JPWO2019074004A1 - Snp検出方法 - Google Patents

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Abstract

乾燥濾紙血を用いてSNP(一塩基多型)を検出する方法が提供される。より具体的には、当該方法は、乾燥濾紙血中の核酸からSNP(一塩基多型)を検出する方法であって、(B)乾燥濾紙血中の核酸のSNPを含む領域の増幅核酸断片を鋳型とし、SNP識別プライマーを用いて、各SNP識別プライマー毎にPCRを別反応系で行う工程を含む。

Description

本発明は、乾燥濾紙血を用いてSNP(一塩基多型)を検出する方法等に関する。
遺伝的な病気を出生後すばやく検出及び診断することにより、すみやかに治療を開始することができ、ひいては当該病気の影響が大きくなることを抑制することができる場合がある。例えば、脊髄性筋萎縮症(Spinal Muscular Atrophy:SMA)については、出生後早期に診断され、治療が開始されることによって、大幅な症状改善が期待される。
SMAは、脊髄前角下位運動ニューロン神経細胞体の脱落による、体幹及び四肢に筋萎縮及び筋力低下を示す下位運動ニューロン疾患である。SMA患者の95%に、5番染色体q13領域にあるSMN1(survival motor neuron1)遺伝子の欠失が確認されていることから、SMN1遺伝子が疾患遺伝子である。また、同一遺伝子座に相同性の極めて高いSMN2遺伝子が存在しており、そのコピー数が多くなればSMN1遺伝子の欠失をある程度補うことから、SMN2遺伝子は疾患修飾遺伝子と考えられている。SMN1遺伝子とSMN2遺伝子は殆ど同一の塩基配列を有し、コーディング領域の違いは、エクソン7の6番目の一塩基の違いだけである(SMN1:c.840C, SMN2:c.840T)。すなわち、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子間にはSNPが存在している。このエクソン7の一塩基の違いはアミノ酸置換を引き起こさないため、SMN2遺伝子からも、SMN1遺伝子と同じく、機能的なタンパク質も産生されるはずであるが、SMN2遺伝子に由来するタンパク質の大部分はエクソン7に由来するタンパクドメインを持たない。これは、SMN1遺伝子とSMN2遺伝子ではスプライシングパターンが異なっているためで、SMN1遺伝子からは、完全長のmRNAだけが合成される。SMN2遺伝子から産生されるmRNAの90%は、エクソン7を欠き、10%だけがエクソン7を有している。ただ、エクソン7を有しているmRNAが少なくてもSMN2遺伝子のコピー数が多ければ、SMN2 mRNAがかなりの程度産生されることになり、SMN1遺伝子の欠失をある程度補うことになる(非特許文献1)。
SMAの治療戦略として、SMN2遺伝子の「スプライシング修正」という治療戦略が考案された。すなわち、SMN2遺伝子のスプライシングを人工的に修正して、エクソン7を有するSMN2 mRNAの割合を増加させることにより、SMN2遺伝子由来の機能的タンパク質の割合を増加させ、SMN1遺伝子の欠失を補うことにより治療を行うという戦略である。2016年には、SMN2遺伝子のスプライシングを人工的に修正するためのアンチセンス・オリゴヌクレオチド製剤、Nusinersenの有効性が確認され、FDAにより米国で認可された。日本でも2017年7月3日、この薬剤(スピンラザ(登録商標))が製造承認された。これまで、SMA患者は発達遅延児とみなされ、そのまま観察、放置されてしまうことが多かったが、SMAが治療できる時代に入ったことから、SMN1遺伝子欠失患者の早急な検出は一段と重要性が高まったといえる。
Nature Reviews Neuroscience 10, 597−609, 2009 Kobe J. Med. Sci., Vol. 60, No. 4, pp. E78−E85, 2014
上記の通り、出生後のすみやかな遺伝子検査により、早期に遺伝疾患を検出する重要性が増大している。また、このような検査は、全ての出生児に対して行うことが望ましく、全出生児に対して簡便に素早く現実的なコストで遺伝子検査を行える手法の開発が望まれる。
特に日本国においては、代謝物による疾患スクリーニングのために、通常生後4〜6日目に全新生児から採血がなされ、血液が染みこんだ乾燥濾紙が作製されている。この乾燥濾紙中の血液(乾燥濾紙血)を用いて遺伝子解析を行うことができれば、合理的なコストで大規模な出生児遺伝子検査が可能になり、全出生児に対して遺伝子検査を行うことも現実的であるといえる。
しかしながら、乾燥濾紙血に含まれる核酸は、品質が悪く、また微量であるため、特にSNP(一塩基多型)を乾燥濾紙血から検出することは極めて困難であった。そこで、本発明は、乾燥濾紙血を用いてSNP(一塩基多型)を検出する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、乾燥濾紙血から抽出した核酸のSNPを含む領域の増幅核酸断片を鋳型とし、SNP識別プライマーを用いて、各SNP識別プライマー毎にPCRを別反応系で行うことにより、乾燥濾紙血からでもSNPを検出できる可能性を見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。
本発明は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
乾燥濾紙血中の核酸からSNP(一塩基多型)を検出する方法であって、
(B)乾燥濾紙血中の核酸のSNPを含む領域の増幅核酸断片を鋳型とし、SNP識別プライマーを用いて、各SNP識別プライマー毎にPCRを別反応系で行う工程
を含む、方法。
項2.
SNPを含む領域の増幅核酸断片が、当該SNPの有無をRFLP(Restriction Fragment Length Polymorphism:制限酵素断片長多型)法で識別できる核酸断片である、項1に記載の方法。
項3.
乾燥濾紙血中の核酸からSNPを検出する方法であって、
(A)乾燥濾紙血中の核酸のSNPを含む領域をPCRにより増幅する工程、及び
(B)当該増幅核酸断片を鋳型とし、SNP識別プライマーを用いて、各SNP識別プライマー毎にPCRを別反応系で行う工程
を含む、項1又は2に記載の方法。
項4.
工程(A)におけるPCRに用いるプライマーが、検出対象SNPの有無をRFLP法で識別できる核酸断片を増幅するプライマーである、項3に記載の方法。
項5.
乾燥濾紙血からSMN1遺伝子及びSMN2遺伝子を検出する方法であって、
(b)乾燥濾紙血中の核酸のSMN1遺伝子及びSMN2遺伝子を含む領域の増幅核酸断片を鋳型とし、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子間のSNP(SMN1:c.840C, SMN2:c.840T)を識別するプライマーを用いて、各SNP識別プライマー毎にPCRを別反応系で行う工程
を含む、方法。
項6.
前記増幅核酸断片が、前記SNPの有無をRFLP法で識別できる核酸断片である、項5に記載の方法。
項7.
乾燥濾紙血からSMN1遺伝子及びSMN2遺伝子を検出する方法であって、
(a)乾燥濾紙血中の核酸のSMN1遺伝子及びSMN2遺伝子を含む領域をPCRにより増幅する工程、及び
(b)当該増幅核酸断片を鋳型とし、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子間のSNP(SMN1:c.840C, SMN2:c.840T)を識別するプライマーを用いて、各SNP識別プライマー毎にPCRを別反応系で行う工程
を含む、項5又は6に記載の方法。
項8.
