JPWO2019043852A1 - 数値制御システムおよびモータ制御装置 - Google Patents

数値制御システムおよびモータ制御装置 Download PDF

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Abstract

本発明にかかる数値制御システム(1)は、数値制御プログラムに従い、工具を用いて加工を行う工作機械(2)に備わる駆動軸(21,22)を制御し、駆動軸(21,22)へ印加される外乱力または外乱トルクを取得し、外乱力または外乱トルクを工具基準座標系へ座標変換して出力する座標変換部(12)と、座標変換部(12)から出力される外乱力または外乱トルクと、駆動軸状態と、あらかじめ定められた関係式と、加工条件とを用いて、加工プロセスモデルの特性を決定する加工プロセスパラメータと工作機械(2)のダイナミクスモデルの特性を決定する動特性パラメータとを算出する同定部(17)と、を備え、関係式は、加工プロセスパラメータと動特性パラメータと外乱力または外乱トルクとの関係を定める関係式である。

Description

本発明は、工作機械を制御する数値制御システムおよびモータ制御装置に関する。
工作機械は、工具を用いてワークに力またはエネルギーを与えることでワークから不要部分を除去する加工である除去加工を行う加工装置である。特に、除去加工の一つである切削加工では、工具の刃先を高速度でワークに接触させることで、ワーク表面にせん断破壊を起こし、ワークの不要部分を削り取る加工を行う。
切削加工は、加工プロセスと機械ダイナミクスとが相互に影響する物理現象であるので、加工状態を管理するためには、両者を同時に管理することが望ましい。ここで、加工プロセスとは、工具刃先がワークに侵入することで切りくずを生成しながら加工面を形成するという一連の過程を表す。機械ダイナミクスとは、機械内外の振動源によって、機械を構成する構造物が加振されたときの機械構造物の振る舞いを表す。一般に、切削加工は上述した加工プロセスおよび機械ダイナミクスを含む種々の物理現象が複雑に影響し合う現象であるため、統合的な解析は困難とされている。このため、生産現場においては、評価対象を限定することで、目的に応じた加工管理を達成している。
例えば、加工後のワーク寸法を測定することで、理想軌跡に対して生じた工具の位置偏差を評価し、所望の寸法に収まるように切込み量を調整する方法が取られる。別の例では、予め定められた時間または距離だけ加工したあとに、工具刃先の摩耗幅を評価することで、加工品位を維持しつつ工具を長寿命化できる切削速度を探索する方法が取られる。さらに別の例では、機械に付加した力センサから検出信号を取得することで、切削負荷が過大にならないような主軸回転数または送り速度を決定する方法が取られる。さらに、別の例では、加工中に生成される切りくずの形状または排出方向を観察することで、切削速度と切り込み量を調整する方法が取られる。
しかし、上記の方法のうち、非加工時に測定された結果を用いて評価を行う評価方法では、評価対象が加工中と同一の状態でないため、測定結果は実際の加工現象を表すものにはならない。複数の物理現象が相互に影響し合う切削加工現象においては、加工中すなわちインプロセスで加工状態を解析し、評価することが望ましい。加工状態をインプロセスで管理する方法として、特許文献1には以下の方法が提案されている。
特許文献1に記載の方法では、力センサを設置した工作機械で行う加工をシミュレーションにより再現し、シミュレーションで再現した切削力と力センサの測定値とを比較して、シミュレーションで切削力を算出するための加工プロセス情報を修正することで、最終的な切削力を推定する。この方法では、実加工中に得られる切削力を用いて、加工プロセス情報を更新するので、加工状態を反映した値を算出することができる。
特開2013−061884号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、予め記憶された工具の動特性情報を用いて、加工プロセス情報のみを算出する。したがって、加工中に機内の構造物の動剛性が変化した場合に正しく変位を算出できないという問題があった。一般に、主軸の発熱によって主軸の動剛性が変化したり、切削によるワーク質量の減少によってワークの動剛性が変化したりすることが知られている。このため、機械ダイナミクスを考慮しない特許文献1に記載の方法では、加工中に逐次変化する加工プロセスおよび機械ダイナミクスを精度良く同定できないという問題があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、加工プロセスおよび機械ダイナミクスを精度良く同定することができる数値制御システムを得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる数値制御システムは、数値制御プログラムに従い、工具を用いて加工を行う工作機械に備わる駆動軸を制御する数値制御システムであって、駆動軸へ印加される外乱力または外乱トルクを取得し、外乱力または外乱トルクを工具基準座標系へ座標変換して出力する座標変換部を備える。また、この数値制御システムは、さらに座標変換部から出力される外乱力または外乱トルクと、駆動軸状態と、あらかじめ定められた関係式と、加工条件とを用いて、加工プロセスモデルの特性を決定する加工プロセスパラメータと工作機械のダイナミクスモデルの特性を決定する動特性パラメータとを算出する同定部と、を備え、関係式は、加工プロセスパラメータと動特性パラメータと外乱力または外乱トルクとの関係を定める関係式である。
本発明にかかる数値制御システムは、加工プロセスおよび機械ダイナミクスを精度良く同定することができるという効果を奏する。
実施の形態1にかかる数値制御システムの構成例を示すブロック図 実施の形態1の数値制御システムにおける動作手順の一例を示すフローチャート 実施の形態1における各座標系の関係を示す図 実施の形態1において、テーブルに固定されたワークが切削力によって振動する場合に、テーブルに外乱力が伝達される様子を表した模式図 実施の形態1において、工具刃先がワークに接触する工具の回転角度の一例を示す図 実施の形態1において、工具刃先がワークに接触しない工具の回転角度の一例を示す図 実施の形態1において、工具中心と主軸回転中心との間にずれ量が生じている場合の第1刃先における切削の様子を示す図 実施の形態1において、工具中心と主軸回転中心との間にずれ量が生じている場合の第2刃先における切削の様子を示す図 実施の形態1の処理回路の構成例を示す図 実施の形態2にかかる数値制御システムの構成例を示す図 実施の形態3の外乱推定部の構成例を示すブロック図 実施の形態3の駆動軸のモデルの一例を示す図 比較例における外乱力の推定結果を示す図 実施の形態3の外乱推定部によって推定された外乱力の一例を示す図 実施の形態4の外乱推定部の構成例を示すブロック図 実施の形態4における駆動軸のモデル化の一例を示す図 実施の形態5の外乱推定部の構成例を示すブロック図 実施の形態6にかかる数値制御システムの構成例を示すブロック図 実施の形態6にかかる数値制御システムの別の構成例を示すブロック図 実施の形態7にかかる数値制御システムの構成例を示すブロック図 実施の形態7にかかる数値制御システムの別の構成例を示すブロック図
以下に、本発明の実施の形態にかかる数値制御システムおよびモータ制御装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる数値制御システムの構成例を示すブロック図である。実施の形態1の数値制御システム1は、工作機械2を制御する。
工作機械2は、駆動軸21および駆動軸22を備える。駆動軸21および駆動軸22のそれぞれは、モータとモータに接続された1つ以上の構造物とで構成される。駆動軸22は、工具に回転運動を与える主軸であり、駆動軸21は、工具に位置を与えるサーボ軸である。駆動軸22と駆動軸21は同期して制御される。サーボ軸である駆動軸21は、例えば、サーボモータとカップリングとボールねじとテーブルとによって構成され、主軸である駆動軸22は、例えば、主軸モータとギアとシャフトとツーリングシステムとによって構成される。工作機械2は、主軸である駆動軸22に取り付けられた工具が回転することで、サーボ軸である駆動軸21を構成するテーブル上に固定されたワークに対して切削加工を行う。駆動軸21および駆動軸22は、工具を用いて加工を行う工作機械2に備わる駆動軸の一例である。なお、駆動軸21および駆動軸22の構成は上述した例に限定されない。また、図1では、サーボ軸である駆動軸21を1つ図示しているがサーボ軸の数は、1つ以上であればよい。
駆動軸21のサーボモータおよび駆動軸22の主軸モータは、それぞれロータリーエンコーダを備えており、ロータリーエンコーダにより検出された信号であるエンコーダ信号を数値制御システム1へ出力する。また、駆動軸21は、サーボモータに印加されるモータ電流を検出し、検出した結果をモータ電流信号として数値制御システム1へ出力する。駆動軸22は、主軸モータに印加されるモータ電流を検出し、検出した結果をモータ電流信号として数値制御システム1へ出力する。
数値制御システム1は、外部から与えられるまたは内部に保持するNC(Numerical Control:数値制御)プログラムに従い、駆動軸21および駆動軸22を制御する。
NCプログラムには、予め定められた座標系における工具の相対位置指令またはサーボ軸の位置指令と、主軸回転数指令と、送り速度指令とが含まる。NCプログラムにおいて用いられる上述した座標系をNCプログラム座標系と呼ぶ。NCプログラム座標系は、例えばワークに固定された座標系である。
図1に示すように、駆動軸21には加速度センサ211が設けられ、駆動軸22には加速度センサ221が設けられる。加速度センサ211は、駆動軸21における直線方向または回転方向の加速度を検出し、検出結果を加速度センサ信号として数値制御システム1へ出力する。加速度センサ221は、駆動軸22における直線方向または回転方向の加速度を検出し、検出結果を加速度センサ信号として数値制御システム1へ出力する。なお、加速度センサ211および加速度センサ221が数値制御システム1に含まれてもよい。加速度センサ211および加速度センサ221は、駆動軸21,22の速度または加速度を検出するセンサの一例である。
