JPWO2017188180A1 - オレフィン類重合用固体触媒成分、オレフィン類重合用触媒およびオレフィン類重合体の製造方法 - Google Patents

オレフィン類重合用固体触媒成分、オレフィン類重合用触媒およびオレフィン類重合体の製造方法 Download PDF

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Abstract

フタル酸エステル以外の電子供与性化合物を含む固体触媒成分であって、フタル酸エステルを電子供与性化合物として用いた場合と比較して、オレフィン類の重合活性が同等であるとともに、得られる重合体の立体規則性が高く分子量分布が広いオレフィン重合用固体触媒成分を提供する。
マグネシウム原子、チタン原子、ハロゲン原子、一般式(1)で表されるエステル化合物(A)および一般式(2)で表されるジエステル化合物(B)を含み、下記式(エステル化合物(A)の含有量(質量%)/ジエステル化合物(B)の含有量(質量%))で表される比が、0.01〜75であることを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分である。

Description

本発明は、オレフィン類重合用固体触媒成分、オレフィン類重合用触媒およびオレフィン類重合体の製造方法に関する。
従来より、オレフィン類重合用触媒として、チタンなどの遷移金属触媒成分とアルミニウムなどの典型金属触媒成分とからなる固体触媒が広く知られている。
従来より、プロピレンなどのオレフィン類の重合においては、マグネシウム原子、チタン原子、ハロゲン原子および電子供与性化合物を必須成分として含む固体触媒成分が知られている。また該固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および有機ケイ素化合物から成るオレフィン類重合用触媒の存在下に、オレフィン類を重合もしくは共重合させる方法が数多く提案されている。
たとえば、特許文献1(特開昭57−63310号公報)には、フタル酸エステル等の電子供与性化合物が担持された固体状チタン触媒成分と、助触媒成分として有機アルミニウム化合物と、少なくとも一つのSi−O−C結合を有する有機ケイ素化合物とを含むオレフィン類重合用触媒を用いてプロピレンを重合させる方法が提案されており、上記特許文献を含め多くの文献において電子供与性化合物としてフタル酸エステルを使用し、高い重合活性の下、高立体規則性ポリマーを得る方法が提案されている。
しかしながら、フタル酸エステルの一種であるフタル酸ジ−n−ブチルやフタル酸ベンジルブチルは、欧州のRegistration,Evaluation,Authorization and Restriction of Chemicals(REACH)規制におけるSubstance of Very High Concern(SVHC)物質として特定されており、環境負荷低減の観点から、SVHC物質を使用しない触媒系への転換要求が高まっている。
このような状況下、REACH規制対象とされていない、アルコキシアルキルエステル、マレイン酸エステル、シクロヘキセンジカルボン酸ジエステル等のフタル酸エステル以外の電子供与性化合物を使用して調製される固体触媒成分が知られている。
特開昭57−63310号公報
しかしながら、上記の如きフタル酸エステル以外の電子供与性化合物を用いた固体触媒成分は、重合に供した際、フタル酸エステルを用いた固体触媒成分と同等の性能を発揮し難く、特に、オレフィン類重合時の重合活性や、得られる重合体の立体規則性等の一次物性のいずれかの点において劣る傾向があることから、さらなる改良が求められるようになっていた。
さらに、得られる重合体の剛性や耐衝撃強度などを向上させるため、分子量分布が広い重合体を得ることが可能なオレフィン重合用固体触媒成分が求められている。
例えば、フタル酸エステル以外の電子供与性化合物としてアルコキシアルキルエステルを含有する固体触媒成分は、オレフィン重合に用いた場合に、重合活性がフタル酸エステルを用いた固体触媒成分に対しやや劣る傾向にあり、得られる重合体の立体規則性も、高いレベルにあるとは言い難い。
また、例えばフタル酸エステル以外の電子供与性化合物としてマレイン酸エステルを含有する固体触媒成分は、オレフィン重合に用いた場合に、重合活性こそフタル酸エステルを用いた固体触媒成分と同等であるものの、得られる重合体の立体規則性は、高いレベルにあるとは言い難い。
さらに、例えばフタル酸エステル以外の電子供与性化合物としてシクロヘキセンジカルボン酸ジエステルを含有する固体触媒成分は、オレフィン重合に用いた場合に、得られる重合体の立体規則性がフタル酸エステルを用いた固体触媒成分と同等の水準に達する一方で、その重合活性は高いレベルにあるとは言い難い。
このように、フタル酸エステルを含有する固体触媒成分を用いた場合と同等程度の重合活性を達成しつつ、得られるオレフィン重合体が、フタル酸エステルを含有する固体触媒成分を用いた場合と同等以上の高い立体規則性を有し、かつフタル酸エステルを含有する固体触媒成分を用いた場合よりも広い分子量分布を達成し得る固体触媒成分は知られていなかった。
このような状況下、本発明は、フタル酸エステル以外のREACH規制対象とされていない電子供与性化合物を含む固体触媒成分であって、フタル酸エステルを電子供与性化合物として用いた場合と比較して、オレフィン類の重合活性が同等であるとともに、立体規則性が高く分子量分布が広い重合体を製造し得るオレフィン重合用固体触媒成分を提供するとともに、係るオレフィン類重合用固体触媒成分を用いたオレフィン重合用触媒及びオレフィン類重合体の製造方法を提供することを目的とするものである。
上記技術課題を解決すべく、本発明者等が鋭意検討を重ねた結果、マグネシウム原子、チタン原子、ハロゲン原子、特定のエステル化合物(A)および特定のジエステル化合物(B)を含み、エステル化合物(A)の含有量が、ジエステル化合物(B)の含有量に対し、特定の量比関係にあるオレフィン類重合用固体触媒成分により、上記技術課題を解決し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(i)マグネシウム原子、チタン原子、ハロゲン原子、下記一般式(1);
−O−C(=O)−CR−CR−O−R (1)
(式中、RおよびRは、炭素数1〜24の炭化水素基であり互いに同一であっても異なっていてもよく、R〜Rは、水素原子または炭素数1〜24の炭化水素基であり互いに同一であっても異なっていてもよい)で表されるエステル化合物(A)および下記一般式(2);
(式中、RおよびRは、炭素数1〜24の炭化水素基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。RおよびR10は、水素原子または炭素数1〜24の炭化水素基であり互いに同一であっても異なっていてもよく、RおよびR10が結合して環を形成していてもよい)で表されるジエステル化合物(B)を含み、下記式
(エステル化合物(A)の含有量(質量%)/ジエステル化合物(B)の含有量(質量%))
で表される比が、0.01〜75である
ことを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分、
(ii)前記R〜R10を構成する炭素数1〜24の炭化水素基の少なくとも一つが、炭素数1〜24の直鎖状アルキル基、炭素数3〜24の分岐鎖状アルキル基、ビニル基、炭素数3〜20の直鎖状アルケニル基、炭素数3〜20の分岐鎖状アルケニル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルケニル基および炭素数6〜20の芳香族炭化水素基から選ばれる基である上記(i)に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分、
(iii)前記R、R、R、RおよびR10の少なくとも一つが水素原子である上記(i)または(ii)に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分、
(iv)前記RおよびR10が結合して環を形成している上記(i)〜(iii)のいずれかに記載のオレフィン類重合用固体触媒成分、
(v)(I)上記(i)〜(iv)のいずれか1項に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分、
(II)下記一般式(3);
11 AlQ3−p (3)
(式中、R11は炭素数1〜6のアルキル基であり、Qは水素原子あるいはハロゲンであり、pは0<p≦3の実数で、R11が複数存在する場合、各R11は互いに同一であっても異なっていてもよく、Qが複数存在する場合各Qは互いに同一であっても異なっていてもよい。)で表わされる有機アルミニウム化合物、および
(III)外部電子供与性化合物
を含むことを特徴とするオレフィン類重合用触媒、
(vi)前記(III)外部電子供与性化合物が、下記一般式(4);
12 Si(OR134−q (4)
(式中、R12は、炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、炭素数3〜12の分岐鎖状アルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基および炭素数6〜12の芳香族炭化水素基から選ばれるいずれか一種の基であり、qは0≦q≦3の整数で、qが2以上の場合、複数のR12は互いに同一であっても異なっていてもよい。R13は、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基、炭素数3〜4の分岐鎖状アルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基および炭素数6〜12の芳香族炭化水素基から選ばれるいずれか一種の基を示し、R13が複数存在する場合、複数のR13は互いに同一であっても異なっていてもよい。)および
下記一般式(5);
(R1415N)SiR16 4−s (5)
(式中、R14およびR15は、水素原子、炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、炭素数3〜12の分岐鎖状アルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基および炭素数6〜12の芳香族炭化水素基から選ばれるいずれか一種の基であり、R14およびR15は互いに同一であっても異なっていてもよく、また、R1415N基が複数存在する場合、複数のR1415N基は互いに同一であっても異なっていてもよく、R14およびR15が互いに結合して環を形成していてもよい。R16は、炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、炭素数3〜12の分岐鎖状アルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、炭素数1〜12の直鎖アルコキシ基、炭素数3〜12の分岐鎖状アルコキシ基、ビニルオキシ基、炭素数3〜12のアリロキシ基および炭素数6〜12のアリールオキシ基から選ばれるいずれか一種の基であり、R16が複数存在する場合、複数のR16は互いに同一であっても異なっていてもよい。sは1〜3の整数である。)で表される有機ケイ素化合物から選ばれる一種以上である上記(v)に記載のオレフィン類重合用触媒、
(vii)前記(III)外部電子供与性化合物が、下記一般式(6);
171819COCH(R2324C)CHOCR202122(6)
(式中、R17〜R22は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基、炭素数3〜6の分岐鎖状アルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基およびフェニル基から選ばれるいずれか一種であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。R23およびR24は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基、炭素数3〜6の分岐鎖状アルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基およびフェニル基から選ばれるいずれか一種であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、またR23およびR24が互いに結合して環を形成していてもよい。)で表わされるジエーテル類である上記(v)に記載のオレフィン類重合用触媒、
