(本開示の基礎となる知見)
上述した加熱サービスを行う上では、客が、弁当および惣菜等(被加熱物の一例)を複数個買うことがある。その場合に、客は、複数の被加熱物が、一緒に電子レンジ庫内に入れられて、同時に加熱されることを期待する。
複数の被加熱物を、横に並べて電子レンジ庫内に載置できる場合には、カメラを備えた電子レンジを用いれば、複数の被加熱部それぞれのバーコードを全て読み込むことができる。
一方で、複数の被加熱物のうち、少なくとも一つが、上面から見た場合に面積が大きいと、電子レンジの庫内に、複数の被加熱物を、横に並べて同時に置けない場合が生じる。
これらの複数の被加熱物は、横には並べて置けないが、積み重ねれば、電子レンジ庫内に同時に入る場合もある。
このように、複数の被加熱物が積み重ねられた場合、電子レンジのカメラは、積み重ねられた複数の被加熱物のうち、一番上の被加熱物以外の被加熱物のバーコードを読めなくなってしまう。
したがって、このような場合には、複数の被加熱物を同時に、適切に加熱することができなくなる。そのため、一つずつ加熱する、または、複数個の加熱に適した加熱時間を手操作で入力する等の、煩わしい作業が発生する。
本開示は、このような問題に鑑みてなされたものである。
(本開示の態様の一例)
本開示の第1の態様の一例は、加熱調理器であって、少なくとも一つの被加熱物が収納される加熱庫と、加熱庫に収納された、少なくとも一つの被加熱物を加熱する加熱部と、加熱庫内を撮影する撮影部とを備えている。少なくとも一つの被加熱物は、複数の被加熱物を含んでいる。加熱調理器は、複数の被加熱物が加熱庫に収納された場合に、複数の被加熱物のうち、少なくとも一つの被加熱物に付与された加熱制御情報を読み取る読取部を備えている。加熱調理器は、複数の被加熱物が加熱庫に収納された場合に、少なくとも複数の被加熱物を同時に加熱するか否かを示す複数設定情報を設定する複数設定部と、読取部により読み取られた加熱制御情報と、複数設定部により設定された複数設定情報とに基づいて、第1の複数加熱用の加熱制御情報を算出する加熱情報算出部とを備えている。さらに加熱調理器は、第1の複数加熱用の加熱制御情報に基づいて、加熱部を制御する加熱制御部を備えている。
これにより、加熱調理器の加熱庫内に、加熱対象となる複数の被加熱物を入れた場合には、撮影部が撮影した画像に基づいて、読取部がその被加熱物に付与された加熱制御情報を読取る。そして、複数の食品を同時に加熱する場合には、使用者が設定する複数設定部での設定が行われ、読み取られた加熱情報と複数設定部での設定情報を基に、加熱情報算出部が加熱時間を算出し、加熱制御部が加熱部を制御する。よって、簡単な操作で、複数個の食品を、同時に適切に加熱することができる。
第2の態様は、複数の被加熱物それぞれに付与された加熱制御情報は、加熱パワーおよびその加熱パワーにおける加熱時間を含んでもよい。そして、加熱情報算出部は、第1の複数加熱用の加熱制御情報を変換して、第1の複数加熱用の加熱制御情報とは異なる、第2の複数加熱用の加熱制御情報を算出するパワー変換部を有してもよい。
これにより、さらに、パワー変換部が、読み取られた、加熱パワーおよび加熱時間から、当該加熱パワーとは異なる加熱パワーも含めた、最適加熱パワーでの複数同時加熱の加熱時間を算出する。よって、例えば高出力で短時間、加熱することができ、簡単な操作で、複数個の食品を、同時に適切に加熱することができる。
第3の態様は、パワー変換部が、加熱部の最大出力に応じて、第2の複数加熱用の加熱制御情報を算出するものであってもよい。
これにより、さらに、パワー変換部が、読み取られた、加熱パワーおよび加熱時間から、加熱制御部が、最大発揮できる加熱パワーでの加熱制御情報を算出する。よって、最短の時間での加熱が可能となる。
第4の態様は、読取部が、複数の被加熱物から、互いに異なる複数の加熱制御情報を読取った場合に、エラーおよび注意喚起のうち、少なくともいずれかの報知を行う報知部さらに備えていてもよい。
これにより、さらに、マイクロ波の吸収特性が互いに異なる食品等が複数、庫内に入れられた場合に、複数食品間で、仕上がり温度に大きい差が出る等の不適切な加熱が行われないように、事前に報知部が報知することができる。よって、簡単な操作で、複数個の食品を同時に適切に加熱することができる。
第5の態様は、読取部が、複数の被加熱物から複数の加熱制御情報を読取った場合、かつ、複数設定部により複数設定情報が設定されなかった場合に、エラーおよび注意喚起のうち、少なくともいずれかの報知を行う報知部をさらに備えていてもよい。
これにより、さらに、使用者が誤って複数設定を行わなかった場合に、意図しない加熱が行われることを防止することができる。
第6の態様は、複数設定情報が、複数の被加熱物の数を示す情報を含んでもよい。そして、読取部が、複数の被加熱物から複数の加熱制御情報を読取った場合、かつ、複数設定部による複数設定情報の複数の被加熱物の数が、読取部が読み取った複数の加熱制御情報の数よりも少ない場合に、エラーおよび注意喚起のうち、少なくともいずれかの報知を行う報知部をさらに備えてもよい。
これにより、さらに、使用者が誤って食品を複数入れてしまった場合に、意図しない加熱が行われることを防止することができる。
