以下に、本発明の実施の形態にかかる空気調和システムを図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる空気調和システム10の概略構成を示す模式図である。図2は、本発明の実施の形態1にかかる空気調和システム10の構成を示す図である。本実施の形態1にかかる空気調和システム10は、室内空間S内の空気を冷房、暖房また除湿するなどして、所望の設定条件に空気調和するシステムである。
空気調和システム10は、室内機2および室外機3を有する空気調和機1と、リモコン5と、送風機6と、温度計測器8と、を備える。空気調和機1と、リモコン5と、送風機6と、温度計測器8とは、互いに情報の双方向通信が可能である。
空気調和機1は、基本的に一般的な空気調和機の機能を有し、室内に配置された室内機2と、屋外に配置された室外機3とを備える。室内機2と室外機3とは、互いに情報の双方向通信が可能な状態で接続されている。また、室内機2と室外機3とは、冷媒を循環させる冷媒回路により接続されている。空気調和機1は、図示しない外部電源により、動作するための電力が供給される。
室内機2は、基本的に一般的な空気調和機の室内機の機能を有し、室内機2が配置された室内の空間である室内空間Sに存在する空気と冷媒回路中を流れる冷媒との熱交換を行う室内熱交換器21と、室内熱交換器21で熱交換された調和空気を室内機2から室内空間Sに送り出す送風ファン22と、調和空気を室内機2から室内空間Sに送り出す方向を調整する風向調整器23と、を備えている。また、室内機2は、室内空間Sにおける床温、壁温、天井温の温度の計測を行う室内温度センサ24と、室内機2との送風機6の相対位置を検出する送風機位置センサ25と、室内機2との温度計測器8の相対位置を検出する温度計測器位置センサ26と、室内機2の運転状態の表示を行う表示器27と、ユーザに対して各種通報を行う音声発生器28と、室内空間Sから室内機2に吸い込まれる調和前の空気温度を測定するサーミスタ29と、を備えている。
本実施の形態1において、室内機2は壁掛け型とされている。ただし、室内機2の形態については特に制約はなく、室内機2の形態は壁掛け型に限定されず、天井吊下げ型であってもよく、さらには天井埋め込み型であってもよい。
本実施の形態1においては、送風機位置センサ25には、後述する送風機6に内蔵された赤外線発生器63が発生する赤外線を受光して、室内機2と送風機6との間の距離の測定を行う赤外線センサが用いられる。また、送風機位置センサ25は、送風機6の位置を画像認識によって検出する方式のセンサであってもよい。なお、送風機6の位置検出の手段については、特に制約はない。
温度計測器位置センサ26の位置検出手段については、送風機位置センサ25と同様に赤外線センサが用いられる。また、温度計測器位置センサ26は、温度計測器8の位置を画像認識によって検出する方式のセンサであってもよい。なお、温度計測器8の位置検出の手段については、特に制約はない。
また、本実施の形態1においては、調和前の室内空気の温度を精度良く測定するために、室内温度センサ24とサーミスタ29とが室内機2の内部に個別に設けられた構成とされているが、室内温度センサ24がサーミスタ29の機能を兼ねてもよい。
空気調和機制御部4は、空気調和システム全体および送風機6の動作を制御する制御処理を実行する制御部であるCPU41と、CPU41が動作する際に使用するソフトウェアおよび空気調和システムの制御において使用および生成される各種情報が記録されるメモリ42と、室内機2、室外機3、リモコン5、送風機6、温度計測器8との情報送受信を実施するための送受信部43とを備えている。なお、本実施の形態1においては、空気調和機制御部4は室内機2の一部として内蔵する形となっているが、独立した筺体内に配置された構成であってもよい。また、空気調和機制御部4は、室外機3に内蔵された構成であってもよい。
本実施の形態1においては、室内機2と送風機6と温度計測器8とリモコン5とは、電波による無線通信で情報交換する構成とされているが、通信の構成はこれに限定されない。室内機2と送風機6と温度計測器8とリモコン5とは、例えば赤外線通信による無線通信で情報交換する構成とされてもよく、また、有線通信で情報交換する構成とされてもよい。また、本実施の形態1においては、室内機2と送風機6と温度計測器8とリモコン5とは、同じ室内空間Sに配置されているが、電波による無線通信または有線通信により情報交換する構成とされている場合は、上記の構成部は、異なる室内空間に配置されていてもよい。
また、本実施の形態1においては、空気調和システム10の中に室内機2が1台配置される構成とされているが、2台以上の複数台の室内機2が配置された構成であってもよい。空気調和システム10における室内機2の台数については、特に制約を設けない。
