JPWO2019074061A1 - 箱型防音構造体および輸送機器 - Google Patents
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Abstract
Description
電子機器等は、騒音の発生源となる電子回路および電気モーター等を有しており、電子回路および電気モーター等(以下、音源ともいう)は、それぞれ固有の周波数で大きな音量の音を発生する。電気系の出力を大きくすると、この周波数の音量がさらに大きくなるため騒音として問題となる。
例えば、電気モーターの場合には、回転数に応じた周波数の騒音(電磁騒音)が生じる。インバーターの場合には、キャリア周波数に応じた騒音(スイッチングノイズ)が生じる。ファンの場合には、回転数に応じた周波数の騒音が生じる。これらの騒音は近い周波数の音と比べて音量が大きくなる。
しかしながら、電気モーター等の音源は、それぞれ固有の周波数で大きな音量の音を発生する。電気系の出力を大きくすると、この周波数の音量がさらに大きくなる。発泡ウレタンやフェルトなどの通常の多孔質吸音体では広い周波数で消音するため、音源に固有の周波数の騒音を十分に消音できず、また固有の周波数の騒音のみを消音するわけではなく他の周波数も同様に低減させる。そのため、他の周波数より卓越して固有の周波数が聴こえるという状況は変化しない。ホワイトノイズやピンクノイズのような周波数に対してブロードな騒音に対して、特定の周波数が単周波音のようになる騒音は人間が検知しやすく、A特性など騒音量の評価値以上に問題となることも多い。よって、多孔質吸音体で対策後も他の周波数よりも相対的に聞こえやすくなってしまうという問題があった。
すなわち、以下の構成により上記課題を解決することができることを見出した。
箱体の内部に配置される共鳴体を含む消音構造と、を有し、
箱体の壁の外側面に接して、または、箱体の内部に、配置される音源から発生して箱体の開放面から外部に放射される音を消音構造によって低減する箱型防音構造体。
[2] 共鳴体は、少なくとも一面が開放された枠体と、枠体の開放面に配置される膜状部材と、を有し、
膜状部材が膜振動する共鳴体である[1]に記載の箱型防音構造体。
[3] 膜振動する共鳴体の膜振動の基本振動モードにおける垂直入射吸音率よりも高次振動モードにおける垂直入射吸音率が大きい[2]に記載の箱型防音構造体。
[4] 膜状部材が金属からなる[2]または[3]に記載の箱型防音構造体。
[5] 枠体は、一面が開放された開放面であり、開放面に膜状部材が配置されて、枠体および膜状部材で囲まれた閉空間を形成している[2]〜[4]のいずれかに記載の箱型防音構造体。
[6] 共鳴体は、ヘルムホルツ共鳴器、および、気柱共鳴器の少なくとも一方である[1]に記載の箱型防音構造体。
[7] 共鳴体が、膜状部材、貫通孔を有する板状部材のうち最低一種類以上の層を、枠体を介して、合計2層以上積層している[1]〜[6]のいずれか一項に記載の箱型防音構造体。
[8] 共鳴体の厚みが20mm以下である[1]〜[7]のいずれかに記載の箱型防音構造体。
[9] 音源は、音量がピークとなる、音源に固有の周波数を少なくとも1つ有する[1]〜[8]のいずれかに記載の箱型防音構造体。
[10] 共鳴体の共鳴周波数が、音源に固有の周波数の±20%の範囲にある[9]に記載の箱型防音構造体。
[11] 音源に固有の周波数における音源放射分布において、その中の最大音量となる方向の延長線上に、共鳴体が配置されている[9]または[10]に記載の箱型防音構造体。
[12] 共鳴体の共鳴周波数が、箱体内に生じる共鳴の共鳴周波数の±20%の範囲にある[1]〜[11]のいずれかに記載の箱型防音構造体。
[13] 共鳴体は、少なくとも一部が箱体の内壁面に取り付けられている[1]〜[12]のいずれかに記載の箱型防音構造体。
[14] 箱体の壁の一部を共鳴体の一部として用いる[1]〜[13]のいずれかに記載の箱型防音構造体。
[15] 共鳴体が箱体とは別体として構成され、取り付け取り外しが可能である[1]〜[14]のいずれかに記載の箱型防音構造体。
[16] 消音構造は、それぞれ異なる周波数に対して共鳴する複数の種類の共鳴体を有する[1]〜[15]のいずれかに記載の箱型防音構造体。
[17] 複数の種類の共鳴体が、同一平面内に配置される[16]に記載の箱型防音構造体。
[18] 複数の種類の共鳴体が、同じ厚みである[16]または[17]に記載の箱型防音構造体。
[19] 複数の種類の共鳴体が、同じ大きさである[16]〜[18]のいずれかに記載の箱型防音構造体。
[20] 共鳴体が箱体の角部に配置されている[1]〜[19]のいずれかに記載の箱型防音構造体。
[21] 消音構造が多孔質吸音体を有する[1]〜[20]のいずれかに記載の箱型防音構造体。
[22] 共鳴体の上面の少なくとも一部に多孔質吸音体が接している[21]に記載の箱型防音構造体。
[23] 箱体の開放面の一部または全部に通気性部材が取り付けられている[1]〜[22]のいずれかに記載の箱型防音構造体。
[24] 通気性部材が吸音部材である[23]に記載の箱型防音構造体。
[25] 箱体のいずれか1つの開放部から、開放部に垂直な方向における箱体内の最も遠い位置までの距離を箱体深さとした場合、
共鳴体の少なくとも一部は、開放部から箱体深さの半分の距離より遠い位置に配置されている[1]〜[24]のいずれかに記載の箱型防音構造体。
[26] 箱体の内部の最も長い長さが、音源に固有の周波数の波長の半分よりも長い[1]〜[25]のいずれかに記載の箱型防音構造体。
[27] 箱体が、直方体形状である[1]〜[26]のいずれかに記載の箱型防音構造体。
[28] 箱型防音構造体は、音源に対して取り付け取り外し可能であり、音源を覆うように配置されて用いられる[1]〜[27]のいずれかに記載の箱型防音構造体。
[29] 音源が、電動モーターおよびインバーターの少なくとも一方である[1]〜[28]のいずれかに記載の箱型防音構造体。
[30] 音源として、電動モーターおよびインバーターの少なくとも一方を有し、
電動モーターおよびインバーターの少なくとも一方を消音対象として、消音対象である音源が箱体に接して、または、箱体の内部に配置されるように設置される[1]〜[29]のいずれかに記載の箱型防音構造体を有する輸送機器。
[31] 自動車である[30]に記載の輸送機器。
[32] 輸送機器において、音源の位置と、座席の位置をつなぐ直線を遮る位置に箱型防音構造体の消音構造が配置されている[30]または[31]に記載の輸送機器。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、例えば、「45°」、「平行」、「垂直」あるいは「直交」等の角度は、特に記載がなければ、厳密な角度との差異が5度未満の範囲内であることを意味する。厳密な角度との差異は、4度未満であることが好ましく、3度未満であることがより好ましい。
本明細書において、「同じ」、「同一」は、技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含むものとする。また、本明細書において、「全部」、「いずれも」または「全面」などというとき、100%である場合のほか、技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含み、例えば99%以上、95%以上、または90%以上である場合を含むものとする。
本発明の箱型防音構造体は、
少なくとも一部が開放された箱体と、
箱体の内部に配置される共鳴体を含む消音構造と、を有し、
箱体の壁の外側面に接して、または、箱体の内部に、配置される音源から発生して箱体の開放面から外部に放射される音を記消音構造によって低減する箱型防音構造体である。
図1は、本発明の箱型防音構造体の一例を示す模式的な断面図である。
電子機器としては、空調機(エアコン)、エアコン室外機、給湯器、換気扇、冷蔵庫、掃除機、空気清浄機、扇風機、食洗機、電子レンジ、洗濯機、テレビ、携帯電話、スマートフォン、プリンター等の家庭用電気機器;複写機、プロジェクター、デスクトップPC(パーソナルコンピューター)、ノートPC、モニター、シュレッダー等のオフィス機器;サーバー、スーパーコンピューター等の大電力を使用するコンピューター機器;恒温槽、環境試験機、乾燥機、超音波洗浄機、遠心分離機、洗浄機、スピンコーター、バーコーター、搬送機などの科学実験機器が挙げられる。
