JPWO2019009307A1 - Oled素子形成用組成物及びoled素子 - Google Patents

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Abstract

発光材料と電荷輸送材料を含有するOLED素子形成用組成物であって、前記発光材料と電荷輸送材料とは、共にTADF性能を有し、該電荷輸送材料は、励起一重項エネルギーと励起三重項エネルギーとのエネルギー差の絶対値ΔEstが0.37eV以下であり、電荷輸送材料の発光ピーク波長と、発光材料の最も長波長側にある吸収ピーク波長の差が95nm以下である、OLED素子形成用組成物を提供する。

Description

本発明は、OLED素子形成用組成物及びOLED素子に関する。
液晶表示装置に代わる表示装置として、OLED(有機発光ダイオード)の開発が進められている。
OLEDの発光層は、一般的に、正孔及び電子の輸送を担う電荷輸送材料(ホスト材料)と、発光を担う発光材料(ドーパント材料)との2成分系で形成される。
近年、発光材料において、三重項励起子から一重項励起子への逆項間交差(RICS:Reverse Intersystem Crossing)を利用した熱活性型遅延蛍光(TADF:Thermally Activated Delayed Fluorescence)性能を示す化合物の開発が進められている(例えば特許文献1参照)。
この性能を利用することで、本来なら蛍光に寄与できない三重項励起子を蛍光させることが可能となり、内部量子効率が大きく向上し得るため、有用な技術として注目されている。
他方、TADF性能を有する化合物を、発光材料ではなく電荷輸送材料として使用したことも、報告されている(非特許文献1〜3)。
国際公開第2013/161437号
Chih-Chun Lin, et al., CHEMISTRY OF MATERIAL, 2017, 29, 1527-1537 Dongdong Zhang, et al., Chemical Science, 2016, 7, 3355-3363 Ju Sik Kang, et al., Journal of Material Chemistry C, 2016, 4, 4512-4520
TADF性能を示す化合物を発光材料に用いて青色発光させた場合、高電流密度となるにつれ急激に電界発光量子効率(EQE)が低下する、ロールオフと呼ばれる問題があった。本発明はロールオフの問題を解決し、高電流密度及び/又は高輝度(例えば、初期輝度100cd/m以上、好ましくは1000cd/m程度)であっても高いEQEを示すOLED素子を提供することを課題とする。
本発明者らは上記問題を解決すべく、発光材料に加えて電荷輸送材料にもTADF性能を示す化合物を用いることを試みた。そして、発光材料及び電荷輸送材料に、励起一重項エネルギーと励起三重項エネルギーとのエネルギー差の絶対値(ΔEst)が0.37eV以下である、TADF性能を有する化合物を用いることで、上記課題が解決されることを見出し、第1の発明を完成するに至った。
また、発光材料の励起一重項エネルギーEgs1、前記電荷輸送材料の励起一重項エネルギーEhs1、及び前記電荷輸送材料の励起三重項エネルギーEht1が特定の関係である組成物を用いることで、上記課題が解決されることを見出し、第2の発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下に示す具体的態様を提供する。
(1)発光材料と電荷輸送材料を含有するOLED素子形成用組成物であって、
前記発光材料と電荷輸送材料とは、共にTADF性能を有し、
該電荷輸送材料は、励起一重項エネルギーと励起三重項エネルギーとのエネルギー差の絶対値ΔEstが0.37eV以下であり、
電荷輸送材料の発光ピーク波長と、発光材料の最も長波長側にある吸収ピーク波長の差が95nm以下である、OLED素子形成用組成物。
(2)前記発光材料は、励起一重項エネルギーと励起三重項エネルギーとのエネルギー差の絶対値ΔEstが0.37eV以下である、(1)に記載のOLED素子形成用組成物。
(3)前記電荷輸送材料の発光波長が465nm以下である、(1)又は(2)に記載のOLED素子形成用組成物。
(4)前記発光材料の発光波長が500nm以下である、(1)〜(3)のいずれかに記載のOLED素子形成用組成物。
(5)電荷輸送材料のΔEstが0.1eV以下である、(1)〜(4)のいずれかに記載のOLED素子形成用組成物。
(6)発光材料と電荷輸送材料を含有するOLED素子形成用組成物であって、
前記発光材料と電荷輸送材料とは、共にTADF性能を有し、
前記発光材料の励起一重項エネルギーEgs1、前記電荷輸送材料の励起一重項エネルギーEhs1、及び前記電荷輸送材料の励起三重項エネルギーEht1が、以下の関係を充足する、OLED素子形成用組成物。
(Ehs1−Egs1)/(Ehs1−Eht1)≧1.1
(7)前記電荷輸送材料の発光波長が465nm以下である、(6)に記載のOLED素子形成用組成物。
(8)前記発光材料の発光波長が500nm以下である、(6)又は(7)に記載のOLED素子形成用組成物。
(9)陽極と陰極との間に、(1)〜(8)のいずれかに記載のOLED素子形成用組成物により形成された発光層が挟持された、OLED素子。
(10)発光材料と電荷輸送材料を含有するOLED素子形成用組成物であって、
前記発光材料と電荷輸送材料とは、共にTADF性能を有し、
前記発光材料は、発光波長が500nm以下であり、且つ励起一重項エネルギーと励起三重項エネルギーとのエネルギー差の絶対値(ΔEst)が0.37eV以下であり、
前記電荷輸送材料は、発光波長が465nm以下であり、且つ励起一重項エネルギーと励起三重項エネルギーとのエネルギー差の絶対値(ΔEst)が0.37eV以下である、OLED素子形成用組成物。
(11)発光材料と電荷輸送材料を含有するOLED素子形成用組成物であって、
前記発光材料と電荷輸送材料とは、共にTADF性能を有し、
前記発光材料は発光波長が500nm以下であり、前記電荷輸送材料は発光波長が465nm以下であり、
前記発光材料の励起一重項エネルギーEgs1、前記電荷輸送材料の励起一重項エネルギーEhs1、及び励起三重項エネルギーEht1が、以下の関係を充足する、OLED素子形成用組成物。
(Ehs1−Egs1)/(Ehs1−Eht1)≧1.1
(13)陽極と陰極との間に、(11)又は(12)に記載のOLED素子形成用組成物により形成された発光層が挟持された、OLED素子。
本発明により、ロールオフの問題を解決し、高電流密度及び/または高輝度であっても高いEQEを示すOLED素子を提供することができる。
OLED素子の一形態を示す断面模式図である。 実施例におけるシミュレーションの結果をプロットしたグラフである。
本発明の一実施形態であるOLED素子形成用組成物は、発光材料(ドーパント材料)と電荷輸送材料(ホスト材料)を含有する。該OLED素子形成用組成物は、発光材料と電荷輸送材料以外の材料を含んでいてもよく、例えば溶媒などを含んでいてもよい。
なお、本明細書において、「TADF性能を有する発光材料」とは、発光材料において、三重項励起子から一重項励起子への逆項間交差(RICS:Reverse Intersystem Crossing)を利用した熱活性型遅延蛍光(TADF:Thermally Activated Delayed Fluorescence)性能を示す化合物を表す。
また、「TADF性能を有する電荷輸送材料」は、熱活性化により三重項励起子から一重項励起子への逆項間交差(RICS)が起こり、さらに一重項励起子がフェルスター共鳴エネルギー移動(FRET:Forster Resonance Energy Transfer)により発光材料の一重項に移動する性能を示す化合物を表す。
本実施形態では、発光材料にTADF性能を有する化合物を用いるのみならず、電荷輸送材料にもTADF性能を有する化合物を用いる。発光材料、電荷輸送材料の両方にTADF性能を有する化合物を用いることで、ロールオフの問題を解決し、高電流密度及び/又は高輝度であっても高いEQEを示すOLED素子を提供し得る。
発光材料、電荷輸送材料の両方にTADF性能を有する化合物を用いることで、ロールオフの問題を解決できる理由について、本発明者らは次のように考えている。