室外機3は、基本的に一般的な空気調和機の室外機の機能を有し、室外の空気と冷媒回路中を流れる冷媒との熱交換を行うための室外熱交換器31と、室外に風を送り出すファン32と、冷媒回路において冷媒圧縮を行うコンプレッサ33と、圧力および各種温度を測定するための各種のセンサ34とを備えている。なお、本実施の形態1において室外機3は、一般的な空気調和機における室外機ユニットとしての機能を備えていればよく、詳細な構成には特に制約はない。
また、本実施の形態1にかかる空気調和機1は、室内機2と室外機3とが互いに分離されたセパレート型の空気調和機であるが、室内機2と室外機3とが同一の筺体に納められた一体型の空気調和機ユニットとなって用いられてもよい。したがって、本実施の形態1においては、室内を冷房、暖房また除湿するといった空気調和機としての一般的な機能を実現する構成には、特に制約はない。
リモコン5は、室内機2および送風機6に対して指示情報である操作コマンドを送信および空気調和システムの各構成要素からの情報の受信を行う情報送受信部としての機能と、空気調和システムの各構成要素に関する各種情報を表示する情報表示部としての機能を有する。リモコン5は、図示しない内蔵された内蔵電源により、動作するための電力が供給される。
リモコン5は、リモコン5の操作、および必要に応じて空気調和システムの各構成要素の情報収集にかかわる処理全般を実行する制御部であるCPU51と、CPU51が動作する際に使用するソフトウェアおよび空気調和システムの制御において使用および生成される各種情報が記録されるメモリ52と、操作コマンドの送信および各構成要素からの情報の受信に使用される送受信部53と、を備える。また、リモコン5は、操作情報、空気調和システムの運転情報および空気調和システムの各構成要素から受信した情報といった各種情報の表示を行う表示部54と、各種通報を行うための音声発生器55と、ユーザから操作を受け付けるための操作部56と、を有している。
送風機6は、室内の空気を吸い込み、羽の向きを自由に変化させて任意の方向に風を送り出すことができる機構を有している。送風機6は、室内機2の内部の空気調和機制御部4、またはリモコン5から送信される指令情報に基づいて、送り出す風の風向の制御を行う。送風機6は、図示しない外部電源により、動作するための電力が供給される。
送風機6は、室内の空気を吸い込んで風として送り出すための送風ファン61と、送風ファン61が風を送り出す方向を調節するための風向調整モータ62と、送風機位置センサ25が送風機6の位置を検出する際に利用する赤外線を発生する赤外線発生器63と、を備えている。送風機6は、室内の任意の位置に設置が可能である。
送風機6の中には、送風機6を制御するための送風機制御部7が内蔵されている。送風機制御部7は、送風機6の制御全般を実行する制御部であるCPU71と、CPU71が動作する際に使用するソフトウェアおよび送風機6の制御において使用、生成、送受信される各種情報が記録されるメモリ72と、空気調和機制御部4およびリモコン5との情報の送受信を行うための送受信部73と、を備える。また、送風機制御部7は、送風機6の運転状態および情報の送受信の内容といった各種情報の表示を行う表示器74と、各種通報を行うための音声発生器75と、送風機6を操作するための指示情報をユーザから受け付ける操作部76と、を備える。なお、送風機6の詳細な構成は、必要に応じて任意の機能要素が追加されていてもよい。
本実施の形態1においては、空気調和システム10の中に送風機6が一つだけ配置された構成とされているが、空気調和システム10は複数台の送風機6が配置された構成であってもよい。空気調和システム10における送風機6の台数については、特に制約を設けない。
温度計測器8は、情報送受信処理および計測した温度を送受信可能な形式に変換する処理を含む温度計測器8の制御全般を実行する制御部であるCPU81と、CPU81が動作する際に使用するソフトウェアおよび温度計測器8の制御において使用、生成、送受信される各種情報が記録されるメモリ82と、空気調和機制御部4との情報送受信を行うための送受信部83と、計測した温度情報および情報送受信の内容といった各種情報の表示を行う表示器84と、室内における床温、壁温、天井温といった温度計測器8が配置された箇所の周辺の温度の計測を行う室内温度センサ85と、温度計測器位置センサ26が温度計測器8の位置を検出する際に利用する赤外線を発生する赤外線発生器86と、を備える。温度計測器8は、図示しない外部電源または内蔵された内蔵電源により、動作するための電力が供給される。
また、本実施の形態1においては、室内温度センサ85とサーミスタ86とが温度計測器8の内部に個別に設けられた構成とされているが、室内温度センサ85がサーミスタ86の機能を兼ねてもよい。
本実施の形態1においては、空気調和システム10の中に温度計測器8が一つだけ配置された構成とされているが、空気調和システム10は複数台の温度計測器8が配置された構成であってもよい。空気調和システム10における温度計測器8の台数については特に制約を設けない。
