本発明の実施形態について説明する。(無線伝送システムの動作概要)本発明の実施形態に係る無線伝送システムにおいては、例えば市販の建物データを読み込み、建物データについてある程度の絞込みを行う。この建物データには、各建物の位置データ(例えば緯度及び経度)と高さ(建物高さ)が含まれる。そして、設定される伝搬路に対する各建物の水平距離や水平角を算出する。次に、算出した各建物の水平距離又は水平角に基づき、伝搬路に近接する建物の水平方向の位置データ(例えば緯度及び経度)を抽出し表示する。こうして、設定される伝搬路に近接する建物を容易に把握することができ、伝搬障害とならない適切な伝搬路や送信点(例えば移動局の位置)を選択することができる。
(無線伝送システムの構成) 図1は、本発明の実施形態に係る無線伝送システムの構成図である。本発明に係る無線伝送システムの例として、移動局と基地局との間や、移動局と親局との間の無線伝送を含むマイクロ波受信基地局システムが挙げられる。図1は、マイクロ波受信基地局システムの系統例を示す。
このマイクロ波受信基地局システムは、例えば放送局である親局20と、それぞれカメラやマイクを備えた第1移動局40及び第2移動局50と、親局20と第1移動局40との間の無線通信を中継する基地局10(例えばFPU)とを含むように構成される。移動局は、例えば車載型や航空機搭載型である。移動局は、第1移動局40又は第2移動局50のうちいずれか1つだけであってもよいし、3つ以上あってもよい。基地局10も、2つ以上あってもよい。
第1移動局40は、カメラ(不図示)と、マイク(不図示)と、第1移動局送信部41と、第1移動局アンテナ42とを備え、カメラで撮影した映像情報やマイクで集音した音声情報を、映像音声情報として、第1移動局送信部41から、第1移動局アンテナ42を介して無線送信する。
詳しくは、第1移動局送信部41は、映像音声情報を含むSDI(Serial Digital Interface)信号を、FPUでの伝送に用いられる固定長のパケット形式のフレームフォーマットであるTS(Transport Stream)信号に符合化し、それを中間周波信号に変調後、マイクロ波帯へ周波数変換し、第1移動局アンテナ42へ伝送する。第1移動局アンテナ42は、マイクロ波信号を電波として無線送信する。
第1移動局アンテナ42は、本実施形態では第1移動局40に固定されている固定アンテナであり、第1移動局アンテナ42の送受信方向は、例えば、第1移動局40の向きを変えることにより変更可能である。なお、第1移動局アンテナ42として、アンテナ角度が変更可能な回転アンテナを用いる構成とすることもできる。後述の第2移動局アンテナ52も、第1移動局アンテナ42と同様である。
第2移動局50は、カメラ(不図示)と、マイク(不図示)と、第2移動局送信部51と、第2移動局アンテナ52とを備え、カメラで撮影した映像情報やマイクで集音した音声情報を、映像音声情報として、第2移動局送信部51から、第2移動局アンテナ52を介して無線送信する。
詳しくは、第2移動局送信部51は、映像音声情報を含むSDI信号を、TS信号に符合化し、それを中間周波信号に変調後、マイクロ波帯へ周波数変換し、第2移動局アンテナ52へ伝送する。第2移動局アンテナ52は、マイクロ波信号を電波として無線送信する。
基地局10は、基地局回転アンテナ11と、基地局受信部12と、基地局送信部13と、基地局固定アンテナ14と、被制御端局変復調部34と、被制御端局35とを備える。
基地局回転アンテナ11は、回転が可能な回転架台を含み、親局20からの制御を受けて、その受信方向を回転する回転アンテナ装置である。回転アンテナとは、当該アンテナの受信方向を回転させることのできる指向性アンテナである。また、基地局回転アンテナ11は、基地局回転アンテナ11のアンテナ角度情報を、被制御端局35を介して、親局20へ送信する。
基地局受信部12は、第1移動局送信部41から無線送信された電波(マイクロ波帯の信号)を、基地局回転アンテナ11を介して受信し、マイクロ波帯の信号を中間周波信号へ周波数変換し、TS信号へ復調する。
基地局送信部13は、基地局受信部12で復調されたTS信号を、マイクロ波帯へ周波数変換し、基地局固定アンテナ14へ伝送する。基地局固定アンテナ14は、マイクロ波信号を電波として無線送信する。
被制御端局変復調部34は、後述の操作表示端末31から送信されたアナログ制御信号を、シリアル信号に復調後、被制御端局35へ伝送する。被制御端局35は、被制御端局変復調部34からのシリアル信号を解読し、解読した制御指示内容に基づき、基地局回転アンテナ11の制御を行う(例えば、指示された方向へ指示された角度だけアンテナを回転させる)。
なお、被制御端局変復調部34と被制御端局35は、図1のように基地局10の一部として基地局10の内部に設けてもよいが、基地局10とは別に、基地局10の外部にまとめて設けてもよいし個々に設けてもよい。
親局20は、親局固定アンテナ21と、親局第1受信部22と、復号部23と、情報処理部24と、親局回転アンテナ25と、親局第2受信部26と、操作表示端末31と、制御端局32と、制御端局変復調部33とを備える。
親局固定アンテナ21は、親局20に固定され、その受信方向が固定されている固定アンテナである。親局回転アンテナ25は、回転が可能な回転架台を含み、制御端局32を介した操作表示端末31からの制御を受けて、その受信方向を回転する回転アンテナ装置である。親局回転アンテナ25は、親局回転アンテナ25のアンテナ角度情報を、制御端局32を介して、操作表示端末31へ送信する。
親局第1受信部22は、基地局送信部13から無線送信された電波(マイクロ波帯の信号)を、親局固定アンテナ21を介して受信し、マイクロ波帯の信号を中間周波信号へ周波数変換し、TS信号へ復調する。
親局第2受信部26は、第2移動局送信部51から無線送信された電波(マイクロ波帯の信号)を、親局回転アンテナ25を介して受信し、マイクロ波帯の信号を中間周波信号へ周波数変換し、TS信号へ復調する。
復号部23は、親局第1受信部22や親局第2受信部26で復調されたTS信号を、SDI信号へ復号し、本線へ伝送する。本線へ伝送された映像音声情報を用いて、生放送や収録が行われる。
情報処理部24は、親局第1受信部22や親局第2受信部26から、親局第1受信部22や親局第2受信部26で受信した受信信号の受信レベルを取得し、編集して、操作表示端末31に伝送する。
(操作表示端末31:伝搬路障害確認装置) 次に、伝搬路障害確認装置として動作する操作表示端末31について説明する。操作表示端末31は、操作者(操作表示端末31のオペレータ)からの各種指示(例えば、基地局回転アンテナ11に対するアンテナ回転角度指示)を受け付ける操作部31aと、各種情報を表示する表示部31bと、操作表示端末31の動作を制御する制御部31cと、各種情報を記憶する記憶部31dとを備える。
操作部31aと表示部31bは、例えば、操作者が表示画面に触れた位置を検出して、操作者からの指示を受け付けるタッチパネルであってもよい。また、操作部31aはマウスや各種キーを備え、表示部31bはLCD等を用いるものであってもよい。
図2は、本発明の実施形態に係る記憶部の構成図である。記憶部31dは、図2に示すように、建物データ311と、絞込み建物データ311aと、受信点建物間データ311bと、地図データ312と、伝搬路建物間データ313とを記憶する。
建物データ311は、市販の建物データを、例えば操作部31aからの操作者の指示に基づき、日本全国、又は都道府県、又は市町村、あるいは更に細分化された地域単位で読み込んだものである。この建物データ311には、各建物を互いに識別するための建物識別子(建物ID)と、各建物の位置データ(例えば緯度及び経度)である建物位置データと、建物高さのデータである建物高さデータとが含まれる。位置データは、水平方向の位置を示すデータである。建物識別子は、建物の名称であってもよい。建物高さは、その建物の地表からの高さ(地上高)である。
絞込み建物データ311aは、所定の基準に基づき、建物データ311を絞込んだデータである。この絞込みの基準は、例えば、所定の建物高さ以上であり、この場合、建物データ311から、所定の建物高さ以上の地上高を有するビル等の建物へ絞込まれる。絞込みの基準となる所定の建物高さは、例えば、予め、操作部31aで受け付けた操作者からの指示に基づき設定され、記憶部31dに記憶されている。
あるいは、絞込みの基準は、受信点から所定の水平距離の範囲であってもよく、この場合、建物データ311から、受信点近傍に存在する建物へ絞込まれる。このとき、建物データの位置データ(例えば緯度及び経度)に基づき絞り込んでもよいし、建物データ内に付随して地域を区分する値(都道府県や地域を区画分けしたエリア番号)があれば、それにより絞り込んでも構わない。
受信点建物間データ311bは、絞込み建物データ311a中の各建物について、受信点からの各建物の水平距離(受信点建物間距離)と建物絶対水平角を算出したものである。受信点の位置は、詳しくは、受信アンテナの位置であり、例えば、基地局10の受信アンテナである基地局回転アンテナ11の位置である。この受信点建物間データ311bには、上記建物識別子と、受信点と当該建物との間の水平距離(受信点建物間距離)と、受信点から見た当該建物の建物絶対水平角、つまり、受信点と建物を結ぶ直線である受信点建物間直線の絶対水平角とが含まれる。絶対水平角とは、絶対的な基準方向(例えば真北方向)に対する角度である。
