JPWO2018105119A1 - 樹脂成形品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

樹脂成形品の製造方法は、繊維材料に基材用樹脂を含有し且つ平均厚みが0.05mm〜0.5mmである基材を一対の金型間に形成されるキャビティ内に設置する設置工程と、前記キャビティ内に射出用樹脂を射出する射出工程と、を有する。

Description

本発明は、樹脂成形品の製造方法に関する。
繊維強化樹脂で成形された樹脂成形品は、金属に比べて、軽量で機械的強度に優れること、成形自由度が高く意匠性に優れること等から、車両用構造部品、車両搭載用品、電子機器の筐体等として幅広く用いられている。
繊維強化樹脂を用いた樹脂成形品の成形方法としては、例えば、特開2012−86556号公報に記載の方法が知られている。この公報では、強化繊維に樹脂を含浸させた基材を一対の金型のキャビティ内に配置し、その後、熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出して、基材と熱可塑性樹脂を一体に成形している。
ところで、基材と熱可塑性樹脂をより早く密着させるため、基材を予め加熱(予備加熱)しておく技術が知られている。しかしながら、予備加熱をすることで樹脂成形品の成形時間が長くなり、更に加熱のための各種設備投資が必要となる。また、予備加熱で融点以上に加熱した基材が金型で冷却されると、樹脂成形品の意匠面の外観不具合が懸念される。
そこで、本発明は、意匠面の外観不具合を抑制しつつ、成形時間を短縮できる樹脂成形品の製造方法を提供する。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、次の実施の形態を含む。
<1> 繊維材料に基材用樹脂を含有し且つ平均厚みが0.05mm〜0.5mmである基材を一対の金型間に形成されるキャビティ内に設置する設置工程と、前記キャビティ内に射出用樹脂を射出する射出工程と、有する樹脂成形品の製造方法。
<2> 前記射出工程では、前記射出用樹脂を前記基材に向かって射出する、<1>に記載の樹脂成形品の製造方法。
<3> 前記射出用樹脂の射出圧力が、1MPa〜100MPaの範囲内に設定されている、<2>に記載の樹脂成形品の製造方法。
<4> 前記設置工程において、少なくとも前記基材が設置される側の前記金型の温度が前記基材用樹脂の溶融温度未満とされている、<1>〜<3>のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。
<5> 前記射出工程の前に、一対の前記金型間の間隔が第1の間隔となるように型閉じする型閉じ工程と、前記射出工程の後に、一対の前記金型の間隔が前記第1の間隔よりも狭い第2の間隔となるように前記射出用樹脂を圧縮する圧縮工程と、をさらに有する、<1>〜<4>のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。
<6> 前記型閉じ工程における一対の前記金型間の間隔が0.3mm〜60mmの範囲内に設定されている、<5>に記載の樹脂成形品の製造方法。
<7> 前記圧縮工程における前記射出用樹脂の圧縮速度が0.5mm/s〜100mm/sの範囲内に設定されている、<5>又は<6>に記載の樹脂成形品の製造方法。
<8> 前記射出用樹脂は、前記基材用樹脂と相溶性が高い、<1>〜<7>のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。
<9> 前記基材用樹脂及び前記射出用樹脂が熱可塑性樹脂である、<1>〜<8>のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。
<10> 前記熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン樹脂である、<9>に記載の樹脂成形品の製造方法。
本発明によれば、意匠面の外観不具合を抑制しつつ、成形時間を短縮できる樹脂成形品の製造方法を提供することが可能となる。