ロールオフの問題を引き起こす物理的な主要原因は三重項−三重項励起子消滅(TTA:Triplet−Triplet Annihilation)である。即ち高駆動電流領域において、電荷輸送材料の三重項に生成された励起子が高密度に分布することによって、狭い領域に存在する電荷輸送分子間の三重項−三重項励起子消滅が顕著になって、ロールオフの問題を引き起こす。本発明ではTADF性能を有する化合物を用いることで、電荷輸送材料の三重項に生成された励起子が素早く一重項に移り、さらに電荷輸送材料の一重項から発光材料の一重項に移ることで、三重項−三重項励起子消滅が軽減され、ロールオフの問題解決に繋がる。
<本発明の第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態におけるOLED素子形成用組成物は、発光材料と電荷輸送材料を含有するOLED素子形成用組成物であって、前記発光材料と電荷輸送材料とは、共にTADF性能を有し、該電荷輸送材料は、励起一重項エネルギーと励起三重項エネルギーとのエネルギー差の絶対値ΔEstが0.37eV以下であり、電荷輸送材料の発光ピーク波長と、発光材料の最も長波長側にある吸収ピーク波長の差が95nm以下である。
(発光材料)
本発明の第1の実施形態における発光材料は、TADF性能を有する化合物である。
発光材料の発光波長(λem)は特に限定されないが、500nm以下であることが好ましく、即ち発光材料は青色発光化合物であることが好ましい。発光材料の発光波長の上限は、490nm以下であってよく、485nm以下であってよく、480nm以下であってよい。発光波長の下限は特段限定されないが、400nm以上であってよく、410nm以上であってよく、420nm以上であってよく、425nm以上であってよく、450nm以上であってよく、460nm以上であってよく、470nm以上であってよい。なお、発光材料の発光波長とは、発光材料が発する光の分光分布において、ピーク強度を示す波長を意味する。
本実施形態で用いる発光材料は、TADF性能を有する化合物のうち、励起一重項エネルギーと励起三重項エネルギーとのエネルギー差の絶対値(ΔEst)が0.37eV以下であることが好ましい。ΔEstを小さくすることで、励起一重項エネルギーと励起三重項エネルギーとのエネルギーギャップが小さくなる。これにより、TADFを生じやすくすることができ、EQEを向上させることができる。
発光材料のΔEstの上限値は0.36eV以下であってよく、0.35eV以下であってよく、0.34eV以下であってよく、0.33eV以下であってよく、0.32eV以下であってよく、0.31eV以下であってよく、0.30eV以下であってよく、0.20eV以下であってもよく、0.18eV以下であってよく、0.15eV以下であってよく、0.13eV以下であってよく、0.10eV以下であってよい。
発光材料のΔEstの下限値は特段限定されないが、通常0eVより大きく、0.01eV以上であってよく、0.02eV以上であってよく、0.03eV以上であってよい。
なお、本実施形態において、発光材料の励起一重項エネルギーは、発光材料のトルエン溶液の室温における発光スペクトルの短波長側の立ち上がり波長から求められる。また、発光材料の励起三重項エネルギーは、発光材料のトルエン溶液の77Kにおける発光スペクトルの短波長側の立ち上がり波長から求められる。短波長側の立ち上がり波長は、以下のように求める。横軸を波長、縦軸を発光強度とした発光スペクトルを図示し、最も短波長側に見られる発光ピーク波長から短波長方向へとスペクトル上の各点に接線を引いた時、その傾きが最も大きくなる波長における接線を立ち上がり接線とする。一方、立ち上がり接線が得られた波長よりも短波長側の、実質的に発光していない波長領域のスペクトルに対して引いた接線をベースライン接線とする。このようにして求めた立ち上がり接線とベースライン接線の交点の波長を立ち上がり波長とする。発光材料の励起一重項エネルギー及び励起三重項エネルギーは、それぞれ対応する立ち上がり波長を、eV単位に換算することにより得られる。
発光材料のΔEstの値が上記範囲を充足する発光材料の具体例は後述する。後に示す本発明者らのシミュレーションによれば、化合物のドナー部とアクセプター部の間のねじれ(Twist)と発光材料のΔEstとが相関することが示され、当該知見に基づき発光材料を適宜選択することができる。
(電荷輸送材料)
本発明の第1の実施形態における電荷輸送材料は、TADF性能を有する化合物であって、発光波長(λem)が465nm以下であることが好ましい。即ち、電荷輸送材料は青色発光化合物であることが好ましい。電荷輸送材料の発光波長は460nm以下であってよく、450nm以下であってよく、445nm以下であってよく、420nm以下であってよく、410nm以下であってよい。発光波長の下限は特段限定されないが、400nm以上であってよく、410nm以上であってよく、420nm以上であってよく、425nm以上であってよい。なお、電荷輸送材料の発光波長とは、電荷輸送材料が発する光の分光分布において、ピーク強度を示す波長を意味する。
本実施形態で用いる電荷輸送材料は、TADF性能を有する化合物であって、励起一重項エネルギーと励起三重項エネルギーとのエネルギー差の絶対値(ΔEst)は通常0.37eV以下である。ΔEstを小さくすることでTADFを生じやすくすることができ、EQEを向上させることができる。
電荷輸送材料のΔEstの上限値は好ましくは0.36eV以下であってよく、0.35eV以下であってよく、0.34eV以下であってよく、0.33eV以下であってよく、0.32eV以下であってよく、0.31eV以下であってよく、0.30eV以下であってよく、0.20eV以下であってもよく、0.18eV以下であってよく、0.15eV以下であってよく、0.13eV以下であってよく、0.10eV以下であってよい。
電荷輸送材料のΔEstの下限値は特段限定されないが、通常0eVより大きく、0.01eV以上であってよく、0.02eV以上であってよく、0.03eV以上であってよい。
なお、本実施形態において、電荷輸送材料の励起一重項エネルギー及び励起三重項エネルギーは、それぞれ、発光材料の励起一重項エネルギー及び励起三重項エネルギーと同様にして求めることができる。
電荷輸送材料ΔEstの値が上記範囲を充足する電荷輸送材料の具体例は後述する。発光材料と同様、化合物のドナー部とアクセプター部の間のねじれ(Twist)と電荷輸送材料ΔEstとが相関するという知見に基づき、電荷輸送材料を選択することができる。
((Ehs1−Egs1)/(Ehs1−Eht1))
また、本発明者等が更に検討を進めたところ、発光材料の励起一重項エネルギーEgs1、電荷輸送材料の励起一重項エネルギーEhs1、及び電荷輸送材料の励起三重項エネルギーEht1が、以下の関係式を充足するOLED素子形成用組成物を用いた場合に、高電流密度及び/又は高輝度であっても高いEQEを示すOLED素子を製造できることに想到した。
(Ehs1−Egs1)/(Ehs1−Eht1)≧1.1
上記関係式は、発光材料の励起一重項エネルギーと電荷輸送材料の励起一重項エネルギーとの差が大きく、電荷輸送材料の励起一重項エネルギーと電荷輸送材料の励起三重項エネルギーとの差が小さいことを示す。このように、発光材料と電荷輸送材料のエネルギーギャップを大きくし、電荷輸送料及び電荷輸送材料の励起一重項と励起三重項とのエネルギーギャップを小さくすることで、高電流密度及び/又は高輝度であっても高いEQEを示すOLED素子を提供できる。
本発明の第1の実施形態の別の観点は、発光材料及び電荷輸送材料を含むOLED素子形成用組成物を用いたOLED素子の設計方法又は製造方法を提供することである。
係るOLED素子の設計方法又は製造方法は、電荷輸送材料の励起一重項エネルギーEhs1、電荷輸送材料の励起三重項エネルギーEht1及び、発光材料の励起一重項エネルギーEgs1が、以下の関係式を充足する発光材料及び電荷輸送材料を選択するステップ、を含む。
(Ehs1−Egs1)/(Ehs1−Eht1)≧1.1
また、選択された発光材料及び電荷輸送材料を混合するステップ、OLED素子形成用組成物から発光層を形成するステップ等を含んでもよい。
