以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る医療デバイス10は、血管内のプラークや血栓などによる狭窄部または閉塞部を切削する治療(処置)に用いられる。なお、本明細書では、デバイスの血管に挿入する側を「遠位側」、操作する手元側を「近位側」と称することとする。
本発明の第1実施形態に係る医療デバイス10は、図1に示すように、狭窄部または閉塞部を切削する処置デバイス20と、狭窄部または閉塞部から削り取られて脱落したデブリを捕集する捕集デバイス30と、を備えている。
処置デバイス20は、図1、2に示すように、径方向外側へ拡張および収縮が可能な回転構造体40と、回転構造体40を支持する支持部50と、回転構造体40を回転させる駆動シャフト60と、回転構造体40の変形量を調節する直動シャフト70と、直動シャフト70の遠位側に連結される先端チューブ75と、回転構造体40を収容可能な外シース80と、手元側に設けられて操作するための操作部90とを備えている。
回転構造体40は、図3〜6に示すように、駆動シャフト60の回転軸Xに沿って延びる少なくとも1つ(本実施形態では4つ)のストラット41と、全てのストラット41の遠位側でストラット41と一体的に形成される管状の遠位端部42と、全てのストラット41の近位側でストラット41と一体的に形成される管状の近位端部43とを備えている。遠位端部42は、支持部50および直動シャフト70に固定されることなく、支持部50および直動シャフト70に対して、軸方向へ相対的に移動可能となっている。遠位端部42は、直動シャフト70が回転構造体40に対して近位方向へ移動することで、直動シャフト70に連結された先端チューブ75の近位部と接触する。ストラット41は、略直線状となっている収縮状態(図3(B)、図4(A)、図5を参照)から、遠位端部42および近位端部43を近づけることで、径方向外側へ撓むように変形して拡張状態(図3(C)、図4(B)、図6を参照)となることができる。
ストラット41は、近位側に、収縮した状態において回転軸Xに対して傾斜するように湾曲する傾斜部44が形成され、遠位側に、外周面から内周面へ貫通する複数の開口部45が形成される。ストラット41は、隣接する部位よりも周方向(回転方向Y)への幅が相対的に広い幅広部46を有し、この幅広部46の各々に開口部45が形成されている。開口部45は、ストラット41の延在方向に沿って複数(本実施形態では4つまたは5つ)形成され、開口部45の内縁部が、狭窄部または閉塞部を切削する刃である切削部47として機能する。ストラット41の切削部47が形成される位置は、拡張状態においてストラット41の外径が最大となる部位(回転軸Xに沿う方向の略中央部)よりも遠位側に位置している。ストラット41の、切削部47の刃を構成する内縁部以外の縁部は、面取りされていることが好ましい。
ストラット41は、開口部45が4つ形成されるものと5つ形成されるものが、周方向に交互に配置されている。このため、1つの管体からレーザー加工や機械加工等により回転構造体40を切り出す際に、4つの開口部45と5つの開口部45を交互にずらして配置することができ、開口部45の適切な幅を確保することが可能である。また、周方向に隣接するストラット41の切削部47がずれて配置されることで、所定の部位が偏って削り取られることを抑制し、狭窄部または閉塞部を効果的に切削することが可能である。
ストラット41は、拡張状態となると、切削部47が形成される部位の外周面が、回転方向Y側ほど径方向内側に傾くように変形する(図6(B)を参照)。このため、ストラット41は、拡張状態で回転する際に、ストラット41の径方向内側に傾いている側から接触対象に滑らかに接触することになり、生体組織への過度な損傷を低減できる。また、ストラット41は、拡張状態における径よりも小径の管体から切り出されて形成されているため、ストラット41の外周面の曲率半径は、拡張状態における回転軸Xからストラット41の外周面までの距離よりも小さい。このため、ストラット41の縁部が、接触対象にさらに接触し難くなり、生体組織への過度な損傷をさらに低減できる。
回転構造体40の構成材料は、例えば、熱処理により形状記憶効果や超弾性が付与される形状記憶合金、ステンレス、などが好適に使用できる。形状記憶合金としては、Ni−Ti系、Cu−Al−Ni系、Cu−Zn−Al系またはこれらの組み合わせなどが好ましく使用される。
支持部50は、回転構造体40の径方向内側に回転構造体40を支持するように配置されており、複数の線材51を編組することによって、線材51同士の間に間隙52を有するように管状に形成される。支持部50の遠位側端部54は、複数の線材51が管状に集合して、回転構造体40の遠位側端部54の内側面に固定されることなく、直動シャフト70の外周面に固定されている(図4を参照)。支持部50の近位側端部55は、複数の線材51が管状に集合して、ストラット41の近位端部43の内周面に固定されている。
支持部50は、略均一の外径の管状となっている収縮状態(図3(B)、図4(A)を参照)から、遠位端部42および近位端部43を近づけることで、中央部が径方向外側へ撓むように変形して拡張状態(図3(C)、図4(B)を参照)となることができる。
拡張状態において支持部50の最も外径が大きい最大拡張部53は、拡張状態おいてストラット41の間の隙間が大きくなるために、ストラット41の間で径方向外側へ突出する(図6(A)を参照)。このため、拡張状態においてストラット41の最も外側へ広がって生体組織と接触しやすい部位が、支持部50の最大拡張部53よりも径方向内側に位置し、ストラット41の縁部による正常な生体組織の損傷を抑制できる。
そして、ストラット41の刃47の近傍の部位は、回転軸Xからの距離が短く(径が小さく)、かつ幅広部46が形成されるため、ストラット41の間の隙間が狭い。このため、刃47の近傍に位置する支持部50は、ストラット41の間から径方向外側への突出が抑制されるため、支持部50に阻害されずに刃47を接触対象に接触させることができる(図6(B)を参照)。
支持部50の軸方向の略中央部には、図3(C)に示すように、回転構造体40および支持部50が拡張した状態において生体組織を切削することなく生体組織に滑らかに接触可能な第1非切削部56が形成される。第1非切削部56は、支持部50の略中央部により構成される。また、回転構造体40の遠位端部42には、回転構造体40が拡張した状態において生体組織を切削することなく生体組織に滑らかに接触可能な第2非切削部48が形成される。そして、切削部47は、回転構造体40および支持部50が拡張した状態において、軸方向に沿う断面における第1非切削部56と第2非切削部48の接線Lよりも内側に位置している。
180度反対に位置する2つの接線Lにより形成される角度θは、特に限定されないが、90度以下であることが好ましい。角度θが90度以下であることで、角度θが90度を超える場合と比較して、遠位側に鋭く突出した形状となるため、強い押し込み荷重を付与することなしに効率的かつ短時間で生体内の物体を切削できるとともに、安全性については第1非切削部56および第2非切削部48により確保できる。
線材51は、接触する生体組織を損傷させないように、ストラット41よりも剛性が低く、かつ断面において角部が曲率を有して形成されることが好ましく、より好ましくは、断面が円形である。
線材51の外径は、線材51の材料や適用条件等により適宜選択可能であるが、例えば0.05〜0.15mmである。
線材51の構成材料は、柔軟性がある材質であることが好ましく、例えば、熱処理により形状記憶効果や超弾性が付与される形状記憶合金、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、W、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、などが好適に使用できる。形状記憶合金としては、Ni−Ti系、Cu−Al−Ni系、Cu−Zn−Al系またはこれらの組み合わせなどが好ましく使用される。複数の材料を組み合わせた構造としては、例えば、造影性を付与するためにPtからなる芯線にNi−Ti合金を被覆した構造や、Ni−Ti合金からなる芯線に金メッキを施した構造が挙げられる。
複数の線材51の一部は、X線造影性材料により構成された線材である。これにより、支持部50および回転構造体40の位置および拡張径を、X線透視下で的確に把握することが可能となり、手技がより容易なものとなる。X線造影性材料としては、例えば、金、プラチナ、プラチナ−イリジウム合金、銀、ステンレス、モリブデン、タングステン、タンタル、パラジウムあるいはそれらの合金等が好適である。なお、支持部50ではなく、回転構造体40の一部が、X線造影性材料で構成されてもよい。例えば、回転構造体40の内周面に、X線造影性材料をメッキ加工により被覆してもよい。これにより、支持部50および回転構造体40の位置および拡張径を、X線透視下で的確に把握することが可能となり、手技がより容易なものとなる。
回転構造体40の収縮状態における内径は、適用される生体管腔の内径等に応じて適宜選択可能であるが、例えば、0.9〜1.6mmであり、一例として1.4mmとすることができる。回転構造体40の収縮状態における外径は、適用される生体管腔の内径等に応じて適宜選択可能であるが、例えば、1.1〜1.8mmであり、一例として1.7mmとすることができる。回転構造体40の回転軸Xに沿う方向の長さは、適用される適宜選択可能であるが、例えば、10〜30mmであり、一例として20mmとすることができる。
回転構造体40の拡張状態における最大外径は、適用される生体管腔の内径等により適宜選択可能であるが、例えば、3.0〜8.0mmであり、一例として7.0mmとすることができる。
拡張状態における支持部50の最大拡張部53(第1非切削部56)の、ストラット41から径方向外側への突出長さは、適宜設定可能であるが、例えば、0.05〜0.5mmであり、一例として0.2mmとすることができる。
駆動シャフト60は、図1〜4に示すように、管状に形成されて、遠位側が回転構造体40の近位端部43に固定されており、近位側に従動歯車61が固定されている。駆動シャフト60の近位部は、操作部90のケーシング91に回転可能に連結されている。
駆動シャフト60は、柔軟で、しかも近位側から作用する回転の動力を遠位側に伝達可能な特性を持ち、たとえば、右左右と巻き方向を交互にしている3層コイルなどの多層コイル状の管体、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、またはこれらの組み合わせに線材などの補強部材が埋設されたもので構成されている。
駆動シャフト60の内径は、適宜選択可能であるが、例えば0.7〜1.4mmであり、一例として1.2mmとすることができる。駆動シャフト60の外径は、適宜選択可能であるが、例えば0.8〜1.5mmであり、一例として1.35mmとすることができる。
直動シャフト70は、回転構造体40および支持部50を拡張および収縮させるために、駆動シャフト60に対して回転軸Xの方向へ相対的に移動可能な管体であり、駆動シャフト60、回転構造体40および支持部50を貫通している。直動シャフト70は、遠位側が線材51の遠位側端部54に固定されており、近位側が、直動シャフト70を回転軸Xに沿って直線的に移動させる移動機構部92に接続されている。直動シャフト70の内部には、ガイドワイヤが挿通可能なルーメン72が形成されている。