数値制御システム1は、図1に示すように、指令値生成部11、座標変換部12、駆動軸制御部13,15、外乱推定部14,16、同定部17および記憶部18を備える。記憶部18は、ダイナミクスモデル、加工プロセスモデルおよび加工条件を記憶する。ダイナミクスモデル、加工プロセスモデルおよび加工条件については後述する。駆動軸制御部13,15および外乱推定部14,16はモータ制御装置100を構成する。
図2は、本実施の形態1の数値制御システム1における動作手順の一例を示すフローチャートである。図1および図2を用いて本実施の形態1の数値制御システム1の動作を説明する。
指令値生成部11は、NCプログラムに記述された指令を解析し、各駆動軸に対する駆動軸指令を算出する(ステップS1)。指令値生成部11は、算出した駆動軸指令を駆動軸制御部13,15へ出力する。さらに、指令値生成部11は、座標変換部12に対して、NCプログラム座標系の設定情報および当該座標系での工具相対位置と工具回転角度および各駆動軸に対する駆動軸指令を出力する。NCプログラム座標系の設定情報および当該座標系での工具相対位置と工具回転角度は、NCプログラムに記述されている。
駆動軸制御部13,15は、指令値生成部11で算出された駆動軸指令に従って各駆動軸を制御する(ステップS2)。具体的には、駆動軸制御部13は、駆動軸21のサーボモータのロータリーエンコーダから出力されるエンコーダ信号が目標値である駆動軸指令に追従するようにモータ電流を制御する。駆動軸制御部15は、駆動軸22を構成する主軸モータのロータリーエンコーダから出力されるエンコーダ信号が目標値である駆動軸指令に追従するようにモータ電流を制御する。さらに、駆動軸制御部13,15は、後述する同定部17へ各駆動軸の位置指令と位置フィードバックと速度指令と速度フィードバックを含む情報である駆動軸状態を出力する。なお、駆動軸制御部13,15における動作は、駆動軸指令にしたがった一般的な動作であるため詳細な説明を省略する。
外乱推定部14および外乱推定部16は、駆動軸21および駆動軸22における外乱をそれぞれ推定する(ステップS3)。詳細には、外乱推定部14は、駆動軸21から出力されるエンコーダ信号およびモータ電流信号と、加速度センサ211から出力される加速度センサ信号とを用いて、駆動軸21に加わる外乱力をサーボ軸推定外乱力として推定して出力する。具体的には、以下の式(1)を用いて、サーボ軸を1慣性系駆動システムとみなして、外乱力を推定する。
Figure 2019043852
なお、サーボ軸外乱力の推定方法は上述した例に限定されない。例えば、外乱推定部14は、式(1)の結果から、駆動軸の速度に比例する粘性摩擦力を減じたものを最終的な推定外乱力として算出してもよい。
外乱推定部16は、駆動軸22から出力されるエンコーダ信号およびモータ電流信号と、加速度センサ221から出力される加速度センサ信号とを用いて、主軸に加わる外乱力を主軸推定外乱力として推定して出力する。外乱推定部16は、駆動軸22の速度または加速度を検出するセンサによって検出された検出結果を用いて駆動軸22へ印加される外乱力を推定する。具体的には、加速度センサ信号を角加速度へ変換し、以下の式(2)を用いて、主軸を1慣性系駆動システムとみなして、主軸外乱力を推定する。
Figure 2019043852
なお、主軸外乱力の推定方法は上述した例に限定されない。例えば、外乱推定部16は、式(2)の結果から、駆動軸の角速度に比例する粘性摩擦力を減じたものを最終的な推定外乱力として算出してもよい。外乱推定部16は推定外乱力の代わりに推定外乱トルクを算出して出力してもよい。
図2の説明に戻り、次に、座標変換部12は、指令値生成部11から出力されるNCプログラム座標系の設定情報およびNCプログラム座標系での工具相対位置と工具回転角度に基づいて、外乱推定部14によって算出されたサーボ軸推定外乱力と外乱推定部16で算出された主軸推定外乱力とを工具基準座標系へ座標変換して出力する(ステップS4)。すなわち、座標変換部12は、駆動軸21,22へ印加される外乱力または外乱トルクを取得し、外乱力または外乱トルクを工具基準座標系へ座標変換して出力する。本実施の形態1では、座標変換部12は、外乱推定部14,16から各駆動軸の外乱力または外乱力ベクトルを取得する。
ここで、工具基準座標系とは、工具軸方向と当該方向に垂直な平面内の2方向を含む座標系であり、例えば、工具軸方向をZ軸に一致させ、工具軸方向に垂直な平面内における工具進行方向をX軸とし、X軸とZ軸にそれぞれ垂直な方向をY軸とする工具を基準とした座標系である。工具基準座標系は、工具の並進移動に伴って並進移動する座標系であるが、工具の回転に伴う回転は考えない座標系である。工具基準座標系は、上述した例に限定されず、工具軸方向と当該方向に垂直な平面内の2方向を含む座標系であればよい。なお、主軸外乱力はサーボ軸外乱力と異なり、力の方向が工具回転角度によって変化する量である。このため、主軸外乱力の座標変換は工具回転角度毎に実行される。
座標変換部12における具体的な処理について図3を用いて説明する。図3は、本実施の形態1における各座標系の関係を示す図である。図3に示した例では、駆動軸21を構成するテーブル31の上にワーク32が載置され、駆動軸22を構成するツーリングシステム34が工具33を保持している。テーブル31は図示しないサーボモータにより駆動され、ツーリングシステム34は、図示しない主軸モータにより駆動される。座標系X−Y−Zは、工具基準座標系であり、座標系X’−Y’−Z’はNCプログラム座標系であり、座標系X’’−Y’’−Z’’は機械座標系である。方向35は、テーブル31に対するワーク32先端の相対変位の方向を示している。
座標変換部12は、NCプログラム座標系の設定情報と工具相対位置情報とを用いて、工具基準座標系X−Y−Zを設定する。さらに、座標変換部12は、外乱推定部14で算出されたサーボ軸の推定外乱力を工具基準座標系X−Y−Zにおける推定外乱力へ座標変換し同定部17へ出力する。なお、座標変換部12は、外乱推定部16で算出した主軸の推定外乱力を工具基準座標系における推定外乱力へ座標変換し、同定部17へ出力することもできる。
サーボ軸の推定外乱力と主軸の推定外乱力はそれぞれ工具基準座標系におけるX方向およびY方向の成分を含んでいるので、座標変換部12は、X方向およびY方向については、次の処理を行って、同定部17へ出力する推定外乱力を決定することもできる。例えば、座標変換部12は、X方向およびY方向のそれぞれの成分について平均値をとり、ここにサーボ軸推定外乱力のZ軸成分を追加することで、最終的な推定外乱力として同定部17へ出力する。別の例として、加工経路毎に最終的な推定外乱力として採用する駆動軸を予め設定しておき、この駆動軸に対応する推定外乱力を座標変換し出力してもよい。さらに、別の例として、サーボ軸推定外乱力と主軸推定外乱力とのX軸成分およびY軸成分のそれぞれの方向の平均値を算出し、これらの平均値を最終的な推定外乱力として採用してもよい。さらに、別の例として、座標変換部12は、サーボ軸推定外乱力と主軸推定外乱力のX軸成分およびY軸成分に対して、それぞれ判定下限値および判定上限値を予め設定しておき、判定下限値以上かつ判定上限値以下となるサーボ軸推定外乱力または主軸推定外乱力のX軸成分またはY軸成分を最終的な推定外乱力として採用してもよい。また、座標変換部12は、取得した外乱力または外乱トルクが工具基準座標上の同一方向の成分を含む場合には、取得した外乱力または外乱トルクの中から互いに独立な方向となる組み合わせを選択してもよい。さらに、別の例として、各駆動軸に信頼度を設定し、信頼度が高い駆動軸を座標変換に採用してもよい。一般に多慣性の駆動軸は単慣性の駆動軸に比べて推定精度が低下することが知られているため、例えば、駆動軸を構成する慣性体の数の逆数を信頼度として設定することで、構造が単純な駆動軸を優先的に採用することができる。信頼度の設定方法の別例として、加工部に近い駆動軸の信頼度を高く設定し、加工部から遠い駆動軸の信頼度を低く設定することで、加工部で発生した切削力の影響を受けやすい駆動軸を優先的に採用することができる。信頼度の設定方法の別例として、駆動軸が駆動中である場合に0より高い値に設定し、静止中である場合に0と設定することで、駆動中の駆動軸を優先的に採用することができる。上記の信頼度の設定方法は、組み合わせて用いることもできる。なお、信頼度の設定方法は、上記に限定されるものではない。
図2の説明に戻り、同定部17は、ダイナミクスモデルの特性を決定する動特性パラメータおよび加工プロセスモデルの特性を決定する加工プロセスパラメータといったパラメータを算出する(ステップS5)。具体的には、同定部17は、座標変換部12から出力される推定外乱力または推定外乱トルクと、駆動軸制御部13および15からそれぞれ出力される駆動軸状態と、記憶部18に記憶されている加工条件とダイナミクスモデルと加工プロセスモデルとを用いて、ダイナミクスモデルの特性を決定する動特性パラメータと加工プロセスモデルの特性を決定する加工プロセスパラメータとを算出する。ここで、動特性パラメータとは、後述するダイナミクスモデルの特性を決定するパラメータであり、例えば、減衰係数、固有振動数、質量、振動モードベクトルである。また、加工プロセスパラメータとは、後述する加工プロセスモデルの特性を決定するパラメータであり、例えば、比切削抵抗、エッジフォース、工具偏心量、工具摩耗幅である。
加工条件には、1刃あたりの送り量と、工具径と、工具刃数と、工具ねじれ角と、工具軸方向切り込み量と、工具径方向切り込み量と、ワーク素材形状と、アップカットまたはダウンカットを表す加工様式とを含む情報が設定されている。
ダイナミクスモデルは、工作機械2内部の機械構造物の動特性を記述する数理モデルである。以下に、ダイナミクスモデルの一例を説明する。図4は、実施の形態1において、テーブル31に固定されたワーク32が切削力によって振動する場合に、テーブル31に外乱力が伝達される様子を表した模式図である。図4では、図3に示した例と同様に、駆動軸21を構成するテーブル31の上にワーク32が載置され、駆動軸22を構成するツーリングシステム34が工具33を保持する構成例を前提としている。また、図4において、相対変位36はテーブル31に対するワーク32先端の振動モードベクトル方向の相対変位を示し、切削力37はワーク32における切削力を示し、外乱力38はテーブル31に伝達される外乱力を示している。このときの切削力37、外乱力38、相対変位36の関係は、以下の式(3)で表すことができる。式(3)に示すダイナミクスモデルは、切削力が発生したときに、工具またはワークを含む機械構造を通じて駆動軸に伝達される外乱力を算出するとともに、切削力が発生したときに機械構造を通じて各駆動軸で生じる位置偏差を算出するための数理モデルである。
