JPWO2019107054A1 - 負極製造用ペーストの製造方法、電池用負極電極、電池および電池用負極電極の製造方法 - Google Patents

負極製造用ペーストの製造方法、電池用負極電極、電池および電池用負極電極の製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明の負極製造用ペーストの製造方法は、負極活物質と、水系バインダーと、増粘剤と、水系媒体と、を含む電池用の負極製造用ペーストの製造方法であって、負極活物質および増粘剤を少なくとも含む複数の粉末状物質を紛体状態で乾式混合した後に、水系媒体と、水系バインダーを含む水溶液を添加し、湿式混合する工程を第1の固練り工程と、第2の固練り工程と、を少なくとも含む多段階の工程で行い、上記第1の固練り工程における固形分濃度が68質量%以上79質量%以下であり、上記第2の固練り工程における固形分濃度が59質量%以上66質量%以下である。

Description

本発明は、負極製造用ペーストの製造方法、電池用負極電極、電池および電池用負極電極の製造方法に関する。
電池に用いられる負極電極は、一般的に、負極活物質層と集電体層から主に構成されている。負極活物質層は、例えば、負極活物質、増粘剤および水系バインダー等を含む負極製造用ペーストを金属箔等の集電体層表面に塗布して乾燥することにより得ることができる。
電池用負極の製造方法としては、例えば、特許文献1に記載の方法が挙げられる。
特許文献1(特許第5396989号公報)には、炭素粉末1aおよびCMC粉末1bを投入し、粉体のみの状態で混合して粉体混合物1を生成した後、ペーストの粘度、粒度および剥離強度との各相関に基づいて、分散媒の投入量や固練り時間を決定し、粗練り工程と固練り工程の二段階に分けて、分散媒である水を投入する、リチウムイオン二次電池の製造に用いられるペーストの製造法が記載されている。
特許第5396989号公報
本発明者らの検討によれば、従来の製造方法により得られる電池用負極電極は剥離強度が低い場合があり、集電体層と負極活物質層との接着性に改善の余地があることが明らかになった。
電池用負極電極の剥離強度が低い場合、電極や電池の生産性が低下したり、電池を組み立てる工程において負極活物質層の粉落ちが起こり、その結果、電池の品質劣化や電池のサイクル特性等に不具合が起きたりする懸念がある。
また、特許文献1(特許第5396989号公報)には、具体的に各工程での固形分濃度を定めた記載はなく、ペーストの粘度、粒度および剥離強度との各相関が求められなければ、固形分濃度を算出することが難しいという問題があった。また、固形分濃度が高すぎた場合、ミキサーを用いてペーストを攪拌混合する工程において、紛体混合物が湿式混合時に混合機のふちにせり上がってくるため、得られたペーストが不均一となり、その結果、上記負極製造用ペーストを塗布・乾燥して作製した負極電極の粘度や剥離強度が一定にならない問題や、上記負極電極を用いて作製した電池の性能が一定にならないという問題があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、集電体層と負極活物質層との接着性に優れた電池用負極電極を安定的に得ることが可能な負極製造用ペーストの製造方法を提供するものである。
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討を重ねた。その結果、乾式混合した負極活物質および増粘剤を少なくとも含む混合物に、水系媒体および水系バインダーを含むエマルジョン水溶液から選択される一種または二種以上の液体成分を添加して湿式混合する工程を、第1の固練り工程と第2の固練り工程の二段階とした上で、上記第1の固練り工程における固形分濃度を68質量%以上79質量%以下に設定し、上記第2の固練り工程における固形分濃度を59質量%以上66質量%以下に設定する負極製造用ペーストの製造方法を用いることにより、集電体層と負極活物質層との接着性に優れた電池用負極電極を安定的に得ることができることを見出して本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、
負極活物質および増粘剤を少なくとも含む複数の粉末状物質を紛体状態で乾式混合することにより、上記負極活物質および上記増粘剤を少なくとも含む混合物を調製する工程(A)と、
上記混合物中に、水系媒体および水系バインダーを含むエマルジョン水溶液から選択される一種または二種以上の液体成分を添加して湿式混合することにより、ペースト前駆体を調製する工程(B)と、
上記ペースト前駆体中に、上記水系媒体および上記水系バインダーを含むエマルジョン水溶液から選択される一種または二種以上の液体成分をさらに添加して湿式混合することにより、負極製造用ペーストを調製する工程(C)と、
を含む、負極製造用ペーストの製造方法であって、
上記工程(B)は、第1の固練り工程(B2)と第2の固練り工程(B3)とを少なくとも含み、
上記第1の固練り工程(B2)における固形分濃度が68質量%以上79質量%以下であり、上記第2の固練り工程(B3)における固形分濃度が59質量%以上66質量%以下である、負極製造用ペーストの製造方法が提供される。
また、本発明者らは、上記の負極製造用ペーストの製造方法を用いることにより、上記負極製造用ペーストの粘度を一定範囲に制御することができ、その結果、作製した負極製造用ペーストを用いて引き続き行う、負極製造用ペーストを集電体層に塗工して乾燥し、上記水系媒体を除去することによって、上記集電体層上に上記負極活物質層を形成する工程において、安定的な塗工制御ができることを見出した。
本発明によれば、
本発明の負極製造用ペーストの製造方法により得られた負極製造用ペーストを集電体層に塗工して乾燥し、上記水系媒体を除去することによって、上記集電体層上に上記負極活物質層を形成する工程を含む電池用負極電極の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、
集電体層と、
上記集電体層の少なくとも一方の面に設けられ、かつ、本発明の負極製造用ペーストの製造方法により得られた負極製造用ペーストの固形分により形成された負極活物質層と、を含む電池用負極電極が提供される。
また、本発明によれば、
正極と、電解質と、負極とを少なくとも備えた電池であって、
上記負極が本発明の電池用負極電極を含む電池が提供される。
本発明によれば、集電体層と負極活物質層との接着性に優れた電池用負極電極を安定的に得ることが可能な負極製造用ペーストを提供することができる。
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
本発明に係る実施形態の電池用負極電極の構造の一例を示す断面図である。 本発明に係る実施形態の電池の構造の一例を示す断面図である。
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図において各構成要素は本発明が理解できる程度の形状、大きさおよび配置関係を概略的に示したものであり、実寸とは異なっている。
なお、本実施形態では特に断りがなければ、負極活物質を含む層を負極活物質層と呼び、集電体層上に負極活物質層を形成させたものを電極と呼ぶ。また、本実施形態では数値範囲の「A〜B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。
<負極製造用ペーストの製造方法>
本実施形態に係る負極製造用ペーストの製造方法は、負極活物質と、水系バインダーと、増粘剤と、水系媒体と、を含む電池用の負極製造用ペーストの製造方法であって、
負極活物質および増粘剤を少なくとも含む複数の粉末状物質を紛体状態で乾式混合することにより、上記負極活物質および上記増粘剤を少なくとも含む混合物を調製する工程(A)と、
上記混合物中に、水系媒体および水系バインダーを含むエマルジョン水溶液から選択される一種または二種以上の液体成分を添加して湿式混合することにより、ペースト前駆体を調製する工程(B)と、
上記ペースト前駆体中に、上記水系媒体および上記水系バインダーを含むエマルジョン水溶液から選択される一種または二種以上の液体成分をさらに添加して湿式混合することにより、上記負極製造用ペーストを調製する工程(C)と、を含み、