上記関係式で示される(Ehs1−Egs1)/(Ehs1−Eht1)の比は1.1以上であるが、1.2以上であることが好ましく、1.3以上であることが好ましく、1.4以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、1.55以上であることがさらに好ましく、1.6以上であることがよりさらに好ましく、1.7以上が特に好ましく、2.0以上が最も好ましい。また、上限は特段限定されず、5.0以下であってよく、4.5以下であってよく、4.0以下であってよく、3.0以下であってよく、2.0以下であってよい。
<発光材料及び電荷輸送材料の例示>
本発明の第1の実施形態では、発光材料、電荷輸送材料ともに、TADF性能を有する特定の化合物である。本発明の効果を大きく損なわない限りその構造は特に限定はされない。
例えば、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基、トリル基、キシリル基、フェナントリル基、フルオレニル基、ピレニル基、クリセニル基、フルオランテニル基、ベンゾ[a]アントリル基、ベンゾ[c]フェナントリル基、トリフェニレニル基、ベンゾ[k]フルオランテニル基、ベンゾ[g]クリセニル基、ベンゾ[b]トリフェニレニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ルブレニル基など)、ヘテロアリール基(例えばピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基など)、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基など)、シクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基など)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基など)、アリールスルホニル基またはヘテロアリールスルホニル基、アリールシリル基またはヘテロアリールシリル基、アリールホスフィノ基またはヘテロアリールホスフィノ基、アミノ基、シアノ基、ハロゲン原子などを有する事が好ましい。
これらの中でもカルバゾリル基、アリールスルホニル基またはヘテロアリールスルホニル基を有することが好ましい。カルバゾリル基を有することで、比較的良好なホール輸送能を示しながら、比較的高い三重項エネルギーを保持する事が出来る傾向にある。
アリールスルホニル基またはヘテロアリールスルホニル基を有する事で、高い三重項エネルギーを保持しながら、低いΔEstを有する事が出来る傾向にある。低いΔEstは本発明の効果を得る上で好ましい。
アリールスルホニル基のアリール、またはヘテロアリールスルホニル基のヘテロアリールは特に限定されないが、5員環もしくは6員環の単環、又は2もしくは3の環が縮合した環が挙げられる。炭素数は特に限定されないが、5以上30以下が好ましく、20以下がより好ましい。具体的には、2価の、シクロペンエタジエン、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、ピレン環、クリセン環、フルオランテン環、ペリレン環、ルブレン環、トリフェニレン環、ピセン環等が挙げられる。
カルバゾリル基、アリールスルホニル基またはヘテロアリールスルホニル基は置換基を有していてもよく、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜30のアリール基、炭素数1〜30のヘテロアリール基、シアノ基、フッ素原子等が挙げられる。
以下、具体例を示すが、これに限定されるものではない。
Figure 2019009307
Figure 2019009307
これらのうち発光材料として好ましいものは、以下のとおりである。
Figure 2019009307
Figure 2019009307
これらのうち電荷輸送材料として好ましいものは、以下のとおりである。
Figure 2019009307
Figure 2019009307
(発光ピーク波長と吸収ピーク波長との差)
本発明の第1の実施形態において、電荷輸送材料の発光ピーク波長と、発光材料の最も長波長側にある吸収ピーク波長の差は通常95nm以下、好ましくは90nm以下、より好ましくは86nm以下、さらに好ましくは80nm以下であり、特に好ましくは70nm以下であり、最も好ましくは68nm以下であり、また、通常0nm以上、好ましくは10nm以上であり、より好ましくは20nmであり、さらに好ましくは25nm以上である。
電荷輸送材料の発光ピーク波長と発光材料の最も長波長側にある吸収ピーク波長の差がこの範囲であると、電荷輸送材料の発光スペクトルと発光材料の吸収スペクトルの重なりが大きくなるため、電荷輸送材料から発光材料へのフェルスター型エネルギー移動の効率が高くなる傾向にある。そのため、OLED素子の発光効率を向上する事ができる。
なお、発光材料(ドーパント材料)の吸収ピーク波長は、発光材料の可視波長領域の吸収スペクトルにおいて最も長波長側で吸収極大を示す波長である。ただし、吸収極大を示す波長よりも長波長側にショルダー成分が存在する場合には、ショルダーの波長を吸収ピーク波長とする。
発光材料の最も長波長側にある吸収ピーク波長の決定の方法をより詳しく説明する。
最初に380nmから780nmの各波長における接線の傾きを求める。まず、発光材料の吸光度を375nmから785nmまで1nmごとに測定し、横軸に波長、縦軸に吸光度をとってプロットすることで可視吸収スペクトルを得る。前記可視吸収スペクトルにおいて、各波長から−5nmの点の吸光度をABS(−5nm)、各波長から+5nmの点の吸光度をABS(+5nm)とすると、各波長の接線の傾きは下記式;
(ABS(+5nm)−ABS(−5nm))/10
により算出される。前記接線の傾きを長波長側から短波長側に向かって見ていくと、780nmから吸収ピークの立ち上がりまでにかけての吸光のない波長領域においては、接線の傾きはゼロである。吸収ピークの立ち上がりの波長において、前記接線の傾きはゼロから負の値に転じる。接線の傾きの絶対値は、吸収ピークの立ち上がりの波長から短波長側に向かうにつれ、徐々に大きくなり、変曲点を境に徐々に小さくなり、吸収極大波長においてゼロとなる。前記接線の傾きは、吸収極大波長を境に正の値に転じる。このように、接線の傾きの絶対値がゼロになる吸収極大波長を発光材料の最も長波長側にある吸収ピーク波長とする。
ただし、吸収ピークがショルダーを有する場合は、吸収ピークの立ち上がりから前記変曲点(第1の変曲点とする)までの間に、吸収ピークに更にもう1つの変曲点(第2の変曲点とする)が現れる。この場合、接線の傾きの絶対値は、吸収ピークの立ち上がりから短波長側に向かうにつれ、徐々に大きくなり、第2の変曲点を境に接線の傾きの絶対値は徐々に小さくなり、極小値となる。なお、極小値はゼロより大きい値である。前記接線の傾きの絶対値は、前記極小値となった波長から短波長側に向かうにつれ、徐々に大きくなり、前記第1の変曲点に到達する。第1の変曲点より短波長側においては、前記接線の傾きは、吸収ピークにショルダーがない場合と同様の挙動を示す。吸収ピークがショルダーを有する場合は、接線の傾きの絶対値が極小値となる波長を発光材料の最も長波長側にある吸収ピーク波長とする。
<本発明の第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態におけるOLED素子形成用組成物は、発光材料と電荷輸送材料を含有するOLED素子形成用組成物であって、前記発光材料と電荷輸送材料とは、共にTADF性能を有し、前記発光材料の励起一重項エネルギーEgs1、前記電荷輸送材料の励起一重項エネルギーEhs1、及び前記電荷輸送材料の励起三重項エネルギーEht1が、以下の関係を充足する。
(Ehs1−Egs1)/(Ehs1−Eht1)≧1.1
上記関係式は、発光材料の励起一重項エネルギーと電荷輸送材料の励起一重項エネルギーとの差が大きく、電荷輸送材料の励起一重項エネルギーと電荷輸送材料の励起三重項エネルギーとの差が小さいことを示す。このように、発光材料と電荷輸送材料のエネルギーギャップを大きくし、電荷輸送料及び電荷輸送材料の励起一重項と励起三重項とのエネルギーギャップを小さくすることで、高電流密度及び/又は高輝度であっても高いEQEを示すOLED素子を提供できる。
(発光材料)
