JP6850402B1 - Smn1遺伝子の検出又は定量方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明では、乾燥ろ紙血を用いて、直接リアルタイムPCRによりSMN1遺伝子を検出する方法において、SMN1遺伝子に特異性が高く、かつSMN2遺伝子に対する反応が、SMN1遺伝子に対する反応より極めて低くなるようなプライマーを設計し、これを用いることによりSMN1遺伝子の欠失の有無を検定可能なSMN1遺伝子検出及び定量方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
<1>
乾燥ろ紙血中のSMN1遺伝子をリアルタイムPCRにより検出する方法であって、下記(A)〜(D)の工程を含む、前記検出方法。
(A)PCR反応用チューブに前記乾燥ろ紙血を添加する工程
(B)PCR反応用のチューブにPCR試薬を添加する工程であって、PCR試薬は少なくともSMN2遺伝子への反応がSMN1遺伝子の1%未満となるように設計されたプライマー、ポリメラーゼ、dNTP及びインターカレーター若しくは蛍光標識プローブを含む工程
(C)PCR試薬と前記乾燥ろ紙血を添加したチューブ内でPCR反応を行う工程
(D)PCR反応により増幅されたSMN1遺伝子中の標的核酸を経時的に光学的に検出する工程
<2>
SMN2遺伝子への反応が、SMN1遺伝子の1%未満となるように設計されたプライマーが以下の(1)のフォワードプライマー及び(2)のリバースプライマーからなる群から選ばれる1以上のプライマーである<1>に記載の検出方法。
(1)配列番号1〜9のいずれかの塩基配列からなるフォワードプライマー
(2)配列番号16〜21のいずれかの塩基配列からなるリバースプライマー
<3>
乾燥ろ紙血が、直径1.2mm〜2.0mmの円形のパンチ片又は全血を全反応溶液量に対して0.95v/v%〜6.6v/v%を含むパンチ片である、<1>又は<2>に記載の検出方法。
<4>
SMN1遺伝子を特異的に検出するためのプライマーであって、以下の(1)のフォワードプライマー及び(2)のリバースプライマーからなる群から選ばれる1以上のプライマー。
(1)配列番号1〜9のいずれかの塩基配列からなるフォワードプライマー
(2)配列番号16〜21のいずれかの塩基配列からなるリバースプライマー
<5>
乾燥ろ紙血中のSMN1遺伝子をリアルタイムPCRにより検出する方法における、SMN2遺伝子への反応性を弱める方法であって、以下の(1)のフォワードプライマー及び
(2)のリバースプライマーからなる群から選ばれる1以上のプライマーを用いる前記方法。
(1)配列番号1〜9のいずれかの塩基配列からなるフォワードプライマー
(2)配列番号16〜21のいずれかの塩基配列からなるリバースプライマー
したがって、症状が重篤化しやすく早い段階での治療開始が望まれている新生児スクリーニングに応用可能なSMN1遺伝子の迅速な検出・定量系を提供することができる。
本発明のSMN1遺伝子特異的プライマーは、SMN1遺伝子を特異的に増幅し、SMN2遺伝子を増幅しにくいように設計されたプライマーである。すなわち、SMN2遺伝子への反応性が、SMN1遺伝子への反応性の1%未満となるように設計されたプライマーである。前記反応性は、次のように判定される。SMN1遺伝子とSMN2遺伝子の1反応当たりのコピー数が同じ場合のCq値が同じであることを反応性100%としたとき、SMN1遺伝子に比較してSMN2遺伝子の1反応当たりのコピー数が10倍多い場合のCq値が同じ時の反応性は10%となり、さらに100倍多い場合のCq値が同じ時の反応性は1%となる。この時、SMN1遺伝子のCq値の方が小さければ、反応性は1%未満と判定できる。なお、後述する実施例では、各プライマーと各増幅伸長温度との組み合わせ条件の中で、SMN1遺伝子100copy/反応のCq値から、SMN2遺伝子10、000copy/反応のCq値を差し引いた場合のΔCq値が−0.1未満の場合に、1%未満であると判定した。
