(1)核酸分子
本発明の核酸分子は、前述のように、下記(a)または(b)のいずれかのポリヌクレオチドを含むことを特徴とする、乳由来αカゼインに結合する核酸分子である。
(a)配列番号1、2もしくは4の塩基配列または配列番号1、2もしくは4の塩基配列の部分配列からなるポリヌクレオチド
(b)前記(a)の塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、乳由来αカゼインに結合するポリヌクレオチド
本発明において、ターゲットは、乳由来αカゼインである。前記乳の由来は、例えば、牛、ヤギ等である。乳由来αカゼインは、例えば、牛乳由来αカゼインである。本発明の核酸について、例えば、結合能を確認するためのαカゼインとして、市販のαカゼインが使用でき、具体例として、牛乳由来のαカゼイン(C6780-19、SIGMA社製)が例示できる。αカゼインは、例えば、未変性アレルゲンである。本発明において、以下、乳由来αカゼインは、単にαカゼインともいう。
本発明の核酸分子は、前述のように、αカゼインに結合可能である。本発明において、「αカゼインに結合する」とは、例えば、αカゼインに対する結合性を有している、または、αカゼインに対する結合活性を有しているともいう。本発明の核酸分子とαカゼインとの結合は、例えば、表面プラズモン共鳴分子相互作用(SPR;Surface Plasmon resonance)解析等により決定できる。前記解析は、例えば、BIACORE3000(商品名、GE Healthcare UK Ltd.)が使用できる。本発明の核酸分子は、αカゼインに結合することから、例えば、αカゼインの検出に使用できる。
本発明の核酸分子は、αカゼインに対する結合力を示す解離定数が、例えば、20nmol/L以下、17nmol/L以下、13nmol/L以下、9nmol/L以下、7nmol/L以下である。
本発明の核酸分子は、DNA分子、またはDNAアプタマーともいう。本発明の核酸分子は、例えば、前記(a)または(b)のポリヌクレオチドからなる分子でもよいし、前記ポリヌクレオチドを含む分子でもよい。
前記(a)のポリヌクレオチドは、例えば、前記配列番号1、2または4の塩基配列を含むポリヌクレオチドでもよいし、前記配列番号1、2または4の塩基配列からなるポリヌクレオチドでもよく、また、前記配列番号1、2または4の塩基配列の部分配列を含むポリヌクレオチドでもよいし、前記部分配列からなるポリヌクレオチドでもよい。前記部分配列は、特に制限されず、例えば、元の配列から、5’末端および3’末端の少なくとも一方の配列を欠失した配列でもよいし、中間領域の配列を欠失した配列でもよい。前記配列番号1、2または4のポリヌクレオチドを以下に示す。
aCas392BR8m2(配列番号1)
GGTATGGAGGCAAGTCCCAATTCTAAGAAGTGGAGTAGGTGGGTTTAAGGATACGTTTCAGCCAGACAGGGTTTATG
aCas757BR8m3(配列番号2)
GGATAGCAGCAGGGACCTCTTATACGTCGGTGCTGGTGTTGTATAGACCCCCTTATATTATAACCGAATGATTTGCCCGCTACGATATG
aCas757BR8m4(配列番号4)
GGATAGCAGCAGGGACCTCTTATACCTGAGCGGCTCATTACCCTTCCGACTGGTCGCCCGCTTACCGAATGATTTGCCCGCTACGATATG
前記配列番号2の部分配列は、特に制限されないが、例えば、配列番号3、6、8および9の塩基配列があげられる。前記配列番号6の塩基配列は、前記配列番号3の塩基配列を、さらに小型化した配列である。
aCas757BR8m3s69(配列番号3)
GGATAGCAGCAGGGACCTCTTATACGTCGGTGCTGGTGTTGTATAGACCCCCTTATATTATAACCGAAT
aCas757BR8m3s63(配列番号6)
GGATAGCAGCAGGGACCTCTTATACGTCGGTGCTGGTGTTGTATAGACCCCCTTATATTATAA
aCas757BR8m3s63b(配列番号8)
GGATAGACCTCTTATACGTCTGTTGTATAGACCCCCTTATATTATAA
aCas757BR8m3s63c(配列番号9)
GGATAGCAGCACTCTTATACTGCTGGTGTTGTATAGACCCCCTTATATTATAA
前記配列番号4の部分配列は、特に制限されないが、例えば、配列番号5および7の塩基配列があげられる。
aCas757BR8m4s62(配列番号5)
GGATAGCAGCAGGGACCTCTTATACCTGAGCGGCTCATTACCCTTCCGACTGGTCGCCCGCT
aCas757BR8m4s44(配列番号7)
TTATACCTGAGCGGCTCATTACCCTTCCGACTGGTCGCCCGCTC
前記(b)において、「同一性」は、特に制限されず、例えば、前記(b)のポリヌクレオチドが、αカゼインに結合する範囲であればよい。前記同一性は、例えば、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、96%以上、97%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。前記同一性は、例えば、BLAST、FASTA等の解析ソフトウェアを用いて、デフォルトのパラメータにより算出できる(以下、同様)。
本発明の核酸分子における前記ポリヌクレオチドは、例えば、下記(c)のポリヌクレオチドでもよい。この場合、本発明の核酸分子は、例えば、前記(c)のポリヌクレオチドからなる分子でもよいし、前記ポリヌクレオチドを含む分子でもよい。
(c)前記(a)の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに相補的な塩基配列からなり、乳由来αカゼインに結合するポリヌクレオチド
前記(c)において、「ハイブリダイズするポリヌクレオチド」は、特に制限されず、例えば、前記(a)の塩基配列に対して、完全または部分的に相補的なポリヌクレオチドである。前記ハイブリダイズは、例えば、各種ハイブリダイゼーションアッセイにより検出できる。前記ハイブリダイゼーションアッセイは、特に制限されず、例えば、ザンブルーク(Sambrook)ら編「モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリーマニュアル第2版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd Ed.)」〔Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)〕等に記載されている方法を採用することもできる。
前記(c)において、「ストリンジェントな条件」は、例えば、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件、高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、32℃の条件である。「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃の条件である。ストリンジェンシーの程度は、当業者であれば、例えば、温度、塩濃度、プローブの濃度および長さ、イオン強度、時間等の条件を適宜選択することで、設定可能である。「ストリンジェントな条件」は、例えば、前述したザンブルーク(Sambrook)ら編「モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリーマニュアル第2版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd Ed.)」〔Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)〕等に記載の条件を採用することもできる。
本発明の核酸分子における前記ポリヌクレオチドは、例えば、下記(d)のポリヌクレオチドでもよい。この場合、本発明の核酸分子は、例えば、前記(d)のポリヌクレオチドからなる分子でもよいし、前記ポリヌクレオチドを含む分子でもよい。
(d)前記(a)の塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された塩基配列からなり、乳由来αカゼインに結合するポリヌクレオチド
