JPWO2019039142A1 - 色変換組成物、色変換シートならびにそれを含む光源ユニット、ディスプレイおよび照明装置 - Google Patents

色変換組成物、色変換シートならびにそれを含む光源ユニット、ディスプレイおよび照明装置 Download PDF

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Abstract

入射光を、その入射光よりも長波長の光に変換する色変換組成物であって、以下の(A)、(B)および(C)成分;(A)少なくとも1種の有機発光材料(B)バインダー樹脂(C)ホウ素化合物、オリゴ糖化合物、環状シロキサン化合物、およびオルトケイ酸誘導体の少なくとも1つを含み、前記(C)成分が、波長400nm以上800nm以下の波長域全域でモル吸光係数εが100以下である、ことを特徴とする色変換組成物。【選択図】

Description

本発明は、色変換組成物、色変換シート、ならびにそれを含む光源ユニット、ディスプレイおよび照明装置に関する。
色変換方式によるマルチカラー化技術を、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、照明装置等へ応用することが盛んに検討されている。色変換とは、発光体からの発光をより長波長な光へと変換することであり、例えば青色発光を緑色や赤色発光へと変換することを表す。
この色変換機能を有する組成物(以下、「色変換組成物」という)をシート化し、例えば青色光源と組み合わせることにより、青色光源から、青、緑、赤色の3原色を取り出すこと、すなわち白色光を取り出すことが可能となる。このような青色光源と色変換機能を有するシート(以下、「色変換シート」という)とを組み合わせた白色光源をバックライトユニットとし、このバックライトユニットと、液晶駆動部分と、カラーフィルターとを組み合わせることで、フルカラーディスプレイの作製が可能になる。また、液晶駆動部分が無ければ、そのまま白色光源として用いることができ、例えばLED照明等の白色光源として応用できる。
色変換方式を利用する液晶ディスプレイの課題として、色再現性の向上が挙げられる。色再現性の向上には、バックライトユニットの青、緑、赤の各発光スペクトルの半値幅を狭くし、青、緑、赤各色の色純度を高めることが有効である。
これを解決する手段として、無機半導体微粒子による量子ドットを色変換組成物の成分として用いる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。量子ドットを用いる技術は、確かに、緑色、赤色の発光スペクトルの半値幅が狭く、色再現性は向上する。その反面、量子ドットは、熱、空気中の水分や酸素に弱く、耐久性が十分でなかった。また、カドミウムを含む等の課題もある。
また、量子ドットの代わりに有機物の発光材料を色変換組成物の成分として用いる技術も提案されている。有機発光材料を色変換組成物の成分として用いる技術の例としては、クマリン誘導体を用いたもの(例えば、特許文献2参照)、ローダミン誘導体を用いたもの(例えば、特許文献3参照)、ピロメテン誘導体を用いたもの(例えば、特許文献4参照)が開示されている。
また、有機発光材料の劣化を防ぎ、耐久性を向上させるため、光安定化剤を添加する技術も開示されている(例えば、特許文献5参照)。
特開2012−22028号公報 特開2007−273440号公報 特開2001−164245号公報 特開2011−241160号公報 国際公開第2017/014068号
しかし、近年、4Kや8Kといった高精細化、ハイダイナミックレンジ(HDR)、およびローカルディミングによる高コントラスト化に伴い、液晶ディスプレイのバックライトユニットに求められる照度が高まっており、駆動熱によるバックライトユニットの高温化が生じている。特許文献5に記載されている光安定化剤のような既存の技術は、耐久性の向上効果はあるものの、高温下で耐久性を向上させる技術としては、不十分であった。特に、有機発光材料を用いた色変換組成物は、高温下において耐久性が著しく悪くなるという課題があり、既存の技術では、未だこの課題を十分に解決できていなかった。
本発明が解決しようとする課題は、液晶ディスプレイやLED照明に用いられる色変換組成物において、色再現性の向上と耐久性とを両立させることであり、特に高色純度の発光と耐久性とを両立させることである。特に、高温下における耐久性を向上させた色変換組成物および色変換シートの提供を目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、入射光を、その入射光よりも長波長の光に変換する色変換組成物であって、以下の(A)、(B)および(C)成分;
(A)少なくとも1種の有機発光材料
(B)バインダー樹脂
(C)ホウ素化合物、オリゴ糖化合物、環状シロキサン化合物、およびオルトケイ酸誘導体の少なくとも1つ
を含み、
前記(C)成分が、波長400nm以上800nm以下の波長域全域でモル吸光係数εが100以下である、
ことを特徴とする色変換組成物である。
本発明の色変換組成物およびこれを用いた色変換シートは、高色純度と耐久性とが両立されているため、色再現性と耐久性とを両立させることが可能となる。
本発明の色変換シートの一例を示す模式断面図。 本発明の色変換シートの一例を示す模式断面図。 本発明の色変換シートの一例を示す模式断面図。 本発明の色変換シートの一例を示す模式断面図。 本発明の色変換シートの一例を示す模式断面図。 本発明の色変換シートの一例を示す模式断面図。 本発明の色変換シートの一例を示す模式断面図。 本発明の色変換シートの一例を示す模式断面図。 合成例1の化合物の吸収スペクトル。 合成例1の化合物の発光スペクトル。 合成例2の化合物の吸収スペクトル。 合成例2の化合物の発光スペクトル。
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。
本発明の実施の形態に係る色変換組成物は、入射光を、その入射光よりも長波長の光に変換する色変換組成物であって、以下の(A)、(B)および(C)成分;
(A)少なくとも1種の有機発光材料
(B)バインダー樹脂
(C)ホウ素化合物、オリゴ糖化合物、環状シロキサン化合物、およびオルトケイ酸誘導体の少なくとも1つ
を含み、
前記(C)成分が、波長400nm以上800nm以下の波長域全域でモル吸光係数εが100以下である。
<(A)有機発光材料>
本発明の実施の形態に係る色変換組成物は、少なくとも1種の有機発光材料を含む。ここで、本発明における発光材料とは、何らかの光が照射されたときに、その光とは異なる波長の光を発する材料のことをいう。有機発光材料は、有機物の発光材料である。
高効率な色変換を達成するためには、発光材料が発光量子収率の高い発光特性を示す材料であることが好ましい。一般に、発光材料としては、無機蛍光体、蛍光顔料、蛍光染料、量子ドット等の公知の発光材料が挙げられるが、分散の均一性、使用量の低減、環境負荷の低減の観点から、有機発光材料が好ましい。
有機発光材料としては、以下に示すもの等が挙げられる。例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、トリフェニレン、ペリレン、フルオランテン、フルオレン、インデン等の縮合アリール環を有する化合物やその誘導体等が、好適な有機発光材料として挙げられる。また、フラン、ピロール、チオフェン、シロール、9−シラフルオレン、9,9’−スピロビシラフルオレン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、イミダゾピリジン、フェナントロリン、ピリジン、ピラジン、ナフチリジン、キノキサリン、ピロロピリジン等のヘテロアリール環を有する化合物やその誘導体、ボラン誘導体等が、好適な有機発光材料として挙げられる。
また、1,4−ジスチリルベンゼン、4,4’−ビス(2−(4−ジフェニルアミノフェニル)エテニル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−(スチルベン−4−イル)−N−フェニルアミノ)スチルベン等のスチルベン誘導体、芳香族アセチレン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、アルダジン誘導体、ピロメテン誘導体、ジケトピロロ[3,4−c]ピロール誘導体等が、好適な有機発光材料として挙げられる。また、クマリン6、クマリン7、クマリン153等のクマリン誘導体、イミダゾール、チアゾール、チアジアゾール、カルバゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール等のアゾール誘導体およびその金属錯体、インドシアニングリーン等のシアニン系化合物、フルオレセイン、エオシン、ローダミン等のキサンテン系化合物やチオキサンテン系化合物等が、好適な有機発光材料として挙げられる。
また、ポリフェニレン系化合物、ナフタルイミド誘導体、フタロシアニン誘導体およびその金属錯体、ポルフィリン誘導体およびその金属錯体、ナイルレッドやナイルブルー等のオキサジン系化合物、ヘリセン系化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミン等の芳香族アミン誘導体等が、好適な有機発光材料として挙げられる。また、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、オスミウム(Os)、及びレニウム(Re)等の有機金属錯体化合物等が、好適な有機発光材料として挙げられる。しかし、本発明における有機発光材料は、上述したものに限定されない。
有機発光材料は、蛍光発光材料であっても、リン光発光材料であってもよいが、高い色純度を達成するためには、蛍光発光材料が好ましい。これらの中でも、熱的安定性および光安定性が高いことから、縮合アリール環を有する化合物やその誘導体が好ましい。
また、有機発光材料としては、溶解性や分子構造の多様性の観点から、配位結合を有する化合物が好ましい。半値幅が小さく、高効率な発光が可能である点で、フッ化ホウ素錯体等のホウ素を含有する化合物も好ましい。
これらの化合物の中でも、高い蛍光量子収率を与え、耐久性が良好である点で、ピロメテン誘導体が好適に用いることができる。より好ましくは、一般式(1)で表される化合物である。
Figure 2019039142
XはC−RまたはNである。R〜Rはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、スルホ基、ホスフィンオキシド基、および隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環の中から選ばれる。
上記の全ての基において、水素は重水素であってもよい。このことは、以下に説明する化合物またはその部分構造においても同様である。また、以下の説明において、例えば、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基とは、アリール基に置換した置換基に含まれる炭素数も含めて全ての炭素数が6〜40となるアリール基である。炭素数を規定している他の置換基も、これと同様である。
また、上記の全ての基において、置換される場合における置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、スルホ基、ホスフィンオキシド基が好ましく、さらには、各置換基の説明において好ましいとする具体的な置換基が好ましい。また、これらの置換基は、さらに上述の置換基により置換されていてもよい。
「置換もしくは無置換の」という場合における「無置換」とは、水素原子または重水素原子が置換したことを意味する。以下に説明する化合物またはその部分構造において、「置換もしくは無置換の」という場合についても、上記と同様である。
上記の全ての基のうち、アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは、置換基を有していても有していなくてもよい。置換されている場合の追加の置換基には特に制限は無く、例えば、アルキル基、ハロゲン、アリール基、ヘテロアリール基等を挙げることができ、この点は、以下の記載にも共通する。また、アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、好ましくは1以上20以下、より好ましくは1以上8以下の範囲である。
シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の飽和脂環式炭化水素基を示し、これは、置換基を有していても有していなくてもよい。アルキル基部分の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、3以上20以下の範囲である。
複素環基とは、例えば、ピラン環、ピペリジン環、環状アミド等の炭素以外の原子を環内に有する脂肪族環を示し、これは、置換基を有していても有していなくてもよい。複素環基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
アルケニル基とは、例えば、ビニル基、アリル基、ブタジエニル基等の二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは、置換基を有していても有していなくてもよい。アルケニル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
シクロアルケニル基とは、例えば、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基等の二重結合を含む不飽和脂環式炭化水素基を示し、これは、置換基を有していても有していなくてもよい。