上記工程(B)は、第1の固練り工程(B2)と第2の固練り工程(B3)とを少なくとも含み、
上記第1の固練り工程(B2)における固形分濃度が68質量%以上79質量%以下であり、上記第2の固練り工程(B3)における固形分濃度が59質量%以上66質量%以下である、負極製造用ペーストの製造方法である。
ここで、本実施形態に係る負極製造用ペーストにおいて、増粘剤は負極製造用ペースト中に溶解しており、粉末状態ではない。
また、本実施形態に係る電池は、例えばリチウムイオン一次電池またはリチウムイオン二次電池であり、好ましくはリチウムイオン二次電池である。
前述したように、本発明者らの検討によれば、従来の製造方法により得られる電池用負極電極は剥離強度が低い場合があり、集電体層と負極活物質層との接着性に改善の余地があることが明らかになった。
電池用負極電極の剥離強度が低い場合、電極や電池の生産性が低下したり、電池を組み立てる工程において負極活物質層の粉落ちが起こり、その結果、電池の品質劣化や電池のサイクル特性等に不具合が起きたりする懸念がある。
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討を重ねた。その結果、負極製造用ペーストの前駆体製造工程を第1の固練り工程(B2)と第2の固練り工程(B3)の二段階以上とした上で、上記第1の固練り工程(B2)における固形分濃度を68質量%以上79質量%以下に設定し、上記第2の固練り工程(B3)における固形分濃度を59質量%以上66質量%以下に設定する負極製造用ペーストの製造方法を用いることにより、集電体層と負極活物質層との接着性に優れた電池用負極電極を安定的に得ることができることを見出して本発明を完成するに至った。
ここで、上記第1の固練り工程(B2)における固形分濃度が68質量%以上79質量%以下であり、上記第2の固練り工程(B3)における固形分濃度が59質量%以上66質量%以下である負極製造用ペーストの製造方法を用いることにより、集電体層と負極活物質層との接着性に優れた電池用負極電極を安定的に得ることができる理由は必ずしも明らかではないが、以下の理由が考えられる。
まず、固形分濃度が68質量%以上79質量%以下の状態で上記第1の固練り工程(B2)を行うことで、活物質や導電助剤に一定量の増粘剤が吸着すると考えられる。これにより、水系媒体中への増粘剤の過剰な分散が抑制される。
活物質や導電助剤は、引き続き行う上記第2の固練り工程(B3)において、固形分濃度を59質量%以上66質量%以下となるように混合することで、上記の第1の固練り工程(B2)で吸着した増粘剤を表面に吸着したまま、水系媒体中へ分散すると考えられる。一方、上記の第1の固練り工程(B2)で活物質や導電助剤に吸着しなかった残りの増粘剤も水系媒体中へ分散する。
こうして得られた負極製造用ペースト前駆体中では、活物質や導電助剤の多くは、表面に水系バインダーとの吸着性に優れた増粘剤が吸着した集合体として存在している。このため、引き続き行う、負極製造用ペーストの調製工程(C)で水系バインダーを添加し、湿式混合した際に、上記集合体に効率よく水系バインダーが吸着し、各材料間の相互作用による3次元的なネットワークが発達するものと考えられる。さらに、活物質や導電助剤に吸着しなかった残りの増粘剤は、水系媒体中へ適度に分散している。このため、引き続き行う、負極製造用ペーストを集電体層に塗工して乾燥し、さらに上記水系媒体を除去して、上記集電体層上に上記負極活物質層を形成する工程において、上記のペースト中に分散した増粘剤が、乾燥時の水系バインダーの負極活物質層表面への移動を抑え、その結果、水系バインダーが負極活物質層の表面に偏在してしまうことを抑制できると考えられる。
そして、水系バインダーの負極活物質層への表面偏在が抑制された結果、集電体層と負極活物質層との界面における水系バインダーの量を増やすことができ、集電体層と負極活物質層との接着性、すなわち剥離強度を向上させることができると考えられる。
すなわち、本実施形態に係る負極製造用ペーストの製造方法によれば、上記第1の固練り工程(B2)における固形分濃度が68質量%以上79質量%以下であり、上記第2の固練り工程(B3)における固形分濃度が59質量%以上66質量%以下である、負極製造用ペーストの製造方法を用いることにより、水系バインダーの負極活物質層表面への偏在を抑制でき、集電体層と負極活物質層との接着性、すなわち剥離強度を向上させることができる。
以上から、本実施形態によれば、集電体層と負極活物質層との接着性に優れた電池用負極電極を安定的に得ることが可能な負極製造用ペーストを提供することができる。
本実施形態に係る負極製造用ペーストの製造工程のうち、第1の固練り工程(B2)における固形分濃度の下限は68質量%であるが、好ましくは70質量%以上、より好ましくは71質量%以上である。
本実施形態に係る負極製造用ペーストの製造方法において、第1の固練り工程(B2)における固形分濃度を上記下限値以上とすることにより、活物質や導電助剤に一定量の増粘剤が吸着することができるため、水系媒体中への増粘剤の過剰な分散が抑制される。活物質や導電助剤の多くは、引き続き行う上記第2の固練り工程(B3)においても、増粘剤を表面に吸着した集合体の状態のまま、水系媒体中へ分散すると考えられる。増粘剤は、活物質や導電助剤そのものよりも水系バインダーとの吸着性に優れているため、上記集合体に効率よく水系バインダーが吸着し、各材料間の相互作用による3次元的なネットワークが発達するものと考えられる。
本実施形態に係る負極製造用ペーストの製造工程のうち、第1の固練り工程(B2)における固形分濃度の上限は79質量%以下であるが、好ましくは77質量%以下、より好ましくは74質量%以下、さらに好ましくは72質量%以下である。
本実施形態に係る負極製造用ペーストの製造方法において、第1の固練り工程(B2)における固形分濃度を上記上限値以下とすることにより、活物質や導電助剤を含む紛体混合物が湿式混合時に混合機のふちにせり上がってくることを効果的に抑制できるため、安定した粘度・混合比の負極製造用ペーストを得ることができる。
本実施形態に係る負極製造用ペーストの製造工程のうち、第2の固練り工程(B3)における固形分濃度の下限は59質量%であるが、好ましくは61質量%以上、より好ましくは62質量%以上である。
本実施形態に係る負極製造用ペーストの製造方法において、第2の固練り工程(B3)における固形分濃度を上記下限値以上とすることにより、固形混合物が所謂ダマの状態になるのを抑制し、均一なペーストを作製することができる。
本実施形態に係る負極製造用ペーストの製造工程のうち、第2の固練り工程(B3)における固形分濃度の上限は66質量%以下であるが、好ましくは64質量%以下、より好ましくは63質量%以下である。
本実施形態に係る負極製造用ペーストの製造方法において、第2の固練り工程(B3)における固形分濃度を上記上限値以下とすることにより、上記の第1の固練り工程(B2)で活物質や導電助剤に吸着しなかった残りの増粘剤を均一に水系媒体中へ分散することができると考えられる。これにより、引き続き行う、負極製造用ペーストを集電体層に塗工して乾燥し、さらに上記水系媒体を除去して、上記集電体層上に上記負極活物質層を形成する工程において、上記のペースト中に分散した増粘剤が、乾燥時の水系バインダーの負極活物質層表面への移動を抑え、その結果、水系バインダーが負極活物質層の表面に偏在してしまうことを抑制できると考えられる。
本実施形態に係る負極製造用ペーストのpHは、負極製造用ペーストの分散安定性を良好にする観点から、例えば6.0以上8.0以下であり、好ましくは6.5以上7.5以下であり、より好ましくは6.8以上7.2以下である。
本実施形態に係る負極製造用ペーストのpHの調整方法はとくに限定はされないが、例えば、負極製造用ペーストを構成する各材料の配合比率や、負極製造用ペーストを構成する各材料の種類等を調整することによって調整することができる。
<負極製造用ペーストの構成材料>