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって、本開示が限定されるものではない。
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態に係る、加熱調理器の一例である電子レンジ1の外観斜視図である。
図1に示すように、電子レンジ1は、食品を格納するための筐体2、および、筐体2に設けられた、食品を出し入れするためのドア3を備えている。ドア3には、外部から筐体2内部を見えるようにするための、透明のガラス窓4と、ドア3を開閉するときに掴まれる取っ手5と、操作表示部6とが設けられている。
操作表示部6は、報知部である液晶表示器7、時間設定ボタン群8、複数設定部の一例である倍量ボタン9、加熱開始ボタン10、取消ボタン11、および、一時停止ボタン12を備えている。
電子レンジ1は、後述するように、加熱対象(被加熱物)である商品を撮影部により撮影して、商品に表示されている、加熱パワーおよび加熱時間を読み取り、自動で加熱を行う。
倍量ボタン9が押された場合には、同じ食品が複数入れられているものとして、商品に表示されている、加熱パワーおよび加熱時間(加熱制御情報)から、複数の被加熱物を同時に加熱するための、加熱パワーおよび加熱時間(複数加熱用の加熱制御情報)を算出して加熱する。
液晶表示器7には、自動で加熱を行う場合の加熱時間等が表示される。加熱時間がうまく読み取れなかった場合、または、加熱時間の表示されていない商品を加熱する場合のために、電子レンジ1には、時間設定ボタン群8が設けられている。
使用者は、時間設定ボタン群8の、数字ボタン、ならびに、「分」、および「秒」のボタンを使って、加熱時間を設定することができる。この場合、液晶表示器7には、設定された加熱時間が表示される。液晶表示器7は、エラーおよび注意喚起のうち、少なくともいずれかを示す表示を行う、報知部としての機能も備えている。
加熱開始ボタン10は、使用者が、液晶表示器7に表示された加熱時間を確認した後、加熱を開始するときに押されるボタンである。
取消ボタン11は、使用者が、加熱開始ボタン10を押して加熱を開始した後に、加熱途中で加熱を停止する場合に押されたり、液晶表示器7に表示されている加熱時間の設定を取り消す場合に押されたりするボタンである。
一時停止ボタン12は、使用者が、加熱途中で加熱を一時的に停止する場合に押されるボタンである。また、加熱が一時停止した場合に、使用者は、再度、加熱開始ボタン10を押すことで、途中から、残りの加熱が行われる。
図2は、本実施の形態に係る電子レンジ1の概略構成図である。
電子レンジ1は、高周波による食品等の加熱が可能であり、食品等の被加熱物を収納する加熱庫13内に、高周波を出力する加熱部であるマグネトロン14が設けられている。マグネトロン14により、高周波が加熱庫13に供給されて、食品が加熱される。マグネトロン14は、加熱制御部15により制御される。
電子レンジ1は、照明16、および、照明16が設けられたのと同じ側面に、撮影部であるカメラ17を備えている。加熱庫13には、少なくとも一つの被加熱物が収納される。マグネトロン14は、少なくとも一つの被加熱物を加熱する。
カメラ17は、加熱庫13内の映像を撮影する。カメラ17は照明16と同じ側面に配置されているので、逆光になることなく、加熱庫13内を撮影できる。
筐体2には、ドア3の開閉検知のためのドアスイッチ18が設けられている。ドア3には、このドアスイッチ18を押し込むための突起部19が設けられている。これらのドア3の開閉検知の構成は一例であり、他の構成を用いることもできる。
加熱庫13には、弁当、おにぎり、および惣菜等の商品(被加熱物)が入れられる。それら商品それぞれには、商品の加熱制御情報としての、加熱パワーおよび加熱時間が表示された貼付物である、シール20(図3参照)が貼付されている。
このシール20には、一般的な家庭用の電子レンジで加熱する時の目安として、例えば500Wの加熱パワーで加熱する場合の加熱時間と、業務用の電子レンジで、大きい加熱パワーで短時間、加熱する時の目安として、例えば1500Wの加熱パワーで加熱する場合の加熱時間とが併記されている。
具体的に、シール20には、例えば、「500W2分00秒 1500W0分40秒」等と表示されている。
より具体的には、加熱制御情報は、所定の加熱パワーでの加熱量を表す数字である第1文字列、例えば「500」と、その加熱パワーの単位を表す第2文字列、例えば「W」と、その加熱パワーでの加熱時間である数字である第3文字列、例えば「2」と、その加熱時間の単位を表す第4文字列、例えば「分」と、その加熱パワーでの加熱時間を示す数字である第5文字列、例えば「00」と、その加熱時間の単位を表す第6文字列、例えば「秒」とをこの順に含む文字列である。
また、加熱制御情報は、前述した所定の加熱パワーよりも大きい加熱パワーの加熱量を表す数字である第7文字列、例えば「1500」と、その加熱パワーの単位を表す第8文字列、例えば「W」と、その加熱パワーでの加熱時間である数字である第9文字列、例えば「0」と、その加熱時間の単位を表す第10文字列、例えば「分」と、その加熱パワーでの加熱時間を示す数字である第11文字列、例えば「40」と、その加熱時間の単位を表す第12文字列、例えば「秒」とを、この順に含む文字列である。
