JPWO2017119476A1 - 神経性疾患予防用組成物 - Google Patents

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Abstract

神経性疾患予防用組成物、神経性疾患を予防するための素材の使用、及び神経性疾患の予防する方法を提供する。
動植物性ペプチドの熱処理物が神経性疾患の予防効果を有することを見出した。本発明は、認知症、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン症候群、筋萎縮性側索硬化症等の神経性疾患予防のための新たな手段を提供する。

Description

本発明は、神経性疾患予防用組成物に関する。さらに詳しくは、動植物性ペプチド熱処理物を有効成分として含有する神経性疾患予防用組成物、神経性疾患を予防するための動植物性ペプチド熱処理物の使用、及び動植物性ペプチド熱処理物を利用した神経性疾患の予防方法に関する。
高齢化社会の到来に伴う神経性疾患の患者数の増加は、現代社会における深刻な問題である。前記神経性疾患は、脳や脊髄に存在する特定の神経細胞群の機能低下又は死滅に起因して発生する疾患である。代表的な神経性疾患としては、認知症、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン症候群、筋萎縮性側索硬化症等が挙げられる。これらの神経性疾患の発症には、ミクログリア細胞の活性化に起因する神経細胞の炎症が関与することが報告されている(非特許文献1及び2)。例えば、非特許文献3及び4では、ミクログリア細胞の活性化が認知症や統合失調症の発症に関与することが報告されている。また、非特許文献5及び6では、ミクログリア細胞の活性化に伴い分泌される一酸化窒素や炎症性サイトカインに起因する神経細胞の炎症がアルツハイマー病やパーキンソン症候群の発症に関与することが報告されている。さらに、ミクログリア細胞が筋萎縮性側索硬化症に関与することも報告されている(非特許文献7)。
前記神経性疾患は、潜伏期間が長く、発症後の治療が困難という特性を有するため、発症前の予防が重要である。一方で、人工的に合成された化合物を、神経性疾患の発症前から長期的に摂取することは、予期せぬ副作用の発現が懸念されるため好ましくない。そこで、安全でかつ長期摂取可能な有効成分の開発が望まれている。
Cell, 140(6), 918-934 (2010) 福岡医誌, 100(7), 243-247 (2009) 慢性炎症と統合失調症, 分子精神医学, Vol.14, No.1 (2014) Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine, Vol.2015, Article ID 768049 (2015) Journal of Alzheimer’s Disease, 42, 587-605 (2014) Journal of Agricultural and Food Chemistry, 63, 3472-3480 (2015) 生化学, 第85巻, 第1号, p.1 (2013)
本発明の課題は、神経性疾患予防用組成物、神経性疾患を予防するための素材の使用、及び神経性疾患の予防する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記問題点に鑑み鋭意検討した結果、動植物性ペプチドの熱処理物が神経性疾患の予防効果を有することを見出した。また、動植物性ペプチドの熱処理物がミクログリア細胞からの一酸化窒素の分泌抑制効果を有することを見出し、その結果、動植物性ペプチドの熱処理物がミクログリア細胞の活性化抑制作用及び神経細胞の炎症抑制作用を有すると考えられ、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下に関するが、これらに限定されない。
(1)動植物性ペプチド熱処理物を有効成分として含有する、神経性疾患予防用組成物。
(2)動植物性ペプチド熱処理物が、動植物性ペプチドの高温高圧処理物である、(1)に記載の神経性疾患予防用組成物。
(3)高温高圧処理物が、100℃以上かつ0.101MPa以上での高温高圧処理で得られるものである、(1)又は(2)に記載の神経性疾患予防用組成物。
(4)動植物性ペプチドが、大豆ペプチド又はホエイペプチドである、(1)〜(3)のいずれかに記載の神経性疾患予防用組成物。
(5)神経細胞の炎症抑制作用を有する、(1)〜(4)のいずれかに記載の神経性疾患予防用組成物。
(6)ミクログリア細胞からの一酸化窒素の分泌抑制作用を有する、(1)〜(5)のいずれかに記載の神経性疾患予防用組成物。
(7)ミクログリア細胞の活性化抑制作用を有する、(1)〜(6)のいずれかに記載の神経性疾患予防用組成物。
(8)認知症の予防効果を有する、(1)〜(7)のいずれかに記載の神経性疾患予防用組成物。
(9)統合失調症の予防効果を有する、(1)〜(7)のいずれかに記載の神経性疾患予防用組成物。
(10)アルツハイマー病の予防効果を有する、(1)〜(7)のいずれかに記載の神経性疾患予防用組成物。
(11)パーキンソン症候群の予防効果を有する、(1)〜(7)のいずれかに記載の神経性疾患予防用組成物。
(12)筋萎縮性側索硬化症の予防効果を有する、(1)〜(7)のいずれかに記載の神経性疾患予防用組成物。
(13)神経性疾患の予防に関する機能の表示を付した、(1)〜(12)のいずれか一項に記載の神経性疾患予防用組成物であって、
機能の表示が、「神経性疾患の発症リスクを下げる」、「認知症の発症リスクを下げる」、「アルツハイマー病の発症リスクを下げる」、「パーキンソン症候群の発症リスクを下げる」、「統合失調症の発症リスクを下げる」、及び「筋萎縮性側索硬化症の発症リスクを下げる」からなる群から選択されるものである、前記神経性疾患予防用組成物。
