JPWO2017175646A1 - 電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材、電子写真現像剤用フェライトキャリア、電子写真現像剤及び電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材の製造方法 - Google Patents

電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材、電子写真現像剤用フェライトキャリア、電子写真現像剤及び電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材の製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明の課題は、フェライトキャリアの利点を保持しつつ、所望の抵抗特性と所望の帯電特性を得ることができ、かつ抵抗及び帯電量の環境変動が小さい電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材、電子写真現像剤用フェライトキャリア、該フェライトキャリアを用いた電子写真現像剤、及び電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材の製造方法を提供することにある。上記課題を解決するため、Mnを15質量%以上25質量%以下、Mgを0.5質量%以上5.0質量%以下、Srを0.05質量%以上4.0質量%以下、Feを45質量%以上55質量%以下含有するフェライト粒子の表面にZrが偏在することを特徴とするフェライトキャリア芯材を用いる。

Description

本発明は、複写機、プリンター等に用いられる二成分系電子写真現像剤に使用されるフェライトキャリア芯材、該フェライトキャリア芯材を用いたフェライトキャリアに関し、詳しくは所望の抵抗特性及び帯電特性を有し、かつ抵抗及び帯電量の環境変動が小さい電子写真現像材用フェライトキャリア芯材、電子写真現像剤用フェライトキャリア、電子写真現像材及び該電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材の製造方法に関する。
電子写真現像方法は、現像剤中のトナーを感光体上に形成された静電潜像に付着させて現像する方法をいう。現在、電子写真現像方法として、マグネットロールを用いる磁気ブラシ法が広く採用されている。この方法で使用される現像剤は、トナーとキャリアからなる二成分系現像剤と、トナーのみを用いる一成分系現像剤とに分けられる。
二成分系現像剤において、キャリアは、トナーと混合・攪拌され、トナーを帯電させ、さらに搬送する機能を有している。一成分系現像剤と比較すると二成分系現像剤は、現像剤を設計する際の制御性が良い。従って、高画質が要求されるフルカラー現像装置、画像維持の信頼性、耐久性が要求される高速印刷を行う装置等において、二成分系現像剤が広く用いられている。
このような二成分系現像剤においては、画像濃度、カブリ、白斑、階調性、解像力等の画像特性が、初期の段階から所定の値を示す必要がある。また、これらの特性が耐刷期間中に変動せず、安定に維持される必要がある。そのため、高精細化及び高画質化と共に、高い信頼性が現像剤に要求されている。
また、近年では、高画質化や省エネルギーの観点から、重合トナーや低温定着トナーといったトナーが使用されるようになってきている。これら新規のトナーは、従来のトナーに比べ、現像剤化した時の、抵抗や帯電量といった電気的特性の環境変動が大きいことが問題となっている。そのため、電気的特性の環境変動の少ない現像剤が求められている。
特許文献1(日本国特許出願 特開平08−22150号公報)には、MnO、MgO及びFeからなるフェライトの一部をSrOで置換したことを特徴とする電子写真現像剤用フェライトキャリアが記載されている。同文献に記載のフェライトキャリアは、フェライトキャリア粒子間の磁化のバラツキを低減させることにより画質および耐久性に優れ、環境に優しく、長寿命でかつ環境安定性に優れた電子写真現像用フェライトキャリアを得ることができるとしている。
特許文献2(日本国特許出願 特開2006−17828号公報)には、MnO、MgO及びFeからなるフェライトであって、その一部をSrO等で置換したフェライト粒子中に、ジルコニウムを40ppm〜500ppm含有することを特徴とする電子写真現像剤用フェライトキャリアが記載されている。同文献に記載のフェライトキャリアは、絶縁破壊電圧が高いため、電荷リークの発生を抑制でき、その結果として高画質を得ることができるとしている。
特許文献3(日本国特許出願 特開2004−240322号公報)には、MnO、MgO及びFeからなるフェライトであって、ZrOを0.01〜5.0重量部の量で含有し、フェライト粒子内にZrO粒子が均一に点在していることを特徴とする電子写真現像剤用フェライトキャリアが記載されている。同文献に記載のフェライトキャリアは、ハーフトーンの忠実な再現性、階調性、解像力、更にベタ部の均一性に優れ、かつキャリア付着(白斑)のない高品位な画像品質を長期に渡って維持できるとしている。
しかしながら、これら特許文献1〜3に記載の発明では、抵抗や帯電量といった電気的特性の環境変動を極小化したいという近年の高い要求に応えることは困難であった。
電気的特性の環境変動を抑制するためには、フェライト粒子の表面状態を改良する必要がある。そこで、特許文献4(特開2012−25640号公報)には、(MxFe3−x)O(MはFe,Mg,Mn,Ca,Ti,Cu,Zn,Sr,Niからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属、0≦x≦1)で表されるフェライト粒子本体の表面をアルミナで被覆してなるフェライト粒子、及びその表面を樹脂で被覆した電子写真現像用キャリアが記載されている。
この特許文献4に記載の発明では、表面をアルミナで被覆することにより、見掛密度の小さい、かつ流動性の優れたフェライト粒子を達成できるとしている。しかしながら、特許文献3には、抵抗や帯電量といった電気的特性の環境変動に関する改良の示唆は一切ない。
また、特許文献5(日本国特許出願 特開2014−137425)には、粒子表面近傍にFe及びMgを含有する複合酸化物粒子が固溶しており、粒子内部と粒子表面近傍とでFe及びMg含有量が異なるフェライト粒子及びその表面を樹脂で被覆した電子写真現像用キャリアが記載されている。さらに、特許文献6(日本国特許出願 特開2014−182304)には、実質Mg系フェライト粒子の表面をTi化合物で被覆したフェライトキャリア芯材及びこれに樹脂を被覆したフェライトキャリアが記載されている。
これら特許文献5、6に記載の発明によれば、Mg系フェライトにおいて、表面酸化処理を行うことなく、任意の抵抗や磁化の調整が可能で、かつ帯電性に優れたキャリアを達成できるとしている。しかしながら、これらの発明では、高い帯電付与能力が達成できるものの、帯電量の環境変動の抑制が可能という訳ではない。また、特許文献4,5には、抵抗の環境変動に関する改良の示唆は一切ない。
さらに、特許文献7(特開2015−138052)にも、実質Mg系フェライト粒子の表面にTi化合物を被覆することで、内部が多孔質構造で、その外周に外殻構造を有するフェライト粒子及び、これに樹脂を含浸又は被覆した電子写真現像用キャリアが記載されている。この特許文献6に記載の発明は、低い見かけ密度を有するため、トナーへの撹拌ストレスが小さく、長期間の使用において帯電安定性に優れているとしている。しかしながら、特許文献6においても、抵抗や帯電量といった電気的特性の環境変動に関する改良の示唆はなく、上記課題が解決されていないのが現状である。
日本国特許出願 特開平08−22150号公報 日本国特許出願 特開2006−17828号公報 日本国特許出願 特開2004−240322号公報 日本国特許出願 特開2012−25640号公報 日本国特許出願 特開2014−137425号公報 日本国特許出願 特開2014−182304号公報 日本国特許出願 特開2015−138052号公報
従って、本発明の課題は、フェライトキャリアの利点を保持しつつ、所望の抵抗特性と所望の帯電特性を得ることができ、かつ抵抗及び帯電量の環境変動が小さい電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材、電子写真現像剤用フェライトキャリア、該フェライトキャリアを用いた電子写真現像剤、及び電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の組成を有するフェライト粒子の表面にZrを偏在させることにより、上記課題を解決し得ることを知見し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、Mnを15質量%以上25質量%以下、Mgを0.5質量%以上5.0質量%以下、Srを0.05質量%以上4.0質量%以下、Feを45質量%以上55質量%以下含有するフェライト粒子の表面にZrが偏在することを特徴とする電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材を提供するものである。