地図データ312は、例えば国土地理院から発行された市販の地形データを、例えば操作部31aからの操作者の指示に基づき、日本全国、又は都道府県、又は市町村、あるいは更に細分化された地域単位で読み込んだものである。地図データ312には、各地点の位置データ(例えば緯度及び経度)が含まれる(後述の第1実施例)。地図データ312には、さらに、その地点の標高が含まれることもある(後述の第3実施例)。
伝搬路建物間データ313は、例えば操作部31aからの操作者の指示に基づき設定された電波伝搬路(以下、単に伝搬路ともいう)に対する、各建物の水平距離と水平角のデータである。詳しくは、伝搬路建物間データ313には、上記建物識別子と、伝搬路と当該建物との間の水平距離(伝搬路建物間距離)と、伝搬路に対する当該建物の水平角、つまり伝搬路に対する受信点建物間直線の水平角(伝搬路建物間水平角)とが含まれる。伝搬路は、受信点から見た電波の到来方向を示す直線である。
制御部31cは、制御端局32や情報処理部24との間で、ネットワークを介して、各種情報を送受信する。制御部31cは、基地局回転アンテナ11のアンテナ角度を示す角度情報と、基地局受信部12で受信した信号の受信レベルを示す受信レベル情報とを受信し、基地局回転アンテナ11のアンテナ角度を制御する。また、制御部31cは、親局回転アンテナ25のアンテナ角度を示す角度情報と、親局第2受信部26で受信した信号の受信レベルを示す受信レベル情報とを受信し、親局回転アンテナ25のアンテナ角度を制御する。
また、制御部31cは、操作部31aで受け付けた操作者からの指示に基づき、例えば市販の建物データを読み込み、建物データ311として記憶部31dに記憶させる。また、制御部31cは、操作部31aで受け付けた操作者からの指示に基づき、例えば市販の地形データを読み込み、地図データ312として記憶部31dに記憶させる。
また、制御部31cは、上記記憶した建物データ311の絞込みを行い、絞込んだデータを、絞込み建物データ311aとして、記憶部31dに記憶させる。また、制御部31cは、上記記憶した絞込み建物データ311a中の各建物について、受信点からの各建物の水平距離(受信点建物間距離)と建物絶対水平角を算出し、建物識別子と対応付けて、受信点建物間データ311bとして、記憶部31dに記憶させる。
また、制御部31cは、操作部31aで受け付けた操作者からの指示に基づき、受信点を設定し、該受信点の位置データ(例えば緯度及び経度)、又は地形データ(位置データ(例えば緯度及び経度)と標高)を取得し、記憶部31dに記憶させる。
例えば、基地局10や親局20が固定されている場合など、基地局10や親局20の地形データ(位置データと標高)が既知である場合は、基地局10又は親局20を受信点として操作部31aから指定されると、制御部31cは、受信点の位置データ(例えば緯度及び経度)、又は地形データ(位置データと標高)を取得し、記憶部31dに記憶させる。
あるいは、制御部31cは、表示部31bに表示された電子地図(平面図)上で、操作部31aにより指示(例えばマウスのクリック)された点を、受信点として認識し、該受信点の位置座標を読み取り、地図データ312を参照して位置データ(例えば緯度及び経度)に変換する。電子地図とは、LCD等の電子機器に表示される地図である。また、上記変換された位置データの地点の標高を、地図データ312から読み取る。こうして、制御部31cは、受信点の位置データ又は地形データ(位置データと標高)を取得する。
また、制御部31cは、操作部31aで受け付けた操作者からの指示に基づき、送信点を設定し、該送信点の位置データ(例えば緯度及び経度)、又は地形データ(位置データと標高)を取得し、記憶部31dに記憶させる。
例えば、制御部31cは、表示部31bに表示された電子地図(平面図)上で、操作部31aにより指示(例えばマウスのクリック)された点を、送信点として認識し、該送信点の位置座標を読み取り、地図データ312を参照して位置データ(例えば緯度及び経度)に変換する。また、制御部31cは、上記変換された位置データの地点の標高を、地図データ312から読み取る。こうして、制御部31cは、送信点の位置データ又は地形データ(位置データと標高)を取得する。
また、制御部31cは、受信アンテナのアンテナ角度や、送信点と受信点の位置に基づき、伝搬路を取得し、記憶部31dに記憶させ、表示部31bに表示させる。また、制御部31cは、伝搬路に対する、各建物の水平距離(伝搬路建物間距離)と伝搬路建物間水平角を算出し、伝搬路建物間データ313として、記憶部31dに記憶させる。
また、制御部31cは、各建物の伝搬路建物間距離又は伝搬路建物間水平角に基づき、伝搬路に近接する建物の位置を抽出し、表示部31bに表示させる。これにより、操作者は、伝搬路に近接する建物を容易に把握することができ、伝搬障害とならない適切な伝搬路や送信点を選択することができる。制御部31cの処理の詳細は、後述する第1〜第3実施例で説明する。
制御部31cは、ハードウエア構成としては、CPU(Central Processing Unit)と、その動作プログラム等を格納するメモリとを備えており、CPUは、この動作プログラムに従って動作する。
制御端局32は、ネットワークを介して制御部31cから受信したデジタル情報である各種制御指示(例えば、基地局回転アンテナ11に対するアンテナ回転角度指示)を、シリアル信号に変換して制御端局変復調部33へ伝送する。また、制御端局32は、制御端局変復調部33から伝送されたシリアル信号(例えば、基地局回転アンテナ11のアンテナ角度情報)を、デジタル情報に変換し、ネットワークを介して制御部31cへ送信する。
制御端局変復調部33は、制御端局32から伝送されたシリアル信号(例えば、基地局回転アンテナ11に対するアンテナ回転角度指示)を、例えばアナログ信号に変調し、ネットワーク(例えばアナログ回線網)を介して、例えば基地局10へ向けて送信する。また、制御端局変復調部33は、ネットワーク(例えばアナログ回線網)を介して、例えば基地局10から受信したアナログ信号(例えば、基地局回転アンテナ11のアンテナ角度情報)を復調し、シリアル信号に変換して制御端局32へ伝送する。
なお、前記シリアル信号が、アナログ回線網でなくIPネットワークを介して、親局20と基地局10の間で送受信されるように構成してもよい。
また、操作表示端末31と制御端局32と制御端局変復調部33は、図1のように親局20の一部として親局20の内部に設けてもよいが、親局20とは別に、親局20の外部にまとめて設けてもよいし個々に設けてもよい。例えば、操作表示端末31と制御端局32と制御端局変復調部33は、第1移動局40に対向する基地局回転アンテナ11を制御するために、基地局10内に設けてもよい。
こうして、操作表示端末31を含むように、回転アンテナのアンテナ角度を示す角度情報と受信部で受信した信号の受信レベルを示す受信レベル情報とを受信し、回転アンテナのアンテナ角度を制御する制御装置が構成される。なお、制御端局32、制御端局変復調部33、被制御端局変復調部34、被制御端局35のうち1つ又は複数を、制御装置に含めてもよい。
また、操作表示端末31を含むように、伝搬路上に無線送信を妨げる障害物が無いか確認するための伝搬路障害確認装置が構成される。なお、制御端局32、制御端局変復調部33、被制御端局変復調部34、被制御端局35のうち1つ又は複数を、伝搬路障害確認装置に含めてもよい。
(第1移動局40から親局20への映像音声情報の伝送) まず、第1移動局40から、基地局10を介して、親局20へ、素材である映像音声情報を伝送する場合の動作を説明する。親局20から遠距離にある第1移動局40からの素材は、基地局10を通して親局20へ無線伝送される。詳しくは、第1移動局40の第1移動局送信部41は、素材のSDI信号をTS信号に符合化し、それを中間周波信号に変調後、無線伝送可能なマイクロ波信号に変換し、第1移動局アンテナ42から無線送信する。
第1移動局アンテナ42から送信された電波は、基地局10内の基地局回転アンテナ11で受信され、基地局受信部12に送られる。基地局受信部12は、マイクロ波帯の信号を中間周波信号へ周波数変換し、TS信号へ復調する。なお、本実施形態では、TS信号からSDI信号への復号を親局20で行っており、基地局受信部12においてSDI信号への復号を行わないが、SDI信号への復号を行う構成とすることも可能である。
TS信号は、基地局送信部13へ送られ、基地局固定アンテナ14から電波で無線送信される。基地局10から送信された電波は、親局20の親局固定アンテナ21で受信され、親局第1受信部22で、中間周波信号へ周波数変換されてTS信号へ復調され、復号部23によってSDI信号へ復号され、本線へ送られて生放送や収録が行われる。
(第2移動局50から親局20への映像音声情報の伝送) 次に、第2移動局50から、直接、親局20へ、素材である映像音声情報を伝送する場合を説明する。親局20から近距離にある第2移動局50からの素材は、第2移動局送信部51で、素材のSDI信号がTS信号に符合化され、中間周波信号に変調された後、無線伝送可能なマイクロ波信号に変換され、第2移動局アンテナ52から無線送信される。