工程(a)におけるPCRに用いるプライマーが、前記検出対象SNPの有無をRFLP法で識別できる核酸断片を増幅するプライマーである、項7に記載の方法。
項9.
前記検出対象SNPの有無をRFLP法で識別できる核酸断片を増幅するプライマーが、以下の条件(i)を満たすプライマーである、項8に記載の方法。
(i):プライマーを用いたPCR増幅産物において、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子間のSNP(SMN1:c.840C, SMN2:c.840T)が、少なくとも1種の制限酵素の認識配列に含まれており、当該制限酵素によって一方の遺伝子は切断されるがもう一方の遺伝子は切断されない。
項10.
前記検出対象SNPの有無をRFLP法で識別できる核酸断片を増幅するプライマーが、3’末端から3塩基はすべてTであり、4塩基目以降の塩基配列が、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子cDNA配列の844塩基目以降の塩基配列とアニーリング時ミスマッチ10%以下である、全長15〜50塩基長の核酸である(特に好ましくは、CCTTCCTTCTTTTTGATTTTGTTTで示される塩基配列からなる核酸である)、
項8又は9に記載の方法。
項11.
SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子間のSNP(SMN1:c.840C, SMN2:c.840T)を識別するプライマーが、c.840Cを含む領域は増幅するがc.840Tを含む領域は増幅しないプライマー、及び、c.840Tを含む領域は増幅するがc.840Cを含む領域は増幅しないプライマー、である、項5〜10のいずれかに記載の方法。
項12.
SMN1遺伝子は増幅するがSMN2遺伝子は増幅しないプライマーが、
TGTCTGAAACC、又はTGTTTGAAACCで示される塩基配列からなる核酸であり、
SMN2遺伝子は増幅するがSMN1遺伝子は増幅しないプライマーが、
TTGTCTAAAACC、又はTTGTTTAAAACCで示される塩基配列からなる核酸である、
項11に記載の方法。
項13.
以下の(I)、(II)、及び(III)のプライマーのうち、
少なくとも1つのプライマーを備えるか、
少なくとも2つのプライマーを備えるか、あるいは
全てのプライマーを備える、
乾燥濾紙血からSMN診断を行うためのキット。
(I):SMN1遺伝子は増幅するがSMN2遺伝子は増幅しないプライマー
(II):SMN2遺伝子は増幅するがSMN1遺伝子は増幅しないプライマー
(III):SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子間のSNP(SMN1:c.840C, SMN2:c.840T)の有無をRFLP法で識別できる核酸断片を増幅するプライマー
本発明により、乾燥濾紙血からも迅速且つ簡便にSNPを検出することができる。特に、疾患に関連するSNPを検出することにより、当該疾患を診断することもできる。
SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子含有領域を増幅させるためのPCRの概要を示す。 SNP識別プライマー(SMN1−COP又はSMN2−COP)を用いたSNP検出のためのPCRの概要を示す。 SNP識別プライマー(SMN1−COP又はSMN2−COP)を用いたSNP検出のためのPCRによる増幅産物を、アガロースゲル電気泳動により検出した結果を示す。 プライマーX7−Draを用いた、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子を含む領域を増幅するためのPCRの概要を示す。 図4に概要を示すPCRにより得られる増幅産物を制限酵素DraIで処理した場合の概要を示す。 各種乾燥濾紙血から乾燥濾紙血に存在するDNA(Dried Blood Spot DNA:DBS−DNA)を取得して、プライマーR111及びプライマーX7−Draを用いて増幅し、さらに当該増幅産物をDraIにより処理し、4%アガロースゲル電気泳動により切断の有無の確認を行った結果を示す。 血を染みこませ乾燥させた乾燥濾紙の血存在部分の打ち抜き片を直接PCRミックスに加え、プライマーR111及びプライマーX7−Draを用いて増幅し、さらに当該増幅産物をDraIにより処理し、4%アガロースゲル電気泳動により切断の有無の確認を行った結果を示す。 当該増幅産物(189bp)をテンプレートとして、2種類のプライマーセット(「プライマーR111及びプライマーSMN1−COP」及び「プライマーR111及びプライマーSMN2−COP」)によるPCRを、別反応系で行い、また、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子含有領域の増幅を行わず、DBS−DNAをそのままテンプレートとして、当該2種類のプライマーセットによるPCRについても、別反応系で行い、さらにまた、採取した血液から直接抽出したゲノムDNAをテンプレートとして、当該2種類のプライマーセットによるPCRについても、別反応系で行い、これらのPCR増幅産物について、アガロース電気泳動の結果を示す。 4種類の乾燥濾紙血(グループA〜D;保存期間1年又は5年)から得たDBS−DNAを、プライマーR111及びプライマー541C770を用いたPCRにより事前増幅した増幅産物をテンプレートして用い、プライマーR111及びプライマーSMN1−COP、あるいは、プライマーR111及びプライマーSMN2−COPを用いて、別反応系でリアルタイムPCRを行った結果を示す。 増幅産物のプライマーX7−Dra端側の塩基配列、及びそれにアニーリングするプライマーSMN1−COP及びプライマーSMN2−COPの概要を示す。 実施例で用いたプライマーのうち、主要なものの配列を示す。 プライマーSMN1−COP−Dra及びプライマーSMN2−COP−Draを作成し、プライマーX7−Draを用いて得た事前増幅産物をテンプレートとしてリアルタイムPCRを行った結果を示す。 プライマーR111及びプライマーX7−Draを用いて得た事前増幅産物をテンプレートとして、プライマーSMN1−COP及びプライマーSMN2−COPを用いてリアルタイムPCRを行った結果、並びに、プライマーSMN1−COP−Dra及びプライマーSMN2−COP−Draを用いてリアルタイムPCRを行った結果を、比較して示す。 SMN1 cDNA及びSNM2 cDNAの配列を示す。SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子間のSNP(SMN1:c.840C, SMN2:c.840T)をボックスで囲んで示す。 (i)プライマーR111及びプライマー541C770を用いて得た増幅産物、及び(ii)当該増副産物をテンプレートとしてプライマーR111及びプライマーX7Draを用いて得た増幅産物を、アガロースゲル電気泳動により検出した結果を示す。 (i)プライマーR111及びプライマー541C770を用いて得た増幅産物、及び(ii)当該増副産物をテンプレートとしてプライマーR111及びプライマーX7Draを用いて得た増幅産物を、テンプレートとして用い、プライマーSMN1−COP−Dra及びプライマーSMN2−COP−Draを用いてリアルタイムPCRを行った結果を示す。
以下、本発明の各実施形態について、さらに詳細に説明する。なお、本明細書において、「核酸」にはDNA及びRNAが包含され、DNAが好ましい。