本発明の第2の実施形態における発光材料としては、本発明の第1の実施形態における発光材料と同様のものを使用することができる。本発明の第2の実施形態における発光材料の好ましい態様についても本発明の第1の実施形態における発光材料と同様である。
(電荷輸送材料)
本発明の第2の実施形態における電荷輸送材料としては、ΔEstが0.37eV以下に限定されない以外は、本発明の第1の実施形態における電荷輸送材料と同様のものを使用することができる。本発明の第2の実施形態における電荷輸送材料の好ましい態様についても本発明の第1の実施形態における電荷輸送材料と同様である。
(発光ピーク波長と吸収ピーク波長との差)
本発明の第2の実施形態における電荷輸送材料の発光ピーク波長と、発光材料の最も長波長側にある吸収ピーク波長の差は、特に限定されないが、95nmであることが好ましい。他の好ましい値については、本発明の第2の実施形態における電荷輸送材料の発光ピーク波長と、発光材料の最も長波長側にある吸収ピーク波長の差と同様である。
また、発光材料(ドーパント材料)の吸収ピーク波長の決定方法についても、本発明の第1の実施形態における決定方法と同様である。
本発明の第2の実施形態の別の観点は、発光材料及び電荷輸送材料を含むOLED素子形成用組成物を用いたOLED素子の設計方法又は製造方法を提供することである。
係るOLED素子の設計方法又は製造方法は、電荷輸送材料の励起一重項エネルギーEhs1、電荷輸送材料の励起三重項エネルギーEht1及び、発光材料の励起一重項エネルギーEgs1が、以下の関係式を充足する発光材料及び電荷輸送材料を選択するステップ、を含む。
(Ehs1−Egs1)/(Ehs1−Eht1)≧1.1
また、選択された発光材料及び電荷輸送材料を混合するステップ、OLED素子形成用組成物から発光層を形成するステップ等を含んでもよい。
上記関係式で示される(Ehs1−Egs1)/(Ehs1−Eht1)の比は1.1以上であるが、1.2以上であることが好ましく、1.3以上であることが好ましく、1.4以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、1.55以上であることがさらに好ましく、1.6以上であることがよりさらに好ましく、1.7以上が特に好ましく、2.0以上が最も好ましい。また、上限は特段限定されず、5.0以下であってよく、4.5以下であってよく、4.0以下であってよく、3.0以下であってよく、2.0以下であってよい。
<OLED素子>
以下、本発明の一実施形態にかかるOLED素子について、図面を参照しながら説明する。
図1はOLED素子10の構造を示す断面模式図である。
OLED素子10は、基板1上に、陽極2、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、正孔阻止層6、電子輸送層7、電子注入層8、陰極9がこの順に積層されてなる多層構造を有する。
(基板)
基板1は、OLED素子10の支持体となるものであり、通常、石英やガラスの板、金属板、金属箔、プラスチックフィルム、シート等が用いられる。これらのうち、ガラス板、又はポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。基板は、外気によるOLED素子の劣化が起こり難いことからガスバリア性の高い材質により形成されることが好ましい。合成樹脂製の基板等のようにガスバリア性の低い材質を用いる場合は、基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を上げることが好ましい。
(陽極)
陽極2は、発光層5側の層に正孔を注入する機能を担う。
陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属;酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(ITO)等の金属酸化物;ヨウ化銅等のハロゲン化金属;カーボンブラック;ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子;等により構成される。
陽極2の形成は、通常、スパッタリング法、真空蒸着法等の乾式法により行われることが多い。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて陽極を形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板上に塗布することにより形成することもできる。また、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板上に薄膜を形成したり、基板上に導電性高分子を塗布して陽極を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
陽極2は、通常、単層構造であるが、適宜、積層構造としてもよい。陽極2が積層構造である場合、1層目の陽極上に異なる導電材料を積層してもよい。
陽極2の厚みは、必要とされる透明性と材質等に応じて決めればよい。特に高い透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率が60%以上となる厚みが好ましく、80%以上となる厚みが更に好ましい。陽極2の厚みは、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下とするのが好ましい。一方、透明性が不要な場合は、陽極2の厚みは必要な強度等に応じて任意に厚みとすればよい。この場合、陽極2は基板と同一の厚みでもよい。
陽極2の表面に他の層を成膜する場合は、成膜前に、紫外線/オゾン処理、酸素プラズマ処理、アルゴンプラズマ処理等により、陽極2上の不純物を除去すると共に、そのイオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させておくことが好ましい。
(正孔注入層)
陽極2側から発光層5側に正孔を輸送する機能を担う層は、通常、正孔注入輸送層又は正孔輸送層と呼ばれる。そして、陽極2側から発光層5側に正孔を輸送する機能を担う層が2層以上ある場合に、より陽極側に近い方の層を正孔注入層3と呼ぶことがある。正孔注入層3は、陽極2から発光層5側に正孔を輸送する機能を強化する点で、形成することが好ましい。正孔注入層3を形成する場合、通常、正孔注入層3は、陽極2上に形成される。
正孔注入層3の膜厚は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下である。
正孔注入層の形成方法は、真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよい。成膜性が優れる点では、湿式成膜法により形成することが好ましい。
正孔注入層3は、正孔輸送性化合物を含むことが好ましく、正孔輸送性化合物と電子受容性化合物とを含むことがより好ましい。更には、正孔注入層中にカチオンラジカル化合物を含むことが好ましく、カチオンラジカル化合物と正孔輸送性化合物とを含むことが特に好ましい。
正孔輸送性化合物としては、陽極から正孔注入層への電荷注入障壁の観点から、4.5eV〜6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。正孔輸送性化合物の例としては、芳香族アミン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、オリゴチオフェン系化合物、ポリチオフェン系化合物、ベンジルフェニル系化合物、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン系化合物、シラザン系化合物、キナクリドン系化合物等が挙げられる。
上述の例示化合物のうち、非晶質性及び可視光透過性の点から、芳香族アミン化合物が好ましく、芳香族三級アミン化合物が特に好ましい。ここで、芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
芳香族三級アミン化合物の種類は、特に制限されないが、表面平滑化効果により均一な発光を得やすい点から、重量平均分子量が1000以上、1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型化合物)を用いることが好ましい。芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例としては、下記式(10)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物等が挙げられる。