第2移動局アンテナ52から送信された電波は、親局20内の親局回転アンテナ25で受信され、親局第2受信部26に送られる。親局第2受信部26は、マイクロ波帯の信号を中間周波信号へ周波数変換し、TS信号へ復調する。このTS信号は、復号部23によってSDI信号へ復号され、本線へ送られる。
こうして、このシステムにおける無線伝送では、基地局10の基地局回転アンテナ11において第1移動局40からの電波を如何に効率よく受信できるか、あるいは、親局20の親局回転アンテナ25において第2移動局50からの電波を如何に効率よく受信できるかが重要となってくる。つまり、送信装置である移動局の位置によって、基地局10内や親局20内の受信アンテナは、その受信方向を最適な方向へ変える必要がある。そのため、図1のマイクロ波受信基地局システムでは、基地局回転アンテナ11や親局回転アンテナ25などの回転アンテナは、親局20からの遠隔制御により回転が可能な回転架台を含むものとなっている。
(基地局回転アンテナ11に対する遠隔制御) まず、操作表示端末31から基地局回転アンテナ11に対する遠隔制御方法、例えば、基地局回転アンテナ11の受信方向制御(つまり、アンテナ11の回転角度制御)について説明する。まず、親局20内に設置された操作表示端末31の制御部31cが、基地局回転アンテナ11に対する制御指示(例えばアンテナ回転角度指示)が含まれる制御パケットを、ネットワークに送信する。
ネットワークに送信された制御パケットは、制御端局32で受信され、シリアル信号に変換される。ここで、ネットワークに複数の操作表示端末、複数の制御端局を接続し、それぞれの機器ID(識別番号)によって送信側や受信側を特定し、送受信が可能であることはもちろんである。前記シリアル信号は、更に制御端局変復調部33において、例えばアナログ信号に変調され、アナログ回線網を介して、基地局10へ向けて送信される。
アナログ回線網を介して送信されたアナログ信号は、基地局10内の被制御端局変復調部34で受信され、シリアル信号に復調後、被制御端局35へ送信される。被制御端局35は、そのシリアル信号を解読し、解読した制御指示内容に基づき、前記基地局回転アンテナ11の制御を行う(例えば、指示された方向へ指示された角度だけアンテナを回転させる)。
(基地局回転アンテナ11から操作表示端末31に対する監視情報送信) 次に、基地局回転アンテナ11から操作表示端末31に対する監視情報送信方法、例えば、基地局回転アンテナ11の受信方向を示す回転角度情報の送信について説明する。基地局回転アンテナ11におけるアンテナ角度などの監視情報は、監視信号として、基地局回転アンテナ11から被制御端局35へ送られる。被制御端局35は、その監視信号をシリアル信号として被制御端局変復調部34へ送信し、被制御端局変復調部34は、シリアル信号を例えばアナログ信号に変調し、アナログ回線網を介して、親局20に向けて送信する。
親局20内の制御端局変復調部33は、受信したアナログ信号をシリアル信号へ復調し、制御端局32へ送信する。制御端局32は、受信したシリアル信号を解読し、監視パケットとして、ネットワークを介して、操作表示端末31へ送信する。操作表示端末31は、監視パケットを受信し、監視パケットに含まれる基地局回転アンテナ11の回転角度情報を、操作表示端末31の記憶部31dに記憶し、表示部31bに表示する。
このように、基地局回転アンテナ11に対する監視制御においては、操作表示端末31と制御端局32と制御端局変復調部33と被制御端局変復調部34と被制御端局35とを含むように、回転アンテナのアンテナ角度を示す角度情報と受信装置(基地局受信部)で受信した信号の受信レベルを示す受信レベル情報を受信し、回転アンテナのアンテナ角度を制御する制御装置が構成される。
(親局回転アンテナ25に対する遠隔制御) 次に、操作表示端末31から親局回転アンテナ25に対する遠隔制御方法、例えば、親局回転アンテナ25の受信方向制御(つまり、アンテナ25の回転角度制御)について説明する。まず、操作表示端末31の制御部31cが、親局回転アンテナ25に対する制御指示(例えばアンテナ回転角度指示)が含まれる制御パケットを、ネットワークに送信する。ネットワークに送信された制御パケットは、制御端局32で受信される。
制御端局32は、受信した制御パケットを解読し、解読した制御指示内容に基づき、親局回転アンテナ25の制御を行う(例えば、指示された方向へ指示された角度だけアンテナを回転させる)。なお、操作表示端末31が、制御端局32を介すことなく直接、親局回転アンテナ25の制御を行うよう構成することも可能である。
(親局回転アンテナ25から操作表示端末31に対する監視情報送信) 次に、親局回転アンテナ25から操作表示端末31に対する監視情報送信方法、例えば、親局回転アンテナ25の受信方向を示す回転角度情報の送信について説明する。親局回転アンテナ25におけるアンテナ角度などの監視情報は、監視信号として、親局回転アンテナ25から制御端局32へ送られる。制御端局32は、その監視信号を監視パケットとして、ネットワークを介して、操作表示端末31へ送信する。操作表示端末31は、監視パケットを受信し、監視パケットに含まれる親局回転アンテナ25の回転角度情報を、操作表示端末31の記憶部31dに記憶し、表示部31bに表示する。なお、操作表示端末31が、制御端局32を介すことなく直接、親局回転アンテナ25からの監視情報を受信するよう構成することも可能である。
このように、親局回転アンテナ25に対する監視制御においては、操作表示端末31と制御端局32とを含むように、回転アンテナのアンテナ角度を示す角度情報と受信装置(親局受信部)で受信した信号の受信レベルを示す受信レベル情報を受信し、回転アンテナのアンテナ角度を制御する制御装置が構成される。
以上のようにして、操作表示端末31において、基地局回転アンテナ11の受信方向(つまりアンテナ回転角度)の制御及び監視が可能である。同様に、このマイクロ波受信基地局システムでは、基地局受信部12や基地局送信部13における受信レベルや送信レベル、送受信チャンネル(周波数帯)、変調方式、送信出力、復号方式、また例えば信号切替器の接点選択、信号多重・分離装置の信号入力・出力選択などを、基地局回転アンテナ11の制御及び監視と同様、操作表示端末31−制御端局32−被制御端局35−基地局回転アンテナ11という一連の信号伝達によって制御監視可能なように構成することができる。
また、第2移動局50から親局20への素材伝送のように、移動局と親局20との間で情報を直接送信する場合は、操作表示端末31−制御端局32−親局20という信号伝達経路を用いて、親局20に存在する親局回転アンテナ25や親局第2受信部26などの装置に対し、操作表示端末31による制御及び監視が可能なように構成することができる。
また、このマイクロ波受信基地局システムでは、受信アンテナの方向調整を行うためのより詳細な情報として、基地局受信部12や親局第2受信部26における受信周波数や変調方式などの伝送パラメータを含むTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)情報、受信レベル、マージン(Margin Degree)、BER(Bit Error Rate)、MER(Modulation Error Ratio)、遅延プロファイル、コンスタレーションなどのデータを、前記TS信号に重畳させて親局20へ伝送し、情報処理部24によって分離して編集し、操作表示端末31に表示させるようにしてもよい。
(伝搬路に近接する建物の抽出及び表示手順) 次に、本実施形態における伝搬路に近接する建物の抽出及び表示手順を説明する。この手順は、制御部31cにより実行される。この伝搬路は、操作表示端末31において操作者が設定する。
(第1実施例) 図3は、本発明の実施形態の第1実施例における、伝搬路に近接する建物の抽出及び表示手順を示す図である。第1実施例においては、送信点と受信点の高さを意識せず、水平方向の位置関係に基づき、伝搬路と建物との干渉状態を把握、つまり、建物が電波伝搬障害となるか否かを把握する。図3に示すように、第1実施例は、手順として、ステップS1〜S8を含む。
まず、図3のステップS1において、制御部31cは、例えば、操作部31aで受け付けた操作者からの指示に基づき、指示された地域内の地形データを読み込み、地図データ312として記憶部31dに記憶させる。この地図データ312には、指示された地域内の各地点の水平方向の位置を示す位置データ(例えば緯度及び経度)が含まれる。
なお、操作部31aで受け付けた操作者からの指示に基づき地形データを読み込み地図データ312を作成するのではなく、各地点の位置データ(例えば緯度及び経度)が含まれる地図データ312を記憶している記憶部を制御部31cに接続するように構成してもよい。
次に、ステップS2において、制御部31cは、例えば、操作部31aで受け付けた操作者からの指示に基づき、受信点を設定する。そして、地図データ312を参照して、受信点の位置データ(例えば緯度及び経度)を取得し、記憶部31dに記憶させる。このように、ステップS2は、受信点を設定し、該設定された受信点の位置を示す受信点位置データを取得する受信点設定ステップである。
例えば、基地局10の位置データ(例えば緯度及び経度)が既知であるときは、受信点として基地局10を操作部31aから指定されると、該指定された基地局10の位置データ(例えば緯度及び経度)を、受信点の位置データとして、記憶部31dに記憶させる。
