JPWO2017170854A1 - 有効成分の化学的安定性に優れたフィルムコーティング錠 - Google Patents

有効成分の化学的安定性に優れたフィルムコーティング錠 Download PDF

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Abstract

本発明は、(a)オベチコール酸またはその薬学的に許容される塩を含有する素錠および(b)該素錠の表面に、フィルム基剤を含み、可塑剤を実質的に含まないか、もしくは特定可塑剤を少なくとも1種含む被覆層を有する、有効成分の化学的安定性に優れたフィルムコーティング錠に関する。

Description

本発明はFXRに対するアゴニストであるオベチコール酸(Obeticholic acid)またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含み、易生成不純物であるオベチコール酸二量体の増加を抑制する、有効成分の化学的安定性に優れたフィルムコーティング錠に関する。
下記の化学式で示されるオベチコール酸(Obeticholic acid;INT-747またはDSP-1747としても知られている)はファルネソイドX レセプター(FXR)を活性化するリガンド、すなわちFXRアゴニストとしての薬理作用を有する化合物であり、NASHやPBC等の治療への用途が期待されている(特許文献1、2)。
Figure 2017170854
特許文献1には、オベチコール酸の化合物について、FXRが媒介する疾患や症状の予防と治療には経口投与が好ましいとの記載、経口投与に適した製剤として錠剤、カプセル剤、カシェ剤、トローチ剤の例示記載はあるが、オベチコール酸を含むフィルムコーティング錠に関する記載はない。
特許文献2には、オベチコール酸を1〜25mg含有する錠剤についての開示があり、1個の錠剤あたり1〜25mgのオベチコール酸、157〜185mgの微結晶セルロース、12mgのデンプングリコール酸ナトリウム、2mgのステアリン酸マグネシウム、4mgのコロイド状二酸化ケイ素、8mgのコーティング材料(Opadry II(登録商標))を含有する錠剤、すなわち特定のフィルムコーティング錠の開示がある。また、オベチコール酸の原薬の中に、オベチコール酸二量体(特許文献2において、「不純物6」、「3α(3α,7α−ジヒドロキシ−6α−エチル−5β−コラン-24−オイルオキシ)−7α−ヒドロキシ−6α−エチル−5β−3−コラン−24−酸」、および「6ECDCA二量体」と称されている)が、製造プロセスで生じる複数ある不純物の一つとして含まれることが開示されている。
近年、病院や調剤薬局等の医療現場では、患者が複数の薬を服用する場合には、患者が薬を呑み忘れたり、呑み間違えたりするのを防ぐために、服用する時間帯ごとに複数の薬を一つのパッケージに納めた、いわゆる、一包化による服薬アドヒアランス改善の取り組みが盛んとなってきており、特に日本国内の医療現場においては重要視されている。このため、薬局での処方において薬剤がパッケージやPTPシートから取り出されてから患者が同薬剤を服用するまでのある一定期間、当該薬剤が、保管条件として最適ではない加湿条件下に曝露されることがある。このような背景と医療ニーズにより、医療現場では、たとえ過度の加湿条件下(例えば、40℃、75%RH(相対湿度)、開放条件のような苛酷な試験条件下)で保存しても分解等により薬剤が劣化・変質しない、有効成分の化学的安定性がより優れた経口製剤が強く望まれている。
特許第4021327号 国際公開第2013/192097号(特表2015‐52162)
本発明の目的は、オベチコール酸またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含み、当該有効成分の化学的安定性に優れたフィルムコーティング錠を提供することにある。より具体的には、オベチコール酸の易生成不純物であるオベチコール酸二量体の容易な生成及び顕著な増加を抑制する、オベチコール酸を含むフィルムコーティング錠を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討したところ、以下の手段により当該課題を解決することを見出すに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]オベチコール酸またはその薬学的に許容される塩を含有するフィルムコーティング錠であって、
(a)オベチコール酸またはその薬学的に許容される塩を含有する素錠および
(b)該素錠の表面に、フィルム基剤を含み、可塑剤を実質的に含まないか、もしくは、
クエン酸トリエチル、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール、トリアセチン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、濃グリセリン、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビトール、グリセリン、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリブチル、セバシン酸ジエチル、アセチル化モノグリセライド、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、モノステアリン、フタル酸ジオクチル、ブチルフタリルブチルグリコレートおよび中鎖脂肪酸トリグリセリドからなる群から選ばれる特定可塑剤を少なくとも1種含む被覆層を有するフィルムコーティング錠。
[2]可塑剤を実質的に含まない被覆層を有する、[1]に記載のフィルムコーティング錠。
[3]クエン酸トリエチル、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール、トリアセチン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、濃グリセリン、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビトール、グリセリン、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリブチル、セバシン酸ジエチル、アセチル化モノグリセライド、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、モノステアリン、フタル酸ジオクチル、ブチルフタリルブチルグリコレートおよび中鎖脂肪酸トリグリセリドからなる群から選ばれる特定可塑剤を少なくとも1種含む被覆層を有する、[1]に記載のフィルムコーティング錠。
[4]特定可塑剤が、クエン酸トリエチル、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール、トリアセチン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、濃グリセリン及びソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選ばれるものである、[1]又は[3]に記載のフィルムコーティング錠。
[5]ソルビタン脂肪酸エステルがセスキオレイン酸ソルビタンまたはモノラウリン酸ソルビタンである、[1]、[3]及び[4]のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
[6]ソルビタン脂肪酸エステルがセスキオレイン酸ソルビタンである、[1]及び[3]〜[5]のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
[7]特定可塑剤が、クエン酸トリエチル、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール、トリアセチンおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選ばれるものである、[1]及び[3]〜[6]のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
[8]グリセリン脂肪酸エステルがモノステアリン酸グリセリンである、[1]及び[3]〜[7]のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
[9]特定可塑剤が、クエン酸トリエチル、プロピレングリコール、トリアセチンおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選ばれるものである、[1]及び[3]〜[8]のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
[10]ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルがモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンである、[1]及び[3]〜[9]のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
[11]特定可塑剤が、クエン酸トリエチル、プロピレングリコールおよびトリアセチンからなる群から選ばれるものである、[1]及び[3]〜[10]のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
[12]特定可塑剤がクエン酸トリエチルである、[1]及び[3]〜[11]のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
[13]特定可塑剤の含有量が被覆層中0.1〜30重量%である、[1]及び[3]〜[12]のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
[14]可塑剤を実質的に含まない被覆層が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドンおよびメタアクリル酸コポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のフィルム基剤を含む、[1]又は[2]に記載のフィルムコーティング錠。
[15]可塑剤を実質的に含まない被覆層が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルアルコール系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種のフィルム基剤を含む、[1]、[2]及び[14]のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
[16]ポリビニルアルコール系樹脂がポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体及びポリビニルアルコール共重合体のいずれか又はその混合物である、[14]または[15]に記載のフィルムコーティング錠。
[17]ポリビニルアルコール系樹脂がポリビニルアルコールである、[14]〜[16]のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
[18]可塑剤を実質的に含まない被覆層が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであるフィルム基剤を含む[1]、[2]、[14]及び[15]のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
[19]フィルム基剤の含有量が、被覆層中30〜100重量%である、[1]、[2]及び[14]〜[18]のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
[20]前記特定可塑剤を少なくとも1種含む被覆層が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドンおよびメタアクリル酸コポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のフィルム基剤を含む、[1]及び[3]〜[13]のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
[21]前記特定可塑剤を少なくとも1種含む被覆層が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルアルコール系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種のフィルム基剤を含む、[1]、[3]〜[13]及び[20]のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
[22]ポリビニルアルコール系樹脂がポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体及びポリビニルアルコール共重合体のいずれか又はその混合物である、[20]又は[21]に記載のフィルムコーティング錠。
[23]ポリビニルアルコール系樹脂がポリビニルアルコールである、[20]〜[22]のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
[24]前記特定可塑剤を少なくとも1種含む被覆層が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであるフィルム基剤を含む、[1]、[3]〜[13]、[20]及び[21]のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
[25]フィルム基剤の含有量が、被覆層中30〜98重量%である、[20]〜[24]のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
