実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による磁界測定方法を含むコイルの位置ずれ修正方法のフローチャートである。図2は本発明の実施の形態1による磁界測定装置を示す図であり、図3は図2のデータ処理装置を示す図である。図4は、データ処理装置の機能ブロックを実現するハードウェア構成を示す図である。図5は本発明の測定対象であるスプリットソレノイドコイルの磁束線を示す図であり、図6は図5の磁束線の磁束ベクトルを説明する図である。図7は、図5のスプリットソレノイドコイルの径方向磁界成分のZ方向分布を示す図である。図8は、図2の磁界測定素子の回転前後の状態を示す図である。図9は回転前の磁界測定素子における面垂直方向磁界成分を示す図であり、図10は回転後の磁界測定素子における面垂直方向磁界成分を示す図である。図11は図2の磁界測定素子により測定された径方向磁界成分のZ方向分布を示す図である。
図1、図2を用いて、本発明の実施の形態1による磁界測定方法を含むコイルの位置ずれ修正方法を説明する。図2のコイル6は、実施の形態1による磁界測定方法が実行される対象である。図2の磁界測定装置1は、測定及び位置ずれ修正を行う対象であるコイル6の磁界測定方法及び位置ずれ修正方法を実行する。図2の磁界測定装置1は、本発明の磁界測定方法及び位置ずれ修正方法を実行する一例である。
図2のコイル6は、ソレノイドコイルである。磁界測定装置1は、磁界測定素子2と、磁界測定素子2を支持する磁界測定素子支持台71と、磁界測定素子支持台71を搭載する回転台5と、回転台5に固定された回転棒72と、回転棒72を回転するモータ73と、磁界測定素子2から入力された磁界データからコイル間中心位置を演算するデータ処理装置74を備える。磁界測定素子2は、回転台5の回転に伴って、回転軸4を中心にして回転するように配置されている。回転軸4は、回転棒72の回転軸でもある。磁界測定素子2は、回転軸4が、コイル6の中心軸であるコイル軸3から径方向にずれた位置(オフセット位置)に、配置されている。
図2では、コイル軸3から回転軸4までの長さ、すなわちオフセット長は、r0である。コイル軸3は、オフセット長の基準となる基準軸の一例である。図2において、コイル軸3の延伸方向はZ方向であり、コイル軸3に垂直な径方向軸62の延伸方向は径方向(R方向)である。コイル間中心位置は、前述したように、同一形状の2つのコイルが、コイル軸を同一にしてコイル軸上に上下対称(前後対称)に配置されるコイル対におけるコイル間中心面の位置である。図5に示したスプリットソレノイドコイル7は、同一形状の第一コイル60と第二コイル61を備え、第一コイル60と第二コイル61とがコイル軸3を同一にして、コイル軸上に上下対称(前後対称)に配置されている。図5のスプリットソレノイドコイル7において、コイル間中心位置は、第一コイル60の第一コイル面82と第二コイル61の第二コイル面83との中間であるコイル間中心面9の位置である。第一コイル面82と第二コイル面83は、互いに対向する面である。図5のように、コイル軸3が垂直方向(縦方向)となるように第一コイル60と第二コイル61を配置した場合には、第一コイル60が上側であり、第二コイル61が下側である。図5では、第一コイル60と第二コイル61とが、コイル軸上に上下対称に配置されている。コイル軸上に上下対称とは、コイル軸上が垂直方向(縦方向)となるように配置さることを前提にした用語である。明細書の説明において、「上」、「下」は、図面に記した紙面における「上」、「下」を表現したものである。また、比較基準を示さずに、「水平」、「垂直」と表現した場合も、図面に記した紙面における「水平」、「垂直」を表現したものである。したがって、コイル軸を水平方向(横方向)にした場合には、「上下対称」は「前後対称」や「左右対称」のように表記する。
図5に示したスプリットソレノイドコイル7は、同一形状の第一コイル60と第二コイル61を備え、第一コイル60と第二コイル61とがコイル軸3を同一にして、コイル軸上に上下対称(前後対称)に配置されているので、後述のように、コイル軸3に沿った径方向磁界Brの分布がコイル軸3に垂直な面(コイル間中心面9)で対称になっている。図5に示したスプリットソレノイドコイル7は、コイル軸上に上下対称(前後対称)に配置されているので、コイル軸3に沿った径方向磁界Brの分布がコイル軸3に垂直な面(コイル間中心面9)で上下対称(前後対称)である2つのコイル(第一コイル60、第二コイル61)を備えているということもできる。