Figure 2019043852
式(3)に示したダイナミクスモデルはテーブル31上のワーク32を1自由度振動系として記述したモデルであるが、ダイナミクスモデルは上記の例に限定されるものではない。例えば、ワーク32を固定する固定部およびテーブル31を含めた多自由度振動系として記述しても良い。さらに、工具33、ツーリングシステム34および主軸モータからなる工具側構造物に関するダイナミクスモデルを設定してもよい。さらに、ワーク32側構造物と工具33側構造物とを組み合わせた振動系としたダイナミクスモデルを設定してもよい。
加工プロセスモデルは、工具33とワーク32との間の切削プロセスを記述する数理モデルである。以下の式(4)に加工プロセスモデルの一例を表す。
Figure 2019043852
上記の式(4)は各時刻の工具回転角度に応じた切り取り厚さから、工具がワークに対して与える切削力を算出する数式である。ここで、切り取り厚さとは工具33の刃先である工具刃先がワーク32を通過する際にワーク32を切り取る厚さを指す。切削力は、図5および図6に示すように、工具刃先がワーク32に接触する角度にある場合にはゼロ以上の値として算出されるが、工具刃先がワーク32に接触しない角度にある場合はゼロとして算出される。図5は、工具刃先がワーク32に接触する工具33の回転角度の一例を示す図であり、図6は、工具刃先がワーク32に接触しない工具33の回転角度の一例を示す図である。すなわち、工具33の回転角度または時刻毎に位置偏差に基づいてワーク32に接触するか否かが判定され、工具刃先がワーク32に接触する場合には切り取り厚さが算出され、工具刃先がワーク32に接触しない場合には切り取り厚さがゼロとして算出される。
式(4)に示す演算を工具の接線方向、半径方向および軸方向の3方向に関して行うことで、3方向の切削力を算出することができる。加工プロセスモデルでは、上記3方向の成分を持つ切削力に対して工具回転角度に応じた回転行列を乗じることにより座標変換を行うことで、工具基準座標系における切削力が算出される。式(5)に座標変換の一例を示す。
Figure 2019043852
上記の式(4)および式(5)に示す演算を、工具刃先の数だけ実行することで、最終的な切削力が演算される。式(4)に示される加工プロセスモデルは、工具の刃先と工具の加工対象であるワークとの間の相対位置および工具回転角度に基づいて、切り取り厚さを算出し、切り取り厚さに基づいて工具とワークの間で発生する切削力を算出するための数理モデルである。式(4)における切り取り厚さは、1刃あたりの送り量と工具回転角度とを用いて式(6)によって算出できる。
Figure 2019043852
別の例として、切り取り厚さは、式(7)を用いても算出できる。
Figure 2019043852
式(7)は、数式(6)に対して、現在の工具変位と前加工面との差から算出される変動量を追加し、さらに各工具刃先に応じた補正量を追加した切り取り厚さの算出式である。式(7)に示した演算では、現在の工具刃先に生じた変位量と1刃以上前の工具刃先に生じた変位量の内、加工面形状に影響を与えた変位量と現在の工具刃先に生じた変位量との差だけ切り取り厚さが修正される。すなわち、切り取り厚さが、切削に関与している現在の工具刃先によって生成された軌跡と、現在の工具刃先を基準として1刃以上前の工具刃先の内、加工面形状に影響を与えた工具刃先の軌跡との差に基づいて算出される。ここで、1刃以上前の工具刃先とは、切削に関与している工具刃先を基準とした時刻よりも前の時刻において切削に関与した工具刃先である。例えば、刃数が2である工具において、現在切削中の工具刃先が第2刃である場合では、1刃前の工具刃先とは180度回転前の第1刃であり、2刃前は360度回転前の第2刃であり、3刃前の工具刃先とは540度回転前の第1刃である。切削中に工具に変位が生じて一時的に刃先がワークから離れる場合、現在の工具刃先は1刃前の工具刃先によって生成された前加工面だけではなく、2刃以上前の工具刃先によって生成された前加工面をも切削する。
さらに、式(7)に示した演算では、切り取り厚さは、工具刃先を示す番号である工具刃先番号と工具回転角度とに応じた補正量によって修正される。ここで、補正量は工具刃先毎に異なる回転半径で切削することによる切り取り厚さの変化を修正するために導入される。補正量を導入する必要のある事例として、以下が挙げられる。例えば、特定の刃先に摩耗やチッピングが発生した場合、その工具刃先の回転半径は他の工具刃先より短くなるので、摩耗幅やチッピング幅に応じた補正量が追加される。別の例として、刃先交換式の工具において、工具刃先の取り付け誤差が存在する場合、取り付け誤差に応じた補正量が追加される。別の例として、主軸回転中心が工具中心に一致しない場合すなわち工具偏心が存在する場合、工具偏心量に応じた補正量が追加される。なお、工具中心とは、工具33の外接円の中心である。工具偏心量とは、図7および図8に示すように工具中心と主軸回転中心との間にずれ量が生じている場合に、工具刃先毎に工具刃先の回転半径が増減する分だけ切り取り厚さを修正する量である。図7は、工具中心と主軸回転中心との間にずれ量が生じている場合の第1刃先における切削の様子を示す図であり、図8は、工具中心と主軸回転中心との間にずれ量が生じている場合の第2刃先における切削の様子を示す図である。第1刃先43および第2刃先44は、工具33の刃先である。図7および図8に示した例では、工具中心と主軸回転中心42との間にずれがある。このような場合には、ずれがない場合の切り取り厚さに対して切り取り厚さを修正する必要があり、工具偏心量は、このときの修正量を示す。すなわち、切り取り厚さには、工具の回転角度に応じた工具偏心量が加算または減算される。補正量によって切り取り厚さを修正する事例は上記の事例に限定されるものではなく、補正量は刃先に発生する現象に応じて適宜変更してもよい。
なお、加工プロセスモデルは式(4)に限定されるものではない。例えば、式(4)を用いて、切削速度が閾値以上である高速の場合と切削速度が閾値未満である低速の場合とで比切削抵抗の値を変化させてもよい。さらに、式(4)の右辺に、エッジフォース成分を定数項として追加したモデルとしても良い。さらに、式(4)の右辺に、プロセスダンピング力を追加したモデルとしても良い。ここで、プロセスダンピング力とは、工具刃先の逃げ面がワークに接触することによって発生する力である。別の例として、ねじれ角がある工具に対する加工プロセスモデルが用いられてもよい。具体的には、工具を軸方向に微小厚さの工具に分割し、分割された各微小厚さ工具における切削力を算出し、当該切削力を工具軸方向に積算して最終的な切削力を算出するモデルとしてもよい。さらに別の例として、有限要素解析によって切り取り厚さと切削力を算出するモデルとしてもよい。
以下では、ダイナミクスモデルが式(3)であり、加工プロセスモデルが式(4)および式(6)である場合に、動特性パラメータとして等価減衰係数と等価固有振動数を同定し、加工プロセスパラメータとして比切削抵抗を同定する処理について述べる。ダイナミクスモデルは、式(3)を変形および時間微分することで以下の式(8)に示す形式で表現できる。
Figure 2019043852
上記式(8)に、加工プロセスモデルである式(4)を代入すると、以下の式(9)が得られる。
Figure 2019043852
さらに、式(9)右辺を既知数と未知数とに分離して表現すると、式(10)が得られる。
Figure 2019043852
式(10)は、動特性パラメータと加工プロセスパラメータとが与えられたときに、外乱力の2階微分を算出する関係式である。同定部17は、座標変換部12によって工具基準座標系へ変換された推定外乱力を式(10)に代入することで、式(10)を満たす動特性パラメータと加工プロセスパラメータとを算出する。一例として、式(10)をn(nは1以上の整数)点の時刻分だけ並べることで、式(11)の行列形式で表現することができる。同定部17は、式(11)に対して最小2乗法を適用することで、動特性パラメータと加工プロセスパラメータを算出することができる。
Figure 2019043852
なお、上記では式(9)から式(10)および式(11)を導出し、式(10)または式(11)に基づいて動特性パラメータと加工プロセスパラメータを算出する方法について述べたが、式(9)の代わりに式(12)を用いることでも同様の演算を行うことができる。式(12)では、式(9)において切削判定関数g(φ(t))を微分可能な関数δ(φ(t))に置き換えている。δ(φ(t))は切削判定関数g(φ(t))を近似できる微分可能な関数であればよく、下記に示した形態に限定されない。
Figure 2019043852
別の例として、式(10)または式(11)の両辺に平滑化のための窓関数をかけることで、微分誤差の影響を受けずに動特性パラメータと加工プロセスパラメータを算出することができる。
さらに、別の例として、同定部17は、探索アルゴリズムによる繰り返し演算を実行し、式(10)または式(11)から動特性パラメータと加工プロセスパラメータとを探索してもよい。なお、同定部17における動特性パラメータと加工プロセスパラメータの算出は、式(10)および式(11)を用いた演算に限定されるものではない。ダイナミクスモデルおよび加工プロセスモデルの形態に応じて、動特性パラメータと加工プロセスパラメータと外乱力または外乱トルクの関係式とを予め設定することで、当該関係式と推定外乱力または外乱トルクから動特性パラメータと加工プロセスパラメータを算出することができる。
さらに、同定できるパラメータは等価減衰係数と等価固有振動数と比切削抵抗に限定されない。例えば、振動モードベクトルを動特性パラメータに含んだダイナミクスモデルを構成し、動特性パラメータと加工プロセスパラメータと外乱力の関係式を設定することで、同定部17は、振動モードベクトルを含んだ動特性パラメータを同定できる。別の例として、式(7)を用いて工具偏心量を加工プロセスパラメータに含んだ加工プロセスモデルを構成し、動特性パラメータと加工プロセスパラメータと外乱力の関係式を設定することで、同定部17は、加工プロセスパラメータを同定できる。