あるいは、表示部31bに表示されたタッチパネル上の電子地図において、画面タッチにより操作者から受信点が設定されると、地図データ312と前記設定された受信点のタッチパネル上の位置座標とに基づき、位置座標と位置データ(例えば緯度及び経度)との対応表を用いて、位置座標を位置データ(例えば緯度及び経度)に変換して、設定された受信点の位置データ(例えば緯度及び経度)として、記憶部31dに記憶させる。この対応表、つまり、電子地図上の位置座標と、地図データ312の位置データ(例えば緯度及び経度)との対応表は、予め計算し求めて記憶部31dに記憶しておく。
なお、操作部31aで受け付けた操作者からの指示に基づき受信点を設定するのではなく、受信点が固定されているような場合(例えば、受信点が基地局10や親局20であるような場合)は、受信点の位置データ(例えば緯度及び経度)を、予め記憶部31dに記憶させるように構成してもよい。
次に、ステップS3において、制御部31cは、例えば、操作部31aで受け付けた操作者からの指示に基づき、指示された地域内の建物のデータを読み込み、建物データ311として記憶部31dに記憶させる。この建物データ311には、上述したように、建物識別子と、各建物の位置データ(例えば緯度及び経度)と高さ(建物高さ)が含まれる。このように、ステップS3は、所定の領域内に存在する建物を含む公開された建物データを、公開建物データとして取得する公開建物データ取得ステップである。
なお、操作部31aで受け付けた操作者からの指示に基づき建物のデータを読み込み建物データ311を作成するのではなく、各建物の建物識別子と位置データ(例えば緯度及び経度)と高さ(建物高さ)が含まれる建物データ311を記憶している記憶部を制御部31cに接続するように構成してもよい。
次に、ステップS4において、制御部31cは、所定の基準に基づき、建物データ311の絞込み(第1の絞込み)を行い、絞込み建物データ311aとして記憶部31dに記憶させる。本実施例では、この絞込みの基準は、所定の建物高さ(例えば60m)以上であり、所定の建物高さ以上の地上高を有する建物の、建物識別子と位置データ(例えば緯度及び経度)と建物高さとが、絞込み建物データ311aとして記憶部31dに記憶される。絞込みの基準となる建物高さは、操作部31aで受け付けた操作者からの指示に基づき設定される。
このように、ステップS4は、高さが所定値以上である建物に絞込まれた建物データであって、建物を識別する建物識別子と、建物の水平方向の位置を示す建物位置データと、建物の高さを示す建物高さデータとを含む絞込み建物データを取得する絞込み建物データ取得ステップである。
次に、ステップS5において、制御部31cは、絞込み建物データ311a中の各建物について、受信点からの水平距離(受信点建物間距離)と建物絶対水平角(例えば真北方向に対する角度)を算出し、受信点建物間データ311bとして記憶部31dに記憶させ、表示部31bに表示させる。受信点建物間距離と建物絶対水平角は、各建物の位置データ(例えば緯度及び経度)と、受信点の位置データ(例えば緯度及び経度)とに基づき算出される。
このように、ステップS5は、ステップS4で取得した絞込み建物データに含まれる建物の、受信点からの水平距離である受信点建物間距離と、絞込み建物データに含まれる建物と受信点とを結ぶ直線である受信点建物間直線の水平方向の絶対角度である建物絶対水平角とを算出して、受信点建物間データとして取得する受信点建物間データ取得ステップである。
こうして、予め、各建物について受信点建物間距離と建物絶対水平角を算出し記憶しておくことにより、後述のステップS7における計算、すなわち、伝搬路に対する各建物の水平距離(伝搬路建物間距離)と伝搬路建物間水平角を算出することを短時間で行うことができる。よって、例えば、送信点としての移動局の適切な位置を求める必要が生じたときに、建物が電波伝搬障害とならないような移動局の位置を迅速に求めることができる。
なお、ステップS5の処理後、制御部31cは、受信点建物間データ311bの建物の中から、各建物の受信点建物間距離と建物絶対水平角に基づき、さらに、絞込み(第2の絞込み)を行い、その絞込み結果のデータを、受信点建物間データ311bとして記憶部31dに記憶させるよう構成してもよい。例えば、受信点建物間距離が所定長以上の建物を、受信点建物間データ311bから除外するようにしてもよい。あるいは、建物絶対水平角が所定角度以上の建物を、受信点建物間データ311bから除外するようにしてもよい。
図4は、本発明の第1実施例に係る建物と受信点を説明する図である。この例では、受信点R、建物A、建物B、建物C、建物Dの水平方向における位置が、表示部31bに表示された電子地図において表示されている。また、受信点建物間データ311bを構成するデータである、受信点Rと各建物(建物A、建物B、建物C、建物D)との間の水平距離(受信点建物間距離)が、それぞれ、La、Lb、Lc、Ldとして示されている。なお、受信点から各建物への建物絶対水平角は、この例では表示していない。
次に、ステップS6において、制御部31cは、操作部31aで受け付けた操作者からの指示に基づき、送信点を設定する。そして、地図データ312を参照して、送信点の位置データ(例えば緯度及び経度)を取得し、記憶部31dに記憶させる。ステップS6は、受信点への電波の到来方向を示す伝搬路の水平方向の位置を示す伝搬路位置データを取得する伝搬路データ取得ステップである。
例えば、表示部31bに表示された図4の電子地図上で、操作部31aにより指示された点を送信点として設定する。そして、該送信点の電子地図における位置座標を読み取り、位置座標と位置データ(例えば緯度及び経度)との対応表を用いて、位置座標を位置データ(例えば緯度及び経度)に変換して、送信点の位置データ(例えば緯度及び経度)を取得する。この対応表は、ステップS2で説明したように、予め計算し求めておく。そして、制御部31cは、送信点と受信点を結ぶ直線を、送信点から受信点への伝搬路として取得、詳しくは、直線状の伝搬路を特定する2点の位置データ(例えば緯度及び経度)を、伝搬路位置データとして取得する。
なお、ステップS6において設定する送信点は、適切な送信点を探索、つまり、受信点に対して電波伝搬障害を生ずることなく送信可能な送信点を探索するために、仮に設定する送信点であってもよい。
また、ステップS6の処理後、受信点建物間データ311bの建物の中から、各建物の位置データ(例えば緯度及び経度)と伝搬路の位置データ(例えば、伝搬路上の2点の位置における緯度及び経度)とに基づき、さらに、絞込み(第3の絞込み)を行い、その絞込み結果データを、受信点建物間データ311bとして記憶部31dに記憶させるよう構成してもよい。
次に、ステップS7において、制御部31cは、ステップS6で取得した伝搬路について、ステップS5で算出した各建物の受信点建物間距離と建物絶対水平角に基づき、伝搬路建物間距離と伝搬路建物間水平角を算出し、該算出した伝搬路建物間距離と伝搬路建物間水平角とを、伝搬路建物間データ313として、記憶部31dに記憶させる。
このように、ステップS7は、ステップS5で取得した受信点建物間データに基づき、ステップS4で取得した絞込み建物データに含まれる建物の、伝搬路に対する水平距離である伝搬路建物間距離と、受信点建物間直線と伝搬路との水平角度である伝搬路建物間水平角とを算出して、伝搬路建物間データとして取得する伝搬路建物間データ取得ステップである。
図5は、本発明の第1実施例に係る建物と伝搬路の関係を説明する図である。図5の例では、伝搬路Pの水平方向の位置と、受信点Rの水平方向の位置とが示されるとともに、伝搬路Pに対する各建物(建物A、建物C、建物D)の水平距離(伝搬路建物間距離)が、それぞれ、Xa、Xc、Xdとして示されている。建物Bは、伝搬路Pの電波進行方向と逆方向になるので距離を示していない。また、伝搬路Pに対する各建物(建物A、建物B、建物C、建物D)の水平角、つまり、受信点建物間直線と伝搬路Pの水平角(伝搬路建物間水平角)が、それぞれ、θha、θhb、θhc、θhdとして示されている。
なお、図5に示すような、伝搬路Pに対する各建物の水平角θは、ステップS5で算出した各建物の建物絶対水平角と、伝搬路Pの絶対水平角である伝搬路絶対水平角とに基づき、算出することができる。また、伝搬路Pに対する建物の水平距離Xは、その建物の受信点からの水平距離Lと、伝搬路Pに対するその建物の水平角θとに基づき、次式により容易に算出できる。 X=Lsin(θ)・・・式(1)
次に、ステップS8において、制御部31cは、各建物の伝搬路建物間距離、又は伝搬路建物間水平角、あるいは伝搬路建物間距離及び伝搬路建物間水平角の両方に基づき、伝搬路Pに近接する所定範囲内の建物の位置を抽出し、該抽出した建物と伝搬路Pと受信点Rと送信点Tの位置を、表示部31bに表示させ、本処理を終了する。
このように、ステップS8は、ステップS7で取得した伝搬路建物間データに含まれる建物のうち、伝搬路建物間距離又は伝搬路建物間水平角が、所定値以下の建物を抽出する建物抽出ステップである。
なお、ステップS8における伝搬路Pに近接する所定範囲(伝搬路建物間距離と伝搬路建物間水平角)は、予め決めて記憶部31dに記憶しておいてもよいし、又は、操作部31aで受け付けた操作者からの指示に基づき設定されるようにしてもよい。あるいは、伝搬路Pに近接する所定範囲を設定するのではなく、表示部31bに表示された電子地図の領域内の建物を全て表示させるよう構成してもよい。
