JPWO2019065565A1 - 積層シート - Google Patents

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Abstract

本発明は、制振層とポリカーボネート層とが積層されている積層シートに関するものであって、(1)該制振層が積層シートの表面及び/又は表面近傍に存在し、(2)該制振層が、ジカルボン酸成分とジオール成分とを含む成分から構成される熱可塑性ポリエステル樹脂(A)、可塑剤及び/又はエラストマーである成分(B)、並びに無機充填剤(C)を含有してなるポリエステル樹脂組成物のシート状成形体である、積層シートに関する。本発明の積層シートはポリカーボネート層を有するために十分な剛性と衝撃強度を有するだけではなく損失係数が高いため制振効果にも優れているので、音響機器の材料や電気製品、乗物、建築物、産業用機器等の製品又はそれらの部品、筐体用の制振材料として好適に使用することができる。

Description

本発明は、制振材料用の積層シートに関する。
近年、各種機器の振動対策が要求されるようになっており、特に、自動車、家電製品、精密機器などの分野において必要とされている。制振性の高い材料の一つとしてとしては、金属板とゴム、アスファルト等の振動吸収素材を貼り合わせた材料(特許文献1)や、制振性を付与した樹脂シートが挙げられる。しかしながら、金属板を用いた材料は製品自体が重くなる問題があった。さらに、制振性を付与した樹脂シートの単体は剛性が低く、自立性がないものが多いという問題があった。
特開2016−186207号公報
本発明は、下記〔1〕に関する。
〔1〕制振層とポリカーボネート層とが積層されている積層シートであって、
該制振層が積層シートの表面及び/又は表面近傍に存在し、
該制振層が、ジカルボン酸成分とジオール成分とを含む成分から構成される熱可塑性ポリエステル樹脂(A)、可塑剤及び/又はエラストマーである成分(B)、並びに無機充填剤(C)を含有してなるポリエステル樹脂組成物のシート状成形体である、積層シート。
図1は、本発明の積層シートの一態様の断面構造を示す模式図である。 図2は、本発明の積層シートの種々の態様の断面構造を示す模式図(A)及び(B)である。 図3は、比較対象としての積層シートの態様の断面構造を示す模式図(A)及び(B)である。 図4は、本発明の積層シートの一態様の断面構造を示す模式図(A)及び比較対象としての積層シートの一態様の断面構造を示す模式図(B)である。 図5は、本発明の積層シートの種々の態様の断面構造を示す模式図である。
発明の詳細な説明
本発明は、金属材料が不要な程度に十分な剛性と衝撃強度を有し、かつ優れた制振性を有する積層シートに関する。
本発明の積層シートは、金属材料が不要な程度に十分な剛性と衝撃強度を有し、かつ優れた制振性を発揮することができる。
以下、本発明の積層シートについて詳細に説明する。
1.積層シート
本発明の積層シートは、制振層とポリカーボネート層とが積層されている積層シートであって、
該制振層が積層シートの表面及び/又は表面近傍に存在し、
該制振層が、ジカルボン酸成分とジオール成分とを含む成分から構成される熱可塑性ポリエステル樹脂(A)、可塑剤及び/又はエラストマーである成分(B)、並びに無機充填剤(C)を含有してなるポリエステル樹脂組成物のシート状成形体であることを特徴の一つとする。
本発明においては、制振層の存在する位置に特徴を有する。積層シートに剛性や自立性を付与する観点から、単に、自立性を有する(ポリカーボネート製等の)基材となるシートに制振材を張り付ける2層構造や、基材となるシートで制振材を挟む3層構造としたものが考えられる。しかしながら、基材となるシートに単に制振材を張り付けた2層構造のシートでは、高い制振性は得られるものの、強度や耐熱性の点で十分ではない。一方で、基材となるシートで制振材を挟んだ3層構造のシートでは強度を保てるものの、制振性があまり向上しない。そこで本発明者らは、積層シート中の制振材(制振層)の位置について検討を進め、本発明を完成させた。
前記制振層の存在する位置にこのような特徴を有することにより、積層シートの自立性を確保しつつ積層シートの十分な剛性と衝撃強度と制振性を向上させることができる。かかる本発明の積層シートが優れた制振効果を発揮するメカニズムは、以下のように推定される。積層シートの表面かあるいは表面近傍、即ち、積層シートの中心よりも表面側に制振層を配置することで、曲げなどの歪みがシートに加わった時、その歪みエネルギーが表面側の制振層に偏ることとなり、その結果、エネルギー損失が起こり、制振性を発現すると考えられる。さらに表面側の制振層の厚みを大きくすることによって、表面側の制振層の歪みエネルギーがさらに増大すると予想され、それによりさらに制振性が向上することが考えられる。さらに表面側の制振層の厚みを大きくすることによって、表面側の制振層の歪みエネルギーがさらに増大すると予想され、それによりさらに制振性が向上することが考えられる。さらには、制振層が積層シートの表面近傍に存在する態様、即ち制振層の上面及び下面の両方にポリカーボネート層が積層する場合、優れた制振効果以外にも、基材となるシートの耐薬品性の向上、ブリードおよびアウトガスの抑制といった効果も期待できる。
本発明の積層シートは剛性と衝撃強度及び優れた制振性を有するので、音響機器筐体用材料としてスピーカー、テレビ、ラジカセ、ヘッドフォン、オーディオコンポ、マイク等に;さらには、電動モーター付電気製品の部品及び筐体用材料として電動ドリル、電動ドライバー等の電動工具類、コンピューター、プロジェクター、サーバー、POSシステム等の冷却ファン付電気製品、洗濯機、衣類乾燥機、エアコン室内機、ミシン、食器洗浄機、ファンヒーター、複合機、プリンター、スキャナー、ハードディスクドライブ、ビデオカメラ等に;加振源付電気製品の部品及び筐体用材料として電動歯ブラシ、電動シェイバー、マッサージ機等に;原動機付電気製品の部品及び筐体用材料として発電機、ガス発電機等に;コンプレッサー付電気製品の部品及び筐体用材料として冷蔵庫、自動販売機、エアコン室外機、除湿機、家庭用発電機に;自動車部品用材料としてダッシュボード、インストルメントパネル、フロア、ドア、ルーフ等の内装材用材料、オイルパン、フロントカバー、ロッカーカバー等のエンジン回り用材料等に;鉄道部品用材料として、床、壁、側板、天井、ドア、椅子、テーブル等の内装材料、モーター周りの筐体や部品、各種保護カバー等に;飛行機部品用材料として、床、壁、側板、天井、椅子、テーブル等の内装材料、エンジン周りの筐体や部品等に;船舶部品用材料としてエンジンルーム用の筐体や壁材、計測ルーム用の筐体や壁材に;建築用材料として壁、天井、床、間仕切りボード、防音壁、シャッター、カーテンレール、配管ダクト、階段、ドア等に;産業用機器部品用材料として、シューター、エレベーター、エスカレーター、コンベアー、トラクター、ブルドーザー、草刈り機等に;産業用輸送部材として、灯油缶、ドラム缶、複合容器、タンクローリー、輸送用ケース等に使用できる。
<層構成>
本発明の積層シートの層構成について説明する。
本発明の積層シート全体の厚み(即ち、総厚み)としては、使用用途で要求される強度および剛性の観点から、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは1.0mm以上、更に好ましくは1.5mm以上、更に好ましくは2.0mm以上、更に好ましくは2.5mm以上であり、使用用途で要求される質量、強度および剛性の観点から、好ましくは30mm以下、より好ましくは10mm以下、更に好ましくは5.0mm以下である。
〔ポリカーボネート層〕
ポリカーボネート層は、後述のポリカーボネート樹脂組成物から成形されるシート状成形体である。ポリカーボネート層を使用することにより、本発明の積層シートに自立性、耐薬品性、耐揮発性及び衝撃性を付与することができる。
本明細書において、ポリカーボネート層は、単一層だけでなく、複数の層から構成される層(例えば、複数のポリカーボネート層を熱圧着プレスして形成される層)であっても、一層のポリカーボネート層として扱う。制振層についても同様である。
ポリカーボネート層の厚みとしては、使用する薄物シートを製造する成形方法の特性の観点から、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.10mm以上、更に好ましくは0.15mm以上であり、使用する厚物プレートを製造する成形方法の特性の観点から、好ましくは10mm以下、より好ましくは5.0mm以下、更に好ましくは3.5mm以下である。ポリカーボネート層が複数ある場合、例えば、図2Bに示される積層シートのようにポリカーボネート層2及びポリカーボネート層3の2層が存在する場合、ここで言う厚みとは各ポリカーボネート層のそれぞれの厚みである。
ポリカーボネート層が複数ある場合、制振層がポリカーボネート層で挟まれた態様、即ち、制振層が積層シートの表面近傍に存在する態様となる(例えば、図2B、図4A、図5A又は図5Cに示される積層シート)。この場合、高い強度と高い制振性を両立させる観点から、ポリカーボネート層の少なくとも一方が制振層と同じか、またはより薄い方が望ましい。具体的には、かかる態様の場合、ポリカーボネート層の少なくとも一方の厚みは制振層の厚みの、好ましくは1.0倍以下、より好ましくは0.5倍以下、更に好ましくは0.25倍以下であり、下限値としては、好ましくは0.01倍以上である。
〔制振層〕
制振層は、後述の成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含有してなるポリエステル樹脂組成物のシート状成形体である。積層シートにおける制振層の数は1層又は複数層であり得る。積層シートに複数の制振層が存在する場合、1層の制振層が積層シートの表面に存在し、かつ残りの制振層が表面近傍に存在する態様や、2層の制振層が表面に存在する態様(例えば、図5Bに示される積層シート)、複数の制振層のいずれもが表面近傍に存在する態様(例えば、図5A又は図5Cに示される積層シート)が想定され、これらの態様も本発明の積層シートに包含される。
制振層の厚みとしては、使用する薄物シートを製造する成形方法の特性の観点から、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.2mm以上、更に好ましくは0.4mm以上であり、使用する厚物プレートを製造する成形方法の特性の観点から、好ましくは10mm以下、より好ましくは5.0mm以下、更に好ましくは1.0mm以下である。積層シートに制振層が複数ある場合、ここで言う厚みとは各制振層のそれぞれの厚みである。
制振層の上面及び下面の一方の面、又は両面にポリカーボネート層が積層される。
制振層の一方の面にポリカーボネート層が積層する場合、かかる積層シートは制振層が積層シートの表面に露出した構造、即ち、「制振層が積層シートの表面に存在する」態様である。本態様の断面構造は模式的に図2Aで示される。図2Aに示される積層シートは、制振層1の上面にポリカーボネート層2が積層されている。
制振層の上面及び下面の両方にポリカーボネート層が積層する場合、かかる積層シートはポリカーボネート層が積層シートの表面に露出した構造、即ち、「制振層が積層シートの表面近傍に存在する」態様である。本態様の断面構造は模式的に図2Bで示される。図2Bに示される積層シートは、制振層1の上面にポリカーボネート層2が、制振層1の下面にポリカーボネート層3が積層されている。このような構造の場合、さらなる剛性と衝撃強度の向上、耐薬品性の向上、ブリード及びアウトガスの抑制といった効果も期待できる。
本明細書において、制振層が積層シートの表面近傍に存在するとは、制振層が積層シートの表面には存在せず、かつ積層シートの断面図(図1)で示した場合に、制振層の全体が断面の中央線(図1の一点破線)よりも表面側(図1のS又はS’)に存在することをいう。制振性向上の観点から、制振層は、積層シートの表面から厚み方向の好ましくは40%以内、より好ましくは33%以内、更に好ましくは30%以内、更に好ましくは25%以内、更に好ましくは20%以内、更に好ましくは15%以内、更に好ましくは10%以内に存在する。一方、積層シートが高い耐薬品性、高い弾性率又は高い強度を維持する観点から、制振層は、積層シートの表面から厚み方向の好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.25%以上、更に好ましくは0.5%以上、より更に好ましくは1.0%以上、より更に好ましくは5.0%以上、より更に好ましくは10%以上に存在する。
ここで、制振層が積層シートの表面から厚み方向の40%以内に存在することを、図1を参照しつつ具体的に説明する。図1は、制振層が1層でありポリカーボネート層が2層の場合の本発明の積層シートの断面図を模式的に示したものであり、制振層1に近い側の積層シートの表面、即ち、上部表面をSとし、もう一方の表面をS’とする。表面から厚み方向とは、図1の右側の矢印の方向で示されるSからS’への方向である。積層シート全体の厚みを百分率、即ちSを0%とし、S’を100%で示した場合、制振層1の厚み方向の相対的な位置を、積層シートの厚みの百分率で示すことができる。例えば、図1で示される積層シートにおいて、ポリカーボネート層2、制振層1及びポリカーボネート層3のそれぞれ厚みを2mm、2mm及び16mmとすると、制振層1の厚み方向の位置を10〜20%と示すことができる。このように、積層シートの表面から厚み方向の40%以内に存在するとは、積層シート全体の厚みを百分率で示した場合、制振層の全体が厚み方向の40%以内に存在することを言う。また、このとき、「位置割合が40%以内である」、あるいは、「積層シートの上部表面からの制振層の相対的位置(%)が40%以内である」ともいう。本発明の好ましい態様の一つとして、制振層の少なくとも1層が10〜40%の位置割合にある積層シートが挙げられる。