前記(d)において、「1もしくは数個」は、例えば、前記(d)のポリヌクレオチドが、乳由来αカゼインに結合する範囲であればよい。前記「1もしくは数個」は、前記(a)の塩基配列において、例えば、1〜10個、好ましくは1〜7個、より好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜3個、特に好ましくは1または2個である。
本発明の核酸分子における前記ポリヌクレオチドは、例えば、下記(e)のポリヌクレオチドでもよい。この場合、本発明の核酸分子は、例えば、前記(e)のポリヌクレオチドからなる分子でもよいし、前記ポリヌクレオチドを含む分子でもよい。
(e)前記配列番号2または4の塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、それぞれ、配列番号3および6のいずれか一方、または5および7のいずれか一方の塩基配列を含む、乳由来αカゼインに結合するポリヌクレオチド
前記(e)において、「同一性」は、特に制限されず、例えば、前記(b)と同様である。
本発明の核酸分子における前記ポリヌクレオチドは、例えば、下記(f)のポリヌクレオチドでもよい。この場合、本発明の核酸分子は、例えば、前記(f)のポリヌクレオチドからなる分子でもよいし、前記ポリヌクレオチドを含む分子でもよい。
(f)配列番号1〜9からなる群から選択された少なくとも一つの塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、それぞれ、式(I)〜(IX)で表される二次構造を形成可能である、乳由来αカゼインに結合するポリヌクレオチド
前記(f)において、「同一性」は、特に制限されず、例えば、前記(b)と同様である。また、前記(f)において、「二次構造を形成可能」とは、例えば、前記(f)のポリヌクレオチドが、前記式におけるステム構造およびループ構造を形成可能であることをいう。ステム構造およびループ構造については、後述する。
本発明の核酸分子における前記ポリヌクレオチドは、例えば、下記(g)のポリヌクレオチドでもよい。この場合、本発明の核酸分子は、例えば、前記(g)のポリヌクレオチドからなる分子でもよいし、前記ポリヌクレオチドを含む分子でもよい。
(g)配列番号2および4からなる群から選択された少なくとも一つの塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、それぞれ、式(III)および(VI)、ならびに式(V)および式(VII)で表される二次構造を形成可能である、乳由来αカゼインに結合するポリヌクレオチド
本発明の核酸分子における前記ポリヌクレオチドは、例えば、下記(h)のポリヌクレオチドでもよい。この場合、本発明の核酸分子は、例えば、前記(h)のポリヌクレオチドからなる分子でもよいし、前記ポリヌクレオチドを含む分子でもよい。
(h)配列番号2、3、または4の塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、それぞれ、配列番号6または7の塩基配列を含む、乳由来αカゼインに結合するポリヌクレオチド
本発明の核酸分子における前記ポリヌクレオチドは、例えば、下記(i)のポリヌクレオチドでもよい。この場合、本発明の核酸分子は、例えば、前記(i)のポリヌクレオチドからなる分子でもよいし、前記ポリヌクレオチドを含む分子でもよい。
(i)配列番号2、3、または4の塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、それぞれ、式(VI)または式(VII)で表される二次構造を形成可能である、乳由来αカゼインに結合するポリヌクレオチド
本発明の核酸分子は、例えば、前記(a)〜(i)のいずれかのポリヌクレオチドの配列を1つ含んでもよいし、前記ポリヌクレオチドの配列を複数含んでもよい。後者の場合、複数のポリヌクレオチドの配列が連結して、一本鎖のポリヌクレオチドを形成していることが好ましい。前記複数のポリヌクレオチドの配列は、例えば、それぞれが直接的に連結してもよいし、リンカーを介して、それぞれが間接的に連結してもよい。前記ポリヌクレオチドの配列は、それぞれの末端において、直接的または間接的に連結していることが好ましい。前記複数のポリヌクレオチドの配列は、例えば、同じでもよいし、異なってもよいが、好ましくは同じである。前記ポリヌクレオチドの配列を複数含む場合、前記配列の数は、特に制限されず、例えば、2以上であり、好ましくは2〜12であり、より好ましくは2〜6であり、さらに好ましくは2である。
前記リンカーは、例えば、ポリヌクレオチドがあげられ、その構成単位は、例えば、ヌクレオチド残基があげられる。前記ヌクレオチド残基は、例えば、リボヌクレオチド残基、デオキシリボヌクレオチド残基があげられる。前記リンカーの長さは、特に制限されず、例えば、1〜24塩基長であり、好ましくは12〜24塩基長であり、より好ましくは16〜24塩基長であり、さらに好ましくは20〜24塩基長である。
本発明の核酸分子において、前記ポリヌクレオチドは、一本鎖ポリヌクレオチドであることが好ましい。前記一本鎖ポリヌクレオチドは、例えば、自己アニーリングによりステム構造およびループ構造を形成可能であることが好ましい。前記ポリヌクレオチドは、例えば、ステムループ構造、インターナルループ構造および/またはバルジ構造等を形成可能であることが好ましい。
本発明の核酸分子は、例えば、二本鎖でもよい。二本鎖の場合、例えば、一方の一本鎖ポリヌクレオチドは、前記(a)〜(i)のいずれかのポリヌクレオチドであり、他方の一本鎖ポリヌクレオチドは、制限されない。前記他方の一本鎖ポリヌクレオチドは、例えば、前記(a)〜(i)のいずれかのポリヌクレオチドに相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドがあげられる。本発明の核酸分子が二本鎖の場合、例えば、使用に先立って、変性等により、一本鎖ポリヌクレオチドに解離させることが好ましい。また、解離した前記(a)〜(i)のいずれかの一本鎖ポリヌクレオチドは、例えば、前述のように、ステム構造およびループ構造を形成していることが好ましい。
本発明において、「ステム構造およびループ構造を形成可能」とは、例えば、実際にステム構造およびループ構造を形成すること、ならびに、ステム構造およびループ構造が形成されていなくても、条件によってステム構造およびループ構造を形成可能なことも含む。「ステム構造およびループ構造を形成可能」とは、例えば、実験的に確認した場合、および、コンピュータ等のシミュレーションで予測した場合の双方を含む。
本発明の核酸分子の構成単位は、例えば、ヌクレオチド残基である。前記核酸分子の長さは、特に制限されず、その下限は、例えば、15塩基長であり、好ましくは75塩基長または80塩基長であり、その上限は、例えば、1000塩基長であり、好ましくは200塩基長、100塩基長または90塩基長である。
前記ヌクレオチド残基は、例えば、デオキシリボヌクレオチド残基およびリボヌクレオチド残基があげられる。本発明の核酸分子は、例えば、デオキシリボヌクレオチド残基のみから構成されるDNA、1もしくは数個のリボヌクレオチド残基を含むDNA等があげられる。後者の場合、「1もしくは数個」は、特に制限されず、例えば、前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、1〜3個である。本発明において、塩基数および配列数等の個数の数値範囲は、例えば、その範囲に属する正の整数を全て開示するものである。つまり、例えば、「1〜3塩基」との記載は、「1、2、3塩基」の全ての開示を意味する(以下、同様)。
前記ポリヌクレオチドは、例えば、少なくとも1個の修飾塩基を含む。前記修飾塩基は、特に制限されず、例えば、天然塩基(非人工塩基)が修飾された塩基があげられ、前記天然塩基と同様の機能を有することが好ましい。前記天然塩基は、特に制限されず、例えば、プリン骨格を有するプリン塩基、ピリミジン骨格を有するピリミジン塩基等があげられる。前記プリン塩基は、特に制限されず、例えば、アデニン(a)、グアニン(g)があげられる。前記ピリミジン塩基は、特に制限されず、例えば、シトシン(c)、チミン(t)、ウラシル(u)等があげられる。前記塩基の修飾部位は、特に制限されない。前記塩基がプリン塩基の場合、前記プリン塩基の修飾部位は、例えば、前記プリン骨格の7位および8位があげられる。前記塩基がピリミジン塩基の場合、前記ピリミジン塩基の修飾部位は、例えば、前記ピリミジン骨格の5位および6位があげられる。前記ピリミジン骨格において、4位の炭素に「=O」が結合し、5位の炭素に「−CH3」または「−H」以外の基が結合している場合、修飾ウラシルまたは修飾チミンということができる。
