JPWO2018012223A1 - 塗布液、その製造方法、電子デバイス作製用インク、電子デバイス、有機エレクトロルミネッセンス素子、及び光電変換素子 - Google Patents

塗布液、その製造方法、電子デバイス作製用インク、電子デバイス、有機エレクトロルミネッセンス素子、及び光電変換素子 Download PDF

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Abstract

本発明の塗布液は、有機化合物と有機溶媒とを含む塗布液であって、50℃以下・大気圧の条件下での前記有機溶媒に対する溶存二酸化炭素濃度が、1ppm以上前記有機溶媒に対する飽和濃度以下の範囲内であることを特徴とする。

Description

本発明は、塗布液、その製造方法、電子デバイス作製用インク、電子デバイス、有機エレクトロルミネッセンス素子、及び光電変換素子に関し、特に、有機材料に付着した水分や酸素等を効率的に除去し、良好な性能の電子デバイスを作製することができる塗布液、その製造方法、電子デバイス作製用インク、電子デバイス、有機エレクトロルミネッセンス素子及び光電変換素子の提供に関する。
1 有機電子デバイスの普及状況と現状の課題
有機化合物を利用した電子デバイス、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子(organic elec特開2010−272619号公報、特開2014−078742号公報等に記載の手法を用いることができる。troluminescent diode:「OLED」、「有機EL素子」ともいう。)、有機光電変換素子、及び有機トランジスタなどの種々の電子デバイスが開発され、それらの技術的進展に伴い、様々な産業・市場分野での普及が進んでいる。
例えば、有機電子デバイスの典型的例である有機EL素子は、ディスプレイや照明、インジケータなどの様々な分野で利用が始まり、既に液晶ディスプレイや発光ダイオード(light emitting diode:LED)と共に現在の生活に入り込み、これから飛躍的普及拡大期を迎えようとしている。
しかし、有機EL素子等の有機電子デバイスの発展を促進するためには、その研究・開発過程で解決しなければならない問題は数多く残存している。とりわけ、有機化合物を利用することに由来する種々の問題が、各種有機電子デバイスに共通するあるいは特有の問題として残存している。これらの解決すべき問題は、量子効率や発光寿命等の性能の一層の向上と、生産性の一層の向上すなわちコストダウンとに直結する究極的課題であると言える。
上記究極的課題のうち、性能面の課題については、電子ディスプレイにおいては、有機EL素子は、既にスマートフォンのメインディスプレイに使われていることや、50インチを超える大型ディスプレイが商品となって市場に出ていること、照明・サイネージにおいても、白色素子で139Lm/Wという、蛍光灯の約2倍の発光効率が達成されていることや赤色リン光素子や緑色リン光素子では輝度半減寿命が100万時間の長寿命化が達成さており、最も難しい青色リン光素子でも10万時間を超える結果も出ていることから、精緻な層構成や細心の注意を払った成膜を施してやることで、既に実用に十分なレベルには達しているものと思われる。
一方、生産性、つまりコスト面の課題に関しては、後で詳述するように本来の有機EL素子の利点である、RGBサイド・バイ・サイド方式のディスプレイが大型ディスプレイにおいては量産に至っていないことや、生産負荷を低減させる目的で開発されている塗布法による製造方法が、溶媒や有機材料の精製及び取り扱いにおいて、まだまだ改善の余地が大きい。
つまり、生産性が低いことを解決することは、有機EL素子を発展させるための必要条件であると言える。また、このことは、他の有機電子デバイス、例えば有機光電変換素子についても同様であると考えられる。
そこで、以下において、特に生産性に係る究極的課題の観点から、有機電子デバイスの典型的例である有機EL素子の製造に関する従来技術の問題点について説明する。
2 有機機能層形成法に関する問題点
まず、有機機能層を形成する方法、すなわち真空蒸着法(「真空蒸着成膜法」ともいう。)と湿式塗布法(「ウエット・コーティング法」、「湿式塗布成膜法」ともいう。)に起因する問題点について述べる。
2.1 有機機能層に対する水分と酸素の影響
有機EL素子は、有機機能層の一つである発光層中に存在する発光材料(一般的には「ドーパント」ともいう。)に電子と正孔が注入され、その再結合が起こったときにできる励起子が、基底状態に戻る際に光を放出することを基本原理としている。
この励起子は、その名のとおり励起状態にある非常に活性な化学種であるため、容易に水分子や酸素分子と反応し、分解や変性などの化学変化又は状態変化を起こしやすく、発光性が減少してしまう。つまり、発光寿命が減少してしまう要因の1つである。
すなわち、発光層のような有機機能層を形成する際には、その形成過程において全く水分や酸素が入らない環境下で行う必要がある。
一方、有機EL素子では、LEDとは異なり、発光層を構成する有機化合物の存在状態は結晶ではなくアモルファス(非晶質)であることが高効率発光の条件となる。したがって、均質なアモルファス膜を形成するためには、成膜中における有機化合物の分子状態(アモルファス状態)並びにその周囲の環境が一定であることが望まれる。
したがって、上述の水分や酸素による弊害防止と有機化合物をアモルファス状態にする必要性等の理由から、これまでの良好な性能を発揮する有機EL素子の有機機能層に対する成膜方法は、真空蒸着法によるものであった。既に量産化されているスマートフォン用の有機ELディスプレイも、大型テレビに使われる有機ELディスプレイも、有機機能層の成膜方法には蒸着法が採用されている。
2.2 真空蒸着法による有機機能層形成の問題点
しかしながら、真空蒸着法により有機EL素子を作製する場合、発光色再現方式に関する下記のような問題がある。
有機エレクトロルミネッセンスは自発光であり、発光色は発光層を構成する発光材料で一義的に決まるため、基本的には赤(Red:R)、緑(Green:G)、青(Blue:B)の画素ごとに、それぞれの発光色の有機EL素子を作り、それをアレイ化してディスプレイにする方法(RGBサイド・バイ・サイド方式)が採用されてきた。
RGBサイド・バイ・再度方式の場合、RGBそれぞれの画素で、異なる発光層を形成する必要があり、それを大面積で行うために、シャドーマスクを画素毎にずらしながら各画素を形成していく方法が一般的である。このとき、発光層等の形成(成膜)方法が真空蒸着法であるため、蒸着源からの輻射熱でシャドーマスクが熱膨張し、画素ズレを起こしてしまうという決定的な問題がある。
この決定的な問題のため、スマートフォン用の小〜中型サイズのディスプレイは、RGBサイド・バイ・サイド方式で年間数億パネル生産されているにもかかわらず、50インチを越えるような大型ディスプレイにおいては、シャドーマスクの熱変形に端を発する製造歩留りが低く、大規模な生産は行われていない。
一方、フルカラーを再現するもう一つの方式として、有機EL素子から得られる白色光を、カラーフィルターを通すことで、RGBに色分割してフルカラー再現する方式(カラーフィルター方式)が採用されている。既に量産化されている大型ディスプレイは、画素ごとに、白色発光する有機EL素子がアレイ化されたものであり、カラーフィルター方式では独立の画素でコントラストの高い発光を得られるという有機EL素子そもそもの利点・特徴を十分に発揮できないという問題がある。
2.3 湿式塗布法による有機機能層形成の可能性
有機EL素子を構成する有機機能層は4層〜7層程度の積層構造を採り、さらに全体の層(膜)厚は100〜200nm程度である。これ以上薄すぎると、下地層となる電極の表面粗さの影響で、陽極と陰極が部分的に短絡してしまい、電流リーク現象が起こってしまう。
また、これよりも厚いと、有機EL素子の電荷伝導機構がオームの法則と異なり、チャイルド則にのっとる空間電荷制限電流(space charge limited current:SCLC)であるために、流れる電流密度は電極間距離の3乗に反比例してしまうことから、大幅な駆動電圧上昇が起こり、消費電力が大きくなってしまうという問題が生じる。
有機EL素子の有機機能層は低分子化合物を蒸着成膜することが一般的ではあるが、低分子化合物の代わりに、ポリフェニレンビニレンやポリフルオレンなどのようなπ共役系高分子をキャリア移動と発光の両方に活用する発光ポリマー(light emitting polymer:LEP)を用いる方法もある。ポリマー材料は蒸着成膜できないため、スピンコートやダイコート、フレキソ印刷、インクジェットプリンティングなどの湿式塗布法(湿式成膜法、ウェット・コーティング法)によって有機機能層を作製することになる。
また、蒸着可能な低分子化合物であっても、化合物の分子構造と溶解させる溶媒を適切に選択することで、ナノメートルオーダーで平滑な塗布膜を形成することも可能であり、2010年にコニカミノルタは、低分子化合物を4層積層塗布して、高効率発光するリン光白色素子の試作品を発表している。
現在では、世界中の企業や研究機関で、この手法、即ち、低分子材料を湿式塗布法(ウエット・コーティング法)によって有機EL素子を作製する研究開発が盛んに行われている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、後で詳述するように、溶媒や有機材料(溶質)の精製及び取扱いにおいて、塗布液中に含有される溶存しやすい水分や酸素に起因する問題は十分に解決されていない。
特許第4389494号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、有機材料に付着した水分や酸素等を効率的に除去し、良好な性能の電子デバイスを作製することができる塗布液、その製造方法、電子デバイス作製用インク、電子デバイス、有機エレクトロルミネッセンス素子及び光電変換素子を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、有機化合物と有機溶媒とを含む塗布液であって、50℃以下・大気圧の条件下での前記有機溶媒に対する溶存二酸化炭素濃度が特定の範囲内であることによって、水分や酸素等を効率的に除去することができる塗布液、及びその製造方法を提供できることを見いだし本発明に至った。また、この塗布液を用いることによって、良好な性能の電子デバイス作製用インク、電子デバイス、有機エレクトロルミネッセンス素子、及び光電変換素子を提供できる。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
なお、本発明の理解を容易にするため、本発明に係る基本的方針と研究・開発の経緯について後述する。
1.有機化合物と有機溶媒とを含む塗布液であって、
50℃以下・大気圧の条件下での前記有機溶媒に対する溶存二酸化炭素濃度が、1ppm以上前記有機溶媒に対する飽和濃度以下の範囲内であることを特徴とする塗布液。
2.前記溶存二酸化炭素濃度が、前記条件下で、5〜1000ppmの範囲内であることを特徴とする第1項に記載の塗布液。
3.前記塗布液中に酸素が1ppm以上存在する場合は、前記溶存二酸化炭素濃度が、前記条件下で、溶存酸素濃度の1.0〜100000倍の範囲内で含まれることを特徴とする第1項又は第2項に記載の塗布液。
4.前記塗布液が、電子デバイス作製用塗布液であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の塗布液。
5.前記電子デバイスが、発光デバイスであることを特徴とする第4項に記載の塗布液。
6.前記有機化合物が、有機エレクトロルミネッセンス材料であることを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の塗布液。
7.前記塗布液が、インクジェット用インクであることを特徴とする第1項から第6項までのいずれか一項に記載の塗布液。
8.第1項から第7項までのいずれか一項に記載の塗布液を製造する塗布液の製造方法であって、
前記有機化合物と二酸化炭素とを混合する工程を有することを特徴とする塗布液の製造方法。
9.前記有機化合物と二酸化炭素とを混合する工程後に、前記有機化合物を含む溶液を用いて前記塗布液を製造することを特徴とする第8項に記載の塗布液の製造方法。
10.超臨界流体を用いて前記有機化合物を含む溶液中の物質を分離する工程を有することを特徴とする第8項又は第9項に記載の塗布液の製造方法。
11.第1項から第7項までのいずれか一項に記載の塗布液を含有することを特徴とする電子デバイス作製用インク。
12.第1項から第7項までのいずれか一項に記載の塗布液を用いて形成された有機機能層を有することを特徴とする電子デバイス。
13.第1項から第7項までのいずれか一項に記載の塗布液を用いて形成された有機機能層を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
14.第1項から第7項までのいずれか一項に記載の塗布液を用いて形成された有機機能層を有することを特徴とする光電変換素子。
(本発明に係る基本的方針と研究・開発の経緯)
前述した又は後述するような技術的背景のもとでは、有機EL素子の製造方法において採用すべき技術としては、必然的に次に掲げるような選択になるものと推定している。
<製造方法に関する基本的方針>
(1)有機EL化合物は低分子化合物を使うことが好ましい(高分子化合物は好ましくない)
(2)成膜法は塗布法を使う(蒸着法は好ましくない)
(3)塗布液中の溶媒は汎用溶媒が好ましい(高価な脱水高純度溶媒は好ましくない)
(4)溶解は単分子状態が好ましい(微結晶分散液は好ましくない)
(5)化合物の精製には吸着−脱着平衡を活用するのが好ましい(熱平衡は好ましくない)
まずは、上記のような基本的方針にしたときに、方針(3)〜(5)を全て満たす方法を創出することが当面の技術課題であり、それを達成することが最も価値のある技術であると考え、それを達成する手段について、研究・開発を重ねてきた。
その結果、前記「(3)塗布液中の溶媒は汎用溶媒が好ましい」を達成するためには、単に脱水、脱酸素溶媒を用いるのでは不十分で、溶液の中の特殊なガスが存在すること、好ましくは飽和に近い濃度でガスが溶け込んでいることが、後天的に混入されてくる水分や酸素などに対してロバストネスが高くなることを見いだし、非常に単純ではあるが、それが本発明の本質を成すものであることがわかった。そのガスとは、二酸化炭素である。
従来の塗布成膜素子においては、塗布溶液を窒素雰囲気下に長時間保管し、溶存酸素と雰囲気の窒素を平衡により入れ替えるか、窒素ガスをバブリングや加圧することで、酸素を追い出すか、又はそれに準ずる方法を使うことで、塗布溶液の脱酸素化を行っていた。
ところが、塗布プロセスで、一瞬でも大気に触れると、塗布溶液は直ちに酸素や水分を吸ってしまい、せっかく最善の注意を払って調製した脱水・脱酸素の塗布溶液が台無しになってしまい、有機EL素子の特性、とりわけ発光寿命に大きな劣化を招いてしまう。
我々が発見した現象は、塗布溶液の初期状態において、水や酸素は除いておくのだが、その溶液に飽和濃度に近い二酸化炭素を溶け込ませることにより、溶液自体が水や酸素を吸収しにくくなることである。
我々がこの発明を成した経緯を簡単に紹介する。
先にも述べたように、低分子化合物を塗布成膜する開発において、二酸化炭素の超臨界高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography:HPLC)によって有機EL材料を精製する技術を見つけ出していた(特許第4389494号公報)。
しかし、成膜プロセスで空気に触れたり、塗布装置に微量に付着している水分等で汚染したりして、素子を作るたびに性能の変動が大きいという問題が見いだされた。
本発明者らは課題の解決に向けて鋭意検討した結果、超臨界二酸化炭素が溶液からガス状の二酸化炭素として抜けていく時に、完全に溶存酸素を一緒に溶液系外に持ち去ってくれること、また、微量に含有している水も二酸化炭素との水素結合により抜けていくこと、さらに、飽和に近い濃度で残存している二酸化炭素が、酸素や水の溶液系内への混入を防いでくれることを知見し、超臨界HPLCから精製されて出てくる溶離液をそのまま塗布したところ、高性能で、ほとんど性能のばらつきがなく安定して良好な素子が作製可能であることを見出し、本発明に至った。
また、超臨界二酸化炭素のみならず、普通に溶解した有機EL材料の有機溶媒溶液に二酸化炭素ガスをバブリングさせるとか、接触させることでも同様の効果が発現することを見いだした。
ここまでの説明を総括すると、本発明は以下のような技術要素によって構成されるものである。
