JPWO2017188082A1 - 培地添加剤 - Google Patents

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Abstract

本発明は、下記一般式(I):で示される縮合多環式化合物またはその製薬学的に許容される塩を含有する動物細胞培養用培地添加剤、該化合物またはその製薬学的に許容される塩を含有する動物細胞培養用培地、及び該化合物またはその製薬学的に許容される塩を含有する培地中で動物細胞を培養することを含む動物細胞の培養方法等を提供する。

Description

本発明は、動物細胞の培養用の培地添加剤、培地及び培養方法に関する。
動物細胞を研究、物質生産、医療などに応用するために、効率よく増殖させる培養方法が求められている。その際、細胞の増殖を促進するために動物血清成分やタンパク質性増殖因子を添加した培地を用いることが望ましい。上記用途で利用する培地は、未知の組成が含まれないこと、即ち既知成分のみで構成されることが望ましく、特に医療用途では異種由来の成分を含まないことが求められる。また、一般にタンパク質は溶液状態で不安定であることから、より安定に存在できる低分子化合物を代わりに用いることが望ましい。動物細胞培養用の培地には高い頻度でインスリンが添加される(非特許文献1及び2)。インスリンもタンパク質の一種であり、溶液状態では会合し、不均一になるなど不安定であるため、インスリンの機能を代替する低分子化合物を添加した培地が求められている。
また、培地中でインスリン様作用を示す化合物として報告されているものに、化合物M(非特許文献3のCompound 2)、L−783281(非特許文献4)、TLK−19781(非特許文献5及び6)、NaVO(非特許文献7)、ertiprotafib(特許文献3)等のPTP1B(protein tyrosine phosphatase 1B)阻害剤が報告されている。また、亜鉛(zinc)がインスリン代替になるとの論文も報告されている(非特許文献8)。
ところで、特許文献1には、下記一般式(I)で示される、複素環を有する縮合多環式化合物:
が糖尿病治療効果を有することが記載されている。
国際公開第2005/042536号 国際公開第2002/044180号 国際公開第1999/061435号
Keenan J, et al., Cytotechnology. 2006 Mar;50(1-3):49-56. Li G, et al., Endocrinology.2005 Nov;146(11):4690-6. Qureshi SA, et al., J Biol Chem. 2000 Nov 24;275(47):36590-5. Zhang B, et al., Science. 1999 May 7;284(5416):974-7 Cheng M, et al., J Cell Biochem. 2004 Aug 15;92(6):1234-45 Lum RT, et al., J Med Chem. 2008 Oct 9;51(19):6173-87. Green A., Biochem J. 1986 Sep 15;238(3):663-9. Wong VV, et al., Cytotechnology. 2004 Jul;45(3):107-15.
本発明は、上記状況のもとになされた。本発明の目的は、低分子化合物を用いることで、インスリンを含まない培地で効率良く動物細胞を培養するための培地添加剤、培地、及び培養方法を提供することである。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の縮合多環式化合物がインスリンを含まない培地で効率良く動物細胞を培養させ得ることを見出した。本発明者らは更に研究を重ねた結果、驚くべきことに、糖取り込み促進活性を有することが報告されている(国際公開第2005/042536号)下記一般式(I)で示される縮合多環式化合物:
を培地に添加することにより、インスリンを実質的に含まない培地中であってもインスリン添加時と同程度以上に細胞の増殖を刺激し細胞死を抑制し得ることを見出した。さらに当該培地中で培養すると、多能性幹細胞の未分化能を保ったまま細胞を増殖させ得ることができることを見出した。本発明者らはこれらの知見に基づいて更に研究を重ね、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1] 下記一般式(I)で示される縮合多環式化合物またはその製薬学的に許容される塩を含有する動物細胞培養用培地添加剤。
{式中、Aは芳香環基、複素環基、または脂肪族環基を示し、Bは置換基を有してもよい芳香環、置換基を有してもよい複素環、または置換基を有してもよい脂肪族環を示し、Cは置換基を有してもよい複素環基を示し、Tは基中の二つの炭素原子が二重結合、三重結合を有しても良く、また基中の炭素原子が−O−、−S−、−NH−に一部が置換されても良い、置換基を有しても良い炭素数1〜7個からなるアルキレン基を示し、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいベンジルオキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいヘテロアリールオキシ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアリールビニル基、または置換基を有してもよいアリールエチニル基を示し、−X−および−Z−は、それぞれ独立して−O−、−NH−、−NR6−(式中、R6は置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいカルバモイル基、または置換基を有してもよいスルホニル基を示す)、−S−、−SO−、−SO2−、−CH2−、−CR45−(式中、R4、R5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)、または−CO−を示し、−W−は−NR9−(式中、R9は水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示す)、−O−、または−CR78−(式中、R7、R8は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)を示し、Yは窒素原子またはCHを示し、a、b及びcはそれぞれの炭素原子の位置を示す。但し、i)上記置換基は、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、アリール基、ヘテロアリール基からなる群から選ばれる。ii)Xが―CH2−、−CR45−(式中、R4およびR5は、前記と同義である)のとき、Yは窒素原子である。}
[2] Bが置換基を有してもよい脂肪族環であり、Cが置換基を有してもよい複素環基であり、−X−が−NH−、または−NR6−(式中、R6は置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいカルバモイル基、または置換基を有してもよいスルホニル基を示す)であり、Yが窒素原子であり、−Z−が−CH2−または−CR45−(式中、R4、R5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)であり、−W−が−NR9−(式中、R9は水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示す)であり、−T−が、−CR1112−(式中、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)、−CR1314−CR1516−(式中、R13〜R16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)または−CR17=CR18−(式中R17およびR18はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)である[1]記載の培地添加剤。
[3] Cの置換基を有してもよい複素環基が、置換基を有してもよいヘテロアリール基である[2]記載の培地添加剤。
[4] Aがフェニル基であり、Cの置換基を有してもよい複素環基が置換基を有してもよいフリル基、置換基を有してもよいチエニル基、置換基を有してもよいオキサゾリル基、置換基を有してもよいイソオキサゾリル基、置換基を有してもよいチアゾリル基、置換基を有してもよいオキサジアゾリル基、置換基を有してもよいチアジアゾリル基、置換基を有してもよいピリジル基、置換基を有してもよいピリドニル基、置換基を有してもよいピリダジニル基、置換基を有してもよいピリミジニル基、置換基を有してもよいイミダゾリル基、置換基を有してもよい4−オキソチアゾリジン−2−チオニル基のいずれかである[2]記載の培地添加剤。
[5] Bが置換基を有してもよいシクロヘキサン環である[4]記載の培地添加剤。
[6] 一般式(I)の−X−が−NH−または−N(CH)−であり、Yが窒素原子であり、−Z−が−CH2−であり、−W−が−NH−であり、Bが置換基を有してもよいシクロヘキサン環であり、Cが置換基を有してもよいオキサゾリル基、置換基を有してもよいチアゾリル基、置換基を有してもよいピリジル基であり、−T−が、−CR1112−(式中、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)、−CR1314−CR1516−(式中、R13〜R16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)または−CR17=CR18−(式中、R17およびR18は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)である[5]記載の培地添加剤。
[7] 一般式(I)の−X−が−NH−または−N(CH)−であり、Yが窒素原子であり、−Z−が−CH2−または−CR45−(式中、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)であり、−W−が−NH−であり、Aが複素環基であり、Bが置換基を有してもよいシクロヘキサン環であり、Cが置換基を有してもよいオキサゾリル基、置換基を有してもよいチアゾリル基、置換基を有してもよいピリジル基であり、−T−が、−CR1112−(式中、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)、−CR1314−CR1516−(式中、R13〜R16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)または−CR17=CR18−(式中、R17およびR18は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)である[2]記載の培地添加剤。
[8] 一般式(I)の−Z−が−CH2−であり、Aがヘテロアリール基である[7]記載の培地添加剤。
[9] R1、R2およびR3の少なくとも一つが、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、メチルチオ基、トリフルオロメチル基のいずれかで、残りが水素原子である[6]記載の培地添加剤。
[10] 一般式(I)のa、bおよびcの炭素原子の絶対配置が、それぞれ独立してRまたはSである[6]〜[8]のいずれかに記載の培地添加剤。
[11] 一般式(I)のaおよびbの炭素原子の絶対配置がともにRであり、cの炭素原子の絶対配置がRまたはSである[10]記載の培地添加剤。
[12] 一般式(I)のaおよびbの炭素原子の絶対配置がともにSであり、cの炭素原子の絶対配置がRまたはSである[10]記載の培地添加剤。
[13] 細胞増殖用である、[1]〜[12]のいずれかに記載の培地添加剤。
[14] 動物細胞が複能性幹細胞又は多能性幹細胞である、[1]〜[13]のいずれかに記載の培地添加剤。
[15] 動物細胞が、神経幹細胞、神経前駆細胞、胚性幹細胞(ES細胞)又は誘導多能性幹細胞(iPS細胞)である[1]〜[13]のいずれかに記載の培地添加剤。
[16] 下記一般式(I)で示される縮合多環式化合物またはその製薬学的に許容される塩を含有する動物細胞培養用培地。
{式中、Aは芳香環基、複素環基、または脂肪族環基を示し、Bは置換基を有してもよい芳香環、置換基を有してもよい複素環、または置換基を有してもよい脂肪族環を示し、Cは置換基を有してもよい複素環基を示し、Tは基中の二つの炭素原子が二重結合、三重結合を有しても良く、また基中の炭素原子が−O−、−S−、−NH−に一部が置換されても良い、置換基を有しても良い炭素数1〜7個からなるアルキレン基を示し、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいベンジルオキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいヘテロアリールオキシ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアリールビニル基、または置換基を有してもよいアリールエチニル基を示し、−X−および−Z−は、それぞれ独立して−O−、−NH−、−NR6−(式中、R6は置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいカルバモイル基、または置換基を有してもよいスルホニル基を示す)、−S−、−SO−、−SO2−、−CH2−、−CR45−(式中、R4、R5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)、または−CO−を示し、−W−は−NR9−(式中、R9は水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示す)、−O−、または−CR78−(式中、R7、R8は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)を示し、Yは窒素原子またはCHを示し、a、b及びcはそれぞれの炭素原子の位置を示す。但し、i)上記置換基は、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、アリール基、ヘテロアリール基からなる群から選ばれる。ii)Xが―CH2−、−CR45−(式中、R4およびR5は、前記と同義である)のとき、Yは窒素原子である。}
[17] Bが置換基を有してもよい脂肪族環であり、Cが置換基を有してもよい複素環基であり、−X−が−NH−、または−NR6−(式中、R6は置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいカルバモイル基、または置換基を有してもよいスルホニル基を示す)であり、Yが窒素原子であり、−Z−が−CH2−または−CR45−(式中、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)であり、−W−が−NR9−(式中、R9は水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示す)であり、−T−が、−CR1112−(式中、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)、−CR1314−CR1516−(式中、R13〜R16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)または−CR17=CR18−(式中、R17およびR18は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)である[16]記載の培地。