積層シート中の制振層の割合は、制振性向上の観点から、好ましくは体積分率で1%以上、より好ましくは5%以上、更に好ましくは10%以上であり、高い弾性率又は強度を維持する観点から、好ましくは体積分率で70%以下、より好ましくは50%以下、更に好ましくは34%以下、更に好ましくは25%以下である。積層シート中に制振層が複数存在する場合、ここでいう体積分率は各制振層の合計である。
本発明の積層シートは、積層シートの剛性や衝撃強度と制振性とを両立できるものである。積層シートをどのような場面に適用するか、即ち、剛性や衝撃強度を重視する場面か、あるいは積層シートの制振性を重視する場面かによって、ポリカーボネート層の総厚みと制振層の総厚みとの好ましい関係は変化し得る。ここで、ポリカーボネート層の総厚みとは、積層シートに存在する全てのポリカーボネート層の厚みの合計であり、制振層の総厚みとは、積層シートに存在する全ての制振層の厚みの合計である。積層シートの剛性や衝撃強度を重視する態様では、ポリカーボネート層の総厚みは制振層の総厚みと同じかそれよりも厚い方が好ましく、具体的には、制振層の総厚みを100%とした場合、ポリカーボネート層の総厚みは、好ましくは100%以上、より好ましくは200%以上であり、さらにより好ましくは300%以上であり、上限値としては好ましくは2000%以下であり、より好ましくは1000%以下である。一方、積層シートの制振性能を重視する態様では、ポリカーボネート層の総厚みは制振層の総厚みと同じかそれよりも薄い方が好ましく、具体的には、制振層の総厚みを100%とした場合、ポリカーボネート層の総厚みは、好ましくは100%以下、より好ましくは67%以下であり、下限値としては好ましくは33%以上である。
本発明の積層シートを構成する制振層、即ちポリエステル樹脂組成物のシート状成形体におけるエラストマーの表面存在量は、ポリカーボネート樹脂組成物シート(本明細書において「PCシート」とも称する。)との接着性の観点から、好ましくは0.5%以上、より好ましくは1%以上、更に好ましくは5%以上であり、一方、弾性率を維持する観点から、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは30%以下である。エラストマーの表面存在量は、ポリエステル樹脂組成物のシート状成形体を溶剤に浸漬してエラストマーを除去し、処理後の成形体をSEMで観察することで求める。具体的には、処理後の成形体の空穴部分をエラストマーが存在していた領域として、一定面積あたりの空穴部分の面積%でエラストマーの表面存在量を示す。
本発明の積層シートを構成する制振層におけるエラストマーの粒径は、PCシートとの接着性の観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、更に好ましくは0.1μm以上であり、一方、弾性率を維持する観点で、好ましくは100μm以下、より好ましくは70μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。エラストマーの粒径は、前記の「エラストマーの表面存在量」の求め方と同じ方法で得られる、エラストマーの除去処理後の成形体をSEMで観察することで求める。具体的には、成形体の空穴部分をエラストマーが存在していた領域として、個々の空穴の直径を測定する。合計100個の空穴の直径を測定し、その平均値をエラストマーの粒径とする。
本発明の積層シートを構成する制振層は、ポリカーボネートとの接着性の観点から、表面積が大きい方が好ましい。ここで表面積が大きいとは、「表面積/任意に指定した領域の面積」が大きいことを言う。ポリカーボネートとの接着性の観点から、「表面積/任意に指定した領域の面積」は好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは5以上、更に好ましくは8以上であり、一方、シート形状の安定性の観点から、好ましくは100以下、より好ましくは50以下である。「表面積/任意に指定した領域の面積」は、共焦点レーザー顕微鏡で得られた三次元画像を利用して測定することができる。
<樹脂成分>
次に、各層を構成する樹脂成分について具体的に説明する。
〔ポリカーボネート〕
本発明において、ポリカーボネート層に使用されるポリカーボネートは、分子の主鎖中に炭酸エステル結合を含む構造、即ち、−(O−R−OCO)−(ここで、Rは脂肪族基、芳香族基又は脂肪族基と芳香族基の両者を含むもの、さらに直鎖構造又は分岐構造を持つもの)を単位構造として有するものであれば特に限定されない。このようなポリカーボネートを含有するポリカーボネート樹脂組成物のシート状成形物を使用することで、形状を保持するための金属板が不要な自立性を有する積層シートを得ることができる。
制振層との接着性の観点から、特定のモノマーと共重合したポリカーボネートがより好ましい。
ポリカーボネート層に使用されるポリカーボネートのメルトフローレート(MFR)としては、押出成形および押出機の特性の観点から、300℃、1.2kgfの条件で好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.5g/10分以上、更に好ましくは1.0g/10分以上であり、熱プレス成形性の観点の観点から、好ましくは20g/10分以下、より好ましくは15g/10分以下、更に好ましくは8.0g/10分以下である。ポリカーボネートのMFRの値は、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定される。
本発明におけるポリカーボネート樹脂組成物には、一般的な、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、離型剤、滑剤、帯電防止剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
ポリカーボネート層が複数ある場合、それらを構成する樹脂組成物の組成は同一でも異なっていてもよい。例えば、図2Bに示されるポリカーボネート層2を構成する樹脂組成物の組成及びポリカーボネート層3を構成する樹脂組成物の組成はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
〔ポリエステル樹脂組成物〕
本発明における制振層に用いられるポリエステル樹脂組成物は、ジカルボン酸成分とジオール成分とから構成される熱可塑性ポリエステル樹脂(A)、可塑剤/又はエラストマーである成分(B)、並びに無機充填剤(C)を含有する。本発明において、制振層が複数ある場合、各制振層を構成するポリエステル樹脂組成物の組成はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
一般的に樹脂に無機充填剤を添加すると、樹脂組成物全体の弾性率が向上する一方で、損失係数が低下する。この損失係数の低下は、充填剤の添加により、樹脂組成物中の樹脂の割合が減少するため、樹脂部分でのエネルギー損失量が減少することによるものである。そこで、本発明では、かかる系に、可塑剤及び/又はエラストマーを添加することで、柔軟性を付与しエネルギー損失を起こりやすくすることで、損失係数を向上させ、樹脂組成物の弾性率を高めながら、損失係数の低下を抑制した。さらに、本発明に用いられるポリエステル樹脂組成物においては、樹脂あるいは可塑剤及び/又はエラストマーと無機充填剤の間の界面における摩擦が発生してエネルギー損失が起こり、よりいっそうの損失係数の低下が抑制されると推定される。
本発明における熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の質量平均分子量の上限は、好ましくは30万である。用いる熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の種類によって上限値が変化することはないが、損失係数を向上させる観点から、下限値としては、例えば、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)としてポリブチレンテレフタレート樹脂を用いる場合、7万以上が好ましく、8万以上がより好ましく、10万以上が更に好ましい。熱可塑性ポリエステル樹脂(A)としてポリトリメチレンテレフタレート樹脂を用いる場合、6万以上が好ましく、7万以上がより好ましい。熱可塑性ポリエステル樹脂(A)としてポリエチレンテレフタレート樹脂を用いる場合、3万以上が好ましく、4万以上がより好ましく、5万以上が更に好ましい。なお、本発明におけるポリエステル樹脂組成物は後述する絶対結晶化度を有することから、下限は絶対結晶化度(Xc)の値によって異なり、絶対結晶化度が5%以上37%以下であれば、用いる熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の質量平均分子量が5万未満でも性能を発現させることができ、例えば、2万以上が挙げられる。絶対結晶化度が37%を超える場合は、用いる熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の質量平均分子量は5万以上であることが好ましい。熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の質量平均分子量は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
本発明におけるポリエステル樹脂組成物の絶対結晶化度(Xc)の下限は、好ましくは5%であればよいが、損失係数を向上させる観点から用いる熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の種類によって次のような範囲が示される。例えば、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)としてポリブチレンテレフタレート樹脂を用いる場合、10%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、20%以上が更に好ましく、25%以上が更に好ましく、35%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、28%以下が更に好ましい。熱可塑性ポリエステル樹脂(A)としてポリトリメチレンテレフタレート樹脂を用いる場合、10%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、20%以上が更に好ましく、35%以下が好ましい。熱可塑性ポリエステル樹脂(A)としてポリエチレンテレフタレート樹脂を用いる場合、10%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、20%以上が更に好ましく、25%以上が更に好ましく、35%以下が好ましい。なお、本発明における熱可塑性ポリエステル樹脂(A)は前述した質量平均分子量を有することから、絶対結晶化度の値は該樹脂(A)の質量平均分子量の値によって異なり、具体的には、該樹脂(A)の質量平均分子量が5万以上15万以下であれば、37%を超える場合でも性能を発現させることができ、例えば、上限としては好ましくは40%以下が挙げられる。質量平均分子量が5万未満の場合は好ましくは37%以下である。なお、本明細書において、ポリエステル樹脂組成物の絶対結晶化度とはマトリックス樹脂中の結晶部の割合を意味し、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
また、本発明における熱可塑性ポリエステル樹脂(A)やポリエステル樹脂組成物は前記した範囲内の質量平均分子量や絶対結晶化度を有することが好ましいが、その組み合わせとしては、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)がポリブチレンテレフタレート樹脂の場合、質量平均分子量が7万以上15万以下で絶対結晶化度が25%以上35%以下が好ましく、質量平均分子量が10万以上15万以下で絶対結晶化度が25%以上35%以下がより好ましい。熱可塑性ポリエステル樹脂(A)がポリエチレンテレフタレート樹脂の場合、質量平均分子量が3万以上15万以下で絶対結晶化度が10%以上35%以下が好ましく、質量平均分子量が4万以上15万以下で絶対結晶化度が20%以上35%以下がより好ましい。
[熱可塑性ポリエステル樹脂(A)]
本発明における熱可塑性ポリエステル樹脂(A)は、ジカルボン酸成分とジオール成分とから構成され、ジカルボン酸成分とジオール成分の重縮合の組み合わせにより得ることができる。なお、本明細書において、ジカルボン酸成分とは、ジカルボン酸及びその低級エステル誘導体を含み、これらを総称してジカルボン酸成分とする。