次に、本実施形態に係る負極製造用ペーストを構成する各材料について説明する。本実施形態に係る負極製造用ペーストは、負極活物質と、水系バインダーと、増粘剤と、水系媒体と、を含み、さらに必要に応じて導電助剤を含む。
(負極活物質)
本実施形態において、電極活物質としては負極活物質を使用し、負極製造用ペーストが電池用の負極を形成するためのペーストであるときに、本実施形態の剥離強度向上効果を特に効果的に得ることができる。
負極活物質としては、電池の負極に使用可能な通常の負極活物質であれば特に限定されない。上記電池がリチウムイオン電池の場合、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、樹脂炭、炭素繊維、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料;リチウム金属、リチウム合金等のリチウム系金属;シリコン、スズ等の金属;ポリアセン、ポリアセチレン、ポリピロール等の導電性ポリマー等が挙げられる。これらの中でも炭素材料が好ましく、特に天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛質材料が好ましい。
負極活物質は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
負極活物質の含有量は、負極製造用ペーストの固形分の全量を100質量部としたとき、70質量部以上99.97質量部以下であることが好ましく、85質量部以上99.85質量部以下であることがより好ましい。
黒鉛質材料としては、電池の負極に使用可能な通常の黒鉛質材料であれば特に限定されない。上記電池がリチウムイオン電池の場合、例えば、天然黒鉛、石油系および石炭系コークスを熱処理することで製造される人造黒鉛等が挙げられる。
ここで、天然黒鉛とは、鉱石として天然に産出する黒鉛のことをいう。本実施形態の核材として用いる天然黒鉛は、産地や性状、種類は特に限定されない。
また、人造黒鉛とは、人工的な手法で作られた黒鉛および黒鉛の完全結晶に近い黒鉛をいう。このような人造黒鉛は、例えば、石炭の乾留、原油の蒸留による残渣等から得られるタールやコークスを原料にして、焼成工程、黒鉛化工程を経ることにより得られる。
また、黒鉛質材料は、黒鉛粉末を核材とし、上記黒鉛粉末の表面の少なくとも一部が上記黒鉛粉末よりも結晶性の低い炭素材料により被覆されているもの(以下、表面被覆黒鉛とも呼ぶ。)が好ましい。特に黒鉛粉末のエッジ部が上記炭素材料により被覆されていることが好ましい。黒鉛粉末のエッジ部が被覆されることにより、エッジ部と電解液との不可逆的な反応を抑制することができ、その結果、不可逆容量の増大による初期の充放電効率の低下を抑制することができる。
また、表面被覆黒鉛を用いると、黒鉛単独のときよりもバインダーとの結着性を向上させることができるため、バインダーの量を減らすことができる。その結果、得られる電池の電池特性を向上させることができる。
ここで、上記黒鉛粉末よりも結晶性の低い炭素材料とは、例えば、ソフトカーボン、ハードカーボン等のアモルファスカーボンである。
核材として用いる黒鉛粉末としては、例えば、天然黒鉛、石油系および石炭系コークスを熱処理することで製造される人造黒鉛等が挙げられる。本実施形態においては、これらの黒鉛粉末を一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、コストの点から、天然黒鉛が好ましい。
本実施形態に係る表面被覆黒鉛は、焼成工程により炭素化されて上記黒鉛粉末よりも結晶性の低い炭素材料となる有機化合物と、上記黒鉛粉末とを混合した後に、上記有機化合物を焼成炭素化することによって作製することができる。
上記黒鉛粉末と混合する有機化合物は、焼成することによって炭素化して、上記黒鉛粉末よりも結晶性の低い炭素材料が得られるものであれば特に限定されないが、例えば、石油系タール、石炭系タール等のタール;石油系ピッチ、石炭系ピッチ等のピッチ;ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、フルフリルアルコール樹脂等の熱硬化性樹脂;セルロース等の天然樹脂;ナフタレン、アルキルナフタレン、アントラセン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
本実施形態においては、これらの有機化合物は一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの有機化合物は、必要に応じて、溶媒により溶解または分散させて用いてもよい。
上記有機化合物の中でも、価格の点からタールおよびピッチが好ましい。
本実施形態に係る表面被覆黒鉛における有機化合物由来の炭素材料の割合(以下「被覆量」と呼ぶ。)は、負極活物質を100質量%としたとき、好ましくは0.7質量%以上8.0質量%以下である。
炭素材料の被覆量を上記上限値以下とすることにより、リチウムイオンを吸蔵・放出する面積が大きくなり、得られるリチウムイオン電池のレート特性を向上させることができる。
炭素材料の被覆量を上記下限値以上とすることにより、不可逆容量の増大による初期の充放電効率の低下を抑制することができる。また、炭素材料の被覆量を上記下限値以上とすることにより、得られる負極製造用ペーストの安定性を向上させることができる。
ここで、上記被覆量は、熱重量分析により算出することができる。より具体的には、熱重量分析計(例えば、パーキンエルマ社製TGA7アナライザ)を用いて、酸素雰囲気下、昇温速度5℃/minにて負極活物質を900℃まで昇温したとき、質量減少が始まった温度から、質量減少割合が緩やかになり、その後質量減少が加速する温度までの減少質量を被覆量とすることができる。
負極活物質の窒素吸着BET法による比表面積は、好ましくは1.0m/g以上6.0m/g以下であり、より好ましくは2.0m/g以上5.0m/g以下である。
比表面積を上記上限値以下とすることにより、不可逆容量の増大による初期の充放電効率の低下を抑制することができる。また、比表面積を上記上限値以下とすることにより、得られる負極製造用ペーストの安定性を向上させることができる。
比表面積を上記下限値以上とすることにより、リチウムイオンを吸蔵・放出する面積が大きくなり、得られるリチウムイオン電池のレート特性を向上させることができる。
また、比表面積を上記範囲内とすることにより、水系バインダーの結着性を向上させることができる。
負極活物質の平均粒子径は、充放電時の副反応を抑えて充放電効率の低下を抑える点から、1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましく、5μm以上がさらに好ましく、8μm以上が特に好ましく、入出力特性や電極作製上の観点(電極表面の平滑性等)から、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下が特に好ましい。ここで、平均粒径は、レーザ回折散乱法による粒度分布(体積基準)における積算値50%での粒子径(メジアン径:d50)を意味する。
(水系バインダー)
水系バインダーは、電極成形が可能であり、十分な電気化学的安定性を有していれば特に限定されないが、例えば、ゴム系バインダー樹脂やアクリル系バインダー樹脂等を用いることができる。なお、本実施形態において、水系バインダー樹脂とは、水に分散してエマルジョン水溶液を形成できるものをいう。
本実施形態に係る水系バインダーはラテックス粒子により形成され、水に分散させてエマルジョン水溶液として用いることが好ましい。すなわち、本実施形態に係る水系バインダーは、水系バインダーのラテックス粒子により形成されていることが好ましい。これにより、負極活物質間や導電助剤間、負極活物質と導電助剤との間との接触を阻害せず、水系バインダー樹脂を負極活物質層中に含有させることができる。
ゴム系バインダー樹脂としては、例えば、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム等が挙げられる。