[18] Cの置換基を有してもよい複素環基が、置換基を有してもよいヘテロアリール基である[17]記載の培地。
[19] Aがフェニル基であり、Cの置換基を有してもよい複素環基が置換基を有してもよいフリル基、置換基を有してもよいチエニル基、置換基を有してもよいオキサゾリル基、置換基を有してもよいイソオキサゾリル基、置換基を有してもよいチアゾリル基、置換基を有してもよいオキサジアゾリル基、置換基を有してもよいチアジアゾリル基、置換基を有してもよいピリジル基、置換基を有してもよいピリドニル基、置換基を有してもよいピリダジニル基、置換基を有してもよいピリミジニル基、置換基を有してもよいイミダゾリル基、置換基を有してもよい4−オキソチアゾリジン−2−チオニル基のいずれかである[17]記載の培地。
[20] Bが置換基を有してもよいシクロヘキサン環である[19]記載の培地。
[21] 一般式(I)の−X−が−NH−または−N(CH)−であり、Yが窒素原子であり、−Z−が−CH2−であり、−W−が−NH−であり、Bが置換基を有してもよいシクロヘキサン環であり、Cが置換基を有してもよいオキサゾリル基、置換基を有してもよいチアゾリル基、置換基を有してもよいピリジル基であり、−T−が、−CR1112−(式中、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)、−CR1314−CR1516−(式中、R13〜R16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)または−CR17=CR18−(式中、R17およびR18は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)である[20]記載の培地。
[22] 一般式(I)の−X−が−NH−または−N(CH)−であり、Yが窒素原子であり、−Z−が−CH2−または−CR45−(式中、R4、R5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)であり、−W−が−NH−であり、Aが複素環基であり、Bが置換基を有してもよいシクロヘキサン環であり、Cが置換基を有してもよいオキサゾリル基、置換基を有してもよいチアゾリル基、置換基を有してもよいピリジル基であり、−T−が、−CR1112−(式中、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)、−CR1314−CR1516−(式中、R13〜R16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)または−CR17=CR18−(式中、R17およびR18は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)である[17]記載の培地。
[23] 一般式(I)の−Z−が−CH2−であり、Aがヘテロアリール基である[22]記載の培地。
[24] R1、R2およびR3の少なくとも一つが、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、メチルチオ基、トリフルオロメトキシ基のいずれかで、残りが−Hである請求項[21]記載の培地。
[25] 一般式(I)のa、bおよびcの炭素原子の絶対配置が、それぞれ独立してRまたはSである[21]〜[23]のいずれかに記載の培地。
[26] 一般式(I)のaおよびbの炭素原子の絶対配置がともにRであり、cの炭素原子の絶対配置がRまたはSである[25]記載の培地。
[27] 一般式(I)のaおよびbの炭素原子の絶対配置がともにSであり、cの炭素原子の絶対配置がRまたはSである[25]記載の培地。
[28] 細胞増殖用である、[16]〜[27]のいずれかに記載の培地。
[29] 動物細胞が複能性幹細胞又は多能性幹細胞である、[16]〜[28]のいずれかに記載の培地。
[30] 動物細胞が、神経幹細胞、神経前駆細胞、ES細胞もしくはiPS細胞である[16]〜[28]のいずれかに記載の培地。
[31] 培地中の、縮合多環式化合物またはその製薬学的に許容される塩が、0.25μM〜200μMである、[30]記載の培地。
[32] [16]〜[31]のいずれかに記載の培地中で動物細胞を培養することを特徴とする、動物細胞の培養方法。
[33] 動物細胞が幹細胞である、[32]記載の培養方法。
[34] 培地中で細胞を1日以上培養することを特徴とする、[32]又は[33]記載の培養方法。
[35] [16]〜[31]のいずれかに記載の培地及び動物細胞を含む、動物細胞培養調製物。
本発明によれば、インスリンを含まない培地であっても、効率良く動物細胞を培養することができる。さらに、本発明化合物は、動物細胞の増殖刺激効果を有するため、動物細胞を効率よく増殖させることが可能となる。また、本発明化合物は、インスリンを含まない培地であっても、幹細胞の増殖を刺激し、幹細胞死を抑制し、その結果、幹細胞の生存率を向上させることができるため、複能性幹細胞及び多能性幹細胞等の幹細胞の培養に特に有用である。さらに、本発明化合物は、幹細胞の未分化性を損なわずに培養することができるため、複能性幹細胞及び多能性幹細胞等の幹細胞の維持培養においても有用である。さらに、本発明によれば、インスリンの代わりに本発明化合物を用いた培地を作製することで、培地中のタンパク成分の量を低減させることが可能となる。従って、本発明の培地中で培養された細胞を移植等の医療用途で用いる場合に、異種由来のタンパク質や組換えタンパク質の混入するリスクを低減させることが可能となり、より安全な治療方法の開発に貢献することができる。
図1は、本発明化合物のhiPS細胞増殖刺激効果を示す図である。縦軸は細胞数、横軸は使用した培地を示す。 図2は、様々な低分子化合物のhiPS細胞増殖刺激効果を示す図である。縦軸は細胞数、横軸は培地中に含まれる各化合物の最終濃度(μM)を示す。 図3は、本発明化合物のhiPS細胞増殖刺激効果を示す図である。縦軸は細胞の累計増殖倍数、横軸は培養日数を示す。 図4は、本発明化合物又はインスリンを含有する培地中で培養したhiPS細胞の形態を示す図である。 図5は、本発明化合物又はインスリンを含有する培地中で培養したhiPS細胞における、Nanog及びOct3/4のmRNA発現量を示す図である。 図6は、本発明化合物又はインスリンを含有する培地中で培養したhiPS細胞における、Nanogタンパク質の免疫染色の結果を示す図である。 図7は、本発明化合物又はインスリンを含有する培地中で培養したhiPS細胞の分化多能性を示す図である。図中、矢印は各分化マーカーを発現する細胞を示す。 図8は、本発明化合物の神経幹細胞増殖刺激効果を示す図である。縦軸は細胞数を示す。 図9は、本発明化合物の神経幹細胞増殖刺激効果を示す図である。縦軸は細胞の累計増殖倍数、横軸は培養日数を示す。 図10は、本発明化合物又はインスリンを含有する培地中で培養した神経幹細胞の未分化状態を示す図である。 図11は、本発明化合物のケラチノサイト増殖刺激効果を示す図である。縦軸は細胞数、横軸は使用した培地を示す。 図12は、インスリン受容体アゴニストとして知られる化合物Mと本発明化合物との増殖刺激効果の比較を示す図である。縦軸は細胞数、横軸は使用した培地を示す。 図13は、インスリン模倣剤として知られるNaVOと本発明化合物との増殖刺激効果の比較を示す図を示す図である。縦軸は細胞数、横軸は使用した培地を示す。
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常に用いられる意味を有する。
1 動物細胞培養用培地添加剤
本発明の動物細胞培養用培地添加剤(本明細書中、本発明の培地添加剤とも称する)は、下記一般式(I)で示される縮合多環式化合物(本明細書中、化合物(I)とも称する)またはその製薬学的に許容される塩を含有することを主たる特徴とする:
{式中、Aは芳香環基、複素環基、または脂肪族環基を示し、Bは置換基を有してもよい芳香環、置換基を有してもよい複素環、または置換基を有してもよい脂肪族環を示し、Cは置換基を有してもよい複素環基を示し、Tは基中の二つの炭素原子が二重結合、三重結合を有しても良く、また基中の炭素原子が−O−、−S−、−NH−に一部が置換されても良い、置換基を有しても良い炭素数1〜7個からなるアルキレン基を示し、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいベンジルオキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいヘテロアリールオキシ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアリールビニル基、または置換基を有してもよいアリールエチニル基を示し、−X−および−Z−は、それぞれ独立して−O−、−NH−、−NR6−(式中R6は置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいカルバモイル基、または置換基を有してもよいスルホニル基を示す)、−S−、−SO−、−SO2−、−CH2−、−CR45−(R4、R5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)、または−CO−を示し、−W−は−NR9−(式中R9は水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示す)、−O−、または−CR78−(式中、R7、R8は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)を示し、Yは窒素原子またはCHを示し、a、b及びcはそれぞれの炭素原子の位置を示す。但し、
i)上記置換基は、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、アリール基、ヘテロアリール基からなる群から選ばれる。
ii)Xが−CH2−、−CR45−のとき、Yは窒素原子である。}。
以下に、本明細書において使用する用語を定義する。
「低級アルキル基」とは、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐鎖もしくは環状のアルキル基を示し、具体的に例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、n-ヘキシル基、2-ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などがあげられ、好ましくはメチル基、エチル基などがあげられる。
「アリール基」とは、炭素原子で構成される炭素数5〜12の単環または2環よりなる芳香族置換基を示し、具体的に例えばフェニル基、インデニル基、ナフチル基、フルオレニル基などがあげられ、好ましくはフェニル基があげられる。
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子があげられる。
「アルキル基」とは、炭素数1〜18の直鎖もしくは分岐鎖もしくは環状のアルキル基を示し、具体的に例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、n-ヘキシル基、2-ヘキシル基、tert-オクチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、などがあげられ、好ましくはn-ヘキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、n-ヘキシル基、2-ヘキシル基、tert-オクチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基などがあげられ、より好ましくは、イソプロピル基、tert-ブチル基、tert-オクチル基、1−アダマンチル基などがあげられる。
「アルコキシ基」とは、炭素数1〜18の直鎖または分岐鎖または環状のアルキル基を有するアルコキシ基を示し、具体的に例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-へプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、2−シクロヘキシルエトキシ基、1−アダマンチルオキシ基、2−アダマンチルオキシ基、1−アダマンチルメチルオキシ基、2−(1−アダマンチル)エチルオキシ基、トリフルオロメトキシ基などがあげられ、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基があげられる。
「アルキルチオ基」とは、炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖状または環状のアルキル基を有するアルキルチオ基を示し、具体的に例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n-ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、シクロプロピルチオ基、シクロブチルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロブチルチオ基などがあげられる。
「アルキルスルホニル基」とは、炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖状または環状のアルキル基を有するアルキルスルホニル基を示し、具体的に例えばメタンスルホニル基、エタンスルホニル基、プロパンスルホニル基、ブタンスルホニル基、ペンタンスルホニル基、ヘキサンスルホニル基、ヘプタンスルホニル基、オクタンスルホニル基、ノナンスルホニル基、デカンスルホニル基、ウンデカンスルホニル基、ドデカンスルホニル基などがあげられる。
「アシル基」とは、ホルミル基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐鎖もしくは環状のアルキル基を有するアシル基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐鎖もしくは環状のアルケニル基を有するアシル基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐鎖もしくは環状のアルキニル基を有するアシル基、または置換されていてもよいアリール基を有するアシル基であり、具体的に例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、イソクロトノイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基などがあげられる。