Figure 2019009307
式中、Ar11及びAr12は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Ar13〜Ar15は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Yは、下記に示す連結基群の中から選ばれる連結基を表す。また、Ar11〜Ar15のうち、同一のN原子に結合する二つの基は互いに結合して環を形成してもよい。
Figure 2019009307
式中、Ar16〜Ar26は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子又は任意の置換基を表す。
Ar16〜Ar26の芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基としては、高分子化合物の溶解性、耐熱性、正孔注入輸送性の点から、1個又は2個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、チオフェン環、ピリジン環が好ましく、1個又は2個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環がさらに好ましい。
式(10)で表される繰り返し単位を有する芳香族三級アミン高分子化合物の具体例としては、国際公開第2005/089024号に記載のもの等が挙げられる。
正孔注入層3には、正孔輸送性化合物の酸化により、正孔注入層の導電率を向上させることができるため、前述の電子受容性化合物や、前述のカチオンラジカル化合物を含有していることが好ましい。
PEDOT/PSS(Adv.Mater.,2000年,12巻,481頁)やエメラルジン塩酸塩(J.Phys.Chem.,1990年,94巻,7716頁)等の高分子化合物由来のカチオンラジカル化合物は、酸化重合(脱水素重合)することによっても生成する。
ここでいう酸化重合は、モノマーを酸性溶液中で、ペルオキソ二硫酸塩等を用いて化学的に、又は、電気化学的に酸化するものである。この酸化重合(脱水素重合)の場合、モノマーが酸化されることにより高分子化されるとともに、酸性溶液由来のアニオンを対アニオンとする、高分子の繰り返し単位から一電子取り除かれたカチオンラジカルが生成する。
湿式成膜法により正孔注入層3を形成する場合、通常、正孔注入層となる材料を可溶な溶媒(正孔注入層用溶媒)と混合して成膜用の組成物(正孔注入層形成用組成物)を調製し、この正孔注入層形成用組成物を正孔注入層の下層に該当する層(通常は、陽極)上に塗布して成膜し、乾燥させることにより形成する。
正孔注入層形成用組成物中における正孔輸送性化合物の濃度は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、膜厚の均一性の点では、低い方が好ましく、また、一方、正孔注入層に欠陥が生じ難い点では、高い方が好ましい。具体的には、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることが更に好ましく、0.5質量%以上であることが特に好ましく、また、一方、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることが更に好ましく、50質量%以下であることが特に好ましい。
前記正孔注入層用溶媒としては、例えば、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、アミド系溶媒等が挙げられる。
エーテル系溶媒としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル;等が挙げられる。
エステル系溶媒としては、例えば、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、3−イソプロピルビフェニル、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、メチルナフタレン等が挙げられる。
アミド系溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
これらの他、ジメチルスルホキシド等も用いることができる。
正孔注入層3の湿式成膜法による形成は、通常、正孔注入層形成用組成物を調製後に、これを、正孔注入層3の下層に該当する層(通常は、陽極2)上に塗布成膜し、乾燥することにより行われる。
正孔注入層3は、通常、成膜後に、加熱や減圧乾燥等により塗布膜を乾燥させる。
真空蒸着法により正孔注入層3を形成する場合には、通常、正孔注入層3の構成材料(前述の正孔輸送性化合物、電子受容性化合物等)の1種類又は2種類以上を真空容器内に設置された坩堝に入れ(2種類以上の材料を用いる場合は、通常各々を別々の坩堝に入れ)、真空容器内を真空ポンプで10−4Pa程度まで排気した後、坩堝を加熱して(2種類以上の材料を用いる場合は、通常各々の坩堝を加熱して)、坩堝内の材料の蒸発量を制御しながら蒸発させ(2種類以上の材料を用いる場合は、通常各々独立に蒸発量を制御しながら蒸発させ)、坩堝に向き合って置かれた基板上の陽極上に正孔注入層を形成する。なお、2種類以上の材料を用いる場合は、それらの混合物を坩堝に入れ、加熱、蒸発させて正孔注入層を形成することもできる。
蒸着時の真空度は限定されないが、通常0.1×10−6Torr(0.13×10−4Pa)以上、9.0×10−6Torr(12.0×10−4Pa)以下である。蒸着速度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1Å/秒以上、5.0Å/秒以下である。蒸着時の成膜温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは10℃以上、50℃以下で行われる。
なお、正孔注入層3は、後述の正孔輸送層4と同様に架橋されていてもよい。
(正孔輸送層)
正孔輸送層4は、陽極2側から発光層5側に正孔を輸送する機能を担う層である。正孔輸送層4は、OLED素子では必須の層ではないが、陽極2から発光層5に正孔を輸送する機能を強化する点では、この層を形成することが好ましい。正孔輸送層4を形成する場合、通常、正孔輸送層4は、陽極2と発光層5の間に形成される。また、上述の正孔注入層3がある場合は、正孔注入層3と発光層5の間に形成される。
正孔輸送層4の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、一方、通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
正孔輸送層4の形成方法は、真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよい。成膜性が優れる点では、湿式成膜法により形成することが好ましい。
以下に一般的な正孔輸送層の形成方法について説明するが、正孔輸送層は、湿式成膜法により形成されることが好ましい。
正孔輸送層4は、通常、正孔輸送性化合物を含有する。正孔輸送層4に含まれる正孔輸送性化合物としては、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルで代表される、2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報);4,4’,4’’−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(J.Lumin.,72−74巻、985頁、1997年);トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chem.Commun.,2175頁、1996年);2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synth.Metals,91巻、209頁、1997年);4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル等のカルバゾール誘導体;等が好ましいものとして挙げられる。また、例えばポリビニルカルバゾール;ポリビニルトリフェニルアミン(特開平7−53953号公報);テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン(Polym.Adv.Tech.,7巻、33頁、1996年);等も好ましく使用できる。
