JPWO2017130864A1 - 防汚塗料組成物、塗膜、及び塗膜付き基材 - Google Patents
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Abstract
Description
より具体的に特許文献1には、モノマー成分100重量部において、トリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート(a)55〜75重量部、メトキシエチルアクリレート(b)2〜20重量部、及びその他の重合性モノマー(c)43〜5重量部を含む共重合体と、亜酸化銅等の防汚剤とからなる防汚塗料組成物が提案されている。
また、本発明は、前記防汚塗料組成物を硬化させた塗膜、前記塗膜を基材上に有する塗膜付き基材、及びこの製造方法を提供することを課題とする。
[1]トリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート由来の構成単位(a1)、及び重合性二重結合を有する重合性モノマー由来の構成単位(a2)を有するシリルアクリル系共重合体(A)、炭素数1〜3の低級アルコール(B)、銅成分及び亜鉛成分を含有する防汚剤(C)、及びモノカルボン酸化合物(D)を含有する防汚塗料組成物であり、前記防汚塗料組成物中の前記低級アルコール(B)の含有量が0.1〜3質量%である防汚塗料組成物。
[2]前記構成単位(a2)に対する前記構成単位(a1)の質量比[(a1)/(a2)]が40/60〜95/5である、前記[1]に記載の防汚塗料組成物。
[3]前記防汚塗料組成物中の前記シリルアクリル系共重合体(A)の含有量が5〜40質量%である、前記[1]又は[2]に記載の防汚塗料組成物。
[4]前記シリルアクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)が5,000〜100,000である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかに記載の防汚塗料組成物を硬化させた塗膜。
[6]前記[5]に記載の塗膜を基材上に有する塗膜付き基材。
[7]前記基材が船舶である、前記[6]に記載の塗膜付き基材。
[8]前記[1]〜[4]のいずれかに記載の防汚塗料組成物を基材に塗布又は含浸させることにより、塗布体又は含浸体を得る工程(1)、及び前記塗布体又は含浸体を乾燥することにより、前記防汚塗料組成物を硬化させる工程(2)を有する、塗膜付き基材の製造方法。
また、本発明によれば、前記防汚塗料組成物を硬化させた塗膜、前記塗膜を基材上に有する塗膜付き基材、及びこの製造方法を提供することができる。
本発明の防汚塗料組成物は、トリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート由来の構成単位(a1)、及び重合性二重結合を有する重合性モノマー由来の構成単位(a2)を有するシリルアクリル系共重合体(A)、炭素数1〜3の低級アルコール(B)、銅成分及び亜鉛成分を含有する防汚剤(C)、及びモノカルボン酸化合物(D)を含有する防汚塗料組成物であり、前記防汚塗料組成物中の前記低級アルコール(B)の含有量が0.1〜3質量%であるものである。
本発明の防汚塗料組成物は、塗膜の防汚性を向上させることを目的として、シリルアクリル系共重合体(A)を含むものであり、前記シリルアクリル系共重合体(A)は、トリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート由来の構成単位(a1)、及び重合性二重結合を有する重合性モノマー由来の構成単位(a2)を有するものである。
なお、本発明において構成単位(a2)を構成する「重合性二重結合を有する重合性モノマー」は、「構成単位(a1)を構成するトリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート以外の重合性二重結合を有する重合性モノマー」を意味する。また、本発明において「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート又はメタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル又はメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル又はメタクリロイル」を意味する。
前記構成単位(a1)は、トリイソプロピルシリル(メタ)アクリレートに由来する構成単位である。本発明における構成単位(a1)は、トリイソプロピルシリルアクリレート(TIPSA)、及びトリイソプロピルシリルメタクリレート(TIPSMA)のいずれか1種に由来する構成単位であってもよく、また、トリイソプロピルシリルアクリレート、及びトリイソプロピルシリルメタクリレートの両方に由来する構成単位であってもよいが、塗膜の防汚性を向上させる観点から、トリイソプロピルシリルアクリレート、及びトリイソプロピルシリルメタクリレートのいずれか1種に由来する構成単位であることが好ましい。
