JPWO2017145706A1 - 薄膜部材の湾曲加工方法 - Google Patents

薄膜部材の湾曲加工方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、等方性エッチング等エッチングの停止位置とIIB加工の曲がり始め位置が異なるような薄膜部材の湾曲加工方法を実現することを課題とする。
基板10上に支持層形成用出発層20’及び薄膜部材形成用出発層30’を積層する工程と、薄膜部材形成用出発層30’をパタン化して薄膜部材30を形成する工程と、薄膜部材の上に位置制御層支持層形成用出発層60’を介して、薄膜部材の片持ち梁構造がイオンを照射することにより曲がり始める位置を決定する位置制御層50を形成する工程と、薄膜部材の下の該支持層形成用出発層20’の一部及び位置制御層支持層形成用出発層60’の一部を、支持層の周縁面21及び位置制御層支持層60の端面61が、位置制御材層の先端51の下方延長線上もしくはそれより内側にあるように除去して、薄膜部材30に先端自由端41を有する片持ち梁構造40を形成する工程と、位置制御層50をマスクとして片持ち梁構造の一部にイオンを照射し、片持ち梁構造40の一部を湾曲させる工程と、を含む薄膜部材の湾曲加工方法。

Description

本発明は、イオン注入技術を応用した薄膜部材の微細曲げ加工に関し、その曲げ位置制御を改善し、その構造の集積密度を向上する薄膜部材の湾曲加工方法に関するものである。
本発明が寄与する技術分野は、半導体集積回路の製造、NEMS/MEMS(微小電気機械システム)デバイスの製造、光デバイス及び光集積回路の製造や、それらを集積化した融合デバイスの製造をはじめとする薄膜部材のマイクロメートルからナノメートルオーダーの微細な加工が必要とされる技術分野において、特に従来からある平面的な構造ではなく、三次元的な構造を必要とする技術分野に適用される。
上述のようなマイクロメートルからナノメートルオーダーの微細な寸法のデバイスの製造は、フォトリソグラフィ技術を中核に据え、シリコンなどの半導体材料や、石英(シリカ)などの絶縁体材料や、金属などの導体材料を、成膜やパタニングを繰り返して幾層にも積層していく工程で構成される。そして上記材料を成膜するための堆積技術と、成膜された薄膜をパタニングするためのエッチング技術がこの一連のプロセスにおいてフォトリソグラフィ技術に次ぐ基盤技術となっている。
しかし、いくつかの例外を除いて従来の堆積技術やエッチング技術は、加工対象となる薄膜部材の寸法がおよそ厚さ1μm未満に限定されている。例えば、堆積技術の場合、厚さ200nm以上の成膜を実施するには、薄膜の内部応力の増大による基板の反りや堆積された薄膜の剥離や、基板全面に均質な薄膜を実施することの困難性、加えて成膜装置のメンテンナンス頻度の増加などの課題がある。幾つかの絶縁体材料では、それらの課題を克服して厚さ200nm以上の成膜が実用化されているが、それでもおよそ厚さ1μm未満に制限されているのが実態である。
一方、エッチング技術の場合、深さ200nm以上のエッチングを実施するには、レジスト材料の耐久性の課題や、微細孔の場合は形状の制御性などの課題がある。それでも近年、シリコンなどの深掘りエッチングが実用化されて深さ100μmの加工が実用化されてはいるが、応用分野はNEMS/MEMSデバイスの製造や、シリコンウェハの貫通穴電極作製にほぼ限られている。
すなわち、既存の微細加工技術は、基板の表面のせいぜい1μm未満の極薄い平面的な領域における加工技術であると言え、1μmを超える高さの立体的な構造を加工することは不得手としている。
近年、上記堆積技術とエッチング技術だけでは実現が困難な三次元的な立体構造を実現する微細加工技術として、イオン注入技術を応用した薄膜部材の湾曲加工技術が開示された。(特許文献1ないし4及び非特許文献5ないし7参照)
この手法に依れば、堆積技術やエッチング技術では構築し得なかった1μm〜100μmの立体的な微細構造を形成できるため、その応用使途は極めて広範なものとなる。
このイオン注入による湾曲加工技術(IIB技術(Ion Implantation Bending、又はIon Induced Bending))では、薄膜部材にイオンを注入し、その注入イオンによって生じる応力が薄膜の変形を引き起こす現象を利用している。加工する薄膜部材は予め片持ち梁構造を形成しておき、該片持ち梁構造にイオン注入を行う。片持ち梁構造の平面形状は矩形や三角形などの単純な形状に限らず、円弧を含むような複雑な形状でもフォトリソグラフィとエッチングを使えばある程度自在に選ぶことができる。つまり、IIB技術は二次元にパタニングした薄膜を折り曲げて立体化することができる技術である。また、湾曲加工の曲率半径は、マイクロメートルオーダーの緩やかな曲線も、ナノメートルオーダーの垂直に折り曲げた小さな角も加工可能である。
IIB技術の基盤となっているイオン注入技術は、シリコンLSI製造工程において不純物導入に利用される中核技術で、既に成熟した大量生産技術である。IIB技術は成熟技術であるイオン注入を応用しているため、加工の均一性や再現性は極めて高い。更には、LSIなどの既存のエレクトロニクスデバイスや、NEMS/MEMSデバイスや、光デバイス及び光集積回路との高いプロセス融合性も有する技術である。
もっとも、薄膜部材の湾曲加工と言うことだけであるならば、非特許文献1に開示されている“マイクロ折り紙”や、非特許文献2に開示されている真空電子源の作製方法、非特許文献3に開示されているメタマテリアルの作製方法、非特許文献4に開示されているシリコン光結合器の作製方法における加工法がある。しかし、これらはいずれも薄膜部材の成膜時に生じた内部応力を解放することで曲げ加工を図る技術である。これらの手法では、応力の異なる二種類の材質を積層し、その後、犠牲層と呼ばれる薄膜部材支持層を除去することにより、内部応力を解放して薄膜部材を物理的に自己変形させる。
ところがこの手法では薄膜部材の内部応力を高精度に制御する必要があるため、適応できる材料の選択肢が少なく、生産性や汎用性の面で短所がある。また、実現できる曲率半径は膜厚2.1μmの例では曲率半径約64μm、膜厚0.11μmの例では曲率半径約20μm、膜厚0.07μmの例では曲率半径約1.1μmというように、薄膜部材の厚さの15倍から180倍程度と大きく微細化に制限がある。加えて、薄膜部材は内部応力の制御を優先して選定せざるを得ないため、デバイスとして肝心な電気特性や光学特性を犠牲にしてしまう。
対して上述のIIB技術は、薄膜部材にイオンを注入し、これによって生じる応力を利用して、微細な薄膜構造の曲げ加工を実現するものである。つまり、照射イオンの運動エネルギーが変形の原動力である。その応力はイオンの運動エネルギーと注入量で制御可能であるため、極めて高い面内均一制御が可能である。
また、実現できる曲率半径は、厚さ0.1μmの薄膜の曲げ加工の場合に0.1μmとなり、上記のマイクロ折り紙技術に代表される従来型の積層膜の内部応力を原動力とした薄膜曲げ加工技術に比べて15分の1から180分の1の微細なサイズの湾曲加工が可能である。
また、IIB技術は非常に汎用性の高い技術である。特許文献2に既に開示されているが薄膜部材の材質は何であっても大方曲がり得ると言える。
その内容から推測するに、微細加工プロセスによく利用される材料の中では、シリコンなどの半導体や、モリブデン、タングステン、タンタル、テクネチウム、レニウム、コバルト、ニッケル、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銅、銀、金、鉛、ゲルマニウムなどの金属や、タングステンシリサイド、モリブデンシリサイド、タンタルシリサイド、チタンシリサイド、コバルトシリサイド、クロムシリサイド、ニッケルシリサイドなどのシリコン化合物や、炭素、炭化シリコン、炭化タンタル、炭化チタン、炭化モリブデン、炭化ニオブ、炭化ハフニウム、炭化タングステン、炭化バナジウム、ダイヤモンドライクカーボンなどの炭素系材料や、窒化チタン、窒化アルミニウム、窒化シリコン、窒化タンタル、窒化ホウ素、窒化クロム、窒化ジルコニウムなどの窒化物や、酸化インジウム錫、酸化亜鉛アルミニウム、酸化亜鉛、酸化インジウムガリウム亜鉛などの透明導電膜は、片持ち梁構造の形成プロセスで最もよく使われる弗化水素酸に対する耐薬品性が高いことを特徴とするため利用されやすい。また、原子番号が小さい材料、質量が小さな材質、密度の小さな材料ほど良く曲がるため、少ない照射量で大きな変形角度が得られることも分かっている。
薄膜部材の膜厚に関しては、特許文献1ないし4及び非特許文献5ないし7に既に開示されているとおり、20nm〜240nmの薄膜が主な加工対象となるが、それよりも薄い場合や厚い場合でも、イオン照射条件を選べば加工可能である。
また、片持ち梁構造の長さに関しても特許文献1ないし4及び非特許文献5ないし7に既に開示されているとおり、0.5μmから50μmの片持ち梁を加工可能であるとある。原理上、片持ち梁が形成できさえすれば、それよりも短くても長くても加工可能であることは明らかである。
IIB技術に用いるイオン種には特に制限がないことが特許文献2に既に開示されている。イオン注入装置を用いる場合はリン、硼素、砒素、インジウム、アンチモン、弗化硼素、アルミニウム、窒素、アルゴン、弗化シリコン、シリコン、水素化硼素、水素化炭素が、FIB装置を用いる場合はガリウムが一般的に備わっているため利用されやすい。
また、半導体プロセスではあまり利用されないが、水素、ヘリウム、炭素、酸素、フッ素、ネオン、マグネシウム、硫黄、塩素、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ゲルマニウム、クリプトン、ルビジウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、パラジウム、銀、カドミウム、錫、ヨウ素、キセノン、ハフニウム、タングステン、イリジウム、白金、金、鉛、ビスマス、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロビウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムなども実用的なイオン注入が可能なイオンであるためIIB技術に用いることが容易である。
また、質量が大きなイオン種ほど薄膜部材をよく曲げられるため、少ない照射量で大きな変形角度が得られることも分かっている。イオン種は1種の方が制御性は高くなる。
しかし、質量分析が困難な場合や、質量分析器を未搭載の装置でIIB技術を実施する場合には複数種が混合されたイオンを用いることも可能である。
[電気測定用プローブへの応用例]
(従来技術とその課題)
IIB技術のメリットを説明するために、電気測定用プローブへの応用例を示す。原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope; AFM)などの走査型プローブ顕微鏡(SPM)のプローブや、シリコンLSIのデバイステスター用のプローブでは、エッチング技術を駆使した立体的な高アスペクト比の先鋭構造が利用されている。シリコン単結晶の異方性エッチングで作製されるタイプが主流であり、寸法は底辺長10μm〜100μm、高さ10μm〜100μmの四角錐のピラミッド形状のプローブが広く利用されている。材料として単結晶シリコンが選ばれている理由は、異方性エッチングで自己整合的に高アスペクト比の先鋭構造が形成されるためである。
しかし、シリコンは金属に比べ電気抵抗が高いため、繰り返し電流が流れることによる劣化が課題となっている。また、接触式のプローブとして利用する場合には機械的な耐久性も金属に比べてシリコンは低いため課題となる。本来は、電気測定用プローブの材料はタングステンのような耐久性が高い金属が望ましいが、立体構造を形成するための製造プロセスが他にはないため、シリコンで代用されているというのが現状である。もし、タングステンなどの金属で高アスペクト比のプローブを形成できれば、これらの課題は克服でき、これまでよりも自由度の高いプローブ形状やプローブアレイ配列を実現できる。
(IIB技術の応用)