本発明に包含されるSNP検出方法(以下、「本発明のSNP検出方法」ということがある)は、乾燥濾紙血中の核酸におけるSNPを検出する方法である。乾燥濾紙血は、濾紙に染みこみ乾燥した血液である。上述のように、日本国では、全新生児から採血がなされ、血液が染みこんだ乾燥濾紙が作製されている。本発明に包含されるSNP検出方法では、この乾燥濾紙中の血液(乾燥濾紙血)を用いることができるため、特に遺伝疾患に関係するSNPを検出して疾患の診断を行う場合には、漏れのない網羅的なスクリーニングが可能となるため、有利である。よって、本発明に用いられる特に好ましい乾燥濾紙血は、既に日本国においては作製されている新生児マススクリーニング用乾燥濾紙血(ガスリーカード血)ということができる。
用いられる濾紙としては、特に制限されず、新生児血液を染みこませるのに用いられている公知の濾紙を用いることができる。また、FTAカード(GEヘルスケア・ジャパン株式会社)等のDNA保存用の濾紙は特に好適である。乾燥も、特に制限はされないが、風乾による乾燥が好ましい。
乾燥濾紙血は、特に制限されないが、例えば作製から5年以内のものを用いることが好ましく、4、3、2、又は1年以内のものがより好ましい。
本発明のSNP検出方法は、乾燥濾紙血中の核酸からSNP(一塩基多型)を検出する方法であって、工程(B):乾燥濾紙血中の核酸のSNPを含む領域の増幅核酸断片を鋳型(テンプレート)とし、SNP識別プライマーを用いて、各SNP識別プライマー毎にPCRを別反応系で行う工程を含む。
乾燥濾紙血中の核酸は、公知の方法により抽出することができる。例えば、TEバッファー・煮沸法により抽出することができる。より詳細には、例えば、血を染みこませ乾燥させた乾燥濾紙の血存在部分をパンチ等で打ち抜き、これを滅菌チューブ内で水で洗浄した後、Tris−EDTA緩衝液、pH8.0(1×TEバッファー)を加えて加熱(例えば95℃で30分間)することにより、乾燥濾紙血由来のDNAを抽出することができる。
また、乾燥濾紙血(好ましくは、血を染みこませ乾燥させた乾燥濾紙の血存在部分の打ち抜き片)を核酸増幅用ミックス(例えばPCRミックス)に加えることにより、当該ミックス中に乾燥濾紙血に存在するDNA(Dried Blood Spot DNA:DBS−DNA)が移動するため、前述したような核酸抽出操作を行わずに、そのまま核酸増幅操作(例えばPCR)を行うことで核酸増幅することも行い得る。
SNPを含む領域の増幅核酸断片は、当該乾燥濾紙血中の核酸を、例えばPCRにより増幅させて得ることができる。当該PCRに用いるプライマーセットは、検出対象のSNPを含む領域を増幅させることができれば、特に制限はされない。例えば、増幅断片長は、50〜1000bp(base pair:塩基対)、100〜800bp、又は150〜500bp程度であってよい。また、当該プライマーセットを構成するプライマーも、当該効果が奏される範囲であればその塩基長は特に制限はされず、例えば15〜50塩基長、又は20〜40塩基長程度であってよい。また、PCRの条件についても、増幅断片が得られる範囲において特に制限はされず、適宜設定することができる。例えば、核酸増幅用酵素(ポリメラーゼ、特にDNAポリメラーゼ)やdNTPミックス等、PCRのために必要な試薬については公知のものを適宜選択して用いることができる。また例えば、増幅サイクル数についても、用いる核酸増幅用酵素や増幅核酸長等に応じて、適宜設定することができる。例えば、増幅サイクル数としては、10〜100サイクルが挙げられ、当該範囲の上限は90、80、70、60、50若しくは40であってもよく、当該範囲の下限は15、20、25、30、若しくは35であってもよい。
なお、核酸抽出操作を省く場合(特に、乾燥濾紙の血存在部分の打ち抜き片を直接核酸増幅用ミックスに加え、そのまま核酸増幅を行う場合)には、用いる核酸増幅用酵素としては、比較的長い塩基長を増幅可能な酵素を用いることが好ましい。当該比較的長い塩基長としては、例えば5〜40kb程度、好ましくは10〜30kb程度が挙げられる。このような酵素としては、例えば、KOD FX Neo(東洋紡)が好ましく挙げられる。
なお、SNPを含む領域の増幅核酸断片が、一度の増幅反応では少量しか得られない場合には、その増幅産物をテンプレートして再度増幅反応を行い(例えば同一のプライマーセットより、あるいはnestPCR用プライマーセットにより増幅反応を行い)、SNPを含む領域の増幅核酸断片を更に増やすことで、SNP識別の精度を上げることができる。例えば、このようにして増やした増幅核酸断片をテンプレートとして、SNP識別プライマーにより下述するような操作を行うことで、SNPの識別をより高精度で行うことができる。特に下述する操作のうち、リアルタイムPCR及び/又はRFLP法によりSNPの識別を行う場合には、SNPを含む領域の増幅核酸断片を更に増やすことは、好ましい。SNPを含む領域の増幅核酸断片を得るために行う増幅反応(例えばPCR)は、例えば1回の他、2又は3回程度行うことができる。
SNP識別プライマーとは、当該プライマーを用いてPCRを行うことで、SNPの有無を検出することができるプライマーをいう。より詳細には、SNPにおける塩基多型が2種ある場合、それぞれをSNP1及びSNP2とすると(以下、この「SNP1」及び「SNP2」という表記を用いることがある)、「SNP1を含む領域を増幅するがSNP2を含む領域を増幅しないプライマー」(SNP1識別プライマー)及び「SNP2を含む領域を増幅するがSNP1を含む領域を増幅しないプライマー」(SNP2識別プライマー)が好ましいSNP識別プライマーである。これらのSNP識別プライマーを用いたPCRの後、増幅産物の有無を調べることでSNPを検出することができ、さらにはSNP1及びSNP2のいずれのSNPが存在するかをも判別することができる。
上記の通り、SMN1遺伝子とSMN2遺伝子はエクソン7の6番目の一塩基の違いを有する(SMN1:c.840C, SMN2:c.840T)から、例えばSNP1をc.840C、SNP2をc.840Tと考えることができる。よって、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子間のSNPについては、c.840Cを含む領域は増幅するがc.840Tを含む領域は増幅しないプライマー、及び、c.840Tを含む領域は増幅するがc.840Cを含む領域は増幅しないプライマー、が好ましいSNP識別プライマーということができる。なお、「c.840C」及び「c.840T」の「c.」は、cDNAにおける塩基であることを示す。つまり、「c.840C」は翻訳開始点から数えて840番目の塩基がCであることを示し、「c.840T」は翻訳開始点から数えて840番目の塩基がTであることを示す。また、本明細書において、「SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子間のSNP」とは、特に断らない限り、エクソン7の6番目の一塩基多型(SMN1:c.840C, SMN2:c.840T)を指す。
SNP識別プライマーは、例えば、SNP部位をカバーしてアニーリングし、且つSNP部位においては一方の多型のみに相補的な塩基を有するという条件を満たすプライマーを設計して、実際の実験及びインシリコでのアニーリング結合性強度等を参考として良好なものを絞りこむことで、得ることができる。また、公知であるSNP識別プライマーを好ましく用いることもできる。特に制限はされないが、SNP部位を3’末端とするプライマー、さらにはSNP部位を3’末端とし且つ3’末端から2〜5塩基目をミスマッチとしたプライマー、等がSNP識別プライマーとして用いることができる可能性がある。また例えば、プライマーの塩基配列長を比較的短く(例えば、8〜20、9〜18、10〜16、又は11〜14塩基長)することも考えられる。