輸送機器としては、自動車(バス、タクシー等も含む)、バイク、電車、航空機器(飛行機、戦闘機、ヘリコプター等)、船舶、自転車(特に電気自転車)、航空宇宙機器(ロケット等)、パーソナルモビリティー等が挙げられる。特にハイブリッド自動車や電気自動車においては、内部に搭載されるモーターやPCU(パワーコントロールユニット:インバーター、バッテリー電圧昇圧ユニット等を含む)に起因する特有の音が車室内でも聴こえることが問題になっている。
このように、自動車がハイブリッド化、電気自動車化することによって、従来にはなかった高周波側の騒音が車室内にも聞こえる大きさで発生している。
また輸送機器で自動車のエンジンルームもしくはモータールームを隙間のある箱型構造とみなし、内部のエンジンや電気モーター、インバーターなどが騒音源であるとみなすこともできる。この隙間は、例えばエンジンルームやモータールーム下部の開放部やラジエータ部、車室内につながるダクト部分などを隙間として取り扱うことができる。
また、使用者への通知や警告を発する意味で、特定の少なくとも一つ以上の単周波音またはその重ね合わせを通知音、警告音、サイン音として発するように設定された機器にも用いることができる。
また、上記の機器が入っている部屋、工場、および、車庫等にも本発明の箱型防音構造体が適用可能である。
音源30が、インバーター等の電子部品の場合には、キャリア周波数に応じた音(スイッチングノイズ)を発生する。
音源30が、電気モーターの場合には、回転数に応じた周波数の音(電磁騒音)を発生する。このとき、発生する音の周波数は、必ずしも回転数またはその倍数に限るわけではないが、回転数を大きくすることで音も高くなっていくなどの強い関連性が見られる。
すなわち、音源30はそれぞれ、音源30に固有の周波数の音を発生する。
より一般的に、音源が固有の周波数を有するかは下記のような実験を行うことができる。
音源30を無響室もしくは半無響室内、もしくはウレタン等の吸音体で囲んだ状況に配置する。周辺を吸音体とすることで、部屋や測定系の反射干渉による影響を排除する。その上で、音源30を鳴らし、離れた位置からマイクで測定を行い周波数情報を取得する。音源と測定系のサイズによりマイクとの距離は適宜選択できるが、30cm程度以上離れて測定することが望ましい。
音源30の周波数情報において、極大値をピークと呼び、その周波数をピーク周波数と呼ぶ。その極大値が周辺の周波数での音と比較して3dB以上大きい場合には、そのピーク周波数音が十分に人間に認識できるため、固有の周波数を有する音源といえる。5dB以上であればより認識でき、10dB以上であればさらに認識できる。周辺の周波数との比較は、信号のノイズや揺らぎを除いて極小となるなかで最も近い周波数における極小値と、極大値の差分で評価する。
例えば、箱体12の表面積に対して小さな穴が形成された箱体で、主要な外部放射音が孔からの空気伝搬音ではなく、箱体自体の振動である場合があるが、本発明は、このような場合よりも、外部放射音の主要な成分が空気伝搬音である箱体への適用がより望ましい。
空気伝搬音はマイク、固体振動音は振動測定器等で測定が可能なため、測定によって伝搬経路を決定することもできる。
図2に消音構造14aの正面図を示す。
図2に示す例では、消音構造14aは、9つの共鳴体20aを有し、3×3に配列されている。
図3に消音構造が有する共鳴体20aの一つを示す斜視図を示し、図4に図3のB−B線断面図を示す。
図3および図4に示す共鳴体20aは、一面が開放された枠体18と、枠体18の開放面に配置される膜状部材16と、を有する。膜状部材16は枠体18の開放面を覆って周縁部を枠体18に固定されて振動可能に支持されており、膜振動を利用する共鳴体である。
周知のとおり、共鳴による消音は、共鳴現象を利用して特定の周波数(周波数帯域)の音を選択的に消音するものである。
特に、本発明における共鳴体の共鳴現象は、主に空気伝搬音を対象とし、その音を吸音および/または遮音をすることを特徴とする。他に、固体振動を対象としてその振動を抑制する制振および/または防振があるが、本発明は空気伝搬音の抑制に好適である。本発明は、固体振動の伝達と空気伝搬音の伝達が両方同じデバイスに入る系で用いることもできるが、空気伝搬音が主要な系への適用が好適である。
なお、以下の説明において、膜振動を利用する共鳴体を膜型の共鳴体ともいう。
膜振動の共鳴周波数は、膜状部材16aの大きさ、厚み、硬さ等によって決まる。従って、膜状部材16aの大きさ、厚み、硬さ等を調整することで、共鳴する音の周波数を適宜設定することができる。
また、膜状部材に貫通部を有することによって、共鳴体20aの内外で通気が可能となるため、たとえば大きく温度や湿度変化や気圧変化する系に用いる場合に内外で温度差、湿度差、圧力差が生じにくくなる。これによって、膜状部材にかかる張力変化を抑えることができる。また、結露等も生じにくくなるといったメリットがある。
織布としては、メッシュ部材、特にメタルメッシュ、および、ガラス繊維メッシュなど耐久性の高い素材で形成されたメッシュ部材が好ましい。また、カーボン、金属、および、ガラス等を用いて作られた織物などを用いることもできる。
枠体としては、プラスチック製あるいは金属製で格子状に開口が設けられた構造、また主には円形状の多数の貫通孔をパンチングあるいはレーザー等で形成された紙、金属、プラスチックなどを用いることができる。
しかしながら、多孔質吸音体では広い周波数で消音するため、音源に固有の周波数の騒音を十分に消音できないこと、また固有の周波数の騒音が周囲の周波数より突出していることに変化がないため、トーン音(特定の周波数で音圧が極大値となる音)として他の周波数よりも相対的に聞こえやすくなってしまうという問題があった。また、多量の多孔質吸音体を用いれば、多孔質吸音体で音源に固有の周波数の騒音を消音することも可能であるが小型軽量化が難しいという問題があった。
例えば、図5に示す消音構造14bは、互いに異なる周波数に対して共鳴する2種の共鳴体20aおよび20bを有している。図5においては、共鳴体20aと共鳴体20bとは交互に配列されている。
図5において、共鳴体20aと共鳴体20bとは、膜状部材の種類が異なる。すなわち、共鳴体20aの膜状部材16aと共鳴体20bの膜状部材16bとは、厚み、硬さ、平面サイズ等が異なることで、異なる周波数で共鳴を生じる。
なお、図5に示す消音構造14bは、2種の共鳴体を有する構成としたが、これにも限定はされず、消音構造は、3種以上の共鳴体を有していてもよい。
図6に示す箱型防音構造体10において、2つの消音構造14aおよび14cを有する。消音構造14aは、共鳴体20aを有し、消音構造14cは、共鳴体20cを有する。共鳴体20aと共鳴体20cとは、枠体18の開放面の大きさが異なる。そのため、共鳴体20aと共鳴体20cとは、異なる周波数で共鳴を生じる。
図7および図8に示す共鳴体20dは、内部に中空部24を有する直方体形状の容器17で、一面に、中空部24と外部とを連通する開口部15を有する。この共鳴体20dは、ヘルムホルツ共鳴を生じる共鳴構造である。ヘルムホルツ共鳴は、開口部15を持った容器17の内部(中空部24)にある空気がバネとしての役割を果たし、共鳴する現象である。共鳴体20dは、開口部15の空気が質量(マス)として、中空部24にある空気がばねとしての役割を果たし、マスバネの共鳴をし、開口部15の壁近傍部での熱粘性摩擦により吸音する構造である。開口部15の外部では圧力や局所速度が変化しているため、開口端補正による開口部15の有効長さ補正が生じる。
従って、共鳴体20dをヘルムホルツ共鳴が生じる共鳴構造として用いる場合には、ヘルムホルツ共鳴の共鳴周波数を、管状部内で共鳴する音を消音するように適宜設定すればよい。ヘルムホルツ共鳴の共鳴周波数は、中空部24の内容積および開口部22の面積等によって決まる。従って、共鳴体20dの中空部24の内容積および開口部22の面積等を調整することで、共鳴する音の周波数を適宜設定することができる。
