JP6933248B2 - 有機膜形成用塗布液、有機膜、有機電子デバイス、及び有機膜形成用塗布液の製造方法 - Google Patents

有機膜形成用塗布液、有機膜、有機電子デバイス、及び有機膜形成用塗布液の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、有機膜形成用塗布液、有機膜、有機電子デバイス、及び有機膜形成用塗布液の製造方法に関する。より詳しくは、有機化合物が微細に分散された有機膜形成用塗布液、その塗布膜である有機膜、当該有機膜を備えた耐久性と変換効率に優れた有機電子デバイス、及び有機膜形成用塗布液の製造方法に関する。
有機化合物を利用した電子デバイス、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子(「有機EL素子」ともいう。)、有機光電変換素子及び有機トランジスタなどの種々の有機電子デバイスが開発され、それらの技術的進展に伴い、様々な産業・市場分野での普及が進んでいる。
例えば、有機電子デバイスの典型的例である有機EL素子は、ディスプレイや照明、インジケータなどの様々な分野で利用が始まり、既に液晶ディスプレイや発光ダイオード(light emitting diode:LED)と共に現在の生活に入り込み、これから飛躍的普及拡大期を迎えようとしている。
しかし、有機EL素子等の有機電子デバイスの発展を促進するためには、その研究・開発過程で解決しなければならない問題は数多く残存している。とりわけ、電子デバイス材料として有機化合物を利用することに由来する種々の問題が、各種有機電子デバイスに共通するあるいは特有の問題として残存している。これらの解決すべき問題は、量子効率や発光寿命等の性能の一層の向上と、生産性の一層の向上すなわちコストダウンとに直結する究極的課題であるといえる。
上記究極的課題のうち、真空蒸着法により製造される有機EL素子の性能面の課題については、既に実用に十分なレベルには達しているものと思われる。一方、生産性、つまりコスト面に対して、液晶ディスプレイや発光ダイオードに比較して大きな課題を有しており、まだまだ改善の余地が大きい。
つまり、生産性を改善することは、有機EL素子を発展させるための必要条件であるといえる。また、このことは、他の有機電子デバイス、例えば有機光電変換素子についても同様である。
そこで、真空蒸着法に替わる成膜法として湿式塗布法(以下単に塗布法ともいう。)が期待されている。塗布法は、真空蒸着法に比較して、コスト面で優位性があり、技術的にも大面積化が容易であるという利点がある。
塗布法で、例えば有機EL素子を製造する場合、有機EL素子の優れた特性を引き出すには、有機材料がアモルファス状の有機膜を形成することが重要であるが、有機材料を溶媒に溶解した塗布液を用いてアモルファス状の有機膜を形成するには、塗布液中の有機材料が単一分子状に近く微細に分散されていることが不可欠である。
有機材料の溶媒として貧溶媒を用いた塗布液では、塗布溶中に有機化合物を微細に分散させることが難しく、多数の有機材料分子によって形成されたクラスターが分散された状態となりやすい。
この対策として、有機材料を微細に分散するため、例えばクロロベンゼン等の溶解性の高いいわゆる良溶媒を用いると、溶媒と有機材料の強い相互作用のために、塗布膜を乾燥させるのに時間がかかって製造コストアップにつながったり、また乾燥後でも残留した良溶媒が原因で、有機EL素子の発光効率が低下したり、駆動寿命が劣化するなどの問題があった。
一方、例えば、特許文献1には、有機エレクトロルミネッセンス材料を、超臨界の溶媒中に注入し、クロマトグラフ法を用いて不純物を除去する精製方法が開示されている。しかしながら、このように精製した有機材料を含有する塗布液を用いても、有機EL素子の性能向上は十分ではなかった。
特開2005−02257号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、有機化合物が微細に分散された有機膜形成用塗布液、その塗布膜である有機膜、当該有機膜を備えた耐久性と変換効率に優れた有機電子デバイスを提供することである。また有機膜形成用塗布液の製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、有機化合物がアモルファス状の有機膜を形成することが重要であるとの観点から検討を進めた結果、アモルファス状の有機膜を形成するには、塗布液中の有機電子デバイスの材料としての有機化合物が、単一分子状又は少数分子の会合体状に近く微細に分散されていることが重要であり、有機化合物に対する良溶媒と貧溶媒を含有し、良溶媒が少ない特定比率の混合溶媒を用いた有機膜形成用塗布液を用いることにより課題を解決できることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.溶質としての有機化合物と少なくとも二種の溶媒(1)と溶媒(2)とを含有する有機膜形成用塗布液であって、前記有機化合物の20℃における溶解度が、前記溶媒(1)では5質量%未満であり、前記溶媒(2)では5質量%以上であり、前記溶媒(2)の含有比率が、全溶媒量に対し1〜1000質量ppmの範囲内であり、かつ、前記有機化合物が、分子又は会合体として分散されていることを特徴とする有機膜形成用塗布液。
2.前記有機膜形成用塗布液について小角X線散乱測定から得られる前記有機化合物に由来する単一の分子又はそれらの会合体の粒径分布曲線(横軸:粒径、縦軸:頻度分布)において、粒径5nm以下の領域に、最大の極大ピークを有し、その半値幅が0.5〜5.0nmの範囲内であることを特徴とする第1項に記載の有機膜形成用塗布液。
3.第1項又は第2項に記載の有機膜形成用塗布液の塗布膜であることを特徴とする有機膜。
4.第3項に記載の有機膜を備えたことを特徴とする有機電子デバイス。
5.第1項又は第2項に記載の有機膜形成用塗布液を製造する有機膜形成用塗布液の製造方法であって、前記溶媒(1)及び前記溶媒(2)を含有し、前記溶媒(2)の含有比率が全溶媒量に対し1〜1000質量ppmの範囲内である溶媒を調製し、前記調製された溶媒に前記有機化合物を溶解して、有機膜形成用塗布液を得る溶解工程を有することを特徴とする有機膜形成用塗布液の製造方法。
6.第1項又は第2項に記載の有機膜形成用塗布液を製造する有機膜形成用塗布液の製造方法であって、前記溶媒(2)に前記有機化合物を溶解した溶液を調製した後、移動相として前記溶媒(1)を用い、前記有機化合物を溶解した溶液から前記溶媒(2)をクロマトグラフィーで分離して除くことにより、前記溶媒(2)の含有比率を、全溶媒量に対し1〜1000質量ppmの範囲内の有機膜形成用塗布液を得る分離工程を有することを特徴とする有機膜形成用塗布液の製造方法。
7.前記移動相が、超臨界二酸化炭素を含有することを特徴とする第6項に記載の有機膜形成用塗布液の製造方法。
本発明の上記手段により、有機化合物が微細に分散された有機膜形成用塗布液、その塗布膜である有機膜、当該有機膜を備えた耐久性と変換効率に優れた有機電子デバイスを提供することができる。また、有機膜形成用塗布液の製造方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
本発明の有機膜形成用塗布液は、塗布液中の有機化合物が、当該有機化合物の良溶媒である溶媒(2)と貧溶媒である溶媒(1)を含有し、溶媒(2)の含有比率が少ない特定範囲内の混合溶媒であるため、有機化合物が微細に分散することが可能となると推察される。このため、この塗布液の塗膜である有機膜は、膜中で有機化合物が蒸着膜同様のアモルファス状の有機膜となることができ、蒸着膜同様の良好な性能の有機膜を得ることができるものと考えられる。
従来の蒸着膜と塗布膜における粒径分布曲線の一例を示すグラフ 本発明と比較例の有機膜形成用塗布液における粒径分布曲線の一例を示すグラフ 超臨界又は亜臨界クロマトグラフィー法における充填カラムを用いた装置の概略図 有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図 表示部Aの模式図 画素の回路を示した概略図 パッシブマトリクス方式フルカラー表示装置の模式図 バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図 タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図
本発明の有機膜形成用塗布液は、溶質としての有機化合物と少なくとも二種の溶媒(1)と溶媒(2)とを含有する有機膜形成用塗布液であって、前記有機化合物の20℃における溶解度が、前記溶媒(1)では5質量%未満であり、前記溶媒(2)では5質量%以上であり、前記溶媒(2)の含有比率が、全溶媒量に対し1〜1000質量ppmの範囲内であり、かつ、前記有機化合物が、分子又は会合体として分散されていることを特徴とする。この特徴は、各請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、前記有機膜形成用塗布液について小角X線散乱測定から得られる前記有機化合物に由来する単一の分子又はそれらの会合体の粒径分布曲線(横軸:粒径、縦軸:頻度分布)において、粒径5nm以下の領域に、最大の極大ピークを有し、その半値幅が0.5〜5.0nmの範囲内であることが、本発明の効果発現の観点から、好ましい。また、有機膜形成用塗布液の塗布膜である有機膜であることが、好ましい。
さらに、本発明の有機膜は好適に有機電子デバイスに具備されうる。
また、本発明の有機膜形成用塗布液を製造する有機膜形成用塗布液の製造方法としては、前記溶媒(1)及び前記溶媒(2)を含有し、前記溶媒(2)の含有比率が全溶媒量に対し1〜1000質量ppmの範囲内である溶媒を調製し、前記調製された溶媒に前記有機化合物を溶解して、有機膜形成用塗布液を得る溶解工程を有する態様の製造方法であることが、好ましい。
さらに、本発明の有機膜形成用塗布液を製造する有機膜形成用塗布液の製造方法としては、前記溶媒(2)に前記有機化合物を溶解した溶液を調製した後、移動相として前記溶媒(1)を用い、前記有機化合物を溶解した溶液から前記溶媒(2)をクロマトグラフィーで分離して除くことにより、前記溶媒(2)の含有比率を、全溶媒量に対し1〜1000質量ppmの範囲内の有機膜形成用塗布液を得る分離工程を有する態様の製造方法であることが、分散を促進できる観点から、好ましい。
さらに、前記移動相が、超臨界二酸化炭素を含有することが、より分散を促進でき、かつ高速化により製造時間を短縮できる観点から、より好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
(本発明の有機膜形成用塗布液の概要)
本発明は、下記基本的方針(1)〜(5)に基づいて検討し、完成したものである。
(1)有機EL化合物は低分子が好ましい(高分子は好ましくない)。
(2)成膜法は塗布法が好ましい(蒸着法は好ましくない)。
(3)塗布液は汎用溶媒が好ましい(高価な脱水高純度溶媒は好ましくない)。
(4)溶解は単分子状態が好ましい(微結晶分散液は好ましくない)。
(5)化合物の精製には吸着−脱着平衡を活用するのが好ましい(熱平衡は好ましくない)。
以下において、まず、上記各方針の根拠となる基本的考え方の観点から、本発明について説明をし、その後、具体的技術について説明をする。
1.高分子化合物に対する低分子化合物の優位性
湿式塗布法による有機機能層の形成において、なぜ高分子化合物より低分子化合物の使用が望まれるのであろうか、その理由(要因)について説明する。
(第1の要因):純度の優位性
低分子化合物を高分子化合物(いわゆるポリマー)と比較してみると、その違いがよくわかる。まず、低分子化合物は昇華精製を適用するのは分子量が小さいため好適であり、再結晶も分子量分布が小さく望ましい。また、低分子化合物の精製方法には、精製効率の低い(理論段数の低い)高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography:HPLC)やカラムクロマトグラフィーを用いることができるため好ましい。
高分子化合物の精製では、ほとんどの場合、良溶媒と貧溶媒を使った再沈殿法を繰り返し行うことで精製しており、低分子化合物の方が高純度としやすい。
また、高分子化合物がπ共役系高分子化合物である場合、重合反応を起こすための金属触媒や重合開始剤を用いる必要があり、重合末端には、反応活性の置換基が残存してしまうケースがあり、それも低分子化合物の方が高純度にできる。
(第2の要因):分子特有のエネルギー準位に関する優位性
発光ポリマー(light emitting polymer:LEP)は、分子量が大きくなると、π共役系ポリマーであるが故に、分子を安定化させるためには共役系を拡張することになるために、原理的に一重項又は三重項の励起状態と基底状態とのエネルギー準位差(「エネルギー準位のギャップ」ともいう。)は狭くなり、青色発光が難しくなる。また、蛍光の青色発光よりも高いエネルギー準位(大きいエネルギー準位差)が要求される青色リン光においては、発光ポリマーは、その発光物質となる遷移金属錯体を形成することが構造上難しい。さらに、発光ポリマーをホストとして用いようとしても、前記のπ共役の拡張により高い三重項エネルギーを有する化合物(「高T化合物」と略称する。)にしにくい。
一方、低分子化合物ではπ共役系を連結させる必然性はなく、π共役系ユニットとなる芳香族化合物残基は必要であるが、それらを任意に選択できること、さらに任意の位置に置換でき、容易に最高被占軌道(highest occupied molecular orbital:HOMO)と最低空軌道(lowest unoccupied molecular orbital:LUMO)ならびに励起三重項(T)状態のエネルギー準位を意図的に調整できることにより、青色リン光性ドーパントを作ることも、そのホスト化合物にすることも、また、TADF現象を起こす化合物を構築することも可能であり、このように任意の電子状態や任意のエネルギー準位を意図的に設計、合成できる拡張性の大きさが、第2の要因である。
(第3の要因):化合物合成の容易性
第2の要因と類似した理由(要因)ではあるが、低分子化合物は、発光ポリマー(LEP)に比べ、合成できる分子構造に制限がなく、とりわけ発光ポリマーにおいて主鎖をπ共役連結にするとなると、適用できる骨格や合成方法は限定的となるが、低分子化合物では新たな機能付与や物性値の調整(Tgや融点、溶解性など)を分子構造によって成し遂げることが相対的に容易であり、これが低分子化合物の第3の優位性の要因である。
2.低分子化合物を用いた湿式塗布法による有機機能層形成おける課題
低分子化合物を用いた湿式塗布法による有機機能層形成おける本質的な課題は、何かについて説明する。
有機EL素子に用いられるほぼ全ての材料は、有機EL素子内部においては、電荷伝導機構がオームの法則と異なり、チャイルド則にのっとる空間電荷制限電流(space charge limited current:SCLC)によるキャリア伝導により、電子及び正孔が分子間をホッピング移動しなければならない。基本的に電子はLUMOのエネルギー準位を伝ってホッピングし、正孔はHOMOのエネルギー準位を使ってホッピングすることになる。
すなわち、必ず隣接する分子同士はπ共役系が重なり合うように存在しないと、そのようなキャリア伝導が起こらないため、可能な限りπ共役系ユニットだけで分子構造を形成することが有利である。
例えば、溶媒に対する溶解性を向上させるために、立体的に嵩高い置換基(sec−ブチル基や、tert−オクチル基、トリイソプロピルシリル基など)を一つの分子中に複数個置換してしまうと、分子間のπ共役系は重ね合わすことが難しくなり、嵩高い置換基の部分でホッピング移動が阻害されてしまう。
一方で、有機EL素子は発光中絶え間なく電流が流れていることから、例え量子効率的に100%であって、すなわち、キャリア再結合の確率が100%であり、熱失活が0%であったとしても、有機EL素子はキャリアを流し続けるために陽極と陰極との間に電位差を設けて電界勾配を付ける必要がある。このため、有機EL素子の等価回路は、ダイオードと抵抗の直列接続となる。すなわち、通電発光中の有機EL素子の内部ではジュール熱が発生しており、実際に素子内部、特に再結合が起こる発光層内では100℃以上の発熱があることもわかっている。
また、有機EL素子全体の有機機能層の厚さはせいぜい200nm程度の極めて薄い層であることから、熱は層(膜)間で伝導し発光層のみならず、全ての層で高温状態が継続されることになる。このような状態にさらされる有機分子は、それ自体のガラス転移点(Tg)を超えると、アモルファスの状態から結晶状態へと相転移を起こす。
この結晶は次第に成長し、数十nmを超えると、その化合物が存在していた層厚を超えることになり、有機EL素子としての層による機能分離ができなくなるために、結果として発光効率が低下することになる。
さらに、この結晶が有機EL素子の有機機能層全層(100〜200nm)を超えてしまうと、陽極と陰極は短絡し、そこに電界集中が起こることになって、微小領域に大電流が流れることで、その部分の有機化合物は熱分解を起こしてしまい、全く発光しない部分、いわゆるダークスポットができてしまう。
つまり、有機EL素子の低分子化合物は、嵩高い非芳香族性の置換基を持たずに、かつ、ガラス転移点(Tg)が100℃以上(好ましくは150℃以上)を超えるような分子であることが好ましい。