湿式成膜法で正孔輸送層を形成する場合は、通常、正孔注入層形成用組成物に代えて正孔輸送層形成用組成物を用いる以外は、上述の正孔注入層を湿式成膜法で形成する場合と同様にして正孔輸送層を形成することができる。
湿式成膜法で正孔輸送層を形成する場合は、通常、正孔輸送層形成用組成物は、更に溶媒を含有する。正孔輸送層形成用組成物に用いる溶媒は、上述の正孔注入層形成用組成物で用いる溶媒と同様の溶媒を使用することができる。
正孔輸送層形成用組成物中における正孔輸送性化合物の濃度は、正孔注入層形成用組成物中における正孔輸送性化合物の濃度と同様の範囲とすることができる。
正孔輸送層の湿式成膜法による形成は、前述の正孔注入層成膜法と同様に行うことができる。
真空蒸着法で正孔輸送層を形成する場合についても、通常、正孔注入層の構成材料に代えて正孔輸送層の構成材料(前述の正孔輸送性化合物等)を用いる以外は、上述の正孔注入層を真空蒸着法で形成する場合と同様にして正孔輸送層を形成することができる。蒸着時の真空度、蒸着速度及び温度等の成膜条件などは、前記正孔注入層の真空蒸着時と同様の条件で成膜することができる。
(発光層)
発光層5は、一対の電極間に電界が与えられた時に、陽極2から注入される正孔と陰極9から注入される電子が再結合することにより励起され、発光する機能を担う層である。発光層5は、陽極2と陰極9の間に形成される層であり、発光層は、陽極の上に正孔注入層がある場合は、正孔注入層と陰極の間に形成され、陽極の上に正孔輸送層がある場合は、正孔輸送層と陰極の間に形成される。
発光層5の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、膜に欠陥が生じ難い点では厚い方が好ましく、また、一方、薄い方が低駆動電圧としやすい点で好ましい。このため、3nm以上であることが好ましく、5nm以上であることが更に好ましく、また、一方、通常200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることが更に好ましい。
発光層5は、少なくとも、発光の性質を有する材料(発光材料)を含有するとともに、好ましくは、電荷輸送性を有する材料(電荷輸送性材料)とを含有する。
発光層は、上記説明した発光材料及び電荷輸送材料を含むOLED素子形成用組成物から形成される。組成物中には、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記発光材料及び電荷輸送材料以外の、公知の材料を含有させてもよい。
発光層の形成方法は、真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよいが、成膜性に優れることから、湿式成膜法が好ましく、スピンコート法及びインクジェット法が更に好ましい。湿式成膜法により発光層を形成する場合は、通常、正孔注入層形成用組成物に代えて上記発光材料及び電荷輸送材料を含むOLED素子形成用組成物を用いる以外は、上述の正孔注入層を湿式成膜法で形成する場合と同様にして発光層を形成することができる。
OLED素子形成用組成物は、溶媒を含んでいてもよい。前記溶媒としては、例えば、正孔注入層の形成について挙げたエーテル系溶媒、エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、アミド系溶媒の他、アルカン系溶媒、ハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族アルコール系溶媒、脂環族アルコール系溶媒、脂肪族ケトン系溶媒及び脂環族ケトン系溶媒等が挙げられる。以下に溶媒の具体例を挙げるが、本発明の効果を損なわない限り、これらに限定されるものではない。
例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル系溶媒;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル等の芳香族エーテル系溶媒;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン、3−イロプロピルビフェニル、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;n−デカン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロヘキサン等のアルカン系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒;ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコール系溶媒;シクロヘキサノール、シクロオクタノール等の脂環族アルコール系溶媒;メチルエチルケトン、ジブチルケトン等の脂肪族ケトン系溶媒;シクロヘキサノン、シクロオクタノン、フェンコン等の脂環族ケトン系溶媒等が挙げられる。これらのうち、アルカン系溶媒及び芳香族炭化水素系溶媒が特に好ましい。
(正孔阻止層)
発光層5と後述の電子注入層8との間に、正孔阻止層6を設けてもよい。正孔阻止層6は、発光層5の上に、発光層5の陰極9側の界面に接するように積層される層である。
この正孔阻止層6は、陽極2から移動してくる正孔を陰極9に到達することを阻止する役割と、陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とを有する。正孔阻止層6を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。
このような条件を満たす正孔阻止層の材料としては、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体;ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体;ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11−242996号公報);3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7−41759号公報);バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10−79297号公報);等が挙げられる。更に、国際公開第2005/022962号に記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層の材料として好ましい。
正孔阻止層6の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成できる。
正孔阻止層6の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上であり、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
(電子輸送層)
電子輸送層7は素子の電流効率をさらに向上させることを目的として、発光層5と電子注入層8との間に設けられる。
電子輸送層7は、電界を与えられた電極間において陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送することができる化合物より形成される。電子輸送層7に用いられる電子輸送性化合物としては、陰極9又は電子注入層8からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し、注入された電子を効率よく輸送することができる化合物であることが必要である。
