JP2013075991A - オレフィン類重合用固体触媒成分、オレフィン類重合用触媒及びオレフィン類重合体の製造方法 - Google Patents

オレフィン類重合用固体触媒成分、オレフィン類重合用触媒及びオレフィン類重合体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高い立体規則性を維持しながら、広くも狭くもない適度な分子量分布を有するオレフィン類重合体を高い収率で得ることができるオレフィン類重合用固体触媒成分、オレフィン類重合用触媒およびオレフィン類の重合方法を提供する。
【解決手段】チタン、マグネシウム、ハロゲンおよび下記一般式;
C=C(C(=O)R)(C(=O)OR
で表される化合物を含有するオレフィン類重合用固体触媒成分並びに該固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および外部電子供与性化合物から形成されるオレフィン類重合用触媒。
【選択図】図1

Description

本発明は、重合活性および立体規則性を高度に維持しながら、適度な分子量分布を有するオレフィン類重合体を高収率で得ることのできるオレフィン類重合用固体触媒成分、オレフィン類重合用触媒及びオレフィン類重合体の製造方法に関する。
従来から、プロピレンなどのオレフィン類の重合においては、マグネシウム、チタン、電子供与性化合物およびハロゲンを必須成分として含有する固体触媒成分が知られている。また該固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および有機ケイ素化合物から成るオレフィン類重合用触媒の存在下に、オレフィン類を重合もしくは共重合させる方法が数多く提案されている。
例えば、特開昭57−63310号公報(特許文献1)には、特定の電子供与体が担持された固体状チタン触媒成分と、助触媒成分として有機アルミニウム化合物と、少なくとも一つのSi−OR(式中、Rは炭化水素基である)を有するケイ素化合物とを用いた場合に優れた重合活性と立体特異性を発現することが記載されている。
上記特定の電子供与性成分として、特開昭58−83006号公報(特許文献2)にはフタル酸エステル、特開昭60−130607号公報(特許文献3)にはセロソルブエステルを用いることが、それぞれ開示されている。しかしながら、これらの電子供与体を担持させた固体触媒成分は、重合活性および立体規則性の両面において、改良の余地を有していた。
一方、別の試みとして、特許文献4(特開2004−91513号公報)には、マロン酸ジエステルを用いた固体触媒成分が開示されている。また、例えば、特許文献5(特表2007−530748号公報)には、一般式RC(COR)(COOR)(式中、基RおよびRは、同一または異なって、任意にヘテロ原子を含んでも良いC1〜C20の炭化水素基であり、RおよびRは、それぞれが同時に水素原子ではないという条件で、Hまたは任意にヘテロ原子を含んでいてもよいC1〜C20の炭化水素基であり、基R〜Rの二つ以上は結合して環を形成することができる、β-ケトエステル誘導体を用いた固体触媒成分が開示されている。
しかし、上記のごときマロン酸エステルやβ−ケトエステル誘導体を用いた固体触媒成分より構成される触媒系をプロピレン重合用に用いた場合、得られるポリプロピレンの立体規則性は、総じて充分高いレベルにはなく、高剛性を要求される射出成形体等への適用は困難であり、機械的強度の要求レベルがさほど高くない汎用樹脂への使用が主体となっていた。また、対水素活性が相対的に高いことから、シート等、低メルトフローが要求されるグレードを製造する際には、水素添加量の少ない状態でプロピレン重合を行なうため、重合活性が低下してしまうなどの課題も有し、更なる改善が必要とされていた。
さらに、特許文献6(特開平03−62805号公報)には、一般式RC(CHOR)(CHOR)(式中、R、Rは1〜18個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキルまたはアリール基であり、R、Rは、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基)で表されるジエーテル化合物を用いた固体触媒成分が開示されている。このようなジエーテル化合物を内部電子供与体として用いた固体触媒成分をプロピレン重合に用いた場合、得られるオレフィン重合体の立体規則性は極めて高いものとなるが、分子量分布は狭くなることが知られている。
また、文献番号7(特表2007−530748号公報)には一般式RC(COR)(COOR)(式中、RおよびRは、C1〜C20の炭化水素基であり、RおよびRは、それらが同時に水素ではないという条件で、Hまたは任意にヘテロ原子を含んでいてもよいC1〜C20の炭化水素基であり、基R〜Rの二つ以上は結合して間を形成することができる)で表されるβ―ケトエステル化合物を用いた固体触媒成分が開示されている。このようなβ―ケトエステル化合物を内部電子供与体として用いた固体触媒成分をプロピレン重合に用いた場合、得られるオレフィン類重合体の分子量分布は狭いことが知られている。
特開昭57−63310号公報 特開昭58−83006号公報 特開昭60−130607号公報 特開2004−91513号公報 特表2007−530748号公報 特開平03−62805号公報 特表2007−530748号公報
オレフィンの立体規則性重合に供される触媒としては、活性、立体規則性、分子量分布、活性の持続性、MFR制御性(水素応答性)、嵩密度等様々な重合性能が必要であり、その用途により必要な性能には違いがあるため、特徴の異なる様々な固体触媒成分、ならびに触媒が必要とされている。汎用的に用いられる重合体の分子量分布は、例えばMw/Mn値で4から6程度の間で制御できることが求められ、その範囲において他の性能が優れていること、すなわちある程度以上の結晶性と、ある程度以上の高い重合活性を示す固体触媒成分であることがもっとも実用性が高いとされている。
従って、本発明の目的は、上記のニーズに応えるべく、成形性を損なわない適度なMw/Mn値の分子量分布および高立体規則性のオレフィン類重合体を得ることができ、かつ高い重合活性を有する新規のオレフィン類重合用固体触媒成分、オレフィン類重合用触媒およびこれを用いたオレフィン類重合体の製造方法を提供することにある。
かかる実情において、本発明者らは、鋭意検討を行った結果、チタン、マグネシウム、ハロゲンおよび特定の構造を有する化合物を含有するオレフィン類重合触媒が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、チタン、マグネシウム、ハロゲンおよび下記一般式(1);
(1)
(式中、RおよびRは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、炭素数3〜20の分岐アルキル基、ビニル基、炭素数3〜20の直鎖状アルケニル基若しくは分岐アルケニル基、炭素数1〜20の直鎖状ハロゲン置換アルキル基、炭素数3〜20の分岐ハロゲン置換アルキル基、炭素数2〜20の直鎖状ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3〜20の分岐ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルケニル基、炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルキル基、炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルケニル基、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、炭素数6〜24のハロゲン置換芳香族炭化水素基、結合末端が炭素原子である炭素数2〜24の窒素原子含有炭化水素基、結合末端が炭素原子である炭素数2〜24の酸素原子含有炭化水素基、結合末端が炭素原子である炭素数2〜24のリン含有炭化水素基、または炭素数1〜24のケイ素含有炭化水素基を示し、同一または異なっていてもよく、また、お互いに結合して環を形成してもよく、RおよびRのいずれか1つ以上は、水素原子以外の原子または基である。RおよびRは、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、炭素数3〜20の分岐アルキル基、ビニル基、炭素数3〜20の直鎖状アルケニル基若しくは分岐アルケニル基、炭素数1〜20の直鎖状ハロゲン置換アルキル基、炭素数3〜20の分岐ハロゲン置換アルキル基、炭素数2〜20の直鎖状ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3〜20の分岐ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルケニル基、炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルキル基、炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルケニル基、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、炭素数6〜24のハロゲン置換芳香族炭化水素基、結合末端が炭素原子である炭素数2〜24の窒素原子含有炭化水素基、結合末端が炭素原子である炭素数2〜24の酸素原子含有炭化水素基、結合末端が炭素原子である炭素数2〜24のリン含有炭化水素基、または炭素数1〜24のケイ素含有炭化水素基を示し、同一または異なっていてもよい。但し、R、R、R及びRにおいて、該炭素数2〜24の窒素原子含有炭化水素基は、結合末端がC=N基であるものを、該炭素数2〜24の酸素原子含有炭化水素基は、結合末端がカルボニル基であるものを、該炭素数2〜24のリン含有炭化水素基は、結合末端がC=P基であるものをそれぞれ除く。)で表わされる化合物を含有するオレフィン類重合用固体触媒成分を提供するものである。
また、本発明は、(I)前記固体触媒成分、(II)下記一般式(2);
AlQ3−p (2)
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、複数個ある場合は同一でも異なってもよく、Qは水素原子、炭素数1〜6のアルコキシ基又はハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)
で表わされる有機アルミニウム化合物、並びに(III)外部電子供与性化合物によって形成されるオレフィン類重合用触媒を提供するものである。
また、本発明は、前記オレフィン類重合用触媒の存在下に、オレフィン類の重合を行うことを特徴とするオレフィン類重合体の製造方法を提供するものである。
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分およびオレフィン類重合用触媒を用いれば、高い立体規則性と、広くも狭くもない適度な分子量分布を有したオレフィン類重合体を、高い収率で得ることができる。
本発明の重合触媒を調製する工程を示すフローチャート図である。
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分(以下、単に「成分(I)」と言うことがある。)は、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与性化合物として上記一般式(1)で表わされる化合物(以下、単に「成分(A)」ということがある。)を必須成分として含有する。
成分(I)に必須成分として含有されるハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素の各原子が挙げられ、中でも好ましくは塩素、臭素またはヨウ素であり、特に好ましくは塩素またはヨウ素である。
