JPWO2018216256A1 - 被膜および切削工具 - Google Patents

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Abstract

被膜は、基材上に形成される被膜であって、前記被膜は、1または2以上の層を含み、前記層のうち少なくとも1層は、炭窒化チタンからなるTiCN層であり、前記TiCN層は、その表面の75面積%以上を前記炭窒化チタンの粒状組織が占め、前記粒状組織は、長さが5nm以上40nm以下であって且つ幅が3nm以上30nm以下である粒子が集合した形態を有する。

Description

本発明は、被膜および切削工具に関する。本出願は、2017年5月23日に出願した日本特許出願である特願2017−101922号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載されたすべての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
切削性能に優れた切削工具として、基材の表面にTiN、TiC、TiCNなどのTi系被膜が被覆された切削工具が知られている。このようなTi系被膜の形成方法の一つとして、真空アーク蒸着法がある。たとえば特開平11−158606号公報(特許文献1)には、アーク放電の各種条件を適切に制御することにより、優れた耐摩耗性を示すTi系被膜を形成する技術が開示されている。
特開平11−158606号公報
本開示の一態様に係る被膜は、基材上に形成される被膜であって、上記被膜は、1または2以上の層を含み、上記層のうち少なくとも1層は、炭窒化チタンからなるTiCN層であり、上記TiCN層は、その表面の75面積%以上を上記炭窒化チタンの粒状組織が占め、上記粒状組織は、長さが5nm以上40nm以下であって且つ幅が3nm以上30nm以下である粒子が集合した形態を有する。
さらに本開示の一態様に係る被膜は、基材上に形成される被膜であって、上記被膜は、1または2以上の層を含み、上記層のうち少なくとも1層は、炭窒化チタンからなるTiCN層であり、上記TiCN層は、その表面の50面積%以上を上記炭窒化チタンの板状組織が占め、上記板状組織は、長さが10nm以上150nm以下であって且つ幅が1nm以上10nm以下である板片が集合した形態を有する。
本開示の一態様に係る切削工具は、上記基材を、上記被膜により被覆した切削工具である。
図1は、第1の実施形態に係る被膜の平面形態を示す図面代用写真である。 図2は、図1の実線で囲まれた部分を拡大して示す図面代用写真である。 図3は、第1の実施形態に係る被膜の断面形態を示す図面代用写真である。 図4は、図3に現れたTiCN層を拡大して示す図面代用写真である。 図5は、第2の実施形態に係る被膜の平面形態を示す図面代用写真である。 図6は、図5の実線で囲まれた部分を拡大して示す図面代用写真である。 図7は、第2の実施形態に係る被膜の断面形態を示す図面代用写真である。 図8は、図7に現れたTiCN層を拡大して示す図面代用写真である。
[本開示が解決しようとする課題]
しかし、特許文献1に開示された真空アーク蒸着法では、これにより形成されるTi系被膜の圧縮残留応力を低下させる目的で、基材に付与するバイアス電圧が抑制されている。この場合、Ti系被膜の硬度は低下する傾向がある。さらに真空アーク蒸着法では、Ti系被膜の表面粗さが劣る傾向がある。このように、未だ真空アーク蒸着法で高硬度、低圧縮応力および表面粗さの点で優れたTi系被膜を形成することは実現されておらず、その開発が切望されている。
上記実情に鑑み、本開示は、高硬度、低圧縮応力および表面粗さの点で優れた被膜および切削工具を提供することを目的とする。
[本開示の効果]
上記によれば、高硬度、低圧縮応力および表面粗さの点で優れた被膜および切削工具を提供することができる。
[本発明の実施形態の説明]
本発明者らは、従来の真空アーク蒸着法によって作製される被膜の性能には限界があると考え、High Power Impulse Magnetron Sputtering(HiPIMS)法に着目した。HiPIMS法を用いた被膜の作製に関して鋭意検討を重ねたところ、基材に印加するバイアス電圧をバイポーラバイアスにするとともに、イオンボンバードを適切に制御することによって、特徴的な形態を有する表面を含む被膜を作製可能となることを知見し、本開示に係る被膜に到達した。
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
[1]本開示の一態様に係る被膜は、基材上に形成される被膜であって、上記被膜は、1または2以上の層を含み、上記層のうち少なくとも1層は、炭窒化チタンからなるTiCN層であり、上記TiCN層は、その表面の75面積%以上を上記炭窒化チタンの粒状組織が占め、上記粒状組織は、長さが5nm以上40nm以下であって且つ幅が3nm以上30nm以下である粒子が集合した形態を有する。このような構成を有する被膜は、高硬度、低圧縮応力および表面粗さの点で優れる。
[2]上記TiCN層は、薄膜X線回折法により解析した場合の(111)面と(200)面とのピーク強度比I(111)/I(200)が1以上2以下であり、上記TiCN層は、上記(111)面のピークの半値幅から求めた結晶粒径が、150Å以上250Å以下であることが好ましい。これにより、高硬度、低圧縮応力および表面粗さの点でより優れる。
[3]本開示の一態様に係る被膜は、基材上に形成される被膜であって、上記被膜は、1または2以上の層を含み、上記層のうち少なくとも1層は、炭窒化チタンからなるTiCN層であり、上記TiCN層は、その表面の50面積%以上を上記炭窒化チタンの板状組織が占め、上記板状組織は、長さが10nm以上150nm以下であって且つ幅が1nm以上10nm以下である板片が集合した形態を有することが好ましい。これによっても、高硬度、低圧縮応力および表面粗さの点で優れる。
[4]上記TiCN層は、薄膜X線回折法により解析した場合の(111)面と(200)面とのピーク強度比I(111)/I(200)が0.4以上0.79以下であり、上記TiCN層は、上記(200)面のピークの半値幅から求めた結晶粒径が、150Å以上250Å以下であることが好ましい。これによっても、高硬度、低圧縮応力および表面粗さの点でより優れる。
[5]上記TiCN層は、アルゴンを0.1原子%以上3原子%以下含むことが好ましい。これにより、HiPIMS法を用いてより表面粗さに優れた被膜を提供することができる。
[6]上記被膜は、その膜厚が0.3μm以上10μm以下であることが好ましい。これにより、高硬度、低圧縮応力および表面粗さの点でより優れる被膜を提供することができる。
