JPWO2018037754A1 - 立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法 - Google Patents

立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法 Download PDF

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Abstract

所定の開先条件として、板厚:10mm以上の2枚の厚鋼材を、ウイービングを用いる一層溶接または多層溶接により接合する立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法において、REMを所定量含有する溶接ワイヤを用いるとともに、曲げ部とこの曲げ部によって画定される先端部とをそなえる溶接トーチを用いて、初層溶接のウイービングを行うものとし、その際、厚鋼材の開先面に対するウイービング時に、所定の条件で溶接トーチの先端部を該厚鋼材の開先面に向けて揺動させる。

Description

本発明は、狭開先ガスシールドアーク溶接方法に関するものであって、特には2枚の厚鋼材の突き合わせ溶接に適用することができる、立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法に関するものである。
ここで、「狭開先」とは、開先角度が20°以下でかつ開先ギャップが20mm以下であることを意味する。
鋼の溶接施工に用いられるガスシールドアーク溶接は、CO2単独のガス、あるいはArとCO2との混合ガスを溶融部のシールドに用いる消耗電極式が一般的である。このようなガスシールドアーク溶接は、自動車、建築、橋梁および電気機器等の製造分野において幅広く用いられている。
ところで近年、鋼構造物の大型化・厚肉化に伴い、製作過程での溶接、特に鋼材の突き合わせ溶接における溶着量が増大し、さらには溶接施工に多くの時間が必要となり、施工コストの増大を招いている。
上述の問題を改善する方法として、板厚に対して小さい間隙の開先をアーク溶接法により多層溶接する、狭開先ガスシールドアーク溶接の適用が考えられる。この狭開先ガスシールドアーク溶接は、通常のガスシールドアーク溶接と比べ溶着量が少なくなるので、溶接の高能率化・省エネルギー化が達成でき、ひいては施工コストの低減をもたらすものと期待される。
一方、立向きの高能率溶接には、通常、エレクトロスラグ溶接が適用されているが、1パス大入熱溶接が基本であり、板厚が60mmを超える溶接では入熱過多となり靭性低下が懸念されている。また、1パス溶接には板厚の限界があり、特に板厚が65mmを超える溶接は、未だ技術確立できていないのが現状である。
このため、狭開先ガスシールドアーク溶接を立向き溶接に適用した、高品質でかつ高能率な溶接方法を開発することが望まれている。
このような狭開先ガスシールドアーク溶接を立向き溶接に適用した溶接方法として、例えば、特許文献1には、両面U型開先継手を対象とする両側多層溶接方法が開示されている。この溶接方法では、イナートガスを用いたTIG溶接による積層溶接を行っており、イナートガスを用いることでスラグやスパッタの発生を抑制し、積層欠陥を防ぐこととしている。
しかしながら、非消耗電極式であるTIG溶接は、消耗電極である鋼ワイヤを用いるMAG溶接やCO2溶接と比較して、溶接法そのものの能率が大きく劣る。
また、特許文献2には、スパッタや融合不良を抑制するために溶接トーチのウイービングを行う、狭開先の立向き溶接方法が開示されている。
しかし、この溶接方法では、溶接トーチのウイービング方向が、開先深さ方向ではなく、鋼板表面方向であるため、溶融金属が垂れる前に溶接トーチをウイービングさせる必要があり、結果的に、溶接電流を150A程度の低電流とし、1パス当たりの溶着量(≒入熱量)を抑える必要が生じる。
そのため、この溶接方法を板厚の大きい厚鋼材の溶接に適用する場合には、少量多パスの積層溶接となって、溶け込み不良等の積層欠陥が多くなる他、溶接能率が大きく低下する。
さらに、特許文献3には、特許文献2と同様、融合不良を抑制するために溶接トーチのウイービングを行う、立向き溶接方法が開示されている。
ここで開示される面角度(開先角度)は26.3〜52°と広めではあるが、ここでの溶接トーチのウイービングは開先深さ方向に対しても行われる。このため、特許文献3の立向き溶接方法では、1パス当たりの溶着量を比較的多くとることが可能である。
しかし、開先深さ方向のウイービング量が小さく、また溶接金属および溶接ワイヤ組成が考慮されていないため、1パス当たりの溶着量(≒入熱量)を抑える必要が生じ、1パス当たりの溶接深さは10mm程度と浅くなる。
そのため、この溶接方法を板厚の大きい厚鋼材の溶接に適用する場合にも、やはり少量多パスの積層溶接となって、溶け込み不良等の積層欠陥が多くなる他、溶接能率が低下する。