さらに、本発明のプライマーを用いてPCR反応を行った場合、乾燥ろ紙血を検体として用いた場合にSMN2遺伝子への反応性がよりいっそう弱まることも見出した。
上記本発明のSMN1遺伝子特異的なフォワードプライマーとセットで用いられるリバースプライマーは、本発明のSMN1遺伝子特異的なリバースプライマーでもよく、また、上記20bp以上離れていることを条件にエキソン7やイントロン7の領域の一部と同一の塩基配列に相補的な配列を含むプライマーであってもよい。
このように、本発明のSMN1遺伝子特異的なフォワードプライマー又はSMN1遺伝子特異的なリバースプライマーの少なくとも1種を用いてPCRを行う際に、乾燥ろ紙血を検体として用いることで効果をより奏することができる。すなわち、SMN1遺伝子のエキソン7の該当領域を特異的に増幅することができ、SMN2遺伝子の該当領域をほとんど増幅しないため、SMN1遺伝子を特異的に検出又は定量することができる。増幅された核酸は、電気泳動やリアルタイムPCRなどにより定性、定量することが可能である。
本発明のSMN1遺伝子特異的なフォワードプライマー又はSMN1遺伝子特異的なリバースプライマーを用いてPCRを行った場合、SMN2遺伝子に対する反応性は、SMN1遺伝子に対する反応性の1%未満であることが後述する実施例により実証されている。
リアルタイムPCR法は、一般的に、PCRにおいて増幅産物の生成過程を経時的にモニタリングする方法を意味する。本発明において、リアルタイムPCRにより検出するとは、PCR反応の後に増幅されたSMN1遺伝子の標的核酸(以下、単に増幅産物ともいう)を光学的手段により検出することを意味する。なお、増幅産物の検出は、例えば、PCR反応終了時または終了後に行ってもよいし、PCR反応工程と並行して行ってもよい。並行して行う場合、増幅産物の検出は、例えば、経時的に行うことができる。経時的な検出(モニタリング)は、例えば、連続的であっても非連続的(断続的)であってもよい。
本発明のSMN1遺伝子の定量方法は、試料中のSMN1遺伝子の標的核酸に相補的な増幅産物を生成させ、前記増幅産物を光学的手段により検出して、前記増幅産物を定量する方法である。前記増幅産物が所定量となったPCRサイクル数をカウントすることによって、試料中に含まれる標的核酸を定量する方法ことができる。また、後述する実施例のように、標準品から算出されたCq値の検量線から試料中の全血1μLのコピー数を換算して定量することもできる。
本発明に用いられるPCR試薬は、少なくとも、プライマーのセット、ポリメラーゼ、dNTP(デオキシヌクレオシド三リン酸)各種、インターカレーター若しくは蛍光標識プローブを含む。また、典型的には当該試薬にはバッファーも含まれている。バッファーとしては、生物の体液中に存在する正電荷物質(ある種のタンパク質など)や負電荷物質(ある種の糖、色素など)などのDNA増幅反応を阻害する物質の作用を抑制する働きを持つバッファーであれば特に限定されない。市販されているものとして、例えば、Ampdirect、Ampdirect plus(ともに(株)島津製作所製)等が挙げられる。本発明に用いられるPCR試薬の反応用チューブへの添加量は、20〜50μLである。