上記一般式(1)中のR〜Rにおいて、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素の各原子が挙げられ、中でも好ましくは塩素、臭素またはヨウ素であり、特に好ましくは塩素または臭素である。
上記一般式(1)中のR〜Rにおいて、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ペンチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。好ましくは、炭素数1〜12の直鎖状アルキル基である。
また、上記一般式(1)中のR〜Rにおいて、炭素数3〜20の分岐アルキル基としては、例えばイソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの2級炭素または3級炭素を有するアルキル基が挙げられる。好ましくは、炭素数3〜12の分岐アルキル基である。
また、上記一般式(1)中のR〜Rにおいて、炭素数3〜20の直鎖状アルケニル基としては、例えばアリル基、3−ブテニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、7−オクテニル基、10−ドデセニル等が挙げられる。好ましくは、炭素数3〜12の直鎖状アルケニル基である。
また、上記一般式(1)中のR〜Rにおいて、炭素数3〜20の分岐アルケニル基としては、例えばイソプロペニル基、イソブテニル基、t−ブテニル基、イソペンテニル基、ネオペンテニル基、2−エチル−3−ヘキセニル基等が挙げられる。好ましくは、炭素数3〜12の分岐アルケニル基である。
また、上記一般式(1)中のR〜Rにおいて、炭素数1〜20の直鎖状ハロゲン置換アルキル基としては、例えばハロゲン化メチル基、ハロゲン化エチル基、ハロゲン化n−プロピル基、、ハロゲン化n−ブチル基、ハロゲン化n−ペンチル基、ハロゲン化n−ヘキシル基、ハロゲン化n−ペンチル基、ハロゲン化n−オクチル基、ハロゲン化ノニル基、ハロゲン化デシル基が挙げられる。好ましくは、炭素数1〜12の直鎖状ハロゲン置換アルキル基である。
また、上記一般式(1)中のR〜Rにおいて、炭素数3〜20の分岐ハロゲン置換アルキル基としては、ハロゲン化イソプロピル基、ハロゲン化イソブチル基、ハロゲン化2−エチルヘキシル基、ハロゲン化ネオペンチル基等が挙げられる。好ましくは、炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルキル基である。
また、上記一般式(1)中のR〜Rにおいて、炭素数2〜20の直鎖状ハロゲン置換アルケニル基としては、2−ハロゲン化ビニル基,3−ハロゲン化アリル基、3−ハロゲン化−2−ブテニル基、4−ハロゲン化−3−ブテニル基、パーハロゲン化−2−ブテニル基、6−ハロゲン化−4−ヘキセニル基、3−トリハロゲン化メチル−2−プロペニル基等が挙げられる。好ましくは炭素数2〜12のハロゲン置換アルケニル基である。
また、上記一般式(1)中のR〜Rにおいて、炭素数3〜20の分岐ハロゲン置換アルケニル基としては、3−トリハロゲン化−2−ブテニル基、2−ペンタハロゲン化エチル−3−ヘキセニル基、6−ハロゲン化−3−エチル−4−ヘキセニル基、3−ハロゲン化イソブテニル基等が挙げられる。好ましくは炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルケニル基である。
上記一般式(1)中のR〜Rにおいて、炭素数3〜20のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等が挙げられる。好ましくは炭素数1〜12のシクロアルキル基である。
また、上記一般式(1)中のR〜Rにおいて、炭素数3〜20のシクロアルケニル基としては、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基、ノルボルネン基、等が挙げられる。好ましくは炭素数3〜12のシクロアルケニル基である。
また、上記一般式(1)中のR〜Rにおいて、炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルキル基としては、ハロゲン置換シクロプロピル基、ハロゲン置換シクロブチル基、ハロゲン置換シクロペンチル基、ハロゲン置換トリメチルシクロペンチル基、ハロゲン置換シクロヘキシル基、ハロゲン置換メチルシクロヘキシル基、ハロゲン置換シクロヘプチル基、ハロゲン置換シクロオクチル基、ハロゲン置換シクロノニル基、ハロゲン置換シクロデシル基、ハロゲン置換ブチルシクロペンチル等が挙げられる。好ましくは炭素数1〜12のハロゲン置換シクロアルキル基である。
また、上記一般式(1)中のR〜Rにおいて、炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルケニル基としては、ハロゲン置換シクロプロペニル基、ハロゲン置換シクロブテニル基、ハロゲン置換シクロペンテニル基、ハロゲン置換トリメチルシクロペンテニル基、ハロゲン置換シクロヘキセニル基、ハロゲン置換メチルシクロヘキセニル基、ハロゲン置換シクロヘプテニル基、ハロゲン置換シクロオクテニル基、ハロゲン置換シクロノネニル基、ハロゲン置換シクロデセニル基、ハロゲン置換ブチルシクロペンテニル等が挙げられる。好ましくは炭素数1〜12のハロゲン置換シクロアルケニル基である。
また、一般式(1)中のR〜Rにおいて、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基、1−フェニルブチル基、4−フェニルブチル基、2−フェニルヘプチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、1,8−ジメチルナフチル基等が挙げられる。好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である。
また、上記一般式(1)中のR〜Rにおいて、炭素数6〜24のハロゲン置換芳香族炭化水素基としては、ハロゲン化フェニル基、ハロゲン化メチルフェニル基、トリハロゲン化メチルフェニル基、パーハロゲン化ベンジル基、パーハロゲン化フェニル基、2−フェニル,2−ハロゲン化エチル基、パーハロゲン化ナフチル基、4−フェニル,2,3−ジハロゲン化ブチル基等が挙げられる。好ましくは6〜12のハロゲン置換芳香族炭化水素基である。
また、一般式(1)中のR〜Rにおいて、結合末端がC=N基であるものは除く炭素数2〜24の窒素原子含有炭化水素基としては、結合末端が炭素原子である基であり、例えば、メチルアミノメチル基、ジメチルアミノメチル基、エチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基、プロピルアミノメチル基、ジプロピルアミノメチル基、メチルアミノエチル基、ジメチルアミノエチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノエチル基、プロピルアミノエチル基、ジプロピルアミノエチル基、ブチルアミノエチル基、ジブチルアミノエチル基、ペンチルアミノエチル基、ジペンチルアミノエチル基、ヘキシルアミノエチル基、ヘキシルメチルアミノエチル基、ヘプチルメチルアミノエチル基、ジヘプチルアミノメチル基、オクチルメチルアミノメチル基、ジオクチルアミノエチル基、ノニルアミノメチル基、ジノニルアミノメチル基、デシルアミノメチル基、ジデシルアミノ基、シクロヘキシルアミノメチル基、ジシクロヘキシルアミノメチル基などのアルキルアミノアルキル基;フェニルアミノメチル基、ジフェニルアミノメチル基、ジトリルアミノメチル基、ジナフチルアミノ基メチル、メチルフェニルアミノエチル基などのアリールアミノアルキル基またはアルキルアリールアミノアルキル基;多環状アミノアルキル基;アニリノ基、ジメチルアミノフェニル基、ビスジメチルアミノフェニル基等のアミノ基含有芳香族炭化水素基;メチルイミノメチル、エチルイミノエチル、プロピルイミノメチル、ブチルイミノエチル、フェニルイミノメチルなどのイミノアルキル基等が挙げられる。好ましくは2〜12の窒素原子含有炭化水素基である。なお、R〜Rにおいて、結合末端とは、R〜Rが結合する炭素原子側の原子または基であり、Rにおいて、結合末端とは、Rが結合する酸素原子側の原子又は基を言う。以下、R1〜Rにおける結合末端は同じ意味である。
また、上記一般式(1)中のR〜Rにおいて、結合末端がカルボニル基であるものを除く炭素数2〜24の酸素原子含有炭化水素基としては、結合末端が炭素原子である基であり、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、イソプロポキシメチル基、イソブトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基、イソプロポキシエチル基、イソブトキシエチル基などのエーテル基含有炭化水素基;フェノキシメチル基、メチルフェノキシメチル基、ジメチルフェノキメチル基、ナフトキシメチル基などのアリーロキシアルキル基;メトキシフェニル基、エトキシフェニル基などのアルコキシアリール基;アセトキシメチル基などが挙げられる。好ましくは2〜12の酸素原子含有炭化水素基である。
また、上記一般式(1)中のR〜Rにおいて、結合末端がC=P基であるものは除く炭素数2〜24のリン含有炭化水素基としては、結合末端が炭素原子である基であり、例えばジメチルホスフィンメチル基、ジブチルホスフィノメチル基、ジシクロヘキシルホスフィノメチル基、ジメチルホスフィンエチル基、ジブチルホスフィノエチル基、ジシクロヘキシルホスフィノエチル基などのジアルキルホスフィノアルキル基;ジフェニルホスフィノメチル基、ジトリルホスフィノメチル基などのジアリールホスフィノアルキル基;ジメチルホスフィノフェニル基、ジエチルホスフィノフェニル基等のフォスフィノ基置換アリール基などが挙げられる。好ましくは2〜12のリン含有炭化水素基である。
また、上記一般式(1)中のR〜Rにおいて、炭素数1〜24のケイ素含有炭化水素基としては、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基、シロキシアルキル基、炭化水素置換シリルアルキル基、炭化水素置換シリルアリール基などが挙げられ、具体的には、フェニルシリル、ジフェニルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリシクロヘキシルシリル、トリフェニルシリル、メチルジフェニルシリル、トリトリルシリル、トリナフチルシリルなどの炭化水素置換シリル基;トリメチルシリルエーテルなどの炭化水素置換シリルエーテル基;トリメチルシリルメチルなどのケイ素置換アルキル基;トリメチルシリルフェニルなどのケイ素置換アリール基等が挙げられる。
なお、上記一般式(1)中の直鎖状ハロゲン置換アルキル基、分岐ハロゲン置換アルキル基、直鎖状ハロゲン置換アルケニル基、分岐ハロゲン置換アルケニル基、ハロゲン置換シクロアルキル基、ハロゲン置換シクロアルケニル基、ハロゲン置換芳香族炭化水素基のハロゲン種としては、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素が挙げられ、好ましくはフッ素、塩素または臭素、特に好ましくはフッ素、塩素である。
また、一般式(1)中、RおよびRは、互いに結合して環を形成していてもよく、RおよびRあるいはRとRが結合する炭素原子により形成される環としては、例えば、シクロアルキル環、シクロアルキレン環、フルオラニル環、フェナントレン環、インダニル環、ピぺリジニル環などが挙げられる。
一般式(1)で表される成分(A)の好ましい具体例としては、2−(アセチル)−3−フェニル−2−プロペン酸メチル、2−(アセチル)−3−フェニル−2−プロペン酸エチル、2−(アセチル)−3−フェニル−2−プロペン酸−n−プロピル、2−(アセチル)−3−フェニル−2−プロペン酸−イソプロピル、2−(アセチル)−3−フェニル−2−プロペン酸−n−ブチル、2−(アセチル)−3−フェニル−2−プロペン酸−イソブチル、2−(アセチル)−3−フェニル−2−プロペン酸−t−ブチル、2−(アセチル)−3−フェニル−2−プロペン酸−n−ヘキシル、