IIB技術は幅広い材料に適用可能であるためタングステンのような高融点・高硬度の加工難易度が高い金属を湾曲加工することも容易に可能である。手順を以下に示す。まず、厚さ20nm〜200nm程度のタングステン薄膜に必要に応じてダブルパターニングなどを駆使して先端をナノメートルオーダーに先鋭化した底辺1μm高さ100μmの三角形を二次元的にパタニングする。次に、この二次元の三角形パタン化金属薄膜を犠牲層エッチング技術と超臨界乾燥技術などを使用して片持ち梁構造に加工する。そして、三角形のタングステン薄膜の片持ち梁構造にイオン注入を行うことで、高さ100μm、厚さ20nm〜200nm程度、底辺1μmの高アスペクト比の立体構造を形成できる。従来法のシリコンの異方性エッチング技術は、エッチングされる結晶方位の角度が一定であるためピラミッド構造にならざるをえなかったが、IIB技術を利用すると二次元的なパタニングで形状を設計可能になるためフットプリントを大幅に削減できる。その結果、電気特性と機械的な耐久性に優れるタングステンのような金属材料で超高密度なプローブアレイを形成可能となる。
このような電気測定用プローブの例のようにエッチング技術で高さ10μm〜100μmの立体構造を形成するというプロセスは、一般的には材料や形状が限定されるかなり特殊なプロセスである。一方、IIB技術は幅広い材料を湾曲加工可能な技術であるため、非常に汎用性が高い技術であるといえる。
[真空電子源への応用例]
(従来技術)
次にIIB技術の真空電子源への応用例を示す。超高感度撮像素子などへ応用される真空電子源デバイスは、エミッタと呼ばれる金属製の高さ1μmの円錐構造を持つことを特徴とするデバイスである。従来その立体的なエミッタの構造は堆積技術を駆使したSpindt法と呼ばれる手法で作製されている。
まずはその手順を説明する。はじめに、金属薄膜(100nm程度)/絶縁体薄膜(1μm程度)/金属薄膜(100nm程度)を積層した基板を用意する。次に、上層の金属薄膜に直径1μm程度の孔を作製する。その後、孔が形成された金属薄膜をマスクに、絶縁体薄膜を下層の金属薄膜が露出するまでエッチングする。すると、直径1μm深さ1μm程度の円筒状の穴が基板に形成される。
次に、この基板に対してモリブデンなどの金属を真空蒸着する。すると、孔の上部に堆積された金属は面内方向でのマイグレーションにより、堆積に伴い孔の直径を縮径していくようになる。そして最終的には蒸着された金属によって孔が完全に閉ざされ、これに従って自己整合的に円錐構造が穴の中に形成される。この手法は真空電子源の作製方法として最も古い手法である。しかし、その後に異なるアプローチの真空電子源の作製手法は数多く研究開発されてきたが、デバイス性能でこのSpindt法を原理とする真空電子源を越えるものは出てきていない。
(従来技術の課題)
ところが、この従来手法は広く実用化されるには至っていない。
その原因は、厚さ1μm以上の金属材料の真空蒸着が円錐形状形成の必須条件であるためである。真空電子源の材料としてはタングステンやモリブデンなどの高融点金属が望ましいが、高融点金属は堆積時の基板表面でのマイグレーション距離が僅かであるため、大きな応力が生じやすい材料である。しかも、堆積時の応力は膜厚が増すほど大きくなる。従って、高融点金属を厚さ1μm堆積するプロセスは膜内に生じる内部応力が巨大になるため剥離が非常に生じやすい条件となる。更には、デバイスの均一性確保の要求から、成膜中の飛来粒子の入射方向が基板に対して厳密に垂直である必要がある。
そのため飛来粒子の入射角度がある程度の幅を持つスパッタ法は利用できず、飛来粒子の散乱要因である残留ガスが少ない高真空中での蒸着法が選ばれている。しかし、真空蒸着法はスパッタ法に比べ飛来粒子の運動エネルギーが小さい。そのため飛来粒子の基板表面でのマイグレーションが小さく応力が生じやすい堆積法である。このようにSpindt法には、非常に困難な堆積プロセスの条件が科せられている特殊な技術であることから、Spindt法の実用化は困難である。
なお、一般的にはスパッタ法でも厚さ1μm以上の金属の堆積は応力の問題が生じるため困難な技術であると認識されている。
(IIB技術の応用)
IIB技術を応用したエミッタの作製手順を非特許文献5、7に開示されている情報を基に以下に示す。まず、厚さ20nm〜50nm程度のモリブデン又はタングステン薄膜にダブルパターニングなどを駆使して先端をナノメートルオーダーに先鋭化した底辺400nm高さ1μmの三角形を二次元的にパタニングする。次に、二次元の三角形パタン化金属薄膜を、エッチング技術などを使用して片持ち梁構造に加工する。その後、三角形の金属薄膜の片持ち梁構造にイオン注入を行う。十分に多いイオン注入を行うと、片持ち梁構造を完全に垂直に折り曲げることができ、高さ1μm、厚さ20nm〜50nm程度、底辺400nmの高アスペクト比の立体構造を形成できる。
従来法では厚さ1μmの高融点金属の堆積が必要であったため応力と剥離の問題があったが、IIB技術を利用すると厚さ20nm〜50nm程度の薄膜を折り曲げて高さ1μmの立体構造を形成するため、厚膜堆積に起因する応力と剥離の問題が生じない。しかも、薄膜の堆積とエッチングとイオン注入により構成されたプロセスは、シリコンLSI製造プロセスと類似性が高いため、LSI製造工場の設備を活用した量産が可能になる。
[シリコンフォトニクスへの応用]
(従来技術)
次にIIB技術のシリコンフォトニクスへの応用例を示す。近年、光導波路のコア部に単結晶シリコンあるいはアモルファスシリコンなどのシリコン材料を用いたシリコン細線光導波路を主要構成部とするシリコンフォトニクスの研究開発が活発に行われている。シリコンコア材料と石英系クラッド材料の間で大きな比屈折率差が得られるために、小さな曲率半径で光導波路を曲げても光が放射損失することがなく、光回路の著しい小型化が実現できるためである。
またシリコンLSIの製造プロセスの転用が可能なため、量産による低廉な製造コストが期待されている。シリコンフォトニクスは光インターコネクションを実現する技術として期待されており、既に要素デバイス性能は実用化レベルを達成しつつある。
しかし、シリコン光回路に光ファイバ、発光・受光素子などの外部光部品を実装するための光結合技術や、量産化に不可欠なウェハレベルテストの実現が大きな課題となっている。
(従来技術の課題)
電気配線とは異なり光配線を接続するための光結合技術は、ただ単に構造が繋がっているだけでは光が高効率で伝達できないという光の伝搬原理に起因する難しさがある。電子デバイスの金属配線の場合は、基本的に金属同士が接触していれば電気が流れるため、チップ表面に電極パッドを形成しそこへ金属ワイヤーや金属バンプなどを結合すれば、チップの垂直方向へ電気信号を伝達することができる。従って、チップを何枚も積み重ねた集積度の高い実装や、プロセス途中のウェハにプローブを当てて電気特性を検査するウェハレベルテストも容易に行える。
一方、光配線では光の光路をウェハの垂直方向へ効率よく変換するための機構がそもそも容易ではない。なぜなら光配線は、平面内で90度の向きを変える場合でも、曲率半径が3μm程度以上の緩やかなカーブを形成しなければ伝搬効率が悪くなるほど方向転換が容易では無いためである。しかも従来の微細加工技術の特性から、垂直方向に緩やかにカーブした光配線を形成することは堆積技術やエッチング技術を駆使しても実用的にはほぼ不可能であった。
そのため、現在は光が回折格子で向きを変える現象を利用した回折格子型結合器がシリコンフォトニクスの表面型光結合器の業界標準となりつつあり、実装応用やウェハレベルテスト応用に向けて開発が進んでいる。しかし、光の回折現象は原理上、強い波長依存性、入射角度依存性、偏波依存性があるため、波長・角度・偏光の許容帯域が狭いデバイスとなることが課題である。もし、ウェハの垂直方向に向かって立体的に湾曲したシリコン光導波路を形成することができれば、回折格子型結合器よりも波長・角度・偏光の許容帯域が劇的に広い表面型光結合器を実現できる。
(IIB技術の応用)
非特許文献6や特許文献3ないし4に示されているように、IIB技術はまさにこのようなウェハの垂直方向に向かって立体的に湾曲したシリコン光導波路形状を形成するのに適している。
シリコンフォトニクス用の表面光入出力器の作製手順を以下に示す。一般的なシリコンフォトニクス回路は、厚さ2μm以上のシリコン酸化膜の上に、シリコンで形成された厚さ220nmの光配線・回路層があり、その上にさらに厚さ2μm程度のシリコン酸化膜がクラッド層を形成している。このようなシリコン光回路の終端部分に長さ約5μm〜50μmの片持ち梁を形成する。片持ち梁の形成方法は、シリコン光回路層上下のシリコン酸化膜を除去するプロセスで実施する。その後、シリコン光配線の片持ち梁構造にイオン注入を行い、曲率半径約3μm〜30μmの立体湾曲型シリコン光導波路を形成できる。
その後、再びシリコン酸化膜で立体湾曲部を埋め込み、デバイスの完成となる。光導波路が立体的に湾曲された構造は、平面に形成されたカーブ型光導波路と同様の原理で、基板垂直方向へ光波を伝搬することが可能であるため、波長依存性、偏波依存性、角度依存性が弱くかつ低損失な垂直光入出力ポートや層間光結合器を実現できる。
IIB技術はこのように従来技術では到底不可能であった立体構造を形成する場合に効果が大きい。厚さが約220nmのシリコン光導波路を約3μmの曲率半径で曲げる加工は、他の曲げ技術では実現し得ない。
立体湾曲型シリコン光導波路が、回折格子型結合器に対して有するメリットはこれだけではないことが、非特許文献6に開示されている情報から読み取ることができる。立体湾曲シリコン光導波路はウェハ面外へ飛び出したその特異な立体形状を有するが故に、新しい機能形態を実現して、光デバイスの高機能・高集積化に貢献する。新しい機能形態とは、例えば下記に示すような、垂直方向にテーパーが形成された導波路コア構造や、光軸に対して回転対称に形成されたセカンドコアや、導波路の先端に形成されるレンズ構造がある。
[シリコンフォトニクス応用のメリット]
(メリット1:垂直方向にテーパーが形成された導波路コア構造)
立体湾曲シリコン光導波路は、二次元平面でパタニングされた導波路を立体的に曲げ加工して形成される。そのため、従来プロセスでは作製が非常に困難な、垂直方向に順テーパーや逆テーパーを形成した導波路コアを形成することができる。それにより、垂直方向へ伝搬する光のスポット形状を自在に制御でき、ビームサイズの拡大や縮小、扁平化などが可能となり、光ファイバや光源や光受光器との高効率光結合を実現する要素技術となる。
(メリット2:光軸に対して回転対称に形成されたセカンドコア構造)
通常のシリコン光導波路にスポットサイズ変換器を作製する場合、スポットサイズ拡大を担うセカンドコアを、堆積技術を利用して形成する。そのため、導波路層の上側にしかセカンドコアを形成することができない。一方、立体湾曲シリコン光導波路はウェハ面外へ飛び出した構造であるため、CVD法などで等方的に酸化窒化シリコンなどのセカンドコア部材を堆積することができる。するとその構造は、光軸に対して回転対称なセカンドコアを形成することになる。このような構造は、高効率のスポットサイズコンバータを実現できる。
(メリット3:導波路の先端に形成されるレンズ構造)
通常の平面上に形成されたシリコン細線導波路の先端にレンズを形成することは困難である。しかし、ウェハ面外へ飛び出した立体湾曲シリコン光導波路であれば、CVD法を活用することによってレンズ形成が容易に可能となる。レンズの直径と材料の屈折率を選定することで、光のスポットサイズを拡大・縮小することが可能になる。
以上に挙げた構造はいずれも、立体湾曲シリコン光導波路の構造が有るが故に実現可能な構造である。つまり、立体湾曲シリコン光導波路は、単に光の進行方向をウェハに対して垂直方向へ変換するための機構という機能に留まらない。
立体湾曲シリコン光導波路は、ウェハ表面方向への光入出力モードを自在に制御可能にするための光学的な構造を形成するための土台になるという機能も有する。
