の判定と、不良品の不良原因の判定とを行う
(1)に記載の転動部品の検査方法。
この転動部品の検査方法によれば、第1判定工程、第2判定工程、及び第3判定工程による大量の検出信号を、第1工程、第2工程、及び第3工程の3つに分けた検出信号群として取得できる。その結果、判定工程毎の検出信号群の記憶処理や判定処理が簡単に行える。
(12) 転動部品の内部に渦電流を浸透させる励磁コイルと、
前記転動部品に誘導された前記渦電流を検出する検出コイルと、
前記転動部品と前記検出コイルとを相対移動させ、前記転動部品の検査位置を変更する相対移動機構と、
前記転動部品の表層部に前記渦電流を浸透させる第1周波数の表層検出用電流、及び前記表層部より深い深層部に前記渦電流を浸透させる第2周波数の深層検出用電流を、前記励磁コイルに印加する励磁コイル駆動部と、
前記検出コイルを前記相対移動させた前記転動部品の各検査位置で、前記励磁コイルに前記表層検出用電流を印加したときに前記検出コイルで得られる表層検出信号と、前記深層検出用電流を印加したときに前記検出コイルで得られる深層検出信号を取得する信号取得部と、
取得された前記表層検出信号と前記深層検出信号に応じて、前記転動部品の良品・不良品の判定と、不良品の不良原因の判定とを行う判定部と、
を備え、
前記判定部は、
前記表層検出信号の電圧値が、予め定めた第1の許容範囲内であるかを判定した第1判定結果と、
前記転動部品の一定距離を隔てた検査位置でそれぞれ検出される前記表層検出信号の変化率が、予め定めた第2の許容範囲内であるかを判定した第2判定結果と、
同一の前記検査位置における前記表層検出信号と前記深層検出信号との差が、予め定めた第3の許容範囲内であるかを判定した第3判定結果と、
に基づいて、
前記第1判定結果が前記第1の許容範囲内であり、前記第2判定結果が前記第2の許容範囲内であり、且つ、前記第3判定結果が前記第3の許容範囲内であるとき、検査対象の前記転動部品を良品と判定し、
前記第1判定結果、前記第2判定結果、前記第3判定結果の少なくとも一つが許容範囲外であるとき、検査対象の前記転動部品を不良品と判定し、前記第1判定結果と前記第2判定結果と前記第3判定結果とを組み合わせて前記不良品の不良原因を判定する、
転動部品の検査装置。
この転動部品の検査装置によれば、転動部品の表面状態を判定する判定部が、第1判定結果と、第2判定結果と、第3判定結果とを組み合わせて転動部品の表面状態を判定するので、表面状態の不具合の有無とその具体的な内容とを、正確に把握することができる。
(13) 前記転動部品は転がり軸受の軌道輪であり、
前記励磁コイルと前記検出コイルとを有する少なくとも一つの渦電流探傷プローブを前記転がり軸受の軌道輪に対面させ、前記渦電流探傷プローブから発生させた磁場により前記軌道輪の内部に浸透される渦電流を前記渦電流探傷プローブで検出して、検出された前記渦電流の検出信号に応じて前記軌道輪の良品・不良品を判定する転動部品の検査装置であって、
前記相対移動機構は、前記軌道輪と前記渦電流探傷プローブとを相対移動させ、前記軌道輪の検査位置を変更し、
前記励磁コイル駆動部は、前記表層検出用電流及び前記深層検出用電流を前記励磁コイルに印加し、
前記判定部は、前記軌道輪から検出された前記表層検出信号と前記深層検出信号に応じて、前記軌道輪の良品・不良品の判定と、不良品の不良原因の判定とを行う(12)に記載の転動部品の検査装置。
この転動部品の検査装置によれば、渦電流探傷プローブが軌道輪と相対移動して、各検査位置から検出信号を効率よく取得するので、検査時間を短縮して生産性を向上できる。

Claims (14)