(viii)前記有機ケイ素化合物が、フェニルトリメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソプロピルイソブチルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、t−ブチルメチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(エチルアミノ)ジシクロヘキシルシラン、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシランおよびジエチルアミノトリエトキシシランから選ばれる一種以上である上記(vi)に記載のオレフィン類重合用触媒、
(ix)前記ジエーテル類が、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパンおよび9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンから選ばれる一種以上である上記(vii)に記載のオレフィン類重合用触媒、および
(x)上記(v)〜(ix)のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒の存在下にオレフィン類の重合を行うことを特徴とするオレフィン類重合体の製造方法
を提供するものである。
本発明によれば、フタル酸エステル以外の電子供与性化合物を含む固体触媒成分であって、フタル酸エステルを電子供与性化合物として用いた場合と比較して、オレフィン類の重合活性が同等であるとともに、得られる重合体の立体規則性が高く分子量分布が広いオレフィン重合用固体触媒成分を提供するとともに、係るオレフィン類重合用固体触媒成分を用いたオレフィン重合用触媒及びオレフィン類重合体の製造方法を提供することができる。
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、マグネシウム原子、チタン原子、ハロゲン原子、下記一般式(1);
−O−C(=O)−CR−CR−O−R (1)
(式中、RおよびRは、炭素数1〜24の炭化水素基であり互いに同一であっても異なっていてもよく、R〜Rは、水素原子または炭素数1〜24の炭化水素基であり互いに同一であっても異なっていてもよい)で表されるエステル化合物(A)および下記一般式(2);
(式中、RおよびRは、炭素数1〜24の炭化水素基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。RとR10は水素原子または炭素数1〜24の炭化水素基であり互いに同一であっても異なっていてもよく、RおよびR10が結合して環を形成していてもよい)で表されるジエステル化合物(B)を含み、下記式
(エステル化合物(A)の含有量(質量%)/ジエステル化合物(B)の含有量(質量%))
で表される比が、0.01〜75である
ことを特徴とするものである。
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分に含まれるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子から選ばれる一種以上が好ましく、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子から選ばれる一種以上がより好ましく、塩素原子およびヨウ素原子から選ばれる一種以上がさらに好ましい。
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分は、下記一般式(1);
−O−C(=O)−CR−CR−O−R (1)
(式中、RおよびRは、炭素数1〜24の炭化水素基であり互いに同一であっても異なっていてもよく、R〜Rは、水素原子または炭素数1〜24の炭化水素基であり互いに同一であっても異なっていてもよい)で表されるエステル化合物(A)を含む。
上記一般式(1)で表されるエステル化合物(A)において、上記R〜Rを構成する炭素数1〜24の炭化水素基の少なくともひとつが、炭素数1〜24の直鎖状アルキル基、炭素数3〜24の分岐鎖状アルキル基、ビニル基、炭素数3〜20の直鎖状アルケニル基、炭素数3〜20の分岐鎖状アルケニル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルケニル基および炭素数6〜20の芳香族炭化水素基から選ばれる基であることが好ましい。
上記直鎖状アルキル基としては、炭素数1〜24のものから選ばれる任意のものを挙げることができ、炭素数1〜12であるものが好ましく、炭素数1〜6であるものがより好ましく、上記直鎖状アルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等から選ばれる一種以上が挙げられる。
上記分岐鎖状アルキル基としては、炭素数3〜24のものから選ばれる任意のものを挙げることができ、炭素数3〜12であるものが好ましく、炭素数3〜6であるものがより好ましく、上記分岐鎖状アルキル基として、具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの2級炭素または3級炭素を有するアルキル基から選ばれる一種以上が挙げられる。
上記直鎖状アルケニル基としては、炭素数3〜20のものから選ばれる任意のものを挙げることができ、炭素数3〜12であるものが好ましく、炭素数3〜6であるものがより好ましく、特に好ましくは上記直鎖状アルケニル基として、具体的には、n−プロペニル基、n−ブテニル基、n−ペンテニル基、n−ヘキセニル基、n−ヘプテニル基、n−オクテニル基、n−ノネニル基、n−デセニル基等から選ばれる一種以上である。
上記分岐鎖状アルケニル基としては、炭素数3〜20のものから選ばれる任意のものを挙げることができ、炭素数3〜12であるものが好ましく、炭素数3〜6であるものがより好ましい。
上記分岐鎖状アルケニル基として、具体的には、イソプロペニル基、イソブテニル基、t−ブテニル基、イソペンテニル基、ネオペンテニル基等の2級炭素または3級炭素を有するアルケニル基から選ばれる一種以上が挙げられる。
上記シクロアルキル基としては、炭素数3〜20のものから選ばれる任意のものを挙げることができ、炭素数3〜12であるものが好ましく、炭素数5〜6であるものがより好ましい。
上記シクロアルキル基として、具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等から選ばれる一種以上が挙げられる。
上記シクロアルケニル基としては、炭素数3〜20のものから選ばれる任意のものを挙げることができ、炭素数3〜12であるものが好ましく、炭素数5〜6であるものがより好ましい。
上記シクロアルケニル基として、具体的には、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、シクロノネニル基、シクロデセニル基等から選ばれる一種以上が挙げられる。
上記芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜20のものから選ばれる任意のものを挙げることができ、炭素数6〜12であるものが好ましく、炭素数6〜10であるものがより好ましい。
上記芳香族炭化水素基として、具体的には、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基、1−フェニルブチル基、4−フェニルブチル基、2−フェニルヘプチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等から選ばれる一種以上が挙げられる。
上記一般式(1)で表されるエステル化合物(A)において、RおよびRは、1〜24の炭化水素基であり、互いに同一であっても異なっていてもよいが、少なくともいずれか一方が、炭素数1〜10の直鎖状アルキル基または炭素数3〜8の分岐鎖状アルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基または炭素数3〜4の分岐鎖状アルキル基であることがより好ましい。
上記一般式(1)で表されるエステル化合物(A)において、R〜Rは、水素原子または炭素数1〜24の炭化水素基であり、互いに同一であっても異なっていてもよいが、少なくともいずれか一方が、水素原子、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基、炭素数3〜6の分岐鎖状アルキル基、ビニル基、炭素数3〜6の直鎖状アルケニル基、炭素数3〜6の分岐鎖状アルケニル基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、炭素数5〜6のシクロアルケニル基または炭素数6〜10の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
また、上記一般式(1)で表されるエステル化合物(A)において、R〜Rの少なくとも一つが水素原子であることが好ましく、R〜Rの全てが水素原子であることがより好ましい。
上記一般式(1)で表されるエステル化合物(A)として、具体的には、3−エトキシ−2−フェニルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−トリルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−メシチルプロピオン酸エチル、3−ブトキシ−2−(メトキシフェニル)プロピオン酸エチル、3−イソプロポキシ−3−フェニルプロピオン酸メチル、3−エトキシ−3−フェニルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−3−tert−ブチルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−3−アダマンチルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−イソプロピルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−tert−ブチルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−tert−アミノプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−アダマンチルプロピオン酸エチル、3−エトキシ-2-ビシクロ〔2,2,1〕ヘプチルプロピオン酸エチル、2−エトキシ-シクロヘキサンカルボン酸エチル、2−(エトキシメチル)−シクロヘキサンカルボン酸メチル、3−エトキシ・ノルボルナン−2−カルボン酸メチル等が挙げられ、特に好ましくは、3−エトキシ−2−フェニルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−イソプロピルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−tert−ブチルプロピオン酸エチルおよび3−エトキシ−3−tert−ブチルプロピオン酸エチルから選ばれる一種以上が挙げられる。
また、本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分は、下記一般式(2);
(式中、RおよびRは、炭素数1〜24の炭化水素基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。RおよびR10は、水素原子または炭素数1〜24の炭化水素基であり互いに同一であっても異なっていてもよく、RおよびR10が結合して環を形成していてもよい)で表されるジエステル化合物(B)を含む。
上記一般式(2)で表されるジエステル化合物(B)において、上記R〜R10を構成する炭素数1〜24の炭化水素基の少なくとも一つが、炭素数1〜24の直鎖状アルキル基、炭素数3〜24の分岐鎖状アルキル基、ビニル基、炭素数3〜20の直鎖状アルケニル基、炭素数3〜20の分岐鎖状アルケニル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルケニル基から選ばれる基であることが好ましい。