また、その用途は、単なる垂直光結合器に留まらない。モード制御を自在に行える立体湾曲シリコン光導波路を多数配列すればフューモードファイバ、マルチモードファイバ、マルチコアファイバ、フューモードマルチコアファイバやマルチモードマルチコアファイバ、レーザーダイオードアレイ、面発光レーザーアレイ、MEMSミラー、空間位相変調器などのような、空間的に複数の光伝搬モードが集合された光デバイスとの光結合のための垂直光入出力ポートとして有効で、光通信技術の大容量化に貢献する。他にも干渉光を利用した車載用ライダーなど、モード制御を自在に行える立体湾曲シリコン光導波路を多数配列したアレイの応用分野は通信分野にとどまらない。
すなわち、シリコンフォトニクスにとってIIB技術は、従来の課題を解決するだけではなく、従来には不可能であった応用分野を開拓する革命的な技術と言える。
特開2009−252689号公報 特開2011−140072号公報 特開2013−178333号公報 WO/2014/156233号公報
K. Kubota, T. Fleischman, S. Saravanan, P. O. Vaccaro, and T. Aida, Jpn. J. Appl. Phys. 42 6B, 4079-4083 (2003) J. T. H. Tsai, K. B. K. Teo, and W. I. Milne, J. Vac. Sci. Technol. B 20, 1 pp. 1-4 (2002) Che-Chin Chen, Atsushi Ishikawa, Yu-Hsiang Tang, Ming-Hua Shiao, Din Ping Tsai, and Takuo Tanaka, Advanced Optical Materials 3, pp. 44-48 (DOI: 10.1002/adom.201400316 ) (2015). P.Sun and R.M.Reano, Proceedings of CLEO,CThZ3,2011. T.Yoshida,et al. Jpn. J. Appl. Phys. vol. 44, No. 7B, pp.5744-5748.(2005) T.Yoshida,et al. Optics Express,vol.23,No.23,pp.29449.(2015) M. Nagao and T. Yoshida, Microelectronic Engineering, vol. 132, pp. 14-20. (2015)
(従来のIIB技術)
図5に、薄膜部材を曲げ加工する場合の従来の基本的な工程を模式的に例示する。
図5(A)に示すように、基板10上に、薄膜部材の支持層となる支持層形成用出発層20’を成膜し、その上に将来、薄膜部材となる薄膜部材形成用出発層30’を成膜する。この薄膜部材形成用出発層30’を図5(B)に示すように、フォトリソグラフィとエッチング技術を利用して所望の平面形状にパタニングし、薄膜部材30とする。
このパタニング処理の後、薄膜部材30の曲げ加工したい部分の直下にある支持層形成用出発層20’のみをフォトリソグラフィと横方向エッチングで除去し、図5(C)に示すように、その周縁面21が薄膜部材30の先端自由端41よりも横方向内方に引っ込んだ位置にある支持層20となし、その上のパタン化した薄膜部材30を加工対象とする。
すなわち、薄膜部材30は、その下に支持層20がなく、浮いた状態で先端自由端41に至る片持ち梁構造40を有するものであり、この片持ち梁構造40が実質的に曲げ加工対象となる部分であって、片持ち梁構造40は、その付け根が支持層20の周縁面21のある位置にあり、そこから空間を伸びて先端自由端41に至る形状となっている。
次に、片持ち梁構造にイオンを照射し、片持ち梁構造を湾曲させる。
図5(D)に示すように、片持ち梁構造40は、支持層20の周縁面21を始点として湾曲する。さらにイオン照射を続けると、最終的に片持ち梁構造40は、図5(E)に示すように、基板10に対して直立する。
[課題の具体例]
(電気測定用プローブの場合)
電気測定用プローブへの応用の場合、SiOで形成される絶縁体層(支持層20)が表面に形成されている基板の上に厚さ20nm〜200nm程度の金属薄膜を成膜し、それをパタニングして薄膜部材30を形成する。次に、その金属薄膜から形成された薄膜部材30の先端を長さ10μm〜100μm程度の片持ち梁構造40に加工する。片持ち梁構造を形成する工程は、金属材料の薄膜部材30直下の絶縁体層(支持層20)を金属材料の薄膜部材30に損傷を与えない方法で除去なければならない。
そこで、弗化水素酸が有する、SiOを溶解し、且つタングステンなどの金属を溶解しない特性を利用する。弗化水素酸を用いたウェットエッチングを行うと、SiOは等方的にエッチングされるため、金属材料の薄膜部材30直下の絶縁体層(支持層20)を除去することができる。他にも、フッ化水素ガスを用いたドライエッチングでも同様の等方性エッチングを行うことができる。
ところが、このような等方性の横方向へのエッチングは、所望の位置でエッチングを止める制御性が低い点が、製造プロセス上のデメリットとなる。通常、縦方向へのエッチングでは基板の材料に弗化水素酸に溶解しない材料を選べば、SiOがエッチングされ基板が露出するとエッチングが停止する。つまり縦へのエッチングは、基板がエッチストッパー層として機能する。一方、横方向のエッチングに対してはエッチストッパー層が無いため、エッチングの停止は弗化水素酸の供給停止で制御するしかない。
弗化水素酸の供給停止操作は、例えば純水で置換するというプロセスで実施されるが、このプロセスを基板面内で毎回厳密に実施することは非常に困難である。そのため、基板面内で横方向エッチングの距離が差異をもち、横方向エッチング距離の差異は片持ち梁構造の長さの差異となる。その結果、電気測定用プローブの仕上がり高さがばらつく。
IIB技術をプローブ作製に利用することで超高密度のプローブアレイを実現できる。しかし、それらのプローブの高さばらつきが大きくては、測定データの信頼性の観点から使いものにならない。
(真空電子源の場合)
同様の課題は、真空電子源応用にも存在する。非特許文献7に開示されている情報を基に説明すると、真空電子源応用の場合、SiOで形成される絶縁体層(支持層20)の上に厚さ20nm〜50nm程度のモリブデンやタングステンなどの高融点金属薄膜を成膜し、それをパタニングして薄膜部材30を形成する。
次に、金属材料の薄膜部材30の先端を長さ1μm程度の片持ち梁構造40に加工する。片持ち梁構造を形成する工程は、金属材料の薄膜部材30直下の絶縁体層(支持層20)を金属材料の薄膜部材30に損傷を与えない方法で除去しなければならない。
そこでこの場合にも、弗化水素酸が有する、SiOを溶解し、且つモリブデンやタングステンなどの金属を溶解しない特性を利用する。弗化水素酸を用いたウェットエッチングを行うと、SiOのエッチングが横方向にも進行するため、金属材料の薄膜部材30直下の絶縁体層(支持層20)を除去することができる。もちろん、フッ化水素ガスを用いたドライエッチングでも同様の等方性エッチングを行うことができる。
真空電子源応用の場合にも、電気測定用プローブ応用の場合と同様のばらつきの課題がある。横方向へのエッチングは、所望の位置でエッチングを止める制御性が低いため、基板面内で横方向エッチングの距離が差異をもち、その差異が片持ち梁構造の長さの差異となる。その結果、エミッタの高さがばらつく。しかも、真空電子源は電気測定用プローブに比べてばらつきに敏感なデバイスで、エミッタの先端位置のばらつきがわずか100nmでも、デバイス特性として数倍のばらつきとなる。
真空電子源は、数個から数百個単位でグループ化し、それらのグループを数百から数万個以上並べたアレイとして利用されることが多いデバイスである。例えば、前述の超高解像度撮像素子の場合は、10個から100個で一つの画素を形成し、それをハイビジョン規格の場合で1920×1080個敷き詰める。各エミッタが均一な特性を有することがこのようなアプリケーションでは必要となるため、個々のデバイス特性が数倍の差異を持つということは致命的な欠点となる。
(シリコンフォトニクス応用の場合)
同様にシリコンフォトニクス応用でも、等方性エッチングのばらつきは問題になる。シリコンフォトニクス応用の場合、石英(SiO)クラッド層で埋め込まれた厚さ220nm、幅400nm程度の、シリコン材料で形成された光導波路コア構造(薄膜部材30)の先端を長さ約5μm〜50μmほど露出させ片持ち梁構造40を形成する。この構造を実現するために、シリコンコア構造直下のクラッド(支持層20)をシリコンコア構造にダメージを与えない方法で除去しなければならない。
そこで、弗化水素酸が有する、SiOを溶解し、且つシリコンを溶解しない特性を利用する。弗化水素酸を用いたウェットエッチングを行うと、SiOは等方的に横方向にもエッチングされるため、シリコン材料で形成された光導波路コア構造を成す薄膜部材30直下のクラッド層(支持層20)を除去することができる。もちろん、フッ化水素ガスを用いたドライエッチングでも同様の等方性エッチングを行うことができる。
シリコンフォトニクス応用の場合も、等方性エッチングのばらつきが問題となる。等方性の横方向エッチングの距離の差異は、片持梁構造の差異となり、片持ち梁構造の差異は、IIB加工で形成された立体湾曲型シリコン光導波路(垂直光結合器や垂直光入出力ポートなど)の先端位置の面内ばらつきと高さばらつきに影響する。
一般にシリコンフォトニクスデバイスと、光ファイバや発光・受光素子などその他光デバイスの光結合では、100nmオーダー以下の精密な位置合わせが必要となる。
従って、立体湾曲型シリコン光導波路の先端位置がばらついていると、各立体湾曲型シリコン光導波路に対してそれぞれに位置合わせが必要になり、実装応用にせよウェハテスト応用にせよ、位置合わせに時間とコストを要することになる。
更には、IIB加工で形成された立体湾曲型シリコン光導波路を多数アレイ化して、フューモードファイバ、マルチモードファイバ、マルチコアファイバ、フューモードマルチコアファイバ、マルチモードマルチコアファイバなどの光ファイバや、レーザーダイオードアレイ、面発光レーザーアレイなどのアレイタイプの発光デバイスや、MEMSミラー、空間位相変調器などの空間分割タイプの光制御デバイスのような、空間的に複数の光伝搬モードが集積された光デバイスとの光結合のための垂直光入出力ポートとして利用する場合、各々の垂直光入出力ポートの先端位置に面内ばらつきと高さばらつきがあると、各々で光結合損失が異なる結果となり、全く実用にならない。
以上の例に示したように、IIB技術には片持ち梁構造を形成するために等方性エッチングが欠かせない。しかし、等方性エッチングは原理上、エッチングの停止位置を厳密に制御することが困難である。エッチング停止位置のばらつきによって生じる等方性エッチング距離の差異は、片持梁構造の長さの差異となり、IIB加工後の立体構造の高さや位置などの形状ばらつきの原因となることがわかる。このようなばらつきの課題は、ここで列挙したプローブや真空電子源やシリコンフォトニクスへの応用に限る課題ではない。
[課題1:位置制御性]
課題の一般的な説明を図6に従って行う。図6は、図5の(C)、(D)に関し、イオン照射前(A)、イオン照射後(B)の各断面図を引用して、湾曲構造の位置制御性についての問題点を説明するための図である。
上記のようなエッチング停止位置(図6(A)に示す「周縁面21」)のばらつきは、IIBプロセスにおいては、湾曲加工の支持点の位置ばらつきとして影響する。
IIB加工は、片持ち梁構造の自由端側が大きく変位し、固定端は変位しないという変形加工である。そのため、イオン注入条件を精密に制御して固定端から自由端に至る梁の部分の変位を精密制御したとしても、等方性エッチングの静止位置ばらつきが影響した固定端位置が、最終的に立体湾曲加工された自由端の位置を定義付けるためである。
等方性エッチングに起因するIIB加工構造の位置ばらつきにはもう一つの要因が絡む。等方性エッチングの様子をウェハ表面から見た時(図7(A)参照)に、片持ち梁構造の曲がり始める位置付近直下の支持層は、両脇からエッチャントに侵食されて岬のような構造を残しながら除去されていく。
この岬のような形状の先端がナノメートルオーダーの鋭利な形状を有する状態でエッチングを停止し、その後IIB加工を施すと、片持ち梁構造が面的に支持されるのではなく点的に支持されるため、変形工程が極めて不安定になる。この岬形状の頂点の位置は理想的には厳密に片持ち梁構造の中心に位置し、イオン注入の角度をウェハに対して厳密に垂直に保てることができれば影響はないが、どちらかが僅かにでもズレると、たちまち片持ち梁構造の湾曲加工は捻れて所望の形状は得られない。立体構造が所望した構造と異なる構造になるということは、その結果として立体化された片持ち梁構造がばらつくことになる。