2−(プロピオニル)−3−フェニル−2−プロペン酸メチル、2−(プロピオニル)−3−フェニル−2−プロペン酸エチル、2−(プロピオニル)−3−フェニル−2−プロペン酸−n−プロピル、2−(プロピオニル)−3−フェニル−2−プロペン酸−イソプロピル、2−(プロピオニル)−3−フェニル−2−プロペン酸−n−ブチル、2−(プロピオニル)−3−フェニル−2−プロペン酸−イソブチル、2−(プロピオニル)−3−フェニル−2−プロペン酸−t−ブチル、2−(プロピオニル)−3−フェニル−2−プロペン酸−n−ヘキシル、
2−(n−ブチリル)−3−フェニル−2−プロペン酸メチル、2−(n−ブチリル)−3−フェニル−2−プロペン酸エチル、2−(n−ブチリル)−3−フェニル−2−プロペン酸−n−プロピル、2−(n−ブチリル)−3−フェニル−2−プロペン酸−イソプロピル、2−(n−ブチリル)−3−フェニル−2−プロペン酸−n−ブチル、2−(n−ブチリル)−3−フェニル−2−プロペン酸−イソブチル、2−(n−ブチリル)−3−フェニル−2−プロペン酸−t−ブチル、2−(n−ブチリル)−3−フェニル−2−プロペン酸−n−ヘキシル、
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2−(プロピオニル)−3−フェニル−3−メチル−2−プロペン酸メチル、2−(プロピオニル)−3−フェニル−3−メチル−2−プロペン酸エチル、2−(プロピオニル)−3−フェニル−3−メチル−2−プロペン酸−n−プロピル、2−(プロピオニル)−3−フェニル−3−メチル−2−プロペン酸−イソプロピル、2−(プロピオニル)−3−フェニル−3−メチル−2−プロペン酸−n−ブチル、2−(プロピオニル)−3−フェニル−3−メチル−2−プロペン酸−イソブチル、2−(プロピオニル)−3−フェニル−3−メチル−2−プロペン酸−t−ブチル、2−(プロピオニル)−3−フェニル−3−メチル−2−プロペン酸−n−ヘキシル、
2−(アセチル)−3−(n−ブチル)−3−メチル−2−プロペン酸メチル、2−(アセチル)−3−(n−ブチル)−3−メチル−2−プロペン酸エチル、2−(アセチル)−3−(n−ブチル)−3−メチル−2−プロペン酸−n−プロピル、2−(アセチル)−3−(n−ブチル)−3−メチル−2−プロペン酸−イソプロピル、2−(アセチル)−3−(n−ブチル)−3−メチル−2−プロペン酸−n−ブチル、2−(アセチル)−3−(n−ブチル)−3−メチル−2−プロペン酸−イソブチル、2−(アセチル)−3−(n−ブチル)−3−メチル−2−プロペン酸−t−ブチル、2−(アセチル)−3−(n−ブチル)−3−メチル−2−プロペン酸−n−ヘキシル、
2−(プロピオニル)−3−(n−ブチル)−3−メチル−2−プロペン酸メチル、2−(プロピオニル)−3−(n−ブチル)−3−メチル−2−プロペン酸エチル、2−(プロピオニル)−3−(n−ブチル)−3−メチル−2−プロペン酸−n−プロピル、2−(プロピオニル)−3−(n−ブチル)−3−メチル−2−プロペン酸−イソプロピル、2−(プロピオニル)−3−(n−ブチル)−3−メチル−2−プロペン酸−n−ブチル、2−(プロピオニル)−3−(n−ブチル)−3−メチル−2−プロペン酸−イソブチル、2−(プロピオニル)−3−(n−ブチル)−3−メチル−2−プロペン酸−t−ブチル、2−(プロピオニル)−3−(n−ブチル)−3−メチル−2−プロペン酸−n−ヘキシル、
2−(アセチル)−3−(イソブチル)−3−メチル−2−プロペン酸メチル、2−(アセチル)−3−(イソブチル)−3−メチル−2−プロペン酸エチル、2−(アセチル)−3−(イソブチル)−3−メチル−2−プロペン酸−n−プロピル、2−(アセチル)−3−(イソブチル)−3−メチル−2−プロペン酸−イソプロピル、2−(アセチル)−3−(イソブチル)−3−メチル−2−プロペン酸−n−ブチル、2−(アセチル)−3−(イソブチル)−3−メチル−2−プロペン酸−イソブチル、2−(アセチル)−3−(イソブチル)−3−メチル−2−プロペン酸−t−ブチル、2−(アセチル)−3−(イソブチル)−3−メチル−2−プロペン酸−n−ヘキシル、
2−(プロピオニル)−3−(イソブチル)−3−メチル−2−プロペン酸メチル、2−(プロピオニル)−3−(イソブチル)−3−メチル−2−プロペン酸エチル、2−(プロピオニル)−3−(イソブチル)−3−メチル−2−プロペン酸−n−プロピル、2−(プロピオニル)−3−(イソブチル)−3−メチル−2−プロペン酸−イソプロピル、2−(プロピオニル)−3−(イソブチル)−3−メチル−2−プロペン酸−n−ブチル、2−(プロピオニル)−3−(イソブチル)−3−メチル−2−プロペン酸−イソブチル、2−(プロピオニル)−3−(イソブチル)−3−メチル−2−プロペン酸−t−ブチル、2−(プロピオニル)−3−(イソブチル)−3−メチル−2−プロペン酸−n−ヘキシル、
2−(アセチル)−3−ベンジル−2−プロペン酸メチル、2−(アセチル)−3−ベンジル−2−プロペン酸エチル、2−(アセチル)−3−ベンジル−2−プロペン酸−n−プロピル、2−(アセチル)−3−ベンジル−2−プロペン酸−イソプロピル、2−(アセチル)−3−ベンジル−2−プロペン酸−n−ブチル、2−(アセチル)−ベンジル−2−プロペン酸−イソブチル、2−(アセチル)−3−ベンジル−2−プロペン酸−t−ブチル、2−(アセチル)−3−ベンジル−2−プロペン酸−n−ヘキシル、
2−(プロピオニル)−3−ベンジル−2−プロペン酸メチル、2−(プロピオニル)−3−ベンジル−2−プロペン酸エチル、2−(プロピオニル)−3−ベンジル−2−プロペン酸−n−プロピル、2−(プロピオニル)−3−ベンジル−2−プロペン酸−イソプロピル、2−(プロピオニル)−3−ベンジル−2−プロペン酸−n−ブチル、2−(プロピオニル)−ベンジル−2−プロペン酸−イソブチル、2−(プロピオニル)−3−ベンジル−2−プロペン酸−t−ブチル、2−(プロピオニル)−3−ベンジル−2−プロペン酸−n−ヘキシル、
2−(アセチル)−3−シクロペンチル−2−プロペン酸メチル、2−(アセチル)−3−シクロペンチル−2−プロペン酸エチル、2−(アセチル)−3−シクロペンチル−2−プロペン酸−n−プロピル、2−(アセチル)−3−シクロペンチル−2−プロペン酸−イソプロピル、2−(アセチル)−3−シクロペンチル−2−プロペン酸−n−ブチル、2−(アセチル)−シクロペンチル−2−プロペン酸−イソブチル、2−(アセチル)−3−シクロペンチル−2−プロペン酸−t−ブチル、2−(アセチル)−3−シクロペンチル−2−プロペン酸−n−ヘキシル、が挙げられる。
上記一般式(1)で表される化合物のうち、好ましいものは、RおよびRのうちいずれか1つ以上が、ハロゲン原子、炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、炭素数3〜12の分岐アルキル基、ビニル基、炭素数3〜12の直鎖状アルケニル基若しくは分岐アルケニル基、炭素数1〜12の直鎖状ハロゲン置換アルキル基、炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルキル基、炭素数2〜12の直鎖状ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基、炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルキル基、炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルケニル基、及び炭素数6〜12の芳香族炭化水素基から選ばれる基である化合物である。
また、一般式(1)中、Rが水素原子またはメチル基である場合、Rの炭素数は2以上であることが好ましい。
一般式(1)中、RおよびRは、好ましくは、炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、炭素数3〜12の分岐アルキル基、ビニル基、炭素数3〜12の直鎖状アルケニル基若しくは分岐アルケニル基、炭素数1〜12の直鎖状ハロゲン置換アルキル基、炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルキル基、炭素数2〜12の直鎖状ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基、炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルキル基、炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルケニル基、および炭素数6〜12の芳香族炭化水素基の中から選ばれるいずれかの基である。
また、一般式(1)で表される化合物のうち、さらに好ましいものは、Rが、炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、炭素数3〜12の分岐アルキル基、ビニル基、炭素数3〜12の直鎖状アルケニル基若しくは分岐アルケニル基、炭素数1〜12の直鎖状ハロゲン置換アルキル基、炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルキル基、炭素数2〜12の直鎖状ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基、炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルキル基、炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルケニル基、および炭素数6〜12の芳香族炭化水素基から選ばれるいずれかの基である化合物である。より好ましくは、Rが、炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、または結合末端が−CH−である炭素数3〜12の分岐アルキル基のいずれかである化合物である。
また、一般式(1)で表される化合物のうち、特に好ましいものは、前記R〜Rの好ましい例示物と、前記Rの好ましい例示物と、Rの好ましい例示物との組み合わせで得られるものである。
また、一般式(1)で表わされる化合物は単独または2種類以上組み合わせて用いることもできる。
本発明における固体触媒成分(I)中には、前記一般式(1)で示される化合物(成分(A))以外の電子供与性化合物(以下、「電子供与性化合物(D)」ということがある。)が含まれていてもよい。このような電子供与性化合物(D)としては、酸ハライド類、酸アミド類、ニトリル類、酸無水物、ジエーテル化合物類および成分(A)以外の有機酸エステルなどが挙げられる。このような電子供与性化合物(D)は、2種以上併用することもできる。
本発明における固体触媒成分(I)中には、ポリシロキサン(以下、単に「ポリシロキサン(E)」ということがある。)が含まれていてもよい。ポリシロキサンを用いることにより生成ポリマーの立体規則性あるいは結晶性を向上させることができ、さらには生成ポリマーの微粉を低減することが可能となる。ポリシロキサンは、主鎖にシロキサン結合(−Si−O−Si−結合)を有する重合体であるが、シリコーンオイルとも総称され、25℃における粘度が0.02〜100cm/s(2〜10000センチストークス)、より好ましくは0.03〜5cm/s(3〜500センチストークス)を有する、常温で液状あるいは粘稠状の鎖状、部分水素化、環状あるいは変性ポリシロキサンである。
