JPWO2017145706A1 - 薄膜部材の湾曲加工方法 - Google Patents
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Abstract
基板10上に支持層形成用出発層20’及び薄膜部材形成用出発層30’を積層する工程と、薄膜部材形成用出発層30’をパタン化して薄膜部材30を形成する工程と、薄膜部材の上に位置制御層支持層形成用出発層60’を介して、薄膜部材の片持ち梁構造がイオンを照射することにより曲がり始める位置を決定する位置制御層50を形成する工程と、薄膜部材の下の該支持層形成用出発層20’の一部及び位置制御層支持層形成用出発層60’の一部を、支持層の周縁面21及び位置制御層支持層60の端面61が、位置制御材層の先端51の下方延長線上もしくはそれより内側にあるように除去して、薄膜部材30に先端自由端41を有する片持ち梁構造40を形成する工程と、位置制御層50をマスクとして片持ち梁構造の一部にイオンを照射し、片持ち梁構造40の一部を湾曲させる工程と、を含む薄膜部材の湾曲加工方法。
Description
本発明が寄与する技術分野は、半導体集積回路の製造、NEMS/MEMS(微小電気機械システム)デバイスの製造、光デバイス及び光集積回路の製造や、それらを集積化した融合デバイスの製造をはじめとする薄膜部材のマイクロメートルからナノメートルオーダーの微細な加工が必要とされる技術分野において、特に従来からある平面的な構造ではなく、三次元的な構造を必要とする技術分野に適用される。
すなわち、既存の微細加工技術は、基板の表面のせいぜい1μm未満の極薄い平面的な領域における加工技術であると言え、1μmを超える高さの立体的な構造を加工することは不得手としている。
この手法に依れば、堆積技術やエッチング技術では構築し得なかった1μm〜100μmの立体的な微細構造を形成できるため、その応用使途は極めて広範なものとなる。
また、実現できる曲率半径は、厚さ0.1μmの薄膜の曲げ加工の場合に0.1μmとなり、上記のマイクロ折り紙技術に代表される従来型の積層膜の内部応力を原動力とした薄膜曲げ加工技術に比べて15分の1から180分の1の微細なサイズの湾曲加工が可能である。
その内容から推測するに、微細加工プロセスによく利用される材料の中では、シリコンなどの半導体や、モリブデン、タングステン、タンタル、テクネチウム、レニウム、コバルト、ニッケル、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銅、銀、金、鉛、ゲルマニウムなどの金属や、タングステンシリサイド、モリブデンシリサイド、タンタルシリサイド、チタンシリサイド、コバルトシリサイド、クロムシリサイド、ニッケルシリサイドなどのシリコン化合物や、炭素、炭化シリコン、炭化タンタル、炭化チタン、炭化モリブデン、炭化ニオブ、炭化ハフニウム、炭化タングステン、炭化バナジウム、ダイヤモンドライクカーボンなどの炭素系材料や、窒化チタン、窒化アルミニウム、窒化シリコン、窒化タンタル、窒化ホウ素、窒化クロム、窒化ジルコニウムなどの窒化物や、酸化インジウム錫、酸化亜鉛アルミニウム、酸化亜鉛、酸化インジウムガリウム亜鉛などの透明導電膜は、片持ち梁構造の形成プロセスで最もよく使われる弗化水素酸に対する耐薬品性が高いことを特徴とするため利用されやすい。また、原子番号が小さい材料、質量が小さな材質、密度の小さな材料ほど良く曲がるため、少ない照射量で大きな変形角度が得られることも分かっている。
また、片持ち梁構造の長さに関しても特許文献1ないし4及び非特許文献5ないし7に既に開示されているとおり、0.5μmから50μmの片持ち梁を加工可能であるとある。原理上、片持ち梁が形成できさえすれば、それよりも短くても長くても加工可能であることは明らかである。
しかし、質量分析が困難な場合や、質量分析器を未搭載の装置でIIB技術を実施する場合には複数種が混合されたイオンを用いることも可能である。
(従来技術とその課題)
IIB技術のメリットを説明するために、電気測定用プローブへの応用例を示す。原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope; AFM)などの走査型プローブ顕微鏡(SPM)のプローブや、シリコンLSIのデバイステスター用のプローブでは、エッチング技術を駆使した立体的な高アスペクト比の先鋭構造が利用されている。シリコン単結晶の異方性エッチングで作製されるタイプが主流であり、寸法は底辺長10μm〜100μm、高さ10μm〜100μmの四角錐のピラミッド形状のプローブが広く利用されている。材料として単結晶シリコンが選ばれている理由は、異方性エッチングで自己整合的に高アスペクト比の先鋭構造が形成されるためである。
IIB技術は幅広い材料に適用可能であるためタングステンのような高融点・高硬度の加工難易度が高い金属を湾曲加工することも容易に可能である。手順を以下に示す。まず、厚さ20nm〜200nm程度のタングステン薄膜に必要に応じてダブルパターニングなどを駆使して先端をナノメートルオーダーに先鋭化した底辺1μm高さ100μmの三角形を二次元的にパタニングする。次に、この二次元の三角形パタン化金属薄膜を犠牲層エッチング技術と超臨界乾燥技術などを使用して片持ち梁構造に加工する。そして、三角形のタングステン薄膜の片持ち梁構造にイオン注入を行うことで、高さ100μm、厚さ20nm〜200nm程度、底辺1μmの高アスペクト比の立体構造を形成できる。従来法のシリコンの異方性エッチング技術は、エッチングされる結晶方位の角度が一定であるためピラミッド構造にならざるをえなかったが、IIB技術を利用すると二次元的なパタニングで形状を設計可能になるためフットプリントを大幅に削減できる。その結果、電気特性と機械的な耐久性に優れるタングステンのような金属材料で超高密度なプローブアレイを形成可能となる。
このような電気測定用プローブの例のようにエッチング技術で高さ10μm〜100μmの立体構造を形成するというプロセスは、一般的には材料や形状が限定されるかなり特殊なプロセスである。一方、IIB技術は幅広い材料を湾曲加工可能な技術であるため、非常に汎用性が高い技術であるといえる。
(従来技術)