例えば、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子間のSNPについてのSNP識別プライマーとしては、SNP部位をプライマー塩基配列の中間とすることが好ましい。また、ミスマッチの無いプライマーが好ましい。例えば、プライマーのSNP部位アニール塩基の3’側又は5’側に、それぞれ同一又は異なって、4、5、6、7、8、9、又は10塩基長を有するプライマーが好ましい。例を挙げて説明すると、SMN1遺伝子のc.840C付近の塩基配列はGGTTTAGACAであるところ(下線付CがSNP部位)、この領域にミスマッチ無くアニーリングするプライマーとしてはGGTTTAGACA(フォワードプライマー)又はTGTCTAAACC(リバースプライマー)が挙げられるところ(下線付塩基がSNP部位とアニールする)、いずれのプライマーにおいてもSNP部位アニール塩基の3’側には5塩基、5’側にも5塩基存在しており、プライマー長は11塩基長である。なお、TGTCTAAACCで示される塩基配列からなるプライマーを「SMN1−COP」と呼ぶことがある。また、これらのプライマーは、c.840Cを含む領域は増幅するがc.840Tを含む領域は増幅しないプライマーの好ましい例である。
また、SMN2遺伝子のc.840T付近の塩基配列はGGTTTAGACAAであるところ(下線付TがSNP部位)、この領域にミスマッチ無くアニーリングするプライマーとしてはGGTTTAGACAA(フォワードプライマー)又はTTGTCTAAACC(リバースプライマー)が挙げられるところ(下線付塩基がSNP部位とアニールする)、GGTTTAGACAAではプライマーのSNP部位アニール塩基の3’側には5塩基、5’側には6塩基存在しており、プライマー長は12塩基長であり、TTGTCTAAACCではプライマーのSNP部位アニール塩基の3’側には6塩基、5’側には5塩基存在しており、プライマー長は12塩基長である。なお、TTGTCTAAACCで示される塩基配列からなるプライマーを「SMN2−COP」と呼ぶことがある。また、これらのプライマーは、c.840Tを含む領域は増幅するがc.840Cを含む領域は増幅しないプライマーの好ましい例である。
本発明のSNP検出方法においては、各SNP識別プライマー毎にPCRを別反応系で行う。ここでの「各SNP識別プライマー毎」とは、各SNP識別プライマー及びその対をなすプライマーのプライマーセット毎、という意味合いである。SNPにおける塩基多型が2種ある場合、一方のSNP(SNP1)を含む領域は増幅し、もう一方のSNP(SNP2)を含む領域は増幅しないプライマーは、SNP識別プライマーとして好ましく用いることができ、当該SNP識別プライマー及び当該SNP識別プライマーの対となるプライマーをプライマーセットとしてPCRを行い、増幅の有無を確認すれば、SNPを検出し、且ついずれのSNPが存在するかをも判別することができる。これとは別に若しくは加えて、SNP2を含む領域は増幅し、SNP1を含む領域は増幅しないプライマーも、SNP識別プライマーとして用いることができ、当該SNP識別プライマー及び当該SNP識別プライマーの対となるプライマーをプライマーセットとしてPCRを行い、増幅の有無を確認して、前記の異なるSNP識別プライマーによる増幅の有無と組み合わせて確認を行えば、SNP検出及び判別の正確性が一段と高まる。
SNP識別プライマーの対となるプライマーは、SNP識別プライマーがフォワードプライマーの場合はリバースプライマーであり、SNP識別プライマーがリバースプライマーの場合はフォワードプライマーである。SNP識別プライマーの対となるプライマーは、SNP識別プライマーと組み合わせて用いることで、SNPを含む領域をPCRにより増幅できるものであれば、特に制限はされない。例えば、10〜50、12〜40、又は15〜30塩基長の核酸であり得る。また、ゲノムにおいて、SNP識別プライマーがアニーリングする部位から例えば30〜1000、50〜800、100〜500bp程度離れた領域にアニーリングするプライマーであり得る。
例えば、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子間のSNP検出について、SNP識別プライマーとして「SMN1−COP」及び「SMN2−COP」を用いる場合には、SMN1−COP及びSMN1−COPの対となるプライマーをプライマーセットとしてPCRを行い、増幅の有無を確認することができる。また、SMN2−COP及びSMN2−COPの対となるプライマーをプライマーセットとしてPCRを行い、増幅の有無を確認することができる。さらに、これらの結果を組み合わせて検証することで、当該SNP検出及び判別の正確性が一段と高まる。例えば、同一のサンプルをテンプレートして用いたとすれば、SMN1−COPを用いたPCRで増幅が見られない場合には、SMN2−COPを用いたPCRでは増幅が見られるはずであり、この整合性を確認することでSNP検出及び判別の正確性が一段と高まる。
別反応系で各SNP識別プライマー毎にPCRを行うとは、各SNP識別プライマー及びその対をなすプライマーのプライマーセット毎に、別反応系でPCRを行うことを指す。すなわち、同じ反応系に複数のプライマーセットが存在しないこと、換言すれば1反応系に存在するプライマーセットの組み合わせは1組み合わせしかないことを指す。
例えば、SNP識別プライマーとして「SMN1−COP」及び「SMN2−COP」を用いる場合には、「SMN1−COP」及び「SMN2−COP」並びにこれらの対プライマーを同じ反応系に含ませることはせず、「SMN1−COP」及びその対となるプライマーを用いたPCRと、「SMN2−COP」及びその対となるプライマーを用いたPCRとは、別反応系で行う。
SNP識別プライマーを用いたPCRの条件も、当該プライマーがSNPを識別して、増幅断片をテンプレートに核酸断片を増幅する限り、特に限定されず、適宜設定することができる。例えば、増幅断片長は、50〜1000bp(base pair:塩基対)、100〜800bp、又は150〜500bp程度であってよい。また、非特異的な増幅を防止するため、ホットスタートPCRを行ってもよい。また、核酸断片の増幅を確認するにあたっては、例えばアガロース電気泳動法等を用いることもできるが、SNP識別プライマーを用いたPCRをリアルタイムPCRにより行って増幅を確認する方法が、迅速かつ簡便であり有利である。リアルタイムPCRは、公知の方法で行うことができ、例えばインターカレーション法及びハイブリダイゼーション法を挙げることができる。本発明においては、場合によっては増幅の程度まで確認する必要は必ずしもなく、増幅の有無によりSNPの有無及び/又は型を検出することもできるため、簡便さの観点からはインターカレーションがより好ましい。インターカレーション法に用いるインターカレーターとしては、例えばSYBR Green I、EvaGreen Dye等が挙げられる。
本発明のSNP検出法では、前記SNPを含む領域の増幅核酸断片は、当該SNPの有無をRFLP(Restriction Fragment Length Polymorphism:制限酵素断片長多型)法で識別できる核酸断片であることが好ましい。当該増幅核酸断片を鋳型とし、SNP識別プライマーを用いてSNPを検出した際に、SNPの存在及び/又は型が確定しづらい結果が出た場合に、鋳型である当該増幅核酸断片をRFLP法によって調べ、SNPの存在及び/又は型を確定することができるため、有利である。特に、例えば大規模なPCRによる一次スクリーニング(全出生児の乾燥濾紙血を用いたSNP領域の事前増幅及び当該事前増幅産物を鋳型としたPCR)において、PCRの増幅の有無及び/又は型が判断できないような場合に、事前増幅産物を制限酵素で処理してRFLP法により、迅速かつ確実にSNPの有無及び/型を検出することができる。