つぎに、図1から図3を参照して、本発明の実施の形態1にかかる空気調和システム10の動作について説明する。図3は、本発明の実施の形態1における空気調和システム10の制御処理の流れを説明するフローチャートである。なお、本実施の形態1にかかる空気調和機1において行われる空調は、一般的な空気調和機と同じ冷凍サイクルシステムによる冷暖房運転であり、具体的な動作説明は省略する。また、室内機2、送風機6、温度計測器8およびリモコン5の間における無線電波信号の送受信は、既定の通信方式を介して双方向通信可能となっているものとする。
図3を参照して、本実施の形態1における空気調和システム10の制御の流れを説明する。なお、図3に示す制御の流れは、一般的な空気調和機の空気調和動作に加えて、予め設定された既定の一定周期で繰り返し実行される処理である。
まず、ステップS110において、室内機2の空気調和機制御部4のCPU41が、室内空間Sに配置された送風機6の位置を検出する位置検出処理を実施する。CPU41は、送風機位置センサ25で得られた検出結果である送風機6の位置情報に基づいて室内機2と送風機6との相対的な位置関係を解析して、室内機2と送風機6との相対的な位置関係を示す相対位置関係情報を生成する。CPU41は、生成した位置関係データを、空気調和機制御部4のメモリ42に記憶させる。
送風機位置センサ25による送風機6の位置検出に成功した際、送風機6の電源がオフである場合は、室内機2のCPU41は、送風機6の電源をオンにして起動するように、送風機6の起動を指示する起動指令信号を、送受信部43を介して送風機6に送信する。送風機6のCPU71は、送受信部73を介して起動指令信号を受信すると、起動指令信号に従って送風機6の電源をオンにして送風機6を起動させる。
この場合の送風機6の電源がオフである状態は、送風機6の外部から信号を受信して動作を開始できる待機状態である。待機モードでは、実際の送風動作を行う送風ファン61と風向調整モータ62との動作は停止している。一方、待機モードでは、赤外線発生器63は赤外線を発生しており、少なくとも送受信部73およびCPU71は室内機2から送信される信号を受信して該信号に基づいて動作可能な状態になっている。すなわち、送風機6は、ステップS110における室内機2からの位置検出および電源起動を可能とするため、電源オフ時においても、少なくとも赤外線発生器63、CPU71および送受信部73については常時通電状態とされている。
なお、送風機6は、送風機6の起動を指示する起動指令信号または送風機6の停止を指示する停止指令信号を、室内機2のCPU41またはリモコン5のCPU51から受信することにより、起動または停止の切換が可能である。
つぎに、ステップS120において、室内機2の空気調和機制御部4のCPU41が、室内空間Sに配置された温度計測器8の位置検出処理を実施する。CPU41は、温度計測器位置センサ26で得られた検出結果である温度計測器8の位置情報に基づいて室内機2と温度計測器8との相対的な位置関係を解析して、室内機2と温度計測器8との相対的な位置関係を示す相対位置関係情報を生成する。CPU41は、生成した位置関係データを、空気調和機制御部4のメモリ42に記憶させる。
つぎに、ステップS130において、室内機2の空気調和機制御部4のCPU41が、温度計測器8が計測して保持している、温度計測器8の周辺の温度データの取得を実施する。CPU41は、温度計測器8の周辺の温度データを要求する温度データ要求指令を、送受信部43を介して温度計測器8に対して送信する。
温度計測器8のCPU81は、送受信部83を介して温度データ要求指令を受信すると該温度データ要求指令に応答して、保持している温度計測器8の周辺の温度データを、送受信部83を介して空気調和機制御部4に送信する。
つぎに、ステップS140において、室内機2の空気調和機制御部4のCPU41が、温度計測器8から送信された温度計測器8の周辺の温度データと、空気調和機制御部4のメモリ42に保持されており空気調和機1における現在の空調の目標温度を示す空調の設定温度との温度差分を演算する。CPU41は、演算によって得られた温度差分の情報を空気調和機制御部4のメモリ42に記憶させる。
つぎに、ステップS150において、室内機2の空気調和機制御部4のCPU41が、ステップS140で得られた温度差分と、空気調和機制御部4のメモリ42にあらかじめ保持している既定の動作開始閾値とを比較し、温度差分が動作開始閾値よりも大であるか否かを判定する。動作開始閾値は、温度差分の大きい領域への送風機6による送風を開始するか否かを判定するための既定の基準値である。本実施の形態1における動作開始閾値は、温度計測器8およびその周辺への送風機6による送風を開始するか否かを判定するための既定の基準値である。なお、動作開始閾値は、空気調和システム10が使用される環境条件といった諸条件に合わせて、任意の値に調整が可能である。