磁界測定素子2は、磁界を受ける面である磁界測定面2aに垂直な磁界を検出する。磁界測定素子2は、例えば、ホール素子である。磁界測定素子2がホール素子の場合は、磁界測定面2aは、ホール素子が磁界を受ける面である。ホール素子における磁界測定面2aを、以下ではホール素子面と呼ぶ。なお、磁界測定素子2に関し、ホール素子の例を示したが、ホール素子に限らずMI(Magneto Impedance)素子などその他の方向性の磁界測定素子であって良い。
ステップS1にて、測定対象におけるコイル軸3のオフセット位置(回転軸4の位置)で、コイル軸3に平行なZ軸(回転軸4)に沿った径方向磁界分布Aを、磁界測定素子2で測定する(第一径方向磁界測定手順)。ステップS2にて、コイル軸3のオフセット位置(回転軸4の位置)で、磁界測定素子2を180度回転させて、コイル軸3に平行なZ軸(回転軸4)に沿った径方向磁界分布Bを、磁界測定素子2で測定する(第二径方向磁界測定手順)。ステップS3にて、径方向磁界分布Aと径方向磁界分布Bとの交点からコイル間中心位置を決定する(中心位置決定手順)。ステップS4にて、コイル間中心位置が基準面に一致するかを判定し、一致する場合は終了する。ステップS4にて、コイル間中心位置が基準面に一致しないと判定した場合は、ステップS5に移動する。ステップS5にて、測定対象の構造物を動かしてコイル間中心位置を基準面に一致するように修正する。その後、ステップS1に戻り、ステップS4でコイル間中心位置が基準面に一致したと判定されるまで、ステップS1〜ステップS4を繰り返す。ステップS3のコイル間中心位置を決定する原理については後で述べる。
データ処理装置74は、磁界データ入力部75と、径方向磁界特性演算部76と、コイル間位置演算部77と、表示部78を備える。磁界データ入力部75は、磁界測定素子2から送られた磁界データを受け取る。径方向磁界特性演算部76は、磁界データ入力部75から入力された磁界測定素子2の磁界データに基づいて、ステップS1とステップS2を実行する。すなわち、径方向磁界特性演算部76は、磁界データ入力部75から入力された磁界測定素子2の磁界データに基づいて、ステップS1の径方向磁界分布Aと、ステップS2の径方向磁界分布Bを演算する。コイル間位置演算部77は、ステップS3を実行する。すなわち、コイル間位置演算部77は、径方向磁界特性演算部76にて演算された径方向磁界分布Aと径方向磁界分布Bとの交点からコイル間中心位置を演算して決定する。表示部78は、径方向磁界分布A、径方向磁界分布B、これらの交点であるコイル間中心位置のデータを画像処理して、径方向磁界分布A、径方向磁界分布B、コイル間中心位置を表示部78の表示画面に表示する。表示部78には、設定された基準面の位置も表示されている。作業者は表示部78の表示画面に表示されたコイル間中心位置と基準面の位置を確認し、ステップS5の工程を実行する。すなわち、作業者は表示部78に表示されたコイル間中心位置と基準面の位置を確認し、測定対象の構造物を動かしてコイル間中心位置を修正する。
径方向磁界特性演算部76、コイル間位置演算部77、表示部78は、プロセッサ80がメモリ81に記憶されたプログラムを実行することにより、実現される。また、複数のプロセッサ80および複数のメモリ81が連携して上記機能を実行してもよい。
ここで、基準面とは、測定対象のある水平方向の面であり、コイル間中心位置を合わせる面である。以下で動作を詳しく述べる前に、基準面、基準軸及びコイル位置誤差について述べる。
例えば、高精度で製作可能な鉄心(磁極とも呼ぶ)を組み込んだマグネットを測定対象とする場合には、磁極に基準面を設定する(例えば磁極ギャップにおける磁極間中心位置等)。この磁極の基準面に対し、磁界測定装置1を用いて、コイル上下中心(コイル間中心位置)が基準面に一致する様にコイル位置を調整する。測定対象のコイルが空芯超電導コイルであれば、クライオスタットの上下中心位置である基準面に、磁界測定装置1を用いて、コイル上下中心が一致する様にコイル位置を調整する。なお、クライオスタットは超電導コイルを収納し極低温に超電導コイルを保持する機能を有する。
基準軸の設置も基準面の設定と同様で、測定対象が高精度で製作した鉄ヨーク付電磁石であれば、例えば鉄ヨーク中心に開けた穴の軸が基準軸になる。測定対象が超電導コイルであれば、高精度で製作したクライオスタットの常温ボアの中心軸を基準軸として設定する。ここでは、前述したように、オフセット長の基準となる基準軸は、位置ずれが調整されたコイル軸3である例で説明する。
これら基準面及び基準軸に対し、コイルの位置誤差を調整する必要がある。特に、加速器用電磁石など高精度で位置調整が必要なコイルでは、コイルの位置誤差の調整が必要である。コイル位置ずれは基準軸及び基準面に対し、以下の3種類があり、これら基準軸と基準面に対するコイル位置調整が必要である。