前記修飾塩基の修飾基は、特に制限されず、例えば、メチル基、フルオロ基、アミノ基、チオ基、下記式(1)のベンジルアミノカルボニル基(benzylaminocarbonyl)、下記式(2)のトリプタミノカルボニル基(tryptaminocarbonyl)およびイソブチルアミノカルボニル基(isobutylaminocarbonyl)等があげられる。
前記修飾塩基は、特に制限されず、例えば、アデニンが修飾された修飾アデニン、チミンが修飾された修飾チミン、グアニンが修飾された修飾グアニン、シトシンが修飾された修飾シトシンおよびウラシルが修飾された修飾ウラシル等があげられ、前記修飾チミン、前記修飾ウラシルおよび前記修飾シトシンが好ましい。
前記修飾アデニンの具体例としては、例えば、7’−デアザアデニン等があげられる。
前記修飾グアニンの具体例としては、例えば、7’−デアザグアニン等があげられる。
前記修飾シトシンの具体例としては、例えば、5’−メチルシトシン等があげられる。
前記修飾チミンの具体例としては、例えば、5’−ベンジルアミノカルボニルチミン、5’−トリプタミノカルボニルチミン、5’−イソブチルアミノカルボニルチミン等があげられる。
前記修飾ウラシルの具体例としては、例えば、5’−ベンジルアミノカルボニルウラシル(BndU)、5’−トリプタミノカルボニルウラシル(TrpdU)および5’−イソブチルアミノカルボニルウラシル等があげられる。
前記ポリヌクレオチドは、特に制限されず、例えば、いずれか1種類の前記修飾塩基のみを含んでもよいし、2種類以上の前記修飾塩基を含んでもよい。
前記修飾塩基の個数は、特に制限されない。前記ポリヌクレオチドにおいて、前記修飾塩基の個数は、例えば、1個以上である。前記修飾塩基は、前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、1〜80個、好ましくは1〜70個、より好ましくは1〜50個、さらに好ましくは1〜40個、特に好ましくは1〜30個、最も好ましくは1〜20個であり、また、全ての塩基が、前記修飾塩基でもよい。前記修飾塩基の個数は、例えば、いずれか1種類の前記修飾塩基の個数であってもよいし、2種類以上の前記修飾塩基の個数の合計であってもよい。また、前記ポリヌクレオチドを含む前記核酸分子の全長における前記修飾塩基も、特に制限されず、例えば、1〜80個、1〜50個、1〜20個であり、好ましくは、前述の範囲と同様である。
前記ポリヌクレオチドにおいて、前記修飾塩基の割合は、特に制限されない。前記修飾塩基の割合は、前記ポリヌクレオチドの全塩基数のうち、例えば、1/100以上、好ましくは1/40以上、より好ましくは1/20以上、さらに好ましくは1/10以上、特に好ましくは1/4以上、最も好ましくは1/3以上である。また、前記ポリヌクレオチドを含む前記核酸分子の全長における前記修飾塩基の割合も、特に制限されず、前述の範囲と同様である。ここで、前記全塩基数は、例えば、前記ポリヌクレオチドにおける天然塩基の個数と前記修飾塩基の個数の合計である。前記修飾塩基の割合を分数で示すが、これを満たす全塩基数と修飾塩基数とは、それぞれ正の整数である。
前記ポリヌクレオチドにおける前記修飾塩基が、前記修飾チミンの場合、前記修飾チミンの個数は、特に制限されない。前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、天然チミンは、前記修飾チミンに置換できる。前記ポリヌクレオチドにおいて、前記修飾チミンの個数は、例えば、1個以上である。前記修飾チミンは、前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、1〜80個、好ましくは1〜70個、より好ましくは1〜50個、さらに好ましくは1〜40個、特に好ましくは1〜30個、最も好ましくは1〜21個であり、また、全てのチミンが、前記修飾チミンでもよい。
前記ポリヌクレオチドにおいて、前記修飾チミンの割合は、特に制限されない。前記修飾チミンの割合は、前記天然チミンの個数と前記修飾チミンの個数との合計のうち、例えば、1/100以上、好ましくは1/40以上、より好ましくは1/20以上、さらに好ましくは1/10以上、特に好ましくは1/4以上、最も好ましくは1/3以上である。
前記ポリヌクレオチドにおける前記修飾塩基が、前記修飾ウラシルの場合、前記修飾ウラシルの個数は、特に制限されない。前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、天然チミンは、前記修飾ウラシルに置換できる。前記ポリヌクレオチドにおいて、前記修飾ウラシルの個数は、例えば、1個以上である。前記修飾ウラシルは、前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、1〜80個、好ましくは1〜70個、より好ましくは1〜50個、さらに好ましくは1〜40個、特に好ましくは1〜30個、最も好ましくは1〜21個であり、また、全てのウラシルが、前記修飾ウラシルでもよい。
前記ポリヌクレオチドにおいて、前記修飾ウラシルの割合は、特に制限されない。前記修飾ウラシルの割合は、前記天然チミンの個数と前記修飾ウラシルの個数との合計のうち、例えば、1/100以上、好ましくは1/40以上、より好ましくは1/20以上、さらに好ましくは1/10以上、特に好ましくは1/4以上、最も好ましくは1/3以上である。
前記修飾チミンと前記修飾ウラシルの個数の例示は、例えば、両者をあわせた個数であってもよい。
前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、前記各塩基配列における下線部で示されるチミンが、前記修飾チミンおよび前記修飾ウラシルの少なくとも一方でもよい。具体的には、例えば、配列番号1〜9のいずれかの塩基配列における下線部で示されるチミンが、5’−ベンジルアミノカルボニルウラシル(BndU)でもよい。
前記ポリヌクレオチドにおける前記修飾塩基が、前記修飾シトシンの場合、前記修飾シトシンの個数は、特に制限されない。前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、天然シトシンは、前記修飾シトシンに置換できる。前記ポリヌクレオチドにおいて、前記修飾シトシンの個数は、例えば、1個以上である。前記修飾シトシンは、前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、1〜80個、好ましくは1〜70個、より好ましくは1〜50個、さらに好ましくは1〜40個、特に好ましくは1〜30個、最も好ましくは1〜21個であり、であり、また、全てのシトシンが、前記修飾シトシンでもよい。
前記ポリヌクレオチドにおいて、前記修飾シトシンの割合は、特に制限されない。前記修飾シトシンの割合は、前記天然シトシンの個数と前記修飾シトシンの個数との合計のうち、例えば、1/100以上、好ましくは1/40以上、より好ましくは1/20以上、さらに好ましくは1/10以上、特に好ましくは1/4以上、最も好ましくは1/3以上である。
前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、前記各塩基配列における下線部で示されるシトシンが、前記修飾シトシンでもよい。具体的には、例えば、配列番号1〜9のいずれかの塩基配列における下線部で示されるシトシンが、5’−メチルシトシンでもよい。
前記修飾塩基が、前記修飾アデニンまたは前記修飾グアニンの場合、前記修飾シトシンの個数および割合の説明において、「シトシン」および「修飾シトシン」を、それぞれ「アデニン」および「修飾アデニン」または「グアニン」および「修飾グアニン」に読み替えて援用できる。前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、天然アデニンは、前記修飾アデニンに置換でき、例えば、天然グアニンは、前記修飾グアニンに置換できる。