本発明に用いられる試料は、乾燥ろ紙血とよばれる、ろ紙(フィルターペーパー)に血液を含ませた後に乾燥させたろ紙中の血液が好適である。乾燥ろ紙血は、穴あけパンチ工具によりパンチ穴形状の紙片(パンチ片)として取り出される。乾燥ろ紙血としては、例えば、新生児マス・スクリーニングなど新生児のかかとから採血したろ紙血、同時にオプショナルスクリーニングとして採血されたろ紙血などが用いられるがこれらに限定されない。乾燥ろ紙血から切り出されるパンチ片の大きさは、含まれる血液の量を適切な範囲とする必要があることから、一定サイズのパンチ片であることが望ましい。一定サイズのパンチ片としては直径は1.2〜2.0mmの円形のパンチ片が望ましく、1.5mm〜1.8mmの円形のパンチ片がよりいっそう望ましい。また、パンチ片に含まれる全血量としては、PCR全反応溶液量に対して0.95v/v%〜6.6v/v%が望ましく、1.4v/v%〜5.2v/v%がよりいっそう望ましい。なお、前記全血量は、直径1.2〜2.0mmの円形のパンチ片、直径1.5mm〜1.8mmのパンチ片を20〜50μLのPCR反応溶液に添加して血液を溶解した場合の割合を、実測値(全血30uLをパンチ片を切り取る前の濾紙に添加して乾燥させた時にできた円形血液部分の直径は9.5mmであった)をもとに算出した値として示している。
本発明に用いられるチューブは、PCR反応用のチューブであり、ろ紙血のパンチ片がスムーズに挿入でき、キャップにより密閉できる構造であればよい。また、チューブ上部の開口部が円形(例えば、内径2.5mm〜10mm程度)で底部が上部の開口部よりも狭くなっている形状が良く、逆円錐形などが好ましい。
上記チューブの容量は、PCR反応試薬を添加し、PCR反応による温度変化によっても反応溶液を十分に収容できる容量であればよく、0.1mL〜0.3mL容量が好ましく、さらに好ましくは0.15mL〜0.25mL容量、最も好ましくは0.2mL容量である。
本発明に用いるPCR反応用チューブは、チューブが96個連続しているPCR反応用96穴チューブ又は8個連続している8連チューブが好ましく、市販品としては、96ウェルPCRプレート、PCR8連チューブなどの名称で販売されているものを用いることができる。市販品としては、LightCycler (登録商標) 480 Multiwell Plate 96(ロッシュ社)、96-Well PCR Plate, Flat Top, Low Profile, Natural, Polypropylene, UltraFlux(Scientific Specialties, Inc.社)、エッペンドルフPCR プレート 96、スカートレス, 150 μL,カラーレス(エッペンドルフ社)、PCRプレート96well シンプレート0.1ml ナチュラル(BM機器社)、LightCycler 8-Tube Strips(ロッシュ社)などが挙げられる。
これらの反応用チューブの材質は、反応溶液のコンタミが少なく、また、PCR反応の温度変化による内部圧力変動によっても形状が変化しない剛性を有することが望ましく、例えばポリプロピレン製が挙げられる。
本発明のキットは、SMN1遺伝子をリアルタイムPCRにより特異的に検出するためのキットであって、以下の(1)のフォワードプライマー及び(2)のリバースプライマーからなる群から選ばれる1以上のプライマーを含むものであればよい。
(1)配列番号1〜9のいずれかの塩基配列からなるフォワードプライマー
(2)配列番号16〜21のいずれかの塩基配列からなるリバースプライマー
上記以外にそれぞれのプライマーとセットとして使用されるリバースプライマー又はフォワードプライマーを含むことができる。また、プローブ、その他のPCR、リアルタイムPCRに使用される試薬や容器を含むこともできる。
本実施例は、設計したプライマーのSMN1遺伝子及びSMN2遺伝子配列に対する反応性を比較した例である。
(a)試験材料
(a−1)SMN1遺伝子増幅用フォワードプライマー
SMN1遺伝子増幅用のフォワードプライマー(表1;配列番号1〜9)及び共通リバースプライマー(表1;配列番号10)をシグマ-アルドリッチ社に合成依頼したものを用いた。
