JPWO2019069736A1 - 電子線硬化型表刷り用水性フレキソインキ、及びそれを用いたボイル・レトルト用パウチ - Google Patents
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Abstract
Description
近年、共働き世帯数および単身世帯数の増加など近年のライフスタイルの変化により、食品用パウチ、たとえばスナック包装用のガス置換パウチ,加熱処理に対応したボイル用パウチ、加熱加圧処理対応のレトルトパウチなどが挙げられるが、中でもボイル・レトルト食品用パウチの消費量は年々増加している。
ボイル・レトルトパウチの例としては、カレー、ハンバーグ、パスタソース、スープ、どんぶりの具等の飲食品用の包材が挙げられ、ボイルパウチは、例えば90℃〜98℃程度の温度で30分〜60分程度の加熱処理がなされ、レトルトパウチは、例えば加圧条件下110℃〜130℃程度の温度で、約20〜60分間程度の加熱加圧処理がなされる。
そのため、ボイル・レトルトパウチに使用するインキに対しては、上記の加熱加圧試験に耐えうること、輸送・保存中に印刷が欠損しないための耐摩性等の耐久性も求められる。現行のボイル・レトルトパウチには,溶剤型インキを用いた裏刷り印刷物を溶剤型接着剤で貼り合わせたラミネート包材を用いるのが一般的だが、食への安全性と環境への意識の高まりから、より安全で環境負荷の低い構成から成る包材への転換が期待されている。
さらに水性または溶剤型インキ、溶剤型または無溶剤型接着剤の組み合わせに関わらず、耐摩性等のインキの耐久性の観点から、裏刷り印刷後にラミネート加工を実施する必要があり、ラミネート加工後のエージング工程を欠くことができず、印刷後ただちに加工・充填工程に移ることはできない。そのため、従来の裏刷り印刷を用いたボイル・レトルト包材では短納期化に限界があった。
従来最もよく知られた層構成は、例えば基材のポリプロピレンフィルムに接着剤を用いてアルミ箔を貼り合わせ、さらにアルミ箔をポリエチレンテレフタレート(以後PETと称する場合がある)フィルムと貼り合わせる複合フィルムである。
該複合フィルムに印刷層を設けてある場合は、上層からPETフィルム/溶剤型裏刷り用インキ層/接着剤層(エージング要)/アルミ箔やアルミ蒸着フィルム層/接着剤層/ポリプロピレン基材フィルムの順であることが多く(以後「PETフィルム/溶剤型裏刷り用インキ層」までを上層と称し、「アルミ箔やアルミ蒸着フィルム層/接着剤層/ポリプロピレン基材フィルム」までを下層と称する場合がある。)、その製造方法は、PETフィルムへ溶剤型裏刷り用インキを用いて裏刷り印刷し、その後接着剤を塗布し、アルミ箔やアルミ蒸着フィルムと貼り合わせるのが一般的である。なお下層即ち「アルミ箔やアルミ蒸着フィルム層/接着剤層/ポリプロピレン基材フィルム」が一体型となっている高機能フィルムがありそれを利用する場合もある。下層のポリプロピレン基材フィルムはこれに限定されず他のオレフィン系フィルムを使用する場合もある。
一般的な加工手順は、溶剤型裏刷り用インキによる裏刷り印刷後、接着剤を塗布して必要な他のフィルムとラミネートし、必要に応じたエージングを施して複合フィルムを製造したのち、該複合フィルムを製袋したレトルトパウチ包装体を得る。これに内容物を充填工程しレトルトパウチ包装となる。
一方本願では、予め準備された、印刷層以外の全ての層が積層された積層フィルムの表面に、耐水性、耐熱性、耐摩性に優れる電子線(EB)硬化型表刷り用水性インキを使用し印刷できるので、従来の裏刷り印刷後ラミネート工程を有する包材の製造工程と比較し、印刷から製袋・充填までの工程を大幅に短縮することが出来る。
このような工程時間の短縮による短納期化や在庫削減に加え、減層・減容化による大幅なコストダウンも期待できる。さらにフレキソ印刷は高速印刷が可能であるため、より高い生産性を実現することができる。
また、本発明の電子線硬化型表刷り用水性フレキソインキを設けた表刷り印刷層の上に、更に電子線(EB)硬化型オーバープリントニス層をロールコーター等で塗布し、電子線(EB)硬化させれば、耐摩耗性・表面の光沢等がさらに向上させる事が出来る。