鎖状ポリシロキサンとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが、部分水素化ポリシロキサンとしては、水素化率10〜80%のメチルハイドロジェンポリシロキサンが、環状ポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンなどが挙げられる。
また、本発明における固体触媒成分(I)中のチタン、マグネシウム、ハロゲン原子、成分(A)の含有量は特に規定されないが、好ましくは、チタンが0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜8.0重量%、特に好ましくは1.0〜8.0重量%であり、マグネシウムが10〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%、特に好ましくは13〜25重量%、ハロゲン原子が20〜89重量%、より好ましくは30〜85重量%、特に好ましくは40〜75重量%、また成分(A)が合計0.5〜40重量%、より好ましくは合計1〜30重量%、特に好ましくは合計2〜25重量%である。
(オレフィン類重合用固体触媒成分(I)の製造方法の説明)
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分(I)は、下記のようなマグネシウム化合物、チタン化合物、必要に応じて前記チタン化合物以外のハロゲン化合物および前記一般式(1)で表される化合物(成分(A))を、相互に接触させることで調製される。
本発明の固体触媒成分の製造方法において使用されるマグネシウム化合物(以下、単に「マグネシウム化合物(B)」ということがある。)としては、ジハロゲン化マグネシウム、ジアルキルマグネシウム、ハロゲン化アルキルマグネシウム、ジアルコキシマグネシウム、ジアリールオキシマグネシウム、ハロゲン化アルコキシマグネシウムあるいは脂肪酸マグネシウム等から選ばれる一種以上が挙げられる。これらのマグネシウム化合物の中、ジハロゲン化マグネシウム、ジハロゲン化マグネシウムとジアルコキシマグネシウムの混合物、ジアルコキシマグネシウムが好ましく、特にジアルコキシマグネシウムが好ましい。
ジアルコキシマグネシウムとしては、ジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネシウム、ブトキシエトキシマグネシウム等が挙げられる。また、これらのジアルコキシマグネシウムは、金属マグネシウムを、ハロゲンあるいはハロゲン含有金属化合物等の存在下にアルコールと反応させてなるものでもよい。また、上記のジアルコキシマグネシウムは、一種以上併用することもできる。
更に、本発明の固体触媒成分の調製において、ジアルコキシマグネシウムを用いる場合は、顆粒状または粉末状であることが好ましく、その形状は不定形あるいは球状のものを使用し得る。例えば球状のジアルコキシマグネシウムを使用した場合、重合時により良好な粒子形状と狭い粒度分布を有する重合体粉末が得られ、重合操作時の生成重合体粉末の取扱い操作性が向上し、生成重合体粉末に含まれる微粉に起因する閉塞等の問題が解消される。
上記の球状のジアルコキシマグネシウムは、必ずしも真球状である必要はなく、楕円形状あるいは馬鈴薯形状のものを用いることもできる。具体的にその粒子の形状は、長軸径lと短軸径wとの比(l/w)が3以下であり、好ましくは1から2であり、より好ましくは1から1.5である。
また、上記ジアルコキシマグネシウムの平均粒径は、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときの、平均粒子径D50(体積積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径)で1〜200μmのものが好ましく、5〜150μmのものがより好ましい。球状のジアルコキシマグネシウムの場合、その平均粒径は1〜100μmが好ましく、5〜50μmがより好ましく、10〜40μmがさらに好ましい。また、その粒度については、微粉および粗粉の少ない、粒度分布の狭いものが望ましい。具体的には、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときに、5μm以下の粒子が20%以下であるものが好ましく、10%以下であるものがより好ましい。一方、100μm以上の粒子が10%以下であるものが好ましく、5%以下であるものがより好ましい。
更にその粒度分布をln(D90/D10)(ここで、D90は体積積算粒度分布における積算粒度で90%の粒径、D10は体積積算粒度分布における積算粒度で10%の粒径である。)で表すと3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。
上記の如き球状のジアルコキシマグネシウムの製造方法は、例えば特開昭58−41832号公報、同62−51633号公報、特開平3−74341号公報、同4−368391号公報、同8−73388号公報などに例示されている。
本発明では、マグネシウム化合物(B)は、溶液状のマグネシウム化合物、またはマグネシウム化合物懸濁液のいずれも用いることができる。マグネシウム化合物(B)が固体である場合には、マグネシウム化合物(B)の可溶化能を有する溶媒に溶解して溶液状のマグネシウム化合物とするか、マグネシウム化合物(B)の可溶化能を有さない溶媒に懸濁してマグネシウム化合物懸濁液として用いる。マグネシウム化合物(B)が液体である場合には、そのまま溶液状のマグネシウム化合物として用いることができ、マグネシウム化合物の可溶化能を有する溶媒にこれを溶解して溶液状のマグネシウム化合物として用いることもできる。
固体のマグネシウム化合物(B)を可溶化しうる化合物としては、アルコール、エーテルおよびエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、オクタノール、ドデカノール、オクタデシルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、クミルアルコール、イソプロピルアルコール、イソプロピルベンジルアルコール、エチレングリコールなどの炭素原子数が1〜18のアルコール;トリクロロメタノール、トリクロロエタノール、トリクロロヘキサノールなどの炭素原子数が1〜18のハロゲン含有アルコール;メチルエーテル、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、テトラヒドロフラン、エチルベンジルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテルなどの炭素原子数が2〜20のエーテル;テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−イソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラヘキソキシチタン、テトラブトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウムなどの金属酸エステルなどが挙げられ、中でも、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノールなどのアルコールが好ましく、2−エチルヘキサノールが特に好ましい。
一方、マグネシウム化合物(B)の可溶化能を有さない媒体としては、マグネシウム化合物を溶解することがない、飽和炭化水素溶媒または不飽和炭化水素溶媒が用いられる。飽和炭化水素溶媒または不飽和炭化水素溶媒は、安全性や工業的汎用性が高いことから、具体的にはヘキサン、ヘプタン、デカン、メチルヘプタンなどの沸点50〜200℃の直鎖状または分岐脂肪族炭化水素化合物、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレンなどの沸点50〜200℃の脂環式炭化水素化合物、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの沸点50〜200℃の芳香族炭化水素化合物が挙げられ、中でも、ヘキサン、ヘプタン、デカンなどの沸点50〜200℃の直鎖状脂肪族炭化水素化合物や、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの沸点50〜200℃の芳香族炭化水素化合物が、好ましく用いられる。また、これらは単独で用いても、2種以上混合して使用してもよい。
本発明における成分(I)の調製に用いられるチタン化合物(以下「チタン化合物(C)」ということがある。)としては、例えば、一般式(6);
Ti(OR154−j (6)
(R15は、炭素数1〜10の炭化水素基であり、OR15基が複数存在する場合、複数のR15は同一であっても異なっていてもよく、Xはハロゲン原子であり、Xが複数存在する場合、各Xは同一であっても異なっていてもよく、jは0または1〜4の整数である。)で表わされる4価のチタン化合物を挙げることができる。
前記一般式(6)で表わされる4価のチタン化合物は、アルコキシチタン、チタンハライドもしくはアルコキシチタンハライド群から選択される化合物の1種又は2種以上である。具体的には、チタンテトラフルオライド、チタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラアイオダイド等のチタンテトラハライド、アルコキシチタンハライドとしてメトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、プロポキシチタントリクロライド、n−ブトキシチタントリクロライド等のアルコキシチタントリハライド、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジプロポキシチタンジクロライド、ジ−n−ブトキシチタンジクロライド、等のジアルコキシチタンジハライド、トリメトキシチタンクロライド、トリエトキシチタンクロライド、トリプロポキシチタンクロライド、トリ−n−ブトキシチタンクロライド等のトリアルコキシチタンハライドが挙げられる。これらの中ではハロゲン含有チタン化合物が好ましく用いられ、チタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラアイオダイド等のチタンテトラハライドが好ましく、特に好ましくはチタンテトラクロライドである。これらのチタン化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。さらに、これら一般式(6)で表わされる4価のチタン化合物は、炭化水素化合物あるいはハロゲン化炭化水素化合物等に希釈して使用してもよい。
本発明の固体触媒成分(I)の調製において、必要に応じて、上記チタン化合物(C)以外のハロゲン化合物を使用してもよい。ハロゲン化合物としては、四価のハロゲン含有ケイ素化合物が挙げられる。より具体的には、テトラクロロシラン(四塩化ケイ素)、テトラブロモシラン等のシランテトラハライド、メトキシトリクロロシラン、エトキシトリクロロシラン、プロポキシトリクロロシラン、n−ブトキシトリクロロシラン、ジメトキシジクロロシラン、ジエトキシジクロロシラン、ジプロポキシジクロロシラン、ジ−n−ブトキシジクロロシラン、トリメトキシクロロシラン、トリエトキシクロロシラン、トリプロポキシクロロシラン、トリ−n−ブトキシクロロシラン等のアルコキシ基含有ハロゲン化シランが挙げられる。
本発明の固体触媒成分(I)の調製で使用される成分(A)は、本発明の固体触媒成分(I)の成分(A)と同様であり、その説明を省略する。また、本発明の固体触媒成分(I)の調製で必要に応じて使用される電子供与性化合物(D)は、本発明の固体触媒成分(I)の電子供与性化合物(D)と同様であり、その説明を省略する。また、本発明の固体触媒成分(I)の調製で必要に応じて使用されるポリシロキサン(E)は、本発明の固体触媒成分(I)のポリシロキサン(E)と同様であり、その説明を省略する。