医療現場で強く望まれている服薬アドヒアランス改善のための可能なニーズである一包化を適用するには、具体的には、加湿条件下(例えば、40℃、75%RH(相対湿度)、開放条件、のような苛酷な試験条件下)で保存しても有効成分の化学的安定性に優れた、経口製剤の設計が要求される。
本発明者が検討した結果、特許文献2に開示されているオベチコール酸を含有する錠剤は、40℃、75%RH、開放条件下での保存中に、原薬由来の不純物の一つとして開示のあるオベチコール酸二量体が、特に容易に生成し、かつ顕著に増加することがわかった。なお、当該オベチコール酸二量体は、同様な条件下、オベチコール酸を原薬のみで保存した場合でさえも、相対的に極微少ながら生成、増加が認められる、非常に易生成の不純物であるとわかった。前記一包化のニーズに確実に対応するためには、製剤中で、この易生成不純物であるオベチコール酸二量体の顕著な増加を抑制する必要がある。すなわち、特許文献2に開示の製剤よりも、オベチコール酸二量体の増加を抑制することが可能な、オベチコール酸の化学的安定性により優れた経口製剤を見出すことが、本願発明の一つの主要な課題となった。
また、ICHのガイドライン、Q3B「新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純物に関するガイドライン」では、新製剤中の分解生成物に関して、その分解物の安全性の確認が必要とされる閾値は、その新有効成分の最大1日投与量にも依存するが、例えば新有効成分の最大1日投与量が10mg〜100mgの場合は、「0.5%あるいは1日総摂取量200μgのいずれか低い方」とされている。本ガイドラインに適合するために、分解生成物の生成をでき得る限り低減するのが望ましいことはいうまでもないが、医療現場に供される製剤の実用的な有効使用期限を考慮して、例えば一包化を適用するために、具体的には、加湿条件(例えば、40℃、75%RH(相対湿度)、開放条件(open)のような苛酷な試験条件下、例えば、1か月(1M)または3か月(3M))で保存しても、その分解生成物が0.5%を超えないことが現実的かつ実用的な目安として好ましい。すなわち、本願発明では前記オベチコール酸製剤中での主分解生成物であるオベチコール酸二量体の生成を、そのような条件下で0.5%未満に抑制することが、一つの具体的課題であった。
本発明者らは課題を解決するために鋭意検討した結果、特許文献2に開示の製剤において、オベチコール酸二量体の増加を促進する原因が、通常は有効成分を安定化するべきフィルムコーティング剤の或る一般汎用可塑剤(ポリエチレングリコール)にあることを見出した。さらにフィルムコーティング成分についても検討を重ね、特許文献2に開示の製剤とは異なるフィルムコーティング成分の構成、特に可塑剤を実質的に用いない又は特定可塑剤の使用等を特徴とする本願発明の製剤にすることにより、オベチコール酸二量体の生成、増加を抑えることができることを見出した。本発明により、オベチコール酸を有効成分として含み、当該有効成分の化学的安定性により優れた経口製剤、特にフィルムコーティング錠を提供することが可能となった。本願発明の好ましい態様では、加湿条件下(例えば、40℃、75%RH、open、1M及び3M)で保存しても、オベチコール酸製剤中の易生成不純物(主分解生成物)オベチコール酸二量体の生成を0.5%未満に抑制することができる。
本発明のフィルムコーティング錠は、通常の可塑剤を含有するフィルムコーティング錠に比べ、安定性が顕著に優れたものである。従って、本発明のフィルムコーティング錠は、個別に包装(例えば、PTP包装など)されていない状態で保存すること、いわゆるバラ包装も可能である。それゆえ、本発明のフィルムコーティング錠は、簡易な形態で包装(例えば、グラシン紙、薬包紙などによる包装)された形で、または服用時毎にひとまとめにする一包化(ワンドースパッケージ)の形でも患者に処方できる。
以下、本発明につき、さらに詳しく説明する。
本発明の第1の態様は、オベチコール酸またはその薬学的に許容される塩を含有する素錠の表面に、フィルム基剤を含み、可塑剤を実質的に含まない被覆層(以下、フィルムコーティング部、フィルムコーティング膜、フィルムコーティング層、又は単にコーティング層と記載することがある)を有するフィルムコーティング錠である。前記フィルムコーティング錠は、長期保存においてもアルミ包装等の保護包装を施さなくても有効成分であるオベチコール酸の分解が抑制され、及び/又は、易生成不純物であるオベチコール酸二量体の生成が抑制される効果を奏するものである。
フィルムコーティングされたフィルムコーティング錠は、通常フィルムコーティング部(被覆層)に一般に汎用される可塑剤を含んでおり、そして当該汎用可塑剤は、通常は有効成分とは反応しにくいと考えられ、またフィルムコーティング部自体が、むしろ一般には有効成分を安定化するものと考えられている。これは、フィルムコーティング錠においては、素錠部に含まれる有効成分がフィルムコーティング部に含まれる汎用可塑剤と、両者間の界面という非常に限られた部分で2次元的に接触しているのみで、素錠部内で両者が3次元的に均一に混合接触しているような状態でないこと、及びフィルムコーティング層が外部に対する保護膜として機能し、素錠部への湿気や光の侵入を遮断しうるためである。しかしながら、本発明者の研究によって、前記のようにオベチコール酸二量体の増加を促進する原因が、意外なことに、通常は有効成分の安定化に寄与するべきフィルムコーティング層中の或る汎用可塑剤、具体的にはポリエチレングリコールであることがわかった。この製剤中のフィルムコーティング部に含まれる汎用可塑剤(ポリエチレングリコール)と、素錠部に含まれるオベチコール酸とが前記のようにその両者間の界面という非常に限られた部分で接触することでさえも、意外なことには、オベチコール酸二量体の生成が特に顕著に促進されることがわかった。具体的には、例えば以下の例(比較例1及び2)において示すように、加湿条件下(例えば、40℃、75%RH、open、1M及び3M)で本オベチコール酸を素錠部に含有し、かつ上記汎用可塑剤(ポリエチレングリコール)をフィルムコーティング部に含有した製剤はオベチコール酸二量体の生成が基準値(例えば、0.5%)を大きく超えて(例えば、1%以上)促進されることが判明した。
本発見に基づき本発明者は、通常は被覆層(フィルムコーティング部)に含まれるべき可塑剤を実質的に含まないコーティング層で被覆すると、長期保存においてもオベチコール酸二量体の生成が抑制されること(第1の態様)を見出した。具体的には、例えば以下の実施例において示すように、オベチコール酸を含む素錠を、可塑剤を含まないコーティング層で被覆したフィルムコーティング錠は、苛酷な加湿条件下(例えば、40℃、75%RH、open、1M及び3M)でさえも、オベチコール酸二量体の生成が基準値(例えば、0.5%)未満に抑制される。
また本発明者らは、更なる研究によって、オベチコール酸二量体の生成を抑制する好ましい特定の可塑剤があることも見出した。
本発明の第2の態様は、オベチコール酸またはその薬学的に許容される塩を含有する素錠の表面に、フィルム基剤を含み、特定可塑剤を少なくとも1種含む被覆層を有するフィルムコーティング錠である。前記フィルムコーティング錠は、被覆層に本発明者らが見出した好ましい特定の可塑剤(本明細書において記載の「特定可塑剤」)を配合することにより、コーティング工程が円滑に進行し、フィルムコーティング膜に可塑性が付与されることでフィルムコーティング錠のフィルムの膜剥がれを抑制でき、かつ、長期保存においてもアルミ包装等の保護包装を施さなくても有効成分であるオベチコール酸の分解が抑制され、及び/又は、易生成不純物であるオベチコール酸二量体の生成が顕著に抑制される効果を奏する。当該有効成分の化学的安定性についてより具体的には、例えば以下の実施例において示すように、オベチコール酸を含む素錠を、特定可塑剤を含むコーティング層で被覆したフィルムコーティング錠は、苛酷な加湿条件下(例えば、40℃、75%RH、open、1M及び3M)でさえも、オベチコール酸二量体の生成が基準値(例えば、0.5%)未満に抑制される特徴を有する。
また、上記コーティング工程の円滑化、フィルム膜剥がれの抑制等、製造においても支障を来たすこともない第2の態様は、前述の第1の態様よりもさらに好ましい態様である。
有効成分
(a)オベチコール酸またはその薬学的に許容される塩
本明細書中で使用される場合、「オベチコール酸」とは、以下の化学構造を有する化合物をいう。
Figure 2017170854
オベチコール酸の他の化学名、名称または略称としては、6α−エチル−3α,7α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸、3α,7α−ジヒドロキシ−6α−エチル−5β−コラン−24−酸、6α−エチル−ケノデオキシコール酸、6−エチル−CDCA、6ECDCA、コラン−24−酸,6−エチル−3,7−ジヒドロキシ−(3α,5β,6α,7α)−、OCA、DSP−1747、および INT−747が挙げられる。オベチコール酸についてのCAS登録番号は、459789-99-2である。この用語は、オベチコール酸の全ての形態(例えば、非晶質、結晶性、様々な結晶多形など)を包含する。
本発明において「オベチコール酸の薬学的に許容される塩」としては、オベチコール酸は酸性化合物として扱われ、無機塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、バリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等)や有機塩(例えば、ピリジニウム塩、ピコリニウム塩、トリエチルアンモニウム塩等)が挙げられる。
また、本発明においてはオベチコール酸またはその薬学的に許容される塩は、それらの溶媒和物を包含する。当該溶媒和物を形成する溶媒としては、水のほか、薬学的に許容される有機溶媒、例えばエタノール、アセトン、酢酸エチル、ヘキサンなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明においてオベチコール酸またはその薬学的に許容される塩としては、オベチコール酸(フリー体)が特に好ましい。また、本発明においてオベチコール酸の形態としては、非晶質(アモルファス、非結晶形態とも称される)のものが特に好ましい。
本発明におけるオベチコール酸またはその薬学的に許容される塩は、必要に応じ、粒子を製造する前に所望の粒子径に粉砕してもよい。粉砕は微粉砕機を用いる粉砕等の慣用法で行われるが、非常に細かい粒子であっても良い。例えば体積比90%以上の粒子(D90)が100μm以下であり、体積比による平均粒子径(50%粒子径,D50)としては例えば、0.1〜20μmの範囲が挙げられ、好ましくは、1〜10μmの範囲が挙げられる。オベチコール酸またはその薬学的に許容される塩の配合量としては、本製剤が錠剤の場合、錠剤全質量に基づいて、例えば、0.1〜50重量%の範囲、好ましくは1〜30重量%、特に好ましくは3〜20重量%の範囲から選択される。また例えば、本製剤が錠剤の場合、1錠中に含まれるオベチコール酸またはその薬学的に許容される塩の含量としては、0.1〜160mg、1〜80mg、好ましくは2.5〜40mgまたは2.5〜50mg、特に好ましくは2.5〜20mg、5〜20mg、2.5〜25mgまたは5〜25mgが挙げられる。あるいは錠剤として、例えば、1mg錠、1.25mg錠、2mg錠、2.5mg錠、5mg錠、10mg錠、12.5mg錠、20mg錠、25mg錠、40mg錠、50mg錠、80mg錠または100mg錠が挙げられ、2.5mg錠、5mg錠、10mg錠、20mg錠、25mg錠、40mg錠および50mg錠が好ましい。特に25mg錠が好ましい。
易生成不純物
「オベチコール酸二量体」とは、以下の化学構造を有する化合物をいう。
Figure 2017170854
前記特許文献2(特表2015‐52162)にはオベチコール酸の製造方法の開示があり、同製造方法等で調製されるオベチコール酸の原薬の中に、オベチコール酸二量体(特許文献2において、「不純物6」、「3α(3α,7α−ジヒドロキシ−6α−エチル−5β−コラン-24−オイルオキシ)−7α−ヒドロキシ−6α−エチル−5β−3−コラン−24−酸」(3α(3α,7α-dihydroxy-6α-ethyl-5β-cholan-24-oyloxy)-7α-hydroxy-6α-ethyl-5β-cholan-24-oic acid)、および「6ECDCA二量体」と称されている)が、製造プロセスで生じる6種類の不純物の一つとして含まれることが開示されている。本不純物が、原薬や製剤の保存中及び製剤化工程において、特に生成しやすい(易生成)不純物であることは、これまで開示が無く、本発明者らが本発明の課題として初めて見出した知見である。
被覆層(フィルムコーティング部)
フィルムコーティング剤
本発明の錠剤は、特定のフィルムコーティングがなされる、言い換えれば、特定の被覆層が形成されていることが特徴である。当該フィルムコーティングした(被覆層を形成した)錠剤は、フィルムコーティング錠(本願明細書において、FC錠と記載することもある)と称される。フィルムコーティングに用いるフィルムコーティング剤としては、一般には、例えば、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール系樹脂(ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、ポリビニルアルコール共重合体が含まれる)、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーなどのフィルム基材と、一般には、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル等の可塑剤を組み合わせたものが挙げられる。