本発明に係る上記フェライトキャリア芯材は、Zrを0.1質量%以上4.0質量%以下含有することが好ましい。
本発明に係る上記フェライトキャリア芯材は、以下の式(1)でZrの偏在度合いを表したとき、当該Zrの偏在度合いが2.0以上70.0以下であることが好ましい。
Zrの偏在度合い=Zr(s)/Zr(c) ・・・(1)
但し、Zr(s):エネルギー分散型X線分析によって測定された粒子断面の表面部におけるZr量(質量%)
Zr(c):エネルギー分散型X線分析によって測定された粒子断面の中心部におけるZr量(質量%)
本発明に係る上記フェライトキャリア芯材において、当該フェライト粒子は表面がZrOで被覆され、ZrO被覆量は当該フェライト粒子100質量部に対して0.2質量%以上5.0質量%以下であることが望ましい。
本発明に係る上記フェライトキャリア芯材の溶出試験を行ったときのCl濃度が0.1ppm以上50ppm以下であることが望ましい。
本発明に係る上記フェライトキャリア芯材の溶出試験を行ったときのSr濃度が50ppm以上1300ppm以下であることが望ましい。
本発明に係る上記フェライトキャリア芯材の体積平均粒径は、15μm以上60μm以下であることが望ましい。
本発明に係る上記フェライトキャリア芯材の飽和磁化は、30Am/kg以上80Am/kg以下であることが望ましい。
本発明に係る上記フェライトキャリア芯材は、Mnを15質量%以上25質量%以下、Mgを0.5質量%以上5.0質量%以下、Srを0.05質量%以上4.0質量%以下、Feを45質量%以上55質量%以下含むフェライト粒子前駆体の表面をZrOで被覆し、表面がZrOで被覆されたフェライト粒子前駆体を焼成することにより得られたものであることが望ましい。
本発明は、上記フェライトキャリア芯材と、当該フェライトキャリア芯材の表面に設けられた樹脂被覆層とを備えることを特徴とする電子写真現像剤用フェライトキャリアを提供するものである。
本発明は、上記電子写真現像剤用フェライトキャリアとトナーとからなることを特徴とする電子写真現像剤を提供するものである。
本発明に係る電子写真現像剤は、補給用現像剤としても用いられる。
本発明は、Mnを15質量%以上25質量%以下、Mgを0.5質量%以上5.0質量%以下、Srを0.05質量%以上4.0質量%以下、Feを45質量%以上55質量%以下含むフェライト粒子前駆体を得る工程と、当該フェライト粒子前駆体の表面をZrOで被覆する工程と、表面がZrOで被覆されたフェライト粒子前駆体を焼成する工程とを備えることを特徴とする電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材の製造方法を提供するものである。
本発明に係る電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材の製造方法において、上記フェライト粒子前駆体100質量%に対して、0.2質量%以上5.0質量%以下のZrOを上記フェライト粒子前駆体の表面に被覆することが望ましい。
本発明に係る電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材は、所望の抵抗特性と所望の帯電特性を得ることができ、かつ抵抗及び帯電量の環境変動が小さい。そのため、上記フェライトキャリア芯材に樹脂を被覆して得られるフェライトキャリアとトナーとからなる電子写真現像剤は、各環境下での抵抗安定性及び帯電安定性に優れる。
本実施形態のフェライトキャリア芯材の粒子断面のSEM写真である。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
1.本発明に係る電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材
本発明に係る電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材(以下、「フェライトキャリア芯材」と表記する。)は、特定の組成を有するフェライト粒子の表面にZrを偏在させたものである。フェライト粒子の表面(表面近傍を含む。以下、同じ。)にZrを偏在させることにより、フェライトキャリア芯材の抵抗及び帯電量等の電気特性が雰囲気環境によって変動することを抑制できることを見出した。その詳細なメカニズムは不明であるが、フェライトキャリア芯材の電気的特性が雰囲気環境によって変動するのは、空気中の水分子がフェライト粒子の表面に付着することが原因と考えられる。フェライト粒子の表面にZrを偏在させることで、フェライト粒子の表面に水分子が吸着することを防止でき、その結果、上記電気的特性が雰囲気環境によって変動することを極小化することができると考えられる。
1−1.Zr
本発明では、上述のとおり、フェライト粒子の表面にZrが偏在している。フェライト粒子の表面にZrが偏在するとは、フェライト粒子内におけるZrの分布が表面と内部では異なり、Zrが主としてフェライト粒子の表面に存在することを意味する。ここでいうZrとは、Zr元素を意味する。図1に走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察されたフェライトキャリア芯材の粒子断面のSEM写真を示す。
本発明に係るフェライトキャリア芯材は、Zrを0.1質量%以上4.0質量%以下含有することが好ましい。フェライトキャリア芯材全体に含有されるZr量は、後述する誘導結合プラズマ(ICP)分析装置を用いて測定することができる。
例えば、特許文献2に記載されるように、原料混合段階でZr(ZrO)を添加すると、粒子内部にZrが均一に分散したフェライト粒子が得られる。このようなフェライト粒子では、原料混合段階におけるZrの添加量に比して、該フェライト粒子の表面に存在するZrの量が少なくなる。そのため、フェライト粒子の表面におけるZr量が少なく、上記効果を効率よく発現させることができない。一方、上記効果を発現させることができる程度の量まで、フェライト粒子の表面におけるZr量を増加させるには、原料混合段階において多量のZr(ZrO)を添加する必要がある。しかし、ZrOは非磁性物質であるため、フェライト粒子の飽和磁化が著しく低下する。そこで、フェライト粒子の飽和磁化を低下させることなく、上記効果を得るという観点から、Zrをフェライト粒子の表面に偏在させることが好ましい。
本発明に係るフェライトキャリア芯材は、以下の式(1)でZrの偏在度合いを表したとき、当該Zrの偏在度合いが2.0以上70.0以下であることが好ましい。
Zrの偏在度合い=Zr(s)/Zr(c) ・・・(1)
但し、Zr(s):エネルギー分散型X線分析によって測定された粒子断面の表面部におけるZr量(質量%)
Zr(c):エネルギー分散型X線分析によって測定された粒子断面の中心部におけるZr量(質量%)
ここで、粒子断面の中心部は、次のように定義することができる。図1に示すように、フェライトキャリア芯材の断面における最大直径を線分Dxとしたとき、線分Dxの中点を粒子断面の中心Cとし、線分Dxの端点をそれぞれ点Pとする。そして、当該中心Cをその中心位置とし、一辺の長さが線分Dxの35%の長さである正方形を正方形Sとする。本件発明では、フェライトキャリア芯材の粒子断面において、この正方形Sで囲まれた領域を中心部と定義する。
次に、粒子断面の表面部は、次のように定義することができる。線分Dx上の点であって、点Pから中心Cに向かって線分Dxの長さの15%の距離の位置を点P’とする。そして、線分Dxの長さの35%の長さを有し、線分Dxに直交し、かつ点P又は点P’を中点とする線分を長辺とし、線分Dxの長さの15%の長さを有する線分を短辺とする長方形を長方形Rとする。本件発明では、フェライトキャリア芯材の粒子断面において、この長方形Rで囲まれた領域を表面部と定義する。
上述のように定義された粒子断面の中心部及び表面部に対して、以下のようにしてエネルギー分散型X線分析(EDX分析)を行う。EDX分析では、フェライトキャリア芯材の特定の領域における元素の含有量を測定することができる。
(a)フェライトキャリア芯材を樹脂包埋し、イオンミリングによる断面加工を施すことにより、測定用の断面試料を作製する。イオンミリングは、日立ハイテクノジーズ社製のIM4000PLUSを使用し、イオンビームの加速電圧を6.0kVとして、アルゴン雰囲気下で行う。ここで、分析対象とするフェライトキャリア芯材粒子は、フェライトキャリア芯材の体積平均粒径をD50としたとき、最大直径DxがD50×0.8≦Dx≦D50×1.2の範囲である粒子とする。
(b)得られた断面試料に対して、走査電子顕微鏡(SEM、日立ハイテクノジーズ社製SU8020)にて加速電圧を15kV、WDを15mmとしてフェライトキャリア芯材1粒子の断面を観察する。このとき、視野の中にフェライトキャリア芯材1粒子のみが存在し、かつ粒子全体が視野内に収まるように倍率を設定する。
(c)フェライトキャリア芯材の粒子断面の中心部及び表面部、すなわち、図1に示す正方形S及び長方形Rで囲まれた領域に対してEDX分析を行う。EDX分析では、エネルギー分散型X線分析装置(堀場製作所製EMax X−Max50)によって、Fe、Mn、Mg、Sr及びZrを対象としてマッピング収集を行い、得られたX線スペクトルピークから各々の元素量(質量%)を算出する。得られた粒子断面の中心部におけるZr量を「Zr(c)」とし、粒子断面の表面部におけるZr量を「Zr(s)」とする。