また、特許文献4には、極厚材の1パス溶接を可能にした2電極のエレクトロガスアーク溶接装置が開示されている。
この2電極のエレクトロガスアーク溶接装置の使用により、板厚:70mm程度までの厚鋼材の接合が可能になる。しかし、2電極化により入熱量が360kJ/cm程度と大幅に増加するため、鋼板への熱影響が大きく、継手に高い特性(強度、靭性)が要求される場合、このような特性を満足させることが非常に困難となる。
また、この2電極のエレクトロガスアーク溶接装置では、開先において、裏面側にはセラミックの裏当てを、表面(溶接機側)には水冷式の銅当金の押し付け機構を設けることが不可欠であり、溶融金属の垂れの心配が無い反面、溶接装置が複雑となる。
なお、この2電極のエレクトロガスアーク溶接装置では、表面(溶接機側)に銅当金の押し付け機構を設けることが不可欠であるため、1パス溶接が基本であり、多パスの積層溶接として低入熱化を図ることは困難である。
特開2009−61483号公報 特開2010−115700号公報 特開2001−205436号公報 特開平10−118771号公報 特許第5884209号公報
上記したように、厚鋼材の溶接に適用することができる、高品質でかつ高能率な立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法は、未だ開発されていないのが現状である。
一方、溶接自動化技術(溶接ロボット)の軽量・高機能・高精度化が進み、これまで困難であった開先形状と溶接姿勢に適した溶接トーチのウイービングが可能となり、これを活用することにより、鋼材、開先形状、溶接姿勢および溶接材料(ワイヤ)に適した溶接施工(条件設定)が可能となってきている。
本発明は、高機能でかつ高精度の溶接自動化技術を活用し、開先形状や溶接姿勢等に応じた精密な溶接トーチのウイービングを行うことにより、高品質でかつ高能率な厚鋼材の溶接を可能ならしめた、立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法を提供することを目的とする。
さて、発明者らは、上記の課題を解決すべく検討を重ね、先に、
「開先角度を25°以下、開先ギャップを20mm以下として、板厚が40mm以上である2枚の厚鋼材を、ウイービングを用いる立向き多層溶接により接合する立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法において、
初層溶接時に、溶接トーチの角度を水平方向に対して25°以上75°以下、溶接入熱を30kJ/cm以上170kJ/cm以下にするとともに、板厚方向へのウイービング深さを15mm以上50mm以下、かつ初層溶接における溶接ビード幅をWとした場合に、板厚方向および溶接線に直角な方向へのウイービング最大幅を(W−6)mm以上Wmm以下として、溶接トーチのウイービングを行い、
前記初層溶接における接合深さを20mm以上50mm以下とする立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。」
を開発し、特許文献5において開示した。
上掲特許文献5の技術により、厚鋼材の溶接に適用できる、高品質でかつ高能率な立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法を提供することが可能となった。
しかしながら、特許文献5の技術では、開先角度がさらに小さくなる場合、溶接ワイヤの組成によっては、アークが開先壁面を這い上がって溶接が不安定になったり、溶接中にスパッタが発生して溶接欠陥が発生し易くなるという問題が生じた。
そこで発明者らは、上記の問題を解決すべく、さらに検討を重ねたところ、
・溶接ワイヤとして、REMを0.015〜0.100質量%の範囲で添加した溶接ワイヤを用いるとともに、
・初層溶接における溶接条件をさらに詳細に制御する、すなわち、曲げ部とこの曲げ部によって画定される先端部とをそなえる溶接トーチにより、ウイービングを行うものとし、その際、厚鋼材の開先面に対するウイービング時に、溶接トーチの先端部を該厚鋼材の開先面に向けて適正な条件で搖動させる、
ことにより、開先角度がさらに小さくなる場合であっても、アークの開先壁面への這い上がりを防止して、開先面を十分に溶融させることが可能となり、その結果、溶接欠陥の発生防止を図りつつ十分な接合深さを確保でき、高電流の立向き溶接において問題となる溶融金属の垂れの抑制を含むビード形状の安定化、さらには溶接継手の高靭性化を達成できる、との知見を得た。
本発明は、上記の知見に基づき、さらに検討を重ねて完成させたものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.開先角度を20°以下、開先ギャップを20mm以下として、板厚:10mm以上の2枚の厚鋼材を、ウイービングを用いる一層溶接または多層溶接により接合する立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法において、