特に、開口部22の円相当径を、中空部24における開口部22から背面までの垂線長さより大きくする、すなわち表面開口を背面距離より大きくすることによって、中空部24側に伸びる局所速度や音場が背面壁の影響を強く受けることで、開口部22より外部側に開口端補正長さが大きくなる。よって、開口端補正が従来理論より大きくなる効果が得られる。これによって共鳴周波数が低周波化する。この構成では背面距離を小さくしコンパクトにした共鳴構造によって、比較的低周波側に共鳴を有する構造を作製することができる。
図9および図10に示す共鳴体20eは、内部に中空部24を有する直方体形状の共鳴管19で、一面に中空部24と外部とを連通する開口部22を有する。この共鳴体20eは、気柱共鳴を生じる共鳴構造である。気柱共鳴は、閉管である共鳴管19内(中空部24)に定在波が生じることで共鳴が起こる。
従って、共鳴体20eを気柱共鳴が生じる共鳴構造として用いる場合には、気柱共鳴の共鳴周波数を、共鳴管19内で共鳴する音を消音するように適宜設定すればよい。気柱共鳴の共鳴周波数は、共鳴管19の長さ(中空部24の開口部22からの深さ)等によって決まる。中空部24の深さ、開口部22の大きさ等を調整することで、共鳴する音の周波数を適宜設定することができる。
気柱共鳴の場合は、開口部が狭いと音波が開口部で反射して中空部内に音波が侵入し難くなるため、開口部がある程度広いことが好ましい。具体的には、開口部が長方形状の場合には、短辺の長さが1mm以上であるのが好ましく、3mm以上であるのがより好ましく、5mm以上であるのがさらに好ましい。開口部が円形状の場合には、直径が上記範囲であるのが好ましい。
一方、ヘルムホルツ共鳴の場合は、開口部において熱粘性摩擦を生じる必要があるため、ある程度狭いことが好ましい。具体的には、開口部が長方形状の場合には、短辺の長さが0.5mm以上20mmが好ましく、1mm以上15mm以下がより好ましく、2mm以上10mm以下がさらに好ましい。開口部が円形状の場合には、直径が上記範囲であるのが好ましい。
また、開口面や内部に多孔質吸音体、あるいは、通気抵抗の大きな通気膜、不織布等を配置することで共鳴周波数、すなわち、共鳴する帯域を変化させることもできる。特に、開口部付近は共鳴周波数において音の局所速度が大きくなるため、吸音効果を大きくすることができる。開口部を有する共鳴体の場合には、開口部が形成された面が共鳴体の上面に相当する。
膜型の共鳴体では基本振動による共鳴モードのほかに、膜の高次振動による共鳴モードを用いた吸音効果も現れる。高次振動モードは膜厚みが小さい方がより現れやすい。さらに、膜状部材の背面側の空間(背面空間)を小さく、望ましくは10mm未満、さらに望ましくは5mm以下とすることで、基本振動による共鳴吸音より高次振動による共鳴吸音の方が大きくなる傾向があることが分かった。すなわち、膜型の共鳴体において、膜振動の基本振動モードにおける垂直入射吸音率よりも高次振動モードにおける垂直入射吸音率を高くすることが可能である。よって、例えば、約3kHz以上の高周波側を小さな構造で吸音するためには、膜厚を小さくし、背面空間の厚みを小さくすることで、膜振動の基本振動モードにおける垂直入射吸音率よりも高次振動モードにおける垂直入射吸音率が高い膜型共鳴体を用いることが好ましい。
なお、後述する実施例で詳述するが、垂直入射吸音率は、JIS A 1405-2に従って評価できる。
具体的には、膜状部材と枠体(空気層、背面空間)と膜状部材と枠体(背面空間)とをこの順に積層した2枚の膜を有する二層膜構造としてもよい。あるいは、膜状部材と枠体(空気層、背面空間)と貫通孔を有する板状部材と枠体(空気層)とをこの順に積層した、膜構造とヘルムホルツ共鳴構造とを重ね合わせた構造としてもよい。
なお、板状部材に形成される貫通孔は、開口面の形状が円形、多角形、スリット状、不定形、ドーナツリング状等の種々の形状の貫通孔とすることができる。
その際、図6に示す例では、2つの消音構造14は、それぞれ異なる共鳴体20(共鳴体20aと共鳴体20c)を有する構成としたが、これに限定はされず、1つの消音構造14が異なる種類の共鳴体20を含む構成としてもよい。
なお、2以上の消音構造14をまとめて1つの消音構造とみなしてもよい。
具体的には、共鳴体20の表面側が同一平面上に配列されるのが好ましい。
膜型の共鳴体20の場合には、図2および図5等に示すように、複数の共鳴体20の膜状部材16が、同一平面上に配列されるのが好ましい。
ヘルムホルツ型の共鳴体20の場合には、開口部を有する面が同一平面上に配列されるのが好ましい。
気柱共鳴型の共鳴体20の場合には、開口部を有する面が同一平面上に配列されるのが好ましい。
共鳴体20の表面が同一平面上に配列されるために表面に段差がなく、さわり心地がスムースになる、段差がないためそこにゴミがたまりにくく掃除もしやすい、段差があるとそこで流体の渦が生じやすいため風や熱の伝搬を妨げるが、共鳴体20の表面が同一平面上に配列されるため風や熱の流れを妨げない、等の点で好ましい。
共鳴体20の厚みは、膜型の共鳴体20の場合は、膜状部材16の膜面に垂直な方向の厚みである。また、ヘルムホルツ型および気柱共鳴型の共鳴体20の場合は、開口部を有する面に垂直な方向の厚みである。
また、共鳴体20の大きさは、膜型の共鳴体20の場合は、枠体18の大きさであり、ヘルムホルツ型の共鳴体20の場合は、容器17の大きさであり、気柱共鳴型の共鳴体20の場合は、共鳴管19の大きさである。なお、本発明において、大きさが同じとは、その体積の誤差が±33%以下の場合をいう。
また、前述のとおり、音源30から発せられた音が、箱体12内で共鳴することで、特定の周波数の音量が大きくなる場合もある。従って、箱体12内で共鳴した音を消音する観点から、共鳴体20の共鳴周波数は、箱体12内に生じる共鳴の共鳴周波数の±20%の範囲にあるのが好ましい。
また、特に箱体12の内壁が大きな曲率を持つ場合やジグザグ形状など複雑な形状をしている場合、共鳴体20の各セルを連結せずに、もしくは背面に近い側で各セルが互いに離れた部分を作り、箱体12の内壁形状に合わせて各セルごとに配置することもできる。
また、図11に示すように、箱体12内部の角部に配置されるのが好ましい。図11は、箱型防音構造体10を箱体12の開放部13から見た図である。角部とは、箱体を構成する少なくとも二つ以上の面が接する辺の近傍部分である。
箱体12の内壁面近傍および角部は、壁面があるため、粒子速度が小さくなり音圧が高くなる位置である。従って、共鳴体20を音圧が高くなる、箱体12の内壁面近傍および角部に配置することで、より高い消音効果を得ることができる。
また、共鳴体20は、箱体12とは別体として、箱体12の内壁面に取り付け取り外し可能とするのが好ましい。
あるいは、図12に示すように、箱体12の壁の一部を共鳴体20(枠体、容器または共鳴管)の一部として用いるのも好ましい。
なお、箱体12への共鳴体20(消音構造14)の固定方法は特に制限的ではなく、片面テープまたは両面テープを用いた固定、接着剤(種類としては水性系、溶剤系、エポキシ系、シリコン系、ホットメルト系、ウレタン系、粘着系など、硬化法としては溶剤揮散型、湿気硬化型、加熱硬化型、硬化剤混合型、嫌気硬化型、紫外線硬化型、熱溶融型、感圧型、再湿型などから、材質や配置位置に合わせて選ぶことができる)あるいは粘着剤を用いる方法、ネジ止めあるいはビス止めで止める方法、すのこ状あるいは凹凸のある内壁面に対して棚板のように差し込む方法、L字金物、T字金物を用いたネジ止め方法、あらかじめ共鳴体20の背面端にネジ止め部を作製しておきネジで止める方法等の機械的固定方法、組み構造あるいははめ合い構造による固定方法、マグネットを用いた磁気での固定方法、はんだによる固定方法、等が適宜利用可能である。固定のために用いる素材も、耐久性や耐熱性などを有する素材を選ぶことができる。
開放部13近傍よりも開放部13から離れた位置のほうが粒子速度が小さくなり音圧が高くなる。従って、共鳴体20を、開放部13からLy/2の距離より遠い位置に配置することで、より高い消音効果を得ることができる。
