JPWO2017130832A1 - 固体電解質組成物、固体電解質含有シートおよび全固体二次電池、ならびに固体電解質含有シートおよび全固体二次電池の製造方法 - Google Patents

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Abstract

周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と、非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物とメタセシス触媒とを含有する固体電解質組成物、固体電解質含有シートおよび全固体二次電池、ならびに固体電解質含有シートおよび全固体二次電池の製造方法。

Description

本発明は、固体電解質組成物、固体電解質含有シートおよび全固体二次電池、ならびに固体電解質含有シートおよび全固体二次電池の製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池は、負極と、正極と、負極及び正極の間に挟まれた電解質とを有し、両極間にリチウムイオンを往復移動させることにより充電、放電を可能とした蓄電池である。リチウムイオン二次電池には、従来、電解質として有機電解液が用いられてきた。しかし、有機電解液は液漏れを生じやすく、また、過充電、過放電により電池内部で短絡が生じ発火するおそれもあり、信頼性と安全性のさらなる向上が求められている。
かかる状況下、有機電解液に代えて、無機固体電解質を用いた全固体二次電池が注目されている。全固体二次電池は負極、電解質、正極のすべてが固体からなり、有機電解液を用いた電池の課題とされる安全性ないし信頼性を大きく改善することができ、また長寿命化も可能になるとされる。さらに、全固体二次電池は、電極と電解質を直接並べて直列に配した構造とすることができる。そのため、有機電解液を用いた二次電池に比べて高エネルギー密度化が可能となり、電気自動車および大型蓄電池等への応用が期待されている。
上記のような各利点から、次世代のリチウムイオン電池として全固体二次電池の開発が進められている(非特許文献1)。これらの全固体二次電池において、負極の活物質層、固体電解質層、及び正極の活物質層のいずれかの層を、無機固体電解質および/または活物質と特定の高分子化合物等のバインダー粒子(結着剤)とを含有する材料で形成することが、提案されている。例えば、特許文献1には、炭素−炭素二重結合の99%以上が水素添加され、特定の融点を有する結晶性ノルボルネン系開環重合体水素化物を結着剤として含有する固体電解質組成物および全固体二次電池が記載されている。また、特許文献2には、二重結合を有するモノマーまたはオリゴマー、およびラジカル重合開始剤を結着剤組成物として含有する組成物を塗布し、ラジカル重合し、硬化して得られる固体電解質材料含有シートおよび固体電池が記載されている。
特開2011−233422号公報 国際公開第2010/898918号
NEDO技術開発機構,燃料電池・水素技術開発部,蓄電技術開発室「NEDO次世代自動車用蓄電池技術開発 ロードマップ2013」(平成25年8月)
近年、全固体二次電池の開発が急速に進行しており、全固体二次電池に求められる性能も高くなっている。特に、電極活物質層及び固体電解質層が固体粒子で形成される全固体二次電池においては、電池のサイクル特性を向上するため、固体粒子間の結着性を高めることが望まれている。
本発明は、全固体二次電池において、固体粒子間の結着性を向上することができ、サイクル特性を向上することができる固体電解質組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、上記固体電解質組成物を用いた、固体電解質含有シート及び全固体二次電池を提供することを課題とする。さらに、本発明は、上記固体電解質含有シート及び全固体二次電池それぞれの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、メタセシス反応してゲル化しうる特定の化合物とメタセシス触媒を含有する固体電解質組成物を用いることにより、固体粒子間の高い結着性を有し、高いサイクル特性を有する全固体二次電池を実現できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づきさらに検討を重ね、完成されるに至ったものである。
すなわち、上記の課題は以下の手段により解決された。
(1)周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と、非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物と、メタセシス触媒とを含有する固体電解質組成物。
(2)非芳香族性炭素−炭素不飽和結合が、末端ビニル基または末端エチニル基である(1)に記載の固体電解質組成物。
(3)非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物が、下記官能基群から選択される少なくとも1種の官能基を有する(1)または(2)に記載の固体電解質組成物。
<官能基群>
ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、シアノ基、イソシアネート基、酸無水物基、エポキシ基、オキセタニル基、アルコキシ基、カルボニル基、3環以上の環構造を有する基、アミド結合、ウレア結合、ウレタン結合、イミド結合、イソシアヌレート結合。
(4)非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物が、1分子中に2以上の非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する(1)〜(3)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(5)非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物が、スター型、ハイパーブランチ型およびデンドリマー型のうちのいずれかの構造を有する(1)〜(4)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(6)非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物が、下記一般式(1a)または(2a)で表される(1)に記載の固体電解質組成物。
Figure 2017130832
上記式中、R11〜R13、R14、R21〜R23およびR24は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を示し、R31およびR34は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を示す。L11、L21およびL31は単結合または2価の連結基を示す。nおよびmは1〜20の整数であり、lは0〜20の整数である。Xはn+m+l価の有機基を示す。
(7)R31およびR34が下記官能基群のうちの少なくとも1種の官能基を有する、(6)に記載の固体電解質組成物。
<官能基群>
ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、シアノ基、イソシアネート基、酸無水物基、エポキシ基、オキセタニル基、アルコキシ基、カルボニル基、3環以上の環構造を有する基、アミド結合、ウレア結合、ウレタン結合、イミド結合、イソシアヌレート結合。
(8)非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物の質量平均分子量が10,000未満である(1)〜(7)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(9)メタセシス触媒がルテニウム触媒である(1)〜(8)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(10)メタセシス触媒が、ルテニウム原子に酸素原子および/または窒素原子が結合および/または配位してなる触媒である(1)〜(9)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(11)固体電解質組成物中の全固形分中のメタセシス触媒の含有量が0.001質量%〜1質量%である(1)〜(10)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(12)活物質を含有する(1)〜(11)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(13)無機固体電解質が硫化物系無機固体電解質である(1)〜(12)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(14)分散媒体を含有する(1)〜(13)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(15) (1)〜(14)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物を基材上に塗布して塗工シートを得る工程(1a)と、
塗工シートを50℃以上に加熱して、非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物のメタセシス反応により架橋硬化させる工程(2a)と
を含む固体電解質含有シートの製造方法。
(16) (1)〜(14)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物を50℃以上に加熱して、非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物のメタセシス反応開始条件下とする工程(1b)と、
工程(1b)で得られた組成物を基材上に塗布して、組成物を架橋硬化させる工程(2b)と
を含む固体電解質含有シートの製造方法。
(17)周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と、下記一般式(3)で表される、非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する構造単位を有してなる化合物と、Ru、Moおよび/またはW金属元素が10ppm以上のメタセシス触媒残留物とを含有する固体電解質含有シート。
Figure 2017130832
上記式中、Zは下記一般式(3−1)を表し、Zは下記一般式(3−2)を表す。Rは水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。Lは単結合または2価の連結基を示す。nおよびmは1〜20の整数であり、lは0〜20の整数である。Xはn+m+l価の有機基を示す。
Figure 2017130832
上記式中、RおよびRは水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアリール基を示す。LおよびLは単結合または2価の連結基を示す。*はXとの結合部位を示す。
(18)活物質を含有する(17)に記載の固体電解質含有シート。
(19)正極活物質層と固体電解質層と負極活物質層とをこの順で具備する全固体二次電池であって、
正極活物質層、負極活物質層及び固体電解質層の少なくとも1つの層が、(17)または(18)に記載の固体電解質含有シートからなる全固体二次電池。
(20) (15)または(16)に記載の固体電解質含有シートの製造方法を介して、全固体二次電池を製造する全固体二次電池の製造方法。
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、単に「アクリル」又は「(メタ)アクリル」と記載するときは、メタアクリル及び/又はアクリルを意味する。
本明細書において、特定の符号で表示された置換基および連結基等(以下、置換基等という)が複数あるとき、あるいは複数の置換基等を同時もしくは択一的に規定するときには、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよいことを意味する。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。
本明細書において、質量平均分子量は、特段の断りがない限り、GPCによってポリスチレン換算の分子量として計測することができる。このとき、GPC装置HLC−8220(東ソー(株)社製)を用い、カラムはG3000HXL+G2000HXLを用い、23℃で流量は1mL/minで、RIで検出することとする。溶離液としては、THF(テトラヒドロフラン)、クロロホルム、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、m−クレゾール/クロロホルム(湘南和光純薬(株)社製)から選定することができ、溶解するものであればTHFを用いることとする。
本発明の固体電解質組成物は、全固体二次電池の固体電解質層および/または活物質層の材料として用いたときに、固体粒子間の結着性を高め、充放電の繰り返しに起因する固体粒子間の界面抵抗の上昇を抑制し、サイクル特性を向上できるという優れた効果を奏する。また、本発明の固体電解質含有シート及び全固体二次電池は、上記の優れた効果を奏する固体電解質組成物を利用し、優れた性能を発揮する。
また、本発明の製造方法によれば、本発明の、固体電解質含有シート及び全固体二次電池それぞれを好適に製造することができる。
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、適宜添付の図面を参照して、下記の記載からより明らかになるであろう。
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る全固体二次電池を模式化して示す縦断面図である。 図2は、実施例で作製した全固体二次電池(コイン電池)を模式的に示す縦断面図である。
[固体電解質組成物]
本発明の固体電解質組成物は、周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質(A)と、非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物(B)とメタセシス触媒(C)とを含有する。以下、その好ましい実施形態について説明する。
(無機固体電解質(A))
本発明の固体電解質組成物は、無機固体電解質を含有する。
無機固体電解質の固体電解質とは、その内部においてイオンを移動させることができる固体状の電解質のことである。主たるイオン伝導度材料として有機物を含むものではないことから、有機固体電解質(ポリエチレンオキシド(PEO)などに代表される高分子電解質、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)などに代表される有機電解質塩)とは明確に区別される。また、無機固体電解質は定常状態では固体であるため、カチオン及びアニオンに解離又は遊離していない。この点で、電解液ならびにポリマー中でカチオン及びアニオンが解離又は遊離している無機電解質塩(LiPF、LiBF、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、LiClなど)とも明確に区別される。無機固体電解質は周期律表第1族又は第2族に属する金属元素のイオンの伝導性を有するものであれば、特に限定されず、電子伝導性を有さないものが一般的である。本発明の全固体二次電池がリチウムイオン電池の場合、無機固体電解質は、リチウムイオンのイオン伝導度を有することが好ましい。
上記無機固体電解質は、全固体二次電池に通常使用される固体電解質材料を適宜選定して用いることができる。無機固体電解質は(i)硫化物系無機固体電解質と(ii)酸化物系無機固体電解質が代表例として挙げられる。本発明において、活物質と無機固体電解質との間により良好な界面を形成することができる観点から、硫化物系無機固体電解質が好ましく用いられる。
(i)硫化物系無機固体電解質
硫化物系無機固体電解質は、硫黄原子(S)を含有し、かつ、周期律表第1族又は第2族に属する金属元素のイオン伝導度を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。硫化物系無機固体電解質は、元素として少なくともLi、S及びPを含有し、リチウムイオン伝導度を有しているものが好ましいが、目的又は場合に応じて、Li、S及びP以外の他の元素を含んでもよい。
例えば下記式(1)で示される組成を満たすリチウムイオン伝導度無機固体電解質が挙げられ、好ましい。
a1b1c1d1e1 (1)
式中、LはLi、Na及びKから選択される元素を示し、Liが好ましい。
Mは、B、Zn、Sn、Si、Cu、Ga、Sb、Al及びGeから選択される元素を示す。中でも、B、Sn、Si、Al又はGeが好ましく、Sn、Al又はGeがより好ましい。
Aは、I、Br、Cl又はFを示し、I又はBrが好ましく、Iが特に好ましい。
L、M及びAは、それぞれ、上記元素の1種又は2種以上とすることができる。
a1〜e1は各元素の組成比を示し、a1:b1:c1:d1:e1は1〜12:0〜1:1:2〜12:0〜5を満たす。a1はさらに、1〜9が好ましく、1.5〜4がより好ましい。b1は0〜0.5が好ましい。d1はさらに、3〜7が好ましく、3.25〜4.5がより好ましい。e1はさらに、0〜3が好ましく、0〜1がより好ましい。