上記一般式(2)で表されるジエステル化合物(B)において、炭素数1〜24の直鎖状アルキル基、炭素数3〜24の分岐鎖状アルキル基、ビニル基、炭素数3〜20の直鎖状アルケニル基、炭素数3〜20の分岐鎖状アルケニル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルケニル基および炭素数6〜20の芳香族炭化水素基としては、上記一般式(1)で表されるエステル化合物(A)の説明で挙げたものと同様のものを挙げることができる。
上記一般式(2)で表されるジエステル化合物(B)において、RおよびR10は、炭素数1〜24の炭化水素基であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、RおよびR10が結合して環構造を形成していてもよいが、炭素数4〜24のシクロアルケニル環を形成していることが好ましく、炭素数5〜12のシクロアルケニル環であることがより好ましい。
また、RおよびR10が結合して環構造を形成した炭素数5〜12のシクロアルケニル環であって、シクロアルケニル環中に不飽和結合を複数有するものであってもよい。
上記一般式(2)で表されるジエステル化合物(B)のうち、RおよびR10が炭素数1〜24の炭化水素基であるものとしては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジ-n-プロピル、マレイン酸ジ−iso−プロピル、およびマレイン酸ジ−n−ブチルから選ばれる一種以上が特に好ましい。
また、RおよびR10が結合して炭素数5〜12の環構造を形成しているものとしては、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−プロピル、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ−iso−プロピルおよび1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−ブチルから選ばれる一種以上が特に好ましい。
さらに、RおよびR10が結合して環構造を形成した炭素数5〜12のシクロアルケニル環であって、シクロアルケニル環中に不飽和結合を複数有するものとしては、1、3−シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、1、3−シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、1、4−シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、および1、4−シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボン酸ジエチルから選ばれる一種以上が特に好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分(I)は、電子供与性化合物として、上記一般式(1)で表されるエステル化合物(A)および上記一般式(2)で表されるジエステル化合物(B)を必須成分として含むが、これ等の電子供与性化合物以外に、更に電子供与性化合物(以下、適宜、「電子供与性化合物(D)」と称する。)を含んでいてもよい。
このような電子供与性化合物(D)としては、酸ハライド類、酸アミド類、ニトリル類、酸無水物、ジエーテル化合物類および一般式(2)で表されるジエステル化合物(B)以外のカルボン酸エステル類等が挙げられる。
上記電子供与性化合物(D)として、具体的には、コハク酸ジエステル、シクロアルカンジカルボン酸ジエステル、シクロアルケンジカルボン酸ジエステル、マロン酸ジエステル、アルキル置換マロン酸ジエステル、マレイン酸ジエステル等のカルボン酸ジエステルや、ジエーテル化合物等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
上記電子供与性化合物(D)としては、ジイソプロピルコハク酸ジエチルなどのコハク酸ジエステル、ジイソブチルマロン酸ジメチル、ジイソブチルマロン酸ジエチル等のジアルキルマロン酸ジエステル、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジメチル等のシクロアルカンジカルボン酸ジエステルおよび、(イソプロピル)(イソペンチル)-1,3-ジメトキシプロパン、9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレン等の1,3−ジエーテルから選ばれる一種以上がより好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、上記一般式(1)で表されるエステル化合物(A)および上記一般式(2)で表されるジエステル化合物(B)とともに、上記電子供与性化合物(D)を有するものであることにより、重合時に得られるオレフィン類重合体の立体規則性を容易に向上させることができ、また、分子量分布や水素応答性を、従来のフタル酸エステルを電子供与体として含む固体触媒を用いて製造した重合体と同等の範囲に容易にコントロールすることができる。
このように、本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、複数の電子供与性化合物を含むものであってもよいが、下記式
{(エステル化合物(A)の含有量(g)+ジエステル化合物(B)の含有量(g))/電子供与性化合物の全含有量(g))}×100
で示される、電子供与性化合物の全含有量に占める上記一般式(1)で表されるエステル化合物(A)および上記一般式(2)で表されるジエステル化合物(B)の合計含有量の割合が、50〜100質量%であることが好ましく、80〜100質量%であることがより好ましく、90〜100質量%であることがさらに好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分が、電子供与性化合物の全含有量に占める上記一般式(1)で表されるエステル化合物(A)および上記一般式(2)で表されるジエステル化合物(B)の合計含有割合が上記範囲内にあることにより、オレフィン類の重合活性に優れ、得られる重合体の立体規則性が高く分子量分布が広いオレフィン類重合用固体触媒成分を容易に提供することができる。
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、上記一般式(1)で表されるエステル化合物(A)および上記一般式(2)で表されるジエステル化合物(B)を、下記式
(エステル化合物(A)の含有量(質量%)/ジエステル化合物(B)の含有量(質量%))
で表される比が、0.01〜75となるように含むものであり、0.02〜55となるように含むものであることが好ましく、0.04〜25となるように含むものであることがより好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、上記一般式(1)で表されるエステル化合物(A)および上記一般式(2)で表されるジエステル化合物(B)を、上記比で含むものであることにより、オレフィン類の重合活性に特に優れ、得られる重合体の立体規則性が高く分子量分布が広いオレフィン類重合用固体触媒成分を提供することができる。
本発明におけるオレフィン類重合用固体触媒成分は、ポリシロキサン(以下、適宜、「ポリシロキサン(E)」と称する。)を含むものであってもよい。
本発明におけるオレフィン類重合用固体触媒成分が、ポリシロキサン(E)を含むものであることにより、オレフィン類を重合したときに、得られる重合体の立体規則性あるいは結晶性を容易に向上させることができ、さらには生成ポリマーの微粉を容易に低減することができる。
ポリシロキサンは、主鎖にシロキサン結合(−Si−O−結合)を有する重合体であるが、シリコーンオイルとも称され、25℃における粘度が0.02〜100cm/s(2〜10000センチストークス)、より好ましくは0.03〜5cm/s(3〜500センチストークス)を有する、常温で液状あるいは粘稠状の鎖状、部分水素化、環状あるいは変性ポリシロキサンである。
鎖状ポリシロキサンとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが、部分水素化ポリシロキサンとしては、水素化率10〜80%のメチルハイドロジェンポリシロキサンが、環状ポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサンおよび2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンから選ばれる一種以上が挙げられる。
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、マグネシウム化合物(C)、チタンハロゲン化合物(F)、上記一般式(1)で表されるエステル化合物(A)および上記一般式(2)で表されるジエステル化合物(B)を含むもの、すなわちこれ等化合物の相互接触により得られるものであることが好ましい。
上記マグネシウム化合物(C)としては、ジハロゲン化マグネシウム、ジアルキルマグネシウム、ハロゲン化アルキルマグネシウム、ジアルコキシマグネシウム、ジアリールオキシマグネシウム、ハロゲン化アルコキシマグネシウムあるいは脂肪酸マグネシウム等から選ばれる一種以上が挙げられる。
これらのマグネシウム化合物の中、ジハロゲン化マグネシウム、ジハロゲン化マグネシウムとジアルコキシマグネシウムの混合物、ジアルコキシマグネシウムが好ましく、特にジアルコキシマグネシウムが好ましく、具体的にはジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネシウムおよびブトキシエトキシマグネシウム等から選ばれる一種以上が挙げられ、これらのうち、ジエトキシマグネシウムが特に好ましい。
また、上記ジアルコキシマグネシウムは、金属マグネシウムを、ハロゲン含有有機金属等の存在下にアルコールと反応させて得たものであってもよい。
さらに、上記ジアルコキシマグネシウムとしては、顆粒状または粉末状であり、その形状は不定形あるいは球状のものであってもよい。例えば球状のジアルコキシマグネシウムを使用した場合、より良好な粒子形状と狭い粒度分布を有する重合体粉末が得られ易く、重合操作時の生成重合体粉末の取り扱い操作性が向上し、生成重合体粉末に含まれる微粉に起因する重合体の分離装置におけるフィルターの閉塞等の問題が容易に解決される。上記ジアルコキシマグネシウムは、単独あるいは2種以上併用することもできる。
上記の如き球状のジアルコキシマグネシウムを製造する方法は、例えば、特開昭58−4132号公報、特開昭62−51633号公報、特開平3−74341号公報、特開平4−368391号公報、特開平8−73388号公報等に例示されている。
上記マグネシウム化合物(C)としては、溶液状のマグネシウム化合物、またはマグネシウム化合物懸濁液のいずれであってもよい。マグネシウム化合物(C)が固体である場合には、マグネシウム化合物(C)の可溶化能を有する溶媒に溶解して溶液状のマグネシウム化合物とするか、マグネシウム化合物(C)の可溶化能を有さない溶媒に懸濁してマグネシウム化合物懸濁液として用いる。マグネシウム化合物(C)が液体である場合には、そのまま溶液状のマグネシウム化合物として用いることができ、マグネシウム化合物の可溶化能を有する溶媒にこれを溶解して溶液状のマグネシウム化合物として用いることもできる。
上記チタンハロゲン化合物(F)としては、特に制限されないが、チタンテトラハライドおよびアルコキシチタンハライド等から選ばれる一種以上を挙げることができる。チタンハロゲン化合物(F)としては、一般式Ti(OR254−i(式中、R25は炭素数1〜10の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、Xが複数存在する場合、各Xは同一であっても異なっていてもよく、iは0〜4の整数である。)で表されるチタンテトラハライドもしくはアルコキシチタンハライド群から選択される一種の化合物であることが好ましい。
チタンハロゲン化合物(F)として、具体的には、チタンテトラフルオライド、チタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラアイオダイド等のチタンテトラハライド、アルコキシチタンハライドとしてメトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、プロポキシチタントリクロライド、n−ブトキシチタントリクロライド等のアルコキシチタントリハライド、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジプロポキシチタンジクロライド、ジ−n−ブトキシチタンジクロライド等のジアルコキシチタンジハライド、トリメトキシチタンクロライド、トリエトキシチタンクロライド、トリプロポキシチタンクロライド、トリ−n−ブトキシチタンクロライド等のトリアルコキシチタンハライド等から選ばれる一種以上が挙げられる。