(14)神経性疾患を予防するための、動植物性ペプチド熱処理物の使用。
(15)動植物性ペプチド熱処理物を有効成分として使用する、神経性疾患を予防する方法。
本発明によって、神経性疾患の予防効果を有する組成物を提供することができる。本発明の組成物に含まれる動植物性ペプチド熱処理物は安全性が高いため、本発明の組成物は市場における利用価値が高いと言える。また、本発明の組成物を摂取することにより、ミクログリア細胞からの一酸化窒素の分泌抑制効果、ミクログリア細胞の活性化抑制効果及び神経細胞の炎症抑制効果などが得られ、これにより認知症予防効果、統合失調症予防効果、アルツハイマー病予防効果、パーキンソン症候群予防効果、筋萎縮性側索硬化症予防効果等が発揮される。
図1には、大豆ペプチド熱処理物(終濃度1mg/mL)及びLPS(終濃度100ng/mL)同時添加条件下における、BV2ミクログリア細胞から分泌される一酸化窒素代謝物の産生量(蒸留水添加群の産生量を100とした場合のNO 産生量)を示す。 図2には、大豆ペプチド熱処理物(終濃度5mg/mL)及びLPS(終濃度100ng/mL)同時添加条件下における、BV2ミクログリア細胞から分泌される一酸化窒素代謝物の産生量(蒸留水添加群の産生量を100とした場合のNO 産生量)を示す。 図3には、ホエイペプチド熱処理物(終濃度1mg/mL)及びLPS(終濃度100ng/mL)同時添加条件下における、BV2ミクログリア細胞から分泌される一酸化窒素代謝物の産生量(蒸留水添加群の産生量を100とした場合のNO 産生量)を示す。 図4には、ホエイペプチド熱処理物(終濃度5mg/mL)及びLPS(終濃度100ng/mL)同時添加条件下における、BV2ミクログリア細胞から分泌される一酸化窒素代謝物の産生量(蒸留水添加群の産生量を100とした場合のNO 産生量)を示す。
本発明の一態様は、動植物性ペプチド熱処理物を有効成分として含有する神経性疾患予防用組成物である。
1.動植物性ペプチド
本明細書において「動植物性ペプチド」は、動物性ペプチドであっても植物性ぺプチドであってもよい。本明細書において「動物性ペプチド」は、特に断りがない限り、動物由来のタンパク質又はタンパク質を含む動物体に既知の分解処理(熱や圧力による分解処理、酸やアルカリによる分解処理、酵素による分解処理等)を施して低分子化することにより生じるペプチドを意味する。また、本明細書において「植物性ペプチド」は、特に断りがない限り、動物由来のタンパク質又はタンパク質を含む動物体に既知の分解処理(熱や圧力による分解処理、酸やアルカリによる分解処理、酵素による分解処理等)を施して低分子化することにより生じるペプチドを意味する。尚、本明細書において「動植物」とは、「動物」及び「植物」を含むものである。
本発明の動植物性ペプチドは、動植物由来のタンパク質又はタンパク質を含む動植物体から得られる1種類のペプチドであってもよいし、2種類以上のペプチドの混合物であってもよい。動植物性ペプチドを構成するアミノ酸の個数は、特に限定されないが、2〜数十個が好ましく、2〜数個(即ち、オリゴペプチド)がより好ましい。
本発明において動植物性ペプチドは、分子量5000以下のペプチドの割合が高いものを用いるのが好ましく、分子量3000以下のペプチドの割合が高いものを用いるのがより好ましく、分子量1000以下のペプチドの割合が高いものを用いるのが特に好ましい。ここで、「ペプチドの割合が高い」とは、動植物性ペプチド全体の少なくとも50%がそのペプチドに該当している状態を意味する。当該分子量の測定は、当業者に周知の方法及び装置(HPLC等)を用いて行うことができる。
本発明の動植物性ペプチドは、特に限定されないが、豆類、種子類、芋類等の植物由来のペプチドや、ホエイ、プラセンタ、コラーゲン等の動物由来のペプチドが好適に利用される。豆類としては、例えば、大豆、小豆、黒豆等が挙げられる。種子類としては、例えば、大麦、小麦(小麦胚芽を含む)、麦芽、胡麻、米等が挙げられる。芋類としては、例えば、さつまいも、じゃがいも等が挙げられる。これらの中で、本発明では、大豆及びホエイが好ましい。尚、本明細書では、特定の動植物に由来する動植物性ペプチドについて、「由来の」の記載を省略する場合がある。例えば、「大豆由来のペプチド」の場合、これを「大豆ペプチド」と称することがある。このとき、両者は互換可能に使用される。
動植物性ペプチドは、動植物由来のタンパク質又はタンパク質を含む動植物体を従来公知の方法で分解処理することにより得ることができる。かかる分解処理としては、熱や圧力による分解処理、酸やアルカリによる分解処理、酵素による分解処理等が挙げられる。いずれの処理においても、水やエタノール等が溶媒として使用可能であり、例えば加熱による分解処理であれば、100℃以上の温度で30分〜数時間の条件が示される。尚、この加熱処理は、上述した動植物性ペプチド熱処理物の加熱処理と同時に行うことも可能である。また、酵素による分解処理であれば、種々のタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)をその目的に応じて適宜使用することができる。
動植物性ペプチドは、公知の方法を用いて自ら調製したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。市販の植物性ペプチドとしては、例えばハイニュートAM、ハイニュートDC、ハイニュートHK(以上、不二精油社製)等の大豆ペプチド、オリザペプチド−P60(オリザ油化社製)等のコメペプチド、グルタミンペプチドGP−1N、グルタミンペプチドGP−N(以上、日清ファルマ社製)等の小麦ペプチド、ゴマペプチドKM−20(KISCO社製)等のゴマペプチド等が挙げられる。市販の動物性ペプチドとしては、例えばホエイペプチドHW−3(雪印メグミルク社製)、ホエイペプチドPeptigenIF-3090(アーラフーズ社製)等のホエイペプチド、森永乳業社製のカゼインペプチドCU2500A、ヘルスサポート社製のプラセンタペプチド、新田ゼラチン社製のコラーゲンペプチド等が挙げられる。