以上のように、同定部17は、座標変換部12から出力される外乱力と、あらかじめ定められた関係式と、加工条件とを用いて、加工プロセスモデルの特性を決定する加工プロセスパラメータと工作機械2のダイナミクスモデルの特性を決定する動特性パラメータとを算出する。上記の関係式は、加工プロセスパラメータと動特性パラメータと外乱力との関係を定める関係式である。
次に、数値制御システム1のハードウェア構成について説明する。図1に示した指令値生成部11、座標変換部12、駆動軸制御部13,15の少なくとも一部、外乱推定部14,16および同定部17は処理回路により実現される。駆動軸制御部13,15は、モータ電流を生成するインバータ等の回路を含んでいてもよい。記憶部18はメモリにより実現される。処理回路は、プロセッサを備える回路であってもよいし、専用ハードウェアであってもよい。
処理回路がプロセッサを備える回路である場合、処理回路は例えば図9に示した構成の処理回路である。図9は、処理回路の構成例を示す図である。処理回路200は、プロセッサ201およびメモリ202を備える。指令値生成部11、座標変換部12、駆動軸制御部13,15の少なくとも一部、外乱推定部14,16および同定部17が図9に示した処理回路200によって実現される場合、プロセッサ201が、メモリ202に格納されたプログラムを読み出して実行することにより、これらが実現される。すなわち、指令値生成部11、座標変換部12、駆動軸制御部13,15の少なくとも一部、外乱推定部14,16および同定部17が図9に示した処理回路200によって実現される場合、これらの機能は、ソフトウェアであるプログラムを用いて実現される。メモリ202はプロセッサ201の作業領域としても使用される。プロセッサ201は、CPU(Central Processing Unit)等である。メモリ202は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリー、等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク等が該当する。記憶部18を実現するメモリはメモリ202と同一であっても良いし異なっていてもよい。
指令値生成部11、座標変換部12、駆動軸制御部13,15の少なくとも一部、外乱推定部14,16および同定部17を実現する処理回路が専用ハードウェアである場合、処理回路は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。なお、指令値生成部11、座標変換部12、駆動軸制御部13,15の少なくとも一部、外乱推定部14,16および同定部17は、プロセッサを備える処理回路および専用ハードウェアを組み合わせて実現されてもよい。指令値生成部11、座標変換部12、駆動軸制御部13,15の少なくとも一部、外乱推定部14,16および同定部17は、複数の処理回路により実現されてもよい。
以上説明したように、実施の形態1の数値制御システム1では、外乱推定部14,16で算出された推定外乱力を座標変換部12が工具基準座標系へ座標変換し、同定部17が、ダイナミクスモデルと加工プロセスモデルと加工条件に基づいて構築される動特性パラメータと加工プロセスパラメータと外乱力との関係式から、動特性パラメータおよび加工プロセスパラメータを同定する。このため、切削加工の支配パラメータである動特性パラメータと加工プロセスパラメータを同時に算出することができるという効果を奏する。
また、比較例として、駆動軸に設けられた力センサの検出結果と加工プロセスモデルに基づいて、加工プロセスパラメータを同定する例を考える。力センサの検出結果は切削力が機械構造を通じて伝達された力すなわち外乱力を検出したものである。したがって、比較例では、機械ダイナミクスによって切削力が外乱力として伝達されることを考慮していない。このことから、比較例では、正確な加工プロセスパラメータを同定することができない。これに対し、本実施の形態1では、外乱推定部14,16が外乱力を推定して、同定部17が、ダイナミクスモデルと加工プロセスモデルと加工条件に基づいて構築される動特性パラメータと加工プロセスパラメータと外乱力との関係式から、動特性パラメータおよび加工プロセスパラメータを同定する。このため、比較例より正確に加工プロセスパラメータを同定することができる。
実施の形態1では、主軸とサーボ軸を含む全ての駆動軸に加速度センサを備える構成としたが、加速度センサを設置する駆動軸の軸数は全駆動軸数に限定されるものではない。例えば、3軸の直線サーボ軸に加速度センサを設けて主軸に加速度センサを設けず、3軸の直線サーボ軸の加速度センサによる検出結果から外乱力ベクトルを算出してもよい。また、2軸の直線サーボ軸に加速度センサを設けて主軸に加速度センサを設けず、加速度センサによる検出結果から当該サーボ軸で構成される平面上の2次元外乱力ベクトルを算出し、当該平面に関して動特性パラメータと加工プロセスパラメータを推定してもよい。また、主軸に設けた加速度センサによる検出結果から、主軸に垂直となる平面上の2次元外乱力ベクトルを算出し、さらに主軸に平行なサーボ軸に備えた加速度センサの検出結果から当該サーボ軸方向の外乱力を加えることで、3次元外乱力ベクトルを算出してもよい。
さらに、本実施の形態1では、3軸の直線サーボ軸と主軸を有する工作機械を対象にした構成を述べたが、本発明はこの軸構成の工作機械に限定されるものではない。例えば、工作機械が3軸の直線サーボ軸と主軸に加え1軸以上の回転サーボ軸を備える場合は、次の構成によって、本実施の形態1と同等の効果を実現できる。すなわち、指令値生成部11がNCプログラム座標系での工具相対姿勢を座標変換部12へ出力し、座標変換部12が工具の相対姿勢を考慮してサーボ軸推定外乱力と主軸推定外乱力を工具基準座標系へ座標変換することで、本実施の形態1と同様に推定外乱力ベクトルを算出することができる。
さらに、実施の形態1では、駆動軸の加速度を検出する手段として加速度センサを採用したが、検出する物理量は加速度に限定されるものではない。例えば、速度センサ、ジャイロセンサ、レーザドップラ計を用いて、速度を直接検出するセンサを採用してもよい。すなわち、変位量を1階以上時間微分した物理量を検出できるセンサを採用しても、本発明の趣旨を逸脱しない。
さらに、本実施の形態1で述べた数値制御システム1は、複数台の機器から構成されても構わない。例えば、駆動軸制御部13,15および外乱推定部14,16を備えるモータ制御装置100と、数値制御システム1の他の構成要素とが別の装置として構成されてもよい。また、数値制御システム1は、指令値生成部11と駆動軸制御部13,15と外乱推定部14,16と座標変換部12とを備えた数値制御装置と、同定部17および記憶部18を備えた産業用コンピュータとで構成されてもよい。産業用コンピュータは、工作機械2の付近に設置しても構わないし工作機械2とは離れた場所に設置されてもよい。また、産業用コンピュータは、複数台の工作機械2に接続されても構わない。さらに、産業用コンピュータは、有線または無線のインターネット回線などの公衆回線などを通じて外部に接続されたものでも構わない。数値制御システム1が、複数台の機器から構成される場合、指令値生成部11、座標変換部12、駆動軸制御部13,15の少なくとも一部、外乱推定部14,16および同定部17は、各々が実装される機器に搭載される処理回路により実現される。これらの処理回路は、上述した処理回路と同様に、プロセッサを備える処理回路であってもよいし、専用ハードウェアであってもよいし、プロセッサを備える処理回路および専用ハードウェアを組み合わせたものであってもよい。
さらに、実施の形態1では、工具の回転によりミーリング加工を行う工作機械について述べたが、本発明はワークの回転により旋削加工を行う工作機械にも適用できる。
実施の形態2.
図10は、本発明の実施の形態2にかかる数値制御システム1aの構成例を示す図である。実施の形態2の数値制御システム1aは、工作機械2aを制御する。
工作機械2aは、サーボ軸である駆動軸21aと主軸である駆動軸22aとを備える。駆動軸21aおよび駆動軸22aは、それぞれ加速度センサが設けられていないこと以外は、実施の形態1の駆動軸21および駆動軸22とそれぞれ同様である。工作機械2aには、力センサ23が設けられている。力センサ23は、例えば、図4に示したテーブル331上またはテーブル31の内部に設置される。力センサ23の設置個所はこの例に限定されず、力センサ23は各駆動軸にかかる力を検知可能なように設置されればよい。力センサ23は、駆動軸21a,22aへ印加される力またはトルクを検出するセンサの一例である。
実施の形態1では、加速度センサによって検出された結果とエンコーダ信号とモータ電流信号とを用いて外乱力を推定する構成であったが、実施の形態2では、力センサ23を用いることで、数値制御システム1aに外乱推定部14,16を設ける必要がない。実施の形態2の数値制御システム1aは、実施の形態1の数値制御システム1から外乱推定部14,16を除いた構成であり、力センサ23による検出結果が座標変換部12へ入力される。実施の形態1と同様の機能を有する構成要素は実施の形態1と同一の符号を付して重複する説明を省略する。以下、実施の形態1と異なる点を説明する。
座標変換部12は、外乱推定部14,16からそれぞれ入力されるサーボ軸推定外乱力および主軸推定外乱力の替わりに、力センサ23による検出結果を用いて、実施の形態1と同様に座標変換を実施し、座標変換後の外乱力を実施の形態1の推定外乱力と同様に同定部17へ出力する。すなわち、本実施の形態2では、座標変換部12は、駆動軸21a,22aへ印加される力またはトルクを検出するセンサによって検出された検出結果から外乱力を取得する。座標変換部12は、このセンサがトルクを検出するセンサである場合には、トルクを力に変換した後に、座標変換を行う。同定部17は、実施の形態1と同様に、動特性パラメータと加工プロセスパラメータを算出する。以上述べた以外の数値制御システム1aの動作は、実施の形態1の数値制御システム1aの動作と同様である。なお、座標変換部12は、検出されたトルクを座標変換して同定部17へ出力し、同定部17が座標変換されたトルクを用いて動特性パラメータと加工プロセスパラメータを算出してもよい。
このように、本実施の形態2では、加速度センサおよび外乱推定部14,16を用いずに力センサ23を用いて、実施の形態1と同様に、動特性パラメータと加工プロセスパラメータを算出することができる。これにより実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
実施の形態3.