これらの中ではハロゲン含有チタン化合物が好ましく用いられ、チタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラアイオダイド等のチタンテトラハライドが好ましく、チタンテトラクロライドがより好ましい。これ等のチタン化合物は、炭化水素化合物あるいはハロゲン化炭化水素化合物等に希釈して使用してもよい。
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、必要に応じて、上記チタンハロゲン化合物(F)以外のハロゲン化合物を接触してなるものであってもよい。このようなハロゲン化合物としては、四価のハロゲン含有ケイ素化合物が挙げることができ、より具体的には、テトラクロロシラン(四塩化ケイ素)、テトラブロモシラン等のシランテトラハライド、メトキシトリクロロシラン、エトキシトリクロロシラン、プロポキシトリクロロシラン、n−ブトキシトリクロロシラン、ジメトキシジクロロシラン、ジエトキシジクロロシラン、ジプロポキシジクロロシラン、ジ−n−ブトキシジクロロシラン、トリメトキシクロロシラン、トリエトキシクロロシラン、トリプロポキシクロロシラン、トリ−n−ブトキシクロロシラン等のアルコキシ基含有ハロゲン化シラン等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、上記マグネシウム化合物(C)、チタンハロゲン化合物(F)、上記一般式(1)で表されるエステル化合物(A)および一般式(2)で表されるジエステル化合物(B)を、不活性有機溶媒の存在下に接触させることによって調製してなるものであることが好ましい。
本発明において、上記不活性有機溶媒としては、チタンハロゲン化合物(F)を溶解し、かつマグネシウム化合物(C)は溶解しないものが好ましく、具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、1,2−ジエチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキセン、デカリン、ミネラルオイル等の飽和炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素化合物、オルトジクロルベンゼン、塩化メチレン、1,2−ジクロロベンゼン、四塩化炭素、ジクロルエタン等のハロゲン化炭化水素化合物等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
上記不活性有機溶媒としては、沸点が50〜200℃程度の、常温で液状の飽和炭化水素化合物あるいは芳香族炭化水素化合物が好ましく用いられ、中でも、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、エチルシクロヘキサン、ミネラルオイル、トルエン、キシレン、エチルベンゼンから選ばれる一種以上が好ましく、特に好ましくは、ヘキサン、ヘプタン、エチルシクロヘキサンおよびトルエンから選ばれるいずれか一種以上である。
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分を調製する方法としては、例えば、還元性を有さない固体マグネシウム化合物、エステル化合物(A)、ジエステル化合物(B)およびハロゲン化チタンを共粉砕する方法や、アルコール等の付加物を有するハロゲン化マグネシウム化合物、エステル化合物(A)、ジエステル化合物(B)およびハロゲン化チタンを不活性炭化水素溶媒の共存下、接触させる方法や、ジアルコキシマグネシウム、エステル化合物(A)、ジエステル化合物(B)およびハロゲン化チタンを不活性炭化水素溶媒共存下で接触させる方法や、還元性を有するマグネシウム化合物、エステル化合物(A)、ジエステル化合物(B)およびハロゲン化チタンを接触させて固体触媒を析出させる方法等を挙げることができる。
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の調製方法としては、例えば、マグネシウム化合物(C)、チタンハロゲン化合物(F)、エステル化合物(A)およびジエステル化合物(B)を炭化水素溶媒に懸濁し、加熱しながら所定時間接触させた後、得られた懸濁液にさらにチタンハロゲン化合物(F)を加え、加熱しながら接触させて固体生成物を得、当該固体生成物を炭化水素溶媒で洗浄することにより目的とするオレフィン類重合用固体触媒成分を得る方法を挙げることができる。
上記加熱温度は、70〜150℃が好ましく、80〜120℃がより好ましく、90〜110℃がさらに好ましい。
上記加熱時間は、30〜240分間が好ましく、60〜180分間がより好ましく、60〜120分間がさらに好ましい。
上記懸濁液に対するチタンハロゲン化合物(F)の添加回数は特に制限されない。
上記懸濁液に対しチタンハロゲン化合物(F)を複数回添加した場合には、各加熱温度が上記範囲内になるように、また各添加毎の加熱時間が上記範囲内となるようにすればよい。
なお、上記調製方法において、エステル化合物(A)およびジエステル化合物(B)に加え、これ等以外の電子供与性化合物を併用してもよい。さらに、上記接触は、例えば、ケイ素、リン、アルミニウム等の他の反応試剤や界面活性剤の共存下に行ってもよい。
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分中に含まれる、チタン原子、マグネシウム原子、ハロゲン原子、一般式(1)で表されるエステル化合物(A)、一般式(2)で表されるジエステル化合物(B)の含有量は、(エステル化合物(A)の含有量(質量%)/ジエステル化合物(B)の含有量(質量%))で表される比が、上記範囲内になるように含むものであれば、特に制限されない。
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、上記含有量比の範囲内において、エステル化合物(A)を、0.05〜25質量%含むものが好ましく、0.1〜20質量%含むものがより好ましく、0.2〜15質量%含むものがさらに好ましい。
また、本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、上記含有量比の範囲内において、ジエステル化合物(B)を、0.05〜25質量%含むものが好ましく、0.1〜20質量%含むものがより好ましく、0.2〜15質量%含むものがさらに好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、チタン原子を、0.1〜10質量%含むものが好ましく、0.5〜8.0質量%含むものがより好ましく、1.0〜8.0質量%含むものがさらに好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、マグネシウム原子を、10〜70質量%含むものが好ましく、10〜50質量%含むものがより好ましく、15〜40質量%含むものがさらに好ましく、15〜25質量%含むものが一層好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分は、ハロゲン原子を、20〜90質量%含むものが好ましく、30〜85質量%含むものがより好ましく、40〜80質量%含むものがさらに好ましく、45〜75質量%含むものが一層好ましい。
本出願書類において、オレフィン類重合用固体触媒成分中に含まれるチタン原子の含有率およびマグネシウム原子の含有率は、JIS 8311−1997「チタン鉱石中のチタン定量方法」に記載の方法(酸化還元滴定)に準じて測定した値を意味する。
また、本出願書類において、オレフィン類重合用固体触媒成分中に含まれるハロゲン原子の含有量は、固体触媒成分を硫酸と純水の混合溶液で処理して水溶液とした後、所定量を分取し、硝酸銀標準溶液でハロゲン原子を滴定する硝酸銀滴定法によって測定した値を意味する。
さらに、本出願書類において、オレフィン類重合用固体触媒成分中に含まれるエステル化合物(A)やジエステル化合物(B)等の電子供与体化合物の含有率は、固体触媒を加水分解した後、芳香族溶剤を用いて内部電子供与体を抽出し、この溶液をガスクロマトグラフィーFID(Flame Ionization Detector、水素炎イオン化型検出器)法によって測定した値を意味する。
本発明によれば、フタル酸エステル以外の電子供与性化合物を含む固体触媒成分であって、フタル酸エステルを電子供与性化合物として用いた場合と比較して、オレフィン類の重合活性が同等であるとともに、立体規則性が高く、かつ広い分子量分布を有する重合体を得ることができるオレフィン重合用固体触媒成分を提供することができる。
次に、本発明に係るオレフィン類重合用触媒について説明する。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、
(I)本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分、
(II)下記一般式(3);
11 AlQ3−p (3)
(式中、R11は炭素数1〜6のアルキル基であり、Qは水素原子あるいはハロゲン原子であり、pは0<p≦3の実数であって、R11が複数存在する場合各R11は互いに同一であっても異なっていてもよく、Qが複数存在する場合各Qは互いに同一であっても異なっていてもよい。)で表わされる有機アルミニウム化合物、および
(III)外部電子供与性化合物
を含むことを特徴とするものである。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒を構成する(I)本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分の詳細は、上述したとおりである。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、(II)有機アルミニウム化合物は、下記一般式(3);
11 AlQ3−p (3)
(式中、R11は炭素数1〜6のアルキル基であり、Qは水素原子あるいはハロゲン原子であり、pは0<p≦3の実数であって、R11が複数存在する場合各R11は互いに同一であっても異なっていてもよく、Qが複数存在する場合各Qは互いに同一であっても異なっていてもよい。)で表わされるものである。
このような(II)有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド等のハロゲン化アルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムハイドライド等から選ばれる一種以上が挙げられ、ジエチルアルミニウムクロライド等のハロゲン化アルキルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム等から選ばれる一種以上が好ましく、トリエチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムから選ばれる一種以上がより好ましい。
本発明のオレフィン類重合用触媒を構成する(III)外部電子供与性化合物としては、酸素原子あるいは窒素原子を含有する有機化合物から選ばれる一種以上が挙げられる。
上記のごとき外部電子供与性化合物として上述した一般式(1)で表されるエステル化合物(A)や一般式(2)で表されるジエステル化合物(B)を用いることができ、その他、例えば、アルコール類、フェノール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、酸ハライド類、アルデヒド類、アミン類、アミド類、ニトリル類イソシアネート類、Si−O−C結合もしくはSi−N−C結合を有する有機ケイ素化合物をはじめとする有機ケイ素化合物等から選ばれる一種以上を挙げることができ、安息香酸エチル、p−メトキシ安息香酸エチル、p−エトキシ安息香酸エチル、p−トルイル酸メチル、p−トルイル酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル等のエステル類、1,3−ジエーテル化合物および有機ケイ素化合物から選ばれる一種以上がより好ましく、1,3−ジエーテル化合物、Si−O−C結合を有するアルコキシシラン化合物およびSi−N−C結合を有するアミノシラン化合物から選ばれる一種以上がより好ましい。
上記(III)外部電子供与性化合物としては、下記一般式(4);