本発明において、好適な固体触媒成分(I)の調製方法としては、例えば、還元性を有しない固体マグネシウム化合物、成分(A)およびハロゲン化チタンを共粉砕する方法や、アルコール等の付加物を有するハロゲン化マグネシウム化合物、成分(A)およびハロゲン化チタンを不活性炭化水素溶媒の共存下、接触させる方法、ジアルコキシマグネシウム、成分(A)およびハロゲン化チタンを不活性炭化水素溶媒共存下で接触させる方法、還元性を有するマグネシウム化合物、成分(A)およびハロゲン化チタンを接触させて固体触媒を析出させる方法などが挙げられる。
以下に、オレフィン類重合用固体触媒成分(I)の具体的な調製方法を例示する。なお、以下の(1)〜(16)の方法において、成分(A)に加え、成分(A)以外の電子供与性化合物(D)を併用してもよい。さらに、上記接触は、例えば、ケイ素、リン、アルミニウム等の他の反応試剤や界面活性剤の共存下に行ってもよい。
(1)ハロゲン化マグネシウムをアルコキシチタン化合物に溶解させた後、有機ケイ素化合物を接触させて固体生成物を得、該固体生成物とハロゲン化チタンを反応させ、次いで成分(A)を接触反応させてオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を調製する方法。なおこの際、成分(I)に対し、さらに有機アルミニウム化合物、有機ケイ素化合物及びオレフィン類で予備的な重合処理を行なうこともできる。
(2)ハロゲン化マグネシウム及びアルコールを反応させて均一溶液とした後、該均一溶液にカルボン酸無水物を接触させ、次いでこの溶液に、ハロゲン化チタン及び成分(A)を接触反応させて固体物を得、該固体物に更にハロゲン化チタンを接触させてオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を調製する方法。
(3)金属マグネシウム、ブチルクロライド及びジアルキルエーテルを反応させることによって有機マグネシウム化合物を合成し、該有機マグネシウム化合物にアルコキシチタンを接触反応させて固体生成物を得、該固体生成物に成分(A)及びハロゲン化チタンを接触反応させてオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を調製する方法。なおこの際、該固体成分に対し、有機アルミニウム化合物、有機ケイ素化合物及びオレフィンで予備的な重合処理を行ない、オレフィン類重合用固体触媒成分(I)を調製することもできる。
(4)ジアルキルマグネシウム等の有機マグネシウム化合物と、有機アルミニウム化合物を、炭化水素溶媒の存在下、アルコールと接触反応させて均一溶液とし、この溶液に四塩化ケイ素等のケイ素化合物を接触させて固体生成物を得、次いで芳香族炭化水素溶媒の存在下で該固体生成物に、ハロゲン化チタン及び成分(A)を接触反応させた後、更に四塩化チタンを接触させてオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を得る方法。
(5)塩化マグネシウム、テトラアルコキシチタン及び脂肪族アルコールを、炭化水素溶媒の存在下で接触反応させて均質溶液とし、その溶液とハロゲン化チタンを接触した後昇温して固体物を析出させ、該固体物に成分(A)を接触させ、更にハロゲン化チタンと反応させてオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を得る方法。
(6)金属マグネシウム粉末、アルキルモノハロゲン化合物及びヨウ素を接触反応させ、その後テトラアルコキシチタン、酸ハロゲン化物、及び脂肪族アルコールを、炭化水素溶媒の存在下で接触反応させて均質溶液とし、その溶液に四塩化チタンを加えた後昇温し、固体生成物を析出させ、該固体生成物に成分(A)を接触させ、更に四塩化チタンと反応させてオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を調製する方法。
(7)ジアルコキシマグネシウムを炭化水素溶媒に懸濁させた後、四塩化チタンと接触させた後に昇温し、成分(A)と接触させて固体生成物を得、該固体生成物を炭化水素溶媒で洗浄した後、炭化水素溶媒の存在下、再度四塩化チタンと接触させてオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を調製する方法。なおこの際、該固体成分を、炭化水素溶媒の存在下又は不存在下で加熱処理することもできる。
(8)ジアルコキシマグネシウムを炭化水素溶媒に懸濁させた後、ハロゲン化チタン及び成分(A)と接触反応させて固体生成物を得、該固体生成物を不活性有機溶媒で洗浄した後、炭化水素溶媒の存在下、再度ハロゲン化チタンと接触・反応させてオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を得る方法。なおこの際、該固体成分とハロゲン化チタンとを2回以上接触させることもできる。
(9)ジアルコキシマグネシウム、塩化カルシウム及びアルコキシ基含有ケイ素化合物を共粉砕し、得られた粉砕固体物を炭化水素溶媒に懸濁させた後、ハロゲン化チタン及び成分(A)と接触反応させ、次いで更にハロゲン化チタンを接触させることによりオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を調製する方法。
(10)ジアルコキシマグネシウム及び成分(A)を炭化水素溶媒に懸濁させ、その懸濁液をハロゲン化チタンと接触、反応させて固体生成物を得、該固体生成物を炭化水素溶媒で洗浄後、さらに炭化水素溶媒の存在下、ハロゲン化チタンを接触させてオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を得る方法。
(11)ステアリン酸マグネシウムのような脂肪族マグネシウムを、ハロゲン化チタン及び成分(A)と接触反応させ、その後更にハロゲン化チタンと接触させることによりオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を調製する方法。
(12)ジアルコキシマグネシウムを炭化水素溶媒に懸濁させ、ハロゲン化チタンと接触させた後昇温し、成分(A)と接触反応させて固体生成物を得、該固体生成物を炭化水素溶媒で洗浄した後、炭化水素溶媒の存在下、再度ハロゲン化チタンと接触させてオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を調製する方法であって、上記懸濁・接触並びに接触反応のいずれかの段階において、塩化アルミニウムを接触させてオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を調製する方法。
(13)ジアルコキシマグネシウム、2−エチルヘキシルアルコール及び二酸化炭素を、炭化水素溶媒の存在下で接触反応させて均一溶液とし、この溶液にハロゲン化チタン及び成分(A)を接触反応させて固体物を得、更にこの固体物をテトラヒドロフランに溶解させ、その後更に固体生成物を析出させ、この固体生成物にハロゲン化チタンを接触反応させ、必要に応じハロゲン化チタンとの接触反応を繰り返し行い、オレフィン類重合用固体触媒成分(I)を調製する方法。なおこの際、上記接触・接触反応・溶解のいずれかの段階において、例えばテトラブトキシシラン等のケイ素化合物を使用することもできる。
(14)塩化マグネシウム、有機エポキシ化合物及びリン酸化合物を炭化水素溶媒中に懸濁させた後、加熱して均一溶液とし、この溶液に、カルボン酸無水物及びハロゲン化チタンを接触反応させて固体生成物を得、該固体生成物に成分(A)を接触させて反応させ、得られた反応生成物を炭化水素溶媒で洗浄した後、炭化水素溶媒の存在下、再度ハロゲン化チタンを接触させることによりオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を得る方法。
(15)ジアルコキシマグネシウム、チタン化合物及び成分(A)を炭化水素溶媒の存在下に接触反応させ、得られた反応生成物にポリシロキサン等のケイ素化合物を接触反応させ、更にハロゲン化チタンを接触反応させ、次いで有機酸の金属塩を接触反応させた後、再度ハロゲン化チタンを接触させることによりオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を得る方法。
(16)ジアルコキシマグネシウムと成分(A)を炭化水素溶媒に懸濁させた後、昇温してハロゲン化ケイ素と接触させ、その後ハロゲン化チタンと接触させて固体生成物を得、該固体生成物を炭化水素溶媒で洗浄した後、炭化水素溶媒の存在下、再度ハロゲン化チタンと接触させてオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を調製する方法。なおこの際、該固体成分を、炭化水素溶媒の存在下又は不存在下で加熱処理してもよい。
なお、オレフィン重合時の重合活性、生成ポリマーの立体規則性をさらに向上させるため、これら(1)〜(16)の方法において、洗浄後の上記固体触媒成分(I)に、新たにハロゲン化チタンおよび炭化水素溶媒を20〜100℃で接触させ、昇温して、反応処理(第2次反応処理)を行った後、常温で液体の不活性有機溶媒で洗浄する操作を1〜10回繰り返してもよい。
本発明における成分(I)の調製方法としては、上記のいずれの方法であっても好適に用いることができ、中でも(1)、(3)、(4)、(5)、(7)、(8)、(10)の方法が好ましく、(3)、(4)、(7)、(8)、(10)の方法が、高立体規則性を有するオレフィン類重合用固体触媒成分が得られる点で特に好ましい。最も好ましい調製方法は、ジアルコキシマグネシウムおよび成分(A)を、直鎖状炭化水素または分岐脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素および芳香族炭化水素から選ばれる炭化水素溶媒に懸濁させ、その懸濁液をハロゲン化チタン中に添加し、反応させて固体生成物を得、該固体生成物を炭化水素溶媒で洗浄後、さらに炭化水素溶媒の存在下、ハロゲン化チタンを接触させてオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を得る方法である。
得られたオレフィン類重合用固体触媒成分(I)は、該固体成分に対する重量比で1/3以下、好ましくは1/20〜1/6になるまで残留する溶媒を除くことで粉末状固体成分とし、気流分級等の手段により該粉末固体成分に混在する粒径11μm以下の微粉を除去することが好ましい。
前記固体触媒成分(I)を調製する際の各成分の使用量比は、調製法により異なるため一概には規定できないが、例えばマグネシウム化合物(B)1モル当たり、4価のチタンハロゲン化合物(C)が0.5〜100モル、好ましくは0.5〜50モル、より好ましくは1〜10モルであり、成分(A)(成分(I)が電子供与性化合物(D)を含有しない場合)、または成分(A)と電子供与性化合物(D)の合計量(成分(I)が電子供与性化合物(D)を含有する場合)が、0.01〜10モル、好ましくは0.01〜1モル、より好ましくは0.02〜0.6モルであり、溶媒が0.001〜500モル、好ましくは0.001〜100モル、より好ましくは0.005〜10モルであり、ポリシロキサン(E)が0.01〜100g、好ましくは0.05〜80g、より好ましくは1〜50gである。
(オレフィン類重合用触媒の説明)
本発明のオレフィン類重合用触媒は、(I)固体触媒成分、(II)有機アルミニウム化合物(以下、単に「有機アルミニウム化合物(F)」ということがある。)および(III)外部電子供与性化合物(以下、単に「外部電子供与性化合物(G)」ということがある。)を接触させることでオレフィン重合用触媒を形成し、該触媒の存在下にオレフィン類の重合もしくは共重合を行うことができる。
(II)有機アルミニウム化合物としては、上記一般式(2)で表される化合物であれば、特に制限されないが、Rとしては、エチル基、イソブチル基が好ましく、Qとしては、水素原子、塩素原子、臭素原子、エトキシ基、フェノキシ基が好ましく、pは、2、2.5又は3が好ましく、3が特に好ましい。
