JP3829150B2 - フォトニック結晶光共振器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光の特質である共振現象を利用した光学機器、例えば波長選択フィルタやレーザなどに用いられ、波長程度の領域内に光を閉じこめるQ値の極めて高い共振器を容易に実現することのできる構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フォトニック結晶は、光の新しい機能素子実現の鍵として重要である。その主要な応用の一つは光共振器である。波長の2乗程度の断面積、あるいは波長の3乗程度の体積に光を閉じ込め、局在させることができるので、超小型光通信用波長選択素子として、さらには未来技術である量子情報処理の要の素子となる。
【0003】
一方、現在知られている理論では、Qの高い(例えば10,000以上)フォトニック結晶共振器はみな完全バンドギャップ特性を前提としている。完全バンドギャップを持つ3次元フォトニック結晶は作製が極めて困難、また2次元フォトニック結晶も完全バンドギャップをもたせるための条件は特性の高い共振器の作製と矛盾がある(大きな屈折率をもつため散乱損失が大きくなる、発光デバイスにおいては大きいバンドギャップをもつ周期構造の形成プロセスに伴う再結合中心の生成のためキャリアの非発光再結合が大きくなるなど)。本特許願は「完全バンドギャップなしの光閉じ込め」(理論的なQ=無限大)が可能であるという新しい発明に基づき、前述の困難を一掃する2次元または3次元の共振器の一群(Qが高い,または無限大の)を提供するものである。本発明は、フォトニック結晶共振器について従来の常識を覆すものである。それゆえ、まずフォトニック結晶およびフォトニック結晶共振器について従来知られていたこと、信じられていたことの簡潔な要約を行う。
【0004】
簡単のため、2次元フォトニック結晶および2次元フォトニック結晶共振器の基本的な概念を述べる。図2に示すのは、自由空間内に、z方向に無限に長い誘電体円柱201をxy面内に正方格子状に配列したものである。正方形の1辺をa、円の半径をr、誘電体の屈折率をn、比誘電率をε(ただし、ε=n)であるとする。図2において電界ベクトルがz軸に平行、角周波数がωの正弦波TE電磁波を考える(TE=transverse electric,進行方向であるx,y方向に電界成分がないことを表す)。xy面内に伝搬する電磁界の挙動は計算機解析により解明されている(J.D.Joannopoulos,R.D.Meade,and J.N.Winn、”Photonic Crystals,”Princeton University Press,1995,第5章)。進行する方向ごとに、波が伝搬可能な周波数域(パスバンド)と伝搬できない周波数域(バンドギャップ)とがある。バンドギャップには、一つの方向には伝搬が禁止されていても別の方向には伝搬可能なもの(部分バンドギャップ)と、どの方向にも伝搬できないもの(完全バンドギャップ)とがある。それらを図3に示す。図2の構造に対し、a/λが0.36から0.44までの周波数範囲は完全バンドギャップである。無次元化周波数をあらわすのにa/λ、ωa/2πc、ka/2πなどがよく用いられるが、これらは本願の場合同一の量をあらわしている。一方、同じ構造で、磁界ベクトルがz軸に平行な波(TM波)は図4に示すように別の伝搬特性を持ち、完全バンドギャップはない。TE波とTM波が共通のバンドギャップを持つ一例は図5内にある説明図の三角格子である。同図の分散特性でa/λが0.42から0.50までの範囲は狭い意味での完全バンドギャップを示している。TE波に戻り、例えば図2の構造で円柱の一つの直径を適切に選んだ別の値に変更すると、バンドギャップ中の周波数を選んでその周波数において共振する構造を作ることが出来ることが知られている。変形を与えたのがxy平面内における小領域であるため、この変形は「点欠陥」と呼ばれる。実体はz方向に長い線であるが、本出願では2次元フォトニック結晶では点欠陥に用語を統一する。
【0005】