さらに付け加えると、ここまでの説明は低分子化合物を用いた塗布成膜法による有機EL素子に関する記載であったが、これは代表的かつ最も効果的なアプリケーションの一つにすぎず、低分子化合物を塗布して成膜する他の電子デバイス、例えば、有機薄膜太陽電池、有機トランジスタ、有機化合物を用いた電極などにも同じ技術が適用できることは言うまでも無い。
(a)低分子化合物を溶解させた溶液に二酸化炭素を飽和に近い濃度で含有する塗布用の溶液
(b)二酸化炭素を超臨界状態で溶液に接触させた塗布用の溶液
(c)溶質が吸着−脱着平衡を経て溶媒に分散された塗布用の溶液
すなわち、超臨界二酸化炭素HPLC精製した溶離液を完全に濃縮乾固しない状態で使うことにより、上記(a)〜(c)は同時に達成されるものであるが、本発明はそれが前提ではなく、二酸化炭素と溶存させていることと、吸着−脱着平衡を経て溶媒に分散(つまり完全溶解)されているのであれば、方法は問わないものである。
本発明の上記手段により、有機材料に付着した水分や酸素等を効率的に除去し、良好な性能の電子デバイスを作製することができる塗布液、その製造方法、電子デバイス作製用インク、電子デバイス、有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機光電変換素子を提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
本発明の塗布液は、50℃以下・大気圧の条件下での前記有機溶媒に対する溶存二酸化炭素濃度が、1ppm以上前記有機溶媒に対する飽和濃度以下の範囲内であることによって、塗布前後の溶液中に溶存している二酸化炭素が、ガス状の二酸化炭素として抜けていく際に、溶存酸素を一緒に溶液系外に持ち去ってくれ、また、溶液中に微量に含有している水も二酸化炭素との水素結合により除去される。さらに、飽和に近い濃度で残存している二酸化炭素によって、酸素や水の溶液系内への混入を防ぐことができる。その結果、高性能な電子デバイスを作製でき、かつ、歩留りを向上させることができる。本発明における二酸化炭素は、塗布液中の酸素や水の除去、及び塗布液内への酸素や水の混入を防ぐ目的で塗布液中に溶存させているのであって、例えば、噴霧するための媒体として用いるものではない。
蒸着膜と塗布膜の比較:膜中の有機化合物微粒子の粒径分布解析結果 蒸着膜と改良塗布膜の比較:膜中の有機化合物微粒子の粒径分布解析結果 超臨界流体クロマトグラフィー法における充填カラムを用いた装置の概略図 有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図 表示部Aの模式図 画素の回路を示した概略図 パッシブマトリクス方式フルカラー表示装置の模式図 バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図 タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図 有機ELフルカラー表示装置の概略構成図 有機ELフルカラー表示装置の概略構成図 有機ELフルカラー表示装置の概略構成図 有機ELフルカラー表示装置の概略構成図 有機ELフルカラー表示装置の概略構成図
本発明の塗布液は、有機化合物と有機溶媒とを含む塗布液であって、50℃以下・大気圧の条件下での前記有機溶媒に対する溶存二酸化炭素濃度が、1ppm以上前記有機溶媒に対する飽和濃度以下の範囲内であることを特徴とする。この特徴は、各請求項に係る発明に共通又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記溶存二酸化炭素濃度が、前記条件下で、5〜1000ppmの範囲内であることが好ましい。
前記塗布液中に酸素が1ppm以上存在する場合は、前記溶存二酸化炭素濃度が、前記条件下で、溶存酸素濃度の1.0〜100000倍の範囲内で含まれることが、塗布液を用いて作成したデバイスの安定性の点で好ましい。
前記塗布液が、電子デバイス作製用塗布液であることが、良好な性能の電子デバイスを作製することができる点で好ましく、前記電子デバイスが、発光デバイスであることが好ましい。
前記有機化合物が、有機エレクトロルミネッセンス材料であることが、発光素子寿命及び発光効率の点で好ましい。
前記塗布液が、インクジェット用インクであることが、多彩なデバイスを製造する点で好ましい。
本発明の塗布液の製造方法は、前記有機化合物と二酸化炭素とを混合する工程を有することを特徴とする。
前記有機化合物と二酸化炭素とを混合する工程後に、前記有機化合物を含む溶液を用いて前記塗布液を製造することが好ましい。すなわち、塗布液中に含有されている二酸化炭素によって、成膜プロセスで空気に触れたり、塗布装置に微量に付着している水分が塗布液中にコンタミすることを防止できる点で好ましい。また、精製した有機化合物を、濃縮乾固させた後に、塗布成膜に相応しい溶媒に再溶解させて、塗布液を作製するといった工程を行う必要もない。
超臨界流体を用いて前記有機化合物を含む溶液中の物質を分離する工程を有することが、精製工程の効率化の点で好ましい。
本発明の塗布液は、電子デバイス作製用インクに好適に含有される。
本発明の塗布液は、電子デバイス、有機エレクトロルミネッセンス素子、及び光電変換素子の、各有機機能層の形成に好適に用いられる。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。また、本発明において「ppm」は、「質量ppm」を示す。
(本発明の塗布液の概要)
本発明の塗布液は、有機化合物と有機溶媒とを含む塗布液であって、50℃以下・大気圧の条件下での前記有機溶媒に対する溶存二酸化炭素濃度が、1ppm以上前記有機溶媒に対する飽和濃度以下の範囲内であることを特徴とする。
本発明は、前述のように、下記基本的方針(1)〜(5)に基づいて検討し、完成したものである。
(1)有機EL化合物は低分子化合物が好ましい(高分子化合物は好ましくない)
(2)成膜法は塗布法を使う(蒸着法は好ましくない)
(3)塗布液中の溶媒は汎用溶媒が好ましい(高価な脱水高純度溶媒は好ましくない)
(4)溶解は単分子状態が好ましい(微結晶分散液は好ましくない)
(5)化合物の精製には吸着−脱着平衡を活用するのが好ましい(熱平衡は好ましくない)
以下において、まず、上記各方針の根拠となる基本的考え方の観点から、本発明について説明をし、その後、具体的技術について説明をする。
1.高分子化合物に対する低分子化合物の優位性
湿式塗布法による有機機能層の形成において、高分子化合物に対する低分子化合物の優位性を説明する。
(第1の要因):純度の優位性
低分子化合物を高分子化合物(いわゆるポリマー)と比較してみると、その違いがよくわかる。まず、低分子化合物は昇華精製を適用するのは分子量が小さいため好適であり、再結晶も分子量分布が小さく望ましい。また、低分子化合物の精製方法には、精製効率の低い(理論段数の低い)高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography:HPLC)やカラムクロマトグラフィーを用いることができるため好ましい。
高分子化合物の精製では、ほとんどの場合、良溶媒と貧溶媒を使った再沈殿法を繰り返し行うことで精製しており、低分子化合物の方が高純度としやすい。
また、高分子化合物がπ共役系高分子化合物である場合、重合反応を起こすための金属触媒や重合開始剤を用いる必要があり、重合末端には、反応活性の置換基が残存してしまうケースが多く、それも低分子化合物の方が高純度にできる理由の一つでもある。
(第2の要因)分子特有のエネルギー準位に関する優位性
発光ポリマー(light emitting polymer:LEP)は、分子量が大きくなると、π共役系ポリマーであるが故に、分子を安定化させるためには共役系を拡張することになるために、原理的に一重項又は三重項の励起状態と基底状態とのエネルギー準位差(「エネルギー準位のギャップ」、「バンドギャップ」ともいう。)は狭くなり、青色発光が難しくなる。また、蛍光の青色発光よりも高いエネルギー準位(大きいエネルギー準位差)が要求される青色リン光においては、発光ポリマーは、その発光物質となる遷移金属錯体を形成することが構造上難しい。さらに、発光ポリマーをホストとして用いようとしても、前記のπ共役の拡張により高い三重項エネルギーを有する化合物(「高T化合物」と略称する。)にしにくい。
また、最近注目されている熱活性化型遅延蛍光(thermally activated delayed fluorescence:TADF)もπ共役ポリマーで成し遂げられた前例はなく、このように市場要求の高い高効率青色発光に用いることは難しい。
一方、低分子化合物ではπ共役系を連結させる必然性はなく、π共役系ユニットとなる芳香族化合物残基は必要であるが、それらを任意に選択できること、さらにそれらを任意の位置に置換できる。したがって、低分子化合物では、容易に最高被占軌道(highest occupied molecular orbital:HOMO)と最低空軌道(lowest unoccupied molecular orbital:LUMO)と、三重項(T)エネルギーレベルとを意図的に調整でき、青色リン光発光物質を作ることも、そのホストにすることも、また、TADF現象を起こす化合物を構築することも可能である。このように任意の電子状態や任意の準位を意図的に設計、合成できる拡張性の大きさが、低分子化合物の第2の優位性の要因である。
(第3の要因):化合物合成の容易性
第2の要因と類似した理由(要因)ではあるが、低分子化合物は、発光ポリマー(LEP)に比べ合成できる分子構造に制限がなく、とりわけ発光ポリマーにおいて主鎖をπ共役連結にするとなると、適用できる骨格や合成方法も限定的となるが、低分子化合物では新たな機能付与や物性値の調整(Tgや融点、溶解性など)を分子構造によって成し遂げることが相対的に用意であり、これが低分子化合物の第3の優位性である。
2.低分子化合物を用いた湿式塗布法による有機機能層形成における課題
低分子化合物を用いた湿式塗布法による有機機能層形成における本質的な課題は、何かについて説明する。
有機EL素子に用いられるほぼ全ての材料は、有機EL素子内部においては、電子及び正孔が分子間をホッピング移動しなければならない。基本的に電子はLUMO準位を伝ってホッピングし、正孔はHOMO準位を使ってホッピングすることになる。
すなわち、必ず隣接する分子同士はπ共役系が重なり合うように存在しないと、そのようなキャリア伝導が起こらないため、可能な限りπ共役系ユニットだけで分子構造を形成することが有利である。
例えば、溶媒に対する溶解性を向上させるために、立体的に嵩高い置換基(sec−ブチル基や、tert−オクチル基、トリイソプロピルシリル基など)を一つの分子中に複数個置換してしまうと、分子間のπ共役系は重ね合わすことが難しくなり、嵩高い置換基の部分でホッピング移動が阻害されてしまう。
一方で、有機EL素子は発光中絶え間なく電流が流れていることから、例え量子効率的に100%であって、すなわち、キャリア再結合の確率が100%であり、熱失活が0%であったとしても、有機EL素子はキャリアを流し続けるために陽極と陰極との間に電位差を設けて電界勾配を付ける必要があるため、有機EL素子の等価回路は、ダイオードと抵抗の直列接続となる。
すなわち、通電発光中の有機EL素子の内部ではジュール熱が発生しており、実際に素子内部、特に再結合が起こる発光層内では100℃以上の発熱があることもわかっている。
また、有機EL素子全体の有機層厚は200nm程度の極めて薄い層であることから、熱は層(膜)間で伝導し発光層のみならず、全ての層で高温状態が継続されることになる。
このような状態にさらされる有機分子は、それ自体のガラス転移点(Tg)を超えると、アモルファスの状態から結晶状態へと相転移を起こす。
この結晶は次第に成長し、数十nmを超えると、その化合物が存在していた層厚を超えることになり、有機EL素子としての層による機能分離ができなくなるために、結果として発光効率が低下することになる。
さらに、この結晶が有機EL素子の有機層全層(100〜200nm)を超えてしまうと、陽極と陰極は短絡する。そして、その短絡した部分に電界集中が起こり、微小領域に大電流が流れることで、その部分の有機化合物は熱分解を起こしてしまい、全く発光しない部分、いわゆるダークスポットができてしまう。
つまり、有機EL素子の低分子化合物は、嵩高い非芳香族性の置換基を持たずに、かつ、ガラス転移点(Tg)が100℃以上(好ましくは150℃以上)を超えるような分子であらねばならない。
このような分子を構築するには、通常、π共役系を大きくするか、芳香族基を単純連結するのであるが、通常の場合できてくる化合物は、溶媒に対する溶解性が極めて低くなり、塗布溶液になり得ないか、又は塗布できたとしても、結晶析出や物質の偏在などが生じることとなる。
このジレンマを解消する手立てとして、我々は、安定なアモルファス膜を形成し、通電中もそれを保持できるという画期的な技術をこれまでに開発してきた(例えば、特許第5403179号や特開2014−196258号公報号。)。具体的には、嵩高く、フレキシビリティの高い分岐のアルキル基などを持たずに、芳香族基だけを連結しビアアリール構造とし、そのC−C結合軸周辺に発生する回転障害により数多くのコンフォメーションや幾何異性体を能動的に増やすことによって、又は、同一層中に存在する複数分子(例えば、ホストとドーパント)がさまざまな形状・形態で相互作用を起こすようしてやることによって膜中での成分数を増やせるため、薄膜状態でのエントロピーを増大させ、安定なアモルファス膜を形成することができる。
本発明者らは、湿式塗布法による有機EL素子の作製において、前述したような指針に則って低分子化合物の分子構造を改良し、乾燥条件等の最適化も図ったところ、発光効率は蒸着素子の95%、発光寿命は同90%と、飛躍的な改善を達成することができた。これにより、発光ドーパントにリン光ドーパント、とりわけ寿命向上が最も難しいとされている青色リン光ドーパントを用いた素子ですらも、塗布成膜法で、ほぼ従来の蒸着成膜法に匹敵する基礎特性を発揮しることを見いだしている。
しかしながら、このように性能が改善された有機EL素子にもまだ多くの課題が残存している。
それらの課題としては、例えば、低分子化合物の純度、当該化合物表面に付着している微量水分、使用する溶媒の酸素含有量、水分含有量などの除去が挙げられる。
また、例えば、一般的には塗布で用いる低分子化合物であっても、最高の性能を発現させるために、カラムクロマトグラフィーと再結晶を行った後に、昇華精製を行い、さらに有機化合物を使用又は保管する際には、真空状態を経た後、窒素雰囲気に置換して用いられている。
このような、できる限りの悪影響を排除した、極めて厳格な管理の下において塗布法による有機EL素子を作製した場合であっても、蒸着法で作製した有機EL素子の性能を超えることは困難であった。
さらに、そもそも、真空を使った蒸着法の生産性が低いことが、有機EL素子の大型化や量産性、つまりコストに悪影響を与えるために、塗布法が注目されているのであるが、その塗布法もこのような厳格な管理の下で行うのでは、かえって蒸着法よりも生産性が低く、コスト高になってしまう。
3 化合物の精製方法について
低分子化合物の利点は高分子化合物よりも数多くの精製手段が活用でき、高純度にできる点である。しかし、結局のところ、一般的に現在実用されている有機EL素子を構成する有機化合物のほぼ全てが、昇華精製という精製手段を経て使用されている。
昇華精製は古典的な精製方法であるが、再結晶やカラムクロマトグラフィー、HPLCなどの精製方法に比べると圧倒的に精製効率(理論段数)は小さく、実質上は金属や無機物質などの除去と溶媒の除去を行うための手段として使われている。
なぜ昇華精製が有機EL用の有機化合物で採用されているかというと、有機EL素子の製造プロセスが真空蒸着法を採用していることが主な理由である。有機化合物に溶媒がごく微量でも含まれていると、蒸着装置内で真空下に置いた際有機化合物中の溶媒が揮散し真空度を下げてしまう。
それが連続生産を不可能にしてしまい、製造上の問題となる。そのため、精製時に溶媒が完璧に除去される昇華精製法が採用されているのである。
よって、有機EL素子の生産方式が蒸着法から塗布法に代わった際には、前記の理由から昇華精製法による有機化合物の精製は必須ではなくなる。
(再結晶)
次に、低分子有機化合物の精製法としては最も一般的な再結晶について考えてみる。
この方法は、熱力学第二法則(式1)に基づいた精製方法である。
−ΔG=−ΔH+TΔS ・・・(式1)
物質は、物質相互間の存在距離が短くなるほどファンデルワールス力や水素結合力、π−π相互作用力、双極子−双極子相互作用力などが増大し、エンタルピー(−ΔH)は大きくなる。