図11は、本発明にかかる実施の形態3の外乱推定部の構成例を示すブロック図である。本実施の形態3の数値制御システムは、実施の形態1の外乱推定部14の替わりに外乱推定部14aを備える以外は、実施の形態1の数値制御システム1と同様である。以下、実施の形態1と異なる点を説明する。
実施の形態1の外乱推定部14は、1慣性系としてモデル化される駆動軸21から駆動軸信号と加速度センサ信号を取得することで、駆動軸信号のみでは推定できない高周波帯域における外乱力の算出を加速度センサの援用により実現する構成であった。一般に工作機械を構成する駆動軸は、モータ、ボールねじ、テーブルなどの、複数の慣性を持つ構造物として構成される。
図12は、駆動軸21のモデルの一例を示す図である。図12では、駆動軸21がサーボモータ、ボールねじおよびテーブルを有する場合に、サーボモータであるモータ、ボールねじおよびテーブルに対応する3慣性系としてモデル化されたモデルの一例を示している。Tはモータトルクを示し、θはモータ角度を示し、J,Jはイナーシャを示し、Mは質量を示し、D,D,Cは減衰係数を示し、K,Kはばね定数を示し、Rはボールねじピッチを示しxは位置を示す。なお、m,b,tは、それぞれモータ、ボールねじ、テーブルを示す添字である。
このように、駆動軸21は、一般に、複数の慣性を持つ構造物を有するため、構造物の挙動を精度よくモデル化するには構造物を複数に分けてモデル化することが望ましい。そこで、本実施の形態3の外乱推定部14aは、構造物を複数に分けてモデル化するとともに、加速度センサ211から出力される加速度センサ信号を周波数帯域に応じて分割し、それぞれの帯域に応じた逆モデルを用いて外乱力を推定する。
ここでは、図11に示すように、駆動軸21を、第1構造物213と第2構造物212とに分けてモデル化する。すなわち、駆動軸21は、第1構造物213とモータを含む第2構造物212とを含む。外乱推定部14aは、第1構造物213の複数の第1構造物モデルと加速度センサ信号とに基づいて第1構造物213に印加される力の合力である実駆動軸出力を算出する。また、外乱推定部14aは、第2構造物212の第2構造物モデルとモータを流れるモータ電流の検出結果とモータの位置の検出結果とに基づいて、モータが駆動軸に対して与える力である指令駆動軸出力を算出する。そして、外乱推定部14aは、実駆動軸出力と指令駆動軸出力とを用いて外乱力を推定する。複数の第1構造物モデルは、複数に分割された周波数帯域に応じて定められたそれぞれ異なる周波数特性を有する。
図11の駆動軸21内には、第1構造物213および第2構造物212の等価モデルが図示されている。Irefはモータ電流を示し、Kはトルク定数を示し、vはテーブルの速度を示し、Fは外乱力を示す。a expは加速度センサ211から出力される加速度センサ信号である。なお、添字refは駆動軸制御部13が演算した参照値であることを表し、添字expは加速度センサによって直接検出した信号であることを表す。他の文字は、図12と同様の定義である。第1構造物には加速度センサ211が具備されている。ここで、第1構造物は例えばテーブルであり、第2構造物212は例えばサーボモータとボールねじを組み合わせた機械構造である。駆動軸21には外部から第1構造物213に対して外乱力が印加される。さらに、第1構造物213にサーボモータのトルク出力に起因する指令駆動軸出力が印加されることで、第1構造物213の位置が駆動軸制御部13によって間接的に制御される。
図11に示した外乱推定部14aは、駆動軸21から出力されるエンコーダ信号およびモータ電流信号と、加速度センサ211から出力される加速度センサ信号とに基づいて、駆動軸21に加わる外乱力をサーボ軸推定外乱力として推定する。
詳細には、外乱推定部14aは、第1構造物213に対応する第1構造物モデル部143,144と、第2構造物に対応する第2構造物モデル部141と、合成部142とを有する。図11における外乱推定部14a内には、各部が有する対応する構造物の逆モデルが示されている。LPF(Low−Pass Filter)はローパスフィルタを示し、HPF(High−Pass Filter)はハイパスフィルタを示す。上にハットが付いている文字は推定値を示す。
第1構造物モデル部143および第1構造物モデル部144は、加速度センサ信号に基づいて、第1構造物213に印加される力である実駆動軸出力を算出する。第1構造物モデル部143は、ローパスフィルタを有し、第1構造物モデル部144は、ハイパスフィルタを有する。これらのフィルタは、加速度センサ信号を予め定められたカットオフ周波数で第1周波数帯域と第2周波数帯域に分離する役割を果たす。ここで、ローパスフィルタおよびハイパスフィルタのカットオフ周波数は、例えば駆動軸制御部13が駆動軸21を制御できる周波数の上限値である。2つの帯域に分離された加速度センサ信号が、それぞれ第1構造物モデル部143および第1構造物モデル部144を通過することで、第1構造物モデル部143は低周波側の実駆動軸出力である第1実駆動軸出力を出力し、第1構造物モデル部144は高周波側の実駆動軸出力である第2実駆動軸出力を出力する。
第2構造物モデル部141は、モータ電流信号およびエンコーダ信号を用いて、モータが駆動軸21を動作させるための駆動力である指令駆動軸出力を算出する。合成部142は、第1実駆動軸出力と第2実駆動軸出力との和を算出し、算出した和から指令駆動軸出力を減算することで、駆動軸21に印加される外乱力Fを推定することができる。
図11に示した例では、駆動軸21は3個の慣性と各慣性を結合するバネ要素と粘性摩擦を表すダンパ要素から構成されるモデルとして表現された。駆動軸21のモデルは、これに限定されず、エンコーダまたは加速度センサの通信によるむだ時間およびクーロン摩擦を考慮したモデルとして駆動軸21を表現し、これらに対応する、2つの第1構造物モデル部と1つの第2構造物モデル部とを外乱推定部14aが有するように構成してもよい。
なお、外乱推定部14aで用いられる逆モデルに含まれる各パラメータは、次に述べる方法で算出することができる。例えば、駆動軸制御部13が、駆動軸21のモータに対してインパルス加振指令またはランダム加振指令またはサインスイープ加振指令を与え、この時のエンコーダ信号および加速度センサ信号から得られる周波数応答に基づいてパラメータをフィッティングすることができる。別の例として、サーボモータを加振源とするのではなく、外部からインパルスハンマを用いてサーボ軸を加振してパラメータをフィッティングしてもよい。さらに別の例として、発生する外乱力が予め判明している試験加工を実施し、このときに出力されるモータ電流信号およびエンコーダ信号および加速度センサ信号を用いてパラメータをフィッティングしてもよい。さらに別の例として、有限要素解析を用いてパラメータを算出してもよい。さらに、上記の組み合わせによりパラメータを決定してもよい。
ここで、本実施の形態3の効果について説明する。図13は、比較例における外乱力の推定結果を示す図である。図13に推定結果を示した比較例では、本実施の形態3による手法と同様に、モータ電流信号およびエンコーダ信号を用いてモータとボールねじすなわち第1構造物の状態量を推定し、加速度センサ信号を用いてテーブルの状態量を推定し、これらの推定結果を用いて外乱を推定している。なお、本実施の形態3と比較例の差異は、比較例が図11のような複数の第1構造物モデル部は有さず、単一の第1構造物モデル部を有する点である。すなわち、比較例の手法では、加速度センサが設けられているテーブルの質量を周波数帯域に応じて分解しない。図13の上段には、実際の外乱力すなわち力センサを用いて実測された外乱力を示し、図13の下段には、比較例により推定された結果を示している。図13からわかるように、比較例では、高周波帯域において推定値が力センサによる実測値に一致していない。すなわち、ボールねじ駆動に代表される多慣性駆動システムに対して、加速度センサが設けられているテーブルの質量を周波数帯域に応じて分解しない比較例の手法では、精度よく外乱力を推定できない。
これに対し、本実施の形態3では、加速度センサ信号を周波数帯域に応じて分割し、それぞれの帯域に対して異なる逆モデルを与えて、外乱力を推定している。図14は、実施の形態3の外乱推定部14aによって推定された外乱力の一例を示す図である。図14の上段には、実際の外乱力すなわち力センサを用いて実測された外乱力を示し、図14の下段には、実施の形態3の外乱推定部14aによって推定された結果を示している。図14からわかるように、実施の形態3の外乱推定部14aを用いることによって、力センサによる測定結果と同等の推定結果を得ることができる。すなわち、本実施の形態3の外乱推定部14aは、ボールねじ駆動に代表される多慣性駆動システムを有する工作機械において、精度よく駆動軸に加わる外乱力を推定できるという効果を奏する。
なお、以上の説明では、駆動軸21の加速度を検出する手段として加速度センサを採用したが、検出する物理量は加速度に限定されるものではない。例えば、速度センサ、ジャイロセンサ、レーザドップラ計を用いて、速度を直接検出するセンサを採用してもよい。すなわち、変位量を1階以上時間微分した物理量を検出できるセンサを採用しても、本発明の趣旨を逸脱しない。
また、本実施の形態3ではボールねじ駆動の工作機械を対象にして説明したが、本実施の形態3で述べた外乱力推定の手法はボールねじ駆動の工作機械に限定されるものではない。多慣性システムとしてモデル化できる駆動軸すなわち複数の慣性体から構成される駆動軸であれば、ボールねじ以外で駆動されるサーボ軸および主軸にも適用することができる。
なお、実施の形態3では、外乱推定部14aにおいて、第1構造物モデルを2個設けることにより、周波数帯域を2個に分割したが、第1構造物モデルの個数およびフィルタの数は2に限定されるものではない。例えば、第1構造物モデルを3個以上設け、周波数帯域を第1構造物モデルの数だけ分割するようにそれぞれのフィルタを設計してもよい。
また、以上の説明では、実施の形態1の数値制御システム1の外乱推定部14の替わりに外乱推定部14aを用いる例を説明したが、図1に示したモータ制御装置100が単独で設けられる場合に、外乱推定部14の替わりに外乱推定部14aが用いられてもよい。
実施の形態4.