同様な共振効果は別の2次元フォトニック結晶にも現れる。図6に示すように、薄膜導波路に周期的に孔602を空けたものも2次元フォトニック結晶である。その孔の一つ603を意図的に大きくまたは小さくして共振作用をさせることができる(田中 他、応用物理学会春季全国大会30a−YK−10,2001年3月)。この構造は波をz方向に局在させることにより、図2の「長さが十分に大」という条件を緩和できる。また両者の折衷型として、柱701の高さ方向に共通の変化702(形状変化または屈折率の変化)を与えて、柱の一定の高さの部分に波を集束させる効果を持つものも用いられる(図7)。なお、この構造では、TE波動作またはTM波動作させるに伴って、それぞれに弱いTM波、TE波が励起されることが知られている。きわめて厳密に言うと、「完全バンドギャップ」はTM波、TE波それぞれの完全バンドギャップの共通部分を指すことになるが、通常は偏波の別を指定した上でTE波、TM波の「完全」バンドギャップにおいて共振器は用いられる。2次元フォトニック結晶共振器のいずれにおいても、完全バンドギャップを実現するための加工法の困難、大きなバンドギャップを得るために要求される材料の大きな屈折率差による加工精度の厳しさのために満足すべき特性が得られず、一例として前掲 田中 他、応用物理学会春季全国大会30a−YK−10の例ではQ=450程度である。また、有限の長さの誘電体柱を正方格子状に2次元周期的に並べ、その中の一本の柱だけを太くした点欠陥によっても共振作用をさせることができる(Johnson et al.,Applied Physics Letters,vol.78,no.22,pp.3388−3390,28 May 2001.)。この構造は数値シミュレーションのため仮定したもので実現は不可能であり(周囲が空気であるため支持する物質が必要となる)、計算結果もQ=1925程度にすぎない。
【0006】
3次元フォトニック結晶共振器の考え方は基本的に2次元フォトニック結晶共振器と同じである。2次元フォトニック結晶共振器に付け加えるべき点は次の諸点である。
(1)3次元結晶内の一点(微小領域)に乱れを与える(点欠陥)。
(2)一般に3次元フォトニック結晶では二つの偏波の間の結合が、2次元フォトニック結晶におけるTE波、TM波の間の結合より強いので、二つの偏波の結合した系の全体の完全バンドギャップが必要とされる。それは概念的には二つの偏波それぞれの完全バンドギャップの共通部分と考えられるので、3次元フォトニック結晶の完全バンドギャップの条件は設計だけに関しても2次元系より格段に困難になる。
(3)作製の困難は3次元フォトニック結晶、3次元フォトニック結晶共振器の方が、2次元フォトニック結晶、2次元フォトニック結晶共振器より格段に大きい。3次元フォトニック結晶の完全バンドギャップを目指す実験は、野田、応用物理学会秋季全国大会5a−Q−8,2000年9月.や 倉持 他、応用物理学会春季全国大会29p−ZH−8,2001年3月.などがあるが3次元フォトニック結晶共振器はまだ報告されていない。
なお、共振器において一般的な事項を補足する。共振器はある周波数の光波・電磁波を局在させるため用いられるが、外部回路との結合させることによりはじめて機能を発揮させることができる。そのためには、共振器の所要のQを損なわない範囲で、導波路と結合させるなど励振または取り出し部分を付随して設けるのが一般的である。本願において共振器とは励振または取り出し部分を必要に応じて含むものと用法の意味を定める。
【0007】
【発明が解決しようとする課題、課題を解決する手段】
本発明の思想の説明を図8のように交錯した2本の線欠陥801を持つz方向に一様な2次元フォトニック結晶共振器から始める。この説明においてホストとなる(欠陥のない)フォトニック結晶は完全バンドギャップを持たないと仮定する。図に示すようにx軸、y軸を定め、TE波動作させる。線欠陥の適切な設計によって、この構造において波をx軸、y軸にそれぞれ引き付け、その結果、共振周波数を持つ波を、完全バンドギャップがないにも拘らず、原点x=y=0付近に局在させることができる。
【0008】
電磁界は第1,2,3,4各象限で境界条件により定まる連続性を持って全平面内で定まる。各象限で要求される局在性に違いが大きい(第1象限、第2象限では、y→+∞のとき界→0となることが共通に要求される一方、xに関しては第1象限ではx→+∞のとき界→0、第2象限ではx→−∞のとき界→0、が要求される)。このような条件は点欠陥型の共振器では満たすことができず、線欠陥を持つ共振器ではじめて可能になる。この効果に関して簡潔な解析解を導くことができる、最近発見された基準系2次元フォトニック結晶により説明する。