このような分子を構築するには、通常、π共役系を大きくするか、芳香族基を単純連結するのであるが、通常の場合できてくる化合物は、溶媒に対する溶解性が極めて低くなり、塗布液になり得ないか、又は塗布できたとしても、結晶析出や物質の偏在などが生じることとなる。
このジレンマを解消する手立てとして、我々は、例えば、特許第5403179号公報や特開2014−196258号公報などのような、嵩高く、フレキシビリティの高い分岐のアルキル基などを持たずに、芳香族基だけを連結しビアアリール構造とし、そのC−C結合軸周辺に発生する回転障害により数多くのコンフォメーションや幾何異性体を能動的に増やすことによって、又は、同一層中に存在する複数分子(例えば、ホスト化合物とドーパント)がさまざまな形状・形態で相互作用を起こすようしてやることによって膜中での成分数を増やせるため、薄膜状態でのエントロピーを増大させ、安定なアモルファス膜を形成し、通電中もそれを保持できるという画期的な技術をこれまでに開発してきた。
本発明者らは、湿式塗布法による有機EL素子の作製において、前述したような指針に則って低分子化合物の分子構造を改良し、乾燥条件等の最適化も図ったところ、発光効率は蒸着素子の95%、発光寿命は同90%と、飛躍的な改善を達成することができた。これにより、発光ドーパントにリン光ドーパント、とりわけ寿命向上が最も難しいとされている青色リン光ドーパントを用いた素子ですらも、塗布成膜法で、ほぼ従来の蒸着成膜法に匹敵する基礎特性を発揮しうることを見いだしている。しかしながら、このように性能が改善された有機EL素子にもまだ多くの課題が残存している。
その課題の一つが、低分子化合物の純度、当該化合物表面に付着している微量水分、使用する溶媒の酸素含有量、水分含有量などの除去である。
例えば、一般的には塗布で用いる低分子化合物であっても、最高の性能を発現させるために、カラムクロマトグラフィーと再結晶を行った後に、昇華精製を行い、さらに有機化合物を使用あるいは保管する際には真空状態を経た後、窒素雰囲気に置換して用いられている。このような、できる限りの悪影響を排除した、極めて厳格な管理の下において塗布法による有機EL素子は作製され、それでも蒸着法の性能を超えることは困難であった。
そもそも、真空を使った蒸着法の生産性が低いことが、有機EL素子の大型化や量産性、つまりコストに悪影響を与えるために、塗布法が注目されているのであるが、その塗布法もこのような厳格な管理の下で行うのでは、かえって蒸着法よりも生産性が低く、コスト高になってしまう。
3.化合物の精製方法について
(昇華精製)
低分子化合物の利点は高分子化合物よりも数多くの精製手段が活用でき、高純度にできる点である。しかし、結局のところ、一般的に現在実用されている有機EL素子を構成する有機化合物のほぼ全てが、昇華精製という精製手段を経て使用されている。
昇華精製は古典的な精製方法であるが、再結晶やカラムクロマトグラフィー、HPLCなどの精製方法に比べると圧倒的に精製効率(理論段数)は小さく、実質上は金属や無機物質などの除去と溶媒の除去を行うための手段として使われている。
なぜ昇華精製法が有機EL用の有機化合物で採用されているかというと、有機EL素子の製造プロセスが真空蒸着法を採用していることが主な理由である。有機化合物に溶媒がごく微量でも含まれていると、蒸着装置内で真空下に置いた際有機化合物中の溶媒が揮散し真空度を下げてしまう。それが連続生産を不可能にしてしまい、製造上の問題となる。そのため、精製時に溶媒が完璧に除去される昇華精製法が採用されているのである。ゆえに、有機EL素子の生産方式が蒸着法から塗布法に代わった際には、前記の理由から昇華精製法による有機化合物の精製は必須ではなくなる。
(再結晶)
次に、低分子有機化合物の精製法としては最も一般的な再結晶について考えてみる。この方法は、熱力学第二法則(式1)に基づいた精製方法である。
−ΔG=−ΔH+TΔS・・・(式1)
物質は、物質相互間の存在距離が短くなるほどファンデルワールス力や水素結合力、π−π相互作用力、双極子−双極子相互作用力などが増大し、エンタルピー(−ΔH)は大きくなる。一方で、物質が媒体に完全分散しているとき、すなわち溶解しているとき、物質は自由に動き回れるため、その乱雑さは増大し、エントロピー(ΔS)は大きくなる。
熱力学第二法則では、全ての存在状態は、ギプスの自由エネルギー(−ΔG)を一定に保つか、又は、大きくする方向に移行する。すなわち、精製を施したい化合物Aを再結晶により精製するということは、次のように考えと、合理的に説明できる。
Aを溶かすことのできるBという溶媒中に高温でAを溶解するとAは分散状態で存在することになる。そのため、A同士間の存在距離が大きく互いに相互作用しにくくなるため、エンタルピー(−ΔH)は極めて小さくなる。
一方で、Aは溶液の中を自由に動き回れるためエントロピー(ΔS)は極めて大きい。この高温溶液を冷やすと、温度TがかかったTΔSは、冷やす前よりも小さくなる。そのとき、冷やす前後でギプスの自由エネルギー(−ΔG)を一定に保つためには、エンタルピー(−ΔH)を大きくせざるを得なくなる。
つまり、温度が下がってTΔSが小さくなった分、AはAとの距離を小さくしてエンタルピーを大きくしなければならなくなるのである。その極限状態が、AとAの距離が最小となる結晶状態であり、それによってエンタルピー項(−ΔH)は増大していく。こうしてエンタルピーが増大していくと、系内の成分数は減ってしまうため、エントロピーは小さくなり、その小さくなった分、また結晶を作ってエンタルピーを増大していく。
このように、まずは温度低下でエントロピー項(TΔS)が減少し、それを補うために結晶化によりエンタルピー(−ΔH)が増加し、またそれによって成分数が減るためにさらにエントロピー項が、今度はΔSの減少によって小さくなり、またその分結晶化が起こるという熱力学平衡を繰り返すことで、再結晶は成し遂げられるのである。
ただし、注意しなければならないのが、溶質である化合物Aと溶媒(2)との相互作用である。溶質である化合物Aは溶媒(2)で溶媒和されることによって溶解するため、A−B間の相互作用が大きくなければそもそもAはBに溶解しない。しかし、相互作用が大きすぎると冷却して低下するエントロピー項の減少に打ち勝つ程、AとAとの距離を短くできないことになり(AとAとの間にはBが介在することになるために)、再結晶は起こらない結果となる。
つまり、A−A間の相互作用力とA−B間の相互作用力とを微妙に調整できた場合のみ、この再結晶という精製方法が適用できる。故に、Aの分子構造やAとBとの相互作用を微妙にコントロールするケース・バイ・ケース(case by case)での対応が必要となり、普遍的な条件で実施できる精製方法にはなり得ないのである。
ただし、条件が合致する場合においては、一度に数百kg以上の大量精製も可能であることから、化学工業では古くからこの方法が使われている。
(カラムクロマトグラフィー)
次に、カラムクロマトグラフィー(以下、「クロマト法」ともいう。)について考えてみる。カラムクロマトグラフィーの最も典型的なところは、固定相に微粒子シリカゲルを用い、そこに化合物Aを吸着させ、それを溶離液と呼ばれる移動相(B)で徐々に溶出させて行くというものである。
このとき、シリカゲル表面と化合物Aとの相互作用(吸着)に対して、移動相(B)との相互作用が拮抗する場合、Aはシリカと移動相Bとの間で、吸着−脱着の平衡を繰り返し、シリカとの相互作用が小さい場合は早く、相互作用が大きい場合には遅く、溶出していく。
このときに、吸着−脱着平衡の往復回数が大きいほど理論段数(すなわち精製効率)が増大することから、クロマト法による精製効率は、固定相の長さに比例し、移動相の通過速度にも比例し、固定相の表面積にも比例することになる。
これを実現させたのが、高速液体クロマトグラフィーであり、これが、有機化合物の成分分析や品質保証に幅広く使われているのも、この理論に裏打ちされた高度の理論段数を実現できる希な手法であることに起因している。
このクロマト法が再結晶に比べ秀でる理由は、移動相Bの極性を任意に変更できる点である。例えば、移動相を最初から良溶媒と貧溶媒の混合溶媒にしておくことはもとより、精製の際に徐々に良溶媒比率を増やしていくグラジエント法を用い、さらに理論段数を増やせることが挙げられる。
また、温度も任意に変えることが可能であるため、精製可能となる溶質の適用範囲が極めて広く、ほぼ汎用的な精製法として活用できることが最大の特徴である。
一方、クロマト法の欠点もある。前述のように、理論段数を大きくするための根本的な原理が、吸着−脱着平衡を活用しているところにある。
例えば、移動相に化合物Aと相互作用が強い溶媒B′(すなわち良溶媒)だけを用いてクロマト法を行った場合、Aとシリカゲルとの相互作用よりも、Aと移動相B′との相互作用が強ければ、吸着−脱着平衡の往復回数が激減し、精製効果が低くなってしまう。
つまり、精製効果を高めるためには、良溶媒B′の他に、大過剰の貧溶媒Cを混合し、吸着−脱着平衡の往復回数を増やす必要がある。ただしこの場合、精製されて分取した化合物Aの溶液には、大過剰のCが含まれており、これを濃縮しなければならないことが最大の問題である。
貧溶媒濃縮の問題を解決する手段が超臨界二酸化炭素を用いたHPLCである。超臨界二酸化炭素は、二酸化炭素を高温高圧で超臨界流体にしたものであり、その他の物質もこのような超臨界流体にすることは可能であるが、比較的低い圧力と温度で超臨界状態を実現できることから、クロマトや抽出ではもっぱら二酸化炭素が使われている。
この超臨界二酸化炭素には、普通の流体や液体とは異なった特徴がある。それは、温度と圧力を変化させることで、溶解したいものの極性に合わせて、連続的に極性を変化させることができることである。
例えば、魚の頭に含まれているドコサヘキサエン酸を選択抽出する際にも、この超臨界二酸化炭素が使われているし、接着剤を用いている特殊な衣類のクリーニングにも、皮脂は溶かして接着剤は溶かさない超臨界二酸化炭素を温度と圧力の制御で作ることにより、成し遂げている。
このように様々な極性を持たせることができる超臨界二酸化炭素であるが、比較的低い温度と圧力の領域で形成される超臨界二酸化炭素の極性は、シクロヘキサンやヘプタン程度である。現在市販されている超臨界HPLCでは、この程度の極性の超臨界二酸化炭素が、装置内で作られ、それが良溶媒と混合されてカラム内に入り、通常のHPLCと同様の機構で化合物の精製が行われる。
超臨界二酸化炭素を用いたHPLCのシステムでは、カラムを通過した後に検出器に入るが、通常はその段階までは高温高圧状態が保たれ、二酸化炭素も超臨界流体として存在している。その後常温常圧で分取されるまでの間に二酸化炭素はガスとなり、分取時には自ら溶液から抜けていくために、貧溶媒の濃縮が不要となる。この時、参考文献(生物工学会誌88巻、10号、525〜528ページ、2010年)に記載の気液分離機構等を備えた二酸化炭素回収装置によって二酸化炭素を回収することが可能であり、再び超臨界流体としての利用も可能である。
そのため、高純度の新規合成化合物を数多く合成する必要のある創薬の業界では、最近この超臨界HPLCを積極的に活用するようになってきており、その影響で分析用、分取用ともに販売価格が下がり、かなり一般的に使われるようになってきた。このような特徴と経緯から、我々はこの超臨界HPLCを、高純度が要求される有機EL材料の精製に活用してきた(特許第4389494号公報参照。)。
以上述べてきたように、有機EL業界の生産性向上が望まれる中、低分子有機化合物の精製法はさまざまあるが、どれも一長一短あり、製造した化合物の特性、及びその化合物が要求される純度、残留する溶媒の可否などによって、しかるべき精製方法が選択され、また組み合わされて使われている。
4.有機EL化合物の溶解について
まず、溶解とは何かを考える。通常は、溶質である化合物Aを溶媒分子BがAとBとの相互作用力で取り囲み、Aの集合体をばらばらにしてAの回りにBを存在させることによって、すなわちAを孤立単一分子状態にすることをいうが、本当にそうなっているのかを確かめるのは難しい。
例えば、Aが溶解性の極めて低い、又は結晶性の高い分子だった場合、可視光の波長以上のサイズの結晶であれば、溶解していないことは、光散乱等で容易に検出できる。しかし、例えば、中途半端に溶解性の低い物質であった場合、Aの数分子からなる微小結晶の回りを溶媒分子Bが取り囲んでいたといても、それは溶解しているように見えてしまう。有機EL素子では、これが後々大きな問題を引き起こす。
つまり、蒸着成膜法では、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などの薄い層(膜)を形成する際に、各層を構成する化合物は、真空蒸着により、基本的には気化された孤立単一分子の状態で基板上又は有機機能層上に着弾し、それが固体薄膜となって成膜されていく。そのため、基本的には単一分子のランダムな集合体で膜が形成され、理想的なアモルファス膜となる。
一方で、塗布成膜法の場合、もし仮に、塗布液が有機EL化合物の微結晶の分散物であった場合には、見た目では完全溶解しているように見えるが、得られる薄膜の実態は微結晶が寄せ集められた薄膜となる。そのため、例えばHOMOやLUMOのエネルギー準位も単分子のそれではなく、スタックした集合体(結晶状態)のそれとなってしまい、性能の低下の要因となりうる。
また、経時では、その微結晶が核となり、粗大結晶へと成長していくことになるため、層間の機能分離ができなくなるばかりか、陽極と陰極を短絡させる大きな結晶となってしまうと、ダークスポットを発生させてしまうという大きな問題がある。低分子を用いた塗布成膜素子に関しては、上述の長年の検討から、初期状態である塗布液をいかにして単分子分散状態に近似させるかが、まずは蒸着法と同等の性能を出すための必要条件となることは、明かである。
ここで、通常、厳密に溶解させたつもりの塗布液が、どのくらいの分子の分散物となっているかを小角X線散乱測定(small angle X−ray scattering:「SAXS」ともいう。)により解析した結果に基づき考えてみる。
図1は、破線が蒸着法で作製した薄膜を構成する化合物の微粒子の粒径分布であり、実線が塗布法で作製した薄膜構成化合物の微粒子の粒径分布である。どちらも同じ化合物を用いているため、直接比較することができる。
化合物の微粒子の粒径分布の極大ピークの半値幅は、蒸着成膜のそれが、ほぼ2nmくらいで単分散に近い粒径となっている。これは、分子一つ又は二つのサイズであることから、ほぼ単一分子がランダムに配置されてアモルファス膜が形成されていることを物語っている。
一方で、塗布成膜の粒径分布は、極大ピークを5nmとして10nmくらいまで幅広く分布している。
先にも述べたように、蒸着と塗布とで同じ化合物を用いていることから、化合物本来の結晶性や凝集性は同じであり、この違いは、塗布液の状態における分子の分散状態が、単一孤立分子ではなく、5から10分子の微結晶の分散物であったことが推測される。
この塗布液は1週間以上、窒素雰囲気下のグローブボックスで保管しておいても結晶が析出することもなく、いわゆる澄明な溶液であるのだが、X線で解析すると判明する数分子微結晶の分散物を、我々は溶解した溶液と勘違いしている訳である。
5.有機EL化合物の溶媒の純度について
有機EL素子は、励起状態になった発光材料が基底状態に戻る際に光を放つ現象を基本機能としているものである。また、電極から発光層までの間は、電子及び正孔をホッピング現象を通じて輸送する必要がある。
まず、励起状態についてであるが、例えば、5%濃度の発光材料をドーピングを施した有機EL素子の場合、1000cd/mの輝度で、1年間発光させ続けるには、単純に計算して、一つのドーパントが約10億回励起子になる必要がある。このとき、たった1回だけでも、水分子と遭遇してしまうと、励起子は水と反応し、本来の分子とは違う化合物になってしまうのである。酸素分子ではそこまで重篤ではないにしても、何らかの酸化反応や酸化カップリング反応が起こってしまう。これが、化学変化を伴う劣化の最も代表的な現象である。
また、発光材料以外の材料においても、ほぼ同じ回数、ラジカル状態になる訳で、ラジカルアニオン状態もカチオンラジカル状態も基底状態に比べれば活性種であることから、そこにも化学変化が起こる危険性がある。つまり、水分子や酸素分子は、塗布液には一切あってはならないものであり、それが前提となる訳である。
ただし、工業上では、純度の高い無水溶媒は非常に高価であり、取り扱い性も難しく、結局、塗布法でコストダウンするためには、消耗剤となる溶媒でいかに汎用的なものを使えるかが鍵を握ってくる。
6.本発明に係る要素的技術について
〔有機膜形成用塗布液〕
本発明の有機膜形成用塗布液は、溶質としての有機化合物と少なくとも二種の溶媒(1)と溶媒(2)とを含有する有機膜形成用塗布液であって、前記有機化合物の20℃における溶解度が、前記溶媒(1)では5質量%未満であり、前記溶媒(2)では5質量%以上であり、前記溶媒(2)の含有比率が、全溶媒量に対し1〜1000質量ppmの範囲内であり、かつ、前記有機化合物が、分子又は会合体として分散されていることを特徴とする。
本発明の有機膜形成用塗布液は、塗布液中の有機化合物が、当該有機化合物の良溶媒である溶媒(2)と貧溶媒である溶媒(1)を含有し、溶媒(2)の含有比率が少ない上記の範囲内の混合溶媒であるため、有機化合物が微細に分散することが可能となると推察される。このため、この塗布液の塗膜である有機膜は、膜中で有機化合物が蒸着膜同様のアモルファス状の有機膜となることができ、蒸着膜同様の良好な性能の有機膜を得ることができるものと考えられる。