なお、本実施の形態では、第2文字列、および、第8文字列として、熱量を表すSI単位である「W(ワット)」を用いたが、加熱パワーの単位を表すものであれば、他の文字または単位でもよい。また、第4文字列、第6文字列、第10文字列、および、第12文字列として、時間の単位を表す文字として「分」または「秒」を用いたが、時間の単位を表すものであれば、他の文字または単位でもよい。
読取部21は、カメラ17によって撮影された画像から、商品に付与された加熱制御情報が表示されている個所を抽出し、加熱制御情報の文字(少なくとも数字を含む)を読み取る。
ここで、加熱制御部15、読取部21、および加熱制御情報算出部30(後述)の機能の少なくとも一部は、一例として、マイクロコンピュータおよび周辺回路によって実現されてもよい。
なお、このマイクロコンピュータおよび周辺回路は、後述する制御を行うものであれば、どのような形態であってもよい。加熱制御部15、読取部21、および加熱制御情報算出部30の機能の少なくとも一部は、演算処理部と、制御プログラムを記憶する記憶部とで構成されていてもよい。演算処理部としては、MPU(Micro Processing Unit)、およびCPU(Central Processing Unit)が例示される。記憶部としては、メモリが例示される。記憶部に記録されている制御プログラムが、演算処理部によって実行される。
また、加熱制御部15、読取部21、および加熱制御情報算出部30の機能の少なくとも一部は、ハードロジックで構成されてもよい。ハードロジックで構成すれば、処理速度の向上に有効である。各構成要素は、一つの半導体チップで構成されてもよいし、物理的に複数の半導体チップで構成されてもよい。複数の半導体チップで、加熱制御部15、読取部21、および加熱制御情報算出部30の機能の少なくとも一部を構成した場合には、後述する各制御を、それぞれ別の半導体チップで実現することもできる。
図3は、商品に付与されたシール20の一例を示す図である。
シール20には、商品名22、加熱制御情報23、金額情報24、消費期限情報25、商品を特定するコード記号の一例であるバーコード26、栄養情報27、および、お知らせ情報28等、いろいろな情報が表示されている。
このような様々な情報の中から、加熱制御情報23を抽出しやすいように、シール20には、加熱制御情報23を囲むように形成された、矩形状の位置指定マークである目印枠29が表示されている。
読取部21は、カメラ17によって撮影された画像から、まず、目印枠29を抽出する。次に、読取部21は、目印枠29で囲まれた英数字を「500W2001500W040」という文字列で読み取る。ここで、読取部21は、「分」、「秒」といった時間の単位を表す文字は読み取らない、または、読み取ったとしても解析には用いない。
そして、読取部21は、予め定められた解析ルールに従い、文字列を、「W」までの数字列、「W」の後の3桁の数字列、その数字列に続く「W」までの数字列、および、「W」の後の3桁の数字列の4つに分解し、「500」、「200」、「1500」、「040」を得る。
さらに、読取部21は、2番目の数字列および4番目の数字列それぞれの、最初の1桁の単位が「分」であり、後の2桁の単位が「秒」であるとして解析する。
また、読取部21は、1番目の数字列が加熱パワーであり、2番目の数字列の加熱時間と対応していて、3番目の数字列が加熱パワーであり、4番目の数字列の加熱時間と対応しているとして解析する。
この結果、読取部21は、「500Wで2分」、「1500Wで40秒」という加熱制御情報を読み取る。
図2に戻って、電子レンジ1の説明を続ける。使用者は、ドア3を開けて、商品を加熱庫13に入れる。ここで、手動設定により商品を加熱する場合には、使用者が、時間設定ボタン群8を使って加熱時間を設定する。そうではなく、食品に貼付されたシール20の加熱制御情報23に基づいて、商品を加熱する場合、かつ、同じ食品を複数同時に加熱する場合、使用者は、倍量ボタン9を使って複数設定情報を設定する。
すなわち、倍量ボタン9が押されたことが、加熱制御情報算出部30に通知され、加熱制御情報算出部30が、後述する複数設定情報を変更する。これにより、複数設定がなされる。複数設定とは、少なくとも、複数の被加熱物を同時に加熱するか否かの設定である。
例えば、複数設定情報の初期値を「1」とし、倍量ボタン9が押されることにより、複数設定情報の値が「2」に変更されるものとする。この場合、複数設定情報の値が「2」であれば、使用者が倍量ボタン9により複数設定したこと、すなわち、複数設定が「有り」であることが示される。他方、複数設定情報の値が「1」であれば、使用者により、複数設定がなされていないこと、つまり、複数の被加熱物を同時に加熱しないことが示される。
なお、使用者が、倍量ボタン9を繰り返し押した場合に、複数設定情報を、「1」、「2」、「1」、「2」、の順で、値を最大値まで増分させた後に、最大値から初期値に戻す、周期的な状態遷移させてもよい。これにより、使用者が、複数設定を取り消すことができ、容易に複数設定をやり直すことができる。