図6は、本発明の第1実施例に係る表示例を示す図である。図6の例では、伝搬路P、受信点R、送信点T、建物A、建物Dの水平方向における位置が、実際の位置関係に対応するよう、表示部31bの電子地図上に表示されている。また、建物Aの伝搬路建物間距離Xaと伝搬路建物間水平角θhaと、建物Dの伝搬路建物間距離Xdと伝搬路建物間水平角θhdとが表示されている。
建物Dは、ステップS7で取得した伝搬路建物間データに含まれる建物のうち、伝搬路建物間距離が最も小さい建物である。建物Aは、ステップS7で取得した伝搬路建物間データに含まれる建物のうち、伝搬路建物間水平角が最も小さい建物である。図6の例では、伝搬路建物間距離又は伝搬路建物間水平角が、最も小さい建物を表示している。なお、伝搬路建物間距離が最も小さい建物、又は伝搬路建物間水平角が最も小さい建物のうち、いずれか一方のみを表示するように構成してもよい。
このように、伝搬路建物間水平角θhが表示されるので、伝搬路P(つまり、受信アンテナのアンテナ角度、例えば基地局回転アンテナ11のアンテナ角度)を、水平方向においてどの程度左右に動かすと、電波受信障害が発生する可能性が高くなるかを、操作者が容易に把握することができる。
また、伝搬路建物間距離Xが表示されるので、送信点T(例えば移動局)を、水平方向においてどの程度動かすと、電波受信障害が発生する可能性が高くなるかを、操作者が容易に把握することができる。
勿論、厳密には、電波受信障害の発生には、建物Aや建物Dの高さも関係するが、ステップS4において建物データを所定値以上(例えば60m)の高さの建物に絞り込んでいるので、第1実施例の手順によっても、電波受信障害が発生する可能性を、一定程度、簡易に把握することができる。なお、受信点R(例えば基地局10や親局20の受信アンテナ)は、一般に、標高の高い場所に設定されるので、建物データを所定値以上の高さの建物に絞り込むことにより、電波受信障害が発生する可能性を把握することが、実用上問題なくできることも多い。
さらに、図6において、受信点Rから建物Aまでの水平距離La、受信点Rから建物Dまでの水平距離Ld、受信点Rから送信点Tまでの水平距離Ltのうち、いずれか1つ又は複数を表示するように構成してもよい。このように、受信点から建物までの具体的な水平距離を表示すると、受信点Rや送信点Tと建物との具体的な位置関係を把握することが容易となり、電波受信障害発生の可能性を高めることなく伝搬路Pや送信点Tをどの程度水平方向に動かすことができるかを、操作者が容易に把握することができる。
また、図6の例では、伝搬路Pに近接する所定範囲内の位置に存在する建物を表示するように構成しているので、建物Aと建物Dを表示しているが、上述したように、伝搬路建物間距離が最も短い建物のみを表示するように構成してもよい。この場合は、Xd<Xaなので、建物Dのみを表示する。あるいは、伝搬路建物間水平角が最も小さい建物のみを表示するように構成してもよい。この場合は、θha<θhdなので、建物Aのみを表示する。
また、図6の例では、伝搬路Pの右方向(時計回り方向)及び左方向(反時計回り方向)に関係なく、所定範囲内の建物を表示するようにしているが、状況に応じて、例えば、送信点T(例えば移動局)を、受信点Rから見て伝搬路Pの右方向(又は左方向)にのみ水平移動させるような場合(例えば、移動局カメラの撮影対象が伝搬路Pの右方向(又は左方向)にのみ存在するような場合)は、伝搬路Pから右方向(又は左方向)に位置する建物のみを表示するように構成してもよい。このとき、送信点Tの移動方向を矢印等で表示するように構成してもよい。
また、例えば、受信点Rから見て伝搬路Pの右方向(又は左方向)にのみ建物が存在する場合は、送信点T(例えば移動局)や伝搬路Pを水平移動させると電波伝搬障害の危険性が高い移動方向を、矢印等で表示するように構成してもよい。
また、同様に送信点Tが移動する方向を区分けして(例えば東西や南北などで区分け)、該区分けした領域ごとに最も近い建物を表示するよう構成してもよい。あるいは、最も近い建物だけでなく、近い建物から順に上位の複数個の建物を表示するよう構成してもよい。このように、ユーザの使用用途に応じて種々の態様で表示するよう構成してもよい。また、こうして選定され表示される建物を明示する手法も、色、アイコン、点灯・点滅、文字、音、当該建物を電子地図の中心へ移動させるなど、多様な表現を適用してかまわない。
また、送信点T又は伝搬路Pを変更するときは、上記のステップS6〜S8の処理を実行するだけでよいので、つまり、ステップS1〜S5の処理を再度実行する必要がないので、新たな伝搬路Pに近接する建物の抽出処理や表示処理を、迅速に行うことができる。
なお、上述のステップS7において、伝搬路Pのフレネルゾーンについても算出し、ステップS8において、図6にフレネルゾーンを表示、詳しくは、フレネルゾーン半径の水平成分を表示するよう構成するのが好ましい。
図7は、本発明の実施形態に係るフレネルゾーンを説明する図である。送信点Tから受信点Rに向けてマイクロ周波数帯の信号を無線送信するとき、このマイクロ波信号には、一次フレネルゾーン(単にフレネルゾーンともいう)が存在し、フレネルゾーン内に障害物があると伝搬損失が発生することが知られている。
フレネルゾーンは、図7に示すように、送信点Tと受信点Rとを結ぶ直線を長手中心軸とする紡錘形をしている。受信点Rから距離d1、送信点Tから距離d2の位置におけるフレネルゾーンの半径δは、送信点Tと受信点Rとの間の距離をD、送信電波の波長をλとするとき、図7に示す式(2)で与えられる。
こうして算出したフレネルゾーンの水平方向成分である半径δを、図6に表示する。こうすることにより、送信点Tから受信点Rへの無線通信において、電波伝搬障害の可能性がある建物を、より精度よく把握することができる。すなわち、フレネルゾーン内に位置する建物は電波伝搬障害の可能性が高く、フレネルゾーン外に位置する建物は電波伝搬障害の可能性が低いことを把握することができる。
上述した第1実施例では、ステップS4の建物データの絞込みにおいて、所定の建物高さ以上の建物を絞込み対象とし、その建物の標高(海抜高)を問題としていない。このようにしても、例えば地形が平坦な地域では、簡易なやり方として第1実施例は有用である。
第1実施例によれば、少なくとも以下に示す効果を奏する。 (A1)高さが所定の第1の値以上の建物について、建物識別子と建物位置データと建物高さデータとを含む絞込み建物データを取得する絞込み建物データ取得ステップと、 絞込み建物データに含まれる建物の受信点からの水平距離(受信点建物間距離)と、建物と受信点とを結ぶ直線(受信点建物間直線)の水平方向の絶対角度(建物絶対水平角)とを取得する受信点建物間データ取得ステップと、 伝搬路の水平方向の位置を示す伝搬路位置データを取得する伝搬路データ取得ステップと、 受信点建物間データに基づき、絞込み建物データに含まれる建物の伝搬路に対する水平距離(伝搬路建物間距離)と、受信点建物間直線と伝搬路との水平角度(伝搬路建物間水平角)とを取得する伝搬路建物間データ取得ステップと、 伝搬路建物間データに含まれる建物のうち、伝搬路建物間距離又は伝搬路建物間水平角が、所定の第2の値以下の建物を抽出する建物抽出ステップとを行うように構成したので、電波伝搬を妨げる障害物があるか否かを容易に確認できる。 (A2)建物抽出ステップにおいて、伝搬路建物間データに含まれる建物のうち、伝搬路建物間距離又は伝搬路建物間水平角が最も小さいものを抽出し表示するように構成したので(図6参照)、伝搬障害となる可能性が高く最も注視すべき建物を操作者が容易に把握することができる。 (A3)建物抽出ステップにおいて抽出した建物の水平方向の位置と、伝搬路の水平方向の位置と、受信点の水平方向の位置とを表示するように構成したので、伝搬障害となる可能性が高い建物の位置を操作者が容易に把握することができる。 (A4)受信点の位置と、建物データ取得ステップにおいて取得した建物の位置と、受信点建物間データ取得ステップにおいて取得した受信点建物間距離とを表示するように構成したので(図4参照)、伝搬障害となる可能性がある建物の位置を操作者が容易に把握することができる。 (A5)伝搬路の位置と、受信点の位置と、伝搬路建物間データ取得ステップにおいて取得した伝搬路建物間距離及び伝搬路建物間水平角とを表示するように構成したので(図5参照)、伝搬路をどの程度移動させると伝搬障害となる可能性があるかを操作者が具体的に把握することができる。 (A6)操作部を介した操作者からの指示に基づき、所定の領域内に存在する建物を含む公開された建物データを取得して、公開建物データとして取得する公開建物データ取得ステップを行い、その後、絞込み建物データ取得ステップにおいて、公開建物データを絞込んで絞込み建物データを取得するように構成したので、例えば、市販の建物データを用いて容易に絞込み建物データを取得することができ、また、絞込み建物データの更新が容易となる。 (A7)操作部を介した操作者からの指示に基づき、受信点を設定し、該設定された受信点の位置を示す受信点位置データを取得する受信点設定ステップを行うように構成したので、受信点を変更した場合に、伝搬障害となる可能性がある建物の位置を操作者が把握することが容易にできる。 (A8)操作部を介した操作者からの指示に基づき、伝搬路位置データを取得するように構成したので、伝搬路の設定や変更が容易にできる。 (A9)操作部を介した操作者からの指示に基づき、送信点を設定し、該設定された送信点の水平方向の位置データと、受信点の水平方向の位置データとに基づき、伝搬路位置データを取得するように構成したので、送信点を設定するだけで伝搬路の設定が容易にできる。 (A10)送信点と受信点とに基づき、伝搬路のフレネルゾ−ンを算出し、該算出したフレネルゾ−ンの大きさと位置を表示するように構成した場合は、伝搬障害となる可能性が高い建物を、より精度高く把握することができる。 (A11)送信点T又は伝搬路Pを変更するときは、上記のステップS6〜S8を実行するだけでよいので、新たな伝搬路Pに近接する建物の抽出処理や表示処理を、迅速に行うことができる。