本発明の核酸分子は、修飾ヌクレオチドを含んでもよい。前記修飾ヌクレオチドは、前述の前記修飾塩基を有するヌクレオチドでもよいし、糖残基が修飾された修飾糖を有するヌクレオチドでもよいし、前記修飾塩基および前記修飾糖を有するヌクレオチドでもよい。
前記糖残基は、特に制限されず、例えば、デオキシリボース残基またはリボース残基があげられる。前記糖残基における修飾部位は、特に制限されず、例えば、前記糖残基の2’位または4’位があげられ、いずれか一方でも両方が修飾されてもよい。前記修飾糖の修飾基は、例えば、メチル基、フルオロ基、アミノ基、チオ基等があげられる。
前記修飾ヌクレオチド残基において、塩基がピリミジン塩基の場合、例えば、前記糖残基の2’位および/または4’位が修飾されていることが好ましい。前記修飾ヌクレオチド残基の具体例は、例えば、デオキシリボース残基またはリボース残基の2’位が修飾された、2’−メチル化−ウラシルヌクレオチド残基、2’−メチル化−シトシンヌクレオチド残基、2’−フルオロ化−ウラシルヌクレオチド残基、2’−フルオロ化−シトシンヌクレオチド残基、2’−アミノ化−ウラシルヌクレオチド残基、2’−アミノ化−シトシンヌクレオチド残基、2’−チオ化−ウラシルヌクレオチド残基、2’−チオ化−シトシンヌクレオチド残基等があげられる。
前記修飾ヌクレオチドの個数は、特に制限されず、例えば、前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、1〜80個、好ましくは1〜70個、より好ましくは1〜50個、さらに好ましくは1〜40個、特に好ましくは1〜30個、最も好ましくは1〜21個である。また、前記ポリヌクレオチドを含む前記核酸分子の全長における前記修飾ヌクレオチドも、特に制限されず、例えば、1〜80個、1〜50個、1〜20個であり、好ましくは、前述の範囲と同様である。
本発明の核酸分子は、例えば、1もしくは数個の人工核酸モノマー残基を含んでもよい。前記「1もしくは数個」は、特に制限されず、例えば、前記ポリヌクレオチドにおいて、例えば、1〜80個、好ましくは1〜70個、より好ましくは1〜50個、さらに好ましくは1〜40個、特に好ましくは1〜30個、最も好ましくは1〜21個である。前記人工核酸モノマー残基は、例えば、PNA(ペプチド核酸)、LNA(Locked Nucleic Acid)、ENA(2’−O,4’−C−Ethylenebridged Nucleic Acids)等があげられる。前記モノマー残基における核酸は、例えば、前述と同様である。また、前記ポリヌクレオチドを含む前記核酸分子の全長における前記人工核酸モノマー残基も、特に制限されず、例えば、1〜80個、1〜50個、1〜20個であり、好ましくは、前述の範囲と同様である。
本発明の核酸分子は、例えば、ヌクレアーゼ耐性であることが好ましい。本発明の核酸分子は、ヌクレアーゼ耐性のため、例えば、前記修飾ヌクレオチド残基および/または前記人工核酸モノマー残基を有することが好ましい。本発明の核酸分子は、ヌクレアーゼ耐性のため、例えば、5’末端または3’末端に、数10kDaのPEG(ポリエチレングリコール)またはデオキシチミジン等が結合してもよい。
本発明の核酸分子は、例えば、さらに付加配列を有してもよい。前記付加配列は、例えば、前記核酸分子の5’末端および3’末端の少なくとも一方に結合していることが好ましく、より好ましくは3’末端である。前記付加配列は、特に制限されない。前記付加配列の長さは、特に制限されず、例えば、1〜200塩基長であり、好ましくは1〜50塩基長であり、より好ましくは1〜25塩基長、さらに好ましくは18〜24塩基長である。前記付加配列の構成単位は、例えば、ヌクレオチド残基であり、デオキシリボヌクレオチド残基およびリボヌクレオチド残基等があげられる。前記付加配列は、特に制限されず、例えば、デオキシリボヌクレオチド残基からなるDNA、リボヌクレオチド残基を含むDNA等のポリヌクレオチドがあげられる。前記付加配列の具体例として、例えば、ポリdT、ポリdA等があげられる。
本発明の核酸分子は、例えば、担体に固定化して使用できる。前記本発明の核酸分子は、例えば、5’末端および3’末端のいずれかを固定化することができる。本発明の核酸分子を固定化する場合、例えば、前記核酸分子は、前記担体に、直接的に固定化してもよいし、間接的に固定化してもよい。後者の場合、本発明の核酸分子は、例えば、前記付加配列を介して、前記担体に固定化する。前記担体は、例えば、ビーズ、プレート、フィルター、カラム、基板、容器等があげられる。
本発明の核酸分子は、例えば、さらに標識物質を有してもよく、具体的には、前記核酸分子に前記標識物質が結合してもよい。前記標識物質が結合した前記核酸分子は、例えば、本発明の核酸センサということもできる。前記標識物質は、例えば、前記核酸分子の5’末端および3’末端の少なくとも一方に結合させてもよい。前記標識物質による標識化は、例えば、結合でもよいし、化学修飾でもよい。前記標識物質は、特に制限されず、例えば、酵素、蛍光物質、色素、同位体、薬物、毒素および抗生物質等があげられる。前記酵素は、例えば、ルシフェラーゼ、NanoLucルシフェラーゼ等があげられる。前記蛍光物質は、例えば、ピレン、TAMRA、フルオレセイン、Cy3色素、Cy5色素、FAM色素、ローダミン色素、テキサスレッド色素、JOE、MAX、HEX、TYE等の蛍光団があげられ、前記色素は、例えば、Alexa488、Alexa647等のAlexa色素等があげられる。前記標識物質は、例えば、前記核酸分子に直接的に連結してもよいし、リンカーを介して、間接的に連結してもよい。前記リンカーは、特に制限されず、例えば、ポリヌクレオチドのリンカー等である。
本発明の核酸分子の製造方法は、特に制限されず、例えば、化学合成を利用した核酸合成方法、遺伝子工学的手法等の公知の方法等により合成できる。
本発明の核酸分子は、前述のように、αカゼインに結合性を示す。このため、本発明の核酸分子の用途は、αカゼインへの結合性を利用する用途であれば、特に制限されない。本発明の核酸分子は、例えば、αカゼインに対する抗体に代えて、種々の方法に使用できる。
本発明の核酸分子によれば、αカゼインを検出できる。αカゼインの検出方法は、特に制限されず、αカゼインと前記核酸分子との結合を検出することによって行える。
(2)検出試薬およびキット
本発明の検出試薬は、前述のように、乳由来αカゼインの検出試薬であって、前記本発明の核酸分子を含むことを特徴とする。本発明の検出試薬は、前記本発明の核酸分子を含んでいればよく、その他の構成は何ら制限されない。本発明の検出試薬を使用すれば、前述のように、例えば、乳由来αカゼインの検出等を行うことができる。本発明の検出試薬は、例えば、乳由来αカゼインへの結合剤ともいえる。
本発明の検出試薬は、例えば、さらに、標識物質を有し、前記標識物質が、前記核酸分子に結合されてもよい。前記標識物質は、例えば、前記本発明の核酸分子における説明を援用できる。また、本発明の検出試薬は、例えば、担体を有し、前記担体に前記核酸分子が固定化されてもよい。前記担体は、例えば、前記本発明の核酸分子における説明を援用できる。
本発明の検出キットは、前記本発明の核酸分子または前記本発明の検出試薬を含む。本発明の検出キットは、例えば、さらに、その他の構成要素を含んでもよい。前記構成要素は、例えば、前記試料を調製するための緩衝液、使用説明書等があげられる。また、後述する本発明の検出方法に示す、前記核酸分子に標識物質であるルシフェラーゼを結合させた核酸センサと、アレルゲン標識化担体とを用いる方法の場合、本発明の検出キットは、例えば、前記核酸センサと、アレルゲン標識化担体(αカゼイン標識化担体)を含むキットとすることができる。
本発明の検出試薬および検出キットは、例えば、前記本発明の核酸分子の説明を援用でき、また、その使用方法についても、前記本発明の核酸分子および後述する前記本発明の検出方法を援用できる。
(3)検出方法
本発明の乳由来αカゼインの検出方法は、前述のように、前記本発明の核酸分子、または前記本発明の検出試薬と、試料とを接触させ、前記試料中の乳由来αカゼインと、前記核酸分子または前記検出試薬との複合体を形成させる工程、および、前記複合体を検出する工程を含むことを特徴とする。本発明の検出方法は、前記本発明の核酸分子または前記検出試薬を使用することが特徴であって、その他の工程および条件等は、特に制限されない。以下、本発明の核酸分子の使用を例にあげて説明するが、本発明の核酸分子は、本発明の検出試薬と読み替え可能である。