アクリル系バインダー樹脂としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸塩、またはメタクリル酸塩の単位(以下「アクリル単位」という)を含む重合体(単独重合体又は共重合体)等が挙げられる。この共重合体としては、アクリル単位とスチレン単位を含む共重合体、アクリル単位とシリコン単位を含む共重合体等が挙げられる。
これらの水系バインダー樹脂は一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、結着性、電解液との親和性、価格および電気化学安定性等に優れる点から、スチレン・ブタジエン共重合体ゴムが特に好ましい。
水系バインダーの含有量は、負極製造用ペーストの固形分の全量を100質量部としたとき、0.01質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましい。水系バインダーの含有量が上記範囲内であると、負極製造用ペーストの塗工性、バインダーの結着性および電池特性のバランスがより一層優れる。
水系バインダーは、例えば、粉末状のものを水系媒体に分散させてエマルジョン水溶液として用いる。これにより、負極活物質間や導電助剤間、負極活物質と導電助剤との間との接触を阻害せず、水系バインダーの分散性を向上させることができる。
水系バインダーを分散させる水系媒体については、水系バインダーを分散できるものであれば特に限定されないが、蒸留水、イオン交換水、市水、工業用水等を使用できる。これらの中でも、蒸留水やイオン交換水が好ましい。また、水には、アルコール等の水と親水性の高い溶媒を混合させてもよい。
スチレン・ブタジエン共重合体ゴムは、スチレンと1,3−ブタジエンを主成分とする共重合体である。ここで、主成分とは、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム中において、スチレン由来の構成単位および1,3−ブタジエン由来の構成単位の合計含有量が、スチレン・ブタジエン共重合体ゴムの全重合単位中50質量%以上の場合をいう。
スチレン由来の構成単位(以下、Stとも呼ぶ。)と1,3−ブタジエン由来の構成単位(以下、BDとも呼ぶ。)との質量比(St/BD)は、例えば、10/90〜90/10である。
スチレン・ブタジエン共重合体ゴムは、スチレンおよび1,3−ブタジエン以外のモノマー成分を共重合させてもよい。例えば、共役ジエン系モノマー、不飽和カルボン酸モノマー、その他共重合可能である公知のモノマー等が挙げられる。
共役ジエン系モノマーとしては、例えば、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、ピペリレン等が挙げられる。
不飽和カルボン酸モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。
スチレン・ブタジエン共重合体ゴムの製造方法は特に限定されないが、乳化重合法により製造することが好ましい。乳化重合法を用いると、スチレン・ブタジエン共重合体ゴムを含むラテックス粒子で得ることができる。
乳化重合としては従来既知の方法を用いることができる。例えば、スチレンと、1,3−ブタジエンと、さらには上記の各種共重合可能なモノマー成分とを、好ましくは乳化剤の存在下、重合開始剤を添加し、水中で乳化重合することにより製造することができる。
(増粘剤)
増粘剤は、負極製造用ペーストの塗工性を向上させるものであれば特に限定されない。増粘剤としては、例えば、セルロース系水溶性高分子;ポリカルボン酸;ポリエチレンオキシド;ポリビニルピロリドン;ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸塩;ポリビニルアルコール;等の水溶性ポリマーが挙げられる。これらの増粘剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中でもセルロース系水溶性高分子が好ましい。
セルロース系水溶性高分子としては負極製造用ペーストの塗工性を向上させるものであれば特に限定されない。セルロース系水溶性高分子としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルエチルヒドロキシセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系ポリマー、およびこれらのセルロース系ポリマーのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩等のセルロース系ポリマー塩等から選択される一種または二種以上を用いることができる。
これらの中でもカルボキシメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース塩から選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩およびカルボキシメチルセルロースのカリウム塩から選択される一種または二種以上を含むことがより好ましい。
セルロース系水溶性高分子の水系媒体への溶解性を向上させ、負極製造用ペーストの固形分濃度を高めることができる点や、得られる負極製造用ペーストの弾性率を向上させることができる点等から、セルロース系水溶性高分子のエーテル化度は0.50以上1.0以下であることが好ましく、0.70以上0.90以下であることがより好ましい。
ここで、エーテル化度とは、セルロース系水溶性高分子中の無水グルコース単位1個当たりの水酸基のカルボキシメチル基等への置換体への置換度のことをいう。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される、セルロース系水溶性高分子の重量平均分子量Mw(ポリエチレングリコール換算値)は、100000以上であることが好ましく、200000以上であることがより好ましい。セルロース系水溶性高分子の重量平均分子量Mwが上記下限値以上であると、本実施形態に係る負極製造用ペーストの貯蔵弾性率を効果的に高めることができる。
また、GPCにより測定される、セルロース系水溶性高分子の重量平均分子量Mw(ポリエチレングリコール換算値)は、900000以下であることが好ましく、800000以下であることがより好ましい。セルロース系水溶性高分子の重量平均分子量Mwが上記上限値以下であると、セルロース系水溶性高分子の水系媒体への溶解性が向上し、負極製造用ペーストの固形分濃度を高めることができ、その結果、本実施形態に係る負極製造用ペーストの貯蔵弾性率を効果的に高めることができる。
増粘剤の含有量は、負極製造用ペーストの固形分の全量を100質量部としたとき、0.01質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましい。増粘剤の含有量が上記範囲内であると、負極製造用ペーストの塗工性、バインダーの結着性および電池特性のバランスがより一層優れる。
(導電助剤)
本実施形態に係る負極製造用ペーストは、得られる電極の電子伝導性を向上させる観点から、導電助剤をさらに含むことが好ましい。
導電助剤は、電子伝導性を有しており、電極の導電性を向上させるものであれば特に限定されない。本実施形態に係る導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、活物質として使用される黒鉛よりも粒子径の小さい黒鉛等の炭素材料が挙げられる。これらの導電助剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
導電助剤の含有量は、負極製造用ペーストの固形分の全量を100質量部としたとき、0.01質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましい。
導電助剤の含有量が上記範囲内であると、負極製造用ペーストの塗工性およびバインダーの結着性のバランスがより一層優れる。
導電助剤の窒素吸着BET法による比表面積は、負極製造用ペーストの塗工性および電極の伝導性のバランスの点から、好ましくは50m/g以上1000m/g以下である。
(水系媒体)
本実施形態に係る水系媒体については特に限定されず、例えば、蒸留水、イオン交換水、市水、工業用水等を使用できる。これらの中でも、蒸留水やイオン交換水が好ましい。また、水には、アルコール等の水と親水性の高い溶媒を混合させてもよい。
