以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る空調システム1の構成を示す図である。空調システム1は、例えば、オフィスビル等の建物の空調を行うシステムであり、複数の室外機2(2a,2b)と、複数の室内機3(3a〜3f)と、複数のリモコン(4a,4b)と、集中管理装置5を備える。
室外機2a,2bと、室内機3a〜3fと、リモコン4a,4bと、集中管理装置5は、通信線6にバス接続される。空調システム1では、通信線6を介して、各機器(室外機2、室内機3、リモコン4及び集中管理装置5)間で空調用の制御コマンドの通信を行うことで空調制御を実現している。ここでの通信方式は、例えば、9600bpsの調歩同期のベースバンド方式を採用する。
室外機2aと3台の室内機3a〜3cと、室外機2bと3台の室内機3d〜3fとは、それぞれ、冷媒を循環させるための別個の冷媒配管(何れも図示せず)に接続される。以下、室外機2aと室内機3a〜3cで構成される冷媒系統を第1冷媒系統と称し、室外機2bと室内機3d〜3fで構成される冷媒系統を第2冷媒系統と称する。
各リモコン4は、冷媒系統毎に設けられ、当該冷媒系統による空調対象エリアの空気状態(温度、湿度など)が、ユーザが所望する状態になるように、対応する空内機3の運転を制御する装置である。本実施の形態では、リモコン4aは、室外機2a、室内機3a〜3cに対応し、リモコン4bは、室外機2b、室内機3d〜3fに対応する。
リモコン4aは、室内機3a〜3cが設置される居室空間への出入口付近に設置され、リモコン4bは、室内機3d〜3fが設置される居室空間への出入口付近に設置される。各リモコン4は、ユーザから空調に係る操作を受け付けると、当該操作に基づく制御コマンドを対応する室内機3に送信する。制御コマンドを受信した室内機3は、当該制御コマンドに基づいた運転を行う。即ち、室内機3は、受信した制御コマンドの内容に従って、運転の開始/停止の切り替え、冷房,暖房,除湿,送風等の運転モードの切り替え、設定温度,設定湿度、風量等の変更を行う。
各室外機2は、自機と同じ冷媒系統の室内機3に対する制御コマンドを受信すると、当該室内機3が当該制御コマンドに従った運転を行えるように、自機を構成する各部(圧縮器、凝縮器、膨張弁、蒸発器等)を動作させる。
各リモコン4は、ユーザにより、特定の1台の室内機3を指定した操作が行われた場合、当該室内機3を示す機器アドレスが含まれた制御コマンドを通信線6上に送出する。この場合、当該機器アドレスの室内機3のみが、当該制御コマンドに基づいた運転を行う。また、当該室内機3と同じ冷媒系統に属する室外機2は、当該室内機3が当該運転を行えるように、自機を構成する各部を動作させる。なお、機器アドレスとは、通信線6に接続する各機器に割り振られた通信上のアドレスである。
また、リモコン4は、ユーザにより、グループ指定での操作が行われた場合、グループアドレスが含まれた制御コマンドを送信する。この場合、当該リモコン4に対応する全ての室内機3が、当該制御コマンドに基づいた運転を行い、当該複数の室内機3と同じ冷媒系統に属する室外機2は、当該グループに対応する全ての室内機3が当該運転を行えるように、自機を構成する各部を動作させる。本実施の形態におけるグループアドレスとは、同一の冷媒系統に属する全ての室内機3に対して共通の制御を行えるようにするため、予め、冷媒系統毎に割り振られたアドレスである。本実施の形態では、第1冷媒系統には、グループアドレス“1”が割り振られ、第2冷媒系統には、グループアドレス“2”が割り振られている。
集中管理装置5は、空調システム1における各室外機2及び各室内機3(以下、各空調機と総称する。)を集中して管理するための装置であり、当該建物内の管理室等、関係者以外が立ち入ることのできない場所に設置される。集中管理装置5は、図2に示すように、通信インタフェース50と、操作受付部51と、ディスプレイ52と、二次記憶装置53と、制御部54を備える。
通信インタフェース50は、通信線6を介して上述した通信方式にて他の機器と通信するためのインタフェースである。
操作受付部51は、例えば、キーボード、マウス、キーパッド、押しボタン、タッチパネル、タッチパッド等の入力デバイスを備え、ユーザからの入力操作を受け付け、受け付けた入力操作に係る信号を制御部54に送出する。
ディスプレイ52は、例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ又はプラズマディスプレイ等で構成される。ディスプレイ52は、制御部54の制御の下、各室外機2及び各室内機3(以下、各空調機と総称する。)の運転状態を監視するための監視画面、各空調機を制御するための操作画面等を表示する。