本発明によれば、前記本発明の核酸分子が、αカゼインに特異的に結合することから、例えば、αカゼインと、前記核酸分子または前記検出試薬との結合を検出することによって、試料中のαカゼインを特異的に検出可能である。具体的には、例えば、試料中のαカゼインの量を分析可能であることから、定性分析または定量分析も可能といえる。
本発明において、前記試料は、特に制限されない。前記試料は、例えば、食品、食品原料、食品添加物等があげられる。また、前記試料は、例えば、食品加工場または調理場等における付着物、洗浄後の洗浄液等があげられる。
前記試料は、例えば、液体試料でもよいし、固体試料でもよい。前記試料は、例えば、前記核酸分子と接触させ易く、取扱いが簡便であることから、液体試料が好ましい。前記固体試料の場合、例えば、溶媒を用いて、混合液、抽出液、溶解液等を調製し、これを使用してもよい。前記溶媒は、特に制限されず、例えば、水、生理食塩水、緩衝液等があげられる。
本発明の検出方法について、本発明の核酸分子として、標識物質で標識化された本発明の核酸センサを使用し、αカゼインを検出する方法を例にあげて説明する。なお、本発明は、これらの例示には制限されない。
前記検出工程は、例えば、さらに、前記複合体の検出結果に基づいて、前記試料中のαカゼインの有無または量を分析する工程を含む。
前記複合体形成工程において、前記試料と前記核酸分子との接触方法は、特に制限されない。前記試料と前記核酸分子との接触は、例えば、液体中で行われることが好ましい。前記液体は、特に制限されず、例えば、水、生理食塩水、緩衝液等があげられる。
前記複合体形成工程において、前記試料と前記核酸分子との接触条件は、特に制限されない。接触温度は、例えば、4〜37℃であり、好ましくは18〜25℃であり、接触時間は、例えば、10〜120分であり、好ましくは30〜60分である。
前記複合体形成工程において、前記核酸分子は、例えば、担体に固定化された固定化核酸分子(固相担体)でもよいし、未固定の遊離した核酸分子でもよい。後者の場合、例えば、容器内で、前記試料と接触させる。前者の場合、前記担体は、特に制限されず、例えば、プレート、フィルター、カラム、基板、ビーズ、容器等があげられ、前記容器は、例えば、マイクロプレート、チューブ等があげられる。前記核酸分子の固定化は、例えば、前述の通りである。
前記検出工程は、前述のように、前記試料中のαカゼインと前記核酸分子との結合を検出する工程である。前記両者の結合の有無を検出することによって、例えば、前記試料中のαカゼインの有無を分析(定性)でき、また、前記両者の結合の程度(結合量)を検出することによって、例えば、前記試料中のαカゼインの量を分析(定量)できる。
αカゼインと前記核酸分子との結合の検出方法は、特に制限されない。前記方法は、例えば、物質間の結合を検出する従来公知の方法が採用でき、具体例として、前述のSPR等があげられる。
そして、αカゼインと前記核酸分子との結合が検出できなかった場合は、前記試料中にαカゼインは存在しないと判断でき、前記結合が検出された場合は、前記試料中にαカゼインが存在すると判断できる。また、予め、αカゼインの濃度と結合量との相関関係を求めておき、前記相関関係に基づいて、前記結合量から、前記試料中のαカゼインの濃度を分析することもできる。
αカゼインと前記核酸分子との結合の検出について、一例として、前記核酸分子に標識物質であるルシフェラーゼを結合させた核酸センサと、乳由来αカゼイン標識化担体とを用いる方法を、以下に示す。
まず、前記核酸センサと前記試料とを混合する。これにより、前記試料中に乳由来αカゼインが存在する場合、前記核酸センサにおける前記核酸分子は、ターゲットである乳由来αカゼインと結合する。他方、前記試料中に乳由来αカゼインが存在しない場合、前記核酸センサにおける核酸分子は、ターゲットと未結合の状態となる。
つぎに、前記混合物を、前記乳由来αカゼイン標識化担体に接触させた後、前記αカゼイン標識化担体を除去する。前記担体は、例えば、ビーズがあげられる。前記混合物において、前記核酸センサが乳由来αカゼインと結合している場合、前記核酸センサにおける前記核酸分子は、前記αカゼイン標識化担体における乳由来αカゼインとは結合できない。このため、前記αカゼイン標識化担体を除去した画分に対して、ルシフェラーゼの基質を添加して発光反応を行った場合、前記核酸センサにおけるルシフェラーゼの触媒反応によって、発光が生じる。他方、前記混合物において、前記核酸センサが乳由来αカゼインと結合していない場合、前記核酸センサにおける前記核酸分子は、前記αカゼイン標識化担体における乳由来αカゼインと結合する。このため、前記αカゼイン標識化担体の除去により、前記核酸センサも、前記αカゼイン標識化担体に結合した状態で除去されることになる。このため、前記αカゼイン標識化担体を除去した画分に対して、ルシフェラーゼの基質を添加して発光反応を行った場合、前記核酸センサが存在していないことから、ルシフェラーゼの触媒反応による発光は生じない。このため、発光の有無によって、試料中の乳由来αカゼインの有無を分析(定性分析)することができる。また、試料中の乳由来αカゼインの量と、前記αカゼイン標識化担体を除去した後の前記画分に残存する前記核酸センサの量とは、相関関係を有するため、発光の強弱によって、試料中の乳由来αカゼインの量も分析(定量分析)することができる。
本発明によれば、前述のように、アレルゲンである乳由来αカゼインを検出できる。また、本発明によれば、前記アレルゲンである乳由来αカゼインの検出により、例えば、間接的に、乳の有無を検出することも可能である。
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記実施例により制限されない。市販の試薬は、特に示さない限り、それらのプロトコルに基づいて使用した。
[実施例1]
本発明のアプタマーについて、牛乳由来αカゼインに対する結合性を、SPR解析により確認した。
(1)アプタマー
下記ポリヌクレオチドのアプタマー1を、実施例のアプタマーとして合成した。下記ポリヌクレオチドにおいて、下線部で示される「T」は、天然チミン(T)に代えて、チミンの5位が置換された5’−ベンジルアミノカルボニルウラシル(BndU)を有するデオキシリボヌクレオチド残基とし、下線部で示される「C」は、天然シトシン(C)に代えて、シトシンの5位が置換された5’−メチルシトシンを有するデオキシリボヌクレオチド残基とした。
アプタマー1:aCas392BR8m2(配列番号1)
GGTATGGAGGCAAGTCCCAATTCTAAGAAGTGGAGTAGGTGGGTTTAAGGATACGTTTCAGCCAGACAGGGTTTATG
アプタマー1の推定二次構造を、図1に示す。ただし、これには限定されない。
前記アプタマーは、その3’末端に、20塩基長のポリデオキシアデニン(ポリdA)を付加し、ポリdA付加アプタマーとして、後述するSPRに使用した。前記ポリdA付加アプタマーは、95℃、5分の条件で熱変性させたものを使用した。
(2)試料
牛乳由来αカゼイン(C6780-19、SIGMA社製)を、SB1Tバッファーに懸濁し、一晩溶解させた後、遠心(12,000rpm、15分、室温)し分離した。前記分離した上清を、未変性αカゼインを含む抽出液として得た。これをαカゼイン試料とした。また、牛乳(足柄乳業株式会社製)を、SB1Tバッファーで希釈し、一晩溶解させた後、遠心(3000g、20分、室温)し分離し、前記分離した上清を、0.8mmのフィルターでろ過し、得られた抽出液を、牛乳試料として使用した。前記SB1Tバッファーの組成は、40mmol/L HEPES、125mmol/L NaCl、5mmol/L KCl、1mmol/L MgCl2および0.01% Tween(登録商標)20とし、pHは、7.5とした。
以下の結合性試験において、前記アプタマーの交差反応の確認のため、以下に示す材料から、それぞれの試料を調製した。グリアジン試料、グルテン試料、リゾチーム試料の調製は、前記αカゼイン試料の調製と同様にして行った。卵試料、生ピーナッツ試料、およびローストピーナッツ試料は、以下に示す材料を、フードプロセッサで破砕後、SB1Tバッファーに懸濁し、一晩溶解させた後、遠心(3000g、20分、室温)し分離し、前記分離した上清を、0.8mmのフィルターでろ過し、得られた抽出液を、試料として使用した。