本実施形態に係る負極製造用ペーストは、負極製造用ペーストの固形分の全量を100質量部としたとき、負極活物質の含有量は好ましくは70質量部以上99.97質量部以下であり、より好ましくは85質量部以上99.85質量部以下である。また、水系バインダーの含有量は好ましくは0.01質量部以上10.0質量部以下であり、より好ましくは0.05質量部以上5.0質量部以下である。また、増粘剤の含有量は好ましくは0.01質量部以上10.0質量部以下であり、より好ましくは0.05質量部以上5.0質量部以下である。また、導電助剤の含有量は好ましくは0.01質量部以上10.0質量部以下であり、より好ましくは0.05質量部以上5.0質量部以下である。
負極製造用ペーストを構成する各成分の含有量が上記範囲内であると、負極製造用ペーストの品質安定性と、得られる電池の電池特性のバランスが特に優れる。
<負極製造用ペーストの製造方法>
次に、本実施形態に係る水極製造用ペーストの製造方法について説明する。
本実施形態に係る負極製造用ペーストの製造方法は、負極活物質と、水系バインダーと、増粘剤と、水系媒体と、を含み、さらに必要に応じて導電助剤を含む電池用負極製造用ペーストの製造方法であって、以下の工程(A)〜(C)を少なくとも含む。
乾式混合工程(A):負極活物質および増粘剤粉末を紛体状態で乾式混合することにより、負極活物質および増粘剤粉末を含む混合物を調製する工程
ペースト前駆体調製工程(B):上記混合物中に、水系媒体および水系バインダーを含むエマルジョン水溶液から選択される一種または二種以上の液体成分を添加して湿式混合することにより、ペースト前駆体を調製する工程
負極製造用ペースト調製工程(C):上記ペースト前駆体中に、水系媒体および水系バインダーを含むエマルジョン水溶液から選択される一種または二種以上の液体成分をさらに添加して湿式混合することにより上記負極製造用ペーストを調製する工程
乾式混合工程(A)では、負極活物質および増粘剤粉末を紛体状態で乾式混合することにより、負極活物質および増粘剤粉末を含む粉体の混合物を調製する。このとき、導電助剤を合わせて紛体混合してもよい。
本実施形態において、乾式混合工程(A)をおこなうことにより、負極活物質および増粘剤の分散性を高めることができ、その後の工程において、増粘剤由来のゲル成分の生成をより一層抑制できる。これにより、得られる負極製造用ペースト中の増粘剤由来のゲル成分の発生を抑制できたり、負極製造用ペーストの貯蔵弾性率を向上できたりする。
乾式混合をおこなう混合機としては、遊星運動型ミキサーを用いるのが好ましく、遊星運動型プラネタリーミキサーを用いることがより好ましい。このような混合機を用いることにより、負極活物質および増粘剤粉末の飛散を抑制しながら、負極活物質および増粘剤粉末を十分に混合することができる。なお、遊星運動型ミキサーは、攪拌機構として自転と公転機能を有しているミキサーのことをいう。遊星運動型プラネタリーミキサーとは、攪拌機構として自転と公転機能を有するブレードをもつミキサーをいう。
乾式混合工程(A)における上記乾式混合の自転速度は、0.05m/sec以上0.55m/sec以下の範囲内であることが好ましく、0.07m/sec以上0.52m/sec以下の範囲内であることがより好ましい。
乾式混合工程(A)における上記乾式混合の自転速度が、上記範囲内であると、負極活物質および増粘剤粉末の飛散を抑制しながら、負極活物質および増粘剤粉末を十分に混合することができる。
また、乾式混合工程(A)における上記乾式混合の公転速度は、0.01m/sec以上0.20m/sec以下の範囲内であることが好ましく、0.02m/sec以上0.15m/sec以下の範囲内であることがより好ましい。
乾式混合工程(A)における上記乾式混合の公転速度が、上記範囲内であると、負極活物質および増粘剤粉末の飛散を抑制しながら、負極活物質および増粘剤粉末を十分に混合することができる。
乾式混合工程(A)における上記乾式混合の混合時間は、特に限定されないが、例えば、5分以上120分以下、好ましくは10分以上60分以下である。
ペースト前駆体調製工程(B)では、工程(A)により得られた上記混合物中に、水系媒体および水系バインダーを含むエマルジョン水溶液から選択される一種または二種以上の液体成分を添加して湿式混合することにより、ペースト前駆体を調製する。
ペースト前駆体調製工程(B)における湿式混合をおこなう混合機としては、遊星運動型ミキサーを用いるのが好ましく、遊星運動型プラネタリーミキサーを用いることがより好ましい。このような混合機を用いることにより、負極製造用ペーストを構成する各材料の飛散を抑制しながら、各材料の分散性を高めることができる。
ここで、ペースト前駆体調製工程(B)は、第1の固練り工程(B2)と、第2の固練り工程(B3)とを少なくとも含む、二段階以上の工程とする。さらに必要に応じて、第1の固練り工程(B2)の前に行う、なじませ工程(B1)を行ってもよい。
なじませ工程(B1)は、紛体混合物に水系媒体および水系バインダーを含むエマルジョン水溶液から選択される一種または二種以上の液体成分をなじませる工程である。このなじませ工程(B1)を含むことにより、紛体混合物が湿式混合時に混合機のふちにせり上がってくることや、紛体混合物の濡れが偏ってしまうこと、紛体混合物が混練時に飛び散ること等を一定の範囲で抑制できる。
なじませ工程(B1)における上記湿式混合の自転速度は、0.10m/sec以上0.50m/sec以下の範囲内であることが好ましく、0.15m/sec以上0.20m/sec以下の範囲内であることがより好ましい。
なじませ工程(B1)における上記湿式混合の自転速度が上記範囲内であると、紛体混合物が湿式混合時に混合機のふちにせり上がってくることや、紛体混合物の濡れが偏ってしまうこと、紛体混合物が混練時に飛び散ること等をより効果的に抑制しながら、紛体混合物に液体成分を十分になじませることができる。
また、なじませ工程(B1)における上記湿式混合の公転速度は、0.03m/sec以上0.06m/sec以下の範囲内であることが好ましく、0.04m/sec以上0.06m/sec以下の範囲内であることがより好ましい。
なじませ工程(B1)における上記湿式混合の公転速度が上記範囲内であると、紛体混合物が湿式混合時に混合機のふちにせり上がってくることや、紛体混合物の濡れが偏ってしまうこと、紛体混合物が混練時に飛び散ること等をより効果的に抑制しながら、紛体混合物に液体成分を十分になじませることができる。
なじませ工程(B1)における上記湿式混合の混合時間は、特に限定されないが、例えば、0.5分以上10分以下であることが好ましく、2分以上5分以下であることがより好ましい。
また、第1の固練り工程(B2)および第2の固練り工程(B3)は、なじませ工程(B1)よりも湿式混合の自転速度を高く設定し、上記紛体混合物と上記液体成分とを混練し、ペースト前駆体を得る工程である。
第1の固練り工程(B2)において、ペースト前駆体の固形分濃度を68質量%以上77質量%以下に調整することが好ましく、70質量%以上74質量%以下に調整することがより好ましく、71質量%以上72質量%以下に調整することがさらに好ましい。
固形分濃度を上記下限値以上とすることにより、活物質や導電助剤に一定量の増粘剤が吸着することができるため、水系媒体中への増粘剤の過剰な分散が抑制される。以降の負極製造用ペースト調製工程(C)で添加される水系バインダーが、上記の増粘剤が吸着した活物質や導電助剤に効率よく吸着され、各材料間の相互作用による3次元的なネットワークが発達する。その結果、引き続き上記負極製造用ペーストを集電体に塗布・乾燥して得られる負極電極において、集電体層と負極活物質層との接着性、すなわち剥離強度を、より一層向上させることができる。
また、固形分濃度を上記上限値以下とすることにより、活物質や導電助剤を含む紛体混合物が湿式混合時に混合機のふちにせり上がってくることを効果的に抑制できるため、安定した粘度・混合比の負極製造用ペーストを得ることができる。
第1の固練り工程(B2)における上記湿式混合の混合時間は、特に限定されないが、例えば、5分以上60分以下である。