二次記憶装置53は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)若しくはフラッシュメモリ等の読み書き可能な不揮発性の半導体メモリ又はHDD(Hard Disk Drive)等を含んで構成される。二次記憶装置53は、各空調機を管理するためのプログラムと、かかるプログラムの実行時に使用されるデータを記憶する。
制御部54は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含んで構成され、集中管理装置5を統括制御する。
各室外機2は、図3に示すように、外部入力インタフェース20と、通信インタフェース21と、メインユニット22と、二次記憶装置23と、制御部24を備える。外部入力インタフェース20は、他の装置からデータを入力するためのインタフェースであり、例えば、USB(Universal Serial Bus)インタフェース、IEEE1394インタフェース等である。
通信インタフェース21は、通信線6を介して上述した通信方式にて他の機器と通信するためのインタフェースである。メインユニット22は、一般的な室外機の本来的な機能を実現するための構成部であり、例えば、コンプレッサ、凝縮器、膨張弁、蒸発器等が含まれる。
二次記憶装置23は、例えば、EEPROM、フラッシュメモリ等の読み書き可能な不揮発性の半導体メモリで構成される。二次記憶装置23は、図4に示すように、更新制御プログラム230と、室内機情報テーブル231と、更新プログラム232と、更新計画情報テーブル233を記憶する。なお、この他にも、二次記憶装置23は、メインユニット22の動作に関する各種のプログラムと、これらのプログラムの実行時に使用されるデータを記憶する。
更新制御プログラム230は、後述する制御部24によって実行されるコンピュータプログラムである。更新制御プログラム230には、室内機3に記憶される空調動作用の空調プログラムの更新を制御するための処理が記述されている。
室内機情報テーブル231は、各室内機3の室内機情報が登録されたデータテーブルである。図5に示すように、室内機情報は、機器アドレス2310と、型式情報2311と、バージョン情報2312と、複数の影響元情報2313とで構成される。
機器アドレス2310には、当該室内機3の機器アドレスが格納される。型式情報2311には、当該室内機3の型式に関する情報が格納される。型式に関する情報とは、例えば、型番又は型名などである。バージョン情報2312には、当該室内機3の現在の空調プログラムのバージョンを示す情報が格納される。
各影響元情報2313には、運転時において、当該室内機3、即ち、機器アドレス2310で示される室内機3の空調対象エリアの空気環境に影響を与える他の室内機3(以下、影響元室内機という。)に関する情報が格納される。詳細には、影響元情報2313は、図6に示すように、機器アドレス2314と間接空調能力2315とで構成される。
間接空調能力2315には、当該影響元室内機、即ち、機器アドレス2314で示される室内機3が通常モードで運転した際に、当該室内機3、即ち、機器アドレス2310で示される室内機3の空調対象エリアの空気環境に間接的に影響を与える能力(以下、間接空調能力という。)が格納される。間接空調能力は、詳細には、当該室内機3の通常モードの空調能力に対する割合(設計上、1.0より小さくなる)で示される。当該室内機3の通常モードの空調能力とは、当該室内機3が通常モードで運転した際の自機の空調対象エリアに対する空調の能力を意味する。一般に、当該室内機3との距離が短い程、当該影響元室内機の間接空調能力は大きくなる。
図4に戻り、更新プログラム232は、ユーザが、外部装置、即ち、USBメモリ等の記録媒体を外部入力インタフェース20に接続することで入力されたプログラムであり、室内機3に記憶される空調プログラムを更新するためのプログラムである。
更新計画情報テーブル233は、ユーザによって更新プログラム232が入力される度に、制御部24が作成する1又は複数の更新計画情報が登録されるデータテーブルである。更新計画情報は、図7に示すように、機器アドレス2330と複数の機器アドレス2331で構成される。機器アドレス2330には、更新プログラムの転送対象となる室内機3(以下、対象室内機という。)の機器アドレスが格納される。機器アドレス2331には、当該対象室内機の空調を代替させるための室内機(以下、代替室内機という。)の機器アドレスが格納される。更新計画情報の詳細については後述する。