REM:0.015〜0.100質量%を含有する溶接ワイヤを用いるとともに、
曲げ部と該曲げ部によって画定される先端部とをそなえる溶接トーチにより、初層溶接のウイービングを行うものとし、その際、該厚鋼材の開先面に対するウイービング時に、該溶接トーチの先端部を該厚鋼材の開先面に向けて揺動させ、該厚鋼材の板厚方向から見て該溶接トーチの先端部が溶接線方向と揃う位置を基準位置として、該基準位置における該溶接トーチの先端部の水平方向に対する角度θ1を10°以上45°以下、該基準位置からの該溶接トーチの先端部の揺動角度θ2を5°以上60°以下とし、
該初層溶接における接合深さを10mm以上とする、
立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
2.前記接合を一層溶接とし、かつ前記開先ギャップを前記厚鋼材の板厚の25%以下とする、前記1に記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
3.前記接合を多層溶接とし、かつ前記初層溶接における接合深さを10mm以上70mm以下とする、前記1に記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
4.前記初層溶接のウイービングにおいて、溶接線方向から見た前記溶接トーチのウイービングパターンがコ字形である、前記1〜3のいずれかに記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
本発明によれば、板厚が10mm以上の厚鋼材を開先角度が小さい開先条件で溶接する場合であっても、立向き溶接において問題となる溶融金属の垂れ抑制を含むビード形状の安定化と溶接欠陥の発生防止を図りつつ、高品質でかつ高能率な狭開先ガスシールドアーク溶接を実施して、高靭性の溶接継手を得ることができる。
そして、本発明の溶接方法は、通常のガスシールドアーク溶接と比べ溶着量が少なく、溶接の高能率化による省エネルギー化も達成できるので、溶接施工コストの大幅な低減が可能となる。
また、本発明の溶接方法では、特許文献4に示したエレクトロガスアーク溶接装置のような溶融金属の垂れ落ちを防止する水冷式の銅当金の押し付け機構は不要なので、装置の複雑化を回避することができ、さらには、多パスかつ所定の開先形状での溶接施工により1パス当たりの溶接入熱を抑制することができるので、溶接金属および鋼材熱影響部で所望とする機械的特性の確保が容易となる。
各種開先形状の例を示すものである。 V形の開先形状において、本発明の一実施形態に係る溶接方法により初層溶接を施工する際の施工要領を示すものである。 厚鋼材の開先面に対するウイービング時における、溶接トーチの揺動状態を示す模式図である。 V形の開先形状において、初層溶接を施した後の開先断面の一例を示すものである。 初層溶接のウイービングにおける、溶接線方向から見た溶接トーチのウイービングパターンを示すものである。
以下、本発明を具体的に説明する。
図1(a)〜(c)は、各種開先形状の例を示すものである。図中、符号1が厚鋼材、2が厚鋼材の開先面、3が(Y形開先における)鋼材下段部の開先であり、記号θで開先角度を、Gで開先ギャップを、tで板厚を、hで(Y形開先における)鋼材下段部の開先高さを示す。
同図で示したように、ここで対象とする開先形状はV形開先(I形開先およびレ形開先を含む)およびY形開先のいずれとすることも可能であり、また図1(c)に示すように多数段のY形開先とすることも可能である。
なお、図1(b)および(c)に示すように、Y形開先の場合の開先角度および開先ギャップは、鋼材下段部の開先における開先角度および開先ギャップとする。ここで、鋼材下段部の開先とは、溶接時に裏面(溶接装置(溶接トーチ)側の面を表面、その反対側の面を裏面とする)となる鋼材面から板厚の20〜40%程度までの領域を意味する。
また、図2は、V形の開先形状において、本発明の一実施形態に係る溶接方法により初層溶接を施工する際の施工要領を示すものである。図中、符号4が溶接トーチ、5が溶接ワイヤ、6が裏当て材である。なお、溶接線、溶融池および溶接ビードについては、図示を省略している。
ここに、本溶接方法は、図2に示すように、所定の板厚となる2枚の厚鋼材を突き合わせ、これらの厚鋼材を、ウイービングを用いる立向き溶接により接合するガスシールドアーク溶接であり、進行方向を上向きとする上進溶接を基本とする。そして、厚鋼材の開先面に対するウイービング時に、溶接トーチの先端部をこの厚鋼材の開先面に向けて揺動させるのである。
なお、ここでは、V形の開先形状を例にして示したが、他の開先形状でも同様である。