温度差分が動作開始閾値よりも大きい場合は、すなわちステップS150においてYesの場合は、CPU41はステップS160に処理を進める。一方、温度差分が動作開始閾値以下である場合は、すなわちステップS150においてNoの場合は、CPU41はステップS180に処理を進める。
温度差分が動作開始閾値よりも大きい場合は、すなわちステップS150においてYesの場合は、温度計測器8の周辺について効果的な空気調和が実施されていない場合に対応している。したがって、ステップS160において、室内機2の空気調和機制御部4のCPU41は、送風機6での送風における風向および風速の指令値を決定する処理を実施する。
CPU41は、ステップS110でメモリ42に記憶した室内機2と送風機6との相対位置関係情報と、ステップS120でメモリ42に記憶した室内機2と温度計測器8との相対位置関係情報とを使用して、送風機6と温度計測器8との相対位置関係を解析し、解析結果に基づいて、送風機6から温度計測器8の方向に向かって風を送り出せるように送風機6での送風における風向の指令値を決定する。また、CPU41は、ステップS110でメモリ42に記憶した送風機6の相対位置関係情報と、ステップS120でメモリ42に記憶した温度計測器8の相対位置関係情報、およびステップS140でメモリ42に記憶した温度差分の大きさとに基づいて、送風機6での送風における風速を決定する。ステップS160における送風機6での送風における風向および風速の指令値の決定は、調和空気を温度計測器8の位置および周辺に送り込み、温度ムラのない室内空間Sを作り出すために行われる。
ここで、例えば、室内機2および室外機3が暖房運転で動作を開始しようとしている状況において、暖房動作の事前の準備時間が必要な場合においては、調整されていない空気の送風を避ける目的で、ステップS160の処理において、準備時間に対応する期間中の風速の指令値を送風機6の送風ファン61を回転させないファン無回転に相当する値としてもよい。
また、送風機6での送風運転が既に実施されている場合においては、現在の送風運転における風向および風速とは関係なく、新たに風向および風速の指令値が決定される。
また、ステップS160において決定される送風機6での送風における風向の指令値について、例えば室内空間Sにおける広範囲にわたって温度調整が必要である場合は、送風機6の送風ファン61にスイングの動作を実施させる指令を生成してもよい。なお、ステップS160の処理において、送風機6での送風における風向および風速の指令値を決定するための条件として、他のどのようなデータが参照されてもよい。
つぎに、ステップS170において、室内機2の空気調和機制御部4のCPU41が、ステップS160において決定した送風機6での送風における風向および風速の指令値を、送受信部43を介して送風機6に送信する。
送風機6の送風機制御部7のCPU71は、送受信部73を介して風向および風速の指令値を受信すると、該指令値を送風ファン61と風向調整モータ62との駆動制御に反映させて、送風動作を実施する制御を行う。この場合、送風機6が既に送風を実施している場合には、CPU41は、風向および風速の設定を、現在の設定から該指令値における指令値に変更して送風動作を実施する制御を行う。
例えば室内機2単体では調整空気を送り込むことが難しい室内空間Sにおける室内機2から遠い領域または障害物の陰に温度計測器8を設置しておき、上記のように室内機2に連動させて送風機6を動作させる。これにより、空気調和システム10では、室内機2の台数を増やすことなく、より少ないエネルギーで、室内機2から遠い領域または障害物の陰にも調整空気を伝搬させることができる。
ここで、例えば、送風機6の機能の一部に異常を検出した場合において、送風機制御部7のCPU71は、室内機2のCPU41より受信した風向および風速の指令値を破棄し、送風機6の送風動作を停止させることができる。送風機6の動作を決定するための条件として、他のどのようなデータが参照されてもよい。
一方、温度差分が動作開始閾値以下である場合は、すなわちステップS150においてNoの場合は、温度計測器8の周辺について効果的な空気調和が実施されている場合に対応している。したがって、ステップS180において、室内機2の空気調和機制御部4のCPU41が、ステップS140で得られた温度差分と、空気調和機制御部4のメモリ42にあらかじめ保持している既定の動作停止閾値とを比較し、温度差分が動作停止閾値より小であるか否かを判定する。動作停止閾値は、送風機6の動作を停止させるか否かを判定するための基準値である。なお、動作停止閾値は、空気調和システム10が使用される環境条件といった諸条件に合わせて、任意の値に調整が可能である。
温度差分が動作停止閾値よりも小さい場合は、すなわちステップS180においてYesの場合は、CPU41はステップS190に処理を進める。温度差分が動作停止閾値よりも小さい場合は、すなわちステップS180においてYesの場合は、温度計測器8の周辺について効果的な空気調和が実施されている場合に対応している。したがって、ステップS190において、室内機2の空気調和機制御部4のCPU41は、送風機6での送風を停止させる処理を実施する。