制御部24は、CPU、ROM、RAM等(何れも図示せず)を含んで構成され、当該室外機2を統括制御する。制御部24は、本発明の実施の形態1に係る特有の機能として、図8に示すように、更新プログラム取得部240と、更新計画部241と、プログラム転送部242と、指示部243を備える。これらの機能部は、CPUが二次記憶装置23に記憶されている更新制御プログラム230を実行することで実現される。なお、この他にも、制御部24は、室外機2の一般的な動作のための機能部も備える。
更新プログラム取得部240は、ユーザによって更新プログラム232が記憶された記録媒体が外部入力インタフェース20に接続されると、当該記録媒体から更新プログラム232を読み出して取得し、二次記憶装置23に保存する。
更新計画部241は、対象室内機と複数の代替室内機を選定し、選定した結果に基づいて図7の更新計画情報を作成し、更新計画情報テーブル233に登録する。詳細には、先ず、更新計画部241は、更新プログラム232から型式情報と、バージョン情報を取得する。次に、更新計画部241は、室内機情報テーブル231を参照して、取得した型式情報に一致し、且つ、空調プログラムのバージョンが取得したバージョン情報より古い室内機3を対象室内機として選定する。
また、更新計画部241は、対象室内機に対応する室内機情報の影響元情報2313を参照して代替室内機を選定する。より詳細には、間接空調能力2315の値が大きい影響元情報2313を順に選択し、当該選択した影響元情報2313の機器アドレス2314で示される室内機3を代替室内機として選定する。更新計画部241は、選定した代替室内機の間接空調能力2315の値を加算して行き、間接空調能力2315の値の総計が1.0以上になるまで、上記の代替室内機の選定を続行する。
そして、更新計画部241は、選定した対象室内機の機器アドレスと、選定した複数の代替室内機それぞれの機器アドレスが格納された更新計画情報を作成する。例えば、対象室内機を室内機3bとした際の他の室内機3a,3c〜3fの間接空調能力が図9に示すような場合、更新計画部241は、代替室内機として、室内機3a,3c,3eの3台を選定する。その結果、更新計画部241は、図10に示す内容の更新計画情報を作成する。更新計画部241は、選定した対象室内機の数分の更新計画情報を作成し、更新計画情報テーブル233に登録する。
プログラム転送部242は、更新計画情報テーブル233に登録されている更新計画情報を先頭から順に1レコードずつ読み出し、読み出した更新計画情報の機器アドレス2330で示される室内機3、即ち、対象室内機に対して更新プログラム232を通信インタフェース21を介して転送する。
更新計画情報テーブル233に複数の更新計画情報が登録されている場合、プログラム転送部242は、直近に更新プログラム232を転送した対象室内機から、空調プログラムの更新完了を示すメッセージ(以下、更新完了メッセージという。)を通信インタフェース21を介して受信すると、更新計画情報テーブル233から次の更新計画情報を読み出し、上記のようにして更新プログラム232の転送を行う。
指示部243は、プログラム転送部242から更新プログラム232の転送が開始されると、プログラム転送部242が読み出した更新計画情報で示される各室内機3、即ち、各代替室内機に対して、対象室内機の空調の代替を指示する。詳細には、指示部243は、代替運転の開始を指示する制御コマンドを各代替室内機に対して送信する。なお、指示部243は、プログラム転送部242から更新プログラム232の転送が開始される前に、各代替室内機に対して、対象室内機の空調の代替を指示してもよい。
また、指示部243は、対象室内機において空調プログラムの更新が完了すると、即ち、プログラム転送部242が、対象室内機から更新完了メッセージを受信すると、空調の代替を指示した各代替室内機に対して、代替運転の停止を指示する制御コマンドを送信する。なお、短時間での運転のON/OFFを回避するため、指示部243は、全ての対象室内機において空調プログラムの更新が完了してから、即ち、プログラム転送部242が、全ての対象室内機から更新完了メッセージを受信してから、空調の代替を指示した全ての室内機3に対して、代替運転の停止を指示する制御コマンドを送信するようにしてもよい。
各室内機3は、図11に示すように、通信インタフェース30と、メインユニット31と、二次記憶装置32と、制御部33を備える。通信インタフェース30は、通信線6を介して上述した通信方式にて他の機器と通信するためのインタフェースである。メインユニット31は、一般的な室内機の本来的な機能を実現するための構成部であり、例えば、ファン、熱交換器、温度センサ等が含まれる。
