(本開示の基礎となる知見)
電子レンジは、機種によって、備える最大出力パワーが異なる。このため、従来技術において、電子レンジに、その最大出力パワーによって、最短時間で、商品を加熱させるためには、以下の作業が必要となる。すなわち、読み取られたバーコードから導き出される商品と、加熱時間との対応関係を、電子レンジの機種毎に、異なる内容で登録する必要がある。この対応関係の登録作業は、登録の間違いを発生させる原因ともなり得る、煩わしい作業である。このような問題に鑑みて、本開示がなされた。
(本開示の態様の一例)
本開示の第1の態様は、加熱調理器であって、被加熱物が収納される加熱庫と、加熱庫に収納された被加熱物を加熱する加熱部と、加熱庫内を撮影する撮影部とを備えている。また、加熱調理器は、被加熱物に付与された、第1の加熱パワー、および、第1の加熱パワーにおける第1の加熱時間を含む加熱制御情報を読み取る読取部と、読取部で読み取られた加熱制御情報に基づいて、第1の加熱時間を、加熱制御情報の第1の加熱パワーとは異なる第2の加熱パワーにおける第2の加熱時間に変換するパワー変換部とを備えている。また、加熱調理器は、パワー変換部の変換を行うかどうかを切り替える切替部を備えている。
これにより、加熱調理器の加熱庫内に、加熱対象となる被加熱物を入れた場合には、撮影部が撮影した加熱庫内の画像から、被加熱物に付与された加熱パワーとその加熱パワーにおける加熱時間とを含む加熱制御情報を読取部が読取る。パワー変換部は、その加熱制御情報に基づいて、異なる加熱パワーによる加熱時間の演算を行い、切替部は、パワー変換部の変換を行うか否かを切り替える。そして、加熱制御部は、その切替部の結果に基づいて、加熱部を制御して被加熱物を加熱する。
これにより、加熱調理器の加熱パワーに応じ、また、無駄なエネルギーを使わない、適切な加熱パワーおよび加熱時間を自動的に設定し、被加熱物を加熱できる。
本開示の第2の態様は、さらに、切替部は、読取部で読取られた加熱制御情報に基づいて、パワー変換部の変換を行うか否かを判定するものである。
これにより、読取部で読取られた被加熱物に付与された、加熱パワーとその加熱パワーにおける加熱時間とを含む加熱制御情報に基づいて、切替部がパワー変換部による変換を行うか否かを判定する。よって、加熱調理器の加熱パワーに応じ、また、無駄なエネルギーを使わない、適切な加熱パワーと加熱時間とを自動的に設定し、被加熱物を加熱できる。
第3の態様は、読取部は、あらかじめ定められた特定の目印を読み取る目印読取部を有し、切替部は、目印読取部で読取られた結果に基づいて、パワー変換部の変換を行うか否かを判定するものである。
これにより、パワー変換部によるパワー変換を行うか否かを、読取部が、あらかじめ定めた特定の目印を読取った結果により行う。これにより、食品にこの目印を付けるかどうかで、パワー変換を行うかどうかを切り替えることができる。よって、加熱調理器の加熱パワーに応じ、また無駄なエネルギーを使わない、適切な、加熱パワーおよび加熱時間を自動的に設定し、被加熱物を加熱できる。
第4の態様は、さらに、加熱庫に収納された被加熱物の加熱負荷を検出する検出部を備え、切替部は、検出部が検出した加熱負荷に基づいて、パワー変換部の変換を行うか否かを判定するものである。
これにより、検出部が被加熱物の加熱負荷を検出し、切替部がその検出された加熱負荷により、パワー変換部の変換を行うか否かを判定する。よって、加熱調理器の加熱パワーに応じ、また、無駄なエネルギーを使わない、適切な加熱パワーと加熱時間とを自動的に設定し、被加熱物を加熱できる。
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、これらの実施の形態によって、本開示が限定されるものではない。
(第1の実施の形態)
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る、加熱調理器の一例である電子レンジ1の外観斜視図である。
図1に示すように、電子レンジ1は、食品を格納するための筐体2、および、筐体2に設けられた、食品を出し入れするためのドア3を備えている。ドア3には、外部から筐体2内部を見えるようにするための、透明のガラス窓4と、ドア3を開閉するときに掴まれる取っ手5と、操作表示部6とが設けられている。
操作表示部6は、液晶表示器7、パワー切替表示器8、時間設定ボタン群9、加熱開始ボタン10、取消ボタン11、および、一時停止ボタン12を備えている。
電子レンジ1は、後述するように、加熱対象(被加熱物)である商品を撮影部(カメラ17)により撮影して、商品に表示されている、加熱パワーおよび加熱時間を読み取る。そして、電子レンジ1は、読み取られた加熱パワーおよび加熱時間に代わる、パワー変換により算出された異なる加熱パワーに対応した加熱時間の演算を行うか否かを切替え、演算を行う場合は、異なる加熱パワーで算出された加熱時間で商品を加熱する。
液晶表示器7には、読み取られた加熱時間、または、読み取られた加熱時間にパワー変換の演算を行って算出された加熱時間が表示される。
パワー切替表示器8は、パワー変換を行ったかどうかを表示する表示器であり、例えばLEDで構成されており、パワー変換された時には点灯し、パワー変換されなかった時には消灯している。
加熱時間をうまく読み取れなかった場合、または、加熱時間の表示されていない商品を加熱する場合のために、電子レンジ1には、時間設定ボタン群9が設けられている。使用者は、数字ボタン、ならびに、「分」および「秒」のボタンを使って、加熱時間を設定することができる。この場合、液晶表示器7には、設定された加熱時間が表示される。
加熱開始ボタン10は、使用者が、加熱を開始するときに押されるボタンである。
取消ボタン11は、使用者が、加熱開始ボタン10を押して加熱を開始した後に、加熱途中で加熱を停止する場合に押されるボタンである。