式(1)において、L、M、P、S及びAの組成比は、好ましくはb1、e1が0であり、より好ましくはb1=0、e1=0で且つa1、c1及びd1の比がa1:c1:d1=1〜9:1:3〜7であり、さらに好ましくはb1=0、e1=0で且つa1:c1:d1=1.5〜4:1:3.25〜4.5である。各元素の組成比は、後述するように、硫化物系無機固体電解質を製造する際の原料化合物の配合量を調整することにより制御できる。
硫化物系無機固体電解質は、非結晶(ガラス)であっても結晶化(ガラスセラミックス化)していてもよく、一部のみが結晶化していてもよい。例えば、Li、P及びSを含有するLi−P−S系ガラス、又はLi、P及びSを含有するLi−P−S系ガラスセラミックスを用いることができる。
硫化物系無機固体電解質は、[1]硫化リチウム(LiS)と硫化リン(例えば五硫化二燐(P))、[2]硫化リチウムと単体燐及び単体硫黄の少なくとも一方、又は[3]硫化リチウムと硫化リン(例えば五硫化二燐(P))と単体燐及び単体硫黄の少なくとも一方、の反応により製造することができる。
Li−P−S系ガラス及びLi−P−S系ガラスセラミックスにおける、LiSとPとの比率は、LiS:Pのモル比で、好ましくは65:35〜85:15、より好ましくは68:32〜77:23である。LiSとPとの比率をこの範囲にすることにより、リチウムイオン伝導度をより高めることができる。具体的には、リチウムイオン伝導度を好ましくは1×10−4S/cm以上、より好ましくは1×10−3S/cm以上とすることができる。上限は特にないが、1×10−1S/cm以下であることが実際的である。
硫化物系無機固体電解質の具体的な化合物例としては、例えば、LiSと、第13族〜第15族の元素の硫化物とを含有する原料組成物を用いてなるものを挙げることができる。より具体的には、LiS−P、LiS−LiI−P、LiS−LiI−LiO−P、LiS−LiBr−P、LiS−LiO−P、LiS−LiPO−P、LiS−P−P、LiS−P−SiS、LiS−P−SnS、LiS−P−Al、LiS−GeS、LiS−GeS−ZnS、LiS−Ga、LiS−GeS−Ga、LiS−GeS−P、LiS−GeS−Sb、LiS−GeS−Al、LiS−SiS、LiS−Al、LiS−SiS−Al、LiS−SiS−P、LiS−SiS−P−LiI、LiS−SiS−LiI、LiS−SiS−LiSiO、LiS−SiS−LiPO、Li10GeP12などが挙げられる。その中でも、LiS−P、LiS−GeS−Ga、LiS−SiS−P、LiS−SiS−LiSiO、LiS−SiS−LiPO4、LiS−LiI−LiO−P、LiS−LiO−P、LiS−LiPO−P、LiS−GeS−P、Li10GeP12からなる結晶質、非晶質若しくは結晶質と非晶質混合の原料組成物が、高いリチウムイオン伝導度を有するので好ましい。このような原料組成物を用いて硫化物系無機固体電解質材料を合成する方法としては、例えば非晶質化法を挙げることができる。非晶質化法としては、例えば、メカニカルミリング法及び溶融急冷法を挙げることができ、中でもメカニカルミリング法が好ましい。常温での処理が可能になり、製造工程の簡略化を図ることができるからである。
中でも、LiS−P、LGPS(Li10GeP12)、LiS−P−SiS等が好ましい。
(ii)酸化物系無機固体電解質
酸化物系無機固体電解質は、酸素原子(O)を含有し、かつ、周期律表第1族又は第2族に属する金属元素のイオン伝導度を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。
酸化物系無機固体電解質は、イオン伝導度として、1×10−6S/cm以上であることが好ましく、5×10−6S/cm以上であることがより好ましく、1×10−5S/cm以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されないが、1×10−1S/cm以下であることが実際的である。
具体的な化合物例としては、例えばLixaLayaTiO〔xaは0.3≦xa≦0.7を満たし、yaは0.3≦ya≦0.7を満たす。〕(LLT); LixbLaybZrzbbb mbnb(MbbはAl、Mg、Ca、Sr、V、Nb、Ta、Ti、Ge、In及びSnから選ばれる1種以上の元素である。xbは5≦xb≦10を満たし、ybは1≦yb≦4を満たし、zbは1≦zb≦4を満たし、mbは0≦mb≦2を満たし、nbは5≦nb≦20を満たす。); Lixcyccc zcnc(MccはC、S、Al、Si、Ga、Ge、In及びSnから選ばれる1種以上の元素である。xcは0≦xc≦5を満たし、ycは0≦yc≦1を満たし、zcは0≦zc≦1を満たし、ncは0≦nc≦6を満たす。); Lixd(Al,Ga)yd(Ti,Ge)zdSiadmdnd(xdは1≦xd≦3を満たし、ydは0≦yd≦1を満たし、zdは0≦zd≦2を満たし、adは0≦ad≦1を満たし、mdは1≦md≦7を満たし、ndは3≦nd≦13を満たす。); Li(3−2xe)ee xeeeO(xeは0以上0.1以下の数を表し、Meeは2価の金属原子を表す。Deeはハロゲン原子又は2種以上のハロゲン原子の組み合わせを表す。); LixfSiyfzf(xfは1≦xf≦5を満たし、yfは0<yf≦3を満たし、zfは1≦zf≦10を満たす。); Lixgygzg(xgは1≦xg≦3を満たし、ygは0<yg≦2を満たし、zgは1≦zg≦10を満たす。); LiBO; LiBO−LiSO; LiO−B−P; LiO−SiO; LiBaLaTa12; LiPO(4−3/2w)(wはw<1); LISICON(Lithium super ionic conductor)型結晶構造を有するLi3.5Zn0.25GeO; ペロブスカイト型結晶構造を有するLa0.55Li0.35TiO; NASICON(Natrium super ionic conductor)型結晶構造を有するLiTi12; Li1+xh+yh(Al,Ga)xh(Ti,Ge)2−xhSiyh3−yh12(xhは0≦xh≦1を満たし、yhは0≦yh≦1を満たす。); ガーネット型結晶構造を有するLiLaZr12(LLZ)等が挙げられる。
またLi、P及びOを含むリン化合物も望ましい。例えばリン酸リチウム(LiPO); リン酸リチウムの酸素の一部を窒素で置換したLiPON; LiPOD(Dは、好ましくは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Ag、Ta、W、Pt及びAuから選ばれる1種以上の元素である。)等が挙げられる。
さらに、LiAON(Aは、Si、B、Ge、Al、C及びGaから選ばれる1種以上の元素である。)等も好ましく用いることができる。
その中でも、LLT、LixbLaybZrzbbb mbnb(Mbb、xb、yb、zb、mb及びnb上記の通りである。)、LLZ、LiBO、LiBO−LiSO、Lixd(Al,Ga)yd(Ti,Ge)zdSiadmdnd(xd、yd、zd、ad、md及びndは上記の通りである。)が好ましく、LLZ、LLT、LAGP(Li1.5Al0.5Ge1.5(PO)又はLATP([Li1.4TiSi0.42.612]−AlPO)がより好ましい。
無機固体電解質は粒子であることが好ましい。粒子状の無機固体電解質の体積平均粒子径は特に制限されないが、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。上限としては、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。なお、無機固体電解質の体積平均粒子径の測定は、以下の手順で行う。無機固体電解質粒子を、水(水に不安定な物質の場合はヘプタン)を用いて20mLサンプル瓶中で1質量%の分散液を希釈調製する。希釈後の分散試料は、1kHzの超音波を10分間照射し、その直後に試験に使用する。この分散液試料を用い、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(商品名、HORIBA社製)を用いて、温度25℃で測定用石英セルを使用してデータ取り込みを50回行い、体積平均粒子径を得る。その他の詳細な条件等は必要によりJISZ8828:2013「粒子径解析−動的光散乱法」の記載を参照する。1水準につき5つの試料を作製しその平均値を採用する。
無機固体電解質の固体電解質組成物中における含有量は、電池性能と界面抵抗の低減と維持効果の両立を考慮したとき、固形分100質量%において、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが特に好ましい。上限としては、同様の観点から、99.9質量%以下であることが好ましく、99.5質量%以下であることがより好ましく、99質量%以下であることが特に好ましい。
ただし、正極活物質又は負極活物質を含有する場合、固体電解質組成物中の無機固体電解質の含有量は、正極活物質又は負極活物質と無機固体電解質との合計含有量が上記範囲であることが好ましい。
なお、本明細書において固形分とは、無機固体電解質(A)、非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物(B)およびメタセシス触媒(C)ならびに窒素雰囲気下170℃で6時間乾燥処理を行ったときに、揮発ないし蒸発して消失しない成分をいう。典型的には、後述の分散媒体以外の成分を指す。
無機固体電解質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物(B))
非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物(以下、単に化合物(B)とも称す。)は、非芳香族性炭素−炭素不飽和結合(以下、単に非芳香族性不飽和結合とも称す。)を有する化合物であれば特に限定されない。非芳香族性とは、芳香族性を有さないことを意味する。
− 非芳香族性不飽和結合を有する基 −
非芳香族性不飽和結合としては、例えば、芳香族性を有さない炭素−炭素二重結合および炭素−炭素三重結合が挙げられ、好ましい。
非芳香族性不飽和結合は、化合物(B)の分子内においていずれの位置に存在していてもよく、非芳香族性不飽和結合を有する基(以下、単に非芳香族性不飽和基とも称す。)としては、鎖状であっても分岐状であっても、さらに環を形成していてもよい。
非芳香族性不飽和基は、下記一般式(1)または(2)で表される化合物の少なくとも1つの水素原子またはアルキル基を結合手「−」に置き換えた基(以下、一般式(1)または(2)で表される基とも称す。)が好ましい。
Figure 2017130832
上記式中、R1a〜R4a、R5aおよびR6aは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基またはカルバモイル基を示す。R1a〜R4aは任意の有機基で環構造を形成していてもよい。R5aとR6aは任意の有機基で環構造を形成していてもよい。なお、R1a〜R4aのうちの少なくとも1つは水素原子であるか、またはアルキル基を有する基を示す。また、R5aおよびR6aのうちの少なくとも1つは水素原子であるか、またはアルキル基を有する基を示す。
一般式(1)または(2)で表される化合物の少なくとも1つの水素原子またはアルキル基を結合手「−」に置き換えた置換基とは、一般式(1)または(2)で表される部分構造を有する限り、どのような置換基でも構わない。例えば、R1aが、水素原子の場合、R1aにおける水素原子を結合手「−」に置き換えた置換基であり、R1aが、アルコキシカルボニルの場合、R1aにおけるアルキル基または水素原子を結合手「−」に置き換えた置換基である。
1a〜R4a、R5aおよびR6aにおけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基およびカルバモイル基は、後述の置換基Zの好ましい記載を適用することができる。
なかでも、一般式(1)においては、R1aおよびR2aが水素原子であって、R3aが水素原子またはアルキル基であって、R4aが水素原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基またはアリールオキシカルボニル基であって、R3aまたはR4aにおける水素原子またはアルキル基を結合手「−」に置き換えた基が好ましい。また、一般式(2)においては、R5aが水素原子であって、R6aが水素原子またはアルキル基であって、R6aにおける水素原子を結合手「−」に置き換えた基が好ましい。
具体的な非芳香族性不飽和基としては、末端ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基および末端エチニル基から選択されるいずれかが好ましい。
化合物(B)がその分子末端に非芳香族性不飽和結合を有すると、後述するメタセシス反応の反応性がより高まり、低温での化合物(B)の架橋が可能になる。また、架橋効率がより高まることで、固体粒子間の結着性が向上する。これらの観点から、非芳香族性不飽和基は、末端ビニル基または末端エチニル基がより好ましい。
化合物(B)は、非芳香族性不飽和基を2つ以上有することが好ましく、3つ以上有することがより好ましい。
− 官能基 −
化合物(B)は下記官能基群から選択される少なくとも1種の官能基を有することが、化合物(B)と無機固体電解質との相互作用、または化合物(B)と無機固体電解質および活物質との相互作用を高め、結着性を高める観点から好ましい。
<官能基群>
ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、シアノ基、イソシアネート基、酸無水物基、エポキシ基、オキセタニル基、アルコキシ基、カルボニル基(>C=O)、3環以上の環構造を有する基、アミド結合を有する基、ウレア結合を有する基、ウレタン結合を有する基、イミド結合を有する基、イソシアヌレート結合を有する基。
酸無水物基とは、ジカルボン酸の酸無水物から得られる基(少なくとも1つの水素原子を結合手「−」に置き換えた基)を意味する。
アミノ基は炭素数0〜12が好ましく、0〜6がより好ましく、0〜2が特に好ましい。
スルホン酸基はそのエステルや塩でもよい。エステルの場合、炭素数1〜24が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6が特に好ましい。
リン酸基はそのエステルや塩でもよい。エステルの場合、炭素数1〜24が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6が特に好ましい。
その他の官能基については、後述の置換基Zの好ましい記載を適用することができる。
なお、上記官能基は、置換基として存在しても、連結基として存在していてもよい。例えば、アミノ基は2価のイミノ基または3価の窒素原子として存在してもよい。
上記官能基群のなかでも無機固体電解質および/または正極活物質に対する親和性の点からは極性基が好ましく用いられる。具体的にはヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基およびアミノ基が好ましく挙げられ、より好ましくはカルボキシ基である。
負極活物質および/または導電助剤に対する親和性の点からは非極性基が好ましく用いられる。具体的には3環以上の環構造を有する基が好ましく挙げられる。
3環以上の環構造を有する基としては、下記一般式(A)で表される芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素または不飽和炭化水素の少なくとも1つの水素原子を結合手「−」に置き換えた基、および後述の一般式(B)で表される脂肪族炭化水素の少なくとも1つの水素原子を結合手「−」に置き換えた基のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
下記一般式(A)で表される芳香族炭化水素、不飽和炭化水素または脂肪族炭化水素、および後述の一般式(B)で表される脂肪族炭化水素は、負極活物質である炭素質材料との親和性に優れる。そのため、これらの化合物の少なくとも1つの水素原子を結合手「−」に置き換えた基を有する化合物(B)の、固体電解質組成物中での分散安定性をより向上させるとともに、固体電解質含有シートの結着性を向上させることができる。また、分散安定性の向上、結着性の向上に伴い、この固体電解質組成物を用いて作製した全固体二次電池のサイクル特性を向上させることができる。
Figure 2017130832
一般式(A)において、CHCはベンゼン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、シクロヘキサジエン環を表す。nは0〜8の整数を表す。RA1〜RA6は各々独立に、水素原子または置換基を表す。CHCがベンゼン環以外の場合は環構造にRA1〜RA6以外に水素原子を有していてもよい。XA1およびXA2は各々独立に、水素原子または置換基を表す。ここで、RA1〜RA6、XA1およびXA2において、互いに隣接する基が結合して、5または6員環を形成してもよい。ただし、nが0の場合、RA1〜RA6のいずれか1つの置換基は、−(CHC)m−RAxであるか、またはRA1〜RA6のいずれか2つが互いに結合して、−(CHC)m−を形成する。ここで、CHCはフェニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基を表し、mは2以上の整数を表し、RAxは水素原子または置換基を表す。また、nが1の場合、RA1〜RA6、XA1およびXA2において、互いに隣接する少なくとも2つが結合して、ベンゼン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環またはシクロヘキサジエン環を形成する。