増幅核酸断片を、SNPの有無をRFLP法で識別できる核酸断片とするためには、例えば、増幅に用いるPCRプライマーを、SNPの有無をRFLP法で識別できる核酸断片を増幅するよう設計することが好ましい。つまり、乾燥濾紙血中の核酸のSNPを含む領域を増幅するプライマーを、それによって増幅される核酸断片を特定の制限酵素で処理した際にSNPによって切断の有無が決まるよう、設計することが好ましい。例えば、当該プライマーのSNP対応部位の塩基及び/又はその周辺の塩基配列が、これによりSNP1から得られる増幅断片の塩基配列がある制限酵素の認識配列である一方で、SNP2識別プライマーのSNP対応部位の塩基及びその周辺の塩基配列は、当該制限酵素の認識配列では無いように、SNP1識別プライマー及びSNP2識別プライマーを設計することが好ましい。
より具体的には、例えば、SMN1遺伝子のc.840C付近の塩基配列はGGTTTAGACAであり(下線付CがSNP部位)、また、SMN2遺伝子のc.840T付近の塩基配列はGGTTTAGACAAであるところ(下線付TがSNP部位)、増幅産物におけるSMN1遺伝子の当該SNP周辺の塩基配列がGGTTTCAACA(下線付Aがゲノム配列と異なる部位)となり、増幅産物におけるSMN2遺伝子の当該SNP周辺の塩基配列がGGTTTTAACAA(下線付Aがゲノム配列と異なる部位)となるようプライマーを設計することにより、制限酵素DraIの認識配列TTTAAAが、SMN1遺伝子の増幅産物には存在せず、一方SMN2遺伝子の増幅産物には存在することとなる。このようなプライマーとしては、例えば、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子間のSNPのすぐ3’側隣の塩基からアニーリングし(すなわち、プライマー自身の3’末端はTであり)、且つ上記の塩基改変ができるよう3’末端から2番目の塩基もTであり、ゲノムとアニーリング時にミスマッチしないよう3’末端から3番目の塩基もTであるプライマー(すなわち、プライマー自身の3’末端から3塩基はすべてTであるプライマー)、が好ましく挙げられ、さらにそれ以降(つまりプライマー自身の3’末端から4塩基目以降)はアニーリング時にできるだけミスマッチの無い配列(例えばミスマッチ率10、5、3、2、又は1%以下あるいは0%)であることが好ましい。ミスマッチ率は、(アニーリング時のミスマッチ塩基数/プライマー全塩基数)×100(%)で求める値である。なお、アニーリング時、A−T、G−C、A−U以外のペアはミスマッチと判断する。SNPの有無をRFLP法で識別できる核酸断片を増幅するプライマーとしては、より具体的には、例えば実施例で用いたプライマーX7−Dra(CCTTCCTTCTTTTTGATTTTGTTT:下線部配列はSMN1及びSMN2遺伝子のcDNA配列とアニーリング時のミスマッチ0%)が挙げられる。
本発明のSNP検出方法は、別個体間のSNPを検出するためにも、また同一個体内の遺伝子間のSNPを検出するためにも、用いることができる。つまり、本発明においては、1塩基の差異が存在すれば、別個体間の1塩基の差異であっても、同一個体内の遺伝子間の1塩基の差異であっても、SNPと呼ぶ。
例えば、別個体間のSNPを検出する場合には、異なる個体(例えば個体1及び個体2)由来の乾燥濾紙血から抽出した核酸を増幅し、個体1由来核酸増幅産物をテンプレートとして、SNP1識別プライマーを用いたPCRとSNP2識別プライマーを用いたPCRとを別反応系で行った結果と、個体2由来核酸増幅産物をテンプレートとして、SNP1識別プライマーを用いたPCRとSNP2識別プライマーを用いたPCRとを別反応系で行った結果とを、比較することで、各個体がSNP1とSNP2のいずれのSNPを有するのかを調べることができる。また例えば、同一個体内の遺伝子間のSNPを検出する場合には、乾燥濾紙血から抽出した核酸を増幅し、当該核酸増幅産物をテンプレートとして、SNP1識別プライマーを用いたPCRとSNP2識別プライマーを用いたPCRとを別反応系で行った結果を比較することで、当該同一個体がSNP1及び/SNP2を有するかを調べることができる。
特に、疾患に関連する公知のSNPについては、本発明のSNP検出方法を適用してSNPを検出することで、疾患診断を行うことができる。また、迅速且つ簡便にSNPを検出して診断を行うことができることから、早期治療が重要であるSNP関連疾患の診断には特に有利である。従って、例えば、上述した乾燥濾紙血からSMN1遺伝子及びSMN2遺伝子を検出する方法は、SMN診断方法として特に好適に用いることができる。
本発明は、以下の(I)、(II)、及び(III)のプライマーのうち、少なくとも1つのプライマーを備えるか、少なくとも2つのプライマーを備えるか、あるいは全てのプライマーを備える、
乾燥濾紙血からSMN診断を行うためのキットも包含する。
(I):SMN1遺伝子は増幅するがSMN2遺伝子は増幅しないプライマー
(II):SMN2遺伝子は増幅するがSMN1遺伝子は増幅しないプライマー
(III):SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子間のSNP(SMN1:c.840C, SMN2:c.840T)の有無をRFLP法で識別できる核酸断片を増幅するプライマー
これらのプライマーについては、上述したとおりである。
また、当該キットは、その他の試薬を備えていてもよい。例えば、乾燥濾紙血から核酸を抽出するための試薬(例えばTEバッファー)や、PCRミックスの各成分(例えばdNTPやTaqポリメラーゼなど)等を備えていてもよい。
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。
以下、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
乾燥濾紙血からのDNAの抽出
SMA患者および対照となる健常人から得た新鮮血液を濾紙の上に滴下し、染み込ませて風乾させた。なお、濾紙としては、FTA Elute Card(Thermo Fisher Scientific)を用いた。得られた血液濾紙は、室温(20〜25℃)で暗所に保管した。
乾燥濾紙血からのゲノムDNA抽出には、TE buffer煮沸法を用いた。その詳細は以下のとおりである。
(1)濾紙上の乾燥血のスポットから、4片の直径3mmのサークル(円)をパンチで打ち抜いた。当該4片のサークルに含まれる血液は、およそ全血25μLに相当する。
(2)濾紙血を洗浄する目的で、4片のサークルを滅菌チューブに入れ、50μLの蒸留水を注ぎ入れ、ボルテックスにより混合した後に、洗浄水を完全に除去した。
(3)DNAを溶出する目的で、50μLのTris−EDTA緩衝液、pH8.0(1×TEバッファー)をチューブに添加し、当該チューブを95℃で30分間加熱した後、溶出したDNA(Dried Blood Spot DNA:DBS−DNA)を含むTEバッファーを、以後の検討におけるPCR用DNAテンプレートとして使用した。DBS−DNA含有TEバッファーは使用時までは4℃で保存し、抽出から2週間以内に使用した。
(4)なお、得られたDBS−DNA含有TEバッファーは、NanoDrop ND−1000分光光度計(Thermo Fisher Scientific)を用いて、DNA濃度および吸光度比(A260/280nm)を測定した。
SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子含有領域の増幅
PCRにより、SMN1遺伝子とSMN2遺伝子の両方の遺伝子の「イントロン6の3’側とエクソン7の5’側」を増幅した。具体的には、テンプレートとしてDBS−DNA含有TEバッファーを、プライマーセットとしてプライマーR111及びプライマー541C770を用い、PCRを行い、増幅産物(202bp)を得た。(bpは塩基対を示す。)なお、PCRの条件については、図1並びに表1及び表2に示す。