さらに、図3は、厚鋼材の開先面に対するウイービング時における、溶接トーチの揺動状態を示す模式図であり、図3(a)および(b)はそれぞれ板厚方向(図2の厚鋼材の裏面(裏当て材のある側))から見た溶接トーチが基準位置にある状態および溶接トーチがθ2の角度で揺動した状態を示すものであり、図3(c)は図3(a)のX矢視図である。なお、基準位置とは、図3(a)のように、板厚方向から見て溶接トーチの先端部(中心線、つまり溶接ワイヤの突き出し方向)が溶接線方向と揃う位置である。また、図3(a)および(b)では、溶融させようとする厚鋼材の開先面(図示省略)が、紙面向かって左側にあるものとする。
図中、符号7が本体部、8が給電チップ、9が曲げ部、10が先端部である。ここで、先端部10は、曲げ部9よりも溶接ワイヤ(図示省略)側となる部分である。なお、曲げ部9は、溶接トーチを構成する本体部7および給電チップ8のいずれに設けてもよいが、施工性の面などからは、給電チップ8に設けることが好ましい。
また、θ1は基準位置における溶接トーチの先端部の水平方向に対する角度、θ2は基準位置からの溶接トーチの先端部の揺動角度、θ3は溶接トーチの曲げ部における曲げ角度、lは溶接トーチの先端部の長さであり、これらはそれぞれ溶接トーチ各部の中心線を基準とする。
また、図4は、V形の開先形状において、初層溶接を施した後の開先断面の一例を示すものである。図中、符号11が溶接ビードであり、記号Dで初層溶接における接合深さを、Wで初層溶接における溶接ビード幅(初層溶接後の開先間のギャップ)を示す。
なお、初層溶接における接合深さDは、溶接時に裏面となる鋼材面を起点とした場合の初層溶接における溶接ビード高さの最小値(起点の鋼材面から最も近い(低い)初層溶接ビード高さ)である。
ここでは、V形の開先形状を例にして示したが、他の開先形状でもDおよびWは同様である。
次に、本溶接方法において、開先角度、開先ギャップおよび鋼材の板厚を前記の範囲に限定した理由について説明する。
開先角度θ:20°以下
鋼材の開先部は小さいほどより早く高能率な溶接を可能とする反面、融合不良等の欠陥が生じやすい。また、開先角度が20°を超える場合の溶接は、従来の施工方法でも実施可能である。このため、本溶接方法では、従来の施工方法では施工が困難であり、かつ一層の高能率化が見込まれる開先角度:20°以下の場合を対象とする。
なお、V形開先において、開先角度が0°の場合はいわゆるI形開先と呼ばれ、溶着量の面からはこの0°の場合が最も効率的であり、開先角度が0°(I形開先)であってもよいが、溶接熱ひずみにより溶接中に開先が閉じてくるため、これを見込んで、板厚t(ただし、Y形開先の場合には鋼材下段部の開先高さh)に応じた開先角度を設定することが好ましい。
具体的には、開先角度は(0.5×t/20)〜(2.0×t/20)°の範囲とすることが好ましく、さらに好ましくは(0.8×t/20)〜(1.2×t/20)°の範囲である。例えば、板厚tが100mmの場合、開先角度は2.5〜10°の範囲が好ましく、さらに好ましくは4〜6°の範囲である。
ただし、板厚tが100mmを超えると、好適範囲の上限は10°を超えるようになるが、この場合の好適範囲の上限は10°とする。
開先ギャップG:20mm以下
鋼材の開先部は小さいほど、より早く高能率な溶接を可能とする。また、開先ギャップが20mmを超える場合の溶接は、溶融金属が垂れ易く施工が困難である。その対策には、溶接電流を低く抑えることが必要となるが、スラグ巻込み等の溶接欠陥が発生し易くなる。そのため、開先ギャップは20mm以下の場合を対象とする。好ましくは4mm以上12mm以下の範囲である。また、特に、初層溶接のみからなる一層溶接により接合する場合には、開先ギャップは、被溶接材となる鋼材の板厚の25%以下とすることがより好ましい。さらに好ましくは20%以下である。
板厚t:10mm以上
鋼材の板厚は10mm以上とする。というのは、鋼材の板厚が10mm未満であれば、従来の溶接方法、例えば、半フラックスコアードワイヤを用いた半自動CO2アーク溶接を用いても、溶接入熱量を抑制しつつ健全な継手が得られる場合もあるからである。好ましくは15mm以上、より好ましくは20mm以上である。
なお、一般の圧延鋼材を対象とする場合、板厚は一般に100mmが上限である。よって、ここで対象とする鋼材の板厚の上限は100mm以下とすることが好ましい。
また、被溶接材とする鋼種としては、高張力鋼(例えば、造船用極厚YP460MPa級鋼(引張強さ570MPa級鋼)や建築用TMCP鋼SA440(引張強さ590MPa級鋼))が特に好適である。というのは、高張力鋼は、溶接入熱制限が厳しく、溶接金属に割れが生じ易い他、溶接熱影響により要求される継手強度や靭性が得られない。これに対し本溶接方法では、入熱量:170kJ/cm以下で効率良く溶接が可能であり、590MPa級高張力鋼板、高合金系となる590MPa級耐食鋼の溶接も可能である。当然、軟鋼にも問題なく対応できる。