電子輸送層に用いる電子輸送性化合物としては、具体的には、例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体等の金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−ヒドロキシフラボン金属錯体、5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5645948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛等が挙げられる。
電子輸送層7の膜厚は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上であり、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
電子輸送層7は、前記と同様にして湿式成膜法、或いは真空蒸着法により正孔阻止層6上に積層することにより形成される。通常は、真空蒸着法が用いられる。
(電子注入層)
電子注入層8は、陰極9から注入された電子を効率よく、電子輸送層7又は発光層5へ注入する役割を果たす。
電子注入を効率よく行うには、電子注入層8を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウム等のアルカリ土類金属等が用いられる。その膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下が好ましい。
更に、バソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体等の金属錯体に代表される有機電子輸送材料に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10−270171号公報、特開2002−100478号公報、特開2002−100482号公報等に記載)ことも、電子注入性及び電子輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。
電子注入層8の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常200nm以下、好ましくは100nm以下である。
電子注入層8は、湿式成膜法或いは真空蒸着法により、発光層5又はその上の正孔阻止層6や電子輸送層7上に積層することにより形成される。
湿式成膜法の場合の詳細は、前述の発光層の場合と同様である。
(陰極)
陰極9は、陰極の発光層5側に隣接する層(電子注入層、発光層など)に電子を注入する役割を果たす。
陰極9の材料としては、前記の陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率良く電子注入を行なう上では、仕事関数の低い金属、例えば、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の金属又はそれらの合金等が好ましく用いられる。前記合金の具体例としては、例えば、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等が挙げられる。
(その他の層)
素子の安定性の点から、陰極の上に、仕事関数が高く、大気に対して安定な金属層を積層して、低仕事関数の金属からなる陰極を保護することが好ましい。積層する金属としては、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が挙げられる。
陰極の膜厚は通常、陽極と同様である。
なお、OLED素子の構造を、上述の説明とは逆の構造、即ち、基板上に陰極、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に積層することも可能である。
OLED素子10をOLED発光装置に適用する場合は、単一のOLED素子として用いてもよく、複数のOLED素子がアレイ状に配置された構成にして用いてもよく、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構成にして用いてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
<物性値の測定>
(発光材料と電荷輸送材料の発光波長)
室温でトルエン中の発光スペクトルを測定し、スペクトルの最大値の波長を、発光材料と電荷輸送材料の発光波長値(λem)とした。
(Egs1、Egt1、Ehs1、Eht1
gs1及びEhs1は、室温でトルエン中の発光スペクトルのオンセット値とした。
gt1及びEht1は77Kでトルエン中の遅延発光スペクトル(遅延時間は0.5msである)のオンセット値とした。
(ΔEst
発光材料のΔEstは、下記式によって算出した。
ΔEst=Egs1−Egt1
電荷輸送材料のΔEstは、下記式によって算出した。
ΔEst=Ehs1−Eht1
(EQE)
有機EL発光の放射分布がランバーシアン(lambertian)則に従うと仮定して求めた。
<シミュレーション>
以下に示す合成された11種類のTADF性能を有する化合物(化合物1〜11)について、ハイブリッド型M062X法(Y.Zhao, and D.G. Truhlar, Theor.Chem.Acc. 120, 215 (2008))を使用して基底状態のTADF性能を有する化合物の分子構造最適化を行った。
この際、算出の際に用いる基底関数系は、6−31Gに分極関数を加えた6−31G(d,p)を用いた(R. Ditchfield, W. J. Hehre, and J. A. Pople, J. Chem. Phys. 54, 724 (1971)、W. J. Hehre, R. Ditchfield, and J. A. Pople, J. Chem. Phys. 56, 2257 (1972)、P. C. Hariharan and J. A. Pople, Mol. Phys. 27, 209 (1974)、M. S. Gordon, Chem. Phys. Lett. 76, 163 (1980)、P. C. Hariharan and J. A. Pople, Theo. Chim. Acta 28, 213 (1973)、J.-P. Blaudeau, M. P. McGrath, L. A. Curtiss, and L. Radom, J. Chem. Phys. 107, 5016 (1997)、M. M. Francl, W. J. Pietro, W. J. Hehre, J. S. Binkley, D. J. DeFrees, J. A. Pople, and M. S. Gordon, J. Chem. Phys. 77, 3654 (1982)、R. C. Binning Jr. and L. A. Curtiss, J. Comp. Chem. 11, 1206 (1990)、V. A. Rassolov, J. A. Pople, M. A. Ratner, and T. L. Windus, J. Chem. Phys. 109, 1223 (1998)、及びV. A. Rassolov, M. A. Ratner, J. A. Pople, P. C. Redfern, and L. A. Curtiss, J. Comp. Chem. 22, 976 (2001)参照)。
得られた基底状態の最適化構造に対して、TD−M062X法(R. Bauernschmitt and R. Ahlrichs, Chem. Phys. Lett. 256, 454 (1996)、M. E. Casida, C. Jamorski, k. C. Casida, and D. R. Salahub, J. Chem. Phys.108, 4439 (1998)、R. E. Stratmann, G. E. Scuseria, and M. J. Frisch, J. Chem. Phys. 109, 8218 (1998)、C. Van Caillie and R. D. Amos, Chem. Phys. Lett. 308, 249 (1999)、C. Van Caillie and R. D. Amos, Chem. Phys. Lett. 317, 159 (2000)、F. Furche and R. Ahlrichs, Chem. Phys. 117, 7433 (2002)、G. Scalmani, M. J. Frisch, B. Mennucci, J. Tomasi, R. Cammi, and V. Barone, J. Chem. Phys. 124, 094107:1 (2006)参照)を用いて、S1励起状態の最適化構造を求めた。