「アシルオキシ基」とは、ホルミルオキシ基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐鎖もしくは環状のアルキル基を有するアシルオキシ基、または置換されていてもよいアリール基を有するアシルオキシ基を示し、具体的に例えばホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、イソバレリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、クロトノイルオキシ基、イソクロトノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ナフトイルオキシ基などがあげられる。
「アルキルアミノ基」とは、アルキル基で一置換もしくは二置換されたアミノ基であり、そのアルキル基の例は前記「アルキル基」で示したものがあげられる。具体的に例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、メチルエチルアミノ基などがあげられる。
「アルコキシカルボニル基」とは、炭素数1〜8の直鎖または分岐鎖または環状のアルキル基を有するアルコキシカルボニル基を示し、具体的に例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基などがあげられる。
「カルバモイル基」とは、窒素上に炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖または環状のアルキル基を有してもよいカルバモイル基であり、具体的に例えばカルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N−ピロリジルカルボニル基、N−ピペリジルカルボニル基、N−モルホリニルカルボニル基などがあげられる。
「スルホニル基」とは、硫黄原子上に炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖または環状のアルキル基を有してもよいスルホニル基であり、具体的に例えばメチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、などがあげられる。
「芳香環」とは、炭素原子で構成される単環または2つの環からなる芳香環をあらわし、具体的に例えばベンゼン環、ナフタレン環、インデン環、フルオレン環などがあげられ、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環などがあげられる。
「複素環」とは、炭素および窒素、酸素、イオウなどで構成される5〜7員の1〜3つの環からなる複素環をあらわし、具体的に例えば、ピリジン環、ジヒドロピラン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ピラゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾピラゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、プリン環、ピラゾロピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、ナフチリジン環、キナゾリン環、ベンゾジアゼピン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、などがあげられ、好ましくはピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、フラン環、チオフェン環などがあげられる。
「芳香族環基」とは、置換基を有しない単環、二環、三環等の芳香族炭化水素基をあらわし、例えばフェニル基、ナフタリル基、アントラセニル基、フェナントレニル基等があげられる。
「複素環基」とは、環原子として、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子を1〜4個含有する5〜8員の単環〜3環式の置換基を有しないへテロ環基を示す。
{なお、環原子である任意の炭素原子がオキソ基で置換されていてもよく、硫黄原子又は窒素原子が酸化されオキシドを形成してもよい。また、ベンゼン環と縮環していてもよく、また、該へテロ環基は、架橋されていてもよく、また、スピロ環を形成しても良い。}
例えば、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基(=ピリミジニル基)、ピラジニル基、フリル基、チエニル基、ピロリル基、イソオキサゾリル基、オキサゾリル基、イソチアゾリル基、チアゾリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、トリアゾイル基、テトラゾリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンズオキサゾリル基(=ベンゾオキサゾリル基)、ベンゾチアゾリル基、ベンズイミダゾリル基(=ベンゾイミダゾリル基)、インダゾリル基、ベンズイソキザゾリル基、ベンズイソチアゾリル基、ベンゾフラザニル基、ベンゾチアジアゾリル基、プリニル基、キノリル基(=キノリニル基)、イソキノリル基、シンノリニル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、プテリジニル基、イミダゾオキサゾリル基、イミダゾチアゾリル基、イミダゾイミダゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、ピロリジニル基、ピラゾリジニル基、イミダゾリジニル基、ピロリニル基、ピラゾリニル基、イミダゾリニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオフェニル基、チアゾリジニル基、ピペリジニル基(=ピペリジル基)、ピペラジニル基、キヌクリジニル基、テトラヒドロピラニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基、ジオキソラニル基、ホモピペリジニル基(=ホモピペリジル基)、ホモピペラジニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、クロマニル基、イソクロマニル基、8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−イル基、9−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−3−イル基、3−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イル基、7−アザビシクロ[2.2.1]ペプタン−2−イル基、2−アザトリシクロ[3.3.1.1]デカン−4−イル基、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−2−イル基、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イル基、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−4−イル基、3−アザスピロ[5.5]ウンデカン−9−イル基、2−アザスピロ[4.5]デカン−8−イル基、2−アザスピロ[4.4]ノナン−7−イル基、8−アザスピロ[4.5]デカン−2−イル基等が挙げられる。
「脂肪族環基」とは、置換基を有しない炭素数3〜10個の非芳香族炭化水素基を示し、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
「脂肪族環」とは、炭素原子で構成される単環または2つの環からなる脂肪族環をあらわし、具体的に例えばシクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、デカリン環、ノルボルナン環などがあげられ、好ましくはシクロヘキサン環があげられる。
「ヘテロアリール基」とは、炭素および窒素、酸素、イオウなどで構成される5〜7員の1〜3つの環からなる芳香族複素環基をあらわし、具体的に例えば、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピロリル基、フラニル基、チエニル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、チアジアゾリル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾフリル基、イソベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾピラゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチリジニル基、キナゾリル基などがあげられ、好ましくは2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、1−ピラゾリル基などがあげられる。
「アリールオキシ基」とは、酸素原子上にアリール基を有するアリールオキシ基であり、そのアリール基の例は前記「アリール基」で示したものがあげられる。具体的に例えば、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などがあげられる。
「ヘテロアリールオキシ基」とは、酸素原子上にヘテロアリール基を有するヘテロアリールオキシ基であり、そのヘテロアリール基の例は前記「ヘテロアリール基」で示したものがあげられる。具体的に例えば、2−ピリジルオキシ基、3−ピリジルオキシ基、4−ピリジルオキシ基、2−ピリミジニルオキシ基などがあげられる。
「アリールアミノ基」とは、窒素原子上にアリール基で置換されたアリールアミノ基であり、そのアリール基の例は前記「アリール基」で示したものがあげられる。具体的に例えば、フェニルアミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基などがあげられる。
「アリールビニル基」とは、アリール基で1位または2位が置換されたビニル基であり、そのアリール基の例は前記「アリール基」で示したものがあげられる。具体的に例えば、1−フェニルビニル基、2−フェニルビニル基などがあげられる。
「アリールエチニル基」とは、アリール基で2位が置換されたエチニル基であり、そのアリール基の例は前記「アリール基」で示したものがあげられる。具体的に例えば、フェニルエチニル基などがあげられる。
「置換基を有してもよい」とは、置換基を有し無い場合、及び置換基を有する場合には、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、アリール基、ヘテロアリール基からなる群から選ばれる置換基により、少なくとも1個以上置換されていることを示し、該置換基は同一または異なっていてもよく、また置換基の位置および数は任意であって、特に限定されるものではない。
以下、一般式(I)の各基について説明する。
一般式(I)におけるAは、芳香環基、複素環基、または脂肪族環基である。Aは、好ましくは芳香環基または複素環基であり、より好ましくはフェニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、キノリル基、ベンゾチアゾリル基が好ましく、フェニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、キノリル基、ベンゾチアゾリル基であり、特に好ましくはフェニル基およびベンゾチエニル基である。
一般式(I)におけるBは、置換基を有してもよい芳香環、置換基を有してもよい複素環、または置換基を有してもよい脂肪族環である。Bは、好ましくは置換基を有してもよい芳香環または置換基を有してもよい脂肪族環であり、より好ましくは置換基を有してもよいベンゼン環または置換基を有してもよいシクロヘキサン環であり、特に好ましくは置換基を有してもよいシクロヘキサン環である。
一般式(I)におけるCは、置換基を有してもよい複素環基である。Cは、好ましくは置換基を有してもよいフリル基、置換基を有してもよいチエニル基、置換基を有してもよいオキサゾリル基、置換基を有してもよいイソオキサゾリル基、置換基を有してもよいチアゾリル基、置換基を有してもよいオキサジアゾリル基、置換基を有してもよいチアジアゾリル基、置換基を有してもよいピリジル基、置換基を有してもよいピリドニル基、置換基を有してもよいピリダジニル基、置換基を有してもよいピリミジニル基、置換基を有してもよいイミダゾリル基、置換基を有してもよい4−オキソチアゾリジン−2−チオニル基であり、より好ましくは置換基を有してもよいオキサゾリル基、置換基を有してもよいチアゾリル基、置換基を有してもよいピリジル基である。
一般式(I)におけるTは、基中の二つの炭素原子が二重結合、三重結合を有しても良く、また基中の炭素原子が−O−、−S−、−NH−に一部が置換されても良い、置換基を有しても良い炭素数1〜7個からなるアルキレン基である。Tは、好ましくは原子数1〜2からなる結合であり、より好ましくは−CH−、−CR1112−(式中、R11およびR12は、同一又は異なってもよくそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)、−CR1314−CR1516−(式中、R13〜R16は、同一又は異なってもよくそれぞれ独立して、R11と同義である)、−CR17=CR18−(式中、R17およびR18は、同一又は異なってもよくそれぞれ独立して、R11と同義である)であり、特に好ましくは−CH−、−CH−CH−、−CH=CH−であり、最も好ましくは−CH−CH−である。
一般式(I)におけるR1、R2およびR3は、同一または異なってもよく、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいベンジルオキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいヘテロアリールオキシ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアリールビニル基、または置換基を有してもよいアリールエチニル基である。R、RおよびRは、好ましくは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、ベンジルオキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、または置換基を有してもよいアリールエチニル基であり、より好ましくは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、メトキシ基、エトキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基であり、特に好ましくは水素原子、メトキシ基、エトキシ基、メチルチオ基である。