直動シャフト70の構成材料は、柔軟性がある材質であることが好ましく、例えば、熱処理により形状記憶効果や超弾性が付与される形状記憶合金、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、W、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、などが好適に使用できる。形状記憶合金としては、Ni−Ti系、Cu−Al−Ni系、Cu−Zn−Al系またはこれらの組み合わせなどが好ましく使用される。また、複数の材料によって構成されてもよく、線材などの補強部材が埋設されてもよい。
直動シャフト70の内径は、適宜選択可能であるが、例えば0.5〜1.2mmであり、一例として0.95mmとすることができる。直動シャフト70の外径は、適宜選択可能であるが、例えば0.6〜1.3mmであり、一例として1.05mmとすることができる。
外シース80は、駆動シャフト60の外側に被さる管体であり、駆動シャフト60に対して、回転軸Xに沿う方向へ移動可能かつ回転可能である。外シース80は、近位部を把持して操作可能となっており、遠位側へ移動させることで、収縮状態の回転構造体40および支持部50を内部に収容可能であり、近位側へ移動させることで、回転構造体40および支持部50を外部へ露出させることができる。
外シース80の構成材料は、特に限定されないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、などが好適に使用できる。また、複数の材料によって構成されてもよく、線材などの補強部材が埋設されてもよい。
外シース80の内径は、適宜選択可能であるが、例えば1.2〜1.9mmであり、一例として1.8mmとすることができる。外シース80の外径は、適宜選択可能であるが、例えば1.3〜2.0mmであり、一例として2.0mmとすることができる。
先端チューブ75は、直動シャフト70の遠位側に固定されている。先端チューブ75の内部にはルーメン76が形成されており、このルーメン76が、直動シャフト70のルーメン72と連通している。
先端チューブ75の構成材料は、特に限定されないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミドまたはこれらの組み合わせなどが好適に使用できる。
操作部90は、図1、2に示すように、ケーシング91と、駆動シャフト60に回転力を付与する駆動機構部93と、直動シャフト70を回転軸Xに沿って移動させる移動機構部92とを備えている。
駆動機構部93は、従動歯車61に噛み合う駆動歯車94と、駆動歯車94が固定される回転軸95を備える駆動源であるモータ96と、モータ96へ電力を供給する電池などのバッテリー97と、モータ96の駆動を制御するスイッチ98とを備えている。スイッチ98を入れてモータ96の回転軸95を回転させることで、駆動歯車94と噛み合う従動歯車61が回転し、駆動シャフト60が回転する。駆動シャフト60が回転すると、駆動シャフト60の遠位側に固定されている回転構造体40、支持部50および先端チューブ75が回転する。
移動機構部92は、操作者が指で回転させることが可能なダイヤル100と、ダイヤル100に同軸的に連結されて回転可能な送りねじ101と、送りねじ101により直動的に移動可能な移動台102と、移動台102に固定されて直動シャフト70を回転可能に保持する軸受部103と、を備えている。
ダイヤル100は、ケーシング91内に回転可能に保持されているとともに、ケーシング91に形成される開口部104から外周面が露出しており、外周面を指で操作することで回転可能である。送りねじ101は、ケーシング91内に回転可能に保持されている。移動台102は、送りねじ101が螺合する雌ねじが形成され、ケーシング91に対して非回転的かつ回転軸Xに沿って直動的に移動可能である。移動台102に固定される軸受部103は、移動台102の移動に伴って直動シャフト70に移動力を作用させるため、スラスト力を受け止めることが可能なスラスト軸受であることが好ましい。
捕集デバイス30は、図1、7に示すように、フィルターとしての機能を備えるフィルター器具110と、フィルター器具110を収納可能なシース120とを備えている。
フィルター器具110は、複数の素線112によって編組されたフィルター部111と、フィルター部111を貫通してフィルター部111に連結される長尺なシャフト部113とを備えている。
フィルター部111は、シース120内に収容されることで収縮し、シース120から放出されることで、自己拡張力により拡張可能である。フィルター部111は、遠位側が閉じた籠状となってシャフト部113に連結されており、近位側が、複数の素線112が撚り集められてシャフト部113に連結されている。
素線112の外径は、素線112の材料や用途等により適宜選択可能であるが、例えば20〜100μmであり、一例として、40μmとすることができる。
素線112の構成材料は、柔軟性がある材質であることが好ましく、例えば、熱処理により形状記憶効果や超弾性が付与される形状記憶合金、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、W、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、などが好適に使用できる。形状記憶合金としては、Ni−Ti系、Cu−Al−Ni系、Cu−Zn−Al系またはこれらの組み合わせなどが好ましく使用される。複数の材料を組み合わせた構造としては、例えば、造影性を付与するためにPtからなる芯線にNi−Ti合金を被覆した構造や、Ni−Ti合金からなる芯線に金メッキを施した構造が挙げられる。
シャフト部113の構成材料は、特に限定されないが、例えばステンレス鋼、形状記憶合金などが好適に使用できる。
シース120は、管体121と、ハブ122と、耐キンクプロテクタ123とを備えている。管体121は、フィルター器具110を収容可能なルーメン124を備えており、遠位側端部に形成される管体開口部126において開口している。ハブ122は、管体121の近位側端部に固定されており、ルーメン124と連通するハブ開口部125を備えている。耐キンクプロテクタ123は、管体121およびハブ122の連結部位を覆う柔軟な部材であり、管体121のキンクを抑制する。
管体121の構成材料は、特に限定されないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミドまたはこれらの組み合わせなどが好適に使用できる。
次に、本実施形態に係る医療デバイス10の使用方法を、血管内の狭窄物を切削する場合を例として説明する。
まず、血管の狭窄部Sよりも上流側(近位側)において血管内へ経皮的にイントロデューサシース(図示せず)を挿入し、このイントロデューサシースを介して、ガイドワイヤ130を血管内へ挿入する。次に、ガイドワイヤ130を押し進め、図8(A)に示すように、狭窄部Sの近位側まで到達させる。この後、体外に位置するガイドワイヤ130の近位側端部をガイディングカテーテル140の遠位側のカテーテル開口部141に挿入し、図8(B)に示すように、ガイドワイヤ130に沿ってガイディングカテーテル140を血管内に挿入して、狭窄部Sの近位側まで到達させる。
次に、体外に位置するガイドワイヤ130の近位側端部をサポートカテーテル150の遠位側のカテーテル開口部151に挿入し、サポートカテーテル150を狭窄部Sの近位側まで押し進めた後、図9(A)に示すように、サポートカテーテル150およびガイドワイヤ130を狭窄部Sよりも遠位側まで到達させる。この後、サポートカテーテル150を血管内に残した状態で、ガイドワイヤ130を抜去する。
次に、フィルター器具110をシース120内に収容した捕集デバイス30を準備する。フィルター部111は、シース120の管体121の遠位側端部に近い位置に配置され、収縮状態で形状が拘束されている。次に、図9(B)に示すように、サポートカテーテル150を介して捕集デバイス30を血管内に挿入し、狭窄部Sよりも遠位側まで到達させる。この後、サポートカテーテル150を抜去する。
次に、シース120をフィルター器具110に対して近位側へ相対的に移動させ、フィルター部111を管体121から遠位側に突出させる。これにより、図10(A)に示すように、フィルター部111が自己の復元力により拡張状態となり、籠状となったフィルター部111の外周部が、血管の内壁面に接触する。このとき、フィルター部111は、上流側(近位側)の狭窄部Sに向かって開いている。この後、フィルター器具110を残して、シース120を抜去する。
次に、回転構造体40および支持部50を収縮させて外シース80内に収容した状態の処置デバイス20を準備し、先端チューブ75の遠位側開口部にシャフト部113の近位側端部を挿入して、図10(B)に示すように、ガイディングカテーテル140を介して血管内に到達させる。次に、図11(A)に示すように、外シース80を近位側へ移動させ、回転構造体40および支持部50を血管内で露出させる。なお、この状態では、回転構造体40および支持部50は、収縮した状態である。この後、図2に示すように、ダイヤル100を回転させると、送りねじ101が回転して移動台102が近位側へ移動し、移動台102に連結された直動シャフト70が近位側へ移動する。直動シャフト70が近位側へ移動すると、回転構造体40の遠位端部42および近位端部43が近づき、図11(B)に示すように、支持部50の中央部が径方向外側へ撓むように変形して拡張状態となる。支持部50の中央部が径方向外側へ撓むと、支持部50の外側に配置されているストラット41が、支持部50によって径方向外側へ押圧されて拡張する。このとき、切削部47は、少なくとも拡張の初めにおいて、遠位端部42が支持部50および直動シャフト70に固定されていないため、遠位端部42および近位端部43の間に軸方向への力は作用せず、支持部50から受ける径方向外側への力のみで拡張する。このため、ストラット41および線材51の間に隙間が生じ難い。そして、回転構造体40および支持部50の大きさは、ダイヤル100の回転量によって任意に調節可能である。このように、拡張時の径が規定されるバルーンの外表面に研磨材等を付着させた回転体を用いて切削する場合と比較して、回転構造体40は、拡張時の大きさを望ましい大きさに任意に調節可能であり、効果的な切削が可能である。切削部47は、回転構造体40および支持部50が拡張した状態において、軸方向に沿う断面における第1非切削部56と第2非切削部48の接線Lよりも内側に位置する。
次に、操作部90のスイッチ98を入れると、モータ96の駆動力が駆動歯車94から従動歯車61へ伝わり、従動歯車61に連結されている駆動シャフト60が回転して、駆動シャフト60に連結されている回転構造体40および支持部50が回転する。回転構造体40および支持部50が回転すると、遠位側でこれらに連結されている直動シャフト70も回転する。なお、直動シャフト70の近位部は、軸受部103により支持されているため、回転しても、回転構造体40および支持部50の拡張状態を維持できる。