A1〜RA6が表す置換基として、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基もしくはその塩、スルホ基もしくはその塩、アミノ基、メルカプト基、アミド基、ホルミル基、シアノ基、ハロゲン原子、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、エポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。
は、0〜6の整数がより好ましく、1〜4の整数が特に好ましい。
一般式(A)で表される芳香族炭化水素は、下記一般式(A−1)または(A−2)で表される化合物が好ましい。
Figure 2017130832
一般式(A−1)において、Arはベンゼン環である。RA1〜RA6、XA1およびXA2は、一般式(A)におけるRA1〜RA6、XA1およびXA2と同義であり、好ましい範囲も同じである。n1は1以上の整数を表す。ただし、n1が1の場合、RA1〜RA6、XA1およびXA2において、互いに隣接する少なくとも2つが結合して、ベンゼン環を形成する。
一般式(A−2)において、RAxは一般式(A)におけるRAxと同義であり、好ましい範囲も同じである。RA10は置換基を表し、nxは0〜4の整数を表す。m1は3以上の整数を表す。RAyは、水素原子または置換基を表す。ここで、RAxとRAyが結合してもかまわない。
1は、1〜6の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましく、1〜2の整数が特に好ましい。
1は、3〜10の整数が好ましく、3〜8の整数がより好ましく、3〜5の整数が特に好ましい。
一般式(A)で表される芳香族炭化水素の具体例として、ナフタレン、アントラセン、フェナントラセン、ピレン、テトラセン、テトラフェン、クリセン、トリフェニレン、ペンタセン、ペンタフェン、ペリレン、ピレン、ベンゾ[a]ピレン、コロネン、アンタントレン、コランヌレン、オバレン、グラフェン、シクロパラフェニレン、ポリパラフェニレンまたはシクロフェンの構造を含む化合物が挙げられる。ただし、本発明はこれらに限定されない。
Figure 2017130832
一般式(B)において、YB1およびYB2は各々独立に水素原子、メチル基またはホルミル基を表す。RB1、RB2、RB3およびRB4は各々独立に、置換基を表し、a、b、cおよびdは0〜4の整数を表す。
ここで、A環は、飽和環、二重結合を1もしくは2個有する不飽和環または芳香環であってもよく、B環およびC環は、二重結合を1もしくは2個有する不飽和環であってもよい。なお、a、b、cまたはdの各々において、2〜4の整数の場合、互いに隣接する置換基が結合して環を形成してもよい。
一般式(B)で表される脂肪族炭化水素は、ステロイド骨格を有する化合物である。
ここで、ステロイド骨格の炭素番号は、下記の通りである。
Figure 2017130832
B1、RB2、RB3およびRB4における置換基は、どのような置換基でも構わないが、アルキル基、アルケニル基、ヒドロキシ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基またはその塩、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、エポキシ基、オキセタニル基が好ましく、また、同一炭素原子に2つ置換した置換基が共同して形成された、=O基が好ましい。
アルキル基は、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、どのような置換基でも構わないが、アルキル基、アルケニル基、ヒドロキシ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホ基が挙げられる。アルキル基としては内部に二重結合または三重結合の不飽和炭素結合を含有することがさらに好ましい。
アルケニル基は、炭素数2〜12のアルケニル基が好ましく、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、どのような置換基でも構わないが、アルキル基、アルケニル基、ヒドロキシ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホ基が挙げられる。
B1は、炭素番号3に置換するのが好ましく、RB2は、炭素番号6または7に置換するのが好ましく、RB3は炭素番号11または12に置換するのが好ましく、RB4は、炭素番号17に置換するのが好ましい。
B1、YB2は水素原子またはメチル基が好ましい。
、b、c、dは0〜2の整数が好ましい。
A環が不飽和環である場合、二重結合は炭素番号4と5の結合が好ましく、B環が不飽和環である場合、二重結合は炭素番号5と6または6と7の結合が好ましく、C環が不飽和環である場合、二重結合は炭素番号8と9の結合が好ましい。
なお、一般式(B)で表される化合物は、立体異性体のいずれをも包含するものである。置換基の結合方向が紙面下方向をα、紙面上方向をβで表すと、α、βのいずれであってもよく、これらの混合であってもよい。また、A/B環の配置、B/C環の配置、C/D環の配置は、トランス配置であっても、シス配置のいずれであってもよく、これらの混合配置であっても構わない。
本発明では、a〜dの総和が1以上であって、かつRB1、RB2、RB3およびRB4のいずれかが、ヒドロキシ基または置換基を有するアルキル基が好ましい。
一般式(B)で表される脂肪族炭化水素の具体例として、コレステロール、エルゴステロール、テストステロン、エストラジオール、エルドステロール、アルドステロン、ヒドロコルチゾン、スチグマステロール、チモステロール、ラノステロール、7−デヒドロデスモステロール、7−デヒドロコレステロール、コラン酸、コール酸、リトコール酸、デオキシコール酸、デオキシコール酸ナトリウム、デオキシコール酸リチウム、ヒオデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、デヒドロコール酸、ホケコール酸またはヒオコール酸の構造を含む化合物が挙げられる。ただし、本発明はこれらに限定されない。
3環以上の環構造を有する基として、特に好ましくはコレステロール環構造を有する基、または芳香族基が3つ以上縮環した構造であり、最も好ましくはデオキシコール酸残基、ピレニル基である。
化合物(B)は、固体電解質組成物中に溶解する限り、モノマーであっても、オリゴマーであっても、ポリマーであってもよく、常温での性状は気体であっても液体であっても固体であってもよい。
分子量は特に制限されないが、分子量または質量平均分子量(Mw)が10000未満であることが好ましく、1000未満であることがより好ましい。下限も特に制限はないが、20以上であることが好ましい。化合物名では、二重結合の場合にはエチレン、三重結合の場合はアセチレンである。なお、化合物(B)が下記スター型、ハイパーブランチ型およびデンドリマー型のうちのいずれかの構造を有する場合、上記分子量は、コア部の分子量を意味する。
ポリマーの場合、非芳香族性不飽和結合は主鎖中にあっても側鎖中にであってもよいが、側鎖中にあることが好ましい。
化合物(B)はスター型、ハイパーブランチ型およびデンドリマー型のうちのいずれかの構造を有することが、メタセシス反応により形成される化合物(B2)の架橋密度を高めることができる点で好ましい。
スター型とは多分岐ポリマーの一構造であり、コア部と、上記コア部に結合する少なくとも3本のアーム部とを有してなる。
このコア部は、分子量200以上の原子群であることが好ましく、分子量300以上の原子群であることがより好ましい。上限は、5,000以下であることが好ましく、4,000以下であることがより好ましく、3,000以下であることが特に好ましい。このコアは四価の炭素原子のみでないことが好ましい。上記コア部は、下記一般式(1a)または(2a)における有機基Xが好ましい。
アーム部の分子量は、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましい。上限としては、1,000,000以下であることが好ましく、500,000以下であることがより好ましい。
アーム部を形成することができるモノマーとして、Polymer Handbook 2nd ed.,J.Brandrup,Wiley lnterscience (1975) Chapter 2 Page1〜483に記載のものなどを用いることができる。
ハイパーブランチ型、デンドリマー型も多分岐ポリマーの一構造であり、アーム部に枝分かれ構造を有する。
ここで、デンドリマーとは、対称性良く、規則正しい枝分かれ構造がコア部から3次元的に広がっているポリマーを示す。デンドリマーは、枝分かれと枝分かれの間が、デンドロンと呼ばれる、ある決まった化学結合の繰り返しになっている。枝分かれが規則正しく明確な構造であり、分子量分布が無い、すなわち単一な分子量であるという点で、ハイパーブランチポリマーや、他のポリマーとは異なるものである。
ハイパーブランチポリマーとは、アーム部に相当する繰り返し単位が、コア部から枝分かれして伸びた構造をしている。繰り返し単位の枝分かれは、ランダムにおこり、分子量分布がある。
化合物(B)は、非芳香族性不飽和結合を、上記スター型、ハイパーブランチ型およびデンドリマー型構造におけるアーム部に有することが好ましく、アーム部の末端に有することがより好ましい。
化合物(B)は、1分子中に2以上の非芳香族性不飽和結合を有することが好ましく、化合物(B)は、下記一般式(1a)または(2a)で表されることがより好ましい。
Figure 2017130832
上記式中、R11〜R13、R14、R21〜R23およびR24は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を示し、R31およびR34は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を示す。L11、L21およびL31は単結合または2価の連結基を示す。nおよびmは1〜20の整数であり、lは0〜20の整数である。Xはn+m+l価の有機基を示す。
11〜R13、R14、R21〜R23およびR24におけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアリール基は、後述の置換基Zの記載を適用することができる。以下、適用しうる置換基Zのうちの好ましい形態を記載する。
アルキル基は炭素数1〜10が好ましく、1〜8がより好ましく、具体的には、メチル、エチルまたはオクチルが好ましい。
アルケニル基は炭素数2〜10が好ましく、2〜8がより好ましく、具体的には、エテニル、2−オクテニル、2,5−ヘプタジエニル、2,5−オクタジエニルまたは9−デセニルが好ましい。
アルキニル基は炭素数2〜10が好ましく、2〜8がより好ましく、具体的には、エチニルが好ましい。
アリール基は炭素数6〜18が好ましく、具体的には、フェニルが好ましい。
一般式(1a)で表される化合物は、R11、R12、R21およびR22がいずれも水素原子であることが好ましく、一般式(2a)で表される化合物は、R14およびR24がともに水素原子であることが好ましい。
31およびR34におけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアリール基は、上記R11〜R13、R14、R21〜R23およびR24における好ましい記載を適用することができる。
31およびR34は、前述の官能基群から選択される官能基(以下、特定官能基とも称す。)を有することも好ましい。
11およびL21は、上記一般式(1a)および(2a)における非芳香族性不飽和基(例えば、−C(R13)=C(R11)(R12))とXを連結する基であり、非芳香族性不飽和基とメタセシス触媒との反応に影響を与えない限りどのような基であってもよい。
31は、上記一般式(1a)におけるR31とX、および上記一般式(2a)におけるR34とXを連結する基であり、非芳香族性不飽和基とメタセシス触媒との反応に影響を与えない限りどのような基であってもよい。
すなわち、L11、L21およびL31は、非芳香族性不飽和結合を有さない連結基である。
11、L21およびL31における2価の連結基は、アルキレン基(炭素数は1〜18が好ましく、1〜10がより好ましい。)、アリーレン基(炭素数は6〜18が好ましい。)、ヘテロアリーレン基(環構成原子として酸素原子、硫黄原子および窒素原子のいずれか1つを少なくとも有する、5員環または6員環のヘテロアリーレン基がより好ましい。縮環していてもよく、縮環する環としては、ベンゼン環、脂環が好ましい。ヘテロアレーレン基を構成する炭素原子数は2〜20が好ましい。ヘテロアリーレン基におけるヘテロアリール環には芳香族環および脂肪族環を含む。)、−O−、−NR−、−C(=O)−、−C(=O)−O−または−C(=O)NR−もしくはこれらの組み合わせが好ましい。Rは水素原子、アルキル基(炭素数は1〜8が好ましい。)またはアリール基(炭素数は6〜12が好ましい。)を示す。
11、L21およびL31は、単結合、アルキレン基、−C(=O)−O−、−C(=O)−アルキレン、−O−アルキレン、−C(=O)−O−アルキレンまたは−O−C(=O)−アルキレンがより好ましい。
11、L21およびL31は、いずれの側でXと結合してもよい。例えば、−C(=O)−O−の場合、酸素原子でXに結合しても、カルボニル基でXに結合してもよい。
11、L21およびL31は、特定官能基を有することも好ましい。
特定官能基を有する、−L31−R31または−L31−R34で表される基としては、具体的には、以下の基が好ましく挙げられるが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。なお、*はXとの結合部位を示す。
Figure 2017130832
nおよびmは、1〜10の整数が好ましい。
lは、1〜10の整数が好ましく、2〜5の整数がより好ましい。
n+mは、2〜40の整数が好ましく、3〜8の整数がより好ましい。
Xは2〜60価の有機基が好ましく、3〜12価の有機基がより好ましい。
Xにおけるm+n+l価の有機基は、例えば、下記一般式(Q−1)〜(Q−19)のいずれかで表される多環有機基、下記一般式(Q−20)〜(Q−36)のいずれかで表されるペンタエリトリトール残基、ジペンタエリトリトール残基、ジアミノアルキレン残基およびトリメチロールアルカン残基等、下記一般式(H−1)〜(H−3)のいずれかで表される環状シロキサン残基ならびに下記一般式(P−1)〜(P−8)のいずれかで表されるシルセスキオキサン残基などが好ましく挙げられる。
Xがシルセスキオキサン残基である場合は、化合物(B)は、上記一般式(1a)または(2a)で表される化合物と非芳香族性不飽和結合を有するトリアルコキシシランのゾルゲル体との混合物であってもよい。この場合、混合物である化合物(B)中の上記一般式(1a)または(2a)で表される化合物の含有量は、10〜99質量%が好ましく、50〜95質量%がより好ましい。
なお、下記一般式(Q−1)〜(Q−36)および(H−1)〜(H−3)におけるYならびに下記一般式(P−1)〜(P〜8)におけるRは、任意の連結基であり、L11、L21またはL31との結合部位示す。
任意の連結基とは、例えば、単結合、アルキレン基(炭素数は1〜18が好ましく、1〜10がより好ましい。)、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)NR−、−S−および−NR−(Rは水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、水素原子が好ましい。)が挙げられ、単結合、アルキレン基、−O−、−S−または−NR−が好ましい。なお、いずれの側でXと結合してもよい。
下記一般式中におけるa〜fは繰り返し数を表し、2〜20が好ましく、3〜10がより好ましい。
Figure 2017130832
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上記一般式(1a)または(2a)で表される化合物(B)は、以下の方法により合成することができる。すなわち、多分岐型骨格(スター型、ハイパーブランチ型およびデンドリマー型)の母核となるXにおける末端部分が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基およびメルカプト基等の求核性官能基である化合物、または、ハロゲン原子(Cl、Br、I)、−OTsおよび−OMs等の脱離基を有する化合物に対して、非芳香族性不飽和結合と反応性官能基(ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基およびメルカプト基等)を有する化合物を反応させることで得られる。ここで、Tsはトシル基、Msはメシル基を表す。
例えば、ヒドロキシ基とカルボキシ基の反応からエステル結合、アミノ基とカルボキシ基の反応からアミド結合、メルカプト基とカルボキシ基の反応からチオエステル結合を形成させることにより、化合物(B)が得られる。
ハロゲン原子(Cl、Br、I)、−OTsおよび−OMs等の脱離基に対しては、ヒドロキシ基、アミノ基およびメルカプト基を反応させることで、それぞれ、エーテル結合、アミド結合、チオエーテル結合を形成させ、化合物(B)が得られる。
化合物(B)の例示化合物としては、下記に記載するものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、例示化合物b−1〜24においては、XにおけるYまたはRを、結合するn、mまたはl付き括弧の構造の欄(例えば、( )の構造)に記載した。L11およびL21は、下記に記載する左の結合手(例えば、b−1ではカルボニル結合)によりYまたはRと結合する。