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)を構成するジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、フラン環を有するジカルボン酸を用いることができる。具体的には、例えば、テレフタル酸等、特開2016−89148号公報の段落0014に列挙されたものが挙げられる。ジカルボン酸成分は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)を構成するジオール成分としては、脂肪族ジオール、脂環式ジオール、芳香族ジオール、フラン環を有するジオールを用いることができる。具体的には、例えば、1,4−ブタンジオール等、特開2016−89148号公報の段落0015に列挙されたものが挙げられる。ジオール成分は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
また、ジカルボン酸成分とジオール成分の組み合わせとしては、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)のTgを向上させ、制振性と剛性を向上させる観点から、芳香族環、脂環、フラン環をジカルボン酸又はジオールのどちらか一方に又は両方に含むことが好ましい。具体的には、例えば特開2016−89148号公報の段落0016に列挙されたものが挙げられる。
前記ジカルボン酸成分と前記ジオール成分との重縮合は、特に限定はなく、公知の方法に従って行うことができる。
得られる熱可塑性ポリエステル樹脂(A)は、成形加工性を向上させる観点から、ガラス転移温度(Tg)が好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上、更に好ましくは30℃以上、更に好ましくは35℃以上である。また、制振性を向上させる観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは140℃以下、より更に好ましくは130℃以下である。ガラス転移温度が前記温度となるようにするには、ポリエステル樹脂の骨格構造をコントロールすることが有効である。例えば、芳香族ジカルボン酸成分や脂環式ジオール成分などの剛直な成分を原料として用い、熱可塑性ポリエステル樹脂を調製するとガラス転移温度を高くすることが可能である。なお、本明細書において、樹脂のガラス転移温度は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
また、本発明における熱可塑性ポリエステル樹脂(A)は、制振性の観点から結晶性を有することが好ましい。結晶性を有する熱可塑性ポリエステル樹脂を調製する方法としては、ジカルボン酸成分とジオール成分を純度の高いものを用いる方法、側鎖の少ないジカルボン酸成分及びジオール成分を用いる方法が挙げられる。なお、本明細書において、結晶性を有するとは、JIS K7122(1999)に準じて、昇温速度20℃/minで樹脂を25℃から300℃まで加熱し、その状態で5分間保持後、次いで25℃以下となるよう−20℃/minで冷却したとき、結晶化に伴う発熱ピークが観察される樹脂のことである。より詳しくは、発熱ピークの面積から求められる結晶化エンタルピーΔHmcが1J/g以上となる樹脂のことをいう。本発明を構成する熱可塑性ポリエステル樹脂(A)は、結晶化エンタルピーΔHmcが好ましくは5J/g以上、より好ましくは10J/g以上、更に好ましくは15J/g以上、更に好ましくは30J/g以上の樹脂を用いるのがよい。なお、本明細書において、樹脂の結晶化エンタルピーは、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の具体例としては、例えば特開2016−89148号公報の段落0020に列挙されたものが挙げられ、制振性の観点から、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールから構成されるポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂、Tg:50℃)が好ましい。熱可塑性ポリエステル樹脂(A)は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の含有量は、損失係数を向上させる観点から、ポリエステル樹脂組成物中、50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましい。また、剛性を向上させる観点から、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下が更に好ましく、70質量%以下が更に好ましい。
本発明において、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の質量平均分子量としては、制振性向上の観点から、好ましくは3万以上、より好ましくは5万以上、更に好ましくは7万以上であり、成形加工性向上の観点の観点から、好ましくは30万以下、より好ましくは20万以下、更に好ましくは15万以下である。熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の質量平均分子量は、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定される。
[可塑剤及び/又はエラストマーである成分(B)]
本発明における成分(B)としては、可塑剤及びエラストマーからなる群より選ばれる1種又は2種以上を用いる。なお、本明細書において、可塑剤及び/又はエラストマーを、まとめて成分(B)と記載することもある。
(可塑剤)
本発明における可塑剤としては、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、及びビスフェノール系可塑剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含むことが好ましい。
製造過程での積層シートのシート物性の変化を抑制する観点から、可塑剤としては低揮発性の可塑剤が好ましい。具体的には、5%質量減少温度が200℃以上の可塑剤が好ましく、220℃以上の可塑剤がより好ましく、240℃以上の可塑剤が更に好ましく、260℃以上の可塑剤が更に好ましい。ここで、可塑剤の5%質量減少温度の測定は、空気雰囲気下、10℃/minで昇温するという条件で実施する。さらに、260℃、空気雰囲気下、5分等温保持での可塑剤の重量保持率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上であり、一方、損失係数を向上させる観点から、好ましくは100%以下、より好ましくは98%以下である。
ポリエステル系可塑剤の具体例としては、例えば特開2016−89148号公報の段落0024に列挙されたものが挙げられる。好ましい例としては、例えば、アジピン酸と、ジエチレングリコールモノメチルエーテル/ベンジルアルコールとの混合ジエステルが挙げられる。
多価アルコールエステル系可塑剤の具体例としては、例えば特開2016−89148号公報の段落0025に列挙されたものが挙げられる。
多価カルボン酸エステル系可塑剤としては、例えば特開2016−89148号公報の段落0026に列挙されたものが挙げられる。
ビスフェノール系可塑剤としては、例えば特開2016−89148号公報の段落0027に列挙されたものが挙げられる。
可塑剤としては、損失係数を向上させる観点から、好ましくは(ポリ)オキシアルキレン基又は炭素数2〜10のアルキレン基を有する、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、及びビスフェノール系可塑剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含み、より好ましくは、(ポリ)オキシアルキレン基を有する、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、及びビスフェノール系可塑剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含む。尚、(ポリ)オキシアルキレン基とは、オキシアルキレン基又はポリオキシアルキレン基を意味する。オキシアルキレン基としては、好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜6、更に好ましくは2〜4のアルキレン基を有するもので、オキシエチレン基、オキシプロピレン基又はオキシブチレン基が更に好ましく、オキシエチレン基又はオキシプロピレン基がより更に好ましい。
可塑剤としては、損失係数を向上させる観点から、以下の化合物群(A)〜(C)からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含むことが好ましく、また以下の化合物群(A)及び(B)からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含むことがより好ましい。2種以上を組み合わせて用いる場合は、同じ化合物群同士でも異なる化合物群同士であってもよい。
化合物群(A) 分子中に2個以上のエステル基を有するエステル化合物であって、該エステル化合物を構成するアルコール成分の少なくとも1種が水酸基1個当たり炭素数2〜3のアルキレンオキサイドを平均0.5〜5モル付加したアルコールであるエステル化合物
化合物群(B) 式(I):
O−CO−R−CO−〔(OR)O−CO−R−CO−〕OR (I)
(式中、Rは炭素数が1〜4のアルキル基、Rは炭素数が2〜4のアルキレン基、Rは炭素数が2〜6のアルキレン基であり、mは1〜6の数、nは1〜12の数を示し、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよく、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表される化合物
化合物群(C) 分子中に2個以上のエステル基を有するエステル化合物であって、該エステル化合物を構成するアルコール成分がモノアルコールであるエステル化合物
化合物群(A)
化合物群(A)に含まれるエステル化合物としては、分子中に2個以上のエステル基を有する多価アルコールエステル又は多価カルボン酸エーテルエステルであって、該エステル化合物を構成するアルコール成分の少なくとも1種が水酸基1個当たり炭素数2〜3のアルキレンオキサイドを平均0.5〜5モル付加したアルコールであるエステル化合物が好ましい。
具体的な化合物としては、酢酸とグリセリンのエチレンオキサイド平均3〜6モル付加物(水酸基1個あたりエチレンオキサイドを1〜2モル付加)とのエステル、酢酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が4〜6のポリエチレングリコールとのエステル、コハク酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜3のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(水酸基1個あたりエチレンオキサイドを2〜3モル付加)とのエステル、アジピン酸とジエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、テレフタル酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜3のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(水酸基1個あたりエチレンオキサイドを2〜3モル付加)とのエステル、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸とジエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステルが好ましい。
化合物群(B)
式(I)におけるRは、炭素数が1〜4のアルキル基を示し、1分子中に2個存在して、分子の両末端に存在する。Rは炭素数が1〜4であれば、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。アルキル基の炭素数としては、耐着色性及び可塑化効果を発現させる観点から、1〜4が好ましく、1〜2がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ブチル基が挙げられ、なかでも、損失係数を向上させる観点から、メチル基及びエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
式(I)におけるRは、炭素数が2〜4のアルキレン基を示し、直鎖のアルキレン基が好適例として挙げられる。具体的には、エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基が挙げられ、損失係数を向上させる観点から、エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい。