次にIIB技術の真空電子源への応用例を示す。超高感度撮像素子などへ応用される真空電子源デバイスは、エミッタと呼ばれる金属製の高さ1μmの円錐構造を持つことを特徴とするデバイスである。従来その立体的なエミッタの構造は堆積技術を駆使したSpindt法と呼ばれる手法で作製されている。
まずはその手順を説明する。はじめに、金属薄膜(100nm程度)/絶縁体薄膜(1μm程度)/金属薄膜(100nm程度)を積層した基板を用意する。次に、上層の金属薄膜に直径1μm程度の孔を作製する。その後、孔が形成された金属薄膜をマスクに、絶縁体薄膜を下層の金属薄膜が露出するまでエッチングする。すると、直径1μm深さ1μm程度の円筒状の穴が基板に形成される。
ところが、この従来手法は広く実用化されるには至っていない。
その原因は、厚さ1μm以上の金属材料の真空蒸着が円錐形状形成の必須条件であるためである。真空電子源の材料としてはタングステンやモリブデンなどの高融点金属が望ましいが、高融点金属は堆積時の基板表面でのマイグレーション距離が僅かであるため、大きな応力が生じやすい材料である。しかも、堆積時の応力は膜厚が増すほど大きくなる。従って、高融点金属を厚さ1μm堆積するプロセスは膜内に生じる内部応力が巨大になるため剥離が非常に生じやすい条件となる。更には、デバイスの均一性確保の要求から、成膜中の飛来粒子の入射方向が基板に対して厳密に垂直である必要がある。
なお、一般的にはスパッタ法でも厚さ1μm以上の金属の堆積は応力の問題が生じるため困難な技術であると認識されている。
IIB技術を応用したエミッタの作製手順を非特許文献5、7に開示されている情報を基に以下に示す。まず、厚さ20nm〜50nm程度のモリブデン又はタングステン薄膜にダブルパターニングなどを駆使して先端をナノメートルオーダーに先鋭化した底辺400nm高さ1μmの三角形を二次元的にパタニングする。次に、二次元の三角形パタン化金属薄膜を、エッチング技術などを使用して片持ち梁構造に加工する。その後、三角形の金属薄膜の片持ち梁構造にイオン注入を行う。十分に多いイオン注入を行うと、片持ち梁構造を完全に垂直に折り曲げることができ、高さ1μm、厚さ20nm〜50nm程度、底辺400nmの高アスペクト比の立体構造を形成できる。
従来法では厚さ1μmの高融点金属の堆積が必要であったため応力と剥離の問題があったが、IIB技術を利用すると厚さ20nm〜50nm程度の薄膜を折り曲げて高さ1μmの立体構造を形成するため、厚膜堆積に起因する応力と剥離の問題が生じない。しかも、薄膜の堆積とエッチングとイオン注入により構成されたプロセスは、シリコンLSI製造プロセスと類似性が高いため、LSI製造工場の設備を活用した量産が可能になる。
(従来技術)
次にIIB技術のシリコンフォトニクスへの応用例を示す。近年、光導波路のコア部に単結晶シリコンあるいはアモルファスシリコンなどのシリコン材料を用いたシリコン細線光導波路を主要構成部とするシリコンフォトニクスの研究開発が活発に行われている。シリコンコア材料と石英系クラッド材料の間で大きな比屈折率差が得られるために、小さな曲率半径で光導波路を曲げても光が放射損失することがなく、光回路の著しい小型化が実現できるためである。
またシリコンLSIの製造プロセスの転用が可能なため、量産による低廉な製造コストが期待されている。シリコンフォトニクスは光インターコネクションを実現する技術として期待されており、既に要素デバイス性能は実用化レベルを達成しつつある。
しかし、シリコン光回路に光ファイバ、発光・受光素子などの外部光部品を実装するための光結合技術や、量産化に不可欠なウェハレベルテストの実現が大きな課題となっている。
電気配線とは異なり光配線を接続するための光結合技術は、ただ単に構造が繋がっているだけでは光が高効率で伝達できないという光の伝搬原理に起因する難しさがある。電子デバイスの金属配線の場合は、基本的に金属同士が接触していれば電気が流れるため、チップ表面に電極パッドを形成しそこへ金属ワイヤーや金属バンプなどを結合すれば、チップの垂直方向へ電気信号を伝達することができる。従って、チップを何枚も積み重ねた集積度の高い実装や、プロセス途中のウェハにプローブを当てて電気特性を検査するウェハレベルテストも容易に行える。
非特許文献6や特許文献3ないし4に示されているように、IIB技術はまさにこのようなウェハの垂直方向に向かって立体的に湾曲したシリコン光導波路形状を形成するのに適している。
シリコンフォトニクス用の表面光入出力器の作製手順を以下に示す。一般的なシリコンフォトニクス回路は、厚さ2μm以上のシリコン酸化膜の上に、シリコンで形成された厚さ220nmの光配線・回路層があり、その上にさらに厚さ2μm程度のシリコン酸化膜がクラッド層を形成している。このようなシリコン光回路の終端部分に長さ約5μm〜50μmの片持ち梁を形成する。片持ち梁の形成方法は、シリコン光回路層上下のシリコン酸化膜を除去するプロセスで実施する。その後、シリコン光配線の片持ち梁構造にイオン注入を行い、曲率半径約3μm〜30μmの立体湾曲型シリコン光導波路を形成できる。
IIB技術はこのように従来技術では到底不可能であった立体構造を形成する場合に効果が大きい。厚さが約220nmのシリコン光導波路を約3μmの曲率半径で曲げる加工は、他の曲げ技術では実現し得ない。
(メリット1:垂直方向にテーパーが形成された導波路コア構造)
立体湾曲シリコン光導波路は、二次元平面でパタニングされた導波路を立体的に曲げ加工して形成される。そのため、従来プロセスでは作製が非常に困難な、垂直方向に順テーパーや逆テーパーを形成した導波路コアを形成することができる。それにより、垂直方向へ伝搬する光のスポット形状を自在に制御でき、ビームサイズの拡大や縮小、扁平化などが可能となり、光ファイバや光源や光受光器との高効率光結合を実現する要素技術となる。
通常のシリコン光導波路にスポットサイズ変換器を作製する場合、スポットサイズ拡大を担うセカンドコアを、堆積技術を利用して形成する。そのため、導波路層の上側にしかセカンドコアを形成することができない。一方、立体湾曲シリコン光導波路はウェハ面外へ飛び出した構造であるため、CVD法などで等方的に酸化窒化シリコンなどのセカンドコア部材を堆積することができる。するとその構造は、光軸に対して回転対称なセカンドコアを形成することになる。このような構造は、高効率のスポットサイズコンバータを実現できる。