なお、音源放射分布は、音源がスピーカーの場合、「JIS C 5532:2014 音響システム用スピーカ」に従って、指向性パターンを決定することができる。
また、一般的には対象とする音源によっては単体で鳴らすことが困難な場合もある。この場合は、測定用マイクあるいは騒音計を用いて実際に音が鳴っている場面において音源周辺をスキャンして音圧を記録することで音源放射分布の最大方向を求めることができる。また、実際の系に配置した場合の放射分布を求めるために、単体でならすことが可能な音源である場合も含めて、同様の手法で求めることができる。手持ちでスキャンすることが最も簡便であるが、アクチュエーターあるいは自動ステージなどの機器を用いても良い。
また、多点マイクロフォンを用いて音源から放射する音の流れを測定することができる。小野測器製「テトラホン」、B&K社の音源探査装置等を用いて放射位置と方向を測定することができる。
上記のような様々な手法で、音源からの音の放射分布を求めて、最も音が大きい方向を決定することができる。
なお、箱体12の内部の最も長い長さとは、箱体12の内壁のいずれか一辺に平行な方向における長さのうち最も長い長さである。
なお、消音構造14が複数の共鳴体20を有する場合には、複数の共鳴体20がそれぞれ個別に作製されて互いに固定される構成であってもよいし、複数の共鳴体20が一体的に形成されていてもよい。例えば、図1等に示す膜型の共鳴体の場合には、複数の共鳴体20の枠体18が一体的に形成されていてもよい。
例えば、図15に示すように、音源30は、箱体12の内部であって、箱体12の内壁面に接しない位置に配置されていてもよい。あるいは、図16に示すように、音源30は、箱体12の内部であって、箱体12の内壁面に接する位置に配置されていてもよい。
あるいは、図17に示すように、音源30は、箱体12の外壁面に接して配置されていてもよい。音源30が箱体12の外壁面に接して配置される場合には、音源30から発せられる音が、壁を伝わって箱体12の内部を通って放射されうる。
音源30が内壁面12に向かって配置された場合、その距離がλ/2未満であって、かつ開放面に至るまでの導波路の距離もλ/2未満であるとき、導波モードのカットオフにより導波する音モードが平面波しか許されなくなる。その場合、音源から曲がって外に導波する音が生じにくくなるため、元々開放面に達する伝搬音が小さくなる。本発明はこのような場合にも適用することができるが、この構成では開放部大きさ、音源から開放部までのダクト直径、および、音源配置の全てに制約をかけることになる。
本発明ではこれに限られずに少なくとも音源と壁との距離、および、導波路の距離のどちらかの大きさがλ/2以上の大きさを持つ場合にも適用することができる。よって、本発明は、このように開放部の大きさ、音源から開放部までのダクト直径、および、音源配置等に制限はなく、一般の開放された箱体に適用して音の放出を防ぐことができる。
例えば、図1等に示すように音源30は、音の放射方向が箱体12の内壁面に向くように配置されていてもよいし、図15および図16に示すように、音の放射方向が箱体12の開放部13に向くように配置されていてもよい。
音源30は、開放部13aと開放部13bとの中間位置で、開放部から遠い面に配置されている。消音構造14の1つは、開放部13aと開放部13bとの中間位置で、開放部から近い面に配置されている。消音構造14の他の2つはそれぞれ、開放部13aおよび13bが形成された面に配置されている。
音源30は、開放部13cに近い位置に配置されている。消音構造14の1つは、開放部13cと対面する面に配置されている。消音構造14の他の1つは開放部が形成されていない面であって、開放部13cから遠い側の面に配置されている。
音源30は、開放部が形成されない面であって、開放部13eに近い側の面に配置されている。消音構造14の1つは、開放部13eと対面する面に配置されている。消音構造14の他の1つは音源30が配置された面と対面する面に配置されている。
このように、箱体12が2以上の開放部を有する場合には、箱体12内における消音構造14(共鳴体20)の配置位置は、例えば、箱体12内で共鳴する音の腹の位置となるように予めシミュレーションまたは実験等によって設定すればよい。
また、通気性部材の構造によっては箱体内部の熱、汚れ、光量などを調整することもできる。
このような通気性部材によって開放面の一部または全面が覆われた箱体に対しても、本発明の箱型防音構造体は効果を発揮する。
また、箱体および消音構造を有する箱型防音構造は、音源に対して取り付け取り外し可能であり、音源を囲うように配置されて用いられるようにしてもよい。例えば、可搬性の箱体12内に消音構造14aを有する箱型防音構造10を、音源30にかぶせるように配置して用いることができる。可搬性の箱型防音構造は、ネジあるいは両面テープ等で音源周囲に固定しても良い。このようにすることで、騒音が問題になることが分かった後に効果的に消音効果を出すことができる。
例えば、箱型防音構造体を、スピーカー、電気モーター、インバータ、あるいは、ファンにかぶせて用いることができる。
従って、箱体12は、例えば、立方体の上下2面が開放された構成としてもよい。あるいは、図36に示すように、対向する2面とこの2面の間の1面の計3面が開放された構成、すなわち、π字型の形状としてもよい。
また、例えば、箱体を立方体の上下2面が開放された構成とした場合等の消音構造の配置位置には特に限定はない。例えば、4面に共鳴構造を配置して箱型防音構造体としてもよい。このようにさまざまな形状の箱型防音構造を対象とする音源周囲の形に合わせて作製し、かぶせることで開放面を持つ箱型防音構造体を実現することができる。
また、音源にかぶせる形で用いる場合も、耐久性、軽量性、熱などの観点から様々な材料を選択することができる。具体的には、後述する枠体18、容器17および共鳴管19の材料と同様にして選択することができる。
また、枠体、容器、共鳴管の材料として各種ハニカムコア材料を用いることもできる。ハニカムコア材料は軽量で高剛性材料として用いられているため、既製品の入手が容易である。アルミハニカムコア、FRP(Fiber-Reinforced Plastics)ハニカムコア、ペーパーハニカムコア(新日本フエザーコア株式会社製、昭和飛行機工業株式会社製など)、熱可塑性樹脂(PP、PET、PE、PCなど)ハニカムコア(岐阜プラスチック工業株式会社製TECCELLなど)など様々な素材で形成されたハニカムコア材料を使用することが可能である。
また、容器17および共鳴管19の中空部の形状は、特に制限的ではなく、例えば、直方体形状、立方体形状、角錐形状、角柱形状、円錐形状、円柱形状、球体形状等であっても良いし、不定形であっても良い。
また、耐久性(熱、オゾン、紫外線、水、湿度など)に優れること、静電気が生じないこと、輻射熱を遮蔽するために熱源近くでも用いることができること、および、金属膜の下部に配置された多孔質吸音体などを熱から保護できること、等の観点から、膜状部材の材料として金属を用いるのが好ましい。
また、膜状部材16の高次振動を利用した吸音効果を高めたい場合は膜厚が小さいことが好ましい。膜厚みが100μm未満であることが好ましく、70μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが最も好ましい。
さらに、枠体18や膜状部材16に反射防止コートや反射防止構造をつけても良い。例えば、誘電体多層膜による光学干渉を用いた反射防止コートをすることができる。可視光を反射防止することで、枠体18や膜状部材16の視認性がさらに下げて目立たなくすることができる。
また、箱体12を少なくとも一部が透明材料で構成し、その部位に透明な防音構造14を配置すれば、箱体の外部から内部の様子を見ることができる構成にすることができる。例えば、窓部材の代替として吸音性を有する構造とすることができる。
例えば壁の柄に合わせてパターンをつけることができる。
例えば樹脂材料を用いる場合には、大きな物性の変化をもたらす点(ガラス転移温度、融点等)が環境温度域外にあるものを用いることが望ましい。