二次記憶装置32は、例えば、EEPROM、フラッシュメモリ等の読み書き可能な不揮発性の半導体メモリで構成される。二次記憶装置32は、空調プログラムを含む各種のプログラムと、これらのプログラムの実行時に使用されるデータを記憶する。また、二次記憶装置32は、室外機2a又は2bから転送された更新プログラム232を一時的に記憶する。
制御部33は、CPU、ROM、RAM(何れも図示せず)を含んで構成され、当該室内機3を統括制御する。制御部33は、対応するリモコン4又は集中管理装置5からの制御コマンドを受信し、受信した制御コマンドに基づいた運転を行う。また、制御部33は、室外機2a又は2bから転送された更新プログラム232を受信すると、当該更新プログラム232に従った空調プログラムの更新を開始する。また、制御部33は、更新プログラム232の受信が開始されると、即ち、室外機2a又は2bからの更新プログラム232の転送が開始されると、メインユニット31の空調に係る動作(以下、空調動作という。)を停止させる。
制御部33は、空調プログラムの更新が完了すると、上述した更新完了メッセージを当該室外機2a又は2bに送信する。また、制御部33は、更新プログラム232の受信開始に伴ってメインユニット31の空調動作を停止させていた場合には、メインユニット31に従前の空調動作を再開させる。
また、制御部33は、室外機2a又は2bから送信された代替運転の開始を指示する制御コマンドを受信すると、現在の設定値(設定温度、設定風量など)に基づいた空調動作をメインユニット31に指示する。この際、制御部33は、RAMに保存する代替運転フラグをOFFからONにする。なお、代替運転の開始を指示する制御コマンドを受信した場合であっても、メインユニット31が既に空調動作中ならば、制御部33は、メインユニット31に上記の指示を行わない。このため代替運転フラグはOFFのままである。
また、制御部33は、室外機2a又は2bから送信された代替運転の停止を指示する制御コマンドを受信すると、代替運転フラグがONになっている場合には、メインユニット31の空調動作を停止させる。一方、代替運転の停止を指示する制御コマンドを受信しても、代替運転フラグがOFFになっている場合には、制御部33は、メインユニット31の空調動作を停止させない。
図12及び13は、各室外機2の制御部24によって実行されるプログラム更新制御処理の手順を示すフローチャートである。このプログラム更新制御処理は、ユーザにより、更新プログラム232が記録されたUSBメモリ等の記録媒体が外部入力インタフェース20に接続されることで開始される。
更新プログラム取得部240は、外部入力インタフェース20に接続された記録媒体から更新プログラム232を読み出して取得し、二次記憶装置23に保存する(ステップS101)。更新計画部241は、更新プログラム232から取得した型式情報及びバージョン情報と室内機情報テーブル231に基づいてN(N≧1)台の対象室内機を選定する(ステップS102)。
更新計画部241は、ループカウンタであるiに1を代入して初期化する(ステップS103)。そして、更新計画部241は、選定したN台の対象室内機から順番に1台の対象室内機に着目し、当該着目した対象室内機、即ち、i番目の対象室内機に対応する複数の代替室内機を選定する(ステップS104)。
更新計画部241は、i番目の対象室内機の機器アドレスと、選定した複数の代替室内機それぞれの機器アドレスに基づいて、更新計画情報を作成する(ステップS105)。更新計画部241は、作成した更新計画情報を更新計画情報テーブル233に登録する(ステップS106)。なお、プログラム更新制御処理の開始時に、更新計画情報テーブル233は初期化され、前回のプログラム更新制御処理で登録された更新計画情報は全てクリアされている。
更新計画部241は、iをインクリメントし(ステップS107)、iがNより大きいか否かを判定する(ステップS108)。iがN以下の場合(ステップS108;NO)、更新計画部241はステップS104の処理を再度実行する。一方、iがNより大きい場合(ステップS108;YES)、プログラム転送部242は、iに1を代入して初期化する(図13のステップS109)。
プログラム転送部242は、更新計画情報テーブル233からi番目に登録された更新計画情報を読み出す(ステップS110)。プログラム転送部242は、読み出した更新計画情報で示される対象室内機に対して更新プログラム232を通信インタフェース21を介して転送する(ステップS111)。