本発明における「可塑剤」とは、材料に塑性を与えることで柔軟性を与える添加剤を意味し、一般に汎用される全ての可塑剤を指す。例えば医薬品添加物辞典2007の「用途」に「可塑剤」と記載のある添加剤を指し、具体的には、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ポリエステル、エポキシ化ダイズ油、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジエステル、カリオン83、クエン酸トリエチル、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ゴマ油、酢酸ビニル樹脂、シメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物、D−ソルビトール、中鎖脂肪酸トリグリセリド、トウモロコシデンプン由来糖アルコール液、トリアセチン、濃グリセリン、ヒマシ油、フィトステロール、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール、ポリソルベート80、ポリエチレングリコール(ポリエチレングリコールには、例えば、マクロゴール400、マクロゴール600、マクロゴール1500、マクロゴール4000、マクロゴール6000等が挙げられる)、ミリスチン酸イソプロピル、綿実油・ダイズ油混合物、モノステアリン酸グリセリン、リノール酸イソプロピル、流動パラフィン等が挙げられる。
「可塑剤を含まない」とは、被覆層に上記の可塑剤あるいは下記の特定可塑剤のいずれも一切含まないことを意味する。
「可塑剤を実質的に含まない」とは、可塑剤を一切含まないか、あるいは一般的に可塑剤として機能しない量、すなわち被覆層に可塑性を付与できない量しか、被覆層中に含まないことを意味する。当該「実質的に含まない」に相当する可塑剤含有量(上限値)は、より具体的には、被覆層中、例えば、1重量%未満、好ましくは、0.1重量%未満である。
本発明では、以下に記載した特定可塑剤を使用することが好ましい特徴となり、また以下に記載のフィルム基材が好ましいものとして挙げられる。
(b)特定可塑剤
本態様における「特定可塑剤」としては、クエン酸トリエチル、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール、トリアセチン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、濃グリセリン、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビトール、グリセリン、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリブチル、セバシン酸ジエチル、アセチル化モノグリセライド、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、モノステアリン、フタル酸ジオクチル、ブチルフタリルブチルグリコレートおよび中鎖脂肪酸トリグリセリドが挙げられる。これら化合物は、一般的には可塑剤として製剤に配合されるものである。また、これら化合物の中には、乳化剤、分散剤、光沢化剤、安定化剤、界面活性剤などとして製剤に配合されるものもある。
従って、特定可塑剤の少なくとも1種、具体的には、クエン酸トリエチル、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル(モノステアリン酸グリセリンを含む)、プロピレングリコール、トリアセチン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンを含む)、濃グリセリン、ソルビタン脂肪酸エステル(セスキオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタンを含む)、ソルビトール、グリセリン、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリブチル、セバシン酸ジエチル、アセチル化モノグリセライド、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、モノステアリン、フタル酸ジオクチル、ブチルフタリルブチルグリコレートおよび中鎖脂肪酸トリグリセリドからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を被覆層に配合することが好ましい。これにより、オベチコール酸の二量体生成がさらに抑制され、また可塑剤を使用しない場合と比較して、製造時にコーティング工程が円滑に進行し、被覆層に可塑性が付与されることでフィルムコーティング錠のフィルムの膜剥がれを抑制できる。好ましくは、クエン酸トリエチル、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル(モノステアリン酸グリセリンを含む)、プロピレングリコール、トリアセチン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンを含む)、濃グリセリン、ソルビタン脂肪酸エステル(セスキオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタンを含む)であり、より好ましくはクエン酸トリエチル、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル(モノステアリン酸グリセリンを含む)、プロピレングリコール、トリアセチン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンを含む)であり、さらに好ましくは、クエン酸トリエチル、プロピレングリコール、トリアセチン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンを含む)であり、特に好ましくは、クエン酸トリエチル、プロピレングリコール、トリアセチンであり、最も好ましくはクエン酸トリエチルである。
前記グリセリン脂肪酸エステルとは、グリセリンの脂肪酸エステルであれば特に限定はされないが、例えば、モノラウリン酸グリセリン、モノミリスチン酸グリセリン、モノパルミチン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリン等が挙げられ、特に、モノステアリン酸グリセリンが好ましい。前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとは、ポリオキシエチレンソルビタンの脂肪酸エステルであれば特に限定はされないが、例えば、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノミリスチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等が挙げられ、特に、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート80とも称される)が好ましい。前期ソルビタン脂肪酸エステルとは、ソルビタンの脂肪酸エステルであれば特に限定はされないが、例えば、セスキオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノミリスチン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン等が挙げられ、セスキオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタンが好ましく、特に、セスキオレイン酸ソルビタンが好ましい。
これら特定可塑剤の含有量は、被覆層中、例えば、0.1〜30重量%、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは1〜15重量の範囲から選択される。
上記可塑剤を(実質的に)含まない被覆層に含まれる成分、および特定可塑剤以外に被覆層に含まれる成分としては以下のものが挙げられる。
(c)フィルム基剤
フィルム基剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)などのセルロース誘導体、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、ポリビニルピロリドン(PVP)などのビニル高分子類、メタアクリル酸コポリマーなどのアクリル高分子などが例示できる。好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルアルコール系樹脂(ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体及びポリビニルアルコール共重合体が含まれる)が例示でき、より好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルアルコールが例示でき、さらに好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースが例示できる。被覆層中のフィルム基剤の濃度としては、可塑剤を含まない被覆層もしくは可塑剤を実質的に含まない被覆層の場合、約5〜約100重量%、好ましくは約30〜約100重量%、とりわけ、約30〜約98重量%が好ましい。また、特定可塑剤を含む被覆層の場合、約5〜約99.9重量%、好ましくは約30〜約98重量%、とりわけ、約30〜約93重量%が好ましい。
ポリビニルアルコール系樹脂とは、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアルコール誘導体およびポリビニルアルコール共重合体を指し、一般に市販されているものを用いることができる。ポリビニルアルコールの具体的な商品として例えば、日本合成化学製のゴーセノール(登録商標)EG-03P、EG-05P、EG-18P、EG-22P、EG-30P、EG-40P、EG-48P、EG-05PW、EG-30PW、EG-40PWが挙げられる。ポリビニルアルコールの共重合体の具体的な商品として例えば、BASF製のポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、Kollicoat(登録商標)IRなどが挙げられる。ポリビニルアルコールの誘導体の具体的な商品として例えば、ポリビニルアルコールコポリマーの大同化成工業製のPOVACOAT(登録商標)Type F、Type R、Type Lなどが挙げられる。
ポリビニルアルコールとは、通常、酢酸ビニルを重合させた後、完全又は部分的にけん化することにより製造される。本発明におけるポリビニルアルコールとしては例えば、医薬品添加物規格に記載されているものを使用することができ、けん化度が97mol%以上を完全けん化物、けん化度が79から96mol%は部分けん化物と呼ばれる。本発明においてポリビニルアルコールのけん化度は特に限定されるものではないが、部分けん化物を用いることが好ましい。また本発明におけるポリビニルアルコールの粘度は特に限定されるものではないが、4重量%水溶液の20℃における粘度としては、好ましくは2〜40mPa・s、より好ましくは3〜30mPa・s、さらに好ましくは4〜20mPa・s、最も好ましくは4.5〜6mPa・sである。粘度は第十六改正日本薬局方 一般試験法2.53粘度測定法第1法毛細管粘度計法に記載の方法で測定した値である。
上記フィルム基剤および上記特定可塑剤以外の被覆層に追加してもよい成分としては、例えば、酸化チタン、三二酸化鉄のような着色剤(被覆層中の含有量:約0.1〜約50重量%)、タルクのような固着防止剤(被覆層中の含有量:約0.1〜約50重量%)、軽質無水ケイ酸、カルナウバロウのような光沢化剤(被覆層中の含有量:約0.01〜約10重量%)などが挙げられる。その他必要に応じて、適宜可塑剤を配合してもよい。
被覆層の形成工程は、上記記載の一種または二種以上のフィルム基剤(またはフィルム基剤および特定可塑剤)を選択し、これを水またはエタノール等の有機溶媒、好適には、水に溶解もしくは懸濁させて製した液状組成物(コーティング液)を素錠のうえに噴霧することにより実施できる。また、コーティング液には、必要に応じて上記着色剤、固着防止剤あるいは光沢化剤などを配合してもよい。
装置としては、例えば、コーティングパンに分類される装置が挙げられる。好ましくは、通気式コーティングシステムで分類される装置が挙げられる。
素錠
「素錠」はオベチコール酸またはその薬学的に許容される塩単独であってもよいが、一般的には、他の製剤成分(添加剤)を配合してなる。これら他の製剤成分は、配合しても不都合がなく、且つ、配合の必要性があるものならばいずれでもよい。例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤などがその例として挙げられる。
好ましい例を以下に例示するが、本願発明は前記のとおり被覆層に主な特徴があり、素錠成分(素錠部)は、これらに限定されるものではない。
(d)賦形剤
賦形剤の具体例としては、糖又は糖アルコール、結晶セルロース、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウムなどが挙げられ、好ましくは糖又は糖アルコールが挙げられる。これらの賦形剤は単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
糖又は糖アルコールとしては、特に限定されるものではないが、例えば、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ソルビトール、乳糖、白糖、トルハロースなどが挙げられる。好ましくは、マンニトール、エリスリトール、乳糖及びトルハロースであり、さらに好ましくは、マンニトール、エリスリトール及び乳糖であり、さらに好ましくは、マンニトール及び乳糖であり、最も好ましくは乳糖である。
本発明における賦形剤の配合量としては、錠剤全重量に基づいて、例えば、30〜90重量%、好ましくは40〜80重量%、より好ましくは45〜75重量%が挙げられる。
(e)結合剤