通常の平面上に形成されたシリコン細線導波路の先端にレンズを形成することは困難である。しかし、ウェハ面外へ飛び出した立体湾曲シリコン光導波路であれば、CVD法を活用することによってレンズ形成が容易に可能となる。レンズの直径と材料の屈折率を選定することで、光のスポットサイズを拡大・縮小することが可能になる。
立体湾曲シリコン光導波路は、ウェハ表面方向への光入出力モードを自在に制御可能にするための光学的な構造を形成するための土台になるという機能も有する。
すなわち、シリコンフォトニクスにとってIIB技術は、従来の課題を解決するだけではなく、従来には不可能であった応用分野を開拓する革命的な技術と言える。
図5に、薄膜部材を曲げ加工する場合の従来の基本的な工程を模式的に例示する。
図5(A)に示すように、基板10上に、薄膜部材の支持層となる支持層形成用出発層20’を成膜し、その上に将来、薄膜部材となる薄膜部材形成用出発層30’を成膜する。この薄膜部材形成用出発層30’を図5(B)に示すように、フォトリソグラフィとエッチング技術を利用して所望の平面形状にパタニングし、薄膜部材30とする。
すなわち、薄膜部材30は、その下に支持層20がなく、浮いた状態で先端自由端41に至る片持ち梁構造40を有するものであり、この片持ち梁構造40が実質的に曲げ加工対象となる部分であって、片持ち梁構造40は、その付け根が支持層20の周縁面21のある位置にあり、そこから空間を伸びて先端自由端41に至る形状となっている。
図5(D)に示すように、片持ち梁構造40は、支持層20の周縁面21を始点として湾曲する。さらにイオン照射を続けると、最終的に片持ち梁構造40は、図5(E)に示すように、基板10に対して直立する。
(電気測定用プローブの場合)
電気測定用プローブへの応用の場合、SiO2で形成される絶縁体層(支持層20)が表面に形成されている基板の上に厚さ20nm〜200nm程度の金属薄膜を成膜し、それをパタニングして薄膜部材30を形成する。次に、その金属薄膜から形成された薄膜部材30の先端を長さ10μm〜100μm程度の片持ち梁構造40に加工する。片持ち梁構造を形成する工程は、金属材料の薄膜部材30直下の絶縁体層(支持層20)を金属材料の薄膜部材30に損傷を与えない方法で除去なければならない。
IIB技術をプローブ作製に利用することで超高密度のプローブアレイを実現できる。しかし、それらのプローブの高さばらつきが大きくては、測定データの信頼性の観点から使いものにならない。
同様の課題は、真空電子源応用にも存在する。非特許文献7に開示されている情報を基に説明すると、真空電子源応用の場合、SiO2で形成される絶縁体層(支持層20)の上に厚さ20nm〜50nm程度のモリブデンやタングステンなどの高融点金属薄膜を成膜し、それをパタニングして薄膜部材30を形成する。
次に、金属材料の薄膜部材30の先端を長さ1μm程度の片持ち梁構造40に加工する。片持ち梁構造を形成する工程は、金属材料の薄膜部材30直下の絶縁体層(支持層20)を金属材料の薄膜部材30に損傷を与えない方法で除去しなければならない。
同様にシリコンフォトニクス応用でも、等方性エッチングのばらつきは問題になる。シリコンフォトニクス応用の場合、石英(SiO2)クラッド層で埋め込まれた厚さ220nm、幅400nm程度の、シリコン材料で形成された光導波路コア構造(薄膜部材30)の先端を長さ約5μm〜50μmほど露出させ片持ち梁構造40を形成する。この構造を実現するために、シリコンコア構造直下のクラッド(支持層20)をシリコンコア構造にダメージを与えない方法で除去しなければならない。
従って、立体湾曲型シリコン光導波路の先端位置がばらついていると、各立体湾曲型シリコン光導波路に対してそれぞれに位置合わせが必要になり、実装応用にせよウェハテスト応用にせよ、位置合わせに時間とコストを要することになる。
課題の一般的な説明を図6に従って行う。図6は、図5の(C)、(D)に関し、イオン照射前(A)、イオン照射後(B)の各断面図を引用して、湾曲構造の位置制御性についての問題点を説明するための図である。
IIB加工は、片持ち梁構造の自由端側が大きく変位し、固定端は変位しないという変形加工である。そのため、イオン注入条件を精密に制御して固定端から自由端に至る梁の部分の変位を精密制御したとしても、等方性エッチングの静止位置ばらつきが影響した固定端位置が、最終的に立体湾曲加工された自由端の位置を定義付けるためである。
ここで、図9を用いてデザイン上の集積密度の制約について具体例を示し説明する。図9(A)は、薄膜部材30に片持ち梁構造40を形成した状態の上面図である。前述の図8に示した岬のような構造を回避するデザインが採用されている。所望の立体構造の長さをLとし、そのために薄膜部材30に長さLの片持ち梁構造を形成した状態を示す。破線で示すマスキングの窓領域とは、片持ち梁構造形成のための等方性エッチング用のマスキング層の窓の部分を示している。このマスキング窓領域を始点として等方性エッチングは平面的に進行する。
なお、図9では片持梁構造40は矩形で描いているが、無論、三角形、円、その他の二次元図形でもよい。しかし、ここでは簡略化するために、矩形の片持ち梁構造で説明を続ける。
もっともこのMで示す領域は、長さだけでなく幅も重要なパラメータとなるが、やはり議論の簡略化のために幅に関しては省略する。加えて、応用デバイスにもよるが、長さMで示される領域は、配線の取り回しのために必要な領域も含めて考慮してもよい。とにかく、片持梁構造40を形成するためには、必ず支持部分がある程度の領域を占めることを考慮しなければならない。
このような配列は、例えばシリコンフォトニクス応用では光渦(又はOAM(Orbital Angular Momentum):軌道角運動量)を利用した多重化方式において螺旋状の等位相面を有する光波を生成するために有用である。立体湾曲光導波路で形成される光出射端を同心円状に配列し、各々から位相を制御した光波を空間へ出射させることができるためである。
倍の短縮ができる。しかし、Y軸方向の間隔は拡大しg>(2L+M)/2の間隔となる。同様に、図10(D)に示すように格子に対して片持ち梁構造を45度斜めに配置すればX軸方向の間隔はさらに短縮できるが、同時にY軸方向の間隔も拡大する。なお、この場合、X・Y方向ともに