そして、EDX分析によって得られた粒子断面の中心部におけるZr量(Zr(c))及び粒子断面の表面部におけるZr量(Zr(s))を、上述した式(1)に代入することにより、フェライトキャリア芯材1粒子のZrの偏在度合いを得ることができる。
このとき、粒子断面の表面部におけるZr量については、長方形Rと同様に定義された長方形R、R、R、・・・で囲まれた領域を表面部と定義し、各領域におけるZr量の平均値とすることがより好ましい。本実施形態では、以下のように長方形R、R、Rを定義し、フェライトキャリア芯材の粒子断面において各長方形R、R、R、Rで囲まれた領域におけるZr量の平均値を、粒子断面の表面部におけるZr量(Zr(s))とする。
長方形Rは、線分Dx上の長方形Rを定義するのに用いた端点Pとは異なる端点Pを基準として、長方形Rと全く同様に定義する。長方形R及び長方形Rは以下のようにして定義する。上記中心Cを通って線分Dxに直交し、フェライトキャリア芯材の粒子断面の輪郭を端点とする線分を線分Dyとし、この端点をそれぞれ点Qとする。線分Dy上の点であって、点Qから中心Cに向かって線分Dxの長さの15%の距離の位置を点Q’とする。そして、線分Dyに直交して線分Dxの長さの35%の長さを有し、点Q又は点Q’を中点とする線分を長辺とし、線分Dxの長さの15%の長さを有する線分を短辺とする長方形を長方形R及び長方形Rと定義する。そして、フェライトキャリア芯材の粒子断面においてこれらの長方形R、R、Rで囲まれた領域を表面部と定義し、EDX分析を行って各Zr量を算出する。そして、得られた各長方形R〜RにおけるZr量の平均値を、粒子断面の表面部におけるZr量(Zr(s))とする。
本実施形態では、粒子断面の表面部におけるZr量(Zr(s))として、4つの長方形R〜Rで囲まれた領域のZr量の平均値を採用したが、4つに限定されるものでなく、任意の数とすることができる。各長方形R、R、R、R、・・・は、粒子断面の輪郭に沿って略等間隔に配置されることが好ましい。
以上のようにして、フェライトキャリア芯材1粒子のZrの偏在度合いを算出することができる。そして、フェライトキャリア芯材粒子100粒子について、同様にZrの偏在度合いを算出し、その平均値をフェライトキャリア芯材のZrの偏在度合いとする。
フェライトキャリア芯材のZr含有量が0.1質量%未満の場合には、フェライト粒子の表面に存在するZrが非常に少ないため、フェライトキャリア芯材は電気的特性の環境変動を抑制することが困難であり好ましくない。フェライトキャリア芯材のZrの偏在度合いが2.0未満の場合には、フェライトキャリア芯材の表面に存在するZrが非常に少ないか、表面よりも内部の方がZrが多いか、又は、粒子全体に亘ってZrが分散して存在しており、実質的にZrがフェライト粒子の表面に偏在しているとは言えるものではない上に、フェライトキャリア芯材は電気的特性の環境変動を抑制することが困難であり好ましくない。また、フェライトキャリア芯材のZr含有量が4.0質量%よりも多いか又はZrの偏在度合いが70.0よりも大きい場合には、フェライト粒子中にZrに起因する非磁性相が多くなるため、フェライトキャリア芯材の飽和磁化が著しく低下する。そのため、電子写真現像剤用フェライトキャリアに必要な所定の磁性を発現させることができない。また、フェライト粒子の表面におけるZr量が多くなると、フェライトキャリア芯材が高抵抗化する。そのため、トナーと混合した際に、帯電量が飽和値に達するまでの時間が長くなり、トナー補給直後にトナー飛散を引き起こしやすくなるため、好ましくない。
本発明に係るフェライトキャリア芯材は、表面に偏在するZr元素がZrOとして存在し、その表面がZrOで被覆されていることが好ましい。ZrO被覆量は、当該フェライト粒子100質量部に対して0.2質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.4質量%以上4.0質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上2.0質量%以下であることが最も好ましい。ZrO被覆量が当該範囲内であるときに、上記電気的特性の環境変動を極小化する効果をより強く発現することができる。
上記ZrO被覆量が0.2質量%より小さい場合は、上記電気的特性の環境変動を抑制することが困難であり、好ましくない。上記ZrO被覆量が5.0質量%より多い場合は、フェライト粒子の表面にZrに起因する非磁性相が多くなるため、当該フェライトキャリア芯材の飽和磁化が著しく低下する。そのため、電子写真現像剤用フェライトキャリアに必要な所定の磁性を発現させることができない。また、フェライト粒子の表面におけるZr量が多くなると、フェライト粒子が高抵抗化する。そのため、トナーと混合した際に、帯電量が飽和値に達するまでの時間が長くなり、トナー補給直後にトナー飛散を引き起こしやすくなるため、好ましくない。
1−2.フェライト粒子組成
(1)Mn、Mg、Sr、Fe
本発明において、フェライト粒子は、Mnを15質量%以上25質量%以下、Mgを0.5質量%以上5.0質量%以下、Srを0.05質量%以上4.0質量%以下、Feを45質量%以上55質量%以下を含有するものとする。当該特定の組成を有するフェライト粒子の表面にZrが偏在することで、上記効果が発現される。
ここで、Mn含有量が15質量%未満であり、Mg含有量が5質量%を超えるような組成の場合、フェライト粒子の磁化を高めることができず、キャリア飛散の原因となるため好ましくない。また、Mn含有量が25質量%を超え、Mg含有量が0.5質量%未満になると、磁化を高めることはできるが、フェライト粒子中に含まれる電気陰性度の高いMgOの量が相対的に少なくなる。そのためフェライト粒子の帯電量が低下するため、好ましくない。
また、Srはフェライト粒子の高磁化を保つ効果を有するだけでなく、Srを含有することでフェライト粒子の帯電能力を高める効果も得られ、フェライト粒子の表面の電気的特性の調整に寄与する。Sr含有量が0.05質量%未満の場合には、これらの効果を得ることが困難になる。また、Srの含有量が4質量%を超えると、残留磁化や保磁力が高くなり、現像剤として用いたとき、はけ筋等の画像欠陥が発生し、画質が低下し、好ましくない。
これらFe、Mn、Mg、Srの含有量は、例えば、下記の方法により測定することができる。フェライトキャリア芯材0.2gを秤量し、純水60mlに1Nの塩酸20ml及び1Nの硝酸20mlを加えたものを加熱し、フェライトキャリア芯材を完全溶解させた水溶液を準備する。この水溶液を試料とし、ICP分析装置(島津製作所製ICPS−1000IV)等により、Fe、Mn、Mg及びSrの含有量を測定することができる。上述のZrについても同様に測定することができる。
(2)塩化物
本発明では、当該フェライトキャリア芯材の溶出試験を行ったときのCl濃度(以下、「溶出Cl濃度」と称する)が0.1ppm以上50ppm以下であることが好ましい。当該溶出Cl濃度は、フェライトキャリア芯材の表面における塩化物量を表す。フェライトキャリア芯材を製造する際に、原料としてClを含む金属酸化物を用いる場合がある。そのため、フェライトキャリア芯材の表面には、一般に塩化物が存在する。表面の塩化物量が多くなると、使用雰囲気中の水分(水分子)が吸着し易いため、当該フェライトキャリア芯材の電気特性の環境変動が大きくなる。即ち、フェライトキャリア芯材の電気特性の環境変動を抑制するには、フェライトキャリア芯材の内部ではなく、フェライトキャリア芯材の表面に存在する塩化物量を制御することが重要である。そこで、フェライトキャリア芯材の溶出試験を行ったときのCl濃度が上記範囲内とすることにより、フェライトキャリア芯材の電気特性の環境変動をより良好に抑制することができる。
フェライトキャリア芯材の表面に存在するCl濃度を測定する方法として、フェライトキャリア芯材を試料とし、当該フェライトキャリア芯材の溶出試験を次のように行うことができる。
(a)試料を50.000g±0.0002g以内に正確に秤り、150mlガラス瓶に入れる。
(b)フタル酸塩(pH4.01)50mlをガラス瓶に添加する。
(c)イオン強度調整剤、1mlをガラス瓶に続けて添加し、蓋を閉める。
(d)ペイントシェ−カ−にて10分間撹拌する。
(e)150mlガラス瓶の底に磁石を当て試料が落ちないように注意しながらNo.5Bの濾紙を用いてPP製(50ml)の容器にろ過する。
(f)得られた上澄み液を、pHメーターにて電圧を測定する。
(g)同様に、検量線用に作成したCl濃度別の溶液(純水、1ppm、10ppm、100ppm及び1000ppm)を測定し、それらの値から、サンプルのCl濃度を計算する。
上記方法により測定された溶出Cl濃度が、50ppmを超えると、フェライトキャリア芯材の表面における塩化物が多いことを表し、その結果、上述したように、使用雰囲気中の水分(水分子)を吸着し易くなるため、フェライトキャリア芯材の電気的特性の環境変動が大きくなり好ましくない。