(1)コイル軸3の基準軸に対する水平方向ずれ(第一のコイル位置ずれ)
(2)基準軸に対するコイル軸3の傾き(第二のコイル位置ずれ)
(3)コイル間中心位置の基準面に対する位置ずれ(第三のコイル位置ずれ)
第一から第三のコイル位置ずれに関し、第一コイル位置ずれと第二のコイル位置ずれの測定及び修正工程は、背景技術で説明した特許文献1に記載されている。実施の形態1のコイルの位置ずれ修正方法では、特許文献1の測定及び修正工程等を適用して、すでに第一コイル位置ずれと第二のコイル位置ずれは修正できているとする。
以下では、第三のコイル位置ずれの測定原理について述べる。第一コイル位置ずれと第二のコイル位置ずれが補正できている場合には、コイルの磁界分布は図5のようになる。測定対象であるスプリットソレノイドコイル7は、第一コイル60と第二コイル61を備えている。図5では、スプリットソレノイドコイル7の磁束線8を示した。磁束線8は2本のみ示した。図5において、第一コイル60の第一コイル面82と、第二コイル61の第二コイル面83と、第一コイル面82と第二コイル面83との中間であるコイル間中心面9を示した。図5において、右側の磁束線8は回転軸4の近傍の磁束線である。なお、適宜、第一コイル面82、コイル間中心面9、第二コイル面83を、それぞれa面、b面、c面と呼ぶことにする。
図5の例は、コイル間中心位置を含むコイル間中心面9が基準面に一致した、すなわちコイル間中心位置が基準面上に位置する理想的な図である。なお、コイル間中心位置が基準面上に位置することは、コイル間中心位置が基準面に一致したということもできる。前述したように、第一コイル位置ずれと第二のコイル位置ずれは修正できているので、第一コイル面82、第二コイル面83、コイル間中心面9は、それぞれ互いに平行になっている。一般には、コイル間中心位置は基準面に一致しておらず、実施の形態1の磁界測定装置1を用いてコイル間中心位置を検出し、第一コイル60、第二コイル61の上下位置(Z方向の位置)を調整することで、コイル間中心位置を基準面に一致させる。
図5では、コイル軸3の延伸方向、すなわちZ方向に沿って同一形状のコイルを分割したスプリットソレノイドコイル7の磁束線8に沿った磁界ベクトル(矢印)の例を、a面、b面、c面の3面の位置で示している。磁束線8はスプリットソレノイドコイル7の中央面の付近では、第一コイル面82と第二コイル面83との間の空気層63のため、径方向に漏れて、すなわち径方向(外周方向)に膨らむ分布になる。単純なソレノイドコイルではない、スプリットソレノイドコイルの場合には、図5の様に、中央面の付近での磁界(磁束線8)のふくらみは大きくなる。
図6は、図5の磁界測定素子2の回転軸4に沿った磁界ベクトルのみを抽出した図である。回転軸4はコイル軸3からある距離だけ離れたオフセット位置にあり、かつZ軸に平行な軸である。図6のa面において、スプリットソレノイドコイル7の磁界ベクトルは磁界ベクトル10であり、磁界ベクトル10の径方向成分11も示した。同様に、図6のc面において、スプリットソレノイドコイル7の磁界ベクトルは磁界ベクトル13であり、磁界ベクトル13の径方向成分14も示した。径方向成分11、径方向成分14は、それぞれコイル軸3に垂直な第一コイル面82、第二コイル面83に沿った水平成分でもある。図6のb面において、スプリットソレノイドコイル7の磁界ベクトルは磁界ベクトル12であり、この磁界ベクトル12は、コイル軸3、回転軸4と平行であり、Z方向を向いている。
この回転軸4に沿った磁束密度の分布は、a面では内側に傾く磁界であり、b面では、径方向に垂直な磁界である。回転軸4に沿った磁束密度の分布は、c面では外側に傾く磁界である。このため。a面とc面とでは反対方向の水平方向(径方向)磁界成分が発生する。
径方向磁界とコイル軸3に平行な方向であるコイル軸方向(Z方向)の関係を図7に示す。図7に示した特性は、あるスプリットソレノイドコイルについて実際にビオサバール式を元に分布を数値計算した特性である。縦軸は、径方向(水平方向)磁界Brである。横軸はコイル軸3の延伸方向(垂直方向)の位置であり、すなわちZ軸上の位置(Z方向の位置)である。図に示す様に、径方向磁界Brの分布はZ軸に沿って線形に変化し、b面で磁界が零であることが分かる。b面の位置を中心にして、正方向、負方向それぞれの等距離の位置において径方向磁界Brの大きさが等しくなっている。すなわち、前述したように、コイル軸3に沿った径方向磁界Brの分布がコイル軸3に垂直な面(b面、コイル間中心面9)で対称になっている。基準面とコイル間中心面がずれている場合には。零磁界の位置がb面ではなくなる。