PCR反応の鋳型として、下記に示すSMN1遺伝子及びSMN2遺伝子のエクソン7を含む部分配列をベクターに組み込んだプラスミドを、ユーロフィン社に合成依頼したものを用いた。下記配列番号11の下線部は、SMN1遺伝子のエクソン7の配列(54bp)を示し、その上流がイントロン6の部分配列であり、下流はイントロン7の部分配列を示す。配列番号12の下線部は、SMN2遺伝子のエクソン7の配列(54bp)を示し、その上流がイントロン6の部分配列であり、下流はイントロン7の部分配列を示す。
SMN1遺伝子のエクソン7の6番目はCであり、SMN2遺伝子のエクソン7の6番目はTである。
CAACTTAATTTCTGATCATATTTTGTTGAATAAAATAAGTAAAATGTCTTGTGAAACAAAATGCTTTTTAACATCCATATAAAGCTATCTATATATAGCTATCTATGTCTATATAGCTATTTTTTTTAACTTCCTTTATTTTCCTTACAGGGTTTCAGACAAAATCAAAAAGAAGGAAGGTGCTCACATTCCTTAAATTAAGGAGTAAGTCTGCCAGCATTATGAAAGTGAATCTTACTTTTGTAAAACTTTATGGTTTGTGGAAAACAAATGTTTTTGAACATTTAAAAAGTTCAGATGTTAAAAAGTTGAAAGGTTAATGTAAAACAATCAATATTAAAGAATTTTGATGCCAAAACTATTAGATAAAAGGTTAATCTACATCCCTACTAGAATTCTC
CAACTTAATTTCTGATCATATTTTGTTGAATAAAATAAGTAAAATGTCTTGTGAAACAAAATGCTTTTTAACATCCATATAAAGCTATCTATATATAGCTATCTATATCTATATAGCTATTTTTTTTAACTTCCTTTATTTTCCTTACAGGGTTTTAGACAAAATCAAAAAGAAGGAAGGTGCTCACATTCCTTAAATTAAGGAGTAAGTCTGCCAGCATTATGAAAGTGAATCTTACTTTTGTAAAACTTTATGGTTTGTGGAAAACAAATGTTTTTGAACATTTAAAAAGTTCAGATGTTAGAAAGTTGAAAGGTTAATGTAAAACAATCAATATTAAAGAATTTTGATGCCAAAACTATTAGATAAAAGGTTAATCTACATCCCTACTAGAATTCTC
PCR試薬の組成を以下に示す。
1×(終濃度)PCRバッファー(Ampdirect Plus;島津製作所社)
0.2μM(終濃度)SMN1遺伝子用フォワードプライマー(配列番号1〜9)
0.2μM(終濃度)共通リバースプライマー(配列番号10)
0.025U/μL(終濃度)BIOTAQ HSDNAポリメラーゼ
0.5×(終濃度) EvaGreen
SMN1遺伝子プラスミド (終濃度)100,000copy/反応、10,000copy/反応、1,000copy/反応、100copy/反応
SMN2遺伝子プラスミド (終濃度)100,000copy/反応、10,000copy/反応
(i)95℃:15分
(ii)95℃:15秒、61〜65℃:80秒(45サイクル)
(iii)37℃:5分
(e−1)測定方法
以下の手順で測定した。
(i)PCR試薬とプラスミドを、上記終濃度となるように混ぜ、その40μLを分注したPCRチューブを用意した。
(ii)サーマルサイクラー装置(CFX96;バイオラッド社)を用いて、リアルタイムPCR測定を行い、各プラスミド濃度のCq値を算出した。
(e−2)測定結果
結果を表2に示す。各プライマーと各増幅伸長温度との組み合わせ条件の中で、SMN2遺伝子への反応が、SMN1遺伝子の1%未満である組み合わせ、即ちSMN1遺伝子 100copy/反応のCq値から、SMN2遺伝子 10、000copy/反応のCq値を差し引いた場合のΔCq値が−0.1未満を満たす組み合わせは、11通りとなり、フォワードプライマーの配列番号1〜9では適用可能であった。