一時停止ボタン12は、使用者が、加熱途中で加熱を一時的に停止する場合に押されるボタンである。また、加熱を一時停止した場合に、使用者が、再度、加熱開始ボタン10を押すことで、途中から残りの加熱が行われる。
図2は、本実施の形態に係る電子レンジ1の概略構成図である。
電子レンジ1は、高周波による食品等の加熱が可能であり、食品等の被加熱物を収納する加熱庫13内に、高周波を出力する加熱部であるマグネトロン14が設けられている。マグネトロン14により、高周波が加熱庫13に供給されて、食品が加熱される。マグネトロン14は、加熱制御部15により制御される。
電子レンジ1は、照明16、および、照明16が設けられたのと同じ側面に、撮影部であるカメラ17を備えている。
カメラ17は、加熱庫13内の映像を撮影する。カメラ17が照明16と同じ側面に配置されているので、逆光になることなく、加熱庫13内が撮影される。
筐体2には、ドア3の開閉検知のためのドアスイッチ18が設けられている。ドア3には、このドアスイッチ18を押し込むための突起部19が設けられている。なお、これらのドア3の開閉検知の構成は一例であり、他の構成を用いることもできる。
加熱庫13には、弁当、おにぎり、および惣菜等の商品(被加熱物)が入れられる。それらの商品それぞれには、商品の加熱制御情報としての、加熱パワーおよび加熱時間が表示された、貼付物であるシール20(図3参照)が貼付されている。
このシール20には、一般的な家庭用の電子レンジで加熱する時の目安として、例えば500Wの加熱パワーで加熱する場合の加熱時間と、業務用の電子レンジで、大きい加熱パワーで短時間、加熱する時の目安として、例えば1500Wの加熱パワーで加熱する場合の加熱時間とが併記されている。
具体的に、シール20には、例えば、「500W2分00秒 1500W0分40秒」等と表示されている(図3参照)。
より具体的には、加熱制御情報は、所定の加熱パワーでの加熱量を表す数字である第1文字列、例えば「500」と、その加熱パワーの単位を表す第2文字列、例えば「W」と、その加熱パワーでの加熱時間である数字である第3文字列、例えば「2」と、その加熱時間の単位を表す第4文字列、例えば「分」と、その加熱パワーでの加熱時間を示す数字である第5文字列、例えば「00」と、その加熱時間の単位を表す第6文字列、例えば「秒」とをこの順に含む文字列である。
また、加熱制御情報は、前述した所定の加熱パワーよりも大きい加熱パワーの加熱量を表す数字である第7文字列、例えば「1500」と、その加熱パワーの単位を表す第8文字列、例えば「W」と、その加熱パワーでの加熱時間である数字である第9文字列、例えば「0」と、その加熱時間の単位を表す第10文字列、例えば「分」と、その加熱パワーでの加熱時間を示す数字である第11文字列、例えば「40」と、その加熱時間の単位を表す第12文字列、例えば「秒」とを、この順に含む文字列である。
なお、本実施の形態では、第2文字列、および、第8文字列として、熱量を表すSI単位である「W(ワット)」を用いたが、加熱パワーの単位を表すものであれば、他の文字または単位でもよい。また、第4文字列、第6文字列、第10文字列、および、第12文字列として、時間の単位を表す文字として「分」または「秒」を用いたが、時間の単位を表すものであれば、他の文字または単位でもよい。
読取部21は、カメラ17によって撮影された画像から、商品に付与された加熱制御情報23が表示されている個所を抽出し、加熱制御情報23の文字(少なくとも数字を含む)を読み取る。
ここで、加熱制御部15、読取部21、および加熱制御情報算出部30(後述)の機能の少なくとも一部は、一例として、マイクロコンピュータおよび周辺回路によって実現されてもよい。
なお、このマイクロコンピュータおよび周辺回路は、後述する制御を行うものであれば、どのような形態であってもよい。加熱制御部15、読取部21、および加熱制御情報算出部30の機能の少なくとも一部は、演算処理部と、制御プログラムを記憶する記憶部とで構成されていてもよい。演算処理部としては、MPU(Micro Processing Unit)、およびCPU(Central Processing Unit)が例示される。記憶部としては、メモリが例示される。記憶部に記録されている制御プログラムが、演算処理部によって実行される。
また、加熱制御部15、読取部21、および加熱制御情報算出部30の機能の少なくとも一部は、ハードロジックで構成されてもよい。ハードロジックで構成すれば、処理速度の向上に有効である。各構成要素は、一つの半導体チップで構成されてもよいし、物理的に複数の半導体チップで構成されてもよい。複数の半導体チップで、加熱制御部15、読取部21、および加熱制御情報算出部30の機能の少なくとも一部を構成した場合には、後述する各制御を、それぞれ別の半導体チップで実現することもできる。
図3は、商品に付与されたシール20の一例を示す図である。
シール20には、商品名22、加熱制御情報23、金額情報24、消費期限情報25、商品を特定するコード記号の一例であるバーコード26、栄養情報27、および、お知らせ情報28等、いろいろな情報が表示されている。
このような様々な情報の中から、加熱制御情報23を抽出しやすいように、シール20には、加熱制御情報23を囲むように形成された、矩形状の位置指定マークである目印枠29が表示されている。
読取部21は、カメラ17によって撮影された画像から、まず、目印枠29を抽出する。次に、読取部21は、目印枠29で囲まれた英数字を「500W2001500W040」という文字列で読み取る。ここで、読取部21は、「分」、「秒」といった時間の単位を表す文字は読み取らない、または、読み取ったとしても解析には用いない。
そして、読取部21は、予め定められた解析ルールに従い、文字列を、「W」までの数字列、「W」の後の3桁の数字列、その数字列に続く「W」までの数字列、および、「W」の後の3桁の数字列の4つに分解し、「500」、「200」、「1500」、「040」を得る。