[7]本開示の一態様に係る切削工具は、上記基材を上記被膜により被覆した切削工具である。このような構成の切削工具は、高硬度、低圧縮応力および表面粗さの点で優れる被膜を有し、均一な摩耗進行による切削能力の安定性向上および工具寿命の延長に貢献することができる。
[8]上記基材は、超硬合金、サーメットおよび立方晶窒化ホウ素焼結体からなる群より選ばれる1以上を含むことが好ましい。これにより、より安定した切削性能および工具寿命の延長を果たすことができる。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の実施形態(以下「本実施形態」とも記す)についてさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。以下では図面を参照しながら説明する。
ここで、本明細書において「A〜B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。さらに、本明細書において化合物などを化学式で表す場合、原子比を特に限定しないときは従来公知のあらゆる原子比を含むものとし、必ずしも化学量論的範囲のもののみに限定されるものではない。たとえば「TiCN」と記載されている場合、TiCNを構成する原子数の比はTi:C:N=1:0.5:0.5に限られず、従来公知のあらゆる原子比が含まれる。このことは、「TiCN」以外の化合物の記載についても同様である。
[第1の実施形態]
<被膜>
第1の実施形態に係る被膜は、基材上に形成される。被膜は、1または2以上の層を含む。この層のうち少なくとも1層は、炭窒化チタンからなるTiCN層である。炭窒化チタンは、耐酸化性、耐摩耗性、耐凝着性などの特性を向上させるため、チタン以外の金属元素、たとえばB、Al、Si、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wが10原子%以下の組成比率で添加されていてもよい。
図1は、第1の実施形態に係る被膜の平面形態を示す図面代用写真である。さらに図3は、第1の実施形態に係る被膜の断面形態を示す図面代用写真である。これらの図において被膜は、基材12上に、基材12側から順に下地層としてのTiN層13および最表面層としてのTiCN層11が積層されることにより形成されている。本実施形態においてTiCN層11は、上述のとおり最表面層であるので、TiCN層11の表面111が被膜の最表面となる。ここで被膜は、基材12の全面が被覆されていてもよく、一部(たとえば切削性能に大きく寄与する領域である刃先)のみが被覆されていてもよい。
被膜は、その膜厚が0.3μm以上10μm以下であることが好ましい。被膜の膜厚が0.3μm未満である場合、耐摩耗性の点で所望の性能を得ることが困難となる傾向がある。被膜の膜厚が10μmを超える場合、残留圧縮応力が大きくなり過ぎ、切削工具に適用した場合に膜チッピングが起きやすくなる傾向がある。被膜の膜厚は、0.5μm以上8μm以下であることがより好ましく、1μm以上6μm以下であることがさらに好ましく、最も好ましくは1μm以上4μm以下である。特に、被膜は、TiCN層の膜厚が0.3μm以上10μm以下であることが好ましく、0.5μm以上8μm以下であることがより好ましく、1μm以上6μm以下であることがさらに好ましく、1μm以上4μm以下であることが最も好ましい。
被膜の膜厚は次のようにして求められる。まず、被膜の断面を含む測定試料を2つ準備する。この測定試料は、たとえば基材および該基材に被覆された被膜を、被膜の厚み方向に沿って(基材の表面に対する法線方向と平行な被膜の断面が得られるように)切断することにより得られる。この測定試料の測定面(断面)に対しては、必要に応じて研磨処理により平滑にすることが好ましい。次に観察像に、基材の刃先のR(アール)部および被膜の厚み方向の全域が含まれるように倍率を調整(たとえば15000倍程度)した上で、上記測定面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察する。このとき、2つの測定試料について上記基材の刃先のR部から100μm以内の逃げ面における被膜の膜厚を3点測定し、その平均値を被膜の膜厚とする。上記TiN層およびTiCN層の膜厚も同じ方法により求めることができる。基材の刃先のR部とは、被削材を切削する際に切削の中心部となる刃先稜線部を意味し、特に被膜の厚み方向に沿って切断した場合に、その断面に現れる刃先稜線部のことをいう。
上記測定試料を得る方法は、公知の手段を用いることができる。なかでも、被膜に被覆された基材を樹脂に埋めた後、クロスセッションポリッシャ(CP)加工装置(商品名:「IB−19500CP 断面試料作製装置」、日本電子株式会社製)を用い、イオンミーリングすることによって被膜の断面を露出させるとともに研磨し、上記測定試料を得ることが好ましい。
<TiCN層>
(ナノインデンテーション硬度)
被膜は、上述のように1または2以上の層を含み、その層のうち少なくとも1層が炭窒化チタンからなるTiCN層である。TiCN層は、そのナノインデンテーション硬度が32GPa以上42GPa以下であることが好ましい。TiCN層のナノインデンテーション硬度が上述の範囲であることにより、切削工具に適用した場合に、高硬度であって耐摩耗性に優れ、且つ耐欠損性にも優れることができる。
ナノインデンテーション硬度とは、ISO14577に規定されたナノインデンターによる硬さ試験により得られる硬度をいう。具体的には、ナノインデンテーション法が利用可能な超微小押し込み硬さ試験機(商品名:「ENT−1100a」、株式会社エリオニクス製)のBerkovich形状のナノインデンターを用いることにより測定することができる。上記形状のナノインデンターを、被膜に対して所定荷重(たとえば1g荷重)押し込み、これにより被膜(TiCN層)に形成される押し込み深さに基づいてナノインデンテーション硬度を算出する。本実施形態では、同一の被膜に対して上記ナノインデンターによる押し込みを10回行って、これらの平均値を得る。さらにその平均値について、各回で得られる測定値のうち平均値±標準偏差を超えた値を異常値として除外して再計算し、再度平均値を得る。この再計算を通じて求めた平均値を、測定対象としたTiCN層のナノインデンテーション硬度とする。TiCN層が被膜の最表面に存する場合、被膜の最表面からナノインデンターを押し込むことによってTiCN層のナノインデンテーション硬度を測定することが可能である。TiCN層が被膜の最表面に存しない場合、被膜の表面に対し5度の角度で被膜の表面を斜めに研磨し、この研磨により露出したTiCN層の表面からナノインデンターを押し込むことによってTiCN層のナノインデンテーション硬度を測定することが可能である。