また、例示化合物b−25〜52においては、( )又は[ ]における下付きの数はモル%を表す。ただし、[ ]内における( )下付きの数は繰り返し単位数を示す。
Figure 2017130832
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化合物(B)は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
化合物(B)の固体電解質組成物中での含有量は、電池性能と、界面抵抗の低減および維持効果の両立を考慮したとき、固形分100質量%において、0.05質量%〜30質量%であることが好ましく、0.1質量%〜20質量%であることがより好ましく、1質量%〜10質量%であることがさらに好ましい。
本発明では、化合物(B)の質量に対する、無機固体電解質と必要により含有させる電極活物質の合計質量(総量)の質量比[(無機固体電解質の質量+電極活物質の質量)/化合物(B)の質量]は、1,000〜1の範囲が好ましい。この比率はさらに500〜2がより好ましく、100〜10がさらに好ましい。
(メタセシス触媒(C))
メタセシス触媒としては、5族、6族及び8族(長周期型周期表、以下同じ)の原子が、遷移金属原子として使用される。それぞれの族の原子は特に限定されないが、好ましい5族の原子はタンタルであり、好ましい6族の原子はモリブデン、タングステンであり、好ましい8族の原子はルテニウム、オスミウムである。メタセシス触媒は、ルテニウム触媒(すなわち、ルテニウム含有触媒)が好ましい。
例えば、特公昭41−20111号公報、特開昭46−14910号公報、特公昭57−17883号公報、特公昭57−61044号公報、特開昭54−86600号公報、特開昭58−127728号公報および特開平1−240517号公報等に記載された、リビング開環メタセシス触媒が挙げられる。具体的には、本質的に(a)遷移金属化合物触媒成分と(b)金属化合物助触媒成分からなる一般のメタセシス重合触媒である、シュロック型重合触媒(特開平7−179575号公報、Schrock et al.,J.Am.Chem.Soc.,1990年,第112巻,3875頁〜等)およびグラブス型重合触媒(Fu et al.,J.Am.Chem.Soc.,1993年,第115巻,9856頁〜;Nguyen et al.,J.Am.Chem.Soc.,1992年,第114巻,3974頁〜;Grubbs etal.,WO98/21214号パンフレット等)等が挙げられる。
本発明に用いられるメタセシス触媒(C)としては、グラブス型重合触媒が好ましく、ルテニウムカルベン錯体がより好ましい。具体的には下記の触媒を好ましく用いることができ、アルドリッチ社製カタログ、和光純薬社製カタログ等に記載の商品を入手可能である。
代表的なものとしては、以下の触媒が挙げられる。
・第1世代グラブス触媒
ベンジリデンビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジクロロルテニウム(II)
・第2世代グラブス触媒
ベンジリデン[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(II)
・第1世代ホベイダ−グラブス触媒
(トリシクロヘキシルホスフィン)ジクロロ(2−イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウム(II)
・第2世代ホベイダ−グラブス触媒
[1,3−ビス(2、4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(2−イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウム(II)
上記以外にも、下記の触媒を好適に用いることができる。
・ベンジリデン[1,3−ビス(2−メチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(II)
・ベンジリデン[1,3−ビス(2、4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(ビス(3−ブロモピリジン))ルテニウム(II)
・3−メチル−2−ブテニリデン[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(II)
・[1,3−ビス(2−メチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(2−イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウム(II)
・(トリシクロヘキシルホスフィン)ジクロロ(2−イソプロポキシ−5−N,N−ジメチルアミノスルフォニルフェニルメチレン)ルテニウム(II)
・[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(2−イソプロポキシ−5−N,N−ジメチルアミノスルフォニルフェニルメチレン)ルテニウム(II)
・ジクロロ(トリシクロヘキシルホスフィン)[(トリシクロヘキシルホスホラニル)−メチリデン]ルテニウム(III)テトラフルオロボレート
・[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(トリシクロヘキシルホラニル)メチリデンルテニウム(III)テトラフルオロボレート
なかでも、メタセシス触媒(C)は、ルテニウム原子に酸素原子または窒素原子が配位または結合してなる触媒がさらに好ましい。
メタセシス触媒(C)の固体電解質組成物中での含有量は、電池性能と、界面抵抗の低減および維持効果の両立を考慮したとき、固形分100質量%において、0.001質量%〜5質量%であることが好ましく、0.01質量%〜2質量%であることがより好ましく、0.1質量%〜1質量%であることがさらに好ましい。
本発明の固体電解質組成物中において、化合物(B)に対するメタセシス触媒(C)の含有質量比は、反応性の観点から、化合物(B):メタセシス触媒(C)=1:0.05〜1が好ましく、1:0.1〜0.5がより好ましい。
なお、化合物(B)が、−50〜40℃で、メタセシス触媒(C)を溶解し得る液体である場合には、本発明の固体電解質組成物は分散媒体を含有していなくてもよい。
本明細書において置換ないし無置換を明記していない置換基(連結基についても同様)については、その基に適宜の置換基を有していてもよい意味である。これは置換ないし無置換を明記していない化合物についても同義である。好ましい置換基としては、下記置換基Zが挙げられる。
置換基Zとしては、下記のものが挙げられる。
アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルキニル基、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等、ただし本明細書においてアルキル基というときには通常シクロアルキル基を含む意味である。)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリール基、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、アラルキル基(好ましくは炭素数7〜23のアラルキル基、例えば、ベンジル、フェネチル等、ただし本明細書においてアルキル基というときには通常アラルキル基を含む意味である。)、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数2〜20のヘテロ環基、好ましくは、環構成原子として酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選択される少なくとも1つを有する5又は6員環のヘテロ環基が好ましく、例えば、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル、ピロリドン基等)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等、ただし本明細書においてアルコキシ基というときには通常アリーロイル基を含む意味である。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、1−ナフチルオキシカルボニル、3−メチルフェノキシカルボニル、4−メトキシフェノキシカルボニル等)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20のアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を含み、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、アニリノ等)、スルファモイル基(好ましくは炭素原子数0〜20のスルファモイル基、例えば、N,N−ジメチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル等)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシル基、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル等)、アリーロイル基(好ましくは炭素原子数7〜23のアリーロイル基、例えば、ベンゾイル等、ただし本明細書においてアシル基というときには通常アリーロイル基を含む意味である。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルオキシ基、例えば、アセチルオキシ等)、アリーロイルオキシ基(好ましくは炭素原子数7〜23のアリーロイルオキシ基、例えば、ベンゾイルオキシ等、ただし本明細書においてアシルオキシ基というときには通常アリーロイルオキシ基を含む意味である。)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20のカルバモイル基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルアミノ基、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、アルキルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、ベンジルチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ、1−ナフチルチオ、3−メチルフェニルチオ、4−メトキシフェニルチオ等)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキルスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル等)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素原子数6〜22のアリールスルホニル基、例えば、ベンゼンスルホニル等)、アルキルシリル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキルシリル基、例えば、モノメチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル等)、アリールシリル基(好ましくは炭素原子数6〜42のアリールシリル基、例えば、トリフェニルシリル等)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルコキシシリル基、例えば、モノメトキシシリル、ジメトキシシリル、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル等)、アリールオキシシリル基(好ましくは炭素原子数6〜42のアリールオキシシリル基、例えば、トリフェニルオキシシリル等)、ホスホリル基(好ましくは炭素原子数0〜20のホスホリル基、例えば、−OP(=O)(R)、ホスホニル基(好ましくは炭素原子数0〜20のホスホニル基、例えば、−P(=O)(R)、ホスフィニル基(好ましくは炭素原子数0〜20のホスフィニル基、例えば、−P(R)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルイミノ基((メタ)アクリルアミド基)、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、リン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
また、これらの置換基Zで挙げた各基は、上記の置換基Zがさらに置換していてもよい。
化合物ないし置換基・連結基等がアルキル基・アルキレン基、アルケニル基・アルケニレン基、アルキニル基・アルキニレン基等を含むとき、これらは環状でも鎖状でもよく、また直鎖でも分岐していてもよく、上記のように置換されていても無置換でもよい。
(バインダー)
本発明の全固体二次電池用固体電解質組成物は、バインダーを含有することも好ましい。
本発明で使用するバインダーは、有機ポリマーであれば特に限定されない。
本発明に用いることができるバインダーは、通常、電池材料の正極または負極用結着剤として用いられるバインダーが好ましく、特に制限はなく、例えば、以下に述べる樹脂からなるバインダーが好ましい。
含フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニレンジフルオリド(PVdF)、ポリビニレンジフルオリドとヘキサフルオロプロピレンの共重合物(PVdF−HFP)などが挙げられる。
炭化水素系熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水素添加スチレンブタジエンゴム(HSBR)、ブチレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどが挙げられる。
アクリル樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸イソプロピル、ポリ(メタ)アクリル酸イソブチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸ヘキシル、ポリ(メタ)アクリル酸オクチル、ポリ(メタ)アクリル酸ドデシル、ポリ(メタ)アクリル酸ステアリル、ポリ(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸ベンジル、ポリ(メタ)アクリル酸グリシジル、ポリ(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、およびこれら樹脂を構成するモノマーの共重合体などが挙げられる。
またそのほかのビニル系モノマーとの共重合体も好適に用いられる。例えばポリ(メタ)アクリル酸メチルーポリスチレン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸メチルーアクリロニトリル共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸ブチルーアクリロニトリル−スチレン共重合体などが挙げられる。
上記ラジカル重合系ポリマー以外にも重縮合系ポリマーも用いることができる。重縮合系ポリマーとはたとえば、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂、ポリエステル樹脂、などを好適に用いることができる。
重縮合系ポリマーはハードセグメント部位とソフトセグメント部位を有することが好ましい。ハードセグメント部位は分子間水素結合を形成しうる部位を示し、ソフトセグメント部位は一般的にガラス転移温度(Tg)が室温(25±5℃)以下で分子量が400以上の柔軟な部位を示す。
これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
バインダーのガラス転移温度は、上限は50℃以下が好ましく、0℃以下がさらに好ましく、−20℃以下が最も好ましい。下限は−100℃以上が好ましく、−70℃以上がさらに好ましく、−50℃以上が特に好ましい。
ガラス転移温度(Tg)は、乾燥試料を用いて、示差走査熱量計「X−DSC7000」(商品名、SII・ナノテクノロジー(株)社製)を用いて下記の条件で測定する。測定は同一の試料で2回実施し、2回目の測定結果を採用する。
測定室内の雰囲気:窒素(50mL/min)
昇温速度:5℃/min
測定開始温度:−100℃
測定終了温度:200℃
試料パン:アルミニウム製パン
測定試料の質量:5mg
Tgの算定:DSCチャートの下降開始点と下降終了点の中間温度の小数点以下を四捨五入することでTgを算定する。
本発明に用いられるバインダーを構成するポリマーの水分濃度は、100ppm(質量基準)以下が好ましく、Tgは100℃以下が好ましい。
また、本発明に用いられるバインダーを構成するポリマーは、晶析させて乾燥させてもよい、ポリマー溶液をそのまま用いてもよい。金属系触媒(ウレタン化、ポリエステル化触媒=スズ、チタン、ビスマス)は少ない方が好ましい。重合時に少なくするか、晶析で触媒を除くことで、共重合体中の金属濃度を、100ppm(質量基準)以下とすることが好ましい。