この径方向磁界分布を方向性磁界測定素子(ホール素子)の磁界測定素子2で検出することを試みる。方向性磁界測定素子であるホール素子は、ホール効果を利用して、検出する磁界の方向に応じて、検出電圧が変化する磁界検出素子である。まず、コイル軸3から離れた位置でのZ軸に沿った軸上で磁界測定素子2を回転させた場合を図8に示す。図8において、磁界測定素子15は回転前の磁界測定素子であり、磁界測定素子16は磁界測定素子の回転軸4を回転軸として180度回転させた後の磁界測定素子である。
図7に示した特性のような径方向磁界Brを測定するために、磁界測定素子2は磁界測定面(ホール素子面)2aの延在方向を、垂直方向(Z方向)に極力向けたい。このようにすると、コイル間中心位置でコイルが作る磁界は、Z方向を向くため径方向磁界Brは零になる。このため、後で述べる様に完全に磁界測定素子2の延在方向が垂直方向(Z方向)に向いている場合には、径方向の零磁界を検出することで、すなわち、径方向磁界Brが零になる位置を検出することで、コイル間中心位置を検出できる。
ところが、磁界測定素子2がホール素子の場合には、ホール素子面の大きさは数mmと小さく、必ず角度誤差があり実際にはホール素子面の延在方向が垂直方向には向かず、図8の磁界測定素子15のように、垂直方向(Z方向)に対してある角度を有して配置される。更に、ホール素子は、パッケージの中で素子自体が傾いている可能性がある。
ここで、図8の磁界測定素子16のように、回転軸4を軸として180度回転させると、磁界測定素子15と磁界測定素子16との位置関係は、回転軸4が包含される面を対称面にして鏡像の位置関係になる。磁界測定素子2、具体的には図8における磁界測定素子15を180度回転させても、理想的にはコイル軸3(Z軸)とのホール素子面のなす角度は変化しない様に構成する。これは、例えば、図2の回転棒72を長くすることで達成できる。回転棒72が長ければ、磁界測定素子2の磁界測定面(ホール素子面)とコイル軸3(Z軸)との距離が長くなり、角度ずれの判定が高精度にでき、角度ずれを高精度に修正できる。
図8の磁界測定素子15、16における磁界測定面(ホール素子面)2aが受ける磁界を図9、図10に示す。図9において、回転前の磁界測定素子15が回転軸4に沿ってZ方向に上下させた3つの位置における磁界測定面(ホール素子面)2aが受ける磁界を示した。また、図10において、径方向位置を変えずに磁界測定素子(ホール素子)を180度回転させた場合である磁界測定素子16が回転軸4に沿ってZ方向に上下させた3つの位置における磁界測定面(ホール素子面)2aが受ける磁界を示した。図9において、磁界成分17はb面(コイル間中心面9)で回転前の磁界測定素子15の磁界測定面(ホール素子面)2aが受ける磁界成分であり、磁界成分18はc面(第二コイル面83)で回転前の磁界測定素子15が受ける磁界成分である。図10において、磁界成分19はa面(第一コイル面82)において180度回転後の磁界測定素子16の磁界測定面(ホール素子面)2aが受ける磁界成分であり、磁界成分20はb面(コイル間中心面9)において180度回転後の磁界測定素子16の磁界測定面(ホール素子面)2aが受ける磁界成分である。
図9の磁界測定素子15がa面、b面、c面において受ける磁界ベクトル10、12、13は、図6の磁界ベクトル10、12、13と同じである。a面における磁界測定素子15の磁界測定面(ホール素子面)2aが受ける磁界成分が零であるのは、図9の一番上のa面において、磁界測定面(ホール素子面)2aの傾きが、今回の一例としてコイル磁界の傾き(磁界ベクトル10の傾き)と同じ場合の例を示したからである。この場合、磁界測定面(ホール素子面)2aと磁界(磁界ベクトル)が平行方向になる。ホール素子はホール素子面に垂直な磁界のみを検出するため、a面でのホール素子の検出磁界は零である。磁界測定素子15を回転させずZ方向負側に移動させc面に配置した場合には、図9の一番下側に示す様に、磁界測定素子15の磁界測定面(ホール素子面)2aが受ける磁界成分は最大になる。径方向磁界Brは図7に示した様に線形で変化するので、a面とc面との中間位置であるb面では、a面とc面とが受ける磁界の中間の値になる。なお、回転前の磁界成分17の大きさと、回転後の磁界成分20の大きさとは等しい。すなわち、回転前の磁界成分17と回転後の磁界成分20とは、向きが異なるが、大きさは等しい。
一般には、a面において磁界測定素子15の磁界測定面の傾きと磁界の傾きは一致しないが、磁界測定素子を上下させた場合、すなわちZ方向に移動させた場合に、磁界測定素子が受ける径方向磁界Brが、上から下に、すなわちZ方向の位置に応じて線形に増加することは変わらない。