図15は、本発明にかかる実施の形態4の外乱推定部の構成例を示すブロック図である。本実施の形態4の数値制御システムは、実施の形態1の外乱推定部14の替わりに外乱推定部14bを備える以外は、実施の形態1の数値制御システム1と同様である。以下、実施の形態1と異なる点を説明する。
実施の形態3の外乱推定部14aでは、加速度センサ信号を周波数帯域に応じて分割し、それぞれの帯域に対して異なる逆モデルを与えて、外乱力を推定した。実施の形態4の外乱推定部14bは、加速度センサが設けられるテーブルを、エンコーダ信号およびモータ電流信号によって推定される第1テーブル慣性と加速度センサ信号によって推定される第2テーブル慣性とに分割したモデルを用いて、外乱力を推定する。図16は、実施の形態4における駆動軸21のモデル化の一例を示す図である。図16における各文字は、実施の形態3と同様であるが、添え字に1が含まれるものは、第1テーブル慣性モデルに対応し、添え字に2が含まれるものは、第2テーブル慣性モデルに対応する。
すなわち、外乱推定部14bは、駆動軸21の第1構造物モデルと加速度センサ信号とに基づいて第1構造物モデルに対応する実駆動軸出力を算出する。また、外乱推定部14bは、駆動軸21を構成するモータを含む駆動軸21の第2構造物モデルとモータを流れるモータ電流の検出結果とモータの位置の検出結果とに基づいて、モータが駆動軸21に対して与える力である指令駆動軸出力を算出する。また、外乱推定部14bは、実駆動軸出力と指令駆動軸出力とを用いて外乱力を推定する。駆動軸を構成する複数の構造物のうちの1つを第1慣性体モデルと第2慣性体モデルとに分割してモデル化し、第2構造物モデルは第1慣性体モデルを含み、第2構造物モデルは第2慣性体モデルを含む。第1慣性体モデルおよび第2慣性体モデルの一例は、上述した第1テーブル慣性モデルおよび第2テーブル慣性モデルである。
図15における各文字の定義は、実施の形態3と同様である。駆動軸21は、実施の形態3と同様に、テーブルとサーボモータとボールねじとで構成される。本実施の形態4では、テーブルのモデルを第1テーブル慣性と第2テーブル慣性との2つに分割し、第1構造物213aはテーブルであり、第2構造物212aはテーブルとモータとボールねじを組み合わせた機械構造であるとしてモデル化する。
外乱推定部14bは、駆動軸21から出力されるエンコーダ信号とモータ電流信号と、加速度センサ211から出力される加速度センサ信号と、駆動軸21に加わる外乱力をサーボ軸推定外乱力として推定する。
駆動軸21には外部から第1構造物213aに対して外乱力が印加される。さらに、第1構造物213aにはサーボモータのトルク出力に起因する指令駆動軸出力が印加されることで、第1構造物213aの位置が駆動軸制御部13によって間接的に制御される。
外乱推定部14bは、第1構造物213aに対応する第1構造物モデル部143aと、第2構造物212aに対応する第2構造物モデル部141aと、合成部142aとを有する。第1構造物モデル部143aは、加速度センサ信号に基づいて、第1構造物213aに印加される力の合力である実駆動軸出力を算出する。第1構造物モデル部143aはノイズ低減のためのLPFを備える。
第2構造物モデル部141aは、モータ電流信号およびエンコーダ信号を用いて、モータが駆動軸21を動作させるための駆動力である指令駆動軸出力を算出する。ここで、第2構造物212aのモデルは実施の形態3における第2構造物212と異なり、テーブルの慣性を分割した第2テーブル慣性を含むモデルとなっている。合成部142aは、実駆動軸出力と指令駆動軸出力とを合算することで、駆動軸に印加される外乱力Fを推定することができる。
なお、外乱推定部14bで用いられる逆モデルに含まれる各パラメータの算出方法は、実施の形態3の外乱推定部14aで用いられる逆モデルに含まれる各パラメータの算出方法と同様である。
以上説明したように、本実施の形態4の外乱推定部14bは、テーブルを、駆動軸信号によって推定される第1テーブル慣性と加速度センサ信号によって推定される第2テーブル慣性とに分割したモデルを用いて、外乱力を推定する。このように、駆動軸21を構成する構造物のうち加速度センサが設けられる構造物を2つに分割してモデル化することにより、実施の形態1と同様の効果を奏するとともに、精度よく外乱力を推定することができる。
また、以上の説明では、実施の形態1の数値制御システム1の外乱推定部14の替わりに外乱推定部14bを用いる例を説明したが、図1に示したモータ制御装置100が単独で設けられる場合に、外乱推定部14の替わりに外乱推定部14bが用いられてもよい。
実施の形態5.
図17は、本発明にかかる実施の形態5の外乱推定部の構成例を示すブロック図である。本実施の形態5の数値制御システムは、実施の形態1の外乱推定部14の替わりに外乱推定部14cを備える以外は、実施の形態1の数値制御システム1と同様である。以下、実施の形態1と異なる点を説明する。
実施の形態1,3,4は、エンコーダ信号およびモータ電流信号と加速度センサ信号とを併用して外乱力を推定する構成であった。モータ電流信号、エンコーダ信号および加速度センサ信号は、それぞれ異なる信号源から発生される信号である。このため、外乱推定部が、それぞれの信号を取得する時刻は同期しているとは限らず、一般には同期誤差が生じる。このため、本実施の形態5の外乱推定部14cは、図17に示すように、実施の形態4で述べた外乱推定部14bに信号同期部145を追加した構成を有する。
信号同期部145には、エンコーダ信号と加速度センサ信号に対してそれぞれ第1補正時間および第2補正時間が予め設定されている。第1補正時間はモータ電流信号を基準としたときのエンコーダ信号の時刻ずれ量である。第2補正時間はモータ電流信号を基準としたときの加速度センサ信号の時刻ずれ量である。さらに、信号同期部145は、第1および第2補正時間に相当するエンコーダ信号と加速度センサ信号を記録することができる。信号同期部145は、ある時刻にモータ電流信号が入力されたときに、該時刻から第1および第2補正時間だけ時刻が異なるエンコーダ信号と加速度センサをモータ電流とともに出力する。なお、モータ電流信号とエンコーダ信号と加速度センサ信号のサンプリングレートがそれぞれ異なる場合は、時間的に内挿または外挿することによって、該時刻から第1および第2補正時間だけ時刻が異なるエンコーダ信号と加速度センサ信号を算出することができる。以上のように、外乱推定部14cは、モータ電流信号とエンコーダ信号と加速度センサ信号との間で生じる時間ずれ量を補正し、前記時間ずれ量が補正された信号を用いて、外乱力を推定する。なお、ここでは、モータ電流信号に対してエンコーダ信号と加速度センサ信号の時刻を同期させる方法について述べたが、エンコーダ信号または加速度センサの一方を基準として、各信号を同期しても構わない。また、同期用の基準トリガ信号を信号同期部145の内部で生成し、基準トリガ信号を基準として各信号を同期しても構わない。
以上のように、実施の形態5の外乱推定部14cは、信号同期部145を設けて各信号間の時刻同期誤差を補正するようにしたので、時刻同期誤差を低減でき、精度よく外乱力を推定することができる。
なお、上述した例では、実施の形態4の外乱推定部14bに信号同期部145を追加したが、同様に、実施の形態1の外乱推定部14、実施の形態3の外乱推定部14aに信号同期部145を追加することにより、同様に時刻同期誤差を補正することができる。
実施の形態6.