構成単位(a2)を構成する重合性二重結合を有する重合性モノマーとしては、トリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート以外の重合性二重結合を有する重合性モノマーであれば特に制限はなく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、3,5,5−トリメチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート又はアラルキル(メタ)アクリレート;
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、4−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、イソブトキシブチルジグリコール(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート又はアリールオキシアルキル(メタ)アクリレート;
ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及び2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
オルガノシロキサン基含有(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基、アミド基又はエーテル基含有(メタ)アクリレート;
スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、5−tert−ブチル−2−メチルスチレン等の芳香族ビニル等が挙げられる。これらの重合性モノマーは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、本発明において「(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド又はメタクリルアミド」を意味する。
アニオン性不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、及びクロトン酸等のカルボキシ基含有不飽和単量体、スチレンスルホン酸、3−(メタクリロイルオキシ)プロパンスルホン酸、及びアクリルアミドプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有不飽和単量体が挙げられる。
これらのアニオン性不飽和単量体は、部分的に、又は完全に中和して使用してもよい。なお、中和は単量体のまま行ってもよく、重合体とした後に中和してもよい。
中和に使用する塩基としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、アンモニア、トリエタノールアミン、トリメチルアミン等のアミン化合物が挙げられる。
アミノ基含有不飽和単量体としては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン及びこれらをH+X−で表される酸で中和した構造が挙げられる。
また、4級アンモニウム塩基含有不飽和単量体としては、X−を対イオンに持つ(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウム、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム、ジアリルジメチルアンモニウム、1−エチル−4−ビニルピリジニウム、1,2−ジメチル−5−ビニルピリジニウム等が挙げられる。
X−は、アニオンを示し、ハロゲン化物イオンが好ましく、塩化物イオンがより好ましい。
前記シリルアクリル系共重合体(A)は、例えば、以下の手順で製造することができる。
まず、反応容器に溶媒を入れ80〜120℃程度に加温して温度を維持しつつ、これに前記トリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、及び前記重合性二重結合を有する重合性モノマー、重合開始剤、連鎖移動剤、及び溶媒等の混合液を滴下し、重合反応を行うことによりシリルアクリル系共重合体(A)を得ることができる。
なお、シリルアクリル系共重合体(A)中の各単量体に由来する構成単位の各含有量(質量)の比率は、重合反応に用いる前記各単量体の仕込み量(質量)の比率と同じものとみなすことができる。
シリルアクリル系共重合体(A)の製造における重合開始剤の使用量は、前記各単量体の合計100質量部に対して0.5〜20質量部が好ましい。
シリルアクリル系共重合体(A)の製造において連鎖移動剤を用いる場合、その使用量は、前記各単量体の合計100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましい。
シリルアクリル系共重合体(A)の製造において溶媒を用いる場合、その使用量に特に制限はないが、前記各単量体の合計100質量部に対して5〜150質量部が好ましい。
シリルアクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5,000〜100,000、より好ましくは10,000〜90,000、更に好ましくは15,000〜80,000、より更に好ましくは17,000〜70,000、より更に好ましくは18,000〜60,000である。シリルアクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)が前記範囲内であると、防汚塗料組成物のスプレー塗装作業性が向上し、更に塗膜の物性も向上する。
なお、シリルアクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、実施例に記載の方法により測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の値を指す。
シリルアクリル系共重合体(A)の粘度は、好ましくは500〜10,000mPa・s、より好ましくは1,000〜7,000mPa・s、更に好ましくは1,500〜6,000mPa・s、より更に好ましくは1,800〜5,000mPa・s、より更に好ましくは2,000〜4,800mPa・sである。シリルアクリル系共重合体(A)の粘度が前記範囲内であると、防汚塗料組成物のスプレー塗装作業性が向上する。
なお、シリルアクリル系共重合体(A)の粘度は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
防汚塗料組成物中のシリルアクリル系共重合体(A)の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは13質量%以上、より更に好ましくは15質量%以上、より更に好ましくは16質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは25質量%以下、より更に好ましくは23質量%以下である。シリルアクリル系共重合体(A)の含有量が前記範囲内であると、長期に亘って優れた防汚性を発揮する塗膜を得ることができ、更に長期に亘って塗膜の強度を維持することができる。
本発明の防汚塗料組成物は、25℃程度の常温の水と接触する条件下だけでなく、30℃程度の高温の水と接触する条件下における塗膜の消耗量も小さく抑えることを目的として、炭素数1〜3の低級アルコール(B)(以下、単に「低級アルコール(B)」ということがある。)を含有する。なお、本発明における低級アルコール(B)は、後述する有機溶剤(F)に含まれないものとする。
炭素数1〜3の低級アルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、及びイソプロピルアルコールを挙げることができる。これらの中でも、30℃程度の高温の水と接触する条件下における消耗量を小さく抑える観点から、エチルアルコールが好ましい。
防汚塗料組成物中の低級アルコール(B)の含有量は、0.1〜3質量%である。低級アルコール(B)の含有量が前記範囲内であると、30℃程度の高温の水と接触する条件下における塗膜の消耗量を小さく抑えることができる。同様の観点から、低級アルコール(B)の含有量は、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上、より更に好ましくは0.5質量%以上であり、そして、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下、より更に好ましくは1.0質量%以下、より更に好ましくは0.9質量%以下、より更に好ましくは0.8質量%以下である。
本発明においては、塗膜の防汚性を向上させることを目的として、銅成分及び亜鉛成分を含有する防汚剤(C)(以下、単に「防汚剤(C)」ということがある。)を用いる。
銅成分及び亜鉛成分を含有する防汚剤(C)における銅成分としては、有機系または無機系のいずれであってもよく、例えば、亜酸化銅、ロダン銅、銅粉、銅ピリチオン、チオシアン酸銅、及びキュプロニッケル等が挙げられ、これらの中でも、亜酸化銅、銅ピリチオンが好ましい。一方、銅成分及び亜鉛成分を含有する防汚剤(C)における亜鉛成分としては、有機系または無機系のいずれであってもよく、酸化亜鉛、亜鉛ピリチオン、ジンクジメチルジチオカーバメート、ジンクエチレンビスジチオカーバメート、及びビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート等が挙げられ、これらの中でも酸化亜鉛が好ましい。防汚剤(C)における銅成分は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよく、防汚剤(C)における亜鉛成分は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。防汚剤(C)としては、亜酸化銅、銅ピリチオン、及び酸化亜鉛を組み合わせて用いることが好ましい。
本発明の防汚塗料組成物中の銅成分及び亜鉛成分を含有する防汚剤(C)の含有量は、塗膜の防汚性を向上させる観点から、好ましくは5〜70質量%、より好ましくは10〜60質量%である。