なお、図17に示すように、磁界測定素子支持台71が回転棒92を備え、回転棒92を軸(中心)として磁界測定素子2が回転するようにすることで、磁界測定素子の磁界測定面の傾きを調整することができる。図17は、磁界測定素子の傾きを変更可能にする磁界測定素子支持台を示す図である。図18は、図17の磁界測定素子と図12の磁界測定素子との対応を説明する図である。図18において、磁界測定素子84aは、図12の磁界測定素子84に相当する。図18において、回転棒92を軸にして磁界測定素子84aを時計周りに回転させた磁界測定素子84cと、回転棒92を軸にして磁界測定素子84aを反時計周りに回転させた磁界測定素子84bを示した。磁界測定素子84bを、その中心が回転軸21に一致するように回転軸4側に平行移動させると、磁界測定素子85になる。磁界測定素子84cを、その中心が回転軸21に一致するように回転軸4側に平行移動させると、磁界測定素子86になる。
次に、図10を用いて回転軸4を軸として磁界測定素子15を180度回転させた後の磁界測定素子16が受ける磁界を説明する。図8では磁界測定素子16を破線で示したが、図10では磁界測定素子16を実線で示している。図10の磁界測定素子16が受ける磁界は、すなわち、磁界測定素子16がa面、b面、c面において受ける磁界ベクトル10、12、13は、図6の磁界ベクトル10、12、13と同じである。図10で示した様に、磁界測定素子16の磁界測定面(ホール素子面)2aが受ける磁界成分は、図9とは逆に下から上に、すなわちZ方向正側に磁界測定素子16を移動させるにつれて増加する。即ち、図10のc面において磁界測定素子16の磁界測定面(ホール素子面)2aが受ける磁界成分は零であり、図10のa面において磁界測定素子16の磁界測定面(ホール素子面)2aが受ける磁界成分は最大になる。図10のb面において、磁界測定素子16の磁界測定面(ホール素子面)2aが受ける磁界成分は、a面における磁界成分19とc面における磁界成分の中間の磁界成分になる。なお、図10のc面における磁界測定素子16の磁界測定面(ホール素子面)2aが受ける磁界成分は零であるが、これも、図10の例は、今回の一例としてc面においてコイル磁界の傾き(磁界ベクトル13の傾き)と磁界測定面(ホール素子面)とを同じにしたためであり、必ずしも左記が一致する訳ではない。
また、図9のb面における磁界測定素子15の磁界測定面(ホール素子面)2aが受ける磁界成分と、図10のb面における磁界測定素子16の磁界測定面(ホール素子面)2aが受ける磁界成分の大きさは等しくなる。図9の磁界測定素子15の磁界測定面(ホール素子面)2aが受ける径方向磁界BrのZ軸に沿った磁界分布64と、図10の磁界測定素子16の磁界測定面(ホール素子面)2aが受ける径方向磁界BrのZ軸に沿った磁界分布65を、図11に示した。図11において、縦軸は径方向磁界Brであり、横軸はZ方向の位置である。横軸のa、b、cはそれぞれa面、b面、c面の位置を示している。なお、今までは、a面からc面の3点で代表させた説明したが、図11ではZ軸方向の分布を多数点測定したことを仮定し連続な分布で描いている。
図11において、磁界分布64は図9のように傾いた磁界測定素子15相当のホール素子で測定した磁界分布であり、磁界分布65は図10のように傾いた磁界測定素子16相当のホール素子で測定した磁界分布である。図11に示す様に、磁界分布64と、磁界分布65との交点はb面相当位置であり、これは前述した様にコイル間中心位置である。図11の例では、b面とコイル間中心位置が一致している。図11に示す様に、回転前の径方向磁界BrをZ方向に変化させた磁界分布64と、180度回転後の径方向磁界BrをZ方向に変化させた磁界分布65の交点からコイル間中心位置を検出できる。
なお、図11において、磁界分布64の径方向磁界Brがa面で零であり、磁界分布65の径方向磁界Brがc面で零であるが、これは今回の一例として零と設定したためであり、必ずしも零になるわけではない。即ち、以前述べた様に、図9のa面あるいは図10のc面で、今回の一例として磁界測定面(ホール素子面)に平行な面と磁界の向きとが一致した様な図にしたため、図11のようになっている。
次に、磁界測定素子(ホール素子)の傾きに、設定角度に対する角度誤差がある場合について述べる。磁界測定素子(ホール素子)の傾き誤差の例を示した図が図12である。図12は磁界測定素子の傾きに角度誤差がある場合を示す図であり、図13は図12の状態の磁界測定素子により測定された径方向磁界成分のZ方向分布を示す図である。図14は、図5のa面で磁界測定素子を回転させた場合における径方向磁界成分の角度依存性を示す図である。図15は図5のb面で磁界測定素子を回転させた場合における径方向磁界成分の角度依存性を示す図であり、図16は図5のc面で磁界測定素子を回転させた場合における径方向磁界成分の角度依存性を示す図である。