  1. 励磁コイルに励磁電流を印加して転動部品の内部に浸透させた渦電流を、前記転動部品と相対移動する検出コイルにより検出し、前記検出コイルから検出した検出信号に基づいて、前記転動部品の不具合を判定する転動部品の検査方法であって、
    前記励磁電流には、前記転動部品の表層部に前記渦電流を浸透させる第1周波数の表層検出用電流、及び前記表層部より深い深層部に前記渦電流を浸透させる第2周波数の深層検出用電流があり、
    前記表層検出用電流によって前記検出コイルから検出される電圧信号を表層検出信号、前記深層検出用電流によって前記検出コイルから検出される電圧信号を深層検出信号とした場合に、
    前記表層検出信号の電圧値が、予め定めた第1の許容範囲内であるかを判定する第1判定工程と、
    前記転動部品の一定距離を隔てた検査位置でそれぞれ検出される前記表層検出信号の変化率が、予め定めた第2の許容範囲内であるかを判定する第2判定工程と、
    同一の前記検査位置における前記表層検出信号と前記深層検出信号との差が、予め定めた第3の許容範囲内であるかを判定する第3判定工程と、
    前記第1判定工程、前記第2判定工程、前記第3判定工程の各判定結果を組み合わせて前記転動部品の不具合の有無と不具合内容を判定する状態判定工程と、
    を有する転動部品の検査方法。
  2. 前記転動部品と前記検出コイルとを相対移動させて、前記転動部品の複数箇所から前記表層検出信号と前記深層検出信号を検出する請求項1に記載の転動部品の検査方法。
  3. 前記転動部品と前記検出コイルとの相対移動は、前記検出コイルを前記転動部品の周方向に沿って螺旋状に走査させる請求項2に記載の転動部品の検査方法。
  4. 前記転動部品は転がり軸受の軌道輪であり、
    前記転動部品の検査方法は、磁場を発生させる前記励磁コイルと、前記渦電流を検出する前記検出コイルとを有する少なくとも一つの渦電流探傷プローブを前記転がり軸受の軌道輪に対面させ、前記渦電流探傷プローブから発生させた磁場により前記軌道輪の内部に浸透される渦電流を前記渦電流探傷プローブにより検出して、得られた検出信号に応じて前記軌道輪を検査する方法であり、
    前記励磁コイルには、前記表層検出用電流と前記深層検出用電流とが印加され、
    前記渦電流探傷プローブを、前記軌道輪の周方向に沿って螺旋状に走査させる請求項3に記載の転動部品の検査方法。
  5. 前記転動部品は転がり軸受の軌道輪であり、
    前記転動部品の検査方法は、磁場を発生させる前記励磁コイルと、前記渦電流を検出する前記検出コイルとを有する少なくとも一つの渦電流探傷プローブを前記転がり軸受の軌道輪に対面させ、前記渦電流探傷プローブから発生させた磁場により前記軌道輪の内部に浸透される渦電流を前記渦電流探傷プローブにより検出して、得られた検出信号に応じて前記軌道輪を検査する方法であり、
    前記励磁コイルには、前記表層検出用電流と前記深層検出用電流とが印加され、
    前記渦電流探傷プローブを、少なくとも前記軌道輪の周方向に沿って相対移動させる周方向走査によりステップ移動させ、
    前記ステップ移動毎に前記検出コイルと対面する前記軌道輪の検査位置で、前記励磁コイルに前記表層検出用電流を印加して得られる前記表層検出信号と、前記深層検出用電流を印加して得られる前記深層検出信号とを取得する信号取得工程と、
    取得された前記表層検出信号及び前記深層検出信号に応じて前記転がり軸受を検査する検査工程と、