グリアジン(101778、MP Biomedicals社製)
小麦由来グルテン(073-00575、和光純薬社製)
鶏卵の卵白由来リゾチーム(120-02674、和光純薬社製)
鶏卵の全卵
生ピーナッツ(インドカレーの店アールティー社製)
ローストピーナッツ(KFVフルーツ社製)
(3)SPRによる結合性の解析
結合性の解析には、ProteON XPR36(BioRad社)を、その使用説明書にしたがって使用した。
まず、前記ProteON専用のセンサーチップとして、ストレプトアビジンが固定化されたチップ(商品名 ProteOn NLC Sensor Chip、BioRad社)を、前記ProteON XPR36にセットした。前記センサーチップのフローセルに、超純水(DDW)を用いて、1μmol/Lのビオチン化ポリdTをインジェクションし、シグナル強度(RU:Resonance Unit)が約900RUになるまで結合させた。前記ビオチン化ポリdTは、20塩基長のデオキシチミジンの5’末端をビオチン化して調製した。そして、前記チップの前記フローセルに、SB1Tバッファーを用いて、1μmol/Lの前記ポリdA付加アプタマーを、流速25μL/minで80秒間インジェクションし、シグナル強度が約800RUになるまで結合させた。続いて、所定のタンパク質濃度(500ppmまたは100ppm)の前記試料を、それぞれ、前記バッファーを用いて、流速25μL/minで240秒間インジェクションし、引き続き、同じ条件で、前記バッファーを流して、洗浄を行った。前記試料のインジェクション後、シグナル強度(RU)を測定し、前記試料のインジェクション開始を0秒として、295〜315秒におけるRUの平均値(RU295−315)を求めた。そして、前記ビオチン化ポリdTに前記ポリdA付加アプタマーを結合させた時におけるRU値(RUimmob)とRU295−315との比(RU295−315/RUimmob)を算出した。
これらの結果を図2に示す。図2は、乳由来αカゼインに対するアプタマー1の結合性を示すグラフであり、横軸は、各試料を示し、縦軸は、シグナル強度(RU)を示す。横軸において、左から順に、αカゼイン試料、牛乳試料、グリアジン試料、グルテン試料、リゾチーム試料、卵試料、生ピーナッツ試料、およびローストピーナッツ試料を示す。各試料における濃度(ppm)は、αカゼイン試料、グリアジン試料、グルテン試料、およびリゾチーム試料については、各タンパク質の濃度を示し、牛乳試料、卵試料、生ピーナッツ試料、およびローストピーナッツ試料については、各試料に含まれる全タンパク質の濃度を示す。図2に示すように、アプタマー1は、αカゼイン試料および牛乳試料に対して、結合性を示した。アプタマー1は、乳由来αカゼインに対して選択的に結合するため、牛乳試料に対する結合性を示したことは、前記牛乳試料に含まれる乳由来αカゼインに対して結合性を示したといえる。なお、牛乳に含まれるタンパクの約80%がαカゼインであることから、アプタマー1により、前記牛乳試料に含まれる乳由来αカゼインのほとんどが検出されたといえる。一方、アプタマー1は、グリアジン試料、グルテン試料、リゾチーム試料、卵試料、生ピーナッツ試料、およびローストピーナッツ試料に対しては、いずれも、シグナル強度が0以下であり、結合性を示さなかった。
つぎに、前記牛乳試料を使用し、前記試料におけるタンパク質濃度を、0.37、1.1、3.3、10、および30ppmとした以外は同様にして、結合性の解析を行った。
この結果を図3に示す。図3は、牛乳試料に対するアプタマー1の結合性を示すグラフであり、横軸は、牛乳抽出液の濃度(ppm)を示し、縦軸は、シグナル強度(RU)を示す。図3に示すように、アプタマー1は、前記牛乳試料におけるタンパク質濃度が増加するにつれて、シグナル強度が増加した。この結果から、本発明のアプタマーを用い、シグナル強度を測定することで、前記牛乳試料におけるαカゼイン濃度を定量分析できることがわかった。
つぎに、前記αカゼイン試料を使用し、前記試料におけるαカゼインの濃度を、12.5、25、50、100、および200nmol/Lとした以外は同様にして、結合性の解析を行い、前記試料のインジェクション開始後の所定時間におけるシグナル強度を求めた。
この結果を図4に示す。図4は、αカゼインに対するアプタマー1の結合性を示すグラフであり、横軸は、前記試料のインジェクション開始後の経過時間(秒)を示し、縦軸は、シグナル強度(RU)を示す。図4に示すように、アプタマー1は、αカゼインの濃度が増加するにつれて、シグナル強度が増加した。
さらに、前記図4のSPR解析の結果から、動態パラメータを算出した。この結果、アプタマー1は、前記αカゼイン試料における解離定数(KD)が、8.95×10−9Mであり、優れた結合性であることがわかった。
[実施例2]
本発明のアプタマーに標識物質ルシフェラーゼを結合させた核酸センサを作製し、前記核酸センサの乳由来αカゼインに対する結合性を確認した。前記結合性の確認は、ターゲットである乳由来αカゼインが固相化されたターゲット固相化ビーズと、前記核酸センサとを用いて行った。
前述のように、反応液において、前記核酸センサが前記ターゲットと結合している場合、前記核酸センサにおける前記核酸分子は、前記ターゲット固相化ビーズに固相化されたαカゼインとは結合できない。このため、前記ターゲット固相化ビーズを除去した画分に対して発光反応を行った場合、前記核酸センサにおけるルシフェラーゼの触媒反応によって、発光が生じる。他方、前記反応液において、前記核酸センサが前記ターゲットと結合していない場合、前記核酸センサにおける前記核酸分子は、前記ターゲット固相化ビーズに固相化されたαカゼインと結合する。このため、前記ターゲット固相化ビーズの除去により、前記核酸センサも、前記ターゲット固相化ビーズに結合した状態で除去されることになる。このため、前記ターゲット固相化ビーズを除去した画分に対して、ルシフェラーゼの基質を添加して発光反応を行った場合、前記核酸センサが存在していないことから、ルシフェラーゼの触媒反応による発光は生じない。このため、前記核酸センサと前記ターゲット固相化ビーズとを用いて、ルシフェラーゼによる発光を検出することで、乳由来αカゼインを検出することができる。
核酸センサは、蛍光物質NanoLuc(商標)ルシフェラーゼ(Promega社製)を使用し、その使用説明書にしたがって、前記実施例1のアプタマー1(aCas392BR8m2)の5’末端を標識化することにより、調製した。
試料として、前記実施例1の前記αカゼイン試料を使用した。
前記ターゲット固相化ビーズは、ターゲットとして前記αカゼイン試料を使用し、NHS-activated Sepharose 4 Fast Flow Lab Packs(GE Healthcare社製)を使用し、その使用説明書にしたがって調製した。
前記核酸センサおよび前記ターゲット固相化ビーズを用い、前記核酸センサのαカゼインに対する結合性を、以下に示すようにして確認した。まず、96ウェルのU底プレートに、フィルタープレート(millipore社製、cat#MSGVN2250)をセットし、前記U底プレートの各ウェルに、50μL/ウェルとなるように前記ターゲット固相化ビーズを加えた。遠心してバッファーを除去後、前記各ウェルに、50μLの前記αカゼイン試料(終濃度 0、0.03、0.12、0.47、1.9、7.5、30ppm)と、50μLの前記核酸センサ(4×105倍希釈)とを加え、5分間、室温の条件で混合し、前記αカゼイン試料、前記ターゲット固相化ビーズおよび前記核酸センサを反応させた。その後、前記U底プレートを、3000g、2分、室温の条件で遠心分離し、前記ターゲット固相化ビーズを遠心除去した。前記遠心分離によって、前記フィルタープレートを通過した反応液を、前記各ウェルから回収し、発光量の測定に供した。前記発光量の測定には、Infinite M1000 Pro(TECAN社)を、その使用説明書にしたがって使用した。前記発光量の測定において、基質として、NanoGlo(商標、Promega社製、cat#N2012)を使用した。
発光量の測定結果を図5に示す。図5は、前記αカゼイン試料に関する発光量の測定結果を示すグラフである。図5において、横軸は、前記αカゼイン試料の濃度を示し、縦軸は、発光量(RLU)を示す。図5に示すように、ルシフェラーゼの触媒反応による発光がみられ、前記αカゼイン試料のタンパク質濃度が増加するにつれて、発光量が増加した。