前記溶媒(2)の含有比率が、全溶媒量に対し1質量ppm未満であると溶質である有機化合物を分子又は会合体として有機膜形成用塗布液中に微細に分散することが困難である。また、前記溶媒(2)の含有比率が、全溶媒量に対し1000質量ppmを超えると、有機膜中に良溶媒である溶媒(2)が残存しやすくなり、有機電子デバイスの寿命を長くすることが困難となる。好ましくは、前記溶媒(2)の含有比率が、全溶媒量に対し1〜100質量ppmの範囲内であり、より好ましくは、1〜10質量ppmの範囲内である。
溶質である有機化合物の有機膜形成用塗布液中の分散状態は、小角X線散乱測定で測定することができる。有機膜形成用塗布液について小角X線散乱測定から得られる前記有機化合物に由来する単一の分子又はそれらの会合体の粒径分布曲線(横軸:粒径、縦軸:頻度分布)において、粒径5nm以下の領域に、最大の極大ピークを有し、その半値幅が0.5〜5.0nmの範囲内であることが好ましい。
<小角X線散乱測定>
本発明の有機膜形成用塗布液の小角X線散乱測定には、例えば、株式会社リガク製ナノスケールX線構造評価装置NANO−Viewerのような汎用装置を用いてもよく、好ましくは高エネルギー加速器研究機構 放射光科学研究施設(Photon Factory)、SPring−8(Super Photon ring−8 GeV)、佐賀県立九州シンクロトロン光研究センター(SAGA−LS)、あいちシンクロトロン光センターのような大型放射光施設を利用した小角X線散乱装置を用いることができる。
以下、測定条件を下記に記す。
有機膜形成用塗布液を、X線回折試料用キャピラリー(WJM−Glas/Muller GmbH製)に入れ、測定サンプルとする。
X線としてSPring−8の放射光を用い、波長0.1nmで、有機膜形成用塗布液に照射する。測定にはHUBER製多軸回折装置を用い、X線入射角θは0.2°で固定して有機膜形成用塗布液に照射し、検出器はシンチレーションカウンターを用いて2θを1〜43°までの散乱線測定を行う。これら得られた小角X線散乱データの解析にはリガク社製粒径・空孔径解析ソフトウェア NANO−Solverを用いる。
X線を物質に入射すると、それを構成している各々の原子のもつ電子雲により一部が散乱される。散乱角の小さい範囲(本発明では1〜8°)からは、数nm〜数百nmの空間レベルの情報を得ることができ、これを利用した構造評価が、小角X線散乱である。
小角X線散乱のプロファイルでは散乱角θの代わりに一般に散乱ベクトルqが用いられる。qは下記式(A1)で与えられる。
式(A1):q=(4π/λ)sinθ
上記式(A1)中、「λ」はX線の波長、「θ」は散乱角を表す。
qの小さな領域はギニエ(Gunier)領域、大きな領域はポロド(Porod)領域と呼ばれ、前者からはより大きな空間的情報、粒子分散状態や長周期構造、後者からはより小さな領域の情報、高分子の重合状態、分散粒子の表面形状、タンパク質の構造解析等を得ることができる。
小角X線散乱において粒子解析を行う場合、ギニエプロットが一般的に用いられる。
粒径分布が比較的小さく、有機膜形成用塗布液中で粒子同士の相互作用が小さい場合、散乱強度I(q)は式(A2)で表される。
式(A2):I(q)=I(0)exp(−q*Rg/3)
式(A2)中、「I(q)」は散乱強度、「Rg」は慣性半径を表す。
この式はギニエの法則と呼ばれ、qに対し散乱強度I(q)をプロットした場合、その傾きは散乱体の慣性半径に依存することになる。
したがって、ギニエプロットにおいて、散乱角度の増大により散乱強度の急激な減少を示す領域が小角散乱領域であり、中心ピークの幅は密度の不均一領域のサイズ、すなわち一次粒子の慣性半径とほぼ逆比例する。
よって、散乱強度の増減挙動を例えばFunkuchenの方法に適用し、ギニエプロットの右端から順に接線を引いて、各接線の勾配から、慣性半径とその散乱強度を算出すれば、それらの強度比から一次粒子の慣性半径の分布の相対比を求めることができる。
本発明では、このギニエプロットの勾配(傾き)に対し、上記リガク社製粒径・空孔径解析ソフトウェア NANO−Solverを用い、粒子の幾何学形状を球と仮定して空孔、粒径解析フィッティングを行うことで塗布膜中の有機化合物に由来する単一の分子又はそれらの会合体の粒径及び粒径分布を求めた。
なお、小角X線散乱法の詳細については、例えばX線回折ハンドブック第3版(理学電機株式会社 2000年発行)を参照することができる。
本発明に係る粒径分布曲線は、上記小角X線散乱の測定及び解析法に基づき作成したものであり、横軸を粒径を表す軸とし、縦軸を頻度分布を表す軸として、粒径に対する頻度分布の測定値をプロットして各プロットを結んで得たものである。
ここで、「頻度分布(単に「分布」ともいう。)」とは、測定された粒子総数に対する特定粒径の相対的粒子数の比率(すなわち頻度)の大きさ(1/nmに比例する相対値)をいう。
(極大ピーク及び半値幅)
本発明の有機膜形成用塗布液において、小角X線散乱測定から得られる前記有機化合物に由来する単一の分子又はそれらの会合体の粒径分布曲線(横軸:粒径、縦軸:頻度分布)において、粒径5nm以下の領域に、最大の極大ピークを有し、その半値幅が0.5〜5.0nmの範囲内であることが好ましい。最大の極大ピークとその半値幅が上記範囲内にあるとき、有機化合物は、有機膜形成用塗布液中でより微細に分散されることから好ましい。
溶質として有機化合物を複数有する有機膜形成用塗布液であっても、少なくとも1種の有機化合物が、単分子状に微細に分散されている場合、粒径分布曲線の粒径5nm以下の領域に鋭い極大ピークが測定され、本発明の効果発現の上で好ましい。粒径分布曲線の極大ピークの粒径の下限は有機化合物の分子量等にも依存するが1nm程度である。
半値幅は、極大ピーク波長のピーク高さの1/2における粒径分布曲線の幅(nm)を表す。
半値幅の下限は、有機化合物の会合状態等にも依存するが、0.5nm程度である。
図2には、本発明の有機膜形成用塗布液についての粒径分布曲線の一例を示す。実線が本発明の有機膜形成用塗布液の粒径分布曲線で、粒径5nm以下の領域に、最大の極大ピークを有ることがわかる。図1において示した、蒸着膜における粒径分布曲線の場合と類似していることが分かる。一方比較として貧溶媒のみで溶解した有機膜形成用塗布液は、半値幅が広く、ブロードな粒径分布曲線を示していて、極大ピークを示す粒径の値も5nmを超えていて、有機化合物が微細に分散されていないことが分かる。
また、本発明の有機膜形成用塗布液の粒径分布曲線は、複数の極大ピークを有していてもよいが、粒径5nm以下の領域に最大の極大ピークを有し、その半値幅が0.5〜5.0nmの範囲内であれば、本発明の効果を得ることができる。
(有機化合物)
本発明において用いられる有機化合物は、特定種類・特定構造の化合物に限定されるものではないが、各種電子デバイスに用いられる有機化合物であることが、本発明の効果発現の観点から、好ましい。
例えば、本発明の有機膜形成用塗布液が、有機EL素子を作製するための塗布液である場合には、有機化合物が有機エレクトロルミネッセンス用の材料(以下、「有機EL材料」ともいう。)であることが好ましい。有機EL材料とは、後述する陽極と陰極との間に形成される有機機能層(「有機EL層」、「有機化合物層」ともいう。)に用いることが可能な化合物をいう。また、これら陽極、陰極、及び有機EL材料を含む有機機能層からなる発光素子を有機EL素子と呼ぶ。発光層、正孔輸送層、電子輸送層、正孔注入層、電子注入材料などで用いられる有機EL材料の有機化合物例は、後述する。
また、本発明の有機膜形成用塗布液が、光電変換素子を作製するための塗布液である場合には、有機化合物が光電変換素子用の有機機能層に含有される有機化合物であることが好ましい。光電変換層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、正孔注入層、正孔ブロック層及び電子ブロック層などの有機機能層で用いられる有機化合物例は、後述する。
また、有機膜形成用塗布液を有機EL素子や光電変換素子を作製するための塗布液の用途で用いるためには、塗布膜での機能低下を防ぐ観点から、溶質に用いられる有機化合物には不純物を含まないことが望ましい。
また、溶質として用いる有機化合物は、数多くの精製手段が活用でき、容易に高純度に精製できるという観点から、分子量3000以下の低分子化合物であることが好ましい。
<溶媒>
本発明の有機膜形成用塗布液は、溶質としての有機化合物と少なくとも二種の溶媒(1)と溶媒(2)とを含有する有機膜形成用塗布液であって、前記有機化合物の20℃における溶解度が、前記溶媒(1)では5質量%未満であり、前記溶媒(2)では5質量%以上であり、前記溶媒(2)の含有比率が、全溶媒量に対し1〜1000質量ppmの範囲内である。
溶媒(1)及び(2)の溶解度は、溶媒に対して5質量%の溶質を加え、20℃で10分間撹拌し、不溶解物の有無を調べる溶解度試験で判定することができる。この試験の結果、不溶解物があれば貧溶媒である溶媒(1)、なければ良溶媒である溶媒(2)と判定する。有機化合物に対して特定の溶媒が、溶媒(1)であるか溶媒(2)であるかは、上記判定により適宜選択することができる。溶媒は無機溶媒でも有機溶媒でもよい。
本発明に係る有機溶媒としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノールやジオール、トリオール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール(TFPO)等)、グリコール類、セロソルブ類、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、カルボン酸類(ギ酸、酢酸等)、カーボネート類(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸プロピル等)、エーテル類(イソプロピルエーテル、THF等)、アミド類(ジメチルスルホキシド等)、炭化水素類(ヘプタン等)、ニトリル類(アセトニトリル等)、芳香族類(シクロヘキシルベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等)、ハロゲン化アルキル類(塩化メチレン等)、アミン類(1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ジアザビシクロウンデセン等)及びラクトン系などが挙げられる。
本発明に係る無機溶媒としては、例えば、水(HO)や溶融塩等が挙げられる。無機溶媒として用いることができる溶融塩は、例えば、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化カルシウムなどの金属ヨウ化物−ヨウ素の組み合わせ;テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイドなどの4級アンモニウム化合物のヨウ素塩−ヨウ素の組み合わせ;臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化セシウム、臭化カルシウムなどの金属臭化物−臭素の組み合わせ;テトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイドなどの4級アンモニウム化合物の臭素塩−臭素の組み合わせ;フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩、フェロセン−フェリシニウムイオンなどの金属錯体;ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール−アルキルジスルフィドなどのイオウ化合物;ビオロゲン色素、ヒドロキノン−キノンなどが挙げられる。
溶媒(1)としては、用いる有機化合物にもよるが、上記のなかでも、沸点が50〜180℃の範囲の溶媒、例えば、エステル類、アルコール類などを好ましく用いることができる。
溶媒(2)としては、用いる有機化合物にもよるが、上記のなかでも、有機化合物に対し溶解性の高い、例えば、炭化水素類などを好ましく用いることができる。
[有機膜形成用塗布液の製造方法]
本発明の有機膜形成用塗布液の製造方法は、溶媒(1)及び前記溶媒(2)を含有し、前記溶媒(2)の含有比率が全溶媒量に対し1〜1000質量ppmの範囲内である溶媒を調製し、前記調製された溶媒に前記有機化合物を溶解して、有機膜形成用塗布液を得る溶解工程を有することが好ましい。
溶解工程においては、公知の溶解方法で有機化合物を溶媒(1)及び前記溶媒(2)に溶解することができる。混合時の温度や撹拌条件等を適宜選択して溶解することができる。
しかし、この方法では、溶解に際し、有機化合物に対する貧溶媒である溶媒(1)が多量に必要となるため、以下に述べるクロマトグラフィー法を用いて溶媒(1)と溶媒(2)を含む混合溶媒から溶媒(2)を除いて、本願発明に係る組成の有機膜形成用塗布液を調製する方法が好ましい。クロマトグラフィー法では、良溶媒である溶媒(2)を多く使うことにより、全体の溶媒量を減らすことが可能である。
(クロマトグラフィー法)
本発明の有機膜形成用塗布液の製造方法は、溶媒(2)に前記有機化合物を溶解した溶液を調製した後、移動相として前記溶媒(1)を用い、前記有機化合物を溶解した溶液から前記溶媒(2)をクロマトグラフィーで分離して除くことにより、前記溶媒(2)の含有比率を、全溶媒量に対し1〜1000質量ppmの範囲内の有機膜形成用塗布液を得る分離工程を有することが好ましい。
有機化合物を溶解した溶液から前記溶媒(2)をクロマトグラフィーで分離して除く分離工程としては、高速液体クロマトグラフィー、超臨界若しくは亜臨界クロマトグラフィー、又はゲル浸透クロマトグラフィーを用いることが好ましい。また、これらのうち、高い精製効率で本発明の有機膜形成用塗布液を製造することができ、より分散を促進でき、かつ高速化により製造時間を短縮できる観点などから、超臨界又は亜臨界クロマトグラフィー法を用いることが特に好ましい。
このとき、前記移動相が、超臨界二酸化炭素を含有することが、特に好ましい。以下、超臨界又は亜臨界クロマトグラフィー法について説明する。
(超臨界又は亜臨界クロマトグラフィー法)
超臨界流体クロマトグラフィー法は、充填カラム、オープンカラム、キャピラリカラムを用いることができる。
(クロマトグラフィー用カラム)
クロマトグラフィー用カラムは、移動相に注入された試料中の目的の物質を分離することができる分離剤を有するカラムであれば特に限定されない。
分離剤は、目的の物質に応じて種々の分離剤の中から選ばれる。分離剤の形態は特に限定されない。例えば、粒子状の担体に担持されている状態でカラムに充填されていても良いし、カラムに収容される一体型の担体に担持されている状態でカラムに収容されていても良いし、分離剤からなる一体型の成形物としてカラムに収容されていても良い。
充填カラムを用いた方法では、図3に示すように、例えば、有機溶媒(二酸化炭素を含む)を含有する超臨界流体11、ポンプ12、モディファイヤ13、分離する有機化合物を注入するインジェクタ14、分離用のカラム15、検出器17、圧力調整弁18等を備えた装置を用いることができる。
カラム15は、カラムオーブン16内で温度調整される。充填剤としては従来のクロマトグラフィー法に用いられているシリカ、又は表面修飾したシリカ等適宜選択することができる。
本発明において、超臨界流体とは、超臨界状態にある物質のことである。
ここで、超臨界状態について説明する。物質は、温度、圧力(又は体積)等の環境条件の変化により気体、液体及び固体の三つの状態の間を移り変わるが、これは分子間力と運動エネルギーとのバランスで決定される。横軸に温度を、縦軸に圧力をとって気液固三態の移り変わりを表したものを状態図(相図)というが、その中で気体、液体及び固体の三相が共存し、平衡にある点を三重点という。三重点より温度が高い場合は、液体とその蒸気が平衡になる。この時の圧力は飽和蒸気圧であり、蒸発曲線(蒸気圧線)で表される。この曲線で表される圧力よりも低い圧力では液体は全部気化し、またこれよりも高い圧力を加えれば蒸気は全部液化する。圧力を一定にして温度も変化させてもこの曲線を超えると液体が蒸気に、また蒸気が液体になる。この蒸発曲線には、高温、高圧側に終点があり、これを臨界点(critical point)と呼ぶ。臨界点は物質を特徴づける重要な点であり、液体と蒸気との区別がつかなくなる状態で、気液の境界面も消失する。
臨界点より高温の状態では、気液共存状態を生じることなく液体と気体の間を移り変わることができる。
臨界温度以上でかつ臨界圧力以上の状態にある流体を超臨界流体といい、超臨界流体を与える温度・圧力領域を超臨界領域という。また、臨界温度以上又は臨界圧力以上のいずれかを満たした状態を亜臨界(膨張液体)状態といい、亜臨界状態にある流体を亜臨界流体という。超臨界流体及び亜臨界流体は、高い運動エネルギーを有する高密度流体であり、溶質を溶解するという点では液体的な挙動を示し、密度の可変性という点では気体的な特徴を示す。超臨界流体の溶媒特性はいろいろあるが、低粘性で高拡散性であり固体材料への浸透性が優れていることが重要な特性である。