(f)試験材料
(f−1)SMN1遺伝子増幅用リバースプライマー
SMN1遺伝子増幅用のリバースプライマー(表3;配列番号14〜22)及び共通フォワードプライマー(表3;配列番号13)をシグマ-アルドリッチ社に合成依頼したものを用いた。
上記、(a−2)と同じプラスミドを用いた。
PCR試薬の組成を以下に示す。
1×(終濃度)PCRバッファー(AMpdirect Plus;島津製作所社)
0.2μM(終濃度)共有フォワードプライマー(配列番号13)
0.2μM(終濃度)SMN1遺伝子用リバースプライマー(配列番号14〜22)
0.025U/μL(終濃度)BIOTAQ HSDNAポリメラーゼ
0.5×(終濃度) EvaGreen
上記、(c)と同じプラスミド希釈系列を用いた。
上記、(d)と同じ条件で実施した。
(j−1)測定方法
以下の手順で測定した。
(i)PCR試薬とプラスミドを、上記終濃度となるように混ぜ、その40μLを分注したPCRチューブを用意した。
(ii)サーマルサイクラー装置(CFX96;バイオラッド社)を用いて、リアルタイムPCR測定を行い、各プラスミド濃度のCq値を算出した。
(j−2)測定結果
結果を表4に示す。各プライマーと各増幅伸長温度との組み合わせ条件の中で、SMN2遺伝子への反応が、SMN1遺伝子の1%未満である組み合わせ、即ちSMN1遺伝子 100copy/反応のCq値から、SMN2遺伝子 10、000copy/反応のCq値を差し引いた場合のΔCq値が−0.1未満を満たす組み合わせは、8通りとなり、リバースプライマーの配列番号16〜21では適用可能であった。
(a)試験材料
(a−1)SMN1遺伝子増幅用プライマー
SMN1増幅用のプライマーとして、下記のプライマーをシグマ-アルドリッチ社に合成依頼したものを用いた。
SMN1用特異的フォワードプライマー; 上記、表1の配列番号6
SMN1用共通リバースプライマー; 上記、表1の配列番号10
SMN1のPCR増幅を確認するためのプローブとして、蛍光標識を施した下記の検出プローブを、プライムテック社に合成依頼して作成したものを用いた。
SMN1用検出プローブ
5‘−(Quasar670)−GGAAGGTGCTCACATTCCTTAAATTAAGGA−(BHQ3)−3’(塩基配列部分は配列番号23)
PCR試薬の組成を以下に示す。
PCRバッファー(Ampdirect Plus;島津製作所社)
0.2μM (終濃度)SMN1用特異的フォワードプライマー
0.2μM (終濃度)SMN1用共通リバースプライマー
0.1μM (終濃度)SMN1用検出プローブ
0.025U/μL BIOTAQ HSDNAポリメラーゼ
上記(b)のPCR試薬にSMN1部分配列(配列番号11)が組み込まれたプラスミドを添加して、以下の標準品(希釈系列;STD1〜4)含有PCR試薬を調製した。かっこ内は、それぞれの遺伝子のPCR1反応あたりのコピー数を示す。本試薬は、乾燥ろ紙血に含ませることなく、溶液状態で用いられた。
STD1(SMN1 100,000copy/反応)、STD2(SMN1 10,000copy/反応)、STD3(SMN11000copy/反応)、STD4(SMN1100copy/反応)
上記(b)のPCR試薬にSMN2の部分配列(配列番号12)が組み込まれたプラスミドを、50,000copy/反応となるように添加して、SMN2クロス試験用PCR試薬を調製した。
白血球を除去したヒト赤血球画分とヒト血漿(EDTA)を、6:4の割合で混合した血液を、採血用ろ紙(アドバンテック社)に40μL染み込ませ、そのまま乾燥させたものを、DNA不含乾燥ろ紙血とした。すなわち、本乾燥ろ紙血にはSMN1とSMN2は含まれていない。
(i)95℃:15分
(ii)95℃:15秒、63℃:60秒(40サイクル)
(iii)37℃:5分
(g−1)測定方法