磁界測定素子(ホール素子)の傾き誤差を検討するために、磁界測定素子(ホール素子)が紙面に垂直方向の軸である回転軸21を軸にして回転して誤差が発生する場合を考える。図12において、磁界測定素子84は鉛直方向(Z方向)に向いたホール素子であり、磁界測定素子85は上側が図の左に傾いたホール素子、磁界測定素子86は上側が図の右に傾いたホール素子である。なお、図12において、図11に示した磁界分布64、65を測定する際に磁界測定素子2を回転させる回転軸4も示した。
図13において、磁界分布87aは磁界測定素子84で測定した径方向磁界BrのZ方向依存性を示している。磁界分布87bは、回転軸4で180度回転後の磁界測定素子84で測定した径方向磁界BrのZ方向依存性を示している。図13において、a、b、cは、それぞれa面、b面、c面のZ方向の位置を示している。磁界分布88aは磁界測定素子85で測定した径方向磁界BrのZ方向依存性を示しており、磁界分布88bは回転軸4で180度回転後の磁界測定素子85で測定した径方向磁界BrのZ方向依存性を示している。同様に、磁界分布89aは磁界測定素子86で測定した径方向磁界BrのZ方向依存性を示しており、磁界分布89bは回転軸4で180度回転後の磁界測定素子86で測定した径方向磁界BrのZ方向依存性を示している。
磁界分布87aと磁界分布87bの交点90aのZ位置は、磁界測定素子84で測定したコイル間中心位置に該当する。同様に、磁界分布88aと磁界分布88bの交点90bのZ位置は、磁界測定素子85で測定したコイル間中心位置に該当し、磁界分布89aと磁界分布89bの交点90cのZ位置は、磁界測定素子86で測定したコイル間中心位置に該当する。図13に示す様に、交点、90b、90a、90cは同一のZ位置であり、磁界測定素子2に傾きが生じてもコイル間中心位置は同一位置を示す。即ち、本実施の形態1による磁界測定方法によれば、磁界測定素子(ホール素子)が配置された、垂直方向(Z方向、コイル軸方向)からの角度が設定角度と異なっていても、磁界測定素子(ホール素子)における垂直方向(Z方向、コイル軸方向)からの傾き誤差に関係なく、交点のZ位置はずれない。このため、本実施の形態1の磁界測定方法は、磁界測定素子(ホール素子)の配置に傾き誤差があったとしても、コイル間中心位置の測定結果はずれることなく、コイル間中心位置を高精度に決定できる。
なお、実施の形態1の磁界測定方法では磁界測定素子(ホール素子)を180度回転させる必要があり、回転軸4を軸にして回転時に回転誤差(回転角度誤差)が発生する場合がある。回転軸4を軸にして磁界測定素子を回転させた場合の回転誤差(回転角度誤差)を最小限にするには、例えば、図2の回転棒72を長くすれば良い。回転棒72が長ければ、磁界測定素子2の位置ずれが大きくなり、位置ずれの判定を高精度にでき、位置ずれを高精度に修正できる。
また、回転軸4を軸にした磁界測定素子2の回転角度の精度は重要ではない。なぜなら、コイル間中心位置では回転軸4の精度さえ確保できていれば、図15のように回転角度によらず一定の磁界を検出するからである。これについては後で詳しく述べる。なお、上記では180度回転させる必要があると述べたが、回転角度は必ずしも回転角度は180度である必要はなく、他の角度でも良い。他の角度で測定した上下分布(Z方向分布)を用いても、コイル上下中心(コイル間中心位置)では同じ磁界を検出するため、異なる回転角で測定した上下方向に沿った分布の交点がコイル上下中心になる。なお、回転角度の検出にはエンコーダなどが用いられることが多い。上記は2種類異なる回転角度で測定した場合について述べたが、更に多くの複数の回転角度で上下分布を測定しても良い。
なお、図17に示すように、磁界測定素子支持台71が回転棒92を備え、回転棒92を軸として磁界測定素子2を回転させれば、図13に示す様に、回転軸4を軸とした回転前後の磁界分布の交点位置における径方向磁界Brの強度を自由に変更できる。即ち、図11の径方向磁界成分のZ方向分布おいて、交点(径方向磁界Brの強度)を上下でき、コイル間中心位置を決定する際に所望の検出判定値に設定できる。
磁界測定素子2を回転軸4に対して少なくとも2つの回転位置(回転前と回転後)にして磁界を測定する方法は、磁界中で連続的に磁界測定素子2を回転させることが難しい場合に有効である。今まで示した例では、磁界測定素子2の回転角は0度と180度の2点である。