前記水性樹脂(X)としては、アクリル酸あるいはメタクリル酸とそのアルキルエステル、あるいはスチレン等を主なモノマー成分として共重合した水性アクリル系樹脂、水性スチレン−アクリル系樹脂、水性スチレン−マレイン酸系樹脂、水性スチレン−アクリル−マレイン酸系樹脂、水性ポリウレタン系樹脂、水性ポリエステル系樹脂などの各種バインダー樹脂の水溶型または分散型(エマルジョンおよびディスパージョン)樹脂が好適な例として例示できる。ウレタン樹脂ビーズ又はビーズを水系の溶剤に分散したものや(分散物とも呼ぶ。又、ウレタン樹脂分散物、脂肪族ポリウレタン分散物等、含む)、水系脂肪族ポリウレタンディスパージョンを用いることができる。基材への密着性,ロングラン印刷適性等の観点から,前記樹脂の中でも水性ポリウレタン樹脂が好ましい。
また、更にインキ化した際のインキの臭気、包材としてのマイグレーションの観点から、非反応性水性ウレタン樹脂である事が好ましい。また、(メタ)アクリロイル基を有する反応性水性ウレタン樹脂と混合して用いてもよい。
水性樹脂(X)は市販品を用いてもよい。その場合、水性樹脂のディスパージョンやエマルジョンとして入手が可能である。
水溶性(メタ)アクリレートの具体例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド(略称:HEAA)、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシメチル)メタクリルアミド、アクリロイルモルホリン、メチロールアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、メトキシメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等を挙げることができるが、これらに限定される訳ではない。
水溶性(メタ)アクリルモノマー、水溶性(メタ)アクリルオリゴマーはそれぞれ単独で用いても、混合して用いてもよい。中でも、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
より望ましくは(X)/(Y)=7/100〜250/100であり、更に望ましくは、(X)/(Y)=7/100〜50/100の範囲であり、最も望ましくは、(X)/(Y)=7/100〜25/100の範囲である。
この質量比率に関して、水性樹脂は電子線照射後のインキ皮膜の柔軟性付与や基材への密着性向上に有効であるが、水性樹脂部の比率が多くなるとインキ塗膜中の二重結合濃度が低下し、硬化不良、耐摩擦性不良、耐熱性不良、耐水性不良等の懸念が高まる傾向にある。
なお、前記水性樹脂(X)が市販品の場合は、水性樹脂のディスパージョンやエマルジョンとなっていることが殆どであるが、この場合は該水性樹脂のディスパージョンやエマルジョンの乾燥固形分を採用する。
前記顔料の総計はインキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわちインキの総重量に対して1〜50質量%の割合で含まれることが好ましい。また、着色剤は単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
前記溶剤としては、水単独または水と混和する有機溶剤を使用することができる。有機溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール等のアルコール類やプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチルカルビトール等のエーテル類等がある。
本発明の電子線硬化型表刷り用水性フレキソインキは、その粘度が離合社製ザーンカップ#5を使用した場合、25℃にて5〜35秒であればよく、より好ましくは8〜20秒である。ミリパスカル秒で粘度を示すと、25℃にて100〜1000(mPa・s)の範囲であればよく、より好ましくは180〜600(mPa・s)の範囲である。
また、本発明の電子線硬化型表刷り用水性フレキソインキの25℃における表面張力は、25〜50mN/mが好ましく、33〜43mN/mであればより好ましい。該インキの表面張力が低いほどフィルム等の基材へのインキの濡れ性は向上するが、表面張力が25mN/mを下回ると該インキの濡れ広がりにより、中間調の網点部分で隣り合う網点どうしが繋がり、ドットブリッジと呼ばれる印刷面の汚れの原因となる傾向にある。一方、該インキの表面張力が50mN/mを上回ると、フィルム等の基材へのインキの濡れ性が低下しやすく、ハジキの原因となる傾向にある。