以下の手順で測定した。
(i)DNA不含乾燥ろ紙血から、パンチャーを用いて直径1.5mmの円形のパンチ片を採取した。対象として、採血用ろ紙(アドバンテック社)から、同じ大きさのパンチ片(空のパンチ片)を採取した。
(ii)PCR反応用のチューブ(ロッシュ社製:LightCycler8−TubeStrips、ポリプロピレン製)に上記それぞれのパンチ片を投入した。
(iii)前記PCR反応用のチューブに40μLのSMN2クロス試験用PCR試薬をそれぞれ加えた後、キャップ(前記チューブとセットになっているもの)をして密閉した。
(iv)検量線用標準品含有PCR試薬も、それぞれ40μLをチューブに分注したものを用意した(なおチューブにはパンチ片は含まれていない)。
(v)サーマルサイクラー装置(LightCycler96;ロッシュ社)を用いて、SMN1のリアルタイムPCR測定並びにSMN2へのクロス反応の検証を行った。
(i)検量線用標準品含有PCR試薬の増幅反応曲線を図1に示す。
SMN1 100copy/反応までは、良好に増幅することが確認された。
(ii) SMN2クロス試験用PCR試薬の増幅反応曲線の25〜40サイクルの部分を図2に示す。
DNA不含乾燥ろ紙血のパンチ片を共存させると、興味深いことに、空のパンチ片(血液を含まないパンチ片)を共存させた場合(図中実線)と比較して、増幅の立ち上がりがCq値として1程度遅れていることが確認された(図中点線)。この条件では、SMN2に対するクロス反応が、コピー数に換算すると約50%低下することになる。即ち、本発明においてSMN2遺伝子への反応性が、SMN1遺伝子への反応性の1%未満となるように設計されたプライマーを、乾燥ろ紙血を検体として用いた場合に、SMN2遺伝子への反応性が弱まることがわかった。すなわち、本発明のプライマーを用いてPCR反応を行った場合に、乾燥ろ紙血のパンチ片が当該反応系に存在することで、SMN2遺伝子へのクロス反応が、より低下することを見出した。
したがって、本発明によれば新生児のスクリーニング検査において、SMN1ホモ欠損であるSMA患者の見逃しのリスク(偽陰性)を低下させることにつながる。
なお、SMN1についても上記同様に試験を行ったところ、乾燥ろ紙血による増幅阻害は認められなかった(結果図示せず)。したがって、上記の乾燥ろ紙血の共存による増幅の立ち上がりが遅れる現象は、SMN2遺伝子の増幅反応における特有の現象であることがわかった。したがって、本願発明は、乾燥ろ紙血中のSMN1遺伝子をリアルタイムPCRにより検出する方法において、特定プライマーを用いることによりSMN2遺伝子への反応性を弱める方法とも言える。
Claims (2)
- 乾燥ろ紙血中のSMN1遺伝子をリアルタイムPCRにより検出する方法であって、下記(A)〜(D)の工程を含む、前記検出方法。
(A)PCR反応用チューブに前記乾燥ろ紙血を添加する工程
(B)PCR反応用のチューブにPCR試薬を添加する工程であって、PCR試薬は少なくとも以下の(1)のフォワードプライマー及び(2)のリバースプライマーからなる群から選ばれる1以上のプライマー、ポリメラーゼ、dNTP、及びインターカレーター若しくは蛍光標識プローブを含む前記工程
(C)PCR試薬と前記乾燥ろ紙血を添加したチューブ内でPCR反応を行う工程
(D)PCR反応により増幅されたSMN1遺伝子中の標的核酸を経時的に光学的に検出する工程
(1)配列番号1〜9のいずれかの塩基配列からなるフォワードプライマー
(2)配列番号16〜21のいずれかの塩基配列からなるリバースプライマー - 乾燥ろ紙血が、直径1.2mm〜2.0mmの円形のパンチ片又は全血を全反応溶液量に対して0.95v/v%〜6.6v/v%を含むパンチ片である、請求項1に記載の検出方法。
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