の間隔が必要となる。
Y軸方向がg>(2L+M)/4に、図10(D)のX及びY軸方向がともに
に短縮できる。
しかし、片持梁構造の向きが互い違いに異なるということはデザイン上の新たな課題となる。
しかし、片持梁構造の向きが互い違いに異なるということは、デザイン上の新たな課題となる。
高さ50μmの電気測定用プローブを、IIB技術を用いて作製する具体例を示す。この場合、片持ち梁構造の長さLは50μm必要となる。また、支えの領域Mは、配線の取り回しも含めて10μm程度を想定する。これを図9(B)のように一次元的に配列すると、Lの長さに関係なく間隔gは小さくできるので、例えばgは5μm以下の挟ピッチも可能で、非常に高密度な一次元プローブアレイを形成することが可能である。
なお、図10(A)と図10(B)の関係にあるように、片持梁構造の向きを紙面右向きと紙面左向きのものを交互に配列することで簡単にデバイスの集積密度を2倍に向上することができる。
しかしその場合には、配線の取り回しが複雑になることが新たな課題となる。
高さ1μmの真空電子源を、IIB技術を用いて作製する具体例を示す。この場合、片持ち梁構造の長さLは1μmで、支えの領域と配線の引き回しを考慮した長さMは2μmと想定する。これを2次元配列するとき、図10(C)の場合はX方向の間隔がおよそ3.5μm、Y方向の間隔がおよそ2.0μmとなる。同様に図10(D)の場合はX方向及びY方向の間隔は、およそ2.8μmとなる。同様に図10(E)の三角格子状にアレイ化する場合は、およそ2.0μm以上の間隔となる。
すなわち、真空電子源アレイを、IIB技術を用いて作製すると、LSI製造プロセスに準じた工程によって、高融点金属材料のエミッタを作製することが可能になるが、集積密度の面では課題が生じるといえる。
曲率半径3μmのシリコンフォトニクス用垂直光カプラなどを、IIB技術を用いて作製する具体例を示す。この場合、片持ち梁構造の長さLは5μm必要となる。支えの部分と配線の引き回しに必要な領域としての長さMは、5μmと想定する。
これを2次元配列するとき、図10(C)の場合はX方向の間隔がおよそ13μm、Y方向の間隔がおよそ7.5μmとなる。同様に図10(D)の場合はX方向及びY方向の間隔はおよそ10.6μmとなる。同様に図10(E)の三角格子状にアレイ化する場合は、およそ10μm以上の間隔となる。これらの値は、従来技術である回折格子型結合器に比べて遜色のない値で、従来技術の置き換えとしては十分な集積密度を有しているといえる。
また、MEMSミラーや液晶を利用した空間変調器などのアレイ型光制御デバイスの研究開発が盛んである。つまり、各種光デバイスは二次元空間での集積密度を高める方向でデバイス開発が行われているといえる。
以上の問題点は全て、等方性エッチング等の停止位置がIIB加工の曲がり始め端位置と同一であることが原因であることが判明した。
したがって、本発明は、これらの問題点を全て克服するため、等方性エッチング等エッチングの停止位置とIIB加工の曲がり始め位置が異なるような薄膜部材の湾曲加工方法を実現することを課題とする。
(1)基板上に支持層形成用出発層及び薄膜部材形成用出発層を積層する工程と、該薄膜部材形成用出発層をパタン化して薄膜部材を形成する工程と、該薄膜部材の上に直接もしくは位置制御層支持層形成用出発層を介して、該薄膜部材の片持ち梁構造がイオンを照射することにより曲がり始める位置を決定する位置制御層を形成する工程と、該薄膜部材の下の該支持層形成用出発層の一部もしくは、該支持層形成用出発層の一部及び位置制御層支持層形成用出発層の一部を、支持層の周縁面、もしくは支持層の周縁面及び位置制御層支持層の端面が、該位置制御層の先端の下方延長線上もしくはそれより内側にあるように除去して、該薄膜部材に先端自由端を有する片持ち梁構造を形成する工程と、該位置制御層をマスクとして該片持ち梁構造の一部にイオンを照射し、該片持ち梁構造の一部を湾曲させる工程と、を含む薄膜部材の湾曲加工方法。
(2)基板上に支持層形成用出発層及び薄膜部材形成用出発層を積層する工程と、該薄膜部材形成用出発層をパタン化して薄膜部材を形成する工程と、該薄膜部材の上に直接もしくは位置制御層支持層形成用出発層を介して、該薄膜部材の片持ち梁構造がイオンを照射することにより曲がり始める位置を決定する位置制御層を異方性エッチングにより形成する工程と、該薄膜部材の下の該支持層形成用出発層の一部もしくは、該支持層形成用出発層の一部及び位置制御層支持層形成用出発層の一部を、支持層の周縁面、もしくは支持層の周縁面及び位置制御層支持層の端面が、該位置制御層の先端の下方延長線上もしくはそれより内側にあるように等方性エッチングにより除去して、該薄膜部材に先端自由端を有する片持ち梁構造を形成する工程と、該位置制御層をマスクとして該片持ち梁構造の一部にイオンを照射し、該片持ち梁構造の一部を湾曲させる工程と、を含む薄膜部材の湾曲加工方法。
(3)上記片持ち梁構造は、電気測定用プローブを構成していることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の薄膜部材の湾曲加工方法。
(4)上記片持ち梁構造は、電界放出素子のエミッタを構成していることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の薄膜部材の湾曲加工方法。
(5)上記片持ち梁構造は、光導波路を構成していることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の薄膜部材の湾曲加工方法。
(6)基板上に支持層形成用出発層及び光導波路形成用出発層を積層する工程と、該光導波路形成用出発層をパタン化して光導波路を形成する工程と、該光導波路の上に直接もしくは位置制御層支持層を介して、該光導波路の片持ち梁構造がイオンを照射することにより曲がり始める位置を決定する位置制御層を異方性エッチングにより形成する工程と、該光導波路の下の該支持層形成用出発層の一部もしくは、該支持層形成用出発層の一部及び位置制御層支持層形成用出発層の一部を、支持層の周縁面、もしくは支持層の周縁面及び位置制御層支持層の端面が、該位置制御層の先端の下方延長線上もしくはそれより内側にあるように等方性エッチングにより除去して、該光導波路に先端自由端を有する片持ち梁構造を形成する工程と、該位置制御層をマスクとして該片持ち梁構造の一部にイオンを照射し、該片持ち梁構造の一部を湾曲させて垂直光カプラとする工程と、を含む光導波路の湾曲加工方法。