アルキニル基とは、例えば、エチニル基等の三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは、置換基を有していても有していなくてもよい。アルキニル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
アルコキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のエーテル結合を介して脂肪族炭化水素基が結合した官能基を示し、この脂肪族炭化水素基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アルコキシ基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、1以上20以下の範囲である。
アルキルチオ基とは、アルコキシ基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アルキルチオ基の炭化水素基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アルキルチオ基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、1以上20以下の範囲である。
アリールエーテル基とは、例えば、フェノキシ基等、エーテル結合を介した芳香族炭化水素基が結合した官能基を示し、芳香族炭化水素基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アリールエーテル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、6以上40以下の範囲である。
アリールチオエーテル基とは、アリールエーテル基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アリールチオエーテル基における芳香族炭化水素基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アリールチオエーテル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、6以上40以下の範囲である。
アリール基とは、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ベンゾフェナントリル基、ベンゾアントラセニル基、クリセニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ベンゾフルオランテニル基、ジベンゾアントラセニル基、ペリレニル基、ヘリセニル基等の芳香族炭化水素基を示す。中でも、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基が好ましい。アリール基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アリール基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは6以上40以下、より好ましくは6以上30以下の範囲である。
〜Rが置換もしくは無置換のアリール基である場合、アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基がより好ましい。さらに好ましくは、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基であり、フェニル基が特に好ましい。
それぞれの置換基がさらにアリール基で置換される場合、アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基がより好ましい。特に好ましくは、フェニル基である。
ヘテロアリール基とは、例えば、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ピラジニル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、ナフチリジニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、カルボリニル基、インドロカルバゾリル基、ベンゾフロカルバゾリル基、ベンゾチエノカルバゾリル基、ジヒドロインデノカルバゾリル基、ベンゾキノリニル基、アクリジニル基、ジベンゾアクリジニル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェナントロリニル基等の、炭素以外の原子を一個または複数個環内に有する環状芳香族基を示す。ただし、ナフチリジニル基とは、1,5−ナフチリジニル基、1,6−ナフチリジニル基、1,7−ナフチリジニル基、1,8−ナフチリジニル基、2,6−ナフチリジニル基、2,7−ナフチリジニル基のいずれかを示す。ヘテロアリール基は、置換基を有していても有していなくてもよい。ヘテロアリール基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、2以上40以下、より好ましくは2以上30以下の範囲である。
1〜R9が置換もしくは無置換のヘテロアリール基である場合、ヘテロアリール基としては、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、キノリニル基、ピリミジル基、トリアジニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェナントロリニル基が好ましく、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、キノリニル基がより好ましい。特に好ましくは、ピリジル基である。
それぞれの置換基がさらにヘテロアリール基で置換される場合、ヘテロアリール基としては、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、キノリニル基、ピリミジル基、トリアジニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェナントロリニル基が好ましく、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、キノリニル基がより好ましい。特に好ましくは、ピリジル基である。
ハロゲンとは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選ばれる原子を示す。また、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基は、置換基を有していても有していなくてもよい。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられ、これら置換基は、さらに置換されてもよい。
アミノ基とは、置換もしくは無置換のアミノ基である。置換する場合の置換基としては、例えば、アリール基、ヘテロアリール基、直鎖アルキル基、分岐アルキル基等が挙げられる。アリール基、ヘテロアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、キノリニル基が好ましい。これら置換基は、さらに置換されてもよい。炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、2以上50以下、より好ましくは6以上40以下、特に好ましくは6以上30以下の範囲である。
シリル基とは、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基等のアルキルシリル基や、フェニルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、トリナフチルシリル基等のアリールシリル基を示す。ケイ素上の置換基は、さらに置換されてもよい。シリル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、1以上30以下の範囲である。
シロキサニル基とは、例えば、トリメチルシロキサニル基等のエーテル結合を介したケイ素化合物基を示す。ケイ素上の置換基は、さらに置換されてもよい。また、ボリル基とは、置換もしくは無置換のボリル基である。置換する場合の置換基としては、例えば、アリール基、ヘテロアリール基、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、アリールエーテル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基等が挙げられる。中でも、アリール基、アリールエーテル基が好ましい。また、スルホ基とは、置換もしくは無置換のスルホ基である。置換する場合の置換基としては、例えば、アリール基、ヘテロアリール基、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、アリールエーテル基、アルコキシ基等が挙げられる。中でも、直鎖アルキル基、アリール基が好ましい。また、ホスフィンオキシド基とは、−P(=O)R1011で表される基である。R1011は、R〜Rと同様の群から選ばれる。
隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環とは、任意の隣接する2置換基(例えば一般式(1)のRとR)が互いに結合して、共役または非共役の環状骨格を形成することをいう。このような縮合環および脂肪族環の構成元素としては、炭素以外にも、窒素、酸素、硫黄、リンおよびケイ素から選ばれる元素を含んでいてもよい。また、これらの縮合環および脂肪族環は、さらに別の環と縮合してもよい。
一般式(1)で表される化合物は、高い発光量子収率を示し、かつ、発光スペクトルの半値幅が小さいため、効率的な色変換と高い色純度との双方を達成することができる。さらに、一般式(1)で表される化合物は、適切な置換基を適切な位置に導入することで、発光効率、色純度、熱的安定性、光安定性および分散性等の様々な特性や物性を調整することができる。例えば、R、R、RおよびRが全て水素である場合に比べ、R、R、RおよびRの少なくとも1つが置換もしくは無置換のアルキル基や置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基である場合の方が、より良い熱的安定性および光安定性を示す。
、R、RおよびRの少なくとも1つが置換もしくは無置換のアルキル基である場合、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基といった炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。さらに、このアルキル基としては、熱的安定性に優れるという観点から、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が好ましい。また、濃度消光を防ぎ、発光量子収率を向上させるという観点では、このアルキル基として、立体的にかさ高いtert−ブチル基がより好ましい。また、合成の容易さ、原料入手の容易さという観点から、このアルキル基として、メチル基も好ましく用いられる。
、R、RおよびRの少なくとも1つが置換もしくは無置換のアリール基である場合、アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基が好ましく、さらに好ましくは、フェニル基、ビフェニル基である。特に好ましくは、フェニル基である。
、R、RおよびRの少なくとも1つが置換もしくは無置換のヘテロアリール基である場合、ヘテロアリール基としては、ピリジル基、キノリニル基、チエニル基が好ましく、さらに好ましくは、ピリジル基、キノリニル基である。特に好ましくは、ピリジル基である。
、R、RおよびRが全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアルキル基である場合、バインダー樹脂や溶媒への溶解性が良好なため、好ましい。この場合、アルキル基としては、合成の容易さ、原料入手の容易さという観点から、メチル基が好ましい。
、R、RおよびRが全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基または置換もしくは無置換のヘテロアリール基である場合、より良い熱的安定性および光安定性を示すため、好ましい。この場合、R、R、RおよびRが全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基であることがより好ましい。
複数の性質を向上させる置換基もあるが、全てにおいて十分な性能を示す置換基は限られている。特に、高発光効率と高色純度との両立が難しい。そのため、一般式(1)で表される化合物に対して複数種類の置換基を導入することで、発光特性や色純度等にバランスの取れた化合物を得ることが可能である。
特に、R、R、RおよびRが全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基の場合、例えば、R≠R、R≠R、R≠RまたはR≠R等のように、複数種類の置換基を導入することが好ましい。ここで「≠」は、異なる構造の基であることを示す。例えば、R≠Rは、R1とR4とが異なる構造の基であることを示す。上記のように複数種類の置換基を導入することにより、色純度に影響を与えるアリール基と発光効率に影響を与えるアリール基とを同時に導入することができるため、細やかな調節が可能となる。
中でも、R≠RまたはR≠Rであることが、発光効率と色純度をバランスよく向上させるという観点から、好ましい。この場合、一般式(1)で表される化合物に対して、色純度に影響を与えるアリール基を両側のピロール環にそれぞれ1つ以上導入し、それ以外の位置に発光効率に影響を与えるアリール基を導入することができるため、これら両方の性質を最大限に向上させることができる。また、R≠RまたはR≠Rである場合、耐熱性と色純度との双方を向上させるという観点から、R=RおよびR=Rであることがより好ましい。