ポリマーの重合反応に用いる溶媒は、特に限定されない。なお、無機固体電解質および活物質と反応しないこと、さらにそれらを分解しない溶媒を用いることが望ましい。例えば、炭化水素系溶媒(トルエン、ヘプタン、キシレン)、エステル系溶媒(酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、エーテル系溶媒(テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジエトキシエタン)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン)、ニトリル系溶媒(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル)およびハロゲン系溶媒(ジクロロメタン、クロロホルム)などを用いることができる。
本発明に用いられるバインダーを構成するポリマーの質量平均分子量は10,000以上が好ましく、20,000以上がより好ましく、50,000以上がさらに好ましい。上限としては、1,000,000以下が好ましく、200,000以下がより好ましく、100,000以下がさらに好ましい。
本発明において、ポリマーの分子量は、特に断らない限り、質量平均分子量を意味する。
バインダーの全固体二次電池用固体電解質組成物中での含有量は、全固体二次電池に用いたときの良好な界面抵抗の低減性とその維持性を考慮すると、固形成分100質量%において、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましい。上限としては、電池特性の観点から、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
本発明では、バインダーの質量に対する、無機固体電解質と必要により含有させる電極活物質の合計質量(総量)の質量比[(無機固体電解質の質量+電極活物質の質量)/バインダーの質量]は、1,000〜1の範囲が好ましい。この比率はさらに500〜2がより好ましく、100〜10がさらに好ましい。
本発明に用いられるバインダーは粒子形状を保持している、ポリマー粒子であることも好ましい。本発明では、ポリ(メタ)アクリル酸メチル(PMMA)、ポリ(メタクリル酸メチル-メタクリル酸)共重合体(PMMA−PMA)またはポリ(メタクリル酸メチル-メタクリル酸リン酸エチル)共重合体(PMMA−PHM)が好ましく用いられる。
ここで、「ポリマー粒子」とは、後述の分散媒体に添加しても完全に溶解せず、粒子状のまま分散媒体に分散し、0.01μm超の平均粒子径を示すものを指す。
ポリマー粒子は固形を保持していれば、形状は限定されない。ポリマー粒子は単一分散であっても多分散であってもよい。ポリマー粒子は真球状であっても扁平形状であってもよく、さらに無定形であってもよい。ポリマー粒子の表面は平滑であっても凹凸形状を形成していてもよい。ポリマー粒子はコアシェル構造を取ってもよく、コア(内核)とシェル(外殻)が同様の材料で構成されていても、異なる材質で構成されていてもよい。また中空であっても良く、中空率についても限定されない。
ポリマー粒子は、界面活性剤、乳化剤または分散剤の存在下で重合する方法、分子量が増大するにしたがって結晶状に析出させる方法、によって合成することができる。
また、既存のポリマーを機械的に破砕する方法またはポリマー液を再沈殿によって微粒子状にする方法を用いてもよい。
ポリマー粒子の平均粒子径は、0.01μm〜100μmが好ましく、0.05μm〜50μmがより好ましく、0.1μm〜20μmがさらに好ましく、0.2μm〜10μmが特に好ましい。
本発明に用いられるポリマー粒子の平均粒子径は、特に断らない限り、以下に記載の測定条件および定義に基づくものとする。
ポリマー粒子を任意の溶媒(全固体二次電池用固体電解質組成物の調製に用いる分散媒体。例えば、ヘプタン)を用いて20mlサンプル瓶中で1質量%の分散液を希釈調製する。希釈後の分散試料は、1kHzの超音波を10分間照射し、その直後に試験に使用する。この分散液試料を用い、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(商品名、HORIBA社製)を用いて、温度25℃で測定用石英セルを使用してデータ取り込みを50回行い、得られた体積平均粒子径を平均粒子径とする。その他の詳細な条件等は必要によりJISZ8828:2013「粒子径解析−動的光散乱法」の記載を参照する。1水準につき5つの試料を作製して測定し、その平均値を採用する。
なお、作製された全固体二次電池からの測定は、例えば、電池を分解し電極を剥がした後、その電極材料について上記ポリマー粒子の平均粒子径の測定方法に準じてその測定を行い、あらかじめ測定していたポリマー粒子以外の粒子の平均粒子径の測定値を排除することにより行うことができる。
なお、本発明に用いられるバインダーは市販品を用いることができる。また、常法により調製することもできる。
(分散媒体)
本発明の固体電解質組成物は、分散媒体を含有することも好ましい。
分散媒体は、上記の各成分を分散させるものであればよく、例えば、各種の有機溶媒が挙げられ、メタセシス触媒(C)を溶解するものが好ましい。
分散媒体の具体例としては下記のものが挙げられる。
アルコール化合物溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、2−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ソルビトール、キシリトール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールが挙げられる。
エーテル化合物溶媒としては、アルキレングリコールアルキルエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等)、ジアルキルエーテル(ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等)、アルキルアリールエーテル(アニソール等)、環状エーテル(テトラヒドロフラン、ジオキサン(1,2−、1,3−及び1,4−の各異性体を含む)等)が挙げられる。
アミド化合物溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどが挙げられる。
アミノ化合物溶媒としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミンなどが挙げられる。
ケトン化合物溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。
芳香族化合物溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどが挙げられる。
脂肪族化合物溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどが挙げられる。
ニトリル化合物溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロピロニトリル、イソブチロニトリルなどが挙げられる。
エステル化合物溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酪酸ブチル、ペンタン酸ブチルなどが挙げられる。
非水系分散媒体としては、上記芳香族化合物溶媒、脂肪族化合物溶媒等が挙げられる。
本発明においては、中でも、アミノ化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、脂肪族化合物溶媒が好ましく、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒及び脂肪族化合物溶媒がさらに好ましい。本発明においては、硫化物系無機固体電解質を用いて、さらに上記の特定の有機溶媒を選定することが好ましい。この組み合わせを選定することにより、硫化物系無機固体電解質に対して活性な官能基が含まれないため硫化物系無機固体電解質を安定に取り扱え、好ましい。特に、硫化物系無機固体電解質と脂肪族化合物溶媒との組み合わせが好ましい。
分散媒体は常圧(1気圧)での沸点が50℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましい。上限は250℃以下であることが好ましく、220℃以下であることがさらに好ましい。
上記分散媒体は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において、固体電解質組成物中の、分散媒体の含有量は、固体電解質組成物の粘度と乾燥負荷とのバランスを考慮して適宜に設定することができる。一般的には、固体電解質組成物中、20〜99質量%が好ましく、25〜70質量%がより好ましく、30〜60質量部が特に好ましい。
(活物質)
本発明の固体電解質組成物は、周期律表第1族又は第2族に属する金属元素のイオンの挿入放出が可能な活物質を含有してもよい。活物質としては、以下に説明するが、正極活物質及び負極活物質が挙げられ、正極活物質である遷移金属酸化物、又は、負極活物質である金属酸化物が好ましい。
本発明において、活物質(正極活物質、負極活物質)を含有する固体電解質組成物を、電極層用組成物(正極層用組成物、負極層用組成物)ということがある。
−正極活物質−
本発明の固体電解質組成物が含有してもよい正極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入・放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、遷移金属酸化物、および、硫黄などのLiと複合化できる元素などでもよい。
中でも、正極活物質としては、遷移金属酸化物を用いることが好ましく、遷移金属元素M(Co、Ni、Fe、Mn、Cu、Vから選択される1種以上の元素)を有する遷移金属酸化物がより好ましい。また、この遷移金属酸化物に元素M(リチウム以外の金属周期律表の第1(Ia)族の元素、第2(IIa)族の元素、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P、Bなどの元素)を混合してもよい。混合量としては、遷移金属元素Mの量(100mol%)に対して0〜30mol%が好ましい。Li/Maのモル比が0.3〜2.2になるように混合して合成されたものが、より好ましい。
遷移金属酸化物の具体例としては、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物、(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物、(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物、(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物、(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物等が挙げられる。
(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiCoO(コバルト酸リチウム[LCO])、LiNi(ニッケル酸リチウム)LiNi0.85Co0.10Al0.05(ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム[NCA])、LiNi1/3Co1/3Mn1/3(ニッケルマンガンコバルト酸リチウム[NMC])、LiNi0.5Mn0.5(マンガンニッケル酸リチウム)が挙げられる。
(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiCoMnO4、LiFeMn、LiCuMn、LiCrMn8、LiNiMnが挙げられる。
(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物としては、例えば、LiFePO、LiFe(PO等のオリビン型リン酸鉄塩、LiFeP等のピロリン酸鉄類、LiCoPO等のリン酸コバルト類、Li(PO(リン酸バナジウムリチウム)等の単斜晶ナシコン型リン酸バナジウム塩が挙げられる。
(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物としては、例えば、LiFePOF等のフッ化リン酸鉄塩、LiMnPOF等のフッ化リン酸マンガン塩、LiCoPOF等のフッ化リン酸コバルト類が挙げられる。
(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物としては、例えば、LiFeSiO、LiMnSiO、LiCoSiO等が挙げられる。
本発明では、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物が好ましく、LCO又はNMCがより好ましい。
正極活物質の形状は特に制限されないが粒子状が好ましい。正極活物質の体積平均粒子径(球換算平均粒子径)は特に限定されない。例えば、0.1〜50μmとすることができる。正極活物質を所定の粒子径にするには、通常の粉砕機および/または分級機を用いればよい。焼成法によって得られた正極活物質は、水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液、有機溶剤にて洗浄した後使用してもよい。正極活物質粒子の体積平均粒子径(球換算平均粒子径)は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(商品名、HORIBA社製)を用いて測定することができる。
上記正極活物質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
正極活物質層を形成する場合、正極活物質層の単位面積(cm)当たりの正極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
正極活物質の、固体電解質組成物中における含有量は、特に限定されず、固形分100質量%において、10〜95質量%が好ましく、30〜90質量%がより好ましく、50〜85質量がさらに好ましく、70〜80質量%が特に好ましい。
−負極活物質−
本発明の固体電解質組成物が含有してもよい負極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入・放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、炭素質材料、酸化錫および酸化ケイ素等の金属酸化物、金属複合酸化物、リチウム単体およびリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金ならびにSn、SiおよびIn等のリチウムと合金形成可能な金属等が挙げられる。中でも、炭素質材料又はリチウム複合酸化物が信頼性の点から好ましく用いられる。また、金属複合酸化物としては、リチウムを吸蔵、放出可能であることが好ましい。その材料は、特には制限されないが、構成成分としてチタン及び/又はリチウムを含有していることが、高電流密度充放電特性の観点で好ましい。
負極活物質として用いられる炭素質材料とは、実質的に炭素からなる材料である。例えば、石油ピッチ、アセチレンブラック(AB)等のカーボンブラック、黒鉛(天然黒鉛、気相成長黒鉛等の人造黒鉛等)ならびにPAN(ポリアクリロニトリル)系の樹脂およびフルフリルアルコール樹脂等の各種の合成樹脂を焼成した炭素質材料を挙げることができる。さらに、PAN系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、脱水PVA(ポリビニルアルコール)系炭素繊維、リグニン炭素繊維、ガラス状炭素繊維、活性炭素繊維等の各種炭素繊維類、メソフェーズ微小球体、グラファイトウィスカーおよび平板状の黒鉛等を挙げることもできる。
負極活物質として適用される金属酸化物及び金属複合酸化物としては、特に非晶質酸化物が好ましく、さらに金属元素と周期律表第16族の元素との反応生成物であるカルコゲナイトも好ましく用いられる。ここでいう非晶質とは、CuKα線を用いたX線回折法で、2θ値で20°〜40°の領域に頂点を有するブロードな散乱帯を有するものを意味し、結晶性の回折線を有してもよい。2θ値で40°以上70°以下に見られる結晶性の回折線の内最も強い強度が、2θ値で20°以上40°以下に見られるブロードな散乱帯の頂点の回折線強度の100倍以下であるのが好ましく、5倍以下であるのがより好ましく、結晶性の回折線を有さないことが特に好ましい。
上記非晶質酸化物及びカルコゲナイドからなる化合物群の中でも、半金属元素の非晶質酸化物、及びカルコゲナイドがより好ましく、周期律表第13(IIIB)族〜15(VB)族の元素、Al、Ga、Si、Sn、Ge、Pb、Sb、Biの一種単独あるいはそれらの2種以上の組み合わせからなる酸化物、及びカルコゲナイドが特に好ましい。好ましい非晶質酸化物及びカルコゲナイドの具体例としては、例えば、Ga、SiO、GeO、SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Pb、Sb、Sb、SbBi、SbSi、Bi、SnSiO、GeS、SnS、SnS、PbS、PbS、Sb、Sb、SnSiSが好ましく挙げられる。また、これらは、酸化リチウムとの複合酸化物、例えば、LiSnOであってもよい。
負極活物質はチタン原子を含有することも好ましい。より具体的にはLiTi12(チタン酸リチウム[LTO])がリチウムイオンの吸蔵放出時の体積変動が小さいことから急速充放電特性に優れ、電極の劣化が抑制されリチウムイオン二次電池の寿命向上が可能となる点で好ましい。
本発明においては、ハードカーボン又は黒鉛が好ましく用いられ、黒鉛がより好ましく用いられる。なお、本発明において、上記炭素質材料は1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