さらに、枠体と膜状部材とで異質の部材を用いる場合には、環境温度に於ける熱膨張係数(線熱膨張係数)が同程度であることが望ましい。
枠体及び膜状部材との間で熱膨張係数が大きく異なると、環境温度が変化した場合に枠体と膜状部材の変位量が異なるため、膜状部材に歪みが生じ易くなる。歪み及び張力変化は、膜の共鳴周波数に影響を与えるため、温度変化に伴って消音周波数が変化し易くなり、また温度が元の温度に戻っても歪みが緩和せずに消音周波数が変化したままになる場合がある。
これに対して、熱膨張係数が同程度である場合には、温度変化に対して枠体と膜状材料が同様に伸び縮みするために歪みが生じ難くなる結果、環境温度の変化に対して安定した消音特性を発現できる。
熱膨張係数は、例えばJIS K 7197等公知の方法で測定することができ、使用する環境温度に合わせて任意の組み合わせで部材を選定することができる
また、前述のとおり、ハイブリッド自動車、電気自動車では、電気モーターおよびインバーターが多く用いられており、騒音源として問題になっている。そのため、自動車を含む輸送機器において、電気モーターおよびインバーターの少なくとも一方を消音対象として、消音対象である音源が箱体に接するように、または、箱体の内部に配置されるように箱型防音構造体を、輸送機器内に配置することが好ましい。
内部空間が1辺300mmの立方体となるアクリル製の立方体形状の箱体を用意した。アクリル厚みは10mmであって、十分に音を反射する。この立方体の一面のみを開放したものを箱体として用いた。
図21に示すように箱体12の内部に音源30としてスピーカー(ソニー株式会社製SRS-XB10)を配置した。配置位置は開放部13と対面する面に接する配置とした。
スピーカー30からホワイトノイズを流して、各周波数における音圧を測定する。音圧はマイクロフォンMP1(アコー株式会社製マイクロフォン4152N)を開放部13中央部から200mm離した位置に配置して測定する。箱体12とマイクロフォンMP1を囲むように背面と側面に厚み200mmの吸音ウレタンを配置して(図示せず)、測定環境における反射音の影響を抑制した。
共鳴体として膜型の共鳴体を設計した。膜型の共鳴体の設計は、有限要素法計算ソフトCOMSOL ver.5.3(COMSOL Inc.)の音響モジュールを用いて行った。枠体の内部の厚みLbと開放部のサイズ(La×La)を決定し、開放面の片面には膜状部材の辺縁部が固定されて、もう片面には剛体壁が存在する構造とした。すなわち、太鼓状に振動する膜状部材の背面に閉空間が存在する共鳴体とした。
内部の厚みLbが10mm、開放部のサイズ(La×La)が30mm×30mmの正方形状の枠体の開放面に、材質がPETフィルムで、厚みが50μm、100μm、188μm、250μmの膜状部材を配置した共鳴体の吸音率の周波数特性をそれぞれ、シミュレーションによって計算した。結果を図21に示す。
図21に示す結果より1kHzの共鳴体としてPETフィルム厚み188μmを選択した。
次に上記で設計した共鳴体(消音構造)を作製した。
枠体はアクリル板をレーザーカッターを用いて枠体構造に加工することで作製した。厚み10mm、開放部サイズ30mm×30mmとし、枠体のフレーム厚みは5mmとした。このような開放部を4×4の計16個有する枠体構造を作製した。この枠体の片面に両面テープ(アスクル製現場のチカラ)をつけた。そこに膜状部材として厚み188μmのPETフィルム(東レ株式会社製ルミラー)を取り付けて辺縁部を固定した。枠体のもう片面には同様に両面テープを取り付け、そこに剛体壁として厚み2mmのアクリル板を取り付けて膜型の共鳴体を作製した。
作製した共鳴体が、狙いの周波数(1kHz)で吸音することを確認するために、音響管を用いた吸音率評価を行った。JIS A 1405-2に従った垂直入射吸音率の測定系を作製して評価を行った。これと同様の測定は日本音響エンジニアリング製WinZacMTXを用いることができる。音響管の直径は80mmとし、その音響管端部に共鳴体を膜状部材を表にして配置して、吸音率の評価を行った。
サンプルを2つ(No1およびNo2)作製して上記評価を行なった結果を図2に示す。2つのサンプルが共に、狙いの1kHzにおいて高い吸音率を示すことがわかる。
表1に1kHz、2kHz、4kHz狙いで作製した共鳴体の仕様を示す。
表1中、膜状部材の材質OPPは、OPPフィルムであり、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡株式会社製パイレン(R)フィルム−OT)である。
上述した実験系の箱体内に上記で作製した共鳴体(消音構造)を配置して、箱体の開放面からの放射音の抑制効果を測定した。
まず、上述した実験系の箱体内に共鳴体(消音構造)を配置しない条件で、放射音量を測定しリファレンスとした。
ここで、箱体12は、内部のサイズが可聴域の波長長さを近いため、箱体12の内部にモードが生じて周波数ごとに、放射音量が異なる。図21に示すように、箱体12の内部にマイクロフォンMP2を配置して内部の音圧を測定した。測定結果を図24に示す。
図24から、1150Hz付近で音圧が大きくなっており、今回の箱体12はこの周波数で強いモードが生じることがわかった。また、箱体12の外部に設置したマイクロフォンMP1でもこの周波数付近で大きな放射音が出てくることがわかった。
リファレンスの放射音量を基準として、消音構造を配置した時の放射音量の低減量を小音量としてdB単位で評価した。すなわち、消音構造なしの場合の音圧をP0とし、消音構造ありの場合の音圧をP1としたとき、20×log10(P0/P1)として消音量を評価した。結果を図25に示す。
図25から、共鳴周波数に近い1150Hzにおいて、9dBの消音量を示すことを明らかにした。
実施例1の消音構造と同一サイズのアクリル板(厚み12mm、大きさ130mm×130mm)を、箱体内部の、実施例1の消音構造の配置位置と同じ位置に配置した。実施例1と同様にして消音量を測定した。結果を図25に示す。
しかしながら、実施例1と比較例1との対比から、同一サイズで遥かに軽量(重量は板と比較して約39%)な実施例1の膜型の共鳴体(消音構造)の方が遥かに大きな消音量を示すことが分かる。このように、本発明の箱型防音構造体は、膜型の共鳴体が有効に機能して特定の音を消音することができる。
共鳴体Aを共鳴体B(2kHz狙いの共鳴体)に変更した以外は、実施例1と同様にして消音量の評価を行なった。
共鳴体Bの垂直入射吸音率の評価結果を図26に示し、消音量の評価結果を図27に示す。
垂直入射吸音率の測定は、測定上限周波数を拡げるために直径80mmの音響管を用いる代わりに直径40mmの音響管を用いて評価を行った。
図27から、2kHz付近において9dB以上の消音量が得られることがわかる。
共鳴体Aを共鳴体C(4kHz狙いの共鳴体)に変更した以外は、実施例1と同様にして消音量の評価を行なった。
共鳴体Cの垂直入射吸音率の評価結果を図28に示し、消音量の評価結果を図29に示す。
また、消音量の測定は、箱体からの放射音量測定でマイク1本の結果を用いる代わりに、3本のマイクを配置してその平均で評価を行った。配置位置は、実施例1と同様に開放部13中央部から200mm離れた位置(ch1)、ch1のマイクロフォンから開放部13に平行な方向であって、スピーカー30の方向とは直交する方向に100mm離れた位置(ch2)、ch1マイクロフォンから開放部13に平行な方向であって、スピーカー30の方向に100mm離れた位置(ch3)の3点とした。すなわち、ch1、ch2、ch3のマイクロフォンは開放部13と平行な平面内に存在する。
マイクロフォンの種類はマイクロフォンMP1と同じである。この測定手法を「マイク3本手法」と呼ぶ。特に高周波においては放射音量のモードが波長サイズに応じて細かくなるため、多数のマイクロフォンの平均を用いる方が放射音量の正確な結果となる。以下の実施例において、基本的には実施例1と同様にマイク1本手法で測定を行うが、マイク3本手法で測定した場合は明記する。
図29から、4kHz付近(4280Hz)において17dB以上の消音量が得られることがわかる。
膜型の共鳴体に変えて、気柱共鳴型の共鳴体を用いた。