主に色純度に影響を与えるアリール基としては、電子供与性基で置換されたアリール基が好ましい。電子供与性基とは、有機電子論において、誘起効果や共鳴効果により、置換した原子団に、電子を供与する原子団である。電子供与性基としては、ハメット則の置換基定数(σp(パラ))として、負の値をとるものが挙げられる。ハメット則の置換基定数(σp(パラ))は、化学便覧基礎編改訂5版(II−380頁)から引用することができる。
電子供与性基の具体例としては、例えば、アルキル基(メチル基のσp:−0.17)やアルコキシ基(メトキシ基のσp:−0.27)、アミノ基(―NHのσp:−0.66)等が挙げられる。特に、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましく、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、メトキシ基がより好ましい。分散性の観点からは、tert−ブチル基、メトキシ基が特に好ましく、これらを上記の電子供与性基とした場合、一般式(1)で表される化合物において、分子同士の凝集による消光を防ぐことができる。置換基の置換位置は、特に限定されないが、一般式(1)で表される化合物の光安定性を高めるには結合のねじれを抑える必要があるため、ピロメテン骨格との結合位置に対してメタ位またはパラ位に結合させることが好ましい。一方、主に発光効率に影響を与えるアリール基としては、tert−ブチル基、アダマンチル基、メトキシ基等のかさ高い置換基を有するアリール基が好ましい。
、R、RおよびRが、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基である場合、R、R、RおよびRは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のフェニル基であることが好ましい。このとき、R、R、RおよびRは、それぞれ以下のAr−1〜Ar−6から選ばれることがより好ましい。この場合、R、R、RおよびRの好ましい組み合わせとしては、表1−1〜表1−11に示すような組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
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およびRは、水素、アルキル基、カルボニル基、エステル基、アリール基のいずれかであることが好ましい。中でも、熱的安定性の観点から、水素またはアルキル基が好ましく、発光スペクトルにおいて狭い半値幅を得やすいという観点から、水素がより好ましい。
およびRは、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、フッ素、含フッ素アルキル基、含フッ素ヘテロアリール基または含フッ素アリール基が好ましい。特に、励起光に対して安定でより高い蛍光量子収率が得られることから、RおよびRは、フッ素または含フッ素アリール基であることがより好ましい。さらに、合成の容易さから、RおよびRは、フッ素であることがさらに好ましい。
ここで、含フッ素アリール基とは、フッ素を含むアリール基であり、例えば、フルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基およびペンタフルオロフェニル基等が挙げられる。含フッ素ヘテロアリール基とは、フッ素を含むヘテロアリール基であり、例えば、フルオロピリジル基、トリフルオロメチルピリジル基およびトリフルオロピリジル基等が挙げられる。含フッ素アルキル基とは、フッ素を含むアルキル基であり、例えば、トリフルオロメチル基やペンタフルオロエチル基等が挙げられる。
また、一般式(1)において、Xは、C−Rであることが、光安定性の観点から好ましい。XがC−Rであるとき、一般式(1)で表される化合物の耐久性、すなわち、この化合物の発光強度の経時的な低下には、置換基Rが大きく影響する。具体的には、Rが水素である場合、この部位の反応性が高いため、この部位と空気中の水分や酸素とが容易に反応してしまう。このことは、一般式(1)で表される化合物の分解を引き起こす。また、Rが例えばアルキル基のような分子鎖の運動の自由度が大きい置換基である場合は、確かに反応性は低下するが、色変換シート中で化合物同士が経時的に凝集し、結果的に濃度消光による発光強度の低下を招く。したがって、Rは、剛直で、かつ運動の自由度が小さく凝集を引き起こしにくい基であることが好ましく、具体的には、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基のいずれかであることが好ましい。
より高い蛍光量子収率を与え、より熱分解しづらい点、また光安定性の観点から、XがC−Rであり、Rが置換もしくは無置換のアリール基であることが好ましい。アリール基としては、発光波長を損なわないという観点から、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基が好ましい。
さらに、一般式(1)で表される化合物の光安定性を高めるには、Rとピロメテン骨格の炭素−炭素結合のねじれを適度に抑える必要がある。何故ならば、過度にねじれが大きいと、励起光に対する反応性が高まる等、光安定性が低下するからである。このような観点から、Rとしては、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のビフェニル基、置換もしくは無置換のターフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基が好ましく、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のビフェニル基、置換もしくは無置換のターフェニル基であることがより好ましい。特に好ましくは、置換もしくは無置換のフェニル基である。
また、Rは、適度にかさ高い置換基であることが好ましい。Rが、ある程度のかさ高さを有することで分子の凝集を防ぐことができ、その結果、一般式(1)で表される化合物の発光効率や耐久性がより向上する。
このようなかさ高い置換基のさらに好ましい例としては、下記一般式(2)で表されるRの構造が挙げられる。
Figure 2019039142
一般式(2)において、rは、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、スルホ基、ホスフィンオキシド基からなる群より選ばれる。kは1〜3の整数である。kが2以上である場合、rはそれぞれ同じでも異なっても良い。
より高い発光量子収率を与えることができるという観点から、rは、置換もしくは無置換のアリール基であることが好ましい。このアリール基の中でも、特に、フェニル基、ナフチル基が好ましい例として挙げられる。rがアリール基である場合、一般式(2)のkは、1もしくは2であることが好ましく、中でも、分子の凝集をより防ぐという観点から2であることがより好ましい。さらに、kが2以上である場合、rの少なくとも1つは、アルキル基で置換されていることが好ましい。この場合のアルキル基としては、熱的安定性の観点から、メチル基、エチル基およびtert−ブチル基が特に好ましい例として挙げられる。
また、蛍光波長や吸収波長を制御したり、溶媒との相溶性を高めたりするという観点から、rは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基またはハロゲンであることが好ましく、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、メトキシ基がより好ましい。分散性の観点からは、tert−ブチル基、メトキシ基が特に好ましい。rがtert−ブチル基またはメトキシ基であることは、分子同士の凝集による消光を防ぐことについて、より有効である。
また、一般式(1)で表される化合物の別の態様として、R〜Rのうち少なくとも1つが電子求引基であることが好ましい。特に、(1)R〜Rのうち少なくとも1つが電子求引基であること、(2)Rが電子求引基であること、または(3)R〜Rのうち少なくとも1つが電子求引基であり、かつ、Rが電子求引基であること、が好ましい。このように上記化合物のピロメテン骨格に電子求引基を導入することで、ピロメテン骨格の電子密度を大幅に下げることができる。これにより、上記化合物の酸素に対する安定性がより向上し、その結果、上記化合物の耐久性をより向上させることができる。
電子求引基とは、電子受容性基とも呼称し、有機電子論において、誘起効果や共鳴効果により、置換した原子団から、電子を引き付ける原子団である。電子求引基としては、ハメット則の置換基定数(σp(パラ))として、正の値をとるものが挙げられる。ハメット則の置換基定数(σp(パラ))は、化学便覧基礎編改訂5版(II−380頁)から引用することができる。なお、フェニル基も、上記のような正の値をとる例もあるが、本発明において、電子求引基にフェニル基は含まれない。
電子求引基の例として、例えば、−F(σp:+0.06)、−Cl(σp:+0.23)、−Br(σp:+0.23)、−I(σp:+0.18)、−CO12(σp:R12がエチル基の時+0.45)、−CONH(σp:+0.38)、−COR12(σp:R12がメチル基の時+0.49)、−CF(σp:+0.50)、−SO12(σp:R12がメチル基の時+0.69)、−NO(σp:+0.81)等が挙げられる。R12は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のシクロアルキル基を表す。これら各基の具体例としては、上記と同様の例が挙げられる。
好ましい電子求引基としては、フッ素、含フッ素アリール基、含フッ素ヘテロアリール基、含フッ素アルキル基、置換もしくは無置換のアシル基、置換もしくは無置換のエステル基、置換もしくは無置換のアミド基、置換もしくは無置換のスルホニル基またはシアノ基が挙げられる。何故なら、これらは、化学的に分解しにくいからである。
より好ましい電子求引基としては、含フッ素アルキル基、置換もしくは無置換のアシル基、置換もしくは無置換のエステル基またはシアノ基が挙げられる。何故なら、これらは、濃度消光を防ぎ、発光量子収率を向上させる効果につながるからである。特に好ましい電子求引基は、置換もしくは無置換のエステル基である。
中でも、RおよびRの少なくとも一方が、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のエステル基であることが、色純度を落とすことなく、耐久性を向上させることができるため、好ましい。特に、RおよびRが共に、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のエステル基であることが、耐久性の向上の観点から、特に好ましい。
一般式(1)で表される化合物の好ましい例の1つとして、R、R、RおよびRが全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアルキル基であって、さらに、XがC−Rであり、Rが、一般式(2)で表される基である場合が挙げられる。この場合、Rは、rが置換もしくは無置換のフェニル基として含まれる一般式(2)で表される基であることが特に好ましい。
また、一般式(1)で表される化合物の好ましい例の別の1つとして、R、R、RおよびRが全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、上述のAr−1〜Ar−6から選ばれ、さらに、XがC−Rであり、Rが、一般式(2)で表される基である場合が挙げられる。この場合、Rは、rがtert−ブチル基、メトキシ基として含まれる一般式(2)で表される基であることがより好ましく、rがメトキシ基として含まれる一般式(2)で表される基であることが特に好ましい。
また、一般式(1)で表される化合物の好ましい例の別の1つとして、R、R、RおよびRが全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアルキル基であって、かつ、RおよびRがそれぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のエステル基であり、さらに、XがC−Rであり、Rが、一般式(2)で表される基である場合が挙げられる。この場合、Rは、rが置換もしくは無置換のフェニル基として含まれる一般式(2)で表される基であることが特に好ましい。
また、一般式(1)で表される化合物の好ましい例の別の1つとして、R、R、RおよびRが全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、上述のAr−1〜Ar−6から選ばれ、かつ、RおよびRがそれぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のエステル基であり、さらに、XがC−Rであり、Rが、一般式(2)で表される基である場合が挙げられる。この場合、Rは、rがtert−ブチル基、メトキシ基として含まれる一般式(2)で表される基であることがより好ましく、rがメトキシ基として含まれる一般式(2)で表される基であることが特に好ましい。
一般式(1)で表される化合物の一例を以下に示すが、この化合物は、これらに限定されるものではない。
Figure 2019039142
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一般式(1)で表される化合物は、例えば、特表平8−509471号公報や特開2000−208262号公報に記載の方法で合成することができる。すなわち、ピロメテン化合物と金属塩とを塩基共存下で反応させることにより、目的とするピロメテン系金属錯体が得られる。