指示部243は、プログラム転送部242が読み出した更新計画情報で示される各代替室内機に対して代替運転の開始を指示する(ステップS112)。対象室内機において空調プログラムの更新が完了すると(ステップS113;YES)、指示部243は、各代替室内機に対して代替運転の停止を指示する(ステップS114)。なお、上述したように、短時間での運転のON/OFFを回避するため、指示部243は、全ての対象室内機において空調プログラムの更新が完了してから、空調の代替を指示した全ての室内機3に対して、代替運転の停止を指示してもよい。
プログラム転送部242は、iをインクリメントし(ステップS115)、iがNより大きいか否かを判定する(ステップS116)。iがN以下の場合(ステップS116;NO)、プログラム転送部242は、ステップS110の処理を再度実行する。一方、iがNより大きい場合(ステップS116;YES)、制御部24は、プログラム更新制御処理を終了する。
図14に、上記のプログラム更新制御処理における、室外機2と各室内機3との間の通信シーケンスの一例を示す。
以上説明したように、実施の形態1に係る空調システム1では、室外機2は、ユーザにより更新プログラム232が記憶された記録媒体が外部入力インタフェース20に接続されると、当該記録媒体から更新プログラム232を読み出して取得する。そして、室外機2は、対象室内機を選定して、取得した更新プログラム232を転送する。また、室外機2は、当該対象室内機の空調対象エリアへの間接空調能力に基づいて、当該空調対象エリアの空調を代替させるための複数の代替室内機を選定し、これらの代替室内機に対して代替運転の開始を指示する。
これにより、空調プログラムの更新のため、対象室内機が当該空調対象エリアの空調を停止しても、複数の代替室内機の代替運転により、当該空調対象エリアの空調がカバーされる。したがって、ユーザの快適性を損なわずに室内機3の空調プログラムを更新することが可能になる。そして、更新時間及び時間帯に制限を設けることなく、空調プログラムを更新できるので、更新プログラム232のサイズが大きい場合、室内機3の停止期間が不規則な場合、あるいは、室内機3が概ね24時間稼働する場合等であっても、確実に空調プログラムを更新することができる。
また、対象室内機は、室外機2から更新プログラム232が転送されると、空調動作を停止し、かかる更新プログラム232に従った空調プログラムの更新を開始する。これにより、本願の実施の形態1に係る発明の適用において、室内機3では、更新プログラム232を一時的に記憶するためのメモリの容量(即ち、二次記憶装置32の記憶容量)を増量する必要がない。したがって、室内機3の製造コストの増加を招かずに済む。
(実施の形態2)
続いて、本発明の実施の形態2に係る空調システム1について説明する。なお、以下の説明において、実施の形態1と共通する構成要素等については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
実施の形態2では、各室内機2の二次記憶装置23に保存される室内機情報テーブル231の内容、詳細には、室内機情報テーブル231に登録される室内機情報の構成が実施の形態1と異なる。
実施の形態2の室内機情報は、図15に示すように、機器アドレス2310と、型式情報2311と、バージョン情報2312と、複数の影響元情報2313Aとで構成される。各影響元情報2313Aには、実施の形態1と同様、運転時において、当該室内機3、即ち、機器アドレス2310で示される室内機3の空調対象エリアの空気環境に影響を与える影響元室内機に関する情報が格納される。
詳細には、影響元情報2313Aは、図16に示すように、機器アドレス2314と、第1間接空調能力2315Aと、第2間接空調能力2316とで構成される。第1間接空調能力2315Aは、実施の形態1における間接空調能力2315に対応する。即ち、第1間接空調能力2315Aには、通常モードで運転した際の、当該室内機3、即ち、機器アドレス2310で示される室内機3の空調対象エリアの空気環境に間接的に影響を与える能力(以下、通常モードの間接空調能力という。)が格納される。
第2間接空調能力2316には、ブーストモードで運転した際に、当該室内機3の空調対象エリアの空気環境に間接的に影響を与える能力(以下、ブーストモードの間接空調能力という。)が格納される。
通常モード及びブーストモード何れの間接空調能力についても、当該室内機3の通常モードの空調能力に対する割合で示される。なお、ブーストモードの間接空調能力は、1.0になる場合もある。