式(I)におけるRは、炭素数が2〜6のアルキレン基を示し、ORはオキシアルキレン基として、繰り返し単位中に存在する。Rは炭素数が2〜6であれば、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。アルキレン基の炭素数としては、損失係数を向上させる観点から、2〜6が好ましく、2〜3がより好ましい。具体的には、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、1,4−ブチレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、1,2−ペンチレン基、1,4−ペンチレン基、1,5−ペンチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、1,2−ヘキシレン基、1,5−ヘキシレン基、1,6−ヘキシレン基、2,5−ヘキシレン基、3−メチル−1,5−ペンチレン基が挙げられ、なかでも、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基が好ましい。但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい。
mはオキシアルキレン基の平均の繰り返し数を示し、耐熱性の観点から、1〜6の数が好ましく、1〜4の数がより好ましく、1〜3の数が更に好ましい。
nは繰り返し単位の平均の繰り返し数(平均重合度)を示し、1〜12の数である。制振材料として、損失係数を向上させる観点から、1〜12の数が好ましく、1〜6の数がより好ましく、1〜5の数が更に好ましい。平均重合度は、NMR等の分析によって求めてもよいが、特開2016−89148号公報の段落0100に記載の方法に従って算出することができる。
式(I)で表される化合物の具体例としては、Rが全てメチル基、Rがエチレン基又は1,4−ブチレン基、Rがエチレン基又は1,3−プロピレン基であって、mが1〜4の数、nが1〜6の数である化合物が好ましく、Rが全てメチル基、Rがエチレン基又は1,4−ブチレン基、Rがエチレン基又は1,3−プロピレン基であって、mが1〜3の数、nが1〜5の数である化合物がより好ましい。
式(I)で表される化合物は、前記構造を有するのであれば特に限定ないが、下記(1)〜(3)の原料を反応させて得られるものが好ましい。尚、(1)と(2)とは、又は(2)と(3)とは、エステル化合物を形成していてもよい。(2)は、酸無水物や酸ハロゲン化物であってもよい。
(1)炭素数が1〜4のアルキル基を有する一価アルコール
(2)炭素数が2〜4のアルキレン基を有するジカルボン酸
(3)炭素数が2〜6のアルキレン基を有する二価アルコール
(1)炭素数が1〜4のアルキル基を有する一価アルコール
炭素数が1〜4のアルキル基を有する一価アルコールとしては、前記Rを含むアルコールであり、具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、tert−ブタノールが挙げられる。なかでも、損失係数を向上させる観点から、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノールが好ましく、メタノール、エタノールがより好ましく、メタノールが更に好ましい。
(2)炭素数が2〜4のアルキレン基を有するジカルボン酸
炭素数が2〜4のアルキレン基を有するジカルボン酸としては、前記Rを含むジカルボン酸であり、具体的には、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、及びそれらの誘導体、例えば、コハク酸無水物、グルタル酸無水物、コハク酸ジメチル、コハク酸ジブチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル等が挙げられる。なかでも、損失係数を向上させる観点から、コハク酸、アジピン酸及びそれらの誘導体、例えば、コハク酸無水物、コハク酸ジメチル、コハク酸ジブチル、アジピン酸ジメチルが好ましく、コハク酸及びその誘導体、例えば、コハク酸無水物、コハク酸ジメチル、コハク酸ジブチルがより好ましい。
(3)炭素数が2〜6のアルキレン基を有する二価アルコール
炭素数が2〜6のアルキレン基を有する二価アルコールとしては、前記Rを含む二価アルコールであり、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールが挙げられる。なかでも、損失係数を向上させる観点から、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、テトラエチレングリコール、1,4−ブタンジオールが好ましく、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールがより好ましく、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオールが更に好ましい。
よって、前記(1)〜(3)としては、
(1)一価アルコールがメタノール、エタノール、1−プロパノール、及び1−ブタノールからなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、(2)ジカルボン酸がコハク酸、アジピン酸、グルタル酸、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、(3)二価アルコールがジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、テトラエチレングリコール、及び1,4−ブタンジオールからなる群より選ばれる1種又は2種以上であることが好ましく、
(1)一価アルコールがメタノール及びエタノールからなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、(2)ジカルボン酸がコハク酸、アジピン酸、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、(3)二価アルコールがジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、及び1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれる1種又は2種以上であることがより好ましく、
(1)一価アルコールがメタノールであり、(2)ジカルボン酸がコハク酸及びその誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、(3)二価アルコールがジエチレングリコール、トリエチレングリコール、及び1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれる1種又は2種以上であることが更に好ましい。
前記(1)〜(3)を反応させて式(I)で表されるエステル化合物を得る方法としては、特に限定はないが、例えば、以下の態様1及び態様2の方法が挙げられる。
態様1:(2)ジカルボン酸と(1)一価アルコールのエステル化反応を行ってジカルボン酸エステルを合成する工程と、得られたジカルボン酸エステルと(3)二価アルコールをエステル化反応させる工程を含む方法
態様2:(1)一価アルコール、(2)ジカルボン酸、及び(3)二価アルコールを一括反応させる工程を含む方法
これらのなかでも、平均重合度を調整する観点から、態様1の方法が好ましい。なお、前記した各工程の反応は、公知の方法に従って行うことができる。
式(I)で表される化合物は、酸価が、損失係数を向上させる観点から、好ましくは1.50mgKOH/g以下、より好ましくは1.00mgKOH/g以下であり、水酸基価が、損失係数を向上させる観点から、好ましくは10.0mgKOH/g以下、より好ましくは5.0mgKOH/g以下、更に好ましくは3.0mgKOH/g以下である。なお、本明細書において、可塑剤の酸価及び水酸基価は、特開2016−89148号公報の段落0099に記載の方法に従って測定することができる。
また、式(I)で表される化合物の数平均分子量は、損失係数を向上させる観点から、耐着色性の観点から、好ましくは300〜1500、より好ましくは300〜1000である。なお、本明細書において、可塑剤の数平均分子量は、特開2016−89148号公報の段落0100に記載の方法に従って算出することができる。
式(I)で表される化合物のケン化価は、損失係数を向上させる観点から、500〜800mgKOH/gが好ましく、550〜750mgKOH/gがより好ましい。なお、本明細書において、可塑剤のケン化価は、特開2016−89148号公報の段落0099に記載の方法に従って測定することができる。
式(I)で表される化合物は、損失係数を向上させる観点から、2個の分子末端に対するアルキルエステル化率(末端アルキルエステル化率)が、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上である。なお、本明細書において、可塑剤の末端アルキルエステル化率は、特開2016−89148号公報の段落0100に記載の方法に従って算出することができる。
式(I)で表される化合物のエーテル基価は、振動時間を短縮する観点から、0〜8mmol/gが好ましく、0〜6mmol/gがより好ましい。なお、本明細書において、可塑剤のエーテル基価は、特開2016−89148号公報の段落0100に記載の方法に従って算出することができる。
化合物群(C)
化合物群(C)に含まれるエステル化合物としては、具体的には、アジピン酸と2−エチルヘキサノールとのエステル(DOA)、フタル酸と2−エチルヘキサノールとのエステル(DOP)が好ましい。
可塑剤中、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、及びビスフェノール系可塑剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上の含有量、好ましくは(ポリ)オキシアルキレン基又は炭素数2〜10のアルキレン基を有する、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、及びビスフェノール系可塑剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上の含有量、より好ましくは(ポリ)オキシアルキレン基を有する、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、及びビスフェノール系可塑剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上の含有量、ならびにかかる化合物群(A)〜(C)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物の含有量は、損失係数を向上させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは実質的に100質量%であり、更に好ましくは100質量%である。ここで実質的に100質量%とは不可避的に微量の不純物等を含んでいる状態を言う。なお、本明細書において、前記可塑剤の含有量とは、複数の化合物が含有される場合には、総含有量のことを意味する。
可塑剤の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、損失係数を向上させる観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、剛性低下抑制の観点から、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下、更に好ましくは25質量部以下である。
また、ポリエステル樹脂組成物中、可塑剤の含有量は、損失係数を向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、剛性低下抑制の観点から、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
(エラストマー)
本発明においては、高温域及び低温域での制振性向上の観点から、1種又は2種以上のエラストマーが用いられる。本発明におけるエラストマーとしては、熱可塑性エラストマーが好ましい。
エラストマーの含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、低温域での損失係数を向上する観点から、10質量部以上が好ましく、12質量部以上がより好ましく、15質量部以上が更に好ましい。また、剛性低下抑制の観点から、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、35質量部以下が更に好ましい。
ポリエステル樹脂組成物中のエラストマーの含有量は、損失係数を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは9.5質量%以上であり、剛性低下抑制の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
本発明においては、成分(B)として、可塑剤及びエラストマーを併用してもよく、可塑剤を単独で又は2種以上とエラストマーを単独で又は2種以上とを組み合わせて用いることができる。可塑剤及びエラストマーを併用することで、室温領域の損失係数がさらに向上し、また低温領域や高温領域などの広い温度領域においても損失係数が向上するため、好ましい。