この現象を抑えるためには、両脇からの侵食距離を十分長くして岬のような形状をなくすか、予め岬のような形状が形成されないように等方性エッチングのためのマスキングの設計を工夫する方法がある。マスキングの工夫とは、片持梁構造の両脇からエッチャントが侵食しないように、片持梁構造の自由端になる位置から平行にエッチャントが侵食する方法である。
図8にマスキングの工夫の例を示す。マスキングの窓領域を片持ち梁構造の先端付近に設計すると、等方性エッチングによって横方向エッチングを進行すると岬のような構造は形成されない。しかし、その代償としてエッチング時間が長くなり、結果エッチング領域が大きくなるためデバイスのフットプリントが大きくなる。
例えば、前述のシリコンフォトニクス応用の例の場合、長さ5μmの片持ち梁構造を得る場合には、横方向に長さ5μmの等方性エッチングを必要とするため、およそ25μmの面積を占有することになるつまり、曲げ加工を行いたいモノよりもかなり大きなフットプリントが必要になるということを意味し、その結果として狭いピッチでIIB加工物を配置することが制限される。
このように等方性エッチングは、深さ方向だけでなく平面方向にもエッチングが進行する。そのため、ある方向に一列に片持ち梁構造を並べる場合には、隣同士を近接して固定端位置を揃えたデザインで集積度を高めることが可能であるが、三角格子状や正方格子状のように二次元平面に片持ち梁構造を配置する場合には、各々の平面エッチング領域が干渉して固定端位置を大きく制限する。
[課題2:デザインの制約]
ここで、図9を用いてデザイン上の集積密度の制約について具体例を示し説明する。図9(A)は、薄膜部材30に片持ち梁構造40を形成した状態の上面図である。前述の図8に示した岬のような構造を回避するデザインが採用されている。所望の立体構造の長さをLとし、そのために薄膜部材30に長さLの片持ち梁構造を形成した状態を示す。破線で示すマスキングの窓領域とは、片持ち梁構造形成のための等方性エッチング用のマスキング層の窓の部分を示している。このマスキング窓領域を始点として等方性エッチングは平面的に進行する。
この例の場合は長さLの片持ち梁の形成を行うために、マスキング窓領域を始点として長さLのエッチングが平面的に進行している。そしてその平面的に見たエッチング領域の停止線を周縁面21として描いている。
なお、図9では片持梁構造40は矩形で描いているが、無論、三角形、円、その他の二次元図形でもよい。しかし、ここでは簡略化するために、矩形の片持ち梁構造で説明を続ける。
薄膜部材30のうち、片持ち梁構造40以外の部分の長さをMと示している。この領域は作製した立体構造を支持する領域として後に必要な部分となる。当然Mの形状は応用デバイスによって異なる。しかし、ここでは議論の簡略化のために矩形として描いている。
もっともこのMで示す領域は、長さだけでなく幅も重要なパラメータとなるが、やはり議論の簡略化のために幅に関しては省略する。加えて、応用デバイスにもよるが、長さMで示される領域は、配線の取り回しのために必要な領域も含めて考慮してもよい。とにかく、片持梁構造40を形成するためには、必ず支持部分がある程度の領域を占めることを考慮しなければならない。
次に、図9(A)の構造を同一基板内に複数個配列して同じ立体構造をアレイ化する場合の集積密度について考察する。同じ立体構造を配列するためには、片持ち梁の長さLが同じになるように平面エッチング領域を含めた配列法を設計することがポイントとなる。
はじめに一次元の配列について考える。片持ち梁構造を1次元配列する場合は、間隔gをLよりも小さくしても平面エッチング領域の干渉は問題にならない場合がある。それは図9(B)に示すような場合で、片持ち梁構造の曲がり始める位置を揃えて配列する方法である。この場合、各エッチング領域を合併した領域の周縁が、実際のエッチングプロセスで形成される周縁面21となる。曲がり始める位置を揃えて配列したため、全ての片持ち梁に対して周縁面21が先端から長さLの位置に揃う。
つまり、曲がり始める位置を揃えて配列する方法では平面エッチング領域の干渉は問題にならない。従って、極めて小さな間隔で配列することが可能となる。この場合、間隔gはフォトリソグラフィの解像限界まで小さくすることが可能である。非特許文献7に示されている真空電子源の配列や、非特許文献6に示されているシリコン細線導波路の配列が図9(B)の例である。
さらに上記の配列法を環状にすると、図9(C)に示すような同心円状の配列が可能となる。同心円状に配列する場合も、各エッチング領域を合併した領域の周縁が片持ち梁構造40の先端から長さLの位置に揃う。
このような配列は、例えばシリコンフォトニクス応用では光渦(又はOAM(Orbital Angular Momentum):軌道角運動量)を利用した多重化方式において螺旋状の等位相面を有する光波を生成するために有用である。立体湾曲光導波路で形成される光出射端を同心円状に配列し、各々から位相を制御した光波を空間へ出射させることができるためである。
ところが、片持ち梁構造の曲がり始める位置を揃えずに配列する場合には、その配列間隔は大きな制約を受ける。例えば図9(D)に示すように、隣り合う片持ち梁構造の間隔gを片持ち梁長さLよりも小さくしたいという要求と、先端の位置をX軸方向にシフトしながら配列したいという要求は両立できない。この場合、平面エッチング領域を合併した周縁面21(太線)が実質的に等方性エッチングの周縁面を形成するため、図示された3本の片持ち梁構造の曲がり始める位置は、周縁面21(太線)の位置となる。
すると、上から二番目の片持ち梁構造は、先端からの長さKの位置に周縁面21が形成される。無論、KはLよりも大きい。同様に上から三番目の片持ち梁構造は長さJ(JはKよりも大きい)となる。つまり、隣り合う片持ち梁構造の間隔gを片持ち梁長さLよりも小さくしたいという要求と、先端の位置をX軸方向にシフトしながら配列したいという要求がある際には、片持梁構造の長さを同じLにすることは不可能である。
この問題を回避して片持ち梁構造の曲がり始める位置を揃えずに一次元配列するためには、図9(E)に示すように隣り合う片持ち梁構造の間隔gを片持ち梁長さLよりも大きくして平面エッチング領域の干渉を回避するしかない。しかしそれでは立体構造は所望の集積密度を得ることができない。
このようなデザインの制約を二次元配列に拡張して考察する。はじめに、図9(B)の一次元配列をX軸時方向に複数個並べる配列方法を図10(A)に示す。この場合はX方向の間隔gは、g>2L+Mとなる。すなわち、所望の片持梁構造の2倍の長さに支持領域の長さMを加えた距離の間隔が必要である。
もっとも、このような図10(A)に示した2次元配列デザインは、工夫次第で簡単にデバイスの集積密度を2倍に向上することができる。図10(B)に示すように、片持梁構造の向きを、紙面右向きと紙面左向きのものを交互に配列すると、g>2L+Mとなる間隔gの中に二本の片持ち梁構造を形成することができる。このような配列を用いれば、実効的な間隔gはg>(2L+M)/2となる。しかし、このような工夫を施してもなお、gをL未満に設計することは不可能である。加えて、片持梁構造の向きが互い違いに異なるということはデザイン上の新たな課題となる。
図10(A)に示した正方格子の配列において、格子に対して片持ち梁構造を斜めに配置すれば、X軸方向の間隔を短縮することが可能である。例えば、30度傾けることにより、図10(C)に示すように、

倍の短縮ができる。しかし、Y軸方向の間隔は拡大しg>(2L+M)/2の間隔となる。同様に、図10(D)に示すように格子に対して片持ち梁構造を45度斜めに配置すればX軸方向の間隔はさらに短縮できるが、同時にY軸方向の間隔も拡大する。なお、この場合、X・Y方向ともに

の間隔が必要となる。
なお、これらの場合も、図10(A)と図10(B)の関係にあるように、片持梁構造の向きを紙面右向きと紙面左向きのものを交互に配列することで簡単にデバイスの集積密度を2倍に向上することができる。その場合の実効的な間隔gは、図10(C)のX軸方向が

Y軸方向がg>(2L+M)/4に、図10(D)のX及びY軸方向がともに

に短縮できる。
しかし、片持梁構造の向きが互い違いに異なるということはデザイン上の新たな課題となる。
同様に、三角格子状に立体構造を配列する場合を図10(E)に示す。この場合、片持ち梁構造の間隔gは、格子点を結ぶ三角形の一辺の長さに相当しおよそg>2Lの条件となる。なお、この場合も、図10(A)と図10(B)の関係にあるように、片持梁構造の向きを紙面右向きと紙面左向きのものを交互に配列することで簡単にデバイスの集積密度を2倍に向上することができ、実効的にはg>Lまで短縮することができる。
しかし、片持梁構造の向きが互い違いに異なるということは、デザイン上の新たな課題となる。
(電気測定用プローブアレイの場合)
高さ50μmの電気測定用プローブを、IIB技術を用いて作製する具体例を示す。この場合、片持ち梁構造の長さLは50μm必要となる。また、支えの領域Mは、配線の取り回しも含めて10μm程度を想定する。これを図9(B)のように一次元的に配列すると、Lの長さに関係なく間隔gは小さくできるので、例えばgは5μm以下の挟ピッチも可能で、非常に高密度な一次元プローブアレイを形成することが可能である。
一方、二次元アレイ化を考えると、図10(C)の場合はX方向の間隔がおよそ95μm、Y方向の間隔がおよそ55μmとなる。同様に図10(D)の場合はX方向及びY方向の間隔はおよそ78μmとなる。同様に図10(E)の三角格子状にアレイ化すると100μm以上の間隔となる。これらの値は、既存の電気測定用プローブアレイに比べて、同等か僅かに小さいだけである。
なお、図10(A)と図10(B)の関係にあるように、片持梁構造の向きを紙面右向きと紙面左向きのものを交互に配列することで簡単にデバイスの集積密度を2倍に向上することができる。
しかしその場合には、配線の取り回しが複雑になることが新たな課題となる。
すなわち、電気測定用のプローブアレイを、IIB技術を用いて作製すると、先に述べたようにタングステンなどの耐摩耗性が高い材料を用いてプローブアレイを形成できるというメリットに加えて、従来技術と比較してアレイ化した時に高密度な配置が可能になるというメリットがある。しかし、IIB技術によって達成できる高密度化のアドバンテージは僅かであるため、積極的に新技術であるIIB法を採用する理由にはならない。もし、上述のようなデザインの制約がなければ、従来技術と比べて飛躍的に集積密度を向上することができるため、ウェハテストなどの各種検査を飛躍的に高効率化できるプローブアレイを開発することができる。
(真空電子源の場合)
高さ1μmの真空電子源を、IIB技術を用いて作製する具体例を示す。この場合、片持ち梁構造の長さLは1μmで、支えの領域と配線の引き回しを考慮した長さMは2μmと想定する。これを2次元配列するとき、図10(C)の場合はX方向の間隔がおよそ3.5μm、Y方向の間隔がおよそ2.0μmとなる。同様に図10(D)の場合はX方向及びY方向の間隔は、およそ2.8μmとなる。同様に図10(E)の三角格子状にアレイ化する場合は、およそ2.0μm以上の間隔となる。
なお、図10(A)と図10(B)の関係にあるように、片持梁構造の向きを紙面右向きと紙面左向きのものを交互に配列することで簡単にデバイスの集積密度を2倍に向上することができる。しかも、真空電子源応用の場合には、各片持ち梁構造を10個から100個単位で電気的に接続して利用するアレイ配列が一般的であるため、配線の取り回しの心配はいらない。現に、非特許文献7ではそのような真空電子源アレイが開示されている。
しかし、撮像へ応用される真空電子源アレイに関しては、空間的な均一性が重要である。つまり、X方向とY方向の間隔が同一であることが望ましい。その条件を満たすためには、図10(E)の三角格子状にアレイ化する方法が最適であるといえる。しかし、高さ1μmのエミッタに対して、その高さの2倍以上の間隔が必要になり、エミッタアレイとしては集積密度が小さなデバイスとなってしまう。