2.動植物性ペプチド熱処理物
動植物性ペプチド熱処理物は、動植物性ペプチドを液体中で高温加熱処理することによって得られる。当該高温加熱処理は、特に限定されないが、高温条件のみならず高圧条件も加えた条件での処理が好ましい。高温加熱処理及び高温高圧処理における液体としては純水を好適に用いることができるが、これにエタノール等の有機溶媒を適宜含有させることもできる。また、抽出溶媒にミネラル分を添加することにより適宜硬度を調整することもできる。
本明細書において「高温加熱処理」とは、100℃以上の温度かつ大気圧を超える圧力下で一定時間処理することを意味する。高温高圧処理装置としては、耐圧性抽出装置や圧力鍋、オートクレーブなどを条件に合わせて用いることができる。
高温加熱処理における温度は、100℃以上である限り特に限定されないが、好ましくは105℃以上、110℃以上、115℃以上、120℃以上、125℃以上、130℃以上、又は135℃以上である。また、当該温度は、好ましくは170℃以下、165℃以下、160℃以下、155℃以下、150℃以下、145℃以下、又は140℃以下である。典型的には、当該温度は100℃〜170℃、好ましくは110℃〜150℃、より好ましくは120℃〜140℃である。尚、この温度は、加熱装置として耐圧性抽出装置を用いた場合には抽出カラムの出口温度を測定した値を示し、加熱装置としてオートクレーブを用いた場合には、圧力容器内の中心温度の温度を測定した値を示す。
高温高圧の圧力は、大気圧を越える圧力であれば特に限定されないが、好ましくは0.101MPa以上、0.15MPa以上、0.2MPa以上、0.25MPa以上、又は0.3MPa以上である。また、当該圧力は、好ましくは0.79MPa以下、0.75MPa以下、0.7MPa以下、0.65MPa以下、0.6MPa以下、0.55MPa以下、0.5MPa以下、0.48MPa以下である。典型的には、当該圧力は0.101MPa〜0.79MPa、好ましくは0.101MPa〜0.60MPa、より好ましくは0.101MPa〜0.48MPaである。
高温加熱処理時間は、所望の処理物が得られる限り特に限定されないが、好ましくは15分〜600分程度、より好ましくは30分〜500分程度、さらにより好ましくは60分〜300分程度である。
本発明において動植物性ペプチド熱処理物を得るためのより適した高温処理条件は、例えば、横軸を時間(min.)、縦軸を温度(℃)とした座標系において、次の座標系(i)〜(vi)によって囲まれる時間及び温度の範囲内で保持される高温処理である。(i)(170℃, 30min.)、(ii)(150℃, 30min.)、(iii)(115℃, 180min.)、(iv)(105℃, 480min.)、(v)(135℃, 480min.)、(vi)(150℃, 180min.)
動植物性ペプチド熱処理物を得るための動植物性ペプチドの温度、圧力及び時間に関する処理条件は、特に限定されないが、例えば以下の通り設定することができる:
(温度、圧力、時間)=
(105℃〜170℃、0.101MPa〜0.79MPa、15分〜600分)、
(105℃〜170℃、0.101MPa〜0.79MPa、30分〜500分)、
(105℃〜170℃、0.101MPa〜0.79MPa、60分〜300分)、
(105℃〜170℃、0.15MPa〜0.48MPa、15分〜600分)、
(105℃〜170℃、0.15MPa〜0.48MPa、30分〜500分)、
(105℃〜170℃、0.15MPa〜0.48MPa、60分〜300分)、
(110℃〜150℃、0.101MPa〜0.79MPa、15分〜600分)、
(110℃〜150℃、0.101MPa〜0.79MPa、30分〜500分)、
(110℃〜150℃、0.101MPa〜0.79MPa、60分〜300分)、
(110℃〜150℃、0.15MPa〜0.48MPa、15分〜600分)、
(110℃〜150℃、0.15MPa〜0.48MPa、30分〜500分)、
(110℃〜150℃、0.15MPa〜0.48MPa、60分〜300分)、
(120℃〜140℃、0.101MPa〜0.79MPa、15分〜600分)、
(120℃〜140℃、0.101MPa〜0.79MPa、30分〜500分)、
(120℃〜140℃、0.101MPa〜0.79MPa、60分〜300分)、
(120℃〜140℃、0.15MPa〜0.48MPa、15分〜600分)、
(120℃〜140℃、0.15MPa〜0.48MPa、30分〜500分)、
(120℃〜140℃、0.15MPa〜0.48MPa、60分〜300分)等。
本発明において動植物性ペプチド熱処理物は、上述した処理条件を提供できる装置を用いて調製することができる。そのような装置としては、例えば、当業者に周知の耐圧性抽出装置、圧力鍋、及びオートクレーブ等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。また、動植物性ペプチド熱処理物は、加熱処理の前及び/又は後において固液分離を行ったものであってもよい。固液分離の処理を行うことにより液部を回収することができ、固体のみで取り扱うことが可能となる。固液分離には、濾液及び/又は遠心分離等の手段が用いられる。また、動植物性ペプチド熱処理物は、加熱処理後に精製処理をさらに施したものであってもよい。精製処理を行うことにより、動植物性ペプチド熱処理物に含まれる特定の成分を濃縮することができる。動植物性ペプチド熱処理物の精製処理は、公知の方法及び装置を用いて行うことができる。また、動植物性ペプチド熱処理物は、加熱処理の前及び/又は後において清澄化処理をさらに行ったものであってもよい。清澄化処理は、公知の方法及び装置を用いて行うことができ、当該処理により動植物性ペプチド熱処理物を添加する組成物の設計の自由度を増すことができる。また、動植物性ペプチド熱処理物は、公知の方法及び装置を用いて凍結乾燥又は粉末化したものであってもよい。その他、本発明における動植物性ペプチド熱処理物の製造方法は、国際公開第2014/200000号に記載の方法を参考にすることができる。