すなわち、CPU41は、送受信部43を介して送風停止指令信号を送風機6に送信する。送風機6の送風機制御部7のCPU71は、送受信部73を介して送風停止指令信号を受信すると、送風停止指令信号を送風ファン61と風向調整モータ62との駆動制御に反映させて、送風動作を停止させる制御を行う。なお、もともと送風機6が送風動作を行っていない場合には、CPU71は、制御は行わない。
一方、温度差分が動作停止閾値以上、且つ動作開始閾値以下である場合は、すなわちステップS180においてNoの場合は、CPU41は一連の送風機6の制御処理を終了する。この場合、送風機6が既に送風を実施している場合には、CPU41は現在の風向および風速の設定で送風を継続させる制御を行う。また、送風機6が送風を実施していない場合には、CPU41は、送風を実施せずに送風機6の制御処理を終了する。
上記においては、温度計測器8が1台である場合を例にとって説明したが、例えば2台以上の温度計測器8を室内空間Sに設置しておき、最も設定温度との差分が大きい温度を計測している温度計測器8の位置に対して送風機6が送風を行うように、室内機2のCPU41が制御を行ってもよい。
上述したように、本実施の形態1にかかる空気調和システム10は、温度計測器8の周辺の温度と設定温度との差分に基づいて、送風機6による温度計測器8の位置および温度計測器8の周辺の領域への送風を自動で制御できる。これにより、室内機2だけでは空気調和が難しい大空間においても、室内機2からの調和空気が届かない領域に温度計測器8を配置しておき、室内機2の空調動作に送風機6の送風動作を連動させることで、温度計測器8の位置および周辺の領域に調和空気を自動で送風できるため、大空間の空気調和を効率的に実現できる。
すなわち、空気調和システム10は、室内機ユニット単独での空調動作に加えて、室内機2での空調および送風機6での送風を連動して自動で制御できるため、室内機2で生成された調和空気を、室内空間Sにおける室内機2の送風可能範囲外の広範囲の領域にも均一に供給することが可能となる。
したがって、本実施の形態1にかかる空気調和システム10は、室内機2の台数を増やすことなく、より少ない台数の室内機2で、且つより少ないエネルギーで調和空気を室内空間Sの全体に均一に伝搬することができる空気調和システムを実現できる。
実施の形態2.
上述した実施の形態1では、温度計測器8が計測する温度計測器8の周辺の温度データに基づいて送風機6の動作を制御する場合について説明した。空気調和システム10は、温度計測器8を使用する以外にも、室内機2に内蔵されている室内温度センサ24が取得するデータを使用して送風機6の動作を制御することが可能である。本実施の形態2では、温度計測器8を使用せずに、室内機2に内蔵されている室内温度センサ24が取得するデータに基づいて送風機6の動作を制御する場合について説明する。
以下、図4を参照して、本実施の形態2における空気調和システム10の制御の流れを説明する。図4は、本発明の実施の形態2における空気調和システム10の制御処理の流れを説明するフローチャートである。なお、図4に示す制御の流れは、一般的な空気調和機の空気調和動作に加えて、あらかじめ設定された既定の一定周期で繰り返し実行される処理であるとする。
まず、ステップS210において、室内機2の空気調和機制御部4のCPU41が、室内空間Sに配置された送風機6の位置を検出する位置検出処理を実施する。ステップS210における処理は、上述した実施の形態1において説明したステップS110と同様の処理である。
つぎに、ステップS220において、室内機2の室内温度センサ24が、室内の床温、壁温および天井温を検出する。室内温度センサ24は、床、壁および天井の領域をそれぞれ複数の区画に分割したうえで、区画ごとに床温、壁温または天井温の温度計測を行う。各区画は、識別番号が付与されて識別管理される。計測された計測結果である区画ごとの床温、壁温または天井温の温度データは、空気調和機制御部4のメモリ42に記憶される。
つぎに、ステップS230において、室内機2の空気調和機制御部4のCPU41は、床温、壁温または天井温と、空気調和機制御部4が保持している設定温度との温度差分が最大である区画を特定する。すなわち、CPU41は、室内温度センサ24が計測した区画ごとの床温、壁温または天井温の温度データを、空気調和機制御部4のメモリ42から取得する。そして、CPU41は、取得した区画ごとの床温、壁温または天井温の温度データと、空気調和機制御部4のメモリ42に保持されており空気調和機1における現在の空調の目標温度を示す空調の設定温度との温度差分を演算する。CPU41は、演算によって得られた温度差分の情報を空気調和機制御部4のメモリ42に記憶させる。この温度差分の情報により、室内の温度分布データが得られる。