このような有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイドなどのハロゲン化アルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド等のアルキルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド等のアルキルアルミニウムアルコキシドが挙げられ、中でもジエチルアルミニウムクロライドなどのハロゲン化アルキルアルミニウム、またはトリエチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウムが好ましく用いられ、特に好ましくはトリエチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムである。これらのアルミニウム化合物は、1種あるいは2種以上が使用できる。
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられる(III)外部電子供与性化合物としては、酸素原子又は窒素原子を含有する有機化合物が挙げられ、例えばアルコール類、フェノール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、酸ハライド類、アルデヒド類、アミン類、アミド類、ニトリル類、イソシアネート類、有機ケイ素化合物、中でもSi−O−C結合を有する有機ケイ素化合物またはSi−N−C結合を有するアミノシラン化合物等が挙げられる。
上記のなかでも、特に安息香酸エチル、p−メトキシ安息香酸エチル、p−エトキシ安息香酸エチル、p−トルイル酸メチル、p−トルイル酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル等のエステル類、ジエーテル類、Si−O−C結合を含む有機ケイ素化合物、Si−N−C結合を含むアミノシラン化合物が好ましく、Si−O−C結合を有する有機ケイ素化合物、Si−N−C結合を有するアミノシラン化合物、1,3−ジエーテル化合物から選ばれる少なくとも一種が特に好ましい。
上記(III)の外部電子供与性化合物のうち、Si−O−C結合を有する有機ケイ素化合物としては、下記一般式(3);
Si(OR4−q (3)
(式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基若しくはシクロアルケニル基、又は炭素数6〜15の芳香族炭化水素基若しくは置換基を有する芳香族炭化水素基を示し、同一または異なっていてもよい。Rは炭素数1〜4のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、又は置換基を有する炭素数7〜12の芳香族炭化水素基を示し、同一または異なっていてもよい。qは0≦q≦3の整数である。)
で表わされる有機ケイ素化合物が挙げられる。
上記(III)の外部電子供与性化合物のうち、Si−N−C結合を有するアミノシラン化合物としては、下記一般式(4);
(RN)SiR10 4−s (4)
(式中、R及びRは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜20のアルケニル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基若しくはシクロアルケニル基、又は炭素数6〜20のアリール基であり、同一であっても異なってもよく、互いに結合して環を形成してもよい。R10は炭素数1〜20のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、ビニルオキシ基、炭素数3〜20のアルケニルオキシ基、炭素数3〜20のシクロアルキル基若しくはシクロアルキルオキシ基、または炭素数6〜20のアリール基若しくはアリールオキシ基を示し、R10が複数ある場合、複数のR10は同一でも異なってもよい。sは1から3の整数である。)
で表わされるアミノシラン化合物が挙げられる。
上記のような有機ケイ素化合物およびアミノシラン化合物としては、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、アルキル(シクロアルキル)アルコキシシラン、(アルキルアミノ)アルコキシシラン、アルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン、シクロアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、テトラキス(アルキルアミノ)シラン、アルキルトリス(アルキルアミノ)シラン、ジアルキルビス(アルキルアミノ)シラン、トリアルキル(アルキルアミノ)シラン等を挙げることができ、具体的には、フェニルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソプロピルイソブチルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ビス(エチルアミノ)メチルエチルシラン、t−ブチルメチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(エチルアミノ)ジシクロヘキシルシラン、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(メチルアミノ)(メチルシクロペンチルアミノ)メチルシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ビス(シクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロキノリノ)ジメトキシシラン、エチル(イソキノリノ)ジメトキシシラン等が挙げられ、中でも、フェニルトリメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソプロピルイソブチルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、t−ブチルメチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(エチルアミノ)ジシクロヘキシルシラン、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン等が好ましく用いられる。また、該有機ケイ素化合物は、一般式(3)で表わされる有機ケイ素化合物及び一般式(4)で表わされる有機ケイ素化合物から選択される1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
また、2位に置換基を有する1,3−ジエーテル化合物としては、下記一般式(5);
11OCHCR1213CHOR14 (5)
(式中、R12及びR13は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基若しくはシクロアルケニル基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基若しくはハロゲン置換芳香族炭化水素基、置換基を有する炭素数7〜12の芳香族炭化水素基、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、または炭素数2〜12のジアルキルアミノ基のいずれかで、同一または異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。R11及びR14は炭素数1〜12のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基若しくはハロゲン置換芳香族炭化水素基、または置換基を有する炭素数7〜12の芳香族炭化水素基を示し、同一または異なっていてもよい)で表わされる1,3−ジエーテル化合物が挙げられる。
具体的には、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン等が挙げられ、中でも、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン等が好ましく用いられる。
また、上記(III)の外部電子供与性化合物として、前記一般式(3)で表わされる有機ケイ素化合物、前記一般式(4)で表わされる有機ケイ素化合物および前記一般式(5)で表わされるジエーテル化合物の中から1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明においては、前記オレフィン重合触媒の存在下に、オレフィン類の重合もしくは共重合を行なう。オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられ、これらのオレフィン類は1種あるいは2種以上併用することができ、中でもエチレン、プロピレンおよび1−ブテンが好適に用いられる。特に好ましいものはプロピレンである。
プロピレンの重合を行う場合、他のオレフィン類との共重合を行なうこともできる。共重合されるオレフィン類としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等であり、これらのオレフィン類は1種あるいは2 種以上併用することができる。とりわけ、エチレンおよび1−ブテンが好適に用いられる。
各成分の使用量比は、本発明の効果に影響を及ぼすことのない限り任意であり、特に限定されるものではないが、通常有機アルミニウム化合物(F)は固体触媒成分(I)中のチタン原子1モル当たり、1〜2000モル、好ましくは50〜1000モルの範囲で用いられる。外部電子供与性化合物(G)は、有機アルミニウム化合物(F)1モル当たり、0.002〜10モル、好ましくは0.01〜2モル、特に好ましくは0.01〜0.5モルの範囲で用いられる。
各成分の接触順序は任意であるが、重合系内にまず有機アルミニウム化合物(F)を装入し、次いで外部電子供与性化合物(G)を接触させた後に成分(I)を接触させることが望ましい。本発明におけるオレフィンの重合は、有機溶媒の存在下でも不存在下でも行なうことができ、またプロピレン等のオレフィンモノマーは、気体および液体のいずれの状態でも用いることができる。重合温度は200℃以下、好ましくは100℃以下であり、重合圧力は10MPa以下、好ましくは5MPa以下である。また、連続重合法、バッチ式重合法のいずれでも可能である。更に、重合反応は1段で行なってもよいし、2段以上で行なってもよい。
更に、本発明においてオレフィン類重合用固体触媒成分、有機アルミニウム化合物、および外部電子供与性化合物を含有する触媒を用いてオレフィンを重合するにあたり(本重合ともいう。)、触媒活性、立体規則性および生成する重合体の粒子性状等を一層改善させるために、本重合に先立ち予備重合を行なうことが望ましい。予備重合の際には、本重合と同様のオレフィン類あるいはスチレン等のモノマーを用いることができる。
予備重合を行なうに際して、各成分およびモノマーの接触順序は任意であるが、好ましくは、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず有機アルミニウム化合物(F)を装入し、次いで固体触媒成分(I)を接触させた後、プロピレン等のオレフィン、またはプロピレンと1種あるいは2種以上の他のオレフィン類の混合物を接触させる。
なお、外部電子供与性化合物(G)を組み合わせて予備重合を行なう場合は、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず有機アルミニウム化合物(F)を装入し、次いで外部電子供与性化合物(G)を接触させ、更に固体触媒成分(I)を接触させた後、プロピレン等のオレフィン、またはプロピレンと1種あるいは2種以上の他のオレフィン類の混合物を接触させる方法が望ましい。