3.環状ジペプチド又はその塩
動植物性ペプチド熱処理物は動植物性ペプチドを高温加熱処理又は高温高圧処理することにより得られるが、当該処理により多量の環状ジペプチド又はその塩が動植物性ペプチド熱処理物の中に含まれるようになる。即ち、本発明において動植物性ペプチド熱処理物は、その特徴の一つとして環状ジペプチド又はその塩を含有する。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、動植物性ペプチド熱処理物には多量の環状ジペプチド又はその塩が含まれることから、当該環状ジペプチド又はその塩が神経性疾患予防用組成物の有効成分となり得る。尚、本明細書では、環状ジペプチド又はその塩をまとめて単に環状ジペプチドと称する場合がある。
本明細書でいう環状ジペプチドとは、アミノ酸を構成単位とすることを特徴とし、アミノ酸のアミノ基とカルボキシル基とが脱水縮合することにより生成したジケトピペラジン構造を有するジペプチドのことをいう。そのため、環状ジペプチドは、鎖状のジペプチドとは区別される。
環状ジペプチドの塩には、薬理学的に許容される任意の塩(無機塩及び有機塩を含む)が含まれる。そのような塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、燐酸塩、有機酸塩(酢酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、プロピオン酸塩、蟻酸塩、安息香酸塩、ピクリン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩等)等が挙げられるが、これらに限定されない。
動植物性ペプチド熱処理物に含まれる環状ジペプチド又はその塩の量は、動植物性ペプチド熱処理物の種類等に応じて異なり、特に限定されないが、例えば、動植物性ペプチド熱処理物中のブリックス(Bx)あたりの環状ジペプチド又はその塩の総量は、好ましくは20000μg/100g/Bx以上、25000μg/100g/Bx以上、30000μg/100g/Bx以上、より好ましくは35000μg/100g/Bx以上である。また、当該総量は、好ましくは10000mg/100g/Bx以下、5000mg/100g/Bx以下、2000mg/100g/Bx以下、より好ましくは1000mg/100g/Bx以下である。典型的には、本発明における動植物性ペプチド熱処理物に含まれる環状ジペプチド又はその塩の総量は、好ましくは20000μg/100g/Bx〜10000mg/100g/Bx、より好ましくは30000μg/100g/Bx〜5000mg/100g/Bx、さらにより好ましくは35000μg/100g/Bx〜1000mg/100g/Bxである。
環状ジペプチドが塩の形態である場合は、遊離体(フリー体)に換算した上で上記含有量を算出するものとする。
本発明における動植物性ペプチド熱処理物の好適な態様として、麦芽ペプチド熱処理物及びホエイペプチド熱処理物が例示できる。以下、これらの熱処理物における環状ジペプチドについて詳述する。
3−1.大豆ペプチド熱処理物
原料となる大豆(学名:Glycine max)は品種や産地などの制限なく用いることができ、粉砕品などの加工品段階のものを用いることもできる。大豆中のタンパク質は、約3割を占めると言われている。大豆タンパク質は、茶葉タンパク質のように水不溶性タンパク質が多くはないため、水溶性タンパク質を除去する前処理は必須ではなく、必要に応じて行えばよい。水溶性タンパク質を除去する前処理がない場合、ワンポット(One-Pot)反応で、より簡便に環状ジペプチドを高濃度に含有する大豆ペプチド熱処理物を製造することができる。
本発明における大豆ペプチド熱処理物は、従来の大豆タンパク分解物(大豆ペプチド)には含まれていなかった環状ジペプチドであるCyclo(Ala-Gln)、Cyclo(Ala-Ala)、Cyclo(Ser-Tyr)、Cyclo(Gly-Trp)、Cyclo(Val-Val)、Cyclo(Trp-Tyr)、Cyclo(Leu-Trp)及びCyclo(Phe-Phe)のいずれか一以上をBxあたりの含量が10μg/100g/Bx以上で含有する。
また、本発明における大豆ペプチド熱処理物は、Cyclo(Ala-Gln)、Cyclo(His-Pro)、Cyclo(Ala-Ala)、Cyclo(Gly-Pro)、Cyclo(Ser-Tyr)、Cyclo(Pro-Thr)、Cyclo(His-Phe)、Cyclo(Ala-Pro)、Cyclo(Phe-Ser)、Cyclo(Gly-Leu)、Cyclo(Gly-Phe)、Cyclo(Gly-Trp)、Cyclo(Asp-Phe)、Cyclo(Val-Pro)、Cyclo(Pro-Tyr)、Cyclo(Met-Pro)、Cyclo(Val-Val)、Cyclo(Leu-Pro)、Cyclo(Trp-Tyr)、Cyclo(Phe-Pro)、Cyclo(Leu-Trp)、Cyclo(Leu-Phe)、Cyclo(Leu-Leu)及びCyclo(Phe-Phe)をそれぞれ0.1ppm/Bx(10μg/100g/Bx)以上の濃度で含有する。好ましくは上記の環状ジペプチドそれぞれを0.5ppm/Bx以上、より好ましくは0.7ppm/Bx以上、さらに好ましくは0.9ppm/Bx以上、特に好ましくは1.0ppm/Bx以上、特に好ましくは1.2ppm/Bx以上の濃度で含有する大豆ペプチド熱処理物である。さらに、Cyclo(Leu-Leu)、Cyclo(Leu-Phe)、Cyclo(Ser-Tyr)及びCyclo(Pro-Thr)を、それぞれ0.1ppm/Bx(10μg/100g/Bx)以上、好ましくは0.2ppm/Bx以上、より好ましくは0.3ppm/Bx以上の濃度で含有させることができる。