すなわち、真空電子源アレイを、IIB技術を用いて作製すると、LSI製造プロセスに準じた工程によって、高融点金属材料のエミッタを作製することが可能になるが、集積密度の面では課題が生じるといえる。
(シリコンフォトニクスの場合)
曲率半径3μmのシリコンフォトニクス用垂直光カプラなどを、IIB技術を用いて作製する具体例を示す。この場合、片持ち梁構造の長さLは5μm必要となる。支えの部分と配線の引き回しに必要な領域としての長さMは、5μmと想定する。
これを2次元配列するとき、図10(C)の場合はX方向の間隔がおよそ13μm、Y方向の間隔がおよそ7.5μmとなる。同様に図10(D)の場合はX方向及びY方向の間隔はおよそ10.6μmとなる。同様に図10(E)の三角格子状にアレイ化する場合は、およそ10μm以上の間隔となる。これらの値は、従来技術である回折格子型結合器に比べて遜色のない値で、従来技術の置き換えとしては十分な集積密度を有しているといえる。
しかし、シリコンフォトニクスの発展を考えると、更なる高密度化が実現できることが望ましい。すでに、光ファイバの分野ではフューモードファイバ、マルチモードファイバ、マルチコアファイバ、フューモードマルチコアファイバやマルチモードマルチコアファイバなどの空間多重に特化した光ファイバの開発が進んでいる。発光デバイスの分野でも、レーザーダイオードや面発光レーザーのアレイ化技術が確立されている。
また、MEMSミラーや液晶を利用した空間変調器などのアレイ型光制御デバイスの研究開発が盛んである。つまり、各種光デバイスは二次元空間での集積密度を高める方向でデバイス開発が行われているといえる。
その中で、シリコンフォトニクスは、光回路の集積密度は非常に高いという特徴を持つものの、外部と光信号をやり取りするための光入出力ポートのフットプリントが従来の回折格子型結合器では10μm角以上と大きいため、光入出力ポートが集積密度を向上する上でボトルネックとなっている。例えば、フューモードファイバの場合は、直径17μm程度のコアの中に3から4個のモードが存在する。そのため、フューモードファイバに対応する光入出力ポートのフットプリントは10μm角では大きすぎる。
また、立体湾曲光導波路を垂直方向への光出力ポートとして利用する場合、出射位置の間隔を光の波長の半分程度まで縮小できると、光の干渉効果を利用したデバイスとして優れた特性を得られる。例えば光通信で利用される1.55μm帯域を想定すると、垂直光出力ポートのピッチを1.55μmから0.775μm程度の間に作製することができれば、ライダー(LIDAR:Light Detection and Ranging、又はLaser Imaging Detection and Ranging)素子などへの応用で優位となる。
ここまでに示した位置制御性と集積化の問題点は、薄膜部材として具体例を挙げたプローブアレイや真空電子源やシリコンフォトニクス応用だけではなく他の応用にも当てはまる。つまり、これらの上記各問題点は、材料系や目的にかかわらない、IIB技術による薄膜部材の湾曲加工に共通する問題点である。
[発明が解決しようとする課題]
以上の問題点は全て、等方性エッチング等の停止位置がIIB加工の曲がり始め端位置と同一であることが原因であることが判明した。
したがって、本発明は、これらの問題点を全て克服するため、等方性エッチング等エッチングの停止位置とIIB加工の曲がり始め位置が異なるような薄膜部材の湾曲加工方法を実現することを課題とする。
上記課題を解決するための手段は次のとおりである。
(1)基板上に支持層形成用出発層及び薄膜部材形成用出発層を積層する工程と、該薄膜部材形成用出発層をパタン化して薄膜部材を形成する工程と、該薄膜部材の上に直接もしくは位置制御層支持層形成用出発層を介して、該薄膜部材の片持ち梁構造がイオンを照射することにより曲がり始める位置を決定する位置制御層を形成する工程と、該薄膜部材の下の該支持層形成用出発層の一部もしくは、該支持層形成用出発層の一部及び位置制御層支持層形成用出発層の一部を、支持層の周縁面、もしくは支持層の周縁面及び位置制御層支持層の端面が、該位置制御層の先端の下方延長線上もしくはそれより内側にあるように除去して、該薄膜部材に先端自由端を有する片持ち梁構造を形成する工程と、該位置制御層をマスクとして該片持ち梁構造の一部にイオンを照射し、該片持ち梁構造の一部を湾曲させる工程と、を含む薄膜部材の湾曲加工方法。
(2)基板上に支持層形成用出発層及び薄膜部材形成用出発層を積層する工程と、該薄膜部材形成用出発層をパタン化して薄膜部材を形成する工程と、該薄膜部材の上に直接もしくは位置制御層支持層形成用出発層を介して、該薄膜部材の片持ち梁構造がイオンを照射することにより曲がり始める位置を決定する位置制御層を異方性エッチングにより形成する工程と、該薄膜部材の下の該支持層形成用出発層の一部もしくは、該支持層形成用出発層の一部及び位置制御層支持層形成用出発層の一部を、支持層の周縁面、もしくは支持層の周縁面及び位置制御層支持層の端面が、該位置制御層の先端の下方延長線上もしくはそれより内側にあるように等方性エッチングにより除去して、該薄膜部材に先端自由端を有する片持ち梁構造を形成する工程と、該位置制御層をマスクとして該片持ち梁構造の一部にイオンを照射し、該片持ち梁構造の一部を湾曲させる工程と、を含む薄膜部材の湾曲加工方法。
(3)上記片持ち梁構造は、電気測定用プローブを構成していることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の薄膜部材の湾曲加工方法。
(4)上記片持ち梁構造は、電界放出素子のエミッタを構成していることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の薄膜部材の湾曲加工方法。
(5)上記片持ち梁構造は、光導波路を構成していることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の薄膜部材の湾曲加工方法。
(6)基板上に支持層形成用出発層及び光導波路形成用出発層を積層する工程と、該光導波路形成用出発層をパタン化して光導波路を形成する工程と、該光導波路の上に直接もしくは位置制御層支持層を介して、該光導波路の片持ち梁構造がイオンを照射することにより曲がり始める位置を決定する位置制御層を異方性エッチングにより形成する工程と、該光導波路の下の該支持層形成用出発層の一部もしくは、該支持層形成用出発層の一部及び位置制御層支持層形成用出発層の一部を、支持層の周縁面、もしくは支持層の周縁面及び位置制御層支持層の端面が、該位置制御層の先端の下方延長線上もしくはそれより内側にあるように等方性エッチングにより除去して、該光導波路に先端自由端を有する片持ち梁構造を形成する工程と、該位置制御層をマスクとして該片持ち梁構造の一部にイオンを照射し、該片持ち梁構造の一部を湾曲させて垂直光カプラとする工程と、を含む光導波路の湾曲加工方法。
(7)上記基板は、シリコン光集積回路基板であることを特徴とする上記(5)に記載の光導波路の湾曲加工方法。
(8)上記光導波路は、シリコンを主成分とする光導波路であることを特徴とする上記(6)又は(7)に記載の光導波路の湾曲加工方法。
(9)上記位置制御層の構成材料は、タングステン又は炭素であることを特徴とする上記(8)に記載の光導波路の湾曲加工方法。
(10)上記光導波路の上記片持ち梁構造は、該片持ち梁構造の長さよりも小さな間隔で二次元アレイ配置されていることを特徴とする上記(6)ないし(9)のいずれかに記載の光導波路の湾曲加工方法。
(11)上記片持ち梁構造の先端自由端は、それぞれ正方格子の各頂点に配置されていることを特徴とする上記(10)に記載の光導波路の湾曲加工方法。
(12)上記片持ち梁構造の先端自由端は、それぞれ三角格子の各頂点に配置されているであることを特徴とする上記(10)に記載の光導波路の湾曲加工方法。
(13)上記光導波路の上記片持ち梁構造は、該光導波路の伝搬光の波長よりも小さな間隔で二次元アレイ配置されていることを特徴とする上記(6)ないし(9)のいずれかに記載の光導波路の湾曲加工方法。
(14)上記片持ち梁構造の一部を湾曲させて垂直光カプラとする工程は、上記片持ち梁構造の一部を上方向に湾曲させて垂直光カプラとする工程であることを特徴とする上記(6)に記載の光導波路の湾曲加工方法。
(15)さらに、上方向に湾曲された垂直光カプラをクラッド層で埋める工程と、該クラッド層上に第2の支持層形成用出発層及び第2の光導波路形成用出発層を積層する工程と、該第2の光導波路形成用出発層をパタン化して第2の光導波路を形成する工程と、該第2の光導波路の上に直接もしくは第2の位置制御層支持層を介して、該第2の光導波路の第2の片持ち梁構造がイオンを照射することにより曲がり始める位置を決定する第2の位置制御層を異方性エッチングにより形成する工程と、該第2の光導波路の下の該第2の支持層形成用出発層の一部もしくは、該第2の支持層形成用出発層の一部及び第2の位置制御層支持層形成用出発層の一部を、第2の支持層の周縁面、もしくは第2の支持層の周縁面及び第2の位置制御層支持層の端面が、該位置制御層の先端の下方延長線上もしくはそれより内側にあるように等方性エッチングにより除去して、該光導波路に先端自由端を有する片持ち梁構造を形成する工程と、該第2の位置制御層をマスクとして該第2の片持ち梁構造の一部にイオンを照射し、該第2の片持ち梁構造の一部を下方向に湾曲させて上記垂直光カプラと光接続する第2の垂直光カプラとする工程と、を含む上記(14)に記載の光導波路の湾曲加工方法。
本発明によれば、IIB技術による薄膜部材の湾曲加工において、薄膜部材の上に直接もしくは位置制御層支持層形成用出発層を介して、薄膜部材の片持ち梁構造がイオンを照射することにより曲がり始める位置を決定する位置制御層を形成する工程を採用したため、従来のように横方向エッチング等によって定められた支持層の周縁面から片持ち梁構造を曲げ加工する場合に比し、位置制御性を飛躍的に向上できる。
さらに、複数個の片持ち梁構造を互いに近接して配置することができるため、加工された片持ち梁構造の高集積化も達成することができる。
本発明に係る薄膜部材の湾曲加工方法を模式的に示す図面である。 本発明に係る薄膜部材の湾曲加工方法に関し、イオン照射後のSEM像(A)及びタングステン除去後のSEM像(B)である。 本発明に係る薄膜部材の湾曲加工の問題点の解決を模式的に示す図面である。 立体湾曲光回路の形成に適用した本発明に係る薄膜部材の湾曲加工方法を模式的に示す図面である。 従来の薄膜部材の湾曲加工方法を模式的に示す図面である。 従来の薄膜部材の湾曲加工の問題点を説明する図面である。 従来の薄膜部材の湾曲加工の問題点を説明する図面であり、(A)は上面図、(B)は断面図である。 従来の薄膜部材の湾曲加工の問題点を説明する図面であり、(A)は上面図、(B)は断面図である。 従来の薄膜部材の湾曲加工の問題点を説明する図面である。 従来の薄膜部材の湾曲加工の問題点を説明する図面である。
(本発明の要点)
本発明の要点は、片持梁構造から見て照射イオンが飛来する方向に新たに、飛来イオンを遮蔽して、かつ等方性エッチング等の横方向エッチングの終点位置とは異なる位置にIIB加工の曲がり始め位置を定義できるような位置制御層を付加することである。
位置制御層に求められる条件は、A:等方性エッチングよりも制御性が高い異方性エッチングで加工されていること、B:先端が横方向エッチング停止位置と同一面内にあるか、それよりも片持ち梁の先端にむけて伸延した位置にあること、C:照射イオンが貫通しないこと、D:それ自体がIIB加工されて変形しないことの4つの条件を満たすことが望ましい。
しかし、位置制御層は上記全ての条件を満たす必要はなく、Cに関しては多少貫通するイオンがあったとしてもエネルギーが大きく低下していれば実質的に影響がなくなる場合もあり、Dに関しては変位が僅かであれば変形しても実質的に影響はない。ただし、条件A及びBは厳密に満たす必要があり、本発明の要である。
(本発明の実施形態)
図1(A)ないし(H)は、本発明に係る薄膜部材の湾曲加工方法を模式的に示す図面である。以下、その工程を順次説明する。