一方で、物質が媒体に完全分散しているとき、すなわち溶解しているとき、物質は自由に動き回れるため、その乱雑さは増大し、エントロピー(ΔS)は大きくなる。
熱力学第二法則では、全ての存在状態は、ギプスの自由エネルギー(−ΔG)を一定に保つか、又は、大きくする方向に移行する。
すなわち、精製を施したい化合物Aを再結晶により精製するということは、次のように考えると、合理的に説明できる。
Aを溶かすことのできるBという溶媒中に高温でAを溶解するとAは分散状態で存在することになる。そのため、A同士間の存在距離が大きく互いに相互作用しにくくなるため、エンタルピー(−ΔH)は極めて小さくなる。
一方で、Aは溶液の中を自由に動き回れるためエントロピー(ΔS)は極めて大きい。この高温溶液を冷やすと、絶対温度TがかかったTΔSは、冷やす前よりも小さくなる。そのとき、冷やす前後でギプスの自由エネルギー(−ΔG)を一定に保つためには、エンタルピー(−ΔH)を大きくせざるを得なくなる。
つまり、温度が下がってTΔSが小さくなった分、AはAとの距離を小さくしてエンタルピーを大きくしなければならなくなるのである。その極限状態が、AとAとの距離が最小となる結晶状態であり、それによってエンタルピー項(−ΔH)は増大していく。
こうしてエンタルピーが増大していくと、系内の成分数は減ってしまうため、エントロピーは小さくなり、その小さくなった分、また結晶を作ってエンタルピーを増大していく。
このように、まずは温度低下でエントロピー項(TΔS)が減少し、それを補うために結晶化によりエンタルピー(−ΔH)が増加し、またそれによって成分数が減るためにさらにエントロピー項が、今度はΔSの減少によって小さくなり、またその分結晶化が起こるという熱力学平衡を繰り返すことで、再結晶は成し遂げられるのである。
ただし、注意しなければならないのが、溶質Aと溶媒Bとの相互作用である。溶質Aは溶媒Bと溶媒和されることによって溶解するため、A−B間の相互作用が大きくなければそもそもAはBに溶解しない。しかし、相互作用が大きすぎると冷却して低下するエントロピー項の減少に打ち勝つ程、AとAとの距離を短くできないことになり(AとAとの間にはBが介在することになるために)、再結晶は起こらない結果となる。
つまり、A−Aという相互作用力とA−B間の相互作用力とを再結晶が起こる条件に調整できた場合のみ、この再結晶による精製方法が適用できる。このような再結晶の精製方法では、一度に数百Kg以上の大量精製も可能であることから、化学工業では古くからこの方法が使われている。
(カラムクロマトグラフィー)
次に、カラムクロマトグラフィー(以下、「クロマト法」ともいう。)について考えてみる。
カラムクロマトグラフィーの最も典型的なところでは、固定相には微粒子シリカゲルを用い、そこに化合物Aを吸着させ、それを溶離液と呼ばれる移動相(B)で徐々に溶出させて行くというものである。
このとき、シリカゲル表面と化合物Aとの相互作用(吸着)に対して、移動相(B)との相互作用が拮抗する場合、Aはシリカと移動相Bとの間で、吸着−脱着の平衡を繰り返し、シリカとの相互作用が小さい場合は早く、相互作用が大きい場合には遅く、溶出して行く。
このときに、吸着−脱着平衡の往復回数が大きいほど理論段数(すなわち精製効率)が増大することから、クロマト法による精製効率は、固定相の長さに比例し、移動相の通過速度にも比例し、固定相の表面積にも比例することになる。
これを実現させたのが、高速液体クロマトグラフィーであり、これが、有機化合物の成分分析や品質保証に幅広く使われているのも、この理論に裏打ちされた高度の理論段数を実現できる希な手法であることに起因している。
このクロマト法が、再結晶に比べ秀でる理由は、移動相Bの極性を任意に変更できる点である。例えば、移動相を最初から良溶媒と貧溶媒の混合溶媒にしておくことはもとより、精製の際に、徐々に良溶媒比率を増やしていくグラジエント法を用い、さらに理論段数を増やせることが挙げられる。
また、温度も任意に変えることが可能であるため、精製可能となる溶質の適用範囲が極めて広く、ほぼ汎用的な精製法として活用できることが最大の特徴である。
一方、クロマト法の欠点もある。前述のように、理論段数を大きくするための根本的な原理が、吸着−脱着平衡を活用しているところにある。
例えば、移動相に化合物Aと相互作用が強い溶媒B′(すなわち良溶媒)だけを用いてクロマト法を行った場合、Aとシリカゲルとの相互作用よりも、Aと移動相B′との相互作用が強ければ、吸着−脱着平衡の往復回数が激減し、精製効果が低くなってしまう。
つまり、精製効果を高めるためには、良溶媒B′の他に、大過剰の貧溶媒Cを混合し、吸着−脱着平衡の往復回数を増やす必要がある。ただし、この場合、精製されて分取した化合物Aの溶液には、大過剰のCが含まれており、これを濃縮しなければならないことが最大の問題である。
例えば、1gのAを得るためには、良溶媒B′と貧溶媒Cの混合比率が1:99〜10:90くらいにする必要があり、一般的にはおおよそ10Lから100Lの貧溶媒Cが必要となってしまう。そのため、HPLC分取は、研究開発には適用されているものの、大量生産には使われていないのが実情である。
貧溶媒濃縮の問題を解決する手段が超臨界二酸化炭素を用いたHPLCである。超臨界二酸化炭素は、二酸化炭素を高温高圧で超臨界流体にしたものであり、その他の物質もこのような超臨界流体にすることは可能であるが、比較的低い圧力と温度で超臨界状態を実現できることから、クロマトや抽出ではもっぱら二酸化炭素が使われている。
この超臨界二酸化炭素には、普通の流体や液体とは異なった特徴がある。それは、温度と圧力を変化させることで、溶解したいものの極性に合わせて、連続的に極性を変化させることができることである。
例えば、魚の頭に含まれているドコサヘキサエン酸を選択抽出する際にも、この超臨界二酸化炭素が使われているし、接着剤を用いている特殊な衣類のクリーニングにも、皮脂は溶かして接着剤は溶かさない超臨界二酸化炭素を温度と圧力の制御で作ることにより、成し遂げている。
このように様々な極性を持たせることができる超臨界二酸化炭素であるが、比較的低い温度と圧力で形成する超臨界二酸化炭素の極性は、シクロヘキサンやヘプタン程度である。現在市販されている超臨界HPLCでは、この程度の極性の超臨界二酸化炭素が、装置内で作られ、それが良溶媒と混合されてカラム内に入り、通常のHPLCと同様の機構で化合物の精製が行われる。
超臨界二酸化炭素を用いたHPLCのシステムでは、カラムを通過した後に検出器に入るが、通常はその段階までは高温高圧状態が保たれ、二酸化炭素も超臨界流体として存在している。その後常温常圧で分取されるまでの間に二酸化炭素はガスとなり、分取時には自らが溶液から抜けていくために、貧溶媒の濃縮が不要となる。この時、参考文献(生物工学会誌88巻、10号、525〜528ページ、2010年)に記載の気液分離機構等を備えた二酸化炭素回収装置によって二酸化炭素を回収することが可能であり、再び超臨界流体としての利用も可能である。
そのため、高純度の新規合成化合物を数多く合成する必要のある創薬の業界では、最近この超臨界HPLCを積極的に活用するようになって来ており、その影響で分析用、分取用ともに販売価格が下がり、かなり一般的に使われるようになってきた。
このような特徴と経緯から、我々はこの超臨界HPLCを、高純度が要求される有機EL材料の精製に活用してきた(特許第4389494号公報)。
以上述べてきたように、有機EL業界の生産性向上が望まれる中、低分子有機化合物の精製法はさまざまあるが、どれも一長一短あり、製造した化合物の特性、及びその化合物が要求される純度、残留する溶媒の可否などによって、しかるべき精製方法が選択され、また組み合わされて使われている。
4.有機EL化合物の溶解について
まず、溶解とは何かを考える。通常は、溶質Aを溶媒分子BがAとBとの相互作用力で取り囲み、Aの集合体をばらばらにしてAの回りにBを存在させることによって、すなわちAを孤立単一分子状態にすることをいうが、本当にそうなっているのかを確かめるのは難しい。
例えば、Aが溶解性の極めて低い、又は結晶性の高い分子だった場合、可視光の波長以上のサイズの結晶であれば、溶解していないことは、光散乱等で容易に検出できる。しかし、例えば、中途半端に溶解性の低い物質であった場合、Aの数分子からなる微小結晶の回りを溶媒分子Bが取り囲んでいたとしても、それは溶解しているように見えてしまう。有機EL素子では、これが後々大きな問題を引き起こす可能性がある。
つまり、蒸着成膜では、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などの薄い層(膜)を形成する際に、各層を構成する化合物は、真空蒸着により、基本的には気化された孤立単一分子の状態で基板上又は有機層上に着弾し、それが固体薄膜となって成膜されていく。そのため、基本的には単一分子のランダムな集合体で膜が形成され、理想的なアモルファス膜となる。
一方で、塗布成膜法の場合、もし仮に、塗布溶液が有機EL化合物の微結晶の分散物であった場合には、見た目では完全溶解しているように見えるが、得られる薄膜の実態は微結晶が寄せ集められた薄膜となる。そのため、例えばHOMOやLUMOの準位も単分子のそれではなく、スタックした集合体(結晶状態)のそれとなってしまい、性能の低下の要因となりうる。
また、経時では、その微結晶が核となり、粗大結晶へと成長していくことになるため、層間の機能分離ができなくなるばかりか、陽極と陰極を短絡させる大きな結晶となってしまうと、ダークスポットを発生させてしまうという大きな問題がある。
低分子を用いた塗布成膜素子に関しては、上述の長年の検討により、初期状態である塗布溶液をいかにして単分子分散状態に近似させるかが、まずは蒸着法と同等の性能を出すための必要条件となることは、明らかである。
ここで、通常、厳密に溶解させたつもりの塗布液が、どのくらいの分子の分散物となっているかをX線小角散乱測定(small angle X−ray scattering:「SAXS」ともいう。)により解析した結果に基づき考えてみる。
図1は、破線が蒸着法で作製した薄膜を構成する化合物の微粒子の粒径分布曲線(横軸:粒径(nm)、縦軸:頻度分布)であり、実線が塗布法で作製した薄膜構成化合物の微粒子の粒径分布である。どちらも同じ化合物を用いているため、直接比較することができる。
蒸着成膜における化合物の微粒子の粒径分布幅は、極大ピークに対応する位置の粒径が約2nmであり、単分散に近い粒径となっている。これは、分子1つ又は2つのサイズであることから、蒸着成膜では、ほぼ単一分子がランダムに配置されてアモルファス膜が形成されていることを表している。
一方で、塗布成膜における化合物の微粒子の粒径分布では、極大ピークに対応する位置の粒径が約4.5nmであり、蒸着成膜の粒径分布よりも幅広く分布している。
先にも述べたように、蒸着と塗布とで同じ化合物を用いていることから、化合物本来の結晶性や凝集性は同じであり、この違いは、塗布溶液の状態における分子の分散状態が、単一孤立分子ではなく、5から10分子の微結晶の分散物であったことが推測される。
もちろん、この塗布液は1週間以上、窒素雰囲気下のグローブボックスで保管しておいても結晶が析出することもなく、いわゆる澄明な溶液であるのだが、X線で解析すると、数分子微結晶の分散物を、我々は溶解した溶液と勘違いしている訳である。
次に、化合物に改良を施し、塗布液の調整方法を改良した試作品に使用した塗布溶液で作製した塗布薄膜を同じ解析によって、粒径分布を調べた結果を図2に示す。
この結果から明らかなように、図2に示した結果では、蒸着膜と塗布膜との有機化合物の微粒子の粒径分布にほとんど差がないことが分かる。
このように、分子構造を改良し、溶解方法を工夫することで、ほぼ孤立単一分子を分散する完全溶解状態をつくることができることを、我々はこの検討の中で確認していた。
これは塗布法により作製した有機EL素子が、蒸着法による有機EL素子と同等性能を発揮できることを証明した大きな成果ではあったが、逆に、我々は、塗布法による素子で蒸着法による素子同等にするためには、多大なプロセス負荷があることも知ってしまった。
すなわち、現状のままでは、塗布法で蒸着法と同じ性能を出すためには、本来生産性に優れるはずの塗布法であるにも拘わらず、溶解方法や保管方法など、大変手間のかかるプロセスを実行しなければならず、特に生産量が増えた際には、このプロセスが律速過程になってしまう危険性が高く、この技術領域を改善することが、将来の大量生産には不可欠であることを強く認識している。
5.有機EL化合物の溶媒の純度について
有機EL素子は、励起状態になった発光材料が基底状態に戻る際に光を放つ現象を基本機能としているものである。
また、電極から発光層までの間は、電子及び正孔をホッピング現象を通じて輸送する必要がある。
まず、励起状態についてであるが、例えば、5%濃度の発光材料をドーピングを施した有機EL素子の場合、1000cd/mの輝度で、1年間発光させ続けるには、単純に計算して、一つのドーパントが約10億回励起子になる必要がある。このとき、たった1回だけでも、励起子が水分子と反応すると、本来の分子とは違う化合物になってしまう。また、励起子が酸素分子と反応すると、何らかの酸化反応や酸化カップリング反応が起こってしまう。これが、有機EL素子の機能低下の原因となる化学変化の最も代表的な現象である。
また、発光材料以外の材料においても、ほぼ同じ回数、ラジカル状態になる訳で、ラジカルアニオン状態もカチオンラジカル状態も基底状態に比べれば活性種であることから、有機EL素子の機能低下となる原因となる化学変化が起きる可能性がある。
つまり、水分子や酸素分子は、塗布液には一切あってはならないものであり、それが前提となる訳である。
ただし、工業上では、純度の高い無水溶媒は非常に高価であり、取り扱い性も難しい。そのため、結局、塗布法でコストダウンするためには、消耗剤となる溶媒をいかに汎用的なものを使えるかが重要である。
6.溶質である有機EL材料の保管について
前記のように、水と酸素の存在は有機EL素子性能、とりわけ発光素子寿命においては致命的な欠点となると推定されている。
塗布法で最も気をつけなければならないところが、水と酸素の混入を防ぐことと言っても過言でなく、そのためには、溶質の方も、通常の試薬や薬品のように、粉体のまま、空気中に放置しておくことはできない。
我々が、塗布成膜素子を作製する際には、通常、溶質となる物質をフラスコやシュレンク管のような、減圧と不活性ガスパージの両方が行える器具に入れ、真空ポンプで減圧にしながら、ヒートガン等で容器を加熱し、それと窒素封入した上で、窒素雰囲気下のグローブボックスに移し、そこで、脱水溶媒に溶解して、窒素下のまま塗布成膜するのが一般的な手法である。
このとき、酸素を完全に抜くために、溶解に窒素ガスをバブリングすることも行うし、脱水溶媒も、溶解直前にアルミナやゼオライトの吸収管を通して使う。このような処置は、パイロットプラントや実際の工場においても同様又はこれに準ずることが行われているのであるが、このプロセスに非常に時間がかかり生産性を落としていることは前述のとおりであり、この部分を解決することが、最大の課題であると我々は考えている。
7.本発明に係る要素的技術について
[塗布液]
本発明の塗布液は、有機化合物と有機溶媒とを含む塗布液であって、50℃以下・大気圧の条件下での前記有機溶媒に対する溶存二酸化炭素濃度が、1ppm以上前記有機溶媒に対する飽和濃度以下の範囲内であることを特徴とする。
また、前記溶存二酸化炭素濃度が、前記条件下で、5〜1000ppmの範囲内であることが好ましい。
また、前記塗布液中に酸素が1ppm以上存在する場合は、前記溶存二酸化炭素濃度が、前記条件下で、溶存酸素濃度の1.0〜100000倍の範囲内で含まれることが、塗布液を用いて作成したデバイスの安定性の点で好ましい。すなわち、大気中で塗布液を調製すると、大気中の二酸化炭素についても塗布液中に取り込まれる可能性がある。しかしながら、大気中の二酸化炭素の比率は非常に低く(0.03〜0.04%程度)、その結果、塗布液に取り込まれる二酸化炭素の量も非常に低くなるはずであるが、これまでに塗布液中の溶存二酸化炭素濃度を測定した事例は報告されていない。また、その効果について調べた知見はない。本発明では、大気中の主要成分である窒素、酸素の塗布液中の濃度に比べて、二酸化炭素の濃度が高い状態を積極的に作り出し、その結果として、塗布液への酸素や水の取り込みを抑制する効果を期待したものである。
本発明において、溶存二酸化炭素濃度は、例えば、ガスクロマトグラフィーにて測定することができる。
本発明の塗布液は、電子デバイス作製用塗布液、又はインクジェット用インクであることが好ましい。