つぎに、CPU41は、室内の温度分布データを分析し、すなわち床、壁および天井における全区画の温度差分の情報を比較し、床温、壁温または天井温の温度と空気調和機1における現在の空調の設定温度との温度差分が最大になる区画である温度差分最大区画を特定する。そして、CPU41は、全区画における温度差分の最大値である最大温度差分を有する区画の識別番号、すなわち特定した区画の識別番号と、最大となる温度差分の値、すなわち特定した区画の温度差分の情報とを空気調和機制御部4のメモリ42に記憶させる。
つぎに、ステップS240において、室内機2の空気調和機制御部4のCPU41が、ステップS230で特定した温度差分最大区画の最大温度差分の情報と、空気調和機制御部4のメモリ42にあらかじめ保持されている既定の動作開始閾値とを比較し、特定した温度差分最大区画の最大温度差分が動作開始閾値よりも大であるか否かを判定する。本実施の形態2における動作開始閾値は、特定した区画への送風機6による送風を開始するか否かを判定するための既定の基準値である。
特定した温度差分最大区画の最大温度差分が動作開始閾値より大きい場合は、すなわちステップS240においてYesの場合は、CPU41はステップS250に処理を進める。一方、最大温度差分が動作開始閾値以下である場合は、すなわちステップS240においてNoの場合は、CPU41はステップS270に処理を進める。
最大温度差分が動作開始閾値を超えて大きい場合は、すなわちステップS240においてYesの場合は、ステップS230で特定した区画について効果的な空気調和が実施されていない場合に対応している。したがって、ステップS250において、室内機2の空気調和機制御部4のCPU41は、送風機6での送風における風向および風速の指令値を決定する処理を実施する。
CPU41は、ステップS210でメモリ42に記憶した送風機6の相対位置関係情報と、ステップS230で特定してメモリ42に記憶した区画の識別番号とを使用して、送風機6から特定した温度差分最大区画の方向に向かって風を送り出せるように送風機6での送風における風向の指令値を決定する。また、CPU41は、ステップS230でメモリ42に記憶した、特定した温度差分最大区画の最大温度差分の大きさに基づいて、送風機6での送風における風速を決定する。ステップS250における送風機6での送風における風向および風速の指令値の決定は、調和空気を特定した温度差分最大区画に送り込み、温度ムラのない室内空間Sを作り出すために行われる。
ここで、例えば、室内機2および室外機3が暖房運転で動作を開始しようとしている状況において、暖房動作の事前の準備時間が必要な場合においては、調整されていない空気の送風を避ける目的で、ステップS250の処理において、準備時間に対応する期間中の風速の指令値を送風機6の送風ファン61を回転させないファン無回転に相当する値としてもよい。
また、送風機6での送風運転が既に実施されている場合においては、現在の送風運転における風向および風速とは関係なく、新たに風向および風速の指令値が決定される。
また、ステップS250において決定される送風機6での送風における風向の指令値について、例えば室内空間Sにおける広範囲にわたって温度調整が必要である場合は、送風機6の送風ファン61にスイングの動作を実施させる指令を生成してもよい。なお、ステップS250の処理において、送風機6での送風における風向および風速の指令値を決定するための条件として、他のどのようなデータが参照されてもよい。
つぎに、ステップS260において、室内機2の空気調和機制御部4のCPU41が、ステップS250において決定した送風機6での送風における風向および風速の指令値を、送受信部43を介して送風機6に送信する。
送風機6の送風機制御部7のCPU71は、送受信部73を介して風向および風速の指令値を受信すると、該指令値を送風ファン61と風向調整モータ62との駆動制御に反映させて、送風動作を実施する制御を行う。この場合、送風機6が既に送風を実施している場合には、CPU41は、風向および風速の設定を、現在の設定から該指令値における指令値に変更して送風動作を実施する制御を行う。
ステップS230において特定された、温度差分最大区画は、室内機2単体では調整空気を送り込むことが難しい室内空間Sにおける室内機2から遠い領域または障害物の陰の領域に対応している。したがって、上記のように室内機2に連動させて送風機6を動作させる。これにより、空気調和システム10では、室内機2の台数を増やすことなく、より少ないエネルギーで、室内機2から遠い領域または障害物の陰にも調整空気を伝搬させることができる。
ここで、例えば、送風機6の機能の一部に異常を検出した場合において、送風機制御部7のCPU71は、室内機2のCPU41より受信した風向および風速の指令値を破棄し、送風機6の送風動作を停止させることができる。送風機6の動作を決定するための条件として、他のどのようなデータが参照されてもよい。