ここで、溶出Cl濃度を0.1ppm未満にすることは工業上困難である。フェライトキャリア芯材の製造原料として一般的に用いられる酸化鉄には、Clが数百ppm程度含まれる。鉄鋼生産時に発生する塩酸酸洗工程から副生する酸化鉄がフェライトキャリア芯材の製造原料として工業的に用いられているためである。このような酸化鉄にもいくつかのグレードがあるが、最もCl含有量が少ないものでも、200ppm程度のClを含有する。
本発明に係るフェライトキャリア芯材において、フェライト粒子のFe含有量は、45質量%以上55質量%以下である。酸化鉄(Fe)に換算すると、当該フェライト粒子は50質量%以上の酸化鉄を含有する。この場合、工業的に最もClが少ない酸化鉄を原料として用いても、フェライトキャリア芯材中に125ppm程度のClが存在することになる。フェライトキャリア芯材の製造工程には仮焼工程や本焼成工程が含まれる。これらの焼成工程ではフェライト粒子前駆体が高温で加熱されるため、フェライト粒子前駆体に含まれるClの一部は除去されるが、その全てを除去することはできない。そのため、フェライトキャリア芯材の表面には所定の程度Clが存在することになる。より高純度の酸化鉄を用いたり、焼成条件を制御することにより、フェライトキャリア芯材中のClを減らすことはできるが、溶出Cl濃度を0.1ppmにすることは困難である。また、高純度の酸化鉄を用いることは生産コストの上昇につながり、好ましくない。焼成条件は、フェライトキャリア芯材の表面特性を調整する制御因子のため、表面の塩化物量を制御するためだけに焼成条件を調整することも困難である。これらのことから、溶出Cl濃度を0.1ppm未満にすることは工業上困難である。
(3)表面におけるSr濃度
本発明では、当該フェライトキャリア芯材の溶出試験を行ったときのSr濃度(以下、溶出Sr濃度)が50ppm以上1300ppm以下であることが好ましい。当該溶出Sr濃度はフェライトキャリア芯材の表面におけるSr化合物量を表す。フェライトキャリア芯材の表面にアルカリ土類金属化合物であるSr化合物が存在する場合、塩化物の場合と同様に、使用雰囲気中の水分(水分子)が吸着し易いため、当該フェライトキャリア芯材の電気特性の環境変動が大きくなる。そこで、フェライトキャリア芯材の溶出試験を行ったときのSr濃度が上記範囲内とすることにより、表面のSr化合物量が所定の範囲内に制御され、フェライトキャリア芯材の電気特性の環境変動をより良好に抑制することができる。
フェライトキャリア芯材の表面におけるSr溶出濃度を測定する方法として、フェライトキャリア芯材を試料とし、当該フェライトキャリア芯材の溶出試験を次のように行うことができる。
(a)試料を50.000g±0.0002g以内に正確に秤り、100mlガラス瓶に入れる。
(b)pHメーター校正用pH4標準液50mlをガラスビンに添加する。
(c)ペイントシェーカーで10分間攪拌する。
(d)攪拌終了後上澄み液を2mlサンプリングし、純水を加えて100mlに希釈した溶液をICPにて測定する。
(e)得られた測定値を50倍してSr溶出量の値とする。
なお、pH4標準液はJIS(日本工業規格) Z 8802のpH測定方法に指定されているものを使用する。
溶出Sr濃度が50ppm未満である場合、フェライトキャリア芯材はSrを含有していないことを意味し、上述した組成のフェライト粒子を得ることができない。これに対して、溶出Sr濃度が1300ppmよりも多い場合には、当該フェライトキャリア芯材の抵抗や帯電量の環境変動が大きくなり好ましくない。
1−3.体積平均粒径
本発明に係るフェライトキャリア芯材の体積平均粒径は、好ましくは15μm以上60μm以下、より好ましくは15μm以上50μm以下、最も好ましくは20μm以上45μm以下である。フェライトキャリア芯材の体積平均粒径が15μm未満であると、キャリア付着が発生しやすくなるため好ましくない。フェライトキャリア芯材の体積平均粒径が60μmを超えると、画質が劣化しやすくなり、好ましくない。
フェライトキャリア芯材の体積平均粒径は、レーザー回折散乱法により測定することができる。例えば、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分析計(Model9320−X100)を用い、屈折率を2.42とし、25±5℃、湿度55±15%の環境下で測定することができる。ここで言う体積平均粒径(メジアン径)とは、体積分布モード、ふるい下表示での累積50%粒子径をいう。なお、分散媒には水を用いることができる。
1−4.飽和磁化
本発明に係るフェライトキャリア芯材の飽和磁化は、30Am/kg以上80Am/kg以下であることが好ましい。ここでいう飽和磁化とは、フェライトキャリア芯材に対して、3K・1000/4π・A/mの磁場をかけたときの磁化をいうものとする。フェライトキャリア芯材の3K・1000/4π・A/mにおける飽和磁化が30Am/g未満であると、飛散物磁化が悪化しキャリア付着による画像欠陥の原因となる。一方、フェライトキャリア芯材の3K・1000/4π・A/mにおける飽和磁化が80Am/gを超えると、磁気ブラシが硬くなりすぎるため、画質を悪くする原因となる。
この飽和磁化の測定は、例えば、次の方法で測定することができる。積分型B−HトレーサーBHU−60型((株)理研電子製)を使用して測定した。電磁石間に磁場測定用Hコイル及び磁化測定用4πIコイルを入れる。この場合、試料(樹脂充填型フェライトキャリア)は4πIコイルに入れる。電磁石の電流を変化させ磁場Hを変化させたHコイル及び4πIコイルの出力をそれぞれ積分し、H出力をX軸に、4πIコイルの出力をY軸に、ヒステリシスループを記録紙に描く。ここで測定条件としては、試料充填量:約1g、試料充填セル:内径7mmφ±0.02mm、高さ10mm±0.1mm、4πIコイル:巻数30回にて測定する。
1−5.電気抵抗
本発明に係るフェライトキャリア芯材の常温常湿下で測定された電気抵抗は5×10Ω〜2.5×10Ωであることが望ましい。さらに望ましくは7.5×10Ω〜1.0×10Ωであり、最も望ましくは、1.0×10Ω〜7.5×10Ωである。
常温常湿下におけるフェライトキャリア芯材の電気抵抗が5×10Ω未満であると、電荷がリークして画像に白斑を発生させたり、キャリア飛散の原因となるので好ましくない。電気抵抗が2.5×10Ωを超えると、トナーと混合した際に、帯電量が飽和値に達するまでの時間が長くなり、トナー補給直後にトナー飛散を引き起こしやすくなるため、好ましくない。
フェライトキャリア芯材の電気抵抗は、例えば、次のようにして測定することができる。まず、電極間間隔6.5mmにて非磁性の平行平板電極(10mm×40mm)を対抗させ、その間に、試料200mgを秤量して充填する。磁石(表面磁束密度:1500Gauss、電極に接する磁石の面積:10mm×30mm)を平行平板電極に付けることにより電極間に試料を保持させ、1000Vの電圧を印加し、絶縁抵抗計(SM−8210、東亜ディケーケー(株)製)にて測定した。なお、ここで言う常温常湿下とは、室温20℃〜25℃、湿度50%〜60%の環境下をいい、上記測定は、上記の室温及び湿度に制御された恒温恒湿室内に試料を12時間以上暴露したのち、測定を行う。
2.本発明に係る電子写真現像剤用フェライトキャリア
本発明に係る電子写真現像剤用フェライトキャリア(以下、「フェライトキャリア」と表記する。)は、上記フェライトキャリア芯材と、当該フェライトキャリア芯材の表面に設けられた樹脂被覆層とを備える。樹脂被覆層は、一層であってもよいし、複数層であってもよく、所望の特性に応じて樹脂被覆層の層数を決めることができる。樹脂被覆層を二層以上設ける場合は、各樹脂被覆層の組成、樹脂被覆量及び樹脂被覆層を形成する際に使用する装置は変化させてもよいし、変えなくてもよい。
本発明に係るフェライトキャリアにおいて、樹脂被覆量が、フェライトキャリア芯材に対して0.1質量%以上10質量%以下が望ましい。樹脂被覆量が0.1質量%未満ではキャリア表面に均一な樹脂被覆層を形成することが難しい。また、樹脂被覆量が10質量%を超えるとフェライトキャリア同士の凝集が発生してしまい、歩留まり低下等の生産性の低下と共に、実機内での流動性あるいは帯電量等の現像剤特性変動の原因となる。
樹脂被覆層を構成する樹脂は、組み合わせるトナー、使用される環境等によって適宜選択できる。その種類は特に限定されないが、例えば、フッ素樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フッ素アクリル樹脂、アクリル−スチレン樹脂、シリコーン樹脂、あるいはアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の各樹脂で変性した変性シリコーン樹脂等が挙げられる。本発明では、アクリル樹脂、シリコーン樹脂又は変性シリコーン樹脂が最も好ましく用いられる。
また、本発明に係るフェライトキャリアの電気抵抗や帯電量、帯電速度をコントロールすることを目的に、樹脂被覆層中に導電剤を含有することができる。導電剤はそれ自身の持つ電気抵抗が低いことから、含有量が多すぎると急激な電荷リークを引き起こしやすい。従って、含有量としては、樹脂の固形分に対し0.25質量%〜20.0質量%であり、好ましくは0.5質量%〜15.0質量%、特に好ましくは1.0質量%〜10.0質量%である。導電剤としては、導電性カーボン、酸化チタンや酸化スズ等の酸化物、各種の有機系導電剤が挙げられる。