次に、回転構造体40および支持部50を回転させた状態で、図12(A)に示すように、処置デバイス20を押し進める。これにより、回転構造体40に形成されている刃47が、狭窄部Sに接触し、狭窄物が削られてデブリDとなって遠位側(下流側)へ流れる。遠位側へ流れたデブリDは、遠位側に位置するフィルター部111の内部に入り込み、フィルター部111によって濾し取られるように捕集される。これにより、デブリDが末梢へ流れることを抑制でき、末梢血管における新たな狭窄部の発生を抑制できる。
そして、狭窄部Sを切削する際に、支持部50の第1非切削部56が、ストラット41の間で径方向外側へ突出しているため、第1非切削部56が生体組織に接触しても、ストラット41の縁部は正常な生体組織に接触しない。
また、例えば図12(B)に示すように、狭窄部Sが偏って形成されている場合や血管が湾曲している場合などに、回転構造体40を押し込むことで回転構造体40が狭窄部Sや血管壁から力を受けて血管に対して傾き、切削部47が生体組織に近づく可能性がある。しかしながら、切削部47が第1非切削部56と第2非切削部48の接線Lよりも内側に位置するため、切削部47が生体組織に接触する前に、第1非切削部56と第2非切削部48が生体組織に接触するため、回転構造体40が傾いても、切削部47が生体組織に接触し難い。このため、正常な生体組織の損傷を抑制でき、安全性を高めることができる。また、回転構造体40が傾いても切削部47が生体組織に接触し難いため、回転構造体40を押し込むことで駆動シャフト60を湾曲させ、回転構造体40を血管に対して意図的に傾けて、狭窄部Sを切削することも可能である。
また、ストラット41は、切削部47が形成される部位の外周面が、回転方向Y側ほど径方向内側に傾くように変形するため(図6(B)を参照)、ストラット41の径方向内側に傾いている側から狭窄部Sや生体組織などの接触対象に滑らかに接触し、生体組織への過度な損傷を低減できる。また、ストラット41は、拡張状態における径よりも小径の管体から切り出されているため、ストラット41の外周面の曲率半径は、拡張状態における回転軸Xからストラット41の外周面までの距離よりも小さい。このため、ストラット41の縁部が、対象物にさらに接触し難くなり、生体組織への過度な損傷を低減できる。
また、ストラット41の内側に支持部50が設けられているため、ストラット41同士の間に、脱落した硬いデブリDが挟みこまれ難くなり、ストラット41が外側へ捲れ上がらず、ストラット41の損傷や破断を抑制できる。
また、切削部47が形成されるストラット41は、支持部50により支持されることで、ラジアルフォース(半径方向への力)が増加するため、拡張および収縮可能な構造にも関わらず、高い切削能力を発揮できる。また、ストラット41の隙間が支持部50によって補われているため、ストラット41および支持部50によって全体として断面が略円形となり、回転構造体40を適切な位置にセンタリングすることができる。また、ストラット41の刃47で切削されて発生したデブリDの一部を、支持部50内に捕集して回収することもできる。
狭窄物の切削が完了した後には、スイッチ98を切って駆動シャフト60の回転を停止させる。次に、ダイヤル100を、回転構造体40および支持部50を拡張させた際とは逆回転に回転させると、図1に示すように、送りねじ101が回転して移動台102が遠位側へ移動し、移動台102に連結された直動シャフト70が遠位側へ移動する。直動シャフト70が遠位側へ移動すると、回転構造体40の遠位端部42が近位端部43から離れるように移動し、回転構造体40および支持部50が径方向内側に収縮した状態となる。この後、外シース80を遠位側へ移動させ、図13(A)に示すように、外シース80内に回転構造体40および支持部50を収容し、ガイディングカテーテル140を介して処置デバイス20を抜去する。
次に、シース120(吸引用カテーテル)の管体開口部126にシャフト部113の近位側端部を挿入し、図13(B)に示すように、ガイディングカテーテル140を介してシース120を血管内に挿入する。この状態で、シース120のハブ開口部125と連通するようにYコネクター(図示せず)を接続し、Yコネクターのシャフト部113が挿入されない方の開口部にシリンジを接続する。この後、シリンジの押し子を牽引して吸引力を作用させると、遠位側から近位側まで延びるルーメン124内で負圧が発生し、フィルター部111内のデブリDを管体開口部126からルーメン124内に引き込むことができる。シリンジによりデブリDを吸引する際には、必要に応じて、管体121を進退移動させることで、デブリDを効果的に吸引することができる。このように、フィルター部111内のデブリDの一部または全てを吸引してルーメン124内に引き込むことで、フィルター部111が収縮しやすい状態となる。なお、デブリDを吸引する器具(吸引用カテーテル)は、シース120とは異なるカテーテルであってもよい。また、吸引力を作用させる器具は、シリンジに限定されず、例えばポンプであってもよい。
次に、シース120をシャフト部113に対して相対的に遠位側へ移動させると、フィルター部111がシャフト部113に牽引されて管体121のルーメン124内に移動する。この後、フィルター器具110をシース120とともに抜去し、ガイディングカテーテル140およびイントロデューサシースを抜去して、手技が完了する。なお、フィルター器具110を、シース120に収容するのではなく、シース120を用いないで直接的にガイディングカテーテル140内に収容してもよい。この場合、デブリDは、吸引して取り除かなくてもよい。
以上のように、第1実施形態に係る医療デバイス10は、生体管腔内の物体を切削するためのデバイスであって、回転可能な駆動シャフト60と、駆動シャフト60の遠位側に連結されて回転可能である切削部47と、切削部47よりも径方向に大きくかつ生体組織に対して滑らかに接触可能な第1非切削部56と、軸方向に沿って第1非切削部56との間に切削部47を挟むように配置され、生体組織に対して滑らかに接触可能な第2非切削部48とを有し、軸方向に沿う断面における第1非切削部56と第2非切削部48の接線Lよりも内側に切削部47が位置する。上記のように構成した医療デバイス10は、軸方向に沿う断面における第1非切削部56と第2非切削部48の接線Lよりも内側に切削部47が位置するため、回転する切削部47により生体管腔内の物体を適切に切削しつつ、第1非切削部56および第2非切削部48によって切削部47が生体組織に接触することを抑制し、生体組織の損傷を低減させて安全性を向上できる。
また、第1非切削部56が、径方向外側へ拡張可能であるため、径方向に突出する第1非切削部56を収縮させた状態で生体管腔内に搬送可能となり、生体への影響を低減できるとともに、より小径の生体管腔へも挿入可能となって適用可能な範囲が拡大する。
また、本発明は、生体管腔内の物体を切削するための処置方法をも提供する。当該処置方法は、上述の医療デバイス10を用いて生体管腔内の物体を切削するための処置方法であって、切削部47、第1非切削部56および第2非切削部48を生体管腔内へ挿入するステップと、軸方向に沿う断面における第1非切削部56と第2非切削部48の接線Lよりも内側に切削部47が位置する状態を維持しつつ、切削部47を駆動シャフト60により回転させて生体管腔内の物体を切削するステップと、切削部47、第1非切削部56および第2非切削部48を生体管腔内から抜去するステップと、を有する。当該処置方法によれば、切削するステップにおいて、軸方向に沿う断面における第1非切削部56と第2非切削部48の接線Lよりも内側に切削部47が位置するため、回転する切削部47により生体管腔内の物体を切削しつつ、第1非切削部56および第2非切削部48によって切削部47が生体組織に接触することを抑制し、生体組織の損傷を低減させて安全性を向上できる。
また、切削するステップにおいて、切削部47を有する回転構造体40を生体管腔内で傾けつつ前記物体を切削することができる。これにより、生体管腔内の広い範囲の物体を切削できるとともに、回転構造体40が傾いても、第1非切削部56および第2非切削部48により切削部47が生体組織に接触することを抑制できるため、高い安全性を確保できる。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る医療デバイス160は、回転構造体40の外側に第1非切削部を備える点でのみ、第1実施形態と異なる。なお、第1実施形態と同一の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
第2実施形態に係る医療デバイス160は、図14(A)に示すように、回転構造体40の外側に、複数の板材161が周方向に並んで配置されている。各々の板材161は、回転構造体40の近位端部43の外周面に固着されている。複数の板材161は、軸直交断面において、図15に示すように円弧状に形成され、一部が重なりつつ周方向に並んでいる。各々の板材161は、近位端部43と接する板材基端部162でのみ固定されており、この板材基端部162を固定端として、遠位側の部位が径方向外側へ撓むことができる。各々の板材161は、遠位側の部位が撓むことで、重なる部位の面積が変化するように摺動可能である。したがって、回転構造体40および支持部50が拡張すると、図14(B)、図16に示すように、板材161同士の重なる面積が減少しつつ、複数の板材161により構成される管体が漏斗状に拡張する。また、回転構造体40および支持部50が収縮すると、図14(A)、図15に示すように、板材161同士の重なる面積が増加しつつ、複数の板材161により構成される管体が収縮する。各々の板材161は、遠位部が、回転構造体40の最も外径の大きい部位を囲んでおり、この遠位部の外表面に、第1非切削部163が形成される。なお、板材161が重なる向きは、駆動シャフト60を回転させて切削部47により切削を行う際に、板材161の段差が生体組織を切削しないように、生体組織に対して滑らかに接触する向きとなっている。さらに、板材161の円弧の曲率半径は、拡張した回転構造体40の半径よりも小さく、したがって、板材161の段差は、生体組織に接触しない。
板材161の材料は、柔軟性がある材質であることが好ましく、例えば、熱処理により形状記憶効果や超弾性が付与される形状記憶合金、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、W、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、などが好適に使用できる。
第2実施形態に係る医療デバイス160を用いて生体管腔内の物体を切削する際には、軸方向に沿う断面における第1非切削部163と第2非切削部48の接線Lよりも内側に切削部が位置するため、回転する切削部47により生体管腔内の物体を適切に切削しつつ、第1非切削部163および第2非切削部48によって切削部47が生体組織に接触することを抑制し、生体組織の損傷を低減させて安全性を向上できる。