さらに、読取部21は、2番目の数字列および4番目の数字列それぞれの、最初の1桁の単位が「分」であり、後の2桁の単位が「秒」であるとして解析する。
また、読取部21は、1番目の数字列が加熱パワーであり、2番目の数字列の加熱時間と対応していて、3番目の数字列が加熱パワーであり、4番目の数字列の加熱時間と対応しているとして解析する。
この結果、読取部21は、「500Wで2分」、「1500Wで40秒」という加熱制御情報を読み取る。
図2に戻って、電子レンジ1の説明を続ける。使用者は、ドア3を開けて、商品を加熱庫13に入れる。そして、使用者は、ドア3を閉じて加熱開始ボタン10を押す。読取部21は、カメラ17により撮影した加熱庫13内部の画像から、上述したように加熱制御情報を読み取る。
読取部21は、読み取った加熱制御情報を、加熱制御情報算出部30に送る。加熱制御情報算出部30は、パワー変換部31と切替部32とを有している。
次に、パワー変換部31について説明する。まず、電子レンジの、機種の違いによる、最大出力できる加熱パワー(以下、最大出力)の違いについて説明する。
一般に、電子レンジの最大出力は、機種によって異なっている。従来の標準的な電子レンジでは、家庭用の電子レンジの最大出力は500Wであり、業務用の電子レンジの最大出力は1500Wである場合が多い。
しかし、より強い加熱パワーを出力させることで、加熱時間を短縮したい、という使用者からの要望が常にある。そこで、近年、電子レンジ1への電源入力の、電圧および電流が同じであっても、加熱パワーへの変換効率を改善し、最大出力を高くした電子レンジが販売されつつある。
例えば、家庭用であれば最大出力が800W、業務用であれば最大出力が1800W等の電子レンジが販売されつつある。このため、市場には、従来の電子レンジ(例えば、最大出力が500Wの家庭用の電子レンジ、または、最大出力が1500Wの業務用の電子レンジ)と、近年、販売されつつある電子レンジ(例えば、最大出力が800Wの家庭用の電子レンジ、または、最大出力が1800Wの業務用の電子レンジ)とが混在している。このため、電子レンジの機種ごとに、最大出力が異なる状況になっている。
一方、商品に付与される加熱制御情報23(例えば、シール20に記載される加熱パワーおよび加熱時間)を、様々な加熱パワー、および、それぞれの加熱パワーに対応する加熱時間のすべての組合せとすることは困難である。
このため、従来の、最大出力の低い電子レンジと、近年販売された、最大出力の高い電子レンジとが、共通で使えるように、シール20に記載された加熱パワーを、最大出力の低い電子レンジに合わせた表示を行う。
例えば、家庭用の標準的な加熱パワーである500W、および、それに対応した加熱時間、ならびに、業務用の標準的な加熱パワーである1500W、および、それに対応した加熱時間の、2つの組合せのみが、加熱制御情報としてシール20に表示される。
これにより、最大出力の高い電子レンジを用いて、使用者が、その最大出力の加熱パワーでの加熱時間として、シール20に表示された加熱時間(以下、表示時間)よりも短い加熱時間を、手動で設定して使うことができる。
また、使用者は、最大出力の高い電子レンジであっても、電子レンジの加熱パワーを抑えて、従来と同様の低い加熱パワーで、表示時間を用いて、加熱することもできる。
しかし、例えば、購入された食品を、電子レンジで加熱し、提供する加熱サービスをする販売店では、使用者が、多くの客の対応をしつつ、表示時間とは異なる加熱時間を正確に設定することは困難である。このため、販売店の店員は、電子レンジの最大出力で加熱せず、表示時間に対応した低い加熱パワーで加熱することになる。そうすると、本来、その電子レンジが有する高い最大出力を活かすことができず、加熱時間を短縮できない。
この点を解消するために、電子レンジ1は、パワー変換部31を備えている。パワー変換部31は、商品に付与された加熱制御情報23としてシール20に記載された、加熱パワーおよび加熱時間の組合わせのうち、少なくとも1つ(第1の加熱パワーおよび第1の加熱時間)を、読取部21から受け取る。
また、パワー変換部31は、電子レンジ1で加熱できる最大出力の数値を、加熱制御部15から受け取る。
そして、パワー変換部31は、加熱制御情報23に含まれる加熱時間を、電子レンジ1の最大出力に対応する加熱時間に変換する、パワー変換演算を行う。電子レンジ1では、食品に投入するトータルの加熱熱量(加熱パワーと加熱時間との積)が等しければ、等しい加熱ができるので、加熱パワーと加熱時間との積が等しくなるように、加熱制御情報23に含まれる加熱時間を変換すればよい。
具体的には、パワー変換部31は、加熱制御情報23に含まれる、加熱パワーとその加熱パワーに対応する加熱時間との積を、加熱制御部15から受け取った最大出力で除す。このように、パワー変換部31は、加熱制御情報23に含まれる加熱時間を、電子レンジ1の最大出力に対応する加熱時間に変換するパワー変換演算を行う。
例えば、読取部21が、加熱パワー1500Wの加熱時間として、加熱時間40秒を読み込んだ場合、パワー変換部31は、40秒と1500Wとを掛け算した積である60000Jを、加熱制御部15から受け取った最大出力である1800Wで割り算して、33秒の加熱時間を算出する。なお、ここでは小数点以下の値は、便宜上切り捨てている。算出された加熱パワーおよび加熱時間が、それぞれ、第2の加熱パワーおよび第2の加熱時間である。
なお、パワー変換部31が行うパワー変換演算は、必ずしも、加熱制御情報23に含まれる、加熱パワーとその加熱パワーに対応する加熱時間との積を、最大出力で除する演算である必要はない。