銅成分及び亜鉛成分を含有する防汚剤(C)は、30℃程度の高温の水と接触する条件下においても塗膜の消耗量を小さく抑える観点から、銅成分及び亜鉛成分の比率〔銅成分/亜鉛成分〕(質量比)が、99/1〜40/60の範囲にあることが好ましく、97/3〜50/50の範囲にあることがより好ましく、95/5〜60/40の範囲にあることが更に好ましい。
前記防汚剤(C)以外の防汚剤としては、例えば、メデトミジン、4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリル、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、ボラン−窒素系塩基付加物(ピリジントリフェニルボラン、4−イソプロピルピリジンジフェニルメチルボラン等)、(±)−4−[1−(2,3−ジメチルフェニル)エチル]−1H−イミダゾール、N,N−ジメチル−N’−(3,4−ジクロロフェニル)尿素、N−(2,4,6−トリクロロフェニル)マレイミド、2−メチルチオ−4−tert−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、ビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート、クロロメチル−n−オクチルジスルフィド、N’,N'−ジメチル−N'−フェニル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、N’,N'−ジメチル−N'−p−トリル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、テトラアルキルチウラムジスルフィド、ジンクジメチルジチオカーバメート、ジンクエチレンビスジチオカーバメート、2,3−ジクロロ−N−(2',6'−ジエチルフェニル)マレイミド、及び2,3−ジクロロ−N−(2'−エチル−6'−メチルフェニル)マレイミド等が挙げられる。これらの防汚剤(C)以外の防汚剤は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の防汚塗料組成物中の防汚剤(C)と、防汚剤(C)以外の防汚剤との合計含有量は、塗膜の防汚性を向上させる観点から、好ましくは5〜70質量%、より好ましくは10〜60質量%である。
本発明においては、塗膜の表面更新性、及び耐水性を向上させることを目的として、モノカルボン酸化合物(D)を用いる。
モノカルボン酸化合物(D)としては、例えば、炭素原子数10〜40の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基にカルボキシ基が1つ置換した化合物、又は炭素原子数3〜40の飽和若しくは不飽和の脂環式炭化水素基にカルボキシ基が1つ置換した化合物、或いはこれらの置換体にカルボキシ基が1つ置換した化合物が好ましい。
中でも、トリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸、バーサチック酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ネオアビエチン酸、ピマル酸、デヒドロアビエチン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ナフテン酸、及びこれらの金属塩が好ましい。また、アビエチン酸、パラストリン酸、イソピマール酸等のロジン酸を主成分とするロジンおよびロジン誘導体も好ましい。
トリメチルイソブテニルシクロヘキセンカルボン酸としては、例えば、2,6−ジメチルオクタ−2,4,6−トリエンとメタクリル酸との反応生成物が挙げられ、これは1,2,3−トリメチル−5−(2−メチルプロパ−1−エン−1−イル)シクロヘキサ−3−エン−1−カルボン酸、及び1,4,5−トリメチル−2−(2−メチルプロパ−1−エン−1−イル)シクロヘキサ−3−エン−1−カルボン酸を主成分(85質量%以上)とするものである。
ロジンおよびロジン誘導体としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等のロジン、及び水添ロジン、不均化ロジン等のロジン誘導体などが挙げられる。
本発明の防汚塗料組成物中のモノカルボン酸化合物(D)の含有量は、0.1〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、2〜10質量%が更に好ましい。
本発明の防汚塗料組成物は、シリルアクリル系共重合体(A)、低級アルコール(B)、銅成分及び亜鉛成分を含有する防汚剤(C)、並びにモノカルボン酸化合物(D)の他に、必要に応じて、顔料(E)、有機溶剤(F)、液性改善剤(タレ止め、沈降防止)(G)、可塑剤(H)、及び脱水剤(I)等を含有していてもよい。
本発明においては、塗膜への着色や下地の隠ぺいを目的として、また、適度な塗膜強度に調整すること及びさらなる防汚性の向上を目的として顔料(E)を用いてもよい。