なお、複数設定情報を、「1」、「2」、「3」、「1」、のように変化させる構成により、3個の被加熱物の同時加熱までを想定した状態遷移に対応することもできる。それ以上の個数への対応も、複数設定情報の上限(最大値)の設計により、同様に可能である。
また、ここでは、複数設定情報の値を、「1」および「2」で表現する例を示したが、その他の値、例えば、「0」および「1」で表現しても構わない。
また、複数設定情報を、初期値に初期化するには、多様な方法がある。例えば、加熱の終了により初期化してもよいし、ドア3の開閉により初期化してもよい。例えば、加熱が終了したことにより、加熱する食品が1個であることを示す初期値に、複数設定情報を初期化してもよい。
なお、食品に貼付されたシール20の加熱制御情報23に基づき商品を加熱する場合において、1個の食品を加熱する場合であれば、特に複数設定の操作は行わなくてよい。
そして、加熱時間が手動で設定されている場合に、使用者が加熱開始ボタン10を押すと、設定された加熱時間で加熱が開始される。加熱時間が手動で設定されていない場合には、読取部21が、カメラ17により撮影された加熱庫13内部の画像から、上述したように加熱制御情報23を読み取る。読取部21は、読み取った加熱制御情報23を、加熱制御情報算出部30に送る。
加熱制御情報算出部30は、複数演算部31およびパワー変換部32を備えている。
複数演算部31は、同じ食品が庫内に複数入れられた場合に、それに適した加熱情報を算出する。
例えば、同じ弁当を2個加熱する場合に、2個が積み重ねられて加熱庫13に入れられる場合を想定する。このような場合、カメラ17で撮影できるのは、積み重ねられている2個の弁当のうち、上段の弁当に貼られているシール20のみであり、下段の弁当のシール20を撮影出来ない場合が多い。
そこで、適切な加熱情報を算出するために、使用者が、倍量ボタン9の操作により、2個の弁当が入っていることを設定する。すなわち、倍量ボタン9の操作により、複数設定情報が「2」に設定される。
倍量ボタン9により、2個の弁当が入っていることが設定されている場合、複数演算部31は、読取部21で読取った加熱時間を、例えば2倍にした加熱時間を設定する。
ただし、一般には、加熱負荷が大きい場合には加熱効率が向上するので、弁当が2個入っている場合に、加熱時間を2倍にまで設定しなくてもよい。この場合、例えば、2倍より小さい1.8倍等を加熱時間として計算することにより、エネルギーの無駄の少ない、適切な加熱時間を設定できる。
つまり、加熱制御情報算出部30(加熱情報算出部)は、読取部21により読み取られた加熱制御情報と、複数設定部により設定された複数設定情報とに基づいて、第1の複数加熱用の加熱制御情報を算出する。
次に、パワー変換部32について説明する。まず、電子レンジの最大出力できる加熱パワー(以下、最大出力)について説明する。
加熱制御情報算出部30(加熱情報算出部)は、第1の複数加熱用の加熱制御情報を変換して、第1の複数加熱用の加熱制御情報とは異なる、第2の複数加熱用の加熱制御情報を算出するパワー変換部32を有している。
一般に、電子レンジの最大出力は、機種によって異なっている。従来の標準的な電子レンジでは、家庭用の電子レンジの最大出力は500Wであり、業務用の電子レンジの最大出力は1500Wである場合が多い。
しかし、より強い加熱パワーを出力させることで、加熱時間を短縮したい、という使用者からの要望は常にある。そこで、近年、電子レンジ1への電源入力の、電圧および電流が同じであっても、加熱パワーへの変換効率を改善し、最大出力を高くした電子レンジが販売されつつある。
例えば、家庭用の電子レンジであれば最大出力が800W、業務用であれば最大出力が1800W等といった電子レンジが販売されつつある。このため、市場には、従来の電子レンジ(例えば、最大出力が500Wの家庭用の電子レンジ、または、最大出力が1500Wの業務用の電子レンジ)と、近年、販売されつつある電子レンジ(例えば、最大出力が800Wの家庭用の電子レンジ、または、最大出力が1800Wの業務用の電子レンジ)とが混在している。このため、電子レンジの機種ごとに、最大出力が異なる状況になっている。
一方、商品に付与される加熱制御情報(例えば、シール20に記載される加熱パワーおよび加熱時間)を、様々な加熱パワー、および、それぞれの加熱パワーに対応する加熱時間のすべての組合せとすることは困難である。
このため、シール20に記載された加熱パワーを、従来の、最大出力の低い電子レンジと、近年販売された、最大出力の高い電子レンジとが、共通で使えるように、最大出力の低い電子レンジに合わせた表示を行う。
例えば、家庭用の標準的な加熱パワーである500W、および、それに対応した加熱時間、ならびに、業務用の標準的な加熱パワーである1500W、および、それに対応した加熱時間の、2つの組合せのみを、加熱制御情報23としてシール20に表示する。
これにより、最大出力の高い電子レンジでは、使用者が、その最大出力の加熱パワーでの加熱時間として、シール20に表示された加熱時間(以下、表示時間)よりも短い加熱時間を、手動で設定して使うことができる。
また、使用者は、最大出力の高い電子レンジであっても、電子レンジの加熱パワーを抑えて、従来と同様の低い加熱パワーで、表示時間を用いて、加熱することができる。