比誘電率が図8のように与えられる系では、共振周波数(λ/a=0.54)が存在し、EはX(x)Y(y)の形をとり、X(x),Y(y)は共に図9のように表される[S.Kawakami,Conference on Lasers and Electro−Optics/Pacific Rim(CLEO/PR),MA2−1,July 16,2001]。この系のホストフォトニック結晶の分散曲線は図10のとおりであって、完全バンドギャップは存在していないにも拘わらず、E=X(x)Y(y)は無損失共振モードを表している。図のX(x),Y(y)の包絡線はx,yとともに指数関数的に減衰していて、exp(−α|x|),exp(−α|y|)に比例する(αは定数)。ゆえに、包絡線の振幅は、図11の破線1101のように指数的に減衰する。
【0009】
同図において、(1)x−y軸上にある線欠陥が象限ごとに界の減衰の向きを切り替えていること、(2)等高線やそれに沿うリップルの形が一定に保たれ、限られた空間波によって完全に展開され伝搬性の放射波と結合していない。
【0010】
この共振現象は、共振周波数(図10破線)において、x、y対象モードがブリルアン域上のM点付近において放射が禁止されている性質にだけ基づいている。以上の現象は図8の構造に限定されるものではない。図12のように、交差する線欠陥の存在により領域が区分され、包絡線の等振幅面1201が緩やかな弧状をなし、弧の法線方向がフォトニック結晶のしゃ断域に入っていさえすれば減衰の向きが線欠陥をはさんで大きく飛躍するので局在性が保たれる。
なお,比較のために従来の考えを説明しておく。図13のように仮に一様な誘電体の中で、z方向に偏波したx=y=0付近に局在したz方向に一様な線状の波源1302を考えると、等位相面または等振幅面1301はx=y=0を中心とする円筒状になる。図の点Pの付近では波は円筒への法線OPに向かって放射され、その放射は波数ベクトルがOPに平行な成分によって担われる。完全バンドギャップフォトニック結晶ではOPのすべての方向に対して放射が禁止されているので、放射は生じない。
【0011】
要するに,完全バンドギャップは波の閉じこめを可能にする一つの十分条件であるが(本願で示したように)強すぎる条件である。
【0012】
【発明の実施形態】
交差する線欠陥の以上の働きは図8の形状が持つ変数分離性により疑問なく明快に説明されたが、同図の特定の形状に限局されるものでなく、交差する線欠陥がxy平面を複数の扇状領域に切り分けるという性質に起因するものである。ここで扇状領域とは、平面上の一点を共通の始点とした2本の半無限に伸びる直線で分けられた領域を意味している。特に円弧を一部に含んでいるのではなく、ある方向に無限に広がる様子を表したものである。
これに近い性質は線欠陥1401の長さが有限である時も存在する。図14の構造においても解の大きさがある有限値以上である領域は線欠陥によって4つの扇状領域に分割される。また、点状の欠陥が離散的ではあるが線上に配列された場合も電磁界は同様の特徴を持つもので、これは実質上線状の欠陥である。
【0013】
次に3次元フォトニック結晶における完全バンドギャップによらない共振器について説明する。一点0だけを共有する三つの面に沿って面欠陥1501を持つ構造体を考える(図15)。一点を共通の頂点とする扇状領域で囲まれた空間を錐体と呼ぶことができるが、本構造は8つの錐体が点Oを共通の頂点として集まっており、同時に12の扇状の面欠陥が点Oを共通の頂点として集まっていると見ることができる。
【0014】
先に説明した線欠陥による閉じ込めの議論を各面に適用することができる。すなわち面欠陥の効果によって、この構造の共振周波数において界の包絡線が、
exp(−α|x|−α|y|−α|z|)
に比例するようにすることができ、完全バンドギャップによらない波の局在が可能になる。
そのため3次元フォトニック結晶作製上の困難が著しく緩和される。
【0015】
【実施例】
【実施例1】