第1実施形態の樹脂成形品の製造方法において一方の金型に基材を配置した状態を示す金型断面図である。 図1に示される一対の金型を型閉じした状態を示す金型断面図である。 図2に示される一対の金型間のキャビティに射出用樹脂を射出した状態を示す金型断面図である。 図3に示される一対の金型を型開きして樹脂成形品を脱型した状態を示す金型断面図である。 第2実施形態の樹脂成形品の製造方法において一方の金型に基材を配置した状態を示す金型断面図である。 図5に示される一対の金型を所定間隔をあけて型閉じした状態を示す金型断面図である。 図6に示される一対の金型間のキャビティに射出用樹脂を射出した状態を示す金型断面図である。 図7に示される一対の金型間の間隔をさらに狭めて射出用樹脂を圧縮した状態を示す金型断面図である。 図8に示される一対の金型を型開きして樹脂成形品を脱型した状態を示す金型断面図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「〜」を用いて示された数値範囲には、「〜」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において組成物中の各成分の含有率又は含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
まず、第1実施形態の樹脂成形品の製造方法によって製造される樹脂成形品について説明し、次に、第1実施形態の樹脂成形品の製造方法で用いられる製造装置について説明し、その後、第1実施形態の樹脂成形品の製造方法について説明する。なお、以下では、樹脂成形品及び製造装置の具体例を、図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、各図における各部位の大きさは概念的なものであり、各部位間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
<樹脂成形品>
本実施形態の樹脂成形品の製造方法で製造される樹脂成形品20は、図4に示されるように、表面が意匠面20Aとされている。また、樹脂成形品20は、意匠面20Aを構成する表面22Aを有する基材22と、基材22の表面22Aと反対側の裏面22Bに一体的に重ねられた樹脂層24とを備えている。この基材22は、繊維材料に基材用樹脂を含有させて形成されている。また、樹脂層24は、射出用樹脂で形成されている。
なお、本実施形態では樹脂成形品20の表面を意匠面20Aとしているが、本発明はこの構成に限定されず、樹脂成形品20の表面が意匠面である必要はない。
樹脂成形品20は、例えば、自動車用部品として用いることができる。なお、樹脂成形品20の用途は、自動車用部品に限定されない。
また、基材22を構成する繊維材料及び基材用樹脂については後述する。同様に樹脂層24を構成する射出用樹脂についても後述する。
<樹脂成形品の製造装置>
本実施形態の樹脂成形品の製造方法で用いられる製造装置30は、一対の金型32、34を備えている。金型32と金型34は、型開閉方向に相対移動可能とされており、型閉じ状態では両者の間に空隙であるキャビティ36が形成される。なお、本実施形態では、金型32が固定されており、金型34が金型32に対して型開閉方向に移動可能とされている。このため、図中では、型閉じ方向を矢印Xで示している。また、本発明はこの構成に限定されるものではない。金型34を固定し、金型32を金型34に対して型開閉方向に移動可能な構成としてもよいし、金型32と金型34をそれぞれ両者が接近及び離間する方向に移動可能な構成としてもよい。
本実施形態では、金型32に形成されるキャビティ面32Aによって、樹脂成形品20の意匠面20A(樹脂成形品20の表面)が形成される。なお、キャビティ36は、金型32と金型34を型閉じした状態におけるキャビティ面32Aと金型34に形成されるキャビティ面34Aとの間の空隙である。
また、製造装置30は、金型34を貫通してキャビティ36に至るゲート38と、ゲート38を通じてキャビティ36に溶融状態の射出用樹脂を射出する射出機40と、を備えている。射出機40は、図示しないホッパ(供給部)と図示しないシリンダとを備えている。この射出機40では、樹脂、添加剤等を含有する混合物がホッパ(供給部)からシリンダに供給され、シリンダ内にてスクリュー等で攪拌されて射出用樹脂として調製され、後述する所定の圧力でゲート38を通じて射出用樹脂をキャビティ36内に射出充填する。なお、射出機40は、ゲート38を通じてキャビティ36に溶融状態の射出用樹脂を射出充填できれば、上記構成に限定されるものではない。
<樹脂成形品の製造方法>