本発明における結合剤としては通常製剤化において用いられる水溶性高分子結合剤を用いることができる。例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。より好ましいものとしては、メチルセルロース、ポリビニルアルコール系樹脂が挙げられる。さらに好ましいものとしては、ポリビニルアルコール系樹脂が挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂について、好ましいものとして、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアルコール誘導体およびポリビニルアルコール共重合体等が挙げられる。特に好ましいものとしてポリビニルアルコールが挙げられる。該結合剤は、これらの1種または同時に2種類以上を用いることができる。結合剤の配合量としては錠剤全重量に基づいて、例えば、0.1〜10重量%の範囲、好ましくは0.2〜5重量%、より好ましくは0.5〜4重量%、特に好ましくは1〜3重量%の範囲から選択される。
ここでの「ポリビニルアルコール系樹脂」および「ポリビニルアルコール」は、上記フィルム基剤の箇所で定義されたものと同義である。
本発明において用いられる「ポリビニルアルコール系樹脂」は、錠剤全重量に基づいて、例えば、0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%であり、より好ましくは0.5〜4重量%であり、さらに好ましくは1〜3重量%である。
(f)崩壊剤
本発明における崩壊剤としては通常製剤化において用いられる崩壊剤を用いることができ、例えば、デンプン類、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム(デンプングリコール酸ナトリウムとも称される)などが挙げられる。崩壊剤としては、好ましくはデンプン類、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウムであり、さらに好ましくはデンプン類、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドンであり、特に好ましくはデンプン類、クロスポビドンである。デンプン類について、さらに好ましくはα化デンプン類であり、特に好ましくは部分α化デンプンである。これらの崩壊剤は単独又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
崩壊剤2種以上を組み合わせる場合は、例えば、好ましくは崩壊剤2種を組み合わせることであり、好ましくは、デンプン類とクロスポビドンの組み合わせ、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとクロスポビドンの組み合わせが挙げられ、さらに好ましくは、部分α化デンプンとクロスポビドンの組み合わせが挙げられる。
本発明において用いられる崩壊剤は、錠剤全重量に基づいて、例えば、5〜50重量%、好ましくは5〜40重量%であり、より好ましくは10〜40重量%であり、さらに好ましくは10〜30重量%であり、さらに好ましくは10〜25重量%である。
本発明の別の態様において、崩壊剤2種以上を組み合わせる場合、特に例えば、崩壊剤2種を組み合わせる場合、用いられる一方の崩壊剤(例えば、デンプン類、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、部分α化デンプンなど)は、錠剤全重量に基づいて、例えば、5〜50重量%、好ましくは5〜40重量%であり、より好ましくは10〜40重量%であり、さらに好ましくは10〜30重量%であり、さらに好ましくは15〜25重量%であり、用いられるもう一方の崩壊剤(例えば、クロスポビドンなど)は、錠剤全重量に基づいて、例えば、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜8重量%であり、より好ましくは1〜5重量%である。
(g)滑沢剤
当該錠剤の製剤化成分として滑沢剤を添加することができる。滑沢剤は、原薬や顆粒の種類により打錠時に杵臼に原薬や顆粒が付着することを防止し、錠剤の効率的な製造が期待される。本発明における滑沢剤の種類は制限されるものではないが、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、カルナウバロウ、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。好ましくは、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム及びショ糖脂肪酸エステルであり、より好ましくはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム及びフマル酸ステアリルナトリウムであり、さらに好ましくはステアリン酸マグネシウム、及びフマル酸ステアリルナトリウムであり、特に好ましくはステアリン酸マグネシウムである。これらの滑沢剤は単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。滑沢剤は、打錠前にその他の成分と混合してもよいし、打錠時に杵臼に噴霧してもよい。
本発明における滑沢剤の配合量としては、内部滑沢法の場合、錠剤全重量に基づいて、例えば、0.2〜3重量%、好ましくは0.3〜2重量%、より好ましくは0.5〜1.5重量%である。外部滑沢法の場合、錠剤全重量に基づいて、例えば、0.01〜1.0重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%である。
上記以外にも本発明の機能を失わない程度に以下の添加剤を加えることができる。例えば、甘味剤、矯味剤、矯臭剤、香料、流動化剤(例、アエロジル)、帯電防止剤、可塑剤、凝集防止剤等が挙げられる。
本願発明はこれらに限定されるわけではないが、以下に、例えば湿式造粒法で、本発明のFC錠を調製する例を挙げる。
(1)結合剤の水溶液の調製
結合剤を精製水に溶解する。結合剤の量としては、精製水の量に対し、例えば1〜20重量%の範囲、好ましくは2〜8重量%の範囲から選択される。
(2)オベチコール酸含有造粒物の調製
オベチコール酸、水溶性賦形剤、および崩壊剤を仕込んだ流動層造粒機に、上記(1)の工程で調製された結合剤を散布しながら造粒する。
造粒装置としては、例えば、流動層造粒(Fluid Bed Granulation)、高速攪拌造粒(Highshare granulation)、転動型流動層造粒(Roto Fluid Bed Granulation)、二軸スクリュー湿式造粒法等に分類される造粒装置が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
なお、造粒方法として二軸スクリュー湿式造粒法を使用する場合の結合剤の添加方法は、粉末として添加してもよいし、溶液として添加してもよいし、粉末/溶液の両形態で添加してもよい。
(3)造粒物の乾燥:
上記造粒物を、減圧または常圧にて乾燥する。この乾燥は、赤外線水分計にて測定される乾燥減量値が、例えば、3重量%以内、好ましくは1〜2重量%以内になるように行う。
(4)滑沢剤の配合:
上記(3)で乾燥した造粒物に滑沢剤を加えて混合する。混合は、例えば、攪拌ミキサー[タンブル](Diffusion mixers [Tumble])に分類される混合機が用いられる。具体的には、タンブラーブレンダー(Tumble Blender)、V ブレンダー(V Blenders)、ダブルコーン(Double Cone)、ビンタンブラー(ビン Tumble)等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
(5)打錠:
上記混合物を打錠して錠剤を調製する。打錠装置としては、例えば、錠剤プレス(Tablet Press)に分類される打錠機等が挙げられる。打錠硬度としては、例えば30〜200Nの範囲から選択される。
(6)フィルムコーティングを施す:
上記錠剤には、上記フィルムコーティング剤によりフィルムコーティングを施す。コーティング装置としては、例えばコーティングパンに分類される装置が挙げられる。好ましくは、通気式コーティングシステム(Perforated Coating System)で分類される装置が挙げられる。
(7)乾燥:
上記のようにして得られた錠剤を乾燥する。乾燥は減圧または常圧で行い、赤外線水分計にて測定される乾燥減量値が、例えば、3重量%以内、好ましくは1〜2重量%以内になるように行う。
以下、実施例、試験例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本実施例、試験例及び比較例において使用した添加剤は、特に断りがない限り、以下のものを使用した。
マンニトール(パーリトール 50C):ロケットジャパン
結晶セルロース(セオラス PH101):旭化成ケミカルズ
トウモロコシデンプン(局方松谷コーンスターチ):松谷化学
乳糖(Pharmatose 200M):DFE Pharma
無水乳糖(Tablettose 80):MEGGLE
部分α化デンプン(PCS PC−10):旭化成ケミカルズ
クロスポビドン(Kollidon CL):BASF
カルボキシメチルスターチナトリウム(Primojel):DMV
カルボキシメチルセルロース(NS−300):ニチリン
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC LH−31):信越化学
クロスカルメロースナトリウム(Ac−Di−Sol):FMC
リン酸水素カルシウム(リン酸水素カルシウムT):富田製薬
無水リン酸水素カルシウム(無水リン酸水素カルシウム):富田製薬
沈降炭酸カルシウム(沈降炭酸カルシウム):備北粉化工業
軽質無水ケイ酸(アエロジール200):日本アエロジル
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−SL):日本曹達
メチルセルロース(SM−4):信越化学
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(TC−5E):信越化学
ポリビニルアルコール(部分けん化物)(ゴーセノール EG−05P):日本合成化学
ポリビニルピロリドンK30(PVP K−30):BASF
コポリビドン(Kollidon VA−64):BASF
ラウリル硫酸ナトリウム(SLS):日光ケミカルズ
クエン酸トリエチル(Citroflex-2):森村商事
トリアセチン(トリアセチン):大八化学工業
濃グリセリン(濃グリセロール−S):日油
プロピレングリコール(プロピレングリコール):ADEKA
ポリソルベート80(ポリソルベート80(RS)):日油
マクロゴール400(ポリエチレングリコール400):日油
マクロゴール6000(ポリエチレングリコール6000):日油
モノステアリン酸グリセリン(MGS−BMV):日光ケミカルズ
セスキオレイン酸ソルビタン(SO−15V):日光ケミカルズ
カルナウバロウ(ポリシングワックス−105):フロイント産業
またオベチコール酸(インターセプト社より入手)は、フリー体の非晶質の形態のものを使用した。
本実施例、試験例及び比較例における試験方法は以下の通りである。
比較例1:オベチコール酸10mgFC錠
特許文献2には、オベチコール酸を1〜25mg含有する錠剤についての開示がある。より具体的には、1個の錠剤あたり1〜25mgのオベチコール酸、157〜185mgの微結晶セルロース、12mgのデンプングリコール酸ナトリウム、2mgのステアリン酸マグネシウム、4mgのコロイド状二酸化ケイ素、8mgのコーティング材料を含有する錠剤の開示がある。特許文献2に記載のオベチコール酸10mgFC錠の処方を表1に示す。比較例1で用いたオベチコール酸10mgFC錠は乾式造粒法で調製されたものであり、Opadry II(登録商標)白色は可塑剤としてマクロゴール4000(ポリエチレングリコール4000)を成分として含有する。
Figure 2017170854
<保存>
比較例1のオベチコール酸を10mg含有する錠剤を以下の条件で保存した。保存前(Initial)、保存後のオベチコール酸二量体の生成量を試験例1に従い測定した。
・40℃、75%RH 開放条件下(open)で1か月(1M)及び3か月(3M)
・50℃、85%RH(open)で4週(4W)
・60℃密栓条件下(closed)で4週(4W)
試験例1
<試料溶液の調製>
保存から取り出した、1錠あたりオベチコール酸を10mg含有する錠剤1錠を20mL容メスフラスコに入れた。メスフラスコにアセトニトリル/水=9/1を加え、超音波処理(10分)し、錠剤の崩壊を確認した。振とう器にて十分に振とうさせ(300rpm、60分)、さらに超音波処理(10分)し、オベチコール酸を抽出した。アセトニトリル/水=9/1を加えて定容とし、遠心分離し(3000rpm、10分)、上澄み液をHPLC測定用サンプルとした(オベチコール酸として500μg/mL)。
<標準溶液の調製>
オベチコール酸を100mL容メスフラスコに50mg秤量し、アセトニトリル/水=9/1を用いて溶解させた(500μg/mL)。アセトニトリル/水=9/1を用いて希釈し、15.0μg/mL(3.0%)、5.0μg/mL(1.0%)、0.25μg/mL(0.05%)の標準溶液を調製した。
<定量>
上記、3点の標準溶液を用いて検量線を作成し、試料溶液に含まれるオベチコール酸二量体を定量した。分析条件は以下に示す。
<分析条件>
検出器:荷電化粒子検出器
カラム:Sigma−Aldrich製 SUPELCO Discovery C8(粒径5μm、内径4.6mm、長さ15cm)
移動相:アセトニトリル/メタノール/酢酸水溶液(pH3.0)混液(8/1/1)
分析時間:15分
流量:1.0mL/min.
カラム温度:30℃
注入量:100μL
サンプルクーラー温度:10℃
シリンジ洗浄液:アセトニトリル/メタノール/酢酸水溶液(pH3.0)混液(8/1/1)
試料溶解溶媒:アセトニトリル/水=9/1
荷電化粒子検出器パラメーター
Gas:Nitrogen
Gas pressure:35psi
Range:100pA
Filter:High
<結果>
比較例1の評価結果を表2および表3に示す。前記の各種条件で保存後、オベチコール酸二量体の顕著な増加がみられた。特に、40℃、75%RH openで1M及び3Mの保存後、0.5%を超える二量体の生成が認められた。
Figure 2017170854