超臨界状態は、例えば、二酸化炭素であれば、臨界温度(以下、Tcともいう)31℃、臨界圧力(以下、Pcともいう。)は7.38×10Pa、プロパン(Tc=96.7℃、Pc=43.4×10Pa)、エチレン(Tc=9.9℃、Pc=52.2×10Pa)等、この領域以上では流体は拡散係数が大きくかつ粘性が小さくなり物質移動、濃度平衡への到達が速く、かつ液体のように密度が高いため、溶質分子を均一に分散させることができる。
本発明に係る超臨界又は亜臨界状態の流体は、塗布液中の有機化合物の分解を抑制する観点から、臨界点の温度が300℃以下であることが好ましい。
本発明に係る超臨界又は亜臨界状態の流体は、温度20℃・圧力101325Pa(1気圧)の条件下で気体であることが好ましい。これにより、塗布膜中の超臨界又は亜臨界状態の流体の回収が迅速になり、塗布液を乾燥固化して塗布膜としたときに、超臨界又は亜臨界状態の流体を残留しないようにすることができる。
超臨界流体又は亜臨界流体として用いられる溶媒としては、二酸化炭素、一酸化二窒素、アンモニア、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、エタン、プロパン、ブタン、ヘキサン、ペンタン等が好ましく用いられる。また、これらの中でも、超臨界又は亜臨界状態の流体が容易に製造しやすく、環境への負荷が低く、安定性が高く、低コストであるという観点から二酸化炭素を好ましく用いることができる。
超臨界流体又は亜臨界流体として用いる溶媒は一種類を単独で用いることも可能であるし、極性を調整するためのいわゆるモディファイヤ(エントレーナ)と呼ばれる物質を添加することも可能である。
モディファイヤとしては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、塩化メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、アセトアルデヒドジエチルアセタール等のアセタール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸系溶媒、アセトニトリル、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド等の窒素化合物系溶媒、二硫化炭素、ジメチルスルホキシド等の硫黄化合物系溶媒、さらに水、硝酸、硫酸等が挙げられる。
超臨界流体又は亜臨界流体の使用温度は、基本的に、本発明に係る溶質として用いる有機化合物が溶解する温度以上であれば特に限定はないが、超臨界流体又は亜臨界流体と溶質とを良好に混合する観点からこれらの種類に応じて、使用温度は20〜600℃の範囲内とするのが好ましい。
超臨界流体又は亜臨界流体として用いる溶媒は、良溶媒である溶媒(2)と同一であってもよい。溶媒(2)を分離した後の有機膜形成用塗布液中の溶媒(1)と溶媒(2)の含有比率が本発明の規定する範囲内に入っていればよい。
超臨界流体又は亜臨界流体の使用圧力は、基本的に用いる物質の臨界圧力以上であれば特に限定はないが、圧力が低過ぎると、本発明に係る溶質として用いる有機化合物の超臨界流体又は亜臨界流体への溶解性が乏しくなる場合があり、また圧力が高過ぎると製造装置の耐久性、操作時の安全性等の面で問題が生じる場合があるため、使用圧力は1〜100MPaの範囲内とするのが好ましい。
超臨界流体又は亜臨界流体を使用する装置は、本発明に係る塗布液が超臨界流体又は亜臨界流体と接触して超臨界流体又は亜臨界流体へ溶解する機能を有する装置であればなんら限定されることはなく、例えば、超臨界流体又は亜臨界流体を閉鎖系で使用するバッチ方式、超臨界流体又は亜臨界流体を循環させて使用する流通方式、バッチ方式と流通方式とを組み合わせた複合方式等の使用が可能である。
本発明に係る超臨界又は亜臨界クロマトグラフィー法においては、移動相に試料を注入した後に、目的物質のうち、カラムからの溶出が最も遅い目的物質のピークが検出されてから、次の試料を注入するまでの間に行われ、カラムからの溶出が最も遅い目的物質のピークのテーリングが減衰し終わる以前に次の試料注入を行うことが好ましい。
このとき、移動相に試料を注入した後に、当該移動相の組成を変化させても良いし、組成を一定としても良い。特に大量の分離対象化合物の分取操作を行う場合には、移動相の組成を変化させることもできる。
移動相の組成を変化させる工程は、超臨界又は亜臨界流体と溶媒を含有する移動相の組成を変化させるものである。この工程により移動相の組成を変化させることで、ピークのテーリングの減衰を速めることができる。カラム吸着超臨界流体クロマトグラフィーでは、特に比較的大量の分離対象化合物をロードする分取操作を行う場合には、ピークが顕著なテーリングを示す。このテーリングが減衰する前に次の試料を注入すると、テーリングしている成分が次に注入した試料のピーク成分に混入することとなり、分離した化合物の純度が低下し、不都合が生じる。そのため、テーリングの完全な減衰を待ってから次の試料の注入を行わなければならない。したがって、テーリングの減衰を速めることで次の試料注入のタイミングを速めることができることとなるが、本発明においては移動相の組成を変化させることで、ピーク成分のカラムからの押し出しを促進させ、テーリングの減衰を速めることができる。
本発明では、移動相中の組成を変化させることは、液体クロマトグラフィーでいうステップグラジエント法と同様の効果を生じさせ、ピーク成分のカラムからの押し出しを促進させることで、テーリングの減衰を速めている。
超臨界又は亜臨界クロマトグラフィーは、高拡散性・低粘度の超臨界又は亜臨界流体を用いていることから、移動相の流速が大きく、カラムの平衡化も速い。そのため、移動相中の組成が一時的に変化しても、移動相中の組成を元に戻すとカラムは迅速に変化前の環境に復元することから、テーリングを減衰させた後直ちに次の試料を注入することができる。結果として、試料の時間当たりの処理量を増やすことができ、効率性・生産性が向上する。
本発明の移動相の組成を変化させる工程は、超臨界又は亜臨界クロマトグラフィー装置で行うことができる限り、どのような手法によるものでも良い。例えば、移動相中の溶媒比率を増加させることで、移動相の組成の変化を生じさせることができる。
移動相中には既に溶媒が含まれているが、移動相中に含ませる溶媒とは別途、カラムの上流で移動相生成装置の下流に溶媒注入装置を設け、移動相中の溶媒比率を増加させることができる。溶媒注入装置は、例えば注入する溶媒を保持するためのループ配管と流路切替弁、溶媒注入ポンプで構成される溶媒注入装置とすることができる。
溶媒注入装置に用いるループ配管は、所定の容積を有する管である。ループ配管を有すると、試料の注入の定量性が向上し、またより多量の試料を注入することが可能となり好ましい。本発明において、ループ配管の容積は、超臨界又は亜臨界クロマトグラフィー装置で用いられるカラムの種類やカラムの内径、目的の物質の種類、移動相の組成等の条件に応じて異なるが、一度に多量の溶媒を注入する必要があるため、溶媒注入装置が有するループ配管は試料注入装置が有するループ配管よりも大型で、多量の溶媒を保持できるものが適する。
溶媒注入装置に用いる流路切替弁は、移動相の流路に設けられる開閉自在な弁やコックであれば特に限定されない。例えば、二方弁やバタフライ弁を組み合わせて用いたり、三方弁を用いて移動相の流路の切り替えを行う弁が挙げられる。上記溶媒注入装置に用いる溶媒注入ポンプは、超臨界又は亜臨界クロマトグラフィー装置の試料注入などで用いられる高圧ポンプを用いることができる。
溶媒注入装置を用いた場合、溶媒の注入は、流路切替弁を切り替え溶媒注入ポンプによりカラムの移動相に溶媒を送りこむことで行われる。溶媒の注入は、試料の注入容積以上、好ましくは2倍以上、より好ましくは5倍以上の溶媒を瞬時に注入することが好ましい。上限値としては、試料の注入容積の30倍以下、好ましくは20倍以下、より好ましくは15倍以下の溶媒を注入することが好ましい。このような溶媒注入量とすることで、ピークのテーリングの減衰がさらに速まることとなる。
溶媒注入装置から注入される溶媒は特に限定されるものではなく、例えば、移動相中に含有される溶媒と同一の溶媒であってもよいし、異なる溶媒であってもよい。また、注入される溶媒は一種でもよいし、二種以上でもよい。
特に、テーリングの減衰をさらに速める点で、極性の高い溶媒が好ましい。また、移動相中に含有される溶媒と比較して、より極性の高い溶媒を使用することが好ましい。
前記移動相の組成を変化させる工程及び移動相の組成を変化前に戻す工程の両工程は、瞬時に行うことが好ましい。ここでいう瞬時とは、移動相の変化を生じさせるのに十分な時間であれば良い。
ピーク検出の方法は、特段限定はされるものではないが、通常超臨界流体クロマトグラフィーが有する検出器、例えば紫外吸光分光計により検出されたピークによりタイミングを計ることができる。
[有機膜]
本発明の有機膜は、本発明の有機膜形成用塗布液を乾燥固化してなる膜である。当該塗布膜は、有機EL素子や光電変換素子を構成する有機機能層に、好適に用いることができる。
塗布膜の製造方法としては、本発明の有機膜形成用塗布液を塗布する工程と、当該有機膜形成用塗布液を乾燥する工程とを有する。塗布する工程では、公知の塗布法を用いることができるが、大面積化でも均質な膜が得られやすく、かつ、低コストで製膜できるという観点から、例えば、インクジェット法、押し出し塗布法、スプレー塗布法又はスピンコート法等が挙げられる。
(インクジェット塗布法による塗布工程)
有機EL用塗布液の塗布方法としては、インクジェット塗布法を用いて塗布することが好ましい。
インクジェット塗布法で用いられるインクジェットヘッドとしては、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でもよい。また、吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)、放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができるが、いずれの吐出方式を用いてもよい。また、印字方式としては、シリアルヘッド方式、ラインヘッド方式等を制限なく用いることができる。
ヘッドから射出するインク滴の体積は、0.5〜100pLの範囲内とすることが好ましく、塗布ムラが少なく、かつ印字速度を高速化できる観点から、2〜20pLの範囲内であることが、より好ましい。なお、インク滴の体積は、印加電圧の調整等によって適宜調整可能である。
印字解像度は、好ましくは180〜10000dpi(dots per inch)の範囲内、より好ましくは360〜2880dpiの範囲で、湿潤層厚とインク滴の体積等を考慮して適宜設定することができる。
本発明において、インクジェット塗布時(塗布直後)における湿潤塗膜の湿潤層厚は、適宜設定することができるが、好ましくは1〜100μmの範囲内、より好ましくは1〜30μmの範囲内、最も好ましくは1〜5μmの範囲内において、本発明の効果がより顕著に奏される。なお、湿潤層厚は、塗布面積、印字解像度及びインク滴の体積から算出できる。
インクジェットによる印字方法には、ワンパス印字法とマルチパス印字法がある。ワンパス印字法は、所定の印字領域を1回のヘッドスキャンで印字する方法である。対して、マルチパス印字法は、所定の印字領域を複数回のヘッドスキャンで印字する方法である。
ワンパス印字法では、所望とする塗布パターンの幅以上の幅に亘ってノズルが並設された広幅のヘッドを用いることが好ましい。同一の基材上に、互いにパターンが連続していない独立した複数の塗布パターンを形成する場合は、少なくとも各塗布パターンの幅以上の広幅ヘッドを用いればよい。
[有機電子デバイス]
本発明の有機膜形成用塗布液の塗布膜である、有機膜を備えた有機電子デバイスとしては、有機EL素子、光電変換素子及び太陽電池を好ましく挙げることができる。このよう本発明の有機膜を備えた有機電子デバイスは、耐久性と変換効率に優れた特徴を有する。有機EL素子においては発光効率に優れ、光電変換素子及び太陽電池においては、光電変換効率に優れている。
[有機EL素子]
本発明に係る有機EL素子は、有機機能層として、本発明の有機膜形成用塗布液の塗布膜である有機膜を備え、当該有機膜形成用塗布液中の溶質が、有機EL素子用材料である。
以下、有機EL素子及び有機EL素子用材料について説明する。
本発明の有機EL素子は、基板上に、陽極と陰極、及びこれらの電極間に挟持された1層以上の有機機能層を有している。
有機機能層には少なくとも発光層が含まれるが、発光層とは広義には、陰極と陽極とからなる電極に電流を流した際に発光する層のことを指し、具体的には、陰極と陽極とからなる電極に電流を流した際に発光する有機化合物を含有する層を指す。
本発明に用いられる有機EL素子は、必要に応じ、発光層の他に、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層及び電子輸送層を有していてもよく、これらの層が陰極と陽極とで狭持された構造をとる。
有機EL素子用材料として用いられる化合物としては、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層及び電子輸送層等の有機機能層に一般的に用いられる公知の有機化合物を用いることができる。
また、以下に、基板上に有する有機EL素子の層構成の好ましい具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
(i)陽極/発光層/陰極
(ii)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
(iii)陽極/発光層/電子注入層/陰極
(iv)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
(v)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(vi)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
さらに、電子注入層と陰極との間に、陰極バッファー層(例えば、フッ化リチウム等)を挿入してもよく、陽極と正孔注入層との間に、陽極バッファー層(例えば、銅フタロシアニン等)を挿入してもよい。
以下、基板と、有機EL素子の各層構成について詳細に説明する。
(基板)
本発明の有機EL素子に用いることのできる基板(以下、基体、支持基板、基材、支持体等ともいう)としては、特に限定は無く、ガラス基板、プラスチック基板等を用いることができ、また透明であっても不透明であってもよい。基板側から光を取り出す場合には、基板は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な基板としては、ガラス、石英、透明プラスチック基板を挙げることができる。
また、基板としては、基板側からの酸素や水の侵入を阻止するため、JIS Z 0208に準拠した試験において、その厚さが1μm以上で水蒸気透過率が1g/(m・24hr)(25℃)以下であるものが好ましい。
ガラス基板としては、具体的には、例えば無アルカリガラス、低アルカリガラス、ソーダライムガラス等が挙げられる。水分の吸着が少ない点からは無アルカリガラスが好ましいが、充分に乾燥を行えばこれらのいずれを用いてもよい。
プラスチック基板は、可撓性が高く、軽量で割れにくいこと、さらに有機EL素子のさらなる薄型化を可能にできること等の理由で近年注目されている。
プラスチック基板の基材として用いられる樹脂フィルムとしては、特に限定は無く、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル又はポリアリレート類、有機無機ハイブリッド樹脂等からなる樹脂フィルムを挙げることができる。有機無機ハイブリッド樹脂としては、有機樹脂とゾルゲル反応によって得られる無機高分子(例えばシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等)を組み合わせて得られるものが挙げられる。これらのうちでは、特にアートン(JSR(株)製)又はアペル(三井化学(株)製)といったノルボルネン(又はシクロオレフィン系)樹脂が好ましい。
通常生産されているプラスチック基板は水分の透過性が比較的高く、また基板内部に水分を含有している場合もある。そのため、このようなプラスチック基板を用いる際には、樹脂フィルム上に水蒸気や酸素などの侵入を抑制する膜(以下、「ガスバリア膜」又は「水蒸気封止膜」という。)を設けたものが好ましい。
ガスバリア膜を構成する材料は、特に限定は無く、無機物、有機物の被膜又はその両者のハイブリッド等が用いられる。被膜が形成されていてもよく、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が0.01g/(m・24h)以下のガスバリア性フィルムであることが好ましく、更には、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10−3mL/(m・24h・atm)以下、水蒸気透過度が、1×10−5g/(m・24h)以下の高ガスバリア性フィルムであることが好ましい。
ガスバリア膜を構成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であれば特に限定は無く、例えば金属酸化物、金属酸窒化物又は金属窒化物等の無機物、有機物、又はその両者のハイブリッド材料等を用いることができる。金属酸化物、金属酸窒化物又は金属窒化物としては酸化ケイ素、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、ITO(インジウム・スズ酸化物)、酸化アルミニウム等の金属酸化物、窒化ケイ素等の金属窒化物、酸窒化ケイ素、酸窒化チタン等の金属酸窒化物等が挙げられる。