本実施形態の樹脂成形品の製造方法は、繊維材料に基材用樹脂を含有し且つ平均厚みが0.05mm〜0.5mmである基材を一対の金型間に形成されるキャビティ内に設置する設置工程と、前記キャビティ内に射出用樹脂を射出する射出工程と、を有する。
(設置工程)
まず、図1に示されるように、繊維材料に基材用樹脂を含有した基材22を用意する。この基材22の平均厚みTは、0.05mm〜0.5mmの範囲内に設定することが好ましく、0.15mm〜0.4mmの範囲内に設定することがさらに好ましい。なお、基材22の平均厚み(厚みの平均値ともいう)Tは、5点の厚みを測定し、その算術平均値として与えられる値とする。基材22の厚みは、マイクロメーター、渦電流式膜厚計、電子顕微鏡等を用いて測定することができる。本実施形態において、基材22の厚みを直接測定可能な場合には、マイクロメーターを用いて測定する。
次に、用意した基材を金型32のキャビティ面32Aに設置する。その後、図2に示されるように、金型32と金型34を型閉じする。これにより、一対の金型32、34間のキャビティ36内に基材22が設置される。
(射出工程)
次に、図3に示されるように、射出機40からゲート38を通じて、射出用樹脂をキャビティ36内に射出する。このとき、射出用樹脂を基材22に向かって射出することが好ましい。なお、本開示において「基材に向かって射出」とは、射出される射出用樹脂が、基材の金型に接していない面(金型とは反対側の面(裏面22B))に対して、樹脂を直接当てられるようにするものであり、基材の側面(厚み方向と直交方向の面)に射出用樹脂を当てることは除く。
また、射出用樹脂の射出方向Yは、基材22の裏面22Bとの間の角度θを45度〜90度の範囲内に設定することが好ましく、角度θを80度〜90度の範囲内に設定することがさらに好ましい。また、射出用樹脂の射出圧力は、1MPa〜100MPaの範囲内に設定することが好ましく、2MPa〜50MPaの範囲内に設定することがより好ましく、15MPa〜50MPaの範囲内に設定することがさらに好ましい。
ここで、キャビティ36内に射出用樹脂が射出されると、射出用樹脂の熱によって基材22が加熱溶融される。これにより、基材22の裏面22Bにおいて基材用樹脂と射出用樹脂が混ざり合って一体となる。
基材用樹脂及び射出用樹脂が冷却された後は、図4に示されるように、金型32、34から脱型することで樹脂成形品20が得られる。
ここで、基材22を構成する繊維材料は、無機繊維、有機繊維、無機繊維と有機繊維の複合繊維、及び無機繊維と有機繊維の混紡繊維のいずれであってもよい。
また、有機繊維としては、アラミド繊維、セルロース繊維、ポリプロピレン繊維(自己補強タイプ)、ポリエステル繊維等が挙げられる。
一方、無機繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維、竹繊維等が挙げられる。特にガラス繊維を用いることが物性(基材への含有量)及びコストの観点から好ましい。
また、繊維材料は、織布又は不織布として用いてもよい。なお、繊維材料を織布又は不織布として用いる場合、目付け量は、20g/m〜1000g/mの範囲内に設定することが好ましく、50g/m〜700g/mの範囲内に設定することがさらに好ましい。一例ではあるが、ガラス繊維の目付け量を410g/mとした場合、含有する基材樹脂としてのポリプロピレン樹脂は20質量部〜30質量部程度になると予想される。
基材用樹脂及び射出用樹脂は、それぞれ熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂のいずれであってもよい。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン(PP)樹脂等のポリオレフィン樹脂;脂肪族ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、半芳香族ポリアミド樹脂等のポリアミド樹脂;ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂(PC);ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ABS樹脂;熱可塑性エポキシ樹脂等が挙げられる。
成形時間を短縮できるという観点からは、熱可塑性樹脂が好ましく、安価で耐薬品性に優れ、耐熱性、機械的特性等に優れる観点からは、ポリプロピレン樹脂、ポリプロピレン樹脂とアルキルフェノール樹脂とを反応させ得られた変性ポリプロピレン樹脂等がより好ましい。