Figure 2019074004
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SNP識別プライマーを用いた、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子間のSNP検出
上記増幅産物(202塩基対)をテンプレートして、プライマーセットとしてプライマーR111及びプライマーSMN1−COPを用いたPCRと、プライマーセットとしてプライマーR111及びプライマーSMN2−COPを用いたPCRとを、別反応系(別チューブ)で行った。即ち、プライマーとしてプライマーR111及びプライマーSMN1−COPのみが含まれる反応系(系(1))でのPCRと、プライマーとしてプライマーR111及びプライマーSMN2−COPのみが含まれる反応系(系(2))でのPCRと、を行った。詳細なPCRの条件を図2並びに表3及び表4に記載する。
なお、系(1)では、テンプレートにSMN1遺伝子が存在していれば、168bpの増幅産物が得られる。また、系(2)では、テンプレートにSMN2遺伝子が存在していれば、169bpの増幅産物が得られる。
Figure 2019074004
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3%アガロースゲル電気泳動により、当該PCRにより得られた増幅産物を検出した。結果を図3に示す。図3においては、グループAには、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子の両方を有する健常人の乾燥濾紙血を用いた結果を示す。グループBには、SMN1遺伝子を有するがSMN2遺伝子を欠損した健常人の乾燥濾紙血を用いた結果を示す(健常人の場合、SMN1遺伝子は必ず存在するが、SMN2遺伝子は欠失していることもある)。グループCには、SMN2遺伝子を有するがSMN1遺伝子を欠損したSMN患者の乾燥濾紙血を用いた結果を示す。なお、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子の両方が欠失している場合、出生前に死亡してしまうため、SMN1遺伝子が欠失しているSMA患者では、必ずSMN2遺伝子は存在する。当該結果から、上記の方法により、乾燥濾紙血を用いて、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子間のSNPを検出できること、ひいてはSMN患者を識別できること、がわかった。
RFLP法による、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子間のSNPの検出
次の条件を満たすプライマーを設計した。
・プライマーを用いたPCR増幅産物において、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子間に存在するSNP(c.840 C/T)が、少なくとも1種の制限酵素の認識配列に含まれており、当該制限酵素によって一方の遺伝子は切断されるがもう一方の遺伝子は切断されない。
・出来る限り、前記SNP部位にはアニーリングしない。
・上記条件を満たす範囲において、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子とのミスマッチ(相補的塩基配列ではない塩基)が出来るだけ少なくなるようにする。
これらの条件を満たすプライマーとして、プライマーX7−Draを作成した。当該プライマーを用いたPCRの概要を図4に示す。また、図5に当該PCRにより得られる増幅産物を制限酵素DraI(DNA配列TTTAAAを認識してTとAの間で切断する)で処理した場合の概要を示す。これらの図に示されるように、リバースプライマーとしてプライマーX7−Draを用いた場合、SMN1遺伝子領域をテンプレートとした増幅産物はDraIで切断されないのに対し、SMN2遺伝子領域をテンプレートとした増幅産物はDraIで切断されるため、RFLP(Restriction Fragment Length Polymorphism:制限酵素断片長多型)法により、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子間のSNPを検出することが可能となる。
DBS−DNAをテンプレートとし、プライマーセットとしてプライマーR111及びプライマーX7−Draを用いたPCRにより増幅産物(189bp)を得、当該増幅産物をDraIにより処理し、4%アガロースゲル電気泳動により切断の有無の確認を行った。また、事前増幅における増幅産物についても同様にアガロース電気泳動により確認した。
当該検討の詳細な条件を以下に示す。
Figure 2019074004
Figure 2019074004
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なお、当該検討では、次に示す4種類の乾燥濾紙血(グループA〜D;保存期間1年又は5年)からDBS−DNAを取得して、これを事前増幅のテンプレートとして用いた。グループA:SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子を有する
グループB:SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子を有する
グループC:SMN1遺伝子を有するがSMN2遺伝子が欠損
グループD(患者):SMN2遺伝子を有するがSMN1遺伝子が欠損
アガロース電気泳動の結果を図6aに示す。いずれの乾燥濾紙血からも事前増幅により増幅産物が得られ、当該増幅産物についてRFLP法によりSMN1遺伝子及びSMN2遺伝子の有無が確認できることが分かった。
また、乾燥濾紙血から抽出したDNA(DBS−DNA)を用いるのではなく、濾紙上の乾燥血のスポットから、4片の直径3mmのサークル(円)をパンチで打ち抜いて得た打ち抜き片を、そのままPCRミックスに加えてPCRを行った以外は、上記と同様にして、増幅産物を得られるか、及び、得られた増幅産物をDraIにより処理してRFLP法によりSMN1遺伝子及びSMN2遺伝子の有無が確認できるか、を検討した。なお、当該検討に用いた前記打ち抜き片は健常人由来乾燥濾紙血から調製したものであり、また当該検討に用いたPCRミックスの組成は次の通りである。2×PCR Buffer for KOD FX Neo 25μL、2mM dNTPs 10μL、Forward primer(R111) 1.5μL、Reverse primer(X7−Dra) 1.5μL、KOD FX Neo 1μL、前記打ち抜き片1個、dHO 9μL。また、PCRサイクルは、30、35、又は40サイクルとして検討した。
結果を図6bに示す。図6bにおいて、(1)及び(2)はそれぞれ図6aの(A)及び(B)に相当しており、すなわち(1)はpre-amplified productsのアガロース電気泳動結果を、(2)はDraI-digested productsのアガロース電気泳動結果を、それぞれ示す。
図6bから分かるように、核酸抽出操作を行わずとも、血を染みこませ乾燥させた乾燥濾紙の血存在部分の打ち抜き片を直接PCRミックスに加えてPCRを行うことにより、増幅断片得ることができ、且つ当該増幅断片についてRFLP法によりSMN1遺伝子及びSMN2遺伝子の有無が確認できた。
SNP識別プライマー及びRFLP法による、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子間のSNPの検出