得られたS1励起状態の最適化構造を用いて、化合物のドナー部とアクセプター部の間のねじれ(Twist)を算出し、ΔEstの測定値との関係性を調べた。
結果を図2に示す。図2の結果から、化合物のドナー部とアクセプター部の間のねじれ(Twist)とΔEstとが相関することが理解できた。
Figure 2019009307
Figure 2019009307
<素子の形成>
(実施例1)
OLED素子の基板には、ガラス基板上に、陽極として膜厚130nmのITO膜が形成されたものを用いた。この基板に、界面活性剤を添加した純水中、純水中、アセトン中、イソプロパノール中の順で超音波洗浄処理を施した。洗浄した基板に乾燥窒素をブローして乾燥し、その後、酸素プラズマ処理を施した。
この基板を真空蒸着チャンバーに導入し、前記ITO膜上に、MoOを0.2Å/秒の蒸着速度で蒸着し、膜厚15nmの正孔注入層を形成した。
次に、以下に示すポリ−トリカルバゾール化合物10mgを脱水クロロベンゼン1mLに溶解した正孔輸送層用組成物を調製した。この組成物を、グローブボックス中で、前記正孔注入層上に、スピナ回転数600rpmで60秒スピンコートした。これをホットプレート上にて110℃で2分間加熱し、膜厚73nmの正孔輸送層を形成した。
Figure 2019009307
この基板を真空蒸着チャンバーに移し、前記正孔輸送層上に、発光材料として以下に示す化合物20と電荷輸送材料として以下に示す化合物21とを、25:75のモル比で共蒸着し、膜厚25nmの発光層を形成した。
Figure 2019009307
次に、この発光層上に、以下に示す1,3,5-tri[3-(diphenylphosphoryl)phenyl]benzeneを真空蒸着して、膜厚4nmの正孔阻止層を形成した。
Figure 2019009307
さらに、この正孔阻止層上に、以下に示す2,2',2''-(1,3,5-benzinetriyl)-tris(1-phenyl-1-H-benzimidazole)を真空蒸着して、膜厚50nmの電子輸送層を形成した。
Figure 2019009307
次に、この電子輸送層上に、LiFを蒸着して、膜厚1nmの電子注入層を形成した。
次に、この電子注入層上に金属アルミニウムを蒸着して、膜厚50nmの陰極を形成した。
さらにこの上に、陰極への電気接触を補助するために、銀を100nm蒸着した。
このようにして、実施例1に関わるOLED素子を作製した。
(実施例2)
実施例1における発光層の代わりに、発光材料として化合物20と電荷輸送材料として化合物22を、26:74のモル比で共蒸着して得られた膜厚25nmの発光層を用い、また、実施例1における正孔輸送層の代わりに、上記正孔輸送層用組成物を500rpmの回転数でスピンコートして得られた膜厚80nmの正孔輸送層を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2に関わるOLED素子を作製した。
Figure 2019009307
(実施例3)
実施例1における発光層の代わりに、発光材料として化合物20と電荷輸送材料として化合物23を、30:70のモル比で共蒸着した膜厚25nmの発光層を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3に関わるOLED素子を作製した。
Figure 2019009307
(比較例1)
実施例1における発光層の代わりに、発光材料として化合物24と電荷輸送材料として化合物25を、3:97のモル比で共蒸着した膜厚25nmの発光層を用い、実施例1における正孔輸送層として上記正孔輸送層用組成物を750rpmの回転数でスピンコートした膜厚65nmの正孔輸送層を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1に関わるOLED素子を作製した。
Figure 2019009307
比較例1の発光材料に用いた化合物24の励起三重項エネルギー(Egt1)は、そのコア骨格であるペリレンの励起三重項エネルギーの文献値(J.Org.Chem.,2014年,79巻,2038頁)が1.53eVであることから、最高値が1.53eV以下である。ΔEstの値は、室温における発光スペクトルの立ち上がりから求められた励起一重項エネルギー(Egs1)2.78eVと、この励起三重項エネルギーの最高値との差になり、1.25eV以上である。
比較例1の電荷輸送材料に用いた化合物25の励起三重項エネルギー(Eht1)は、そのコア骨格であるアントラセンの励起三重項エネルギーの文献値(Adv.Funct.Mater.,2013年,23巻,739頁)が1.85eVであることから、最高値が1.85eV以下である。ΔEstの値は、室温における発光スペクトルの求められた励起一重項エネルギー(Ehs1)3.11eVと、この励起三重項エネルギー(Eht1)の最高値との差になり、1.26eV以上である。
比較例1におけるパラメータ(Ehs1−Egs1)/(Ehs1−Eht1)の分母は電荷輸送材料に用いた化合物25のΔEstに相当する。化合物25のΔEstは1.26eV以上であることから、(Ehs1−Egs1)/(Ehs1−Eht1)は電荷輸送材料と発光材料の励起一重項エネルギーの差を1.26eVで割ったもの以下となる。従って、化合物25の(Ehs1−Egs1)/(Ehs1−Eht1)は、0.26以下と算出され、関係式(Ehs1−Egs1)/(Ehs1−Eht1)≧1.1を満たさない。
各実施例及び比較例に使用した発光材料及び電荷輸送材料の物性値を表1に示した。
また、製造したOLED素子に対し、初期輝度が10cd/m、100cd/m、1000cd/m、及び10000cd/mの場合における電界発光量子効率(EQE)を測定した。結果を表2に示す。
Figure 2019009307
Figure 2019009307
10 OLED素子
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極

Claims (9)

  1. 発光材料と電荷輸送材料を含有するOLED素子形成用組成物であって、
    前記発光材料と電荷輸送材料とは、共にTADF性能を有し、
    該電荷輸送材料は、励起一重項エネルギーと励起三重項エネルギーとのエネルギー差の絶対値ΔEstが0.37eV以下であり、
    電荷輸送材料の発光ピーク波長と、発光材料の最も長波長側にある吸収ピーク波長の差が95nm以下である、OLED素子形成用組成物。
  2. 前記発光材料は、励起一重項エネルギーと励起三重項エネルギーとのエネルギー差の絶対値ΔEstが0.37eV以下である、請求項1に記載のOLED素子形成用組成物。
  3. 前記電荷輸送材料の発光波長が465nm以下である、請求項1又は2に記載のOLED素子形成用組成物。
  4. 前記発光材料の発光波長が500nm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のOLED素子形成用組成物。
  5. 電荷輸送材料のΔEstが0.1eV以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のOLED素子形成用組成物。
  6. 発光材料と電荷輸送材料を含有するOLED素子形成用組成物であって、
    前記発光材料と電荷輸送材料とは、共にTADF性能を有し、
    前記発光材料の励起一重項エネルギーEgs1、前記電荷輸送材料の励起一重項エネルギーEhs1、及び前記電荷輸送材料の励起三重項エネルギーEht1が、以下の関係を充足する、OLED素子形成用組成物。
    (Ehs1−Egs1)/(Ehs1−Eht1)≧1.1
  7. 前記電荷輸送材料の発光波長が465nm以下である、請求項6に記載のOLED素子形成用組成物。
  8. 前記発光材料の発光波長が500nm以下である、請求項6又は7に記載のOLED素子形成用組成物。
  9. 陽極と陰極との間に、請求項1〜8のいずれか1項に記載のOLED素子形成用組成物により形成された発光層が挟持された、OLED素子。
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