一般式(I)における−X−および−Z−は、同一または異なってもよく、それぞれ独立して、−O−、−NH−、−NR6−(式中、R6は、置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいカルバモイル基、または置換基を有してもよいスルホニル基を示す)、−S−、−SO−、−SO2−、−CH2−、−CR45−(式中、R4、R5は、同一又は異なってもよくそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)、または−CO−である。
−X−は、好ましくは−NH−、−NR6−(式中、R6は低級アルキル基を示す)、−O−、−S−、または−CH2−であり、より好ましくは−NH−および−N(CH)−であり、特に好ましくは−NH−である。
−Z−は、好ましくは−NH−および−CR45−(式中、R4、R5は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有してもよい低級アルキル基を示す)であり、より好ましくは−CH2−である。
一般式(I)における−W−は、−CR78−(式中、R7及びR8は、同一又は異なってもよくそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)、−O−または−NR9−(式中、R9は、水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示す)である。−W−は、好ましくは−NH−、−NR9−(式中、R9は低級アルキル基を示す)、および−CH2−であり、より好ましくは−NH−及び−N(CH)−であり、特に好ましくは−NH−である。R9は、好ましくは、水素原子、メチル基である。
一般式(I)におけるYは、窒素原子またはCHである。但し、−X−が−CH2−又は−CR45−であるとき、Yは窒素原子である。Yは、好ましくは窒素原子である。
一般式(I)におけるa、b、cは、それぞれの炭素原子の位置を示す。Bが置換基を有してもよいシクロヘキサン環であるとき、aおよびbの炭素原子の絶対配置は、好ましくはRまたはSであり、より好ましくはRである。
好適な化合物(I)としては、
Aが、芳香環基、複素環基、または脂肪族環基であり、
Bが、置換基を有してもよいシクロヘキサン環であり、
Cが、置換基を有してもよい複素環基であり、
Tが、基中の二つの炭素原子が二重結合、三重結合を有しても良く、また基中の炭素原子が−O−、−S−、−NH−に一部が置換されても良い、置換基を有しても良い炭素数1〜7個からなるアルキレン基であり、
、RおよびRが、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいベンジルオキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいヘテロアリールオキシ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアリールビニル基、または置換基を有してもよいアリールエチニル基であり、
−X−が、−NH−又は−NR−(式中、Rは、低級アルキル基を表す)であり、
−Z−が、−CH−であり、
−W−が、−NH−であり、
Yが、窒素原子である、
化合物(I)である。
より好適な化合物(I)としては、
Aが、フェニル基またはベンゾチエニル基であり、
Bが、置換基を有してもよいシクロヘキサン環であり、
Cが、置換基を有してもよいオキサゾリル基、置換基を有してもよいチアゾリル基または置換基を有してもよいピリジル基であり、
Tが、−CH−CH−であり、
、RおよびRが、それぞれ独立して、水素原子、メトキシ基、エトキシ基またはメチルチオ基であり、
−X−が、−NH−であり、
−Z−が、−CH−であり、
−W−が、−NH−であり、
Yが、窒素原子である、
化合物(I)である。
好適な化合物(I)の具体例は以下の通りである。
化合物(I)は、本発明の所望の効果を達成し得る限り、製薬学的に許容される塩の形であってもよい。製薬学的に許容される塩とは、具体的に例えば十分に酸性である化合物(I)についてはそのアンモニウム塩、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩などが例示され、これらが好ましい)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩などが例示され、これらが好ましい)、有機塩基の塩としてはたとえばジシクロヘキシルアミン塩、ベンザチン塩、N-メチル-D-グルカン塩、ヒドラミン塩、アルギニンまたはリジンのようなアミノ酸の塩などが挙げられる。さらに十分に塩基性である化合物(I)についてはその酸付加塩、例えば塩酸、硫酸、硝酸、りん酸などの無機酸塩、または酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、モノメチル硫酸等の有機酸塩などが挙げられるがこれらに限定されない。また、場合によっては含水物あるいは水和物であってもよい。
また化合物(I)は、全ての光学異性体及び幾何異性体などの異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶形を包含するものである。
化合物(I)及びその製薬学的に許容される塩(本明細書中、これらをまとめて「本発明化合物」とも称する)は、国際公開第2005/042536号記載の方法またはそれに準ずる方法により合成できる。
なお、本発明化合物は、通常有機合成で用いられる、抽出、蒸留、結晶化、カラムクロマトグラフィー等の手法を用いて精製することができる。
本発明の培地添加剤は、1種類の本発明化合物を用いてもよく、複数種類の本発明化合物を組み合わせて用いてもよい。
本発明の培地添加剤における本発明化合物の含有量は、0.01〜100重量%である。
本発明の培地添加剤は、本発明化合物に加えて、培地添加剤に通常配合され得る各種成分を含有させることができるが、本発明化合物自体を単独で、本発明の培地添加剤として用いてもよい。
本発明の培地添加剤は、所望の効果を損なわない限り、本発明化合物に加え、使用の目的に応じて、血清代替物、培地添加物、脂肪酸をさらに含み得る。
血清代替物としては、例えば、血清アルブミン、トランスフェリン、脂肪酸、コラーゲン前駆体、微量元素、2−メルカプトエタノール又は3’チオールグリセロール、あるいはこれらの均等物などを適宜含有するものを挙げることができる。かかる血清代替物は、例えば、WO98/30679に記載の方法により調製することができる。血清代替物としては市販品を利用してもよい。かかる市販の血清代替物としては、例えば、Chemically−defined Lipid concentrated(Life Technologies社製)、GlutamaxTM(Life Technologies社製)、B27(登録商標)Supplement, minus insulin(Thermo Fisher Scientific社)等が挙げられるが、これらに限定されない。また、N2(Life Technologies社)等のインスリンを含む血清代替物の組成からインスリンを除去したものを作製して用いてもよい。
培地添加物としては、Y−27632などのROCK(Rho−associated coiled−coil forming kinase/Rho結合キナーゼ)阻害剤、ペニシリン−ストレプトマイシンなどの抗生物質、ビタミン類、L−アスコルビン酸、リン酸L−アスコルビルマグネシウム、ピルビン酸ナトリウム、2−アミノエタノール、グルコース、炭酸水素ナトリウム、HEPES、プロゲステロン、セレン化合物(例、亜セレン酸ナトリウム)、プトレシン等が挙げられるが、これらに限定されない。
脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、酪酸、酢酸、パルミトレイン酸、吉草酸(バレリアン酸)、カプロン酸、エナント酸(ヘプチル酸)、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、マルガリン酸、クセン酸、エレオステアリン酸、アラキジン酸、8,11−エイコサジエン酸、5,8,11−エイコサトリエン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の培地添加物に含まれる脂肪酸は飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよい。
本発明の培地添加剤が、本発明化合物に加え、血清代替物、培地添加物、脂肪酸をさらに含む場合、血清代替物、培地添加物、脂肪酸は、それぞれ自体公知の濃度範囲内で含まれることが好ましい。本発明の培地添加剤は、所望の効果を損なわない限り、本発明化合物に加え、従来から細胞の培養に用いられてきた添加物などを適宜含むことができる。
本発明の培地添加剤は、所望の効果を損なわない限り、インスリンを含むものであってよい。本発明の培地添加剤がインスリンを含有する場合、本発明の培地添加剤におけるインスリンの含有量(物質量)は、本発明の培地添加剤中の本発明化合物の物質量に対して、好ましくは1/100以下、より好ましくは1/1000以下である。本発明の培地添加剤はインスリンを含有しないことが最も好ましい。
本発明の培地添加剤は、所望の効果を損なわない限り、本発明化合物に加え、さらに、任意の添加剤(例えば、安定化剤、等張化剤、pH調整剤等)を適当量含有してもよい。
本発明の培地添加剤は、所望の効果が得られる限り、いかなる剤形であってもよく、例えば、溶液、固形、粉末状等が挙げられる。本発明の培地添加剤の剤形が固形または粉末状である場合、適切な溶媒(例、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒及び緩衝液等)等を使用して所望の濃度になるように溶解し、使用することができる。
本発明の培地添加剤の剤形が溶液である場合、該溶液のpHは、好ましくは約5〜約8.5であり、より好ましくは約6〜約8である。本発明の培地添加剤の剤形が溶液である場合、該溶液は、メンブレンフィルター等を用いた濾過滅菌などの滅菌処理を行うことが好ましい。
本発明の培地添加剤は、動物細胞培養用培地に添加されることが好ましい。本発明の培地添加剤は、いずれの動物由来の細胞の培養にも好適に使用することができ、例えば、哺乳動物、鳥、魚、両生動物および爬虫類動物等由来の細胞の培養に用いることができる。哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類、ウサギ等のウサギ目、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の有蹄目、イヌ、ネコ等のネコ目、ヒト、サル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明においては、好ましくは哺乳動物細胞、より好ましくはマウス等のげっ歯類細胞又はヒト等の霊長類細胞、更に好ましくはヒト細胞が用いられる。
本発明において培養に付される細胞の種類としては、以下に限定されるものではないが、線維芽細胞、骨髄細胞、Bリンパ球、Tリンパ球、好中球、赤血球、血小板、マクロファージ、単球、骨細胞、骨髄細胞、周皮細胞、樹枝状細胞、ケラチノサイト、脂肪細胞、間葉細胞、上皮細胞、表皮細胞、内皮細胞、血管内皮細胞、肝実質細胞、軟骨細胞、卵丘細胞、神経系細胞、グリア細胞、ニューロン、オリゴデンドロサイト、マイクログリア、星状膠細胞、心臓細胞、食道細胞、筋肉細胞、膵臓ベータ細胞、メラニン細胞、造血前駆細胞、単核細胞等の分化した細胞、胚性幹細胞(ES細胞)、胚性腫瘍細胞、胚性生殖幹細胞、誘導多能性幹細胞(iPS細胞)等の多能性幹細胞、神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞、筋幹細胞、生殖幹細胞、腸幹細胞、癌幹細胞、毛包幹細胞、神経冠幹細胞、嗅粘膜幹細胞、内皮幹細胞、神経前駆細胞等の複能性幹細胞、肝細胞等の単能性幹細胞等が挙げられる。
本発明の培地添加剤は、好ましくは、ケラチノサイト、単能性幹細胞、複能性幹細胞又は多能性幹細胞の培養に用いられ、より好ましくは多能性幹細胞又は複能性幹細胞、さらに好ましくは胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞、神経前駆細胞又は神経幹細胞の培養に用いられる。
本発明化合物は、誘導多能性幹細胞等の幹細胞の未分化状態及び多分化能(又は複分化能)を損なう効果を持たないため、特に、幹細胞の未分化状態及び多分化能(又は複分化能)を維持させながら、幹細胞を増殖させるのに、特に有用である。
本明細書中、「幹細胞」とは、自己複製能及び分化/増殖能を有する未熟な細胞を意味する。幹細胞には、分化能力に応じて、多能性幹細胞(pluripotent stem cell)、複能性幹細胞(multipotent stem cell)、単能性幹細胞(unipotent stem cell)等の亜集団が含まれる。多能性幹細胞とは、胎盤を除く生体を構成する全ての組織や細胞へ分化し得る能力を有する細胞を意味する。複能性幹細胞とは、全ての種類ではないが、複数種の組織や細胞へ分化し得る能力を有する細胞を意味する。単能性幹細胞とは、特定の組織や細胞へ分化し得る能力を有する細胞を意味する。
本明細書中、「多能性幹細胞」とは、自己複製能及び分化/増殖能を有する未熟な細胞を意味であって、胎盤を除く生体を構成する全ての組織や細胞へ分化し得る能力を有する細胞を意味する。多能性幹細胞の例としては、胚性幹細胞(ES細胞)、誘導多能性幹細胞(iPS細胞)(Takahashi K et al.,Cell.2007 Nov 30;131(5):861−72)、精子幹細胞(mGS細胞)(Kanatsu−Shinohara M et al.,Biol Reprod.2007 Jan;76(1):55−62)、胚性生殖細胞(Matsui Y et al.,Cell.1992 Sep 4;70(5):841−7)などが挙げられる。
多能性幹細胞は自体公知の方法により、入手できる。例えば、胚性幹細胞(ES細胞)は、哺乳動物の胚盤胞中の内部細胞塊を培養する方法(例えばManipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual, Fourth Edition 2014 Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載の方法)、体細胞核移植によって作製された初期胚を培養する方法(Wilmut et al.,Nature.1997 Feb 27;385(6619):810−3、Wakayama et al.,Nature.1998 Jul 23;394(6691):369−74、Wakayama T et al.,Science.2001 Apr 27;292(5517):740−3)などが挙げられるが、これらに限定されない。
さらに胚性幹細胞は所定の機関から入手することもできる。例えば、ヒトES細胞であるKhES−1細胞、KhES−2細胞およびKhES−3細胞は、京都大学再生医科学研究所より入手可能である。