ポリプロピレン樹脂とは、プロピレンの重合体であり、他のモノマーとの共重合体も包含される。他のモノマーとしては、エチレン、プロピレン、4〜10のαオレフィン等が挙げられる。他のモノマーとの共重合体は、ブロック共重合体であっても、ランダム共重合体であってもよい。
アルキルフェノール樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。ポリプロピレン樹脂とアルキルフェノール樹脂とを反応させる方法は特に限定されず、パーオキサイド化合物をラジカル開始剤として用いて反応させる方法が挙げられる。
また、成形後の密着性の観点から、基材用樹脂と射出用樹脂とは、相溶性が高いことが好ましい。相溶性が高いとは、それぞれの溶解性パラメータ(SP値、Solubility Parameter値)の差が、1未満であることをいい、0.5以下であることが好ましい。SP値の詳細については、“ジャーナル・オブ・アプライド・ケミストリー(Journal of Applied Chemistry)、3巻、71〜80頁(1953年)”を参照することができ、下記式(1)により算出される。
SP値=ΣFi/V=ρ・ΣFi/M (1)
式(1)において、Fiは、分子を構成する原子又は原子団、結合型など構成グループのモル吸引力、Vはモル容積、ρは密度をそれぞれ示す。Mは分子量を示し、高分子の場合は繰り返し単位(つまりモノマー単位)の分子量を示す。Fiの値は、上記の文献に記載されているSmallの値を用いる。共重合体のρ、ΣFi及びMについては、共重合体を構成するモノマー単位の各単独重合体のρ、ΣFi又はMの数値にモノマー単位のモル分率を乗じたものの和を算出して用いる。例えば、ポリプロピレン樹脂のSP値は、16.4(MJ/m1/2である。
相溶性が高い樹脂の組み合わせとしては、例えば、次のものが挙げられる。
ポリプロピレン(PP)同士
ポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)
アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)とアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)
ABSとポリスチレン(PS)
PEとブチルゴム
また、基材用樹脂と射出用樹脂は同じ樹脂でも異なる樹脂でも構わないが、上記相溶性の観点からは、基材用樹脂と射出用樹脂は同じ樹脂であることが好ましい。
また、射出用樹脂に繊維材料を混合した状態で射出工程においてキャビティ36内に射出してもよい。なお、射出用樹脂に混合する繊維材料は、基材22に用いる繊維材料と同じでも異なっていてもよい。
さらに、基材用樹脂及び射出用樹脂は、成形時間の観点から、熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、特にポリプロピレン樹脂(PP)を用いることが、コスト、耐薬品性、耐熱性、機械的特性等の観点から好ましく、生産性とコストを両立しやすい。
また、設置工程において基材22が設置される金型32の温度(表面温度)は、基材用樹脂の溶融温度未満とされていることが好ましい。
次に、第1実施形態の作用効果について説明する。
第1実施形態では、平均厚みTが0.05mm〜0.5mmの範囲内の基材22を用いるため、予備加熱を実施しなくても、射出用樹脂の熱で基材22の裏面22Bを溶融状態にすることができ、一体成形可能となる。このように予備加熱を行わなくともよいため、成形時間(成形サイクルともいう)を短縮できる。また、予備加熱を行わなくともよいため、基材22の意匠面20Aを構成する部分の外観不具合の発生が抑制される。
さらに、平均厚みTが0.05mm〜0.5mmの範囲内の基材22を用いるため、射出樹脂の射出圧力で基材22の形状を金型形状に合わせやすくなる。すなわち、賦形性が向上する。
なお、ここでいう「予備加熱」とは、基材用樹脂の溶融温度以上に基材を加熱することを意味する。
また、基材22に向かって射出用樹脂を射出する場合、基材22の裏面22Bをより速く溶融状態にすることができる。
また、射出用樹脂の射出方向の角度θを45度〜90度の範囲内に設定した場合、射出圧によって基材22のずれが生じるのを抑えられる。