Figure 2017170854
オベチコール酸二量体増加の原因を究明するために、フィルムコーティング部の処方がオベチコール酸二量体増加に及ぼす影響を評価した。オベチコール酸(添加剤を一切含まない原薬の単品状態、以下、この状態を単に「単品」と記載)を比較対象とした。
比較例2:オベチコール酸10mgFC錠
A.オベチコール酸の含量10mgのFC錠の処方
下記組成からなる素錠およびFC錠を順次調製した。
(a)素錠の処方及び仕込み量
Figure 2017170854

(b)FC錠の処方
Figure 2017170854
B.製造方法
(1)混合:
表4に記載の仕込み量に従い、オベチコール酸50g、乳糖(Dilactose S:Freund)503g、クロスポビドン(ポリプラスドンXL−10:BASF)35g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC LH−21:信越化学)105gをPE袋に仕込み、十分に手混合した。そこにステアリン酸マグネシウム(植物性:太平化学産業株式会社)7.0gを加えて混合し、打錠用顆粒を得た。
(2)打錠:
上記(1)で調製した打錠用顆粒を、ロータリー打錠機(VEL2、菊水製作所製)を用いて打錠し、下記条件で打錠を行い、1錠あたり約140mgの素錠を得た。
杵:円形R錠
杵サイズ:φ7mm、10R
回転盤回転数:20rpm
打錠圧縮圧力:錠剤硬度が60〜140Nになるように調製した。
(3)コーティング:
<コーティング液の調製>
表5に記載の組成の被覆層が形成できるよう、固形分濃度が15%のコーティング液を調製した。精製水に表5に記載の成分組成を有し、可塑剤としてマクロゴール4000(ポリエチレングリコール4000)を含むOpadry(登録商標)を加え、懸濁分散させた。調製した懸濁液1をナイロンメッシュ(150#)で篩過し、コーティング液を調製した。
<コーティング>
上記(2)で調製した素錠を、ハイコーターHCT30N(フロイント産業製)を用い、コーティング剤の皮膜量が約4mgになるように下記条件でコーティングを行い、FC錠を得た。
<FC条件>
給気温度:85℃
風量:0.6m/分
パン回転数:24rpm
スプレー圧:0.15MPa
液速:3−5g/分
ガン距離:11cm
フィルムコーティング用の適切な組成物(コーティング剤)は一般に種々のものが入手可能であり、例えば、OpadryおよびOpadry IIの商標名でColorcon, Inc.から市販されているか、ないしは同社でカスタム調製(custom made)されて購入が可能であり、これらの組成物は、前記の各種フィルム基剤や各種可塑剤(例えば、ポリエチレングリコール、レシチン、モノステアリン酸グリセリン、プロピレングリコール等)を適量含みうる、また含まないものがあり、以下の実施例で用いるコーティング剤として適宜選択して、簡便に利用可能である。
実施例1
比較例2で得られた素錠を用い、可塑剤としてレシチンを含む前記の購入可能なコーティング剤を用いた以外は、比較例2と同様の手法でフィルムコーティング錠を得た。
実施例2
比較例2で得られた素錠を用い、可塑剤としてモノステアリン酸グリセリンを含む前記の購入可能なコーティング剤を用いた以外は、比較例2と同様の手法でフィルムコーティング錠を得た。
実施例3
比較例2で得られた素錠を用い、可塑剤を含まない前記の購入可能なコーティング剤を用いたこと、コーティング液の固形分濃度を10%としたこと以外は、比較例2と同様の手法でフィルムコーティング錠を得た。
実施例4
比較例2で得られた素錠を用い、可塑剤としてプロピレングリコールを含む前記の購入可能なコーティング剤を用いたこと、コーティング液の固形分濃度を10%としたこと以外は、比較例2と同様の手法でフィルムコーティング錠を得た。
実施例5
FC成分を変更した以外は、比較例2と同様の手法でFC錠を得た。
<コーティング液の調製>
1錠あたり表6に記載の組成の被覆層が形成できるよう、固形分濃度が10%のコーティング液を調製した。精製水にヒドロキシプロピルメチルセルロース(TC−5R:日本曹達)及び可塑剤としてクエン酸トリエチル(Citroflex−2:森村商事)を加え、溶解させた(溶液1)。別途、精製水にタルク(タルカンハヤシ:林化成)及び酸化チタン(酸化チタン NA61:東邦チタニウム)を加え、懸濁分散させた(懸濁液1)。調製した懸濁液1に溶液1を加えて分散させ、篩(150#)で篩過し、コーティング液を調製した。
Figure 2017170854
比較例2、実施例1〜5で調製したオベチコール酸FC錠の処方を表7に示す。
Figure 2017170854