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態に係る医療デバイス170は、回転構造体40を収容可能な外シーの遠位部に、拡張可能な拡張部が形成される点でのみ、第1実施形態と異なる。なお、第1実施形態と同一の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
第3実施形態に係る医療デバイス170は、図17、18に示すように、外シース171の遠位部に、周方向に折り返されつつフレア状に拡張可能に形成される拡張部172が形成されている。拡張部172は、図17(A)、図18(A)に示すように、外力が作用しない状態においては折り重なって収縮しており、図17(B)、図18(B)に示すように、径方向内側から力を受けることで折り重なった部位が拡がって内径が増加するように拡張可能である。
拡張部172の構成材料は、特に限定されないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミドまたはこれらの組み合わせなどが好適に使用できる。
第3実施形態に係る医療デバイス170を用いて生体管腔内の狭窄部Sを切削する際には、外シース171の遠位側に回転構造体40および支持部50を突出させて拡張させることができる。この状態で駆動シャフト60を回転させると、図19(A)に示すように、外シース171の拡張部172が容易に拡張できるため、柔軟に曲がることができる駆動シャフト60が容易に撓むことができ、回転構造体40および支持部50が振れ回るように回転することが許容される。このため、回転構造体40の振れ回りにより広い切削範囲を確保しつつ、第1非切削部56および第2非切削部48によって切削部47が生体組織に接触することを抑制し、生体組織の損傷を低減させて安全性を確保できる。
また、図19(B)に示すように、拡張された拡張部172により、拡張させた状態の回転構造体40および支持部50の近位部を覆うこともできる。この状態で駆動シャフト60を回転させると、外シース171により回転構造体40および支持部50の回転を振れ回らないように容易に調節することができ、状況に応じて切削に適切な状態とすることができる。更に、拡張された拡張部172により第1非切削部56を覆うことで、拡張部172を、第1非切削部として機能させることもできる。この場合、拡張部172は駆動シャフト60によって回転駆動されないため、生体組織の損傷を低減できる。
また、図20に示すように、外シース171の遠位部に湾曲部が形成されていれば、外シース171の近位部を体外で操作して回転させることで、切削部47が設けられる回転構造体40の位置および角度を調節し、状況に応じて切削に適切な状態とすることができる。
以上のように、第3実施形態に係る医療デバイス170は、切削部47を有して駆動シャフト60により回転される回転構造体40を、振れ回り可能な状態と振れ回りが抑制された状態に変更可能である。これにより、医療デバイス170は、状況に応じて回転構造体40の状態を変化させて、状況に応じて切削に適切な状態とすることができる。
また、医療デバイス170は、駆動シャフト60を相対的に回転可能に収容でき、遠位部の内径が拡張可能である外シース171を有している。このため、医療デバイス170は、外シース171の遠位部を拡張させることで、駆動シャフト60を振れ回り可能とすることが可能である。また、医療デバイス170は、外シース171の遠位部に切削部47を有する回転構造体40の少なくとも一部を収容して、回転構造体40の振れ回りを調節し、状況に応じて切削に適切な状態とすることができる。
また、第3実施形態に係る医療デバイス170を用いて生体管腔内の物体を切削するための処置方法は、切削するステップにおいて、駆動シャフト60を収容可能であるとともに遠位部が湾曲した外シース171の近位部を手元で回転させることで、回転構造体40の生体管腔内での位置および傾きを調節することができる。これにより、外シース171の近位部を操作することで、回転構造体40の生体管腔内での位置および傾きを容易に調節可能となり、状況に応じて切削に適切な状態とすることができ、操作性が向上する。
また、切削するステップにおいて、駆動シャフト60を収容可能である外シース171を回転構造体40に対して相対的に軸方向へ移動させることで、回転構造体40の生体管腔内での位置および傾きを調節することができる。これにより、外シース171の近位部を操作することで、回転構造体40の生体管腔内での位置および傾きを容易に調節可能となり、状況に応じて切削に適切な状態とすることができ、操作性が向上する。
<第4実施形態>
本発明の第4実施形態に係る医療デバイス180は、回転構造体40に、錘が取り付けられる点でのみ、第3実施形態と異なる。なお、第1、第3実施形態と同一の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
第4実施形態に係る医療デバイスは、図21に示すように、回転構造体40の遠位端部42に遠位側錘181が取り付けられ、近位端部43に近位側錘182が取り付けられる。遠位側錘181の外周面に、第2非切削部183が形成される。切削部47は、軸方向Xに沿う断面における第1非切削部56と第2非切削部183の接線Lよりも内側に位置する。遠位側錘181および近位側錘182は、周方向に重量バランスが偏っていないが、偏ってもよい。遠位側錘181および近位側錘182が、周方向に重量バランスが偏っている場合、重心が中心軸から偏心する。遠位側錘181および近位側錘182は、回転構造体40に対して回転不能に固定されるが、軸受等を用いて回転可能に固定されてもよい。
第4実施形態に係る医療デバイス180を用いて生体管腔内の物体を切削する際には、回転構造体40に遠位側錘181および近位側錘182が設けられるため、外シース171から回転構造体40を突出させた状態において、図22(A)に示すように、回転構造体40が振れ回るように振動しやすくなる。このため、回転構造体40の振れ回りにより広い切削範囲を確保しつつ、第1非切削部56および第2非切削部183によって切削部47が生体組織に接触することを抑制し、生体組織の損傷を低減させて安全性を確保できる。
また、図22(B)に示すように、外シース171の拡張部172を拡張させて、拡張させた状態の回転構造体40および支持部50の近位部を覆うことで、遠位側錘181および近位側錘182が設けられて振れ回りやすい状態から、振れ回り難い状態へ容易に移行することができる。
また、駆動シャフト60の回転数により、回転構造体40の振動を調節して、切削部47による切削の程度を調節することもできる。例えば、駆動シャフト60に支持される回転構造体40を含む部位の質量をm(kg)、駆動シャフト60のばね定数をk(N/m)とした場合に、駆動シャフト60により支持される回転構造体40を含む部位の危険速度(固有振動数)fc(Hz)は、概算値として以下の式により求まる。なお、回転構造体40に作用するジャイロ効果や血液の影響は省略する。
式1
回転する構造体は、危険速度より低い低速回転においては、構造の中心軸を中心に回転するため、回転軸Xの外側を重心が回ることになる。回転速度が危険速度に近づくと、振動が大きくなり、危険速度を超えると、中心軸の内側に重心が位置し、重心が回転中心に近づき、したがって重心を中心に回転する状態に近づく。したがって、予め設定できる重心の位置、駆動シャフト60の回転速度を利用することで、切削部47を含む回転構造体40の振動の変化を利用して、切削状態を調節し、状況に応じて切削に適切な状態とすることができる。このように、振動を極力抑えるためには、危険速度を超えない範囲で回転させることが好ましいが、切削部47による切削を促すために、回転構造体40を危険速度以上に回転させることも可能である。
以上のように、第4実施形態に係る医療デバイス180は、切削部47を有して駆動シャフト60により回転される回転構造体40の重量バランスが、周方向に偏ることができる。これにより、回転構造体40を振れ回るように振動させることができ、広い範囲を切削することが可能となる。
また、第2非切削部183は、駆動シャフト60に対して相対的に回転可能とすることもできる。これにより、第2非切削部183と生体管腔壁との間の摩擦を減少させることができ、生体組織の損傷を低減させて安全性を向上できる。
また、第4実施形態に係る医療デバイス180を用いて生体管腔内の物体を切削するための処置方法は、切削するステップにおいて、重量バランスが周方向に偏った回転構造体40を回転させることで回転構造体40の振動を誘発することができる。これにより、切削部47が生体管腔内の広い範囲の物体を切削できるとともに、回転構造体40が振動しても、第1非切削部56および第2非切削部183により切削部47が生体組織に接触することを抑制できるため、高い安全性を確保できる。
また、切削するステップにおいて、切削部47を有する回転構造体40の回転速度を変化させることで、回転構造体40の生体管腔内での位置および傾きを調節することができる。これにより、回転数を操作することで、回転構造体40の生体管腔内での位置および傾きを容易に調節可能となり、状況に応じて切削に適切な状態とすることができ、操作性が向上する。
<第5実施形態>
本発明の第5実施形態に係る医療デバイス190は、図23に示すように、処置デバイスに設けられる回転構造体の構造が異なり、回転構造体が拡張・収縮する構造ではなく、したがって直動シャフトがなく、かつ操作部に直動シャフトを操作するための移動機構部が設けられない点で、第1実施形態と異なる。なお、第1実施形態と同一の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
処置デバイス191は、図23、24に示すように、回転可能な回転構造体200と、回転構造体200を回転させる駆動シャフト60と、回転構造体200を収容可能な外シース80と、手元側に設けられて操作するための操作部210とを備えている。
回転構造体200は、駆動シャフト60に連結される近位テーパ部201と、近位テーパ部201の遠位側に設けられる第1非切削部202と、第1非切削部202の遠位側に設けられる切削部203と、切削部203の遠位側に設けられる第2非切削部204と、第2非切削部204の遠位側に設けられる遠位テーパ部205とを備えている。回転構造体200の内部には、駆動シャフト60のルーメンが連通してガイドワイヤを挿入可能なガイドワイヤルーメンが形成されている。
第1非切削部202は、回転構造体200において最も外径が大きい部位であり、外周面が滑らかな環状に形成される。第2非切削部204は、回転構造体200において第1非切削部202の次に外径が大きい部位であり、外周面が滑らかな環状に形成される。切削部203は、第1非切削部202および第2非切削部204の間に円筒状に形成されており、外径が軸方向に一定である。