健常人1(SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子を有する)、健常人2(SMN1遺伝子を有するがSMN2遺伝子が欠損)、及びSMN患者3(SMN2遺伝子を有するがSMN1遺伝子が欠損)、の3人から採取した血液を乾燥濾紙にスポットし乾燥濾紙血とした。
上記に記載の方法と同様にして、当該乾燥濾紙血からDBS−DNAを抽出し、これをテンプレートとして、プライマーR111及びプライマーX7−Draを用いてPCR行い増幅産物(189bp)を得た。
当該増幅産物(189bp)をテンプレートとして、2種類のプライマーセット(「プライマーR111及びプライマーSMN1−COP」及び「プライマーR111及びプライマーSMN2−COP」)によるPCRを、別反応系(別チューブ)で行った(別反応系で行わない場合、目的外の増幅が増加し、SNPが検出できない)。なお、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子含有領域の増幅を行わず、DBS−DNAをそのままテンプレートとして、当該2種類のプライマーセットによるPCRについても、別反応系(別チューブ)で行った。
さらに、採取した血液から直接抽出したゲノムDNA(抽出にはセパジーンキット(エーディア株式会社)を使用)をテンプレートとして、当該2種類のプライマーセットによるPCRについても、別反応系(別チューブ)で行った。
これらのPCR産物をアガロース電気泳動した。結果を図7に示す。乾燥濾紙血から抽出したDBS−DNAをPCRのテンプレートに用いた場合には非特異的増幅が生じてしまう一方、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子含有領域を先に増幅させ、当該増幅産物をPCRの概要のテンプレートに用いることで、特異的な増幅のみが得られ、SMNの正確な診断が可能となることが分かった。
SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子含有領域の事前増幅産物をテンプレートとしたリアルタイムPCR
上記の通り、当該乾燥濾紙血から抽出したDBS−DNAにおいて特定領域(上記検討においては、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子含有領域)をPCRで増幅し、当該増幅産物をテンプレートとしてSNP識別プライマー(上記検討においては、プライマーSMN1−COP及びプライマーSMN2−COP)を用いて別反応系でPCRを行うことで、非特異的増幅が抑制され正確なSNP検出が可能となることが分かったため、当該事前増幅産物をテンプレートとしSNP識別プライマーを用いてリアルタイムPCRを行うことで、さらに検出速度を高めることを検討した。
リアルタイムPCRは、Light cycler 96 Real−time PCR system (Roche Molecular Systems, Inc)を用いて行った。より詳細には、1.5μlの20×EvaGreen Dye(Biotium, Hayward, CA, USA)をPCRミックスに追加(その分、水を減少)して、上記と同様の条件でPCRを行った。
なお、上述した4種類の乾燥濾紙血(グループA〜D;保存期間1年又は5年)から得たDBS−DNAを、プライマーR111及びプライマー541C770を用いたPCRにより事前増幅した増幅産物をテンプレートして用いた。リアルタイムPCRはプライマーR111及びプライマーSMN1−COP、あるいは、プライマーR111及びプライマーSMN2−COPを用いて、別反応系(別チューブ)で行った。結果を図8に示す。図8のサンプル番号は図6aのサンプル番号と同じである。当該結果から、リアルタイムPCRによっても、乾燥濾紙血を用いて、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子間のSNPを検出できること、ひいてはSMN患者を識別できること、がわかった。
また、プライマーR111及びプライマーX7−Draを用いたPCRにより事前増幅した増幅産物をテンプレートして用いた以外は、上記と同様にして、リアルタイムPCRを行った。この場合にも、図8の結果と同様、SMN1遺伝子については、グループA、B、及びCにおいて増幅が見られ、またSMN2遺伝子については、グループA、B、及びDで増幅が見られた。
ただし、その増幅カーブの立ち上がりが図8よりは遅れていた。より詳細には、図8の結果ではカーブの立ち上がりは約10〜15サイクルあたりに存在するのに対し、当該検討ではカーブの立ち上がりは約30サイクルあたりに存在した。これは、プライマーR111及びプライマーX7−Draを用いて得た事前増幅産物のプライマーX7−Dra端側の塩基配列が、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子の塩基配列ではなく、プライマーX7−Draの塩基配列になっているために、プライマーSMN1−COP及びプライマーSMN2−COPと増幅産物とのアニーリングにおける塩基ミスマッチが1塩基増えてしまった(図9参照)ために、リアルタイムPCRにおける増幅のために多くのサイクル数が必要になったことが原因であると考えられた。
そこで、プライマーX7−Draを用いて得た事前増幅産物のプライマーX7−Dra端側に塩基ミスマッチが無いプライマーを設計し、これをSNP識別プライマーとして用いて、再度リアルタイムPCRを行った。
詳細には、図10に示すように、新たにプライマーSMN1−COP−Dra及びプライマーSMN2−COP−Draを作成し、プライマーX7−Draを用いて得た事前増幅産物をテンプレートとしてリアルタイムPCRを行った。なお、図10には、参考のため、プライマーR111、プライマーX7−Dra、プライマーSMN1−COP及びプライマーSMN2−COPの塩基配列も併せて示す。当該リアルタイムPCRの結果を、図11及び図12に示す。
図11に示されるように、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子の両方を有する健常人の乾燥濾紙血を用いた場合にはいずれの遺伝子も増幅され、SMN1遺伝子を有するがSMN2遺伝子を欠損した健常人の乾燥濾紙血を用いた場合はSMN1遺伝子のみが増幅され、SMN2遺伝子を有するがSMN1遺伝子を欠損したSMN患者の乾燥濾紙血を用いた場合には、SMN2遺伝子のみが増幅され、しかも増幅が見られた場合にはいずれも10〜15サイクル程度で増幅カーブの立ち上がりが見られた。
図12には、プライマーSMN1−COP及びプライマーSMN2−COPを用いて、プライマーX7−Draを用いて得た事前増幅産物をテンプレートとしてリアルタイムPCRを行った結果も併せて示す。リバースプライマーとして、プライマーSMN1−COP−Dra及びプライマーSMN2−COP−Draを用いた場合には、増幅カーブの立ち上がりが比較的早い(10〜15サイクル)ことが分かった。なお、図12の結果は、いずれも、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子の両方を有する健常人の乾燥濾紙血を用いた検討の結果である。
また、SMN2遺伝子を有するがSMN1遺伝子が欠損した患者3名と、健常者(SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子を有する)3名との、合計6名由来乾燥濾紙血から抽出した各DBS−DNA(サンプル1〜6)をテンプレートとして、プライマーR111及びプライマー541C770を用いてPCRを行ったところ、得られた増幅産物量が少ない場合があった(図14a左側[シングルPCR])。そこで、当該増幅産物をテンプレートとして、プライマーR111及びプライマーX7Draを用いてPCR(ネストPCR)を行い、増幅産物を更に増やした(図14a右側)。