TiCN層のナノインデンテーション硬度は、35GPa以上39GPa以下であることがより好ましい。TiCN層のナノインデンテーション硬度が32GPa未満である場合、所望の高い硬度を得ることが困難となる。TiCN層のナノインデンテーション硬度が42GPaを超える場合、圧縮残留応力、表面粗さなどの指標に影響が及ぶ傾向がある。
(圧縮残留応力)
TiCN層は、その圧縮残留応力が0.5GPa以上2.5GPa以下であることが好ましい。TiCN層の圧縮残留応力が上述の範囲であることにより、切削工具に適用した場合に、高い靱性を有して耐欠損性に優れ、且つ耐摩耗性にも優れることができる。
TiCN層の圧縮残留応力は、公知のX線回折を用いた2θ−sin2φプロットの傾きから測定することができる。
TiCN層の圧縮残留応力は、0.5GPa以上2GPa以下であることがより好ましい。さらに好ましくは0.75GPa以上1.5GPa以下であり、最も好ましくは、1GPa以上1.5GPa以下である。TiCN層の圧縮残留応力が0.5GPa未満である場合、所望の靱性を得ることが困難となる。TiCN層の圧縮残留応力が2.5GPaを超える場合、圧縮残留応力が入り過ぎ、切削工具に適用した場合に膜チッピングが発生しやすくなる傾向がある。
(表面粗さRa)
TiCN層は、その表面粗さRaが0.1μm以下であることが好ましい。TiCN層の表面粗さRaが上述の範囲であることにより、切削工具に適用した場合に、その平滑性によって均一な摩耗が進行することにより、切削能力の安定性が向上し、工具寿命を延長することができる。表面粗さRaの「Ra」とは、算術平均粗さをいう。
TiCN層の表面粗さRaは、TiCN層が被膜の最表面に存する場合、JIS B 0601:2001(ISO4287:1997)に規定される測定方法により求めることができる。具体的には、形状測定レーザーマイクロスコープ(「VK−Xシリーズ(VK−X110)」、株式会社キーエンス社製)を用い、以下の計測条件で基材上に形成したTiCN層の表面を測定することによって求めることができる。表面粗さRaの測定前には、傾き補正機能でイメージ処理を行なうことが好ましい。
(計測条件)
倍率 :100倍
使用機能 :複数線粗さ
複数線設定 :周囲10本、間引き20本
カットオフλs :2.5μm
カットオフλc :0.25mm
スタイラスモード :オン
スタイラス先端角度 :60°
スタイラス先端半径 :2μm
ノイズフィルター :無し。
TiCN層は、その表面粗さRaが0.08μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは、表面粗さRaは0.07μm以下であり、最も好ましくは0.06μm以下である。TiCN層の表面粗さRaの下限値は、0.005μmである。
上述した数値の表面粗さRaを有するTiCN層は、真空アーク蒸着法によって製造することは困難である。真空アーク蒸着法によって形成されたTiCN層は、ドロップレットが存在するためである。真空アーク蒸着法によって形成されたTiCN層の表面に対し、研磨などの後処理を実施することによって表面平滑性を向上させることもできるが、その場合でも上記のような高い平滑性を付与することは困難である。換言すれば、本実施形態のTiCN層は、研磨などの後処理を実施することなく、優れた平滑性を備えることができる。
(アルゴン)
さらにTiCN層は、アルゴンを0.1原子%以上3原子%以下含むことが好ましい。本実施形態のTiCN層は、HiPIMS法によって形成されることによりアルゴンを含むこととなり、高い平滑性を付与することができる。このため本実施形態のTiCN層は、真空アーク蒸着法によって形成されたTiCN層と、アルゴンの含有量によっても区別することができる。
(表面の凹凸の数)
TiCN層は、その表面100μm四方当たりの1μm以上の深さを有する凹部および1μm以上の高さを有する凸部の合計が10個未満であることが好ましい。さらに好ましくは、その表面100μm四方当たりの0.5μm以上の深さを有する凹部および0.5μm以上の高さを有する凸部の合計が10個未満である。これにより、さらに表面粗さに優れた被膜を提供することができる。
TiCN層の表面100μm四方当たりの凹部および凸部の数については、TiCN層が被膜の最表面に存する場合、上述した形状測定レーザーマイクロスコープ(「VK−Xシリーズ(VK−X110)」、株式会社キーエンス社製)に付帯した凹凸部機能を用いて測定することができる。まず100倍の倍率でTiCN層の表面(100μm×100μm)を観察する。このとき、傾き補正機能を用いて観察画像のイメージ処理を実施し、高さ閾値を「分布平均±測定したい高低差を有する凹凸」の大きさに設定した上で、対象とする凹凸の数を測定する。たとえば、高低差1μm以上の凹凸を測定する場合、まず凸部モードを選択して高さ閾値を「平均値+1μm」に設定して測定し、次いで凹部モードに変更して高さ閾値を「平均値−1μm」に設定して測定する。これにより、平均値±1μm以上の高低差を有する凹凸の数が求められる。ただし、100ピクセル以下の微小領域は測定しないように設定される。
TiCN層の表面100μm四方当たりの1μm以上の深さを有する凹部および1μm以上の高さを有する凸部の合計は、より好ましくは5個以下であり、さらに好ましくは3個以下であり、特に好ましくは0個である。TiCN層の表面100μm四方当たりの0.7μm以上の深さを有する凹部および0.7μm以上の高さを有する凸部の合計は、好ましくは10個以下であり、より好ましくは2個以下であり、さらに好ましくは1個以下であり、特に好ましくは0個である。
TiCN層の表面100μm四方当たりの0.5μm以上の深さを有する凹部および0.5μm以上の高さを有する凸部の合計は、好ましくは10個以下であり、より好ましくは2個以下であり、さらに好ましくは1個以下であり、特に好ましくは0個である。同様に、TiCN層の表面100μm四方当たりの0.3μm以上の深さを有する凹部および0.3μm以上の高さを有する凸部の合計は、好ましくは10個以下であり、より好ましくは5個以下であり、さらに好ましくは2個以下であり、特に好ましくは0個である。これらの凹凸の数も、上記の方法に準じて求めることができる。上記凹凸の深さまたは高さの下限値については、規定する意味がない。
(TiCN層の表面組織)