なお、第1非切削部202および第2非切削部204の外径は、同じであってもよく、または、第2非切削部204の方が大きくてもよい。また、切削部203は、第1非切削部202と第2非切削部204の接線Lよりも内側に位置するのであれば、外径が軸方向に一定でなくてもよい。したがって、例えば、図25(A)に示す第1の変形例のように、切削部206が、近位側ほど外径が大きいテーパ状に形成されてもよく、軸方向に沿う断面において中央部が膨らむように突出してもよい。切削部206は、回転構造体200の軸方向に沿う断面における第1非切削部202と第2非切削部204の接線Lよりも内側に位置する。切削部206の外表面には、例えばダイヤモンド粒子などの研磨材が付着されている。または、図25(B)に示す第2の変形例のように、切削部207は、円筒状の部位に形成される複数の開口部の縁部に形成される刃であってもよい。または、切削部208は、図25(C)に示す第3の変形例のように、円筒状の部位に形成される複数のスリットの縁部に形成される刃であってもよい。
回転構造体200の材料は、例えば、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、W、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、などが好適に使用できる。
操作部210は、図23に示すように、駆動シャフト60に回転力を付与する駆動機構部93を備えている。
第5実施形態に係る医療デバイス190を用いて生体管腔内の物体を切削する際には、処置デバイス191を、ガイディングカテーテル140を介して血管内に挿入した後、図26に示すように、回転構造体200を血管内で露出させる。この後、駆動シャフト60を回転させて回転構造体200を回転させ、回転構造体200を推し進めると、切削部203が狭窄部Sに接触し、狭窄部Sが削られる。このとき、第1非切削部202および第2非切削部204によって切削部203が生体組織に接触することが抑制され、生体組織の損傷が抑制されて安全性が確保される。また、第1非切削部202よりも第2非切削部204の方が外径が小さいため、回転構造体200を狭窄部Sに対して押し込むことが容易である。
<第6実施形態>
本発明の第6実施形態に係る医療デバイス210は、第1非切削部および第2非切削部の構造のみが、第5実施形態と異なる。なお、第1、第5実施形態と同一の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
第6実施形態に係る医療デバイス210の処置デバイス211は、図27に示すように、回転構造体220に設けられる第1非切削部221および第2非切削部222が、周方向に分割して配置される。第1非切削部221の周方向に分割される各部位は、回転することで生体組織を損傷させないように、周方向の端部が滑らかな曲面で形成されている。また、第2非切削部222の周方向に分割される各部位も、回転することで生体組織を損傷させないように、周方向の端部が滑らかな曲面で形成されている。
第6実施形態に係る医療デバイス210を用いて生体管腔内の物体を切削する際には、軸方向に沿う断面における第1非切削部221と第2非切削部222の接線Lよりも内側に切削部203が位置するため、回転する切削部203により生体管腔内の物体を適切に切削しつつ、第1非切削部221および第2非切削部222によって切削部203が生体組織に接触することを抑制し、生体組織の損傷を低減させて安全性を向上できる。
また、第1非切削部221および第2非切削部222が周方向に分割されることで、第1非切削部221および第2非切削部222が存在しない位置における軸方向断面では、隣接する第1非切削部221および第2非切削部222が接する接触面Jの内側に切削部203が位置する。このため、第1非切削部221および第2非切削部222が分割して配置されても、第1非切削部221および第2非切削部222によって切削部203が生体組織に接触することを抑制できる。
なお、第1非切削部および第2非切削部の形状は、特に限定されず、例えば図28に示す変形例のように、第1非切削部223および第2非切削部224の周方向に分割される各部位は、球状であってもよい。
<第7実施形態>
本発明の第7実施形態に係る医療デバイス230は、第1非切削部の遠位側および近位側の両側に切削部が設けられる点で、第5実施形態と異なる。なお、第1、第5実施形態と同一の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
第7実施形態に係る医療デバイス230の処置デバイス231は、図29(A)に示すように、回転構造体240に設けられる第1非切削部241の遠位側に遠位切削部243(切削部)が設けられるとともに、第1非切削部241の近位側に近位切削部244(切削部)が設けられる。そして、遠位切削部243の遠位側に第2非切削部242Aが設けられるとともに、近位切削部244の近位側に、他の第2非切削部242Bが設けられる。2つの第2非切削部242A、242Bは、第1非切削部241よりも外径が小さく形成される。
遠位切削部243は、遠位側へ向かって縮径するようにテーパ状に形成され、近位切削部244は、近位側へ向かって縮径するようにテーパ状に形成される。遠位切削部243および近位切削部244の外表面には、例えばダイヤモンド粒子などの研磨材が付着されている。遠位切削部243は、軸方向に沿う断面における第1非切削部241と遠位側の第2非切削部242の接線Lよりも内側に位置している。また、近位切削部244は、軸方向に沿う断面における第1非切削部241と近位側の第2非切削部242の接線Lよりも内側に位置している。
第7実施形態に係る医療デバイス230を用いて生体管腔内の物体を切削する際には、軸方向に沿う断面における第1非切削部241と第2非切削部242の接線Lよりも内側に遠位切削部243および近位切削部244が位置するため、回転構造体240を押し込む際および引き戻す際の両方において、回転する遠位切削部243および近位切削部244により生体管腔内の物体を効果的に切削できる。さらに、第1非切削部241および第2非切削部242によって遠位切削部243および近位切削部244が生体組織に接触することを抑制し、生体組織の損傷を低減させて安全性を向上できる。
以上のように、第7実施形態に係る医療デバイス230は、第2非切削部242A、242Bが、第1非切削部241の遠位側および近位側の両方に設けられ、切削部243、244が、第1非切削部241および遠位側の第2非切削部242Aの間、並びに第1非切削部241および近位側の第2非切削部242Bの間の両方に設けられる。これにより、医療デバイス230は、第1非切削部241の遠位側および近位側に位置する遠位切削部243および近位切削部244により物体を切削でき、切削効率が向上する。また、遠位切削部243は、遠位側へ向かって縮径するようにテーパ状に形成されているため、処置デバイス231を遠位側へ押し込む際に、物体を遠位切削部243により効果的に切削できる。また、近位切削部244は、近位側へ向かって縮径するようにテーパ状に形成されているため、処置デバイス231を近位側へ牽引する際に、物体を近位切削部244により効果的に切削できる。
なお、遠位切削部および近位切削部の形態は、特に限定されず、例えば、図29(B)に示す変形例のように、遠位切削部245および近位切削部246が、軸方向に沿う断面において中央部が膨らむように突出してもよい。
<第8実施形態>
本発明の第8実施形態に係る医療デバイス250は、回転構造体の構造のみが、第5実施形態と異なる。なお、第1、第5実施形態と同一の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
第8実施形態に係る医療デバイス250の処置デバイス251は、図30に示すように回転構造体260に設けられる第1非切削部261および第2非切削部262の間に、螺旋状に刃が形成されたドリル状の切削部263が形成されている。第1非切削部261の外径は、第2非切削部262の外径よりも大きい。切削部263は、遠位側ほど外径が小さく形成されている。切削部263は、軸方向に沿う断面における第1非切削部261と第2非切削部262の接線Lよりも内側に位置する。
回転構造体260の材料は、例えば、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、W、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、などが好適に使用できる。
第8実施形態に係る医療デバイス250を用いて生体管腔内の物体を切削する際には、軸方向に沿う断面における第1非切削部261と第2非切削部262の接線Lよりも内側に切削部263が位置するため、回転する切削部263により生体管腔内の物体を適切に切削しつつ、第1非切削部261および第2非切削部262によって切削部263が生体組織に接触することを抑制し、生体組織の損傷を低減させて安全性を向上できる。
<第9実施形態>
本発明の第9実施形態に係る医療デバイス270は、回転構造体の構造のみが、第5実施形態と異なる。なお、第1、第5実施形態と同一の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
第9実施形態に係る医療デバイス270の処置デバイス271は、図31、32に示すように回転構造体280に設けられる第1非切削部281および第2非切削部282の間に、板状の複数(本実施形態では4つ)の切削用部材284を有している。切削用部材284は、周方向に隙間を開けて並んで配置され、各々の切削用部材284の周方向の端部の刃が、切削部283を構成する。複数の切削用部材284は、全体として、遠位側ほど外径が小さい筒状に形成される。切削部283は、軸方向に沿う断面における第1非切削部281と第2非切削部282の接線Lよりも内側に位置する。
回転構造体280の材料は、例えば、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、W、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、などが好適に使用できる。
第9実施形態に係る医療デバイス270を用いて生体管腔内の物体を切削する際には、軸方向に沿う断面における第1非切削部281と第2非切削部282の接線Lよりも内側に切削部283が位置するため、回転する切削部283により生体管腔内の物体を適切に切削しつつ、第1非切削部281および第2非切削部282によって切削部283が生体組織に接触することを抑制し、生体組織の損傷を低減させて安全性を向上できる。
また、切削部283の間に隙間が形成されているため、ガイドワイヤルーメンを介して近位側から吸引することで、切削したデブリを体外へ排出することもできる。
<第10実施形態>
本発明の第10実施形態に係る医療デバイス290は、回転構造体280に錘が付加される点でのみ、第9実施形態と異なる。なお、第1、第9実施形態と同一の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
第10実施形態に係る医療デバイス290の処置デバイス291は、図33に示すように回転構造体280の遠位部に、回転構造体280に対して固定して配置される固定錘293と、固定錘293に対して回転可能に配置される回転錘292とが設けられる。固定錘293は、重量バランスが周方向の一方へ偏っている。回転錘292は、固定錘293に対して一方側へ回転することで、図34(A)に示すように、ストッパー293に接触して固定錘293と反対方向に重量バランスが偏る第1状態となる。回転錘292は、固定錘293に対して他方側へ回転することで、図34(B)に示すように、固定錘293に接触し、重量バランスが固定錘293に対して反対側とならない第2状態となることができる。