シングルPCRでの増幅産物、及びネストPCRの増幅産物をテンプレートとして、プライマーSMN1−COP−Dra及びプライマーSMN2−COP−Draを用い、リアルタイムPCRを行った。リアルタイムPCRはプライマーR111及びプライマーSMN1−COP−Dra、あるいは、プライマーR111及びプライマーSMN2−COP−Draを用いて、別反応系(別チューブ)で行った。結果を図14bに示す。シングルPCRで得られた少量の増幅産物をテンプレートとして用いた場合には、リアルタイムPCRでの増幅カーブの立ち上がりによりSNP識別が難しかったが(図14b左側)、ネストPCRで得られた更に増量された増幅産物をテンプレートとして用いた場合には、リアルタイムPCRでの増幅カーブの立ち上がりによりSNP識別が可能であった(図14b右側:サンプル1、4、5はSMN1ポジティブでサンプル2、3、6はSMN1ネガティブである一方、全てのサンプルがSMN2ポジティブであった。)。このことから、SNPを含む領域の増幅核酸断片が、一度の増幅反応では少量しか得られない場合には、その増幅産物をテンプレートして再度増幅反応を行い、SNPを含む領域の増幅核酸断片を更に増やすことで、SNP識別の精度を上げられることが分かった。
以上のことから、プライマーX7−Draを用いて得た事前増幅産物をテンプレートとし、SNP識別プライマーを用いてリアルタイムPCRを行うことでSMN1遺伝子及びSMN2遺伝子間のSNPを検出できること、また、SNP識別プライマーとして、SNP塩基以外は事前増幅産物と塩基ミスマッチの無いプライマー(プライマーSMN1−COP−Dra及びプライマーSMN2−COP−Dra)を用いることで、リアルタイムPCRの増幅立ち上がりをより早くできること、がわかった。さらには、当該事前増幅産物をDraIで処理することにより、RFLP法によってもSMN1遺伝子及びSMN2遺伝子間のSNPを検出できることもわかった。このため、大規模なリアルタイムPCRによる一次スクリーニング(全出生児の乾燥濾紙血を用いた事前増幅及びリアルタイムPCR)において、リアルタイムPCRの増幅の有無及び/又は型が判断できないような場合(例えば、増幅立ち上がりが少しだけ観察されるような場合)に、事前増幅産物をDraIで処理してRFLP法により、迅速かつ確実にSMN1遺伝子及びSMN2遺伝子の有無及び/型を検出することができる。

Claims (13)

  1. 乾燥濾紙血中の核酸からSNP(一塩基多型)を検出する方法であって、
    (B)乾燥濾紙血中の核酸のSNPを含む領域の増幅核酸断片を鋳型とし、SNP識別プライマーを用いて、各SNP識別プライマー毎にPCRを別反応系で行う工程
    を含む、方法。
  2. SNPを含む領域の増幅核酸断片が、当該SNPの有無をRFLP(Restriction Fragment Length Polymorphism:制限酵素断片長多型)法で識別できる核酸断片である、請求項1に記載の方法。
  3. 乾燥濾紙血中の核酸からSNPを検出する方法であって、
    (A)乾燥濾紙血中の核酸のSNPを含む領域をPCRにより増幅する工程、及び
    (B)当該増幅核酸断片を鋳型とし、SNP識別プライマーを用いて、各SNP識別プライマー毎にPCRを別反応系で行う工程
    を含む、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 工程(A)におけるPCRに用いるプライマーが、検出対象SNPの有無をRFLP法で識別できる核酸断片を増幅するプライマーである、請求項3に記載の方法。
  5. 乾燥濾紙血からSMN1遺伝子及びSMN2遺伝子を検出する方法であって、
    (b)乾燥濾紙血中の核酸のSMN1遺伝子及びSMN2遺伝子を含む領域の増幅核酸断片を鋳型とし、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子間のSNP(SMN1:c.840C, SMN2:c.840T)を識別するプライマーを用いて、各SNP識別プライマー毎にPCRを別反応系で行う工程
    を含む、方法。
  6. 前記増幅核酸断片が、前記SNPの有無をRFLP法で識別できる核酸断片である、請求項5に記載の方法。
  7. 乾燥濾紙血からSMN1遺伝子及びSMN2遺伝子を検出する方法であって、
    (a)乾燥濾紙血中の核酸のSMN1遺伝子及びSMN2遺伝子を含む領域をPCRにより増幅する工程、及び
    (b)当該増幅核酸断片を鋳型とし、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子間のSNP(SMN1:c.840C, SMN2:c.840T)を識別するプライマーを用いて、各SNP識別プライマー毎にPCRを別反応系で行う工程
    を含む、請求項5又は6に記載の方法。
  8. 工程(a)におけるPCRに用いるプライマーが、前記検出対象SNPの有無をRFLP法で識別できる核酸断片を増幅するプライマーである、請求項7に記載の方法。
  9. 前記検出対象SNPの有無をRFLP法で識別できる核酸断片を増幅するプライマーが、以下の条件(i)を満たすプライマーである、請求項8に記載の方法。
    (i):プライマーを用いたPCR増幅産物において、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子間のSNP(SMN1:c.840C, SMN2:c.840T)が、少なくとも1種の制限酵素の認識配列に含まれており、当該制限酵素によって一方の遺伝子は切断されるがもう一方の遺伝子は切断されない。
  10. 前記検出対象SNPの有無をRFLP法で識別できる核酸断片を増幅するプライマーが、3’末端から3塩基はすべてTであり、4塩基目以降の塩基配列が、SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子cDNA配列の844塩基目以降の塩基配列とアニーリング時ミスマッチ10%以下である、全長15〜50塩基長の核酸である、
    請求項8又は9に記載の方法。
  11. SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子間のSNP(SMN1:c.840C, SMN2:c.840T)を識別するプライマーが、c.840Cを含む領域は増幅するがc.840Tを含む領域は増幅しないプライマー、及び、c.840Tを含む領域は増幅するがc.840Cを含む領域は増幅しないプライマー、である、請求項5〜10のいずれかに記載の方法。
  12. SMN1遺伝子は増幅するがSMN2遺伝子は増幅しないプライマーが、
    TGTCTGAAACC、又はTGTTTGAAACCで示される塩基配列からなる核酸であり、
    SMN2遺伝子は増幅するがSMN1遺伝子は増幅しないプライマーが、
    TTGTCTAAAACC、又はTTGTTTAAAACCで示される塩基配列からなる核酸である、
    請求項11に記載の方法。
  13. 以下の(I)、(II)、及び(III)のプライマーのうち、
    少なくとも1つのプライマーを備えるか、
    少なくとも2つのプライマーを備えるか、あるいは
    全てのプライマーを備える、
    乾燥濾紙血からSMN診断を行うためのキット。
    (I):SMN1遺伝子は増幅するがSMN2遺伝子は増幅しないプライマー
    (II):SMN2遺伝子は増幅するがSMN1遺伝子は増幅しないプライマー
    (III):SMN1遺伝子及びSMN2遺伝子間のSNP(SMN1:c.840C, SMN2:c.840T)の有無をRFLP法で識別できる核酸断片を増幅するプライマー
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