顔料(E)としては、例えば、タルク、マイカ、クレー、カリ長石、炭酸カルシウム、カオリン、アルミナホワイト、ホワイトカーボン、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、及び硫化亜鉛等の体質顔料や、弁柄、チタン白(酸化チタン)、黄色酸化鉄、カーボンブラック、ナフトールレッド、フタロシアニンブルー等の着色顔料が挙げられ、中でもタルク、弁柄が好ましい。これらの顔料は、1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明の防汚塗料組成物が顔料(E)を含有する場合、防汚塗料組成物中の顔料(E)の含有量は、1〜30質量%が好ましく、4〜25質量%がより好ましく、7〜20質量%が更に好ましい。
なお、亜酸化銅、酸化亜鉛、銅ピリチオン、及び亜鉛ピリチオン等の銅系及び亜鉛系防汚剤は、防汚剤としての機能と顔料としての機能を併せ持っていることがあるが、本発明においては銅成分及び亜鉛成分を含有する防汚剤(C)として取り扱う。
本発明においては、防汚塗料組成物の粘度を小さく保ち、スプレー霧化性及びスプレー塗装作業性を向上させることを目的として有機溶剤(F)を用いてもよい。
有機溶剤(F)としては、芳香族炭化水素系、脂肪族炭化水素系、脂環族炭化水素系、ケトン系、エステル系、アルコール系等の有機溶剤を用いることができ、好ましくは芳香族炭化水素系の有機溶剤である。これらの有機溶剤は、1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
芳香族炭化水素系の有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、スチレン、メシチレン等が挙げられる。
脂肪族炭化水素系の有機溶剤としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等が挙げられる。
脂環族炭化水素系の有機溶剤としては、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等が挙げられる。
ケトン系の有機溶剤としては、例えば、アセチルアセトン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、炭酸ジメチル等が挙げられる。
エステル系の有機溶剤としては例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
アルコール系の有機溶剤としては、例えば、n−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
本発明の防汚塗料組成物が有機溶剤(F)を含有する場合、防汚塗料組成物中の有機溶剤(F)の含有量は、防汚塗料組成物の塗布形態等に応じた所望の粘度によって好ましい量が決定されるが、通常1〜50質量%が好ましい。含有量が多すぎる場合、タレ止め性の低下等の不具合が発生することがある。
本発明においては、防汚塗料組成物の粘弾性を調整し、タレ止め及び沈降防止効果を得ることを目的として、液性改善剤(G)を用いてもよい。液性改善剤(G)としては、有機粘土系ワックス(Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩等)、有機系ワックス(ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、アマイドワックス、ポリアマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス等)、有機粘土系ワックスと有機系ワックスの混合物、合成微粉シリカ等が挙げられる。これらの液性改善剤は、1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
液性改善剤(G)としては、市販品を用いてもよく、例えば、楠本化成(株)製の「ディスパロン305」、「ディスパロン4200−20」、「ディスパロンA630−20X」等が挙げられる。
本発明の防汚塗料組成物が液性改善剤(G)を含有する場合、防汚塗料組成物中の液性改善剤(G)の含有量は、通常0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましい。
本発明の防汚塗料組成物は、塗膜の耐クラック性や耐水性の向上、及び変色の抑制を目的として、可塑剤(H)を用いてもよい。
可塑剤(H)としては、例えば、n−パラフィン、塩素化パラフィン、テルペンフェノール、トリクレジルフォスフェート(TCP)、ポリビニルエチルエーテル等が挙げられる。中でも、塩素化パラフィン、テルペンフェノールが好ましく、塩素化パラフィンがより好ましい。これらの可塑剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
可塑剤(H)としては、市販品を用いてもよく、例えば、前記n−パラフィンとしては、日本石油化学(株)製「n−パラフィン」等、前記塩素化パラフィンとしては、東ソー(株)製「トヨパラックスA−40/A−50/A−70/A−145/A−150」等を挙げることができる。
本発明の防汚塗料組成物が可塑剤(H)を含有する場合、防汚塗料組成物中の可塑剤(H)の含有量は、0.1〜10質量%が好ましい。
本発明においては、防汚塗料組成物の貯蔵安定性を向上させることを目的として脱水剤(I)を用いてもよい。