第2の固練り工程(B3)において、ペースト前駆体の固形分濃度を59質量%以上66質量%以下に調整することが好ましく、61質量%以上64質量%以下に調整することがより好ましく、62質量%以上63質量%以下に調整することがさらに好ましい。
固形分濃度を上記下限値以上とすることにより、固形混合物が所謂ダマの状態になるのを抑制し、均一なペーストを作製することができる。
また、固形分濃度を上記上限値以下とすることにより、ペースト中に適度に分散した増粘剤が、次の塗布・乾燥工程において、水系バインダーの負極活物質層表面への移動を抑え、その結果、水系バインダーが負極活物質層の表面に偏在してしまうことを抑制できると考えられる。
第2の固練り工程(B3)における上記湿式混合の混合時間は、特に限定されないが、例えば、5分以上60分以下である。
第1の固練り工程(B2)および第2の固練り工程(B3)における上記湿式混合の自転速度(遊星運動型ミキサーのブレードの線速度)は、0.10m/sec以上2.0m/sec以下の範囲内であることが好ましく、0.20m/sec以上1.2m/sec以下の範囲内であることがより好ましい。
また、第1の固練り工程(B2)および第2の固練り工程(B3)における上記湿式混合の公転速度(遊星運動型ミキサーのブレードの線速度)は、0.01m/sec以上1.0m/sec以下の範囲内であることが好ましく、0.05m/sec以上0.35m/sec以下の範囲内であることがより好ましい。
負極製造用ペースト調製工程(C)では、ペースト前駆体調製工程(B)により得られた上記ペースト前駆体中に、水系媒体および水系バインダーを含むエマルジョン水溶液から選択される一種または二種以上の液体成分をさらに添加して湿式混合することにより、上記負極製造用ペーストを調製する。
負極製造用ペースト調製工程(C)における湿式混合をおこなう混合機としては、遊星運動型ミキサーを用いるのが好ましく、遊星運動型プラネタリーミキサーを用いることがより好ましい。このような混合機を用いることにより、低速で攪拌しながら、十分に混合することができる。そのため、攪拌混合による増粘剤の分子鎖の切断を抑制し、かつ、水系バインダー同士の凝集を抑制しながら、負極製造用ペーストを構成する各材料の分散性を高めることができる。そして、その結果として、品質安定性により一層優れた負極製造用ペーストを得ることができる。
また、得られる負極製造用ペーストは分散性がより一層優れるため、このような負極製造用ペーストを用いると、より一層均一な負極活物質層を得ることができる。その結果、より一層電池特性に優れた電池を得ることができる。
本実施形態において、負極製造用ペースト調製工程(C)における湿式混合の自転速度(遊星運動型ミキサーのブレードの線速度)は特に限定されないが、例えば、0.10m/sec以上10.0m/sec以下の範囲内である。
また、本実施形態において、負極製造用ペースト調製工程(C)における湿式混合の公転速度(遊星運動型ミキサーのブレードの線速度)は特に限定されないが、例えば、0.02m/sec以上3.0m/sec以下の範囲内である。
負極製造用ペースト調製工程(C)における上記湿式混合の混合時間は、特に限定されないが、例えば、5分以上60分以下である。
なお、負極製造用ペースト調製工程(C)における負極製造用ペーストの固形分濃度は、上記液体成分の濃度や添加量を調整することにより調整することができる。
本実施形態に係る負極製造用ペーストの製造方法は、脱泡工程(D):真空脱泡する工程をさらにおこなってもよい。これにより、ペースト中に巻き込んだ気泡を取り除くことができ、ペーストの塗工性を向上させることができる。
真空脱泡は混合機の容器や軸部にシール処理を施して気泡を除去してもよいし、別の容器に移してから行ってもよい。
<電池用負極電極>
図1は、本発明に係る実施形態の電池用負極電極100の構造の一例を示す断面図である。本実施形態に係る電池用負極電極100は、集電体層101と、集電体層101の少なくとも一方の面に設けられ、かつ、本実施形態に係る負極製造用ペーストの固形分により形成された負極活物質層103と、を含む。
本実施形態に係る電池用負極電極100の製造に用いられる集電体層101としては、例えば、電池に使用可能な通常の集電体を用いることができる。
上記電池がリチウムイオン電池の場合、負極集電体としては、例えば、銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタンまたはこれらの合金を用いることができ、これらの中でも銅が特に好ましい。
集電体の形状については特に限定されないが、例えば、厚さが0.001〜0.5mmの範囲で箔状のものを用いることができる。
本実施形態に係る負極活物質層103の厚みや密度は、電池の使用用途等に応じて適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
<電池用負極電極の製造方法>
次に、本実施形態に係る電池用負極電極100の製造方法について説明する。
本実施形態に係る電池用負極電極100の製造方法は、本実施形態に係る負極製造用ペーストの製造方法により得られた負極製造用ペーストを集電体層101に塗工して乾燥し、水系媒体を除去することによって、集電体層101上に負極活物質層103を形成する工程を含む。これにより集電体層101と負極活物質層103との接着性に優れた電池用負極電極100を安定的に得ることができる。
すなわち、本実施形態に係る電池用負極電極100は、本実施形態に係る負極製造用ペーストを負極集電体層101上に塗布して乾燥し、水系媒体を除去することにより集電体層101上に負極活物質層103を形成することにより得ることができる。
本実施形態に係る負極製造用ペーストを集電体層101上に塗布する方法は、一般的に公知の方法を用いることができる。例えば、リバースロール法、ダイレクトロール法、ドクターブレード法、ナイフ法、エクストルージョン法、カーテン法、グラビア法、バー法、ディップ法およびスクイーズ法等を挙げることができる。
本実施形態に係る負極製造用ペーストは、集電体層101の片面のみに塗布しても両面に塗布してもよい。集電体層101の両面に塗布する場合は、片面ずつ逐次でも、両面同時に塗布してもよい。また、集電体層101の表面に連続で、あるいは、間欠で塗布してもよい。塗布層の厚さや長さ、幅は、電池の大きさに応じて、適宜決定することができる。
塗布した負極製造用ペーストの乾燥方法は、一般的に公知の方法を用いることができる。例えば、熱風、真空、赤外線、遠赤外線、電子線および低温風を単独あるいは組み合わせて用いることができる。乾燥温度は、例えば、30℃以上350℃以下の範囲である。
本実施形態に係る電池用負極電極100は、必要に応じてプレスしてもよい。プレスの方法としては、一般的に公知の方法を用いることができる。例えば、金型プレス法やカレンダープレス法等が挙げられる。プレス圧は特に限定されないが、例えば、0.2〜3t/cmの範囲である。
本実施形態に係る電池用負極電極100の厚みや密度は、電池の使用用途等に応じて適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
<電池>
つづいて、本実施形態に係る電池150について説明する。図2は、本発明に係る実施形態の電池150の構造の一例を示す断面図である。
本実施形態に係る電池150は、正極120と、電解質110と、負極130とを少なくとも備え、負極130が本実施形態に係る電池用負極電極100を含む。また、本実施形態に係る電池150は、必要に応じてセパレーターを含んでもよい。
本実施形態に係る電池150は、負極130が本実施形態に係る電池用負極電極100を含むため、電池を組み立てる際の負極活物質層の粉落ちが抑制されており、電池の品質や電池のサイクル特性等が良好である。
本実施形態に係る電池150は公知の方法に準じて作製することができる。
電極は、例えば、積層体や捲回体を使用できる。外装体としては、金属外装体やアルミラミネート外装体を適宜使用できる。電池の形状は、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角型、扁平型等いずれの形状であってもよい。