併用時の可塑剤及びエラストマーの合計含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、損失係数を向上させる観点から、15質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、25質量部以上が更に好ましい。また、剛性低下抑制の観点から、60質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、40質量部以下が更に好ましい。
また、併用時の可塑剤及びエラストマーの質量比(可塑剤/エラストマー)は、広い温度領域での損失係数向上の観点から、10/90〜90/10が好ましく、30/70〜70/30がより好ましい。
(熱可塑性エラストマー)
エラストマーとして熱可塑性エラストマーを用いることで、高温域及び低温域での制振性が向上する効果が奏されるため、好ましい。さらに可塑剤と併用することにより、さらに高温域及び低温域での広い温度領域で制振性を向上させることができる。
熱可塑性エラストマーは、高温域及び低温域での制振性向上の観点から、ガラス転移温度Tgが、好ましくは−40℃以上であり、好ましくは20℃以下である。熱可塑性エラストマーのガラス転移温度は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
本発明における熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ニトリル系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー及びシリコーン系熱可塑性エラストマーから選択される少なくとも1種が好ましく、スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、ポリスチレン−ビニル−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体やスチレンとブタジエンとのコポリマー及びその水素添加物が挙げられ、例えば、クラレプラスチックス社製「ハイブラー」、旭化成株式会社製「タフテック」「S.O.E」(登録商標)、株式会社クラレ製「セプトン」(登録商標)、三菱化学株式会社製「ラバロン」(登録商標)等がある。オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)のマトリックスにオレフィン系ゴム(EPR、EPDM)を微分散させたものが挙げられ、例えば、三菱化学株式会社製「サーモラン」(登録商標)、住友化学株式会社製「エスポレックス」(登録商標)等がある。ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、ポリブチレンテレフタレートとポリエーテルとのコポリマー等が挙げられ、例えば、東レ・デュポン株式会社製「ハイトレル」(登録商標)等がある。ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、ナイロンとポリエステル又はポリオールとのブロックコポリマーやラクタム、ジカルボン酸ポリエーテルジオールを原料としてエステル交換及び縮重合反応させたものが挙げられる。ウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、日本ポリウレタン工業株式会社製「TPU」がある。ニトリル系熱可塑性エラストマーとしては、アクリロニトリルとブタジエンとを乳化重合したもの等が挙げられる。フッ素系熱可塑性エラストマーとしては、ビニリデンフロライドとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ビニリデンフロライドとヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとの共重合体等が挙げられ、例えば、昭和高分子株式会社製「エラフトール」(登録商標)、デュポン製「バイトン」(登録商標)シリーズ等がある。ポリブタジエン系及びシリコーン系熱可塑性エラストマーとしては、シロキサン結合を骨格として、そのケイ素原子に有機基などが直接結合した有機ケイ素高分子結合物等が挙げられ、例えば、信越シリコーン製KBMシリーズ等がある。熱可塑性エラストマーとしては、高温域及び低温域での制振性向上の観点からスチレン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
(スチレン系熱可塑性エラストマー)
本発明におけるスチレン系熱可塑性エラストマー(以下、スチレン系エラストマーと称する場合がある。)は、ハードセグメントを構成するスチレン系化合物が重合してなるブロックA、及びソフトセグメントを構成する共役ジエンが重合してなるブロックBからなるものである。重合体ブロックAに用いるスチレン系化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン等のスチレン化合物;ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等のビニル基を有する多環芳香族化合物等が挙げられ、これらのうちスチレン化合物の重合体が好ましく、スチレンの重合体がより好ましい。重合体ブロックBに用いる共役ジエンとしては、例えばブタジエン、イソプレン、ブチレン、エチレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられ、好ましくはポリイソプレン、ポリブタジエン、およびイソプレンとブタジエンの共重合体が挙げられ、これらの共役ジエン単量体から選ばれる1種又2種以上を重合したブロック共重合体である。またブロックBには前記重合体ブロックAに用いるスチレン系化合物が共重合されていても良い。各々の共重合体の場合には、その形態としてはランダム共重合体、ブロック共重合体、およびテーパード共重合体のいずれの形態も選択することができる。また、水素添加された構造でもよい。
このようなスチレン系エラストマーの具体例を例示すると、ポリスチレン−イソプレンブロック共重合体(SIS)、ポリスチレン−ポリブタジエン共重合体(SEBS)、ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン共重合体(SEBS)、ポリスチレン−水素添加ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体(SEPS)、ポリスチレン−ビニル−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体(SHIVS)、ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン−水素添加ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体等が挙げられる。これらは一種類を単独で用いても、二種以上を併用してもよい。本発明においては中でも、ポリスチレン−ビニル−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体を使用することが好ましく、このようなブロック共重合体の市販品としては、クラレプラスチックス社製「ハイブラー」シリーズが挙げられる。
スチレン系エラストマー中のスチレン含有量は、高温域及び低温域での制振性向上の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。なお、本明細書において、高温域とは35〜80℃のことを、低温域とは−20〜10℃のことを意味し、スチレン系エラストマー中のスチレン含有量は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
スチレン系エラストマーとしては、スチレン・イソプレンブロック共重合体及び/又はスチレン・ブタジエンブロック共重合体が好ましい。
(スチレン・イソプレンブロック共重合体)
本発明におけるスチレン・イソプレンブロック共重合体は、両末端にポリスチレンブロックを有し、その間にポリイソプレンブロック又はビニル−ポリイソプレンブロックの少なくとも一方のブロックを有するブロック共重合体である。また、イソプレンブロックやブタジエンブロックが共重合されていてもよく、水素添加された構造でもよい。
このようなスチレン・イソプレンブロック共重合体の具体例を例示すると、ポリスチレン−イソプレンブロック共重合体(SIS)、ポリスチレン−水素添加ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体(SEPS)、ポリスチレン−ビニル−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体(SHIVS)、ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン−水素添加ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体等が挙げられる。これらは一種類を単独で用いても、二種以上を併用してもよい。本発明においては中でも、ポリスチレン−ビニル−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体を使用することが好ましく、このようなブロック共重合体の市販品としては、クラレプラスチックス社製「ハイブラー」シリーズが挙げられる。
(スチレン・ブタジエンブロック共重合体)
本発明におけるスチレン・ブタジエンブロック共重合体は、両末端にポリスチレンブロックを有し、その間にポリブタジエンブロックまたはその水素添加物を有するブロック共重合体である。また、イソプレンブロックやブタジエンブロックが共重合されていてもよく、水素添加された構造でもよい。
このようなスチレン・ブタジエンブロック共重合体の具体例を例示すると、ポリスチレン−ポリブタジエン共重合体(SEBS)、ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン共重合体(SEBS)、ポリスチレン−ポリブタジエン共重合体(SBS)、ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン共重合体(SBS)等が挙げられる。これらは一種類を単独で用いても、二種以上を併用してもよい。本発明においては中でも、ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン共重合体(SEBS)を使用することが好ましく、このようなブロック共重合体の市販品としては、旭化成株式会社製「S.O.E」が挙げられる。
ポリカーボネートとの接着性の観点から、不飽和結合の少ない、又は不飽和結合のないエラストマーが好ましい。かかる観点から好ましいエラストマーとしては、上記の各種エラストマーの中で、水素添加されたものが挙げられる。
さらに、ポリカーボネートとの接着性の観点から、酸化劣化のしにくい、又は酸化劣化が生じないエラストマーが好ましい。かかる観点から好ましいエラストマーとしては、上記の各種エラストマーの中で、水素添加されたものが挙げられる。
さらに、ポリカーボネートとの接着性の観点から、ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン共重合体(SEBS)を使用することが好ましい。
[無機充填剤(C)]
本発明におけるポリエステル樹脂組成物は、剛性向上の観点から、無機充填剤(C)を含有する。本発明における無機充填剤(C)としては、公知の無機充填剤であれば特に限定されず、通常熱可塑性樹脂の強化に用いられる無機充填剤で、具体的には、板状の充填剤、粒状の充填剤、針状の充填剤、及び繊維状の充填剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
板状の充填剤とは、アスペクト比(板状体の最大面における最長辺の長さ/該面の厚み)が20以上150以下のものである。板状充填剤の長さ(最大面における最長辺の長さ)は、ポリエステル樹脂組成物での良好な分散性を得る、曲げ弾性率を向上させる、及び/又は損失係数を向上させる観点から、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上、更に好ましくは20μm以上であり、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは50μm以下、更に好ましくは40μm以下、更に好ましくは30μm以下である。厚みは特に限定されないが、同様の観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、更に好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.2μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、更に好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下、更に好ましくは0.5μm以下である。また、板状充填剤のアスペクト比としては、同様の観点から、好ましくは30以上、より好ましくは40以上、更に好ましくは50以上であり、また、好ましくは120以下、より好ましくは100以下、更に好ましくは90以下、更に好ましくは80以下である。板状充填剤の具体例としては、例えば、マイカ等、特開2016−89148号公報の段落0064に列挙されたものが挙げられる。なお、板状充填剤の辺長及び厚みは、無作為に選んだ100本の充填剤を光学顕微鏡で観察してその数平均を算出することにより求めることができる。