Figure 2017170854
<保存>
比較例2、実施例1〜5で調製したオベチコール酸を10mg含有する錠剤を以下の条件で保存した。保存前(Initial)、保存後のオベチコール酸二量体の生成量を試験例1に従い測定した。
・40℃、75%RH(open)で1か月(1M)及び3か月(3M)
・50℃、85%RH(open)で4週(4W)
・60℃(closed)で4週(4W)
比較例3:オベチコール酸(単品)の安定性
オベチコール酸(単品)を試験管に評価サンプルとして5mgずつ秤量した。
<保存>
実施例1で調製したオベチコール酸(単品)を入れた試験管を以下の条件で保存した。保存前(Initial)、保存後のオベチコール酸二量体の生成量を試験例2に従い測定した。
・50℃、85%RH(open)で4週(4W)
・60℃(closed)で4週(4W)
試験例2
以下の試料溶液の調製以外は、試験例1と同様の手法でオベチコール酸二量体の生成量を測定した。
<試料溶液の調製>
保存から取り出した試験管にアセトニトリル/水=9/1を10mL正確に加え、超音波処理し、オベチコール酸を抽出した。遠心分離し(3000rpm、10分間)、上澄み液をHPLC測定用サンプルとした(オベチコール酸として500μg/mL)。
<結果>
比較例1〜3、実施例1〜5の評価結果を表8、9に示す。通常汎用される可塑剤であるポリエチレングリコールを使用した比較例1及び2において、オベチコール酸二量体の増加が顕著に促進された。可塑剤を使用していない実施例3、並びに特定可塑剤としてレシチン、モノステアリン酸グリセリン、プロピレングリコール、及びクエン酸トリエチルを使用した実施例1、2、4、5のフィルムコーティング錠の保存中オベチコール酸二量体の増加は比較例1及び2と比べて顕著に緩やかであり、オベチコール酸(単品)(比較例3)と同程度まで抑制された。特に実施例1〜5のFC錠について、40℃、75%RH openで1M〜3Mの保存後、二量体の生成が0.5%未満に抑制されることは優れた効果である。
Figure 2017170854

Figure 2017170854
素錠部の処方がオベチコール酸二量体増加に及ぼす影響を評価した。
実施例6−(1):オベチコール酸20mgFC錠
A.オベチコール酸の含量20mgのFC錠の処方
下記組成からなる顆粒、素錠およびFC錠を順次調製した。
(a)顆粒の処方及び仕込み量
Figure 2017170854

(b)素錠の処方及び仕込み量
Figure 2017170854

(c)FC錠の処方
Figure 2017170854
B.製造方法
(1)造粒−整粒
<結合液の調製>
水溶性高分子結合剤のポリビニルアルコールを、80℃に加温した精製水に加えて溶解させた。室温に放冷後、精製水を加えて4%結合液を調製した。
<造粒>
表10に記載の仕込み量に従い、ポリビニルアルコール以外の処方を流動層造粒機(マルチプレックスMP−01/パウレック製)に仕込み、上記(1)で調製した結合液を用いて、下記条件でスプレー造粒を行い、顆粒を得た。
<造粒条件>
給気温度:75℃
風量:30−50m/hr
スプレー速度:8−12g/分
スプレーノズル径:1.0mm
スプレー圧力:0.1MPa
ガン位置:中段
<整粒>
得られた顆粒をスクリーンサイズは710μmのメッシュで篩過し、整粒顆粒を得た。
(2)顆粒と滑沢剤の混合:
表11に記載の仕込み量に従い、上記(1)で調製した顆粒にステアリン酸マグネシウムを加え、小型V型混合機(筒井理化学器械製)を用いて、混合(40rpm、5分)し、打錠用顆粒を得た。
(3)打錠:
上記(2)で調製した打錠用顆粒を、ロータリー打錠機(VEL2、菊水製作所製)を用いて打錠し、下記条件で打錠を行い、1錠あたり約140mgの素錠を得た。
杵:円形R錠
杵サイズ:φ7mm、10R
回転盤回転数:20rpm
打錠圧縮圧力:錠剤硬度が60〜140Nになるように調製した。
(4)コーティング:
<コーティング液の調製>
表12に記載の組成の被覆層が形成できるよう、固形分濃度が10%のコーティング液を調製した。精製水にヒドロキシプロピルメチルセルロース及びクエン酸トリエチルを加え、溶解させた(溶液1)。別途、精製水にタルク及び酸化チタンを加え、懸濁分散させた(懸濁液1)。調製した懸濁液1に溶液1を加えて分散させ、ナイロンメッシュ(150#)で篩過し、コーティング液を調製した。
<コーティング>
上記(3)で調製した素錠を、ハイコーターHCT30N(フロイント産業製)を用い、コーティング剤の皮膜量が約4mgになるように下記条件でコーティングを行い、FC錠を得た。カルナウバロウはフィルムコーティング工程の乾燥後に添加した。
<FC条件>
給気温度:85℃
風量:0.6m/分
パン回転数:24rpm
スプレー圧:0.15MPa
液速:3−5g/分
ガン距離:11cm
実施例6−(2):オベチコール酸20mgFC錠
部分α化デンプンの1錠あたりの含量を21mgにし、その分を乳糖で調整した以外は実施例6−(1)と同様の手法でFC錠を得た。
実施例6−(3):オベチコール酸20mgFC錠
FC成分を変更した以外は実施例6−(1)と同様の手法でFC錠を得た。
<コーティング液の調製>
表13に記載の組成の被覆層が形成できるよう、固形分濃度が15%のコーティング液を調製した。精製水にポリビニルアルコール及びクエン酸トリエチルを加え、溶解させた(溶液1)。別途、精製水にタルク及び酸化チタンを加え、懸濁分散させた(懸濁液1)。調製した懸濁液1に溶液1を加えて分散させ、ナイロンメッシュ(150#)で篩過し、コーティング液を調製した。
実施例6−(4):オベチコール酸20mgFC錠
部分α化デンプンの1錠あたりの含量を35mgにし、その分を乳糖で調整した以外は実施例6−(1)と同様の手法でFC錠を得た。
実施例6−(5):オベチコール酸20mgFC錠
クロスポビドンを処方中に含有させず、その分を乳糖で調整した以外は実施例6−(1)と同様の手法でFC錠を得た。
実施例6−(6):オベチコール酸20mgFC錠
ポリビニルアルコールの1錠あたりの含量を1.4mgにし、その分を乳糖で調整した以外は実施例6−(1)と同様の手法でFC錠を得た。
実施例6−(7):オベチコール酸20mgFC錠
ポリビニルアルコールの1錠あたりの含量を4.2mgにし、その分を乳糖で調整した以外は実施例6−(1)と同様の手法でFC錠を得た。
実施例6−(8):オベチコール酸20mgFC錠
ステアリン酸マグネシウムの1錠あたりの含量を0.7mgにし、その分を乳糖で調製した以外は実施例6−(1)と同様の手法でFC錠を得た。
実施例6−(9):オベチコール酸20mgFC錠
実施例6−(8)で調製した顆粒にステアリン酸マグネシウムを2.1mg混合し、約141.4mgの素錠を調製した。その後は実施例6−(8)と同様の手法でFC錠を得た。
実施例6−(10):オベチコール酸2.5mgFC錠
オベチコール酸の1錠あたりの含量を2.5mgにし、その分を乳糖で調整した以外は実施例6−(1)と同様の手法でFC錠を得た。
実施例6−(11):オベチコール酸20mgFC錠
部分α化デンプンの代わりに低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを使用し、その1錠あたりの含量を16.8mgにし、その分を乳糖で調整した以外は実施例6−(1)と同様の手法でFC錠を得た。
実施例6−(1)〜6−(11)のオベチコール酸FC錠の処方を表13に示す。
Figure 2017170854

Figure 2017170854

Figure 2017170854
<保存>
実施例6−(1)〜6−(11)で調製したオベチコール酸を2.5mgまたは20mg含有する錠剤を以下の条件で保存した。保存前(Initial)、保存後のオベチコール酸二量体の生成量を以下の試験例3、4の手法で測定した。
・40℃、75%RH(open)で1か月(1M)及び3か月(3M)
・50℃、85%RH(open)で4週(4W)
・60℃(closed)で4週(4W)
試験例3:オベチコール酸2.5mFC錠の評価
以下の試料溶液の調製以外は、試験例1と同様の手法でオベチコール酸二量体の生成量を測定した。
<試料溶液の調製>
保存から取り出した、1錠あたりオベチコール酸を2.5mg含有する錠剤4錠を20mL容メスフラスコに入れた。メスフラスコにアセトニトリル/水=9/1を加え、超音波処理(10分)し、錠剤の崩壊を確認した。振とう器にて十分に振とうさせ(300rpm、60分)、さらに超音波処理(10分)し、オベチコール酸を抽出した。アセトニトリル/水=9/1を加えて定容とし、遠心分離し(3000rpm、10分)、上澄み液をHPLC測定用サンプルとした(オベチコール酸として500μg/mL)。
試験例4:オベチコール酸20mgFC錠の評価
以下の試料溶液の調製以外は、試験例1と同様の手法でオベチコール酸二量体の生成量を測定した。
<試料溶液の調製>
保存から取り出した、1錠あたりオベチコール酸を20mg含有する錠剤1錠を40mL容メスフラスコに入れた。メスフラスコにアセトニトリル/水=9/1を加え、超音波処理(10分)し、錠剤の崩壊を確認した。振とう器にて十分に振とうさせ(300rpm、60分)、さらに超音波処理(10分)し、オベチコール酸を抽出した。アセトニトリル/水=9/1を加えて定容とし、遠心分離し(3000rpm、10分)、上澄み液をHPLC測定用サンプルとした(オベチコール酸として500μg/mL)。
<結果>
実施例6−(1)〜6−(11)の評価結果を表14及び表15に示す。
比較として比較例1の結果も合わせて示す。結果から明らかなように、前述の特定可塑剤として好ましいクエン酸トリエチルを使用したフィルムコーティング錠においては、素錠部の処方はオベチコール酸二量体の増加に影響は及ぼさず、実施例6−(1)〜6−(11)のオベチコール酸二量体の増加は可塑剤としてポリエチレングリコールが使用された比較例1と比べて顕著に緩やかであった。特に実施例6−(1)、6−(7)、6−(10)及び6−(11)で代表されるこれら実施例6のFC錠について、40℃、75%RH openで1M及び/又は3Mの保存後、二量体の生成が0.5%未満に抑制されることは優れた効果である。
Figure 2017170854

Figure 2017170854
実施例7:オベチコール酸10mgFC錠
A.オベチコール酸の含量10mgのフィルムコーティング(FC)錠の処方
下記組成からなる顆粒、素錠およびFC錠を順次調製した。
(a)顆粒の処方及び仕込み量
Figure 2017170854