また、ピロメテン−フッ化ホウ素錯体の合成については、J.Org.Chem.,vol.64,No.21,pp.7813−7819(1999)、Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.,vol.36,pp.1333−1335(1997)等に記載されている方法を参考にして、一般式(1)で表される化合物を合成することができる。例えば、下記一般式(3)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物とをオキシ塩化リン存在下、1,2−ジクロロエタン中で加熱した後、下記一般式(5)で表される化合物をトリエチルアミン存在下、1,2−ジクロロエタン中で反応させ、これにより、一般式(1)で表される化合物を得る方法が挙げられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。ここで、R〜Rは、上記説明と同様である。Jは、ハロゲンを表す。
Figure 2019039142
さらに、アリール基やヘテロアリール基の導入の際は、ハロゲン化誘導体とボロン酸あるいはボロン酸エステル化誘導体とのカップリング反応を用いて炭素−炭素結合を生成する方法が挙げられるが、本発明は、これに限定されるものではない。同様に、アミノ基やカルバゾリル基の導入の際にも、例えば、パラジウム等の金属触媒下でのハロゲン化誘導体とアミンあるいはカルバゾール誘導体とのカップリング反応を用いて炭素−窒素結合を生成する方法が挙げられるが、本発明は、これに限定されるものではない。
本発明の実施の形態に係る色変換組成物は、一般式(1)で表される化合物以外に、必要に応じてその他の化合物を適宜含有することができる。例えば、励起光から一般式(1)で表される化合物へのエネルギー移動効率を更に高めるために、ルブレン等のアシストドーパントを含有してもよい。また、一般式(1)で表される化合物の発光色以外の発光色を加味したい場合は、所望の有機発光材料、例えば、クマリン系色素、ローダミン系色素等の有機発光材料を添加することができる。その他、これらの有機発光材料以外でも、無機蛍光体、蛍光顔料、蛍光染料、量子ドット等の公知の発光材料を組み合わせて添加することも可能である。
以下に、一般式(1)で表される化合物以外の有機発光材料の一例を以下に示すが、本発明は、特にこれらに限定されるものではない。
Figure 2019039142
本発明の実施の形態に係る色変換組成物は、波長400nm以上500nm以下の範囲の励起光を用いることによりピーク波長が500nm以上580nm以下の領域に観測される発光を呈する発光材料(以下「発光材料(a)」という)を含むことが好ましい。以後、ピーク波長が500nm以上580nm以下の領域に観測される発光を「緑色の発光」という。
また、本発明の実施の形態に係る色変換組成物は、波長400nm以上500nm以下の範囲の励起光または上記発光材料(a)からの発光のいずれかまたは両方により励起されることにより、ピーク波長が580nm以上750nm以下の領域に観測される発光を呈する発光材料(以下「発光材料(b)」という)、を含むことが好ましい。以後、ピーク波長が580nm以上750nm以下の領域に観測される発光を「赤色の発光」という。
一般に、励起光は、そのエネルギーが大きいほど、材料の分解を引き起こしやすい。しかし、波長400nm以上500nm以下の範囲の励起光は、比較的小さい励起エネルギーのものである。このため、色変換組成物中の発光材料の分解を引き起こすことなく、色純度の良好な発光が得られる。
本発明の実施の形態に係る色変換組成物において、上記発光材料(a)および発光材料(b)はいずれか一方だけ含まれていてもよく、両方が含まれてもよい。また、上記発光材料(a)は1種類だけ単独で使用してもよく、複数併用してもよい。同様に、上記発光材料(b)は1種類だけ単独で使用してもよく、複数併用してもよい。
波長400nm以上500nm以下の範囲の励起光の一部は、本発明の実施の形態に係る色変換組成物を一部透過するため、それ自体を青色の発光として利用することができる。そのため、本発明の実施の形態に係る色変換組成物が緑色の発光を示す有機発光材料(a)と赤色の発光を示す有機発光材料(b)とを含み、青色光として発光ピークが鋭い青色LEDを使用した場合、青・緑・赤の各色において鋭い形状の発光スペクトルを示し、色純度の良い白色光を得ることができる。その結果、特にディスプレイにおいては、色彩が一層鮮やかであり且つより大きな色域を効率的に作ることができる。また、照明用途においては、現在主流となっている青色LEDと黄色蛍光体とを組み合わせた白色LEDに比べ、特に緑色領域および赤色領域の発光特性が改善されるため、演色性が向上した好ましい白色光源を得ることができる。
有機発光材料(a)としては、クマリン6、クマリン7、クマリン153等のクマリン誘導体、インドシアニングリーン等のシアニン誘導体、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、カルボキシフルオレセインジアセテート等のフルオレセイン誘導体、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン誘導体、ジイソブチル−4,10−ジシアノペリレン−3,9−ジカルボキシレート等のペリレン誘導体、他にピロメテン誘導体、スチルベン誘導体、オキサジン誘導体、ナフタルイミド誘導体、ピラジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、イミダゾピリジン誘導体、アゾール誘導体、アントラセン等の縮合アリール環を有する化合物やその誘導体、芳香族アミン誘導体、有機金属錯体化合物等が好適なものとして挙げられる。しかし、有機発光材料(a)は、特にこれらに限定されるものではない。
これらの化合物の中でも、ピロメテン誘導体は、高い発光量子収率を与え、耐久性が良好なので、特に好適な化合物である。ピロメテン誘導体としては、例えば、後述の一般式(1)で表される化合物が、色純度の高い発光を示すことから、好ましい。
有機発光材料(b)としては、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン等のシアニン誘導体、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミン101、スルホローダミン101等のローダミン誘導体、1−エチル−2−(4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル)−ピリジニウム−パークロレート等のピリジン誘導体、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−1,6,7,12−テトラフェノキシペリレン−3,4:9,10−ビスジカルボイミド等のペリレン誘導体、他にポルフィリン誘導体、ピロメテン誘導体、オキサジン誘導体、ピラジン誘導体、ナフタセンやジベンゾジインデノペリレン等の縮合アリール環を有する化合物やその誘導体、有機金属錯体化合物等が好適なものとして挙げられる。しかし、有機発光材料(b)は、特にこれらに限定されるものではない。
これらの化合物の中でも、ピロメテン誘導体は、高い発光量子収率を与え、耐久性が良好なので、特に好適な化合物である。ピロメテン誘導体としては、例えば、後述の一般式(1)で表される化合物が、色純度の高い発光を示すことから、好ましい。
本発明の実施の形態に係る色変換組成物における(A)成分の含有量は、化合物のモル吸光係数、発光量子収率および励起波長における吸収強度、ならびに作製する色変換シートの厚みや透過率にもよるが、通常は(B)成分の100重量部に対して、1.0×10−4重量部〜30重量部である。中でも、1.0×10−3重量部〜10重量部であることがさらに好ましく、5.0×10−3重量部〜5重量部であることが特に好ましい。
また色変換組成物に、緑色の発光を呈する発光材料(a)と、赤色の発光を呈する発光材料(b)とを両方含有する場合、緑色の発光の一部が赤色の発光に変換されることから、前記発光材料(a)の含有量wと、発光材料(b)の含有量wが、w≧wの関係であることが好ましい。また、含有量waと含有量wbとの比率は、wa:wb=1000:1〜1:1であり、500:1〜2:1であることがさらに好ましく、200:1〜3:1であることが特に好ましい。ただし、含有量waおよび含有量wbは、(B)成分の重量に対する重量パーセントである。
<(B)バインダー樹脂>
本発明の実施の形態に係る色変換組成物において、バインダー樹脂は、成形加工性、透明性、耐熱性等に優れる材料が好適に用いられる。バインダー樹脂の例としては、例えば、アクリル酸系、メタクリル酸系、ポリケイ皮酸ビニル系、環ゴム系等の反応性ビニル基を有する光硬化型レジスト材料、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂(シリコーンゴム、シリコーンゲル等のオルガノポリシロキサン硬化物(架橋物)を含む)、ウレア樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロース樹脂、脂肪族エステル樹脂、芳香族エステル樹脂、脂肪族ポリオレフィン樹脂、芳香族ポリオレフィン樹脂等の公知のものが挙げられる。また、バインダー樹脂としては、これらの樹脂の混合物や共重合体を用いても構わない。これらの樹脂を適宜設計することで、本発明の実施の形態に係る色変換組成物に有用なバインダー樹脂が得られる。
これらの樹脂の中でも、透明性、耐熱性等の観点から、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂またはこれらの混合物を好適に用いることができる。また、フィルム化のプロセスが容易であることから、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂も好適に用いられる。
バインダー樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されるものではないが、30℃以上180℃以下であることが好ましい。Tgが30℃よりも低い場合、光源からの入射光による熱や機器の駆動熱により、バインダー樹脂の分子運動が増加し、発光材料の分散状態が変化することで耐久性が悪くなる。また、Tgが180℃よりも高い場合、樹脂が脆くなり、シート等に成形した場合の可撓性が低くなる。バインダー樹脂のTgは、より好ましくは50℃以上160℃以下であり、さらに好ましくは70℃以上150℃以下であり、特に好ましくは、90℃以上140℃以下である。
バインダー樹脂の分子量は、樹脂の種類にもより、特に限定されるものではないが、3000以上1500000以下であることが好ましい。分子量が3000よりも小さい場合、樹脂が脆くなり、シート等に成形した場合の可撓性が低くなる。また、分子量が1500000よりも大きい場合、成形時の粘度が過度に大きくなることや、樹脂自体の化学的安定性が低下するといった問題がある。バインダー樹脂の分子量は、より好ましくは5000以上1200000以下であり、さらに好ましくは7000以上1000000以下であり、特に好ましくは、10000以上800000以下である。
<(C)ホウ素化合物、オリゴ糖化合物、環状シロキサン化合物、およびオルトケイ酸誘導体>
発光材料の劣化を防ぎ、耐久性の向上、すなわち発光強度の経時的な低下の抑制を達成するために、特定の、ホウ素化合物、オリゴ糖化合物、環状シロキサン化合物、およびオルトケイ酸誘導体の少なくとも1つを色変換組成物に含むことが有効である。
これらの化合物は、色変換組成物およびそれを硬化して作製した色変換シート中において、発光材料の分散性を向上させる役割を持つ。
有機発光材料を用いた色変換組成物およびそれを硬化して作製した色変換シートは、高温下において耐久性が著しく悪くなる課題があった。発明者らは、鋭意検討の結果、高温下における耐久性の低下は、有機発光材料の分散状態の変化、および分子間のエネルギー移動や電荷移動の活性化が原因であることを見出した。
高温下ではバインダー樹脂の分子運動が活性化し、それにより、組成物中の有機発光材料の移動も活性化する。有機発光材料同士の距離が近づくと、デクスター機構やフェルスター機構による励起エネルギー移動や、超共役機構等による分子間電荷移動が活性化し、結果として有機発光材料の消光や劣化が起こる。特に一般式(1)で表される化合物は、濃度消光を生じやすい化合物であり、分散状態の変化による耐久性への影響が大きい。
そこで、発明者らは、(B)バインダー樹脂以外に、有機発光材料の分散を分子レベルで補助する化合物を色変換組成物の成分として添加することで、高温下でも有機発光材料を安定に分散させ、耐久性を向上させることができることを見出した。検討の結果、特定の、ホウ素化合物、オリゴ糖化合物、環状シロキサン化合物、およびオルトケイ酸誘導体が特に有効であり、さらに、有機発光材料の中でも、一般式(1)で表される化合物の耐久性の向上に有効であることを見出した。
ホウ素化合物とは、ホウ素原子を含む化合物であり、一般に、ホウ酸やその塩等の有機ホウ素化合物や、窒化ホウ素等の無機ホウ素化合物が挙げられる。中でも、溶解性および組成物中での分散性の観点から、有機ホウ素化合物が好ましい。
有機ホウ素化合物としては、特に限定されるものではないが、ホウ酸誘導体、ボロン酸誘導体、ジボロン酸誘導体、ボロキシン誘導体、ボリン酸誘導体、ボラン誘導体、ジボラン誘導体、ボレート誘導体、およびそれらの塩が挙げられる。
本発明の実施の形態に係る色変換組成物において、ホウ素化合物としては、特に限定されるものではないが、ホウ酸エステル誘導体、ボロン酸エステル誘導体、ジボロン酸エステル誘導体、ボロキシン誘導体の少なくとも1つであることが好ましい。