プロピレンブロック共重合体を製造する場合は、2段階以上の多段重合により行い、通常第1段目で重合用触媒の存在下にプロピレンを重合し、第2段目でエチレン及びプロピレンを共重合することにより得られる。第2段目あるいはこれ以降の重合時にプロピレン以外のα−オレフィンを共存あるいは単独で重合させることも可能である。α−オレフィンの例としては、エチレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられる。具体的には、第1段目でポリプロピレン部の割合が20〜80重量%になるように重合温度および時間を調整して重合を行ない、次いで第2段目において、エチレンおよびプロピレンあるいは他のα−オレフィンを導入し、エチレン−プロピレンゴム(EPR)などのゴム部割合が20〜80重量%になるように重合する。第1段目及び第2段目における重合温度は共に、200℃以下、好ましくは100℃以下であり、重合圧力は10MPa以下、好ましくは5MPa以下である。また、各重合段階での重合時間あるいは連続重合の場合、滞留時間は通常1分〜5時間である。
重合方法としては、シクロヘキサン、ヘプタン等の不活性炭化水素化合物の溶媒を使用するスラリー重合法、液化プロピレン等の溶媒を使用するバルク重合法、及び実質的に溶媒を使用しない気相重合法が挙げられる。好ましい重合方法としては、バルク重合法、気相重合法である。
上記一般式(1)で表される化合物は、ケト基のC=O酸素及びエステル基のC=O酸素が、立体障害を有する炭素を介して適当な距離と配位の方向に制御され、フタル酸ジエステルやコハク酸ジエステルなどのジエステル化合物、ジケトン或いは、ジエーテルのような均一な配位とは異なる、マグネシウム化合物上の適当な部位に選択的に配位すると推定される。また、その効果で活性点を形成するチタン化合物の担持位置にも規制が加わり、結果として立体規則性や高活性を発するチタン活性点を選択的かつ多量に形成し、かつ分子量分布が必要以上に狭くなることを防いでいると考えられる。そのため、本発明においては、電子供与性化合物として、固体触媒成分(I)が、上記一般式(1)で表される化合物を含有することにより、広くも狭くもない適度な分子量分布を有するオレフィン類重合体が、高収率で得られる。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
〔ケトエステル成分(A)の合成〕
(製造例1)
〔2−(アセチル)−3−フェニル−2−プロペン酸メチル(A−1)の合成〕
トルエン100ml中に、アセト酢酸メチル200ミリモルとベンズアルデヒド220ミリモルを加え、撹拌しながらピペリジン7ミリモルを加え、昇温して環流下で120分保持した。該反応物を蒸留により精製し、反応生成物を得た。
核磁気共鳴装置によるH−NMRスペクトルの分析を行った結果、ケミカルシフト値は、2.42(s,3H),3.83(s,3H), 7.41(m,5H), 7.58(s,1H)であり、このことから、得られた生成物が2−(アセチル)−3−フェニル−2−プロペン酸メチルのシス体およびトランス体の混合物であることを確認した。得られた目的物の収率は53%であった。なお、ガスクロマトグラフィーによる測定を行なったところ、得られた2−(アセチル)−3−フェニル−2−プロペン酸メチルの純度は、99%であった。
(製造例2)
〔2−(アセチル)−3−フェニル−2−プロペン酸エチル(A−2)の合成〕
トルエン100ml中に、アセト酢酸エチル200ミリモルとベンズアルデヒド220ミリモルを加え、撹拌しながらピペリジン7ミリモルを加え、昇温して環流下で120分保持した。該反応物を蒸留により精製し、反応生成物を得た。
核磁気共鳴装置によるH−NMRスペクトルの分析を行った結果、ケミカルシフト値は、1.33(t,3H),3.81(s,3H),4.45(q,2H),7.43(m,5H),7.59(s,1H)であり、このことから、得られた生成物が2−(アセチル)−3−フェニル−2−プロペン酸エチルであることを確認した。得られた目的物の収率は50%であった。なお、ガスクロマトグラフィーによる測定を行なったところ、得られた2−(アセチル)−3−フェニル−2−プロペン酸エチルの純度は97%であった。
(実施例1)
〔固体触媒成分の合成〕
攪拌装置を備え、窒素ガスで充分に置換された内容積500mlのフラスコに、ジエトキシマグネシウム10g(87.4ミリモル)を分取し、トルエン55mlを加えて懸濁状態とし、次いで該懸濁液に四塩化チタン30ml、2−(アセチル)−3−フェニル−2−プロペン酸メチル15.3ミリモル(3.1g)を加え、昇温して90℃とした。その後、90℃の温度を保持した状態で90分反応させた。反応終了後、上澄みを抜き出しTiClを20ml追加し、さらに100℃で2時間反応させた。反応終了後、反応生成物を100℃のトルエン75mlで4回洗浄した。ついで40℃のn−ヘプタン75mlで6回洗浄して固体触媒成分を得た。この固体触媒成分の固液を分離して固体分中のチタン含有量を測定したところ3.7重量%であった。
〔重合触媒の形成および重合〕
窒素ガスで完全に置換された内容積2.0リットルの攪拌機付オートクレーブに、トリエチルアルミニウム1.32ミリモル、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CMDMS)0.13ミリモルおよび前記固体触媒成分をチタン原子として0.0026ミリモル装入し、重合用触媒を形成した。その後、水素ガス1.5リットル、液化プロピレン1.4リットルを装入し、20℃で5分間予備重合を行なった後に昇温し、70℃で1時間重合反応を行なった。この時の固体触媒成分1g当たりの重合活性、生成重合体中のp−キシレン可溶分の割合(XS)、生成重合体のメルトフローレイトの値(MFR)および生成重合体の分子量分布を表1に示した。
(固体触媒成分1g当たりの重合活性)
固体触媒成分1g当たりの重合活性については、下記式により求めた。
重合活性(g−pp/g−触媒) = 重合体の質量(g)/固体触媒成分の質量(g)
(重合体のキシレン可溶分(XS)の測定)
攪拌装置を具備したフラスコ内に、4.0gの重合体(ポリプロピレン)と、200mlのp−キシレンを装入し、外部温度をキシレンの沸点以上(約150℃)とすることにより、フラスコ内部のp-キシレンの温度を沸点下(137〜138℃)に維持しつつ、2時間かけて重合体を溶解した。その後1時間かけて液温を23℃まで冷却し、不溶解成分と溶解成分とを濾過分別した。上記溶解成分の溶液を採取し、加熱減圧乾燥によりp−キシレンを留去し、得られた残留物をキシレン可溶分(XS)とし、その重量を重合体(ポリプロピレン)に対する相対値(重量%)で求めた。
(重合体の溶融流れ性(MFR))
重合体の溶融流れ性を示すメルトフローレート(MFR)は、ASTM D 1238、JIS K 7210に準じて測定した。
(重合体の分子量分布測定)
重合体の分子量分布は、ゲルパーミエションクロマトグラフィ(GPC)(Waters社製 Alliance GPC/V2000)にて以下の条件で測定して求めた重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの比Mw/Mnによって評価した。
溶媒:o−ジクロロベンゼン(ODCB)
測定温度: 140℃
カラム: 昭和電工社製 UT-806×3本、HT−803×1本
サンプル濃度: 1mg/mL−ODCB (10mg/10ml−ODCB)
注入量: 0.5ml
流量: 1.0ml/min
(実施例2)
シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CMDMS)0.13ミリモルに代えて、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)0.13ミリモルを用いた以外は、実施例1と同様に重合を行なった。結果を表1に示した。
(比較例1)
2−(アセチル)−3−フェニル−2−プロペン酸メチル15.3ミリモルに代えて、ジイソブチルマロン酸ジエチル15.3ミリモルを用いた以外は、実施例1と同様に固体成分を調製し、更に重合触媒の形成および重合を行なった。なお、得られた固体触媒成分中のチタン含有量は3.9重量%であった。結果を表1に示した。
(比較例2)
2−(アセチル)−3−フェニル−2−プロペン酸メチル15.3ミリモルに代えて、ジイソプロピルコハク酸ジエチル15.3ミリモルを用いた以外は、実施例1と同様に固体成分を調製し、更に重合触媒の形成および重合を行なった。なお、得られた固体触媒成分中のチタン含有量は2.1重量%であった。結果を表1に示した。
(比較例3)
シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CMDMS)0.13ミリモルに代えて、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)0.13ミリモルを用いた以外は、比較例2と同様に重合を行なった。結果を表1に示した。
(比較例4)
2−(アセチル)−3−フェニル−2−プロペン酸メチル15.3ミリモルに代えて、エチル 2−プロピル−3−ブチル−3−オキソ−プロピオネート15.3ミリモルを用いた以外は、実施例1と同様に固体成分を調製し、更に重合触媒の形成および重合を行なった。なお、得られた固体触媒成分中のチタン含有量は3.4重量%であった。結果を表1に示した。
(比較例5)
シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CMDMS)0.13ミリモルに代えて、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)0.13ミリモルを用いた以外は比較例4と同様に重合を行なった。重合結果を表1に示した。
(実施例3)
2−(アセチル)−3−フェニル−2−プロペン酸メチル15.3ミリモルに代えて、製造例2で得られた2−(アセチル)−3−フェニル−2−プロペン酸エチル15.3ミリモルを用いた以外は、実施例1と固体成分を調製し、更に重合触媒の形成および重合を行なった。なお、得られた固体触媒成分中のチタン含有量は3.7重量%であった。結果を表1に示した。
(実施例4)
(固体触媒成分の調製)
充分に窒素で置換した500ml丸底フラスコに、n−ヘプタン120mlを導入した。更に、無水塩化マグネシウム15g、Ti(O−n−Bu)を106ml添加して、90℃で1.5時間反応させ均一な溶解液とした。次いで均一な溶解液を40℃に冷却した。40℃に保持したままメチルハイドロジェンポリシロキサン(20センチストークスのもの)を24ml添加し、5時間析出反応を行った。析出した固体生成物をn−ヘプタンで充分に洗浄した。
次いで、窒素で充分に置換した攪拌装置を備えた容量500ml丸底フラスコに、析出した固体生成物を40g導入し、更にn−ヘプタンを導入して、固体生成物の濃度が200mg/mlとなる様にした。ここに、SiClを12ml添加して、90℃で3時間反応を行った。反応生成物をn−ヘプタンで充分に洗浄し、反応生成物の濃度が100mg/mlとなる様にn−ヘプタンを導入した。
2−(アセチル)−3−フェニル−2−プロペン酸メチル(A−1)10ミリモル添加し、70℃で1時間反応を行った。反応生成物をn−ヘプタンで充分に洗浄し、新たにn−ヘプタンを100ml導入した。ついで、TiClを20ml加えた後、95℃で3時間反応した。反応終了後、上澄みを抜き出し、さらにTiClを20ml追加し、100℃で2時間反応した。反応生成物をn−ヘプタンで充分に洗浄した。得られた固体生成物を減圧乾燥して粉末状の固体触媒成分を得た。なお、得られた固体触媒成分中のチタン含有量は4.1重量%であった。
<重合触媒の形成、オレフィンの重合および重合体の評価>
実施例2の固体触媒成分に代えて、上記固体触媒成分を使用した以外は、実施例2と同一の方法で、重合触媒の形成、オレフィンの重合および得られた重合体の評価を行なった。その結果を表1に示した。