以上、本溶接方法において、開先角度、開先ギャップおよび鋼材の板厚を限定した理由について説明したが、本溶接方法では、被溶接材となる鋼材と共金系の成分組成にREMを添加した溶接ワイヤを用いることが重要である。
以下、本溶接方法で使用する溶接ワイヤの成分組成について、説明する。
REM:0.015〜0.100質量%
REMは、製鋼および鋳造時の介在物の微細化や、溶接金属の靱性改善のために有効な元素である。また、REMは、特に溶接ワイヤを正極性(ワイヤマイナス)とした場合や、溶接電流を大きくした場合に、溶滴の微細化と溶滴移行の安定化、さらには開先面へのアークの発生を一層有利に抑制できるという効果も有する。この溶滴の微細化と溶滴移行の安定化により、スパッタの発生を抑制し、安定したガスシールドアーク溶接を行うことが可能となる。ここで、REM含有量が0.015質量%未満では、この溶滴の微細化と溶滴移行の安定化効果が得られない。一方、REM含有量が0.100質量%を超えると、溶接ワイヤの製造工程で割れが生じたり、溶接金属の靱性の低下を招く。したがって、溶接ワイヤのREM含有量は、0.015〜0.100質量%の範囲とする。好ましくは0.025〜0.050質量%の範囲である。
なお、上記したREM以外の成分については特に限定されるものではなく、被溶接材となる鋼材の鋼種などに応じて適宜選択すればよい。例えば、上述したような高張力鋼板を溶接する場合、上記したREMに加えて、C:0.10〜0.20質量%、Si:0.05〜2.5質量%、Mn:0.25〜3.5質量%、P:0.05質量%以下、S:0.02質量%以下、Al:0.005〜3.00質量%、O:0.008質量%以下およびN:0.008質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物となる成分組成とすればよい。
また、使用する溶接ワイヤの極性は、REMの添加による溶滴の微細化と溶滴移行の安定化という効果を十分に得る観点から、ワイヤマイナス(正極性)とすることが好ましい。
そして、本溶接方法では、上記したREMを添加した溶接ワイヤを用いるとともに、開先形状に適した入熱量で、初層溶接条件を適正に制御しながら効率良く溶接し、所定の接合深さを得ることが重要である。
以下、この溶接条件および接合深さについて説明する。
基準位置における溶接トーチの先端部の水平方向に対する角度θ1:10°以上45°以下
図3のように、曲げ部とこの曲げ部によって画定される先端部とをそなえる溶接トーチを用いて、溶接トーチの先端部を厚鋼材の開先面に向けて揺動させながらウイービングを行うことにより、給電チップと厚鋼材の開先面の接触を回避しつつワイヤ先端を開先面に近づけることが可能になる。また、ワイヤ先端部も開先面に向くこととなるので、アークによる開先面の直接溶融が可能となる。このため、1パスあたりの溶接入熱量を抑制する場合であっても、開先面を十分に溶融させて溶接欠陥の発生を抑制できる。さらに、溶接トーチのウイービングによるアーク入熱範囲の広がりにより、溶融金属の垂れ落ちを抑制して、ビード形状の安定化を図ることもできる。
しかし、θ1が10°未満になると、上記の効果が十分に得られず、溶接欠陥や溶融金属の垂れ落ちが発生する。一方、θ1が45°を超えると、溶接トーチの曲げ部におけるワイヤの送給抵抗が増大して、溶接を安定的に継続することが困難となり、やはり溶接欠陥や溶融金属の垂れ落ちが発生する。このため、基準位置における溶接トーチの先端部の水平方向に対する角度θ1は10°以上45°以下とする。好ましくは、15°以上、30°以下である。
基準位置からの該溶接トーチの先端部の揺動角度θ2:5°以上60°以下
上述したように、曲げ部とこの曲げ部によって画定される先端部とをそなえる溶接トーチを用いて、溶接トーチの先端部を厚鋼材の開先面に向けて揺動させながらウイービングを行うことにより、給電チップと厚鋼材の開先面の接触を回避しつつワイヤ先端を開先面に近づけることが可能になる。また、ワイヤ先端部も開先面に向くこととなるので、アークによる開先面の直接溶融が可能となる。このため、1パスあたりの溶接入熱量を抑制する場合であっても、開先面を十分に溶融させて溶接欠陥の発生を抑制できる。さらに、溶接トーチのウイービングによるアーク入熱範囲の広がりにより、溶融金属の垂れ落ちを抑制して、ビード形状の安定化を図ることもできる。
しかし、θ2が5°未満になると、上記の効果が十分に得られず、溶接欠陥や溶融金属の垂れ落ちが発生する。一方、θ2が60°を超えると、開先面が過剰に溶融し、開先面のアンダカットによる溶接欠陥が生じる。このため、基準位置からの溶接トーチの先端部の揺動角度θ2は5°以上60°以下とする。好ましくは、10°以上、45°以下である。
なお、溶接トーチの曲げ部における曲げ角度θ3および溶接トーチの先端部の長さlは、特に限定されるものではないが、θ1およびθ2を上記の範囲に制御する観点からは、θ3を10〜45°の範囲、lを10〜50mmの範囲とすることが好ましい。