これらの誘導体のホウ素原子上あるいは酸素原子上の置換基としては、置換もしくは無置換の、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、スルホ基およびホスフィンオキシド基が挙げられる。中でも、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、シリル基が好ましく、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基、シリル基がより好ましい。さらに好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、シリル基であり、特に好ましくはアルキル基、シクロアルキル基である。
好ましいホウ素化合物の一例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
Figure 2019039142
オリゴ糖化合物とは、単糖がグリコシド結合によって数個結合した糖類のオリゴマー化合物である。ここで、本発明においてオリゴ糖化合物を構成する単糖の数は、2以上20以下である。
本発明の実施の形態に係る色変換組成物において、オリゴ糖化合物としては、特に限定されるものではないが、ペントース誘導体やヘキソース誘導体を構成成分とするオリゴ糖が好ましく用いることができる。中でも、置換もしくは無置換のグルコース、置換もしくは無置換のガラクトース、置換もしくは無置換のフルクトース、置換もしくは無置換のラムノースのいずれか少なくとも1つを構成成分とするオリゴ糖が好ましく、置換もしくは無置換のグルコース、置換もしくは無置換のガラクトース、置換もしくは無置換のフルクトースのいずれか少なくとも1つを構成成分とするオリゴ糖がより好ましく、置換もしくは無置換のグルコースを構成成分とするオリゴ糖が特に好ましい。
さらに、活性の高い末端を有しないことから、置換もしくは無置換の環状オリゴ糖が好ましい。環状オリゴ糖としては、特に限定されるものではないが、置換もしくは無置換のα−シクロデキストリン、置換もしくは無置換のβ−シクロデキストリン、置換もしくは無置換のγ−シクロデキストリンを好ましく用いることができる。
上記のオリゴ糖化合物あるいはその構成成分である単糖が置換される場合の置換基としては、置換もしくは無置換の、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、スルホ基およびホスフィンオキシド基が挙げられる。中でも、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基、シリル基がより好ましく、アルキル基、シリル基がさらに好ましく、アルキル基が特に好ましい。
環状シロキサン化合物とは、シロキサン結合により形成された環状化合物であり、単環構造であっても、複環構造であってもよい。
本発明の実施の形態に係る色変換組成物において、環状シロキサン化合物としては、特に限定されるものではないが、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサンなどのシクロシロキサン化合物や、オクタフェニルオクタシルセスキオキサン等のシルセスキオキサン化合物が好ましく用いることができる。これらの化合物は、官能基で置換されていてもよい。中でも、熱的な安定性が高いため、シルセスキオキサン化合物が好ましい。
シクロシロキサン化合物やシルセスキオキサン化合物の官能基としては、特に限定されるものではないが、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、スルホ基およびホスフィンオキシド基が挙げられる。中でも、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基、シリル基がより好ましく、アルキル基、シリル基、アリール基がさらに好ましい。
オルトケイ酸誘導体とは、オルトケイ酸のシラノール基の水素が官能基で置換された化合物群である。
官能基としては、置換もしくは無置換の、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基が挙げられる。本発明の実施の形態に係る色変換組成物において、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、がより好ましく、アルキル基、シクロアルキル基がさらに好ましい。
すなわち、本発明の実施の形態に係る色変換組成物において、オルトケイ酸誘導体としては、特に限定されるものではないが、オルトケイ酸のシラノール基の水素がアルキル基またはシクロアルキル基で置換された、テトラアルコキシシラン化合物が好ましく用いることができる。
本発明の実施の形態に係る色変換組成物において、(C)成分の化合物は、窒素原子およびリン原子をいずれも含まないことが好ましい。(C)成分の化合物が窒素原子あるいはリン原子を含む場合、高温下で有機発光材料との間で電荷の授受を行い、有機発光材料の消光および劣化を引き起こしやすい。
また、(C)成分の化合物は、環を形成する炭素原子の数が11以上の芳香族炭化水素基や、環を形成する原子の数が11以上の芳香族複素環基を含まないことが好ましい。これらの基は広いπ共役系を持つため、電荷親和性が高く、電荷の授受を活性化し、有機発光材料の消光および劣化を引き起こしやすい。
光源からの光や発光材料の発光を阻害しないため、(C)成分の化合物は可視光領域での吸光係数が小さいことが好ましい。具体的には、波長400nm以上800nm以下の波長域全域で、モル吸光係数εが100以下である。εは小さい程好ましく、80以下であることがより好ましい。εは、さらに好ましくは50以下であり、特に好ましくは30以下である。可視光領域での吸収の少ない成分を用いることで、発光効率を落とさず、色変換組成物の耐久性を向上できる。
(C)成分の化合物として例示される上記各化合物は、単独で使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
高温下でも有機発光材料を安定に分散させるために、(A)成分および(C)成分のモル数をそれぞれn、nとする時、n、nが(式−1)を満たすことが好ましい。
0.1 ≦ n/n ≦ 200 (式−1)
/nが0.1以上の場合、有機発光材料の分散が十分に補助できるため好ましい。n/nは1.0以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましく、5.0以上であることが特に好ましい。また、n/nは200以下の場合、(C)成分が(A)成分に対して過度に多くならず、シート等への加工成形時の強度や熱安定性等が十分となるため好ましい。n/nは100以下であることがより好ましく、50以下であることがさらに好ましく、30以下であることが特に好ましい。
<その他添加剤>
本発明の実施の形態に係る色変換組成物は、前記(A)、(B)および(C)成分以外に、酸化防止剤、加工および熱安定化剤、紫外線吸収剤等の耐光性安定化剤、塗布膜安定化のための分散剤やレベリング剤、可塑剤、エポキシ化合物等の架橋剤、アミン、酸無水物、イミダゾール等の硬化剤、シート表面の改質剤としてシランカップリング剤等の接着補助剤、色変換材沈降抑制剤としてシリカ粒子やシリコーン微粒子等の無機粒子およびシランカップリング剤等、その他の添加剤を含有することができる。
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール等のフェノール系酸化防止剤を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。また、これらの酸化防止剤は、単独で使用してもよく、複数併用してもよい。
加工および熱安定化剤としては、例えば、トリブチルホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、トリエチルホスフィン、ジフェニルブチルホスフィン等のリン系安定化剤を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。また、これらの安定化剤は、単独で使用してもよく、複数併用してもよい。
耐光性安定化剤としては、例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール類を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。また、これらの耐光性安定化剤は、単独で使用してもよく、複数併用してもよい。
これらの添加剤は、光源からの光や発光材料の発光を阻害しないという観点から、可視域での吸光係数が小さいことが好ましい。具体的には、波長400nm以上800nm以下の波長域全域で、これらの添加剤のモル吸光係数εは、200以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましい。さらに好ましくは80以下であり、50以下であることが特に好ましい。
また、耐光性安定化剤としては、一重項酸素クエンチャーとしての役割を持つ化合物も好適に用いることができる。一重項酸素クエンチャーは、酸素分子が光のエネルギーにより活性化してできた一重項酸素をトラップして不活性化する材料である。色変換シート中に一重項酸素クエンチャーが共存することで、発光材料が一重項酸素により劣化することを防ぐことができる。
一重項酸素は、ローズベンガルやメチレンブルーのような色素の三重項励起状態と、基底状態の酸素分子との間で電子とエネルギーの交換が起こることで生じることが知られている。
本発明の実施の形態に係る色変換組成物は、含有される有機発光材料が励起光により励起され、励起光とは異なる波長の光を発光することで光の色変換を行う。この励起−発光のサイクルが繰り返されるため、生じた励起種と、色変換シート中に含まれる酸素との相互作用により、一重項酸素が生成する確率は高まる。そのため、有機発光材料と一重項酸素との衝突確率も高まるため、有機発光材料の劣化が進みやすい。
有機発光材料は、無機発光材料と比べて一重項酸素の影響を受けやすい。特に、一般式(1)で表される化合物は、ペリレン等の縮合アリール環を有する化合物やその誘導体に比べて一重項酸素との反応性が高く、一重項酸素による耐久性への影響が大きい。そこで、発生した一重項酸素を、一重項酸素クエンチャーによって速やかに不活性化させることで、発光量子収率および色純度に優れた一般式(1)で表される化合物の耐久性をさらに向上させることができる。
一重項酸素クエンチャーとしての役割を持つ化合物としては、例えば、特定の、3級アミンおよび金属塩を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。また、これらの化合物(耐光性安定化剤)は、単独で使用してもよく、複数併用してもよい。
3級アミンとは、アンモニアのN−H結合がすべてN−C結合に置き換わった構造を持つ化合物を示す。窒素原子上の置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基および隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環の中から選ばれる。また、これらの置換基は、さらに上述の置換基により置換されていてもよい。
好ましい3級アミンとしては、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、トリ−n−ブチルアミン、N,N−ジエチルアニリン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
金属塩としては、塩化物等の無機塩や硫酸塩等の有機酸塩が挙げられる。中でも、色変換組成物中で均一に分散するという観点から、有機酸の金属塩が好ましい。
有機酸の金属塩とは、有機酸と金属元素からなる塩である。有機酸とは、カルボキシル基、スルホニル基、フェノール性水酸基、チオール基を有する有機化合物を示す。金属元素としては、遷移元素が挙げられ、中でもニッケルが好ましく用いられる。すなわち、有機酸のニッケル塩が好ましい。
一重項酸素クエンチャーとして好適に用いることができる有機酸のニッケル塩としては、例えば、アセチルアセトナート系ニッケル錯体、ビスジチオ−α−ジケトン系ニッケル錯体、ジチオレート系ニッケル錯体、アミノチオレート系ニッケル錯体、チオカテコール系ニッケル錯体、サリチルアルデヒドオキシム系ニッケル錯体、チオビスフェノレート系ニッケル錯体、インドアニリン系ニッケル化合物、カルボン酸系ニッケル塩、スルホン酸系ニッケル塩、フェノール系ニッケル塩、カルバミン酸系ニッケル塩、ジチオカルバミン酸系ニッケル塩等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
これらの中でも、可視域におけるモル吸光係数が小さく、光源や発光材料の発光を吸収することがないという観点から、スルホン酸系ニッケル塩が好ましい。さらに、より良い一重項酸素クエンチ効果を示すという観点からは、アリールスルホン酸のニッケル塩がより好ましく、幅広い種類の溶媒への溶解性の観点からは、アルキルスルホン酸のニッケル塩が好ましい。アリールスルホン酸のアリール基としては、置換もしくは無置換のフェニル基が好ましく、溶媒への溶解性および分散性の観点から、アルキル基で置換されたフェニル基がより好ましい。
また、有機溶剤への溶解性および可視域におけるモル吸光係数が小さいという観点から、アセチルアセトナート系ニッケル錯体およびチオビスフェノレート系ニッケル錯体の双方が好ましい。これらの化合物におけるニッケル上の配位子は、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、ホスフィンオキシド基等の置換基により置換されていてもよい。また、これらの置換基は、さらに上述の置換基により置換されていてもよい。