12 Si(OR134−q (4)
(式中、R12は、炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、炭素数3〜12の分岐鎖状アルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基および炭素数6〜12の芳香族炭化水素基から選ばれるいずれか一種の基であり、qは0≦q≦3の整数で、qが2以上の場合、複数のR12は互いに同一であっても異なっていてもよい。R13は、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基、炭素数3〜4の分岐鎖状アルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基および炭素数6〜12の芳香族炭化水素基から選ばれるいずれか一種の基を示し、R13が複数存在する場合、複数のR13は互いに同一であっても異なっていてもよい。)で表される有機ケイ素化合物(Si−O−C結合を有するアルコキシシラン化合物)から選ばれる一種以上を挙げることができる。
また、上記(III)外部電子供与性化合物としては、下記一般式(5);
(R1415N)SiR16 4−s (5)
(式中、R14およびR15は、水素原子、炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、炭素数3〜12の分岐鎖状アルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基および炭素数6〜12の芳香族炭化水素基から選ばれるいずれか一種の基であり、R14およびR15は互いに同一であっても異なっていてもよく、また、R1415N基が複数存在する場合、複数のR1415N基は互いに同一であっても異なっていてもよく、R14およびR15が互いに結合して環を形成していてもよい。R16は、炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、炭素数3〜12の分岐鎖状アルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、炭素数1〜12の直鎖アルコキシ基、炭素数3〜12の分岐鎖状アルコキシ基、ビニルオキシ基、炭素数3〜12のアリロキシ基および炭素数6〜12のアリールオキシ基から選ばれるいずれか一種の基であり、R16が複数存在する場合、複数のR16は互いに同一であっても異なっていてもよい。sは1〜3の整数である。)で表される有機ケイ素化合物(Si−N−C結合を有するアミノシラン化合物)から選ばれる一種以上を挙げることができる。
このような有機ケイ素化合物として、具体的には、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、アルキル(シクロアルキル)アルコキシシラン、(アルキルアミノ)アルコキシシラン、アルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン、シクロアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、テトラキス(アルキルアミノ)シラン、アルキルトリス(アルキルアミノ)シラン、ジアルキルビス(アルキルアミノ)シラン、トリアルキル(アルキルアミノ)シラン等を挙げることができ、具体的には、フェニルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソプロピルイソブチルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ビス(エチルアミノ)メチルエチルシラン、t−ブチルメチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(エチルアミノ)ジシクロヘキシルシラン、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(メ
チルアミノ)(メチルシクロペンチルアミノ)メチルシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ビス(シクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロキノリノ)ジメトキシシラン、エチル(イソキノリノ)ジメトキシシラン等が挙げられ、中でも、フェニルトリメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソプロピルイソブチルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、t−ブチルメチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(エチルアミノ)ジシクロヘキシルシラン、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシランおよびジエチルアミノトリエトキシシラン等から選ばれる一種以上が好ましい。
上記有機ケイ素化合物のうち、フェニルトリメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソプロピルイソブチルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、t−ブチルメチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(エチルアミノ)ジシクロヘキシルシラン、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシランおよびジエチルアミノトリエトキシシランから選ばれる一種以上がより好ましい。
また、上記(III)外部電子供与性化合物としては、下記一般式(6);
171819COCH(R2324C)CHOCR202122 (6)
(式中、R17〜R22は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基、炭素数3〜6の分岐鎖状アルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、フェニル基のいずれかで、互いに同一であっても異なっていてもよい。R23およびR24は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基、炭素数3〜6の分岐鎖状アルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、フェニル基のいずれかで、互いに同一であっても異なっていてもよく、またR23とR24が互いに結合して環を形成していてもよい。)で表わされるジエーテル類(1,3−ジエーテル化合物)から選ばれる一種以上を挙げることができる。
上記一般式(6)で表されるジエーテル化合物として、具体的には、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)1,3−ジメトキシプロパンおよび9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン等から選ばれる一種以上が好ましく、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン等から選ばれる一種以上がより好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒においては、(III)外部電子供与性化合物が、上記一般式(4)で表される有機ケイ素化合物、一般式(5)で表される有機ケイ素化合物および上記一般式(6)で表されるジエーテル化合物から選ばれる一種以上であることが好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、(I)本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分、(II)一般式(3)で表わされる有機アルミニウム化合物および(III)外部電子供与性化合物を含むもの、すなわちこれ等の接触物である。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、(I)本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分、(II)一般式(3)で表わされる有機アルミニウム化合物および(III)外部電子供与性化合物をオレフィン類不存在下で接触させることにより調製してなるものであってもよいし、以下に記述するように、オレフィン類存在下で(重合系内で)接触させてなるものであってもよい。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒において、各成分の含有比は、本発明の効果に影響を及ぼすことのない限り任意であり、特に限定されるものではないが、通常、上記(I)オレフィン類重合用固体触媒成分中のチタン原子1モル当たり、上記(II)有機アルミニウム化合物を、1〜2000モル含むものであることが好ましく、50〜1000モル含むものであることがより好ましい。また、本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、上記(II)有機アルミニウム化合物1モル当たり、上記(III)外部電子供与性化合物を、0.002〜10モル含むものであることが好ましく、0.01〜2モル含むものであることがより好ましく、0.01〜0.5モル含むものであることがさらに好ましい。
本発明によれば、エステル化合物(A)やジエステル化合物(B)を一定の量比で含有することにより、エステル化合物(A)およびジエステル化合物(B)がその性能を発揮し易い最適な表面部位に選択的に吸着されて、2種類の内部電子供与性化合物の性能がいずれも効果的に発現され、かつ、これら2種類の内部電子供与性化合物が吸着した部位の活性点からは異なる成長速度で重合体が成長すると考えられる。
このため、本発明によれば、フタル酸エステル以外の電子供与性化合物を含有するにも拘わらず、フタル酸エステルを含有する場合と同等の重合活性を発揮し、得られる重合体の立体規則性が高く分子量分布も広いオレフィン重合用触媒を提供することができると考えられる。
次に、本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法について説明する。
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法は、本発明に係るオレフィン重合用触媒の存在下にオレフィン類の重合を行うことを特徴とするものである。
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法において、オレフィン類の重合は単独重合であってもよいし、共重合であってもよい。
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法において、重合対象となるオレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等から選ばれる一種以上を挙げることができ、中でもエチレン、プロピレンおよび1−ブテンから選ばれる一種以上が好適であり、プロピレンがより好適である。
上記オレフィン類がプロピレンである場合、プロピレンの単独重合であってもよいが、他のオレフィン類との共重合であってもよい。
プロピレンと共重合されるオレフィン類としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
本発明に係るオレフィン類重合用触媒がオレフィン類存在下に(重合系内で)調製してなるものである場合、各成分の使用量比は、本発明の効果に影響を及ぼすことのない限り任意であり、特に限定されるものではないが、通常、上述した(II)有機アルミニウム化合物を、上述した(I)オレフィン類重合用固体触媒成分中のチタン原子1モル当たり、1〜2000モル接触させることが好ましく、50〜1000モル接触させることがより好ましい。また、上述した(III)外部電子供与性化合物を、上記(II)有機アルミニウム化合物1モル当たり、0.002〜10モル接触させることが好ましく、0.01〜2モル接触させることがより好ましく、0.01〜0.5モル接触させることがさらに好ましい。