電子デバイスとしては、有機EL素子、光電変換素子(太陽電池)、又は液晶表示素子等の発光デバイスであることが好ましい。
(有機化合物)
本発明において用いられる有機化合物は、特定種類・特定構造の化合物に限定されるものではないが、各種電子デバイスに用いられる化合物であることが、本発明の効果発現の観点から、好ましい。
例えば、塗布液が、有機EL素子を作製するための塗布液である場合には、有機化合物が有機エレクトロルミネッセンス材料(以下、「有機EL材料」ともいう。)であることが好ましい。有機EL材料とは、後述する陽極と陰極間に形成される有機エレクトロルミネッセンス層(以下、「有機機能層」、「有機EL層」ともいう。)に用いることが可能な化合物をいう。また、これら陽極、陰極、及び有機EL材料を用いた有機EL層からなる発光素子を有機EL素子と呼ぶ。有機EL材料として用いられる化合物例は、後述する。
また、塗布液が、光電変換素子を作製するための、塗布液である場合には、有機化合物がp型有機半導体材料やn型有機半導体材料であることが好ましい。これらp型有機半導体材料、及びn型有機半導体材料として用いられる化合物例は、後述する。
(有機溶媒)
本発明において、有機溶媒とは、本発明に係る上記有機化合物を溶解し得る有機化合物からなる媒体をいう。
本発明に係る有機EL素子材料を溶解又は分散する液媒体としては、塩化メチレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル等の脂肪酸エステル類、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール(TFPO)等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノールのアルコール類、DMF、DMSO等の有機溶媒が挙げられ、素子中の含まれる溶媒量を抑制する点から、沸点が50〜180℃の範囲の溶媒が好ましい。
[塗布液の製造方法]
本発明の塗布液の製造方法は、前記有機化合物と前記二酸化炭素とを混合する工程(以下、混合工程ともいう。)を有することを特徴とする。
前記混合工程後に、前記有機化合物を含む溶液を用いて前記塗布液を製造することが好ましい。
また、本発明の塗布液の製造方法は、超臨界流体を用いて前記有機化合物を含む溶液中の物質(例えば、水、酸素、及び有機化合物)を分離する工程(以下、分離工程ともいう。)を有することが好ましい。
前記混合工程は、有機化合物と二酸化炭素を混合する工程である。具体的には、有機化合物中に二酸化炭素を溶存させることができればよく、例えば、有機溶媒と有機化合物を混合した溶液中に炭酸ガスをバブリングして有機化合物と二酸化炭素を混合したり、又は、超臨界流体クロマトグラフィー法を用いて有機化合物と二酸化炭素を混合することが挙げられる。
炭酸ガスのバブリングは、例えば、高純度の炭酸ガスを流速0.01〜100ml/minの範囲内で1〜60分間バブリングすることが好ましい。
このように炭酸ガスのバブリングによって、得られた溶液、すなわち、混合工程によって二酸化炭素が混合された有機溶媒及び有機化合物の溶液を用いて、本発明の塗布液を製造することができる。すなわち、混合工程によって得られた溶液をそのまま、本発明の塗布液として用いることができる。
超臨界流体クロマトグラフィー法は、充填カラム、オープンカラム、キャピラリカラムを用いることができる。
充填カラムを用いた方法では、図3に示すように、有機溶媒(二酸化炭素を含む)を含有する超臨界流体11、ポンプ12、必要に応じてモディファイヤ13、分離する有機化合物を注入するインジェクタ14、そして分離用のカラム15、さらに必要であれば検出器17、そして圧力調整弁18からなる装置を用いればよい。カラム15はカラムオーブン16内で温度調整される。充填剤としては従来のクロマトグラフィー法に用いられているシリカ、又は表面修飾したシリカ等適宜選択することができる。
このように、本発明の塗布液の製造方法は、有機溶媒及び二酸化炭素を含有する超臨界流体を用いて、有機化合物、水及び酸素を分離する工程(分離工程)を有することが好ましい。そして、分離した有機化合物及び有機溶媒(二酸化炭素を含む)を含有する溶液を用いて、本発明の塗布液を製造することができる。すなわち、混合工程によって得られた溶液をそのまま、本発明の塗布液として用いることができる。
本発明において、超臨界流体とは、超臨界状態にある物質のことである。
ここで、超臨界状態について説明する。物質は、温度、圧力(又は体積)等の環境条件の変化により気体、液体、固体の三つの状態の間を移り変わるが、これは分子間力と運動エネルギーとのバランスで決定される。横軸に温度を、縦軸に圧力をとって気液固三態の移り変わりを表したものを状態図(相図)というが、その中で気体、液体、固体の三相が共存し、平衡にある点を三重点という。三重点より温度が高い場合は、液体とその蒸気が平衡になる。この時の圧力は飽和蒸気圧であり、蒸発曲線(蒸気圧線)で表される。この曲線で表される圧力よりも低い圧力では液体は全部気化し、またこれよりも高い圧力を加えれば蒸気は全部液化する。圧力を一定にして温度も変化させてもこの曲線を越えると液体が蒸気に、また蒸気が液体になる。この蒸発曲線には、高温、高圧側に終点があり、これを臨界点(critical point)と呼ぶ。臨界点は物質を特徴づける重要な点であり、液体と蒸気との区別がつかなくなる状態で、気液の境界面も消失する。
臨界点より高温の状態では、気液共存状態を生じることなく液体と気体の間を移り変わることができる。
臨界温度以上でかつ臨界圧力以上の状態にある流体を超臨界流体といい、超臨界流体を与える温度・圧力領域を超臨界領域という。超臨界流体は高い運動エネルギーを有する高密度流体と理解でき、溶質を溶解するという点では液体的な挙動を、密度の可変性という点では気体的な特徴を示す。超臨界流体の溶媒特性はいろいろあるが、低粘性で高拡散性であり固体材料への浸透性が優れていることが重要な特性である。
超臨界状態は、例えば、二酸化炭素であれば、臨界温度(以下、Tcともいう)31℃、臨界圧力(以下、Pcともいう)は7.38×10Pa、プロパン(Tc=96.7℃、Pc=43.4×10Pa)、エチレン(Tc=9.9℃、Pc=52.2×10Pa)等、この領域以上では流体は拡散係数が大きくかつ粘性が小さくなり物質移動、濃度平衡への到達が早く、かつ液体のように密度が高いため、効率のよい分離が可能となる。しかも二酸化炭素のような常圧、常温で気体となる物質を用いることにより回収が迅速になる。また、液体溶媒を用いる精製法で不可避の微量の溶媒の残留に起因する種々の障害はない。
超臨界流体として用いられる溶媒としては、二酸化炭素、一酸化二窒素、アンモニア、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、エタン、プロパン、ブタン、ヘキサン、ペンタン等が好ましく用いられるが、この中でも二酸化炭素を好ましく用いることができる。
超臨界流体として用いる溶媒は一種類を単独で用いることも可能であるし、極性を調整するためのいわゆるモディファイヤ、エントレーナと呼ばれる物質を添加することも可能である。
エントレーナとしては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、塩化メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、アセトアルデヒドジエチルアセタール等のアセタール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸系溶媒、アセトニトリル、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド等の窒素化合物系溶媒、二硫化炭素、ジメチルスルホキシド等の硫黄化合物系溶媒、さらに水、硝酸、硫酸等が挙げられる。
超臨界流体の使用温度は、基本的に、本発明の有機化合物が溶解する温度以上であれば特に限定はないが、温度が低過ぎると有機化合物の超臨界流体中への溶解性が乏しくなる場合があり、また温度が高過ぎると有機化合物が分解する場合があるため、使用温度範囲は20〜600℃とするのが好ましい。
超臨界流体の使用圧力は、基本的に用いる物質の臨界圧力以上であれば特に限定はないが、圧力が低過ぎると有機化合物の超臨界流体中への溶解性が乏しくなる場合があり、また圧力が高過ぎると製造装置の耐久性、操作時の安全性等の面で問題が生じる場合があるため、使用圧力は1〜100MPaとするのが好ましい。
超臨界流体を使用する装置は、有機化合物が超臨界流体と接触して超臨界流体中へ溶解する機能を有する装置であればなんら限定されることはなく、例えば、超臨界流体を閉鎖系で使用するバッチ方式、超臨界流体を循環させて使用する流通方式、バッチ方式と流通方式とを組み合わせた複合方式等の使用が可能である。
[電子デバイス作製用インク]
本発明の電子デバイス作製用インクは、上記塗布液を含有することを特徴とする。すなわち、本発明の電子デバイス作製用インクは、上記塗布液に由来することを特徴とする。
電子デバイスとしては、発光デバイスであることが好ましく、さらには、有機EL素子、又は光電変換素子等であることが好ましい。
本発明の塗布液を含有する電子デバイス作製用インクを用いたインクジェット法により、前記電子デバイスを構成する各層を形成することができる。
[電子デバイス]
本発明の電子デバイスは、上記塗布液を用いて形成された有機機能層を有することを特徴とする。すなわち、本発明の電子デバイスは、上記塗布液に由来する有機機能層を有することを特徴とし、言い換えると、上記塗布液を塗膜化してなる有機機能層を有することを特徴とする。
電子デバイスとしては、発光デバイスであることが好ましく、さらには、有機EL素子又は光電変換素子等であることが好ましい。
[有機EL素子]
本発明の有機EL素子は、上記塗布液を用いて形成された有機機能層を有することを特徴とする。すなわち、本発明の有機EL素子は、上記塗布液に由来する有機機能層を有することを特徴とし、言い換えると、上記塗布液を塗膜化してなる有機機能層を有することを特徴とする。
以下、有機EL素子の詳細を説明する。
前述のように本発明の有機EL素子は、基板上に、陽極と陰極、これらの電極間に1層以上の有機機能層(「有機化合物層」、「有機EL層」ともいう。)を挾持した構造を有している。
(基板)
本発明の有機EL素子に用いることができる基板としては、特に限定されないが、ガラス基板とプラスチック基板等を用いることができ、また、透明であっても不透明であってもよい。基板側から光を取り出す場合には、基板は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な基板としては、ガラス、石英、透明プラスチック基板を挙げることができる。また、基板としては、基板側からの酸素や水の侵入を阻止するため、JIS Z−0208に準拠した試験において、その厚さが1μm以上で水蒸気透過度が1g/(m・24h・atm)(25℃)以下であるものが好ましい。
ガラス基板としては、具体的には、例えば無アルカリガラス、低アルカリガラス、ソーダライムガラス等が挙げられる。これらのうち、水分の吸着が少ない点からは無アルカリガラスが好ましいが、充分に乾燥を行えばこれらのいずれを用いてもよい。
プラスチック基板は、可撓性が高く、軽量で割れにくいこと、有機EL素子のさらなる薄型化を可能にできること等の理由で近年注目されている。
プラスチック基板の基材として用いられる樹脂フィルムとしては、特に限定は無く、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル又はポリアリレート類、有機無機ハイブリッド樹脂等を挙げることができる。
有機無機ハイブリッド樹脂としては、有機樹脂とゾル・ゲル反応によって得られる無機高分子(例えばシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等)を組み合わせて得られるものが挙げられる。これらのうちでは、特にアートン(JSR(株)製)又はアペル(三井化学(株)製)といったノルボルネン(又はシクロオレフィン系)樹脂が好ましい。
通常生産されているプラスチック基板は、水分の透過性が比較的高く、また、基板内部に水分を含有している場合もある。そのため、このようなプラスチック基板を用いる際には、樹脂フィルム上に水蒸気や酸素などの侵入を抑制する膜(以下、「バリアー膜」又は「水蒸気封止膜」という)を設けたものが好ましい。
バリアー膜を構成する材料は、特に限定は無く、無機物、有機物の被膜又はその両者のハイブリッド等が用いられる。被膜が形成されていてもよく、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が0.01g/(m・24h)以下のバリアー性フィルムであることが好ましく、さらには、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10−3mL/(m・24h・atm)以下、水蒸気透過度が、1×10−5g/(m・24h)以下の高バリアー性フィルムであることが好ましい
バリアー膜を構成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であれば特に限定は無く、例えば金属酸化物、金属酸窒化物又は金属窒化物等の無機物、有機物、又はその両者のハイブリッド材料等を用いることができる。
金属酸化物、金属酸窒化物又は金属窒化物としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、インジウム・スズ酸化物(ITO)、酸化アルミニウム等の金属酸化物、窒化ケイ素等の金属窒化物、酸窒化ケイ素、酸窒化チタン等の金属酸窒化物等が挙げられる。
さらに、該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
バリアー膜は、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が0.01g/(m・24h)以下のバリアー性フィルムであることが好ましく、さらには、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、10−3mL/(m・24h・atm)以下、水蒸気透過度が、10−5g/(m・24h)以下の高バリアー性フィルムであることが好ましい
前記樹脂フィルムに、バリアー膜を設ける方法は、特に限定されず、いかなる方法でもよいが、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、CVD法(化学的気相堆積:例えば、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法など)、コーティング法、ゾル・ゲル法等を用いることができる。これらのうち、緻密な膜を形成できる点から、大気圧又は大気圧近傍でのプラズマCVD処理による方法が好ましい。
不透明な基板としては、例えば、アルミ、ステンレス等の金属板、フィルムや不透明樹脂基板、セラミック製の基板等が挙げられる。
(陽極)
有機EL素子の陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、金属の電気伝導性化合物、又はこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。ここで、「金属の電気伝導性化合物」とは、金属と他の物質との化合物のうち電気伝導性を有するものをいい、具体的には、例えば、金属の酸化物、ハロゲン化物等であって電気伝導性を有するものをいう。
このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウム・スズ酸化物(ITO)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。上記陽極は、これらの電極物質からなる薄膜を、蒸着やスパッタリング等の公知の方法により、前記基板上に形成させることで作製することができる。
また、この薄膜にフォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、また、パターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。
陽極から発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましい。また、陽極としてのシート抵抗は、数百Ω/sq.以下が好ましい。さらに陽極の膜厚は、構成する材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10nm〜200nmの範囲で選ばれる。