しかし、例えば、購入された食品を電子レンジで加熱して提供する加熱サービスをする販売店では、多くの客の対応をしつつ、表示時間とは異なる加熱時間を正確に設定することは困難である。このため、販売店の店員は、電子レンジの最大出力で加熱せず、表示時間に対応した低い加熱パワーで加熱することになる。そうすると、本来、その電子レンジが有する高い最大出力を生かすことができず、電子レンジでの加熱時間を短縮できない。
この点を解消するために、電子レンジ1は、パワー変換部32を備えている。パワー変換部32は、商品に付与された加熱制御情報23として、シール20に記載された、加熱パワーおよび加熱時間の組合わせのうち、少なくとも1つを、読取部21から受け取る。
また、パワー変換部32は、電子レンジ1で加熱できる最大出力の数値を、加熱制御部15から受け取る。
そして、パワー変換部32は、加熱制御情報23に含まれる加熱時間を、電子レンジ1の最大出力に対応する加熱時間に変換する変換演算を行う。電子レンジ1では、食品に投入するトータルの加熱熱量(加熱パワーと加熱時間との積)が等しければ、等しい加熱ができるので、加熱パワーと加熱時間との積が等しくなるように、加熱制御情報23に含まれる加熱時間を変換すればよい。
具体的には、パワー変換部32は、加熱制御情報23に含まれる、加熱パワーとその加熱パワーに対応する加熱時間との積を、加熱制御部15から受け取った最大出力で除す。これにより、パワー変換部32は、加熱制御情報23に含まれる加熱時間を、電子レンジ1の最大出力に対応する加熱時間に変換する変換演算を行う。
例えば、読取部21が、1500Wの加熱時間として1分00秒を読み込んだ場合には、パワー変換部32は、60秒と1500Wを掛け算した積である90000Jを、加熱制御部15から受け取った最大出力である1800Wで割り算して、50秒の加熱時間を算出する。
また、パワー変換部32の変換演算は、複数演算部31が行った複数演算の結果に対しても適用される。例えば、読取部21が、1500Wの加熱時間として1分00秒を読み込み、かつ、倍量ボタン9により被加熱物が2個である設定がされている場合(複数設定情報が「2」の場合)には、まず複数演算部31は、1分00秒の1.8倍である1分48秒を算出する。次にパワー変換部32は、108秒と1500Wを掛け算した積である162000Jを、加熱制御部15から受け取った最大出力である1800Wで割り算して、90秒の加熱時間を算出する。
なお、パワー変換部32が行う演算は、必ずしも、加熱制御情報23に含まれる、加熱パワーとその加熱パワーに対応する加熱時間との積を、最大出力で除する演算である必要はない。要するに、加熱制御情報23に含まれる加熱パワーおよびその加熱パワーに対応する加熱時間の組合せと、電子レンジ1の最大出力である加熱パワーおよびそれに対応する加熱時間とが反比例するという関係を適用して、演算すればよい。
ここで、パワー変換部32が、商品に付与された加熱制御情報23として、シール20に記載された、加熱パワーおよび加熱時間の組合せを、複数、読取部21から受け取った場合について説明する。
例えば、弁当および惣菜等の商品では、多くの場合には、一般的な家庭用の電子レンジで加熱する時の目安である500Wで加熱する場合の加熱時間と、より大きい加熱パワーを備える、業務用の電子レンジで加熱する時の目安である1500Wで加熱する場合の加熱時間とが併記されている。
このような場合には、小さい加熱パワーおよびその加熱パワーに対応する加熱時間の組合せ、ならびに、より大きい加熱パワーおよびその加熱パワーに対応する加熱時間の組合せのうち、いずれの組合せに基づいて、上述の補正(変換)演算をしてもよい。通常は、いずれの組合せに基づいて補正演算しても、ほぼ同じ演算結果となる。
より望ましくは、小さい加熱パワーおよびその加熱パワーに対応する加熱時間の組合せ、ならびに、より大きい加熱パワーおよびその加熱パワーに対応する加熱時間の組合せのうち、加熱制御部15から受け取った、最大出力により近い方の加熱パワーおよびそれに対応する加熱時間の組合せに基づいて、補正演算すればよい。
例えば、読取部21が、500Wに対応する加熱時間として2分、1500Wに対応する加熱時間として40秒を読み込み、電子レンジ1の最大出力が1800Wである場合には、パワー変換部32は、1500W、および、それに対応する加熱時間である40秒という情報に基づいて、1800Wの加熱パワーに対応する加熱時間を算出するほうが望ましい。
次に、切替部33について説明する。一般に、食品等の被加熱物が非常に小さい場合には、被加熱物の加熱負荷が小さい。このため、電子レンジで加熱する場合に、小さい加熱パワーで加熱しても問題とならないが、大きい加熱パワーで加熱すると、マグネトロン14によって出力された加熱パワーが、食品に十分伝わらず、加熱パワーへの変換効率が低下する場合がある。
このような大きな加熱パワーに対しては、上述したような、加熱パワーと加熱時間とが反比例する関係が成り立たない。そして、小さい食品に最大出力の加熱パワーで加熱しようとすると、食品に伝わらない加熱パワーが、マグネトロン14に戻ってきてしまい、マグネトロン14が温度上昇してしまう等、電子レンジ1に損傷を与える虞がある。