一方、最大温度差分が動作開始閾値以下である場合は、すなわちステップS240においてNoの場合は、ステップS230で特定した区画について効果的な空気調和が実施されている場合に対応している。したがって、ステップS270において、室内機2の空気調和機制御部4のCPU41が、特定した区画の温度差分である最大温度差分と、空気調和機制御部4のメモリ42にあらかじめ保持している既定の動作停止閾値とを比較し、最大温度差分が動作停止閾値より小であるか否かを判定する。
最大温度差分が動作停止閾値よりも小さい場合は、すなわちステップS270においてYesの場合は、CPU41はステップS280に処理を進める。最大温度差分が動作停止閾値よりも小さい場合は、すなわちステップS270においてYesの場合は、特定した区画について効果的な空気調和が実施されている場合に対応している。したがって、ステップS280において、室内機2の空気調和機制御部4のCPU41は、送風機6での送風を停止させる処理を実施する。
すなわち、CPU41は、送受信部43を介して送風停止指令信号を送風機6に送信する。送風機6の送風機制御部7のCPU71は、送受信部73を介して送風停止指令信号を受信すると、送風停止指令信号を送風ファン61と風向調整モータ62との駆動制御に反映させて、送風動作を停止させる制御を行う。なお、もともと送風機6が送風動作を行っていない場合には、CPU71は、制御を行わない。
一方、最大温度差分が動作停止閾値以上、且つ動作開始閾値以下である場合は、すなわちステップS270においてNoの場合は、CPU41は一連の送風機6の制御処理を終了する。この場合、送風機6が既に送風を実施している場合には、CPU41は現在の風向および風速の設定で送風を継続させる制御を行う。また、送風機6が送風を実施していない場合には、CPU41は、送風を実施せずに送風機6の制御処理を終了する。
例えば空気調和機1による暖房の実施時には、暖気が天井付近に停滞しがちであり、天井付近の温度が高くなりがちである。ここで、温度計測器8が天井に配置されていない場合、空気調和システム10は、図4のフローチャートに示した本実施の形態2にかかる処理を行うことにより、最大温度差分が動作開始閾値より大である区画に送風機6により送風でき、暖気を撹拌して床付近に流動させる制御を自動で行うことができる。すなわち、空気調和機1は、天井の構造または照明の配置といった都合により温度計測器8が天井に配置されていない場合でも、室内機2に内蔵されている室内温度センサ24が取得する温度データを使用して送風機6の動作を制御することが可能である。
したがって、空気調和システム10は、より少ない室内機ユニットで室内空間Sの温度ムラを無くす空気調和を、効率良く実施することが可能である。
実施の形態3.
上述した実施の形態2では、空気調和システム10内に1台の送風機6が設置されている場合について説明した。送風機6は、空気調和システム10内において複数台が設置されていてもよい。本実施の形態3では、複数台の送風機6が空気調和システム10内に設置されている場合について説明する。
以下、図5を参照して、本実施の形態3における空気調和システム10の制御の流れを説明する。図5は、本発明の実施の形態3における空気調和システム10の制御処理の流れを説明するフローチャートである。なお、図5に示す制御の流れは、一般的な空気調和機の空気調和動作に加えて、あらかじめ設定された既定の一定周期で繰り返し実行される処理であるとする。
まず、ステップS310において、室内機2の空気調和機制御部4のCPU41が、室内空間Sに配置された送風機6の位置を検出する位置検出処理を実施する。ステップS310における位置検出処理は、上述した実施の形態1において説明したステップS110と同様の処理である。本実施の形態3では、複数台の送風機6が室内空間Sに配置されているため、CPU41は、室内空間Sに配置されている全ての送風機6について位置検出処理を実施する。このとき、CPU41は、送風機6が空気調和システム10内に何台設置されているかの検出も実施する。
つぎに、ステップS320からステップS340が実施される。ここで、ステップS320ではステップS220と同様の処理が実施される。ステップS330ではステップS230と同様の処理が実施される。ステップS340ではステップS240と同様の処理が実施される。なお、本実施の形態3では、ステップS340における動作開始閾値は、ステップS330で特定した温度差分最大区画への送風機6による送風を開始するか否かを判定するための既定の基準値である。
特定した区画の温度差分である最大温度差分が動作開始閾値より大きい場合は、すなわちステップS340においてYesの場合は、CPU41はステップS350からステップS390を実施する。ステップS350からステップS390では、CPU41は、ステップS360からステップS400を送風機6の台数分だけ実施する。一方、最大温度差分が動作開始閾値以下である場合は、すなわちステップS340においてNoの場合は、CPU41はステップS410に処理を進める。