更に該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機機能層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
ガスバリア膜は、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が0.01g/(m・24h)以下のガスバリア性フィルムであることが好ましく、更には、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10−3mL/(m・24h・atm)以下、水蒸気透過度が、1×10−5g/(m・24h)以下の高ガスバリア性フィルムであることが好ましい。
前記樹脂フィルムに、ガスバリア膜を設ける方法は、特に限定されず、いかなる方法でもよいが、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスタ−イオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、CVD法(化学的気相堆積:例えば、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法など)、コーティング法、ゾルゲル法等を用いることができる。これらのうち、緻密な膜を形成できる点から、大気圧あるいは大気圧近傍でのプラズマCVD処理による方法が好ましい。
不透明な基板としては、例えば、アルミ、ステンレス等の金属板、フィルムや不透明樹脂基板、セラミック製の基板等が挙げられる。
(陽極)
有機EL素子の陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、金属の電気伝導性化合物、又はこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。ここで、「金属の電気伝導性化合物」とは、金属と他の物質との化合物のうち電気伝導性を有するものをいい、具体的には、例えば、金属の酸化物、ハロゲン化物等であって電気伝導性を有するものをいう。
このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウム・スズ酸化物(ITO)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。上記陽極は、これらの電極物質からなる薄膜を、蒸着やスパッタリング等の公知の方法により、前記基板上に形成させることで作製することができる。
また、この薄膜にフォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、また、パターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。
陽極から発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましい。また、陽極としてのシート抵抗は、数百Ω/sq.以下が好ましい。さらに陽極の層厚は、構成する材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲内で選ばれる。
(発光層)
本発明に係る発光層は、電極又は電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。発光層は単一の組成を持つ層であってもよいし、同一又は異なる組成をもつ複数の層からなる積層構造であってもよい。
この発光層自体に、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層及び電子輸送層等の機能を付与してもよい。すなわち、発光層に(1)電界印加時に、陽極又は正孔注入層により正孔を注入することができ、かつ陰極又は電子注入層より電子を注入することができる注入機能、(2)注入した電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる輸送機能、(3)電子と正孔の再結合の場を発光層内部に提供し、これを発光につなげる発光機能のうちの少なくとも一つの機能を付与してもよい。なお、発光層は、正孔の注入されやすさと電子の注入されやすさに違いがあってもよく、また、正孔と電子の移動度で表される輸送機能に大小があってもよいが、少なくともどちらか一方の電荷を移動させる機能を有するものが好ましい。
(発光層に用いられる有機EL素子用材料)
この発光層に用いられる有機EL素子用材料の種類については、特に制限はなく、従来、有機EL素子における発光材料として公知のものを用いることができる。このような発光材料は、主に有機化合物であり、所望の色調により、例えば、Macromol.Symp.125巻17〜26頁に記載の化合物が挙げられる。また、発光材料はp−ポリフェニレンビニレンやポリフルオレンのような高分子材料でもよく、さらに前記発光材料を側鎖に導入した高分子材料や前記発光材料を高分子の主鎖とした高分子材料を使用してもよい。なお、上述したように、発光材料は、発光性能の他に、正孔注入機能や電子注入機能を併せ持っていてもよいため、後述する正孔注入材料や電子注入材料のほとんどが発光材料としても使用できる。
有機EL素子を構成する層において、その層が二種以上の有機化合物で構成されるとき、主成分をホスト、その他の成分をドーパントといい、発光層においてホストとドーパントを併用する場合、主成分であるホスト化合物に対する発光層のドーパント(以下発光ドーパントともいう)の混合比は好ましくは質量で0.1〜30質量%未満である。
発光層に用いられるドーパントは、大きく分けて、蛍光を発光する蛍光性ドーパントとリン光を発光するリン光性ドーパントの二種類がある。
蛍光性ドーパントの代表例としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、又は希土類錯体系蛍光体、その他公知の蛍光性化合物等が挙げられる。
本発明に係る発光層に用いられる発光材料としては、リン光性化合物を含有することが好ましい。
本発明においてリン光性化合物とは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、リン光量子収率が25℃において0.001以上の化合物である。リン光量子収率は好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.1以上である。上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に用いられるリン光性化合物は、任意の溶媒のいずれかにおいて上記リン光量子収率が達成されればよい。
リン光性ドーパントはリン光性化合物であり、その代表例としては、好ましくは元素の周期律表で8〜10族の金属を含有する錯体系化合物であり、さらに好ましくは、イリジウム化合物、オスミウム化合物、ロジウム化合物、パラジウム化合物、又は白金化合物(白金錯体系化合物)であり、中でも好ましくはイリジウム化合物、ロジウム化合物、白金化合物であり、最も好ましくはイリジウム化合物である。
ドーパントの例としては、以下の文献又は特許公報に記載されている化合物である。J.Am.Chem.Soc.123巻4304〜4312頁、国際公開第00/70655号、同01/93642号、同02/02714号、同02/15645号、同02/44189号、同02/081488号、特開2002−280178号公報、同2001−181616号公報、同2002−280179号公報、同2001−181617号公報、同2002−280180号公報、同2001−247859号公報、同2002−299060号公報、同2001−313178号公報、同2002−302671号公報、同2001−345183号公報、同2002−324679号公報、同2002−332291号公報、同2002−50484号公報、同2002−332292号公報、同2002−83684号公報、特表2002−540572号公報、特開2002−117978号公報、同2002−338588号公報、同2002−170684号公報、同2002−352960号公報、同2002−50483号公報、同2002−100476号公報、同2002−173674号公報、同2002−359082号公報、同2002−175884号公報、同2002−363552号公報、同2002−184582号公報、同2003−7469号公報、特表2002−525808号公報、特開2003−7471号公報、特表2002−525833号公報、特開2003−31366号公報、同2002−226495号公報、同2002−234894号公報、同2002−235076号公報、同2002−241751号公報、同2001−319779号公報、同2001−319780号公報、同2002−62824号公報、同2002−100474号公報、同2002−203679号公報、同2002−343572号公報、同2002−203678号公報等。
以下に、リン光性ドーパントの具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
Figure 0006933248
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発光ドーパントは一種のみを用いてもよいし、複数種類を用いてもよく、これらドーパントからの発光を同時に取り出すことにより、複数の発光極大波長を持つ発光素子を構成することもできる。また、例えばリン光性ドーパントと、蛍光性ドーパントの両方が加えられていてもよい。複数の発光層を積層して有機EL素子を構成する場合、それぞれの層に含有される発光ドーパントは同じであっても異なっていても、単一種類であっても複数種類であってもよい。
さらには、前記発光ドーパントを高分子鎖に導入した、又は前記発光ドーパントを高分子の主鎖とした高分子材料を使用してもよい。
上記ホスト化合物としては、例えばカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、芳香族ボラン誘導体、含窒素複素環化合物、チオフェン誘導体、フラン誘導体、オリゴアリーレン化合物等の基本骨格を有するものが挙げられ、後述の電子輸送材料及び正孔輸送材料もその相応しい一例として挙げられる。青色又は白色の発光素子、表示装置及び照明装置に適用する場合には、ホスト化合物の蛍光極大波長が415nm以下であることが好ましく、リン光性ドーパントを用いる場合、ホスト化合物のリン光の0−0遷移に由来するリン光極大波長が450nm以下であることがさらに好ましい。ホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、かつ、発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tg(ガラス転移点)である化合物が好ましい。
ホスト化合物の具体例としては、例えば以下の文献に記載されている化合物が好適である。
特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等。
発光ドーパントはホスト化合物を含有する層全体に分散されていてもよいし、部分的に分散されていてもよい。発光層にはさらに別の機能を有する化合物が加えられていてもよい。
上記の材料を用いて、例えばスピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法等の公知の方法により薄膜化することにより、発光層を形成することができる。
(正孔注入層及び正孔輸送層)
正孔注入層に用いられる有機EL素子用材料(以下、「正孔注入材料」ともいう。)は、正孔の注入、電子の障壁性のいずれかを有するものである。また、正孔輸送層に用いられる有機EL素子用材料(以下、「正孔輸送材料」ともいう。)は、電子の障壁性を有するとともに正孔を発光層まで輸送する働きを有するものである。したがって、本発明においては、正孔輸送層は正孔注入層に含まれる。これら正孔注入材料及び正孔輸送材料は、有機物、無機物のいずれであってもよい。
具体的には、例えばトリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、ポルフィリン化合物、チオフェンオリゴマー等の導電性高分子オリゴマーが挙げられる。これらのうちでは、アリールアミン誘導体及びポルフィリン化合物が好ましい。アリールアミン誘導体の中では、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物が好ましく、芳香族第三級アミン化合物がより好ましい。
上記芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)ビフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベン;N−フェニルカルバゾール、さらには、米国特許第5061569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(以下、α−NPDと略す。)、特開平4−308688号に記載されているトリフェニルアミンユニットが三つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料として使用することができる。
また、正孔輸送層の正孔輸送材料は、415nm以下に蛍光極大波長を有することが好ましい。すなわち、正孔輸送材料は、正孔輸送能を有しつつかつ、発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tgである化合物が好ましい。
正孔注入層及び正孔輸送層は、上記正孔注入材料及び正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法、転写法、印刷法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。
正孔注入層及び正孔輸送層の厚さについては、特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度である。なお、上記正孔注入層及び正孔輸送層は、それぞれ上記材料の一種又は二種以上からなる1層構造であってもよく、同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。また、正孔注入層と正孔輸送層を両方設ける場合には、上記の材料のうち、通常、異なる材料を用いるが、同一の材料を用いてもよい。
(電子注入層及び電子輸送層)
電子注入層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。この電子注入層に用いられる有機EL素子用材料(以下、「電子注入材料」ともいう。)の例としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。
また、特開昭59−194393号公報に記載されている一連の電子伝達性化合物は、該公報では発光層を形成する材料として開示されているが、本発明者らが検討の結果、電子注入材料として用いうることが分かった。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子注入材料として用いることができる。
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alqと略す。)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も電子注入材料として用いることができる。
その他、メタルフリーやメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも電子注入材料として好ましく用いることができる。また、正孔注入層と同様にn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子注入材料として用いることができる。
電子輸送層に用いられる好ましい有機EL素子用材料は、415nm以下に蛍光極大波長を有することが好ましい。すなわち、電子輸送層に用いられる有機EL素子用材料は、電子輸送能を有しつつかつ、発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tgである化合物が好ましい。
電子注入層は、上記電子注入材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法、転写法、印刷法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。
また、電子注入層としての厚さは特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲で選ばれる。この電子注入層は、これらの電子注入材料の一種又は二種以上からなる1層構造であってもよいし、あるいは同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