誘導多能性幹細胞の入手方法の例としては、核初期化物質(例えば、Oct3/4,Sox2,c−Myc及びKlf4等)を体細胞へ導入する方法(Takahashi K et al.,Cell.2006 Aug 25;126(4):663−76、国際公開第2007/069666号)が挙げられるが、これに限定されない。また、誘導多能性幹細胞は、Takahashi K et al.,Nat Protoc.2007;2(12):3081−9、Aoi et al.,Science.2008 Aug 1;321(5889):699−702、Takahashi,K et al.,Cell.2007 Nov 30;131(5):861−72、Yu,J et al.,Science.2007 Dec 21;318(5858):1917−20、Nakagawa,M et al.,Nat Biotechnol.2008 Jan;26(1):101−6、などに記載の方法に準じて作製することができるが、これらに限定されない。
さらに誘導多能性幹細胞は所定の機関から入手することもできる。例えばヒトiPS細胞である253G1細胞、201B7細胞は、iPSアカデミアジャパン株式会社から購入することができる。
胚性生殖細胞は、常法に従って始原生殖細胞を単離し、これをLIF(Leukemia Inhibitory Factor)、bFGF(Basic Fibroblast Growth Factor)およびSCF(Stem Cell Factor)の存在下で培養することにより誘導することができる。また、mGS細胞はWO2005/100548に記載される方法に準じて、精巣細胞から作製することができる。
本発明において用いられる多能性幹細胞は、好ましくは胚性幹細胞又は誘導多能性幹細胞であり、より好ましくは誘導多能性幹細胞である。
本明細書中、「複能性幹細胞」とは、全ての種類ではないが、複数種の組織や細胞へ分化し得る能力を有する細胞を意味する。複能性幹細胞の例としては、神経幹細胞、神経前駆細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞、皮膚幹細胞、骨髄幹細胞、生殖幹細胞等が挙げられるがこれらに限定されない。本発明に用いられる複能性幹細胞は、誘導多能性幹細胞等の多能性幹細胞由来のものであってもよく、生体組織から分離したものであってもよい。
本明細書中、「神経幹細胞」とは、神経系細胞(神経細胞及びグリア細胞(アストロサイト、オリゴデンドロサイトなど)、並びにそれらの前駆細胞)への複分化能(multipotency)を維持し、自己複製能を有する未分化な細胞を意味する。具体的には、神経幹細胞とは、神経細胞及びグリア細胞(アストロサイト、オリゴデンドロサイトなど)を最終的に生み出す能力を有し、かつ、初期化などの特別な操作を加えない限りにおいて、表皮系細胞、血球系細胞、筋肉細胞等の神経系以外の細胞を実質的に生み出さない細胞である。実質的に生み出さないとは、神経幹細胞の生み出す細胞のうち、90%以上が、神経細胞及びグリア細胞(アストロサイト、オリゴデンドロサイトなど)、並びにそれらの前駆細胞のいずれかである状態を指す。
本発明に用いられる神経幹細胞は、多能性幹細胞由来のもの(Bain Gら,Dev Biol.1995 Apr;168(2):342−57など)、生体組織から分離したもの、線維芽細胞などから多能性幹細胞を経由せずに直接分化誘導したもの(Matsui Tら,Stem Cells.2012 Jun;30(6):1109−19)などが挙げられ、上記に記載の未分化性を維持し複分化能を維持する細胞であって神経細胞を生み出す能力を維持する限り、特に制限されない。
本明細書中、神経前駆細胞(neural progenitor)とは、分裂能を有する未分化な細胞であって、1種以上の神経細胞に最終的に分化する能力を有する細胞を指す。神経前駆細胞は、神経細胞を最終的に生み出すよう運命決定され、かつ神経細胞及びその前駆細胞以外を実質的に生み出さない細胞を指す。
本発明において用いられる細胞は、一種類の細胞であってもよく、複数種類の細胞の混合物であってもよい。
本発明の培地添加剤は、動物細胞増殖用に好適に用いられる。本明細書中、細胞が「増殖」するとは、一定期間培養後に細胞分裂を経て細胞数が増加することを意味する。本明細書中、「動物細胞増殖用」であるとは、動物細胞の増殖刺激及び/又は細胞死の抑制等の動物細胞の増殖に有利な効果をもたらすことを意味する。動物細胞の増殖に有利な効果がもたらされたことは、動物細胞数の増加、動物細胞集団の倍化時間の短縮、動物細胞の増殖速度の上昇又は動物細胞の増殖に関与するマーカーの変化(例、リン酸化ヒストンH3陽性細胞の増加)等により確認することができる。
本発明化合物は、動物細胞の増殖を刺激し、動物細胞を増殖させる効果を有するので、一態様として、本発明の培地添加剤は、動物細胞の増殖刺激用に好適に用いられる。本発明の培地添加剤は、好ましくは哺乳動物細胞の増殖刺激用であり、より好ましくは複能性幹細胞及び多能性幹細胞等の幹細胞の増殖刺激用であり、さらに好ましくは多能性幹細胞及び/又は複能性幹細胞の増殖刺激用である。本明細書中、「増殖を刺激する」とは、細胞分裂(例、有糸分裂を介した細胞分裂)を誘発することを意味する。細胞増殖が刺激されたことは、動物細胞の増殖に関与するマーカーの変化(例、リン酸化ヒストンH3陽性細胞の増加)等により確認することができる。
本発明化合物は、インスリン低減培地で起こる動物細胞死を抑制する効果を有する。従って、一態様として、本発明の培地添加剤は、複能性幹細胞(好ましくは神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞)及び多能性幹細胞等の、インスリン低減培地での培養により細胞死を起こしやすい細胞の培養に好適に用いられる。本発明の培地添加剤は、複能性幹細胞(好ましくは神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞)及び多能性幹細胞等の、インスリン低減培地で起こる動物細胞死抑制用として特に好適に用いることができる。
本発明の一態様において、動物細胞は、分散細胞である。分散細胞とは、細胞分散を促進するために処理された細胞をいう。分散細胞としては、単一細胞、及び数個(典型的に約2〜50、2〜20、又は2〜10個)の細胞からなる小さな細胞塊を形成している細胞が挙げられる。分散細胞は、浮遊(懸濁)細胞、又は接着細胞であり得る。細胞の分散は、自体公知の方法により行われ得る。このような方法としては、キレート剤(例、EDTA)、酵素(例、トリプシン、コラゲナーゼ)等による処理、機械的な分散(例、ピペッティング)などの操作が挙げられる。一態様において、動物細胞は、細胞分散を促進するために処理された幹細胞である。
本発明の培地添加剤は、生体から分離された細胞の培養(すなわちin vitroでの細胞培養)に好適に用いられる。また、本発明の培地添加剤は、生体から分離された組織の培養(すなわち、組織培養)に用いることもできる。
本発明の培地添加剤は、培地中のインスリンの作用を代替する効果を有するため、好ましい態様としては、本発明の培地添加剤は、インスリン低減培地に添加するために好適に用いられる。インスリン低減培地については、下記に詳述するとおりである。
2 動物細胞培養用培地
本発明の一実施形態として、本発明は、本発明化合物を含有する、動物細胞培養用の培地(本明細書中、本発明の培地ともいう)を提供する。本発明の培地を用いて動物細胞を培養することにより、動物細胞を効率的に培養させ得る。
本発明の培地中の、本発明化合物の濃度は、動物細胞の増殖刺激等の所望の効果を有する限り特に限定されず、培養に用いる動物細胞の種類、用いる本発明化合物の種類、培養に付す動物細胞のインスリン要求性の度合い等によって適宜設定することができる。当業者であれば例えば実施例に記載の方法にならい、最適な本発明化合物濃度を設定することができる。
本発明の培地中の、本発明化合物の濃度は、動物細胞の増殖刺激等の所望の効果を有する限り特に限定されないが、濃度が高すぎると細胞が死滅するため、通常1mM以下、好ましくは300μM以下、より好ましくは200μM以下、さらに好ましくは150μM以下、さらにより好ましくは120μM以下、特に好ましくは100μM以下、特により好ましくは70μM以下、尚更好ましくは50μM以下、より一層好ましくは30μM以下、さらにより一層好ましくは25μM以下であり、濃度が低すぎても所望の効果が得られない傾向があるため、通常0.01μM以上、好ましくは0.1μM以上、より好ましくは0.2μM以上、さらに好ましくは0.25μM以上、さらにより好ましくは0.5μM以上、特に好ましくは0.8μM以上、特により好ましくは1μM以上、尚更好ましくは2μM以上、一層好ましくは2.5μM以上、より一層好ましくは4μM以上、さらに一層好ましくは5μM以上、特に一層好ましくは8μM以上、格別好ましくは10μM以上である。本発明の培地中の、本発明化合物の濃度範囲は、例えば、0.01μM〜1mM、好ましくは0.2μM〜200μM、より好ましくは0.25μM〜100μM、更に好ましくは2.5μM〜50μM、特に好ましくは5μM〜50μM、さらに好ましくは5μM〜30μM、とりわけ好ましくは8μM〜30μM、一層好ましくは10μM〜25μMである。
特に限定されるものではないが、例えば前記化合物1又はその塩を用いて誘導多能性幹細胞を培養する場合、前記化合物1又はその塩の濃度は、通常300μM以下、より好ましくは200μM以下、さらに好ましくは150μM以下、さらにより好ましくは120μM以下、特に好ましくは100μM以下、特により好ましくは70μM以下、尚更好ましくは50μM以下、より一層好ましくは30μM以下、さらにより一層好ましくは25μM以下であり、通常0.01μM以上、好ましくは0.1μM以上、より好ましくは0.2μM以上、さらに好ましくは0.25μM以上、さらにより好ましくは0.5μM以上、特に好ましくは0.8μM以上、特により好ましくは1μM以上、尚更好ましくは2μM以上、一層好ましくは2.5μM以上、より一層好ましくは4μM以上、さらに一層好ましくは5μM以上、特に一層好ましくは8μM以上、格別好ましくは10μM以上である。本発明の培地中の、前記化合物1又はその塩の濃度範囲は、例えば、0.01μM〜300μM、好ましくは0.2μM〜200μM、より好ましくは0.25μM〜100μM、更に好ましくは2.5μM〜50μM、特に好ましくは5μM〜50μM、さらに好ましくは5μM〜30μM、とりわけ好ましくは8μM〜30μM、一層好ましくは10μM〜25μMである。
特に限定されるものではないが、例えば前記化合物2又はその塩を用いて誘導多能性幹細胞を培養する場合、前記化合物2又はその塩の濃度範囲は、例えば、約0.25μM〜約200μM、好ましくは約5μM〜約50μMである。
特に限定されるものではないが、例えば前記化合物3又はその塩を用いて誘導多能性幹細胞を培養する場合、前記化合物3又はその塩の濃度範囲は、例えば、約0.25μM〜約25μM、好ましくは約5μM〜約25μMである。
特に限定されるものではないが、例えば前記化合物4又はその塩を用いて誘導多能性幹細胞を培養する場合、前記化合物4又はその塩の濃度範囲は、例えば、約0.25μM〜約200μM、好ましくは約5μM〜約50μMである。ここで、「約」とは±10%を許容する意味で用いる。
特に限定されるものではないが、例えば前記化合物5又はその塩を用いて誘導多能性幹細胞を培養する場合、前記化合物5又はその塩の濃度範囲は、例えば、約0.25μM〜約200μM、好ましくは約5μM〜約50μMである。
本発明の培地は、所望の効果を損なわない限り、本発明化合物に加え、さらに適当な濃度のインスリンを含んでもよい。
本発明の化合物に加えてインスリンを含む場合、培地中のインスリン濃度が高すぎると所望の効果を得られないため、本発明の培地は、動物細胞の増殖に寄与しない程度にインスリン濃度が低減された培地(本明細書中インスリン低減培地とも称する)であることが好ましい。用いる動物細胞の種類やインスリン要求度等によっても異なるが、インスリン低減培地中のインスリン濃度は、例えば、300nM以下、好ましくは50nM以下、更に好ましくは5nM以下であり、最も好ましくはインスリンを実質的に含まない。本発明の培地が「インスリンを実質的に含まない」とは、インスリンを全く含まない場合か、あるいはインスリンの濃度が、100pM以下、好ましくは10pM以下、更に好ましくは1pM以下である場合のいずれかであることを意味する。
本発明の培地に含まれる、本発明化合物以外の成分については、所望の効果を達成し得る限り特に限定されず、通常の動物細胞の培養に使用される組成を適宜採用し得る。
本発明の培地は、動物細胞の培養が可能な培地に本発明化合物を、上記濃度となるように添加することにより作製することができる。培地の作製には、1種類の本発明化合物を用いてもよく、複数種類の本発明化合物を組み合わせて用いてもよい。
本発明の培地は、動物細胞の培養に通常用いられる培地を基礎培地として調製してもよい。基礎培地としては、動物細胞の増殖刺激等の所望の効果を達成し得る限り特に限定されないが、例えば、イーグル基礎培地(BME培地)、マッコイ5A培地(McCoy’s 5A medium)、Improved MEM Zinc Option培地、IMDM培地、Medium 199培地、イーグルMEM培地(Eagles’s Minimum Essential Medium;EMEM)、αMEM培地(alpha Modified Eagles’s Minimum Essential Medium;αMEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagles’s Medium;DMEM)、ハムF12培地(Ham’s Nutrient Mixture F12)、DMEM/F12培地、イスコフ改変ダルベッコ培地(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium;IMDM)、IMDM/F12培地、ハム培地、RPMI 1640培地、Fischer’s培地、BGJb培地、CMRL 1066培地、Glasgow MEM培地又はこれらの混合培地など、動物細胞の培養に用いることのできる培地を挙げることができる。
本発明の培地を多能性幹細胞の培養用として用いる場合、多能性幹細胞培養用として通常用いられる培地を基礎培地として調製してもよい。市販の幹細胞培養用の基礎培地としては、Essential 8培地(Life Technologies)、mTeSR1培地(STEMCELL Technologies)、TeSR2培地(STEMCELL Technologies)、RHB培地(StemCells,Inc.)、TeSRTM−E6(STEMCELL Technologies)、hESF−GRO培地(ニプロ株式会社)、HESF−DIF培地(ニプロ株式会社)、CSTI−7(株式会社細胞科学研究所)、Essential 6培地(Life Technologies)等が挙げられる。
上記基礎培地中に、あらかじめインスリンが含まれている場合には、上記の基礎培地の組成からインスリンを除いた組成の培地を調製し、基礎培地として用いてもよい。