(有機機能層)
有機機能層(「有機EL層」、「有機化合物層」ともいう。)には少なくとも発光層が含まれるが、発光層とは広義には、陰極と陽極とからなる電極に電流を流した際に発光する層のことを指し、具体的には、陰極と陽極とからなる電極に電流を流した際に発光する有機化合物を含有する層を指す。
本発明に用いられる有機EL素子は、必要に応じ、発光層の他に、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層及び電子輸送層を有していてもよく、これらの層が陰極と陽極とで挟持された構造をとる。
具体的には、
(i)陽極/発光層/陰極
(ii)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
(iii)陽極/発光層/電子注入層/陰極
(iv)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
(v)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(vi)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
等の構造が挙げられる。
さらに、電子注入層と陰極との間に、陰極バッファー層(例えば、フッ化リチウム等)を挿入してもよく、陽極と正孔注入層との間に、陽極バッファー層(例えば、銅フタロシアニン等)を挿入してもよい。
(発光層)
本発明に係る発光層は、電極又は電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。発光層は単一の組成を持つ層であってもよいし、同一又は異なる組成をもつ複数の層からなる積層構造であってもよい。
この発光層自体に、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層及び電子輸送層等の機能を付与してもよい。すなわち、発光層に(1)電界印加時に、陽極又は正孔注入層により正孔を注入することができ、かつ陰極又は電子注入層より電子を注入することができる注入機能、(2)注入した電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる輸送機能、(3)電子と正孔の再結合の場を発光層内部に提供し、これを発光につなげる発光機能のうちの少なくとも1つの機能を付与してもよい。なお、発光層は、正孔の注入されやすさと電子の注入されやすさに違いがあってもよく、また、正孔と電子の移動度で表される輸送機能に大小があってもよいが、少なくともどちらか一方の電荷を移動させる機能を有するものが好ましい。
この発光層に用いられる発光材料の種類については、特に制限はなく、従来、有機EL素子における発光材料として公知のものを用いることができる。このような発光材料は、主に有機化合物であり、所望の色調により、例えば、Macromol.Symp.125巻17〜26頁に記載の化合物が挙げられる。また、発光材料はp−ポリフェニレンビニレンやポリフルオレンのような高分子材料でもよく、さらに前記発光材料を側鎖に導入した高分子材料や前記発光材料を高分子の主鎖とした高分子材料を使用してもよい。なお、上述したように、発光材料は、発光性能の他に、正孔注入機能や電子注入機能を併せ持っていてもよいため、後述する正孔注入材料や電子注入材料のほとんどが発光材料としても使用できる。
有機EL素子を構成する層において、その層が2種以上の有機化合物で構成されるとき、主成分をホスト、その他の成分をドーパントといい、本特許の発光層においてホストとドーパントを併用する場合、主成分であるホスト化合物に対する発光層のドーパント(以下発光ドーパントともいう)の混合比は好ましくは質量で0.1〜30質量%未満である。
発光層に用いるドーパントは、大きく分けて、蛍光を発光する蛍光性ドーパントとリン光を発光する燐光性ドーパントの2種類がある。
蛍光性ドーパントの代表例としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、又は希土類錯体系蛍光体、その他公知の蛍光性化合物等が挙げられる。
本発明においては、少なくとも1層の発光層がリン光性化合物を含有するのが好ましい。
本発明においてリン光性化合物とは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、リン光量子収率が25℃において0.001以上の化合物である。リン光量子収率は好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.1以上である。上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に用いられるリン光性化合物は、任意の溶媒の何れかにおいて上記リン光量子収率が達成されればよい。
リン光性ドーパントはリン光性化合物であり、その代表例としては、好ましくは元素の周期律表で8〜10族の金属を含有する錯体系化合物であり、さらに好ましくは、イリジウム化合物、オスミウム化合物、ロジウム化合物、パラジウム化合物、又は白金化合物(白金錯体系化合物)であり、中でも好ましくはイリジウム化合物、ロジウム化合物、白金化合物であり、最も好ましくはイリジウム化合物である。
ドーパントの例としては、以下の文献又は特許公報に記載されている化合物である。J.Am.Chem.Soc.123巻4304〜4312頁、国際公開第2000/70655、同2001/93642、同2002/02714、同2002/15645、同2002/44189、同2002/081488、特開2002−280178号公報、同2001−181616号公報、同2002−280179号公報、同2001−181617号公報、同2002−280180号公報、同2001−247859号公報、同2002−299060号公報、同2001−313178号公報、同2002−302671号公報、同2001−345183号公報、同2002−324679号公報、同2002−332291号公報、同2002−50484号公報、同2002−332292号公報、同2002−83684号公報、特表2002−540572号公報、特開2002−117978号公報、同2002−338588号公報、同2002−170684号公報、同2002−352960号公報、同2002−50483号公報、同2002−100476号公報、同2002−173674号公報、同2002−359082号公報、同2002−175884号公報、同2002−363552号公報、同2002−184582号公報、同2003−7469号公報、特表2002−525808号公報、特開2003−7471号公報、特表2002−525833号公報、特開2003−31366号公報、同2002−226495号公報、同2002−234894号公報、同2002−235076号公報、同2002−241751号公報、同2001−319779号公報、同2001−319780号公報、同2002−62824号公報、同2002−100474号公報、同2002−203679号公報、同2002−343572号公報、同2002−203678号公報等。
以下にリン光性ドーパントの具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
Figure 2018012223
Figure 2018012223
Figure 2018012223
発光ドーパントは1種のみを用いてもよいし、複数種類を用いてもよく、これらドーパントからの発光を同時に取り出すことにより、複数の発光極大波長を持つ発光素子を構成することもできる。また、例えばリン光性ドーパントと、蛍光性ドーパントの両方が加えられていてもよい。複数の発光層を積層して有機EL素子を構成する場合、それぞれの層に含有される発光ドーパントは同じであっても異なっていても、単一種類であっても複数種類であってもよい。
さらには、前記発光ドーパントを高分子鎖に導入した、又は前記発光ドーパントを高分子の主鎖とした高分子材料を使用してもよい。
上記ホスト化合物としては、例えばカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、芳香族ボラン誘導体、含窒素複素環化合物、チオフェン誘導体、フラン誘導体、オリゴアリーレン化合物等の基本骨格を有するものが挙げられ、後述の電子輸送材料及び正孔輸送材料もその相応しい一例として挙げられる。青色又は白色の発光素子、表示装置及び照明装置に適用する場合には、ホスト化合物の蛍光極大波長が415nm以下であることが好ましく、リン光性ドーパントを用いる場合、ホスト化合物のリン光の0−0バンドが450nm以下であることがさらに好ましい。発光ホストとしては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、かつ、発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。
発光ホストの具体例としては、例えば以下の文献に記載されている化合物が好適である。
特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等。
発光ドーパントはホスト化合物を含有する層全体に分散されていてもよいし、部分的に分散されていてもよい。発光層にはさらに別の機能を有する化合物が加えられていてもよい。
上記の材料を用いて、例えば蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット転写法、印刷法等の公知の方法により薄膜化することにより、発光層を形成することができるが、形成された発光層は、特に分子堆積膜であることが好ましい。ここで、分子堆積膜とは、上記化合物の気相状態から沈着され形成された薄膜や、該化合物の溶融状態又は液相状態から固体化され形成された膜のことである。通常、この分子堆積膜とLB法により形成された薄膜(分子累積膜)とは、凝集構造、高次構造の相違や、それに起因する機能的な相違により区別することができる。
本発明においては、上記の発光材料であるリン光性ドーパント及びホスト化合物を本発明の有機化合物として用いることが好ましい。すなわち、発光層を、当該リン光性ドーパント及びホスト化合物と、有機溶媒とを含む溶液を、スピンコート等の塗布によって形成することが、分子体積膜からなる発光層を形成することができるため好ましい。そして、当該リン光性ドーパント及びホスト化合物と、有機溶媒とを含む塗布液において、50℃以下、大気圧条件下での有機溶媒に対する溶存二酸化炭素濃度を1ppm〜前記有機溶媒に対する飽和濃度とすることが好ましい。
溶存二酸化炭素濃度を上記範囲とする手段としては、上述したように、リン光性ドーパント及びホスト化合物と、有機溶媒とを含む溶液に炭酸ガスをバブリングする方法、又は、有機溶媒及び二酸化炭素を含有する超臨界流体を用いた超臨界流体クロマトグラフィー法が挙げられる。
(正孔注入層及び正孔輸送層)
正孔注入層に用いられる正孔注入材料は、正孔の注入、電子の障壁性のいずれかを有するものである。また、正孔輸送層に用いられる正孔輸送材料は、電子の障壁性を有するとともに正孔を発光層まで輸送する働きを有するものである。したがって、本発明においては、正孔輸送層は正孔注入層に含まれる。これら正孔注入材料及び正孔輸送材料は、有機物、無機物のいずれであってもよい。具体的には、例えばトリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、ポルフィリン化合物、チオフェンオリゴマー等の導電性高分子オリゴマーが挙げられる。これらのうちでは、アリールアミン誘導体及びポルフィリン化合物が好ましい。アリールアミン誘導体の中では、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物が好ましく、芳香族第三級アミン化合物がより好ましい。
上記芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)ビフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベン;N−フェニルカルバゾール、さらには、米国特許第5061569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(以下、α−NPDと略す。)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料として使用することができる。
また、本発明においては正孔輸送層の正孔輸送材料は415nm以下に蛍光極大波長を有することが好ましい。すなわち、正孔輸送材料は、正孔輸送能を有しつつかつ、発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tgである化合物が好ましい。
正孔注入層及び正孔輸送層は、上記正孔注入材料及び正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法、転写法、印刷法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。
また、本発明において、上記の正孔注入材料や正孔輸送材料を本発明の有機化合物として用いることが好ましい。すなわち、正孔輸送層(又は正孔注入層)を、当該正孔輸送材料(又は正孔注入材料)と有機溶媒とを含む溶液を、スピンコート等の塗布によって形成することが好ましく、当該正孔輸送材料(又は正孔注入材料)と、有機溶媒とを含む塗布液において、50℃以下、大気圧条件下での有機溶媒に対する溶存二酸化炭素濃度を1ppm〜前記有機溶媒に対する飽和濃度とすることが好ましい。
溶存二酸化炭素濃度を上記範囲とする手段としては、上述したように、正孔輸送材料と、有機溶媒とを含む溶液に炭酸ガスをバブリングする方法、又は、有機溶媒及び二酸化炭素を含有する超臨界流体を用いた超臨界流体クロマトグラフィー法が挙げられる。
正孔注入層及び正孔輸送層の厚さについては、特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度である。なお、上記正孔注入層及び正孔輸送層は、それぞれ上記材料の1種又は2種以上からなる1層構造であってもよく、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。また、正孔注入層と正孔輸送層を両方設ける場合には、上記の材料のうち、通常、異なる材料を用いるが、同一の材料を用いてもよい。
(電子注入層及び電子輸送層)
電子注入層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。この電子注入層に用いられる材料(以下、電子注入材料ともいう)の例としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。
また、特開昭59−194393号公報に記載されている一連の電子伝達性化合物は、該公報では発光層を形成する材料として開示されているが、本発明者らが検討の結果、電子注入材料として用いうることが分かった。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子注入材料として用いることができる。
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alqと略す。)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も電子注入材料として用いることができる。
その他、メタルフリーやメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも電子注入材料として好ましく用いることができる。また、正孔注入層と同様にn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子注入材料として用いることができる。
電子輸送層に用いられる好ましい化合物は、415nm以下に蛍光極大波長を有することが好ましい。すなわち、電子輸送層に用いられる化合物は、電子輸送能を有しつつかつ、発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tgである化合物が好ましい。
電子注入層は、上記電子注入材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法、転写法、印刷法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。