(第2実施例) 第1実施例では、ステップS6において送信点を設定することにより伝搬路を設定するようにしたが、第2実施例では、送信点を設定することなく伝搬路を設定し、設定された伝搬路と建物との干渉状態を把握するようにする。このこと以外は、第1実施例と同様である。
詳しくは、第2実施例では、ステップS11〜S18を行うが、ステップS11〜S15、S17〜S18は、それぞれ、第1実施例のステップS1〜S5、S7〜S8と同様である。ステップS16は、上記したように送信点を設定することなく伝搬路を設定する点で、第1実施例のステップS6と異なる。以下、第1実施例と異なる点について説明する。
第2実施例では、ステップS16において、制御部31cは、操作部31aで受け付けた操作者からの指示に基づき、受信点に向かう電波の直線状の伝搬路を設定し、該伝搬路上の2点の水平方向における位置データ(例えば緯度及び経度)を取得し、伝搬路の位置データとして、記憶部31dに記憶する。
例えば、制御部31cは、基地局10の受信方向を伝搬路に設定する旨の操作者からの指示を受けると、基地局回転アンテナ11の現在の受信方向(アンテナ角度)の水平成分を、伝搬路の方向として設定し、該伝搬路上の2点の位置データ(例えば緯度及び経度)を取得し、伝搬路位置データとして記憶部31dに記憶する。
あるいは、表示部31bに表示された図4の電子地図上で、操作部31aにより指示された点を、伝搬路上の点として設定する。そして、該伝搬路上の点の電子地図(平面図)における位置座標を読み取り、上述した位置座標と位置データ(例えば緯度及び経度)との対応表を用いて、位置座標を位置データ(例えば緯度及び経度)に変換する。こうして、制御部31cは、伝搬路上の点と受信点を結ぶ直線を、伝搬路として取得する。第2実施例では、図5において送信点Tがなく、図6において送信点Tが表示されないようになる。
また、図6において、例えば、伝搬路Pを、受信点Rから見て右方向(又は左方向)にのみ移動させるような場合(例えば、基地局回転アンテナ11のような回転アンテナを右方向(又は左方向)にのみ回転させるような場合)は、伝搬路Pから右方向(又は左方向)に位置する建物のみを表示するように構成してもよい。このとき、送信点Tの移動方向を矢印等で表示するように構成してもよい。
また、図6において、現在の伝搬路Pの方向に対して、回転アンテナの右旋回(図6において時計回り)において最も近い建物を表示、又は、左旋回において最も近い建物を表示するよう構成してもよい。
また、第2実施例でも第1実施例と同様に、伝搬路を変更するときは、上記のステップS16〜S18を実行するだけでよいので、つまり、ステップS11〜S15を再度実行する必要がないので、新たな伝搬路に近接する建物の抽出処理や表示処理を、迅速に行うことができる。
なお、上述のステップS16において、伝搬路上で、又は伝搬路の延長線上で、仮の送信点を設定し、フレネルゾーンを算出し、ステップS18において表示するよう構成してもよい。
第2実施例によれば、少なくとも以下に示す効果を奏する。 (B1)受信アンテナのアンテナ角度を取得して、該取得したアンテナ角度に基づき、伝搬路位置データを取得するように構成した場合は、現状の受信アンテナの向きを容易に伝搬路として設定できる。
(第3実施例) 第1実施例や第2実施例では、送信点と受信点の高さを意識せず、水平方向の位置関係に基づき、伝搬路と建物との干渉状態を把握するようにしたが、第3実施例では、送信点と受信点と建物の各標高を考慮したうえで、伝搬路と建物との干渉状態を把握するようにする。こうすることにより、伝搬路と建物との干渉状態を、より精度よく把握することができる。
図8は、本発明の実施形態の第3実施例における、伝搬路に近接する建物の抽出及び表示手順を示す図である。図8に示すように、第3実施例は、手順としてステップS21〜S29を含む。
まず、図8のステップS21において、制御部31cは、操作部31aで受け付けた操作者からの指示に基づき、指示された地域内の地形データを読み込み、地図データ312として記憶部31dに記憶させる。この地図データ312には、指示された地域内の各地点の位置データ(例えば緯度及び経度)と標高(海抜高)とが含まれる。
次に、ステップS22において、制御部31cは、操作部31aで受け付けた操作者からの指示に基づき、受信点を設定する。そして、地図データ312を参照して、受信点の地形データ(位置データ(例えば緯度及び経度)と、標高)を取得し、記憶部31dに記憶させる。このように、ステップS22は、受信点を設定し、該設定された受信点の位置と標高を示す受信点地形データを取得する受信点設定ステップである。
例えば、受信点として基地局10を、操作部31aから指定されると、該指定された基地局10の地形データ(位置データ(例えば緯度及び経度)と、標高)が既知であるときは、基地局10の地形データ(位置データ(例えば緯度及び経度)と、標高)を、受信点の地形データ(位置データ(例えば緯度及び経度)と、標高)として、記憶部31dに記憶させる。
あるいは、第1実施例と同様に、表示部31bに表示されたタッチパネル上の電子地図において、画面タッチにより操作者から受信点が設定されると、地図データ312と前記設定された受信点のタッチパネル上の位置座標とに基づき、位置座標を位置データ(例えば緯度及び経度)に変換して、設定された受信点の地形データ(位置データ(例えば緯度及び経度)、標高)として、記憶部31dに記憶させる。
好ましくは、受信点となる受信アンテナ(例えば基地局回転アンテナ11)の地上高(地表からの高さ)を、受信点の標高(地表高)に加算し、これを受信点の地形データ(位置データ(例えば緯度及び経度)、標高+回転アンテナの地上高)として、記憶部31dに記憶させる。
次に、ステップS23において、制御部31cは、第1実施例のステップS3と同様の動作を行い、指示された地域内の建物データを読み込み、建物データ311として記憶部31dに記憶させる。上述したように、建物データ311には、建物識別子と、各建物の位置データ(例えば緯度及び経度)と、その建物の高さ(建物高さ)が含まれる。このように、ステップS23は、所定の領域内に存在する建物を含む公開された建物データを、公開建物データとして取得する公開建物データ取得ステップである。
次に、ステップS24において、制御部31cは、建物データ311に標高を反映させる。詳しくは、建物データ311中の各建物について、地図データ312を参照し、標高を追加する。したがって、建物データ311には、建物識別子と、各建物の位置データ(例えば緯度及び経度)と、その建物の高さ(建物高さ)と、標高とが含まれるようになる。あるいは、建物高さに代えて、(建物高さ+標高)としてもよい。この場合、建物データ311には、建物識別子と、各建物の位置データ(例えば緯度及び経度)と、その建物の(建物高さ+標高)とが含まれるようになる。
次に、ステップS25において、制御部31cは、建物データ311に対し、所定の基準に基づき建物データの絞込み(第1の絞込み)を行い、絞込み建物データ311aとして記憶部31dに記憶させる。本実施例では、この絞込みの基準は、所定の(建物高さ+標高)が例えば60m以上であり、所定の(建物高さ+標高)以上の建物の、建物識別子と位置データ(例えば緯度及び経度)と(建物高さ+標高)とが、絞込み建物データ311aとして記憶部31dに記憶される。絞込みの基準となる(建物高さ+標高)は、操作部31aで受け付けた操作者からの指示に基づき設定される。
このように、ステップS25は、(建物高さ+標高)が所定値以上である建物に絞込まれた建物データであって、建物を識別する建物識別子と、建物の位置を示す建物位置データと、建物の高さに標高を加えた高さを示す建物高さ標高データとを含む絞込み建物データを取得する絞込み建物データ取得ステップである。ただし、本実施例の絞込み建物データ取得ステップは、必ずしも(建物高さ+標高)による絞込みを行う必要はなく、第1実施例や第2実施例と同様に、このステップでは単に建物高さによる絞込みを行い、後段のステップで(建物高さ+標高)を用いた演算が行われる形態としても構わない。
次に、ステップS26において、制御部31cは、絞込み建物データ311a中の各建物について、受信点建物間距離と建物絶対水平角と鉛直角とを算出し、受信点建物間データ311bとして記憶部31dに記憶させ、表示部31bに表示させる。鉛直角とは、鉛直方向の角度であり、建物が受信点より高い場合は仰角、建物が受信点より低い場合は俯角となる。受信点建物間距離と建物絶対水平角は、各建物の位置データ(例えば緯度及び経度)と、受信点の位置データ(例えば緯度及び経度)とに基づき算出される。鉛直角は、受信点の標高データと各建物の建物高さ標高データとに基づき算出される。