この大豆ペプチド熱処理物(特に、大豆又はその粉砕物を原料として得られる熱処理物)は、苦味が強い環状ジペプチドとして知られているCyclo(Leu-Pro)、Cyclo(Phe-Pro)及びCyclo(Leu-Trp)を含有するにも関わらず、その苦味が低減されている。同じ濃度のCyclo(Leu-Pro)及びCyclo(Phe-Pro)を含有する水溶液を調製した場合には、強い苦いが感じられたことから、共存する他の環状ジペプチドや大豆由来の成分が相加的又は相乗的にCyclo(Leu-Pro)、及びCyclo(Phe-Pro)及びCyclo(Leu-Trp)の苦味を緩和していると考えられる。特に、Cyclo(Leu-Leu)とCyclo(Leu-Phe)の総量(A)に対する苦味を有する環状ジペプチドCyclo(Leu-Pro)、Cyclo(Phe-Pro)及びCyclo(Leu-Trp)の総量(B)の割合[(B)/(A)]が、1.0以下(好ましくは0.8以下、より好ましくは0.6以下、特に好ましくは0.5以下)となる大豆ペプチド熱処理物は、苦味が顕著に低減された環状ジペプチド含有熱処理物であり、経口適用が可能である。
本発明における大豆ペプチド熱処理物中のBxあたりの環状ジペプチド又はその塩の総量は、好ましくは20000μg/100g/Bx以上、25000μg/100g/Bx以上、30000μg/100g/Bx以上、より好ましくは35000μg/100g/Bx以上である。また、当該総量は、好ましくは10000mg/100g/Bx以下、5000mg/100g/Bx以下、2000mg/100g/Bx以下、より好ましくは1000mg/100g/Bx以下である。典型的には、本発明における大豆ペプチド熱処理物中のBxあたりの環状ジペプチド又はその塩の総量は、好ましくは20000μg/100g/Bx〜10000mg/100g/Bx、より好ましくは30000μg/100g/Bx〜5000mg/100g/Bx、さらにより好ましくは35000μg/100g/Bx〜1000mg/100g/Bxである。
本発明における大豆ペプチド熱処理物は、好適にはCyclo(Leu-Leu)、Cyclo(Leu-Phe)、Cyclo(Ser-Tyr)及びCyclo(Pro-Thr)を高濃度に含有する。具体的には、大豆ペプチド熱処理物中の環状ジペプチド全量に対して、Cyclo(Leu-Leu)が8%以上(重量基準)、Cyclo(Leu-Phe)が8%以上、Cyclo(Ser-Tyr)が6%以上となる熱処理物である。大豆ペプチド熱処理物において、これらの濃度はそれぞれ0.1ppm/Bx(10μg/100g/Bx)、好ましくは5.0ppm/Bx以上、より好ましくは6.0ppm/Bx以上、さらにより好ましくは7.0ppm/Bx以上である。特に、Cyclo(Leu-Leu)及びCyclo(Leu-Phe)の含有量は、10.0ppm/Bx以上、好ましくは12.0ppm/Bx以上であることが好ましい。これらの上限は特に限定されないが、好ましくは500ppm/Bx以下、400ppm/Bx以下、より好ましくは350ppm/Bx以下、さらに好ましくは300ppm/Bx以下程度である。
3−2.ホエイペプチド熱処理物
ホエイペプチドの原料は、特に限定されないが、例えば、乳清タンパク質であるWPC(ホエイ・プロテイン・コンセントレート)、WPI(ホエイ・プロテイン・アイソレート)等が挙げられる。ホエイペプチドは、これらの乳清タンパク質を酵素等で分解したものをいう。分解度は種々あるが分解度が低いと、乳臭が強くなり溶解後の液性が不透明(白濁)であるという傾向を有する。一方、分解度が高いと溶解時の液性が透明になるが、苦味・渋味が増加するという傾向を有する。
ホエイペプチド熱処理物はホエイペプチドを高温加熱処理又は高温高圧処理することにより得られるが、当該処理により多量の環状ジペプチド又はその塩がホエイペプチド熱処理物の中に含まれるようになる。即ち、本発明においてホエイペプチド熱処理物は、その特徴の一つとして環状ジペプチド又はその塩を含有する。
また、本発明におけるホエイペプチド熱処理物は、Cyclo(Arg-Leu)、Cyclo(Leu-Lys)、Cyclo(Ala-Leu)、Cyclo(Glu-Pro)、Cyclo(Ile-Pro)、Cyclo(Val-Phe)、Cyclo(Asp-Glu)、Cyclo(Thr-Lys)、Cyclo(Lys-Lys)、Cyclo(Lys-Phe)、及びCyclo(Thr-Tyr)をそれぞれ0.1ppm/Bx(10μg/100g/Bx)の濃度で含有する。好ましくは上記の環状ジペプチド又はその塩のそれぞれを0.5ppm/Bx以上、より好ましくは0.7ppm/Bx以上、さらに好ましくは0.9ppm/Bx以上、特に好ましくは1.0ppm/Bx以上、特に好ましくは1.2ppm/Bx以上の濃度で含有するホエイペプチド熱処理物である。
本発明におけるホエイペプチド熱処理物中のBxあたりの環状ジペプチド又はその塩の総量は、好ましくは20000μg/100g/Bx以上、25000μg/100g/Bx以上、30000μg/100g/Bx以上、より好ましくは35000μg/100g/Bx以上である。また、当該総量は、好ましくは10000mg/100g/Bx以下、5000mg/100g/Bx以下、2000mg/100g/Bx以下、より好ましくは1000mg/100g/Bx以下である。典型的には、本発明におけるホエイペプチド熱処理物中のBxあたりの環状ジペプチド又はその塩の総量は、好ましくは20000μg/100g/Bx〜10000mg/100g/Bx、より好ましくは30000μg/100g/Bx〜5000mg/100g/Bx、さらにより好ましくは35000μg/100g/Bx〜1000mg/100g/Bxである。