また、本発明において、上記の電子注入材料を本発明の有機化合物として用いることが好ましい。すなわち、電子注入層を、当該電子注入材料と有機溶媒とを含む溶液を、スピンコート等の塗布によって形成することが好ましく、当該電子注入材料と、有機溶媒とを含む塗布液において、50℃以下、大気圧条件下での有機溶媒に対する溶存二酸化炭素濃度を1ppm〜前記有機溶媒に対する飽和濃度とすることが好ましい。
溶存二酸化炭素濃度を上記範囲とする手段としては、上述したように、電子注入材料と、有機溶媒とを含む溶液に炭酸ガスをバブリングする方法、又は、有機溶媒及び二酸化炭素を含有する超臨界流体を用いた超臨界流体クロマトグラフィー法が挙げられる。
また、電子注入層としての厚さは特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲で選ばれる。この電子注入層は、これらの電子注入材料の1種又は2種以上からなる1層構造であってもよいし、あるいは同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
なお、本明細書においては、前記電子注入層のうち、発光層と比較してイオン化エネルギーが大きい場合には、特に電子輸送層と呼ぶこととする。したがって、本明細書においては、電子輸送層は電子注入層に含まれる。
上記電子輸送層は、正孔阻止層(ホールブロック層)とも呼ばれ、その例としては、例えば、国際公開第2000/70655号、特開2001−313178号公報、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日 エヌ・ティー・エス社発行)」の第237頁等に記載されているものが挙げられる。特に発光層にオルトメタル錯体系ドーパントを用いるいわゆる「リン光発光素子」においては、前記(v)及び(vi)のように電子輸送層(正孔阻止層)を有する構成を採ることが好ましい。
(バッファー層)
陽極と発光層又は正孔注入層の間、及び、陰極と発光層又は電子注入層との間にはバッファー層(電極界面層)を存在させてもよい。バッファー層とは、駆動電圧低下や発光効率向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日 エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(第123〜166頁)に詳細に記載されており、陽極バッファー層と陰極バッファー層とがある。
陽極バッファー層は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
陰極バッファー層は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。
上記バッファー層はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その厚さは0.1〜100nmの範囲が好ましい。さらに、上記基本構成層の他に、必要に応じてその他の機能を有する層を適宜積層してもよい。
(陰極)
上述のように有機EL素子の陰極としては、一般に仕事関数の小さい(4eV未満)金属(以下、電子注入性金属と称する)、合金、金属の電気伝導性化合物あるいはこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。
このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、インジウム、希土類金属、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が挙げられる。
本発明においては、上記に列挙したものを陰極の電極物質として用いてもよいが、本発明の効果をより有効に発揮させる点からは、陰極は第13族金属元素を含有してなることが好ましい。すなわち本発明では、後述するように陰極の表面をプラズマ状態の酸素ガスで酸化して、陰極表面に酸化皮膜を形成することにより、それ以上の陰極の酸化を防止し、陰極の耐久性を向上させることができる。
したがって、陰極の電極物質としては、陰極に要求される好ましい電子注入性を有する金属であって、緻密な酸化皮膜を形成しうる金属であることが好ましい。
前記第13族金属元素を含有してなる陰極の電極物質としては、具体的には、例えば、アルミニウム、インジウム、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が挙げられる。なお、上記混合物の各成分の混合比率は、有機EL素子の陰極として従来公知の比率を採用することができるが、特にこれに限定されない。上記陰極は、上記の電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、前記有機化合物層(有機EL層)上に薄膜形成することにより、作製することができる。
また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/sq.以下が好ましく、膜厚は、通常10nm〜1μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光光を透過させるために、有機EL素子の陽極又は陰極のいずれか一方を透明又は半透明にすると、発光効率が向上して好ましい。
本発明の塗布液(有機EL材料)を用いて作製した有機EL素子からなる表示装置を作製する好適な例を説明する。
[有機EL素子の作製方法]
本発明の有機EL素子の作製方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子の作製法について説明する。
まず適当な基体上に、所望の電極物質、例えば陽極用物質からなる薄膜を、1μm以下、好ましくは10〜200nmの厚さになるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陽極を作製する。次に、この上に素子材料である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、正孔阻止層の有機化合物薄膜を形成させる。
これらの有機化合物薄膜の薄膜化の方法としては、上述したように、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、蒸着法、印刷法等があるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法又はスピンコート法が好ましく、本発明においては、本発明の塗布液を用いることができる点でスピンコート法が特に好ましい。
また、層ごとに異なる成膜法を適用してもよい。成膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は、使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450同、真空度10−6〜10−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、厚さ0.1nm〜5μmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
これらの層を形成後、その上に陰極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは50〜200nmの範囲の厚さになるように、例えば蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極を設けることにより、所望の有機EL素子が得られる。この有機EL素子の作製は、一回の真空引きで一貫して正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる成膜法を施してもかまわない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。
[有機EL素子の封止]
有機EL素子の封止手段としては、特に限られないが、例えば、有機EL素子の外周部を封止用接着剤で封止した後、有機EL素子の発光領域を覆うように封止部材を配置する方法が挙げられる。
封止用接着剤としては、例えば、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。また、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(二液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
封止部材としては、有機EL素子を薄膜化することできる観点から、ポリマーフィルム及び金属フィルムを好ましく使用することができる。
封止部材と有機EL素子の発光領域との間隙には、封止用接着剤の他には、気相及び液相では窒素、アルゴン等の不活性気体やフッ化炭化水素、シリコンオイルのような不活性液体を注入することもできる。また、封止部材と有機EL素子の表示領域との間隙を真空とすることや、間隙に吸湿性化合物を封入することもできる。
[表示装置]
本発明の有機EL素子を用いる多色表示装置は、発光層形成時のみシャドーマスクを設け、他層は共通であるので、シャドーマスク等のパターニングは不要であり、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等で膜を形成できる。
発光層のみパターニングを行う場合、その方法に限定はないが、好ましくは蒸着法、インクジェット法、印刷法である。蒸着法を用いる場合においてはシャドーマスクを用いたパターニングが好ましい。
また、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
このようにして得られた多色表示装置に、直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧2〜40V程度を印加すると、発光が観測できる。また、逆の極性で電圧を印加しても電流は流れずに発光は全く生じない。さらに、交流電圧を印加する場合には、陽極が+、陰極が−の状態になったときのみ発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
多色表示装置は、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。表示デバイス、ディスプレイにおいて、青、赤、緑発光の3種の有機EL素子を用いることにより、フルカラーの表示が可能となる。
表示デバイス、ディスプレイとしてはテレビ、パソコン、モバイル機器、AV機器、文字放送表示、自動車内の情報表示等が挙げられる。特に静止画像や動画像を再生する表示装置として使用してもよく、動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリックス(パッシブマトリックス)方式でもアクティブマトリックス方式でもどちらでもよい。
発光光源としては家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるがこれに限定するものではない。
また、本発明に係る有機EL素子に共振器構造を持たせた有機EL素子として用いてもよい。
このような共振器構造を有した有機EL素子の使用目的としては、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、これらに限定されない。また、レーザー発振をさせることにより、上記用途に使用してもよい。
本発明の有機EL素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用してもよいし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は、単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。又は、異なる発光色を有する本発明の有機EL素子を2種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作製することが可能である。
本発明の有機EL素子から構成される表示装置の一例を図面に基づいて以下に説明する。
図4は、有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図である。有機EL素子の発光により画像情報の表示を行う、例えば、携帯電話等のディスプレイの模式図である。ディスプレイ41は、複数の画素を有する表示部A、画像情報に基づいて表示部Aの画像走査を行う制御部B等からなる。制御部Bは、表示部Aと電気的に接続され、複数の画素それぞれに外部からの画像情報に基づいて走査信号と画像データ信号を送り、走査信号により走査線毎の画素が画像データ信号に応じて順次発光して画像走査を行って画像情報を表示部Aに表示する。
図5は、表示部Aの模式図である。表示部Aは基板上に、複数の走査線55及びデータ線56を含む配線部と、複数の画素53等とを有する。表示部Aの主要な部材の説明を以下に行う。
図5においては、画素53の発光した光が、白矢印方向(下方向)へ取り出される場合を示している。配線部の走査線55及び複数のデータ線56は、それぞれ導電材料からなり、走査線55とデータ線56は格子状に直交して、直交する位置で画素53に接続している(詳細は図示せず)。画素53は、走査線55から走査信号が印加されると、データ線56から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素を、適宜、同一基板上に並置することによって、フルカラー表示が可能となる。
次に、画素の発光プロセスを説明する。
図6は、画素の模式図である。画素は、有機EL素子60、スイッチングトランジスタ61、駆動トランジスタ62、コンデンサ63等を備えている。複数の画素に有機EL素子60として、赤色、緑色、青色発光の有機EL素子を用い、これらを同一基板上に並置することでフルカラー表示を行うことができる。
図6において、制御部B(図6には図示せず、図4に示す。)からデータ線56を介してスイッチングトランジスタ61のドレインに画像データ信号が印加される。そして、制御部Bから走査線55を介してスイッチングトランジスタ61のゲートに走査信号が印加されると、スイッチングトランジスタ61の駆動がオンし、ドレインに印加された画像データ信号がコンデンサ63と駆動トランジスタ62のゲートに伝達される。
画像データ信号の伝達により、コンデンサ63が画像データ信号の電位に応じて充電されるとともに、駆動トランジスタ62の駆動がオンする。駆動トランジスタ62は、ドレインが電源ライン67に接続され、ソースが有機EL素子60の電極に接続されており、ゲートに印加された画像データ信号の電位に応じて電源ライン67から有機EL素子60に電流が供給される。
制御部Bの順次走査により走査信号が次の走査線55に移ると、スイッチングトランジスタ61の駆動がオフする。しかし、スイッチングトランジスタ61の駆動がオフしてもコンデンサ63は充電された画像データ信号の電位を保持するので、駆動トランジスタ62の駆動はオン状態が保たれて、次の走査信号の印加が行われるまで有機EL素子60の発光が継続する。順次走査により、次に走査信号が印加されたとき、走査信号に同期した次の画像データ信号の電位に応じて駆動トランジスタ62が駆動して有機EL素子60が発光する。すなわち、有機EL素子60の発光は、複数の画素それぞれの有機EL素子60に対して、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタ61と駆動トランジスタ62を設けて、複数の画素53(図6には図示せず、図5に示す。)それぞれの有機EL素子60の発光を行っている。このような発光方法をアクティブマトリクス方式と呼んでいる。
ここで、有機EL素子60の発光は、複数の階調電位を持つ多値の画像データ信号による複数の階調の発光でもよいし、2値の画像データ信号による所定の発光量のオン、オフでもよい。
また、コンデンサ63の電位の保持は、次の走査信号の印加まで継続して保持してもよいし、次の走査信号が印加される直前に放電させてもよい。
本発明においては、上述したアクティブマトリクス方式に限らず、走査信号が走査されたときのみデータ信号に応じて有機EL素子を発光させるパッシブマトリクス方式の発光駆動でもよい。
図7は、パッシブマトリクス方式による表示装置の模式図である。図7において、複数の走査線55と複数の画像データ線56が画素53を挟んで対向して格子状に設けられている。順次走査により走査線55の走査信号が印加されたとき、印加された走査線55に接続している画素53が画像データ信号に応じて発光する。パッシブマトリクス方式では画素53にアクティブ素子が無く、製造コストの低減を図ることができる。