なお、本明細書においては、前記電子注入層のうち、発光層と比較してイオン化エネルギーが大きい場合には、特に電子輸送層と呼ぶこととする。したがって、本明細書においては、電子輸送層は電子注入層に含まれる。
上記電子輸送層は、正孔阻止層(ホールブロック層)とも呼ばれ、その例としては、例えば、国際公開第00/70655号、特開2001−313178号公報、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日 エヌ・ティー・エス社発行)」の第237頁等に記載されているものが挙げられる。特に発光層にオルトメタル錯体系ドーパントを用いるいわゆる「リン光発光素子」においては、前記(v)及び(vi)のように電子輸送層(正孔阻止層)を有する構成を採ることが好ましい。
(バッファー層)
陽極と発光層又は正孔注入層の間、及び、陰極と発光層又は電子注入層との間にはバッファー層(電極界面層)を存在させてもよい。バッファー層とは、駆動電圧低下や発光効率向上のために電極と有機機能層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日 エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(第123〜166頁)に詳細に記載されており、陽極バッファー層と陰極バッファー層とがある。
陽極バッファー層は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
陰極バッファー層は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。
上記バッファー層はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その厚さは0.1〜100nmの範囲が好ましい。さらに、上記基本構成層の他に、必要に応じてその他の機能を有する層を適宜積層してもよい。
(陰極)
有機EL素子の陰極としては、一般に仕事関数の小さい(4eV未満)金属(以下、電子注入性金属と称する)、合金、金属の電気伝導性化合物又はこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。
このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、インジウム、希土類金属、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が挙げられる。
本発明においては、上記に列挙したものを陰極の電極物質として用いてもよいが、本発明の効果をより有効に発揮させる点からは、陰極は第13族金属元素を含有してなることが好ましい。すなわち本発明では、後述するように陰極の表面をプラズマ状態の酸素ガスで酸化して、陰極表面に酸化皮膜を形成することにより、それ以上の陰極の酸化を防止し、陰極の耐久性を向上させることができる。
したがって、陰極の電極物質としては、陰極に要求される好ましい電子注入性を有する金属であって、緻密な酸化皮膜を形成しうる金属であることが好ましい。
前記第13族金属元素を含有してなる陰極の電極物質としては、具体的には、例えば、アルミニウム、インジウム、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が挙げられる。なお、上記混合物の各成分の混合比率は、有機EL素子の陰極として従来公知の比率を採用することができるが、特にこれに限定されない。上記陰極は、上記の電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、前記有機機能層上に薄膜形成することにより、作製することができる。
また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/sq.以下が好ましく、厚さは、通常10nm〜1μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光光を透過させるために、有機EL素子の陽極又は陰極のいずれか一方を透明又は半透明にすると、発光効率が向上して好ましい。
[有機EL素子の製造方法]
本発明の有機EL素子の製造方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子の製造法について説明する。
まず適当な基体上に、所望の電極物質、例えば陽極用物質からなる薄膜を、1μm以下、好ましくは10〜200nmの厚さになるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陽極を作製する。
次に、この上に、上述した有機EL素子用材料を含有する正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の有機化合物薄膜を順に形成させる。
これらの有機化合物薄膜の薄膜化の方法としては、本発明においては、本発明の有機膜形成用塗布液を塗布液として用いることができる点で塗布法が特に好ましい。
また、層ごとに異なる成膜法を適用してもよい。成膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は、使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450同、真空度10−6〜10−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、厚さ0.1nm〜5μmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
これらの層を形成後、その上に陰極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは50〜200nmの範囲の厚さになるように、例えば蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極を設けることにより、所望の有機EL素子が得られる。この有機EL素子の作製は、途中で取り出して異なる成膜法を施してもかまわない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。
[有機EL素子の封止]
有機EL素子の封止手段としては、特に限られないが、例えば、有機EL素子の外周部を封止用接着剤で封止した後、有機EL素子の発光領域を覆うように封止部材を配置する方法が挙げられる。
封止用接着剤としては、例えば、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。また、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(二液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
封止部材としては、有機EL素子を薄膜化することできる観点から、ポリマーフィルム及び金属フィルムを好ましく使用することができる。
封止部材と有機EL素子の発光領域との間隙には、封止用接着剤の他には、気相及び液相では窒素、アルゴン等の不活性気体やフッ化炭化水素、シリコンオイルのような不活性液体を注入することもできる。また、封止部材と有機EL素子の表示領域との間隙を真空とすることや、間隙に吸湿性化合物を封入することもできる。
[表示装置]
本発明の有機EL素子を用いる多色表示装置は、発光層形成時のみシャドーマスクを設け、他層は共通であるので、シャドーマスク等のパターニングは不要であり、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等で膜を形成できる。
発光層のみパターニングを行う場合、その方法に限定はないが、好ましくは蒸着法、インクジェット法、印刷法である。蒸着法を用いる場合においてはシャドーマスクを用いたパターニングが好ましい。
また、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
このようにして得られた多色表示装置に、直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧2〜40V程度を印加すると、発光が観測できる。また、逆の極性で電圧を印加しても電流は流れずに発光は全く生じない。さらに、交流電圧を印加する場合には、陽極が+、陰極が−の状態になったときのみ発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
多色表示装置は、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。表示デバイス、ディスプレイにおいて、赤、緑、青発光の三種の有機EL素子を用いることにより、フルカラーの表示が可能となる。
表示デバイス、ディスプレイとしてはテレビ、パソコン、モバイル機器、AV機器、文字放送表示、自動車内の情報表示等が挙げられる。特に静止画像や動画像を再生する表示装置として使用してもよく、動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。
発光光源としては家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるがこれに限定するものではない。
また、本発明に係る有機EL素子に共振器構造を持たせた有機EL素子として用いてもよい。
このような共振器構造を有した有機EL素子の使用目的としては、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、これらに限定されない。また、レーザー発振をさせることにより、上記用途に使用してもよい。
本発明に係る有機EL素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用してもよいし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は、単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。又は、異なる発光色を有する本発明の有機EL素子を二種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作製することが可能である。
本発明に係る有機EL素子から構成される表示装置の一例を図面に基づいて以下に説明する。
図4は、有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図である。有機EL素子の発光により画像情報の表示を行う、例えば、携帯電話等のディスプレイの模式図である。ディスプレイ41は、複数の画素を有する表示部A、画像情報に基づいて表示部Aの画像走査を行う制御部B等からなる。制御部Bは、表示部Aと電気的に接続され、複数の画素それぞれに外部からの画像情報に基づいて走査信号と画像データ信号を送り、走査信号により走査線毎の画素が画像データ信号に応じて順次発光して画像走査を行って画像情報を表示部Aに表示する。
図5は、表示部Aの模式図である。表示部Aは基板上に、複数の走査線55及びデータ線56を含む配線部と、複数の画素53等とを有する。表示部Aの主要な部材の説明を以下に行う。
図5においては、画素53の発光した光が、白矢印方向(下方向)へ取り出される場合を示している。配線部の走査線55及び複数のデータ線56は、それぞれ導電材料からなり、走査線55とデータ線56は格子状に直交して、直交する位置で画素53に接続している(詳細は図示せず)。画素53は、走査線55から走査信号が印加されると、データ線56から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素を、適宜、同一基板上に並置することによって、フルカラー表示が可能となる。
次に、画素の発光プロセスを説明する。
図6は、画素の回路を示した概略図である。画素は、有機EL素子60、スイッチングトランジスタ61、駆動トランジスタ62、コンデンサ63等を備えている。複数の画素に有機EL素子60として、赤色、緑色、青色発光の有機EL素子を用い、これらを同一基板上に並置することでフルカラー表示を行うことができる。
図6において、制御部B(図6には図示せず、図4に示す。)からデータ線56を介してスイッチングトランジスタ61のドレインに画像データ信号が印加される。そして、制御部Bから走査線55を介してスイッチングトランジスタ61のゲートに走査信号が印加されると、スイッチングトランジスタ61の駆動がオンし、ドレインに印加された画像データ信号がコンデンサ63と駆動トランジスタ62のゲートに伝達される。
画像データ信号の伝達により、コンデンサ63が画像データ信号の電位に応じて充電されるとともに、駆動トランジスタ62の駆動がオンする。駆動トランジスタ62は、ドレインが電源ライン67に接続され、ソースが有機EL素子60の電極に接続されており、ゲートに印加された画像データ信号の電位に応じて電源ライン67から有機EL素子60に電流が供給される。
制御部Bの順次走査により走査信号が次の走査線55に移ると、スイッチングトランジスタ61の駆動がオフする。しかし、スイッチングトランジスタ61の駆動がオフしてもコンデンサ63は充電された画像データ信号の電位を保持するので、駆動トランジスタ62の駆動はオン状態が保たれて、次の走査信号の印加が行われるまで有機EL素子60の発光が継続する。順次走査により、次に走査信号が印加されたとき、走査信号に同期した次の画像データ信号の電位に応じて駆動トランジスタ62が駆動して有機EL素子60が発光する。すなわち、有機EL素子60の発光は、複数の画素それぞれの有機EL素子60に対して、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタ61と駆動トランジスタ62を設けて、複数の画素53(図6には図示せず、図5に示す。)それぞれの有機EL素子60の発光を行っている。このような発光方法をアクティブマトリクス方式と呼んでいる。
ここで、有機EL素子60の発光は、複数の階調電位を持つ多値の画像データ信号による複数の階調の発光でもよいし、2値の画像データ信号による所定の発光量のオン、オフでもよい。
また、コンデンサ63の電位の保持は、次の走査信号の印加まで継続して保持してもよいし、次の走査信号が印加される直前に放電させてもよい。
本発明においては、上述したアクティブマトリクス方式に限らず、走査信号が走査されたときのみデータ信号に応じて有機EL素子を発光させるパッシブマトリクス方式の発光駆動でもよい。
図7は、パッシブマトリクス方式による表示装置の模式図である。図7において、複数の走査線55と複数の画像データ線56が画素53を挟んで対向して格子状に設けられている。順次走査により走査線55の走査信号が印加されたとき、印加された走査線55に接続している画素53が画像データ信号に応じて発光する。パッシブマトリクス方式では画素53にアクティブ素子が無く、製造コストの低減を図ることができる。
[光電変換素子及び太陽電池]
有機膜形成用塗布液中の溶質として、光電変換素子用材料を用いた場合、有機膜形成用塗布液の塗布膜である有機膜は、光電変換素子を構成する有機機能層として、好適に用いることができる。
以下、光電変換素子用材料、光電変換素子及び太陽電池の詳細を説明する。
図8は、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなるシングル構成(バルクヘテロジャンクション層が1層の構成)の太陽電池の一例を示す断面図である。
図8において、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子200は、基板201の一方面上に、透明電極(陽極)202、正孔輸送層207、バルクヘテロジャンクション層の光電変換部204、電子輸送層(又はバッファー層ともいう。)208及び対極(陰極)203が順次積層されている。
基板201は、順次積層された透明電極202、光電変換部204及び対極203を保持する部材である。本実施形態では、基板201側から光電変換される光が入射するので、基板201は、この光電変換される光を透過させることが可能な、すなわち、この光電変換すべき光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。基板201は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が用いられる。この基板201は、必須ではなく、例えば、光電変換部204の両面に透明電極202及び対極203を形成することでバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子200が構成されてもよい。
光電変換部204は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、光電変換素子用材料であるp型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を有して構成される。