また、上記樹脂被覆層中には、帯電制御剤を含有させることができる。帯電制御剤の例としては、トナー用に一般的に用いられる各種の帯電制御剤、各種シランカップリング剤及び無機微粒子等が挙げられる。これは芯材露出面積を比較的小さくなるように、樹脂の表面被覆面積を制御した場合、帯電付与能力が低下することがあるが、各種の帯電制御剤やシランカップリング剤を添加することにより、コントロールできるためである。使用できる帯電制御剤やカップリング剤の種類は特に限定されないが、ニグロシン系染料、4級アンモニウム塩、有機金属錯体、含金属モノアゾ染料等の帯電制御剤、アミノシランカップリング剤やフッ素系シランカップリング剤等が好ましい。
3.フェライトキャリア芯材及びフェライトキャリアの製造方法
次に、本発明に係るフェライトキャリア芯材及びフェライトキャリアの製造方法について説明する。
本発明に係るフェライトキャリア芯材の製造方法は、Mnを15質量%以上25質量%以下、Mgを0.5質量%以上5.0質量%以下、Srを0.05質量%以上4.0質量%以下、Feを45質量%以上55質量%以下含むフェライト粒子前駆体を得る工程と、当該フェライト粒子前駆体の表面にZrOを付着させる工程と、表面にZrOが付着したフェライト粒子前駆体を焼成する工程とを備えることを特徴とする。当該製造方法によれば、上述したフェライトキャリア芯材を得ることができる。
(1)フェライト粒子前駆体製造工程
フェライト粒子前駆体製造工程は、例えば、次のような方法で行うことができる。まず、原材料を適量秤量した後、ボ−ルミル又は振動ミル等で0.5時間以上、好ましくは1時間以上20時間以下粉砕混合する。原料は特に制限されないが、上述した元素を上記範囲で含有する組成となるように原料を選択するものとする。
このようにして得られた粉砕物を加圧成型機等を用いてペレット化した後、700℃以上1200℃以下の温度で仮焼成する。加圧成型機を使用せずに、粉砕した後、水を加えてスラリー化し、スプレードライヤーを用いて粒状化した粒子を仮焼成してもよい。仮焼成後さらにボ−ルミル又は振動ミル等で粉砕した後、水及び必要に応じ分散剤、バインダー等を添加してスラリー化し、粘度調整後、スプレードライヤーにて粒状化し、造粒を行う。仮焼後に粉砕する際は、水を加えて湿式ボールミルや湿式振動ミル等で粉砕しても良い。
上記のボールミルや振動ミル等の粉砕機は特に限定されないが、原料を効果的かつ均一に分散させるためには、使用するメディアに1mm以下の粒径を持つ微粒なビーズを使用することが好ましい。また使用するビーズの径、組成、粉砕時間を調整することによって、粉砕度合いをコントロールすることができる。
次いで、得られた造粒物を、400℃以上1000℃以下で加熱し、添加した分散剤やバインダーといった有機成分の除去を行う(脱バイ工程)ことにより、フェライト粒子前駆体を得ることができる。分散剤やバインダーが残ったまま本焼成を行うと、有機成分の分解、酸化によって本焼成装置内の酸素濃度が変動しやすく、磁気特性に大きく影響を与えるため、安定して製造することが困難である。以上により、フェライト粒子前駆体を得ることができる。
(2)ZrO被覆工程
次に、上記工程により得られたフェライト粒子前駆体の表面をZrOで被覆する。このとき、例えば、フェライト粒子前駆体の表面にZrO粒子を付着させる。ZrO粒子の体積平均粒径は、製造するフェライトキャリア芯材の体積平均粒径との相対関係から適宜決定すれば良いが、0.4μm以上2.5μm以下が好ましく、1.0μm以上2.0μm以下であることがより好ましい。
但し、本実施の形態では、上述した脱バイ工程後の粒子に対してZrOを被覆するものとしているが、これに限定されず、脱バイ工程前のスプレードライヤー後の粒状化した粒子に対してZrOを被覆してもよい。
フェライト粒子前駆体の表面にZrOを被覆する方法は、特に限定はない。例えば、混合ミル等を使用した乾式混合により行うことができる。また、ZrO粒子をスラリー化して、流動床によるスプレードライ方式、ロータリドライ方式、万能攪拌機による液浸乾燥法等の種々の方法を採用することができる。
(3)本焼成工程
上記のようにして得られた、表面がZrOで被覆されたフェライト粒子前駆体(フェライト粒子用原料)を、酸素濃度の制御された雰囲気下で、800〜1500℃の温度で、1〜24時間保持し、本焼成を行う。この際、ロータリー式電気炉やバッチ式電気炉または連続式電気炉等を使用し、焼成時の雰囲気も、窒素等の不活性ガスや水素や一酸化炭素等の還元性ガスを打ち込んで、酸素濃度の制御を行っても良い。
このようにして得られた焼成物を、解砕し、分級する。分級方法としては、既存の風力分級、メッシュ濾過法、沈降法など用いて所望の粒径に粒度調整する。
その後、必要に応じて、表面を低温加熱することで酸化皮膜処理を施し、電気抵抗調整を行うことができる。酸化被膜処理は、一般的なロータリー式電気炉、バッチ式電気炉等を用い、例えば300℃以上700℃以下で熱処理を行うことができる。この処理によって形成された酸化被膜の厚さは、0.1nm以上5μm以下であることが好ましい。0.1nm未満であると、酸化被膜層の効果が小さく、5μmを超えると、磁化が低下したり、高抵抗になりすぎたりするため、所望の特性を得にくくなり好ましくない。また、必要に応じて、酸化被膜処理の前に還元を行っても良い。以上のようにして、フェライト粒子の表面にZrが偏在するフェライトキャリア芯材を製造することができる。
本発明のフェライトキャリアは、上記フェライトキャリア芯材の表面に、上記した樹脂を被覆し、樹脂被膜層を形成する。樹脂被覆層を形成する方法としては、公知の方法、例えば刷毛塗り法、流動床によるスプレードライ方式、ロータリドライ方式、万能攪拌機による液浸乾燥法等を採用することができる。フェライトキャリア芯材の表面における樹脂被覆率を向上させるためには、流動床による方法が好ましい。
樹脂をフェライトキャリア芯材に被覆後、焼き付けする場合には、外部加熱方式又は内部加熱方式のいずれでもよく、例えば固定式又は流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉でもよく、もしくはマイクロウェーブによる焼き付けでもよい。UV硬化樹脂を用いる場合は、UV加熱器を用いる。焼き付けの温度は使用する樹脂により異なるが、融点又はガラス転移点以上の温度は必要であり、熱硬化性樹脂又は縮合架橋型樹脂等では、充分硬化が進む温度まで上げる必要がある。
4.本発明に係る電子写真用現像剤
次に、本発明に係る電子写真用現像剤について説明する。本発明に係る電子写真現像剤は、上述したフェライトキャリアとトナーとからなるものである。
本発明の電子写真現像剤を構成するトナー粒子には、粉砕法によって製造される粉砕トナー粒子と、重合法により製造される重合トナー粒子とがある。本発明ではいずれの方法により得られたトナー粒子も使用することができる。
粉砕トナー粒子は、例えば、結着樹脂、荷電制御剤、着色剤をヘンシェルミキサー等の混合機で充分に混合し、次いで、二軸押出機等で溶融混練し、冷却後、粉砕、分級し、外添剤を添加後、ミキサー等で混合することにより得ることができる。
粉砕トナー粒子を構成する結着樹脂としては特に限定されるものではないが、ポリスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、更にはロジン変性マレイン酸樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂等を挙げることができる。これらは単独又は混合して用いられる。
荷電制御剤としては、任意のものを用いることができる。例えば正荷電性トナー用としては、ニグロシン系染料及び4級アンモニウム塩等を挙げることができ、また、負荷電性トナー用としては、含金属モノアゾ染料等を挙げることができる。
着色剤(色材)としては、従来より知られている染料、顔料が使用可能である。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントレッド、クロムイエロー、フタロシアニングリーン等を使用することができる。その他、トナーの流動性、耐凝集性向上のためのシリカ粉体、チタニア等のような外添剤をトナー粒子に応じて加えることができる。
重合トナー粒子は、懸濁重合法、乳化重合法、乳化凝集法、エステル伸長重合法、相転乳化法といった公知の方法で製造されるトナー粒子である。このような重合法トナー粒子は、例えば、界面活性剤を用いて着色剤を水中に分散させた着色分散液と、重合性単量体、界面活性剤及び重合開始剤を水性媒体中で混合攪拌し、重合性単量体を水性媒体中に乳化分散させて、攪拌、混合しながら重合させた後、塩析剤を加えて重合体粒子を塩析させる。塩析によって得られた粒子を、濾過、洗浄、乾燥させることにより、重合トナー粒子を得ることができる。その後、必要により乾燥されたトナー粒子に機能付与のため外添剤を添加することもできる。
更に、この重合トナー粒子を製造するに際しては、重合性単量体、界面活性剤、重合開始剤、着色剤以外に、定着性改良剤、帯電制御剤を配合することができ、これらにより得られた重合トナー粒子の諸特性を制御、改善することができる。また、水性媒体への重合性単量体の分散性を改善するとともに、得られる重合体の分子量を調整するために連鎖移動剤を用いることができる。