電池の正極120は、公知の製造方法により製造することができる。例えば、正極活物質と、バインダーとを少なくとも含み、さらに必要に応じて導電助剤、増粘剤を含んだペーストを正極集電体に塗布・乾燥等の方法を用いて製造したものが挙げられる。
正極活物質としては電池の正極に使用可能な通常の正極活物質であれば特に限定されない。上記電池がリチウムイオン電池の場合、例えば、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物、リチウム−マンガン−ニッケル複合酸化物等のリチウムと遷移金属との複合酸化物;TiS、FeS、MoS等の遷移金属硫化物;MnO、V、V13、TiO等の遷移金属酸化物、オリビン型リチウムリン酸化物等が挙げられる。
オリビン型リチウムリン酸化物は、例えば、Mn、Cr、Co、Cu、Ni、V、Mo、Ti、Zn、Al、Ga、Mg、B、Nb、およびFeよりなる群のうちの少なくとも1種の元素と、リチウムと、リンと、酸素とを含んでいる。これらの化合物はその特性を向上させるために一部の元素を部分的に他の元素に置換したものであってもよい。
これらの中でも、オリビン型リチウム鉄リン酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物、リチウム−マンガン−ニッケル複合酸化物が好ましい。これらの正極活物質は作用電位が高いことに加えて容量も大きく、大きなエネルギー密度を有する。正極活物質は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
正極に用いられるバインダー樹脂は用途に応じて適宜選択される。例えば、溶媒に溶解可能なフッ素系バインダー樹脂や、水に分散可能な水系バインダー等を使用することができる。
フッ素系バインダー樹脂としては電極成形が可能であり、十分な電気化学的安定性を有していれば特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、フッ素ゴム等が挙げられる。これらのフッ素系バインダー樹脂は一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、ポリフッ化ビニリデン系樹脂が好ましい。フッ素系バインダー樹脂は、例えば、N−メチル-ピロリドン(NMP)等の溶媒に溶解させて使用することができる。
また、水系バインダー樹脂、増粘剤、導電助剤としては、上記の本実施形態に係る負極製造用ペーストを構成する各材料と同じものを用いることができる。
正極集電体としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタンまたはこれらの合金等を用いることができ、これらの中でもアルミニウムが特に好ましい。
電池の電解液中の電解質としては、公知のリチウム塩がいずれも使用でき、活物質の種類に応じて選択すればよい。例えば、LiClO、LiBF、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiB10Cl10、LiAlCl、LiCl、LiBr、LiB(C、CFSOLi、CHSOLi、LiCFSO、LiCSO、Li(CFSON、低級脂肪酸カルボン酸リチウム等が挙げられる。
電解質を溶解する溶媒としては、電解質を溶解させる液体成分として通常用いられるものであれば特に限定されるものではなく、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ビニレンカーボネート(VC)等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン類;トリメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン等のオキソラン類;アセトニトリル、ニトロメタン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等の含窒素類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の有機酸エステル類;リン酸トリエステルやジグライム類;トリグライム類;スルホラン、メチルスルホラン等のスルホラン類;3−メチル−2−オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン類;1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、ナフタスルトン等のスルトン類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
セパレーターとしては、例えば、多孔性セパレーターが挙げられる。セパレーターの形態は、膜、フィルム、不織布等が挙げられる。
多孔性セパレーターとしては、例えば、ポリプロピレン系、ポリエチレン系等のポリオレフィン系多孔性セパレーター;ポリビニリデンフルオリド、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンフルオリドヘキサフルオロプロピレン共重合体等により形成された多孔性セパレーターが挙げられる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
<水系負極製造用ペーストの作製>
(A)乾式混合工程
遊星運動型プラネタリーミキサー(釜の大きさ:200L)に、表面が非晶質の炭素で被覆された黒鉛(平均粒子径d50:16μm、窒素吸着BET法による比表面積:3.4m/g)960gと、カルボキシメチルセルロース粉末(日本製紙社製サンローズ(登録商標)のMACシリーズ、エーテル化度:0.73、重量平均分子量Mw:300000(ポリエチレングリコール換算値))10gと、導電助剤として約30nmの1次粒子が連鎖状に凝集したカーボンブラック(窒素吸着BET法による比表面積:60m/g)10gとを投入した。次いで、自転速度:0.26m/sec、公転速度:0.08m/sec、温度:20℃の条件下で20分間乾式混合をおこない、粉体混合物を得た。ここで、自転速度および公転速度は、遊星運動型プラネタリーミキサーのブレードの線速度である。
以下、平均粒子径d50はMicrotrac社製、MT3000装置により測定し、比表面積は、Quantachrome Corporation社製、Quanta Sorbを用いて、窒素吸着BET法にて求めた。
ここで、表面が非晶質の炭素で被覆された黒鉛は以下のように作製した。
平均粒子径d50が16μm、比表面積が3.4m/gの天然黒鉛を核材として使用した。
この天然黒鉛粉末99.0質量部と、石炭系ピッチ粉末1.0質量部とを、Vブレンダーを用いた単純混合により固相で混合した。得られた混合粉末を黒鉛るつぼに入れ、窒素気流下1300℃で1時間熱処理して、表面が非晶質の炭素で被覆された黒鉛を得た。
(B1)なじませ工程
次いで、上記乾式混合工程(A)が終了した遊星運動型プラネタリーミキサーに、得られるペースト前駆体の固形分濃度が71質量%になるように水を添加した。その後、自転速度:0.15m/sec、公転速度:0.04m/sec、温度:20℃の条件下で2分間大気圧の条件下で2分間湿式混合をおこない、粉体混合物に水をなじませた。ここで、自転速度および公転速度は、遊星運動型プラネタリーミキサーのブレードの線速度である。
(B2)第1の固練り工程
次いで、自転速度:0.26m/sec、公転速度:0.08m/sec、温度:20℃、大気圧の条件下で30分間湿式混合をおこなった。ここで、自転速度および公転速度は、遊星運動型プラネタリーミキサーのブレードの線速度である。
(B3)第2の固練り工程
次いで、上記第1の固練り工程(B2)が終了した遊星運動型プラネタリーミキサーに、得られるペースト前駆体の固形分濃度が63質量%になるように水を添加し、自転速度、公転速度、温度は上記第1の固練り工程(B2)と同じ条件にしたまま、大気圧の条件下で30分間湿式混合をおこない、負極製造用ペースト前駆体を得た。
(C)負極製造用ペースト調製工程