負極活物質の形状は特に制限されないが粒子状が好ましい。負極活物質の平均粒子径は、0.1〜60μmが好ましい。所定の粒子径にするには、通常の粉砕機および/または分級機が用いられる。例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、衛星ボールミル、遊星ボールミル、旋回気流型ジェットミルおよび篩などが好適に用いられる。粉砕時には水、あるいはメタノール等の有機溶媒を共存させた湿式粉砕も必要に応じて行うことができる。所望の粒子径とするためには分級を行うことが好ましい。分級方法としては特に限定はなく、篩、風力分級機などを必要に応じて用いることができる。分級は乾式、湿式ともに用いることができる。負極活物質粒子の平均粒子径は、前述の正極活物質の体積平均粒子径の測定方法と同様の方法により測定することができる。
上記焼成法により得られた化合物の化学式は、測定方法として誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法、簡便法として、焼成前後の粉体の質量差から算出できる。
Sn、Si又はGeを中心とする非晶質酸化物負極活物質に併せて用いることができる負極活物質としては、リチウムイオン又はリチウム金属を吸蔵・放出できる炭素材料、リチウム、リチウム合金及びリチウムと合金可能な金属が好適に挙げられる。
本発明においては、Si系の負極を適用することも好ましい。一般的にSi負極は、炭素負極(黒鉛、アセチレンブラックなど)に比べて、より多くのLiイオンを吸蔵できる。すなわち、単位重量あたりのLiイオンの吸蔵量が増加する。そのため、電池容量を大きくすることができる。その結果、バッテリー駆動時間を長くすることができるという利点がある。
上記負極活物質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
負極活物質層を形成する場合、負極活物質層の単位面積(cm)当たりの負極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
負極活物質の、固体電解質組成物中における含有量は、特に限定されず、固形分100質量%において、10〜80質量%であることが好ましく、20〜80質量%がより好ましく、30〜80質量%であることがより好ましく、40〜75質量%であることがさらに好ましい。
(導電助剤)
本発明の固体電解質組成物は、活物質の電子導電性を向上させる等のために用いられる導電助剤を適宜必要に応じて含有してもよい。導電助剤としては、一般的な導電助剤を用いることができる。例えば、電子伝導性材料である、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック類、ニードルコークスなどの無定形炭素、気相成長炭素繊維およびカーボンナノチューブなどの炭素繊維類、グラフェンおよびフラーレンなどの炭素質材料であってもよいし、銅、ニッケルなどの金属粉、金属繊維でも良く、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフェニレン誘導体などの導電性高分子を用いてもよい。またこれらの内1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
本発明の固体電解質組成物が導電助剤を含む場合、固体電解質組成物中の導電助剤の含有量は、0〜10質量%が好ましい。
(リチウム塩)
本発明の固体電解質組成物は、リチウム塩(支持電解質)を含有することも好ましい。
リチウム塩としては、通常この種の製品に用いられるリチウム塩が好ましく、特に制限はなく、例えば、上記バインダー粒子で説明したリチウム塩が挙げられる。
このリチウム塩は、上記バインダー粒子(バインダー粒子を形成する上記ポリマー)に内包されていない(固体電解質層組成物中に例えば単独で存在している)点で、バインダー粒子に内包されているリチウム塩とは異なる。
リチウム塩の含有量は、固体電解質100質量部に対して、0質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。上限としては、50質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
(分散剤)
本発明の固体電解質組成物は、分散剤を含有してもよい。分散剤を添加することで電極活物質及び無機固体電解質のいずれかの濃度が高い場合においてもその凝集を抑制し、均一な活物質層及び固体電解質層を形成することができる。
分散剤としては、全固体二次電池に通常使用されるものを適宜選定して用いることができる。例えば、分子量200以上3000未満の低分子又はオリゴマーからなり、官能基群(I)で示される官能基と、炭素数8以上のアルキル基又は炭素数10以上のアリール基を同一分子内に含有するものが好ましい。
官能基群(I):酸性基、塩基性窒素原子を有する基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、アルコキシシリル基、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、シアノ基、メルカプト基及びヒドロキシ基(酸性基、塩基性窒素原子を有する基、アルコキシシリル基、シアノ基、メルカプト基及びヒドロキシ基が好ましく、カルボキシ基、スルホン酸基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基がより好ましい。)
本発明の全固体二次電池において、分散剤を含む層がある場合、層中の分散剤の含有量は、0.2〜10質量%が好ましい。
(固体電解質組成物の調製)
本発明の固体電解質組成物は、無機固体電解質(A)、化合物(B)及びメタセシス触媒(C)と、必要により活物質及び分散媒体等の他の成分とを、混合又は添加することにより、調製できる。例えば、各種の混合機を用いて上記成分を混合することにより、製造できる。混合条件としては、特に限定されないが、例えば、ボールミル、ビーズミル、プラネタリミキサ―、ブレードミキサ―、ロールミル、ニーダー、ディスクミルが挙げられる。
固体電解質組成物の製造方法においては、メタセシス触媒を投入するタイミングは、混合(例えばボールミル)を行う前でもよいし、混合(例えばボールミル)実施後のスラリー調製時でもよい。
(メタセシス反応)
非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物(B)は、メタセシス触媒(C)存在下でメタセシス反応が進行することによりポリマー化される。
特に、化合物(B)が1分子中に2以上の非芳香族性不飽和結合を有する場合には、クロスメタセシス反応が進行することにより、化合物(B)の非芳香族性不飽和結合間で、新たな非芳香族性不飽和結合が形成される。このため、本発明の固体電解質組成物は、クロスメタセシス反応(架橋)が進行することにより網目状のポリマーが形成されてゲル化し、クロスメタセシス反応(架橋)が完了することで硬化すると推定される。
具体的には、前述の式(1a)で表される化合物(B)のクロスメタセシス反応(以下、単にメタセシス反応と称す。)が進行することにより、下記一般式(3)で表される構造単位を有する化合物(B2)が生成すると考えられる。下記一般式(3)で表される構造単位は、非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する。
Figure 2017130832
上記式中、Zは下記一般式(3−1)を表し、Zは下記一般式(3−2)を表す。Rは水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。Lは単結合または2価の連結基を示す。nおよびmは1〜20の整数であり、lは0〜20の整数である。Xはn+m+l価の有機基を示す。
Figure 2017130832
上記式中、RおよびRは水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアリール基を示す。LおよびLは単結合または2価の連結基を示す。*はXとの結合部位を示す。
上記一般式(3)中のRおよびRにおけるアルキル基、アルケニル基およびアリール基ならびにRにおけるアルキル基およびアリール基は、前述の一般式(1a)中のR13およびR23におけるアルキル基、アルケニル基およびアリール基ならびにR31におけるアルキル基およびアリール基と同義である。
また、上記一般式(3)におけるL、LおよびL、n、mおよびl、ならびに、Xは、前述の一般式(1a)におけるL11、L21およびL31、n、mおよびl、ならびに、Xと同義である。
メタセシス反応は、組成物を調製する際のボールミルを用いた粉砕工程、組成物調製とは別の加熱工程、組成物を塗布したシートを加熱する工程のいずれで起こってもよいが、組成物を塗布して作製した固体電解質含有シートの状態で反応が完了していることが好ましい。
化合物(B)のメタセシス触媒(C)を用いた反応条件は、メタセシス反応における常法が用いられるが、例えば、メタセシス反応を完了させる観点からは、反応温度は50℃〜180℃が好ましく、50℃〜120℃がより好ましく、反応時間は0.1時間〜2時間が好ましく、0.5時間〜1時間がより好ましい。
全固体二次電池および全固体二次電池用シート中において、下記式(5)により算出される化合物(B2)の不飽和結合率は、下記式(6)を満たすことが好ましい。
化合物(B2)中の非芳香族性炭素−炭素不飽和結合の数を、2重結合の場合は1、3重結合の場合は2とし、下記式(5)により不飽和結合率が算出される。
不飽和結合率=(化合物(B2)中の非芳香族性炭素−炭素不飽和結合の数の総和)/(化合物(B2)中の全ての炭素−炭素結合の数の総和)×100 式(5)
1%<不飽和結合率<90% 式(6)
本発明においては、化合物(B2)の不飽和結合率は、2%<不飽和結合率<50%がより好ましく、3%<不飽和結合率<20%がより好ましい。
化合物(B2)における一般式(3)で表される構造単位としては、具体的には、以下の構造単位が好ましく挙げられるが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。なお、下記構造式において「**」を付した箇所が、一般式(3−1)または(3−2)で表される構造単位における末端部位に相当する。また、( )又は[ ]における下付きの数はモル%を表す。ただし、[ ]内における( )下付きの数は繰り返し単位数を示す。
Figure 2017130832
Figure 2017130832
Figure 2017130832
[固体電解質含有シート]
本発明の固体電解質含有シート(全固体二次電池用固体電解質シート)は、周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と、前述の一般式(3)で表される、非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する構造単位を有してなる化合物(B2)とメタセシス触媒(C)残留物としてRu、Moおよび/またはW金属10ppm以上(好ましくは、10,000ppm以下)とを含有する。
メタセシス架橋前の触媒量、およびメタセシス架橋後の触媒残基量を検出する方法としては、Ru、Mo、W金属の含有元素量から求める方法が挙げられる。Ru、Mo、W金属の含有元素量は、例えば、X線光電子分光法、オージェ電子分光法、ICP(Inductively Coupled Plasma)−質量分析法、ICP−発光分析法、原子吸光分析法、蛍光X線分析法、中性子放射化分析法などにより測定することができる。
メタセシス触媒(C)残留物とは、メタセシス触媒(C)由来の金属元素を含む化合物または部分構造を意味する。メタセシス触媒(C)残留物は、金属元素(Ru、Moおよび/またはW金属)を含有する限りどのような構造で存在していても構わないが、例えば、化合物(B2)中に組み込まれたり、カルベン金属錯体として存在していることが想定される。
化合物(B2)は、1種又は2種以上含有されていてもよい。
化合物(B2)の固体電解質含有シート中での含有量は、電池性能と、界面抵抗の低減および維持効果の両立を考慮したとき、全固形成分100質量%において、0.05質量%〜30質量%であることが好ましく、0.1質量%〜20質量%であることがより好ましく、1質量%〜10質量%であることがさらに好ましい。
[全固体二次電池用シート]
本発明の固体電解質含有シートは、全固体二次電池に好適に用いることができ、その用途に応じて種々の態様を含む。例えば、固体電解質層に好ましく用いられるシート(全固体二次電池用固体電解質シートともいう)、電極又は電極と固体電解質層との積層体に好ましく用いられるシート(全固体二次電池用電極シート)等が挙げられる。本発明において、これら各種のシートをまとめて全固体二次電池用シートということがある。
全固体二次電池用シートは、基材上に固体電解質層又は活物質層(電極層)を有するシートである。この全固体二次電池用シートは、基材と固体電解質層又は活物質層を有していれば、他の層を有してもよいが、活物質層を有するものは後述する全固体二次電池用電極シートに分類する。他の層としては、例えば、保護層、集電体、コート層(集電体、固体電解質層、活物質)等が挙げられる。
全固体二次電池用固体電解質シートとして、例えば、本発明の全固体二次電池の固体電解質層を形成するための、基材上に、固体電解質層と、必要により保護層とをこの順で有するシートが挙げられる。
基材としては、固体電解質層を支持できるものであれば特に限定されず、上記集電体で説明した材料、有機材料、無機材料等のシート体(板状体)等が挙げられる。有機材料としては、各種ポリマー等が挙げられ、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロース等が挙げられる。無機材料としては、例えば、ガラス、セラミック等が挙げられる。
全固体二次電池用シートの固体電解質層の構成、層厚は、後述の、本発明の全固体二次電池において説明する固体電解質層の構成、層厚と同じである。
このシートは、本発明の固体電解質組成物を基材上(他の層を介していてもよい)に製膜(塗布乾燥)して、基材上に固体電解質層を形成することにより、得られる。
ここで、本発明の固体電解質組成物は、上記の方法によって、調製できる。
本発明の全固体二次電池用電極シート(単に「本発明の電極シート」ともいう。)は、本発明の全固体二次電池の活物質層を形成するための、集電体としての金属箔上に活物質層を有する電極シートである。この電極シートは、通常、集電体及び活物質層を有するシートであるが、集電体、活物質層及び固体電解質層をこの順に有する態様、並びに、集電体、活物質層、固体電解質層及び活物質層をこの順に有する態様も含まれる。
電極シートを構成する各層の構成、層厚は、後述の、本発明の全固体二次電池において説明する各層の構成、層厚と同じである。
電極シートは、本発明の、活物質を含有する固体電解質組成物を金属箔上に製膜(塗布乾燥)して、金属箔上に活物質層を形成することにより、得られる。活物質を含有する固体電解質組成物を調製する方法は、活物質を用いること以外は、上記固体電解質組成物を調製する方法と同じである。
本発明の固体電解質組成物で形成された活物質層及び/又は固体電解質層は、好ましくは、含有する成分種及びその含有量比について、化合物(B)を化合物(B2)に読み替える以外は、固体電解質組成物の固形分におけるものと同じである。
[全固体二次電池]
本発明の全固体二次電池は、正極と、この正極に対向する負極と、正極及び負極の間の固体電解質層とを有する。正極は、正極集電体上に正極活物質層を有する。負極は、負極集電体上に負極活物質層を有する。
負極活物質層、正極活物質層及び固体電解質層の少なくとも1つの層は、本発明の固体電解質組成物で形成されることが好ましく、中でも、すべての層が本発明の固体電解質組成物で形成されることがより好ましい。
固体電解質組成物で形成された活物質層又は固体電解質層は、好ましくは、含有する成分種及びその含有量比について、上記全固体二次電池用シートにおけるものと同じである。
以下に、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る全固体二次電池(リチウムイオン二次電池)を模式化して示す断面図である。本実施形態の全固体二次電池10は、負極側からみて、負極集電体1、負極活物質層2、固体電解質層3、正極活物質層4、正極集電体5を、この順に積層してなる構造を有しており、隣接する層同士は直に接触している。このような構造を採用することで、充電時には、負極側に電子(e)が供給され、そこにリチウムイオン(Li)が蓄積される。一方、放電時には、負極に蓄積されたリチウムイオン(Li)が正極側に戻され、作動部位6に電子を供給することができる。図示した全固体二次電池の例では、作動部位6に電球をモデル的に採用しており、放電によりこれが点灯するようにされている。
〔正極活物質層、固体電解質層、負極活物質層〕
全固体二次電池10においては、正極活物質層、固体電解質層及び負極活物質層のいずれかが本発明の固体電解質組成物で形成されている。
すなわち、固体電解質層3が本発明の固体電解質組成物で形成されている場合、固体電解質層3は、無機固体電解質と、化合物(B2)と、メタセシス触媒残留物とを含む。固体電解質層は、通常、正極活物質及び/又は負極活物質を含まない。固体電解質層3は、無機固体電解質、隣接する活物質層中に含まれる活物質等の固体粒子の間に化合物(B2)が存在しており、これにより、固体粒子間の界面抵抗が低減され、結着性が高くなっている。