射出用樹脂の射出圧力を1MPa〜100MPaの範囲内に設定した場合、基材22の繊維の乱れを抑制することができ、意匠面20Aの外観不具合を抑えることができる。
また、基材22が設置される金型32の温度を基材用樹脂の溶融温度未満に設定した場合、基材22の意匠面20Aとなる表面22Aが加熱され過ぎないため、外観不具合が抑えられる。
次に、第2実施形態の樹脂成形品の製造方法について説明する。
(設置工程)
まず、図5に示されるように、第1実施形態と同じ構成の基材22を用意する。この基材22を金型32のキャビティ面32Aに設置する。その後、金型34を型閉じ方向に移動させる。これにより、一対の金型32、34間のキャビティ36内に基材22が設置される。
(型閉じ工程)
次に、図6に示されるように、金型32と金型34との間隔が第1間隔L1となるように金型34を型閉じ方向に移動させる。
(射出工程)
次に、図7に示されるように、射出機40からゲート38を通じて、射出用樹脂をキャビティ36内に射出する。
(圧縮工程)
次に、図8に示されるように、一対の金型32、34の間隔が第1間隔L1よりも狭い第2間隔L2となるようにキャビティ36内の射出用樹脂を圧縮する。この第1間隔L1は、0.3mm〜60mmの範囲内に設定されることが好ましく、0.5mm〜50mmの範囲内に設定されることがより好ましく、1mm〜5mmの範囲内に設定されることがさらに好ましい。また、圧縮工程における射出用樹脂の圧縮速度(金型34の移動速度)は、0.5mm/s〜100mm/sの範囲内に設定されることが好ましく、1mm/s〜50mm/sの範囲内に設定されることがより好ましく、10mm/s〜50mm/sの範囲内に設定されることがさらに好ましい。
基材用樹脂及び射出用樹脂が冷却された後は、図9に示されるように、金型32、34から脱型することで樹脂成形品20が得られる。
次に、第2実施形態の作用効果について説明する。なお、第1実施形態と同じ構成で得られる作用効果についてはその説明を省略する。
第2実施形態では、圧縮工程で射出用樹脂を製品形状に成形するため、射出用樹脂の射出圧力を低く設定することが可能である。射出用樹脂の射出圧力を低く設定した場合、基材22内の繊維が乱れるのが抑制され、樹脂成形品20の外観不具合が抑制される。
また、第1間隔L1を0.3mm〜60mmの範囲内に設定する場合、射出工程時において、基材22の剥がれを抑えることができる。また、ショートショットの発生を抑えることができる。なお、第1間隔L1が0.3mm未満の場合、射出用樹脂の量を十分に得られず、基材22の裏面22Bを溶融状態にするほどの熱量が得られず、また、射出用樹脂の流動性が低下する。一方、第1間隔L1が60mmを超えると、成形時間が長くなる。
さらに、射出用樹脂の圧縮速度を0.5mm/s〜100mm/sの範囲内に設定する場合、金型32、34の設計コストを抑えることができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例で使用した材料は以下のとおりである。
(射出用樹脂)
・ガラス繊維強化PP:住友化学社製、製品名:スミストランPG5003−2
(基材用樹脂)
・PP:日立化成配合PP、製品名:A材:溶融温度164℃
(繊維材料)
・ガラス繊維:日本電気硝子社製、ガラス種類:Eガラス、繊維径:17μm
実施例及び比較例の樹脂成形品は、220mm×280mmの平板である。
その他の製造条件については、表1、表2に示す。
[評価]
実施例1〜10及び比較例1、2の樹脂成形品について、密着性、基材ずれ、外観性、充填性、賦形性及び成形時間について評価した。
(密着性)
樹脂成形品を切断し、その断面を目視で観察して、基材と樹脂層の密着性を下記評価基準にしたがって評価した。
〜評価基準〜
A:基材と樹脂層との界面が隙間なく密着している。
B:基材と樹脂層との界面に隙間(密着していない部分)が一部存在した。
(基材ずれ)
樹脂成形品を面直方向から目視で観察して、樹脂成形品中の基材の位置が許容値を超えてずれている頻度を下記評価基準にしたがって評価した。なお、ここでいう、許容値を超えてずれているとは、樹脂成形品に対して基材の位置が10mm以上ずれているものを指す。
〜評価基準〜
A:100個の樹脂成形品のうち、基材の位置が許容値を超えてずれていない樹脂成形品が80個以上である。
B:100個の樹脂成形品のうち、基材の位置が許容値を超えてずれていない樹脂成形品が80個未満である。
(外観性)