粒状の充填剤とは、真球状の形態を呈するものだけでなく、ある程度断面楕円状や略長円状のものも含み、アスペクト比(粒状体の最長の直径/粒状体の最短の直径)が1以上2未満のものであり、1に近いものが好適である。粒状充填剤の平均粒径は、ポリエステル樹脂組成物での良好な分散性を得る、曲げ弾性率を向上させる、及び/又は損失係数を向上させる観点から、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上、更に好ましくは20μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、更に好ましくは30μm以下である。粒状充填剤の具体例としては、例えば特開2016−89148号公報の段落0065に列挙されたものが挙げられる。なお、粒状充填剤の直径は、無作為に選んだ100本の充填剤を切断して、断面を光学顕微鏡で観察しその数平均を算出することにより求めることができる。
針状の充填剤とは、アスペクト比(粒子長さ/粒子径)が2以上20未満の範囲のものである。針状充填剤の長さ(粒子長さ)は、ポリエステル樹脂組成物での良好な分散性を得る、曲げ弾性率を向上させる、及び/又は損失係数を向上させる観点から、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上、更に好ましくは20μm以上、更に好ましくは30μm以上であり、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは80μm以下、更に好ましくは60μm以下である。粒子径は特に限定されないが、同様の観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.5μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、更に好ましくは10μm以下である。また、針状充填剤のアスペクト比としては、同様の観点から、好ましくは5以上であり、また、好ましくは10以下である。針状充填剤の具体例としては、例えば特開2016−89148号公報の段落0066に列挙されたものが挙げられる。なお、針状充填剤の粒子長さ及び粒子径は、無作為に選んだ100本の充填剤を光学顕微鏡で観察してその数平均を算出することにより求めることができる。粒子径に短径と長径がある場合は長径を用いて算出する。
繊維状の充填剤とは、アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)が150を超えるものである。繊維状充填剤の長さ(平均繊維長)としては、曲げ弾性率向上、損失係数向上の観点から、好ましくは0.15mm以上、より好ましくは0.2mm以上、更に好ましくは0.5mm以上、更に好ましくは1mm以上であり、好ましくは30mm以下、より好ましくは10mm以下、更に好ましくは5mm以下である。平均繊維径は特に限定されないが、同様の観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは10μm以下である。また、アスペクト比としては、同様の観点から、好ましくは200以上、より好ましくは250以上、更に好ましくは500以上であり、また、好ましくは10000以下、より好ましくは5000以下、更に好ましくは1000以下、更に好ましくは800以下である。繊維状充填剤の具体例としては、例えば特開2016−89148号公報の段落0067に列挙されたものが挙げられる。なお、繊維状充填剤の繊維長及び繊維径は、無作為に選んだ100本の充填剤を光学顕微鏡で観察してその数平均を算出することにより求めることができる。繊維径に短径と長径がある場合は長径を用いて算出する。また繊維径は長径と短径が等しい円形だけでなく、長径と短径が異なる長円形(例えば長径/短径=4)や、まゆ型(例えば長径/短径=2)を用いても良い。一方、2軸押出機等の混練機を使用して樹脂組成物を作成するために樹脂と繊維状充填剤を溶融混練する場合は、混練部での剪断力により繊維状充填剤が切断され平均繊維長は短くなるが、樹脂中における繊維状充填剤の平均繊維長は、損失係数向上と剛性向上の観点から100〜800μmが好ましく、200〜700μmがより好ましく、300〜600μmが更に好ましい。
前記の粒状、板状、又は針状充填剤は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆又は集束処理されていてもよく、アミノシランやエポキシシランなどのカップリング剤などで処理されていても良い。
これらの充填剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができ、形状の異なる充填剤を組み合わせてもよい。なかでも、曲げ弾性率を向上させ、損失係数の低下を抑制する観点から、好ましくは板状充填剤、針状充填剤、及び繊維状充填剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上、より好ましくは板状充填剤及び針状充填剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上、更に好ましくは板状充填剤の1種又は2種以上である。具体的には、マイカ、タルク、ガラス繊維を用いることが好ましく、マイカ、タルクを用いることがより好ましく、マイカを用いることが更に好ましい。板状充填剤は射出成形体等においては流動方向により配向するため、他の充填剤に比べて、配向方向での引張弾性率や配向方向に垂直な方向での曲げ弾性率が顕著に向上し、また、成形体が振動する際に発生する摩擦に影響する界面が多く存在するため、さらに損失係数の低下が抑制されることが推察される。無機充填剤中の板状充填剤の含有量は、損失係数低下を抑制する観点から、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
無機充填剤(C)の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、剛性向上の観点から、10質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましく、20質量部以上が更に好ましく、30質量部以上が更に好ましい。また、損失係数の低下を抑制する観点から、80質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、60質量部以下が更に好ましく、50質量部以下が更に好ましく、45質量部以下が更に好ましい。なお、無機充填剤の含有量とは、用いられる無機充填剤の合計質量のことであり、複数の化合物が含有される場合には、総含有量のことを意味する。
また、ポリエステル樹脂組成物中、無機充填剤の含有量は、剛性向上の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、更に好ましくは23質量%以上であり、損失係数の低下を抑制する観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
本発明において、成分(B)と無機充填剤(C)の質量比(成分(B)/無機充填剤(C))は、弾性率向上と損失係数向上の観点から、10/90〜60/40が好ましく、25/75〜50/50がより好ましく、40/60〜47/53が更に好ましい。
[有機結晶核剤(D)]
また、本発明におけるポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂の結晶化速度を向上させ、ポリエステル樹脂の結晶性を向上させ、曲げ弾性率を向上させる観点から、有機結晶核剤を含有することができる。
有機結晶核剤としては、公知の有機系結晶核剤を用いることができ、有機カルボン酸金属塩、有機スルホン酸塩、カルボン酸アミド、リン化合物金属塩、ロジン類の金属塩、アルコキシ金属塩、及び有機含窒素化合物などを用いることができる。具体的には、例えば特開2016−89148号公報の段落0074に列挙されたものが挙げられる。
有機結晶核剤(D)の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、曲げ弾性率、及び損失係数を向上させる観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上であり、曲げ弾性率、及び損失係数を向上させる観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。なお、本明細書において、有機結晶核剤の含有量とは、ポリエステル樹脂組成物に含有される全ての有機結晶核剤の合計含有量を意味する。
本発明におけるポリエステル樹脂組成物は、前記以外の他の成分として、滑剤、無機結晶核剤、加水分解抑制剤、難燃剤、酸化防止剤、炭化水素系ワックス類やアニオン型界面活性剤である滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。また同様に、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の高分子材料や他の樹脂組成物を含有することも可能である。
本発明におけるポリエステル樹脂組成物は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)、可塑剤及び/又はエラストマーである成分(B)、並びに無機充填剤(C)を含有するのであれば特に限定なく調製することができる。例えば、熱可塑性ポリエステル樹脂、可塑剤及び/又はエラストマー、ならびに無機充填剤、更に必要により各種添加剤を含有する原料を、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて溶融混練して調製することができる。溶融混練後は、公知の方法に従って、溶融混練物を乾燥又は冷却させてもよい。また、原料は、予めヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等を用いて均一に混合した後に、溶融混練に供することも可能である。なお、溶融混練する際にポリエステル樹脂の可塑性を促進させるため、超臨界ガスを存在させて溶融混合させてもよい。
溶融混練温度は、用いる熱可塑性ポリエステル樹脂の種類によって一概には設定されないが、ポリエステル樹脂組成物の成形性及び劣化防止を向上する観点から、好ましくは220℃以上、より好ましくは225℃以上、更に好ましくは230℃以上、そして、好ましくは300℃以下、より好ましくは290℃以下、更に好ましくは280℃以下、更に好ましくは260℃以下、更に好ましくは250℃以下、更に好ましくは240℃以下である。溶融混練時間は、溶融混練温度、混練機の種類によって一概には決定できないが、15〜900秒間が好ましい。
2.積層シートの製造方法
次に、本発明の積層シートの製造方法について説明する。
本発明の積層シートは、従来公知の方法により製造することができる。例えば、各層を予め別々に形成しておきラミネートする又は熱圧着プレスする方法、予め形成した層の上面又は下面にコーティングして他の層を形成させる方法、それぞれの樹脂層を共押出し方により積層する方法等が挙げられる。以下、製造方法の一例として、各層を予め別々に形成しておき、各層を積み重ねた後に熱圧着プレスする方法をより具体的に述べる。
<ポリカーボネート層の製造>
ポリカーボネート層として使用されるポリカーボネート樹脂組成物から成形されるシート状成形体は、公知の方法、例えばインフレーション成形、押出シート成形、プレス成型、キャスト成形等の方法により、所望の厚みのものを得ることができる。
<制振層の製造>
前述のようにして調製されるポリエステル樹脂組成物の溶融混練物を、例えば、公知の押出機や延伸機に供給して延伸することによって、所望の厚みの制振層を製造することができる。
<熱圧着プレスの条件>
前述のようにして製造した各層を所定の順序で重ね合わせる。プレス機にセットし、圧力1〜7MPa、温度160〜190℃、プレス時間0.5〜2.0分間の条件で圧着して、その後、常温になるまで冷却し、所定の積層シートを得ることができる。熱圧着プレスで積層シートを製造する場合、プレス前後でポリカーボネート層や制振層の厚さの変化はほとんど無視できる程度である。
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の積層シートを開示する。
<1> 制振層とポリカーボネート層とが積層されている積層シートであって、
該制振層が積層シートの表面及び/又は表面近傍に存在し、
該制振層が、ジカルボン酸成分とジオール成分とを含む成分から構成される熱可塑性ポリエステル樹脂(A)、可塑剤及び/又はエラストマーである成分(B)、並びに無機充填剤(C)を含有してなるポリエステル樹脂組成物のシート状成形体である、積層シート。
<2> 積層シートの上部表面からの制振層の相対的位置(%)が、好ましくは40%以内、より好ましくは33%以内、更に好ましくは30%以内、更に好ましくは25%以内、更に好ましくは20%以内、更に好ましくは15%以内、更に好ましくは10%以内であり、そして、好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.25%以上、更に好ましくは0.5%以上、更に好ましくは1.0%以上、更に好ましくは5.0%以上、更に好ましくは10%以上である、前記<1>に記載の積層シート。