本発明におけるホエイペプチド熱処理物は、好適にはCyclo(Arg-Leu)、Cyclo(Leu-Lys)、Cyclo(Ala-Leu)、Cyclo(Glu-Pro)、Cyclo(Ile-Pro)、Cyclo(Val-Phe)、Cyclo(Asp-Glu)、Cyclo(Thr-Lys)を高濃度に含有する。ホエイペプチド熱処理物において、これらの濃度はそれぞれ0.1ppm/Bx(10μg/100g/Bx)以上、好ましくは5.0ppm/Bx以上、より好ましくは6.0ppm/Bx以上、さらにより好ましくは7.0ppm/Bx以上である。これらの上限は特に限定されないが、好ましくは500ppm/Bx以下、400ppm/Bx以下、より好ましくは350ppm/Bx以下、さらに好ましくは300ppm/Bx以下程度である。
4.神経性疾患予防用組成物
本発明の一態様は、動植物性ペプチド熱処理物を有効成分として含有する、神経性疾患予防組成物である。
本発明の組成物における動植物性ペプチド熱処理物の含有量は、その投与形態、投与方法などを考慮し、本発明の所望の効果が得られるような量であればよく、特に限定されるものではない。例えば、動植物性ペプチド熱処理物の含有量は、本発明の組成物の全重量に対して0.10重量%以上、好ましくは0.20重量%以上、より好ましくは0.40重量%以上である。また、動植物性ペプチド熱処理物の含有量は、本発明の組成物の全重量に対して50重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5.0重量%以下である。典型的には、動植物性ペプチド熱処理物の含有量は、本発明の組成物の全重量に対して0.10重量%〜50重量%、好ましくは0.20重量%〜10重量%、より好ましくは0.4重量%〜5.0重量%である。尚、特に断りがない限り、本明細書において用いる「重量%」は、重量/重量(w/w)を意味する。
4−1.作用メカニズム
脳には中枢神経系の構成細胞の一つとしてミクログリア細胞が存在し、脳損傷部位の清掃機能や抗原提示機能などにより、脳内の免疫防御を担っている。このミクログリア細胞は、様々な刺激により活性化されると、炎症性サイトカイン、一酸化窒素、活性酸素等の液性因子を放出し、脳内に存在する神経細胞の炎症を惹起する。そして、神経細胞の炎症により、認知症、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン症候群、筋萎縮性側索硬化症等の神経性疾患の発症が促進される。従って、ミクログリア細胞の活性化や、ミクログリア細胞からの炎症性サイトカインや一酸化窒素、活性酸素等の液性因子の放出が抑制できれば、神経細胞の炎症も抑制でき、その結果、認知症、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン症候群、筋萎縮性側索硬化症等の神経性疾患の予防効果が発揮される。
4−2.他の成分
本発明の神経性疾患予防用組成物は、その形態に応じて、動植物性ペプチド熱処理物の他に、任意の添加剤、通常用いられる任意の成分を含有することができる。これらの添加剤及び/又は成分の例としては、ビタミンE、ビタミンC等のビタミン類、ミネラル類、栄養成分、香料などの生理活性成分の他、製剤化において配合される賦形剤、結合剤、乳化剤、緊張化剤(等張化剤)、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、抗酸化剤、着色剤、凝固剤、又はコーティング剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
4−3.用途
本発明の神経性疾患予防用組成物は、前述の動植物性ペプチド熱処理物を有効成分として含有させることで、ミクログリア細胞からの炎症性サイトカイン、一酸化窒素、活性酸素等の液性因子の放出、特に、一酸化窒素の放出を抑制することができる。これにより、脳内の神経細胞の炎症の抑制効果が発揮される。従って、本発明の組成物を摂取することで、神経細胞の炎症性障害に起因する疾患、例えば、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン症候群、統合失調症、筋萎縮性側索硬化症などの神経性疾患の予防効果を得ることができる。
本発明の神経性疾患予防用組成物は、例えば、動植物性ペプチド熱処理物を含有する原料に、所望により溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、又は滑沢剤等を加えて、公知の方法に従って、錠剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、又はカプセル剤等の固形剤や、通常液剤、懸濁剤、又は乳剤等の液剤等に製剤化することができる。これらの組成物はそのまま水等と共に服用することができる。また、容易に配合することが出来る形態(例えば、粉末形態や顆粒形態)に調製後、例えば、医薬品の原材料として用いることができる。
本発明は、一例として、剤の形態で提供することができるが、本形態に限定されるものではない。当該剤をそのまま組成物として、或いは当該剤を含む組成物として提供することもできる。一例として、医薬等の形態で提供することができるが、本形態に限定されるものではない。本発明の組成物としては、医薬組成物、飲食品組成物、食品組成物、飲料組成物、化粧用組成物等が挙げられるが、これらに限定されない。食品組成物の限定的でない例として、機能性食品、健康補助食品、栄養機能食品、特別用途食品、特定保健用食品、栄養補助食品、食事療法用食品、健康食品、サプリメント、食品添加剤等が挙げられる。