中でも、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、ハロゲンが、光安定性の観点から好ましく、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、ハロゲンがより好ましい。さらに、一重項酸素クエンチャーとの反応後の変色が小さいことから、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、ハロゲンがより好ましい。特に好ましくは、置換もしくは無置換のアルキル基である。
波長400nm以上800nm以下の波長域全域でモル吸光係数εが200以下である有機酸のニッケル塩としては、例えば、p−トルイルスルホン酸のニッケル塩やアセチルアセトンニッケル(II)錯体、ヘキサフルオロアセチルアセトンニッケル(II)錯体、2,2’−チオビスフェノレート−n−ブチルアミンニッケル(II)錯体、[2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェノレート)]−2−エチルヘキシルアミンニッケル(II)錯体等が挙げられる。しかし、有機酸のニッケル塩としては、これらの化合物に限定されず、上述した各種の有機酸のニッケル塩のうち、波長400nm以上800nm以下の波長域全域でモル吸光係数εが小さいもの、特にεが200以下であるものが、好適に用いられる。
また、耐光性安定化剤としては、ラジカルクエンチャーとしての役割を持つ化合物も好適に用いることができる。中でも、ヒンダードアミン系化合物が好適な例として挙げられる。ヒンダードアミン系化合物の例としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ヒドロキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、メタクリル酸2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル、メタクリル酸1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル等のピペリジン誘導体やその酸化物が挙げられる。
本発明の実施の形態に係る色変換組成物および色変換シートにおいて、これらの添加剤の含有量は、化合物のモル吸光係数、発光量子収率および励起波長における吸収強度、ならびに作製する色変換シートの厚みや透過率にもよるが、通常はバインダー樹脂の100重量部に対して、1.0×10−3重量部以上であることが好ましく、1.0×10−2重量部以上であることがより好ましく、1.0×10−1重量部以上であることがさらに好ましい。また、これらの添加剤の含有量は、バインダー樹脂の100重量部に対して、30重量部以下であることが好ましく、15重量部以下であることがより好ましく、10重量部以下であることがさらに好ましい。
<溶媒>
本発明の実施の形態に係る色変換組成物は溶媒を含んでいてもよい。流動状態の樹脂の粘度を調整でき、発光物質の発光および耐久性に過度な影響を与えないものであれば、特に限定されない。溶媒は、乾燥により除去することができる。このような溶媒として、例えば、水、1-プロパノール、2−プロパノール、1-ブタノール、エタノール、トルエン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ヘキサン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、テルピネオール、テキサノール、1,2−ジメトキシエタン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、これらの溶媒を2種類以上混合して使用することも可能である。これらの溶媒の中で、特にトルエンは、一般式(1)で表される化合物の劣化に影響を与えない点で好適に用いられる。また、メチルエチルケトンや酢酸メチル、酢酸エチルは、乾燥後の残存溶媒が少ない点で好適に用いられる。
<色変換組成物の製造方法>
以下に、本発明の実施の形態に係る色変換組成物の製造方法の一例を説明する。前述した有機発光材料、バインダー樹脂、後述する溶媒等の材料を所定量混合する。これらの材料を所定の組成になるよう混合した後、ホモジナイザー、自公転型攪拌機、3本ローラー、ボールミル、遊星式ボールミル、ビーズミル等の撹拌・混練機で均質に混合分散することで、色変換層作製用の組成物、すなわち、色変換組成物が作製される。混合分散後、もしくは混合分散の過程で、真空もしくは減圧条件下で脱泡することも好ましく行われる。また、ある特定の成分を事前に混合することや、エージング等の処理をしても構わない。エバポレーターによって溶媒を除去して所望の固形分濃度にすることも可能である。
<色変換シートの作製方法>
本発明の実施の形態に係る色変換シートは、色変換組成物を硬化してなる層である色変換層を含んでいればその構成に限定はない。色変換シートの代表的な構造例として、図1に示すように、基材層10と、色変換組成物を硬化することにより得られる色変換層11との積層体、または、図2に示すように、色変換層11が複数の基材層10によって挟まれた積層体が挙げられる。色変換シート1には、色変換層の酸素、水分や熱による劣化を防ぐために、さらに図3に示すようにバリア層12を設けても良い。
また、本発明の実施の形態に係る色変換シートは2層以上の色変換層を含むことができる。例えば、図4に示すように、基材層10と、色変換層11Aおよび色変換層11Bとの積層体、または、図5に示すように、色変換層11Aおよび色変換層11Bが複数の基材層10によって挟まれた積層体や図6に示すように、色変換層11Aおよび色変換層11Bの間に透明中間層13を設けた積層体が挙げられる。また、色変換層11A/11A/11Bや色変換層11A/11B/11B、色変換層11A/11A/11B/11Bのように、同じ色変換層が連続する構成も挙げられる。
なお、これらは例示であって本発明の実施の形態に係る色変換シートの具体的な構成はこれらに限られず、以下の説明から導かれる事項により適宜変更を加えた構成も本発明の範囲に含まれる。
(色変換層)
次に、本発明の実施の形態に係る色変換シートの色変換層の製造方法の一例を説明する。上述した方法で作製した色変換組成物を基材層やバリア層等の下地上に塗布し、乾燥させる。塗布は、リバースロールコーター、ブレードコーター、スリットダイコーター、ダイレクトグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、キスコーター、ナチュラルロールコーター、エアーナイフコーター、ロールブレードコーター、リバースロールブレードコーター、トゥーストリームコーター、ロッドコーター、ワイヤーバーコーター、アプリケーター、ディップコーター、カーテンコーター、スピンコーター、ナイフコーター等により、行うことができる。色変換層の膜厚均一性を得るためには、スリットダイコーターで塗布することが好ましい。
色変換層の乾燥は、熱風乾燥機や赤外線乾燥機等の一般的な加熱装置を用いて行うことができる。色変換シートの加熱には、熱風乾燥機や赤外線乾燥機等の一般的な加熱装置が用いられる。この場合、加熱条件は、通常、40℃〜250℃で1分〜5時間、好ましくは60℃〜200℃で2分〜4時間である。また、ステップキュア等の段階的に加熱硬化することも可能である。
色変換層を作製した後、必要に応じて基材層を変更することも可能である。この場合、簡易的な方法としては、例えば、ホットプレートを用いて貼り替えを行なう方法や、真空ラミネーターやドライフィルムラミネーターを用いた方法等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の実施の形態に係る色変換シートが2層以上の色変換層を含む場合、各層を積層させる方法は、塗布やドライラミネート等、公知の方法を用いることができる。本発明において各層の積層方法は特に限定されないが、例えば、(色変換層A)と(色変換層B)とを積層させる場合、(色変換層A)の上に(色変換層B)を塗布および乾燥により形成する手法や、(色変換層B)の上に(色変換層A)を塗布および乾燥により形成する手法、(色変換層A)の上に別途成形した(色変換層B)用自立フィルムを貼り合わせる手法、(色変換層B)の上に別途成形した(色変換層A)用自立フィルムを貼り合わせる手法、「基材層/(色変換層A)」という積層構造の積層ユニットと「(色変換層B)/基材層」という積層構造の積層ユニットとを貼り合わせる等のように、個々に作製した積層ユニットを貼り合わせる手法が挙げられる。色変換シートの安定性を高めるため、各層を積層させた後に、さらに熱硬化工程や光硬化工程、熟成工程等を行うことも好ましい。
色変換層の厚みは、特に制限はないが、1μm〜1000μmであることが好ましく、10μm〜1000μmであることがより好ましい。色変換層の厚みが1μmより小さいと、色変換シートの強靭性が小さくなるという問題がある。色変換層の厚みが1000μmを超えると、クラックが生じやすくなり、色変換シート成形が難しい。色変換層の厚みとして、より好ましくは5μm〜100μmであり、さらに好ましくは10μm〜100μmであり、特に好ましくは15μm〜100μmである。
本発明における膜厚(層の厚み)は、JIS K7130(1999)プラスチック−フィルム及びシート−厚さ測定方法における機械的走査による厚さの測定方法A法に基づいて測定される膜厚(平均膜厚)のことをいう。
(基材層)
基材層としては、特に制限無く、公知の金属、フィルム、ガラス、セラミック、紙等を使用することができる。具体的には、基材層として、アルミニウム(アルミニウム合金も含む)、亜鉛、銅、鉄等の金属板や箔、セルロースアセテート、PET、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、アラミド、シリコーン、ポリオレフィン、熱可塑性フッ素樹脂、テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体(ETFE)等のプラスチックのフィルム、α−ポリオレフィン樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂およびこれらとエチレンとの共重合樹脂からなるプラスチックのフィルム、前記プラスチックがラミネートされた紙、または前記プラスチックによりコーティングされた紙、前記金属がラミネートまたは蒸着された紙、前記金属がラミネートまたは蒸着されたプラスチックフィルム等が挙げられる。また、基材層が金属板である場合、その表面にクロム系やニッケル系等のメッキ処理やセラミック処理が施されていてもよい。
これらの中でも、色変換シートの作製のし易さや色変換シートの成形のし易さから、ガラスや樹脂フィルムが好ましく用いられる。また、フィルム状の基材層を取り扱う際に破断等の恐れがないように、強度が高いフィルムが好ましい。それらの要求特性や経済性の面で樹脂フィルムが好ましく、これらの中でも、経済性、取り扱い性の面でPET、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリプロピレンからなる群より選ばれるプラスチックフィルムが好ましい。また、色変換シートを乾燥させる場合や色変換シートを押し出し機により200℃以上の高温で圧着成形する場合は、耐熱性の面でポリイミドフィルムが好ましい。シートの剥離のし易さから、基材層は、予め表面が離型処理されていてもよい。同様に、層間の接着性の向上のため、基材層は、予め表面が易接着処理されていてもよい。
基材層の厚さは、特に制限はないが、下限としては12μm以上が好ましく、38μm以上がより好ましい。また、上限としては5000μm以下が好ましく、3000μm以下がより好ましい。
(バリア層)
本発明の実施の形態に係る色変換シートは、バリア層を更に有していてもよい。バリア層は、色変換層に対して酸素、水分や熱による劣化を防ぐために適宜用いられる。このバリア層としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化イットリウム、酸化マグネシウム等の無機酸化物や、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、炭化窒化ケイ素等の無機窒化物、またはこれらの混合物、またはこれらに他の元素を添加した金属酸化物薄膜や金属窒化物薄膜、あるいはポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、酢酸ビニルのケン化物等のポリビニルアルコール系樹脂等の各種樹脂から成る膜を挙げることができる。
本発明でバリア層に好適に用いられるバリア性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体等の樹脂およびこれらの樹脂の混合物が挙げられる。中でも、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコールは酸素透過係数が非常に小さいため、バリア性樹脂は、これらの樹脂を含むことが好ましい。さらに、バリア性樹脂は、変色しにくさから、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体を含むことがより好ましく、環境負荷の小ささから、ポリビニルアルコールまたはエチレン−ビニルアルコール共重合体を含むことが特に好ましい。これらの樹脂は、単一で用いてもよいし、異なる樹脂と混合して用いてもよいが、フィルムの均一性およびコストの観点から、単一樹脂からなるフィルムがより好ましい。
ポリビニルアルコールとしては、例えば、アセチル基を98モル%以上ケン化したポリ酢酸ビニルのケン化物を用いることができる。また、エチレン−ビニルアルコール共重合体としては、例えば、アセチル基を98モル%以上ケン化したエチレン含有率20%〜50%のエチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物を用いることができる。