上記オレフィン類重合用触媒を構成する各成分の接触順序は任意であるが、重合系内にまず上記(II)有機アルミニウム化合物を装入し、次いで上記(III)外部電子供与性化合物を装入、接触させた後、上述した(I)オレフィン類重合用固体触媒成分を装入、接触させることが望ましい。
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法は、有機溶媒の存在下行ってもよいし不存在下で行ってもよい。
またプロピレン等のオレフィンモノマーは、気体および液体のいずれの状態でも用いることができる。重合温度は200℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、重合圧力は10MPa以下が好ましく、5MPa以下がより好ましい。また、オレフィン類の重合は、連続重合法、バッチ式重合法のいずれでも可能である。さらに、重合反応は一段で行なってもよいし、二段以上で行なってもよい。
加えて、本発明に係るオレフィン類重合用触媒を用いてオレフィン類を重合するにあたり(本重合とも称する)、触媒活性、立体規則性および生成する重合体の粒子性状等を一層改善させるために、本重合に先立ち予備重合を行うことが好ましく、予備重合の際には、本重合と同様のオレフィン類あるいはスチレン等のモノマーを用いることができる。
予備重合を行うに際して、上記オレフィン類重合用触媒を構成する各成分およびモノマー(オレフィン類)の接触順序は任意であるが、好ましくは、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内に、先ず(II)有機アルミニウム化合物を装入し、次いで(I)本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分を装入、接触させた後、プロピレン等のオレフィン類を単独で、またはプロピレン等のオレフィン類およびその他のオレフィン類を一種以上混合したものを接触させることが好ましい。
上記予備重合において、予備重合系内にさらに(III)外部電子供与性化合物を装入する場合、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内に、先ず(II)有機アルミニウム化合物を装入し、次いで(III)外部電子供与性化合物を装入、接触させ、更に(I)本発明に係るオレフィン類重合用固体触媒成分を接触させた後、プロピレン等のオレフィン類を単独で、またはプロピレン等のオレフィン類およびその他のオレフィン類を一種以上混合したものを接触させることが好ましい。
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法において、重合方法としては、シクロヘキサン、ヘプタン等の不活性炭化水素化合物の溶媒を使用するスラリー重合法、液化プロピレン等の溶媒を使用するバルク重合法、及び実質的に溶媒を使用しない気相重合法を挙げることができ、バルク重合法または気相重合法が好ましい。
本発明によれば、フタル酸エステル以外の電子供与性化合物を含む固体触媒成分であって、フタル酸エステルを電子供与性化合物として用いた場合と比較して、得られる重合体の立体規則性や分子量分布等の一次物性が同等なオレフィン類重合体の製造方法を提供することができる。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
(実施例1)
1.固体触媒成分の合成
攪拌装置を備え、窒素ガスで充分に置換された内容積500mlのフラスコに、ジエトキシマグネシウム10g(87.4ミリモル)、トルエン55ml、四塩化チタン30ml、3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチル3.6ミリモル(0.8g)、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエチル16.7ミリモル(3.7g)を加え、昇温して100℃とし、100℃の温度を保持した状態で90分反応させた。反応終了後、反応生成物を100℃のトルエン75mlで4回洗浄した。次に、新たに四塩化チタン10容量%のトルエン溶液100mlを加えて、100℃に昇温し、15分間攪拌して反応させ、反応終了後、生成物を100℃のトルエンで1回洗浄した。この操作をさらに2回行った後、40℃のn−ヘプタン75mlで6回洗浄して固体触媒成分を得た。
この固体触媒成分の固液を分離して、得られた固体分中の、チタン含有量、(エステル化合物(A)に相当する)3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチル含有量および(ジエステル化合物(B)に相当する)1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジエチル含有量を測定したところ、それぞれ、1.9質量%、0.6質量%、12.8質量%であった。また、(エステル化合物(A)の含有量(質量%)/ジエステル化合物(B)の含有量(質量%))から算出される含有量比は、0.04であった。
なお、固体分中のチタン含有量、3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチル含有量および1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエチル含有量は、下記のようにして測定した。
<固体分中のチタン含有量>
固体分中のチタン含有量は、JIS M 8301の方法に準じて測定した。
<固体分中の電子供与性化合物(エステル化合物(A)、ジエステル化合物(B))含有量>
電子供与体の含有量は、ガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製、GC−14B)を用いて以下の条件にて測定することで求めた。また、各成分のモル数については、ガスクロマトグラフィーの測定結果より、予め既知濃度において測定した検量線を用いて求めた。
(測定条件)
・カラム:パックドカラム(φ2.6×2.1m, Silicone SE-30 10%,Chromosorb WAW DMCS 80/100、ジーエルサイエンス(株)社製)
・検出器:FID(Flame Ionization Detector,水素炎イオン化型検出器)
・キャリアガス:ヘリウム、流量40ml/分
・測定温度:気化室280℃、カラム225℃、検出器280℃
2.重合触媒の形成および重合
窒素ガスで完全に置換された内容積2.0リットルの攪拌機付オートクレーブに、トリエチルアルミニウム1.32ミリモル、ジシクロペンチルジエトキシシラン(DCPDMS)0.13ミリモルおよび前記固体触媒成分をチタン原子として0.0026ミリモル装入し、重合用触媒を形成した。その後、水素ガス1.5リットル、液化プロピレン1.4リットルを装入し、20℃で5分間予備重合を行なった後に昇温し、70℃で1時間重合反応を行なった。このときの固体触媒成分1g当たりの重合活性、生成重合体中のp−キシレン可溶分の割合(XS)、生成重合体中のメルトフローレートの値を(MFR)、重合体の分子量分布(Mw/Mn)を以下の方法で測定した。結果を表1に示す。
<固体触媒成分1g当たりの重合活性>
固体触媒成分1g当たりの重合活性については、下記式により求めた。
重合活性(g−pp/g−触媒)=重合体の質量(g)/固体触媒成分の質量(g)
<重合体のキシレン可溶分(XS)>
攪拌装置を具備したフラスコ内に、4.0gの重合体(ポリプロピレン)と、200mlのp−キシレンを装入し、外部温度をキシレンの沸点以上(約150℃)とすることにより、フラスコ内部のp-キシレンの温度を沸点下(137〜138℃)に維持しつつ、2時間かけて重合体を溶解した。その後1時間かけて液温を23℃まで冷却し、不溶解成分と溶解成分とを濾過分別した。上記溶解成分の溶液を採取し、加熱減圧乾燥によりp−キシレンを留去し、得られた残留物をキシレン可溶分(XS)とし、その質量を重合体(ポリプロピレン)に対する相対値(質量%)で求めた。
<重合体の溶融流れ性(MFR)>
重合体の溶融流れ性を示すメルトフローレート(MFR)は、ASTM D 1238、JIS K 7210に準じて測定した。
<重合体の分子量分布>
重合体の分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(Waters社製GPCV2000)にて以下の条件で測定して求めた質量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの比Mw/Mnによって評価した。
溶媒:o−ジクロロベンゼン(ODCB)
温度:140℃(SEC)
カラム:Shodex GPC UT−806M
サンプル濃度:1g/liter−ODCB(50mg/50ml−ODCB)
注入量:0.5ml
流量:1.0ml/min
(実施例2)
実施例1の「1.固体触媒成分の合成」において、3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチル3.6ミリモルに代えて15.5ミリモルを用い、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエチル16.7ミリモルに代えて4.0ミリモルを用いた以外は、実施例1と同様にして固体触媒成分を調製した。
得られた固体状の固体触媒成分中の、チタン含有量、(エステル化合物(A)に相当する)3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチル含有量および(ジエステル化合物(B)に相当する)1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエチル含有量を測定したところ、それぞれ、2.2質量%、7.8質量%、4.4質量%であった。また、(エステル化合物(A)の含有量(質量%)/ジエステル化合物(B)の含有量(質量%))から算出される含有量比は、1.7であった。
次いで、上記固体触媒成分を用いた以外は、実施例1の「2.重合触媒の形成および重合」と同様の方法で重合触媒の形成および重合を行った。このときの固体触媒成分1g当たりの重合活性、生成重合体中のp−キシレン可溶分の割合(XS)、生成重合体中のメルトフローレートの値を(MFR)、重合体の分子量分布(Mw/Mn)を実施例1と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1の「1.固体触媒成分の合成」において、3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチル3.6ミリモルに代えて19.5ミリモルを用い、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエチル16.7ミリモルに代えて0.5ミリモルを用いた以外は、実施例1と同様にして固体触媒成分を調製した。
得られた固体状の固体触媒成分中の、チタン含有量、(エステル化合物(A)に相当する)3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチル含有量および(ジエステル化合物(B)に相当する)1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエチル含有量を測定したところ、それぞれ、2.4質量%、10.7質量%、0.7質量%であった。また、(エステル化合物(A)の含有量(質量%)/ジエステル化合物(B)の含有量(質量%))から算出される含有量比は、15であった。
次いで、上記固体触媒成分を用いた以外は、実施例1の「2.重合触媒の形成および重合」と同様の方法で重合触媒の形成および重合を行った。このときの固体触媒成分1g当たりの重合活性、生成重合体中のp−キシレン可溶分の割合(XS)、生成重合体中のメルトフローレートの値を(MFR)、重合体の分子量分布(Mw/Mn)を実施例1と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例1の「1.固体触媒成分の合成」において、3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチル3.6ミリモルに代えて19.5ミリモルを用い、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエチル16.7ミリモルに代えて0.1ミリモルを用いた以外は、実施例1と同様にして固体触媒成分を調製した。