本実施の形態において、ブーストモードとは、室内機3のメインユニット31において、通常モードより高い負荷状態で空調動作を行う運転モードをいう。なお、室内機3がブーストモードになると、同じ冷媒系統の室外機2もブーストモードになる。つまり、当該室外機2のメインユニット22も通常モードより高い負荷状態で空調動作を行う。
詳細には、ブーストモードでは、室外機2のメインユニット22及び室内機3のメインユニット31における各部の通常モードでの制御時における各閾値(例えば、圧縮器の温度閾値、冷媒温度の閾値、ファンの回転速度の閾値など)を、各部を保護するために予め設けられた各上限値に近づける。このため、ブーストモードでは、通常モードでの運転よりも、設定温度等への追従が素早くなり、結果、空調効果がより高くなる。
上記のことから、第1間接空調能力2315Aに格納される通常モードの間接空調能力よりも、第2間接空調能力2316に格納されるブーストモードの間接空調能力の方が大きい。
続いて、実施の形態2に係る各室外機2の制御部24の機能について説明する。本発明の実施の形態2に係る特有の機能として、制御部24は、図17に示すように、更新プログラム取得部240と、更新計画部241Aと、プログラム転送部242と、指示部243Aを備える。
更新計画部241Aは、対象室内機と1又は複数の代替室内機を選定し、選定した結果に基づいて更新計画情報を作成し、更新計画情報テーブル233に登録する。詳細には、実施の形態1と同様、先ず、更新計画部241Aは、更新プログラム232から型式情報と、バージョン情報を取得する。次に、更新計画部241Aは、室内機情報テーブル231を参照して、取得した型式情報に一致し、且つ、空調プログラムのバージョンが取得したバージョン情報より古い室内機3を対象室内機として選定する。
更新計画部241Aは、選定された対象室内機に対応する室内機情報の影響元情報2313Aを参照し、先ずは、第1間接空調能力に基づいて代替室内機の選定を試みる。この場合の選定方法は、実施の形態1と同様である。ただし、全ての第1間接空調能力を加算しても、1.0に満たない場合は、第1間接空調能力に基づいて代替室内機の選定を行う。即ち、更新計画部241Aは、第2間接空調能力2316の値が大きい影響元情報2313Aを順に選択し、当該選択した影響元情報2313Aの機器アドレス2314で示される室内機3を代替室内機として選定する。更新計画部241Aは、選定した代替室内機の第2間接空調能力を加算し、第2間接空調能力の総計が1.0以上になるまで、上記の代替室内機の選定を続行する。
なお、上述したように、ブーストモードの間接空調能力は、1.0になる場合もある。この場合、選定される代替室内機は、当該ブーストモードの間接空調能力を有する室内機3の1台のみとなる。
更新計画部241Aは、選定した対象室内機の機器アドレスと、選定した複数の代替室内機それぞれの機器アドレスが格納された更新計画情報を作成し、更新計画情報テーブル233に登録する。実施の形態2における更新計画情報は、図18に示すように、機器アドレス2330と、1又は複数の機器アドレス2331と、ブーストフラグ2332で構成される。ブーストフラグ2332は、当該1又は複数の代替室内機が、ブーストモードの間接空調能力に基づいて選定されたか否かを示すフラグであり、ブーストモードの間接空調能力に基づいて選定された場合は、ONに設定され、通常モードの間接空調能力に基づいて選定された場合は、OFFに設定される。
指示部243Aは、実施の形態1と同様、プログラム転送部242から更新プログラム232の転送が開始されると、プログラム転送部242が更新計画情報テーブル233から読み出した更新計画情報で示される各代替室内機に対して、対象室内機の空調の代替を指示する。詳細には、指示部243Aは、代替運転の開始を指示する制御コマンドを各代替室内機に対して送信する。ただし、更新計画情報のブーストフラグ2332がONに設定されている場合は、指示部243Aは、ブーストモードでの代替運転の開始を指示する制御コマンドを各代替室内機に対して送信する。これにより、各代替室内機は、ブーストモードで空調を行い、対応する室外機2a又は2bもブーストモードで動作する。なお、指示部243Aは、プログラム転送部242から更新プログラム232の転送が開始される前に、各代替室内機に対して、対象室内機の空調の代替を指示してもよい。
以上説明したように、実施の形態2に係る空調システム1では、室外機2は、対象室内機の空調対象エリアの空調が、周囲の他の複数の室内機3による通常モードでの間接空調能力でカバーできない場合は、ブーストモードの間接空調能力に基づいて1又は複数の代替室内機を選定する。したがって、実施の形態1に係る空調システム1と同様の効果を奏し、さらに、ユーザの快適性の維持についての確度がより高まる。