(比較例6)
2−(アセチル)−3−フェニル−2−プロペン酸メチル10ミリモルに代えて、ジイソプロピルコハク酸ジエチル10ミリモルを用いた以外は、実施例4と同様に固体触媒成分を調製し、さらに、得られた固体触媒成分を用いた以外は実施例4と同様にして、重合触媒の形成、オレフィンの重合および得られた重合体の評価を行なった。なお、得られた固体触媒成分中のチタン含有量は3.3重量%であった。結果を表1に示した。
本発明のオレフィン類重合用触媒は、高い立体規則性を維持しながら、広くも狭くもない適度な分子量分布を有するオレフィン類重合体を高い収率で得ることができる。従って、既存の成型機を活用可能な汎用ポリオレフィンを、低コストで提供し得ると共に、高機能性を有するオレフィン類の共重合体の製造においても有用性が期待される。

Claims (9)

  1. チタン、マグネシウム、ハロゲンおよび下記一般式(1)で表わされる化合物を含有するオレフィン類重合用固体触媒成分。
    一般式(1);

    (1)
    (式中、RおよびRは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、炭素数3〜20の分岐アルキル基、ビニル基、炭素数3〜20の直鎖状アルケニル基若しくは分岐アルケニル基、炭素数1〜20の直鎖状ハロゲン置換アルキル基、炭素数3〜20の分岐ハロゲン置換アルキル基、炭素数2〜20の直鎖状ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3〜20の分岐ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルケニル基、炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルキル基、炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルケニル基、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、炭素数6〜24のハロゲン置換芳香族炭化水素基、結合末端が炭素原子である炭素数2〜24の窒素原子含有炭化水素基、結合末端が炭素原子である炭素数2〜24の酸素原子含有炭化水素基、結合末端が炭素原子である炭素数2〜24のリン含有炭化水素基、または炭素数1〜24のケイ素含有炭化水素基を示し、同一または異なっていてもよく、また、お互いに結合して環を形成してもよく、RおよびRのいずれか1つ以上は、水素原子以外の原子または基である。RおよびRは、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、炭素数3〜20の分岐アルキル基、ビニル基、炭素数3〜20の直鎖状アルケニル基若しくは分岐アルケニル基、炭素数1〜20の直鎖状ハロゲン置換アルキル基、炭素数3〜20の分岐ハロゲン置換アルキル基、炭素数2〜20の直鎖状ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3〜20の分岐ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルケニル基、炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルキル基、炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルケニル基、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、炭素数6〜24のハロゲン置換芳香族炭化水素基、結合末端が炭素原子である炭素数2〜24の窒素原子含有炭化水素基、結合末端が炭素原子である炭素数2〜24の酸素原子含有炭化水素基、結合末端が炭素原子である炭素数2〜24のリン含有炭化水素基、または炭素数1〜24のケイ素含有炭化水素基を示し、同一または異なっていてもよい。但し、R、R、R及びRにおいて、該炭素数2〜24の窒素原子含有炭化水素基は、結合末端がC=N基であるものを、該炭素数2〜24の酸素原子含有炭化水素基は、結合末端がカルボニル基であるものを、該炭素数2〜24のリン含有炭化水素基は、結合末端がC=P基であるものをそれぞれ除く。)
  2. 前記一般式(1)中のRまたはRが、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、炭素数3〜12の分岐アルキル基、ビニル基、炭素数3〜12の直鎖状アルケニル基若しくは分岐アルケニル基、炭素数1〜12の直鎖状ハロゲン置換アルキル基、炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルキル基、炭素数2〜12の直鎖状ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基、炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルキル基、炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルケニル基、または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基を示し、かつRおよびRのいずれか1つ以上は、水素原子以外の原子または基であることを特徴とする請求項1記載のオレフィン類重合用固体触媒成分。
  3. 前記一般式(1)中のRまたはRが、炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、炭素数3〜12の分岐アルキル基、ビニル基、炭素数3〜12の直鎖状アルケニル基若しくは分岐アルケニル基、炭素数1〜12の直鎖状ハロゲン置換アルキル基、炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルキル基、炭素数2〜12の直鎖状ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基、炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルキル基、炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルケニル基、または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基であることを特徴とする請求項1または2記載のオレフィン類重合用固体触媒成分。
  4. (I)請求項1〜3のいずれか1項に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分、
    (II)下記一般式(2);
    AlQ3−p (2)
    (式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、複数個ある場合は同一でも異なってもよく、Qは水素原子、炭素数1〜6のアルコキシ基又はハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)で表わされる有機アルミニウム化合物、および
    (III)外部電子供与性化合物から形成されることを特徴とするオレフィン類重合用触媒。
  5. 前記(III)の外部電子供与性化合物が、下記一般式(3)で表される有機ケイ素化合物および下記一般式(4)で表されるアミノシラン化合物から選択される少なくとも1種または2種以上であることを特徴とする請求項4記載のオレフィン類重合用触媒。
    一般式(3);
    Si(OR4−q (3)
    (式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基若しくはシクロアルケニル基、炭素数6〜15の芳香族炭化水素基又は置換基を有する芳香族炭化水素基を示し、同一または異なっていてもよい。Rは炭素数1〜4のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基又は置換基を有する炭素数7〜12の芳香族炭化水素基を示し、同一または異なっていてもよく、qは0≦q≦3の整数である。)
    一般式(4);
    (RN)SiR10 4−s (4)
    (式中、R及びRは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜20のアルケニル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基若しくはシクロアルケニル基または炭素数6〜20のアリール基を示し、RとRは同一であっても異なってもよく、互いに結合して環を形成してもよい。R10は炭素数1〜20のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、ビニルオキシ基、炭素数3〜20のアルケニルオキシ基、炭素数3〜20のシクロアルキル基若しくはシクロアルキルオキシ基、または炭素数6〜20のアリール基若しくはアリールオキシ基を示し、R10が複数ある場合、複数のR10は同一であっても異なっていてもよい。sは1から3の整数である。)
  6. 前記(III)の外部電子供与性化合物が、フェニルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、t−ブチルメチルビス(エチルアミノ)シラン、ジシクロヘキシルビス(エチルアミノ)シラン、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ジエチルアミノトリメトキシシランまたはジエチルアミノトリエトキシシランであることを特徴とする請求項5記載のオレフィン類重合用触媒。
  7. 前記(III)の外部電子供与性化合物が、下記一般式(5)で表わされるジエーテル化合物から選択される少なくとも1種または2種以上であることを特徴とする請求項4記載のオレフィン類重合用触媒。
    一般式(5);
    11OCHCR1213CHOR14 (5)
    (式中、R12およびR13は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基若しくはシクロアルケニル基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基若しくはハロゲン置換芳香族炭化水素基、置換基を有する炭素数7〜12の芳香族炭化水素基、炭素数1〜12のアルキルアミノ基または炭素数2〜12のジアルキルアミノ基を示し、同一または異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。R11およびR14は炭素数1〜12のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基若しくはハロゲン置換芳香族炭化水素基、または置換基を有する炭素数7〜12の芳香族炭化水素基を示し、同一または異なっていてもよい。)
  8. 前記一般式(5)で表されるジエーテル化合物が、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパンまたは9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンであることを特徴とする請求項7記載のオレフィン類重合用触媒。
  9. 請求項4〜請求項8のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒の存在下にオレフィン類の重合を行なうことを特徴とするオレフィン類重合体の製造方法。
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