初層溶接における接合深さD:10mm以上
被溶接材とする厚鋼材、特には板厚:40mm以上の厚鋼材を、所定の開先形状として溶接するには、初層溶接における接合深さを10mm以上とする必要がある。また、初層溶接における接合深さが10mm未満では、溶接熱が集中するため、溶融金属の垂れが発生する。従って、初層溶接における接合深さは10mm以上とする。好ましくは25mm以上である。なお、初層溶接における接合深さの上限は、鋼材の板厚の上限と同じ、つまり100mm程度である。
ただし、多層溶接を行う場合、特に被溶接材となる鋼材の板厚が80mm以上の場合、初層溶接における接合深さが70mmを超えると、溶接入熱が過多となりやすい他、高温割れや、溶接中の熱が分散することによる開先面の融合不良、スラグ巻き込みなどの溶接欠陥が発生するおそれがある。よって、多層溶接を行う場合、初層溶接における接合深さは10mm以上、70mm以下とすることが好ましい。より好ましくは20mm以上、60mm以下、さらに好ましくは25mm以上、55mm以下である。なお、一層溶接の場合、より好ましくは15mm以上、65mm以下である。
以上、基本条件について説明したが、本発明の溶接方法では、以下の条件をさらに満足させることが好適である。
溶接トーチのウイービングにおける板厚方向へのウイービング深さL:10mm以上70mm以下
本溶接方法は溶接トーチのウイービングを行うものであるが、この溶接トーチのウイービングにおける板厚方向へのウイービング深さLならびに後述する板厚方向および溶接線に直角な方向へのウイービング最大幅Mを適正に制御することも重要である。
ここで、各種ウイービングパターンにおける板厚方向へのウイービング深さLならびに板厚方向および溶接線に直角な方向へのウイービング最大幅Mは、図5(a)〜(d)に示すとおりになる。
なお、ここでいうウイービング深さLならびに後述する板厚方向および溶接線に直角な方向へのウイービング最大幅Mは、溶接トーチの先端部の揺動を考慮せず、溶接トーチの先端部が上記した基準位置にあると仮定して求めた溶接ワイヤ先端のウイービング深さおよびウイービング最大幅である。また、ここでいうウイービングパターンは、溶接トーチの先端部の揺動を考慮せず、この溶接トーチの先端部が常に上記した基準位置にあると仮定したときの溶接ワイヤ先端の軌跡である。
ここで、本溶接方法で基本とする立向き上進溶接においては、接合深さと板厚方向のウイービング幅は同程度になるため、板厚方向へのウイービング深さが10mm未満では、所望とする接合深さを得ることが困難となる。一方、板厚方向へのウイービング深さが70mmを超えると、所望とする接合深さを得ることが困難となるだけでなく、溶接入熱量が過多となって、溶接金属や鋼材の熱影響部において所望の機械的特性を得ることが困難となる他、高温割れや、溶接中の熱が分散することによる開先面の融合不良、スラグ巻き込みなどの溶接欠陥が発生し易くなる。
従って、板厚方向へのウイービング深さは、10mm以上70mm以下とする。好ましくは15mm以上、65mm以下である。なお、一層溶接の場合、好ましくは20mm以上60mm以下である。また、多層溶接の場合、好ましくは25mm以上55mm以下の範囲である。
溶接トーチのウイービングにおける板厚方向および溶接線に直角な方向へのウイービング最大幅M:(W−6)mm以上Wmm以下(W:初層溶接における溶接ビード幅)
開先面の未溶融を防ぐためには、板厚方向および溶接線に直角な方向へのウイービング最大幅を(W−6)mm以上とする必要がある。一方、板厚方向および溶接線に直角な方向へのウイービング最大幅がWmmを超えると、溶融金属の垂れが生じ、溶接が成り立たなくなるおそれがある。
従って、板厚方向および溶接線に直角な方向へのウイービング最大幅は、(W−6)mm以上Wmm以下の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、(W−4)mm以上(W−1)mm以下の範囲である。
なお、一層溶接の場合、Wは溶接時に表面(溶接装置(溶接トーチ)側の面)となる鋼材面での開先幅となる。
また、溶接トーチのウイービングパターンについては特に限定されず、図5(a)〜(d)に示すように、溶接線方向(溶接進行方向と一致し、通常は鉛直方向)から見てコ字形、V字形、台形および三角形等とすることができる。例えば、ウイービングパターンがコ字形または台形の場合、図5(a)および(b)のようなA点→B点およびC点→D点のウイービングが、厚鋼材の開先面に対するウイービングに該当するものとなる。この場合、A点→B点のウイービングでは、溶接トーチの先端部を紙面に向かって左側の厚鋼材の開先面に向けて揺動させる一方、C点→D点ののウイービングでは、溶接トーチの先端部を紙面に向かって右側の厚鋼材の開先面に向けて揺動させる。なお、B点→C点(台形の場合には、D点→A点も含む)のウイービングでは、溶接トーチの先端部を揺動させなくともよい。なお、図5(a)〜(d)中、溶接トーチの向きが変わる各点(図5(a)でいうとB点およびC点)での溶接トーチの軌跡は、角張るようにしても、丸みを帯びるようにしてもよい。