(7)上記基板は、シリコン光集積回路基板であることを特徴とする上記(5)に記載の光導波路の湾曲加工方法。
(8)上記光導波路は、シリコンを主成分とする光導波路であることを特徴とする上記(6)又は(7)に記載の光導波路の湾曲加工方法。
(9)上記位置制御層の構成材料は、タングステン又は炭素であることを特徴とする上記(8)に記載の光導波路の湾曲加工方法。
(10)上記光導波路の上記片持ち梁構造は、該片持ち梁構造の長さよりも小さな間隔で二次元アレイ配置されていることを特徴とする上記(6)ないし(9)のいずれかに記載の光導波路の湾曲加工方法。
(11)上記片持ち梁構造の先端自由端は、それぞれ正方格子の各頂点に配置されていることを特徴とする上記(10)に記載の光導波路の湾曲加工方法。
(12)上記片持ち梁構造の先端自由端は、それぞれ三角格子の各頂点に配置されているであることを特徴とする上記(10)に記載の光導波路の湾曲加工方法。
(13)上記光導波路の上記片持ち梁構造は、該光導波路の伝搬光の波長よりも小さな間隔で二次元アレイ配置されていることを特徴とする上記(6)ないし(9)のいずれかに記載の光導波路の湾曲加工方法。
(14)上記片持ち梁構造の一部を湾曲させて垂直光カプラとする工程は、上記片持ち梁構造の一部を上方向に湾曲させて垂直光カプラとする工程であることを特徴とする上記(6)に記載の光導波路の湾曲加工方法。
(15)さらに、上方向に湾曲された垂直光カプラをクラッド層で埋める工程と、該クラッド層上に第2の支持層形成用出発層及び第2の光導波路形成用出発層を積層する工程と、該第2の光導波路形成用出発層をパタン化して第2の光導波路を形成する工程と、該第2の光導波路の上に直接もしくは第2の位置制御層支持層を介して、該第2の光導波路の第2の片持ち梁構造がイオンを照射することにより曲がり始める位置を決定する第2の位置制御層を異方性エッチングにより形成する工程と、該第2の光導波路の下の該第2の支持層形成用出発層の一部もしくは、該第2の支持層形成用出発層の一部及び第2の位置制御層支持層形成用出発層の一部を、第2の支持層の周縁面、もしくは第2の支持層の周縁面及び第2の位置制御層支持層の端面が、該位置制御層の先端の下方延長線上もしくはそれより内側にあるように等方性エッチングにより除去して、該光導波路に先端自由端を有する片持ち梁構造を形成する工程と、該第2の位置制御層をマスクとして該第2の片持ち梁構造の一部にイオンを照射し、該第2の片持ち梁構造の一部を下方向に湾曲させて上記垂直光カプラと光接続する第2の垂直光カプラとする工程と、を含む上記(14)に記載の光導波路の湾曲加工方法。
さらに、複数個の片持ち梁構造を互いに近接して配置することができるため、加工された片持ち梁構造の高集積化も達成することができる。
本発明の要点は、片持梁構造から見て照射イオンが飛来する方向に新たに、飛来イオンを遮蔽して、かつ等方性エッチング等の横方向エッチングの終点位置とは異なる位置にIIB加工の曲がり始め位置を定義できるような位置制御層を付加することである。
位置制御層に求められる条件は、A:等方性エッチングよりも制御性が高い異方性エッチングで加工されていること、B:先端が横方向エッチング停止位置と同一面内にあるか、それよりも片持ち梁の先端にむけて伸延した位置にあること、C:照射イオンが貫通しないこと、D:それ自体がIIB加工されて変形しないことの4つの条件を満たすことが望ましい。
図1(A)ないし(H)は、本発明に係る薄膜部材の湾曲加工方法を模式的に示す図面である。以下、その工程を順次説明する。
図1(A)では、支持層形成用出発層20’は基板全面に必要であるように描いているが、必要なのは片持ち梁40をなす領域だけである。それ以外の領域では薄膜部材形成用出発層30’の下に支持層形成用出発層20’が形成されていなくてもよい。支持層形成用出発層20’は、薄膜部材形成用出発層30’の一部を片持ち梁構造40に成形するために必要な層である。
パタン化した薄膜部材30の平面形状は、最終的な作製目的構造体による。例えば、最終的な作製目的構造体が、電界放出素子のエミッタである場合には、先端が鋭利な三角形をした平面パタンとなり、最終的な作製目的構造体が、立体湾曲型シリコン細線導波路である場合には、幅がサブミクロンオーダーの細長い構造となる。これらの例以外にも様々な用途が考えられるが、いずれの場合でも断面図を一般化して描くと図1(B)のようになる。
図1(C)では、位置制御層支持層形成用出発層60’の上部は平坦に描いているが、薄膜部材30の形状を反映した凹凸が生じていても差し支えない。
なお、この後の図1(E)のように位置制御層50を形成するための加工方法が、実質的に薄膜部材30に痕跡を残すような加工方法でない場合においては、位置制御層支持層形成用出発層60’の形成を省略することができる。
(5)位置制御層形成用出発層50’を加工して位置制御層50を形成する。(図1(E))
位置制御層50の先端51のエッジが、その後イオン照射がなされた時に片持ち梁構造が曲がり始める位置を決める役割を担う。このために、先端51は片持ち梁構造40の先端自由端41よりも横方向内方に引っ込んだ位置にある必要がある。
位置制御層50の平面形状は、パタン化した薄膜部材30の平面形状及び最終的な作成目的構造体によるが、いずれの場合でも断面図を一般化して描くと図1(E)のようになる。
薄膜部材30の曲げ加工したい部分の直下にある支持層形成用出発層20’と、曲げ加工したい部分の直上にある位置制御層支持層形成用出発層60’を等方性エッチングで除去し、その周縁面21が薄膜部材30の先端自由端41よりも横方向内方に引っ込んだ位置にある支持層20となし、その上の薄膜部材30を加工対象の薄膜部材とする。
また、支持層20の周縁面21は、位置制御層50の先端51の下方延長線上か、それよりも横方向内方に引っ込んだ位置にある必要がある。
工程数を少なくして、作製を容易にするという観点からは、位置制御層支持層形成用出発層60’は、支持層形成用出発層20’と同種類か同系統の材料とするのが望ましい。そうすると、図1(E)から図1(F)に形成するためのエッチングを一つの工程に集約することが可能となる。