4kHz付近に共鳴を有する気柱共鳴型の共鳴体をCOMSOLを用いて設計した。気柱共鳴型の共鳴体は、中空部が幅20mm、長さLe=21mm、厚みLf=3mm、開口部の長さLg=5mm、幅20mmのL字構造とすることで、4kHz付近に共鳴を有するものとした。
アクリル板を上記で設計した形状となるように組み合わせて、気柱共鳴型の共鳴体を作製した。
アクリル板の厚みは、開口部側の面が3mm、開口部に対面する面が2mm、側面が3mmとした。また、各アクリル板は、対応する形状となるようにレーザーカッターで加工した。アクリル板同士は、両面テープで貼り合わせた。
作製した気柱共鳴型の共鳴体を4×4個配列して消音構造とした。
膜型の共鳴体に変えて、ヘルムホルツ型の共鳴体を用いた。
4kHz付近に共鳴を有するヘルムホルツ型の共鳴体をCOMSOLを用いて設計した。今回は開口部がスリット状になる構造とした。ヘルムホルツ型の共鳴体は、中央にスリットを有し、スリット幅が3mm、中空部が幅20mm、長さLc=21mm、厚みLd=3mmとすることで、4kHz付近に共鳴を有するものとした。
アクリル板を上記で設計した形状となるように組み合わせて、ヘルムホルツ型の共鳴体を作製した。
アクリル板の厚みは、開口部側の面が3mm、開口部に対面する面が2mm、側面が3mmとした。また、各アクリル板は、対応する形状となるようにレーザーカッターで加工した。アクリル板同士は、両面テープで貼り合わせた。
作製したヘルムホルツ型の共鳴体を4×4個配列して消音構造とした。
図29から、気柱共鳴型の共鳴体を箱体内に配置した実施例3−2、および、ヘルムホルツ型の共鳴体を箱体内に配置した実施例3−3のいずれも4kHz付近で大きな消音量が得られることがわかる。気柱共鳴型の共鳴体およびヘルムホルツ型の共鳴体と比較して、膜型の共鳴体が消音量がより大きくなることがわかる。これは上記の吸音率の違いは反映されたものと考えられる。
また、気柱共鳴型の共鳴体およびヘルムホルツ型の共鳴体は、表面側に板が必要となるため、同じ背面空間厚みを有する場合には共鳴体全体の厚みが膜型の共鳴体と比べて大きくなる。共鳴体全体厚みは、実施例3−1が5mmである一方、他の二つは8mmである。従って、小型化の観点からも膜型の共鳴体が有利であることがわかる。
2kHzの気柱共鳴型の共鳴体は、中空部が幅20mm、長さLe=41mm、厚みLf=3mm、開口部の長さLg=5mm、幅20mmのL字構造として設計した。
2kHzのヘルムホルツ型の共鳴体は、スリット幅が1mm、中空部が幅20mm、長さLc=41mm、厚みLd=3mmとして設計した。
実施例4では、異なる種類の共鳴体を用いた場合について検討した。
共鳴体A(1kHz狙い)と共鳴体B(2kHz狙い)を開放部13と対面する面に接して、スピーカー30と向かい合うように並べて配置した以外は実施例1と同様にして消音量の測定を行なった(実施例4−3)。
また、共鳴体Aのみとした場合(実施例4−1)と共鳴体Bのみとした場合(実施例4−2)の消音量も測定した。なお、実施例4−1および実施例4−2は、実施例1および実施例2と共鳴体の配置位置が異なるため、測定結果は一致しない。
測定結果を図30に示す。
図30から、共鳴体Aおよび共鳴体Bのいずれか一方を配置したのみでは、それぞれ狙いの周波数付近で高い消音効果が得られるのみであるが、共鳴体Aおよび共鳴体Bの両方を配置することで、1kHz付近と2kHz付近の両方の周波数で高い消音効果が得られることがわかる。
このように、種類(共鳴周波数)の異なる共鳴体を配置することで、複数の周波数体を同時に消音することができる。
実施例5では、共鳴体の数について検討した。
実施例1で用いた消音構造を4つ作製した。各消音構造は、16個の膜型の共鳴体Aを有する。
図31に示す箱体12内のAの位置に1つの消音構造を配置した実施例(実施例1と同一)、Aの位置とBの位置に計2つの消音構造を配置した実施例5−1、A、BおよびCの位置に計3つの消音構造を配置した実施例5−2、A〜Dの位置に計4つの消音構造を配置した実施例5−3について、実施例1と同様にして消音量を評価した。すなわち、実施例1は16個の共鳴体を有し、実施例5−1は32個の共鳴体を有し、実施例5−2は48個の共鳴体を有し、実施例5−3は64個の共鳴体を有する。
図32に、消音量のピーク値を比較したグラフを示す。
図32から、共鳴体の数を増やすほど消音量が大きくなることがわかる。
実施例6では、共鳴体の配置位置について検討した。
実施例1で用いた、16個の膜型の共鳴体Aを有する消音構造を、図33に示す配置位置A(実施例1と同一)、C(実施例6−1)、E(実施例6−2)のそれぞれに配置して、実施例1と同様にして消音量を評価した。
図34に、消音量のピーク値を比較したグラフを示す。
音圧は剛体壁面で振幅の腹となるため、箱体の奥側では音圧振幅が大きくなる傾向がある。特に、配置Aの角部は二面とも壁となるため音圧が増大しやすく、それにしたがって膜型の共鳴体の吸音量も大きくなる。一方で、配置Eのような開放面付近は局所速度が大きくなりやすいために音圧量は比較的小さくなる傾向にある。よって、消音量が小さくなったと考えられる。このように、空間内での共鳴体の配置依存性にも特徴がある。
消音構造が多孔質吸音体を有する構成とした以外は、実施例2と同様にして消音量を評価した。
多孔質吸音体は、厚み10mm、大きさ130mm×130mmの吸音ウレタン(株式会社光製 低反発黒ウレタン)を用いた。図31のAの位置に共鳴体を、Bの位置に多孔質吸音体を配置して測定を行った(実施例7−1)。また、共鳴体のみの場合の評価も行なった(実施例7−2)。
評価はマイク3本手法で行った。
結果を図35に示す。
図35から、共鳴周波数である2kHzの消音量は共鳴体のみの方が大きくなることがわかる。一方で、他の周波数における消音量は多孔質吸音体と同時に置いた場合の方が大きくなることがわかる。
よって、特定音の消音と広帯域の消音とを両立したい場合には、一般の多孔質吸音体(ウレタン、不織布、フェルトなど)と共鳴体とをともに用いればよいことがわかる。
スピーカーにホワイトノイズを流す代わりに1150Hzの単周波音を流した以外は上記と同様の実験系とした。音圧評価系としては、マイク3本手法を用いた。
まず、共鳴体を配置しない箱体のみの状態で、マイク3本手法での1150Hzでの平均音圧が80dBとなるようにスピーカー音圧量を調整した。
次に、実施例8として、実施例1で用いた消音構造(共鳴体Aを16個有する構成)を、実施例6−1と同じ配置位置に取り付けて評価した。測定の結果、平均音圧を64dBまで低減することがわかった。また、消音構造の設置前後で、聴感でも箱体からの放射音量が低減したことを確認できた。このとき、箱体全体に対する共鳴体の体積割合は0.9%程度にすぎないが、大きな低減効果を発揮している。
消音構造に代えて、多孔質吸音体(株式会社光製 低反発黒ウレタン)を配置した以外は実施例8と同様にして評価した。
多孔質吸音体は、厚み10mm、大きさ130mm×130mmとした。
測定の結果、元の音圧が80dBであったものが、多孔質吸音体を配置することによって77dBに低減することがわかった。
ほぼ同一サイズである膜型の共鳴体と比較すると、従来よく用いられる多孔質吸音体は特定の周波数の強い音の低減効果が小さいことが明らかになった。
スピーカーにホワイトノイズを流す代わりに4280Hzの単周波音を流した以外は上記と同様の実験系とした。音圧評価系としては、マイク3本手法を用いた。
まず、共鳴体を配置しない箱体のみの状態で、マイク3本手法での4280Hzでの平均音圧が80dBとなるようにスピーカー音圧量を調整した。
次に、実施例9として、実施例3−1で用いた消音構造(共鳴体Cを16個有する構成)を、実施例3−1と同じ配置位置に取り付けて評価した。測定の結果、平均音圧を63dBまで低減することがわかった。消音構造の設置前後で、聴感でも箱体からの放射音量が低減したことを確認できた。
共鳴体Cを有する消音構造に代えて、実施例3−2で用いた消音構造(気柱共鳴型の共鳴体を16個有する構成)を有する構成とした以外は、実施例9と同様にして評価を行なった。測定の結果、平均音圧が70dBまで低減することがわかった。