脱水剤(I)としては、例えば、アルコキシシラン、「モレキュラーシーブ」の一般名称で知られるゼオライト、アルミナ、オルトギ酸アルキルエステル等のオルトエステル、オルトホウ酸、イソシアネート類、石膏、及びエチルシリケート等を挙げることができる。これらの脱水剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の防汚塗料組成物が脱水剤(I)を含有する場合、防汚塗料組成物中の脱水剤(I)の含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜2質量%がより好ましい。脱水剤(I)の含有量が前記範囲内であると防汚塗料組成物の貯蔵安定性を良好に保つことができる。
本発明の防汚塗料組成物は、公知の一般的な防汚塗料と同様の装置、手段等を用いて調製することができる。具体的には、予め調製したシリルアクリル系共重合体(A)の溶液、銅成分及び亜鉛成分を含有する防汚剤(C)、及びモノカルボン酸化合物(D)、並びに必要に応じてその他の添加剤等を混合することにより得た溶液又は分散液を撹拌しながら、これに低級アルコール(B)を加え、更に撹拌、混合することにより調製することができる。
本発明の塗膜は、本発明の防汚塗料組成物を硬化させたものである。具体的には、例えば、本発明の防汚塗料組成物を基材等に塗布した後、硬化させることにより塗膜を得ることができる。
本発明の防汚塗料組成物を塗布する方法としては、刷毛、ローラー、及びスプレーを用いる方法等の公知の方法を挙げることができる。
前述の方法により塗布した防汚塗料組成物は、例えば、25℃の条件下、0.5〜14日間程度放置することにより硬化し、塗膜を形成することができる。なお、防汚塗料組成物の硬化にあたっては、加熱下で送風しながら行ってもよい。
本発明の塗膜の硬化後の厚さは、例えば、塗膜強度を向上させる観点から、30〜1,000μm程度が好ましい。この厚さの塗膜を製造する方法としては、防汚塗料組成物を1回の塗布あたり通常10〜300μm、好ましくは30〜200μmの厚さで、1回〜複数回塗布する方法が挙げられる。
本発明の塗膜付き基材の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、防汚塗料組成物を基材に塗布又は含浸させることにより塗布体又は含浸体を得る工程と、該工程により基材に塗布され又は含浸した防汚塗料組成物を硬化させる工程とを備えた方法、あるいは防汚塗料組成物を硬化させて得られた塗膜を基材に貼付ける工程を備えた方法によって本発明の塗膜付き基材を製造することができる。
防汚塗料組成物を基材に塗布又は含浸させることにより塗布体又は含浸体を得る方法としては、具体的には、防汚塗料組成物を十分に撹拌した後、基材にスプレー又は他の手段により塗布又は含浸させる方法が挙げられる。
一方、基材に塗布され又は含浸した防汚塗料組成物を硬化させる方法としては、塗布体又は含浸体を乾燥することにより塗料組成物を硬化させる方法が好ましく、具体的には、常温の大気中で0.5〜14日間程度、放置又は加熱下で強制送風することにより硬化させる方法が挙げられる。このような方法により、前記塗膜を基材上に有する本発明の塗膜付き基材を容易に製造することができる。
また、本発明の防汚塗料組成物を塗布する対象の基材は、表面にすでに塗膜が形成されているものであってもよい。すなわち、本発明の防汚塗料組成物は、予め防錆剤、プライマー等の下地材(下塗り)が塗布された基材の表面に塗布してもよい。更に、既に従来の塗料による塗装が行われている、或いは本発明の防汚塗料組成物による塗装が行われている基材の表面に、補修用として本発明の防汚塗料組成物を上塗りしてもよい。本発明の防汚塗料組成物が直接接する塗膜の種類は特に限定されるものではない。
〔製造例1:シリルアクリル系共重合体(A1)の製造〕
撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを備えた反応容器にキシレン53質量部を仕込み、窒素雰囲気下でキシレンを撹拌機で撹拌しながら、常圧下で反応容器内のキシレンの温度が85℃になるまで加熱した。反応容器内のキシレンの温度を85℃に維持しながら、TIPSMA(トリイソプロピルシリルメタクリレート)45質量部、MEMA(2−メトキシエチルメタクリレート)35質量部、MMA(メチルメタクリレート)15質量部、BA(ブチルアクリレート)5質量部、及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)1質量部からなるモノマー混合物を、滴下ロートを用いて2時間かけて反応容器内に添加した。
次いで、更に反応容器内にtert−ブチルパーオキシオクトエート0.5質量部を加え、常圧下で反応容器内の液温を85℃に保持しながら2時間撹拌機で撹拌を続けた後、反応容器内の液温を85℃から110℃に上げて1時間加熱した。次いで、反応容器内にキシレン14質量部を加えて反応容器内の液温を低下させ、液温が40℃になった時点で撹拌を止めることによりシリルアクリル系共重合体(A1)を調製した。シリルアクリル系共重合体(A1)の特性等を表1に示す。