この点を解消するために、電子レンジ1は、切替部33を備えている。
切替部33は、商品に付与された加熱制御情報23である、シール20に記載された加熱パワーおよび加熱時間の組合せのうち、少なくとも1つに応じて、加熱制御部15がマグネトロン14を介して出力する加熱パワーの大きさを切り替える。
例えば、おにぎり等の小さい食品では、「500W 20秒」のように、加熱パワーとその加熱時間に対応する加熱時間が、1つだけ表示されている場合がある。
これは、最大出力が500〜800W程度である、家庭用の電子レンジで加熱することは推奨できても、1500W以上の高い出力を有する業務用電子レンジで加熱することは推奨できない、ということを意味している。つまり、最大出力が1800Wである業務用の電子レンジで、上述の補正演算を行うと、加熱時間は、500Wと20秒との積を1800Wで除した5.6秒となるが、1800Wの加熱パワーで5.6秒の加熱を行うような加熱は望ましくない。
加熱制御部15は、マグネトロン14を介して、被加熱物を複数段階の加熱パワーで加熱できるように構成されている。例えば、加熱制御部15は、最低出力の200Wから、200W刻みで、最大出力の1800Wまで、9種類の加熱パワーの中から、いずれか1つの加熱パワーを選択できる。
切替部33は、食品の熱負荷に応じて、加熱制御部15が選択可能な、複数の加熱パワーのうち、最適な加熱パワーに切り替える。具体的には、食品の加熱負荷の大きさは、シール20に記載された、加熱パワーと加熱時間との積から推定できる。このため、切替部33は、シール20に記載された加熱パワーと加熱時間との積に応じて、加熱制御部15がマグネトロン14を介して出力する加熱パワーの大きさを切り替える。
例えば、読取部21が読み取った加熱パワーが500Wで、加熱時間が20秒のように、加熱パワーと加熱時間との積が10000Jの場合には、1000Wまでの加熱パワーであれば、変換効率が落ちないが、それ以上の加熱パワーにすると、被加熱物に熱が伝えきれずに、変換効率が落ちる。このため、切替部33は、加熱制御部15が出力する加熱パワーとして、1000Wを選択する。
切替部33は、加熱パワーおよび加熱時間の積と、それに対応する最適な加熱パワーとの対応表に応じて、加熱パワーを選択する。このような対応表の例を図4に示す。
図4の対応表は、加熱パワーおよび加熱時間の積が大きいほど、切替部33が選択する加熱パワーが大きくなるように、予め定められ、電子レンジ1が備える記憶部(図示せず)に記憶されている。
図4に示すように、加熱パワーおよび加熱時間の積が10000以上であれば1000W、12000以上であれば1200W、14000以上であれば1400W等と段階的に決めておくことで、切替部33は、食品の負荷に応じて、変換効率の落ちない最大の加熱パワー(最大出力)を選択することができる。
これにより、電子レンジ1は、より短時間で被加熱物を加熱できる。なお、切替部33は、電子レンジ1に必ず設ける必要はなく、設けなくてもよい。
そして、この切替部33による加熱パワーの切替は、複数演算部31が行った複数演算の結果に対しても適用される。例えば、加熱情報として「500W 20秒」が付与された前述のおにぎりの例において、読取部21が、500Wの加熱時間として20秒を読み込み、かつ、倍量ボタン9により2個設定がされている場合を想定する。
まず、複数演算部31は、20秒の1.8倍で36秒を算出する。次に、パワー変換部32は、36秒と500Wを掛け算した積である18000Jを算出する。ここで切替部33は、掛け算した積が18000J以上の値であるので、図4の対応表に照らすことにより、対応する加熱パワーとして1800Wで加熱することを選択する。さらに、18000Jが1800Wで割り算されて、10秒の加熱時間が算出される。その算出値に基づいて、500Wで20秒加熱することが適切なおにぎりに対して、そのおにぎりを2個加熱する場合には1800Wで10秒加熱するように、加熱制御部15がマグネトロン14を制御する。
加熱制御情報算出部30は、複数演算部31による演算結果と、切替部33が選択した加熱パワーと、その加熱パワーに基づいて上述のように演算された加熱時間とを、演算後の加熱制御情報として、加熱制御部15に送る。加熱制御部15は、演算後の加熱制御情報を、操作表示部6に送る。操作表示部6は、液晶表示器7に、演算後の加熱制御情報の加熱時間を表示する。
使用者は、その液晶表示器7に適切な加熱時間が表示されたのを確認すると、ドア3を閉じ、加熱開始ボタン10を押す。加熱制御部15は、ドアスイッチ18からドアが閉じられていることを示す信号を受け、かつ、操作表示部6から加熱開始ボタン10が押されたことを示す信号を受けとると、加熱制御情報算出部30から受け取った加熱制御情報の、加熱パワーおよび加熱時間で、被加熱物を加熱するように、マグネトロン14を加熱制御する。
ここまで、複数の被加熱物が、同じ食品である場合について説明してきた。それは、異なる食品では、マグネトロン14が発信するマイクロ波の吸収効率が異なるために、両方を適切に加熱することが困難だからである。