上記重合トナー粒子の製造に使用される重合性単量体に特に限定はないが、例えば、スチレン及びその誘導体、エチレン、プロピレン等のエチレン不飽和モノオレフィン類、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル類、酢酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエステル及びメタクリル酸ジエチルアミノエステル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類等を挙げることができる。
上記重合トナー粒子の調製の際に使用される着色剤(色材)としては、従来から知らている染料、顔料が使用可能である。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントレッド、クロムイエロー及びフタロシアニングリーン等を使用することができる。また、これらの着色剤はシランカップリング剤やチタンカップリング剤等を用いてその表面が改質されていてもよい。
上記重合トナー粒子の製造に使用される界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両イオン性界面活性剤及びノニオン系界面活性剤を使用することができる。
ここで、アニオン系界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油等の脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができる。また、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン、脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等を挙げることができる。更に、カチオン系界面活性剤としては、ラウリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等を挙げることができる。また、両イオン性界面活性剤としては、アミノカルボン酸塩、アルキルアミノ酸等を挙げることができる。
上記のような界面活性剤は、重合性単量体に対して、通常は0.01質量%以上10質量%以下の範囲内の量で使用することができる。このような界面活性剤は、単量体の分散安定性に影響を与えるとともに、得られた重合トナー粒子の環境依存性にも影響を及ぼす。上記範囲内の量で使用することは単量体の分散安定性の確保と重合トナー粒子の環境依存性を低減する観点から好ましい。
重合トナー粒子の製造には、通常は重合開始剤を使用する。重合開始剤には、水溶性重合開始剤と油溶性重合開始剤とがあり、本発明ではいずれをも使用することができる。本発明で使用することができる水溶性重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、水溶性パーオキサイド化合物を挙げることができ、また、油溶性重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物、油溶性パーオキサイド化合物を挙げることができる。
また、本発明において連鎖移動剤を使用する場合には、この連鎖移動剤としては、例えば、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、四臭化炭素等を挙げることができる。
更に、本発明で使用する重合トナー粒子が、定着性改善剤を含む場合、この定着性改良剤としては、カルナバワックス等の天然ワックス、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系ワックス等を使用することができる。
また、本発明で使用する重合トナー粒子が、帯電制御剤を含有する場合、使用する帯電制御剤に特に制限はなく、ニグロシン系染料、4級アンモニウム塩、有機金属錯体、含金属モノアゾ染料等を使用することができる。
また、重合トナー粒子の流動性向上等のために使用される外添剤としては、シリカ、酸化チタン、チタン酸バリウム、フッ素樹脂微粒子、アクリル樹脂微粒子等を挙げることができ、これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
更に、水性媒体から重合粒子を分離するために使用される塩析剤としては、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム等の金属塩を挙げることができる。
上記のようにして製造されたトナー粒子の体積平均粒径は、2μm以上15μm以下、好ましくは3μm以上10μm以下の範囲内にあり、重合トナー粒子の方が粉砕トナー粒子よりも、粒子の均一性が高い。トナー粒子が2μmよりも小さくなると、帯電能力が低下しかぶりやトナー飛散を引き起こしやすく、15μmを超えると、画質が劣化する原因となる。
上記のように製造されたフェライトキャリアとトナーとを混合し、電子写真現像剤を得ることができる。フェライトキャリアとトナーの混合比、即ちトナー濃度は、3質量%以上15質量%以下に設定することが好ましい。3質量%未満であると所望の画像濃度が得にくく、15質量%を超えると、トナー飛散やかぶりが発生しやすくなる。
本発明に係る電子写真現像剤は、補給用現像剤として用いることもできる。この際のフェライトキャリアとトナーの混合比、即ちトナー濃度は100質量%以上3000質量%以下に設定することが好ましい。
上記のように調製された本発明に係る電子写真現像剤は、有機光導電体層を有する潜像保持体に形成されている静電潜像を、バイアス電界を付与しながら、トナー及びフェライトキャリアを有する二成分現像剤の磁気ブラシによって反転現像する現像方式を用いたデジタル方式のコピー機、プリンター、FAX、印刷機等に使用することができる。また、磁気ブラシから静電潜像側に現像バイアスを印加する際に、DCバイアスにACバイアスを重畳する方法である交番電界を用いるフルカラー機等にも適用可能である。
以下、実施例等に基づき本発明を具体的に説明するが、これにより本発明が何ら限定されるものではない。
MnO:38.7モル%、MgO:10.0モル%、Fe:50.6モル%及びSrO:0.7モル%になるように原料を秤量し、乾式のメディアミル(振動ミル、1/8インチ径のステンレスビーズ)で5時間粉砕し、得られた粉砕物を用いてローラーコンパクターにて約1mm角のペレットを作製した。MnO原料としては四酸化三マンガンを、MgO原料としては水酸化マグネシウムを、SrO原料としては、炭酸ストロンチウムをそれぞれ用いた。
このペレットを目開き3mmの振動ふるいに掛けて粗粉を除去し、次いで目開き0.5mmの振動ふるいにて微粉を除去した後、ロータリー式電気炉で、1100℃で3時間加熱し、仮焼成を行った。次いで、乾式のメディアミル(振動ミル、1/8インチ径のステンレスビーズ)を用いて、6時間粉砕することにより、体積平均粒径が約5μmの粉砕物を得た。次に、得られた粉砕物に水を加えてスラリーとし、さらに湿式のメディアミル(横型ビーズミル、1mm径のジルコニアビーズ)を用いて6時間粉砕した。このスラリーの粒径(粉砕の一次粒子径)をマイクロトラックにて測定した結果、D50は約2μmであった。このスラリーに分散剤を適量添加し、バインダーとしてPVA(10%溶液)を固形分に対して0.4質量%添加し、次いでスプレードライヤーにより造粒、乾燥し、得られた粒子(造粒物)の粒度調整を行った。得られた造粒物を、ロータリー式電気炉を用いて大気雰囲気で、800℃で2時間加熱することにより、分散剤やバインダーといった有機成分の除去を行った(脱バインダー処理)。
次に、上記脱バインダー処理済みの造粒物100質量%に対して体積平均粒径が1.5μmのZrO粒子を1.0質量%添加し、混合ミルで30分間混合撹拌することにより、造粒物の表面にZrO粒子を付着させた。ZrO粒子が表面に付着した造粒物を80メッシュの振動ふるいで凝集体をほぐし、フェライトキャリア芯材用原料を得た。
その後、得られたフェライトキャリア芯材用原料について、トンネル式電気炉にて、焼成温度1180℃、酸素濃度0.7容量%にて、5時間保持することにより本焼成を行った。この時、昇温速度を150℃/時とし、本焼成後の冷却速度を110℃/時とした。その後、解砕し、さらに分級して粒度調整を行い、磁力選鉱により低磁力品を分別することにより、フェライトキャリア芯材を得た。得られたフェライトキャリア芯材は、フェライト粒子の表面がZrOで被覆されており、表面にZrが偏在している。ZrO被覆量は、脱バインダー処理済みの造粒物に対するZrO粒子の添加量に等しく、フェライト粒子100質量%に対して1.0質量%である。
上記脱バインダー処理済みの造粒物に対するZrO粒子の添加量を0.2質量%とした以外は、実施例1と同様にしてフェライトキャリア芯材を得た。
上記脱バインダー処理済みの造粒物に対するZrO粒子の添加量を2.0質量%とした以外は、実施例1と同様にしてフェライトキャリア芯材を得た。
上記脱バインダー処理済みの造粒物に対するZrO粒子の添加量を5.0質量%とした以外は、実施例1と同様にしてフェライトキャリア芯材を得た。
[比較例1]
上記脱バインダー処理済みの造粒物に対するZrO粒子の添加、及び、混合ミルによる撹拌を行うことなく、当該造粒物を80メッシュの振動ふるいに掛けた以外は、実施例1と全く同様にしてフェライト芯材用原料を得た。その後、得られたフェライト芯材用原料を用いた以外は、実施例1と同様にしてフェライトキャリア芯材を得た。