固定錘293および回転錘292の材料は、例えば、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、W、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、などが好適に使用できる。
第10実施形態に係る医療デバイス290を用いて生体管腔内の物体を切削する際に、駆動シャフト60を一方側へ回転させて切削部283による切削を行うと、回転錘292は血管壁や血液などから外力を受けて固定錘293に対して相対的に回転し、図34(A)に示すように、ストッパー293と接触して第1状態となる。このとき、固定錘293および回転錘292は逆方向に位置して、固定錘293および回転錘292の重量バランスがつり合い、回転構造体280の振動が抑制される。
次に、駆動シャフト60を反対側へ回転させて切削部283による切削を行うと、回転錘292は血管壁や血液などから外力を受けて固定錘293に対して相対的に回転し、図34(B)に示すように、固定錘293と接触して第2状態となる。このとき、固定錘293および回転錘292は逆方向に位置せず、固定錘293および回転錘292を合算した重量バランスが偏った状態となり、回転構造体280の振れ回りが誘発され、生体管腔内の広い範囲の物体を切削できる。
以上のように、第10実施形態に係る医療デバイス290を用いて生体管腔内の物体を切削するための処置方法は、切削するステップにおいて、回転構造体280の周方向の重量バランスを変化させることで回転構造体280の生体管腔内での位置および傾きを調節することができる。これにより、重量バランスの変化により回転構造体280の生体管腔内での位置および傾きを容易に調節可能となり、状況に応じて切削に適切な状態とすることができ、操作性が向上する。
<第11実施形態>
本発明の第11実施形態に係る医療デバイス300は、回転構造体280に錘が付加される点でのみ、第9実施形態と異なる。なお、第1、第9実施形態と同一の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
第11実施形態に係る医療デバイス300の処置デバイス301は、図35に示すように回転構造体280の内部に、回転構造体280に対して固定して配置される固定錘302と、固定錘302に対して軸方向に移動可能な移動錘303とが設けられる。固定錘302は、重量バランスが周方向の一方へ偏っている。移動錘303は、手元の操作で軸方向へ移動可能な直動シャフト70に固定され、固定錘302と反対方向に重量バランスが偏る第1状態となることができる。また、移動錘303は、直動シャフト70により軸方向へ移動することで、図36に示すように、固定錘302に対して軸方向へ遠位側または近位側へ移動して第2状態となることができる。
固定錘302および移動錘303の材料は、例えば、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、W、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、などが好適に使用できる。
第11実施形態に係る医療デバイス300を用いて生体管腔内の物体を切削する際に、直動シャフト70を操作して第1状態として切削部283による切削を行うと、固定錘302および移動錘303は逆方向に位置し、図35に示すように、固定錘302および移動錘303の重量バランスが釣り合って、回転構造体280の振動が抑制される。
次に、直動シャフト70を操作して第2状態として切削部283による切削を行うと、図36に示すように、固定錘302と移動錘303の軸方向の位置が異なるため、固定錘302および移動錘303を合算した重量バランスが偏った状態となり、回転構造体280の振れ回りが誘発され、生体管腔内の広い範囲の物体を切削できる。
<第12実施形態>
本発明の第12実施形態に係る医療デバイス310は、図37、38に示すように、回転構造体がバルーンにより拡張・収縮する点で、第5実施形態と異なる。なお、第1、第5実施形態と同一の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
第12実施形態に係る医療デバイス310の処置デバイス311は、回転可能な回転構造体320と、回転構造体320を回転させる駆動シャフト340と、回転構造体320を収容可能な外シース80と、手元側に設けられて操作するための操作部330とを備えている。
回転構造体320は、近位側バルーン321と、近位側バルーン321から離れて遠位側に設けられる遠位側バルーン322と、近位側バルーン321と遠位側バルーン322の間に配置される複数の梁状の切削用部材323とを備えている。近位側バルーン321および遠位側バルーン322は、内部が中空であり、内部に流体が流入することで径方向に拡張し、流体を排出することで径方向に収縮する。駆動シャフト340は、同軸的な二重管構造となっており、2つの管の間のルーメンが、近位側バルーン321および遠位側バルーン322に連通する拡張用ルーメンである。拡張用ルーメンは、近位側バルーン321および遠位側バルーン322を拡張または収縮させるために、流体を流通させるルーメンである。駆動シャフト340の最も内側のルーメンは、ガイドワイヤを挿入可能なガイドワイヤルーメンである。近位側バルーン321の外周面に第1非切削部324が形成され、遠位側バルーン322の外周面に第2非切削部325が形成される。近位側バルーン321および遠位側バルーン322の外径は等しいが、異なってもよい。
切削用部材323は、遠位側端部が遠位側バルーン322の近位側に固定されており、近位側端部が近位側バルーン321の遠位側に固定されている。複数の切削用部材323は、周方向に隙間を開けて並んで配置され、各々の切削用部材323の周方向の端部の縁(刃)が、切削部326を構成する。切削部326は、軸方向に沿う断面における第1非切削部324と第2非切削部325との接線Lよりも内側に位置する。切削用部材323は、近位側バルーン321および遠位側バルーン322が拡張すると、周方向の隙間が拡がり、全体として外径が大きくなるように移動する。また、切削用部材323は、近位側バルーン321および遠位側バルーン322が収縮すると、周方向の隙間が狭くなり、全体として外径が小さくなるように移動する。切削用部材323は、軸方向に沿う断面において中央部が窪んで形成されているが、近位側バルーン321および遠位側バルーン322が拡張した状態で切削部326が接線Lよりも内側に位置するのであれば、形状は限定されない。
切削用部材323の構成材料は、特に限定されないが、例えば、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、W、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、などが好適に使用できる。
近位側バルーン321および遠位側バルーン322の構成材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィンや、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が好適に使用できる。
操作部330は、駆動シャフト340に回転力を付与する駆動機構部93の近位側に、ポート331が設けられる。ポート331は、回転する駆動シャフト340の端部を回転可能に収容し、かつ駆動シャフト340の拡張用ルーメンに連通する。ポート331は、生理食塩液や造影剤などの拡張用流体を収容したシリンジ等を接続可能である。
第12実施形態に係る医療デバイス310を用いて生体管腔内の物体を切削する際には、近位側バルーン321および遠位側バルーン322が収縮した状態の処置デバイス311を血管内に挿入し、目的の位置まで押し込む。この後、拡張用流体が収容されるシリンジをポート331に接続し、拡張用流体を供給する。これにより、拡張用流体が拡張用ルーメンを通って近位側バルーン321および遠位側バルーン322の内部に流入し、近位側バルーン321および遠位側バルーン322が拡張する。これにより、切削用部材323の周方向の隙間が拡がり、切削用部材323が全体として拡径するように移動する。この後、駆動シャフト340を回転させると、回転構造体320の切削部326が回転し、生体管腔内の物体を切削できる。このとき、切削部326が、第1非切削部324と第2非切削部325の接線Lよりも内側に位置するため、第1非切削部324と第2非切削部325によって切削部326が生体組織に接触することが抑制され、高い安全性が確保される。生体管腔内の物体を切削した後、拡張用ルーメンを介して近位側バルーン321および遠位側バルーン322の内部の流体を排出することで、近位側バルーン321および遠位側バルーン322が収縮し、切削用部材323が全体として縮径するように移動する。これにより、処置デバイス311を円滑に血管から抜去できる。
以上のように、第12実施形態に係る医療デバイス310では、第1非切削部324および第2非切削部325が、内部に流体を流入および流出させることで径方向へ拡張および収縮が可能な近位側バルーン321および遠位側バルーン322に配置される。これにより、近位側バルーン321および遠位側バルーン322を収縮させて、細い管腔内を移動させることが容易である。また、近位側バルーン321および遠位側バルーン322が拡張することで、切削部326が拡径するため、切削部326を切削に望ましい大きさに設定することが可能である。
<第13実施形態>
本発明の第13実施形態に係る医療デバイス350は、図39に示すように、回転構造体の近位部のみがバルーンにより拡張・収縮する点で、第12実施形態と異なる。なお、第1、第12実施形態と同一の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
第13実施形態に係る医療デバイス350の処置デバイス351は、回転可能な回転構造体360と、回転構造体360を回転させる駆動シャフト340と、回転構造体320を収容可能な外シース80と、手元側に設けられて操作するための操作部330(図37を参照)とを備えている。
回転構造体360は、近位側バルーン321と、近位側バルーン321から離れて遠位側に設けられるバルーンではない筒体361と、近位側バルーン321と筒体361の間に配置される複数の梁状の切削用部材363とを備えている。近位側バルーン321は、内部が中空であり、内部に流体が流入することで径方向に拡張し、流体を排出することで径方向に収縮する。駆動シャフト340は、同軸的な二重管構造となっており、2つの管の間のルーメンが、近位側バルーン321に連通する拡張用ルーメンである。拡張用ルーメンは、近位側バルーン321を拡張または収縮させるために、流体を流通させるルーメンである。近位側バルーン321の外周面に第1非切削部324が形成され、筒体361の外周面に第2非切削部362が形成される。拡張した近位側バルーン321の外径は、筒体361の外径よりも大きい。