(実施の形態3)
続いて、本発明の実施の形態3に係る空調システム1について説明する。なお、以下の説明において、実施の形態1と共通する構成要素等については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
図19は、実施の形態3に係る空調システム1Aの構成を示す図である。空調システム1Aは、複数の室外機2(2a,2b)と、複数の室内機3(3a〜3f)と、複数のリモコン(4a,4b)と、集中管理装置5Aと、遠隔監視装置7を備える。
遠隔監視装置7は、遠隔地から空調システム1Aにおける各室外機2及び各室内機3を監視し、制御するための装置であり、広域ネットワーク7を介して集中管理装置5Aと通信可能に接続する。
集中管理装置5Aは、実施の形態1,2の集中管理装置5と同様、空調システム1Aにおける各室外機2及び各室内機3を集中して管理するための装置である。集中管理装置5Aのハードウェア構成は、実施の形態1,2の集中管理装置5と同様(図2参照)であるが、通信インタフェース50は、通信線6を介して通信するためのインタフェースだけでなく、広域ネットワークNを介して通信するためのインタフェースを備える。
集中管理装置5Aは、実施の形態1,2の集中管理装置5と同様の役割を果たす他、遠隔監視装置7からの指令に応じて、各室外機2及び各室内機3を制御したり、あるいは、各室外機2及び各室内機3の運転状態に関する情報を遠隔監視装置7に送信する。
さらに、集中管理装置5Aは、室内機3に記憶される空調動作用の空調プログラムの更新を制御するという、実施の形態1,2の集中管理装置5が有していない特徴を有する。以下、かかる特徴について詳細に説明する。
図20に示すように、集中管理装置5Aの二次記憶装置53には、更新制御プログラム230と、室内機情報テーブル231と、更新プログラム232と、更新計画情報テーブル233が記憶される。なお、この他にも、二次記憶装置53は、各室外機2及び各室内機3の運転状態の監視と制御のためのプログラムを含む各種のプログラムと、これらのプログラムの実行時に使用されるデータを記憶する。
集中管理装置5Aの制御部54は、本発明の実施の形態3に係る特有の機能として、図21に示すように、更新プログラム取得部540と、更新計画部541と、プログラム転送部542と、指示部543を備える。これらの機能部は、CPUが二次記憶装置53に記憶されている更新制御プログラム230を実行することで実現される。なお、この他にも、制御部54は、実施の形態1,2の集中管理装置5と同様の役割を果たすための機能部も備える。
更新プログラム取得部540は、遠隔監視装置7から送られたきた更新プログラム232を通信インタフェース50を介して受信することで取得し、二次記憶装置53に保存する。
更新計画部541は、実施の形態1の更新計画部241と同様、対象室内機と複数の代替室内機を選定し、選定した結果に基づいて図7の更新計画情報を作成し、更新計画情報テーブル233に登録する。更新計画部541は、選定した対象室内機の数分の更新計画情報を作成し、更新計画情報テーブル233に登録する。
プログラム転送部542は、更新計画情報テーブル233に登録されている更新計画情報を先頭から順に1レコードずつ読み出し、読み出した更新計画情報で示される対象室内機に対して更新プログラム232を通信インタフェース50を介して転送する。
指示部543は、プログラム転送部542から更新プログラム232の転送が開始されると、プログラム転送部542が読み出した更新計画情報で示される各代替室内機に対して、対象室内機の空調の代替を指示する。なお、指示部543は、プログラム転送部542から更新プログラム232の転送が開始される前に、各代替室内機に対して、対象室内機の空調の代替を指示してもよい。
また、指示部543は、対象室内機において空調プログラムの更新が完了すると、空調の代替を指示した各代替室内機に対して、代替運転の停止を指示する。なお、短時間での運転のON/OFFを回避するため、指示部543は、全ての対象室内機において空調プログラムの更新が完了してから、空調の代替を指示した全ての室内機3に対して、代替運転の停止を指示するようにしてもよい。
以上説明したように、実施の形態3に係る空調システム1Aでは、集中管理装置5Aは、外部装置である遠隔監視装置7から通信により更新プログラム232を取得する。そして、集中管理装置5Aは、対象室内機を選定して、取得した更新プログラム232を転送する。また、集中管理装置5Aは、当該対象室内機の空調を代替させるための複数の代替室内機を選定し、これらの代替室内機に対して代替運転の開始を指示する。