実施例1は2次元フォトニック結晶型共振器の一応用例である。図1に2次元フォトニック結晶型共振器の模式的な構成図を示す。基板はSOI(Silicon on Insulator)基板101を用いた。該基板はSiウエハ102にOイオンを打ち込み、中間部分にSiO層103を形成したものである。SOI基板のSi膜上104に、電子ビーム露光法によるフォトリソグラフィーとドライエッチング法による微細加工を利用してパターニングを行った。そのパターンはx方向およびy方向に形成された正方格子状の多数の孔105において、x方向およびy方向で一列ずつ十字状に孔を抜いたもの106とした。本実施例では孔が抜かれた部分を欠陥と呼ぶことにする。孔の周期は0.7um、孔の直径は0.2umとした。次に、孔が作製された基板をダイシングして、チップ化し、必要なら端面研磨を行って2次元フォトニック結晶型共振器が完成となる。本実施例の特徴は市販のSOI基板を用い、露光装置とドライエッチング装置を利用すれば作製できるので、作製し易いということである。
【0016】
該2次元フォトニック結晶型共振器の光学的な特性は、例えば欠陥列のx方向のSi膜端面から、x方向に伝搬するように伝搬光を入射し、x方向の欠陥列の端面、あるいはy方向の欠陥列の端面、あるいはその他の端面から伝搬光を受光すれば測定可能である。その際、十字の欠陥列の交点において伝搬光は共振し、共振した伝搬光は共振条件を緩めた部分を作製することで取り出すことが可能である。
【0017】
基板はSOIに限らず、Si,SiO,GaAs,InPなどを用いることができる。露光方法は電子ビーム露光法だけではなく、プロジェクションアライナーやコンタクトアライナー、ステッパーを用いることができる。また、微細加工はドライエッチングだけではなく、ウエットエッチングやイオンミリングを適用することもできる。
【0018】
なお、孔の周期および孔の直径はこの値に限るものではなく、使用する装置に対応して、パターン化できる任意をとることができる。
【0019】
【実施例2】
実施例2は2次元フォトニック結晶型共振器の実施例1とは異なる別な応用例である。図16に2次元フォトニック結晶型共振器の模式的な構成図を示す。基板はSOI(Silicon on Insulator)基板を用いた。該基板はSiウエハ1601にOイオンを打ち込み、中間部分にSiO層1602を形成したものである。SOI基板の表面であるSi膜1603上に、スパッタリング法によりSiO膜1604を1.0um形成した。基板上に順にSiO膜,Si膜,SiO膜が積層された構成となり、Siの対称スラブ導波路構造となる。次に、該SiO膜上で電子ビーム露光法によるフォトリソグラフィーとドライエッチング法による微細加工を利用してパターニングを行った。そのパターンはxy面内に形成された三角格子あるいは六方格子状の多数の孔1605において、x方向、およびx方向から斜め±60度方向に孔を抜き、交差する合計三列の線欠陥1606を形成した。孔の周期は0.5um、孔の直径は0.2umとした。次に、孔が作製された基板をダイシングして、チップ化し、必要なら端面研磨を行って2次元フォトニック結晶型共振器が完成となる。本実施例の特徴は市販のSOI基板を用い、露光装置とドライエッチング装置とSiO成膜装置を利用すれば作製できるので、作製し易いということである。
【0020】
該2次元フォトニック結晶型共振器の光学的な特性は、例えば欠陥列のx方向のSi膜端面から、x方向に伝搬するように伝搬光を入射し、x方向の欠陥列の端面、あるいはy方向の欠陥列の端面、あるいはその他の端面から伝搬光を受光すれば測定可能である。その際、十字の欠陥列の交点において伝搬光は共振し、共振した伝搬光は共振条件を緩めた部分を作製することで取り出すことが可能である。
【0021】
基板はSOI基板に限らず、Si,SiO,GaAs,InPなどを用いることができる。
上部に形成するSiO膜はスパッタリング法、CVD法、電子ビーム蒸着法により作製することができる。
【0022】
SOI基板以外を用いる場合、SiO膜、a−Si膜、SiO膜をスパッタリング法、CVD法、電子ビーム蒸着法などにより成膜することができる。露光方法は電子ビーム露光法だけではなく、プロジェクションアライナーやコンタクトアライナー、ステッパーを用いることができる。また、微細加工はドライエッチングだけではなく、ウエットエッチングやイオンミリングを適用することもできる。