片持ち梁構造が曲がり始める位置は、位置制御層50の先端51の下方延長線方向に伸ばして片持ち梁構造40と交差する位置となる。ただし、イオン照射を基板に対して垂直方向から行った場合であるが、イオン入射角度が垂直以外の場合でも、位置制御層50の先端51が庇となり、位置制御可能である。
つまり、イオンの投影飛程が小さくなる材料を選べばよく、近似的には高密度な材料ほどイオン投影飛程が小さくなり、遮蔽性能が高くなる。例えば、炭素、シリコン、クロム、モリブデン、タングステンの順に遮蔽性能は高くなり位置制御層50として望ましい。
IIB加工において、片持ち梁構造を基板に対して上方向に曲げるか、下方向に曲げるかを決めるパラメータとなっているのは、照射イオンの運動エネルギーである。イオンは加速エネルギーを大きくするほど、片持ち梁構造の内部に深く進入する。イオンが片持ち梁構造の内部に侵入してからやがて運動エネルギーを失い膜中で停止するまでの間に、数多くの原子との衝突が起こる。その過程で生成されるのが反跳原子であり、反跳原子が生成された結果として、空孔や格子間原子などの格子欠陥が生じる。
シリコンフォトニクス応用において、厚さ220nmのシリコン細線光導波路を各種イオンで湾曲加工する場合の位置制御材50の膜厚についてSRIMコード(http://www.srim.org/)を用いて計算した結果を示す。
まず、照射イオンの最適な運動エネルギーを、平均投影飛程が膜厚の50%の位置、つまり深さ110nmになる場合として計算すると、例えば、原子番号が小さい順に、シリコンイオンの場合約80keV、燐イオンの場合約85keV、アルゴンイオンの場合約110keV、砒素イオンの場合約170keV、クリプトンイオンの場合約200keV、インジウムイオンの場合約250keV、アンチモンイオンの場合約250keV、キセノンイオンの場合約270keVとなる。
もちろん、照射イオンの運動エネルギーを最適値よりも小さく設定して照射量が大きくなっても構わないという条件でIIB加工が施される場合には、選定した運動エネルギーに応じて、位置制御層50に要求される最小膜厚値は上記の計算結果よりも小さくできる。
同様に、真空電子源において、厚さ20nmのタングステン薄膜を各種イオンで湾曲加工する場合の位置制御材50の膜厚についてSRIMコード(http://www.srim.org/)を用いて計算した結果を示す。
まず、照射イオンの最適な運動エネルギーを、平均投影飛程が膜厚の50%の位置、つまり深さ10nmになる場合として計算すると、例えば、原子番号が小さい順に、シリコンイオンの場合約25keV、燐イオンの場合約25keV、アルゴンイオンの場合約30keV、砒素イオンの場合約50keV、クリプトンイオンの場合約55keV、インジウムイオンの場合約65keV、アンチモンイオンの場合約70keV、キセノンイオンの場合約80keVとなる。
もちろん、照射イオンの運動エネルギーを最適値よりも小さく設定して照射量が大きくなっても構わないという条件でIIB加工が施される場合には、選定した運動エネルギーに応じて、位置制御層50に要求される最小膜厚値は上記の計算結果よりも小さくできる。
同様に、電気測定用プローブアレイにおいて、厚さ100nmのタングステン薄膜を各種イオンで湾曲加工する場合の位置制御材50の膜厚についてSRIMコード(http://www.srim.org/)を用いて計算した結果を示す。
まず、照射イオンの最適な運動エネルギーを、平均投影飛程が膜厚の50%の位置、つまり深さ50nmになる場合として計算すると、例えば、原子番号が小さい順に、シリコンイオンの場合約140keV、燐イオンの場合約150keV、アルゴンイオンの場合約180keV、砒素イオンの場合約300keV、クリプトンイオンの場合約325keV、インジウムイオンの場合約450keV、アンチモンイオンの場合約450keV、キセノンイオンの場合約500keVとなる。
もちろん、照射イオンの運動エネルギーを最適値よりも小さく設定して照射量が大きくなっても構わないという条件でIIB加工が施される場合には、選定した運動エネルギーに応じて、位置制御層50に要求される最小膜厚値は上記の計算結果よりも小さくできる。
一方で、炭素、フォトレジスト、ポリイミドなどのカーボン系材料は、単位厚さ当たりのイオン遮蔽性能は低いが、容易に1μmオーダーの厚い膜を形成可能であるため、これらも又は位置制御層の材料として望ましい。カーボン系材料は酸素アッシングで簡便に除去可能である点もプロセスを簡便にする要因である。
本発明に係る薄膜部材の湾曲加工方法に使用するイオンとしては、特に原理的な制約は無い。イオン注入装置を用いる場合には、リン、硼素、砒素、インジウム、アンチモン、弗化硼素、アルミニウム、窒素、アルゴン、弗化シリコン、シリコン、水素化硼素、水素化炭素などが一般的に備わっているため容易に利用できる。
集束イオンビーム(FIB)装置を用いる場合にはガリウムが一般的に備わっているため容易に利用できる。
位置制御層50の先端51の位置決めが重要である。位置制御層50の加工を異方性エッチングで実施すると、従来法の等方性エッチングに比較して、高い位置決め精度を得ることができる。
RIE(Reactive Ion Etching)、イオンミリング等のドライエッチングプロセスは、異方的に垂直に薄膜をエッチング可能であるため、フォトレジストに形成した微細パタンを正確に薄膜に転写可能である。
一方、ウェットエッチングの場合は、薬液が染みこむ効果によって等方的にエッチング加工が進行するためフォトレジストに形成した微細パタンをそのまま薄膜に転写することは不可能である。
図1(F)に示すように片持ち梁構造40から見てイオンが飛来する方向に、片持ち梁構造が曲がり始める位置を決めるための位置制御層50が、少なくともイオン照射を行う時点で存在しているということである。この位置制御層50は、片持ち梁構造40を曲げ加工のためのイオン照射が施された際に、変形することがないような形態を選ぶと、位置制御層50の先端51から片持ち梁構造40に下ろした延長線の位置が、片持ち梁構造40が曲がり始める位置を決定する。
図1にしたがって、シリコンフォトニクス用途の立体湾曲光導波路の作製例を説明する。