このように、ステップS26は、ステップS25で取得した絞込み建物データに含まれる建物の、受信点からの水平距離である受信点建物間距離と、絞込み建物データに含まれる建物と受信点とを結ぶ直線である受信点建物間直線の水平方向の絶対角度である建物絶対水平角と、受信点建物間直線の鉛直方向との角度である建物鉛直角とを算出して、受信点建物間データとして取得する受信点建物間データ取得ステップである。
このように、予め、各建物について受信点建物間距離と建物絶対水平角とを算出し記憶しておくことにより、後述のステップS28における計算、すなわち、各建物の伝搬路建物間距離と伝搬路建物間水平角とを算出することを短時間で行うことができる。また、各建物について建物鉛直角を算出し記憶しておくことにより、後述のステップS29において、受信点から見た伝搬路の鉛直角(伝搬路鉛直角)と比較することが容易になる。
なお、例えば送信点が航空機である場合など、送信点が受信点より常に高い場合は、受信点より低い建物については、ステップS25において絞込んだ、絞込み建物データ311aから除外するようにしても構わない。
次に、ステップS27において、制御部31cは、操作部31aで受け付けた操作者からの指示に基づき、送信点を設定する。そして、地図データ312を参照して、該送信点の地形データ(位置データ(例えば緯度及び経度)、標高)を取得し、記憶部31dに記憶する。ステップS27は、受信点への電波の到来方向を示す伝搬路の水平方向の位置を示す伝搬路位置データと、伝搬路の鉛直方向との角度である伝搬路鉛直角とを取得する伝搬路データ取得ステップである。
例えば、表示部31bに表示された電子地図上で、操作者により操作部31aから指示された点を、送信点として設定する。そして、該送信点の電子地図における位置座標を読み取り、上述した位置座標と位置データ(例えば緯度及び経度)との対応表を用いて、位置データに変換して、送信点の位置データ(例えば緯度及び経度)を取得する。さらに、該取得した位置データ(例えば緯度及び経度)と、ステップS21で記憶した地図データ312とに基づき、送信点の地形データ(位置データ(例えば緯度及び経度)、標高)を取得する。なお、送信点の標高は、地形の高さに送信点の送信アンテナの高さを加えたものとするのが好ましい。
こうして、制御部31cは、送信点と受信点を結ぶ直線を、送信点から受信点への伝搬路として取得する。さらに、制御部31cは、送信点の地形データ(位置データ(例えば緯度及び経度)、標高)と、受信点の地形データ(位置データ(例えば緯度及び経度)、標高)とに基づき、受信点から見た伝搬路の鉛直角(伝搬路鉛直角)を取得し、記憶部31dに記憶させる。
なお、ステップS27において設定する送信点は、適切な送信点を探索、つまり、受信点に対して電波伝搬障害を生ずることなく送信可能な送信点を探索するために、仮に設定する送信点であってもよい。
次に、ステップS28において、制御部31cは、ステップS26で算出した、各建物の受信点建物間距離と建物絶対水平角とに基づき、各建物の伝搬路建物間距離と伝搬路建物間水平角とを算出し、該算出した伝搬路建物間距離と伝搬路建物間水平角とを、伝搬路建物間データ313として、記憶部31dに記憶させる。
このように、ステップS28は、ステップS26で取得した受信点建物間データに基づき、ステップS25で取得した絞込み建物データに含まれる建物の、伝搬路に対する水平距離である伝搬路建物間距離と、受信点建物間直線と伝搬路との水平角度である伝搬路建物間水平角とを算出して、伝搬路建物間データとして取得する伝搬路建物間データ取得ステップである。
図9は、本発明の第3実施例に係る建物と伝搬路の関係を説明する図である。図9の例では、各建物の受信点建物間距離が、それぞれ、La、Lb、Lcとして示されている。また、受信点から見たときの各建物(建物A、建物B、建物C)の鉛直角(建物鉛直角)である仰角が、それぞれ、θva、θvb、θvcとして示されている。また、各建物(建物A、建物B、建物C)の伝搬路建物間水平角が、それぞれ、θha、θhb、θhcとして示されている。また、受信点Rから見たときの伝搬路Pの鉛直角(仰角)である伝搬路鉛直角θvtと、伝搬路Pの距離(送受信点間の距離)Ltとが示されている。
第1実施例で説明したように、各建物の伝搬路建物間水平角(θha、θhb、θhc)は、各建物の受信点Rからの絶対水平角(建物絶対水平角)と、伝搬路Pの絶対水平角(伝搬路絶対水平角)とに基づき、算出することができる。
また、第1実施例で説明したように、伝搬路建物間距離Xは、受信点建物間距離Lと、伝搬路建物間水平角(θha、θhb、θhc)とに基づき、前述の式(1)により算出できる。例えば、建物Aの伝搬路建物間距離Xaは、建物Aの受信点建物間距離Laと、伝搬路建物間水平角θhaとに基づき、前述の式(1)により算出できる。こうして、各建物(建物A、建物B、建物C)の伝搬路建物間距離が、それぞれ、Xa、Xb、Xcとして算出される。
次に、ステップS29において、制御部31cは、各建物の伝搬路建物間距離、又は伝搬路建物間水平角、あるいは伝搬路建物間距離及び伝搬路建物間水平角の両方に基づき、伝搬路Pに近接する所定範囲内の建物の位置を抽出し、該抽出した建物と伝搬路Pと受信点Rと送信点Tの水平方向の位置を、表示部31bに表示させ、本処理を終了する。
このように、ステップS29は、ステップS28で取得した伝搬路建物間データに含まれる建物のうち、伝搬路建物間距離又は伝搬路建物間水平角が、所定値以下の建物を抽出する建物抽出ステップである。
なお、ステップS29における伝搬路Pに近接する所定範囲(伝搬路建物間距離と伝搬路建物間水平角)は、予め決めておいてもよいし、又は、操作部31aで受け付けた操作者からの指示に基づき設定されるようにしてもよい。あるいは、伝搬路Pに近接する所定範囲を設定するのではなく、表示部31bに表示された電子地図の領域内の建物を全て表示させるよう構成してもよい。
例えば前述の図9において、伝搬路Pと受信点Rと送信点Tの水平方向の位置が表示されている。さらに、伝搬路建物間距離が上記所定範囲内である建物Aについて、建物Aの位置表示(図中の○印)、建物Aの伝搬路建物間距離Xa、建物Aの伝搬路建物間水平角である仰角θvaとともに表示される。なお、このとき、建物Aの伝搬路建物間水平角θhaや受信点建物間距離Laを、併せて表示するように構成してもよい。建物B等についても同様である。
また、伝搬路Pの仰角(つまり、受信アンテナの仰角、例えば、基地局回転アンテナ11や親局回転アンテナ25の仰角)を保ちつつ、受信アンテナを水平に旋回させようとする場合に、受信点Rから見たときの建物の仰角が、伝搬路Pの仰角よりも小さければ、その建物は、電波伝搬の障害とならないと、制御部31cは判断し、表示部31bに表示された電子地図に表示させないようにしてもよい。例えば、図9の例において、建物Bの仰角θvbが、伝搬路Pの仰角θvtよりも小さい場合、建物Bは、電波伝搬の障害とならないと判断される。
あるいは、伝搬路Pの仰角を保ちつつ、受信アンテナを水平に旋回させようとする場合に、標高を加えた建物の高さ(建物高さ+標高)が、伝搬路Pの方向線(受信点Rと送信点Tを結ぶ直線)の高さよりも低ければ、その建物は、電波伝搬の障害とならないと、制御部31cは判断し、表示部31bに表示された電子地図に表示させないようにしてもよい。また、例えば前述の図9において、各建物の(建物高さ+標高)、受信点Rと送信点Tの各標高を表示させるようにしてもよい。
また、建物と受信点Rとの間の距離が、伝搬路Pの距離(つまり、送信点Tと受信点Rとの間の距離)よりも長ければ、その建物は、そもそも伝搬路Pに影響しない。よって、その建物は電波伝搬の障害とならないと、制御部31cは判断し、表示部31bに表示された電子地図に表示させないようにしてもよい。例えば、図9の例において、建物Cと受信点Rとの間の距離Lcは、送信点Tと受信点Rとの間の距離Ltよりも長いので、建物Cは、電波伝搬の障害とならないと判断される。
また、第1実施例で説明したように、上述のステップS28において、伝搬路Pのフレネルゾーンについても算出し、ステップS29において、図9にフレネルゾーンを表示、詳しくは、フレネルゾーン半径の水平成分を表示するよう構成してもよい。
また、第2実施例のように、ステップS27において送信点を設定するのではなく伝搬路を設定し、設定された伝搬路と建物との干渉状態を把握するように構成してもよい。