得られた固体状の固体触媒成分中の、チタン含有量、(エステル化合物(A)に相当する)3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチル含有量および(ジエステル化合物(B)に相当する)1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエチル含有量を測定したところ、それぞれ、2.5質量%、11.0質量%、0.2質量%であった。また、(エステル化合物(A)の含有量(質量%)/ジエステル化合物(B)の含有量(質量%))から算出される含有量比は、55であった。
次いで、上記固体触媒成分を用いた以外は、実施例1の「2.重合触媒の形成および重合」と同様の方法で重合触媒の形成および重合を行った。このときの固体触媒成分1g当たりの重合活性、生成重合体中のp−キシレン可溶分の割合(XS)、生成重合体中のメルトフローレートの値を(MFR)、重合体の分子量分布(Mw/Mn)を実施例1と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例1の「1.固体触媒成分の合成」において、3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチル3.6ミリモル(0.8g)に代えて、3−エトキシ−2−イソプロピルプロピオン酸エチル3.6ミリモル(0.7g)を用いた以外は、実施例1と同様にして固体触媒成分を調製した。
得られた固体状の固体触媒成分中の、チタン含有量、(エステル化合物(A)に相当する)3−エトキシ−2−イソプロピルプロピオン酸エチル含有量および(ジエステル化合物(B)に相当する)1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエチル含有量を測定したところ、それぞれ、1.9質量%、0.5質量%、12.8質量%であった。また、(エステル化合物(A)の含有量(質量%)/ジエステル化合物(B)の含有量(質量%))から算出される含有量比は、0.04であった。
次いで、上記固体触媒成分を用いた以外は、実施例1の「2.重合触媒の形成および重合」と同様の方法で重合触媒の形成および重合を行った。このときの固体触媒成分1g当たりの重合活性、生成重合体中のp−キシレン可溶分の割合(XS)、生成重合体中のメルトフローレートの値を(MFR)、重合体の分子量分布(Mw/Mn)を実施例1と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
(実施例6)
実施例1の「1.固体触媒成分の合成」において、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエチル16.7ミリモル(3.7g)に代えて、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジブチル11.7ミリモル(3.1g)を用いた以外は、実施例1と同様にして固体触媒成分を調製した。
得られた固体状の固体触媒成分中の、チタン含有量、(エステル化合物(A)に相当する)3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチル含有量および(ジエステル化合物(B)に相当する)1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジブチル含有量を測定したところ、それぞれ、2.9質量%、1.7質量%、15.3質量%であった。また、(エステル化合物(A)の含有量(質量%)/ジエステル化合物(B)の含有量(質量%))から算出される含有量比は、0.11であった。
次いで、上記固体触媒成分を用いた以外は、実施例1の「2.重合触媒の形成および重合」と同様の方法で重合触媒の形成および重合を行った。このときの固体触媒成分1g当
たりの重合活性、生成重合体中のp−キシレン可溶分の割合(XS)、生成重合体中のメルトフローレートの値を(MFR)、重合体の分子量分布(Mw/Mn)を実施例1と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
(実施例7)
実施例1の「1.固体触媒成分の合成」において、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエチル16.7ミリモル(3.7g)に代えて、マレイン酸ジエチル15.3ミリモル(2.7g)を用いた以外は、実施例1と同様にして固体触媒成分を調製した。
得られた固体状の固体触媒成分中の、チタン含有量、(エステル化合物(A)に相当する)3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチル含有量および(ジエステル化合物(B)に相当する)マレイン酸ジエチル含有量を測定したところ、それぞれ、3.1質量%、1.3質量%、7.4質量%であった。また、(エステル化合物(A)の含有量(質量%)/ジエステル化合物(B)の含有量(質量%))から算出される含有量比は、0.18であった。
次いで、上記固体触媒成分を用いた以外は、実施例1の「2.重合触媒の形成および重合」と同様の方法で重合触媒の形成および重合を行った。このときの固体触媒成分1g当たりの重合活性、生成重合体中のp−キシレン可溶分の割合(XS)、生成重合体中のメルトフローレートの値を(MFR)、重合体の分子量分布(Mw/Mn)を実施例1と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
(実施例8)
実施例1の「1.固体触媒成分の合成」において、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエチル16.7ミリモル(3.7g)に代えて、2,3−ジイソプロピルマレイン酸ジエチル15.3ミリモル(3.9g)を用いた以外は、実施例1と同様にして固体触媒成分を調製した。
得られた固体状の固体触媒成分中の、チタン含有量、(エステル化合物(A)に相当する)3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチル含有量および(ジエステル化合物(B)に相当する)2,3-ジイソプロピルマレイン酸ジエチル含有量を測定したところ、それぞれ、9.6質量%、1.0質量%、6.9質量%であった。また、(エステル化合物(A)の含有量(質量%)/ジエステル化合物(B)の含有量(質量%))から算出される含有量比は、0.14であった。
次いで、上記固体触媒成分を用いた以外は、実施例1の「2.重合触媒の形成および重合」と同様の方法で重合触媒の形成および重合を行った。このときの固体触媒成分1g当たりの重合活性、生成重合体中のp−キシレン可溶分の割合(XS)、生成重合体中のメルトフローレートの値を(MFR)、重合体の分子量分布(Mw/Mn)を実施例1と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
(実施例9)
実施例1の「2.重合触媒の形成および重合」において、ジシクロペンチルジエトキシシラン(DCPDMS)0.13ミリモルに代えて、ジエチルアミノトリエトキシシラン(DEATES)0.13ミリモルを用いた以外は、実施例1と同様にして重合を行った。このときの固体触媒成分1g当たりの重合活性、生成重合体中のp−キシレン可溶分の割合(XS)、生成重合体中のメルトフローレートの値を(MFR)、重合体の分子量分布(Mw/Mn)を実施例1と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
(実施例10)
実施例1の「2.重合触媒の形成および重合」において、ジシクロペンチルジエトキシシラン(DCPDMS)0.13ミリモルに代えて、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン(BMMF)0.13ミリモルを用いた以外は、実施例1と同様に重合を行った。このときの固体触媒成分1g当たりの重合活性、生成重合体中のp−キシレン可溶分の割合(XS)、生成重合体中のメルトフローレートの値を(MFR)、重合体の分子量分布(Mw/Mn)を実施例1と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1の「1.固体触媒成分の合成」において、3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチルを加えず、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエチル16.7ミリモル(3.7g)のみを加えた以外は、実施例1と同様にして固体触媒成分を調製した。
得られた固体状の固体触媒成分中の、チタン含有量および(ジエステル化合物(B)に相当する)1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエチル含有量を測定したところ、それぞれ、2.4質量%および14.7質量%であった。また、(エステル化合物(A)の含有量(質量%)/ジエステル化合物(B)の含有量(質量%))から算出される含有量比は、0であった。
次いで、上記固体触媒成分を用いた以外は、実施例1の「2.重合触媒の形成および重合」と同様の方法で重合触媒の形成および重合を行った。このときの固体触媒成分1g当たりの重合活性、生成重合体中のp−キシレン可溶分の割合(XS)、生成重合体中のメルトフローレートの値を(MFR)、重合体の分子量分布(Mw/Mn)を実施例1と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1の「1.固体触媒成分の合成」において、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエチルを加えず、3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチル13.1ミリモル(2.6g)のみを加えた以外は、実施例1と同様にして固体触媒成分を調製した。
得られた固体状の固体触媒成分中の、チタン含有量および(ジエステル化合物(A)に相当する)3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチル含有量を測定したところ、それぞれ、2.7質量%および14.4質量%であった。
次いで、上記固体触媒成分を用いた以外は、実施例1の「2.重合触媒の形成および重合」と同様の方法で重合触媒の形成および重合を行った。このときの固体触媒成分1g当たりの重合活性、生成重合体中のp−キシレン可溶分の割合(XS)、生成重合体中のメルトフローレートの値を(MFR)、重合体の分子量分布(Mw/Mn)を実施例1と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
(比較例3)
実施例1の「1.固体触媒成分の合成」において、3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチルを加えず、マレイン酸ジエチル15.3ミリモル(2.7g)のみを加えた以外は、実施例1と同様にして固体触媒成分を調製した。
得られた固体状の固体触媒成分中の、チタン含有量および(ジエステル化合物(B)に相当する)マレイン酸ジエチル含有量を測定したところ、それぞれ、2.2質量%および15.6質量%であった。また、(エステル化合物(A)の含有量(質量%)/ジエステル化合物(B)の含有量(質量%))から算出される含有量比は、0であった。
次いで、上記固体触媒成分を用いた以外は、実施例1の「2.重合触媒の形成および重合」と同様の方法で重合触媒の形成および重合を行った。このときの固体触媒成分1g当たりの重合活性、生成重合体中のp−キシレン可溶分の割合(XS)、生成重合体中のメルトフローレートの値を(MFR)、重合体の分子量分布(Mw/Mn)を実施例1と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
(比較例4)
実施例1の「1.固体触媒成分の合成」において、3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチルを加えずに、2,3−ジイソプロピルマレイン酸ジエチル15.3ミリモル(3.9g)のみを加えた以外は、実施例1と同様にして固体触媒成分を調製した。
得られた固体状の固体触媒成分中の、チタン含有量および(ジエステル化合物(B)に相当する)2,3−ジイソプロピルマレイン酸ジエチル含有量を測定したところ、それぞれ、8.0質量%および9.0質量%であった。また、(エステル化合物(A)の含有量(質量%)/ジエステル化合物(B)の含有量(質量%))から算出される含有量比は、0であった。