図18は、本発明の実施の形態6にかかる数値制御システムの構成例を示すブロック図である。実施の形態6の数値制御システム1bは、実施の形態1の数値制御システム1にシミュレーション部19を追加し、指令値生成部11および同定部17の替わりに指令値生成部11aおよび同定部17aを備える。これら以外は、実施の形態6の数値制御システム1bは、実施の形態1の数値制御システム1と同様である。実施の形態1と同様の機能を有する構成要素は実施の形態1と同一の符号を付して重複する説明を省略する。以下、実施の形態1と異なる点を主に説明する。
実施の形態6において、NCプログラムには、NCプログラム座標系における工具の相対位置指令または各サーボ軸の位置指令と、主軸回転数指令と、送り速度指令とに加え、同定指令が記述されている。ここで、同定指令とは、同定部17aに対して動特性パラメータと加工プロセスパラメータの同定処理を開始させるための指令である。
指令値生成部11aは、NCプログラムに記述された指令を解析し、実施の形態1と同様に駆動軸21,22にそれぞれ対応する駆動軸指令を生成し、対応する駆動軸制御部13,15へそれぞれ出力する。指令値生成部11aは、解析した指令に同定指令が含まれている場合は、同定部17aに対して同定指令を出力する。すなわち、指令値生成部11aは、NCプログラムに同定部17aによる同定の実施を指示する指令が含まれるときに、同定部17aに対して加工プロセスパラメータと動特性パラメータとの算出の実施を指示する。さらに、指令値生成部11aは、シミュレーション部19から出力される、後述する機械ダイナミクスおよび加工プロセスの再現結果に応じて、駆動軸指令を補正する。
同定部17aは、指令値生成部11aから出力された同定指令が入力されると、実施の形態1で述べた方法と同様の方法で動特性パラメータと加工プロセスパラメータを算出し、算出した結果をシミュレーション部19へ出力する。さらに、同定部17aは、座標変換部12が出力する推定外乱力とシミュレーション部19が出力する再現外乱力とを比較する。ここで、推定外乱力とは外乱推定部で算出し座標変換部で座標変換した切削力であり、再現外乱力とはシミュレーション部19で算出された切削力である。推定外乱力と再現外乱力の差が閾値よりも大きい場合、同定部17aは加工状態に変化があったと判定し、再度同定処理を実行する。すなわち、同定部17aは、座標変換部12から出力される外乱力とシミュレーション部19によって再現された外乱力との差を算出し、差が閾値より大きい場合に加工プロセスパラメータと動特性パラメータとを算出する。同定部17aは、推定外乱力と再現外乱力がベクトルとして算出される場合、それぞれの切削力に対してノルムを算出し、これらのノルムを比較することで、推定外乱力と再現外乱力の差を算出することができる。別の例として、工具進行方向などの特定の一方向における推定外乱力と再現外乱力の差を算出し、この差を該閾値と比較してもよい。
シミュレーション部19は、各駆動軸21,22から出力されるエンコーダ信号に基づいて駆動軸位置を算出し、ダイナミクスモデル、加工プロセスモデルおよび加工条件を用いて、工具とワークとの周辺の構造物の振動、および工具とワークとの間の加工プロセスを再現する。
工具とワークとの周辺の構造物の振動の再現は次のように行われる。シミュレーション部19は、ダイナミクスモデルを用いて、ワーク側構造物と工具側構造物の一方または両方に対して切削力が作用した時に発生する構造物内で発生する相対変位を算出する。シミュレーション部19は、算出した構造物内の相対変位と各駆動軸21,22の位置から工具の位置偏差を算出するとともに、各駆動軸21,22にかかる外乱力を算出する。ここで、工具の位置偏差とは、工具に切削力が発生していない状態における工具の位置と、工具に切削力が発生している状態における工具の位置との差である。
加工プロセスの再現は次のように行われる。シミュレーション部19は、加工条件と加工プロセスモデルを用いて、ワークに対する工具の位置偏差および工具回転角度から工具刃先の軌跡を算出する。工具刃先の軌跡から切り取り厚さを算出し、切り取り厚さに応じた切削力を算出する。なお、ここで算出された切削力は同定部17aへ出力される。
上記の通り、ダイナミクスモデルで使用する切削力は加工プロセスモデルにより算出され、加工プロセスで使用する工具の位置偏差はダイナミクスモデルにより算出される。したがって、シミュレーション部19では、ダイナミクスモデルを用いた計算と加工プロセスモデルを用いた計算とを交互に繰り返すことで、時々刻々の機械ダイナミクスおよび加工プロセスを同時に再現することができる。換言すると、シミュレーション部19は、モータ電流信号、エンコーダ信号および加工条件と、加工プロセスモデルとに基づいて、工具とワークの間で発生する切削力を再現するとともに、ダイナミクスモデルに基づいて切削力が発生したときに各駆動軸で生じる外乱力と、工具とワークの相対位置偏差を再現することができる。
ここで、シミュレーション部19で実行する機械ダイナミクスと加工プロセスの再現結果に基づいて指令値生成部11aで実行される補正処理について述べる。指令値生成部11aは、シミュレーション部19が再現した工具の位置偏差を用いて、偏差分の移動量を各サーボ軸の駆動軸指令に追加する。この補正によって、工具の位置偏差に起因する寸法誤差を低減することができる。
また、別の補正方法として、指令値生成部11aは、シミュレーション部19で再現した各工具刃先による切り取り厚さを比較して、各刃先が生じる切り取り厚さの最大値が等しくなるように1刃あたりの送り量または各サーボ軸位置を補正してもよい。この補正によって、切り取り厚さの変化によって生じる工具刃先の振動を低減することができる。また、別の補正方法として、指令値生成部11aは、シミュレーション部19が再現した切削力を用いて、一定時間内における最大値または平均値を算出し、この算出結果が予め定められた切削力上限値を超過する場合には、1刃あたりの送り量を低減させてもよい。この補正によって、切削力を切削力上限値以下に制限することができる。切削力の超過による工具の破損を回避することができる。
また、別の補正方法として、指令値生成部11aは、シミュレーション部19が再現した切削力を用いて、工具が1回転する間に各刃先が生じる切削力を比較し、各刃先が生じる切削力の最大値が等しくなるように1刃あたりの送り量または主軸回転数を補正してもよい。この補正によって、特定の刃先にかかる切削力が低減され、各刃先に対して均等に切削力を発生させることができる。
また、別の補正方法として、指令値生成部11aは、シミュレーション部19で再現した工具刃先の軌跡から加工面粗さを算出し、加工面粗さが予め定められた加工面粗さ上限値を超過する場合には、1刃あたりの送り量を低減させてもよい。この補正によって、加工面粗さが加工面粗さ上限値以下となる仕上げ加工面が形成される。なお、以上に述べた補正処理のうち複数の処理を組み合わせても構わない。
以上説明したように、実施の形態6の数値制御システム1bは、NCプログラムに記述されたタイミングまたは加工状態が変化したと判定されたタイミングで動特性パラメータと加工プロセスパラメータを同定し、さらにシミュレーションで機械ダイナミクスと加工プロセスを再現し、再現結果に基づいて指令値生成部が駆動軸指令を補正する構成である。このため、以下の効果を奏する。
同定部17aが同定指令を受けて処理を実行することで、数値制御システム1bはNCプログラムによって指定されたタイミングで、動特性パラメータと加工プロセスパラメータを同定することができる。したがって、同一NCプログラム中に加工状態が変化しても、NCプログラムに記述されたタイミングで動特性パラメータと加工プロセスパラメータを同定することができる。
さらに、同定部17aが推定外乱力と再現外乱力とを比較することで、ダイナミクスモデルと加工プロセスモデルの特性を決定する動特性パラメータと加工プロセスパラメータの検証が可能になる。したがって、機械ダイナミクスまたは加工プロセスが変化した場合には、シミュレーション部が推定外乱力と比較して正しく外乱力を再現できるように、その都度同定処理を実行することができる。さらに、シミュレーション部19が機械ダイナミクスと加工プロセスを再現することで、リアルタイムに加工プロセスを変更することができる。
このため、本実施の形態6で説明した数値制御システム1bは、NCプログラムに指示されたタイミングに加え、NCプログラムに指示されないタイミングで機械ダイナミクスまたは加工プロセスが変化した場合にも同定処理を実行することができる。この同定処理から得られる動特性パラメータと加工プロセスパラメータによって特性が決定されたダイナミクスモデルと加工プロセスモデルを用いて、シミュレーションを実行することで、指令値生成部は各駆動軸に対してシミュレーション結果に基づいた補正を加えることができる。
図19は、本実施の形態6の数値制御システムの別の構成例を示すブロック図である。図18に示した例では、駆動軸21,22から取得できるエンコーダ信号により示されるフィードバック位置をシミュレーション部19に入力する構成としたが、図19に示す構成例では、フィードバック位置の替わりに駆動軸制御部13,15のそれぞれの内部で生成された指令位置を、シミュレーション部19に入力する。シミュレーション部19は、フィードバック位置の替わりに駆動軸制御部13,15のそれぞれの内部で生成された指令位置を用いて、図18に示した構成例のシミュレーション部19と同様にシミュレーションを実施する。図19に示した構成例における動作は、以上述べた点以外は、図18に示した構成例における動作と同様である。図19では、図18に示した機能を有する構成要素には同一の符号を付している。図19に示した構成とすることでも、図18に示した数値制御システム1bと同等の効果を奏することができる。
実施の形態7.