また、バリア層としては、市販されている樹脂やフィルムを使用することも可能である。具体例としては、株式会社クラレ製のポリビニルアルコール樹脂PVA117や株式会社クラレ製のエチレン−ビニルアルコール共重合体(“EVAL”(登録商標))樹脂L171B、F171BやフィルムEF−XL等がある。
バリア層には、色変換層の発光および耐久性に過度な影響を与えない範囲で、必要に応じて、酸化防止剤、硬化剤、架橋剤、加工および熱安定化剤、紫外線吸収剤等の耐光性安定化剤等が添加されてもよい。
バリア層の厚みは、特に制限はないが、色変換シート全体の柔軟性やコストの観点から、100μm以下であることが好ましい。より好ましくは50μm以下であり、さらに好ましくは20μm以下である。特に好ましくは、10μm以下であり、1μm以下であってもよい。ただし、層形成の容易さの観点から、バリア層の厚みは、0.01μm以上であることが好ましい。
本発明において、バリア層は、図3に例示したバリア層12のように色変換層11の積層方向両側の各端面に設けられてもよいし、積層方向両側のうち一端面に設けられてもよい。また、2層以上の色変換層を含む場合、図7に例示したバリア層12のように、色変換層11Aおよび色変換層11Bの両面に設けられてもよいし、片面だけに設けられてもよい。また、図8に例示したバリア層12のように、色変換層11Aの両面と色変換層11Bの両面の両方に設けられてもよい。
(その他の機能性層)
本発明の実施の形態に係る色変換シートには、要求される機能に応じて、光拡散層、反射防止機能、防眩機能、反射防止防眩機能、ハードコート機能(耐摩擦機能)、帯電防止機能、防汚機能、電磁波シールド機能、赤外線カット機能、紫外線カット機能、偏光機能、調色機能を有した補助層をさらに設けてもよい。
(接着層)
本発明の実施の形態に係る色変換シートにおいて、それぞれの層の間には、必要に応じて接着層を設けてもよい。接着層としては、色変換シートの発光および耐久性に過度な影響を与えないものであれば、特に制限無く、公知の材料を用いることができる。例えば、強固な接着が必要な場合、接着層としては、光硬化材料や熱硬化材料、嫌気性硬化材料、熱可塑性材料を好ましく用いることができる。中でも、熱硬化材料がより好ましく、特に、0℃〜150℃での硬化が可能である熱硬化材料が好ましい。
接着層の厚みは、特に制限はないが、0.01μm〜100μmであることが好ましく、より好ましくは0.01μm〜25μmである。さらに好ましくは、0.1μm〜15μmであり、特に好ましくは、1.0μm〜15μmである。
各層を積層させる方法は、塗布やドライラミネート等、公知の方法を用いることができる。本発明において各層の積層方法は特に限定されないが、例えば、(L1)層と(L2)層とを積層させる場合、(L1)層の上に(L2)層を塗布および乾燥により形成する手法や、(L2)層の上に(L1)層を塗布および乾燥により形成する手法、(L1)層の上に別途成形した(L2)層用自立フィルムを貼り合わせる手法、(L2)層の上に別途成形した(L1)層用自立フィルムを貼り合わせる手法、「基材層/(L1)層」という積層構造の積層ユニットと「(L2)層/基材層」という積層構造の積層ユニットとを貼り合わせる等のように、個々に作製した積層ユニットを貼り合わせる手法が挙げられる。色変換シートの安定性を高めるため、各層を積層させた後に、さらに熱硬化工程や光硬化工程、熟成工程等を行うことも好ましい。
<励起光>
励起光の種類は、本発明に用いられる有機発光材料が吸収可能な波長領域に発光を示すものであれば、いずれの励起光でも用いることができる。例えば、熱陰極管や冷陰極管、無機エレクトロルミネッセンス(EL)素子等の蛍光性光源、有機EL素子光源、LED光源、白熱光源、あるいは太陽光等、いずれの光源からの励起光でも利用可能である。中でも、LED光源からの励起光が好適である。ディスプレイや照明用途では、青色光の色純度を高められる点で、400nm以上500nm以下の波長範囲の励起光を持つ青色LED光源からの励起光が、さらに好適である。
励起光の極大発光波長としては、430nm以上500nm以下であることが、励起エネルギーがより小さくなり、有機発光材料の劣化を抑止できるため、より好ましく、440nm以上500nm以下であることがさらに好ましい。特に好ましくは450nm以上500nm以下である。また、励起光の極大発光波長としては、励起光と緑色光との発光スペクトルの重なりを小さくし、色再現性を向上させることができるため、480nm以下であることがより好ましく、470nm以下であることがさらに好ましい。
励起光は、1種類の発光ピークを持つものでもよく、2種類以上の発光ピークを持つものでもよいが、色純度を高めるためには、1種類の発光ピークを持つものが好ましい。また、発光ピークの種類の異なる複数の励起光源を任意に組み合わせて使用することも可能である。
<光源ユニット>
本発明の実施の形態に係る光源ユニットは、少なくとも上述の光源および色変換組成物または色変換シートを備える構成である。光源ユニットが色変換組成物を備える場合は、光源と色変換組成物との配置方法については特に限定されず、光源に色変換組成物を直接塗布した構成を取ってもよいし、光源とは離したフィルムやガラス等に色変換組成物を塗布した構成を取ってもよい。光源ユニットが色変換シートを備える場合は、光源と色変換シートとの配置方法については特に限定されず、光源と色変換シートとを密着させた構成を取ってもよいし、光源と色変換シートとを離したリモートフォスファー形式を取ってもよい。また、光源ユニットは、色純度を高める目的で、さらにカラーフィルターを備える構成を取ってもよい。
前述の通り、波長400nm以上500nm以下の範囲の励起光は、比較的小さい励起エネルギーであり、一般式(1)で表される化合物等の発光物質の分解を防止できる。したがって、光源ユニットが備える光源は、波長400nm以上500nm以下の範囲に極大発光を有する発光ダイオードであることが好ましい。さらに、この光源は、波長430nm以上480nm以下の範囲に極大発光を有することが好ましく、波長450nm以上470nm以下の範囲に極大発光を有することが、さらに好ましい。本発明における光源ユニットは、ディスプレイ、照明、インテリア、標識、看板等の用途に使用できるが、特にディスプレイや照明用途に好適に用いられる。
<ディスプレイ、照明装置>
本発明の実施の形態に係るディスプレイは、少なくとも、上述したように光源および色変換シート等を含む光源ユニットを備える。例えば、液晶ディスプレイ等のディスプレイには、バックライトユニットとして、上述の光源ユニットが用いられる。
また、本発明の実施の形態に係る照明装置は、少なくとも、上述したように光源および色変換シート等を含む光源ユニットを備える。例えば、この照明装置は、光源ユニットとしての青色LED光源と、この青色LED光源からの青色光をこれよりも長波長の光に変換する色変換シートまたは色変換組成物とを組み合わせて、白色光を発光するように構成される。
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
下記の実施例および比較例において、化合物G−1〜G−3、R−1、R−2、S−1〜S−10、Q−1は以下に示す化合物である。
Figure 2019039142
Figure 2019039142
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また構造分析に関する評価方法を下記に示す。
H−NMRの測定>
化合物のH−NMRは、超伝導FTNMR EX−270(日本電子株式会社製)を用い、重クロロホルム溶液にて測定を行った。
<吸収スペクトルの測定>
化合物の吸収スペクトルは、U−3200形分光光度計(日立製作所株式会社製)を用い、化合物をトルエンに1×10−6mol/Lの濃度で溶解させて測定を行った。
<蛍光スペクトルの測定>
化合物の蛍光スペクトルは、F−2500形分光蛍光光度計(日立製作所株式会社製)を用い、化合物をトルエンに1×10−6mol/Lの濃度で溶解させ、波長460nmで励起させた際の蛍光スペクトルを測定した。
<色変換特性の測定>
色変換特性の測定では、発光ピーク波長447nmの青色LED素子を搭載した面状発光装置に各色変換シートおよびプリズムシートを載せた状態で、この面状発光装置に30mAの電流を流して、この青色LED素子を点灯させ、分光放射輝度計(CS−1000、コニカミノルタ社製)を用いて、発光スペクトル、色度および輝度を測定した。
<光耐久性のテスト>
光耐久性のテストでは、発光ピーク波長447nmの青色LED素子を搭載した面状発光装置に各色変換シートおよびプリズムシートを載せた状態で、この面状発光装置に100mAの電流を流して、この青色LED素子を点灯させ、分光放射輝度計(CS−1000、コニカミノルタ社製)を用いて初期輝度を測定した。その後、50℃、27%RHの環境下で青色LED素子からの光を連続照射し、輝度が一定量低下するまでの時間を観測することで、光耐久性を評価した。ただし、輝度の測定は、色変換シートおよび面状発光装置をオーブンの外に出し、室温まで降温させた状態で測定した。
<モル吸光係数の測定>
上記、吸収スペクトルの測定方法と同様に、化合物をトルエンあるいはエタノールに1×10−5mol/L、5×10−5mol/L、1×10−4mol/L、5×10−4mol/L、1×10−3mol/Lの各濃度で溶解させて、それぞれの吸収スペクトルの測定を行った。得られた吸収スペクトルから、各波長における吸光度を算出し、縦軸に吸光度、横軸にモル濃度(mol/L)をとったグラフから、検量線を作成して、波長毎のモル吸光係数を求めた。
化合物G−1、S−1〜S−10、Q−1に関して、得られたモル吸光係数を表2に示す。ただし、表中のεmaxは波長400nm以上800nm以下の波長域全域におけるモル吸光係数εの最大値である。
Figure 2019039142
合成例1
化合物G−1の合成方法
3,5−ジブロモベンズアルデヒド(3.0g)、4−t−ブチルフェニルボロン酸(5.3g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.4g)、炭酸カリウム(2.0g)をフラスコに入れ、窒素置換した。ここに脱気したトルエン(30mL)および脱気した水(10mL)を加え、4時間還流した。反応溶液を室温まで冷却し、有機層を、分液した後に飽和食塩水で洗浄した。この有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を留去した。得られた反応生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、3,5−ビス(4−t−ブチルフェニル)ベンズアルデヒド(3.5g)を白色固体として得た。
3,5−ビス(4−t−ブチルフェニル)ベンズアルデヒド(1.5g)と2,4−ジメチルピロール(0.7g)を反応溶液に入れ、脱水ジクロロメタン(200mL)およびトリフルオロ酢酸(1滴)を加えて、窒素雰囲気下、4時間撹拌した。2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(0.85g)の脱水ジクロロメタン溶液を加え、さらに1時間撹拌した。反応終了後、三弗化ホウ素ジエチルエーテル錯体(7.0mL)およびジイソプロピルエチルアミン(7.0mL)を加えて、4時間撹拌した後、さらに水(100mL)を加えて撹拌し、有機層を分液した。この有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を留去した。得られた反応生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、下記に示す化合物G−1を0.4g得た(収率18%)。
H−NMR(CDCl,ppm):7.95(s,1H)、7.63−7.48(m,10H)、6.00(s,2H)、2.58(s,6H)、1.50(s,6H)、1.37(s,18H)。
なお、この化合物の吸収スペクトルは図9に示す通りとなり、青色の励起光源(460nm)に光の吸収特性を示した。蛍光スペクトルは図10に示す通りとなり、緑色領域に鋭い発光ピークを示した。蛍光量子収率は83%を示し、効率的な色変換が可能な化合物であった。
合成例2
化合物R−1の合成方法
4−(4−t−ブチルフェニル)−2−(4−メトキシフェニル)ピロール300mg、2−メトキシベンゾイルクロリド201mgとトルエン10mlの混合溶液を窒素気流下、120℃で6時間加熱した。室温に冷却後、エバポレートした。エタノール20mlで洗浄し、真空乾燥した後、2−(2−メトキシベンゾイル)−3−(4−t−ブチルフェニル)−5−(4−メトキシフェニル)ピロール260mgを得た。
次に、2−(2−メトキシベンゾイル)−3−(4−t−ブチルフェニル)−5−(4−メトキシフェニル)ピロール260mg、4−(4−t−ブチルフェニル)−2−(4−メトキシフェニル)ピロール180mg、メタンスルホン酸無水物206mgと脱気したトルエン10mlの混合溶液を窒素気流下、125℃で7時間加熱した。室温に冷却後、水20mlを注入し、ジクロロメタン30mlで抽出した。有機層を水20mlで2回洗浄し、エバポレートし、真空乾燥した。
次に、得られたピロメテン体とトルエン10mlの混合溶液を窒素気流下、ジイソプロピルエチルアミン305mg、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体670mgを加え、室温で3時間攪拌した。水20mlを注入し、ジクロロメタン30mlで抽出した。有機層を水20mlで2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレートした。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、真空乾燥した後、赤紫色粉末0.27gを得た。得られた粉末のH−NMR分析結果は次の通りであり、上記で得られた赤紫色粉末がR−1であることが確認された。