本発明の培地は、化学的に未決定な成分の混入を回避する観点から、好ましくは、含有成分が化学的に決定された培地(Chemically defined medium;CDM)である。本発明の培地は、化学的に未決定な成分の混入を回避する観点から、無血清培地であることが好ましい。本発明における「無血清培地」とは、無調整又は未精製の血清を含まない培地を意味する。本発明では、精製された血液由来成分や動物組織由来成分(例えば、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF/FGF2)などの増殖因子)を含む培地も、無調整又は未精製の血清を含まない限り無血清培地に含まれる。
無血清培地は、血清代替物を含有していてもよい。血清代替物の例としては、本発明の培地添加剤が含み得る血清代替物の例(上述)と同様のものが挙げられる。
通常、本発明の培地は、全ての必須アミノ酸(L−トリプトファン、L−ロイシン、L−リジン、L−フェニルアラニン、L−イソロイシン、L−スレオニン、L−ヒスチジン、L−メチオニン、及びL−バリン)を含む。
本発明の培地は、好ましくは、全ての非必須アミノ酸(L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、グリシン、L−グルタミン、L−グルタミン酸、L−システイン、L−セリン、L−チロシン、L−プロリン)を含む。ここで、L−グルタミンに代えて、L−アラニル−L−グルタミンを用いてもよい。
本発明の培地は、上述の20種のアミノ酸に加えて、L−シスチン等の天然アミノ酸を含んでいてもよい。
本発明の培地は、さらに培地添加物を含有してもよい。培地添加物の例としては、本発明の培地添加剤が含み得る培地添加物の例(上述)と同様ものが挙げられる。添加物は自体公知の濃度範囲内で含まれることが好ましい。本発明の培地に含まれる好ましい培地添加物としては、トランスフェリン、セレン化合物(例、亜セレン酸ナトリウム)等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の培地は、イノシトール、塩化コリン、葉酸、D−パントテン酸カルシウム、チアミン(ビタミンB1)、ピリドキシン(ビタミンB6)、ナイアシンアミド、ビタミンB12、リボフラビン(ビタミンB2)、D−ビオチン、D−グルコース、ピルビン酸ナトリウム、ヒポキサンチン、チミジン、リポ酸、プトレシン塩酸塩から成る群より選択される培地添加物を好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上、さらにより好ましくは4以上含む。
本発明の培地は、脂肪酸を含んでもよい。本発明の培地に含まれる脂肪酸の例としては、本発明の培地添加剤が含み得る脂肪酸の例(上述)と同様ものが挙げられる。本発明の培地に含まれる脂肪酸は飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよい。
本発明の培地は、その使用目的に応じて、公知の細胞培養に使用される組成を適宜採用し得る。例えば、幹細胞の未分化性を維持させたまま増殖させることを目的とする場合、本発明の培地は、幹細胞の分化を促進させる効果を有する物質を含まないことが好ましく、幹細胞の分化を抑制する効果を有する物質を含むことが好ましい。幹細胞の分化を抑制する効果を有する物質としては、例えば、ヒト多能性幹細胞については、FGF2等を、マウス多能性幹細胞については、白血病阻止因子(LIF)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
多能性幹細胞の未分化性を維持させたまま増殖させることを目的とする場合、本発明の培地の具体的な例とは、多能性幹細胞の未分化性を維持させたまま増殖させるための培地としては、DMEM/F−12培地にL−アスコルビン酸、セレン、トランスフェリン、NaHCO、FGF2及びTGF(Transforming growth factor)β1を添加した培地(Chen G et al.,Nat Methods.2011 May;8(5):424−429)に本発明化合物を添加した培地、DMEM/F−12培地に非必須アミノ酸、Lグルタミン、βメルカプトエタノール、トランスフェリン、コレステロール、血清アルブミン、ピペコリン酸、塩化リチウム、FGF2及びTGFβ1を添加した培地(Ludwig TE et al.,Nat Methods.2006 Aug;3(8):637−46)に本発明化合物を添加した培地、白血病抑制因子、ポリビニルアルコール、L−グルタミン、トランスフェリン、セレニウム、2−メルカプトエタノール及び抗生物質を添加したマウス胚性幹細胞維持用の無血清培地(特開2007−228815号公報)に本発明化合物を添加した培地などが挙げられるが、これらに限定されない。
例えば、本発明の培地を動物細胞の培養用に用いる場合、本発明の培地は、基礎培地に、本発明化合物、トランスフェリン、セレン化合物(例、亜セレン酸ナトリウム)を添加して調製することができるが、これに限定されない。本発明の培地を動物細胞の培養用に用いる場合、本発明の培地は、好ましくは、NaHCO3、L-アスコルビン酸、本発明化合物、トランスフェリン、セレン化合物(例、亜セレン酸ナトリウム)を含み、さらに好ましくはDMEM/F-12を基礎培地とし、NaHCO3、L-アスコルビン酸、本発明化合物、トランスフェリン、セレン化合物(例、亜セレン酸ナトリウム)を添加して調製することができるが、これに限定されない。
例えば、本発明の培地を多能性幹細胞の培養用に用いる場合、本発明の培地は、DMEM/F12を基礎培地として、L−アスコルビン酸、セレン化合物(例、亜セレン酸ナトリウム)、トランスフェリン、FGF2及びTGFβ1に加え、本発明化合物を終濃度0.25μM〜200μMとなるように添加して調製することができるが、これに限定されない。
例えば、本発明の培地を神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の培養用に用いる場合、本発明の培地は、DMEM/F12を基礎培地として、プロゲステロン、プトレシン、セレン、トランスフェリン、FGF2及びトランスフェリンに加え、本発明化合物を終濃度1μM〜50μMとなるように添加して調製することができるが、これに限定されない。
例えば、本発明の培地をケラチノサイトの培養用に用いる場合、本発明の培地は、HuMedia KG2 basalを基礎培地として、ヒト血清アルブミン、ハイドロコルチゾン、ヒトEGF(Epidermal growth factor)、ゲンタマイシン、及びアンフォテリシンAに加え、本発明化合物を終濃度1μM〜50μMとなるように添加して調製することができるがこれに限定されない。
例えば、本発明の培地を、多能性幹細胞及び複能性幹細胞などの幹細胞からの分化誘導のための培養用に用いる場合、本発明の培地は、幹細胞を所望の細胞に分化させるための公知の因子を含み得る。
上記に例示した培地の使用目的は、本発明の培地の使用の目的を何ら制限するものではない。
本発明の培地のpHは、約6.0〜約8.5であることが好ましく、より好ましくは約7.0〜約7.5に調整される。培地は、メンブレンフィルター等を用いた濾過滅菌などの滅菌処理を行うことが好ましい。
本発明の培地は、接着培養、浮遊培養、包埋培養、組織培養等のいずれの培養方法にも用いることができる。
本発明の培地は、動物細胞を培養するために用いられることが好ましい。本発明の培地を用いて培養し得る動物細胞の例としては、本発明の培地添加剤を用いることができる動物細胞の例(上述)と同様のものが挙げられ、その好適な態様も同様である。
本発明の培地は、動物細胞の増殖を刺激する等の効果を有するため、本発明の培地は、動物細胞増殖用に用いることができる。本発明の培地は幹細胞の増殖を刺激し細胞死を抑制する効果を有するため、特に幹細胞の培養に有用である。一態様において、本発明の培地は、幹細胞の未分化状態を維持させながら、幹細胞を増殖維持するために用いられる。
本発明の培地を、動物細胞増殖用に用いる場合、本発明の培地は、細胞増殖促進に働く濃度で本発明化合物を含有することが好ましい。本明細書中、「細胞増殖促進に働く濃度で」本発明化合物を含有するとは、本発明の培地中で動物細胞を培養した時に、本発明化合物を含有しないこと以外は組成が同一な対照培地中で培養した時と比較して、細胞増殖が促進されるのに十分な濃度で本発明化合物を含有することを意味する。
当該濃度は、本発明の培地中で一定数(例、5000細胞)の動物細胞を一定期間(例、4日)培養した時に得られる細胞の数(X)と、上記対照培地中同一条件下で培養した時に得られる細胞の数(Y)との比(X/Y)が、好ましくは1.2以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは5以上であるか、若しくはYが0でありXが培養前の細胞数以上である程度、あるいはインスリン含有培地(例、インスリン3μMを含む培地)で培養した場合と同等である程度に細胞増殖が促進されるのに十分な濃度である。
3 動物細胞の培養方法
本発明は、本発明化合物を含む培地中で、動物細胞を培養することを含む、動物細胞の培養方法を提供する。「本発明化合物を含む培地」としては、上記本発明の培地が挙げられる。従って、本発明は、本発明の培地中で動物細胞を培養することを特徴とする、動物細胞の培養方法を提供する(本明細書中、これらの方法をまとめて「本発明の方法」とも称する)。本発明の方法に関連する各用語の定義及び態様は、上記に記載したものと同一である。
本発明の方法において、動物細胞の培養は、本発明化合物を含む培地中に、動物細胞を播種することにより行ってもよく、動物細胞を含む培地中に本発明化合物を添加し、該動物細胞を培養することにより行ってもよい。本発明の方法において使用する培地の組成は、上記「本発明の培地」に記載された組成に準ずる。
本発明の方法において用いられる本発明化合物は、1種類であってもよく、複数種類の本発明化合物を組み合わせて用いてもよい。
本発明の方法により培養し得る動物細胞の例としては、本発明の培地添加剤を用いることができる動物細胞の例(上述)と同様ものが挙げられ、その好適な態様も同様である。
本発明の方法における、培地中の動物細胞の濃度は、所望の効果を有する限り特に制限されないが、通常10〜10個/cm、好ましくは、10〜10個/cm、より好ましくは10〜10個/cmである。
本発明の方法における培養条件は、本発明化合物(又は本発明の培地添加剤)が用いられることを除いては、所望の効果を達成し得る限り特に限定されず、培養の目的に応じて通常の動物細胞の培養に用いられる培養条件を適宜採用し得る。
例えば、多能性幹細胞の未分化性を維持させたまま培養する方法としては、実験医学別冊目的別で選べる細胞培養プロトコール(羊土社)などに記載の方法が挙げられる。多能性幹細胞の培養はマウス胎仔線維芽細胞(MEF)やマウス線維芽細胞株(STO)などのフィーダー細胞を用いてもよく、フィーダーフリー環境下で行ってもよい。
本発明の方法において、細胞の培養に用いられる培養器は、細胞の培養が可能なものであれば特に限定されないが、フラスコ、組織培養用フラスコ、ディッシュ、ペトリデッシュ、組織培養用ディッシュ、マルチディッシュ、マイクロプレート、マイクロウェルプレート、マルチプレート、マルチウェルプレート、マイクロスライド、チャンバースライド、シャーレ、チューブ、トレイ、培養バック、及びローラーボトルなどが挙げられる。
細胞の培養に用いられる培養器は、細胞接着性であっても細胞非接着性であってもよく、目的に応じて適宜選ばれる。
細胞接着性の培養器は、培養器の表面の細胞との接着性を向上させる目的で、細胞外マトリックス(ECM)等の任意の細胞支持用基質又はそれらの機能をミミックする人工物でコーティングされたものであり得る。細胞支持用基質は、幹細胞又はフィーダー細胞(用いられる場合)の接着を目的とする任意の物質であり得る。
その他の培養条件は、適宜設定できる。例えば、培養温度は、細胞の増殖刺激等の所望の効果を達成し得る限り特に限定されないが、約30〜40℃、好ましくは約37℃である。CO濃度は、約1〜10%、好ましくは約2〜5%である。酸素濃度は、通常1〜40%であるが、培養条件などにより適宜選択される。
本発明の方法において、動物細胞は、接着培養、浮遊培養、組織培養などの自体公知の方法により培養可能である。
本発明の方法における動物細胞を培養する期間は、所望の効果を達成し得る限り特に制限されるものではないが、好ましくは1日間以上、より好ましくは2日間以上、さらに好ましくは4日間以上であり、理論的には無限に培養を継続することができる。本発明の培地中で培養した動物細胞を回収し、その一部又は全部を本発明化合物を含む新鮮な培地(例、本発明の培地)中に継代し、引き続き培養を続けることにより、長期間に亘り増殖させることができる。
本発明の方法によれば、動物細胞の増殖を刺激し細胞死を抑制することができるため、動物細胞を効率的に増殖させることが可能となる。特に、本発明の方法は、幹細胞を増殖を刺激し幹細胞死を抑制するため、幹細胞の培養に有用である。従って、本発明の方法は、好ましくは動物細胞を増殖させるための培養方法であり、より好ましくは幹細胞を増殖させるための培養方法である。一態様において、本発明の方法は、幹細胞の未分化状態を維持させながら、幹細胞を増殖させるための方法である。
4 動物細胞培養組成物
本発明はさらに上記本発明の培地並びに動物細胞を含んでなる、培養組成物(本明細書中、本発明の培養組成物ともいう)を提供する。該培養組成物は、細胞を培養することにより得られる結果物を含む。本発明の培養組成物に関連する各用語の定義及び態様は、上記に記載したものと同一である。
本発明の培養組成物における動物細胞は、生存し、増殖している細胞である。
本発明の培養組成物において、動物細胞は、本発明の培地中に存在する。一態様において、本発明の培養組成物は、動物細胞の、本発明の培地中の懸濁液である。本発明の培養組成物は、適切な容器中に封入されていてもよい。
一実施態様として、本発明の培養組成物は凍結保存させた状態で提供され得る。本発明の培養組成物は、凍結保存することが可能であり、必要に応じて融解・起眠して使用することができる。凍結保存は、自体公知の細胞凍結保存方法を使用することができる。凍結保存の例としては、本発明の培養組成物にジメチルスルホキシドを加え、−80〜−200℃、好ましくは−196℃(液体窒素中)の条件で本発明の培養組成物を保存する。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
方法
培地の作製
ヒトiPS細胞(hiPS細胞)培養用培地として、E8培地(Chen et al., Nat Methods., 8,424-429, 2011 参照)の組成からインスリンを除去した、インスリン不含E8培地を作製した。表1に組成を示す。インスリン含有E8培地は、上記培地にヒトインスリン(最終濃度19.4 mg/L)を添加することで作製した。
Long−term self−renewing neuro epithelial−like stem cells(LtNES細胞)培養用培地として、インスリン不含N2B27培地を作製した。最終組成を表2に示す。インスリン不含N2サプリメントとして、既報のN2サプリメントの組成からインスリンを除去したものを作製した。インスリン不含B-27サプリメントは、市販のB-27 minus insulinサプリメント(Thermo Scientific)を用いた。これらのインスリン不含サプリメントとD-MEM/F12基礎培地を混合し、インスリン不含N2B27培地を作製した。インスリン含有N2B27培地は、上記培地にヒトインスリン(最終濃度4.5mg/L)を添加することで作製した。