【0023】
なお、孔の周期および孔の直径はこの値に限るものではなく、使用する装置に対応して、パターン化できる任意をとることができる。
【0024】
【実施例3】
実施例3は3次元フォトニック結晶型共振器の応用例である。図17に3次元フォトニック結晶型共振器の模式的な構成図を示す。以下に作製方法を説明する。作製には自己クローニング法と呼ばれる方法を用いる。自己クローニング法とは、バイアス・スパッタリングに代表される堆積粒子の拡散入射とスパッタエッチングを併用した成膜法において、その堆積作用とエッチング作用を相互に制御することにより、表面の凹凸形状を繰り返しつつ層状に積層させることで、多次元周期構造を容易に作製することのできる方法である。このメカニズムは次の3つの効果、(1)堆積粒子の拡散入射により影となる凹部の堆積速度が遅くなる効果、(2)スパッタエッチングによる傾斜角約50度から60度の面においてエッチング速度が最大となる効果、(3)面にスパッタエッチングにより削られた粒子が基板の別の場所に再付着する効果、の適切な割合での重ねあわせであると説明できる(川上彰二郎、佐藤尚、川嶋貴之、“バイアススパッタ法で作製される3D周期ナノ構造の形成機構”、電子情報通信学会誌C−1、vol.J81−C−1、no.2、pp.108−109、1998年2月)。
【0025】
自己クローニング法では、周期構造のきっかけとなる凹凸を予め基板に形成することが必要である。今回は、SiO基板1701上に電子ビームリソグラフィーとドライエッチング技術により、2次元周期的な孔列を形成した。孔の周期は0.7μm、穴の直径は0.4μm、孔の深さは0.4μmである。むろんこれはフォトリソグラフィーもしくはX線露光を用いても可能であり、エッチングもイオンミリングやウエットエッチングを用いても可能である。また基板の材質もSiに限定されず、GaAs,InP等の各種半導体基板ならび石英基板など、真空容器に入れることのできるものであれば適用可能である。また基板の上にポリイミドなどの有機物をコーティングし、そこに型を押しつけて、パターニングを行うこともできる。
【0026】
本発明の共振器を作製するために、図18に示すように基板1801の表面に孔列1802をパターニングする際、x,y軸方向にそれぞれ周期をずらした部分を形成しておく。ずれ量は今回、0.7μmとした。この幅は設計により変り、1周期より短い場合も数周期にわたる場合もある。なおこの周期のずれは、異なる周期の部分を挿入し、周期に変調を加えることでも実現できる。
【0027】
この上に自己クローニング法によりSiとSiOの多層膜を積層していく。Si層1703の厚さは0.2μm、SiO層1702の厚さは0.3μmである。その条件は次の通りであった:SiOの成膜に対してはArガス圧6mTorr、ターゲット高周波電力800W、基板高周波電力80W;Siの成膜に対し、Arガス圧1mTorr、ターゲット高周波電力400Wであった。なお、自己クローニング法はスパッタリングできるということ以外に、材料に対する制限はないため、Si、SiO以外の材料を用いても可能である。
【0028】
ここで基板の形状は矩形を基本としているのに対し、保存させる形状は三角波状であるが、積層開始直後の数周期を基板を同じ屈折率を持つSiで積層を続け、定常状態に収束させてから多層膜を積層開始することで、光にその形状が遷移する部分を感じさせないことも可能である。
【0029】
自己クローニング法では下地の周期性が保存されるため、周期がずれた部分はそのずれを保存したまま積層を続けることができる。したがってx,y方向にそれぞれ延びた周期のずれ、つまり欠陥をz方向に成長させ、面欠陥を実現させることができる。
【0030】
積層の際には適当な個所で層の厚さを変化させることで積層面に面欠陥を導入する。今回は5周期目のSi層1704の厚さを他の層の倍にした。欠陥層の厚さ、場所、数は任意に選ぶことができる。こうして全部で9周期積層することで、図17に示すような構造からなる3次元共振器を実現した。
【0031】
【発明の効果】