[比較例2]
上記脱バインダー処理済みの造粒物に対するZrO粒子の添加量を0.1質量%とした以外は、実施例1と同様にしてフェライトキャリア芯材を得た。
[比較例3]
SrO原料を全く用いずに上記ペレットを作製した点と、上記脱バインダー処理済みの造粒物に対するZrO粒子の添加量を6.0質量%とした点と、本焼成の温度を1250℃とした点以外は、実施例1と同様にしてフェライトキャリア芯材を得た。
[比較例4]
本比較例では、まず、実施例1と全く同様にして体積平均粒径が約5μmの粉砕物を得た。次に、得られた粉砕物に対して水に加えて体積平均粒径が1.5μmのZrO粒子を添加してスラリーとした以外は、実施例1と同様にしてバインダー処理済みの造粒物を得た。ZrO粒子の添加量は、粉砕物100質量%に対して1.0質量%であった。次に、上記脱バインダー処理済みの造粒物に対するZrO粒子の添加、及び、混合ミルによる撹拌を行うことなく、当該造粒物を80メッシュの振動ふるいに掛けた以外は、実施例1と全く同様にしてフェライト芯材用原料を得た。その後、得られたフェライト芯材用原料を用いた以外は、実施例1と同様にしてフェライトキャリア芯材を得た。得られたフェライトキャリア芯材は、フェライト粒子の表面だけでなく内部にもZrが存在し、当該フェライトキャリア芯材の粒子全体に亘ってZrが分散して存在している。
本実施例では、次のようにして実施例1で得られたフェライトキャリア芯材の表面を樹脂で被覆することにより、フェライトキャリアを得た。まず、T単位とD単位を主成分とする縮合架橋型シリコーン樹脂(重量平均分子量:約8000)を溶媒としてのトルエンに混合することにより、シリコーン樹脂溶液(樹脂溶液濃度20%)を得た。次に、得られたシリコーン樹脂溶液2.5質量部(樹脂固形分0.5質量部)に、アミン系化合物としてアミノシランカップリング剤(3−アミノプロピルトリメトキシシラン)を、樹脂固形分に対して10質量%となるように添加すると共に、実施例1で得られたフェライトキャリア芯材100質量部を添加した。次に、アミノシランカップリング剤及びフェライトキャリア芯材を含むシリコーン樹脂溶液を万能混合撹拌機にて混合撹拌し、トルエンを揮発させることにより、フェライトキャリア芯材の表面に樹脂を付着させた。
トルエンが十分に揮発したことを確認した後にさらに5分間撹拌を続け、トルエンをほぼ完全に除去した。次に、得られた表面に樹脂が付着したフェライトキャリア芯材を上記攪拌機から取り出して容器に入れ、熱風加熱式のオーブンにより220℃で2時間加熱処理を行うことにより樹脂を硬化させた。
樹脂が硬化されたフェライトキャリア芯材を室温まで冷却した後、目開き200Mの振動ふるいにて粒子の凝集を解し、磁力選鉱機を用いて、非磁性物を取り除いた。その後、再度振動ふるいにて粗大粒子を取り除くことにより、フェライトキャリア芯材の表面が樹脂で被覆されたフェライトキャリア(樹脂被覆キャリア)を得た。
[比較例5]
本比較例では、比較例1で得られたフェライトキャリア芯材を用いた以外は、実施例5と全く同様にして、フェライトキャリア芯材の表面が樹脂で被覆されたフェライトキャリア(樹脂被覆キャリア)を得た。
実施例1〜4及び比較例1で得られたフェライトキャリア芯材について、化学分析を行うと共に、Zrの偏在度合い、溶出Cl濃度、溶出Sr濃度、飽和磁化、帯電量及び電気抵抗を測定し、帯電量及び電気抵抗の環境変動特性を評価した。結果を表1に示す。また、実施例5及び比較例2で得られたフェライトキャリアについて、帯電量及び電気抵抗を測定した。結果を表2に示す。帯電量の測定方法は下記のとおりである。化学分析、Zrの偏在度合い、溶出Cl濃度、溶出Sr濃度、飽和磁化及び電気抵抗の測定方法は上述のとおりである。なお、電気抵抗の測定は、帯電量の測定と同様に、フェライトキャリア芯材又はフェライトキャリアを後述の各環境下に12時間以上暴露した後で行った。
[帯電量]
実施例1〜4及び比較例1で得られたフェライトキャリア芯材、又は実施例5及び比較例2で得られたフェライトキャリア(樹脂被覆キャリア)を試料とした。試料46.75gと、フルカラープリンターに使用されている市販の負極性トナー(シアントナー、富士ゼロックス株式会社製DocuPrintC3530用)3.25gを秤量し、秤量した試料及びトナーを、後述の各環境下に12時間以上暴露した。その後、試料及びトナーを50ccのガラス瓶に入れ、100rpmの回転数にて、30分間撹拌することにより、試料及びトナーの混合物からなる現像剤を得た。現像剤のトナー濃度は6.5重量%であった。
次に、帯電量測定装置として、直径31mm、長さ76mmの円筒形のアルミ素管(以下、スリーブ)の内径側にN極とS極を交互に合計8極の磁石(磁束密度0.1T)を配置したマグネットロールが配置される共に、スリーブの外径側に該スリーブの表面から5.0mmの間隔を存して円筒状の電極を配置されたものを準備した。次に、スリーブの外径側の表面に現像剤を0.5gを均一に付着させた後、スリーブを固定した状態でマグネットロールを100rpmで回転させながら、電極とスリーブとの間に直流電圧2000Vを60秒間印可し、トナーを電極に移行させた。このとき、電極に接続されたエレクトロメーター(KEITHLEY社製 絶縁抵抗計model6517A)によって、移行したトナーの電荷量を測定した。60秒経過後、電圧の印加を解除し、マグネットロールの回転を止めた後、電極を取り外して電極に移行したトナーの重量を測定した。その後、測定された電荷量と移行したトナー重量から、試料であるフェライトキャリア芯材又はフェライトキャリアの帯電量を計算した。
ここで各環境下の条件は次の通りである。
常温常湿(NN環境)=温度20〜25℃、相対湿度50〜60%
高温高湿(HH環境)=温度30〜35℃、相対湿度80〜85%
低温低湿(LL環境)=温度10〜15℃、相対湿度10〜15%
[帯電量絶対値(NN環境)]
NN環境下で測定された帯電量の絶対値(以下、「帯電量絶対値(NN環境)」という)について判定した。判定の基準は、◎:優、○:良、△:可、×:不可の4段階で行った。具体的には、以下のとおりである。
(帯電量絶対値(NN環境)の評価基準)
◎:60μC/g<帯電量値
○:50μC/g<帯電量値≦60μC/g
△:40μC/g<帯電量値≦50μC/g
×:帯電量値≦40μC/g
[帯電量の環境変動率]
また、次式(2)によって算出される帯電量の環境変動率について判定した。判定の基準は、◎:優、○:良、△:可、×:不可の4段階で行った。具体的には、以下のとおりである。
帯電量の環境変動率=LL環境下での帯電量値/
HH環境下での帯電量値×100 ・・・(2)
(帯電量の環境変動率の評価基準)
◎:帯電量の環境変動率≦120
○:120<帯電量の環境変動率≦150
△:150<帯電量の環境変動率≦200
×:200<帯電量の環境変動率
[抵抗絶対値(NN環境)]
さらに、NN環境下で測定された電気抵抗の絶対値(以下、「抵抗絶対値(NN環境)」という)について判定した。判定の基準は、◎:優、○:良、△:可、×:不可の4段階で行った。具体的には、以下のとおりである。
(抵抗絶対値(NN環境)の評価基準)
[抵抗絶対値(NN環境)]
◎:1.0×10Ω≦抵抗値<7.5×10Ω
○:7.5×10≦抵抗値<1.0×10Ω又は7.5×10Ω≦抵抗値<1.0×10Ω
△:5.0×10Ω≦抵抗値<7.5×10Ω又は1.0×10Ω≦抵抗値<2.5×10Ω
×:抵抗値<5.0×10Ω又は抵抗値≧2.5×10Ω
[抵抗の環境変動率]
また、次式(3)によって算出される抵抗の環境変動率について判定した。判定の基準は、◎:優、○:良、△:可、×:不可の4段階で行った。具体的には、以下のとおりである。
抵抗の環境変動率=Log10(LL環境下での抵抗値)/
Log10(HH環境下での抵抗値)×100 ・・・(3)
(抵抗の環境変動率の評価基準)
◎:抵抗の環境変動率≦120
○:120<抵抗の環境変動率≦130
△:130<抵抗の環境変動率≦140
×:140<抵抗の環境変動率
Figure 2017175646
Figure 2017175646
表1に示したように、実施例1〜4で得られたフェライトキャリア芯材は、Fe、Mn、Mg及びSrを特定の範囲で含むフェライト粒子の表面にZrが偏在するものであり、Zrの偏在度合いが2.0〜70.0の範囲内であった。そして、実施例1〜4で得られたフェライトキャリア芯材は、帯電量絶対値(NN環境)、帯電量の環境変動率、抵抗絶対値(NN環境)及び抵抗の環境変動率の評価がいずれも「◎」又は「○」であった。この結果は、実施例1〜4で得られたフェライトキャリア芯材は、所望の抵抗特性及び帯電特性を備えると共に、帯電量及び抵抗の環境変動が小さく帯電安定性及び抵抗安定性に優れることを示している。