(b)素錠の処方及び仕込み量
Figure 2017170854

(c)FC錠の処方
Figure 2017170854
B.製造方法
(1)造粒−整粒
<結合液の調製>
水溶性高分子結合剤のポリビニルアルコールを、80℃に加温した精製水に加えて溶解させた。室温に放冷後、精製水を加えて4%結合液を調製した。
<造粒>
表16に記載の仕込み量に従い、ポリビニルアルコール以外の処方を流動層造粒機(フローコーター、NFLF−30SJC型/フロイント産業製)に仕込み、上記(1)で調製した結合液を用いて、下記条件でスプレー造粒を行い、顆粒を得た。
<造粒条件>
給気温度:75℃
風量:6−8m/分
スプレー速度:160g/分
スプレーノズル径:1.8mm
スプレーエアー圧力:0.46MPa
<整粒>
得られた顆粒を、サニタリー式振動篩機(502SB型/ダルトン製)を用いて篩過し、整粒顆粒を得た。スクリーンサイズは710μmを用いた。
(2)顆粒と滑沢剤の混合:
表17に記載の仕込み量に従い、上記(1)で調製した整粒顆粒にステアリン酸マグネシウムを加え、容器混合機(110L、山崎金属産業製)を用いて、混合(20rpm、5分)し、打錠用顆粒を得た。
(3)打錠:
上記(2)で調製した打錠用顆粒をロータリー打錠機、AQU30518SW2AII(菊水製作所製)を用いて打錠し、下記条件で打錠を行い、1錠あたり約140mgの素錠を得た。
杵:円形R錠
杵サイズ:φ7mm、10R
回転盤回転数:50rpm
打錠圧縮圧力:錠剤硬度が40〜120Nになるように調製した。
(4)コーティング:
<コーティング液の調製>
表18に記載の組成の被覆層が形成できるよう、固形分濃度が10%のコーティング液を調製した。精製水にヒドロキシプロピルメチルセルロース及びトリアセチンを加え、溶解させた(溶液1)。別途、精製水に酸化チタンを加え、懸濁分散させた(懸濁液1)。調製した懸濁液1に溶液1を加えて分散させ、ナイロンメッシュ(150#)で篩過し、コーティング液を調製した。
<コーティング>
上記(3)で調製した素錠を、ハイコーターHCT30N(フロイント産業製)を用い、コーティング剤の皮膜量が約4mgになるように下記条件でコーティングを行い、FC錠を得た。カルナウバロウはフィルムコーティング工程の乾燥後に添加した。
<FC条件>
給気温度:85℃
風量:0.6m/分
パン回転数:24rpm
スプレー圧:0.15MPa
液速:3−5g/分
ガン距離:11cm
実施例8:オベチコール酸10mgFC錠
実施例7で調製した素錠にフィルムコーティングを行い、FC錠を得た。トリアセチンの代わりにモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート80)を用いたこと以外は実施例7と同様の手法でFC錠を得た。
実施例7及び8のオベチコール酸FC錠の処方を表19に示す。
Figure 2017170854
<保存>
実施例7及び8で調製したオベチコール酸を10mg含有する錠剤を以下の条件で保存した。保存前(Initial)、保存後のオベチコール酸二量体の生成量を試験例1の手法で測定した。
・50℃、85%RH(open)で4週(4W)
・60℃(closed)で4週(4W)
<結果>
実施例7及び8の評価結果を表20、21に示す。
比較として比較例1の結果も合わせて示す。可塑剤として好ましい特定可塑剤であるトリアセチン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート80)を使用したフィルムコーティング錠の保存中オベチコール酸二量体の増加は、可塑剤としてポリエチレングリコールが使用された比較例1と比べて顕著に緩やかであった。
Figure 2017170854

Figure 2017170854
実施例9:オベチコール酸20mgFC錠(二軸スクリュー湿式造粒法)
オベチコール酸285.7g、乳糖水和物1354.29g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース240.0g、クロスポビドン60.0gを秤量し、ポリ袋で混合した。混合末を二軸スクリュー湿式造粒機の粉体供給フィーダーに投入した。混合末を粉体供給フィーダーからチャンバー内に20kg/hで供給し、そこに8.5重量%のポリビニルアルコール水溶液をペリスタポンプで80g/min.で供給しながらスクリュー回転数700rpm、表22に示すスクリュー構成で4分間連続して造粒を行った。造粒末は流動層乾燥機で乾燥した。乾燥末450gをとり、整粒機(製品名:クアドロコーミル197S、パウレック製)を用いておろし金タイプのスクリーン(メッシュサイズ1.06mm)で圧縮型の羽を使用し、1200rpmで整粒した。得られた整粒末396gにステアリン酸マグネシウム4.0gを加えて混合した。打錠以降の工程は実施例6−(1)と同様の手法でFC錠を得た。
Figure 2017170854
実施例10:オベチコール酸10mgFC錠(二軸スクリュー湿式造粒法)
オベチコール酸50.0g、乳糖水和物524.0g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース84.0g、クロスポビドン21.0gを秤量し、ポリ袋で混合した。混合末を二軸スクリュー湿式造粒機の粉体供給フィーダーに投入した。混合末を粉体供給フィーダーからチャンバー内に20kg/hで供給し、そこに8.5重量%のポリビニルアルコール水溶液をペリスタポンプで80g/min.で供給しながらスクリュー回転数700rpm、表22に示すスクリュー構成で1.5分間連続して造粒を行った。造粒末は流動層乾燥機で乾燥した。乾燥末455gをとり、整粒機(製品名:クアドロコーミル197S、パウレック製)を用いておろし金タイプのスクリーン(メッシュサイズ1.06mm)で圧縮型の羽を使用し、1200rpmで整粒した。得られた整粒末396gにステアリン酸マグネシウム4.0gを加えて混合した。打錠以降の工程は実施例6−(1)と同様の手法でFC錠を得た。
実施例11:オベチコール酸10mgFC錠(二軸スクリュー湿式造粒法)
オベチコール酸50.0g、乳糖水和物468.0g、部分α化デンプン(Starch1500:Colorcon製)140.0g、クロスポビドン21.0gを秤量し、ポリ袋で混合した。混合末を二軸スクリュー湿式造粒機の粉体供給フィーダーに投入した。混合末を粉体供給フィーダーからチャンバー内に20kg/hで供給し、そこに13.8重量%のポリビニルアルコール水溶液をペリスタポンプで50g/min.で供給しながらスクリュー回転数700rpm、表22に示すスクリュー構成で1.5分間連続して造粒を行った。造粒末は流動層乾燥機で乾燥した。乾燥末489gをとり、整粒機(製品名:クアドロコーミル197S、パウレック製)を用いておろし金タイプのスクリーン(メッシュサイズ1.06mm)で圧縮型の羽を使用し、1200rpmで整粒した。得られた整粒末396gにステアリン酸マグネシウム4.0gを加えて混合した。打錠以降の工程は実施例6−(1)と同様の手法でFC錠を得た。
実施例9〜11のオベチコール酸FC錠の処方を表23に示す。
Figure 2017170854
<保存>
実施例9〜11で調製したオベチコール酸を10mg、20mg含有する錠剤を以下の条件で保存した。保存前(Initial)、保存後のオベチコール酸二量体の生成量を、それぞれ試験例1及び4の手法で測定した。
・40℃、75%RH(open)で1か月(1M)及び3か月(3M)
<結果>
実施例9〜11の評価結果を表24及び表25に示す。
比較のため比較例1の結果も合わせて示す。前述の特定可塑剤として好ましいクエン酸トリエチルを使用し、二軸スクリュー湿式造粒法で調製したオベチコール酸フィルムコーティング錠の保存中のオベチコール酸二量体の増加は、可塑剤としてポリエチレングリコールを使用した比較例1と比べて顕著に緩やかであった。特に実施例9〜11のFC錠について、40℃、75%RH openで1M及び3Mの保存後、二量体の生成が0.5%未満に抑制されることは優れた効果である。
Figure 2017170854