    を備え、
    前記信号取得工程は、前記第1判定工程と、前記第2判定工程と、前記第3判定工程とを実施し、
    前記検査工程は、前記状態判定工程を実施して、前記軌道輪の不具合の有無と不具合内容を判定する
    請求項1に記載の転動部品の検査方法。
  6. 前記渦電流探傷プローブを、前記検査位置における測定対象面の母線方向一端で前記周方向走査させて、前記軌道輪一周分の前記第1判定工程、前記第2判定工程、前記第3判定工程をそれぞれ実施し、
    前記周方向走査の後、前記渦電流探傷プローブを更に前記母線方向に沿った母線方向走査によりステップ移動させ、当該ステップ移動後の位置で前記渦電流探傷プローブを前記周方向走査させて、前記軌道輪一周分の前記第1判定工程、前記第2判定工程、前記第3判定工程をそれぞれ実施することを、前記測定対象面の母線方向他端まで繰り返す、
    請求項5に記載の転動部品の検査方法。
  7. 前記第1判定工程、前記第2判定工程は、前記軌道輪の前記検査位置における表層組織の厚さに応じて、前記検出コイルによる前記渦電流の検出感度を増減させる請求項4〜6のいずれか一項に記載の転動部品の検査方法。
  8. 前記第1判定工程、前記第2判定工程、前記第3判定工程を、前記第1判定工程、前記第2判定工程、前記第3判定工程の順、又は前記第3判定工程、前記第1判定工程、前記第2判定工程の順で実施する請求項1〜6のいずれか一項に記載の転動部品の検査方法。
  9. 前記渦電流探傷プローブを前記検査位置の測定対象面の母線方向一端に配置して前記周方向走査させ、前記軌道輪一周分の前記第1判定工程を実施し、
    前記渦電流探傷プローブを前記母線方向に沿った母線方向走査によりステップ移動させ、当該ステップ移動後の位置で前記渦電流探傷プローブを前記周方向走査させて、前記軌道輪一周分の前記第1判定工程を実施することを前記測定対象面の母線方向他端まで繰り返す第1工程と、
    前記渦電流探傷プローブを前記測定対象面の母線方向一端で前記周方向走査させて、前記軌道輪一周分の前記第2判定工程を実施し、
    前記渦電流探傷プローブを前記母線方向走査によりステップ移動させ、当該ステップ移動後の位置で前記渦電流探傷プローブを前記周方向走査させて、前記軌道輪一周分の前記第2判定工程を実施することを、前記測定対象面の母線方向他端まで繰り返す第2工程と、
    前記渦電流探傷プローブを前記測定対象面の母線方向一端で前記周方向走査させて、前記軌道輪一周分の前記第3判定工程を実施し、
    前記渦電流探傷プローブを前記母線方向走査によりステップ移動させ、当該ステップ移動後の位置で前記渦電流探傷プローブを前記周方向走査させて、前記軌道輪一周分の前記第3判定工程を実施することを、前記測定対象面の母線方向他端まで繰り返す第3工程と、をこの順で実施する請求項5に記載の転動部品の検査方法。
  10. 前記軌道輪は、一方の端面から他方の端面に向けて径方向の厚さが異なっており、
    前記第1判定工程、前記第2判定工程、及び前記第3判定工程を実施する際に、前記軌道輪の測定対象面の母線方向一端から他端までの軌道輪幅内の領域を複数の分割領域に分割し、前記軌道輪幅の中間点よりも前記径方向の厚さが薄肉側となる前記分割領域の検査位置を、厚肉側となる前記分割領域の検査位置よりも先に判定する請求項4〜6、9のいずれか一項に記載の転動部品の検査方法。