さらに、前記図5の測定結果から、3σ法により、前記核酸センサの乳由来αカゼインに対する検出限界を算出した(n=3)。この結果、前記核酸センサの乳由来αカゼインに対する検出限界(LOD)は、0.12ppmであった。このことから、前記核酸センサは、微量の乳由来αカゼインを検出可能であることがわかった。
つぎに、前記αカゼイン試料に代えて、前記実施例1で調製した牛乳試料、ならびに、交差反応の確認のため、前記実施例1で調製した卵試料、グルテン試料、および生ピーナッツ試料(終濃度 0、0.032、0.16、0.8、4ppm)を使用して、同様の測定を行った。
図6は、牛乳、卵、グルテン、および生ピーナッツを試料とした場合における、発光量の測定結果を示すグラフである。図6において、横軸は、各試料の濃度を示し、縦軸は、発光量(RLU)を示す。図6に示すように、前記牛乳試料の場合、ルシフェラーゼの触媒反応による発光がみられ、前記試料のタンパク質濃度の増加に伴い、発光量が増加した。一方、前記卵試料、グルテン試料、および生ピーナッツ試料の場合は、いずれも、発光量は変化しなかった。このことから、前記核酸センサは、前記牛乳試料、具体的には前記牛乳試料中の乳由来αカゼインを特異的に検出できることがわかった。
さらに、前記図6の測定結果から、3σ法により、前記牛乳試料における前記核酸センサの検出限界を算出した(n=3)。この結果、前記牛乳試料における前記核酸センサの検出限界(LOD)は、0.16ppmであった。このことから、前記核酸センサは、前記牛乳試料における前記乳由来αカゼインを、十分に検出可能であることがわかった。
以上の結果から、本発明のアプタマーは、乳由来αカゼインに特異的に結合し、それを測定により検出できること、および、本発明のアプタマーによれば、発光の強弱によって、試料中の乳由来αカゼインの量を分析できることがわかった。
[実施例3]
前記核酸センサを使用し、加熱した牛乳試料に対する結合性を確認した。
試料として、以下に示す試料を使用した以外は、実施例2と同様にして、前記核酸センサの試料に対する結合性を確認した。
前記実施例1の前記牛乳試料を、95℃、10分の条件で処理し、加熱牛乳試料を作製した。また、前記加熱牛乳試料を、さらに12000rpm、10分、室温の条件で遠心分離し、得られた上清を、加熱上清試料とした。コントロールとして、前記実施例1の前記牛乳試料を使用した。
この結果を図7に示す。図7は、前記牛乳試料、前記加熱牛乳試料および前記加熱上清試料に関する発光量の測定結果を示すグラフである。図7において、横軸は、各試料を示し、縦軸は、発光量(RLU)を示す。各グラフは、各試料における全タンパク質濃度(ppm)を示し、左から順に、0ppm、100ppmを示す。図4に示すように、0ppmと比較して、100ppmにおいて、加熱牛乳試料および加熱上清試料のいずれにおいても、牛乳試料と同程度の発光量の増加がみられた。
以上の結果から、本発明のアプタマーは、加熱した乳由来αカゼインに対しても結合し、それを測定により検出できることがわかった。
[実施例4]
本発明のアプタマーについて、牛乳由来αカゼインに対する結合性を、SPR解析により確認した。
下記ポリヌクレオチドのアプタマー2および3を、実施例1と同様にして、合成した。アプタマー3は、アプタマー2の小型化配列である。下記配列番号2および3のポリヌクレオチドにおいて、下線部で示される「T」は、天然チミン(T)に代えて、チミンの5位が置換された5’−ベンジルアミノカルボニルウラシル(BndU)を有するデオキシリボヌクレオチド残基とし、下線部で示される「C」は、天然シトシン(C)に代えて、シトシンの5位が置換された5’−メチルシトシンを有するデオキシリボヌクレオチド残基とした。
アプタマー2:aCas757BR8m3(配列番号2)
GGATAGCAGCAGGGACCTCTTATACGTCGGTGCTGGTGTTGTATAGACCCCCTTATATTATAACCGAATGATTTGCCCGCTACGATATG
アプタマー3:aCas757BR8m3s69(配列番号3)
GGATAGCAGCAGGGACCTCTTATACGTCGGTGCTGGTGTTGTATAGACCCCCTTATATTATAACCGAAT
アプタマー2および3の推定二次構造を、図8(A)に示す。ただし、これには限定されない。
アプタマー2および3を使用し、試料として、前記αカゼイン試料を使用し、前記試料におけるαカゼインの濃度を、50、100、および200nmol/Lとした以外は実施例1と同様にして、結合性の解析を行い、前記試料のインジェクション開始後の所定時間におけるシグナル強度を求めた。
この結果を図9に示す。図9(A)および(B)は、それぞれ、αカゼインに対するアプタマー2および3の結合性を示すグラフであり、横軸は、前記試料のインジェクション開始後の経過時間(秒)を示し、縦軸は、シグナル強度(RU)を示す。図9(A)および(B)に示すように、アプタマー2、およびその小型化配列であるアプタマー3は、αカゼインの濃度が増加するにつれて、シグナル強度が増加した。
さらに、前記図9のSPR解析の結果から、動態パラメータを算出した。この結果、アプタマー2および3は、αカゼインに対する解離定数(KD)が、それぞれ、19.1×10−9mol/L、および6.2×10−9mol/Lであり、優れた結合性であることがわかった。
つぎに、下記ポリヌクレオチドのアプタマー4および5を、実施例1と同様にして、合成した。アプタマー5は、アプタマー4の小型化配列である。下記配列番号4および5のポリヌクレオチドにおいて、下線部で示される「T」は、天然チミン(T)に代えて、チミンの5位が置換された5’−ベンジルアミノカルボニルウラシル(BndU)を有するデオキシリボヌクレオチド残基とし、下線部で示される「C」は、天然シトシン(C)に代えて、シトシンの5位が置換された5’−メチルシトシンを有するデオキシリボヌクレオチド残基とした。
アプタマー4:aCas757BR8m4(配列番号4)
GGATAGCAGCAGGGACCTCTTATACCTGAGCGGCTCATTACCCTTCCGACTGGTCGCCCGCTTACCGAATGATTTGCCCGCTACGATATG
アプタマー5:aCas757BR8m4s62(配列番号5)
GGATAGCAGCAGGGACCTCTTATACCTGAGCGGCTCATTACCCTTCCGACTGGTCGCCCGCT
アプタマー4および5の推定二次構造を、図8(B)に示す。ただし、これには限定されない。
アプタマー4および5を使用し、試料として、前記αカゼイン試料を使用し、前記試料におけるαカゼインの濃度を、50、100、200、および400nmol/Lとした以外は同様にして、結合性の解析を行い、前記試料のインジェクション開始後の所定時間におけるシグナル強度を求めた。
この結果を図10に示す。図10(A)および(B)は、それぞれ、αカゼインに対するアプタマー4および5の結合性を示すグラフであり、横軸は、前記試料のインジェクション開始後の経過時間(秒)を示し、縦軸は、シグナル強度(RU)を示す。図10(A)および(B)に示すように、アプタマー4およびその小型化配列であるアプタマー5は、αカゼインの濃度が増加するにつれて、シグナル強度が増加した。
さらに、前記図10のSPR解析の結果から、動態パラメータを算出した。この結果、アプタマー4および5は、αカゼインに対する解離定数(KD)が、それぞれ、12.3×10−9mol/L、および16.7×10−9mol/Lであり、優れた結合性であることがわかった。
[実施例5]
本発明のアプタマーについて、加熱したαカゼインに対する結合性を、SPR解析により確認した。
試料として、加熱αカゼイン試料を使用した以外は実施例4と同様にして、結合性の解析を行い、前記試料のインジェクション開始後の所定時間におけるシグナル強度を求めた。前記加熱αカゼイン試料は、前記αカゼイン試料を、95℃、10分の条件で加熱処理することにより調製した。
この結果を図11および12に示す。図11(A)および(B)は、加熱αカゼインに対するアプタマー2および3の結合性を示すグラフであり、横軸は、前記試料のインジェクション開始後の経過時間(秒)を示し、縦軸は、シグナル強度(RU)を示す。図11(A)および(B)に示すように、アプタマー2およびその小型化配列であるアプタマー3は、加熱αカゼインの濃度が増加するにつれて、シグナル強度が増加した。