要するに、加熱制御情報23に含まれる、加熱パワーおよびその加熱パワーに対応する加熱時間の組合せと、電子レンジ1の最大出力である加熱パワーおよびそれに対応する加熱時間の組合せとが反比例するという関係を適用して、演算すればよい。
ここで、パワー変換部31が、商品に付与された加熱制御情報23として、シール20に記載された、加熱パワーおよび加熱時間の組合せを、複数、読取部21から受け取った場合について説明する。
例えば、弁当および惣菜等の商品では、多くの場合には、一般的な家庭用の電子レンジで加熱する時の目安である500Wで加熱する場合の加熱時間と、より大きい加熱パワーを備える、業務用の電子レンジで加熱する時の目安である1500Wで加熱する場合の加熱時間とが併記されている。
このような場合には、小さい加熱パワーおよびその加熱パワーに対応する加熱時間の組合せ、ならびに、より大きい加熱パワーおよびその加熱パワーに対応する加熱時間の組合せのうち、いずれの組合せに基づいて、上述のパワー変換演算をしてもよい。通常は、いずれの組合せに基づいてパワー変換演算しても、ほぼ同じ演算結果となる。
より望ましくは、小さい加熱パワーおよびその加熱パワーに対応する加熱時間の組合せ、ならびに、より大きい加熱パワーおよびその加熱パワーに対応する加熱時間の組合せのうち、加熱制御部15から受け取った、最大出力により近い方の加熱パワーおよびそれに対応する加熱時間の組合せに基づいて、パワー変換演算すればよい。
例えば、読取部21が、500Wに対応する加熱時間として2分、1500Wに対応する加熱時間として40秒を読み込み、電子レンジ1の最大出力が1800Wである場合には、パワー変換部31は、1500W、および、それに対応する加熱時間である40秒に基づいて、1800Wに対応する加熱時間を算出するほうが望ましい。
ここまでの説明では、電子レンジ1において、食品に投入されるトータルの加熱熱量(加熱パワーと加熱時間との積)が等しければ、等しい加熱ができるとしてきたが、そうならない場合もあることを次に説明する。
食品はそれぞれ、吸収できる加熱パワーの容量に限界がある。その限界を超えて加熱パワーを増やしても、食品には吸収されず、マグネトロン14に戻ってマグネトロンを温度上昇させたり、他の部品を温度上昇させたりする。このような、食品が吸収できる加熱パワーの限界を、飽和加熱パワーとする。そうすると、図4に示すように、飽和加熱パワーは、概ね食品の水分含有量(重量)と比例する関係になる。
図4において、例えば水分含有量がW1の食品では、加熱パワーはE1までしか吸収されない。このW1を、仮に100g、E1を、仮に1000Wとする。そうすると、水分含有量100gの食品に、1500Wの加熱パワーを投入しても、1800Wの加熱パワーを投入しても、食品が吸収できるのは1000Wであり、残りの500W、800Wの加熱パワーは、食品には入らずに、マグネトロン14および他の部品を温度上昇させることになる。
また、水分含有量がW2の食品では、加熱パワーはE2までしか吸収されず、このW2を、仮に200g、E2を、仮に1500Wとする。そうすると、水分含有量200gの食品に、1800Wの加熱パワーを投入しても、食品が吸収できるのは1500Wであり、残りの300Wの加熱パワーは食品には入らずに、マグネトロン14および他の部品を温度上昇させることになる。
このように、飽和加熱パワーが1500Wより小さい食品の場合には、1500Wで加熱しても1800Wで加熱しても、食品が吸収できる加熱パワーは同じであり、1800Wで加熱しても、加熱時間の短縮には寄与しない。
図5に、水分含有量と、食品が吸収できる適切な上限パワーとの関係を表で示す。
例えば、水分含有量100gの食品であれば、飽和加熱パワーが1000Wであり、水分含有量100g未満の食品であれば、上限500Wで加熱することが望ましい。
また、水分含有量200gの食品での飽和加熱パワーが1500Wとすると、水分含有量100g以上200g未満の食品であれば、上限1000Wで加熱することが望ましい。
また、水分含有量300gの食品での飽和加熱パワーが1800Wとすると、水分含有量200g以上300g未満の食品であれば、上限1500Wで加熱することが望ましい。水分含有量300g以上の食品であれば、上限1800Wで加熱することが望ましい。
図6に、食品の水分含有量と、一定温度まで加熱するのに必要な加熱時間との関係を示す。
図6より明らかなように、食品の水分含有量がW1未満(例えば100g未満)の領域では、加熱パワーが1000Wでも1500Wでも1800Wでも、同じ加熱時間が必要になる。
また食品の水分含有量がW2未満(例えば200g未満)の領域では、加熱パワーが1500Wでも1800Wでも、同じ加熱時間が必要になる。
加熱パワーが、1500Wおよび1800Wいずれの場合にも、加熱時間と加熱パワーとの積が等しくなるのは、食品の水分含有量がW3以上(例えば300g以上)の領域である。
図7に、加熱パワーが1500Wおよび1800Wのときの、適切な加熱時間の例を示す。
加熱パワーが1500Wでは、水分含有量が200g以上で、水分含有量と加熱時間とが比例の関係になる。
また、加熱パワーが1800Wでは、水分含有量が300g以上で、水分含有量と加熱時間とが比例の関係になる。
そして、水分含有量が200g以下の領域では、加熱パワーが1500Wでも1800Wでも、必要な加熱時間は同じになる。
そして、水分含有量が200g以上300g未満の領域では、1800Wで加熱するほうが1500Wで加熱するより加熱時間は短いが、加熱パワーと加熱時間との積は等しくならない。300g以上において、加熱時間と加熱パワーの積が等しくなる。
図2に戻って、切替部32について説明する。
上述の実施の形態では、パワー変換部31で、1500Wでの加熱時間から1800Wでの加熱時間を算出する方法を説明した。しかしながら、電子レンジの性質から、食品の水分含有量W3未満(例えば300g未満)の領域では、この算出方法が成り立たない。特に、W2未満(例えば200g未満)の領域では、1800Wで加熱しても1500Wで加熱しても加熱時間に差がない。