第3実施例によれば、少なくとも以下に示す効果を奏する。 (C1)送信点と受信点と建物の各標高を考慮したうえで、伝搬路と建物との干渉状態を把握するようにしたので、伝搬路と建物との干渉状態を、より精度よく把握することができる。具体的には、 建物の高さに標高を加えた高さが所定の第1の値以上の建物について、建物識別子と建物位置データと建物高さ標高データとを含む絞込み建物データを取得する絞込み建物データ取得ステップと、 絞込み建物データに含まれる建物の受信点からの水平距離(受信点建物間距離)と、建物と受信点とを結ぶ直線(受信点建物間直線)の水平方向の絶対角度(建物絶対水平角)と、受信点建物間直線の鉛直方向との角度(建物鉛直角)とを取得する受信点建物間データ取得ステップと、 伝搬路の水平方向の位置を示す伝搬路位置データと、伝搬路の鉛直方向との角度(伝搬路鉛直角)とを取得する伝搬路データ取得ステップと、 受信点建物間データに基づき、絞込み建物データに含まれる建物の伝搬路に対する水平距離(伝搬路建物間距離)と、受信点建物間直線と伝搬路との水平角度(伝搬路建物間水平角)とを取得する伝搬路建物間データ取得ステップと、 伝搬路建物間データに含まれる建物のうち、伝搬路建物間距離又は伝搬路建物間水平角が、所定の第2の値以下の建物を抽出する建物抽出ステップとを行うように構成したので、電波伝搬を妨げる障害物があるかないかを、第1実施例より高い精度で確認できる。
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
本発明は、車載型の移動局に限らず、ヘリコプター等の航空機搭載型の移動局であってもよい。このように、本発明は、地上からの電波伝搬の場合にとどまらず、移動する航空機からの電波伝搬の場合にも応用可能である。この場合、移動局が毎秒移動するので、例えば第1実施例のステップS6〜S8で示した、送信点の設定、伝搬路の取得、各建物の伝搬路建物間距離や伝搬路建物間水平角の算出等は、移動局の位置の変化に伴い再処理する必要がある。しかし、所定距離以上の移動が認められた場合に再処理することにし、そのために、伝搬障害判定へ至るまでのある程度の伝搬路建物間距離のマージンや伝搬路建物間水平角のマージンを設定しておく等の配慮をすれば、十分使用可能である。
また、本発明は、本発明に係る処理を実行する装置やシステムとしてだけでなく、このような装置やシステムを実現するための方法、さらには、このような方法を実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして把握することができる。 また、本発明は、CPUがメモリに格納された制御プログラムを実行することにより制御する構成としてもよく、また、ハードウエア回路として構成してもよい。
本明細書には、本発明に関する少なくとも次の構成が含まれる。 第1の構成は、第1実施例及び第3実施例に含まれる構成であり、 制御部を備える伝搬路障害確認装置であって、 前記制御部は、 高さが所定の第1の値以上である建物に絞込まれた建物データであって、前記建物を識別する建物識別子と、前記建物の位置を示す建物位置データと、前記建物の高さを示す建物高さデータとを含む絞込み建物データを取得する絞込み建物データ取得ステップと、 前記絞込み建物データに含まれる建物の、受信点からの水平距離である受信点建物間距離と、前記絞込み建物データに含まれる建物と前記受信点とを結ぶ直線である受信点建物間直線の水平方向の絶対角度である建物絶対水平角とを、受信点建物間データとして取得する受信点建物間データ取得ステップと、 前記受信点への電波の到来方向を示す伝搬路の水平方向の位置を示す伝搬路位置データを取得する伝搬路データ取得ステップと、 前記受信点建物間データに基づき、前記絞込み建物データに含まれる建物の前記伝搬路に対する水平距離である伝搬路建物間距離と、前記受信点建物間直線と前記伝搬路との水平角度である伝搬路建物間水平角とを、伝搬路建物間データとして取得する伝搬路建物間データ取得ステップと、 前記伝搬路建物間データに含まれる建物のうち、前記伝搬路建物間距離又は前記伝搬路建物間水平角が、所定の第2の値以下の建物を抽出する建物抽出ステップと、 を行うことを特徴とする伝搬路障害確認装置。
第2の構成は、図6で示される構成であり、 第1の構成に記載された伝搬路障害確認装置であって、表示部を備え、 前記制御部は、 前記建物抽出ステップにおいて、前記伝搬路建物間データに含まれる建物のうち、前記伝搬路建物間距離又は前記伝搬路建物間水平角が、最も小さいものを抽出し、前記表示部に表示させることを特徴とする伝搬路障害確認装置。
第3の構成は、図6で示される構成であり、 第1の構成又は第2の構成に記載された伝搬路障害確認装置であって、表示部を備え、 前記制御部は、 前記建物抽出ステップにおいて抽出した建物の水平方向の位置と、前記伝搬路の水平方向の位置と、前記受信点の水平方向の位置とを、前記表示部に表示させることを特徴とする伝搬路障害確認装置。
第4の構成は、図4で示される構成であり、 第1の構成乃至第3の構成に記載された伝搬路障害確認装置であって、表示部を備え、 前記制御部は、 前記受信点の水平方向の位置と、前記建物データ取得ステップにおいて取得した前記建物の水平方向の位置と、前記受信点建物間データ取得ステップにおいて取得した前記受信点建物間距離とを、前記表示部に表示させることを特徴とする伝搬路障害確認装置。
第5の構成は、図5で示される構成であり、 第1の構成乃至第4の構成に記載された伝搬路障害確認装置であって、表示部を備え、 前記制御部は、 前記伝搬路の水平方向の位置と、前記受信点の水平方向の位置と、前記伝搬路建物間データ取得ステップにおいて取得した前記伝搬路建物間距離と、前記伝搬路建物間水平角とを、前記表示部に表示させることを特徴とする伝搬路障害確認装置。
第6の構成は、 第1の構成乃至第5の構成に記載された伝搬路障害確認装置であって、操作者からの指示を受け付ける操作部を備え、 前記制御部は、 前記操作部を介した操作者からの指示に基づき、所定の領域内に存在する建物を含む公開された建物データを、公開建物データとして取得する公開建物データ取得ステップを行い、その後、前記絞込み建物データ取得ステップにおいて、前記公開建物データを絞込んで前記絞込み建物データを取得することを特徴とする伝搬路障害確認装置。
第7の構成は、 第1の構成乃至第6の構成に記載された伝搬路障害確認装置であって、操作者からの指示を受け付ける操作部を備え、 前記制御部は、 前記操作部を介した操作者からの指示に基づき、前記受信点を設定し、該設定された受信点の位置を示す受信点位置データを取得する受信点設定ステップを行うことを特徴とする伝搬路障害確認装置。
第8の構成は、 第1の構成乃至第7の構成に記載された伝搬路障害確認装置であって、操作者からの指示を受け付ける操作部を備え、 前記制御部は、 前記操作部を介した操作者からの指示に基づき、前記伝搬路位置データを取得することを特徴とする伝搬路障害確認装置。
第9の構成は、第2実施例で示される構成であり、 第8の構成に記載された伝搬路障害確認装置であって、 前記制御部は、 前記伝搬路障害確認装置の受信アンテナのアンテナ角度を取得して、該取得したアンテナ角度に基づき、前記伝搬路位置データを取得することを特徴とする伝搬路障害確認装置。
第10の構成は、 第8の構成に記載された伝搬路障害確認装置であって、 前記制御部は、 前記操作部を介した操作者からの指示に基づき、送信点を設定し、該設定された送信点の水平方向の位置データと、前記受信点の水平方向の位置データとに基づき、前記伝搬路位置データを取得することを特徴とする伝搬路障害確認装置。
第11の構成は、 第10の構成に記載された伝搬路障害確認装置であって、表示部を備え、 前記制御部は、 前記送信点と前記受信点とに基づき、前記伝搬路のフレネルゾ−ンを算出し、該算出したフレネルゾ−ンの大きさと位置を、前記表示部に表示することを特徴とする伝搬路障害確認装置。
第12の構成は、第3実施例に含まれる構成であり、 制御部を備える伝搬路障害確認装置であって、 前記制御部は、 高さが所定の第1の値以上である建物に絞込まれた建物データであって、前記建物を識別する建物識別子と、前記建物の位置を示す建物位置データと、前記建物の高さに標高を加えた高さを示す建物高さ標高データとを含む絞込み建物データを取得する絞込み建物データ取得ステップと、 前記絞込み建物データに含まれる建物の、受信点からの水平距離である受信点建物間距離と、前記絞込み建物データに含まれる建物と前記受信点とを結ぶ直線である受信点建物間直線の水平方向の絶対角度である建物絶対水平角と、前記受信点建物間直線の鉛直方向との角度である建物鉛直角とを、受信点建物間データとして取得する受信点建物間データ取得ステップと、 前記受信点への電波の到来方向を示す伝搬路の水平方向の位置を示す伝搬路位置データと、前記伝搬路の鉛直方向との角度である伝搬路鉛直角とを取得する伝搬路データ取得ステップと、 前記受信点建物間データに基づき、前記絞込み建物データに含まれる建物の前記伝搬路に対する水平距離である伝搬路建物間距離と、前記受信点建物間直線と前記伝搬路との水平角度である伝搬路建物間水平角とを、伝搬路建物間データとして取得する伝搬路建物間データ取得ステップと、 前記伝搬路建物間データに含まれる建物のうち、前記伝搬路建物間距離又は前記伝搬路建物間水平角が、所定の第2の値以下の建物を抽出する建物抽出ステップと、 を行うことを特徴とする伝搬路障害確認装置。
第13の構成は、 第12の構成に記載された伝搬路障害確認装置であって、表示部を備え、 前記制御部は、 前記伝搬路の水平方向の位置と、前記受信点の水平方向の位置と、前記受信点建物間データ取得ステップにおいて取得した前記建物鉛直角と、前記伝搬路建物間データ取得ステップにおいて取得した前記伝搬路建物間距離及び前記伝搬路建物間水平角と、前記伝搬路データ取得ステップにおいて取得した前記伝搬路鉛直角とを、前記表示部に表示させることを特徴とする伝搬路障害確認装置。