ただし、立向き上進溶接においては、溶接表面側に近い箇所でのウイービングは溶融金属の垂れ落ちを生じさせ易い。また、溶接トーチ動作が開先面から外れると、開先面の均一な溶融が得られず、融合不良等の溶接欠陥が生じ易い。特に、反転動作を必要としない一般的な台形および三角形のウイービングパターンは、装置負荷が小さい反面、溶接表面側に近い箇所での溶接トーチ動作(図5(b)における台形ウイービングパターンのD点→A点、図5(d)における三角形ウイービングパターンのC点→A点)により、溶融金属の垂れ落ちが生じ易い。このため、溶融金属の垂れ落ちを抑制するという観点からは、溶接表面側でのトーチ動作のないコ字形またはV字形のウイービングパターンとすることが好ましい。
さらに、V字形や三角形のウイービングパターンでは、開先ギャップが大きい(例えば、6mm以上)場合、溶接トーチ動作が開先面から外れてしまい(例えば、図5(c)におけるA点→B点の動作において、溶接トーチ先端の軌跡が開先面(溶接トーチに近い側)と平行でなくなるなど)、開先面の均一な溶融が得られず、融合不良等の溶接欠陥が生じ易くなる。従って、このような場合には、開先面と平行に溶接トーチを動作させることが容易なコ字形のウイービングパターンとすることが最適である。
なお、板厚方向における、ウイービング時の溶接ワイヤ先端の最深点(例えば、図5(a)、(b)におけるB点およびC点、図5(c)、(d)におけるB点)の鋼材裏面からの距離aは、通常2〜5mm程度である。
また、上記した開先形状に対し、コ字形ウイービングや台形ウイービングを適用する場合、図5(a)、(b)中のM1、M2、M3は、それぞれ2〜18mm、0〜10mm、0〜10mm程度となる。
さらに、ウイービング時の周波数や停止時間(図5に示すA点などの各点における停止時間)は特に限定されるものではなく、例えば周波数は0.25〜0.5Hz(好ましくは0.4〜0.5Hz)、停止時間は0〜0.5秒(好ましくは0.2〜0.3秒)程度とすればよい。
上記以外の条件については、特に規定する必要はないが、平均溶接電流270A未満では、溶融池が小さく、表面側ではトーチウイービング毎に溶融と凝固を繰り返す多層溶接のような状態となり融合不良、スラグ巻き込みが生じ易い。一方、平均溶接電流が360Aを超えると、溶融(溶接)金属の垂れが生じ易くなる他、溶接ヒュームとスパッタによりアーク点の確認が困難となるため施工中の調整が難しくなる。このため、平均溶接電流は、270〜360Aとすることが好ましい。また、平均溶接電流を270〜360Aとすることで、溶接ヒューム、スパッタの発生を抑えつつ安定した溶込みが得られることから、本溶接方法を実施する上で一層有利となる。
これ以外の条件については定法に従えばよく、例えば、溶接電圧:28〜37V(電流とともに上昇)、溶接速度(上進):1〜15cm/分(好適には4〜9cm/分)、ワイヤ突き出し長さ:20〜45mm、ワイヤ径:1.2〜1.6mm程度とすればよい。
また、シールドガス組成についても特に限定されず、CO2単独のガス、またはArとCO2との混合ガスなどを用いればよい。
また、多層溶接とする場合、溶接完了までの積層数は、積層欠陥を防止する観点から2〜4層程度とすることが好ましい。初層以外の各層における溶接条件については、特に限定されず、定法に従えばよく、例えば、上記した初層の溶接条件と同様とすればよい。
なお、本発明の溶接方法では、1層あたり1パスの溶接を基本とする。
表1に示す開先形状とした2枚の鋼材に、表2に示す溶接条件で、図3に示すような給電チップに曲げ部を有する溶接トーチ(θ3:15°、l:20mm)を用いて、狭開先の立向き上進ガスシールドアーク溶接を施した。
ここで、鋼材はいずれも、C:0.04〜0.06質量%、Si:0.1〜0.2質量%、Mn:1.8〜2.0質量%、P:0.01質量%以下、S:0.005質量%以下、Al:0.02〜0.06質量%、O:0.003質量%以下およびN:0.005質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物となる成分組成のものを用いた。なお、鋼材の開先加工には、ガス切断を用い、開先面には研削等の手入れは行わなかった。
また、溶接ワイヤは、鋼材強度用またはそれより1ランク上用のグレードの1.2mmφのソリッドワイヤを用いた。なお、表2に示したREM以外の溶接ワイヤの成分組成はいずれも、C:0.10〜0.20質量%、Si:0.6〜0.8質量%、Mn:1.8〜2.0質量%、P:0.01質量%以下、S:0.005質量%以下、Al:0.005〜0.03質量%、O:0.003質量%以下およびN:0.005質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物となる成分組成とした。