  11. 前記第1判定工程、前記第2判定工程は、前記軌道輪の前記検査位置における表層組織の厚さに応じて、前記励磁コイルに前記表層検出用電流に代えて前記深層検出用電流を印加し、前記表層検出信号に代えて前記深層検出信号を用いて判定する請求項4〜6、9のいずれか一項に記載の転動部品の検査方法。
  12. 転動部品の内部に渦電流を浸透させる励磁コイルと、
    前記転動部品に誘導された前記渦電流を検出する検出コイルと、
    前記転動部品と前記検出コイルとを相対移動させ、前記転動部品の検査位置を変更する相対移動機構と、
    前記転動部品の表層部に前記渦電流を浸透させる第1周波数の表層検出用電流、及び前記表層部より深い深層部に前記渦電流を浸透させる第2周波数の深層検出用電流を、前記励磁コイルに印加する励磁コイル駆動部と、
    前記検出コイルを前記相対移動させた前記転動部品の各検査位置で、前記励磁コイルに前記表層検出用電流を印加したときに前記検出コイルで得られる表層検出信号と、前記深層検出用電流を印加したときに前記検出コイルで得られる深層検出信号を取得する信号取得部と、
    取得された前記表層検出信号と前記深層検出信号に応じて、前記転動部品の不具合の有無と不具合内容を判定する判定部と、
    を備え、
    前記判定部は、
    前記表層検出信号の電圧値が、予め定めた第1の許容範囲内であるかを判定した第1判定結果と、
    前記転動部品の一定距離を隔てた検査位置でそれぞれ検出される前記表層検出信号の変化率が、予め定めた第2の許容範囲内であるかを判定した第2判定結果と、
    同一の前記検査位置における前記表層検出信号と前記深層検出信号との差が、予め定めた第3の許容範囲内であるかを判定した第3判定結果と、を組み合わせて前記転動部品の不具合の有無と不具合内容を判定する、
    転動部品の検査装置。
  13. 前記転動部品は転がり軸受の軌道輪であり、
    前記励磁コイルと前記検出コイルとを有する少なくとも一つの渦電流探傷プローブを前記転がり軸受の軌道輪に対面させ、前記渦電流探傷プローブから発生させた磁場により前記軌道輪の内部に浸透される渦電流を前記渦電流探傷プローブで検出して、検出された前記渦電流の検出信号に応じて前記軌道輪の不具合を判定する転動部品の検査装置であって、
    前記相対移動機構は、前記軌道輪と前記渦電流探傷プローブとを相対移動させ、前記軌道輪の検査位置を変更し、
    前記励磁コイル駆動部は、前記表層検出用電流及び前記深層検出用電流を前記励磁コイルに印加し、
    前記判定部は、前記軌道輪から検出された前記表層検出信号と前記深層検出信号に応じて、前記軌道輪の不具合の有無と不具合内容を判定する請求項12に記載の転動部品の検査装置。
  14. 前記表層検出信号の電圧値が前記第1の許容範囲内であるかを判定する第1判定工程と、
    前記表層検出信号の変化率が前記第2の許容範囲内であるかを判定する第2判定工程と、
    同一の前記検査位置における前記表層検出信号と前記深層検出信号との差が前記第3の許容範囲内であるかを判定する第3判定工程とを、前記第1判定工程、前記第2判定工程、前記第3判定工程の順、又は前記第3判定工程、前記第1判定工程、前記第2判定工程の順で実施する請求項12又は13に記載の転動部品の検査装置。
JP2019534432A 2017-12-15 2018-12-14 転動部品の検査方法及び転動部品の検査装置 Active JP6601599B1 (ja)