<3> 積層シート中の制振層の割合が、体積分率で、好ましくは1%以上、より好ましくは5%以上、更に好ましくは10%以上であり、そして、好ましくは70%以下、より好ましくは50%以下、更に好ましくは34%以下、さらに好ましくは25%以下である、前記<1>又は<2>に記載の積層シート。
<4> 熱可塑性ポリエステル樹脂(A)がポリブチレンテレフタレートを含む、前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の積層シート。
<5> 無機充填剤(C)が板状充填剤を含む、前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の積層シート。
<6> (B)成分が、1種以上の可塑剤と1種以上のエラストマーとを含む、前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の積層シート。
<7> 制振層の少なくとも1層が10〜40%の位置割合にある、前記<1>〜<6>のいずれか1項に記載の積層シート。
<8> 各ポリカーボネート層の厚みが、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.10mm以上、更に好ましくは0.15mm以上であり、そして、好ましくは10mm以下、より好ましくは5.0mm以下、更に好ましくは3.5mm以下である、前記<1>〜<7>のいずれか1項に記載の積層シート。
<9> 各制振層の厚みが、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.2mm以上、更に好ましくは0.4mm以上であり、そして、好ましくは10mm以下、より好ましくは5.0mm以下、更に好ましくは1.0mm以下である、前記<1>〜<8>のいずれか1項に記載の積層シート。
<10> 積層シート全体の厚みが、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは1.0mm以上、更に好ましくは1.5mm以上、更に好ましくは2.0mm以上、更に好ましくは2.5mm以上であり、そして、好ましくは30mm以下、より好ましくは10mm以下、更に好ましくは5.0mm以下である、前記<1>〜<9>のいずれか1項に記載の積層シート。
<11> 制振層の総厚みを100%とした場合、ポリカーボネート層の総厚みが、好ましくは100%以上、より好ましくは200%以上、更に好ましくは300%以上であり、そして、好ましくは2000%以下、より好ましくは1000%以下である、前記<1>〜<10>のいずれか1項に記載の積層シート。
<12> 熱可塑性ポリエステル樹脂(A)が好ましくはポリブチレンテレフタレートであり;可塑剤が好ましくは、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ビスフェノール系可塑剤からなる群より選ばれる1種以上であり;エラストマーが好ましくは、ポリスチレン−イソプレンブロック共重合体(SIS)、ポリスチレン−ポリブタジエン共重合体(SEBS)、ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン共重合体(SEBS)、ポリスチレン−水素添加ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体(SEPS)、ポリスチレン−ビニル−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体(SHIVS)、ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン−水素添加ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体及びポリスチレン−水素添加ポリブタジエン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体からなる群より選択される1種以上のスチレン系エラストマーであり;並びに無機充填剤(C)が好ましくは板状充填剤、より好ましくはマイカ及び/又はタルクである、前記<1>〜<11>のいずれか1項に記載の積層シート。
<13> ポリエステル樹脂組成物中の熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の含有量が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下であり;ポリエステル樹脂組成物中の可塑剤の含有量が、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下であり;ポリエステル樹脂組成物中のエラストマーの含有量が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは9.5質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下であり;ポリエステル樹脂組成物中の無機充填剤の含有量が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、更に好ましくは23質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である、前記<1>〜<12>のいずれか1項に記載の積層シート。
<14> 併用時の可塑剤及びエラストマーの合計含有量が、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは15質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは25質量部以上であり、そして、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である、前記<1>〜<13>のいずれか1項に記載の積層シート。
<15> 併用時の可塑剤及びエラストマーの質量比(可塑剤/エラストマー)が、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは30/70〜70/30である、前記<1>〜<14>のいずれか1項に記載の積層シート。
<16> 成分(B)と無機充填剤(C)の質量比(成分(B)/無機充填剤(C))が、好ましくは10/90〜60/40、より好ましくは25/75〜50/50、更に好ましくは40/60〜47/53である、前記<1>〜<15>のいずれか1項に記載の積層シート。
<17> 積層シートにおける各層の好ましい配置が、ポリカーボネート層(PC)/制振層(PBT)、PC/PBT/PC、PC/PBT/PC/PBT/PC、及びPBT/PC/PBTからなる群より選択される1種又は2種以上である、前記<1>〜<16>のいずれか1項に記載の積層シート。
<18> 損失係数が好ましくは0.04以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.06以上、更に好ましくは0.07以上である、前記<1>〜<17>のいずれか1項に記載の積層シート。
<19> 曲げ弾性率が好ましくは2.7以上、より好ましくは2.8以上、更に好ましくは2.9以上、更に好ましくは3.1以上である、前記<1>〜<18>のいずれか1項に記載の積層シート。
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。なお、この実施例は、単なる本発明の例示であり、何ら限定を意味するものではない。例中の部は、特記しない限り質量部である。なお、「常圧」とは101.3kPaを、「常温」とは25℃を示す。
<熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の質量平均分子量>
ペレットサンプル0.6mgをHFIP(1,1,1,3,3,3−Hexafluoro−2−propanol 和光純薬社製)2gに完全に溶解させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(TOSOH社製:EcoSEC HLC−8320GPC)を用いて分子量測定を行う。測定条件については、溶離液はHFIP/0.5mM トリフルオロ酢酸Na、流量は0.2mL/min、測定温度は40℃で行う。検量線の作成のための標準ポリマーとしては、ポリスチレン(東ソー株式会社製)を使用する。なお、複数のピークや肩部が認められた時、単一のピークとしてポリエステル樹脂の分子量分布とする。
<ポリエステル樹脂組成物の絶対結晶化度(Xc)>
ポリエステル樹脂組成物をプレス成形して得られた平板試験片(127mm×12.7mm×1.6mm)について、XRD(Rigaku社製:MiniFlex II DESKTOP X−ray DIFFRACTOMETER)を用いて、X線入射角2θ=5°〜40°における回折光の計測を行い、ピークとハローの強度から、絶対結晶化度を算出する。
<熱可塑性ポリエステル樹脂及びエラストマーのガラス転移温度>
後述と同様にして調製したポリエステル樹脂組成物のシート状成形体又はエラストマーの平板試験片(40mm×5mm×0.4mm)を作製する。次いで、DMA装置(SII社製、EXSTAR6000)を用い、測定周波数を1Hzとして、昇温速度2℃/分で−50℃から250℃まで昇温し、得られた損失弾性率のピーク温度をガラス転移点として求める。
<熱可塑性ポリエステル樹脂の結晶化エンタルピー>
熱可塑性ポリエステル樹脂試料約7mgを計量し、DSC装置(パーキンエルマー社製、DSC8500)を用い、JIS K7122(1999)に準じて、昇温速度20℃/minで樹脂を25℃から300℃まで加熱し、その状態で5分間保持後、次いで25℃以下となるよう−20℃/minで冷却したとき、結晶化に伴う発熱ピークから結晶化エンタルピーを算出する。
<スチレン系エラストマーのスチレン含有量>
エラストマーを重水素化クロロホルムに溶解し、その試料溶液のH−NMRスペクトルを観測幅15ppmで測定する。またあらかじめ、3種の濃度のポリスチレン/重水素化クロロホルム溶液のH−NMRスペクトルのスチレンのピーク面積と濃度から検量線を求め、この検量線を用いて、試料溶液のスチレンのピーク面積からスチレンの含有量を算出する。
<ポリカーボネートのMFR>
ASTM D1238に準拠して、試験温度300℃、試験荷重1.2kgfの条件で求める。
製造例1及び製造例3(ポリエステル樹脂組成物のシート状成形体の製造)
表1に示すポリエステル樹脂組成物の原料を、同方向噛み合型二軸押出機(日本製鋼所社製 TEX−28V)を用いて240℃で溶融混練し、ストランドカットを行い、樹脂組成物のペレットを得た。なお、得られたペレットは、110℃で3時間除湿乾燥し、水分量を500ppm以下とした。
次いで、得られたペレットを50mm単軸押出機に供給し、240℃で溶融混錬した後、溶融混錬物をロール温度90℃に制御されたロールと冷却されたロールでシート状に成形した後、幅450mm、厚み0.5mmのシートを巻き取り、ポリエステル樹脂組成物のシート状成形体(「PBTシート」と略記する。)とした。
なお、表1における原料の詳細は以下の通りである。
〔熱可塑性ポリエステル樹脂〕
PBT(700FP):ポリブチレンテレフタレート樹脂、ジュラネックス700FP(ポリプラスチックス社製、非強化、ガラス転移温度:50℃、結晶化エンタルピーΔHmc:44J/g)
〔可塑剤〕
DAIFATTY−101:アジピン酸と、ジエチレングリコールモノメチルエーテル/ベンジルアルコール=1/1との混合ジエステル(大八化学工業社製);5%質量減少温度:235℃
〔エラストマー〕
スチレン・イソプレンブロック共重合体:ハイブラー5127(クラレプラスチック社製、ガラス転移温度:8℃、スチレン含有量:20質量%)
ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン共重合体:S.O.E.S1605(旭化成社製、ガラス転移温度:8℃、スチレン含有量:67質量%)
〔無機充填剤〕
マイカ:A−21S(ヤマグチマイカ社製、最大面における最長辺の長さ:23μm、最大面の厚み:0.33μm、アスペクト比:70)
製造例2(ポリカーボネート樹脂組成物シートの製造)
ポリカーボネート樹脂(サビック社製、商品名:LEXAN、MFR:7g/10分(300℃、1.2kgf))のペレットを、先端に500mm幅のダイとフィルム引き取り装置を取り付けた直径50mmの単軸押出機に供給しながら、バレル温度260〜300℃にて製膜し、厚み0.5mmのPCシートを得た。
製造例4(ポリカーボネート樹脂組成物シートの製造)
ポリカーボネート樹脂(サビック社製、商品名:LEXAN、MFR:7g/10分(300℃、1.2kgf))のペレットを、先端に500mm幅のダイとフィルム引き取り装置を取り付けた直径50mmの単軸押出機に供給しながら、バレル温度260〜300℃にて製膜し、厚み0.25mmのPCシートを得た。
実施例1(積層シートの製造)