第1の実施形態においてTiCN層は、その表面の75面積%以上を炭窒化チタンの粒状組織が占める。この粒状組織は、長さが5nm以上40nm以下であって且つ幅が3nm以上30nm以下である粒子が集合した形態を有する。炭窒化チタンの粒状組織は、TiCN層の表面において85面積%以上を占めることがより好ましい。TiCN層の表面に占める炭窒化チタンの粒状組織の面積比率(面積%)の上限値は、100面積%である。TiCN層の表面を占める炭窒化チタンの粒状組織以外の組織としては、特定の組織を示さない粒子または不定形の組織などが考えられる。
ここで上記の長さとは、図1および図2の粒子が集合した形態を有する粒状組織において、個々の粒子における長手方向の長さをいい、上記の幅とは、上記個々の粒子における長手方向に対する垂直方向の長さをいう。図1および図2においてTiCN層11は、長さが5nm以上40nm以下であり、且つその幅が3nm以上30nm以下である粒子が集合した粒状組織をその表面111に有している。さらにTiCN層11は、このような粒状組織が表面111の75面積%以上を占めている。この場合に、被膜は高硬度、低圧縮応力および表面粗さの点でより優れることができる。
上記粒状組織の各粒子は、後述するHiPIMS法によるTiCN層の成膜を高ガス圧によりイオンボンバードが弱い条件の下で行なったために、TiCNの結晶の核が成長して生成したと考えられる。高温且つ低ガス圧の条件では、この結晶の核はそれ同士が合体する。一方、高ガス圧のイオンボンバードが弱い条件の下では、核発生密度が上昇し、且つこの結晶の核はTiCN層の表面で急冷され、合体することなくその場で存在することとなると考えられる。この場合、TiCNの結晶粒は、図3および図4に示すように、その成長方向に対して垂直方向の直径が50〜300nmの粒状晶として存在する。結晶粒が小さい場合、膜硬度が高まることがHall−Petch式から理解される。さらにイオンボンバードが弱いため圧縮残留応力を低く抑えることができる。加えて、硬度に必要な緻密性が維持される限り、イオンボンバードによる応力が低くなるように制御することができる。
TiCN層の表面は、電界放出型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いることにより観察することができる。TiCN層が被膜の最表面に存する場合、TiCN層の粒状組織における個々の粒子の長さおよび幅は、上記顕微鏡の倍率を1〜2万倍として被膜の最表面を観察した観察像に現れた視野中のすべての粒子を選択し、これらすべての長さおよび幅を測定し、その平均値により求めることができる。TiCN層が被膜の最表面に存しない場合、TiCN層よりも被膜表面側に存する層をイオンエッチングによりエッチングすることにより、TiCN層の表面を露出させた上で、上記のTiCN層が被膜の最表面に存する場合と同じ方法を用いて粒状組織における個々の粒子の長さおよび幅を求めることができる。
TiCN層の表面を占める炭窒化チタンの粒状組織の面積比率(面積%)は、上述の観察像における粒状組織部分とその他の部分とを画像解析ソフト(商品名:「Mac−View」、株式会社マウンテック製)を用いて区分けし、上記観察像における粒状組織部分の面積比率を算出することにより求めることができる。炭窒化チタンの粒状組織の面積比率(面積%)は、上述した観察像をTiCN層の表面上の3箇所から得、これらの平均値を粒状組織部分の面積比率とする。
(TiCN層の組成)
本実施形態では、TiCN層に対してX線光電子分光(XPS:X−ray Photoelectron Spectroscopy)装置(商品名:「QuanteraSXM」、アルバック・ファイ株式会社製)を用いることにより、その組成分析を行うことが好ましい。この組成分析は、JIS K 0146(2002)に準拠して行なう。具体的には、以下の条件で組成分析することにより、TiCN層に存する各組成をそれぞれ原子量(原子%)として求めることができる。TiCN層が被膜の最表面に存し、その表面に酸化層が形成されている場合、あるいはTiCN層よりも被膜の最表面側に他の層が存する場合、これらをArによりエッチングして除去した上で組成分析を行なう。
X線条件 :100μm、25W、15kV
透過エネルギー :55112eV
帯電中和 :電子+Ar
イオンガン条件 :4kV、2×2。
上述した方法により、TiCN層に存する各元素の割合を(原子%)を求めた後、これらの割合(原子%)に基づきC/N比およびTi/(C+N)比を算出することが好ましい。さらに、フリーカーボンの割合をC−C結合/C−Ti結合として算出することがより好ましい。第1の実施形態において、C/N比は、0.35〜0.55、Ti/(C+N)比は、0.79〜1.05であることが好ましい。フリーカーボンの割合であるC−C結合/C−Ti結合は、0.05(5%)以下であることが好ましく、最も好ましくは0(0%)である。
(X線回折のピーク強度比および結晶粒径)
TiCN層は、薄膜X線回折法により解析した場合の(111)面と(200)面とのピーク強度比I(111)/I(200)は1以上2以下であることが好ましい。TiCN層は、(111)面のピークの半値幅から求めた結晶粒径が、150Å以上250Å以下であることが好ましい。TiCN層における結晶粒径が、上述した粒状組織における粒子の大きさと完全には一致していないのは、測定方法が異なるからである。
TiCN層を対象とした薄膜X線回折法(grazing incidence X−ray diffraction)の条件は以下のとおりである。
X線回折装置 :「SmartLab(登録商標)」、株式会社リガク製
入射角度(ω) :1.5°
スキャン角度 :30〜60°
スキャンスピード :0.5°/min
スキャンステップ幅 :0.1°
X線源 :Cu
管電圧 :40kV
管電流 :30mA。
上記ピーク強度比I(111)/I(200)は、1.2以上1.7以下であることがより好ましい。(111)面のピークの半値幅から求めた炭窒化チタンの結晶粒径は、160Å以上220Å以下であることが好ましい。
<被膜構造>
被膜は、上述のとおり1または2以上の層を含み、上記層のうち少なくとも1層が炭窒化チタンからなるTiCN層である。したがって、被膜は、TiCN層を含む限り、TiCN層の上層もしくは下層に他の層を含んでいてもよい。さらにTiCN層と他の層とが交互に積層されていてもよい。他の層としては、たとえばAl23層、TiB2層、TiBN層、AlN層(ウルツ鉱型)、TiN層、TiBNO層、TiCNO層、TiAlN層、TiAlCN層、TiAlON層、TiAlONC層、AlCrN層などを挙げることができる。
たとえば、基材上に被膜を形成する場合、下地層としてTiN層、TiC層、TiBN層を基材の直上に含むことにより、基材と被膜との密着性を高めることができる。本実施形態において基材と被膜との密着性を高める観点から、基材の直上に下地層としてTiCN層(本開示の特徴を有さなくてもよい)を含むことも除外されない。他の層の厚みは、通常0.1〜10μmの厚みとすることが好ましい。