Figure 2017170854
実施例12
本発明の所望の製剤を設計するための基礎データを得る目的で、下記の配合変化試験により、オベチコール酸と各種添加剤を直接接触することで、易生成不純物であるオベチコール酸二量体の増加を促進させるものがあるかどうかを調べた。
<配合変化試験:乾式混合>オベチコール酸/各種添加剤=1/19
オベチコール酸/各種添加剤(賦形剤、崩壊剤、流動化剤:全15種)を1/19の比率で十分に乾式混合し、得られた混合物を試験管に約100mg(オベチコール酸として5mg相当)ずつ秤量し、保存にかけた。保存は50℃、85%RH(open)、60℃(closed)の2条件とし、保存期間は2週間(2W)及び4週間(4W)とした。オベチコール酸二量体の生成量を試験例2に従って測定した。
実施例12の評価結果を表26、27に示す。実施例12−(1)〜12−(15)、すなわちオベチコール酸と13種の添加剤(賦形剤、崩壊剤、流動化剤)を混合後のオベチコール酸二量体の増加は、オベチコール酸(単品)(比較例3)と同程度であった。つまり本実施例で試験された各種添加剤において、オベチコール酸二量体の増加を促進するものはなかった。
Figure 2017170854
Figure 2017170854
実施例13
本発明の所望の製剤を設計するための基礎データを得る目的で、下記の配合変化試験により、賦形剤として汎用される乳糖の存在下、オベチコール酸と各種添加剤を直接接触することで、易生成不純物であるオベチコール酸二量体の増加を促進させる添加剤があるかどうかを調べた。
<配合変化試験:湿式混合>オベチコール酸/賦形剤(乳糖)/各種添加剤=1/19/0.4
オベチコール酸/賦形剤(乳糖)を1/19の比率で十分に乾式混合し、得られた混合物に、溶液または懸濁液にした各種添加剤(結合剤7種:実施例13−(2)〜13−(8)、界面活性剤1種:実施例13−(9)、可塑剤9種:実施例13−(10)〜13−(18))を、オベチコール酸/賦形剤/各種添加剤=1/19/0.4の比率になるように湿式混合した。比較として添加剤を加えないサンプルを実施例13−(1)として実施した。得られた湿式混合物を恒温機(50℃、4時間)で乾燥させ、試験管に約102mg(オベチコール酸として5mg相当)ずつ秤量し、保存にかけた。保存は50℃、85%RH(open)、60℃(closed)の2条件とし、保存期間は2週間(2W)及び4週間(4W)とした。オベチコール酸二量体の生成量を試験例2に従って測定した。
実施例13の評価結果を表28、29に示す。実施例13−(2)〜13−(9)、すなわち乳糖の存在下、オベチコール酸と7種の結合剤及び1種の界面活性剤を混合後のオベチコール酸二量体の増加は、添加剤を加えない(つまりオベチコール酸と乳糖のみの)実施例13−(1)と同程度であった。つまり本実施例で試験された結合剤及び界面活性剤において、賦形剤としての乳糖の存在下、オベチコール酸二量体の増加を促進するものはなかった。
一方、実施例13−(10)〜13−(18)、すなわち乳糖の存在下、オベチコール酸と9種の可塑剤を混合後のオベチコール酸二量体の増加速度は、様子が異なった。セスキオレイン酸ソルビタン(実施例13−(18))は添加剤を加えない(つまりオベチコール酸と乳糖のみの)実施例13−(1)と同程度であり、賦形剤としての乳糖の存在下、オベチコール酸二量体の増加を促進しなかった。しかしながら、ポリエチレングリコールであるマクロゴール400及びマクロゴール6000(実施例13−(15)及び13−(16))は、添加剤を加えない実施例13−(1)と比較して、賦形剤としての乳糖の存在下、オベチコール酸二量体の増加を著しく促進した。この増加促進の程度は、本実施例で試験した賦形剤の中で最大のものであり、前記比較例1及び2においてFC錠における被覆層の可塑剤として使用した場合の知見と一致する。そして、興味深いことにトリアセチン(実施例13−(11)は、本配合試験においては、ポリエチレングリコール(実施例13−(15)及び13−(16))ほどではないが、相当程度、オベチコール酸二量体の増加を促進した。しかし、本発明者は(本結果からは意外にも)前記実施例7に述べたとおり、FC錠における被覆層の可塑剤として使用した場合はオベチコール酸二量体の増加を促進しないことを見出した。そこで発明者は、FC錠における被覆層の好ましい特定可塑剤として機能する閾値あるいは指標は、本配合試験において、ポリエチレングリコール(実施例13−(15)及び13−(16))の示す二量体の増加量の数値(例えば、60℃、closed 4Wで16〜18%)よりは低く、かつトリアセチンの示す二量体の増加量程度の数値(例えば、60℃、closed 4Wで10〜11%)にあると考えた。そして実際、クエン酸トリエチル、プロピレングリコール、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン及びモノステアリン酸グリセリン及び(実施例13−(10)、13−(13)、13−(14)及び13−(17))は、本配合試験において、ポリエチレングリコールほど顕著ではなく、かつトリアセチンよりもさらに緩やかであるが、オベチコール酸二量体の増加を促進しており(例えば、60℃、closed 4Wで3〜6%)、一方、前記実施例2、4〜6及び8等に述べたとおり、FC錠における被覆層の可塑剤として使用した場合はオベチコール酸二量体の増加を促進することはなく、好ましい特定可塑剤として機能した。この本発明者により発見され証明された指標に基づき、前記、二量体の増加を促進しないセスキオレイン酸ソルビタン(実施例13−(18))は無論、濃グリセリン(実施例13−(12))も、本配合試験では非常に緩やかにオベチコール酸二量体の増加を促進しているが(例えば、60℃、closed 4Wで2%)、好ましい特定可塑剤として機能する。また本配合試験で好ましい特定可塑剤と分類可能な可塑剤と構造や性質が類似し、かつポリエチレングリコールとは構造や性質が異なると、当業者によって判断可能な可塑剤も全て、特定可塑剤として機能しうる。
Figure 2017170854

Figure 2017170854
実施例14〜22
特許文献2に開示されたオベチコール酸を含有する錠剤(特定のフィルムコーティング錠)のコーティング材料を本願発明のものと置換することにより、本願発明のフィルムコーティング錠とすることが可能である。例えば、より具体的には、特許文献2に記載の、1個の錠剤あたり25mgのオベチコール酸、157mgの微結晶セルロース、12mgのデンプングリコール酸ナトリウム、2mgのステアリン酸マグネシウム、4mgのコロイド状二酸化ケイ素、8mgのコーティング材料(Opadry II)を含有する錠剤の開示に基づき、Opadry IIを除くオベチコール酸25mg素錠に対して、実施例1〜5、7〜8、9(又は10)及び11各々に示すコーティング成分処方(ただし、オベチコール酸や素錠の量に応じて適宜、量を調整)及び記載された方法でコーティングを行い、実施例14〜22各々のFC錠を得ることができる。
実施例14〜22の処方を表30に示す。
Figure 2017170854

実施例14〜22に示すFC錠を実施例1〜5及び7〜11のFC錠と同様の方法で評価することで、同等の効果を確認することができる。

Claims (25)

  1. オベチコール酸またはその薬学的に許容される塩を含有するフィルムコーティング錠であって、
    (a)オベチコール酸またはその薬学的に許容される塩を含有する素錠および
    (b)該素錠の表面に、フィルム基剤を含み、可塑剤を実質的に含まないか、もしくは、
    クエン酸トリエチル、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール、トリアセチン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、濃グリセリン、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビトール、グリセリン、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリブチル、セバシン酸ジエチル、アセチル化モノグリセライド、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、モノステアリン、フタル酸ジオクチル、ブチルフタリルブチルグリコレートおよび中鎖脂肪酸トリグリセリドからなる群から選ばれる特定可塑剤を少なくとも1種含む被覆層を有するフィルムコーティング錠。
  2. 可塑剤を実質的に含まない被覆層を有する、請求項1に記載のフィルムコーティング錠。
  3. クエン酸トリエチル、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール、トリアセチン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、濃グリセリン、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビトール、グリセリン、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリブチル、セバシン酸ジエチル、アセチル化モノグリセライド、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、モノステアリン、フタル酸ジオクチル、ブチルフタリルブチルグリコレートおよび中鎖脂肪酸トリグリセリドからなる群から選ばれる特定可塑剤を少なくとも1種含む被覆層を有する、請求項1に記載のフィルムコーティング錠。
  4. 特定可塑剤が、クエン酸トリエチル、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール、トリアセチン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、濃グリセリン及びソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選ばれるものである、請求項1又は3に記載のフィルムコーティング錠。
  5. ソルビタン脂肪酸エステルがセスキオレイン酸ソルビタンまたはモノラウリン酸ソルビタンである、請求項1、3及び4のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
  6. ソルビタン脂肪酸エステルがセスキオレイン酸ソルビタンである、請求項1及び3〜5のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
  7. 特定可塑剤が、クエン酸トリエチル、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール、トリアセチンおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選ばれるものである、請求項1及び3〜6のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
  8. グリセリン脂肪酸エステルがモノステアリン酸グリセリンである、請求項1及び3〜7のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
  9. 特定可塑剤が、クエン酸トリエチル、プロピレングリコール、トリアセチンおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選ばれるものである、請求項1及び3〜8のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
  10. ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルがモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンである、請求項1及び3〜9のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
  11. 特定可塑剤が、クエン酸トリエチル、プロピレングリコールおよびトリアセチンからなる群から選ばれるものである、請求項1及び3〜10のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
  12. 特定可塑剤がクエン酸トリエチルである、請求項1及び3〜11のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
  13. 特定可塑剤の含有量が被覆層中0.1〜30重量%である、請求項1及び3〜12のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
  14. 可塑剤を実質的に含まない被覆層が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドンおよびメタアクリル酸コポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のフィルム基剤を含む、請求項1又は2に記載のフィルムコーティング錠。
  15. 可塑剤を実質的に含まない被覆層が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルアルコール系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種のフィルム基剤を含む、請求項1、2及び14のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
  16. ポリビニルアルコール系樹脂がポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体及びポリビニルアルコール共重合体のいずれか又はその混合物である、請求項14または15に記載のフィルムコーティング錠。
  17. ポリビニルアルコール系樹脂がポリビニルアルコールである、請求項14〜16のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
  18. 可塑剤を実質的に含まない被覆層が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであるフィルム基剤を含む、請求項1、2、14及び15のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
  19. フィルム基剤の含有量が、被覆層中30〜100重量%である、請求項1、2及び14〜18のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
  20. 前記特定可塑剤を少なくとも1種含む被覆層が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドンおよびメタアクリル酸コポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のフィルム基剤を含む、請求項1及び3〜13のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
  21. 前記特定可塑剤を少なくとも1種含む被覆層が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルアルコール系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種のフィルム基剤を含む、請求項1、3〜13及び20のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
  22. ポリビニルアルコール系樹脂がポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体及びポリビニルアルコール共重合体のいずれか又はその混合物である、請求項20又は21に記載のフィルムコーティング錠。
  23. ポリビニルアルコール系樹脂がポリビニルアルコールである、請求項20〜22のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
  24. 前記特定可塑剤を少なくとも1種含む被覆層が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであるフィルム基剤を含む、請求項1、3〜13、20及び21のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
  25. フィルム基剤の含有量が、被覆層中30〜98重量%である、請求項20〜24のいずれかに記載のフィルムコーティング錠。
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