磁界中で磁界測定素子2を回転させることが難しい場合、角度0度で磁界測定素子2をZ方向に上下させて磁界測定し、一旦磁界を零にし、更に磁界測定素子2を180度に回転させた後、磁界を上げてから磁界測定素子2をZ方向に上下に移動させて、径方向の磁界分布を測定すれば良い。少なくとも、回転角度を変更した2回、磁界測定素子2をZ方向に上下させて測定対象コイルの磁界分布を測定し、異なる回転角度(例えば、0度と180度)に関し2点の磁界分布を比較することで、測定対象コイルのコイル間中心位置を決定できる。
以上は、磁界測定素子2の回転角度が2点の場合の例を説明したが、連続的に磁界測定素子2を回転させても良い。以下ではこの例について述べる。即ち、磁界測定素子2を回転軸4に沿って回転させながら、かつZ方向に上下させても良い。この場合に測定される径方向磁界Brの例を、図14〜図16に示した。磁界分布91a、91b、92cは、それぞれ図9、図10の各面(a面、b面、c面)で回転軸4に沿って回転させた場合の磁界分布である。
図14〜図16において、横軸は回転軸4を回転軸として磁界測定素子2を回転させた場合の角度θであり、縦軸は径方向磁界Brである。図14は、a面において磁界測定素子2が受ける磁界の角度依存性を示している。図15はb面において磁界測定素子2が受ける磁界の角度依存性を示しており、図16はc面において磁界測定素子2が受ける磁界の角度依存性を示している。
図9、図10の説明において、a面では磁界測定素子(ホール素子)の角度が0度のとき(回転前)に測定される磁界が零であると示し、a面では磁界測定素子(ホール素子)を180度回転させた場合には測定される磁界が最大になると示した。従って、a面での径方向磁界Brの角度依存性は、磁界分布91aのように、一定磁界成分(一定の磁界値)にマイナスCOS成分(余弦成分)が重畳した分布になる。一定の磁界値は、90度での磁界成分の値である。
一方、b面では図15から分かる様に、θ方向に沿った磁界分布は角度に依存せず一定である。これが、上で述べた様に回転軸4の周りを回転する回転角の精度は重要ではない理由である。なお、図9、図10の説明において、b面では磁界測定素子(ホール素子)の回転前後に測定される磁界は、向きが異なるが大きさは等しいことを示した。
更に、図9、図10の説明において、c面では磁界測定素子(ホール素子)の角度が0度のとき(回転前)に測定される磁界が最大であると示し、c面では磁界測定素子(ホール素子)を180度回転させた場合には測定される磁界が零になると示した。従って、c面では磁界測定素子(ホール素子)の角度が0度のときに磁界は最大で、角度が180度のとき磁界は零であるので、磁界分布91cのように、一定磁界成分(一定の磁界値)にCOS成分(余弦成分)が重畳した分布になる。一定の磁界値は、90度での磁界成分の値である。
以上より、磁界測定素子(ホール素子)で測定された磁界がマイナスCOS波形(磁界分布91a)であれば、測定対象コイルの基準面がコイル間中心面9よりZ方向上側(Z方向正側)にあることが分かる。また、磁界測定素子(ホール素子)で測定された磁界がプラスCOS波形(磁界分布91c)であれば、測定対象コイルの基準面がコイル間中心面9(コイル上下中心面)よりZ方向下側(Z方向負側)にあることが分かる。したがって、磁界測定素子(ホール素子)で測定された磁界の波形の形状に基づいて、コイル間中心面9と測定対象コイルの基準面の上下関係が分かる。更に、磁界測定素子(ホール素子)で測定された磁界の波形の形状が、COS成分あるいはSiN成分(正弦成分)が零で一定になれば、現在の測定対象コイルの基準面がコイル間中心面9である。今までは、図2の径方向軸62上での測定について述べた。径方向軸62以外の径方向軸、すなわち径方向軸62をコイル軸3に対して回転させたある角度の位置で上下に移動させて測定しても良い。また、径方向に関しても今までは1点のみの測定であったが、複数点で測定しても良い。同様に、回転軸4を回転させた、複数の角度で測定しても良い。多くの点を測定することで精度が向上する。
この様に、今まで述べてきた実施の形態1の磁界測定方法により、コイル間中心面9が測定できるため、コイル間中心面9と磁界測定基準面(測定対象コイルの基準面)とが一致する様に、スプリットソレノイドコイル7における第一コイル60と第二コイル61の相対位置の調整を実施すればよく、前述した第三のコイル位置ずれを高精度に調整することができる。
今までは、径方向成分の磁界(径方向磁界Br)について説明した。以下では、コイルの軸方向成分の磁界であるコイル軸方向磁界Bzを用いたコイル間中心位置の検出可能性について述べる。