本発明の構造からなる共振器は、完全バンドギャップを持たない周期構造体を用いても波長程度の微小領域に光を閉じ込めることを可能としたものであり、Q値の極めて高い共振器を容易に実現できる。このような共振器は、波長選択フィルタや高効率発光素子など工業的用途は広く、従来の光共振器を置き換えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の実施例の構造を示す図
【図2】 無限に長い誘電体円柱からなる2次元フォトニック結晶を示す図
【図3】 図2に示す構造に対する、電界が円柱に平行な電磁波(TE波)のバンド図
【図4】 図2に示す構造に対する、電界が円柱に平行な電磁波(TM波)のバンド図
【図5】 無限に深い円孔からなる2次元フォトニック結晶に対するバンド図
【図6】 誘電体薄膜に周期的な円孔を形成した2次元フォトニック結晶共振器を示す図
【図7】 厚さ方向に形状変化あるいは屈折率変化を有する2次元フォトニック結晶を示す図
【図8】 2本の交差する線状欠陥からなる2次元フォトニック結晶共振器を示す図
【図9】 図8の構造における電界成分E(x)あるいはE(y)を示す図
【図10】 図8の構造からなるフォトニック結晶の分散曲線を示す図
【図11】 図9に示す電界分布の包絡線の減衰を示す図
【図12】 一般的な線欠陥により領域が区分されたフォトニック結晶共振器における、電界分布の包絡線の減衰を示す図
【図13】 一様な誘電体における波面の広がりを示す図
【図14】 有限長さの線欠陥からなるフォトニック結晶共振器を示す図
【図15】 3つの面欠陥からなる3次元フォトニック結晶共振器を示す図
【図16】 第2の実施例の構造を示す図
【図17】 第3の実施例の構造を示す図
【図18】 第3の実施例における基板表面の凹凸パターンを示す図
【符号の説明】
101:SOI基板
102:Siウエハ
103:SiO
104:表面側Si層
105:孔
106:線状欠陥
107:欠陥交差部
201:誘電体円柱
601:基板
602:孔
603:小さい孔
701:柱
702:形状変化あるいは屈折率変化部分
801:線欠陥
802:線欠陥交差部
1101:包絡線の等振幅線
1201:包絡線の等振幅線
1301:包絡線の等振幅面
1302:波源
1401:有限長さの線欠陥
1501:面欠陥
1601:Si基板
1602:SiO
1603:Si膜
1604:SiO
1605:孔
1606:欠陥
1701:SiO基板
1702:SiO
1703:Si層
1704:Si面欠陥
1801:基板
1802:孔

Claims (4)

  1. 二つの相交差する線欠陥を持ち、当該線欠陥で分割されたそれぞれの領域が、着目する周波数に対しある角度範囲においてバンドギャップを有し、その角度範囲内の一つの方向に電磁界の包絡線が指数的に減衰する2次元フォトニック結晶により構成されており、その交差する点の付近に波を局在させることを特徴とする2次元フォトニック結晶光共振器
  2. 一点から発する半無限長の線状欠陥を複数有して、当該線欠陥で分割されたそれぞれの領域が、着目する周波数に対しある角度範囲においてバンドギャップを有し、その角度範囲内の一つの方向に電磁界の包絡線が指数的に減衰する2次元フォトニック結晶により構成されており、その点の付近に波を局在させることを特徴とする2次元フォトニック結晶光共振器
  3. 一点を共有して相交差する3つの面欠陥を持ち、当該面欠陥で分割されたそれぞれの領域が、着目する周波数に対しある角度範囲においてバンドギャップを有し、その角度範囲内の一つの方向に電磁界の包絡線が指数的に減衰する3次元フォトニック結晶により構成されており、その点の付近に波を局在させることを特徴とする3次元フォトニック結晶光共振器
  4. 共通の一点を頂点とする複数の錐体の集まりで構成され、その錐体の各面が扇形の面欠陥をなし、当該面欠陥で分割されたそれぞれの領域が、着目する周波数に対しある角度範囲においてバンドギャップを有し、その角度範囲内の一つの方向に電磁界の包絡線が指数的に減衰する3次元フォトニック結晶により構成されており、その頂点の付近に波を局在させることを特徴とする3次元フォトニック結晶光共振器
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