正極活物質層4及び/又は負極活物質層2が本発明の固体電解質組成物で形成されている場合、正極活物質層4及び負極活物質層2は、それぞれ、正極活物質又は負極活物質を含み、さらに、無機固体電解質と、化合物(B2)と、メタセシス触媒残留物とを含む。活物質層が無機固体電解質を含有するとイオン伝導度を向上させることができる。活物質層は、固体粒子間等に、化合物(B2)が存在しており、これにより、これらの界面抵抗が低減され、結着性が高くなっている。
正極活物質層4、固体電解質層3及び負極活物質層2が含有する無機固体電解質及び含有してもよい化合物(B2)とメタセシス触媒残留物は、それぞれ、互いに同種であっても異種であってもよい。
本発明において、正極活物質層及び負極活物質層のいずれか、又は、両方を合わせて、単に、活物質層又は電極活物質層と称することがある。また、正極活物質及び負極活物質のいずれか、又は、両方を合わせて、単に、活物質又は電極活物質と称することがある。
本発明において、上記化合物(B)とメタセシス触媒と、無機固体電解質および活物質等の固体粒子とを含有する固体電解質組成物を用いて作製される正極活物質層、固体電解質層、負極活物質層の各層は、固体粒子間の結着性を向上することができ、その結果、全固体二次電池における良好なサイクル特性をも実現できる。
その作用、メカニズムは定かではないが、次のように、考えられる。
すなわち、上記化合物(B)とメタセシス触媒を無機固体電解質等の固体粒子が分散された状態で加熱硬化(メタセシス反応)させることにより、三次元に架橋された化合物(B)の重合体、すなわち化合物(B2)が形成される。化合物(B2)の三次元的な網目構造に、固体粒子が絡み取られるように存在するため、三次元架橋されたポリマーと固体粒子を分散させた場合や、線状のポリマーが形成される場合に比べて、固体粒子間の結着性が向上するものと考えられる。
また、充放電の繰返しに対しても、固体粒子が三次元に架橋された化合物(B2)中に存在するため、固体粒子間の接触が維持され、固体粒子間の界面抵抗の上昇が抑制されると考えられる。このため、全固体二次電池は優れたサイクル特性を示すと考えられる。特に、充放電により膨張収縮する活物質の粒子を含む場合に、固体粒子間の界面抵抗の上昇がより効果的に抑制され、全固体二次電池はより優れたサイクル特性を示すと考えられる。
正極活物質層4、固体電解質層3、負極活物質層2の厚さは特に限定されない。一般的な電池の寸法を考慮すると、上記各層の厚さは10〜1,000μmが好ましく、20μm以上500μm未満がより好ましい。本発明の全固体二次電池においては、正極活物質層4、固体電解質層3及び負極活物質層2の少なくとも1層の厚さが、50μm以上500μm未満であることがさらに好ましい。
〔集電体(金属箔)〕
正極集電体5及び負極集電体1は、電子伝導体が好ましい。
本発明において、正極集電体及び負極集電体のいずれか、又は、両方を合わせて、単に、集電体と称することがある。
正極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼(SUS)、ニッケル、チタンなどの他に、アルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたもの(薄膜を形成したもの)が好ましく、その中でも、アルミニウム、アルミニウム合金がより好ましい。
負極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、銅、銅合金、ステンレス鋼(SUS)、ニッケル、チタンなどの他に、アルミニウム、銅、銅合金、ステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたものが好ましく、アルミニウム、銅、銅合金、ステンレス鋼がより好ましい。
集電体の形状は、通常フィルムシート状のものが使用されるが、ネット、パンチされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体なども用いることができる。
集電体の厚みは、特に限定されないが、1〜500μmが好ましい。また、集電体表面は、表面処理により凹凸を付けることも好ましい。
本発明において、負極集電体、負極活物質層、固体電解質層、正極活物質層及び正極集電体の各層の間又はその外側には、機能性の層や部材等を適宜介在ないし配設してもよい。また、各層は単層で構成されていても、複層で構成されていてもよい。
〔筐体〕
上記の各層を配置して全固体二次電池の基本構造を作製することができる。用途によってはこのまま全固体二次電池として使用してもよいが、乾電池の形態とするためにはさらに適当な筐体に封入して用いる。筐体は、金属性のものであっても、樹脂(プラスチック)製のものであってもよい。金属性のものを用いる場合には、例えば、アルミニウム合金や、ステンレス鋼製のものを挙げることができる。金属性の筐体は、正極側の筐体と負極側の筐体に分けて、それぞれ正極集電体及び負極集電体と電気的に接続させることが好ましい。正極側の筐体と負極側の筐体とは、短絡防止用のガスケットを介して接合され、一体化されることが好ましい。
[固体電解質含有シートの製造]
本発明においては、非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物(B)とメタセシス触媒(C)を含有する固体電解質組成物が塗布されたシートが、加熱されることで非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物がメタセシス反応し、非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物(B2)とメタセシス触媒残留物を含有する固体電解質含有シートが形成される。この化合物(B2)が形成する網目状の架橋体に固体電解質および活物質等の固体粒子が絡み取られた構造を形成し、最終的に硬化されることが好ましい。
上記観点から、本発明の固体電解質含有シートの製造方法としては、以下第1の態様および第2の態様が好ましく挙げられる。
i)第1の態様
本発明の固体電解質組成物を基材上に塗布して塗工シートを得る工程(1a)と、
塗工シートを50℃以上に加熱して、非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物(B)のメタセシス反応により架橋硬化させる工程(2a)と
を含む固体電解質含有シートの製造方法。
ii)第2の態様
本発明の固体電解質組成物を50℃以上に加熱して、非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物のメタセシス反応開始条件下とする工程(1b)と、
工程(1b)で得られた組成物を基材上に塗布して、組成物を架橋硬化さる工程(2b)と
を含む固体電解質含有シートの製造方法。
工程(2a)、(1b)においては、50℃以上に加熱することにより、化合物(B)のメタセシス反応開始条件下となる。その後、メタセシス反応(架橋)が進行することで、本発明の固体電解質組成物はゲル状となる。さらに反応(架橋)が進行することで架橋硬化される。
ここで、メタセシス反応開始条件下とは、メタセシス反応の開始が可能な条件のことを言う。また、架橋硬化とは、メタセシス反応(架橋)が十分に進行することにより、ゲル状から硬化物へと硬化されることを言う。
第2の態様は、工程(1b)で本発明の固体電解質組成物がメタセシス反応開始条件下とされ、メタセシス反応の進行により組成物が増粘される。そのため、工程(1b)で得られた組成物を工程(2b)に適用する時間を調整することで、基材上への組成物の塗布工程を容易にすることも可能である。
上記点から、工程(2a)における加熱の条件は、温度は50℃〜180℃が好ましく、80℃〜160℃がより好ましく、加熱時間は0.1時間〜2時間が好ましく、0.5時間〜1時間がより好ましい。また、工程(1b)における加熱の条件は、温度は50℃〜100℃が好ましく、50℃〜80℃がより好ましく、加熱時間は0.1時間〜1時間が好ましく、0.1時間〜0.5時間がより好ましい。
また、工程(2b)では、基材上に塗布した後、加熱することにより反応を促進させ、硬化させることも好ましい。この際の加熱の条件は、温度は50℃〜180℃が好ましく、80℃〜160℃がより好ましく、加熱時間は0.1時間〜2時間が好ましく、0.5時間〜1時間がより好ましい。
上記態様により、基材と固体電解質層を含有するシートである全固体二次電池用固体電解質シートを作製することができる。
その他、塗布等の工程については、下記全固体二次電池の製造に記載の方法を使用することができる。
[全固体二次電池及び全固体二次電池用シートの製造]
全固体二次電池用電極シートの製造は、上記固体電解質含有シートの製造方法により行うことができる。
すなわち、本発明の固体電解質組成物が活物質を含有する場合には、上記工程(1a)及び工程(2b)においては、基材ではなく集電体上に塗布することが好ましい。この場合には、固体電解質層と活物質層を含有するシートである全固体二次電池用電極シートを作製することができる。
また、全固体二次電池の製造は、上記固体電解質含有シートの製造方法を含む以外は、常法によって行うことができる。具体的には、全固体二次電池及び全固体二次電池用電極シートは、本発明の固体電解質組成物等を用いて、上記の各層を形成することにより、製造できる。なお、正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層のいずれかの層が、上記固体電解質含有シートの製造方法により作製されればよく、その他の層は、本発明でない固体電解質組成物を用いて、常法により作製されてもよい。以下詳述する。
本発明の全固体二次電池は、本発明の固体電解質組成物等を、集電体となる金属箔上に塗布し、塗膜を形成(製膜)する工程を含む(介する)方法により、製造できる。
例えば、正極集電体である金属箔上に、正極用材料(正極層用組成物)として、正極活物質を含有する固体電解質組成物を塗布して正極活物質層を形成し、全固体二次電池用正極シートを作製する。次いで、この正極活物質層の上に、固体電解質層を形成するための固体電解質組成物を塗布して、固体電解質層を形成する。さらに、固体電解質層の上に、負極用材料(負極層用組成物)として、負極活物質を含有する固体電解質組成物を塗布して、負極活物質層を形成する。負極活物質層の上に、負極集電体(金属箔)を重ねることにより、正極活物質層と負極活物質層の間に固体電解質層が挟まれた構造の全固体二次電池を得ることができる。必要によりこれを筐体に封入して所望の全固体二次電池とすることができる。
また、各層の形成方法を逆にして、負極集電体上に、負極活物質層、固体電解質層及び正極活物質層を形成し、正極集電体を重ねて、全固体二次電池を製造することもできる。
別の方法として、次の方法が挙げられる。すなわち、上記のようにして、全固体二次電池用正極シートを作製する。また、負極集電体である金属箔上に、負極用材料(負極層用組成物)として、負極活物質を含有する固体電解質組成物を塗布して負極活物質層を形成し、全固体二次電池用負極シートを作製する。次いで、これらシートのいずれか一方の活物質層の上に、上記のようにして、固体電解質層を形成する。さらに、固体電解質層の上に、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートの他方を、固体電解質層と活物質層とが接するように積層する。このようにして、全固体二次電池を製造することができる。
また別の方法として、次の方法が挙げられる。すなわち、上記のようにして、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートを作製する。また、これとは別に、固体電解質組成物を基材上に塗布して、固体電解質層からなる全固体二次電池用固体電解質シートを作製する。さらに、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートで、基材から剥がした固体電解質層を挟むように積層する。このようにして、全固体二次電池を製造することができる。
上記の形成法の組み合わせによっても全固体二次電池を製造することができる。例えば、上記のようにして、全固体二次電池用正極シート、全固体二次電池用負極シート及び全固体二次電池用固体電解質シートをそれぞれ作製する。次いで、全固体二次電池用負極シート上に、基材から剥がした固体電解質層を積層した後に、上記全固体二次電池用正極シートと張り合わせることで全固体二次電池を製造することができる。この方法において、固体電解質層を全固体二次電池用正極シートに積層し、全固体二次電池用負極シートと張り合わせることもできる。
(各層の形成(成膜))
固体電解質組成物の塗布方法は、特に限定されず、適宜に選択できる。例えば、塗布(好ましくは湿式塗布)、スプレー塗布、スピンコート塗布、ディップコート、スリット塗布、ストライプ塗布、バーコート塗布が挙げられる。
このとき、固体電解質組成物は、それぞれ塗布した後に乾燥処理を施してもよいし、重層塗布した後に乾燥処理をしてもよい。乾燥温度は特に限定されない。下限は30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。上限は、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、200℃以下がさらに好ましい。このような温度範囲で加熱することで、分散媒体を除去し、固体状態にすることができる。また、温度を高くしすぎず、全固体二次電池の各部材を損傷せずに済むため好ましい。これにより、全固体二次電池において、優れた総合性能を示し、かつ良好な結着性と、非加圧でも良好なイオン伝導度を得ることができる。
塗布した固体電解質組成物、又は、全固体二次電池を作製した後に、各層又は全固体二次電池を加圧することが好ましい。また、各層を積層した状態で加圧することも好ましい。加圧方法としては油圧シリンダープレス機等が挙げられる。加圧力としては、特に限定されず、一般的には50〜1500MPaの範囲であることが好ましい。
また、塗布した固体電解質組成物は、加圧と同時に加熱してもよい。加熱温度としては、特に限定されず、一般的には30〜300℃の範囲である。無機固体電解質のガラス転移温度よりも高い温度でプレスすることもできる。
加圧は塗布溶媒又は分散媒体をあらかじめ乾燥させた状態で行ってもよいし、溶媒又は分散媒体が残存している状態で行ってもよい。
加圧中の雰囲気としては、特に限定されず、大気下、乾燥空気下(露点−20℃以下)、不活性ガス中(例えばアルゴンガス中、ヘリウムガス中、窒素ガス中)などいずれでもよい。
プレス時間は短時間(例えば数時間以内)で高い圧力をかけてもよいし、長時間(1日以上)かけて中程度の圧力をかけてもよい。全固体二次電池用シート以外、例えば全固体二次電池の場合には、中程度の圧力をかけ続けるために、全固体二次電池の拘束具(ネジ締め圧等)を用いることもできる。
プレス圧はシート面等の被圧部に対して均一であっても異なる圧であってもよい。
プレス圧は被圧部の面積や膜厚に応じて変化させることができる。また同一部位を段階的に異なる圧力で変えることもできる。
プレス面は平滑であっても粗面化されていてもよい。
(初期化)
上記のようにして製造した全固体二次電池は、製造後又は使用前に初期化を行うことが好ましい。初期化は、特に限定されず、例えば、プレス圧を高めた状態で初充放電を行い、その後、全固体二次電池の一般使用圧力になるまで圧力を開放することにより、行うことができる。
〔全固体二次電池の用途〕
本発明の全固体二次電池は種々の用途に適用することができる。適用態様には特に限定はないが、例えば、電子機器に搭載する場合、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、メモリーカードなどが挙げられる。その他民生用として、自動車、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)などが挙げられる。さらに、各種軍需用、宇宙用として用いることができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
中でも、高容量かつ高レート放電特性が要求されるアプリケーションに適用されることが好ましい。例えば、今後大容量化が予想される蓄電設備等においては高い安全性が必須となりさらに電池性能の両立が要求される。また、電気自動車などは高容量の二次電池を搭載し、家庭で日々充電が行われる用途が想定され、過充電時に対して一層の安全性が求められる。本発明によれば、このような使用形態に好適に対応してその優れた効果を発揮することができる。
全固体二次電池とは、正極、負極、電解質がともに固体で構成された二次電池をいう。換言すれば、電解質としてカーボネート系の溶媒を用いるような電解液型の二次電池とは区別される。このなかで、本発明は無機全固体二次電池を前提とする。全固体二次電池には、電解質としてポリエチレンオキサイド等の高分子化合物を用いる有機(高分子)全固体二次電池と、上記のLi−P−SやLLT、LLZ等を用いる無機全固体二次電池とに区分される。なお、無機全固体二次電池に高分子化合物を適用することは妨げられず、正極活物質、負極活物質、無機固体電解質粒子のバインダー粒子として高分子化合物を適用することができる。
無機固体電解質とは、上述した、ポリエチレンオキサイド等の高分子化合物をイオン伝導媒体とする電解質(高分子電解質)とは区別されるものであり、無機化合物がイオン伝導媒体となるものである。具体例としては、上記のLi−P−SやLLT、LLZが挙げられる。無機固体電解質は、それ自体が陽イオン(Liイオン)を放出するものではなく、イオンの輸送機能を示すものである。これに対して、電解液ないし固体電解質層に添加して陽イオン(Liイオン)を放出するイオンの供給源となる材料を電解質と呼ぶことがあるが、上記のイオン輸送材料としての電解質と区別するときにはこれを「電解質塩」又は「支持電解質」と呼ぶ。電解質塩としては例えばLiTFSI(リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド)が挙げられる。