共鳴体Cを有する消音構造に代えて、実施例3−3で用いた消音構造(ヘルムホルツ型の共鳴体を16個有する構成)を有する構成とした以外は、実施例9と同様にして評価を行なった。測定の結果、平均音圧が71dBまで低減することがわかった。
消音構造に代えて、多孔質吸音体(株式会社光製 低反発黒ウレタン)を配置した以外は実施例9と同様にして評価した。
多孔質吸音体は、厚み10mm、大きさ130mm×130mmとした。
測定の結果、元の音圧が80dBであったものが、多孔質吸音体を配置することによって75dBに低減することがわかった。
サイズは平面サイズを共鳴体構造と同一とし、厚みは多孔質吸音体の方が大きい。各共鳴体と比較すると、従来よく用いられる多孔質吸音体は特定の周波数の強い音の低減効果が小さいことが明らかになった。
内部空間が1辺500mmの立方体となるアクリル製の立方体形状の箱体を用意した。アクリル厚みは10mmであって、十分に音を反射する。この立方体の一面のみを開放したものを箱体として用いた。開放面が地面に垂直になるように箱体を設置した。
音源としてスピーカー(フォステクス社のスピーカー「P650−E」)を箱体内の奥側中央部に、前面部(スピーカー振動面の正面)を箱体の一方の側面側に向けて配置した。
計測器としてマイクロフォン(アコー株式会社製 1/2インチマイクロフォン4125N)を開放面から垂直方向に150mm離れた位置に3本配置した。各マイクロフォンはそれぞれ、開放面に平行な方向に一方の端面から100mm、250mm、400mmの位置に配置した。マイクロフォンの地面からの高さは100mmとした。
まず、箱体内に消音構造を配置していない状態で、スピーカーからホワイトノイズを流して、箱体からの放射音の音圧の測定を行なった。これを参考例1として、この参考例1からの音圧の低減量を放射音抑制量として評価する。
共鳴体として、内部厚み(背面空間の厚み)を2mmとした以外は共鳴体Cと同様の膜型共鳴体である共鳴体Fを4×4個有する消音構造を作製した。
最大の吸音率は高次振動周波数である4kHz付近にあり複数の高次振動モードにより広帯域に吸音していることがわかる。また、低周波側の1.6kHz付近には基本振動による吸音ピークを有することがわかる。すなわち、この共鳴体Fは背面空間の厚みを小さくしたことによって基本振動による吸音より高次振動の吸音を大きくした構成である。
この状態でスピーカーからホワイトノイズを流して、箱体からの放射音の音圧の測定を行ない、参考例1からの音圧の低減量(放射音抑制量)を求めた。
結果を図38に示す。
次に、共鳴体F(消音構造)を箱体内のスピーカーの背面側(正面とは反対側)に配置した以外は実施例12と同様に放射音抑制量を求めた。
結果を図39に示す。
スピーカーの周囲の音圧の分布において、16dBの音圧差が生じていることが分かった。
また、実施例12および実施例13の結果から、音源放射分布において最大音量となる方向に共鳴体を配置することで、より高い消音効果が得られることがわかる。
高周波ほど音波の節と腹が近く、少しの放射分布の変化で、節と腹の位置が変わる。共鳴体を箱体内に挿入したことで箱体内の音圧モードがわずかに変化するため、開放部から放射される音圧分布もわずかに変化する。低周波側では変化が小さいが、高周波側であると上記わずかな変化がマイクロフォンの位置における音圧の大きさの変化につながりやすい。よって、高周波側では箱体からの放射音抑制量がプラスとマイナスを行き来する波形になる。箱体からの放射音の全体量はこの測定データの揺らぎほどは変化していないため、よりマイクロフォンを増やして平均を取ればこの影響は減ずることができる。
一方で、共鳴体の効果によって実際に放射音量が下がっている場合は、図38の4kHz付近のようにある周波数幅を持って放射音抑制量がプラス側に偏る波形となるため、見分けることができる。
枠体の開放部サイズが異なる共鳴体を種々有する消音構造を作製した。
消音構造の面内の一方向をX軸とし、これに直交する方向をY軸として、それぞれの軸方向において、開放部サイズを10mmから30mmまで2mmおきに変えた枠体を作製した。すなわち、消音構造の対角線上は10mm×10mmから30mm×30mmまでの正方形が並び、それ以外のセルはX軸方向とY軸方向で長さの異なる長方形となる。
結果を図40に示す。
図40から、共鳴周波数の平均値である4kHz付近で高い消音効果を示すことがわかる。また、実施例12と比べて5dBを超えるピークを3本有し、若干低周波側に広帯域化していることがわかる。
膜状部材として、PETフィルムに代えて、厚み12μmのアルミニウム箔(三菱アルミニウム株式会社製)を用い、内部厚み(背面空間の厚み)を5mmとした以外は、実施例12の共鳴体Fと同様の共鳴体Gを4×4個有する消音構造を作製した。
結果を図41に示す。
結果を図42に示す。
図42から、最大の吸音率は高次振動周波数である4kHz付近にあり、より低周波側の2kHz付近にも吸音ピークを有する。すなわち、共鳴体Gは背面空間の厚みを小さくすることによって高次振動吸音を大きくした構成である。図42と図41とを対比すると吸音率が高い周波数に対応して、箱体からの放射音抑制量が大きくなり、消音効果が表れていることが分かる。
枠体の開放部サイズを35mm×35mmとした以外は実施例15の共鳴体Gと同様の共鳴体Hを4×4個有する消音構造を作製し、放射音抑制量を測定した。
結果を図43に示す。
図43から、膜状部材として金属箔を用いた場合も、枠体の開放部サイズを変えることで、異なる周波数で消音効果が得られることがわかる。
膜型の共鳴体に代えて、ヘルムホルツ型の共鳴体を用いた。
ヘルムホルツ型の共鳴体は、20mm×20mm×2mmの中空部を有し、直径6mmの開口部を有する構成とした。
また、消音構造はこのヘルムホルツ型の共鳴体を面方向に複数配列した構成とし、消音構造全体のサイズを300mm×300mmの正方形状とした。
厚み2mmのアクリル板を上記形状となるように組み合わせてヘルムホルツ型の共鳴体を有する消音構造を作製した。各アクリル板は、対応する形状となるようにレーザーカッターで加工した。アクリル板同士は、両面テープで貼り合わせた。
結果を図44に示す。
結果を図45に示す。
次に、消音構造を箱体内のスピーカーの背面側に配置した以外は実施例17と同様に放射音抑制量を求めた。
結果を図46に示す。
共鳴体を2つ重ねた構成について検討した。
厚み50μmの膜状部材(PETフィルム)、開放部サイズ20mm×20mm、厚み2mmの枠体、直径6mmの貫通孔を有する厚み2mmの板状部材(アクリル板)、開放部サイズ20mm×20mm、厚み2mmの枠体、厚み2mmのアクリル板をこの順に積層した構造を作製した。すなわち、音が入射する側の膜型の共鳴体とその背面側のヘルムホルツ型の共鳴体とを重ね合わせた構造とした。
消音構造はこの構造を面方向に複数配列した構成とし、消音構造全体のサイズを300mm×300mmの正方形状とした。
結果を図47に示す。
次に、消音構造を箱体内のスピーカーの背面側に配置した以外は実施例19と同様に放射音抑制量を求めた。
結果を図48に示す。
膜状部材と貫通孔を有する板状部材との位置を入れ替えた以外は、実施例19と同様にして消音構造を作製した。すなわち、すなわち、音が入射する側のヘルムホルツ型の共鳴体とその背面側の膜型の共鳴体とを重ね合わせた構造とした。
結果を図49に示す。
次に、共鳴体に多孔質吸音体を重ね合わせた構成の検討を行った。
まず、参考例2として、多孔質吸音体単体での放射音抑制量を測定した。多孔質吸音体としては、低反発ウレタンKTHU、厚み10mm、大きさ300mm×300mmを用いた。
多孔質吸音体を箱体内のスピーカー正面に配置して実施例12と同様に放射音抑制量を測定した。
結果を図50に示す。
参考例2で用いた多孔質吸音体を消音構造の膜状部材の上に重ね合わせた構成とした以外は実施例12と同様に放射音抑制量を測定した。多孔質吸音体と消音構造とは、外周部のみを両面テープで固定した。
結果を図51に示す。
参考例2で用いた多孔質吸音体を消音構造の膜状部材(アルミニウム箔)の上に重ね合わせた構成とした以外は実施例15と同様に放射音抑制量を測定した。多孔質吸音体と消音構造とは、外周部のみを両面テープで固定した。