樹脂成形品の外観を目視で観察して、意匠面がきれいで且つ繊維のずれがないことを下記評価基準にしたがって評価した。
〜評価基準〜
A:100個の樹脂成形品のうち、意匠面がきれいで且つ繊維のずれがない樹脂成形品が90個を超えている
B:100個の樹脂成形品のうち、意匠面がきれいで且つ繊維のずれがない樹脂成形品が90個以下である。
(充填性)
樹脂成形品の外観を目視で観察して、ショートショットが抑制され且つキャビティ内の端まで樹脂が充填されていることを下記評価基準にしたがって評価した。
A:樹脂成形品が充填不足且つショートショットによる欠けがない。
B:樹脂成形品が充填不足による欠け、又は、ショートショットによる欠けのうちいずれかが抑制できていない。
(賦形性)
樹脂成形品の外観を目視で観察して、リブ等の形状が賦形できているかを下記評価基準にしたがって評価した。
〜評価基準〜
A:樹脂成形品の形状が金型のキャビティに合わせた形状に賦形されている。
B:樹脂成形品の形状が金型のキャビティに合わせた形状と一部異なる。
(成形時間)
樹脂成形品を1個成形するのにかかる時間を下記評価基準にしたがって評価した。
〜評価基準〜
A:樹脂成形品の成形時間が1個当たり20秒以下である。
B:樹脂成形品の成形時間が1個当たり20秒を超えて40秒未満の範囲内である。
C:樹脂成形品の成形時間が1個当たり40秒以上である。
(コスト)
〜評価基準〜
A:予備加熱の追加設備が不要。
C:予備加熱の追加設備が必要。
表1、表2に示すように、基材の平均厚みを0.05mm〜0.5mmの範囲内に設定することで、外観性及び成形時間が向上している。特に、基材の平均厚みを0.05mm〜0.5mmの範囲外に設定した比較例1に対しても賦形性及び成形時間が向上していることが分かる。
本発明は、上述のような実施形態の具体的構成に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することができる。

Claims (10)

  1. 繊維材料に基材用樹脂を含有し且つ平均厚みが0.05mm〜0.5mmである基材を一対の金型間に形成されるキャビティ内に設置する設置工程と、
    前記キャビティ内に射出用樹脂を射出する射出工程と、
    有する樹脂成形品の製造方法。
  2. 前記射出工程では、前記射出用樹脂を前記基材に向かって射出する、請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法。
  3. 前記射出用樹脂の射出圧力が、1MPa〜100MPaの範囲内に設定されている、請求項2に記載の樹脂成形品の製造方法。
  4. 前記設置工程において、少なくとも前記基材が設置される側の前記金型の温度が前記基材用樹脂の溶融温度未満とされている、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。
  5. 前記射出工程の前に、一対の前記金型間の間隔が第1の間隔となるように型閉じする型閉じ工程と、
    前記射出工程の後に、一対の前記金型の間隔が前記第1の間隔よりも狭い第2の間隔となるように前記射出用樹脂を圧縮する圧縮工程と、
    をさらに有する、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。
  6. 前記型閉じ工程における一対の前記金型間の間隔が0.3mm〜60mmの範囲内に設定されている、請求項5に記載の樹脂成形品の製造方法。
  7. 前記圧縮工程における前記射出用樹脂の圧縮速度が0.5mm/s〜100mm/sの範囲内に設定されている、請求項5又は請求項6に記載の樹脂成形品の製造方法。
  8. 前記射出用樹脂は、前記基材用樹脂と相溶性が高い、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。
  9. 前記基材用樹脂及び前記射出用樹脂が熱可塑性樹脂である、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の樹脂成形品の製造方法。
  10. 前記熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン樹脂である、請求項9に記載の樹脂成形品の製造方法。
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