本発明において「組成物」というときには、2種以上の成分が均一に混合された混合物を意味する。ただし、実質的に均一性が維持されていればよく、所望の効果を奏する範囲で、一部において凝集や偏在が生じていてもよい。また、特に固体電解質組成物というときには、基本的に固体電解質層等を形成するための材料となる組成物(典型的にはペースト状)を指し、上記組成物を硬化して形成した電解質層等はこれに含まれないものとする。
以下に、実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明する。なお、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。以下の実施例において組成を表す「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、「室温」は25℃を意味する。
(硫化物系無機固体電解質LPSの合成)
アルゴン雰囲気下(露点−70℃)のグローブボックス内で、硫化リチウム(LiS、Aldrich社製、純度>99.98%)2.42g及び五硫化二リン(P、Aldrich社製、純度>99%)3.90gをそれぞれ秤量し、メノウ製乳鉢に投入し、メノウ製乳棒を用いて、5分間混合した。LiS及びPの混合比は、モル比でLiS:P=75:25とした。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを66g投入し、上記の硫化リチウムと五硫化二リンの混合物全量を投入し、アルゴン雰囲気下で容器を完全に密閉した。フリッチュ社製遊星ボールミルP−7(商品名、フリッチュ社製)に容器をセットし、温度25℃で、回転数510rpmで20時間メカニカルミリングを行うことで、黄色粉体の硫化物系無機固体電解質(Li/P/Sガラス、LPSと表記することがある。)6.20gを得た。
[実施例1]
<固体電解質組成物の調製例>
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、無機固体電解質9.0g、化合物(B)0.9g、分散媒18gを投入した後に、フリッチュ社製遊星ボールミルP−7に容器をセットし、回転数300rpmで2時間混合した。これに触媒0.18gを加え、さらに回転数150rpmで5分間混合を続け、各固体電解質組成物S−1〜S−10、T−1およびT−2を調製した。
なお、固体電解質組成物が活物質を含有する場合は、メタセシス触媒の投入と同じタイミングで活物質を投入して混合し、固体電解質組成物を調製した。
下記表1に、各固体電解質組成物の成分と配合質量比を示す。
Figure 2017130832
<表の注釈>
LLT:Li0.5La0.5TiO(豊島製作所社製)
LPS:上記で合成したLi−P−S系ガラス
LLZ:LiLaZr12
B−1:ポリメタクリル酸アリル(Mw3200)
B−2:アリルトリエトキシシランのゾルゲル体(オクタアリルシルセスキオキサン50質量%含有)(Mw2100)
B−3:ジペンタエリスリトールのコハク酸とリノレン酸の3:3変性体(Mw3500)
B−4:ジペンタエリスリトールのデオキシコール酸とウンデセン酸の2:4変性体(Mw2890)
B−5:オクタメタクリロイル置換シルセスキオキサン(ハイブリッドプラスティクス(株)社製 製品番号MA0735、Mw2560)
シクロオレフィンポリマー:ゼオネックス330R(日本ゼオン社製、Mw50000、下記式(5)により算出される化合物中の不飽和結合率は1%未満)
C−1:Grubbs−2nd(アルドリッチ社製、製品番号569747)
C−2:Hoveyda−Grubbs−2nd(アルドリッチ社製、製品番号569755)
C−3:1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン−[2−(イソプロポキシ)−5−N,N−ジメチルアミノスルホニルフェニル]メチレンルテニウム(II)=ジクロリド(和光純薬社製、製品番号023−17481)
C−4:ジメチル 2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(熱ラジカル重合開始剤、和光純薬社製、V−601)
LCO:LiCoO コバルト酸リチウム
NCA:LiNi0.85Co0.10Al0.05 ニッケルコバルトアルミニウムリチウム
AB:アセチレンブラック
Figure 2017130832
上記構造式中、*は結合部位を示す。
<固体電解質含有シートの作製>
上記で調製した固体電解質組成物を集電体であるステンレス鋼(SUS)箔上に塗工した。
表2に記載の温度および時間でメタセシス架橋(硬化処理)を行うことで組成物を硬化し、分散媒体を乾燥させ、各固体電解質含有シートNo.101〜110、c11およびc12を作製した。
−不飽和結合率−
硬化後の化合物中の非芳香族性炭素−炭素不飽和結合の数を、2重結合の場合は1、3重結合の場合は2とし、下記式(5)により不飽和結合率(%)を算出した。不飽和結合率を、下記表2にまとめて記載する。
不飽和結合率=(硬化後の化合物中の非芳香族性炭素−炭素不飽和結合の数の総和)/(硬化後の化合物中の全ての炭素−炭素結合の数の総和)×100 式(5)
[試験例1] 結着性試験
得られた固体電解質含有シートについて180°ピール強度試験(JIS Z0237−2009)を行った。
固体電解質含有シートの固体電解質組成物が硬化された面に粘着テープ(幅24mm、長さ300mm)(商品名:セロテープ(登録商標)CT−24、ニチバン社製)を貼り付けた。テープの端を把持して180°に折り返して固体電解質含有シートから25mmはがした後、下記試験機に設置した下側の治具にその粘着テープをはがした部分の固体電解質含有シートの片端を固定し、上側の治具に粘着テープを固定した。
300mm/分の負荷速度で試験を実施した。測定開始後25mm粘着テープを引き剥がした後、固体電解質含有シートから引きはがされた50mmの粘着テープについて、長さ0.05mmごとの粘着力測定値を平均し、引きはがし粘着力の値(平均ピール強度(N))とした。
平均ピール強度を下記評価基準により評価した。なお、平均ピール強度が高いほど結着力が高いことを示す。評価「B」以上が本試験の合格レベルである。
ピール強度は標準タイプデジタルフォースゲージZTS−5Nと、縦型電動計測スタンドMX2シリーズ(いずれも商品名、イマダ社製)を組み合わせて行った。
−評価基準−
A:2.0N以上
B:1.0N以上2.0N未満
C:0.5N以上1.0N未満
D:0.5N未満
Figure 2017130832
<表の注>
*1:シクロオレフィンポリマーを用いているため、硬化処理は行っていない。
*2:ラジカル重合による硬化処理の温度および時間
*3:不飽和結合率は1%未満である。
表2の結果から、非芳香族性不飽和結合を有する特定の化合物(B)と無機固体電解質(A)とメタセシス触媒(C)とを含む本発明の固体電解質組成物を用いて作製した固体電解質含有シートは、密着力が高く、結着性に優れていた。
これに対して、シクロオレフィンポリマーを含有する比較のための固体電解質組成物T−1およびラジカル重合開始剤を含む比較のための固体電解質組成物T−2を用いて作製した固体電解質含有シートは、いずれも密着力が低く、結着性が十分ではなかった。
<全固体二次電池の製造>
上記で作製した各固体電解質含有シートを直径14.5mmの円板状に切り出して電極とし、固体電解質として上記で合成したLi−P−S系ガラス、対極としてLiホイルを組み込み、160MPaで加圧した。得られた全固体二次電池用シートをスペーサーとワッシャーを組み込んだステンレス製の2032型コインケースに入れて、各全固体二次電池No.201〜206、c21およびc22を作製した。
[試験例2] サイクル特性の評価
上記で作製した全固体二次電池のサイクル特性を、東洋システム社製の充放電評価装置「TOSCAT−3000(商品名)」により測定した。充電は電流密度0.1mA/cmで電池電圧が3.6Vに達するまで行った。放電は電流密度0.1mA/cmで電池電圧が2.5Vに達するまで行った。上記条件で3サイクル充放電を繰り返すことで初期化を行った。
初期化後の各全固体二次電池について、電流密度0.2mA/cmで電池電圧が4.2Vに達するまで充電し、次いで、電流密度0.2mA/cmで電池電圧が2.5Vに達するまで放電した。この充放電を1サイクルとして、充放電を繰り返した。
この充放電サイクルにおいて、初期化後1サイクル目の放電容量を100としたときの、放電容量が80未満に達した際のサイクル数を、以下の基準で評価した。なお、評価「C」以上が本試験の合格レベルである。
−評価基準−
A:30回以上
B:20回以上30回未満
C:10回以上20回未満
D:10回未満
Figure 2017130832
表2の結果から、非芳香族性不飽和結合を有する特定の化合物(B)と無機固体電解質(A)とメタセシス触媒(C)とを含む本発明の固体電解質組成物を用いて電極層を形成した全固体二次電池は、サイクル特性に優れていた。このように、本発明の固体電解質組成物は、結着性が高く、サイクル特性にも優れた全固体二次電池を製造できた。
これに対して、シクロオレフィンポリマーを含有する比較のための固体電解質組成物T−1およびラジカル重合開始剤を含む比較のための固体電解質組成物T−2を用いて電極層を形成した全固体二次電池は、いずれもサイクル特性が十分ではなかった。
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
本願は、2016年1月28日に日本国で特許出願された特願2016−014811に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
1 負極集電体
2 負極活物質層
3 固体電解質層
4 正極活物質層
5 正極集電体
6 作動部位
10 全固体二次電池
11 コインケース
12 全固体二次電池用シート
13 サイクル特性測定用セル(コイン電池)

Claims (20)

  1. 周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と、非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物と、メタセシス触媒とを含有する固体電解質組成物。
  2. 前記非芳香族性炭素−炭素不飽和結合が、末端ビニル基または末端エチニル基である請求項1に記載の固体電解質組成物。
  3. 前記非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物が、下記官能基群から選択される少なくとも1種の官能基を有する請求項1または2に記載の固体電解質組成物。
    <官能基群>
    ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、シアノ基、イソシアネート基、酸無水物基、エポキシ基、オキセタニル基、アルコキシ基、カルボニル基、3環以上の環構造を有する基、アミド結合を有する基、ウレア結合を有する基、ウレタン結合を有する基、イミド結合を有する基、イソシアヌレート結合を有する基。
  4. 前記非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物が、1分子中に2以上の該非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
  5. 前記非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物が、スター型、ハイパーブランチ型およびデンドリマー型のうちのいずれかの構造を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
  6. 前記非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物が、下記一般式(1a)または(2a)で表される請求項1に記載の固体電解質組成物。
    Figure 2017130832
    上記式中、R11〜R13、R14、R21〜R23およびR24は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を示し、R31およびR34は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を示す。L11、L21およびL31は単結合または2価の連結基を示す。nおよびmは1〜20の整数であり、lは0〜20の整数である。Xはn+m+l価の有機基を示す。
  7. 前記R31およびR34が下記官能基群のうちの少なくとも1種の官能基を有する、請求項6に記載の固体電解質組成物。
    <官能基群>
    ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、シアノ基、イソシアネート基、酸無水物基、エポキシ基、オキセタニル基、アルコキシ基、カルボニル基、3環以上の環構造を有する基、アミド結合を有する基、ウレア結合を有する基、ウレタン結合を有する基、イミド結合を有する基、イソシアヌレート結合を有する基。
  8. 前記非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物の質量平均分子量が10,000未満である請求項1〜7のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
  9. 前記メタセシス触媒がルテニウム触媒である請求項1〜8のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
  10. 前記メタセシス触媒が、ルテニウム原子に酸素原子および/または窒素原子が結合および/または配位してなる触媒である請求項1〜9のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
  11. 前記固体電解質組成物中の全固形分中の前記メタセシス触媒の含有量が0.001質量%〜5質量%である請求項1〜10のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
  12. 活物質を含有する請求項1〜11のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
  13. 前記無機固体電解質が硫化物系無機固体電解質である請求項1〜12のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
  14. 分散媒体を含有する請求項1〜13のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
  15. 請求項1〜14のいずれか1項に記載の固体電解質組成物を基材上に塗布して塗工シートを得る工程(1a)と、
    前記塗工シートを50℃以上に加熱して、前記非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物のメタセシス反応により架橋硬化させる工程(2a)と
    を含む固体電解質含有シートの製造方法。
  16. 請求項1〜14のいずれか1項に記載の固体電解質組成物を50℃以上に加熱して、前記非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物のメタセシス反応開始条件下とする工程(1b)と、
    前記工程(1b)で得られた組成物を基材上に塗布して、該組成物を架橋硬化させる工程(2b)と
    を含む固体電解質含有シートの製造方法。
  17. 周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と、下記一般式(3)で表される、非芳香族性炭素−炭素不飽和結合を有する構造単位を有してなる化合物と、Ru、Moおよび/またはW金属元素が10ppm以上のメタセシス触媒残留物とを含有する固体電解質含有シート。
    Figure 2017130832
    上記式中、Zは下記一般式(3−1)を表し、Zは下記一般式(3−2)を表す。Rは水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。Lは単結合または2価の連結基を示す。nおよびmは1〜20の整数であり、lは0〜20の整数である。Xはn+m+l価の有機基を示す。
    Figure 2017130832
    上記式中、RおよびRは水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアリール基を示す。LおよびLは単結合または2価の連結基を示す。*はXとの結合部位を示す。
  18. 活物質を含有する請求項17に記載の固体電解質含有シート。
  19. 正極活物質層と固体電解質層と負極活物質層とをこの順で具備する全固体二次電池であって、
    該正極活物質層、該負極活物質層及び該固体電解質層の少なくとも1つの層が、請求項17または18に記載の固体電解質含有シートからなる全固体二次電池。
  20. 請求項15または16に記載の固体電解質含有シートの製造方法を介して、全固体二次電池を製造する全固体二次電池の製造方法。
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