結果を図52に示す。
参考例2で用いた多孔質吸音体を消音構造のヘルムホルツ型の共鳴体の上(開口部側の面上)に重ね合わせた構成とした以外は実施例17と同様に放射音抑制量を測定した。多孔質吸音体と消音構造とは、外周部のみを両面テープで固定した。
結果を図53に示す。
メッシュ部材(通気性部材)を消音構造の膜状部材(アルミニウム箔)の全面に接着した構成とした以外は実施例15と同様に放射音抑制量を測定した。メッシュ部材は、グラスファイバー粘着テープ(メッシュサイズ2.8mm×2.8mm)を用いた。メッシュ部材を取り付けることによって、膜状部材を補強して破れにくくなる。
結果を図54に示す。
図54からメッシュ部材を取り付けた場合でも消音効果が得られることがわかる。
次に、箱体の開口部に通気性部材を配置した場合について検討した。
まず、参考例3として、箱体内に消音構造を配置せず、箱体の開口部の全面に通気性部材を取り付けた状態で放射音抑制量を測定した。
通気性部材としては、厚み9mmの吸音フェルトボード「フェルメノン」(ドリックス株式会社製)を用いた。
結果を図55に示す。
図55から、用いた通気性部材は通常の多孔質吸音材の特性を有するため、高周波側において放射音抑制量が大きくなることがわかる。
参考例3で用いた通気性部材を箱体の開口部に取り付けた構成とした以外は実施例12と同様に放射音抑制量を測定した。
結果を図56に示す。
参考例3で用いた通気性部材を箱体の開口部に取り付けた構成とした以外は実施例17(ヘルムホルツ型の共鳴体)と同様に放射音抑制量を測定した。
結果を図57に示す。
このように、箱体の開口部に通気性部材が取り付けられている場合でも内部の共鳴体の消音効果を得ることができ、通気性部材が吸音性能を有する場合は消音効果の両立が可能となる。
図36に示すような、対向する2面とこの2面の間の1面の計3面が開放された構成の箱体に消音構造が配置された箱型防音構造体を以下のようにして作製した。
厚み5mm、大きさ160mm×50mmのアクリル板をレーザーカッターで2枚切り出した。この2枚のアクリル板を足として、高さ50mmの箱体とする。箱体の天井部分は、実施例12の共鳴体Fを7×7個有する正方形の消音構造とした。すなわち、箱体の一部が共鳴構造の枠体を兼ねた構成となる。足となる2枚のアクリル板と天井となる消音構造とをネジで固定してπ型の箱体を有する箱型防音構造体とした。
スピーカーから4.2kHzの単周波音を流し、スピーカーから1m離れた位置でマイクロフォンで音圧を計測した。
その結果、箱型防音構造体をスピーカーにかぶせた場合は、何も置かない場合と比較して20dBの消音効果があることが分かった。
以上より本発明の効果は明らかである。
12 箱体
13 開放部
14 消音構造
15 開口部
16 膜状部材
17 容器
18 枠体
19 共鳴管
20 共鳴体
22 開口部
24 中空部
26 多孔質吸音体
Claims (32)
- 少なくとも一部が開放された箱体と、
前記箱体の内部に配置される共鳴体を含む消音構造と、を有し、
前記箱体の壁の外側面に接して、または、前記箱体の内部に、配置される音源から発生して前記箱体の開放面から外部に放射される音を前記消音構造によって低減する箱型防音構造体。 - 前記共鳴体は、少なくとも一面が開放された枠体と、前記枠体の開放面に配置される膜状部材と、を有し、
前記膜状部材が膜振動する共鳴体である請求項1に記載の箱型防音構造体。 - 前記膜振動する共鳴体の膜振動の基本振動モードにおける垂直入射吸音率よりも高次振動モードにおける垂直入射吸音率が大きい請求項2に記載の箱型防音構造体。
- 前記膜状部材が金属からなる請求項2または3に記載の箱型防音構造体。
- 前記枠体は、一面が開放された開放面であり、前記開放面に前記膜状部材が配置されて、前記枠体および前記膜状部材で囲まれた閉空間を形成している請求項2〜4のいずれか一項に記載の箱型防音構造体。
- 前記共鳴体は、ヘルムホルツ共鳴器、および、気柱共鳴器の少なくとも一方である請求項1に記載の箱型防音構造体。
- 前記共鳴体が、膜状部材、貫通孔を有する板状部材のうち少なくとも一種類の層を、枠体を介して、合計2層以上積層している請求項1〜6のいずれか一項に記載の箱型防音構造体。
- 前記共鳴体の厚みが20mm以下である請求項1〜7のいずれか一項に記載の箱型防音構造体。
- 前記音源は、音量がピークとなる、前記音源に固有の周波数を少なくとも1つ有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の箱型防音構造体。
- 前記共鳴体の共鳴周波数が、前記音源に固有の周波数の±20%の範囲にある請求項9に記載の箱型防音構造体。
- 前記音源に固有の周波数における音源放射分布において、その中の最大音量となる方向の延長線上に、前記共鳴体が配置されている請求項9または10に記載の箱型防音構造体。
- 前記共鳴体の共鳴周波数が、前記箱体内に生じる共鳴の共鳴周波数の±20%の範囲にある請求項1〜11のいずれか一項に記載の箱型防音構造体。
- 前記共鳴体は、少なくとも一部が前記箱体の内壁面に取り付けられている請求項1〜12のいずれか一項に記載の箱型防音構造体。
- 前記箱体の壁の一部を前記共鳴体の一部として用いる請求項1〜13のいずれか一項に記載の箱型防音構造体。
- 前記共鳴体が前記箱体とは別体として構成され、取り付け取り外しが可能である請求項1〜14のいずれか一項に記載の箱型防音構造体。
- 前記消音構造は、それぞれ異なる周波数に対して共鳴する複数の種類の前記共鳴体を有する請求項1〜15のいずれか一項に記載の箱型防音構造体。
- 複数の種類の前記共鳴体が、同一平面内に配置される請求項16に記載の箱型防音構造体。
- 複数の種類の前記共鳴体が、同じ厚みである請求項16または17に記載の箱型防音構造体。
- 複数の種類の前記共鳴体が、同じ大きさである請求項16〜18のいずれか一項に記載の箱型防音構造体。
- 前記共鳴体が前記箱体の角部に配置されている請求項1〜19のいずれか一項に記載の箱型防音構造体。
- 前記消音構造が多孔質吸音体を有する請求項1〜20のいずれか一項に記載の箱型防音構造体。
- 前記共鳴体の上面の少なくとも一部に前記多孔質吸音体が接している請求項21に記載の箱型防音構造体。
- 前記箱体の開放面の一部または全部に通気性部材が取り付けられている請求項1〜22のいずれか一項に記載の箱型防音構造体。
- 前記通気性部材が吸音部材である請求項23に記載の箱型防音構造体。
- 前記箱体のいずれか1つの開放部から、前記開放部に垂直な方向における前記箱体内の最も遠い位置までの距離を箱体深さとした場合、
前記共鳴体の少なくとも一部は、前記開放部から前記箱体深さの半分の距離より遠い位置に配置されている請求項1〜24のいずれか一項に記載の箱型防音構造体。 - 前記箱体の内部の最も長い長さが、前記音源に固有の周波数の波長の半分よりも長い請求項1〜25のいずれか一項に記載の箱型防音構造体。
- 前記箱体が、直方体形状である請求項1〜26のいずれか一項に記載の箱型防音構造体。
- 前記箱型防音構造体は、前記音源に対して取り付け取り外し可能であり、前記音源を囲うように配置されて用いられる請求項1〜27のいずれか一項に記載の箱型防音構造体。
- 前記音源が、電動モーターおよびインバーターの少なくとも一方である請求項1〜28のいずれか一項に記載の箱型防音構造体。
- 前記音源として、電動モーターおよびインバーターの少なくとも一方を有し、
前記電動モーターおよび前記インバーターの少なくとも一方を消音対象として、消音対象である前記音源が前記箱体に接して、または、箱体の内部に配置されるように設置される請求項1〜29のいずれか一項に記載の箱型防音構造体を有する輸送機器。 - 自動車である請求項30に記載の輸送機器。
- 前記輸送機器において、前記音源の位置と、座席の位置をつなぐ直線を遮る位置に前記箱型防音構造体の前記消音構造が配置されている請求項30または31に記載の輸送機器。
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