図12(A)および(B)は、加熱αカゼインに対するアプタマー4および5の結合性を示すグラフであり、横軸は、前記試料のインジェクション開始後の経過時間(秒)を示し、縦軸は、シグナル強度(RU)を示す。図12(A)および(B)に示すように、アプタマー4およびその小型化配列であるアプタマー5は、加熱αカゼインの濃度が増加するにつれて、シグナル強度が増加した。
さらに、前記図11および12のSPR解析の結果から、動態パラメータを算出した。この結果、アプタマー2〜5は、加熱αカゼインに対する解離定数(KD)が、それぞれ、21.3×10−9mol/L、8.29×10−9mol/L、14.7×10−9mol/L、および22.2×10−9mol/Lであり、優れた結合性であることがわかった。
[実施例6]
本発明のアプタマーについて、牛乳試料に対する結合性を、SPR解析により確認した。
アプタマーとして、アプタマー2〜5を使用し、試料として、100ppmの前記牛乳試料、および前記加熱牛乳試料を使用した以外は実施例1と同様にして、結合性の解析を行った。また、前記アプタマーの交差反応の確認のため、前記グルテン試料、前記卵試料、および前記生ピーナッツ試料を使用した以外は同様にして、結合性の解析を行った。
この結果を図13に示す。図13は、加熱牛乳試料に対するアプタマー2〜5の結合性を示すグラフであり、横軸は、アプタマーの種類を示し、縦軸は、シグナル強度(RU)を示す。横軸において、左から順に、アプタマー2、アプタマー4、アプタマー3、およびアプタマー5を示す。各グラフは、左から順に、牛乳試料、加熱牛乳試料、グルテン試料、卵試料、および生ピーナッツ試料を示す。図13に示すように、アプタマー2〜5は、牛乳試料および加熱牛乳試料に対して、結合性を示した。一方、アプタマー2〜5は、グルテン試料、卵試料、および生ピーナッツ試料に対しては、シグナル強度が0以下であり、結合性を示さなかった。
以上の結果から、本発明のアプタマーは、加熱した乳由来αカゼインに対しても特異的に結合し、それを測定により検出できることがわかった。
[実施例7]
本発明のアプタマーについて、牛乳由来αカゼインに対する結合性を、SPR解析により確認した。
下記ポリヌクレオチドのアプタマー6および7を、実施例1と同様にして、合成した。アプタマー6は、アプタマー2の小型化配列であるアプタマー3を、さらに小型化した配列であり、アプタマー7は、アプタマー4の小型化配列である。下記配列番号6および7のポリヌクレオチドにおいて、下線部で示される「T」は、天然チミン(T)に代えて、チミンの5位が置換された5’−ベンジルアミノカルボニルウラシル(BndU)を有するデオキシリボヌクレオチド残基とし、下線部で示される「C」は、天然シトシン(C)に代えて、シトシンの5位が置換された5’−メチルシトシンを有するデオキシリボヌクレオチド残基とした。
アプタマー6:aCas757BR8m3s63(配列番号6)
GGATAGCAGCAGGGACCTCTTATACGTCGGTGCTGGTGTTGTATAGACCCCCTTATATTATAA
アプタマー7:aCas757BR8m4s44(配列番号7)
TTATACCTGAGCGGCTCATTACCCTTCCGACTGGTCGCCCGCTC
アプタマー6および7の推定二次構造を、図14に示す。ただし、これには限定されない。
前記アプタマーは、その5’末端を、ビオチン修飾し、後述するSPRに使用した。前記ビオチン修飾アプタマーは、95℃、5分の条件で熱変性させたものを使用した。
前記試料は、牛乳由来αカゼイン(C6780-19、SIGMA社製)を、SB1Tバッファーに懸濁し、一晩溶解させた後、遠心(12,000rpm、15分、室温)し分離した。前記分離した上清を、未変性αカゼインを含む抽出液として得た。これをSB1T(+)バッファーで希釈し、αカゼイン試料とした。前記SB1T(+)バッファーの組成は、40mmol/L HEPES、125mmol/L NaCl、5mmol/L KCl、1mmol/L MgCl2、0.01% Tween(登録商標)20および0.1mmol/L Sodium Dextran Sulfate 5000とし、pHは、7.5とした。
結合性の解析には、ProteON XPR36(BioRad社)を、その使用説明書にしたがって使用した。
まず、前記ProteON専用のセンサーチップとして、ストレプトアビジンが固定化されたチップ(商品名 ProteOn NLC Sensor Chip、BioRad社)を、前記ProteON XPR36にセットした。前記センサーチップのフローセルに、前記SB1Tバッファーを用いて、200nmol/Lの前記ビオチン修飾アプタマーを、流速25μL/minで80秒間インジェクションし、シグナル強度が約800RUになるまで結合させた。そして、前記チップの前記フローセルを、10μmol/Lのビオチンを含む超純水(DDW)を用いて、ブロッキングした。続いて、所定のタンパク質濃度(100、200、400および800nmol/L)の前記αカゼイン試料を、それぞれ、前記SB1T(+)バッファーを用いて、流速50μL/minで120秒間インジェクションし、引き続き、同じ条件で、前記SB1T(+)バッファーを流して、流速50μL/minで300秒間洗浄を行った。前記試料のインジェクション開始後、所定時間におけるシグナル強度(RU)を求めた。
この結果を図15に示す。図15(A)および(B)は、それぞれ、αカゼインに対するアプタマー6および7の結合性を示すグラフであり、横軸は、前記試料のインジェクション開始後の経過時間(秒)を示し、縦軸は、シグナル強度(RU)を示す。図15(A)および(B)に示すように、アプタマー6および7は、αカゼインの濃度が増加するにつれて、シグナル強度が増加した。
さらに、前記図15のSPR解析の結果から、動態パラメータを算出した。この結果、アプタマー6および7は、αカゼインに対する解離定数(KD)が、それぞれ、18×10−9mol/L、および17.2×10−9mol/Lであり、優れた結合性であることがわかった。
[実施例8]
本発明のアプタマーについて、牛乳由来αカゼインに対する結合性を、SPR解析により確認した。
下記ポリヌクレオチドのアプタマー8および9を、実施例1と同様にして、合成した。アプタマー8および9は、アプタマー2の部分配列である。下記配列番号8および9のポリヌクレオチドにおいて、下線部で示される「T」は、天然チミン(T)に代えて、チミンの5位が置換された5’−ベンジルアミノカルボニルウラシル(BndU)を有するデオキシリボヌクレオチド残基とし、下線部で示される「C」は、天然シトシン(C)に代えて、シトシンの5位が置換された5’−メチルシトシンを有するデオキシリボヌクレオチド残基とした。
アプタマー8:aCas757BR8m3s63b(配列番号8)
GGATAGACCTCTTATACGTCTGTTGTATAGACCCCCTTATATTATAA
アプタマー9:aCas757BR8m3s63c(配列番号9)
GGATAGCAGCACTCTTATACTGCTGGTGTTGTATAGACCCCCTTATATTATAA
アプタマー8および9の推定二次構造を、図16に示す。ただし、これには限定されない。
アプタマー8および9を使用した以外は実施例7と同様にして、結合性の解析を行い、前記試料のインジェクション開始後の所定時間におけるシグナル強度を求めた。
この結果を図17に示す。図17(A)および(B)は、それぞれ、αカゼインに対するアプタマー8および9の結合性を示すグラフであり、横軸は、前記試料のインジェクション開始後の経過時間(秒)を示し、縦軸は、シグナル強度(RU)を示す。図17(A)および(B)に示すように、アプタマー8および9は、αカゼインの濃度が増加するにつれて、シグナル強度が増加した。
さらに、前記図17のSPR解析の結果から、動態パラメータを算出した。この結果、アプタマー8および9は、αカゼインに対する解離定数(KD)が、それぞれ、12.9×10−9mol/L、および8.59×10−9mol/Lであり、優れた結合性であることがわかった。
以上、実施形態および実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をできる。
この出願は、2016年11月21日に出願された日本出願特願2016−226350を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。