そこで、切替部32は、読取部21で読取った1500Wでの加熱時間から、パワー変換部31で1800Wでの加熱時間に換算するか、そうではなく、1500Wでの加熱時間をそのまま使うかを切替える。
具体的に、切替部32は、食品の水分含有量W3(例えば300g)の時の、1500Wでの加熱時間T3(例えば30秒)を基準にして、読取部21で読取った、1500Wでの加熱時間がT3以上(例えば30秒以上)長ければ、パワー変換部31でパワー変換の演算を行う。
切替部32は、食品の水分含有量W3(例えば300g)の時の、1500Wでの加熱時間T3(例えば30秒)を基準にして、読取部21で読取った、1500Wでの加熱時間が、T3より短ければ(例えば30秒未満であれば)、読み取った1500Wでの加熱時間をそのまま使う。
加熱制御情報算出部30は、切替部32が加熱パワー変換するかしないかを判定した結果、加熱パワー変換する場合には、パワー変換部31により上述のパワー変換演算を行った加熱時間、および、1800Wの加熱パワーの情報を、加熱制御情報として、加熱制御部15に送る。
一方、加熱制御情報算出部30は、切替部32が加熱パワー変換しないと判定した場合には、読取部21が読み取った情報、即ち1500Wの加熱パワー、および、1500Wでの加熱時間の情報を加熱制御情報として、加熱制御部15に送る。
加熱制御部15は、加熱制御情報算出部30から受けた加熱制御情報を操作表示部6に送り、操作表示部6は、液晶表示器7に、加熱制御情報の加熱時間を表示する。
切替部32により加熱パワー変換を行う判定がされたのであれば、パワー切替表示器8が点灯し、パワー変換を行わない判定がされたのであれば、パワー切替表示器8は消灯する。
そして加熱制御部15は、加熱制御情報算出部30から受け取った加熱制御情報の、加熱パワーおよび加熱時間で、被加熱物を加熱するよう、マグネトロン14を加熱制御する。
加熱制御情報算出部30の算出機能について、具体的な数値を当てはめて説明する。加熱パワー1500Wでの加熱時間T3を30秒とすると、読取部21が「1500Wで40秒」を読取った場合には、パワー変換部31が、1500Wと40秒とを掛け算して60000Jを算出し、それを1800Wで割り算して、33秒を算出し、加熱制御情報「1800Wで33秒」として加熱制御部15に送る。
一方、読取部21が「1500Wで20秒」を読取った場合には、加熱制御部15には、そのまま「1500Wで20秒」の加熱制御情報が送られる。
次に、本実施の形態の電子レンジ1の動作ステップについて説明する。
図8は、本実施の形態における、加熱制御部15、読取部21、および、加熱制御情報算出部30の動作の流れを示すフローチャートである。
ステップS1で、読取部21は、使用者により加熱開始ボタン10が押されたかどうかを判定し、押されたら(S1,YES)、ステップS2に進む。一方、読取部21は、加熱開始ボタン10が押されなければ(S1,NO)ステップS1を繰り返して、加熱開始ボタン10が押されるのを待つ。
ステップS2では、読取部21は、カメラ17により加熱庫13底面の画像を撮影する。その後、ステップS3に進む。
ステップS3では、読取部21は、画像の中から目印枠29を探す。目印枠29が見つかると(S3,YES)、ステップS4に進む。一方、読取部21は、目印枠29が見つからなければ(S3,NO)、ステップS11に進む。
ステップS4において、読取部21は、目印枠29に囲まれた英数字を読み取り、図3に示すシールの例であれば、「500W2001500W040」の文字列を読み取る。そして、予め定められた解析ルールにより、その文字列を「500Wで2分」、「1500Wで40秒」という二組の加熱制御情報であると解析する。その後、ステップS5に進む。
ステップS5において、切替部32は、パワー変換を行うかどうかを判定する。具体的には読取部21が読み取った加熱制御情報の、1500Wにおける加熱時間がT3以上かどうかを判定し、1500Wにおける加熱時間がT3以上であればパワー変換を行い、T3未満であればパワー変換を行わないと判定する。
T3を30秒とすると、図3のシールの例であれば「1500W40秒」なので30秒より長いため、切替部32は、パワー変換を行うと判定する。パワー変換を行う場合は(S5,YES)、ステップS6に進む。一方、切替部32が、パワー変換を行わないと判定した場合には(S5,NO)、ステップS10に進む。
加熱制御情報算出部30は、電子レンジ1の最大出力が1800Wであることを、予め加熱制御部15から受け取っている。そして、ステップS6において、加熱制御情報算出部30は、読取部21から受け取った複数の加熱制御情報のうち、加熱制御部15から受け取った最大出力により近い方の加熱パワーと、それに対応する加熱時間との積を演算する。加熱制御情報算出部30は、複数の加熱制御情報のうち、具体的には、1800Wに近い1500Wと、それに対応する40秒という加熱制御情報を用いて、1500×40=60000Jの演算を行い、更に、60000Jを1800Wで割り算して、33秒の加熱時間を演算する。そしてステップS7に進む。
ステップS7において、加熱制御情報算出部30は、加熱時間は、上述の演算を行った33秒であり、加熱パワーは変換を行った1800Wであることを、加熱制御部15に送る。加熱制御部15は、操作表示部6のパワー切替表示器8を点灯させる。そしてステップS8に進む。
ステップS8において、加熱制御部15は、加熱時間を、操作表示部6の液晶表示器7に表示させる。この場合は、「33秒」と表示させてステップS9に進む。
そしてステップS9において、加熱制御部15は、マグネトロン14を駆動して加熱を開始する。加熱中、操作表示部6の液晶表示器7は、33秒からカウントダウン表示を行い、パワー切替表示器8は点灯をし続ける。