<切削工具>
第1の実施形態において、切削工具は、上記基材を上記被膜により被覆してなる。このような構成の切削工具は、高硬度、低圧縮応力および表面粗さの点で優れる被膜を有し、均一な摩耗進行による切削能力の安定性向上および工具寿命の延長に貢献することができる。
上記切削工具の用途としては、ドリル、エンドミル、ドリル用刃先交換型切削チップ、エンドミル用刃先交換型チップ、フライス加工用スローアウェイチップ(インサート)、旋削加工用スローアウェイチップ(インサート)、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップ、切削バイト、耐摩工具、摩擦撹拌接合用ツールなどを挙げることができる。
切削工具が刃先交換型切削チップなどである場合、基材は、チップブレーカを有するものも、有さないものも含まれる。さらに被削材を切削する際に切削の中心部となる刃先稜線部は、その形状がシャープエッジ(すくい面と逃げ面とが交差する稜)、ホーニング(シャープエッジに対してアールを付与したもの)、ネガランド(面取りをしたもの)、ホーニングとネガランドとを組み合わせたもののいずれのものも含まれる。
<基材>
基材は、工具の基材として知られる従来公知のものを特に限定なく使用することができる。たとえば、超硬合金(たとえばWC基超硬合金、WCの他、Coを含み、あるいはTi、Ta、Nbなどの炭窒化物を添加したものも含む)、サーメット(TiC、TiN、TiCNなどを主成分とするもの)、高速度鋼、セラミックス(炭化チタン、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムなど)、立方晶型窒化硼素焼結体およびダイヤモンド焼結体などが挙げられる。基材は一体形成されていてもよく、複数の部品が組み合わされたものであってもよい。
特に基材は、超硬合金、サーメットおよび立方晶窒化ホウ素焼結体からなる群より選ばれる1以上を含むことが好ましい。これらは高温における硬度と強度とのバランスに優れ、切削工具の基材として優れた特性を有するためである。
<被膜の製造方法>
本発明者らは、HiPIMS法を用いた被膜の作製に関して鋭意検討を重ねたところ、上述のように特徴的な形態を有する表面を含む被膜(特に、TiCN層)を作製可能として本開示に到達した。以下、HiPIMS法を用いることによって初めて製膜可能となった本開示のTiCN層の製膜方法について説明する。ここでは、一例として基材の直上にTiN層からなる下地層を形成した後、TiCN層を形成する場合について説明する。第1の実施形態において、被膜が下地層および化合物層の両方またはいずれか一方を有する場合、これらの層は従来公知の製膜方法により製造することができる。したがって、第1の実施形態では従来公知の製膜方法により、基材の直上にTiN層を形成すればよい。
次に、このTiN層上にHiPIMS法を用いてTiCN層を形成する。このとき、TiCN層を形成するC源(炭素源)には、CH4ガスを用いる。C22ガスを用いる場合に比べ、結晶の異常成長が抑制され、面粗さが改善されるからである。C22ガスを用いる場合、C22ガスが反応しやすいため、プラズマ中で反応することによりTiCまたはTiCNの粒子が空中(反応容器中)でダストとして形成され、これが基材に付着して異常成長する場合がある。C源は、基材付近に導入する。プラズマ中で反応することを抑制できるからである。
バイアス電圧については、バイポーラパルスバイアスとする。これにより被膜への連続的なイオンボンバードを避け、被膜内の応力を緩和することを可能としつつ、且つ被膜の緻密性を維持することができる。メタルイオン化率の高いHiPIMS法を用いることにより、バイポーラパルスバイアスによって基材に到達するメタルイオンのエネルギーを制御することができる。
特に第1の実施形態においては、Tiターゲットに印加する電力を高電力短パルスとし、Tiのイオン化率を高めた条件の下、高ガス圧で成膜することによりイオンボンバードによって膜に付与される圧縮残留応力を低減する。基板温度は、従来公知のHiPIMS法と同じとすればよい。
TiCN層は、HiPIMS装置を用いることにより基材上に形成することができる。このHiPIMS装置は、チャンバ内にTiCN層の金属原料となるTiターゲットが複数配置されている。チャンバ内に配置されるターゲットの数は特に制限すべきではない。
複数のTiターゲットの間には、回転可能なテーブルが配置され、このテーブル上に複数の基材ホルダーが配置されている。これらの基材ホルダーには、それぞれ基材が載置される。テーブル上の基材ホルダーの数およびテーブルの回転数などは特に制限すべきではない。その他チャンバ内には、基材を加熱可能なヒータが配置されている。
Tiターゲットには、パルス電力を供給するためのHiPIMS電源の負極が接続されている。HiPIMS電源の正極はアース接続されている。テーブルには、バイアス電圧を印加するためのバイアス電源の負極が電気的に接続され、バイアス電源の正極はアース接続されている。
TiCN層の成膜に際しては、TiN層を形成した基材を基材ホルダーに設置した上で、まずチャンバ内を真空にし、不活性ガス(Ar)および窒素ガスを導入する。次にテーブルに対し、バイアス電源を介してバイアス電圧を印加するとともに、ターゲットに対し、HiPIMS電源を介してパルス電力を供給することにより、HiPIMS装置に対して成膜動作を開始させる。第1の実施形態における成膜条件は以下のとおりである。後述するターゲット電力密度とは、パルスの最大電力値をターゲットの表面積で除した値をいい、後述するプラズマ電力密度とは、パルスの最大電力値をターゲット上のプラズマ面積で除した値をいう。
(成膜条件)
ターゲット :Ti
C源 :CH4
バイアス電圧 :50〜80(V)
マイナスパルス :20〜100(μs)
プラスパルス :10〜50(μs)
パルス電力 :60〜80kW
パルス幅 :0.1〜1μs
ターゲット電力密度 :340〜453kW/cm2
プラズマ電力密度 :2〜2.7kW/cm2
平均電力 :4〜7kW
Ar分圧 :1.2〜1.5Pa
基材温度 :400〜450℃
C源ガス/窒素ガス流量比:0.4〜1
窒素ガスとC源ガスとの分圧は、遷移モードで成膜するように調整。
これにより、チャンバ内にプラズマが発生し、且つTiターゲットにイオンが衝突することにより、TiターゲットからTi原子またはTiイオンが放出され、窒素原子、炭素原子と共に基材の表面に付着する。これにより、基材上(TiN層上)にTiCN層が形成される。