基材フィルムとしては、ナイロン(Ny)6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、PET、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリ乳酸等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)等の脂肪族ポリエステル系樹脂に代表される生分解性樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂またはそれらの混合物等の熱可塑性樹脂よりなるフィルムやこれらの積層体が挙げられるが、中でも、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンからなるフィルムが好適に使用できる。これらの基材フィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでも良く、その製法も限定されるものではない。また、基材フィルムの厚さも特に限定されるものではないが、通常は1〜500μmの範囲であればよい。
また、基材フィルムの印刷面には、コロナ放電処理がされていることが好ましい。また、シリカ、アルミナ等が蒸着されていてもよい。
EB硬化方法は、印刷したインキ層がそのままインキ皮膜として形成され、紫外線硬化と異なり光重合開始剤を含まないEB硬化性組成物では、設計した組成物の性質がそのままインキ皮膜の性質に反映され、EB硬化により完全に重合したインキ皮膜は、光重合開始剤などの低分子成分をほとんど含まないため、無臭又は低臭気を特徴とする。
また、EB硬化処理の場合、照射物に与える熱の影響が小さいため、薄手のフィルムに対する熱によるゆがみ、しわ、変形等が殆ど生じない。また、EB硬化処理ではライン速度毎分数10〜400メートルあるいはそれ以上の高速処理が可能であり、紫外線硬化処理では発熱を抑制しながら同等の効果は得られない。更にUVランプの場合、使用時間の経過と共に光源の劣化が進み、光量が低下する事が避けられないのに対し、EB装置ではビーム電流制御により常に一定の出力を保持する事が出来る。
使用する電子線のエネルギー強度としては30,000〜300,000eVであり、照射線量が5〜100kGy・m/min.(キログレイ)である事が好ましい。
尚、前記「電子線硬化型水性インキ層」の上層に更に「電子線硬化型水性OPニス層」を設けるべく、印刷後にロールコーター等でニス引きした場合、インキ層とOPニス層を
前記電子線にて同時に電子線硬化させる事ができる。
水性樹脂(X)、エチレン性二重結合を有する電子線重合性化合物(Y)、顔料、及び水を含有する電子線硬化型表刷り用水性フレキソインキとして、表1の組成によるフレキソインキを調整した。
インキ1を例にとると、DIC社製藍顔料分散ベース(WFJ R507 原色藍ベース、フタロシアニン顔料を分散ベースに対し40質量%含む)と、非反応性ウレタンディスパージョンと、脂肪族エポキシアクリレートと、(BASF社製Laromar LR8765)ポリエチレングリコールジアクリレートと、消泡剤(BYK製 BYK−019) とを表1に示す部数に従い十分に撹拌混合した後、粘度をザーンカップ#5(離合社製)で12秒(25℃)となる様に水で調整し、印刷インキ(インキ1)を得た。該水量は、表中「残部」と示す。
水性樹脂(X)
非反応性のウレタンディスバージョン(不揮発分39質量%)
エチレン性二重結合を有する電子線重合性化合物(Y)
ウレタンアクリレート(ダイセル社製水系UV硬化型樹脂 固形分35%)
脂肪族エポキシアクリレート(BASF社製Laromar LR8765)
ポリエチレングリコールジアクリレート
顔料
藍ベース(DIC社製WFJ R507 原色藍ベース フタロシアニン顔料を分散ベースに対し40質量%含む)
墨ベース(DIC社製WFJ R805 墨ベース 墨ベースカーボンブラックを分散ベースに対し40質量%含む)
あらかじめラミネート済みの上層から「コロナ処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム/接着剤層/アルミ箔/接着剤層/ポリプロピレン基材フィルム」の順で構成されたボイル・レトルト包材用積層フィルムを準備した上で、前記製造方法で得たインキ1〜5をCI型6色フレキソ印刷機(SOLOFLEX、Windmoeller & Hoelscher製)を用いて、それぞれ表刷り印刷した。