一方、比較例1のフェライトキャリア芯材は、実質的にZrが含まれていないため、Zr偏在度合いを算出できなかった。比較例2のフェライトキャリア芯材は、フェライト粒子の表面に存在するZrが非常に少なく、実質的にZrがフェライト粒子の表面に偏在するものではなかった。比較例3のフェライトキャリア芯材は、Zrがフェライト粒子の表面に偏在するものの、Srを含有しないフェライト粒子であった。比較例4で得られたフェライトキャリア芯材は、Zrがフェライト粒子の表面だけでなく内部にも存在していることから、Zrがフェライト粒子の全体に分散して存在するものであって、Zrがフェライト粒子の表面に偏在するものではなかった。そして、比較例1〜4で得られたフェライトキャリア芯材は、帯電量絶対値(NN環境)、帯電量の環境変動率、抵抗絶対値(NN環境)及び抵抗の環境変動率の評価の少なくとも一つが「△」又は「×」であった。この結果は、比較例1〜4で得られたフェライトキャリア芯材は、帯電量及び抵抗の環境変動が大きく帯電安定性及び抵抗安定性が低いか、或いは、帯電安定性及び抵抗安定性が優れていたとしても所望の抵抗特性及び帯電特性を得ることができないことを示している。
従って、実施例1〜4で得られたフェライトキャリア芯材は、上記組成を有するフェライト粒子の表面にZrが偏在し、ZrO被覆量がフェライト粒子100重量部に対して0.2質量%以上5.0質量%以下であることにより、所望の抵抗特性及び帯電特性を備えると共に、帯電安定性及び抵抗安定性に優れることが明らかである。また、フェライトキャリア芯材において、実質的にZrが含まれていない場合(比較例1)、実質的にZrがフェライト粒子の表面に偏在するものでない場合(比較例2)、フェライト粒子全体にZrが分散して存在している場合(比較例4)には、上記性能を得られないことが明らかである。また、ZrO被覆量が実施例1と同一であっても、フェライト粒子自体が実質的にSrを含有しない場合(比較例3)には、上記性能を得られないことが明らかである。
また、表2に示したように、実施例5で得られたフェライトキャリアは、帯電量の環境変動率及び抵抗の環境変動率の評価がいずれも「◎」であった。この結果は、実施例5で得られたフェライトキャリアは、帯電量及び抵抗の環境変動が小さく、帯電安定性及び抵抗安定性に優れることを示している。これは、実施例5のフェライトキャリアは、実施例1のフェライトキャリア芯材を樹脂被覆したものであるので、該フェライトキャリア芯材と同様に優れた性能を備えるものと考えられる。さらに、実施例1で得られたフェライトキャリア芯材に代えて、実施例2〜4で得られたフェライトキャリア芯材を用い、実施例5と同様に樹脂被覆を行ってフェライトキャリアを得た場合であっても、実施例5のフェライトキャリアと同様に優れた性能を得ることができると考えられる。
一方、比較例5で得られたフェライトキャリアは、帯電量の環境変動率及び抵抗の環境変動率の評価がいずれも「×」であった。この結果は、比較例5で得られたフェライトキャリアは、帯電量及び抵抗の環境変動が大きく、帯電安定性及び抵抗安定性が低いこと示している。これは、比較例5のフェライトキャリアは、比較例1のフェライトキャリア芯材を樹脂被覆したものであるので、該フェライトキャリア芯材と同様に優れた性能を得ることができないと考えられる。さらに、比較例1で得られたフェライトキャリア芯材に代えて、比較例2〜4で得られたフェライトキャリア芯材を用い、比較例5と同様に樹脂被覆を行ってフェライトキャリアを得た場合であっても、比較例5のフェライトキャリアと同様に優れた性能を得ることはできないと考えられる。
さらに、実施例1〜4で得られたフェライトキャリア芯材を樹脂被覆して実施例5に代表されるフェライトキャリアを作製し、当該フェライトキャリアをトナーと混合することにより現像剤を得ることができる。これらの現像剤は、環境が変動しても帯電特性や抵抗特性が安定しており、トナー飛散やカブリといった画像欠陥のない良好な画像品質が得られることが容易に想像される。また、補給用現像剤としても好適に使用できることが推察できる。
逆に、比較例1〜4に記載のフェライトキャリア芯材を用いた比較例5に代表される樹脂被覆フェライトキャリアを実際に現像剤として使用した場合には、環境変動によって、帯電量や抵抗が大きく変動するため、トナー飛散やカブリといった画像欠陥を引き起こすことが容易に想像される。
本発明に係る電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材は、所望の抵抗特性及び帯電特性を備えると共に、帯電量及び抵抗の環境変動が小さく、帯電安定性及び抵抗安定性に優れている。従って、本発明に係る電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材ならびに該フェライトキャリア芯材を用いた電子写真現像剤用フェライトキャリアは、高画質の要求されるフルカラー機並びに画像維持の信頼性及び耐久性の要求される高速機等の分野に広く使用可能である。

Claims (14)

  1. Mnを15質量%以上25質量%以下、Mgを0.5質量%以上5.0質量%以下、Srを0.05質量%以上4.0質量%以下、Feを45質量%以上55質量%以下含有するフェライト粒子の表面にZrが偏在することを特徴とする電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材。
  2. Zrを0.1質量%以上4.0質量%以下含有する請求項1に記載の電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材。
  3. 以下の式(1)でZrの偏在度合いを表したとき、当該Zrの偏在度合いが2.0以上70.0以下である請求項1に記載の電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材。
    Zrの偏在度合い=Zr(s)/Zr(c) ・・・(1)
    但し、Zr(s):エネルギー分散型X線分析によって測定された粒子断面の表面部におけるZr量(質量%)
    Zr(c):エネルギー分散型X線分析によって測定された粒子断面の中心部におけるZr量(質量%)
  4. 当該フェライト粒子は表面がZrOで被覆され、ZrO被覆量は当該フェライト粒子100質量部に対して0.2質量%以上5.0質量%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材。
  5. 当該フェライトキャリア芯材の溶出試験を行ったときのCl濃度が0.1ppm以上50ppm以下である請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材。
  6. 当該フェライトキャリア芯材の溶出試験を行ったときのSr濃度が50ppm以上1300ppm以下である請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材。
  7. 当該フェライトキャリア芯材の体積平均粒径が15μm以上60μm以下である請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材。
  8. 当該フェライトキャリア芯材の飽和磁化が30Am/kg以上80Am/kg以下である請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材。
  9. 前記フェライトキャリア芯材は、Mnを15質量%以上25質量%以下、Mgを0.5質量%以上5.0質量%以下、Srを0.05質量%以上4.0質量%以下、Feを45質量%以上55質量%以下含むフェライト粒子前駆体の表面をZrOで被覆し、表面がZrOで被覆されたフェライト粒子前駆体を焼成することにより得られたものであるである請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材。
  10. 請求項1〜請求項0のいずれか一項に記載の電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材と、当該フェライトキャリア芯材の表面に設けられた樹脂被覆層とを備えることを特徴とする電子写真現像剤用フェライトキャリア。
  11. 請求項10に記載の電子写真現像剤用フェライトキャリアとトナーとからなることを特徴とする電子写真現像剤。
  12. 補給用現像剤として用いられる請求項11に記載の電子写真現像剤。
  13. Mnを15質量%以上25質量%以下、Mgを0.5質量%以上5.0質量%以下、Srを0.05質量%以上4.0質量%以下、Feを45質量%以上55質量%以下含むフェライト粒子前駆体の表面をZrOで被覆する工程と、表面がZrOで被覆されたフェライト粒子前駆体を焼成する工程と、を備えることを特徴とする電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材の製造方法。
  14. 前記フェライト粒子前駆体100質量%に対して、0.2質量%以上5.0質量%以下のZrOを前記フェライト粒子前駆体の表面に被覆する請求項13に記載の電子写真現像剤用フェライトキャリア芯材の製造方法。
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JP2020154236A (ja) * 2019-03-22 2020-09-24 パウダーテック株式会社 フェライト粒子、電子写真現像剤用キャリア芯材、電子写真現像剤用キャリア及び電子写真現像剤

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