次いで、水系バインダー樹脂としてスチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を水に分散した固形分濃度40質量%のSBRエマルジョン水溶液を調製した。得られたSBRエマルジョン水溶液50gを、固練り工程が終了した遊星運動型プラネタリーミキサーに添加した。
その後、自転速度:0.52m/sec、公転速度:0.15m/sec、温度:20℃の条件下で40分間湿式混合をおこなった。ここで、自転速度および公転速度は、遊星運動型プラネタリーミキサーのブレードの線速度である。
(D)脱泡工程
次いで、真空脱泡を行い、負極製造用ペーストを得た。
なお、負極製造用ペーストの最終的な固形分濃度は、負極製造用ペーストを調製する工程(C)において水を添加することによって51質量%に調整した。
<負極の作製>
得られた負極製造用ペーストを集電体層である銅箔の両面にダイコータを用いて塗布し、乾燥した。次いで、得られた電極をプレスして、負極を得た。
<評価>
(1)負極製造用ペーストの粘度測定
B型粘度計(ブルックフィールド社製、回転粘度計)を用いて、25℃、せん断速度3.4s−1の条件で負極製造用ペーストの粘度を測定した。
(2)剥離強度試験
以下の手順により、得られた負極の剥離強度を測定した。負極を幅20mm、長さ10cmにわたって切り取り、負極の片面を両面テープが張られた板に貼り付けた。次いで、板を固定し、負極を100mm/minの速度で90°方向に剥離した。そのときの剥離強度(mN/mm)を3回測定し、その平均値を剥離強度とした。
得られた評価結果を表1に示す。
Figure 2019107054
(実施例2〜15、比較例1〜6)
なじませ工程(B1)の有無、第1の固練り工程(B2)および第2の固練り工程(B3)の固形分濃度、並びに混合時間を表1に示す値に変化させた以外は実施例1と同様にそれぞれ水系負極製造用ペーストを調製し、各評価をそれぞれおこなった。得られた結果を表1に示す。
この出願は、2017年11月29日に出願された日本出願特願2017−228665号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。

Claims (18)

  1. 負極活物質および増粘剤を少なくとも含む複数の粉末状物質を紛体状態で乾式混合することにより、前記負極活物質および前記増粘剤を少なくとも含む混合物を調製する工程(A)と、
    前記混合物中に、水系媒体および水系バインダーを含むエマルジョン水溶液から選択される一種または二種以上の液体成分を添加して湿式混合することにより、ペースト前駆体を調製する工程(B)と、
    前記ペースト前駆体中に、前記水系媒体および前記水系バインダーを含むエマルジョン水溶液から選択される一種または二種以上の液体成分をさらに添加して湿式混合することにより、負極製造用ペーストを調製する工程(C)と、
    を含む、負極製造用ペーストの製造方法であって、
    前記工程(B)は、第1の固練り工程(B2)と第2の固練り工程(B3)とを少なくとも含み、
    前記第1の固練り工程(B2)における固形分濃度が68質量%以上79質量%以下であり、前記第2の固練り工程(B3)における固形分濃度が59質量%以上66質量%以下である、負極製造用ペーストの製造方法。
  2. 請求項1に記載の負極製造用ペーストの製造方法において、
    前記第1の固練り工程(B2)における固形分濃度が71質量%以上である、負極製造用ペーストの製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の負極製造用ペーストの製造方法において、
    前記第1の固練り工程(B2)における固形分濃度が77質量%以下である、負極製造用ペーストの製造方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の負極製造用ペーストの製造方法において、
    前記第1の固練り工程(B2)と前記第2の固練り工程(B3)における前記湿式混合の自転速度を0.10m/sec以上2.0m/sec以下の範囲内に設定する、負極製造用ペーストの製造方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の負極製造用ペーストの製造方法において、
    前記第1の固練り工程(B2)と前記第2の固練り工程(B3)における前記湿式混合の公転速度を0.01m/sec以上1.0m/sec以下の範囲内に設定する、負極製造用ペーストの製造方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の負極製造用ペーストの製造方法において、
    前記工程(B)は、前記第1の固練り工程(B2)と前記第2の固練り工程(B3)の前に行う、なじませ工程(B1)をさらに含み、
    前記第1の固練り工程(B2)と前記第2の固練り工程(B3)における前記湿式混合の自転速度を、前記なじませ工程(B1)における湿式混合の自転速度よりも高く設定する、負極製造用ペーストの製造方法。
  7. 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の負極製造用ペーストの製造方法において、
    前記負極製造用ペーストのpHが6.0以上8.0以下である、負極製造用ペーストの製造方法。
  8. 請求項1乃至7のいずれか一項に記載の負極製造用ペーストの製造方法において、
    前記増粘剤がセルロース系水溶性高分子を含むものである、負極製造用ペーストの製造方法。
  9. 請求項8に記載の負極製造用ペーストの製造方法において、
    前記セルロース系水溶性高分子のエーテル化度が0.50以上1.0以下である、負極製造用ペーストの製造方法。
  10. 請求項8または9に記載の負極製造用ペーストの製造方法において、
    前記セルロース系水溶性高分子の重量平均分子量Mwが100000以上である、負極製造用ペーストの製造方法。
  11. 請求項1乃至10のいずれか一項に記載の負極製造用ペーストの製造方法において、
    前記水系バインダーがスチレン・ブタジエン共重合体ゴムを含むものである、負極製造用ペーストの製造方法。
  12. 請求項1乃至11のいずれか一項に記載の負極製造用ペーストの製造方法において、
    当該負極製造用ペーストの固形分の全量を100質量部としたとき、
    前記負極活物質の含有量が70質量部以上99.97質量部以下であり、
    前記増粘剤の含有量が0.01質量部以上10.0質量部以下であり、
    前記水系バインダーの含有量が0.01質量部以上10.0質量部以下である、負極製造用ペーストの製造方法。
  13. 請求項1乃至12のいずれか一項に記載の負極製造用ペーストの製造方法において、
    前記負極活物質が炭素材料を含むものである、負極製造用ペーストの製造方法。
  14. 請求項1乃至13のいずれか一項に記載の負極製造用ペーストの製造方法において、
    さらに、炭素材料を含む材料で構成された導電助剤を含む、負極製造用ペーストの製造方法。
  15. 請求項14に記載の負極製造用ペーストの製造方法において、
    前記導電助剤の窒素吸着BET法による比表面積が50m/g以上である、負極製造用ペーストの製造方法。
  16. 集電体層と、前記集電体層の少なくとも一方の面に設けられ、かつ、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の負極製造用ペーストの製造方法により得られた負極製造用ペーストの固形分により形成された負極活物質層と、を含む電池用負極電極。
  17. 正極と、電解質と、負極とを少なくとも備えた電池であって、
    前記負極が請求項16に記載の電池用負極電極を含む電池。
  18. 請求項1乃至15のいずれか一項に記載の負極製造用ペーストの製造方法により得られた負極製造用ペーストを集電体層に塗工して乾燥し、前記水系媒体を除去することによって、前記集電体層上に負極活物質層を形成する工程を含む電池用負極電極の製造方法。
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