また、該表刷り印刷後に、EB硬化型OPニスを塗布印刷する場合は、前記インキ1〜5の各々のインキを印刷後、DIC社製EB硬化型OPニス(WFJ M1000ニス)を塗布印刷し、電子線照射を行った。
印刷後、直ちにEB装置を使用しエネルギー強度が80,000eV、照射線量が60kGy・m/min.(キログレイ)にて電子線照射を行った。
なお、インキに使用される顔料によって照射線量が異なるため、藍ベース(DIC社製WFJ R507 原色藍ベース)を使用したインキ1,2,4,5の硬化では、アニロックス線数(line/cm)を315、セルボリューム(cm3)を4.5とした。同様に、墨ベース(DIC社製WFJ R805 墨ベース)を用いた場合と、顔料を含まないOPニスの場合とのアニロックス線数(line/cm)とセルボリューム(cm3)とを表2に示す。
以後、印刷済みのボイル・レトルト包材用積層フィルムを、「印刷済み積層フィルム」と称す。
印刷済み積層フィルムの印刷面に、ニチバンのセロファンテープ18mm幅を密着させたのち、セロファンテープを垂直方向に勢いよく引き剥がし、インキの剥離度合いを目視評価した。
◎:まったく剥離が見られない
○:ごくわずかに剥離が見られる
△:一部で剥離が見られる
×:かなりの範囲で剥離する
印刷済み積層フィルムの印刷面に、学振型耐摩試験機(大栄科学精器製作所製) を用い、荷重200g、100往復の条件にて耐摩耗性試験を行い、インキ塗膜表面の傷つきの程度により評価した。
尚、試験は印刷面同士の摩擦試験にて行った。
◎:傷つきなし
〇:ごく軽微な傷つきがある
△:かなりの範囲で傷つきがある
×:全面で傷つきがある
印刷済み積層フィルムを、12cm×12cmの大きさのパウチに製袋し、そこへ、食酢、サラダ油、ミートソースを重量比で1:1:1に配合した疑似食品40gを充填密封したものを、98℃熱水中に、60分間のあいだ浸漬せしめるということによって、ボイル処理を行ない、その後、すぐに、印刷済み積層フィルム上の印刷物の状態の変化を観察した。
◎:変化が全くない
○:わずかに変化している
△:かなりの範囲で変化している
×:全面で変化している
印刷済み積層フィルムを、120mm×120mmの大きさのパウチに製袋し、内容物として、食酢、サラダ油、ミートソースを重量比で1:1:1に配合した疑似食品40gを充填密封した。作成したパウチを120℃、30分間の蒸気レトルト殺菌処理をした後、その後、すぐに、印刷済み積層フィルム上の印刷物の状態の変化を観察した。
◎:変化が全くない
○:わずかに変化している
△:かなりの範囲で変化している
×:全面で変化している
Claims (9)
- 水性樹脂(X)、エチレン性二重結合を有する電子線重合性化合物(Y)、顔料、及び水を含有する電子線硬化型表刷り用水性フレキソインキであって、
前記水性樹脂(X)の固形分とエチレン性二重結合を有する電子線重合性化合物(Y)固形分の質量比が、(X)/(Y)=5/100〜400/100の範囲であることを特徴とする電子線硬化型表刷り用水性フレキソインキ。 - 前記エチレン性二重結合を有する電子線重合性化合物(Y)が、水溶性(メタ)アクリルモノマー及び/又は水溶性(メタ)アクリルオリゴマーである請求項1に記載の電子線硬化型表刷り用水性フレキソインキ。
- 前記エチレン性二重結合を有する電子線重合性化合物(Y)が、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートである請求項1又は2に記載の電子線硬化型表刷り用水性フレキソインキ。
- 前記水性樹脂(X)が、非反応性水性ウレタン樹脂である請求項1〜3の何れか1つに記載の電子線硬化型表刷り用水性フレキソインキ。
- 前記電子線のエネルギー強度が30,000〜300,000eVであり、照射線量が5〜100kGy・m/min.(キログレイ)である請求項1〜4のいずれか1つに記載の電子線硬化型表刷り用水性フレキソインキ。
- プラスチックフィルムに請求項1〜5のいずれか1つに記載の電子線硬化型表刷り用水性フレキソインキを、フレキソ印刷機を用いて印刷してなる印刷物。
- 請求項6記載の印刷物と、基材とをラミネート接着剤を介してラミネートしてなる積層体。
- 請求項6記載の印刷物と、基材とをラミネート接着剤を介してラミネートしてなるボイル用パウチ。
- 請求項6記載の印刷物と、基材とをラミネート接着剤を介してラミネートしてなるレトルト用パウチ。
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