(1)基板10の上に支持層形成用出発層20’を形成し、その上に薄膜部材形成用出発層30’を形成する。(図1(A))
図1(A)では、支持層形成用出発層20’は基板全面に必要であるように描いているが、必要なのは片持ち梁40をなす領域だけである。それ以外の領域では薄膜部材形成用出発層30’の下に支持層形成用出発層20’が形成されていなくてもよい。支持層形成用出発層20’は、薄膜部材形成用出発層30’の一部を片持ち梁構造40に成形するために必要な層である。
(2)薄膜部材形成用出発層30’がパタン化されて、薄膜部材30が形成される。(図1(B))
パタン化した薄膜部材30の平面形状は、最終的な作製目的構造体による。例えば、最終的な作製目的構造体が、電界放出素子のエミッタである場合には、先端が鋭利な三角形をした平面パタンとなり、最終的な作製目的構造体が、立体湾曲型シリコン細線導波路である場合には、幅がサブミクロンオーダーの細長い構造となる。これらの例以外にも様々な用途が考えられるが、いずれの場合でも断面図を一般化して描くと図1(B)のようになる。
(3)パタン化した薄膜部材30を、位置制御層支持層形成用出発層60’で埋め込む。(図1(C))
図1(C)では、位置制御層支持層形成用出発層60’の上部は平坦に描いているが、薄膜部材30の形状を反映した凹凸が生じていても差し支えない。
なお、この後の図1(E)のように位置制御層50を形成するための加工方法が、実質的に薄膜部材30に痕跡を残すような加工方法でない場合においては、位置制御層支持層形成用出発層60’の形成を省略することができる。
(4)位置制御層形成用出発層50’を成膜する。(図1(D))
(5)位置制御層形成用出発層50’を加工して位置制御層50を形成する。(図1(E))
位置制御層50の先端51のエッジが、その後イオン照射がなされた時に片持ち梁構造が曲がり始める位置を決める役割を担う。このために、先端51は片持ち梁構造40の先端自由端41よりも横方向内方に引っ込んだ位置にある必要がある。
位置制御層50の平面形状は、パタン化した薄膜部材30の平面形状及び最終的な作成目的構造体によるが、いずれの場合でも断面図を一般化して描くと図1(E)のようになる。
(6)片持ち梁構造40を形成する。(図1(F))
薄膜部材30の曲げ加工したい部分の直下にある支持層形成用出発層20’と、曲げ加工したい部分の直上にある位置制御層支持層形成用出発層60’を等方性エッチングで除去し、その周縁面21が薄膜部材30の先端自由端41よりも横方向内方に引っ込んだ位置にある支持層20となし、その上の薄膜部材30を加工対象の薄膜部材とする。
図1(F)では、位置制御層50も薄膜部材30と同様に片持ち梁構造をなしているように描いているが、位置制御層支持層60の端面61は、位置制御層50の先端51と同じ位置にあったとしても位置制御層50の機能は妨げられない。
また、支持層20の周縁面21は、位置制御層50の先端51の下方延長線上か、それよりも横方向内方に引っ込んだ位置にある必要がある。
位置制御層支持層形成用出発層60’の材料は、その後図1(F)に示すような形状に加工可能な材料の範囲で選択できる。つまり、位置制御層支持層形成用出発層60’を除去するが、位置制御層50及び薄膜部材30は侵されないという加工が成り立つ範囲で選択できる。
工程数を少なくして、作製を容易にするという観点からは、位置制御層支持層形成用出発層60’は、支持層形成用出発層20’と同種類か同系統の材料とするのが望ましい。そうすると、図1(E)から図1(F)に形成するためのエッチングを一つの工程に集約することが可能となる。
例えば、位置制御層支持層形成用出発層60’と支持層形成用出発層20’がともに二酸化シリコン(石英)である場合にはフッ酸で除去可能で、薄膜部材30がシリコンやモリブデン、タングステン、タンタル、テクネチウム、レニウム、コバルト、ニッケル、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銅、銀、金、鉛、ゲルマニウムなどの金属や、タングステンシリサイド、モリブデンシリサイド、タンタルシリサイド、チタンシリサイド、コバルトシリサイド、クロムシリサイド、ニッケルシリサイドなどのシリコン化合物や、炭素、炭化シリコン、炭化タンタル、炭化チタン、炭化モリブデン、炭化ニオブ、炭化ハフニウム、炭化タングステン、炭化バナジウム、ダイヤモンドライクカーボンなどの炭素系材料や、窒化チタン、窒化アルミニウム、窒化シリコン、窒化タンタル、窒化ホウ素、窒化クロム、窒化ジルコニウムなどの窒化物や、酸化インジウム錫、酸化亜鉛アルミニウム、酸化亜鉛、酸化インジウムガリウム亜鉛などの透明導電膜で、かつ位置制御材50がシリコンやモリブデン、タングステン、タンタル、テクネチウム、レニウム、コバルト、ニッケル、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銅、銀、金、鉛、ゲルマニウムなどの金属やそれらの合金や、タングステンシリサイド、モリブデンシリサイド、タンタルシリサイド、チタンシリサイド、コバルトシリサイド、クロムシリサイド、ニッケルシリサイドなどのシリコン化合物や、炭素、炭化シリコン、炭化タンタル、炭化チタン、炭化モリブデン、炭化ニオブ、炭化ハフニウム、炭化タングステン、炭化バナジウム、ダイヤモンドライクカーボン、フォトレジスト、ポリイミドなどの炭素系材料や、窒化チタン、窒化アルミニウム、窒化シリコン、窒化タンタル、窒化ホウ素、窒化クロム、窒化ジルコニウムなどの窒化物や、酸化インジウム錫、酸化亜鉛アルミニウム、酸化亜鉛、酸化インジウムガリウム亜鉛などの透明導電膜であれば、ほとんど侵されずに片持ち梁構造40を形成可能である。
(7)イオン照射を施すことにより、片持ち梁構造40が湾曲加工される。(図1(G))
片持ち梁構造が曲がり始める位置は、位置制御層50の先端51の下方延長線方向に伸ばして片持ち梁構造40と交差する位置となる。ただし、イオン照射を基板に対して垂直方向から行った場合であるが、イオン入射角度が垂直以外の場合でも、位置制御層50の先端51が庇となり、位置制御可能である。
位置制御層50は、照射イオンが貫通しないように遮蔽する役割が必要である。イオンが遮蔽されるとは、言い換えるとイオンの投影飛程が膜厚よりも小さくなることである。
つまり、イオンの投影飛程が小さくなる材料を選べばよく、近似的には高密度な材料ほどイオン投影飛程が小さくなり、遮蔽性能が高くなる。例えば、炭素、シリコン、クロム、モリブデン、タングステンの順に遮蔽性能は高くなり位置制御層50として望ましい。
位置制御層50の条件は、イオン照射によって変形しないことが望ましい。このため、変形しにくい材料と膜厚が選定される。IIB加工において、変形しにくい材料と膜厚とはどのようなものか。それを示すために、まずはIIB加工のしやすさについてまとめる。
IIB加工において、片持ち梁構造を基板に対して上方向に曲げるか、下方向に曲げるかを決めるパラメータとなっているのは、照射イオンの運動エネルギーである。イオンは加速エネルギーを大きくするほど、片持ち梁構造の内部に深く進入する。イオンが片持ち梁構造の内部に侵入してからやがて運動エネルギーを失い膜中で停止するまでの間に、数多くの原子との衝突が起こる。その過程で生成されるのが反跳原子であり、反跳原子が生成された結果として、空孔や格子間原子などの格子欠陥が生じる。
特許文献1ないし4及び非特許文献5ないし7に開示されている情報をまとめると、IIB加工において片持ち梁構造を基板に対して上方向に曲げる場合に最適なエネルギーは、片持ち梁構造を形成する膜の深さ方向に対して反跳原子の分布のピーク位置がおよそ表面から30%の位置に有ることが示されている。また、反跳原子分布のピーク位置の深さが10%から20%の条件の場合には、上方向に曲がるが、単位照射量当たりの湾曲量が小さいため多くの照射量を要すること、20%から30%の条件は最適ではないものの十分に実用的な上方向の曲げ加工が実施できること、30%から40%では照射が深くなりすぎて下方向に曲げる力も出てきて、その結果として上方向に曲がる量が小さくなること、40%から60%を超えると、下方向に曲げる力のほうが上方向に曲げる力よりも優位になってくることが示されている。
これらの現象を、反跳原子密度ではなくイオンの平均投影飛程に置き換えると、以下のようになる。まず、最も良く上方向に曲がる条件は、平均投影飛程が片持ち梁構造に対して深さ50%になる条件である。平均投影飛程が20%から30%の間では上方向に曲がりはするが、単位照射量当たりの湾曲量が小さいため多くの照射量を要する条件となり、平均投影飛程が30%から50%の条件は最適ではないものの十分に実用的な上方向の曲げ加工が実施できる条件となる。一方、平均投影飛程が50%を超えて60%、70%と大きくなるに従って下方向に曲げる力が優位になってくる条件となる。
以上より、IIB加工において変形しにくい条件とは、ひとつは、片持ち梁構造に対して表面から深さ10%未満に反跳原子密度のピーク位置がくるイオン照射条件、言い換えると片持ち梁構造に対して表面から深さ20%未満に平均投影飛程がくるイオン照射条件であると言える。また、もう一つは、片持ち梁構造に対して表面から深さ40%から60%の間に反跳原子密度のピーク位置がきて、かつ上方向に曲げる力と下方向に曲げる力が等しくなるイオン照射条件、言い換えると片持ち梁構造に対して表面から深さ40%から60%の間に平均投影飛程がきて、かつ上方向に曲げる力と下方向に曲げる力が等しくなるイオン照射条件であると言える。
(シリコンフォトニクス応用の具体例)
シリコンフォトニクス応用において、厚さ220nmのシリコン細線光導波路を各種イオンで湾曲加工する場合の位置制御材50の膜厚についてSRIMコード(http://www.srim.org/)を用いて計算した結果を示す。
まず、照射イオンの最適な運動エネルギーを、平均投影飛程が膜厚の50%の位置、つまり深さ110nmになる場合として計算すると、例えば、原子番号が小さい順に、シリコンイオンの場合約80keV、燐イオンの場合約85keV、アルゴンイオンの場合約110keV、砒素イオンの場合約170keV、クリプトンイオンの場合約200keV、インジウムイオンの場合約250keV、アンチモンイオンの場合約250keV、キセノンイオンの場合約270keVとなる。
次に、位置制御層50の条件として、上記計算されたイオン注入の運動エネルギーにおける平均投影飛程が膜厚の15%以下の位置になる膜厚を幾つかの材料で計算すると、例えば、密度が小さい順に、フォトレジストの場合約1300nmから約1450nm、エポキシ樹脂の場合約1030nmから約1120nm、炭素の場合約570nmから約670nm、シリコンの場合約740nmから約780nm、ニオブの場合約310nmから約330nm、モリブデンの場合約270nmから約290nm、タングステンの場合約190nmから約210nmが最低でも必要な膜厚であることが計算より示される。
もちろん、照射イオンの運動エネルギーを最適値よりも小さく設定して照射量が大きくなっても構わないという条件でIIB加工が施される場合には、選定した運動エネルギーに応じて、位置制御層50に要求される最小膜厚値は上記の計算結果よりも小さくできる。
(真空電子源応用の具体例)
同様に、真空電子源において、厚さ20nmのタングステン薄膜を各種イオンで湾曲加工する場合の位置制御材50の膜厚についてSRIMコード(http://www.srim.org/)を用いて計算した結果を示す。
まず、照射イオンの最適な運動エネルギーを、平均投影飛程が膜厚の50%の位置、つまり深さ10nmになる場合として計算すると、例えば、原子番号が小さい順に、シリコンイオンの場合約25keV、燐イオンの場合約25keV、アルゴンイオンの場合約30keV、砒素イオンの場合約50keV、クリプトンイオンの場合約55keV、インジウムイオンの場合約65keV、アンチモンイオンの場合約70keV、キセノンイオンの場合約80keVとなる。
次に、位置制御層50の条件として、上記計算されたイオン注入の運動エネルギーにおける平均投影飛程が膜厚の15%以下の位置になる膜厚を幾つかの材料で計算すると、例えば、密度が小さい順に、フォトレジストの場合約420nmから約560nm、エポキシ樹脂の場合約340nmから約450nm、炭素の場合約190nmから約250nm、シリコンの場合約240nmから約290nm、ニオブの場合約110nmから約120nm、モリブデンの場合約95nmから約100nm、タングステンの場合約70nmが最低でも必要な膜厚であることが分かる。