ヒトケラチノサイト培養用培地として、インスリン不含ケラチノサイト培養用培地を作製した。最終組成を表3に示す。市販のHuMedia KG2培地(クラボウ)の基礎培地にリコンビナントヒト血清アルブミン(rHSA)、Hydrocortisone、hEGF(Epidermal growth factor)、Gentamycin、Amphotericin Aを添加することで、インスリン不含ケラチノサイト培養用培地を調製した。インスリン含有ケラチノサイト培養用培地は、ヒトインスリン(最終濃度10 mg/L)を添加することで作製した。
細胞培養
未分化ヒトiPS細胞は、201B7株のhiPS細胞(Takahashi et al., Cell 131, 861-872. 2007参照)を用いた。培養基底膜マトリックスとしてiMatrix-511(ニッピ)をコートした12-wellもしくは48-wellのプレート(日本ベクトンディッキンソン)を用い、5% CO2/37 ℃の条件で既報の手法(Nakagawa et al., Scientific Reports 4, 3594, 2014参照)に従って維持培養した。細胞はY-27632(ナカライテスク)を10μM添加した培地にシングルセル播種し、翌日以降はY-27632を添加していない培地で培養した。細胞の剥離には、50%トリプルセレクト(Life Technologies)/EDTAを使用した。
ヒトLtNES細胞株は、既報の手法(Koch et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 106, 3225-3230, 2009 参照)で樹立したLtNES細胞株を用いた。培養基底膜マトリックスとしてPoly-ornithine/Mouse Laminin(Life Technologies)をコートした12-wellもしくは48-wellのプレートを用い、5% CO2/37 ℃の条件で行った。細胞の剥離には、トリプルセレクトを使用した。細胞は培地にシングルセル播種し2日ごとに培地交換を行った。
ヒトケラチノサイトは、クラボウより入手したHuman epidermal keratinocytes,adult (P1)を用いた。細胞培養は48-wellのプレートを用い、5% CO2/37 ℃の条件で行った。
hiPS細胞の三胚葉分化
インスリン含有E8培地又は不含E8培地で3継代培養したhiPS細胞を、24-wellプレートに15,000 細胞/wellの濃度で播種した。bFGFを含まない上記培地でそれぞれの細胞を14日間培養し、三胚葉への自発的な分化を誘導した。
細胞数の定量
細胞数の定量は、以下の2種類の方法で行った。12-wellプレートで培養を行った場合、細胞を50%トリプルセレクトにて剥離し、ピペッティングによりシングルセル化した後に生死細胞オートアナライザーCountess(Life Technologies)を用いて生細胞数を測定した。オートアナライザーにて測定された生細胞数を基に細胞増加倍率を算出した。48-wellプレートで培養を行った場合、10%(v/v)の WST-8試薬(Cell Counting Reagent SF、ナカライテスク社)を含む培地を150 μL加え、5% CO2/37 ℃で1-3時間インキュベートした。呈色した培地の450 nm (参照波長650 nm)における吸光度をマイクロプレートリーダーSH-9000(コロナ電気)で測定することにより、生細胞数の定量を行った。
リアルタイムPCRによる遺伝子発現解析
各細胞のTotal RNAをMaxwell 16 LEV simplyRNA Purification Kits (Promega)を使用して抽出した。Total RNAは濃度測定を行った後、PrimeScript RT Master Mix(タカラバイオ)を用いて逆転写を行うことでcDNAを合成した。各cDNAと表4に示す各プライマーセット、Fast SYBR Green Master Mix(Applied Biosystems)を混合し、7500 Fast Real-Time PCR System(Applied Biosystems)を用いてリアルタイムPCRを行った。各サンプルはN=2の平均値を採用し、β-Actinの発現量で標準化した後、相対定量を行った。
免疫染色
各培養細胞を4% パラホルムアルデヒドりん酸緩衝液(ナカライテスク)を用いて室温で20分間固定化を行った。ブロッキング溶液(0.03% Triton-X 100, 5% BSA含有PBS)を添加して4 ℃で1時間インキュベートし、固定化した細胞のブロッキングを行った。表5に示す一次抗体を各希釈倍率で添加したブロッキング溶液を加え、抗原抗体反応を4 ℃で終夜行った。PBSで3回洗浄した後、表6に示す各倍率で希釈した二次抗体と1000倍希釈したHoechst33342(同人化学)を添加したブロッキング溶液を加え、4 ℃で1時間インキュベーションした。PBSで3回洗浄した後、蛍光顕微鏡EVOS FL Cell Imaging System(Life Technologies)を用いて観察および写真撮影を行った。
化合物
実施例において用いた化合物1〜5を下記表7に示す。
実施例
実施例1. ヒトiPS細胞に対する本発明化合物のhiPS細胞増殖促進機能
インスリンを含まないE8培地 (Insulin−)に化合物1濃度を変えて添加することで、hiPS細胞増殖の本発明化合物に対する濃度依存性を評価した。48-wellプレートに201B7株hiPS細胞を5,000細胞播種し、インスリンを含まないE8培地(Insulin−)、インスリンを含むE8培地(Insulin)、インスリンを含まず化合物1を含む培地(Insulin−, 化合物1)で4日間培養した。生細胞数の定量結果を図1に示す。Insulin−培地で培養したhiPS細胞がほとんど死滅したのに対し、培地に化合物1を添加すると化合物1の濃度依存的にhiPS細胞が増殖した。また、細胞の最大増殖活性はインスリンと同程度であった。この結果より、化合物1がインスリンを代替してhiPS細胞の増殖を促進することが明らかになった(図1)。
実施例2.本発明化合物群のhiPS細胞増殖促進活性
本発明化合物群(化合物1, 化合物2, 化合物3, 化合物4, 化合物5)をInsulin−培地に添加し、それぞれの化合物のhiPS細胞増殖促進活性を評価した。48-wellプレートに201B7株hiPS細胞を5,000細胞播種し、各培地中で4日間培養した。生細胞数の定量結果を図2に示す。化合物1, 化合物2, 化合物3, 化合物4, 化合物5を添加した培地は明らかなhiPS細胞増殖活性(Absorbance値 > 0.05)を示した。これらの化合物は既報(国際公開第2005/042536号)において糖取り込み促進活性のEC50値が0.1μg/mL以下であり、そのようなEC50値を持つ化合物についてインスリン代替能を有することが明らかになった。
実施例3. 本発明化合物を用いたhiPS細胞の未分化維持培養
実際のhiPS細胞培養で行われるような細胞の継代を行うことで、本発明化合物を用いた維持培養が可能かを調べた。インスリンもしくは20 μMの化合物1を含有するE8培地を用い、12-wellプレート上でhiPS細胞を継代培養した。細胞増殖の定量結果を図3に示す。化合物1含有E8培地を用いることで、インスリンを含有するE8培地と同様な効率でhiPS細胞を維持し、増殖できることが明らかになった。また、細胞の形態も両培地で大きく異なることはなかった(図4)。
また、3継代終了後のhiPS細胞の未分化マーカーの発現を評価した。NanogおよびOct3/4のmRNA発現量をリアルタイムPCRにより定量した結果を図5に示す。また、細胞内のNanogタンパク質を免疫染色した結果を図6に示す。化合物1含有E8培地で培養したhiPS細胞は、インスリンを含有するE8培地と同様にNanogやOct3/4を発現しており、未分化維持能が保たれていることが明らかになった。これらの結果より、本発明化合物を用いることで、インスリンを含まずともhiPS細胞の未分化維持培養が可能であり、未分化状態のhiPS細胞を効率よく増殖させることが可能であることが分かった。
実施例4. 本発明化合物を用いて培養したhiPS細胞の分化多能性評価
化合物1培地で維持培養したhiPS細胞が、三胚葉(外胚葉: Ectoderm、中胚葉: Mesoderm、内胚葉: Endoderm)の全てに分化する分化多能性を有するか評価を行った。bFGFを除いた培地でhiPS細胞を培養することで細胞が三胚葉へ自発的に分化することが知られている(Nakagawa et al., Scientific Reports 4, 3594, 2014参照)。我々はbFGFを含まないインスリン含有培地と20μMの化合物1を含有するE8培地を作製し、それぞれを用いて201B7株のhiPS細胞を2週間培養することで三胚葉へ分化させた。固定した細胞に対して三胚葉のバイオマーカー(外肺葉:Tuj1、中胚葉:α-SMA、内胚葉:AFPおよびSOX17)を免疫染色し、蛍光顕微鏡で観察することでそれぞれの細胞に分化しているか確認した。
免疫染色結果を図7に示す。化合物1含有E8培地で維持培養し、分化させた細胞は三胚葉全ての分化マーカーを発現していることを確認した。この結果より、化合物1含有培地で培養した細胞が三胚葉の細胞に分化可能な多能性を有することが明らかになった。
実施例5. LtNES細胞に対する化合物1の細胞増殖促進機能
インスリンを含まないN2B27培地 (Insulin−)に化合物1濃度を変えて添加することで、LtNES細胞増殖の本発明化合物に対する濃度依存性を評価した。48-wellプレートにLtNES細胞を40,000細胞播種し、インスリンを含まないLtNES培地(Insulin−)、インスリンを含むLtNES培地(Insulin)、インスリンを含まず化合物1を含むLtNES培地(Insulin−, 化合物1)で7日間培養した。生細胞数の定量結果を図8に示す。Insulin−培地で培養したLtNES細胞がほとんど死滅したのに対し、培地に化合物1を添加すると化合物1の濃度依存的にhiPS細胞が増殖した。この結果より、化合物1がインスリンを代替してLtNES細胞の増殖を促進することが明らかになった。
実施例6. 本発明化合物を用いたLtNES細胞の維持培養
実際のLtNES細胞培養で行われるような細胞の継代を行うことで、本発明化合物を用いた維持培養が可能かを調べた。インスリンもしくは20 μMの化合物1を含有するN2B27培地を用い、12-wellプレート上でLtNES細胞を継代培養した。細胞増殖の定量結果を図9に示す。化合物1含有N2B27培地を用いることで、インスリンを含有するN2B27培地と同様な効率でhiPS細胞を維持し、増殖できることが明らかになった。
また、3継代終了後のLtNES細胞のマーカー(Nestin)を免疫染色した結果を図10に示す。化合物1含有N2B27培地で培養したLtNES細胞は、インスリンを含有するN2B27培地で培養したLtNES細胞と同様にNestinを発現しており、LtNES細胞としての未分化維持能が保たれていることが明らかになった。これらの結果より、本発明化合物を用いることで、インスリンを含まずともLtNES細胞を効率よく維持培養できることが分かった。
実施例7. ケラチノサイトに対する本発明化合物の細胞増殖促進機能
インスリンを含まないケラチノサイト培養用培地(Insulin−)に化合物1濃度を変えて添加することで、本発明化合物のケラチノサイトに対する細胞増殖促進能を評価した。48-wellプレートにヒトケラチノサイト7,500細胞播種し、インスリンを含まない培地(Insulin−)、インスリンを含む培地(Insulin)、インスリンを含まず化合物1を含む培地(Insulin−, 化合物1)で3日間培養した。生細胞数の定量結果を図11に示す。Insulin−培地で培養したケラチノサイトに対し、化合物1を添加した培地ではケラチノサイトの増殖効率が明らかに向上した。また、その増殖活性はインスリン含有培地と同程度であった。この結果より、化合物1がインスリンを代替してケラチノサイトの増殖を促進することが明らかになった。
実施例8. 他社インスリン受容体活性化化合物との比較
化合物1、化合物M(Sajjad et al., J. Biol. Chem., 275, 36590, 2000記載のCompound 2)もしくはNa3VO4(Green A., Biochem J., 238, 663-669, 1986参照)をInsulin−培地に添加し、それぞれの化合物のhiPS細胞増殖促進活性を評価した。48-wellプレートに201B7株hiPS細胞を5,000細胞播種し、各培地中で5日間培養した。生細胞数の定量結果を図12, 13に示す。化合物1を添加した培地は明らかなhiPS細胞増殖活性を示したのに対し、化合物MおよびNa3VO4は増殖促進活性を示さなかった。
本発明によれば、インスリンを含まない培地であっても、効率良く動物細胞を培養することができる。さらに、本発明化合物は、動物細胞の増殖促進効果を有するため、動物細胞を効率よく増殖させることが可能となる。また、本発明化合物は、多能性幹細胞や複能性幹細胞等の未分化な細胞の未分化性を損なわずに培養できるため、本発明は特に幹細胞の培養に有用である。さらに、本発明によれば、インスリンの代わりに本発明化合物を用いた培地を作製することで、培地中のタンパク成分の量を低減させることが可能となる。従って、本発明の培地中で培養された細胞を移植等の医療用途で用いる場合に、異種由来のタンパク質や組換えタンパク質の混入するリスクを低減させることが可能となり、より安全な治療方法の開発に貢献することができる。
本出願は、日本で出願された特願2016−089843(出願日:2016年4月27日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。

Claims (35)

  1. 下記一般式(I)で示される縮合多環式化合物またはその製薬学的に許容される塩を含有する動物細胞培養用培地添加剤。