本発明の神経性疾患予防用組成物は、治療的用途(医療用途)又は非治療用途(非医療用途)のいずれにも適用することができる。具体的には、医薬品、医薬部外品及び化粧料等としての使用が挙げられ、また、薬事法上はこれらに属さないが、神経性疾患予防効果、認知症予防効果、アルツハイマー病予防効果、パーキンソン症候群予防効果、統合失調症予防効果、筋萎縮性側索硬化症予防効果等を明示的又は暗示的に訴求する組成物としての使用が挙げられる。
本発明は、別の側面では、神経性疾患の予防に関する機能の表示を付した、前記神経性疾患予防用組成物に関する。このような表示又は機能表示は特に限定されないが、例えば、「神経性疾患を予防する」、「神経性疾患の発症リスクを下げる」、「認知症を予防する」、「認知症の発症リスクを下げる」、「アルツハイマー病を予防する」、「アルツハイマー病の発症リスクを下げる」、「パーキンソン症候群を予防する」、「パーキンソン症候群の発症リスクを下げる」、「統合失調症を予防する」、「統合失調症の発症リスクを下げる」、「筋萎縮性側索硬化症を予防する」、又は「筋萎縮性側索硬化症の発症リスクを下げる」などが挙げられる。本明細書において、当該表示及び機能表示のような表示は、組成物自体に付されてもよいし、組成物の容器又は包装に付されていてもよい。
本発明の神経性疾患予防用組成物は、その形態に応じた適当な方法で摂取することができる。摂取方法としては、例えば、内用(経口用)、外用、注射等による方法が挙げられるが、本発明の所望の効果が発揮される限り、その方法は特に限定されない。尚、本明細書において「摂取」とは、摂取、服用、又は飲用等の全態様を含むものとして用いられる。
本発明の神経性疾患予防用組成物の適用量は、その形態、投与方法、使用目的及び投与対象である患者又は患獣の年齢、体重、症状によって適時設定され、一定ではない。本発明における動植物性ペプチド熱処理物の有効ヒト摂取量としては、一定ではないが、例えば、体重50kgのヒトで一日当たり、好ましくは500mg以上、より好ましくは1000mg以上である。また、投与は所望の投与量範囲内において、1日内において単回又は数回に分けて行ってもよい。投与期間も任意である。尚、動植物性ペプチド熱処理物の有効ヒト摂取量とは、ヒトにおいて有効な効果を示す動植物性ペプチド熱処理物の摂取量のことを意味する。
本発明の神経性疾患予防用組成物の適用対象は、好ましくはヒトであるが、ウシ、ウマ、ヤギ等の家畜動物、イヌ、ネコ、ウサギ等のペット動物、又は、マウス、ラット、モルモット、サル等の実験動物であってもよい。ヒト以外の動物を対象に投与する場合、マウス1個体当たり約20gに対して1日あたりの使用量は、組成物中の有効成分の含有量、適用対象者の状態、体重、性別及び年齢等の条件により異なるが、通常、動植物性ペプチド熱処理物の投与量は、好ましくは100mg/kg以上、より好ましくは1000mg/kgである。
5.神経性疾患を予防するための動植物性ペプチド熱処理物の使用
本発明の一態様は、動植物性ペプチド熱処理物の神経性疾患を予防するための使用である。
本発明の動植物性ペプチド熱処理物の使用には、例えば、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン症候群、統合失調症、筋萎縮性側索硬化症等を予防するための使用が含まれるが、これらに限定されるものではない。また、当該使用は、ヒト又は非ヒト動物における使用であり、治療的使用であっても非治療的使用であってもよい。ここで、「非治療的」とは、医療行為、即ち、治療による人体への処理行為を含まない概念である。
6.神経性疾患を予防する方法
本発明の一態様は、神経性疾患予防を必要とする対象に、動植物性ペプチド熱処理物を有効成分として治療有効量を投与することを含む、神経性疾患を予防する方法を提供するものである。尚、神経性疾患予防を必要とする対象とは、本発明の神経性疾患予防用組成物の前記投与対象と同様である。
また、本明細書中において治療有効量とは、本発明の動植物性ペプチド熱処理物を上記対象に摂取させた場合に、摂取していない対象と比較して、神経性疾患を予防できる量のことである。具体的な有効量としては、投与形態、投与方法、使用目的及び対象の年齢、体重、症状等によって適時設定され一定ではない。
本発明の方法においては、前記治療有効量となるよう、動植物性ペプチド熱処理物をそのまま、或いは、動植物性ペプチド熱処理物を含有する組成物として投与してもよい。
本発明の方法によれば、副作用を生じることなく神経性疾患を予防することが可能になる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、これにより本発明の範囲を限定するものではない。当業者は、本発明の方法を種々変更、修飾して使用することが可能であり、これらも本発明の範囲に含まれる。
実施例1:大豆ペプチド熱処理物の調製
植物性ペプチドとして大豆ペプチドを用い、液体中にて高温高圧処理して大豆ペプチド熱処理物を製造した。具体的には、大豆ペプチド(ハイニュートAM、不二製油社製)3gに15mlの蒸留水を加え、オートクレーブ(トミー精工社製)に入れて、135℃、0.31MPa、3時間高温高圧処理を加えた。また、比較例として、同じペプチドを用いて高温高圧処理を行わない大豆ペプチド非加熱物を調製した。
実施例2:ホエイペプチド熱処理物の調製
動物性ペプチドとしてホエイペプチドを用い、液体中にて高温高圧処理してホエイペプチド熱処理物を製造した。具体的には、ホエイペプチドPeptigen IF-3090(アーラフーズ社製、平均分子量300〜400)、平均分子量440のホエイペプチド、又はカゼインペプチドCU2500A(森永乳業社製、平均分子量375)3gに30mlの蒸留水を加え、オートクレーブ(トミー精工社製)に入れて、135℃、0.31MPa、3時間高温高圧処理を加えた。また、比較例として、同じペプチドを用いて高温高圧処理を行わないホエイペプチド非加熱物を調製した。尚、図3及び4に記載のホエイペプチド非加熱物3及び熱処理物3はホエイペプチドPeptigen IF-3090由来のものであり、ホエイペプチド非加熱物5及び熱処理物5は平均分子量440のホエイペプチド由来のものであり、ホエイペプチド非加熱物7及び熱処理物7はカゼインペプチドCU2500A由来のものである。