図20は、本発明の実施の形態7にかかる数値制御システムの構成例を示すブロック図である。実施の形態7の数値制御システム1cは、実施の形態2の数値制御システム1aにシミュレーション部19を追加する。これら以外は、実施の形態7の数値制御システム1cは、実施の形態2の数値制御システム1aと同様である。実施の形態2および実施の形態6と同様の機能を有する構成要素は実施の形態2と同一の符号を付して重複する説明を省略する。
このように、本実施の形態7では、加速度センサおよび外乱推定部14,16を用いずに力センサ23を用いて、実施の形態1と同様に、動特性パラメータと加工プロセスパラメータを算出する。さらに、NCプログラムに記述されたタイミングまたは加工状態が変化したと判定されたタイミングで動特性パラメータと加工プロセスパラメータを同定し、さらにシミュレーションで機械ダイナミクスと加工プロセスを再現し、再現結果に基づいて指令値生成部が駆動軸指令を補正する構成である。これにより、実施の形態6と同様の効果を奏することができる。
図21は、本実施の形態7の数値制御システムの別の構成例を示すブロック図である。図20に示した例では、駆動軸21a,22aから取得できるエンコーダ信号により示されるフィードバック位置をシミュレーション部19に入力する構成としたが、図21に示す構成例では、フィードバック位置の替わりに駆動軸制御部13,15のそれぞれの内部で生成された指令位置を、シミュレーション部19に入力する。シミュレーション部19は、フィードバック位置の替わりに駆動軸制御部13,15のそれぞれの内部で生成された指令位置を用いて、図20に示した構成例のシミュレーション部19と同様にシミュレーションを実施する。図21に示した構成例における動作は、以上述べた点以外は、図20に示した構成例における動作と同様である。図21では、図20に示した機能を有する構成要素には同一の符号を付している。図21に示した構成とすることでも、図20に示した数値制御システム1cと同等の効果を奏することができる。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
1,1a,1b,1c 数値制御システム、2,2a 工作機械、11,11a 指令値生成部、12 座標変換部、13,15 駆動軸制御部、14,14a,14b,14c,16 外乱推定部、17,17a 同定部、18 記憶部、21,21a,22,22a 駆動軸、23 力センサ、31 テーブル、32 ワーク、33 工具、100 モータ制御装置、211,221 加速度センサ。

Claims (18)

  1. 数値制御プログラムに従い、工具を用いて加工を行う工作機械に備わる駆動軸を制御する数値制御システムであって、
    前記駆動軸へ印加される外乱力または外乱トルクを取得し、前記外乱力または前記外乱トルクを工具基準座標系へ座標変換して出力する座標変換部と、
    前記座標変換部から出力される前記外乱力または前記外乱トルクと、駆動軸状態と、あらかじめ定められた関係式と、加工条件とを用いて、加工プロセスモデルの特性を決定する加工プロセスパラメータと前記工作機械のダイナミクスモデルの特性を決定する動特性パラメータとを算出する同定部と、
    を備え、
    前記関係式は、前記加工プロセスパラメータと前記動特性パラメータと前記外乱力または外乱トルクとの関係を定める関係式であることを特徴とする数値制御システム。
  2. 前記座標変換部は、前記駆動軸へ印加される外乱力または外乱トルクを検出するセンサによって検出された検出結果から前記外乱力または前記外乱トルクを取得することを特徴とする請求項1に記載の数値制御システム。
  3. 前記駆動軸の速度または加速度を検出するセンサによって検出された検出結果を用いて前記駆動軸へ印加される前記外乱力または前記外乱トルクを推定する外乱推定部、
    を備え、
    前記座標変換部は、前記外乱推定部から前記外乱力または前記外乱トルクを取得することを特徴とする請求項1に記載の数値制御システム。
  4. 前記座標変換部は、取得した前記外乱力または前記外乱トルクが工具基準座標上の同一方向の成分を含む場合には、取得した前記外乱力または前記外乱トルクの中から互いに独立な方向となる組み合わせを選択することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の数値制御システム。
  5. 前記駆動軸は、第1構造物とモータを含む第2構造物とを含み、
    前記外乱推定部は、
    前記第1構造物の複数の第1構造物モデルと前記検出結果とに基づいて前記第1構造物に印加される力の合力である実駆動軸出力を算出し、前記第2構造物の第2構造物モデルと前記モータを流れるモータ電流の検出結果と前記モータの位置の検出結果とに基づいて、前記モータが駆動軸に対して与える力である指令駆動軸出力を算出し、前記実駆動軸出力と前記指令駆動軸出力とを用いて前記外乱力または前記外乱トルクを推定し、
    前記複数の第1構造物モデルは、複数に分割された周波数帯域に応じて定められたそれぞれ異なる周波数特性を有することを特徴とする請求項3に記載の数値制御システム。
  6. 前記駆動軸は、第1構造物とモータを含む第2構造物とを含み、
    前記外乱推定部は、
    前記第1構造物の第1構造物モデルと前記検出結果とに基づいて前記第1構造物に印加される力の合力である実駆動軸出力を算出し、前記駆動軸を構成するモータを含む前記駆動軸の第2構造物モデルと前記モータを流れるモータ電流の検出結果と前記モータの位置の検出結果とに基づいて、前記モータが駆動軸に対して与える力である指令駆動軸出力を算出し、前記実駆動軸出力と前記指令駆動軸出力とを用いて前記外乱力または前記外乱トルクを推定し、
    前記駆動軸を構成する複数の構造物のうちの1つを第1慣性体モデルと第2慣性体モデルとに分割してモデル化し、前記第1構造物モデルは前記第1慣性体モデルを含み、前記第2構造物モデルは前記第2慣性体モデルを含むことを特徴とする請求項3に記載の数値制御システム。
  7. 前記外乱推定部は、
    前記モータ電流の検出結果を示す信号と前記モータの位置の検出結果を示す信号と前記センサの検出結果を示す信号との間で生じる時間ずれ量を補正し、前記時間ずれ量が補正された信号を用いて、前記外乱力または前記外乱トルクを推定することを特徴とする請求項5または6に記載の数値制御システム。
  8. 前記駆動軸は、第1構造物とモータを含む第2構造物とを含み、
    前記モータを流れるモータ電流の検出結果、前記モータの位置の検出結果および前記加工条件と、前記加工プロセスモデルとに基づいて、前記工具と前記工具の加工対象であるワークの間で発生する切削力を再現するとともに、前記ダイナミクスモデルに基づいて切削力が発生したときに各駆動軸で生じる外乱力または外乱トルクと、前記工具と前記ワークとの間の相対位置偏差とを再現するシミュレーション部、
    を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の数値制御システム。
  9. 前記同定部は、前記座標変換部から出力される前記外乱力と前記シミュレーション部によって再現された前記外乱力との差、または前記座標変換部から出力される前記外乱トルクと前記シミュレーション部によって再現された前記外乱トルクとの差を算出し、算出された前記差が閾値より大きい場合に前記加工プロセスパラメータと前記動特性パラメータとを算出することを特徴とする請求項8に記載の数値制御システム。
  10. 前記数値制御プログラムに前記同定部による同定の実施を指示する指令が含まれるときに、前記同定部に対して前記加工プロセスパラメータと前記動特性パラメータとの算出の実施を指示する指令値生成部、
    を備えることを特徴とする請求項8または9に記載の数値制御システム。
  11. 前記指令値生成部は、前記シミュレーション部によって再現された結果に応じて前記駆動軸に対応する指令を補正することを特徴とする請求項10に記載の数値制御システム。
  12. 前記加工プロセスモデルは、前記工具の刃先と前記工具の加工対象であるワークとの間の相対位置および工具回転角度に基づいて、切り取り厚さを算出し、前記切り取り厚さに基づいて工具とワークの間で発生する切削力を算出するための数理モデルであり、
    前記ダイナミクスモデルは、前記切削力が発生したときに、前記工具または前記ワークを含む機械構造を通じて前記駆動軸に伝達される外乱力または外乱トルクを算出するとともに、前記切削力が発生したときに前記機械構造を通じて各駆動軸で生じる位置偏差を算出するための数理モデルであることを特徴とする請求項1から11のいずれか1つに記載の数値制御システム。
  13. 前記加工プロセスモデルは、前記切り取り厚さが、切削に関与している工具の刃先によって生成された軌跡と、前記刃先を基準として1刃以上前の刃先によって生成された前加工面との差に基づいて算出されるモデルであることを特徴とする請求項12に記載の数値制御システム。
  14. 前記加工プロセスモデルは、前記切り取り厚さに、前記工具の刃先を示す番号と前記工具の回転角度とに応じた補正量が加算または減算されるモデルであることを特徴とする請求項12に記載の数値制御システム。
  15. 前記加工プロセスモデルは、前記刃先が、前記工具の回転角度または時刻毎に前記位置偏差に基づいて前記ワークに接触するか否かが判定され、前記刃先がワークに接触する場合には切り取り厚さが算出され、前記刃先が前記ワークに接触しない場合には前記切り取り厚さがゼロとして算出されるモデルであることを特徴とする請求項12に記載の数値制御システム。
  16. モータを有する駆動軸を制御する駆動軸制御部と、
    前記駆動軸の速度または加速度を検出するセンサによって検出された検出結果を用いて前記駆動軸へ印加される外乱力または外乱トルクを推定する外乱推定部と、
    を備え、
    前記外乱推定部は、
    前記駆動軸の複数の第1構造物モデルに基づいて、前記検出結果からそれぞれの前記第1構造物モデルに対応する実駆動軸出力を算出し、前記駆動軸を構成するモータを含む前記駆動軸の第2構造物モデルと前記モータを流れるモータ電流の検出結果と前記モータの位置の検出結果とに基づいて、前記モータが駆動軸に対して与える力である指令駆動軸出力を算出し、前記実駆動軸出力と前記指令駆動軸出力とを用いて前記外乱力または前記外乱トルクを推定し、
    前記複数の第1構造物モデルは、複数に分割された周波数帯域に応じて定められたそれぞれ異なる周波数特性を有することを特徴とするモータ制御装置。
  17. モータを有する駆動軸を制御する駆動軸制御部と、
    前記駆動軸の速度または加速度を検出するセンサによって検出された検出結果を用いて前記駆動軸へ印加される外乱力または外乱トルクを推定する外乱推定部と、
    を備え、
    前記外乱推定部は、
    前記駆動軸の第1構造物モデルに基づいて、前記検出結果から前記第1構造物モデルに対応する実駆動軸出力を算出し、前記駆動軸を構成するモータを含む前記駆動軸の第2構造物モデルと前記モータを流れるモータ電流の検出結果と前記モータの位置の検出結果とに基づいて、前記モータが駆動軸に対して与える力である指令駆動軸出力を算出し、前記実駆動軸出力と前記指令駆動軸出力とを用いて前記外乱力または前記外乱トルクを推定し、
    前記駆動軸を構成する複数の構造物のうちの1つを第1慣性体モデルと第2慣性体モデルとに分割してモデル化し、前記第1構造物モデルは前記第1慣性体モデルを含み、前記第2構造物モデルは前記第2慣性体モデルを含むことを特徴とするモータ制御装置。
  18. 前記外乱推定部は、
    前記モータ電流の検出結果を示す信号と前記モータの位置の検出結果を示す信号と前記センサの検出結果を示す信号との間で生じる時間ずれ量を補正し、前記時間ずれ量が補正された信号を用いて、前記外乱力または前記外乱トルクを推定することを特徴とする請求項16または17に記載のモータ制御装置。
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