切削用部材363は、遠位側端部が筒体361の近位側に固定されており、近位側端部が近位側バルーン321の遠位側に固定されている。複数の切削用部材363は、周方向に隙間を開けて並んで配置され、各々の切削用部材363の周方向の端部の縁(刃)が、切削部364を構成する。切削部364は、軸方向に沿う断面における第1非切削部324と第2非切削部362の接線Lよりも内側に位置する。切削用部材363は、近位側バルーン321が拡張すると、周方向の隙間が拡がり、全体として外径が大きくなるように移動する。また、切削用部材323は、近位側バルーン321が収縮すると、周方向の隙間が狭くなり、全体として外径が小さくなるように移動する。
切削用部材363の構成材料は、特に限定されないが、例えば、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、W、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、などが好適に使用できる。
第13実施形態に係る医療デバイス350を用いて生体管腔内の物体を切削する際には、近位側バルーン321が収縮した状態の処置デバイス351を血管内に挿入し、目的の位置まで押し込む。この後、拡張用流体が収容されるシリンジをポート331(図37を参照)に接続し、拡張用流体を供給する。これにより、拡張用流体が拡張用ルーメンを通って近位側バルーン321の内部に流入し、近位側バルーン321が拡張する。近位側バルーン321が拡張すると、切削用部材363の近位部において周方向の隙間が拡がり、切削用部材363が全体として遠位側が細い円錐状に拡径するように移動する。この後、駆動シャフト340を回転させると、回転構造体360の切削部364が回転し、生体管腔内の物体を切削できる。このとき、切削部64が、第1非切削部324と第2非切削部362の接線Lよりも内側に位置するため、第1非切削部324と第2非切削部362によって切削部364が生体組織に接触することが抑制され、高い安全性が確保される。さらに、切削部364は、遠位側へ向かって縮径するようにテーパ状に形成されているため、処置デバイス351を遠位側へ押し込む際に、物体を切削部364により効果的に切削できる。
生体管腔内の物体を切削した後、拡張用ルーメンを介して近位側バルーン321の内部の流体を排出することで、近位側バルーン321が収縮し、切削用部材363が全体として縮径するように移動する。これにおり、処置デバイス351を血管から抜去できる。
以上のように、第13実施形態に係る医療デバイス350は、第1非切削部324が、内部に流体を流入および流出させることで径方向へ拡張および収縮が可能な近位側バルーン321に配置される。これにより、近位側バルーン321を収縮させて、細い管腔内を移動させることが容易である。また、近位側バルーン321が拡張することで、切削部364が拡径するため、切削部364を切削に望ましい大きさに設定することが可能である。
<第14実施形態>
本発明の第14実施形態に係る医療デバイス370は、図40に示すように、回転構造体380および外シース390の構造が、第5実施形態と異なる。なお、第1、第5実施形態と同一の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
第14実施形態に係る医療デバイス370の処置デバイス371は、回転可能な回転構造体380と、回転構造体380を回転させる駆動シャフト60と、回転構造体380を収容可能な外シース80と、手元側に設けられて操作するための操作部210(図23を参照)とを備えている。
回転構造体380は、円筒状の円筒部381と、円筒部381の遠位部から遠位側に向かって縮径するテーパ部382と、テーパ部382の遠位側に位置する筒体383とを有する。筒体383の外周面に第2非切削部384が形成される。
円筒部381は、外径が一定であり、外周面に螺旋状の刃である近位切削部387(切削部)が形成される。テーパ部382は、外周面に螺旋状の刃である遠位切削部388(切削部)が形成される。
回転構造体380の構成材料は、特に限定されないが、例えば、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、W、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、などが好適に使用できる。
外シース390は、遠位側の端部に、近位側よりも外径および内径が大きい収容部391が形成されている。収容部391は、回転構造体380の近位切削部387を収容可能である。外シース390は、駆動シャフト60および回転構造体380に対して軸方向へ移動可能である。収容部391の遠位部の外周面に、第1非切削部392が形成され、収容部391の第1非切削部392よりも近位側に第2非切削部393が形成される。収容部391の第1非切削部392と第2非切削部393の間には、外周面から内周面へ貫通する開口部396が形成されている。開口部396は、周方向に360度未満で形成される。
外シース390は、図41(A)に示すように、収容部391よりも近位側に第1湾曲部394が形成され、第1湾曲部394よりも近位側に第2の湾曲部395が形成されている。第1湾曲部394および第2湾曲部395は、略同等の角度で逆方向へ曲がっている。このため、外シース390の第2湾曲部395よりも近位側の部位の中心軸X1と、第1湾曲部394よりも遠位側の部位の中心軸X2が、略平行でありつつ離れている。収容部391の開口部396は、中心軸X2に対して中心軸X1が位置する側の反対側に形成されている。
外シース390の収容部391が近位切削部387を収容した状態において、開口部396から露出する近位切削部387は、軸方向に沿う断面における第1非切削部392と第2非切削部393の接線Lよりも内側に位置する。また、遠位切削部388は、軸方向に沿う断面における第1非切削部392と回転構造体380の第2非切削部384との接線Lよりも内側に位置する。
外シース390の構成材料は、特に限定されないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、などが好適に使用できる。また、複数の材料によって構成されてもよく、線材などの補強部材が埋設されてもよい。
第14実施形態に係る医療デバイス370を用いて血管内の狭窄部Sを切削する際には、処置デバイス371を血管内に挿入し、外シース390の収容部391に、近位切削部387を収容する。この状態で駆動シャフト60を回転させると、図41(A)に示すように、回転構造体380の近位切削部387および遠位切削部388が回転し、生体管腔内の狭窄部Sを切削できる。このとき、遠位切削部388が、第1非切削部392と第2非切削部384の接線Lよりも内側に位置するため、遠位切削部388が生体組織に接触することが抑制され、高い安全性が確保される。また、遠位切削部388は、遠位側へ縮径するテーパ部382に形成されているため、回転構造体380を遠位側へ押し込むことで、狭窄部Sを効果的に切削できる。
また、開口部396から露出している近位切削部387が、第1非切削部392と第2非切削部393の接線Lよりも内側に位置するため、近位切削部387が生体組織に接触することが抑制され、高い安全性が確保される。また、開口部396が、周方向の360度未満の範囲で形成されるため、近位切削部387により切削する周方向の範囲を限定できる。このため、近位切削部387により切削する位置を、状況に応じて適切な位置に設定できる。また、開口部396が、中心軸X2に対して中心軸X1が位置する側の反対側に形成されるため、開口部396が生体組織に近接し、近位切削部387により効果的に狭窄部Sを切削できる。また、外シース390を中心軸X1を中心に回転させることで、図41(B)に示すように、開口部396を周方向の他の位置で生体組織に近接させることができる。このように、外シース390を回転させつつ近位切削部387を切削することで、狭窄部Sを全周にわたって、または部分的に切削できる。切削する際には、外シース390の近位側にシリンジ等を連結して、切削した物体を外シース390の内腔を利用して吸引することもできる。また、外シース390を回転構造体380よりも近位側へ移動させることで、近位切削部387を収容部391に収容せずに、近位切削部387により狭窄部Sを切削することもできる。
以上のように、第14実施形態に係る医療デバイス370は、駆動シャフト60を相対的に回転可能に収容可能であるとともに近位切削部387の一部を覆うことが可能であり、外周面に第1非切削部392および第2非切削部393の少なくとも一方(本実施形態では両方)が配置される外シース390を有する。これにより、近位切削部387が生体組織に接触することを抑制し、生体組織の損傷を低減させて安全性を向上できる。さらに、第1非切削部392および第2非切削部393が、近位切削部387とともに回転しないため、第1非切削部392および第2非切削部393が生体組織に接触しても、組織に対して回転力が作用し難くなる。このため、近位切削部387の位置を望ましい位置に保持でき、望ましい位置を切削できる。
また、外シース390は、駆動シャフト60に対して軸方向に沿って移動可能である。これにより、近位切削部387および遠位切削部388に対して外シース390を移動させて、切削条件を自在に変更でき、状況に応じて切削に適切な状態とすることができる。外シース390に第1非切削部392および第2非切削部393が設けられる場合には、第1非切削部392および第2非切削部393の位置を、近位切削部387および遠位切削部388に対して自在に変更でき、状況に応じて切削に適切な状態とすることができる。
また、外シース390は、外周面に第1非切削部392および第2非切削部393が配置され、第1非切削部392および第2非切削部393の間に、周方向に360度未満の範囲で外周面から内周面へ貫通して外シース390に収容された近位切削部387を露出させる開口部396を有する。これにより、外シース390の開口部396の位置を調節することで、開口部396を介して近位切削部387により切削する位置を調節することが可能となる。
<第15実施形態>
本発明の第15実施形態に係る医療デバイス400は、図42、43に示すように、回転構造体410の構造が、第5実施形態と異なる。なお、第1、第5実施形態と同一の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
第15実施形態に係る医療デバイス400の処置デバイス401は、回転可能な回転構造体410と、回転構造体410を回転させる駆動シャフト60と、回転構造体410を収容可能な外シース430と、軸受440と、手元側に設けられて操作するための操作部210(図23を参照)とを備えている。回転構造体410と駆動シャフト60の内部には、ガイドワイヤルーメン425が設けられている。