    {式中、Aは芳香環基、複素環基、または脂肪族環基を示し、Bは置換基を有してもよい芳香環、置換基を有してもよい複素環、または置換基を有してもよい脂肪族環を示し、Cは置換基を有してもよい複素環基を示し、Tは基中の二つの炭素原子が二重結合、三重結合を有しても良く、また基中の炭素原子が−O−、−S−、−NH−に一部が置換されても良い、置換基を有しても良い炭素数1〜7個からなるアルキレン基を示し、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいベンジルオキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいヘテロアリールオキシ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアリールビニル基、または置換基を有してもよいアリールエチニル基を示し、−X−および−Z−は、それぞれ独立して−O−、−NH−、−NR6−(式中、R6は置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいカルバモイル基、または置換基を有してもよいスルホニル基を示す)、−S−、−SO−、−SO2−、−CH2−、−CR45−(式中、R4、R5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)、または−CO−を示し、−W−は−NR9−(式中、R9は水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示す)、−O−、または−CR78−(式中、R7、R8は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)を示し、Yは窒素原子またはCHを示し、a、b及びcはそれぞれの炭素原子の位置を示す。但し、i)上記置換基は、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、アリール基、ヘテロアリール基からなる群から選ばれる。ii)Xが―CH2−、−CR45−(式中、R4およびR5は、前記と同義である)のとき、Yは窒素原子である。}
  2. Bが置換基を有してもよい脂肪族環であり、Cが置換基を有してもよい複素環基であり、−X−が−NH−、または−NR6−(式中、R6は置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいカルバモイル基、または置換基を有してもよいスルホニル基を示す)であり、Yが窒素原子であり、−Z−が−CH2−または−CR45−(式中、R4、R5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)であり、−W−が−NR9−(式中、R9は水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示す)であり、−T−が、−CR1112−(式中、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)、−CR1314−CR1516−(式中、R13〜R16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)または−CR17=CR18−(式中R17およびR18はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)である請求項1記載の培地添加剤。
  3. Cの置換基を有してもよい複素環基が、置換基を有してもよいヘテロアリール基である請求項2記載の培地添加剤。
  4. Aがフェニル基であり、Cの置換基を有してもよい複素環基が置換基を有してもよいフリル基、置換基を有してもよいチエニル基、置換基を有してもよいオキサゾリル基、置換基を有してもよいイソオキサゾリル基、置換基を有してもよいチアゾリル基、置換基を有してもよいオキサジアゾリル基、置換基を有してもよいチアジアゾリル基、置換基を有してもよいピリジル基、置換基を有してもよいピリドニル基、置換基を有してもよいピリダジニル基、置換基を有してもよいピリミジニル基、置換基を有してもよいイミダゾリル基、置換基を有してもよい4−オキソチアゾリジン−2−チオニル基のいずれかである請求項2記載の培地添加剤。
  5. Bが置換基を有してもよいシクロヘキサン環である請求項4記載の培地添加剤。
  6. 一般式(I)の−X−が−NH−または−N(CH)−であり、Yが窒素原子であり、−Z−が−CH2−であり、−W−が−NH−であり、Bが置換基を有してもよいシクロヘキサン環であり、Cが置換基を有してもよいオキサゾリル基、置換基を有してもよいチアゾリル基、置換基を有してもよいピリジル基であり、−T−が、−CR1112−(式中、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)、−CR1314−CR1516−(式中、R13〜R16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)または−CR17=CR18−(式中、R17およびR18は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)である請求項5記載の培地添加剤。
  7. 一般式(I)の−X−が−NH−または−N(CH)−であり、Yが窒素原子であり、−Z−が−CH2−または−CR45−(式中、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)であり、−W−が−NH−であり、Aが複素環基であり、Bが置換基を有してもよいシクロヘキサン環であり、Cが置換基を有してもよいオキサゾリル基、置換基を有してもよいチアゾリル基、置換基を有してもよいピリジル基であり、−T−が、−CR1112−(式中、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)、−CR1314−CR1516−(式中、R13〜R16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)または−CR17=CR18−(式中、R17およびR18は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)である請求項2記載の培地添加剤。
  8. 一般式(I)の−Z−が−CH2−であり、Aがヘテロアリール基である請求項7記載の培地添加剤。
  9. 1、R2およびR3の少なくとも一つが、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、メチルチオ基、トリフルオロメチル基のいずれかで、残りが水素原子である請求項6記載の培地添加剤。
  10. 一般式(I)のa、bおよびcの炭素原子の絶対配置が、それぞれ独立してRまたはSである請求項6〜8のいずれか1項記載の培地添加剤。
  11. 一般式(I)のaおよびbの炭素原子の絶対配置がともにRであり、cの炭素原子の絶対配置がRまたはSである請求項10記載の培地添加剤。
  12. 一般式(I)のaおよびbの炭素原子の絶対配置がともにSであり、cの炭素原子の絶対配置がRまたはSである請求項10記載の培地添加剤。
  13. 細胞増殖用である、請求項1〜12のいずれか1項記載の培地添加剤。
  14. 動物細胞が複能性幹細胞又は多能性幹細胞である、請求項1〜13のいずれか1項記載の培地添加剤。
  15. 動物細胞が、神経幹細胞、神経前駆細胞、胚性幹細胞(ES細胞)又は誘導多能性幹細胞(iPS細胞)である請求項1〜13のいずれか1項記載の培地添加剤。
  16. 下記一般式(I)で示される縮合多環式化合物またはその製薬学的に許容される塩を含有する動物細胞培養用培地。
    {式中、Aは芳香環基、複素環基、または脂肪族環基を示し、Bは置換基を有してもよい芳香環、置換基を有してもよい複素環、または置換基を有してもよい脂肪族環を示し、Cは置換基を有してもよい複素環基を示し、Tは基中の二つの炭素原子が二重結合、三重結合を有しても良く、また基中の炭素原子が−O−、−S−,−NH−に一部が置換されても良い、置換基を有しても良い炭素数1〜7個からなるアルキレン基を示し、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいベンジルオキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいヘテロアリールオキシ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアリールビニル基、または置換基を有してもよいアリールエチニル基を示し、−X−および−Z−は、それぞれ独立して−O−、−NH−、−NR6−(式中、R6は置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいカルバモイル基、または置換基を有してもよいスルホニル基を示す)、−S−、−SO−、−SO2−、−CH2−、−CR45−(式中、R4、R5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)、または−CO−を示し、−W−は−NR9−(式中、R9は水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示す)、−O−、または−CR78−(式中、R7、R8は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)を示し、Yは窒素原子またはCHを示し、a、b及びcはそれぞれの炭素原子の位置を示す。但し、i)上記置換基は、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、アリール基、ヘテロアリール基からなる群から選ばれる。ii)Xが―CH2−、−CR45−(式中、R4およびR5は、前記と同義である)のとき、Yは窒素原子である。}
  17. Bが置換基を有してもよい脂肪族環であり、Cが置換基を有してもよい複素環基であり、−X−が−NH−、または−NR6−(式中、R6は置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいカルバモイル基、または置換基を有してもよいスルホニル基を示す)であり、Yが窒素原子であり、−Z−が−CH2−または−CR45−(式中、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)であり、−W−が−NR9−(式中、R9は水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示す)であり、−T−が、−CR1112−(式中、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)、−CR1314−CR1516−(式中、R13〜R16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)または−CR17=CR18−(式中、R17およびR18は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)である請求項16記載の培地。
  18. Cの置換基を有してもよい複素環基が、置換基を有してもよいヘテロアリール基である請求項17記載の培地。
  19. Aがフェニル基であり、Cの置換基を有してもよい複素環基が置換基を有してもよいフリル基、置換基を有してもよいチエニル基、置換基を有してもよいオキサゾリル基、置換基を有してもよいイソオキサゾリル基、置換基を有してもよいチアゾリル基、置換基を有してもよいオキサジアゾリル基、置換基を有してもよいチアジアゾリル基、置換基を有してもよいピリジル基、置換基を有してもよいピリドニル基、置換基を有してもよいピリダジニル基、置換基を有してもよいピリミジニル基、置換基を有してもよいイミダゾリル基、置換基を有してもよい4−オキソチアゾリジン−2−チオニル基のいずれかである請求項17記載の培地。
  20. Bが置換基を有してもよいシクロヘキサン環である請求項19記載の培地。
  21. 一般式(I)の−X−が−NH−または−N(CH)−であり、Yが窒素原子であり、−Z−が−CH2−であり、−W−が−NH−であり、Bが置換基を有してもよいシクロヘキサン環であり、Cが置換基を有してもよいオキサゾリル基、置換基を有してもよいチアゾリル基、置換基を有してもよいピリジル基であり、−T−が、−CR1112−(式中、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)、−CR1314−CR1516−(式中、R13〜R16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)または−CR17=CR18−(式中、R17およびR18は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)である請求項20記載の培地。
  22. 一般式(I)の−X−が−NH−または−N(CH)−であり、Yが窒素原子であり、−Z−が−CH2−または−CR45−(式中、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)であり、−W−が−NH−であり、Aが複素環基であり、Bが置換基を有してもよいシクロヘキサン環であり、Cが置換基を有してもよいオキサゾリル基、置換基を有してもよいチアゾリル基、置換基を有してもよいピリジル基であり、−T−が、−CR1112−(式中、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)、−CR1314−CR1516−(式中、R13〜R16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)または−CR17=CR18−(式中、R17およびR18は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基を示す)である請求項17記載の培地。
  23. 一般式(I)の−Z−が−CH2−であり、Aがヘテロアリール基である請求項22記載の培地。
  24. 1,R2およびR3の少なくとも一つが、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、メチルチオ基、トリフルオロメトキシ基のいずれかで、残りが−Hである請求項21記載の培地。
  25. 一般式(I)のa、bおよびcの炭素原子の絶対配置が、それぞれ独立してRまたはSである請求項21〜23のいずれか1項記載の培地。
  26. 一般式(I)のaおよびbの炭素原子の絶対配置がともにRであり、cの炭素原子の絶対配置がRまたはSである請求項25記載の培地。
  27. 一般式(I)のaおよびbの炭素原子の絶対配置がともにSであり、cの炭素原子の絶対配置がRまたはSである請求項25記載の培地。
  28. 細胞増殖用である、請求項16〜27のいずれか1項記載の培地。
  29. 動物細胞が複能性幹細胞又は多能性幹細胞である、請求項16〜28のいずれか1項記載の培地。
  30. 動物細胞が、神経幹細胞、神経前駆細胞、ES細胞もしくはiPS細胞である請求項16〜28のいずれか1項記載の培地。
  31. 培地中の、縮合多環式化合物またはその製薬学的に許容される塩が、0.25μM〜200μMである、請求項30記載の培地。
  32. 請求項16〜31のいずれか1項記載の培地中で動物細胞を培養することを特徴とする、動物細胞の培養方法。
  33. 動物細胞が幹細胞である、請求項32記載の培養方法。
  34. 培地中で細胞を1日以上培養することを特徴とする、請求項32又は33記載の培養方法。
  35. 請求項16〜31のいずれか1項記載の培地及び動物細胞を含む、動物細胞培養調製物。
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