もちろん、照射イオンの運動エネルギーを最適値よりも小さく設定して照射量が大きくなっても構わないという条件でIIB加工が施される場合には、選定した運動エネルギーに応じて、位置制御層50に要求される最小膜厚値は上記の計算結果よりも小さくできる。
(プローブアレイ応用の具体例)
同様に、電気測定用プローブアレイにおいて、厚さ100nmのタングステン薄膜を各種イオンで湾曲加工する場合の位置制御材50の膜厚についてSRIMコード(http://www.srim.org/)を用いて計算した結果を示す。
まず、照射イオンの最適な運動エネルギーを、平均投影飛程が膜厚の50%の位置、つまり深さ50nmになる場合として計算すると、例えば、原子番号が小さい順に、シリコンイオンの場合約140keV、燐イオンの場合約150keV、アルゴンイオンの場合約180keV、砒素イオンの場合約300keV、クリプトンイオンの場合約325keV、インジウムイオンの場合約450keV、アンチモンイオンの場合約450keV、キセノンイオンの場合約500keVとなる。
次に、位置制御層50の条件として、上記計算されたイオン注入の運動エネルギーにおける平均投影飛程が膜厚の15%以下の位置になる膜厚を幾つかの材料で計算すると、例えば、密度が小さい順に、フォトレジストの場合約2200nmから約2500nm、エポキシ樹脂の場合約1800nmから約2100nm、炭素の場合約950nmから約1150nm、シリコンの場合約1250nmから約1350nm、ニオブの場合約530nmから約560nm、モリブデンの場合約450nmから約480nm、タングステンの場合約320nmから340nmが最低でも必要な膜厚であることがわかる。
もちろん、照射イオンの運動エネルギーを最適値よりも小さく設定して照射量が大きくなっても構わないという条件でIIB加工が施される場合には、選定した運動エネルギーに応じて、位置制御層50に要求される最小膜厚値は上記の計算結果よりも小さくできる。
位置制御層50を半導体プロセスに利用される材料の中で選択すると、モリブデンやタングステンが比較的小さい膜厚でその機能を果たしやすいので便利である。
一方で、炭素、フォトレジスト、ポリイミドなどのカーボン系材料は、単位厚さ当たりのイオン遮蔽性能は低いが、容易に1μmオーダーの厚い膜を形成可能であるため、これらも又は位置制御層の材料として望ましい。カーボン系材料は酸素アッシングで簡便に除去可能である点もプロセスを簡便にする要因である。
(8)イオン照射を継続して施した場合には、さらに多くのイオンが注入されて、片持ち梁構造40が垂直に曲げ加工される。(図1(H))
本発明に係る薄膜部材の湾曲加工方法に使用するイオンとしては、特に原理的な制約は無い。イオン注入装置を用いる場合には、リン、硼素、砒素、インジウム、アンチモン、弗化硼素、アルミニウム、窒素、アルゴン、弗化シリコン、シリコン、水素化硼素、水素化炭素などが一般的に備わっているため容易に利用できる。
集束イオンビーム(FIB)装置を用いる場合にはガリウムが一般的に備わっているため容易に利用できる。
その他にも、半導体産業ではあまり利用されていないイオン種であっても、水素、ヘリウム、炭素、酸素、フッ素、ネオン、マグネシウム、硫黄、塩素、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ゲルマニウム、クリプトン、ルビジウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、パラジウム、銀、カドミウム、錫、ヨウ素、キセノン、ハフニウム、タングステン、イリジウム、白金、金、鉛、ビスマス、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロビウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムなどはイオン照射技術として確立されているため容易に利用できる。
イオン種は上記から選定されたいずれか1種で実施されるのが曲げ可能の制御性の観点からは望ましい。しかし、IIB技術の原理上、複数種のイオンが混合されている場合でも高い精度で加工することは可能である。そのため、質量分析器を省略した安価な構成のイオン照射装置でも実施可能である。
(実施形態のポイント)
位置制御層50の先端51の位置決めが重要である。位置制御層50の加工を異方性エッチングで実施すると、従来法の等方性エッチングに比較して、高い位置決め精度を得ることができる。
RIE(Reactive Ion Etching)、イオンミリング等のドライエッチングプロセスは、異方的に垂直に薄膜をエッチング可能であるため、フォトレジストに形成した微細パタンを正確に薄膜に転写可能である。
一方、ウェットエッチングの場合は、薬液が染みこむ効果によって等方的にエッチング加工が進行するためフォトレジストに形成した微細パタンをそのまま薄膜に転写することは不可能である。
(本発明の特徴点)
図1(F)に示すように片持ち梁構造40から見てイオンが飛来する方向に、片持ち梁構造が曲がり始める位置を決めるための位置制御層50が、少なくともイオン照射を行う時点で存在しているということである。この位置制御層50は、片持ち梁構造40を曲げ加工のためのイオン照射が施された際に、変形することがないような形態を選ぶと、位置制御層50の先端51から片持ち梁構造40に下ろした延長線の位置が、片持ち梁構造40が曲がり始める位置を決定する。
後述の本発明における曲げ加工原理から明らかなように、位置制御層50は単層膜である必要はない。また同様に後述の本発明における曲げ加工原理から明らかなように、位置制御層50を支持する位置制御層支持層60はなくてもよい。
(実施例)
図1にしたがって、シリコンフォトニクス用途の立体湾曲光導波路の作製例を説明する。
(1)基板10を単結晶シリコン、支持層形成用出発層20’を厚さ2μmのシリコン熱酸化膜、薄膜部材形成用出発層30’を厚さ220nmの単結晶シリコンとするSOIウェハを用意する。(図1(A))
(2)厚さ220nmの単結晶シリコンをフォトリソグラフィとRIEによってパタニングしてシリコン光回路(薄膜部材30)を作製する。(図1(B))
(3)シリコン光回路上にクラッド層として厚さ約2μmのSiO層をCVD法で成膜した。この状態でシリコン光回路が完成する。クラッド層が位置制御層支持層形成用出発層60’に対応する。(図1(C))
(4)位置制御層形成用出発層50’として膜厚200nmのタングステンをスパッタ法で製膜する。(図1(D))
(5)膜厚200nmのタングステンをフォトリソグラフィとRIEによってパタニングして位置制御層50を形成する。(図1(E))
(6)緩衝フッ酸溶液にて位置制御層支持層形成用出発層60’であるSiO層と支持層形成用出発層20’であるSiO層を横方向エッチングして、シリコン光回路の末端部を片持ち梁構造40として形成する。(図1(F))
(7)加速エネルギー80kevのシリコンイオンビームを照射して、片持ち梁構造のシリコン光回路の末端部を、基板垂直上方向に湾曲加工する。(図1(G)、(H))
なお、シリコンイオンビームの照射を工夫することにより、必要に応じて片持ち梁構造のシリコン光回路の末端部を、基板垂直下方向に湾曲加工することもできる。
これは例えば、シリコン光回路を複数個積層したようなとき、上層にあるシリコン光回路の末端部を下方向に湾曲して活用するような構造に適用される。
以上の実施例では、位置制御層50に膜厚200nmのタングステンを用いているが、膜厚2450nm以上のフォトレジスト、膜厚1120nm以上のエポキシ樹脂、膜厚約670nm以上の炭素、膜厚約780nm以上のシリコン、膜厚約330nm以上のニオブ、膜厚約290nm以上のモリブデン、膜厚約210nm以上のタングステンをはじめとする、該イオン注入処理で変形が生じない条件を満たした材料で置き換えることが可能である。
図2(A)にイオン照射後のSEM像を示す。シリコン光導波路が湾曲加工されているが、その片持ち梁構造が曲がり始めている位置が、位置制御層であるタングステン薄膜のエッジ位置で定まっていることがわかる。
その後、タングステンで作製した位置制御層50が不要である場合は、硫酸溶液などの酸によるウェットエッチングで選択的に除去する。
図2(B)に、タングステン除去後のSEM像を示す。
先端が湾曲加工されたシリコン光導波路があらわになっており、その片持ち梁構造が曲がり始めている位置が、従来技術では支持層の周縁面で定まっていたが、本実施例においてはそれよりも左側の位置から曲がり始めていることが確認できる。
図2(A)のSEM像と比較すると、この曲がり始めている位置は、元々タングステン薄膜のエッジがあった位置と揃っていることがわかる。
従来のIIB技術では、位置制御の面内均一性や再現性が低いウェットエッチングで決まる周縁面が湾曲加工の位置を決めていたため、研究室レベルのデバイス実証で使える技術であっても、量産化が困難な技術であった。
本発明はその課題を克服し、位置制御の面内均一性や再現性が高いドライエッチングで決まる位置制御層の周縁面が湾曲加工の位置を決めるプロセスを可能にした。
さらに本発明によれば、複数個の片持ち梁構造を互いに近接して配置することができるため、加工された片持ち梁構造の高集積化も達成することができる。
図3に示す模式図を用いて高集積化の効果を説明する。
図3(A)は、本発明によって薄膜部材30に片持ち梁構造40を形成した状態の上面図である。所望の立体構造の長さをLとし、そのために薄膜部材30に長さL+αの片持ち梁構造を形成した状態を示す。実線で示す先端51は、図3(B)に示す断面図の位置制御層50のエッジ部分を示す。
この構造に対してイオン照射を施すことにより、片持ち梁構造40が湾曲加工される。片持ち梁構造40が曲がり始める位置は、位置制御層50の先端51の下方延長線方向に伸ばして片持ち梁構造40と交差する位置となる。つまり図3(A)に長さLとして示した部分が立体湾曲加工を施される部分となる。
まず重要なことは、本発明を採用すれば、前述の図7に示した岬のような構造を回避するデザインは不要になるという点である。従って、支持層20及び位置制御層支持層60を等方性エッチングで除去する工程では、所望の立体構造の長さLに相当する距離の横方向エッチングが行われることはない。そしてその短縮された平面的エッチング領域の停止線を周縁面21として描いている。なお、図3では片持梁構造40は矩形で描いているが、三角形、円、その他の二次元図形でもよい。
また、前述の図9と図10では薄膜部材30のうち、片持ち梁構造40以外の部分(作製した立体構造を支持する領域として必要な部分)の長さをMと示し、この部分も含めて平面エッチング領域と干渉しないようにすることが重要な設計項目となっていたが、本発明を用いるとこのような平面エッチング領域の干渉はある程度まで許容されるため、ここでの説明では前述の図9と図10で示すところの長さMの部分に関しては省略する。
このような図3(A)の構造を同一基板内に複数個配列して同じ立体構造をアレイ化する場合の集積密度について考える。
2つの片持ち梁の平面エッチング領域の干渉について図3(C)を用いて考察する。片持ち梁構造の曲がり始める位置を揃えずに間隔g<Lで配列した場合、平面エッチング領域は図9に比べて縮小しているため干渉は起こらない。そのため、互いに隣り合う片持ち梁は同じ長さLの部分だけが曲げ加工される。
さらに間隔gを小さくして、平面エッチング領域が干渉する距離になった場合には、図9(D)に示すように隣り合う片持ち梁構造の長さは、一方がL+α、他方がL+β、(αはβよりも小さい)のように異なってくる。ところが、片持ち梁構造40が曲がり始める位置は、位置制御層50の先端51の下方延長線方向に伸ばして片持ち梁構造40と交差する位置となるため、このように片持ち梁の長さが異なる場合であっても、隣り合う片持ち梁構造の内、湾曲加工される長さは同じLとすることができる。これが本発明によるIIB技術の欠点であった集積化デザインの制約を打ち破るエッセンスである。以下、これを正方格子と三角格子に展開する。