[光電変換素子及び太陽電池]
本発明の光電変換素子は、上記塗布液を用いて形成された有機機能層を有することを特徴とする。すなわち、本発明の光電変換素子は、上記塗布液に由来する有機機能層を有することを特徴とし、言い換えると、上記塗布液を塗膜化してなる有機機能層を有することを特徴とする。
以下、光電変換素子及び太陽電池の詳細を説明する。
図8は、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなるシングル構成(バルクヘテロジャンクション層が1層の構成)の太陽電池の一例を示す断面図である。
図8において、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子200は、基板201の一方面上に、透明電極(陽極)202、正孔輸送層207、バルクヘテロジャンクション層の光電変換部204、電子輸送層(又はバッファー層ともいう。)208及び対極(陰極)203が順次積層されている。
基板201は、順次積層された透明電極202、光電変換部204及び対極203を保持する部材である。本実施形態では、基板201側から光電変換される光が入射するので、基板201は、この光電変換される光を透過させることが可能な、すなわち、この光電変換すべき光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。基板201は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が用いられる。この基板201は、必須ではなく、例えば、光電変換部204の両面に透明電極202及び対極203を形成することでバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子200が構成されてもよい。
光電変換部204は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を有して構成される。p型半導体材料は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は、相対的に電子受容体(アクセプター)として機能する。ここで、電子供与体及び電子受容体は、“光を吸収した際に、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)を形成する電子供与体及び電子受容体”であり、電極のように単に電子を供与あるいは受容するものではなく、光反応によって、電子を供与あるいは受容するものである。
図8において、基板201を介して透明電極202から入射された光は、光電変換部204のバルクヘテロジャンクション層における電子受容体あるいは電子供与体で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。発生した電荷は、内部電界、例えば、透明電極202と対極203の仕事関数が異なる場合では透明電極202と対極203との電位差によって、電子は電子受容体間を通り、また正孔は電子供与体間を通り、それぞれ異なる電極へ運ばれ光電流が検出される。例えば、透明電極202の仕事関数が対極203の仕事関数よりも大きい場合では、電子は透明電極202へ、正孔は対極203へ輸送される。なお、仕事関数の大小が逆転すれば、電子と正孔はこれとは逆方向に輸送される。また、透明電極202と対極203との間に電位をかけることにより、電子と正孔の輸送方向を制御することもできる。
なお、図8には記載していないが、正孔ブロック層、電子ブロック層、電子注入層、正孔注入層、又は平滑化層等の他の層を有していてもよい。
また、さらなる太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、このような光電変換素子を積層した、タンデム型の構成(バルクヘテロジャンクション層を複数有する構成)であってもよい。
図9は、タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。タンデム型構成の場合、基板201上に、順次透明電極202、第1の光電変換部209を積層した後、電荷再結合層(中間電極)205を積層した後、第2の光電変換部206、次いで対極203を積層することで、タンデム型の構成とすることができる。
上記のような層に用いることができる材料については、例えば、特開2015−149483号公報の段落0045〜0113に記載のn型半導体材料、及びp型半導体材料が挙げられる。
(バルクヘテロジャンクション層の形成方法)
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。このうち、前述の正孔と電子が電荷分離する界面の面積を増大させ、高い光電変換効率を有する素子を作製するためには、塗布法が好ましい。また塗布法は、製造速度にも優れている。
本発明においては、上記のバルクヘテロジャンクション層を構成するn型半導体材料及びp型半導体材料を本発明の有機化合物として用いることができる。すなわち、バルクヘテロジャンクション層を、当該n型半導体材料及びp型半導体材料と、有機溶媒とを含む溶液を、塗布によって形成することが好ましく、当該n型半導体材料及びp型半導体材料と、有機溶媒とを含む塗布液において、50℃以下、大気圧条件下での有機溶媒に対する溶存二酸化炭素濃度を1ppm〜前記有機溶媒に対する飽和濃度とすることが好ましい。
溶存二酸化炭素濃度を上記範囲とする手段としては、上述したように、n型半導体材料及びp型半導体材料と、有機溶媒とを含む溶液に炭酸ガスをバブリングする方法、又は、有機溶媒及び二酸化炭素を含有する超臨界流体を用いた超臨界流体クロマトグラフィー法が挙げられる。
塗布後は残留溶媒及び水分、ガスの除去、及び半導体材料の結晶化による移動度向上・吸収長波化を引き起こすために加熱を行うことが好ましい。製造工程中において所定の温度でアニール処理されると、微視的に一部が配列又は結晶化が促進され、バルクヘテロジャンクション層を適切な相分離構造とすることができる。その結果、バルクヘテロジャンクション層のキャリア移動度が向上し、高い効率を得ることができるようになる。
光電変換部(バルクヘテロジャンクション層)204は、電子受容体と電子供与体とが均一に混在された単一層で構成してもよいが、電子受容体と電子供与体との混合比を変えた複数層で構成してもよい。
次に、有機光電変換素子を構成する電極について説明する。
有機光電変換素子は、バルクヘテロジャンクション層で生成した正電荷と負電荷とが、それぞれp型有機半導体材料、及びn型有機半導体材料を経由して、それぞれ透明電極及び対極から取り出され、電池として機能するものである。それぞれの電極には、電極を通過するキャリアに適した特性が求められる。
(対極)
本発明において対極(陰極)とは、電子を取り出す電極のことが好ましい。例えば、陰極として用いる場合、導電材単独層であってもよいが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用してもよい。
対極材料としては、例えば、特開2010−272619号公報、特開2014−078742号公報等に記載の公知の陰極の導電材を用いることができる。
対極材料としては、例えば、特開2010−272619号公報、特開2014−078742号公報等に記載の公知の陰極の導電材を用いることができる。
(透明電極)
本発明において透明電極は、光電変換部で発生した正孔を取り出す機能を有する陽極とすることが好ましい。例えば、陽極として用いる場合、好ましくは波長380〜800nmの光を透過する電極である。材料としては、例えば、特開2010−272619号公報、特開2014−078742号公報等に記載の公知の陽極用の材料を用いることができる。
(中間電極)
また、タンデム構成の場合に必要となる中間電極の材料としては、透明性と導電性を併せ持つ化合物を用いた層であることが好ましい。
材料としては、例えば、特開2010−272619号公報、特開2014−078742号公報等に記載の公知の中間電極用の材料を用いることができる。
次に、電極及びバルクヘテロジャンクション層以外を構成する材料について述べる。
(正孔輸送層及び電子ブロック層)
本発明の有機光電変換素子は、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことを可能とするために、バルクヘテロジャンクション層と透明電極との中間には正孔輸送層・電子ブロック層を有していることが好ましい。
正孔輸送層を構成する光電変換素子用材料としては、例えば、特開2010−272619号公報、特開2014−078742号公報等に記載の公知の材料を用いることができる。
(電子輸送層、正孔ブロック層及びバッファー層)
本発明の有機光電変換素子は、バルクヘテロジャンクション層と対極との中間には電子輸送層・正孔ブロック層・バッファー層を形成することで、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
また、電子輸送層としては、例えば、特開2010−272619号公報、特開2014−078742号公報等に記載の公知の材料を用いることができる。電子輸送層は、バルクヘテロジャンクション層で生成した正孔を対極側には流さないような整流効果を有する、正孔ブロック機能が付与された正孔ブロック層としてもよい。正孔ブロック層とするための材料としては、例えば、特開2014−078742号公報に記載の公知の材料を用いることができる。
(その他の層)
エネルギー変換効率の向上や、素子寿命の向上を目的に、各種中間層を素子内に有する構成としてもよい。中間層の例としては、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層、励起子ブロック層、UV吸収層、光反射層、波長変換層等を挙げることができる。
(基板)
基板側から光電変換される光が入射する場合、基板はこの光電変換される光を透過させることが可能な、すなわち、この光電変換すべき光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。基板は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が好適に挙げられるが、軽量性と柔軟性の観点から透明樹脂フィルムを用いることが望ましい。
本発明で透明基板として好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限がなく、その材料、形状、構造、厚さ等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、特開2010−272619号公報、特開2014−078742号公報等に記載の公知の材料を用いることができる。
(光学機能層)
本発明の有機光電変換素子は、太陽光のより効率的な受光を目的として、各種の光学機能層を有していてよい。光学機能層としては、例えば、反射防止膜、マイクロレンズアレイ等の集光層、対極で反射した光を散乱させて再度バルクヘテロジャンクション層に入射させることができるような光拡散層等を設けてもよい。
反射防止層、集光層及び光散乱層としては、例えば、特開2010−272619号公報、特開2014−078742号
公報等に記載の公知の反射防止層、集光層及び光散乱層をそれぞれ用いることができる。
(パターニング)
本発明に係る電極、発電層、正孔輸送層、電子輸送層等をパターニングする方法やプロセスには特に制限はなく、例えば、特開2010−272619号公報、特開2014−078742号公報等に記載の公知の手法を適宜適用することができる。
(封止)
また、作製した有機光電変換素子が環境中の酸素、水分等で劣化しないために、有機光電変換素子だけでなく有機エレクトロルミネッセンス素子等で公知の手法によって封止することが好ましい。例えば、特開2010−272619号公報、特開2014−078742号公報等に記載の手法を用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記に示す実施例において、ドライエアとは、ドライエア発生装置(株式会社池田理化製、AT35HS)を用い製造したドライエアを示し、大気下とは、25℃、1気圧に設定された実験室内の大気下を示し、窒素雰囲気下とは、太陽日酸製G1グレードの窒素ボンベから供給された窒素ガスを用いた窒素雰囲気下をいう。
また、以下に実施例で使用する化合物の構造を示す。
Figure 2018012223
[実施例1]
高純度窒素雰囲気下で、トルエン(関東化学株式会社、脱水トルエン)1LにCBP、5gを溶かした溶液(s−1)に対して、高純度炭酸ガス(大陽日酸、高純度炭酸ガス(>99.995 vol.%)を流速100mL/minで10分間バブリングした後、10分間脱気し溶液s−5を用意した。
s−1及びs−5中の含有二酸化炭素量は、ガスクロマトグラフィーにて測定した。具体的には、カラム充填剤にWaters Corporation製 Porapack Type S GC Bulk Packing Material(Mesh80−100)を使用し、絶対検量線法にて測定した。
また、s−1及びs−5の含水量は、カールフィッシャー法にて測定した。それぞれの結果を表1に示す。
また、表1に示した各種溶媒に対して、同様の処理を行い、各種溶媒に高純度炭酸ガスをバブリングしないもの(s−2〜s−4)と、バブリングしたもの(s−6〜s−8)を用意し、s−2〜s−4及びs−6〜s−8の含有二酸化炭素量及び含水量を測定した。その結果を表1に示す。
なお、使用した各種溶媒は、下記のとおりである。
トルエン(関東化学株式会社、脱水トルエン)、酢酸イソブチル(関東化学株式会社、特級酢酸イソブチル)、TFPO(東京化成工業株式会社、2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノール)
Figure 2018012223
表1に示す結果より、各種溶媒に二酸化炭素を混合させることにより、各種溶媒中の含水量を削減することができたことがわかる。
[実施例2]
実施例1で作製したs−1〜s−8を表2に示す条件下で1時間保存した後に、それぞれのサンプルの溶存酸素濃度をガスクロマトグラフィーにて測定した。それぞれの結果を表2に示す。
Figure 2018012223
表2に示す結果より、二酸化炭素を含有する有機溶媒は、ドライエア及び大気下で保存した場合の酸素の取り込みが少ないことがわかる。
[実施例3]
100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上にITO(インジウム・スズ酸化物)を100nm成膜した基板(NHテクノグラス社製NA45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。この基板上に、実施例1で作製したs−4をインクジェット法にて成膜(膜厚約40nm)し、乾燥開始前の質量(w(0))を測定した。その後、60℃でt分間乾燥した時の質量(w(t))及び1時間真空乾燥した時の質量(w(60))を測定した。
1時間真空乾燥した基板の質量(w(60))と乾燥開始前の質量(w(0))及びt分間乾燥した時の(w(t))を用いて、t分乾燥後の乾燥度(Dry(101))を次式により求めた。
Dry101(t)=(1-((w(t) - w(60)) / (w(0) - w(60)))×100
s−4を、表3に記載のその他の溶液に置き換えて同様の測定を行い、表3の結果を得た。
Figure 2018012223
表3に示す結果より、炭酸ガスをバブリングした本発明の溶液(電子デバイス作製用インク)を使用した場合、インクの乾燥時間が短縮していることがわかる。
[実施例4]
<正孔輸送層(HT層)用塗布液の調製>
窒素雰囲気下のグローブボックスにて、ポリビニルカルバゾール(PVK)600mgをクロロベンゼン100mlに溶解した溶液(溶液s−10)を二分割し、それぞれ下記の方法にて処理し、一方を溶液s−11とし、もう一方を窒素雰囲気下のグルーブボックス内で10分間二酸化炭素バブリングし溶液s−12とした。溶液s−12の二酸化炭素濃度を実施例1の方法で測定し、200ppmの二酸化炭素を含有していることを確認した。さらに、溶液s−11、溶液s−12をそれぞれ三分割し、下記の方法にて処理して表4に示す溶液を得た。
処理1:溶液s−11を調製した窒素雰囲気下で30分間保管し、溶液s−111を得た。
処理2:溶液s−11をドライエア雰囲気下で30分間保管し、溶液s−112を得た。