さらに、溶接電流は260〜340A、溶接電圧は28〜38V(電流とともに上昇)、平均溶接速度は2.0〜10.1cm/分(溶接中に調整)、平均のワイヤ突き出し長さは30mmとし、溶接長さは400mmとした。また、いずれの場合にも、シールドガスとしてはCO2単独のガスを用い、通常のアーク溶接のノズルとは別のガスシールド系統を設けて、溶接を行った。
なお、No.9〜11および14は多層溶接とし、初層以外の各層における溶接では、溶接電流を270〜360A、溶接電圧を28〜37Vの範囲として、ウイービングを適用したガスシールドアーク溶接を行い、溶接継手を仕上げた。また、No.1〜8、12、13、15、16および17は一層溶接として溶接継手を仕上げた。
初層溶接後、任意に選んだ5点の断面マクロ組織観察により、ビード幅および接合深さを測定した。なお、ビード幅については、測定した値の最大値を初層溶接におけるビード幅Wとし、接合深さについては、測定した値の最小値を初層溶接における接合深さDとした。
また、初層溶接時における溶融金属の垂れを、目視により次のように評価した。
◎:溶融金属の垂れなし
○:溶融金属の垂れ3箇所未満
×:溶融金属の垂れ3箇所以上、または、溶接中断
さらに、最終的に得られた溶接継手について、超音波探傷検査を実施し、次のように評価した。
◎:検出欠陥なし
○:欠陥長さが3mm以下の合格欠陥のみを検出
×:欠陥長さが3mmを超える欠陥を検出
加えて、最終的に得られた溶接継手について、JIS Z 2242に準拠(試験温度:0℃)して、溶接金属中心部がノッチ位置となるようにシャルピー衝撃試験を行い、試験温度の吸収エネルギーvE0(J)を測定し、次の基準により、溶接金属の靱性を評価した。
◎:vE0(J)が47J以上
○:vE0(J)が47J未満、かつ27J以上
×:vE0(J)が27J未満
これらの結果を表2に併記する。
Figure 2018037754
Figure 2018037754
表2に示したとおり、発明例であるNo.3〜7、9および10では、初層溶接において溶融金属の垂れはないか、あっても2箇所以下であった。また、超音波探傷検査でも、検出欠陥がないか、あっても欠陥長さが3mm以下であった。さらに、これらの発明例ではいずれも、優れた溶接金属の靭性が得られていた。
一方、比較例であるNo.1、2、8、11〜17は、3箇所以上の溶融金属の垂れがあるか、超音波探傷検査において欠陥長さが3mm超の欠陥が検出されるか、および/または、十分な溶接金属の靭性が得られなかった。
1:厚鋼材
2:厚鋼材の開先面
3:鋼材下段部の開先
4:溶接トーチ
5:溶接ワイヤ
6:裏当て材
7:本体部
8:給電チップ
9:曲げ部
10:先端部
11:溶接ビード

Claims (4)

  1. 開先角度を20°以下、開先ギャップを20mm以下として、板厚:10mm以上の2枚の厚鋼材を、ウイービングを用いる一層溶接または多層溶接により接合する立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法において、
    REM:0.015〜0.100質量%を含有する溶接ワイヤを用いるとともに、
    曲げ部と該曲げ部によって画定される先端部とをそなえる溶接トーチにより、初層溶接のウイービングを行うものとし、その際、該厚鋼材の開先面に対するウイービング時に、該溶接トーチの先端部を該厚鋼材の開先面に向けて揺動させ、該厚鋼材の板厚方向から見て該溶接トーチの先端部が溶接線方向と揃う位置を基準位置として、該基準位置における該溶接トーチの先端部の水平方向に対する角度θ1を10°以上45°以下、該基準位置からの該溶接トーチの先端部の揺動角度θ2を5°以上60°以下とし、
    該初層溶接における接合深さを10mm以上とする、
    立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
  2. 前記接合を一層溶接とし、かつ前記開先ギャップを前記厚鋼材の板厚の25%以下とする、請求項1に記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
  3. 前記接合を多層溶接とし、かつ前記初層溶接における接合深さを10mm以上70mm以下とする、請求項1に記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
  4. 前記初層溶接のウイービングにおいて、溶接線方向から見た前記溶接トーチのウイービングパターンがコ字形である、請求項1〜3のいずれかに記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
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