ステップS5においてパワー変換を行わない場合、例えば読取部21が読み取った1500Wの加熱時間が、T3(例えば30秒)より短い20秒であった場合等には(S5,NO)ステップS10に進む。ステップS10では、加熱制御情報算出部30は、パワー変換を行わず、読み取られた加熱制御情報である、加熱パワーである1500W、および、加熱時間である20秒を、加熱制御部15に送る。加熱制御部15は、操作表示部6のパワー切替表示器8を消灯させる。そしてステップS8に進む。
ステップS8では、加熱制御部15は、操作表示部6の液晶表示器7に「20秒」と表示させる。
また、ステップS3で目印枠が見つからない場合(S3,NO)には、ステップS11に進む。目印枠が見つからない場合には、元々、加熱制御情報が表示されていない食品である等の、使用者の操作ミス等が原因であることも考えられる。このため、液晶表示器7は注意喚起の表示を行って、加熱は行われない。
このように、本実施の形態によれば、読取部21が、商品に表示された加熱制御情報23の文字(少なくとも英数字を含む)を読み取り、その加熱制御情報に基づいて、加熱制御部15がマグネトロン14を制御する。これにより、店員が、商品の加熱時間を入力したり、商品に対応したボタンを選択したりすることなく、自動的に加熱時間が設定される。
また、電子レンジが、商品に付与された加熱パワーよりも、大きい加熱パワーを出力できる場合には、その最大出力で加熱することができる。これにより、商品に付与された加熱時間よりも短い加熱時間で、商品を加熱することができる。
また、切替部32を設けることにより、表示されている加熱パワーよりも大きな加熱パワーで加熱しても、加熱時間の時短効果がない場合には、表示されている通りの加熱時間で加熱し、無駄なエネルギーが消費されない。これにより、被加熱物を、適切な加熱パワーで加熱することができる。
なお、本実施の形態では、切替部の切り替えの閾値を、図6に示す1500Wにおける加熱時間のT3としたが、他の加熱パワーでの加熱時間により切り替えてもよい。また、加熱パワーが1500Wでも、閾値をT3ではなくT2として、T2以上T3未満の領域については、1800Wでの加熱時間を別算出式で算出してもよい。また、1600Wまたは1700W等、別の加熱パワーでの加熱時間を算出してもよい。
(第2の実施の形態)
次に、本開示の第2の実施の形態について、図9に基づいて説明する。
図9において、第1の実施の形態で説明した図3の構成要素と同じ機能を有する情報には、同じ符号を付して、説明を省略する。
図9は、第2の実施の形態のシール20の例であるが、パワー変換を行うことが、シール20に、あらかじめ定めた目印であるパワー変換記号33として印刷されている。
図10に、本実施の形態に係る電子レンジ1の概略構成図を示す。
図10において、第1の実施の形態で説明した、図2の構成要素と同じ機能を有する要素については、同じ符号を付して、その説明を省略する。図2の構成と比較して、図10の構成は、読取部21が目印読取部34を備えている点で異なる。
読取部21は、カメラ17によって撮影された画像から、まず、目印枠29を抽出する。そして、目印読取部34は、目印枠29の近傍にパワー変換記号33があるかどうかを探す。
例えば、目印読取部34は、目印枠29の矩形の、短辺の横の近傍に、塗りつぶされた星形状があるかどうかを判定して、パワー変換記号33を探す。このパワー変換記号33が見つかると、切替部32は、パワー変換を行うと判定し、見つからないと、切替部32は、パワー変換を行わないと判定する。
読取部21は、加熱制御情報算出部30に対して、読取った加熱制御情報23を送る。読取部21は、目印読取部34で読取られたパワー変換記号33があるかないかの情報も併せて、加熱制御情報算出部30に送る。
加熱制御情報算出部30では、切替部32が、読取部21から送られてきた、パワー変換記号33があるかないかの情報を基に、パワー変換を行うか否かを切替える。切替部32がパワー変換を行うと判定した場合には、パワー変換部31がパワー変換を行う。切替部32がパワー変換を行わないと判定した場合には、パワー変換部31はパワー変換を行わない。
このパワー変換については、第1の実施の形態と同様である。
例えば、図9に記載のシール20の例であれば、1500Wと40秒とを掛け算して60000Jを算出し、それを1800Wで除算して33秒を算出する。その後の動作は、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
図11は、第2の実施の形態における、加熱制御部15、読取部21、および、加熱制御情報算出部30の動作の流れを示すフローチャートである。
ステップS101で、読取部21は、使用者により加熱開始ボタン10が押されたかどうかを判定し、押されたと判定したら(S101,YES)、ステップS102に進む。一方、読取部21は、加熱開始ボタン10が押されなければ(S101,NO)、ステップS101を繰り返して、加熱開始ボタン10が押されるのを待つ。
ステップS102では、読取部21は、カメラ17により、加熱庫13底面の画像を撮影する。その後、ステップS103に進む。
ステップS103では、読取部21は、画像の中から目印枠29を探す。目印枠29が見つかると(S103,YES)、ステップS104に進む。一方、読取部21は、目印枠29が見つからなければ(S103,NO)、ステップS111に進む。
ステップS104において、読取部21は、目印枠29に囲まれた英数字を読み取り、図9に示すシールの例であれば「500W2001500W040」の文字列を読み取る。そして、読取部21は、予め定められた解析ルールにより、その文字列を「500Wで2分」、「1500Wで40秒」という二組の加熱制御情報であると解析する。その後、ステップS105に進む。