例えば、ご飯のようなマイクロ波の吸収効率のよい食品と、シチューのような吸収効率の悪い食品を一緒に加熱すると、マイクロ波がご飯に集中してしまい、ご飯ばかりが熱くなり、シチューは熱くなりにくいということがある。
また、ここまでの説明では、面積が大きい複数の食品を加熱する時には、それを積み重ねて同時に加熱するので、上段の食品のシール20しかカメラ17で撮影できないとして説明した。
しかし、食品の面積が小さければ、横に並べて加熱庫13で同時に加熱することもできる。その場合には、複数の食品のシール20をカメラ17で撮影することができる。そして、読取部21が読み取った複数の加熱制御情報が同じ場合には、読み取った加熱制御情報に基づいて、加熱制御情報算出部30が、複数加熱の場合の加熱制御情報を算出すればよい。
読取部21が読み取った複数の加熱制御情報が互いに異なる場合には、各々が異なる食品だということである。この場合には、複数を同時に加熱することは好ましくないので、液晶表示器7で、使用者に対して注意喚起の表示を行い、加熱制御を行わない。これにより、複数の異なる食材が、不適切に加熱されることを避けることができる。
また、複数の食品が横に並べて置かれ、読取部21が複数の加熱制御情報を読み取った場合、かつ、使用者が倍量ボタン9による複数設定がされなかった場合(複数設定情報が「1」の場合)には、その複数の加熱制御情報が同じか異なるかに関わらず、液晶表示器7で注意喚起の表示を行い、加熱制御を行わない構成としてもよい。これにより、意図しない加熱を防ぐことができる。
次に、本実施の形態の電子レンジ1の動作ステップについて説明する。
図5は、加熱制御部15、読取部21、および、加熱制御情報算出部30の動作の流れを示すフローチャートである。
使用者は、このフローチャートのステップS1に入る前に、ドア3を開けて食品を加熱庫13に入れた後、ドア3を閉め、必要であれば倍量ボタン9を押す等の、事前の操作を済ませている。
ステップS1において、読取部21は、使用者により加熱開始ボタン10が押されたかどうかを判定し、押されていた場合(S1,YES)には、ステップS2に進む。一方、加熱開始ボタン10が押されていない場合(S1,NO)には、ステップS1を繰り返して、加熱開始ボタン10が押されるのを待つ。
ステップS2において、読取部21は、カメラ17により加熱庫13底面の画像を撮影する。その後、ステップS3に進む。
ステップS3では、読取部21は、画像の中から目印枠29を探す。目印枠29が見つかると(S3,YES)、ステップS4に進む。一方、目印枠29が見つからなければ(S3,NO)、ステップS15に進む。
ステップS4において、読取部21は、目印枠29に囲まれた英数字を読み取り、図3に示すシールの例であれば「500W2001500W040」の文字列を読み取る。そして、予め定められた解析ルールにより、その文字列を「500Wで2分」、「1500Wで40秒」という二組の加熱制御情報であると解析する。その後、ステップS5に進む。
ステップS5において、加熱制御情報が複数あるかどうかが判定される。そして加熱制御情報が複数ある場合(S5,YES)には、ステップS13に進む。一方、加熱制御情報1個しかない場合(S5,NO)には、ステップS6に進む。
ステップS6において、加熱開始ボタン10が押される前に、倍量ボタン9が押されて複数設定されているかどうかが判定される。
すなわち、複数設定情報が「1」以外であるかどうかが判定される。そして複数設定されている場合(S6,YES)にはステップS7に進む。一方、複数設定されていない場合(S6,NO)には、ステップS7を行わずに、ステップS8に進む。
ステップS7は、複数設定されている場合の処理であり、ステップS4で読取られた加熱制御情報に基づいた加熱時間(例えば1.8倍)が演算される(第1の複数加熱用の加熱制御情報の算出)。図3に示すシールの例であれば「500Wで3分36秒」、「1500Wで1分12秒」のような加熱時間が演算される。
次に、ステップS8からステップS11において、加熱制御情報算出部30は、実際に加熱する加熱制御情報の演算を行う。加熱制御情報算出部30は、電子レンジ1の最大出力が1800Wであることを、予め加熱制御部15から受け取っている。
ステップS8において、加熱制御情報算出部30は、加熱制御情報のうち、加熱制御部15から受け取った最大出力により近い方の加熱パワーと、それに対応する加熱時間との積を演算する。具体的には、1800Wに近い1500Wと、それに対応する1分12秒という加熱制御情報を用いて、1500×72=108000の演算を行う。
次に、ステップS9では、切替部33は、加熱パワーおよび加熱時間の積と、それに対応する最適な加熱パワーとの予め定められた対応表により、加熱制御部15が演算した、加熱パワーおよび加熱時間の積に応じた加熱パワーを選択する。具体的には、図4の対応表より、108000は18000以上なので、加熱パワーと加熱時間の積の「18000以上」の欄から、加熱パワーとして1800Wを選択する。
次に、ステップS10では、パワー変換部32は、切替部33が選択した加熱パワーに応じた加熱時間を演算する。具体的には、108000Jを1800Wで割り算して、60秒の加熱時間を算出する(第2の複数加熱用の加熱制御情報の算出)。