ステップS360において、CPU41は、各送風機6について送風動作が必要であるか否かを判定する。CPU41は、送風を実施する対象の区画である温度差分最大区画と送風機6との距離、温度差分最大区画への送風の可否、他の送風機6の位置関係といった各種の情報から、複数台設置されている送風機6のうち温度差分最大区画への送風の実施に適した複数台の送風機6を選択する。そして、CPU41は、選択した複数台の送風機6については、送風動作が必要であると判定する。また、CPU41は、選択しなかった他の送風機6については、送風動作が不要であると判定する。
ここで、選択する送風機6の台数を指定する情報である選択台数情報があらかじめメモリ42に記憶されており、CPU41は、選択台数情報に基づいて複数台の送風機6を選択する。なお、送風機6の配置と温度差分最大区画と位置との関係によっては、選択台数情報に指定された台数に満たなくてもかまわない。
送風機6の送風動作が必要であると判定された場合は、すなわちステップS360においてYesの場合は、ステップS370とステップS380とが実施される。ここで、ステップS370ではステップS250と同様の処理が実施される。ステップS380ではステップS260と同様の処理が実施される。
送風機6の送風動作が不要であると判定された場合は、すなわちステップS360においてNoの場合は、ステップS400において、室内機2の空気調和機制御部4のCPU41は、送風動作が不要であると判定された送風機6での送風を停止させる処理を実施する。すなわち、CPU41は、送風動作が不要であると判定された送風機6に送受信部43を介して送風停止指令信号を送信する。送風動作が不要であると判定された送風機6の送風機制御部7のCPU71は、送受信部73を介して送風停止指令信号を受信すると、送風停止指令信号を送風ファン61と風向調整モータ62との駆動制御に反映させて、送風動作を停止させる制御を行う。なお、もともと送風機6が送風動作を行っていない場合には、CPU71は、制御を行わない。
一方、最大温度差分が動作開始閾値以下である場合は、すなわちステップS340においてNoの場合は、ステップS410とステップS420とが実施される。ここで、ステップS410ではステップS270と同様の処理が実施される。ステップS420ではステップS280と同様の処理が実施される。
本実施の形態3では、空気調和システム10は、本実施の形態3の効果に加え、設定温度と最も温度差がある区画を複数台の送風機6を使用して集中的に空気調和を実施することができる。これにより、本実施の形態3では、空気調和システム10は、室内空間の温度ムラをより素早く効率的に解消することができる。
また、本実施の形態3では、複数台の送風機6が空気調和システム10内に設置されているため、空気調和機1は、温度計測器8が計測する温度計測器8の周辺の温度データおよび室内機2に内蔵されている室内温度センサ24が取得する温度データを用いることにより、室内における複数箇所に対する送風機6の動作を制御することが可能である。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる空気調和システムは、室内に配置された室内機により調和空気を室内に吹き出す空気調和機と、室内に配置されて送風ファンにより室内の空気を取り込んで任意の方向に送り出す送風機と、室内における室内機の外部の領域に配置されて周辺の温度の計測を行う温度計測器と、を備える。空気調和機は、空気調和機および送風機の送風を制御する空気調和機制御部と、室内機と温度計測器との相対的な位置に関する相対位置を検出する温度計測器位置センサと、を備える。空気調和機制御部は、温度計測器における計測結果に基づいて送風機の送風を制御し、温度計測器位置センサにより得られた検出結果に基づいて、室内において送風機による送風を実施する領域を特定する。
まず、ステップS110において、室内機2の空気調和機制御部4のCPU41が、室内空間Sに配置された送風機6の位置を検出する位置検出処理を実施する。CPU41は、送風機位置センサ25で得られた検出結果である送風機6の位置情報に基づいて室内機2と送風機6との相対的な位置関係を解析して、室内機2と送風機6との相対的な位置関係を示す相対位置関係情報を生成する。CPU41は、生成した相対位置関係情報を、空気調和機制御部4のメモリ42に記憶させる。
つぎに、ステップS120において、室内機2の空気調和機制御部4のCPU41が、室内空間Sに配置された温度計測器8の位置検出処理を実施する。CPU41は、温度計測器位置センサ26で得られた検出結果である温度計測器8の位置情報に基づいて室内機2と温度計測器8との相対的な位置関係を解析して、室内機2と温度計測器8との相対的な位置関係を示す相対位置関係情報を生成する。CPU41は、生成した相対位置関係情報を、空気調和機制御部4のメモリ42に記憶させる。