H−NMR(CDCl,ppm):1.19(s,18H)、3.42(s,3H)、3.85(s,6H)、5.72(d,1H)、6.20(t,1H)、6.42−6.97(m,16H),7.89(d,4H)。
なお、この化合物の吸収スペクトルは図11に示す通りとなり、青色と緑色の励起光源に光の吸収特性を示した。蛍光スペクトルは図12に示す通りとなり、赤色領域に鋭い発光ピークを示した。蛍光量子収率は90%を示し、効率的な色変換が可能な化合物であった。
実施例1
本発明の実施例1では、バインダー樹脂としてアクリル樹脂“オリコックスKC−7000”(共栄社化学(株)製)を用い、このバインダー樹脂の100重量部に対して、(A)成分として化合物G−1を0.25重量部、(C)成分として化合物S−1を1.0重量部、溶剤としてトルエンを150重量部、1−メトキシ−2−プロパノールを150重量部、混合した。これらの混合物を、遊星式撹拌・脱泡装置“マゼルスターKK−400”(クラボウ製)を用いて300rpmで30分間撹拌・脱泡し、色変換組成物を得た。このとき、(A)成分と(C)成分のモル比n/nは10である。
ついで、スリットダイコーターを用いて、上記色変換組成物を、基材層である“ルミラー”U34(東レ株式会社製、厚さ75μm)上に塗布し、120℃で20分加熱、乾燥して、平均膜厚18μmの色変換層を形成した。
最後に、拡散フィルム(東レ先端素材(株)製“Texcell”(登録商標)TDF127)をラミネーションした後、60℃で1時間熟成して、色変換シートを得た。
この色変換シートを用いて青色LED光を色変換させたところ、緑色光の発光領域のみを抜粋すると、ピーク波長527nm、ピーク波長における発光スペクトルの半値幅33nmの高色純度緑色発光が得られた。ピーク波長における発光強度は、後述の比較例1における強度を1.0としたときの相対値で1.0であり、(C)成分による発光の阻害は見られなかった。また、上記の方法にしたがい、50℃、27%RHの環境下で青色LED素子からの光を連続照射したところ、輝度が10%低下するまでの時間は80時間であった。結果を表3に示す。
比較例1
(C)成分を混合しないこと以外は実施例1と同様にして色変換シートを作製して評価した。結果を表3に示す。ただし、表中の発光強度(相対値)は、この比較例1における強度を1.0としたときの相対値である。
実施例2〜5および比較例2
(C)成分として表3に記載した化合物を用い、(A)成分と(C)成分のモル比n/nが10になるように(C)成分の混合量を調整した以外は、実施例1と同様にして色変換シートを作製して評価した。結果を表3に示す。ただし、表中の発光強度(相対値)は、比較例1における強度を1.0としたときの相対値である。
実施例6〜8
(C)成分として化合物S−6を用い、(A)成分と(C)成分のモル比n/nが表3に記載の値になるように(C)成分の混合量を調整した以外は、実施例1と同様にして色変換シートを作製して評価した。結果を表3に示す。ただし、表中の発光強度(相対値)は、比較例1における強度を1.0としたときの相対値である。
実施例9
バインダー樹脂の100重量部に対して、(A)成分として化合物G−3を0.15重量部、(C)成分として化合物S−1を1.0重量部混合した以外は、実施例1と同様にして色変換シートを作製して評価した。このとき、(A)成分と(C)成分のモル比n/nは10である。結果を表3に示す。ただし、表中の発光強度(相対値)は、比較例1における強度を1.0としたときの相対値である。
比較例3
(C)成分を混合しないこと以外は実施例9と同様にして色変換シートを作製して評価した。結果を表3に示す。ただし、表中の発光強度(相対値)は、比較例1における強度を1.0としたときの相対値である。
実施例10および11
(A)成分と(C)成分のモル比n/nが表3に記載の値になるように(C)成分の混合量を調整した以外は、実施例3と同様にして色変換シートを作製して評価した。結果を表3に示す。ただし、表中の発光強度(相対値)は、比較例1における強度を1.0としたときの相対値である。実施例11では、色変換層の形成の時点で、塗膜の白濁が生じ、実施例3と比較して発光強度の低下および光耐久性の低下が見られた。
実施例12〜14
(C)成分として表3に記載の化合物を用い、(A)成分と(C)成分のモル比n/nが表3に記載の値になるように(C)成分の混合量を調整した以外は、実施例1と同様にして色変換シートを作製して評価した。結果を表3に示す。ただし、表中の発光強度(相対値)は、比較例1における強度を1.0としたときの相対値である。
実施例15
バインダー樹脂の100重量部に対して、(A)成分として化合物R−1を0.10重量部、(C)成分として化合物S−2を0.82重量部混合した以外は、実施例1と同様にして色変換シートを作製した。このとき、(A)成分と(C)成分のモル比n/nは25である。
この色変換シートを用いて青色LED光を色変換させたところ、赤色光の発光領域のみを抜粋すると、ピーク波長635nm、ピーク波長における発光スペクトルの半値幅50nmの高色純度緑色発光が得られた。ピーク波長における発光強度は、後述の比較例4における強度を1.0としたときの相対値で1.0であり、(C)成分による発光の阻害は見られなかった。また、上記の方法にしたがい、50℃、27%RHの環境下で青色LED素子からの光を連続照射したところ、輝度が10%低下するまでの時間は350時間であった。結果を表4に示す。
比較例4
(C)成分を混合しないこと以外は実施例15と同様にして色変換シートを作製して評価した。結果を表4に示す。ただし、表中の発光強度(相対値)は、この比較例4における強度を1.0としたときの相対値である。
実施例16および比較例5
(C)成分として表4に記載した化合物を用い、(A)成分と(C)成分のモル比n/nが25になるように(C)成分の混合量を調整した以外は、実施例15と同様にして色変換シートを作製して評価した。結果を表4に示す。ただし、表中の発光強度(相対値)は、比較例4における強度を1.0としたときの相対値である。
実施例17
バインダー樹脂の100重量部に対して、(A)成分として化合物R−2を0.1重量部、(C)成分として化合物S−4を0.53重量部混合した以外は、実施例15と同様にして色変換シートを作製して評価した。このとき、(A)成分と(C)成分のモル比n/nは25である。結果を表4に示す。ただし、表中の発光強度(相対値)は、比較例4における強度を1.0としたときの相対値である。
Figure 2019039142
Figure 2019039142
実施例18
本発明の実施例18では、バインダー樹脂としてアクリル樹脂“オリコックスKC−7000”(共栄社化学(株)製)を用い、このバインダー樹脂の100重量部に対して、(A)成分として化合物G−2を0.3重量部、R−1を0.013重量部、(C)成分として化合物S−4を2.0重量部、溶剤としてトルエンを150重量部、1−メトキシ−2−プロパノールを150重量部、混合した。これらの混合物を、遊星式撹拌・脱泡装置“マゼルスターKK−400”(クラボウ製)を用いて300rpmで30分間撹拌・脱泡し、色変換組成物を得た。このとき、(A)成分と(C)成分のモル比n/nは27である。
ついで、スリットダイコーターを用いて、上記色変換組成物を、基材層である“ルミラー”U34(東レ株式会社製、厚さ75μm)上に塗布し、120℃で20分加熱、乾燥して、平均膜厚14μmの色変換層を形成した。
最後に、拡散フィルム(東レ先端素材(株)製“Texcell”(登録商標)TDF127)をラミネーションした後、60℃で1時間熟成して、色変換シートを得た。
この色変換フィルムを用いて青色LED光を色変換させたところ、緑色光の発光領域のみを抜粋すると、ピーク波長527nm、ピーク波長における発光スペクトルの半値幅32nmの高色純度緑色発光が得られ、赤色光の発光領域のみを抜粋すると、ピーク波長625nm、ピーク波長における発光スペクトルの半値幅50nmの高色純度緑色発光が得られた。緑色光の発光領域のピーク波長における発光強度は、後述の比較例6における強度を1.0としたときの相対値で1.0であり、(C)成分による発光の阻害は見られなかった。同様に、赤色光の発光領域のピーク波長における発光強度は、後述の比較例6における強度を1.0としたときの相対値で1.0であり、(C)成分による発光の阻害は見られなかった。また、上記の方法にしたがい、50℃、27%RHの環境下で青色LED素子からの光を連続照射したところ、輝度が10%低下するまでの時間は300時間であった。結果を表5に示す。
比較例6
(C)成分を混合しないこと以外は実施例18と同様にして色変換シートを作製して評価した。結果を表5に示す。ただし、表中の発光強度(相対値)は、この比較例6における強度を1.0としたときの相対値である。
実施例19
バインダー樹脂の100重量部に対して、化合物Q−1を0.50重量部さらに混合した以外は、実施例18と同様にして色変換シートを作製して評価した。結果を表5に示す。ただし、表中の発光強度(相対値)は、比較例6における強度を1.0としたときの相対値である。
比較例7
(C)成分を混合しないこと以外は実施例19と同様にして色変換シートを作製して評価した。結果を表5に示す。ただし、表中の発光強度(相対値)は、比較例6における強度を1.0としたときの相対値である。
Figure 2019039142
1 色変換シート
10 基材層
11 色変換層
11A 色変換層
11B 色変換層
12 バリア層
13 透明中間層

Claims (16)

  1. 入射光を、その入射光よりも長波長の光に変換する色変換組成物であって、以下の(A)、(B)および(C)成分;
    (A)少なくとも1種の有機発光材料
    (B)バインダー樹脂
    (C)ホウ素化合物、オリゴ糖化合物、環状シロキサン化合物、およびオルトケイ酸誘導体の少なくとも1つ
    を含み、
    前記(C)成分が、波長400nm以上800nm以下の波長域全域でモル吸光係数εが100以下である、
    ことを特徴とする色変換組成物。
  2. (A)成分および(C)成分のモル数をそれぞれn、nとする時、n、nが(式−1)を満たす請求項1に記載の色変換組成物。
    0.1 ≦ n/n ≦ 200 (式−1)
  3. (C)成分が少なくともホウ素化合物を含み、前記ホウ素化合物が、ホウ酸エステル誘導体、ボロン酸エステル誘導体、ジボロン酸エステル誘導体、ボロキシン誘導体の少なくとも1つである、請求項1または2に記載の色変換組成物。
  4. (C)成分が少なくともオリゴ糖化合物を含み、前記オリゴ糖化合物が、置換もしくは無置換の環状オリゴ糖である、請求項1または2に記載の色変換組成物。
  5. (C)成分が少なくとも環状シロキサン化合物を含み、前記環状シロキサン化合物が、シルセスキオキサン化合物である、請求項1または2に記載の色変換組成物。
  6. (C)成分が少なくともオルトケイ酸誘導体を含み、前記オルトケイ酸誘導体が、テトラアルコキシシラン化合物である、請求項1または2に記載の色変換組成物。
  7. 前記(C)成分が、窒素原子およびリン原子をいずれも含まない化合物である、請求項1〜6のいずれかに記載の色変換組成物。
  8. (A)成分が一般式(1)で表される化合物を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の色変換組成物。
    Figure 2019039142

    (XはC−RまたはNである。R〜Rはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、スルホ基、ホスフィンオキシド基、および隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環の中から選ばれる。)
  9. 前記一般式(1)において、XがC−Rであり、Rが一般式(2)で表される基である、請求項8に記載の色変換組成物。
    Figure 2019039142

    (rは、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、スルホ基、ホスフィンオキシド基からなる群より選ばれる。kは1〜3の整数である。kが2以上である場合、rはそれぞれ同じでも異なってもよい。)
  10. 前記一般式(1)において、R、R、RおよびRが、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のフェニル基である、請求項8または9に記載の色変換組成物。
  11. 前記一般式(1)において、R、R、RおよびRが、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアルキル基である、請求項8〜10のいずれかに記載の色変換組成物。
  12. 前記一般式(1)において、RおよびRの少なくとも一方が、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のエステル基である、請求項8〜11のいずれかに記載の色変換組成物。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の色変換組成物を硬化してなる色変換層を含む、色変換シート。
  14. 光源と、請求項13に記載の色変換シートとを備える、光源ユニット。
  15. 前記光源が、波長400nm以上500nm以下の範囲に極大発光を有する発光ダイオードである、請求項14に記載の光源ユニット。
  16. 請求項14または15に記載の光源ユニットを備える、ディスプレイまたは照明装置。
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