さらに、ステップS11において、加熱制御情報算出部30は、上述の演算を行った加熱時間である60秒を、加熱制御部15に送る。加熱制御部15は、操作表示部6の液晶表示器7に「1800W、60秒」と表示する。
そしてステップS12において、加熱制御部15は、マグネトロン14を駆動して加熱を開始する。
ステップS5において、加熱制御情報23が複数ある場合(S5,YES)にはステップS13に進む。
ステップS13において、複数の加熱制御情報23が互いに同じかどうかが判定される。複数の加熱制御情報23が同じである場合(S13,YES)は、ステップS14に進む。一方、複数の加熱制御情報23が互いに異なる場合(S13,NO)にはステップS15に進む。
ステップS14においては、倍量ボタン9により設定された複数設定情報の値(設定数)が、読取部21が読み取った加熱制御情報23の数(読取数)以上かどうかが判定される。設定数が読取数以上の場合(S14,YES)には、同じ食品が複数入れられていて、複数設定がなされていると判断して、ステップS7に進み、加熱時間が演算される。一方、設定数が読取数よりも小さい場合(S14,NO)には、使用者の設定誤りの可能性が大きいと判断されて、ステップS15に進む。
ステップS15が行われるのは、ステップS3で目印枠が見つからない場合(S3,NO)、ステップS13で複数の加熱制御情報23が互いに異なる場合(S13,NO)、または、ステップS14で複数の加熱制御情報23が読み取られているのに、複数設定がなされていない場合(S14,NO)のいずれかである。いずれの場合も、使用者の操作ミス、および、設定間違い等が考えられるため、液晶表示器7には注意喚起の表示が行われて、加熱制御は行われない。
このように、本実施の形態によれば、読取部21が、商品に表示された加熱制御情報23の文字(少なくとも英数字を含む)を読取り、複数設定部である倍量ボタン9により設定された複数設定情報と合わせて、加熱庫13に複数の同じ食品が入れられているのであれば、複数を同時に加熱するのに適した加熱時間を演算する。
さらに、パワー変換部32を設けることで、効率が著しく落ちない範囲で、その電子レンジが持つ最大の加熱パワー(最大出力)を選択して、その加熱パワーでの加熱時間が演算される。これにより、短時間での加熱が可能となる。
また、複数の加熱制御情報23が読み取れたものの、その加熱制御情報が互いに異なる場合、または、複数の加熱制御情報が同じであっても、倍量ボタン9による複数設定がなされていない場合は、設定間違いであることを注意喚起し、加熱が開始されないようにして、使用者の意図しない加熱が行われないようにしている。
なお、複数の加熱制御情報23が読取られた時、各々が異なる場合には注意喚起し、加熱しないとしたが、本開示はこの例に限定されない。例えば、注意喚起した上で、それでも加熱するかどうかを使用者に確認するユーザインタフェースを有する構成としてもよい。この際、使用者が加熱することを選択した場合には、異なる複数の加熱制御情報のうち、どちらか一方、例えば加熱時間の短い方の食品が複数あるものとして、加熱制御情報を算出してもよい。
また、複数の加熱制御情報23が読取られた時、各々が異なる場合における別の構成として、複数の加熱制御情報毎に、それぞれの加熱パワーと加熱時間との積を演算して、それらを足し合わせ、さらに、所定の係数、例えば0.9倍する等して、複数の加熱時間としてパワー変換を行う等してもよい。
また本実施の形態では、複数の例を2個として説明してきたが、3個以上の場合にも適用できる。例えば食品が3個の場合には、複数の加熱時間を、3倍ではなく2.6倍としてもよい。同様に、食品が4個の場合には、複数の加熱時間を、4倍ではなく3.4倍としてもよい。このように、より多くの数の被加熱物の同時加熱に対応することができる。
このように多くの数の同時加熱を行う場合には、倍量ボタン9を押した回数により、被加熱物の数を、2個、3個、4個と設定できるようにしてよい。そして上述のステップS14においては、読取部21が読み取った加熱制御情報の数よりも、使用者が倍量ボタン9により設定した数(複数設定情報)の方が少なければ、同様に注意喚起すればよい。
なお、本実施の形態では、加熱制御情報を文字(少なくとも英数字を含む)として説明したが、本開示はこの例に限定されない。例えば、加熱制御情報を符号化したバーコード、QRコード(登録商標)等の2次元コード、または独自のコード等であってもよい。これらを用いた場合には、誤り検出ビット等を付加することもでき、読取性能を向上できる。
また、本実施の形態では、シール20に、加熱パワーおよび加熱時間の組合せが2つ記載されている場合についても説明したが、少なくとも、1つ以上の、加熱パワーおよび加熱時間の組合せが記載されていればよい。
また、シール20から加熱制御情報23を読み取る際に、目印枠29で囲まれた英数字が読み取られるものとして説明したが、本開示はこの例に限定されない。
目印枠29に代えて、加熱制御情報23と所定の位置関係にある、所定形状の位置指定マークを用いることで、精度良く加熱制御情報23を読み取ることができる。位置指定マークは、星型等の所定の図形、または、販売店の商号、若しくは、標章等でもよい。