p型半導体材料は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は、相対的に電子受容体(アクセプター)として機能する。ここで、電子供与体及び電子受容体は、“光を吸収した際に、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)を形成する電子供与体及び電子受容体”であり、電極のように単に電子を供与あるいは受容するものではなく、光反応によって、電子を供与あるいは受容するものである。
図8において、基板201を介して透明電極202から入射された光は、光電変換部204のバルクヘテロジャンクション層における電子受容体あるいは電子供与体で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。
発生した電荷は、内部電界、例えば、透明電極202と対極203の仕事関数が異なる場合では透明電極202と対極203との電位差によって、電子は電子受容体間を通り、また正孔は電子供与体間を通り、それぞれ異なる電極へ運ばれ光電流が検出される。例えば、透明電極202の仕事関数が対極203の仕事関数よりも大きい場合では、電子は透明電極202へ、正孔は対極203へ輸送される。
なお、仕事関数の大小が逆転すれば、電子と正孔はこれとは逆方向に輸送される。
また、透明電極202と対極203との間に電位をかけることにより、電子と正孔の輸送方向を制御することもできる。
なお、図8には記載していないが、正孔ブロック層、電子ブロック層、電子注入層、正孔注入層等の他の層を有していてもよい。
また、さらなる太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、このような光電変換素子を積層した、タンデム型の構成(バルクヘテロジャンクション層を複数有する構成)であってもよい。
図9は、タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。タンデム型構成の場合、基板201上に、順次透明電極202、第1の光電変換部209を積層した後、電荷再結合層(中間電極)205を積層した後、第2の光電変換部206、次いで対極203を積層することで、タンデム型の構成とすることができる。
上記のような層に用いることができる材料については、例えば、特開2015−149483号公報の段落番号〔0045〕〜〔0113〕に記載のn型半導体材料、及びp型半導体材料が挙げられる。
(バルクヘテロジャンクション層の形成方法)
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。このうち、前述の正孔と電子が電荷分離する界面の面積を増大させ、高い光電変換効率を有する素子を作製するためには、塗布法が好ましい。また塗布法は、製造速度にも優れている。
塗布後は残留溶媒及び水分、ガスの除去、及び半導体材料の結晶化による移動度向上・吸収長波化を引き起こすために加熱を行うことが好ましい。製造工程中において所定の温度でアニール処理されると、微視的に一部が配列又は結晶化が促進され、バルクヘテロジャンクション層を適切な相分離構造とすることができる。その結果、バルクヘテロジャンクション層のキャリア移動度が向上し、高い効率を得ることができるようになる。
光電変換部(バルクヘテロジャンクション層)204は、電子受容体と電子供与体とが均一に混在された単一層で構成してもよいが、電子受容体と電子供与体との混合比を変えた複数層で構成してもよい。
次に、有機光電変換素子を構成する電極について説明する。
有機光電変換素子は、バルクヘテロジャンクション層で生成した正電荷と負電荷とが、それぞれp型有機半導体材料、及びn型有機半導体材料を経由して、それぞれ透明電極及び対極から取り出され、電池として機能するものである。それぞれの電極には、電極を通過するキャリアに適した特性が求められる。
(対極)
本発明において対極は、光電変換部で発生した電子を取り出す陰極とすることが好ましい。例えば、陰極として用いる場合、導電材単独層であってもよいが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用してもよい。
対極材料としては、例えば、特開2010−272619号公報、特開2014−078742号公報に記載の公知の陰極の導電材を用いることができる。
(透明電極)
本発明において透明電極は、光電変換部で発生した正孔を取り出す機能を有する陽極とすることが好ましい。例えば、陽極として用いる場合、好ましくは波長380〜800nmの光を透過する電極である。材料としては、例えば、特開2010−272619号公報、特開2014−078742号公報に記載の公知の陽極用の材料を用いることができる。
(中間電極)
また、タンデム構成の場合に必要となる中間電極の材料としては、透明性と導電性を併せ持つ化合物を用いた層であることが好ましい。材料としては、例えば、特開2010−272619号公報、特開2014−078742号公報に記載の公知の中間電極用の材料を用いることができる。
次に、電極及びバルクヘテロジャンクション層以外を構成する材料について述べる。
(正孔輸送層及び電子ブロック層)
本発明の有機光電変換素子は、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能とするために、バルクヘテロジャンクション層と透明電極との中間には正孔輸送層・電子ブロック層を有していることが好ましい。
正孔輸送層を構成する光電変換素子用材料としては、例えば、特開2010−272619号公報、特開2014−078742号公報に記載の公知の材料を用いることができる。
(電子輸送層、正孔ブロック層)
本発明の有機光電変換素子は、バルクヘテロジャンクション層と対極との中間には電子輸送層・正孔ブロック層・バッファー層を形成することで、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
また、電子輸送層としては、例えば、特開2010−272619号公報、特開2014−078742号公報に記載の公知の材料を用いることができる。また、電子輸送層は、バルクヘテロジャンクション層で生成した正孔を対極側には流さないような整流効果を有する、正孔ブロック機能が付与された正孔ブロック層としてもよい。このような電子輸送層は、正孔ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する電子輸送層を使用する方が好ましい。正孔ブロック層とするための材料としては、例えば、特開2010−272619号公報、特開2014−078742号公報に記載の公知の材料を用いることができる。
(その他の層)
エネルギー変換効率の向上や、素子寿命の向上を目的に、各種中間層を素子内に有する構成としてもよい。中間層の例としては、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層、励起子ブロック層、UV吸収層、光反射層、波長変換層等を挙げることができる。
(基板)
基板側から光電変換される光が入射する場合、基板はこの光電変換される光を透過させることが可能な、すなわち、この光電変換すべき光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。基板は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が好適に挙げられるが、軽量性と柔軟性の観点から透明樹脂フィルムを用いることが望ましい。
本発明で透明基板として好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限がなく、その材料、形状、構造、厚さ等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、特開2010−272619号公報、特開2014−078742号公報に記載の公知の材料を用いることができる。
(光学機能層)
本発明の有機光電変換素子は、太陽光のより効率的な受光を目的として、各種の光学機能層を有していてよい。光学機能層としては、例えば、反射防止膜、マイクロレンズアレイ等の集光層、対極で反射した光を散乱させて再度バルクヘテロジャンクション層に入射させることができるような光拡散層等を設けてもよい。
反射防止層、集光層及び光散乱層としては、例えば、特開2010−272619号公報、特開2014−078742号公報等に記載の公知の反射防止層、集光層及び光散乱層をそれぞれ用いることができる。
(パターニング)
本発明に係る電極、発電層、正孔輸送層、電子輸送層等をパターニングする方法やプロセスには特に制限はなく、例えば、特開2010−272619号公報、特開2014−078742号公報等に記載の公知の手法を適宜適用することができる。
(封止)
また、作製した有機光電変換素子が環境中の酸素、水分等で劣化しないために、有機光電変換素子だけでなく有機エレクトロルミネッセンス素子等で公知の手法によって封止することが好ましい。例えば、特開2010−272619号公報、特開2014−078742号公報等に記載の手法を用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
≪実施例で用いた化合物≫
以下の実施例で用いた化合物の構造を示す
Figure 0006933248
溶媒は、以下のものを用いた。なお、用いた溶媒は事前に全て脱水処理した。
酢酸エチル(酢酸Et):関東化学株式会社製、特級酢酸エチル
酢酸n−プロピル(酢酸nPr):関東化学株式会社製、特級酢酸n−プロピル
酢酸イソブチル(酢酸iBu):関東化学株式会社製、特級酢酸イソブチル
クロロベンゼン:関東化学株式会社製、特級クロロベンゼン
トルエン:関東化学株式会社製、特級トルエン
キシレン:関東化学株式会社製、特級m−キシレン
TFPO:東京化成工業株式会社製、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール
[実施例1]
《有機膜形成用塗布液の調製》
〈有機膜形成用塗布液1−1の調製〉
100mLビーカーに、撹拌子と、溶媒(1)として酢酸n−プロピルを入れて、撹拌子を撹拌しながら85℃まで加熱し、ホスト化合物としてA−1が0.6質量%、発光ドーパントとしてIr−14が0.2質量%の濃度となるように添加し、引き続き撹拌子を撹拌して溶解させた。目視で溶解を確認した後、撹拌子を止め、常温(25℃)に戻し、30分間放置した。
〈有機膜形成用塗布液1−2〜1−4の調製〉
有機膜形成用塗布液1−1の調製と同様にして、表Iに記載の溶媒(1)及び溶媒(2)を用いて溶媒(2)の濃度が、表の濃度となるようにして、A−1とIr−14とが有機膜形成用塗布液1−1と同濃度となるようにして有機膜形成用塗布液1−2〜1−4を調製した。
〈有機膜形成用塗布液1−5の調製〉
有機膜形成用塗布液1−3と同様に調製した液を用いて、窒素雰囲気下(グローブボックス内)で、展開液として、貧溶媒(溶媒(1))である酢酸nPrを用い、下記記載のカラムでクロマトグラフィー処理した後、溶出液を減圧濃縮することにより、溶媒(2)の濃度、A−1及びIr−14の濃度が、それぞれ、0.6質量%及び0.2質量%となるように調製して、有機膜形成用塗布液1−5を得た。得られた溶媒(2)の濃度は、表Iの濃度であった。
カラム:シリカゲル(富士シリシア化学社製)
〈有機膜形成用塗布液1−6の調製〉
100mLビーカーに、撹拌子と、溶媒(2)としてクロロベンゼンを入れて、撹拌子を撹拌しながら85℃まで加熱し、ホスト化合物としてA−1が0.6質量%、ドーパントとしてIr−14が0.2質量%の濃度となるように添加し、引き続き撹拌子を撹拌して溶解させた。目視で溶解を確認した後、撹拌子を止め、常温(25℃)に戻し、30分間放置した。
その後、この溶液を以下の示したように、移動相として、貧溶媒(溶媒(1))である酢酸nPrと、超臨界二酸化炭素をと用い、超臨界クロマトグラフィーで良溶媒(溶媒(2))を分離して除いた後、A−1及びIr−14の濃度が、それぞれ、0.6質量%及び0.2質量%となるように貧溶媒(溶媒(1))である酢酸nPrで調製して、有機膜形成用塗布液1−6を得た。
(超臨界クロマトグラフィー条件)
機器:Prep15(日本ウォーターズ社製)
カラム:Torus 2−PIC(粒径5μm、内径10.0mm×長さ150mm)
移動相層:二酸化炭素:酢酸nPr=93:7
移動相層流量:10mL/min
圧力:18MPa
温度:40℃
検出:PDA(254nm)
〈有機膜形成用塗布液1−7〜1−12の調製〉
有機膜形成用塗布液1−6の調製において、溶質であるホスト化合物の種類と、良溶媒(溶媒(2))及び貧溶媒(溶媒(1))とを表Iのように変え、有機膜形成用塗布液1−6の調製と同様に、移動相として、酢酸nPrから表Iに示した溶媒(1)(貧溶媒)と、超臨界二酸化炭素とを用い、超臨界クロマトグラフィーで溶媒(2)(良溶媒)を分離して除いた後、A−1及びIr−14の濃度が、それぞれ、0.6質量%及び0.2質量%となるように溶媒(1)(貧溶媒)で調製して、有機膜形成用塗布液1−7〜1−12を得た。
《有機膜形成用塗布液の評価》
各塗布液について、下記(1)及び(2)の各評価を行った。これらの結果は、下記表Iに示す。
(1)小角X線散乱測定と粒径分布解析
有機膜形成用塗布液1−1〜1−12の有機膜形成用塗布液各々について、X線回折試料用キャピラリー(WJM−Glas/Muller GmbH製)に入れ、測定サンプルとした。X線はSPring−8の放射光を用い、波長0.1nm 1Åで塗布液試料に照射した。測定にはHUBER製多軸回折装置を用い、X線入射角θは0.2°で固定して塗布液試料に照射し、検出器はシンチレーションカウンターを用いて2θを1〜43°までの散乱線測定を行った。得られた散乱回折データから前述の解析ソフトを用いて粒径分布曲線を作成した。
ここで、図2には、粒径分布曲線の結果として、本発明の有機膜形成用塗布液1−8の粒径分布曲線と、比較例の有機膜形成用塗布液1−1の粒径分布曲線を、実線と破線でそれぞれ示した。粒径が5nm以下に最大の極大ピークを有し、その半値幅が0.5〜5.0nmの範囲内である場合、有機化合物は塗布液中に微細に分散されていると考えられる。
同様に、他の有機膜形成用塗布液についても、粒径分布曲線を求め、最大の極大ピークを示す粒径とその半値幅を求め、表Iに示した。
各々の有機膜形成用塗布液はピーク極大を一つ有しており、粒径範囲によりホストに由来するものと帰属された。
(2)有機膜形成用塗布液中の溶媒(2)の濃度の測定
有機膜形成用塗布液中の溶媒(2)の濃度は、ガスクロマトグラフィーにて測定した。具体的には、カラム充填剤にWaters Corporation製 PorapackType S GC Bulk Packing Material(Mesh80−100)を使用し、絶対検量線法にて測定した。
超臨界クロマトグラフィーで分離した場合、溶媒(2)は効率よく除かれ、その濃度は1〜10ppmの範囲内にあった。表Iでは「>1ppm」として示した。なお表Iでは、塗布液の調製の欄で、クロマトグラフィーをクロマトと略記した。
次に、本発明の有機膜形成用塗布液の塗布膜である有機膜を有機機能層として備える有機EL素子を、塗布法により作製した。なお、以下の実施例ではスピンコート法によって有機EL素子を作製しているが、本発明は、これに限られるわけではなく、例えば、インクジェット法、ダイコート、フレキソ印刷、などの他の塗布法によって有機機能層を作製してもよい。
《有機EL素子の作製》
<有機EL素子1−1の作製>
可撓性フィルム上に、第1電極層(陽極)、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極を順に形成した後、封止することで有機EL素子1−1を作製した。また、発光層の形成において、本発明の有機膜形成用塗布液を用いた。
(1.1)ガスバリア性の可撓性フィルムの作製
可撓性フィルムとして、ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン社製フィルム、以下、PENと略記する。)の第1電極を形成する側の全面に、特開2004−68143号に記載の構成からなる大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、連続して可撓性フィルム上に、SiOxからなる無機物のガスバリア膜を厚さ500nmとなるように形成し、酸素透過度0.001mL/(m・day・atm)以下、水蒸気透過度0.001g/(m・day)以下のガスバリア性の可撓性フィルムを作製した。
(1.2)第1電極層の形成
上記作製したガスバリア性の可撓性フィルム上に、厚さ120nmのITO(インジウム・スズ酸化物)をスパッタ法により成膜し、フォトリソグラフィー法によりパターニングを行い、第1電極層(陽極)を形成した。
なお、パターンは発光面積が50mm平方になるようなパターンとした。
(1.3)正孔注入層の形成
パターニング後のITO基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。この基板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、バイエル社製、Baytron P Al 4083)を純水で70%に希釈した溶液を、3000rpm、30秒でスピンコート法により成膜した後、200℃にて1時間乾燥し、層厚30nmの正孔注入層を設けた。
(1.4)正孔輸送層の形成