各モノマーの仕込み量を表1の記載にしたがって変更したこと以外は製造例1と同様に重合を行い、シリルアクリル系共重合体(A2)〜(A4)を得た。シリルアクリル系共重合体(A2)〜(A4)の特性等を表1に示す。
<加熱残分(質量NV)の算出方法>
シリルアクリル系共重合体(A)1gを平底皿に量り採り、質量既知の針金を使って均一に広げ、125℃で1時間乾燥後、残渣及び針金の質量を量ることにより加熱残分(質量%)を算出した。
シリルアクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、測定装置として東ソー(株)製「HLC−8120GPC」、分離カラムとして東ソー(株)製「TSK−gel αタイプ」(α−M)を2本用い、ジメチルホルムアミド(DMF)を溶離液としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した。シリルアクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算として求めた。
シリルアクリル系共重合体(A)の粘度は、液温25℃でB型粘度計〔東京計器(株)製〕を用いて測定した(単位:mPa・s)。
・TIPSMA:トリイソプロピルシリルメタクリレート
・TIPSA:トリイソプロピルシリルアクリレート
・MEMA:2−メトキシエチルメタクリレート
・MEA:2−メトキシエチルアクリレート
・MMA:メチルメタクリレート
・BA:ブチルアクリレート
<防汚塗料組成物の製造>
〔実施例1〜14及び比較例1〜11〕
・配合成分
防汚塗料組成物に用いた各配合成分を表2に示す。
表3〜6に記載された配合(質量部)で、各配合成分を混合撹拌し防汚塗料組成物を得た。各防汚塗料組成物について下記評価を行った。結果を表3〜6に示す。
各防汚塗料組成物について製造直後に50℃の恒温器内に放置し、1週間おきに粘度測定を行い、製造直後の粘度と貯蔵後の粘度(いずれも塗料温度23℃に調整したもの)とを比較することにより粘度の上昇具合を確認した。粘度測定は、ストーマー粘度計を用いた(単位Ku)。測定は4週間後まで行い、4週間後と1週間後の粘度の差を増粘率とした。増粘率が低いほど、貯蔵安定性に優れていることを示す。
塩ビ製板(縦50mm×横50mm)に対して、実施例及び比較例の防汚塗料組成物を乾燥膜厚が100μmとなるように、隙間0.7mmのフィルムアプリケーターを用いて常温下で塗装し、常温で1日放置することにより塗膜付き試験板を得た。
該塗膜付き試験板を25℃に調整した海水中に試験塗膜上の水流速度が計算上約15ノットに相当する速度になる条件で1ヶ月間浸漬させた。1ヶ月間浸漬した後に、非接触型レーザー膜厚計を用いて膜厚を測定し、浸漬する前の膜厚と浸漬後の膜厚の差を算出し消耗量を測定した。更に、上記条件で2〜6ヶ月間浸漬させた後の試験板についても同様に消耗量を測定した。
本評価においては、数値が小さいほど消耗量が小さく抑えられていることを示す。
塗膜付き試験板を30℃に調整した海水中に浸漬させたこと以外は、25℃における消耗性評価と同様に消耗量を測定した。
なお、本評価においても数値が小さいほど消耗量が小さく抑えられていることを示し、比[30℃における消耗量/25℃における消耗量]の値が1に近いほど好ましい。
Claims (8)
- トリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート由来の構成単位(a1)、及び重合性二重結合を有する重合性モノマー由来の構成単位(a2)を有するシリルアクリル系共重合体(A)、炭素数1〜3の低級アルコール(B)、銅成分及び亜鉛成分を含有する防汚剤(C)、及びモノカルボン酸化合物(D)を含有する防汚塗料組成物であり、前記防汚塗料組成物中の前記低級アルコール(B)の含有量が0.1〜3質量%である防汚塗料組成物。
- 前記構成単位(a2)に対する前記構成単位(a1)の質量比[(a1)/(a2)]が40/60〜95/5である、請求項1に記載の防汚塗料組成物。
- 前記防汚塗料組成物中の前記シリルアクリル系共重合体(A)の含有量が5〜40質量%である、請求項1又は2に記載の防汚塗料組成物。
- 前記シリルアクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)が5,000〜100,000である、請求項1〜3のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の防汚塗料組成物を硬化させた塗膜。
- 請求項5に記載の塗膜を基材上に有する塗膜付き基材。
- 前記基材が船舶である、請求項6に記載の塗膜付き基材。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の防汚塗料組成物を基材に塗布又は含浸させることにより、塗布体又は含浸体を得る工程(1)、及び前記塗布体又は含浸体を乾燥することにより、前記防汚塗料組成物を硬化させる工程(2)を有する、塗膜付き基材の製造方法。
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