次いで、上記固体触媒成分を用いた以外は、実施例1の「2.重合触媒の形成および重合」と同様の方法で重合触媒の形成および重合を行った。このときの固体触媒成分1g当たりの重合活性、生成重合体中のp−キシレン可溶分の割合(XS)、生成重合体中のメルトフローレートの値を(MFR)、重合体の分子量分布(Mw/Mn)を実施例1と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
(参考例1)
実施例1の「1.固体触媒成分の合成」において、3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチルおよび1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジエチルに代えて、フタル酸ジ(n−ブチル)13.1ミリモル(3.6g)を加えた以外は、実施例1と同様にして固体触媒成分を調製した。
得られた固体状の固体触媒成分中の、チタン含有量およびフタル酸ジ(n−ブチル)含有量を測定したところ、それぞれ、3.6質量%および11.3質量%であった。
次いで、上記固体触媒成分を用いた以外は、実施例1の「2.重合触媒の形成および重合」と同様の方法で重合触媒の形成および重合を行った。このときの固体触媒成分1g当たりの重合活性、生成重合体中のp−キシレン可溶分の割合(XS)、生成重合体中のメルトフローレートの値を(MFR)、重合体の分子量分布(Mw/Mn)を実施例1と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
(参考例2)
参考例1において、ジシクロペンチルジエトキシシラン(DCPDMS)0.13ミリモルに代えて、ジエチルアミノトリエトキシシラン(DEATES)0.13ミリモルを用いた以外は、参考例1と同様にして重合触媒の形成および重合を行った。
このときの固体触媒成分1g当たりの重合活性、生成重合体中のp−キシレン可溶分の割合(XS)、生成重合体中のメルトフローレートの値を(MFR)、重合体の分子量分布(Mw/Mn)を実施例1と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
(参考例3)
参考例1において、ジシクロペンチルジエトキシシラン(DCPDMS)0.13ミリモルに代えて、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン(BMMF)0.13ミリモルを用いた以外は、参考例1と同様にして重合触媒の形成および重合を行った。
このときの固体触媒成分1g当たりの重合活性、生成重合体中のp−キシレン可溶分の割合(XS)、生成重合体中のメルトフローレートの値を(MFR)、重合体の分子量分布(Mw/Mn)を実施例1と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
表1より、実施例1〜実施例10においては、オレフィン重合用固体触媒成分として、マグネシウム原子、チタン原子、ハロゲン原子、一般式(1)で表されるエステル化合物(A)および一般式(2)で表されるジエステル化合物(B)を含み、(エステル化合物(A)の含有量(質量%)/ジエステル化合物(B)の含有量(質量%))で表される含有量比が、0.01〜75の範囲にあるものを用いていることから、電子供与性化合物としてフタル酸エステルを用いた参考例1〜参考例3と比較して、オレフィン類の重合活性が同等であるとともに、XSが低く(立体規則性や結晶性に優れ)、Mw/Mnが大きい(分子量分布が広い)重合体が得られることが分かる。
一方、表1より、比較例1〜比較例4においては、オレフィン重合用固体触媒成分が、ジエステル化合物(B)とともに所定量のエステル化合物(A)を含まないか(比較例1、比較例3、比較例4)、あるいはエステル化合物(A)とともに所定量のジエステル化合物(B)を含まない(比較例2)ことから、実施例1に比較して、オレフィン類の重合活性に劣ったり、得られる重合体のXSが高い(立体規則性や結晶性に劣る)ものであることが分かる。
本発明によれば、フタル酸エステル以外の電子供与性化合物を含む固体触媒成分であって、フタル酸エステルを電子供与性化合物として用いた場合と比較して、オレフィン類の重合活性が同等であるとともに、得られる重合体の立体規則性が高く分子量分布が広いオレフィン重合用固体触媒成分を提供するとともに、係るオレフィン類重合用固体触媒成分を用いたオレフィン重合用触媒及びオレフィン類重合方法を提供することができる。

Claims (10)

  1. マグネシウム原子、チタン原子、ハロゲン原子、下記一般式(1);
    −O−C(=O)−CR−CR−O−R (1)
    (式中、RおよびRは、炭素数1〜24の炭化水素基であり互いに同一であっても異なっていてもよく、R〜Rは、水素原子または炭素数1〜24の炭化水素基であり互いに同一であっても異なっていてもよい)で表されるエステル化合物(A)および下記一般式(2);
    (式中、RおよびRは、炭素数1〜24の炭化水素基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。RおよびR10は、水素原子または炭素数1〜24の炭化水素基であり互いに同一であっても異なっていてもよく、RおよびR10が結合して環を形成していてもよい)で表されるジエステル化合物(B)を含み、下記式
    (エステル化合物(A)の含有量(質量%)/ジエステル化合物(B)の含有量(質量%))で表される比が、0.01〜75である
    ことを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分。
  2. 前記R〜R10を構成する炭素数1〜24の炭化水素基の少なくとも一つが、炭素数1〜24の直鎖状アルキル基、炭素数3〜24の分岐鎖状アルキル基、ビニル基、炭素数3〜20の直鎖状アルケニル基、炭素数3〜20の分岐鎖状アルケニル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルケニル基および炭素数6〜20の芳香族炭化水素基から選ばれる基である請求項1に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分。
  3. 前記R、R、R、RおよびR10の少なくとも一つが水素原子である請求項1または請求項2に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分。
  4. 前記RおよびR10が結合して環を形成している請求項1〜請求項3のいずれかに記載のオレフィン類重合用固体触媒成分。
  5. (I)請求項1〜4のいずれか1項に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分、
    (II)下記一般式(3);
    11 AlQ3−p (3)
    (式中、R11は炭素数1〜6のアルキル基であり、Qは水素原子あるいはハロゲンであり、pは0<p≦3の実数で、R11が複数存在する場合、各R11は互いに同一であっても異なっていてもよく、Qが複数存在する場合各Qは互いに同一であっても異なっていてもよい。)で表わされる有機アルミニウム化合物、および
    (III)外部電子供与性化合物
    を含むことを特徴とするオレフィン類重合用触媒。
  6. 前記(III)外部電子供与性化合物が、下記一般式(4);
    12 Si(OR134−q (4)
    (式中、R12は、炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、炭素数3〜12の分岐鎖状アルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基および炭素数6〜12の芳香族炭化水素基から選ばれるいずれか一種の基であり、qは0≦q≦3の整数で、qが2以上の場合、複数のR12は互いに同一であっても異なっていてもよい。R13は、炭素数1〜4の直鎖状アルキル基、炭素数3〜4の分岐鎖状アルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基および炭素数6〜12の芳香族炭化水素基から選ばれるいずれか一種の基を示し、R13が複数存在する場合、複数のR13は互いに同一であっても異なっていてもよい。)および下記一般式(5);
    (R1415N)SiR16 4−s (5)
    (式中、R14およびR15は、水素原子、炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、炭素数3〜12の分岐鎖状アルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基および炭素数6〜12の芳香族炭化水素基から選ばれるいずれか一種の基であり、R14およびR15は互いに同一であっても異なっていてもよく、また、R1415N基が複数存在する場合、複数のR1415N基は互いに同一であっても異なっていてもよく、R14およびR15が互いに結合して環を形成していてもよい。R16は、炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、炭素数3〜12の分岐鎖状アルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、炭素数1〜12の直鎖アルコキシ基、炭素数3〜12の分岐鎖状アルコキシ基、ビニルオキシ基、炭素数3〜12のアリロキシ基および炭素数6〜12のアリールオキシ基から選ばれるいずれか一種の基であり、R16が複数存在する場合、複数のR16は互いに同一であっても異なっていてもよい。sは1〜3の整数である。)で表される有機ケイ素化合物から選ばれる一種以上である
    請求項5に記載のオレフィン類重合用触媒。
  7. 前記(III)外部電子供与性化合物が、下記一般式(6);
    171819COCH(R2324C)CHOCR202122(6)
    (式中、R17〜R22は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基、炭素数3〜6の分岐鎖状アルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基およびフェニル基から選ばれるいずれか一種であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。R23およびR24は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基、炭素数3〜6の分岐鎖状アルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基およびフェニル基から選ばれるいずれか一種であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、またR23およびR24が互いに結合して環を形成していてもよい。)で表わされるジエーテル類である請求項5に記載のオレフィン類重合用触媒。
  8. 前記有機ケイ素化合物が、フェニルトリメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソプロピルイソブチルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、t−ブチルメチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(エチルアミノ)ジシクロヘキシルシラン、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシランおよびジエチルアミノトリエトキシシランから選ばれる一種以上である請求項6に記載のオレフィン類重合用触媒。
  9. 前記ジエーテル類が、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパンおよび9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンから選ばれる一種以上である請求項7に記載のオレフィン類重合用触媒。
  10. 請求項5〜請求項9のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒の存在下にオレフィン類の重合を行なうことを特徴とするオレフィン類重合体の製造方法。
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