上述したHiPIMS法では、成膜条件の他にもチャンバ内のダストの発生を抑えることによって、TiCN層の表面の平滑性を向上させることのできる複数の操作が存在するため、これらの操作を適宜行なうことが好ましい。これらの操作とは、たとえば上記装置に対してチャンバ内の清浄度を上げること、ターゲットの前方に配置されるシャッターおよびシールド板のブラスト頻度を上げること、治具のブラスト頻度を上げること、成膜装置を設置している部屋の清浄度を向上することなどが挙げられる。さらに、成膜に際して一回のバッチ毎にターゲットに対してブラストを行なうこと、洗浄後すぐに基材をチャンバ内にセットし、バッチを開始することなどが挙げられる。膜の残留応力が高い程、ダストが多く発生するため、圧縮残留応力を低減することも表面の平滑性を向上するのに効果的となる。
以上、TiCN層の製造方法について詳述したが、HiPIMS法以外の他の方法を用いても、本実施形態の効果を奏するTiCN層を製造することは困難である。たとえば、真空アーク蒸着法を用いた場合、残留圧縮応力の緩和は起こらない。ドロプレットと呼ばれる金属液滴が発生するため面粗さが劣る傾向もある。スパッタ法を用いた場合、ボンバードによる残留応力を調整するために必要なイオン化率が達成できず、膜の密着力および緻密性を保つことが困難となる。CVD法を用いた場合、成膜される層に引張残留応力が付与される。さらに、面粗さもHiPIMS法に比べて劣位である。
[第2の実施形態]
<被膜>
図5は、第2の実施形態に係る被膜の平面形態を示す図面代用写真である。さらに図7は、第2の実施形態に係る被膜の断面形態を示す図面代用写真である。これらの図において被膜は、基材22上に、基材22側から順に下地層としてのTiN層23および最表面層としてのTiCN層21が積層されることにより形成されている。本実施形態においてTiCN層21は、上述のとおり最表面層であるので、TiCN層21の表面211が被膜の最表面となる。
第2の実施形態の被膜は、TiCN層の性状、具体的には、TiCN層の表面組織が異なる以外、第1の実施形態の被膜と同様である。以下、第1の実施形態と相違する点について詳述する。
(TiCN層の表面組織)
第2の実施形態においてTiCN層は、その表面の50面積%以上を炭窒化チタンの板状組織が占め、この板状組織は、長さが10nm以上150nm以下であって且つ幅が1nm以上10nm以下である板片が集合した形態を有することが好ましい。炭窒化チタンの板状組織は、TiCN層の表面において60面積%以上を占めることがより好ましい。TiCN層の表面に占める炭窒化チタンの板状組織の面積比率(面積%)の上限値は、100面積%である。TiCN層の表面を占める炭窒化チタンの板状組織以外の組織としては、特定の組織を示さない粒子または不定形の組織などが考えられる。
ここで上記の長さとは、図5および図6の板片が集合した形態を有する板状組織において、個々の板片における長手方向の長さをいい、上記の幅とは、上記個々の板片における長手方向に対して垂直方向の長さをいう。図5および図6においてTiCN層21は、長さが10nm以150nm以下であり、その幅が1nm以上10nm以下である板片が集合した板状組織をその表面211に有している。さらにTiCN層21は、このような板状組織が表面211の50面積%以上を占めている。この場合に、被膜は高硬度、低圧縮応力および表面粗さの点でより優れることができる。
上記板状組織の各板片は、それ自体で結晶粒を構成するのではなく、それらが集合した集合体として一つの結晶粒を構成していると考えられる。第2の実施形態では、後述するHiPIMS法により低ガス圧且つ高基材温度の条件の下で結晶粒を成長させる。このため、TiCN層の表面で発生した核は、表面での移動距離が長くなるので、核同士が合体する。各結晶は、結晶方位によって成長速度および表面エネルギーが異なるために競争的に成長し、その結果、TiCN層の表面において板片が集合した板状組織の形態として観察されると考えられる。さらに、上記板状組織は結晶粒の先端を現しているものと考えられる。第2の実施形態におけるTiCNの結晶粒は、図7および図8に示すように、その成長方向に対して垂直方向の直径が300〜700nmの比較的大きいサイズの柱状晶および直径が50〜200nmの比較的小さいサイズの柱状晶がそれぞれ存在する。第2の実施形態においてTiCN層の表面は、原子の移動距離が長いために緻密性が高まり、膜内欠陥が低減して高硬度となる。原子の移動が終わると熱力学的に安定となるので、圧縮残留応力も低く抑えることができる。
第2の実施形態におけるTiCN層の表面は、第1の実施形態と同じように、電界放出型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いることにより観察することができ、これにより板状組織における各板片の長さおよび幅を求めることができる。さらにTiCN層の表面を占める炭窒化チタンの面積比率(面積%)およびTiCN層の組成についても、第1の実施形態と同じ方法により求めることができる。第2の実施形態において、C/N比は、0.35〜0.56、Ti/(C+N)比は、0.74〜1.05であることが好ましい。フリーカーボンの割合であるC−C結合/C−Ti結合は、0.05(5%)以下であることが好ましく、最も好ましくは0(0%)である。
(X線回折のピーク強度比および結晶粒径)
TiCN層は、薄膜X線回折法により解析した場合の(111)面と(200)面とのピーク強度比I(111)/I(200)は0.4以上0.79以下であることが好ましい。TiCN層は、(200)面のピークの半値幅から求めた結晶粒径が、150Å以上250Å以下であることが好ましい。TiCN層を対象とした薄膜法X線回折の条件は第1の実施形態と同じとすることができる。
上記ピーク強度比I(111)/I(200)は、0.5以上0.7以下であることがより好ましい。(200)面のピークの半値幅から求めた炭窒化チタンの結晶粒径は、180Å以上220Å以下であることが好ましい。
<被膜の製造方法>
第2の実施形態においては、次のようなHiPIMS法を用いてTiCN層を基材上に形成する。まず成膜時の圧力を従来公知の方法と同様としつつ、第1の実施形態のHiPIMS法の条件よりも低電力長パルスとしてイオン化率を下げることによりイオンボンバードによって膜に付与される圧縮残留応力を低減する。さらに基板温度を、従来公知のHiPIMS法よりも高めて基材上における原子拡散を強化する。その他については、第1の実施形態におけるHiPIMS法の条件と同様とする。具体的には、第2の実施形態における成膜条件は以下のとおりとする。
(成膜条件)
ターゲット :Ti