回転構造体410は、円筒状の第1円筒部411と、第1円筒部411よりも近位側に位置する第2円筒部412を有している。さらに、回転構造体410は、第1円筒部411から遠位側に向かって縮径する第1テーパ部413と、第1円筒部411から近位側に向かって縮径する第2テーパ部414と、第2円筒部412の遠位側で段差状に径が大きくなる段差部415と、段差部415から遠位側に向かって縮径する第3テーパ部416とを有している。第1円筒部411は、外周面に第1非切削部424が設けられる。第1テーパ部413は、周方向の一部に、軸直交断面においてV字状となるように切り込まれた第1切り込み部417を有し、第1切り込み部417の縁部に刃である第1切削部418が設けられる。なお、第1切り込み部417は、周方向に1つのみ設けられても、2つ以上設けられてもよい。第1テーパ部413は、遠位側の端部の外周面に、周方向に第1切り込み部417が形成されていない第2非切削部419が設けられる。第2テーパ部414は、周方向の一部に、軸直交断面においてV字状となるように切り込まれた第2切り込み部420を有し、第2切り込み部420の縁部に刃である第2切削部421が設けられる。なお、第2切り込み部420は、周方向に1つのみ設けられても、2つ以上設けられてもよい。第3テーパ部416は、周方向の一部に、軸直交断面においてV字状となるように切り込まれた第3切り込み部422を有し、第3切り込み部422の縁部に刃である第3切削部423が設けられる。なお、第3切り込み部422は、周方向に1つのみ設けられても、2つ以上設けられてもよい。第3切り込み部422および第3切削部423は、段差部415および第2円筒部412にも連続して形成されている。
第2テーパ部414と第3テーパ部416は、中心軸を通る縦断面において外周面がV字形状となるように連結されている。第2テーパ部414の軸直交断面に対する角度θ1は、第3テーパ部416の軸直交断面に対する角度θ2以下である。このため、第2テーパ部414の第2切削部421よりも、第3テーパ部416の第3切削部423の方が、広い範囲に設けられる。第3テーパ部416の第3切削部423は、主に処置デバイス401を押し込む際に物体を切削し、第2テーパ部414の第2切削部421は、主として処置デバイス401を牽引する際に物体を切削する。通常、処置デバイス401を牽引する際よりも押し込む際に、より多くの物体を切削する必要があるため、角度θ1を角度θ2以下とすることで、切削に適切な形状とすることができる。
回転構造体410の構成材料は、特に限定されないが、例えば、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、W、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、などが好適に使用できる。
外シース430は、遠位側の端部に、回転構造体410の第2円筒部412を回転可能に収容する。外シース430の遠位側の外周面に、第2非切削部431が設けられる。
外シース430の構成材料は、特に限定されないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、などが好適に使用できる。また、複数の材料によって構成されてもよく、線材などの補強部材が埋設されてもよい。
軸受440は、外シース430と駆動シャフト60の間に配置される。軸受440が設けられることで、駆動シャフト60および回転構造体410が、外シース430に対して円滑に回転可能である。
第1切削部418は、第1非切削部424と第2非切削部419の接線Lよりも内側に位置する。また、第2切削部421および第3切削部423は、第1非切削部424と第2非切削部431の接線Lよりも内側に位置する。
第15実施形態に係る医療デバイス400を用いて血管内の狭窄部Sを切削する際には、処置デバイス401を血管内に挿入する。次に、駆動シャフト60を回転させると、図44(A)に示すように、回転構造体410の第1切削部418、第2切削部421および第3切削部423が回転し、生体管腔内の狭窄部Sを切削できる。このとき、第1切削部418が、第1非切削部424と第2非切削部419の接線Lよりも内側に位置するため、第1切削部418が生体組織に接触することが抑制され、高い安全性が確保される。また、第2切削部421および第3切削部423が、第1非切削部424と第2非切削部431の接線Lよりも内側に位置するため、第2切削部421および第3切削部423が生体組織に接触することが抑制され、高い安全性が確保される。
また、第1切削部418および第3切削部423は、遠位側へ向かって縮径するテーパ状の部位に形成されているため、処置デバイス401を遠位側へ押し込む際に、狭窄部Sを効果的に切削できる。さらに、第2切削部421は、近位側へ向かって縮径するテーパ状の部位に形成されているため、図44(B)に示すように、処置デバイス401を近位側へ牽引する際に、狭窄部Sを効果的に切削できる。
以上のように、第15実施形態に係る医療デバイス400は、第1非切削部424と第2非切削部431の間に、近位側へ縮径する第2切削部421と、遠位側へ縮径する第3切削部423とを有する。このため、処置デバイス401を押し込む場合と牽引する場合の両方で、第1非切削部424と第2非切削部431の間に設けられる第2切削部421および第3切削部423により、狭窄部Sなどの物体を安全かつ効果的に切削できる。
<第16実施形態>
本発明の第16実施形態に係る医療デバイス450は、図45に示すように、回転構造体460の構造が、第5実施形態と異なる。なお、第1、第5実施形態と同一の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
第16実施形態に係る医療デバイス450の処置デバイス451は、回転可能な回転構造体460と、回転構造体460を回転させる駆動シャフト60と、駆動シャフト60を回転可能に収容する外シース80と、手元側に設けられて操作するための操作部210(
図23を参照)とを備えている。回転構造体460と駆動シャフト60の内部には、ガイドワイヤルーメンが設けられている。
回転構造体460は、外周面が滑らかな非切削部461と、非切削部461の遠位側に位置する第1切削部462と、非切削部461の近位側に位置する第2切削部463とを有している。非切削部461は、回転構造体460において最も外径が大きい部位(最大外径部)であり、外周面が滑らかな円筒状に形成される。第1切削部462は、非切削部461から遠位側に向かってテーパ状に縮径している。第2切削部463は、非切削部461から近位側に向かってテーパ状に縮径している。
第1切削部462と第2切削部463の外表面には、図46に示すように、例えばダイヤモンド粒子などの研磨材465が、ニッケルメッキ層などの固定層466によって固定されている。したがって、第1切削部462および第2切削部463の非切削部461に隣接する部位に、非切削部461よりも外径が大きい固定層466および砥粒465が存在し得る。しかしながら、非切削部461よりも外径が大きくなる砥粒465および固定層466は非常に少なく、突出量Pも小さく、研磨における貢献は非常に限定的で微小である。砥粒465および固定層466の非切削部461から径方向外側への突出量Pは、例えば100μm以下であり、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは20μm以下である。したがって、砥粒465または固定層466が非切削部461よりも突出する構成となる回転構造部460の最大外径部は、実質的に非切削部461である。
第16実施形態に係る医療デバイス450を用いて血管内の狭窄部Sを切削する際には、処置デバイス451を血管内に挿入する。狭窄部Sが、図47に示すように、血管の周方向に偏って設けられる場合、駆動シャフト60を回転させて押し込むと、回転構造体460の第1切削部462が狭窄部Sおよび血管に接触する。このため、第1切削部462は、狭窄部Sを切削するとともに、血管をも切削する。しかしながら、最も外径の大きい非切削部461が、血管に滑らかに接触するため、非切削部461よりも外径の小さい第1切削部462による血管の損傷を最小限に抑え、血管穿孔の可能性を低減できる。この後、回転構造体460の進退移動を繰り返すことで、非切削部461により血管の損傷を抑制しつつ、第1切削部462および第2切削部463により狭窄部Sを効果的に切削できる。第1切削部462は、遠位側へ向かって縮径しているため、処置デバイス451を遠位側へ押し込む際に、狭窄部Sを効果的に切削できる。第2切削部462は、近位側へ向かって縮径しているため、処置デバイス451を近位側へ牽引する際に、狭窄部Sを効果的に切削できる。
以上のように、第16実施形態に係る医療デバイス450は、生体管腔内の物体を切削するためのデバイスであって、回転可能な駆動シャフト60と、駆動シャフト60の遠位側に連結されて駆動シャフト60により回転される回転構造体460と、を有し、回転構造体460は、物体を切削するための第1切削部462および第2切削部463と、生体組織に対して滑らかに接触可能な非切削部461と、を有し、非切削部461は、回転構造体460の最大外径部に位置する。上記のように構成した医療デバイス450は、回転構造体460の最大外径部に非切削部461が位置するため、回転する第1切削部462および第2切削部463により生体管腔内の物体を効果的に切削しつつ、非切削部461によって第1切削部462および第2切削部463による生体組織の損傷を最小限に抑制できる。このため、生体組織の損傷を低減させて、安全性を向上できる。
また、本発明は、生体管腔内の物体を切削するための処置方法をも提供する。当該処置方法は、上述の医療デバイス450を用いて生体管腔内の物体を切削するための処置方法であって、回転構造体460を生体管腔内へ挿入するステップと、回転構造体460を回転させ、非切削部461を生体組織に接触させつつ第1切削部462および第2切削部463により生体管腔内の物体を切削するステップと、回転構造体460を生体管腔内から抜去するステップと、を有する。当該処置方法によれば、切削するステップにおいて、回転構造体460の最大外径部に位置する非切削部461が生体組織に接触するため、第1切削部462および第2切削部463により生体管腔内の物体を効果的に切削しつつ、非切削部461によって第1切削部462および第2切削部463による生体組織の損傷を最小限に抑制できる。このため、生体組織の損傷を低減させて、安全性を向上できる。
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、医療デバイスが挿入される生体管腔は、血管に限定されず、例えば、脈管、尿管、胆管、卵管、肝管等であってもよい。
また、第1実施形態では、第1非切削部56が拡張可能であるが、第2非切削部を拡張可能とすることもできる。例えば、第1非切削部および第2非切削部を拡張可能とするために、第1非切削部および第2非切削部を、流体を注入することで拡張するバルーンにより形成してもよい。
また、捕集デバイスは、フィルターを用いてデブリを捕集する機構でなくてもよく、脱落したデブリを捕集できる他の機構(例えば吸引機構)を備えてもよい。また、医療デバイスは、デブリを捕集する捕集デバイスを備えなくてもよい。
さらに、本出願は、2016年3月23日に出願された日本特許出願番号2016−58362号に基づいており、それらの開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。