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017240538 2017-12-15
JP2017240538 2017-12-15
JP2018093805 2018-05-15
JP2018093805 2018-05-15
PCT/JP2018/046153 WO2019117297A1 (ja) 2017-12-15 2018-12-14 転動部品の検査方法及び転動部品の検査装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP6601599B1 JP6601599B1 (ja) 2019-11-06
JPWO2019117297A1 true JPWO2019117297A1 (ja) 2019-12-19

Family

ID=66820446

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019534432A Active JP6601599B1 (ja) 2017-12-15 2018-12-14 転動部品の検査方法及び転動部品の検査装置

Country Status (3)

Country Link
JP (1) JP6601599B1 (ja)
CN (1) CN111465845B (ja)
WO (1) WO2019117297A1 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN112958488B (zh) * 2021-02-11 2022-06-03 中北大学 一种基于电涡流传感器的有色金属分类装置及方法

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5821159A (ja) * 1981-07-30 1983-02-07 Nippon Kokan Kk <Nkk> 渦流探傷法
JPS61155754A (ja) * 1984-12-27 1986-07-15 Toshiba Corp 孔検査装置
DE102006043554A1 (de) * 2006-09-12 2008-03-27 Mannesmann Dmv Stainless Gmbh Verfahren zur zerstörungsfreien Qualitätskontrolle mechanisch verfestigter Oberflächen austenitischer Stahlrohre
CN100429515C (zh) * 2006-11-01 2008-10-29 浙江大学 基于巨磁电阻传感器的涡流检测装置
JP5056381B2 (ja) * 2007-11-29 2012-10-24 新東工業株式会社 渦電流による金属製品の内部検査装置
JP5445054B2 (ja) * 2009-11-16 2014-03-19 株式会社ジェイテクト 加工変質層検出装置および加工変質層検出方法
US8353739B2 (en) * 2009-12-08 2013-01-15 Allison Transmission, Inc. Method for detecting and/or preventing grind burn
JP2013224916A (ja) * 2012-03-19 2013-10-31 Nsk Ltd 研削焼け判定装置および研削焼け判定方法
US10718739B2 (en) * 2015-08-06 2020-07-21 Sintokogio, Ltd. Surface characteristics inspection method and surface characteristics inspection apparatus for steel product

Also Published As

Publication number Publication date
CN111465845A (zh) 2020-07-28
WO2019117297A1 (ja) 2019-06-20
CN111465845B (zh) 2024-02-20
JP6601599B1 (ja) 2019-11-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8947079B2 (en) Eddy current measuring sensor and inspection method using this eddy current measuring sensor
US20070289385A1 (en) Ultrasonic Flaw Detection Method For Roller Bearing, And Method For Detecting Flaws
US8552718B2 (en) Method for the nondestructive testing of pipes
JP4998821B2 (ja) 渦流検査方法及び該渦流検査方法を実施するための渦流検査装置
JP4247723B2 (ja) 渦流探傷方法及び渦流探傷装置
JP2009036682A (ja) 渦電流センサ、硬化層深さ検査装置及び硬化層深さ検査方法
JP6601599B1 (ja) 転動部品の検査方法及び転動部品の検査装置
CN107923878B (zh) 钢材产品的表面特性检查方法和表面特性检查装置
JP2013224916A (ja) 研削焼け判定装置および研削焼け判定方法
JP2009085832A (ja) 鋼線材の渦流探傷検査方法
US7423423B2 (en) Method for quantitatively determining the width of a soft zone area of a partially hardened workpiece
JP7265139B2 (ja) 鋼材の表層の検査方法及び鋼材表層検査システム
JP5445054B2 (ja) 加工変質層検出装置および加工変質層検出方法
SCHNEIBEL et al. Development of an Eddy Current based Inspection Technique for the Detection of Hard Spots on Heavy Plates
JPH10206395A (ja) 渦電流方式の非破壊検出方法
JP5668834B2 (ja) 熱処理異常検出方法
EP4173752A1 (en) Machining device and method
JP7255768B1 (ja) 軸受損傷把握方法
JP5668511B2 (ja) 渦流計測用センサ及び渦流計測方法
JP5747666B2 (ja) 焼入れ鋼のオーバーヒート検出方法
JP2003315173A (ja) 渦電流を利用した渦流探傷機による加工品の残留応力の検出方法
JP2006242580A (ja) 転動部材の検査方法及び検査装置、並びに転動装置
JP2018021800A (ja) 工作物の研削焼け検査方法及び研削焼け検査装置
Zbrowski et al. Rotational speed and transducer frequency as factors affecting possibility to detect defects in axisymmetric elements with a method of eddy currents
Stumm Tube testing by electromagnetic ndt methods—1

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190621

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190621

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20190621

A975 Report on accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971005

Effective date: 20190905

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190910

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190923

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6601599

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150