製造例1で製造されたPBTシートを1枚、製造例2で製造されたPCシートを2枚用意した。1枚のPBTシートの上面にPCシートを2枚積層した。次いで、この3枚の積層物をプレス加熱温度が165℃に設定されたプレス機を用いて、圧力0.2〜3MPaの条件で1分間加熱圧縮して一体化させ、次いで冷却プレスにより常温まで冷却した。このようにして、厚み1.5mmの積層シートを製造した。
製造された積層シートは、制振層1としてのPBTシートの上面に、ポリカーボネート層2としてのPCシートが積層されている構造であり、その断面は図2Aの断面図に該当するものであった。
実施例2(積層シートの製造)
製造例1で製造されたPBTシートを1枚、製造例2で製造されたPCシートを8枚用意した。1枚のPBTシートの上面にPCシートを1枚積層し、該PBTシートの下面にPCシートを7枚積層した。次いで、この9枚の積層物をプレス加熱温度が165℃に設定されたプレス機を用いて、圧力0.2〜3MPaの条件で2分間加熱圧縮して一体化させ、次いで冷却プレスにより常温まで冷却した。このようにして、厚み4.5mmの積層シートを製造した。
製造された積層シートは、制振層1としてのPBTシートの上面に、ポリカーボネート層2としてのPCシートが積層され、制振層1の下面に、ポリカーボネート層3としてのPCシートが積層されている構造であり、その断面は図2Bの断面図に該当するものであった。
実施例3(積層シートの製造)
製造例1で製造されたPBTシートを1枚、製造例4で製造された0.25mm厚のPCシートを14枚用意した。1枚のPBTシートの上面にPCシートを1枚積層し、該PBTシートの下面にPCシートを13枚積層した。次いで、この15枚の積層物をプレス加熱温度が165℃に設定されたプレス機を用いて、圧力0.2〜3MPaの条件で2分間加熱圧縮して一体化させ、次いで冷却プレスにより常温まで冷却した。このようにして、厚み4.0mmの積層シートを製造した。
製造された積層シートは、制振層1としてのPBTシートの上面に、ポリカーボネート層2としてのPCシートが積層され、制振層1の下面に、ポリカーボネート層3としてのPCシートが積層されている構造であり、その断面は図4Aの断面図に該当するものであった。
比較例1(積層シートの製造)
製造例1で製造されたPBTシートを1枚、製造例2で製造されたPCシートを2枚用意した。1枚のPBTシートの上面にPCシートを1枚積層し、該PBTシートの下面にPCシートを1枚積層した。次いで、この3枚の積層物をプレス加熱温度が165℃に設定されたプレス機を用いて、圧力0.2〜3MPaの条件で1.5分間加熱圧縮して一体化させ、次いで冷却プレスにより常温まで冷却した。このようにして、厚み1.5mmの積層シートを製造した。
製造された積層シートは、制振層1としてのPBTシートの上面に、ポリカーボネート層2としてのPCシートが積層され、制振層1の下面に、ポリカーボネート層3としてのPCシートが積層されている構造であり、その断面は図3Aの断面図に該当するものであった。
比較例2(積層シートの製造)
製造例1で製造されたPBTシートを1枚、製造例2で製造されたPCシートを8枚用意した。1枚のPBTシートの上面にPCシートを4枚積層し、該PBTシートの下面にPCシートを4枚積層した。次いで、この9枚の積層物をプレス加熱温度が165℃に設定されたプレス機を用いて、圧力0.2〜3MPaの条件で1.5分間加熱圧縮して一体化させ、次いで冷却プレスにより常温まで冷却した。このようにして、厚み4.5mmの積層シートを製造した。
製造された積層シートは、制振層1としてのPBTシートの上面に、ポリカーボネート層2としてのPCシートが積層され、制振層1の下面に、ポリカーボネート層3としてのPCシートが積層されている構造であり、その断面は図3Bの断面図に該当するものであった。
比較例3(制振層のみから形成される積層シートの製造)
製造例1で製造されたPBTシートを4枚用意した。4枚のPBTシートを積層し、次いで、この4枚の積層物をプレス加熱温度が225℃に設定されたプレス機を用いて、圧力0.2〜3MPaの条件で1.5分間加熱圧縮して一体化させ、次いで冷却プレスにより常温まで冷却した。このようにして、厚み2.0mmの積層シートを製造した。
製造された積層シートは、制振層1としてのPBTシートのみから形成される積層シートであった。
比較例4(積層シートの製造)
製造例1で製造されたPBTシートを1枚、製造例2で製造されたPCシートを7枚用意した。1枚のPBTシートの上面にPCシートを4枚積層し、該PBTシートの下面にPCシートを3枚積層した。次いで、この8枚の積層物をプレス加熱温度が165℃に設定されたプレス機を用いて、圧力0.2〜3MPaの条件で1.5分間加熱圧縮して一体化させ、次いで冷却プレスにより常温まで冷却した。このようにして、厚み4.0mmの積層シートを製造した。
製造された積層シートは、制振層1としてのPBTシートの上面に、ポリカーボネート層2としてのPCシートが積層され、制振層1の下面に、ポリカーボネート層3としてのPCシートが積層されている構造であり、その断面は図4Bの断面図に該当するものであった。
得られた各積層シートの特性を、下記の試験例に従って評価した。結果を表2に示す。なお、実施例2、比較例2及び比較例3についての評価結果の記載は省略した。
試験例1〔損失係数〕
各積層シートを127mm×12.7mm×厚み(2.0〜4.5)mm(厚みは各実施例及び比較例で得られた積層シートの厚みによる)のサイズに裁断して、平板試験片とした。
平板試験片について、JIS K7391に基づいて、中央加振法により計測した周波数応答関数の2次共振のピークから、半値幅法により損失係数を算出した。発振器はType 3160、増幅器はType 2718、加振器はType 4810、加速度センサはType 8001で構成されるシステムを用い(いずれもB&K社製)、損失係数計測ソフトウェアMS18143を用いた。測定環境は恒温槽(エスペック社製、PU−3J)で制御し、23℃で測定した。積層シートの損失係数が高いほど、振動の減衰が速い、即ち積層シートの制振効果が高いと判断できる。
試験例2〔剛性〕
各積層シートを30mm×25mm×厚み(2.0〜4.5)mm(厚みは各実施例及び比較例で得られた積層シートの厚みによる)のサイズに裁断して、平板試験片とした。平板試験片について、JIS K7171に基づいて、テンシロン万能材料試験機(オリエンテック社製、RTC−1250A)を用いて、支点間距離を24mm、試験速度を1mm/minに設定して曲げ試験を行い、曲げ弾性率を求めた。曲げ弾性率が2.0GPa以上の場合に曲げ弾性率が高く、良好な剛性を有すると判断できる。
本発明の積層シート(実施例のもの)は、損失係数が高く、かつ弾性率も高いものであり、自立性と制振効果の両方に優れていることが分かった。さらに、十分な剛性と衝撃強度が高いことが予想される。一方、制振層が所定の位置にない積層シート(比較例1、2及び4)は、損失係数が低いため、制振効果に乏しいものであり、制振層のみから形成される積層シート(比較例3)は、弾性率が低いため、剛性が低いものであることが分かった。さらに、ポリカーボネート層と制振層とを組み合わせた積層シートであっても、本発明の積層構造を持たない場合、剛性と制振効果の両方を満足させることができないことが分かった(比較例1、2及び4)。
実施例4(積層シートの製造)
製造例1で製造されたPBTシートを2枚、製造例2で製造されたPCシートを6枚用意した。1枚のPBTシートの下面にPCシートを1枚積層し、該PBTシートの上面にPCシートを4枚積層し、該PCシートの上面にPBTシートを1枚積層し、該PBTシートの上面にPCシートを1枚積層した。次いで、この8枚の積層物をプレス加熱温度が165℃に設定されたプレス機を用いて、圧力0.2〜3MPaの条件で2分間加熱圧縮して一体化させ、次いで冷却プレスにより常温まで冷却した。このようにして、厚み4.0mmの積層シートを製造した。
製造された積層シートは、制振層1の上面に、ポリカーボネート層2、制振層4及びポリカーボネート層5が積層され、制振層1の下面に、ポリカーボネート層3が積層されている構造であり、その断面は図5Aの断面図に該当するものであった。
実施例5(積層シートの製造)
製造例1で製造されたPBTシートを2枚、製造例2で製造されたPCシートを6枚用意した。1枚のPBTシートの上面にPCシートを6枚積層し、該PCシートの上面にPBTシートを1枚積層した。次いで、この8枚の積層物をプレス加熱温度が165℃に設定されたプレス機を用いて、圧力0.2〜3MPaの条件で2分間加熱圧縮して一体化させ、次いで冷却プレスにより常温まで冷却した。このようにして、厚み4.0mmの積層シートを製造した。
製造された積層シートは、制振層1の上面に、ポリカーボネート層2及び制振層4が積層されている構造であり、その断面は図5Bの断面図に該当するものであった。
実施例6(積層シートの製造)
製造例1で製造されたPBTシートを2枚、製造例4で製造された0.25mm厚のPCシートを12枚用意した。1枚のPBTシートの下面にPCシートを1枚積層し、該PBTシートの上面にPCシートを10枚積層し、該PCシートの上面にPBTシートを1枚積層し、該PBTシートの上面にPCシートを1枚積層した。次いで、この14枚の積層物をプレス加熱温度が165℃に設定されたプレス機を用いて、圧力0.2〜3MPaの条件で2分間加熱圧縮して一体化させ、次いで冷却プレスにより常温まで冷却した。このようにして、厚み4.0mmの積層シートを製造した。
製造された積層シートは、制振層1の上面に、ポリカーボネート層2、制振層4及びポリカーボネート層5が積層され、制振層1の下面に、ポリカーボネート層3が積層されている構造であり、その断面は図5Cの断面図に該当するものであった。
実施例7(積層シートの製造)
製造例1で製造されたPBTシートの代わりに、製造例3で製造されたPBTシートを用いたこと以外は実施例1と同じ条件で、厚み1.5mmの積層シートを製造した。
製造された積層シートは、制振層1としてのPBTシートの上面に、ポリカーボネート層2としてのPCシートが積層されている構造であり、その断面は図2Aの断面図に該当するものであった。
実施例4〜6より、積層シートが複数の制振層を有していても、本発明の条件を満たす限り、その損失係数は高く、かつ弾性率も高いものであること、即ち、自立性と制振効果の両方に優れていることが分かった。さらに、PCシートを相対的に厚く設定しても、十分な制振性を確保できることが分かった。さらに、エラストマーとしてポリスチレン−水素添加ポリブタジエン共重合体を用いて得られた積層シート(実施例7)は、スチレン・イソプレンブロック共重合体を用いて得られた積層シート(実施例1)と同程度の損失係数及び弾性率を示すことが分かった。即ち、ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン共重合体も、エラストマーとして好ましく使用できることが分かった。
本発明の積層シートはポリカーボネート層を有するために十分な剛性と衝撃強度を有し、それだけでなく損失係数が高いため制振効果に優れているので、例えばスピーカー、テレビ、ラジカセ、ヘッドフォン、オーディオコンポ又はマイク等の音響機器の材料や電気製品、乗物、建築物、産業用機器等の製品又はそれらの部品、筐体用の制振材料として好適に使用することができる。
1 制振層
2 ポリカーボネート層
3 ポリカーボネート層
4 制振層
5 ポリカーボネート層

Claims (9)

  1. 制振層とポリカーボネート層とが積層されている積層シートであって、
    該制振層が積層シートの表面及び/又は表面近傍に存在し、
    該制振層が、ジカルボン酸成分とジオール成分とを含む成分から構成される熱可塑性ポリエステル樹脂(A)、可塑剤及び/又はエラストマーである成分(B)、並びに無機充填剤(C)を含有してなるポリエステル樹脂組成物のシート状成形体である、積層シート。
  2. 積層シートの上部表面からの制振層の相対的位置(%)が30%以内である、請求項1に記載の積層シート
  3. 積層シート中の制振層の割合が、体積分率で1%以上70%以下である、請求項1又は2に記載の積層シート。
  4. 熱可塑性ポリエステル樹脂(A)がポリブチレンテレフタレートを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層シート。
  5. 無機充填剤(C)が板状充填剤を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層シート。
  6. (B)成分が、1種以上の可塑剤と1種以上のエラストマーとを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層シート。
  7. 制振層の少なくとも1層が10〜40%の位置割合に存在する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層シート。
  8. 各ポリカーボネート層の厚みが、0.05mm以上、10mm以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層シート。
  9. 各制振層の厚みが、0.05mm以上、10mm以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の積層シート。
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