C源 :CH4
バイアス電圧 :20〜40(V)
マイナスパルス :20〜100(μs)
プラスパルス :10〜50(μs)
パルス電力 :45〜60kW
パルス幅 :5〜10μs
ターゲット電力密度 :255〜340kW/cm2
プラズマ電力密度 :1.5〜2kW/cm2
平均電力 :8〜10kW
Ar分圧 :0.3〜0.5Pa
基材温度 :550〜650℃
C源ガス/窒素ガス流量比:0.4〜1
窒素ガスとC源ガスとの分圧は、遷移モードで成膜するように調整。
これにより、第2の実施形態では、チャンバ内にプラズマが発生し、且つTiターゲットにイオンが衝突することにより、TiターゲットからTi原子またはTiイオンが放出され、窒素原子、炭素原子と共に基材の表面に付着する。これにより、基材上(TiN層上)にTiCN層が形成される。
[作用]
以上により、本実施形態(第1の実施形態および第2の実施形態)に係る被膜は、高硬度、低圧縮応力および表面粗さの点で優れる。この被膜で基材を被覆した切削工具は、均一に摩耗が進行することによって切削能力が安定し、且つ工具寿命を延長することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
<基材の準備>
第1の基材として、BN2000のcBN旋削インサート(住友電工ハードメタル株式会社製、形状:2NU−DNGA150408)を準備した。さらに第2の基材として、A30N超硬のフライスインサート(住友電工ハードメタル株式会社製、形状:SEET13T3AGSN−N)を準備した。
<被膜の形成>
上記第1の基材を洗浄後、HiPIMS装置のチャンバ内のテーブル上に設置した。チャンバ内には、表1に示すように従来公知の粉末冶金により製造したTiからなる複数のTiターゲットを配置した。さらに、表1に示す条件でチャンバ内のテーブルに設置した上記基材に対して前処理(成膜前処理)を行なった。次に、HiPIMS法の従来公知の成膜条件により基材上にTiN層を形成した。
さらに表2に示す製造条件の下、C源(炭素源)にCH4ガスを用い、且つバイアス電圧についてバイポーラパルスバイアスとして、基材上(TiN層上)にTiCN層を形成した。このときアルゴンガス分圧は、1.35Paとし、C源ガス/窒素ガス流量比を0.4とした。窒素ガスとC源ガスとの分圧は、遷移モードで成膜するように調整した。
上記第2の基材についても、上述した第1の基材と同じ方法を用いることにより基材上(TiN層上)にTiCN層を形成した。
[実施例2〜実施例10]
成膜条件を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様に基材上にTiCN層を形成した。
実施例1〜実施例10では、表2に示した成膜条件および後述する表3に示した表面組織の粒/板/その他の分類から理解されるように、その表面に、炭窒化チタンの粒子が集合した粒状組織を有するTiCN層が形成された。
[実施例11〜実施例20]
成膜条件を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様に基材上にTiCN層を形成した。
実施例11〜実施例20では、表2に示した成膜条件および後述する表3に示した表面組織の粒/板/その他の分類から理解されるように、その表面に、炭窒化チタンの板片が集合した板状組織を有するTiCN層が形成された。
[比較例1]
成膜条件を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様に基材上にTiCN層を形成した。比較例1は、バイアス電圧についてバイポーラパルスバイアスとするものの、それ以外については従来のHiPIMS法の条件で基材上にTiCN層を形成した例である。
[比較例2〜比較例3]
成膜条件を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様に基材上へTiCN層を形成した。比較例2〜比較例3は、バイアス電圧について直流とする条件で基材上にTiCN層を形成した例である。
[比較例4]
成膜条件を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様に基材上にTiCN層を形成した。比較例4は、C源をC22とする条件で基材上にTiCN層を形成した例である。
[比較例5]
比較例5は、表2に示す成膜条件により真空アーク蒸着法を用いて基材上にTiCN層を形成した例である。
以上により、実施例1〜実施例20および比較例1〜比較例5に関し、それぞれ基材上に被膜を形成したcBN旋削インサートおよびフライスインサート(以下、これらをまとめて「切削工具」とも記す)を作製した。
[被膜の物性]
実施例1〜20および比較例1〜比較例5について、基材上に形成したTiCN層の物性を評価した。その結果を表3に示す。表3中の「硬度」とは、ナノインデンテーション硬度を意味し、上述した測定方法を用いて評価した。表3中の「応力」とは、残留圧縮応力を意味し、上述した測定方法を用いて評価した。「応力」の欄における「−(マイナス)」は、応力の種類が「圧縮」であることを意味する。表3中の「Ra」とは、「表面粗さRa」を意味し、上述した測定方法を用いて評価した。
表3中に示したTiCN層の物性に係る指標である「表面組織」の分類、「XRD」によるピーク強度比、結晶粒径、「アルゴン」の含有量、「凹凸(個)」の数、「XPS」による組成分析についても上述した測定方法を用いて評価した。「表面組織」の欄における「粒」とは、その表面の形態が粒状組織に分類されることを意味し、「板」とは、その表面の形態が板状組織に分類されることを意味する。「他」とは、その表面の形態が粒状組織および板状組織のいずれにも分類されなかったことを意味する。「凹凸(個)」の欄における「0.5μm以上」には、「1μm以上」のものを含んだ数で表される。
表3によれば、実施例1〜実施例20のTiCN層は、ナノインデンテーション硬度が32GPa以上42GPa以下であり、圧縮残留応力が0.5GPa以上2.5GPa以下であり、表面粗さRaが、0.1μm以下である要件をすべて満たしていた。したがって実施例1〜実施例20は、高硬度、低圧縮応力および表面粗さの点で優れた被膜を有していることが理解される。一方、比較例1〜比較例5のTiCN層は、ナノインデンテーション硬度が32GPa以上42GPa以下であり、圧縮残留応力が0.5GPa以上2.5GPa以下であり、表面粗さRaが、0.1μm以下である要件のうち少なくともいずれかを満たしていなかった。
特に、実施例1〜実施例10のTiCN層は、その表面の75面積%以上を炭窒化チタンの粒状組織が占めていた。さらに薄膜X線回折法により解析した場合、ピーク強度比I(111)/I(200)が1以上2以下であり、結晶粒径が、150Å以上250Å以下であった。