実施例3:ミクログリア細胞から誘導される一酸化窒素(NO)の産生量の評価(大豆又はホエイペプチド熱処理物、及びLPS同時添加)
大豆又はホエイペプチド熱処理物の添加条件下で、LPS刺激BV2ミクログリア細胞から産生される一酸化窒素の抑制効果を評価した。96ウェルプレートに10%FBS添加DMEM培地にて2.0×10細胞/mLの濃度に調整したBV2ミクログリア細胞を各ウェルに100μLずつ播種した。播種24時間後にLPS(終濃度100ng/mL)と環状ジペプチド(終濃度5mg/mL)で同時に添加した。さらに24時間後に培養上清を回収し、Griessアッセイにより一酸化窒素の代謝物量(NO )を測定した(n=2)。Griessアッセイは、Griess Reagent System(Promega cat.♯G2930と同組成品)を用いて行った。
結果を図1〜4に示す。実験の結果、図1及び図2に示す通り、大豆ペプチド熱処理物とLPSを同時に添加することで、LPS刺激に起因するBV2ミクログリア細胞からの一酸化窒素の代謝物(NO )の産生が、大豆ペプチド熱処理物の濃度依存的に抑制されることが明らかとなった。さらに、大豆ペプチド熱処理物添加による、LPS刺激に起因したBV2ミクログリア細胞からの一酸化窒素の代謝物(NO )の産生抑制の程度は、大豆ペプチド非加熱物と比較して高いことも明らかとなった。
また、図3及び図4に示す通り、ホエイペプチド熱処理物とLPSを同時に添加することで、LPS刺激に起因するBV2ミクログリア細胞からの一酸化窒素の代謝物(NO )の産生が、ホエイペプチド熱処理物の濃度依存的に抑制されることが明らかとなった。一方で、ホエイペプチド非加熱物とLPSの同時添加では、LPS刺激に起因するBV2ミクログリア細胞からの一酸化窒素の代謝物(NO )の産生抑制効果は認められなかった。
従って、大豆又はホエイペプチド熱処理物が、LPS刺激に起因するBV2ミクログリア細胞からの一酸化窒素の産生を顕著に抑制することが明らかとなった。
本発明は、動植物性ペプチド熱処理物を有効成分として含有する神経性疾患予防用組成物を提供するものである。従って、本発明は、認知症、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン症候群、筋萎縮性側索硬化症等の神経性疾患予防のための新たな手段を提供するものであるため、産業上の利用性が高い。

Claims (15)

  1. 動植物性ペプチド熱処理物を有効成分として含有する、神経性疾患予防用組成物。
  2. 動植物性ペプチド熱処理物が、動植物性ペプチドの高温高圧処理物である、請求項1に記載の神経性疾患予防用組成物。
  3. 高温高圧処理物が、100℃以上かつ0.101MPa以上での高温高圧処理で得られるものである、請求項1又は2に記載の神経性疾患予防用組成物。
  4. 動植物性ペプチドが、大豆ペプチド又はホエイペプチドである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の神経性疾患予防用組成物。
  5. 神経細胞の炎症抑制作用を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の神経性疾患予防用組成物。
  6. ミクログリア細胞からの一酸化窒素の分泌抑制作用を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の神経性疾患予防用組成物。
  7. ミクログリア細胞の活性化抑制作用を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の神経性疾患予防用組成物。
  8. 認知症の予防効果を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の神経性疾患予防用組成物。
  9. 統合失調症の予防効果を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の神経性疾患予防用組成物。
  10. アルツハイマー病の予防効果を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の神経性疾患予防用組成物。
  11. パーキンソン症候群の予防効果を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の神経性疾患予防用組成物。
  12. 筋萎縮性側索硬化症の予防効果を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の神経性疾患予防用組成物。
  13. 神経性疾患の予防に関する機能の表示を付した、請求項1〜12のいずれか一項に記載の神経性疾患予防用組成物であって、
    機能の表示が、「神経性疾患の発症リスクを下げる」、「認知症の発症リスクを下げる」、「アルツハイマー病の発症リスクを下げる」、「パーキンソン症候群の発症リスクを下げる」、「統合失調症の発症リスクを下げる」、及び「筋萎縮性側索硬化症の発症リスクを下げる」からなる群から選択されるものである、前記神経性疾患予防用組成物。
  14. 神経性疾患を予防するための、動植物性ペプチド熱処理物の使用。
  15. 動植物性ペプチド熱処理物を有効成分として使用する、神経性疾患を予防する方法。
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