(1)基板10を単結晶シリコン、支持層形成用出発層20’を厚さ2μmのシリコン熱酸化膜、薄膜部材形成用出発層30’を厚さ220nmの単結晶シリコンとするSOIウェハを用意する。(図1(A))
(2)厚さ220nmの単結晶シリコンをフォトリソグラフィとRIEによってパタニングしてシリコン光回路(薄膜部材30)を作製する。(図1(B))
(3)シリコン光回路上にクラッド層として厚さ約2μmのSiO2層をCVD法で成膜した。この状態でシリコン光回路が完成する。クラッド層が位置制御層支持層形成用出発層60’に対応する。(図1(C))
(4)位置制御層形成用出発層50’として膜厚200nmのタングステンをスパッタ法で製膜する。(図1(D))
(5)膜厚200nmのタングステンをフォトリソグラフィとRIEによってパタニングして位置制御層50を形成する。(図1(E))
(6)緩衝フッ酸溶液にて位置制御層支持層形成用出発層60’であるSiO2層と支持層形成用出発層20’であるSiO2層を横方向エッチングして、シリコン光回路の末端部を片持ち梁構造40として形成する。(図1(F))
(7)加速エネルギー80kevのシリコンイオンビームを照射して、片持ち梁構造のシリコン光回路の末端部を、基板垂直上方向に湾曲加工する。(図1(G)、(H))
なお、シリコンイオンビームの照射を工夫することにより、必要に応じて片持ち梁構造のシリコン光回路の末端部を、基板垂直下方向に湾曲加工することもできる。
これは例えば、シリコン光回路を複数個積層したようなとき、上層にあるシリコン光回路の末端部を下方向に湾曲して活用するような構造に適用される。
その後、タングステンで作製した位置制御層50が不要である場合は、硫酸溶液などの酸によるウェットエッチングで選択的に除去する。
先端が湾曲加工されたシリコン光導波路があらわになっており、その片持ち梁構造が曲がり始めている位置が、従来技術では支持層の周縁面で定まっていたが、本実施例においてはそれよりも左側の位置から曲がり始めていることが確認できる。
図2(A)のSEM像と比較すると、この曲がり始めている位置は、元々タングステン薄膜のエッジがあった位置と揃っていることがわかる。
本発明はその課題を克服し、位置制御の面内均一性や再現性が高いドライエッチングで決まる位置制御層の周縁面が湾曲加工の位置を決めるプロセスを可能にした。
図3に示す模式図を用いて高集積化の効果を説明する。
図3(A)は、本発明によって薄膜部材30に片持ち梁構造40を形成した状態の上面図である。所望の立体構造の長さをLとし、そのために薄膜部材30に長さL+αの片持ち梁構造を形成した状態を示す。実線で示す先端51は、図3(B)に示す断面図の位置制御層50のエッジ部分を示す。
この構造に対してイオン照射を施すことにより、片持ち梁構造40が湾曲加工される。片持ち梁構造40が曲がり始める位置は、位置制御層50の先端51の下方延長線方向に伸ばして片持ち梁構造40と交差する位置となる。つまり図3(A)に長さLとして示した部分が立体湾曲加工を施される部分となる。
このような図3(A)の構造を同一基板内に複数個配列して同じ立体構造をアレイ化する場合の集積密度について考える。
さらに間隔gを小さくして、平面エッチング領域が干渉する距離になった場合には、図9(D)に示すように隣り合う片持ち梁構造の長さは、一方がL+α、他方がL+β、(αはβよりも小さい)のように異なってくる。ところが、片持ち梁構造40が曲がり始める位置は、位置制御層50の先端51の下方延長線方向に伸ばして片持ち梁構造40と交差する位置となるため、このように片持ち梁の長さが異なる場合であっても、隣り合う片持ち梁構造の内、湾曲加工される長さは同じLとすることができる。これが本発明によるIIB技術の欠点であった集積化デザインの制約を打ち破るエッセンスである。以下、これを正方格子と三角格子に展開する。
X軸・Y軸方向ともに、間隔gを容易にg<Lに縮小することができることがわかる。
同様に図3(F)に示すように三角格子に配列する場合でも、間隔gを容易にg<Lに縮小することができることがわかる。図3(F)では、片持ち梁構造の先端自由端は、それぞれ三角格子の各頂点に配置されている。
さらには、本数を制限すれば図3(G)に示すように間隔gをg<L/2となるまで縮小することも可能である。このような挟ピッチの二次元配列は、従来技術では不可能である。
立体湾曲光導波路への応用の場合には、図4に示すように下方向に曲げ加工を施して、下層に既に形成されている上方向に立体湾曲されたシリコン光導波路と合わせて、下層のシリコン光回路と上層のシリコン光回路を光接続するために利用することもできる。
図4を参照して詳細に説明する。
本発明にしたがって上方向に立体湾曲された垂直光カプラを有するシリコン光導波路をクラッド層70で埋めて下層のシリコン光回路を得る。
次に、その上に支持層形成用出発層及び光導波路形成用出発層を積層し、光導波路形成用出発層をパタン化して光導波路を形成し、光導波路の上に直接もしくは位置制御層支持層を介して、光導波路の片持ち梁構造がイオンを照射することにより曲がり始める位置を決定する位置制御層を異方性エッチングにより形成し、光導波路の下の支持層形成用出発層の一部もしくは、支持層形成用出発層の一部及び位置制御層支持層形成用出発層の一部を、支持層の周縁面、もしくは支持層の周縁面及び位置制御層支持層の端面が、位置制御層の先端の下方延長線上もしくはそれより内側にあるように等方性エッチングにより除去して、光導波路に先端自由端41を有する片持ち梁構造40を形成する。(図4(A))
この際、下層の垂直光カプラ及び上層の第2の垂直光カプラが光接続するように対向して配置する。
最後に、位置制御層50を除去した後、クラッド層70で埋めることより、層間接続された立体湾曲光回路が得られる。(図4(C))
このような上下層の光回路の接続を形成する際には、本特許による高精度な位置制御技術がなければ実現し得ない。
すなわち、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない限り、薄膜部材の湾曲加工方法の実施に当たって、適宜の設計変更が可能であることは言うまでもないことである。
20 支持層
20’ 支持層形成用出発層
21 周縁面
30 薄膜部材
30’ 薄膜部材形成用出発層
40 片持ち梁構造
41 先端自由端
50 位置制御層
50’ 位置制御層形成用出発層