これにより、空調プログラムの更新のため、対象室内機が当該空調対象エリアの空調を停止しても、複数の代替室内機の代替運転により、当該空調対象エリアの空調がカバーされる。したがって、ユーザの快適性を損なわずに室内機3の空調プログラムの更新することが可能になる。そして、更新時間及び更新する時間帯に制限を設けることなく、空調プログラムを更新できるので、更新プログラム232のサイズが大きい場合、室内機3の停止期間が不規則な場合、あるいは、室内機3が概ね24時間稼働する場合等であっても、確実に空調プログラムを更新することができる。
また、対象室内機は、室外機5Aから更新プログラム232が転送されると、空調動作を停止し、かかる更新プログラム232に従った空調プログラムの更新を開始する。これにより、本願の実施の形態2に係る発明の適用において、室内機3では、更新プログラム232を一時的に記憶するためのメモリの容量(即ち、二次記憶装置32の記憶容量)を増量する必要がない。したがって、室内機3の製造コストの増加を招かずに済む。
さらに、集中管理装置5Aは、遠隔監視装置7から通信により取得した更新プログラム232を対象室内機に転送するため、ユーザの作業負荷が軽減される。
なお、本発明は、上記の各実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更は勿論可能である。
例えば、室外機2a,2b又は集中管理装置5Aから対象室内機に更新プログラム232を転送する際の通信頻度を、各室外機2及び各室内機3の通常運用時における通信線6を介した制御コマンドの通信頻度と同程度になるように調整してもよい。
このようにすると、更新プログラム232の転送中における通信線6における通信量と、通常運用時の通信量との差が小さくなるので、通常運用時における空調制御に影響を及ぼすことを回避できる。
また、実施の形態3の集中管理装置5Aが、実施の形態2の室外機2と同様に、対象室内機の空調対象エリアの空調が、周囲の他の複数の室内機3による通常モードでの間接空調能力でカバーできない場合は、ブーストモードの間接空調能力に基づいて1又は複数の代替室内機を選定し、各代替室内機に対してブーストモードでの代替運転の開始を指示してもよい。
また、実施の形態3において、集中管理装置5Aが、実施の形態1,2の室外機2が備える外部入力インタフェース20と同様の外部入力インタフェースを備える場合、集中管理装置5Aは、ユーザによって更新プログラム232が記憶された記録媒体が当該外部入力インタフェースされると、実施の形態1,2と同様のプログラム更新制御処理を開始してもよい。
また、リモコン4a,4bが、実施の形態1,2の室外機2が備える外部入力インタフェース20と同様の外部入力インタフェースと、実施の形態1,2の室外機2が備える室内機3の空調プログラムの更新を制御する機能と同様の機能と、を備えるようにしてもよい。
上記の各実施の形態では、各室外機2の制御部24の各機能部(図8、図17参照)は、制御部24が備えるCPUによって二次記憶装置23に記憶されている更新制御プログラム230が実行されることで実現された。しかし、これらの機能部の全部又は一部が、専用のハードウェアで実現されるようにしてもよい。同様に、集中管理装置5Aの制御部54の複数の機能部(図21参照)の全部又は一部が、専用のハードウェアで実現されるようにしてもよい。専用のハードウェアとは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、これらの組み合わせ等である。
また、各室外機2の制御部24又は集中管理装置5Aの制御部54のCPUによって実行される更新制御プログラム230は、それぞれ、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、MO(Magneto-Optical Disk)、USBメモリ、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布することも可能である。
また、更新制御プログラム230をインターネット上の他のサーバ(例えば、遠隔監視装置7)が有するディスク装置等に格納しておき、当該サーバから各室外機2又は集中管理装置5Aに更新制御プログラム230がダウンロードされるようにしてもよい。
本発明は、広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能である。また、上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。