ステップS105においては、目印読取部34が、シール20に、パワー変換記号33があるかないかを判定する。図9のシール20の例であれば、塗りつぶされた、星形状のパワー変換記号33があることが判定される。そして、切替部32は、パワー変換を行うと判定する。パワー変換を行うと判定された場合は(S105,YES)、ステップS106に進む。一方、パワー変換を行わないと判定された場合には(S105,NO)、ステップS110に進む。
加熱制御情報算出部30は、電子レンジ1の最大出力が1800Wであることを、予め加熱制御部15から受け取っている。そして、ステップS106において、加熱制御情報算出部30は、読取部21から受け取った、複数の加熱制御情報のうち、加熱制御部15から受け取った最大出力により近い方の加熱パワーと、それに対応する加熱時間との積を演算する。
具体的には、加熱制御情報算出部30は、最大出力1800Wにより近い1500Wと、それに対応する40秒という加熱制御情報を用いて、1500×40=60000Jの演算を行う。そして、加熱制御情報算出部30は、さらに、60000Jを1800Wで割り算して、33秒の加熱時間を演算する。そしてステップS107に進む。
ステップS107において、加熱制御情報算出部30は、加熱時間が、上述の演算を行った結果である33秒であることと、加熱パワーが、変換を行った1800Wであることを、加熱制御部15に送る。加熱制御部15は、操作表示部6のパワー切替表示器8を点灯させる。そしてステップS108に進む。
ステップS108では、加熱制御部15は、加熱時間を操作表示部6の液晶表示器7に表示させる。この場合は「33秒」と表示してステップS109に進む。
ステップS109において、加熱制御部15は、マグネトロン14を駆動して加熱を開始する。加熱中、操作表示部6の液晶表示器7は、33秒からカウントダウン表示を行い、パワー切替表示器8は点灯をし続ける。
ステップS105において、パワー変換を行わないと判定された場合(S105,NO)、即ち、目印読取部34がパワー変換記号33がないと判定した場合には、ステップS110に進む。
ステップS110において、加熱制御情報算出部30は、パワー変換を行わず、読み取られた加熱制御情報である、1500Wおよび加熱時間(例えば20秒)を加熱制御部15に送る。加熱制御部15は、操作表示部6のパワー切替表示器8を消灯させる。そしてステップS108に進む。この場合、ステップS108では、加熱制御部15は、操作表示部6の液晶表示器7に「20秒」と表示させる。
ステップS111は、ステップS103で目印枠が見つからない場合(S103,NO)に行われる。この場合、元々加熱制御情報が表示されていない食品である等、使用者の操作ミス等も考えられる。このため、液晶表示器7には注意喚起の表示が行われて、加熱は行われない。
このように、本実施の形態によれば、食品のシール20へのパワー変換記号33の表示により、パワー変換を行うか否かを切替えることができる。これにより、食品を製造する側で、パワー変換を行うかどうかを決めることができる。食品の加熱負荷によらずに、パワー変換を行いたくない等の、食品特有の事情等によっても、パワー変換を行うか否かを決めることができる。よって、利便性が増す。
このパワー変換記号33は、例えば商標等で代用してもよく、特定のメーカーの商品はパワー変換を行うが、そうでない商品はパワー変換を行わない、という使い方をしてもよい。
なお、上述の説明とは逆に、パワー変換記号33が見つかると、切替部32は、パワー変換を行わず、見つからないと、切替部32は、パワー変換を行うとしてもよい。
(第3の実施の形態)
次に、本開示の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態においては、加熱される食品の加熱負荷を検出部で検出し、検出された加熱負荷に応じて、加熱制御情報算出部30の切替部32がパワー変換を行うか否かを切替える。第3の実施の形態の電子レンジ1の基本的な構成は、下記説明する構成を除いて、第1の実施の形態または第2の実施の形態の構成と共通している。
本実施の形態においては、食品の加熱負荷を検出する検出部として、重量センサを使った例について説明する。
図12は、本実施の形態の主要部分を示すブロック図であり、加熱庫13内には、食品を搭載する庫内底面板35が設けられている。庫内底面板35には3カ所に、脚36a,36b,36cが設けられており、脚36a,36b,36cには、それぞれ、重量センサ37a,37b,37cが取り付けられている。重量センサとしては、例えば、スレンゲージ等が用いられている。
そして重量算出部38は、重量センサ37a,37b,37cからの出力をまとめて、庫内底面板35に付与されている重量を、庫内底面板35の重量を含めて算出する。重量算出部38は、算出された重量から、予め分かっている庫内底面板35の重量を減算して、庫内底面板35に乗せられた食品の重量を算出し、算出された重量を、加熱制御情報算出部30に送る。
切替部32は、例えば、重量算出部38が算出した食品の重量が350g以上であればパワー変換を行い、350g未満であればパワー変換を行わないと予め定められている。切替部32がパワー変換を行うと判定した場合には、パワー変換部31がパワー変換を行う。
ここで、食品の重量によって、パワー変換を行うかどうかを切り替えるのは、水分含有量と食品の重量とは比例関係にあることが多いからである。つまり、ご飯でも野菜でも肉でも、水分含有率には差がなく、80~90%ぐらいであることから、食品の重量でパワー変換を切り替えることは、ほぼ水分含有量で切り替えることと同じである。