この基板を、窒素ガス(グレードG1)を用いた窒素雰囲気下に移し、正孔輸送材料である化合物(HT−1)(Mw=80000)を、クロロベンゼンに0.5%溶解した溶液を、1500rpm、30秒でスピンコート法により成膜した後、160℃で30分間保持し、層厚30nmの正孔輸送層とした。
(1.5)発光層の形成
ホスト化合物含有組成物としての有機膜形成用塗布液1−1を、1500rpm、30秒でスピンコート法によりそれぞれ成膜した後、120℃で30分間保持し層厚40nmの発光層をそれぞれ形成した。
なお、塗布中は環境温度を40℃に保持しながら塗布液に乾燥風をあてた。
(1.6)電子輸送層の形成
続いて、20mgの化合物(ET−1)を、4mLの2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール(TFPO)に溶解した溶液を、1500rpm、30秒でスピンコート法により成膜した後、120℃で30分間保持し、層厚30nmの電子輸送層とした。
(1.7)電子注入層及び陰極の形成
続いて、基板を大気に曝露することなく真空蒸着装置へ取り付けた。また、モリブデン製抵抗加熱ボートにフッ化ナトリウム及びフッ化カリウムを入れたものを真空蒸着装置に取り付け、真空槽を4×10−5Paまで減圧した後、前記ボートに通電して加熱してフッ化ナトリウムを0.02nm/秒で前記電子輸送層上に層厚1.0nmの薄膜を形成し、続けて同様にフッ化カリウムを0.02nm/秒でフッ化ナトリウム上に層厚1.5nmの電子注入層を形成した。
次に、アルミニウム100nmを蒸着して陰極を形成した。
(1.8)封止
次に、封止部材として、可撓性の厚さ30μmのアルミニウム箔(東洋アルミニウム株式会社製)に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(12μm厚)をドライラミネーション用の接着剤(2液反応型のウレタン系接着剤)を用いラミネートした(接着剤層の厚さ1.5μm)ものを準備した。
次に、上記アルミニウム(陰極)面上に、封止用接着剤として、下記熱硬化性接着剤を、ディスペンサを使用して上記封止部材の接着面(つや面)に、厚さ20μmで均一に塗布した。これを100Pa以下の真空下で12時間乾燥させた。さらに、露点温度が−80℃以下、酸素濃度が0.8ppmの窒素雰囲気下へ移動し、12時間以上乾燥させ、封止用接着剤の含水率を100ppm以下となるように調整した。
上記熱硬化接着剤としては下記の(A)〜(C)を混合したエポキシ系接着剤を用いた。
(A)ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)
(B)ジシアンジアミド(DICY)
(C)エポキシアダクト系硬化促進剤
次に、封止部材を、取り出し電極及び電極リードの接合部を覆うようにして密着・配置して、圧着ロールを用いて厚着条件、圧着ロール温度120℃、圧力0.5MPa、装置速度0.3m/minで密着封止して、有機EL素子1−1を作製した。
<有機EL素子1−2〜1−12の作製>
有機EL素子1−1の作製方法における発光層の形成において、有機膜形成用塗布液1−1を有機膜形成用塗布液1−2〜1−12に変更した以外は同様にして有機EL素子1−2〜1−12を作製した。
(溶解度試験)
有機化合物A−1〜A−3に対して、それぞれの溶媒を用いて、5質量%の溶液を調製し、各溶液を撹拌子を用いて20℃で10分間撹拌して目視で不溶解物の有無を確認した。その結果、酢酸nPr、酢酸iBu及び酢酸Etの溶解度は5質量%未満で、クロロベンゼン、トルエン及びキシレンの溶解度は5質量%以上であることを確認した。
同様に、有機化合物Ir−14に対して、それぞれの溶媒を用いて、5質量%の溶液を調製し、各溶液を撹拌子を用いて20℃で10分間撹拌して目視で不溶解物の有無を確認した。その結果酢酸nPr、酢酸iBu及び酢酸Etの溶解度は5質量%未満で、クロロベンゼン、トルエン及びキシレンの溶解度は5質量%以上であることを確認した。
《有機EL素子の評価》
有機EL素子1−1〜1−12について、下記(1)〜(3)の各評価を行った。これらの結果は、下記表Iに示す。
(1)発光効率の評価
上記作製した各有機EL素子を、室温(約25℃)で、2.5mA/cmの定電流条件下で発光させ、発光開始直後の発光輝度を、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタ社製)を用いて測定した。
次いで、比較例の有機EL素子1−1の発光輝度を100とした相対発光輝度を求め、これを発光効率(外部量子収率)の尺度とした。数値が大きいほど、発光効率に優れていることを表す。
(2)連続駆動安定性(発光寿命)の評価
各有機EL素子を半径5cmの円柱に巻きつけ、その後各有機EL素子を折り曲げた状態で連続駆動させ、上記分光放射輝度計CS−2000を用いて輝度を測定し、測定した輝度が半減する時間(LT50)を求めた。駆動条件は、連続駆動開始時に4000cd/mとなる電流値とした。
下記表Iでは、有機EL素子1−1のLT50を「100」として、他の各有機EL素子のLT50は、それに対する相対値で示し、これを連続駆動安定性の尺度とした。その下記表I中、数値が大きいほど、連続駆動安定性に優れている(長寿命である)ことを表す。
(3)移動度の評価
単電荷素子の作製
以下に示すように、正孔輸送性確認のため、正孔のみを流す単電荷素子、いわゆるホールオンリーデバイス(HOD)を作製した。
<HOD−1の作製>
有機EL素子1−1の作製と同様にして、電子輸送層まで作製した後に電子注入層の代わりに以下のようにして電子阻止層を設けた。
電子輸送層まで製膜した基板を真空蒸着装置に取り付けた。真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、電子阻止層として、厚さ10nmの酸化モリブデンを蒸着した。
最後に、アルミニウムを蒸着して厚さ100nmの陰極を形成することで、ホールオンリーデバイスHOD−1を作製した。
<HOD−2〜HOD−12の作製>
HOD−1の作製と同様にして、有機EL素子1−2〜1−12についても、電子輸送層まで作製した後に電子注入層の代わりに電子阻止層と陰極を形成してHOD−2〜HOD−12を作製した。
《単電荷素子の評価》
得られた単電荷素子HOD−1〜HOD−12を評価するに際しては、作製後の各素子のアルミ電極側をガラスケースで覆い、厚さ300μmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材として、エポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を適用し、これを上記陰極上に重ねて前記透明支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止して評価した。
(電流密度の測定)
作製した各単電荷素子について、電流−電圧特性の測定を行った。5V印加時の電流値から、電流密度を算出した。尚、測定には、KEITHLEY社製 6430型サブフェムトアンペア・リモートソースメーターを用いた。表では、それぞれ素子比較例のHOD−1の電流密度を100とする相対値で示し、これを移動度の尺度とした。表Iでは、対応する有機EL素子に、HODの移動度として示した。
なお、単電荷素子HOD−1〜HOD−12の上記評価において、発光は観察されず、単電荷の移動に関わる評価が行われたことを確認した。
以上の結果を、表Iに示す。
Figure 0006933248
上記表Iに示すとおり、本発明の有機EL素子は、発光効率、発光寿命の結果がいずれも良好であった。これに対して、比較例の有機EL素子は、いずれかの項目について劣るものであった。これは、本発明の有機EL素子に用いられた有機膜の正孔の移動度が高いことから分かるように、発光層に含まれる有機化合物が、アモルファス状に分散されているためであると考えられる。
また、本発明の有機EL素子は、発光効率、発光寿命のいずれもが良好であるため、表示装置や照明装置に好適に利用することができる。
[実施例2]
《有機光電変換素子の作製》
<有機光電変換素子2−1の作製>
ガラス基板上にパターン形成した透明電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行なった。
この透明基板上に、導電性高分子であるBaytron P4083(スタルクヴィテック社製)を30nmの厚さでスピンコートした後、140℃で大気中10分間加熱乾燥して正孔輸送層を形成した。
これ以降は、基板をグローブボックス中に持ち込み、窒素雰囲気下で作業した。まず、窒素雰囲気下で上記基板を140℃で3分間加熱処理した。クロロベンゼンにp型半導体材料として、プレクストロニクス社製プレックスコアOS2100を1.5質量%、n型半導体材料としてフロンティアカーボン社製E100(PCBM)を1.5質量%を溶解した液を作製し、0.45μmのフィルタでろ過をかけながら500rpmで60秒、ついで2200rpmで1秒間のスピンコートを行い、室温(25℃)で30分放置してバルクヘテロジャンクション層を形成した。
次に正孔ブロック材料B−1として、アルドリッチ社製バトクプロイン(BCP)を0.5質量%の比率で2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールと混合した有機膜形成用塗布液2−1を用い、1500rpmでスピンコートし、厚さ10nmの正孔ブロック層を形成した。
次に、上記一連の有機機能層を成膜した基板を大気に晒すことなく真空蒸着装置内に設置した。2mm幅のシャドウマスクが透明電極と直交するように素子をセットし、10 Pa以下にまでに真空蒸着機内を減圧した後、Alを100nmを蒸着した。最後に120℃で30分間の加熱を行い、比較の有機光電変換素子1を得た。なお蒸着速度は2nm/秒で蒸着し、2mm角のサイズとした。
得られた有機光電変換素子1は、窒素雰囲気下でアルミニウムキャップとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った後に大気下に取り出した。
<有機光電変換素子2−2の作製>
有機光電変換素子2−1の作成において、有機膜形成用塗布液2−1に代えて、以下のように調製した有機膜形成用塗布液2−2を用いて厚さ10nmの正孔ブロック層を形成した以外は、有機光電変換素子2−1と同様にして有機光電変換素子2−2を作製した。
〈有機膜形成用塗布液2−2の調製〉
100mLビーカーに、撹拌子と、溶媒(2)としてクロロベンゼンを入れて、撹拌子を撹拌しながら85℃まで加熱し、正孔ブロック化合物としてB−1が0.5質量%の濃度となるように添加し、引き続き撹拌子を撹拌して溶解させた。目視で溶解を確認した後、撹拌子を止め、常温(25℃)に戻し、30分間放置した。
その後、この溶液を以下の示したように、移動相として、貧溶媒(溶媒(1))であるTFPOと、超臨界二酸化炭素を用い、超臨界クロマトグラフィー処理して良溶媒(溶媒(2))を分離して除いた後、B−1の濃度が、0.5質量%となるように貧溶媒(溶媒(1))であるTFPOで調製して、有機膜形成用塗布液2−2を得た。
なお、有機膜形成用塗布液2−2中の溶媒(2)の濃度の測定は、実施例1と同様に行い結果を表IIに示した。
(超臨界クロマトグラフィー条件)
機器:Prep15(日本ウォーターズ社製)
カラム:Torus 2−PIC(粒径5μm、内径10.0mm×長さ150mm)
移動相層:二酸化炭素:TFPO=93:7
移動相層流量:10mL/min
圧力:18MPa
温度:40℃
検出:PDA(254nm)
(溶解度試験)
有機化合物B−1に対して、それぞれの溶媒を用いて、5質量%の溶液を調製し、各溶液を撹拌子を用いて20℃で10分間撹拌して目視で不溶解物の有無を確認した。その結果TFPOの溶解度は5質量%未満でクロロベンゼンの溶解度は5質量%以上であることを確認した。
《有機膜形成用塗布液の評価》
上記調製した有機膜形成用塗布液2−1及び2−2について、実施例1と同様にして(1)小角X線散乱測定と粒径分布曲線を求め、最大の極大ピークを示す粒径とその半値幅を求め、表IIに示した。
《有機光電変換素子の評価》
各有機光電変換素子について、それぞれ、変換効率、曲線因子及び耐久性の評価を行った。
(変換効率及び曲線因子の評価)
上記作製した有機光電変換素子に、分光計器株式会社製ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を4.0mmにしたマスクを受光部に重ね、短絡電流密度Jsc(mA/cm)及び開放電圧Voc(V)、曲線因子(フィルファクター)FFを、同素子上に形成した4箇所の受光部をそれぞれ測定し、平均値を求めた。また、Jsc、Voc、及びFFから式1に従って光電変換効率η(%)を求めた。
式1 Jsc(mA/cm)×Voc(V)×FF=η(%)
なお、表IIでは比較例の有機光電変換素子2−1の変換効率及び曲線因子を100とした相対値を求め、これを曲線因子、発光効率の尺度とした。数値が大きいほど優れていることを表す。
以上から、本発明の塗布液を用いて、高効率の有機光電変換素子を作製できることがわかる。
(耐久性の評価)
ソーラシミュレーター(AM1.5G)の光を100mW/cmの照射強度で照射して、電圧−電流特性を測定し、初期の変換効率を測定した。さらに、この時の初期変換効率を100とし、陽極と陰極の間に抵抗を接続したまま100mW/cmの照射強度で100h照射し続けた後の変換効率を評価し、相対低下効率を算出した。
式2 相対低下効率(%)=(1−暴露後の変換効率/暴露前の変換効率)×100
以上の結果を表IIに示す。なお、表IIでは比較例の有機光電変換素子2−1の相対低下率を100とした相対値を求め、これを耐久性の尺度とした。数値が大きいほど、耐久性に優れていることを表す。
Figure 0006933248
表IIから、本発明の有機膜形成用塗布液の塗布膜である有機膜を有機光電変換素子の正孔ブロック層に適用した場合、曲線因子が向上し、光電変換効率も高いものが得られることがわかる。また、耐久性を示す相対低下効率も比較例に対して低く、耐久性が高いことがわかる。
本発明の有機膜形成用塗布液は、有機化合物が微細に分散され、その塗布膜を備えた有機電子デバイスは、耐久性と変換効率に優れており、有機エレクトロルミネッセンス素子や有機光電変換素子に適用することができる。
11 超臨界流体
12 ポンプ
13 モディファイヤ
14 インジェクタ
15 カラム
16 カラムオーブン
17 検出器
18 圧力調整弁
A 表示部
B 制御部
41 ディスプレイ
53 画素
55 走査線
56 データ線
60 有機EL素子
61 スイッチングトランジスタ
62 駆動トランジスタ
63 コンデンサ
67 電源ライン
200 有機光電変換素子
201 基板
202 透明電極(陽極)
203 対極(陰極)
204 バルクヘテロジャンクション層の光電変換部
205 電荷再結合層(中間電極)
206 第2の光電変換部
207 正孔輸送層
208 電子輸送層(バッファー層)
209 第1の光電変換部

Claims (7)

  1. 溶質としての有機化合物と少なくとも二種の溶媒(1)と溶媒(2)とを含有する有機膜形成用塗布液であって、
    前記有機化合物の20℃における溶解度が、前記溶媒(1)では5質量%未満であり、
    前記溶媒(2)では5質量%以上であり、前記溶媒(2)の含有比率が、全溶媒量に対し1〜1000質量ppmの範囲内であり、かつ、
    前記有機化合物が、分子又は会合体として分散されていることを特徴とする有機膜形成用塗布液。
  2. 前記有機膜形成用塗布液について小角X線散乱測定から得られる前記有機化合物に由来する単一の分子又はそれらの会合体の粒径分布曲線(横軸:粒径、縦軸:頻度分布)において、粒径5nm以下の領域に、最大の極大ピークを有し、その半値幅が0.5〜5.0nmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の有機膜形成用塗布液。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の有機膜形成用塗布液の塗布膜であることを特徴とする有機膜。
  4. 請求項3に記載の有機膜を備えたことを特徴とする有機電子デバイス。
  5. 請求項1又は請求項2に記載の有機膜形成用塗布液を製造する有機膜形成用塗布液の製造方法であって、
    前記溶媒(1)及び前記溶媒(2)を含有し、前記溶媒(2)の含有比率が全溶媒量に対し1〜1000質量ppmの範囲内である溶媒を調製し、前記調製された溶媒に前記有機化合物を溶解して、有機膜形成用塗布液を得る溶解工程を有することを特徴とする有機膜形成用塗布液の製造方法。
  6. 請求項1又は請求項2に記載の有機膜形成用塗布液を製造する有機膜形成用塗布液の製造方法であって、
    前記溶媒(2)に前記有機化合物を溶解した溶液を調製した後、移動相として前記溶媒(1)を用い、前記有機化合物を溶解した溶液から前記溶媒(2)をクロマトグラフィーで分離して除くことにより、前記溶媒(2)の含有比率を、全溶媒量に対し1〜1000質量ppmの範囲内の有機膜形成用塗布液を得る分離工程を有することを特徴とする有機膜形成用塗布液の製造方法。
  7. 前記移動相が、超臨界二酸化炭素を含有することを特徴とする請求項6に記載の有機膜形成用塗布液の製造方法。
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