51 先端
60 位置制御層支持層
60’ 位置制御層支持層形成用出発層
61 端面
70 クラッド層
Claims (15)
- 基板上に支持層形成用出発層及び薄膜部材形成用出発層を積層する工程と、該薄膜部材形成用出発層をパタン化して薄膜部材を形成する工程と、該薄膜部材の上に直接もしくは位置制御層支持層形成用出発層を介して、該薄膜部材の片持ち梁構造がイオンを照射することにより曲がり始める位置を決定する位置制御層を形成する工程と、該薄膜部材の下の該支持層形成用出発層の一部もしくは、該支持層形成用出発層の一部及び位置制御層支持層形成用出発層の一部を、支持層の周縁面、もしくは支持層の周縁面及び位置制御層支持層の端面が、該位置制御層の先端の下方延長線上もしくはそれより内側にあるように除去して、該薄膜部材に先端自由端を有する片持ち梁構造を形成する工程と、該位置制御層をマスクとして該片持ち梁構造の一部にイオンを照射し、該片持ち梁構造の一部を湾曲させる工程と、を含む薄膜部材の湾曲加工方法。
- 基板上に支持層形成用出発層及び薄膜部材形成用出発層を積層する工程と、該薄膜部材形成用出発層をパタン化して薄膜部材を形成する工程と、該薄膜部材の上に直接もしくは位置制御層支持層形成用出発層を介して、該薄膜部材の片持ち梁構造がイオンを照射することにより曲がり始める位置を決定する位置制御層を異方性エッチングにより形成する工程と、該薄膜部材の下の該支持層形成用出発層の一部もしくは、該支持層形成用出発層の一部及び位置制御層支持層形成用出発層の一部を、支持層の周縁面、もしくは支持層の周縁面及び位置制御層支持層の端面が、該位置制御層の先端の下方延長線上もしくはそれより内側にあるように等方性エッチングにより除去して、該薄膜部材に先端自由端を有する片持ち梁構造を形成する工程と、該位置制御層をマスクとして該片持ち梁構造の一部にイオンを照射し、該片持ち梁構造の一部を湾曲させる工程と、を含む薄膜部材の湾曲加工方法。
- 上記片持ち梁構造は、電気測定用プローブを構成していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の薄膜部材の湾曲加工方法。
- 上記片持ち梁構造は、電界放出素子のエミッタを構成していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の薄膜部材の湾曲加工方法。
- 上記片持ち梁構造は、光導波路を構成していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の薄膜部材の湾曲加工方法。
- 基板上に支持層形成用出発層及び光導波路形成用出発層を積層する工程と、該光導波路形成用出発層をパタン化して光導波路を形成する工程と、該光導波路の上に直接もしくは位置制御層支持層を介して、該光導波路の片持ち梁構造がイオンを照射することにより曲がり始める位置を決定する位置制御層を異方性エッチングにより形成する工程と、該光導波路の下の該支持層形成用出発層の一部もしくは、該支持層形成用出発層の一部及び位置制御層支持層形成用出発層の一部を、支持層の周縁面、もしくは支持層の周縁面及び位置制御層支持層の端面が、該位置制御層の先端の下方延長線上もしくはそれより内側にあるように等方性エッチングにより除去して、該光導波路に先端自由端を有する片持ち梁構造を形成する工程と、該位置制御層をマスクとして該片持ち梁構造の一部にイオンを照射し、該片持ち梁構造の一部を湾曲させて垂直光カプラとする工程と、を含む光導波路の湾曲加工方法。
- 上記基板は、シリコン光集積回路基板であることを特徴とする請求項6に記載の光導波路の湾曲加工方法。
- 上記光導波路は、シリコンを主成分とする光導波路であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の光導波路の湾曲加工方法。
- 上記位置制御層の構成材料は、タングステン又は炭素であることを特徴とする請求項8に記載の光導波路の湾曲加工方法。
- 上記光導波路の上記片持ち梁構造は、該片持ち梁構造の長さよりも小さな間隔で複数個二次元アレイ配置されていることを特徴とする請求項6ないし請求項9のいずれか1項に記載の光導波路の湾曲加工方法。
- 上記片持ち梁構造の先端自由端は、それぞれ正方格子の各頂点に配置されていることを特徴とする請求項10に記載の光導波路の湾曲加工方法。
- 上記片持ち梁構造の先端自由端は、それぞれ三角格子の各頂点に配置されていることを特徴とする請求項10に記載の光導波路の湾曲加工方法。
- 上記光導波路の上記片持ち梁構造は、該光導波路の伝搬光の波長よりも小さな間隔で複数個二次元アレイ配置されていることを特徴とする請求項6ないし請求項9のいずれか1項に記載の光導波路の湾曲加工方法。
- 上記片持ち梁構造の一部を湾曲させて垂直光カプラとする工程は、上記片持ち梁構造の一部を上方向に湾曲させて垂直光カプラとする工程であることを特徴とする請求項6に記載の光導波路の湾曲加工方法。
- さらに、上方向に湾曲された垂直光カプラをクラッド層で埋める工程と、該クラッド層上に第2の支持層形成用出発層及び第2の光導波路形成用出発層を積層する工程と、該第2の光導波路形成用出発層をパタン化して第2の光導波路を形成する工程と、該第2の光導波路の上に直接もしくは第2の位置制御層支持層を介して、該第2の光導波路の第2の片持ち梁構造がイオンを照射することにより曲がり始める位置を決定する第2の位置制御層を異方性エッチングにより形成する工程と、該第2の光導波路の下の該第2の支持層形成用出発層の一部もしくは、該第2の支持層形成用出発層の一部及び第2の位置制御層支持層形成用出発層の一部を、第2の支持層の周縁面、もしくは第2の支持層の周縁面及び第2の位置制御層支持層の端面が、該位置制御層の先端の下方延長線上もしくはそれより内側にあるように等方性エッチングにより除去して、該光導波路に先端自由端を有する片持ち梁構造を形成する工程と、該第2の位置制御層をマスクとして該第2の片持ち梁構造の一部にイオンを照射し、該第2の片持ち梁構造の一部を下方向に湾曲させて上記垂直光カプラと光接続する第2の垂直光カプラとする工程と、を含む請求項14に記載の光導波路の湾曲加工方法。
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