実施例11〜実施例20のTiCN層は、その表面の50面積%以上を炭窒化チタンの板状組織が占めていた。さらに薄膜X線回折法により解析した場合、ピーク強度比I(111)/I(200)が0.4以上0.79以下であり、結晶粒径が、150Å以上250Å以下であった。
[切削試験]
さらに、実施例1〜実施例20および比較例1〜比較例5の切削工具であるcBN旋削インサートおよびフライスインサートに対し、それぞれ切削試験(耐摩耗試験)を実施したので、以下、その結果について説明する。
<cBN旋削インサート>
実施例1〜実施例20および比較例1〜比較例5のcBN旋削インサートに対し、下記の切削条件の下で、切削距離10km時点での逃げ面摩耗幅Vbおよび被削材の面粗さRzを評価した。その結果を表4に示す。逃げ面摩耗幅Vbは、その数値が小さい程、cBN旋削インサートの被膜が高硬度で耐摩耗性が高いと理解される。被削材の面粗さRzは、その数値が小さい程、cBN旋削インサートの被膜が平滑であると理解される。表面粗さRzの「Rz」とは、JIS B 0601における最大高さ粗さを示す。
表4には、実施例1〜実施例20および比較例1〜比較例5のcBN旋削インサートにおいて基材上に形成したTiCN層の刃先部分(R部から100μm以内)の膜厚(平均値)についても表した。
ここで実施例1〜実施例20のcBN旋削インサートにおける刃先部分のTiCN層の膜厚は、次のとおりとした。すなわち、cBNは加工しにくく、その断面を観察する測定試料を得ることが難しいため、上記cBN旋削インサートと同型の超硬工具の基材に対し表2に示した成膜条件によりTiCN層を被覆し、その膜厚を上述した測定方法により測定することにより、cBN旋削インサートにおける刃先部分のTiCN層の膜厚とした。この膜厚の測定は、上記超硬工具のR(アール)部、ネガランドを除いた稜線から100μm以内の逃げ面の3箇所において行ない、これらの測定値の平均値とした。
(切削条件)
被削材 :SCM415浸炭焼き入れ鋼(HRC>58の表面層のみ切削)
切削速度 :200m/min.
送り量 :0.1mm/rev.
切り込み量 :0.1mm
切削油 :なし。
表4によれば、実施例1〜実施例20のcBN旋削インサートは、いずれもVbが39μm以下であり、Rzが4.1μm以下であった。これに対し、比較例1〜比較例5のcBN旋削インサートは、いずれもVbが少なくとも48μm以上であり、Rzが4.9μm以上であった。したがって実施例1〜実施例20は、均一な摩耗が進行していると理解され、切削能力の安定性が向上し、工具寿命が延長できるものと期待される。
<フライスインサート>
実施例1〜実施例20および比較例1〜比較例5のフライスインサートに対し、下記の切削条件の下で、逃げ面摩耗幅Vbが0.2mmに到達した時点を工具寿命と定義し、この寿命に至るまでの切削長(m)および切削回数(パス数:1パスで0.3m切削)を評価した。その結果も表4に示す。表4には、実施例1〜実施例20および比較例1〜比較例5のフライスインサートにおいて基材上に形成したTiCN層の刃先部分の膜厚についても表した。この膜厚の測定方法は、上述したとおりである。
(切削条件)
被削材 :SCM435
切削速度 :230m/min.
送り量 :0.3mm/rev.
切り込み量 :2mm
切削油 :なし。
表4によれば、実施例1〜実施例20のフライスインサートは、いずれも12.0m以上の寿命を有し、40回以上のパス数を有していた。これに対し、比較例1〜比較例5のフライスインサートは、いずれも9.9m以下の寿命を有し、33回以下のパス数を有していた。したがって実施例1〜実施例20は、工具寿命が延長されていることが理解される。この理由は、被膜が高硬度、低圧縮応力および表面粗さの点でより優れることにより均一な摩耗が進行し、もって切削性能の安定性が向上したことによるものと考えられる。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
11、21 TiCN層、 111、211 表面、 12、22 基材、 13、23 TiN層。

Claims (8)

  1. 基材上に形成される被膜であって、
    前記被膜は、1または2以上の層を含み、
    前記層のうち少なくとも1層は、炭窒化チタンからなるTiCN層であり、
    前記TiCN層は、その表面の75面積%以上を前記炭窒化チタンの粒状組織が占め、
    前記粒状組織は、長さが5nm以上40nm以下であって且つ幅が3nm以上30nm以下である粒子が集合した形態を有する、被膜。
  2. 前記TiCN層は、薄膜X線回折法により解析した場合の(111)面と(200)面とのピーク強度比I(111)/I(200)が1以上2以下であり、
    前記TiCN層は、前記(111)面のピークの半値幅から求めた結晶粒径が、150Å以上250Å以下である、請求項1に記載の被膜。
  3. 基材上に形成される被膜であって、
    前記被膜は、1または2以上の層を含み、
    前記層のうち少なくとも1層は、炭窒化チタンからなるTiCN層であり、
    前記TiCN層は、その表面の50面積%以上を前記炭窒化チタンの板状組織が占め、
    前記板状組織は、長さが10nm以上150nm以下であって且つ幅が1nm以上10nm以下である板片が集合した形態を有する、被膜。
  4. 前記TiCN層は、薄膜X線回折法により解析した場合の(111)面と(200)面とのピーク強度比I(111)/I(200)が0.4以上0.79以下であり、
    前記TiCN層は、前記(200)面のピークの半値幅から求めた結晶粒径が、150Å以上250Å以下である、請求項3に記載の被膜。
  5. 前記TiCN層は、アルゴンを0.1原子%以上3原子%以下含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の被膜。
  6. 前記被膜は、その膜厚が0.3μm以上10μm以下である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の被膜。
  7. 前記基材を、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の被膜により被覆した、切削工具。
  8. 前記基材は、超硬合金、サーメットおよび立方晶窒化ホウ素焼結体からなる群より選ばれる1以上を含む、請求項7に記載の切削工具。
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