処理3:溶液s−11を大気下で30分間保管し、溶液s−113を得た。
処理4:溶液s−12を調製した窒素雰囲気下で30分間保管し、溶液s−121を得た。
処理5:溶液s−12をドライエア雰囲気下で30分間保管し、溶液s−122を得た。
処理6:溶液s−12を大気下で30分間保管し、溶液s−123を得た。
<発光層(EM層)用塗布液の調製>
窒素雰囲気下のグローブボックスにて、CBP600mgと化合物Ir−12を30.0mgとをトルエン/酢酸イソブチル(1/1)60mlに溶解した溶液(溶液s−20)を二分割し、それぞれ下記の方法にて処理し、一方を溶液s−21とし、もう一方を窒素雰囲気下のグルーブボックス内で10分間二酸化炭素バブリングし溶液s−22とした。溶液s−22の二酸化炭素濃度を実施例1の方法で測定し、250ppmの二酸化炭素を含有していることを確認した。さらに溶液s−21、溶液s−22をそれぞれ三分割し、下記の方法にて処理して表4に示す溶液を得た。
処理11:溶液s−21を調製した窒素雰囲気下で30分間保管し、溶液s−211を得た。
処理12:溶液s−21をドライエア雰囲気下で30分間保管し、溶液s−212を得た。
処理13:溶液s−21を大気下で30分間保管し、溶液s−213を得た。
処理14:溶液s−22を調製した窒素雰囲気下で30分間保管し、溶液s−221を得た。
処理15:溶液s−22をドライエア雰囲気下で30分間保管し、溶液s−222を得た。
処理16:溶液s−22を大気下で30分間保管し、溶液s−223を得た。
<電子輸送層(ET層)用塗布液>
窒素雰囲気下のグローブボックスにて、バソキュプロイン(BCP)200mgをシクロヘキサン60mlに溶解した溶液(溶液s−30)を二分割し、それぞれ下記の方法にて処理し、一方を溶液s−31とし、もう一方を窒素雰囲気下のグルーブボックス内で10分間二酸化炭素バブリングし溶液s−32とした。溶液s−32の二酸化炭素濃度を実施例1の方法で測定し、180ppmの二酸化炭素を含有していることを確認した。さらに溶液s−31、溶液s−32をそれぞれ三分割し、下記の方法にて処理して表4に示す溶液を得た。
処理21:溶液s−31を調製した窒素雰囲気下で30分間保管し、溶液s−311を得た。
処理22:溶液s−31をドライエア雰囲気下で30分間保管し、溶液s−312を得た。
処理23:溶液s−31を大気下で30分間保管し、溶液s−313を得た。
処理24:溶液s−32を調製した窒素雰囲気下で30分間保管し、溶液s−321を得た。
処理25:溶液s−32をドライエア雰囲気下で30分間保管し、溶液s−322を得た。
処理26:溶液s−32を大気下で30分間保管し、溶液s−323を得た。
<有機EL素子の作製>
陽極として100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上にITO(インジウム・スズ酸化物)を100nm成膜した基板(NHテクノグラス社製NA45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行なった。この基板を市販のスピンコータに取り付け、溶液s−111(10ml)を用い、1000rpm、30秒の条件下、スピンコート(層厚約40nm)、60℃で1時間真空乾燥し、正孔輸送層とした。次に溶液s−211(6ml)を用い、1000rpm、30秒の条件下、スピンコートし(層厚約40nm)、60℃で1時間真空乾燥し、発光層とした。さらに溶液s−311(6ml)を用い、1000rpm、30秒の条件下、スピンコートし(層厚約10nm)、60℃で1時間真空乾燥し、正孔阻止の役割も兼ねた電子輸送層を設けた。
続いて、この基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、モリブデン製抵抗加熱ボートにAlqを200mg入れ、真空蒸着装置に取り付けた。真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、Alqの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で前記電子輸送層の上に蒸着して、さらに層厚40nmの電子注入層を設けた。なお、蒸着時の基板温度は室温であった。
引き続き、フッ化リチウム0.5nm及びアルミニウム110nmを蒸着して陰極を形成し、有機EL素子1を作製した。
有機EL素子1の作製において、溶液s−111、溶液s−211、溶液s−311を、表4に示す溶液に置き換えた以外は有機EL素子1と同じ方法で表4に示す有機EL素子を作製した。
<有機EL素子の評価>
上述のようにして作製した表4に示す有機EL素子について下記の評価を行い、その結果を表4に示す。
作製した有機EL素子について、温度23℃、乾燥窒素ガス雰囲気下で10V直流電圧印加による連続点灯を行い、点灯開始時の発光輝度から輝度が半減する時間(以下、発光寿命という)及び発光効率(lm/W)を測定し、その結果を表4に示す。ただし、発光寿命及び発光効率は、有機EL素子1の発光寿命及び発光効率をそれぞれ100とした相対値で表した。なお、発光輝度は、コニカミノルタ製CS−1000を用いて測定した。
Figure 2018012223
表4に示す結果より、本発明の二酸化炭素を含む塗布液を用いた有機EL素子は、ドライエア又は大気下に保存した場合、同条件の二酸化炭素を含まない塗布液と比べ、発光効率及び素子寿命の評価結果の劣化が少ないことがわかる。
[実施例5]
<インク用化合物の精製>
日本分光社製超臨界流体クロマトグラフィーシステムを用いて、以下の条件にてCBPを分取した。
超臨界CO送液ポンプ:SCF−Get
全自動圧力調整弁:SFC−Bpg
カラムオーブン:GC−353B
インジェクタ:7125i
カラム:C18−Silica、3μm、4.6mm×250mm
移動層:二酸化炭素/トルエン=9/1
移動層流量:3ml/min
圧力:18MPa
温度:40℃
検出:紫外検出器(210nm)
上記条件によってCBPを10質量%、二酸化炭素を300ppm含むトルエン溶液を得た。この溶液を組成物1とする。次に、CBPをIr−14、Ir−1、Ir−15にそれぞれ変えた以外は同様にして、下記組成物を得た。
組成物2:Ir−14を10質量%、二酸化炭素を300ppm含むトルエン溶液
組成物3:Ir−1を10質量%、二酸化炭素を300ppm含むトルエン溶液
組成物4:Ir−15を10質量%、二酸化炭素を300ppm含むトルエン溶液
次に、移動層を二酸化炭素/TFPO=9/1、CBPをBCPに変えた以外は同様にして、BCPを10質量%、二酸化炭素を300ppm含むTFPO溶液を得た。この溶液を組成物5とする。
<インクの調整>
(正孔注入層組成物)
PEDOT/PSS混合水分散液(1.0質量%) 20質量部
水 65質量部
エトキシエタノール 10質量部
グリセリン 5質量部
PEDOT/PSS:ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(Bayer社製、Baytron P Al 4083)
(青色発光層組成物)
組成物1 9.5質量部
組成物2 0.5質量部
トルエン 40質量部
酢酸イソブチル 50質量部
(緑色発光層組成物)
組成物1 9.5質量部
組成物3 0.5質量部
トルエン 40質量部
酢酸イソブチル 50質量部
(赤色発光層組成物)
組成物1 9.5質量部
組成物4 0.5質量部
トルエン 40質量部
酢酸イソブチル 50質量部
(電子輸送層組成物)
組成物5 10質量部
TFPO 90質量部
<有機ELフルカラー表示装置の作製>
図10は、有機ELフルカラー表示装置の概略構成図を示す。陽極としてガラス基板101上にITO透明電極(102)を100nm成膜した基板(NHテクノグラス社製NA45)に100μmのピッチでパターニングを行った後、このガラス基板上でITO透明電極の間に非感光性ポリイミドの隔壁103(幅20μm、厚さ2.0μm)をフォトリソグラフィーで形成させた。ITO電極上ポリイミド隔壁の間に、上記組成の正孔注入層組成物をインクジェットヘッド(コニカミノルタ製「KM512L」)を用いて吐出注入し、200℃、10分間の乾燥処理により層厚40nmの正孔注入層104を作製した。この正孔注入層上に、それぞれ上記の青色発光層組成物、緑色発光層組成物、赤色発光層組成物を同様にインクジェットヘッドを使用して吐出注入し、それぞれの発光層(105B、105G、105R)を形成させた。続いて、電子輸送層組成物を同様にインクジェットヘッドを使用して吐出注入し、発光層105の各層上に正孔阻止の役割も兼ねた電子輸送層(106)を形成させた。最後に電子輸送層106上に、陰極としてAl(107)を真空蒸着して有機EL素子を作製した。
作製した有機EL素子は、それぞれの電極に電圧を印加することにより各々青色、緑色、赤色の発光を示し、フルカラー表示装置として利用できることがわかった。
[実施例6]
バルクヘテロジャンクション層のp型材料として、Macromolecules 2007,40,1981に記載の低バンドギャップポリマー、PCPDTBTを非特許文献(Nature Mat.vol.6(2007),p497)を参考として合成し、使用した。またn型材料として、PCBM(フロンティアカーボン社より購入)を使用した。
<有機光電変換素子1の作製>
ガラス基板上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を140nm堆積したものを、通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングとを用いて2mm幅にパターニングして、透明電極を形成した。
パターン形成した透明電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。この透明基板上に、導電性高分子であるBaytron P4083(スタルクヴィテック製)を60nmの膜厚でスピンコートした後、140℃で大気中10分間加熱乾燥した。
これ以降は基板をグローブボックス中に持ち込み、窒素雰囲気下で作業した。まず、窒素雰囲気下で上記基板を140℃で10分間加熱処理した。
二酸化炭素ガスを10分間バブリングしたクロロベンゼンを用意し、溶存二酸化炭素濃度をガスクロマトグラフィーにて測定したところ350ppmの濃度であった。このクロロベンゼンにp型半導体材料として、PCPDTBTを1.0質量%、n型半導体材料として[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッドメチルエステル(略称、PCBM)(フロンティアカーボン製、NANOM SPECTRA E100H)の2.0質量%、さらに1,8−オクタンジチオールの2.4質量%を溶解した液を作製し、0.45μmのフィルターでろ過をかけながら1200rpmで60秒のスピンコートを行い、室温で30分乾燥し、光電変換部(バルクヘテロジャンクション層)を得た。
次に、上記バルクヘテロジャンクション層を形成した基板を真空蒸着装置内に設置した。2mm幅のシャドーマスクが透明電極と直交するように素子をセットし、10−3Pa以下まで真空蒸着機内を減圧した後、フッ化リチウムを0.5nm、Alを80nm蒸着した。最後に120℃で30分間の加熱を行い、有機光電変換素子1を得た。なお、蒸着速度はいずれも2nm/秒で蒸着し、2mm角のサイズとした。得られた有機光電変換素子1は、窒素雰囲気下でアルミニウムキャップとUV硬化樹脂を用いて封止を行った。
<有機光電変換素子の評価>
(変換効率の評価)
上記作製した有機光電変換素子に、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を4.0mmにしたマスクを受光部に重ね、短絡電流密度Jsc(mA/cm)及び開放電圧Voc(V)、曲線因子(フィルファクター)FFを、同素子上に形成した4箇所の受光部をそれぞれ測定し、平均値を求めた。また、Jsc、Voc、及びFFから式2に従って光電変換効率η(%)を求めたところ、3.9%の光電変換効率であった。
式2 Jsc(mA/cm)×Voc(V)×FF=η(%)
以上から、本発明の塗布液を用いて、高効率の有機光電変換素子を作製できることがわかる。
本発明は、電子デバイス作製用インク、電子デバイス、有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機光電変換素子に利用することができる。
11 超臨界流体
12 ポンプ
13 モディファイヤ
14 インジェクタ
15 カラム
16 カラムオープン
17 検出器
18 圧力調整弁
41 ディスプレイ
53 画素
55 走査線
56 データ線
60 有機EL素子
61 スイッチングトランジスタ
62 駆動トランジスタ
63 コンデンサ
67 電源ライン
101 ガラス基板
102 ITO透明電極
103 隔壁
104 正孔注入層
105B、105G、105R 発光層
106 電子輸送層
107 陰極(Al)
200 バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子
201 基板
202 透明電極(陽極)
203 対極(陰極)
204 光電変換部(バルクヘテロジャンクション層)
205 電荷再結合層
206 第2の光電変換部
207 正孔輸送層
208 電子輸送層
209 第1の光電変換部
A 表示部
B 制御部

Claims (14)

  1. 有機化合物と有機溶媒とを含む塗布液であって、
    50℃以下・大気圧の条件下での前記有機溶媒に対する溶存二酸化炭素濃度が、1ppm以上前記有機溶媒に対する飽和濃度以下の範囲内であることを特徴とする塗布液。
  2. 前記溶存二酸化炭素濃度が、前記条件下で、5〜1000ppmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の塗布液。
  3. 前記塗布液中に酸素が1ppm以上存在する場合は、前記溶存二酸化炭素濃度が、前記条件下で、溶存酸素濃度の1.0〜100000倍の範囲内で含まれることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の塗布液。
  4. 前記塗布液が、電子デバイス作製用塗布液であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の塗布液。
  5. 前記電子デバイスが、発光デバイスであることを特徴とする請求項4に記載の塗布液。
  6. 前記有機化合物が、有機エレクトロルミネッセンス材料であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の塗布液。
  7. 前記塗布液が、インクジェット用インクであることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の塗布液。
  8. 請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の塗布液を製造する塗布液の製造方法であって、
    前記有機化合物と二酸化炭素とを混合する工程を有することを特徴とする塗布液の製造方法。
  9. 前記有機化合物と二酸化炭素とを混合する工程後に、前記有機化合物を含む溶液を用いて前記塗布液を製造することを特徴とする請求項8に記載の塗布液の製造方法。
  10. 超臨界流体を用いて前記有機化合物を含む溶液中の物質を分離する工程を有することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の塗布液の製造方法。
  11. 請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の塗布液を含有することを特徴とする電子デバイス作製用インク。
  12. 請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の塗布液を用いて形成された有機機能層を有することを特徴とする電子デバイス。
  13. 請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の塗布液を用いて形成された有機機能層を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  14. 請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の塗布液を用いて形成された有機機能層を有することを特徴とする光電変換素子。
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