正方格子に配列する例を図3(E)に示す。図3(E)では、片持ち梁構造の先端自由端は、それぞれ正方格子の各頂点に配置されている。
X軸・Y軸方向ともに、間隔gを容易にg<Lに縮小することができることがわかる。
同様に図3(F)に示すように三角格子に配列する場合でも、間隔gを容易にg<Lに縮小することができることがわかる。図3(F)では、片持ち梁構造の先端自由端は、それぞれ三角格子の各頂点に配置されている。
さらには、本数を制限すれば図3(G)に示すように間隔gをg<L/2となるまで縮小することも可能である。このような挟ピッチの二次元配列は、従来技術では不可能である。
高さ50μmの電気測定用プローブを、IIB技術を用いて作製する例に本発明を適用する。この場合、片持ち梁構造の長さLは50μm必要となる。これを図3(E)のように配列するとX方向及びY方向の間隔はおよそ50μm未満となる。同様に図3(F)の三角格子状にアレイ化するとおよそ50μm未満の間隔となる。同様に図3(G)の三角格子状にアレイ化するとおよそ25μm未満の間隔となる。これらの値は、既存の電気測定用プローブアレイに比べて小さな値でIIB技術を導入することにより微細集積化のメリットも得られることとなる。
高さ1μmの真空電子源を、IIB技術を用いて作製する例に本発明を適用する。この場合、片持ち梁構造の長さLは1μm必要となる。これを2次元配列すると、図3(E)のように配列するとX方向及びY方向の間隔はおよそ1μm未満となる。同様に図3(F)の三角格子状にアレイ化するとおよそ1μm未満の間隔となる。同様に図3(G)の三角格子状にアレイ化するとおよそ0.5μm未満の間隔となる。これらの値は、既存の真空電子源アレイに比べて小さく、真空電子源アレイの製造にIIB技術を導入することで、大幅な高密度化のメリットも得られるといえる。
曲率半径3μmのシリコンフォトニクス用垂直光カプラなどを、IIB技術を用いて作製する例に本発明を適用する。この場合、片持ち梁構造の長さLは5μm必要となる。これを2次元配列するとき、図3(E)のように配列するとX方向及びY方向の間隔はおよそ5μm未満となる。同様に図3(F)の三角格子状にアレイ化するとおよそ5μmの間隔となる。一方、図3(G)のように個数を制限した三角格子状にアレイ化すると、2.5μm未満の間隔が可能となる。
これらの値は、従来のシリコン光結合器では到底達成できない値である。そのため、フューモードファイバ、マルチモードファイバ、マルチコアファイバ、フューモードマルチコアファイバやマルチモードマルチコアファイバ、レーザーダイオードアレイ、面発光レーザーアレイ、MEMSミラー、空間位相変調器などのような空間的に複数の光伝搬モードが集積された光デバイスとの光結合を行う場合に有効で、飛躍的なデバイスの小型化が実現できる。
図3(G)の配列法は、究極には0.5μm程度の挟ピッチ化が可能である。その場合、干渉デバイス応用で大きなメリットがある。例えば光通信で利用される1.55μm帯域を想定すると、垂直光出力ポートの間隔を0.5μm程度とすることの意味は、光源のピッチを波長の半分程度に作製できるという事を意味し、ライダー(LIDAR:Light Detection and Ranging又はLaser Imaging Detection and Ranging)素子などへの応用で飛躍的な技術革新を可能となる。
(立体湾曲光回路)
立体湾曲光導波路への応用の場合には、図4に示すように下方向に曲げ加工を施して、下層に既に形成されている上方向に立体湾曲されたシリコン光導波路と合わせて、下層のシリコン光回路と上層のシリコン光回路を光接続するために利用することもできる。
図4を参照して詳細に説明する。
本発明にしたがって上方向に立体湾曲された垂直光カプラを有するシリコン光導波路をクラッド層70で埋めて下層のシリコン光回路を得る。
次に、その上に支持層形成用出発層及び光導波路形成用出発層を積層し、光導波路形成用出発層をパタン化して光導波路を形成し、光導波路の上に直接もしくは位置制御層支持層を介して、光導波路の片持ち梁構造がイオンを照射することにより曲がり始める位置を決定する位置制御層を異方性エッチングにより形成し、光導波路の下の支持層形成用出発層の一部もしくは、支持層形成用出発層の一部及び位置制御層支持層形成用出発層の一部を、支持層の周縁面、もしくは支持層の周縁面及び位置制御層支持層の端面が、位置制御層の先端の下方延長線上もしくはそれより内側にあるように等方性エッチングにより除去して、光導波路に先端自由端41を有する片持ち梁構造40を形成する。(図4(A))
次に、位置制御層50をマスクとして片持ち梁構造40の一部にイオンを照射し、片持ち梁構造の一部を下方向に湾曲させて第2の垂直光カプラとする。(図4(B))
この際、下層の垂直光カプラ及び上層の第2の垂直光カプラが光接続するように対向して配置する。
最後に、位置制御層50を除去した後、クラッド層70で埋めることより、層間接続された立体湾曲光回路が得られる。(図4(C))
このような上下層の光回路の接続を形成する際には、本特許による高精度な位置制御技術がなければ実現し得ない。
以上、本明細書に開示した実施形態並びに実施例は、本発明に係る、薄膜部材の湾曲加工方法の理解を容易にするために例示したものであって、本発明はこれに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない限り、薄膜部材の湾曲加工方法の実施に当たって、適宜の設計変更が可能であることは言うまでもないことである。
10 基板
20 支持層
20’ 支持層形成用出発層
21 周縁面
30 薄膜部材
30’ 薄膜部材形成用出発層
40 片持ち梁構造
41 先端自由端
50 位置制御層
50’ 位置制御層形成用出発層
51 先端
60 位置制御層支持層
60’ 位置制御層支持層形成用出発層
61 端面
70 クラッド層

Claims (15)

  1. 基板上に支持層形成用出発層及び薄膜部材形成用出発層を積層する工程と、該薄膜部材形成用出発層をパタン化して薄膜部材を形成する工程と、該薄膜部材の上に直接もしくは位置制御層支持層形成用出発層を介して、該薄膜部材の片持ち梁構造がイオンを照射することにより曲がり始める位置を決定する位置制御層を形成する工程と、該薄膜部材の下の該支持層形成用出発層の一部もしくは、該支持層形成用出発層の一部及び位置制御層支持層形成用出発層の一部を、支持層の周縁面、もしくは支持層の周縁面及び位置制御層支持層の端面が、該位置制御層の先端の下方延長線上もしくはそれより内側にあるように除去して、該薄膜部材に先端自由端を有する片持ち梁構造を形成する工程と、該位置制御層をマスクとして該片持ち梁構造の一部にイオンを照射し、該片持ち梁構造の一部を湾曲させる工程と、を含む薄膜部材の湾曲加工方法。
  2. 基板上に支持層形成用出発層及び薄膜部材形成用出発層を積層する工程と、該薄膜部材形成用出発層をパタン化して薄膜部材を形成する工程と、該薄膜部材の上に直接もしくは位置制御層支持層形成用出発層を介して、該薄膜部材の片持ち梁構造がイオンを照射することにより曲がり始める位置を決定する位置制御層を異方性エッチングにより形成する工程と、該薄膜部材の下の該支持層形成用出発層の一部もしくは、該支持層形成用出発層の一部及び位置制御層支持層形成用出発層の一部を、支持層の周縁面、もしくは支持層の周縁面及び位置制御層支持層の端面が、該位置制御層の先端の下方延長線上もしくはそれより内側にあるように等方性エッチングにより除去して、該薄膜部材に先端自由端を有する片持ち梁構造を形成する工程と、該位置制御層をマスクとして該片持ち梁構造の一部にイオンを照射し、該片持ち梁構造の一部を湾曲させる工程と、を含む薄膜部材の湾曲加工方法。
  3. 上記片持ち梁構造は、電気測定用プローブを構成していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の薄膜部材の湾曲加工方法。
  4. 上記片持ち梁構造は、電界放出素子のエミッタを構成していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の薄膜部材の湾曲加工方法。
  5. 上記片持ち梁構造は、光導波路を構成していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の薄膜部材の湾曲加工方法。
  6. 基板上に支持層形成用出発層及び光導波路形成用出発層を積層する工程と、該光導波路形成用出発層をパタン化して光導波路を形成する工程と、該光導波路の上に直接もしくは位置制御層支持層を介して、該光導波路の片持ち梁構造がイオンを照射することにより曲がり始める位置を決定する位置制御層を異方性エッチングにより形成する工程と、該光導波路の下の該支持層形成用出発層の一部もしくは、該支持層形成用出発層の一部及び位置制御層支持層形成用出発層の一部を、支持層の周縁面、もしくは支持層の周縁面及び位置制御層支持層の端面が、該位置制御層の先端の下方延長線上もしくはそれより内側にあるように等方性エッチングにより除去して、該光導波路に先端自由端を有する片持ち梁構造を形成する工程と、該位置制御層をマスクとして該片持ち梁構造の一部にイオンを照射し、該片持ち梁構造の一部を湾曲させて垂直光カプラとする工程と、を含む光導波路の湾曲加工方法。
  7. 上記基板は、シリコン光集積回路基板であることを特徴とする請求項6に記載の光導波路の湾曲加工方法。
  8. 上記光導波路は、シリコンを主成分とする光導波路であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の光導波路の湾曲加工方法。
  9. 上記位置制御層の構成材料は、タングステン又は炭素であることを特徴とする請求項8に記載の光導波路の湾曲加工方法。
  10. 上記光導波路の上記片持ち梁構造は、該片持ち梁構造の長さよりも小さな間隔で複数個二次元アレイ配置されていることを特徴とする請求項6ないし請求項9のいずれか1項に記載の光導波路の湾曲加工方法。
  11. 上記片持ち梁構造の先端自由端は、それぞれ正方格子の各頂点に配置されていることを特徴とする請求項10に記載の光導波路の湾曲加工方法。
  12. 上記片持ち梁構造の先端自由端は、それぞれ三角格子の各頂点に配置されていることを特徴とする請求項10に記載の光導波路の湾曲加工方法。
  13. 上記光導波路の上記片持ち梁構造は、該光導波路の伝搬光の波長よりも小さな間隔で複数個二次元アレイ配置されていることを特徴とする請求項6ないし請求項9のいずれか1項に記載の光導波路の湾曲加工方法。
  14. 上記片持ち梁構造の一部を湾曲させて垂直光カプラとする工程は、上記片持ち梁構造の一部を上方向に湾曲させて垂直光カプラとする工程であることを特徴とする請求項6に記載の光導波路の湾曲加工方法。
  15. さらに、上方向に湾曲された垂直光カプラをクラッド層で埋める工程と、該クラッド層上に第2の支持層形成用出発層及び第2の光導波路形成用出発層を積層する工程と、該第2の光導波路形成用出発層をパタン化して第2の光導波路を形成する工程と、該第2の光導波路の上に直接もしくは第2の位置制御層支持層を介して、該第2の光導波路の第2の片持ち梁構造がイオンを照射することにより曲がり始める位置を決定する第2の位置制御層を異方性エッチングにより形成する工程と、該第2の光導波路の下の該第2の支持層形成用出発層の一部もしくは、該第2の支持層形成用出発層の一部及び第2の位置制御層支持層形成用出発層の一部を、第2の支持層の周縁面、もしくは第2の支持層の周縁面及び第2の位置制御層支持層の端面が、該位置制御層の先端の下方延長線上もしくはそれより内側にあるように等方性エッチングにより除去して、該光導波路に先端自由端を有する片持ち梁構造を形成する工程と、該第2の位置制御層をマスクとして該第2の片持ち梁構造の一部にイオンを照射し、該第2の片持ち梁構造の一部を下方向に湾曲させて上記垂直光カプラと光接続する第2の垂直光カプラとする工程と、を含む請求項14に記載の光導波路の湾曲加工方法。
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