パワー変換部31が行うパワー変換は、読取部21が読み取った1500Wで加熱する時の加熱時間から、最大出力である1800Wで加熱する時の加熱時間を算出する処理である。これは、第1の実施の形態および第2の実施の形態と同様の計算処理であり、以後の動作も、第1の実施の形態および第2の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
図13は、第3の実施の形態における加熱制御部15、読取部21、および、加熱制御情報算出部30の動作の流れを示すフローチャートである。
ステップS201で、読取部21は、使用者により加熱開始ボタン10を押されたかどうかを判定する。読取部21は、加熱開始ボタン10が押されたら(S201,YES)ステップS202に進む。一方、読取部21は、加熱開始ボタン10が押されなければ(S201,NO)ステップS201を繰り返して、加熱開始ボタン10が押されるのを待つ。
ステップS202において、読取部21は、カメラ17により、加熱庫13底面の画像を撮影する。その後、ステップS203に進む。
ステップS203では、読取部21は、画像の中から目印枠29を探す。目印枠29が見つかると(S203,YES)、ステップS204に進む。一方、読取部21は、目印枠29が見つからなければ(S203,NO)、ステップS211に進む。
ステップS204において、読取部21は、目印枠29に囲まれた英数字を読み取り、図3に示すシールの例であれば「500W2001500W040」の文字列を読み取る。そして、読取部21は、予め定められた解析ルールにより、その文字列を「500Wで2分」、「1500Wで40秒」という二組の加熱制御情報であると解析する。その後、ステップS205に進む。
ステップS205において、重量算出部38が算出した食品の重量が、所定重量以上(350g以上)であるか否かが、加熱制御情報算出部30において判定される。食品の重量が所定重量以上であれば(S205,YES)、ステップS206に進む。一方、食品の重量が所定重量未満である場合は(S205,NO)ステップS210に進む。
加熱制御情報算出部30は、電子レンジ1の最大出力が1800Wであることを、予め加熱制御部15から受け取っている。そして、ステップS206において、加熱制御情報算出部30は、読取部21から受け取った複数の加熱制御情報のうち、加熱制御部15から受け取った最大出力に、より近い方の加熱パワーと、それに対応する加熱時間との積を演算する。
具体的には、加熱制御情報算出部30は、1800Wに近い1500Wと、それに対応する40秒という加熱制御情報を用いて、1500×40=60000Jの演算を行い、更に、60000Jを1800Wで割り算して、33秒の加熱時間を演算する。そしてステップS207に進む。
ステップS207において、加熱制御情報算出部30は、加熱時間が、上述の演算を行った結果の33秒であることと、加熱パワーが、変換を行った1800Wであることとを、加熱制御部15に送る。加熱制御部15は、操作表示部6のパワー切替表示器8を点灯する。そしてステップS208に進む。
ステップS208では、加熱制御部15は、加熱時間を、操作表示部6の液晶表示器7に表示させる。この場合は「33秒」と表示させてステップS209に進む。
ステップS209において、加熱制御部15は、マグネトロン14を駆動して加熱を開始する。加熱中、操作表示部6の液晶表示器7は、33秒からカウントダウン表示を行い、パワー切替表示器8は点灯をし続ける。
ステップS205においてパワー変換を行わないと判定された場合、即ち重量算出部38が算出した食品の重量が所定重量以上ない場合には、ステップS210に進む。
ステップS210では、加熱制御情報算出部30は、パワー変換を行わず、読み取られた加熱制御情報である1500Wと加熱時間(例えば20秒)とを加熱制御部15に送る。加熱制御部15は、操作表示部6のパワー切替表示器8を消灯させる。そしてステップS208に進む。この場合、ステップS208では、加熱制御部15は、操作表示部6の液晶表示器7に「20秒」と表示する。
また、ステップS211は、ステップS203で目印枠が見つからない場合(S203,NO)の処理であり、元々加熱制御情報が表示されていない食品である等の使用者の操作ミス等も考えられる。このため、液晶表示器7に注意喚起の表示が行われ、加熱は行われない。
本実施の形態では、重量センサを加熱負荷の検出部として説明したが、例えばカメラ17を加熱負荷の検出部としてもよく、撮影された画像から食品部分を抽出し、その面積から加熱負荷の大きさを推定する等してもよい。また、例えば、赤外線センサを設けて、非接触で食品の表面温度を検出し、その表面温度の上昇速度から、食品の加熱負荷を推定してもよい。
なお、第1の実施の形態から第3の実施の形態では、加熱制御情報を文字(少なくとも英数字を含む)として説明したが、本開示はこの例に限定されない。例えば、加熱制御情報を符号化したバーコード、QRコード(登録商標)等の2次元コード、または独自のコード等でもよい。これらの場合には、誤り検出ビット等を付加することができ、読取性能を向上できる。
また文字と、バーコードまたはQRコード等とを組合わせてもよく、例えば、加熱制御情報および加熱時間は、文字で記載し、パワー変換を行うか否かは、バーコードまたはQRコードに、例えば1ビットの情報として入れておく等としてもよい。
また、本実施の形態では、シール20に、加熱パワーおよび加熱時間の組合せが2つ記載されている場合について説明したが、少なくとも、1つ以上の加熱パワーおよび加熱時間の組合せが記載されていればよい。
また、シール20から加熱制御情報23を読み取る際に、目印枠29で囲まれた英数字を読み取るものとして説明したが、本開示はこの例に限定されない。目印枠29に代えて、加熱制御情報23と所定の位置関係にある、所定形状の位置指定マークを用いることで、精度良く加熱制御情報23を読み取ることができる。位置指定マークは、所定の図形、または、販売店の商号若しくは標章等でもよい。