図19は、図5のスプリットソレノイドコイルのコイル軸方向磁界成分の軸方向(Z方向)分布を示す図である。図19に示したコイル軸方向磁界Bzの分布は、Z軸からあるオフセット長r0だけ離れた位置におけるコイル軸方向磁界BzのZ方向に沿った分布である。コイル間中心位置を示す位置(Z=0の位置、零位置)では、コイル軸方向磁界Bzはフラットになりコイル間中心位置を検出しにくい。また、零位置での磁界も超電導コイルの場合は、数テスラになり、磁界強度に対する磁界変化の相対比は小さく、コイル軸方向磁界Bzを用いて零位置を検出するのは精度が良くない。なお、図12の磁界測定素子84のように、回転軸4に平行になるように配置された磁界測定素子2、すなわち回転軸4との配置角度が零である磁界測定素子2を用いる場合には、図13の交点90aのように、径方向磁界Brはコイル間中心位置で零であり、Z方向上側(正側)とZ方向下側(負側)で径方向磁界Brの符号も変わるため、コイル間中心位置を検出しやすい。
次に、実施の形態1の磁界測定方法を、特許文献1の磁界測定装置に相当する比較例の磁界測定装置で行われる磁界測定方法と比較する。図20は比較例の磁界測定素子における回転前の面垂直方向磁界成分を示す図であり、図21は比較例の磁界測定素子における回転後の面垂直方向磁界成分を示す図である。図22は比較例の磁界測定素子により測定された径方向磁界成分のZ方向分布を示す図であり、図23は比較例の磁界測定素子の傾きに角度誤差がある場合を示す図である。図24は、図23の状態の磁界測定素子により測定された径方向磁界成分のZ方向分布を示す図である。比較例の磁界測定装置は、円盤に載った磁界測定素子(ホール素子)を円盤の基準軸(コイル軸3に相当)でもある回転軸109のみを中心として360度回転させて、磁界を測定する装置である。比較例の磁界測定装置では、実施の形態1の磁界測定装置1のように、回転軸4に沿って磁界測定素子110は回転しないため、コイル間中心位置は検出できない。即ち、特許文献1に記載された方法ではコイル間中心位置は検出できない。以下ではこれについて示す。
図20は、回転軸109を中心にした角度が0度での磁界測定素子110が受ける磁界である。この図20は、図9に相当するものである。b面で磁界測定素子110の磁界測定面(ホール素子面)が受ける磁界成分は、磁界成分17である。c面で磁界測定素子110の磁界測定面(ホール素子面)が受ける磁界成分は、磁界成分18である。比較例の磁界測定装置では、回転軸4で磁界測定素子110を回転させる機能はなく、基準軸(コイル軸3に相当)でもある磁界測定装置の回転軸109(Z軸)に沿って磁界測定素子110を回転させる機能しかない。図21において、回転軸109を中心にした角度が180度の場合における磁界測定素子110を、磁界測定素子111とした。この磁界測定素子111をZ方向の上下に移動させて、磁界を測定した場合は図21のようになる。
図21において、コイルの磁束線に沿った磁界ベクトル26、28、30は、図5の左側に示した磁束線8に沿った磁界ベクトルと同様である。a面、b面、c面における磁界ベクトルは、それぞれ磁界ベクトル26、28、30である。磁界成分31は、b面において磁界測定素子111の磁界測定面が受ける面垂直方向の磁界成分である。磁界成分32は、c面において磁界測定素子111の磁界測定面が受ける面垂直方向の磁界成分である。
図21の磁界測定素子111の磁界測定面が受ける磁界成分は、図20とは磁界測定素子2がZ軸(回転軸109)を軸として反対称に配置されており、磁界の向きもZ軸(回転軸109)を軸として反対称のため、磁界の大きさは図20と同じである。即ち、a面で磁界測定素子111の磁界測定面が受ける磁界成分は零であり、c面で磁界測定素子111の磁界測定面が受ける磁界成分は最大になる。Z軸方向に上下させた場合の磁界分布を図22に示す。この図22は、実施の形態1の磁界測定方法における図11に対応するものである。比較例の磁界測定装置では、図20と図21の径方向磁界Brの分布は一致し、いずれも磁界分布112になる。このため、実施の形態1の図11と異なり、回転軸109に対する回転前後の特性が同じなので、交点が存在せず、コイル間中心位置は決定できない。
なお、図22において、a面の位置に該当するaの位置で、今回の一例として径方向磁界Brが零になるが、これは以前述べたと同様に、今回の一例として図20や図21のa面において、磁界測定素子110、111のホール素子面の向きと、磁界(磁界ベクトル10、26)の向きを等しい図にしたためである。
比較例の磁界測定装置においても、完全に磁界測定素子が回転軸109に平行な方向、すなわちZ方向(図20、図21の垂直方向)に向けることができれば、径方向磁界Brの零磁界位置を検出することでコイル間中心位置を決定できる。この方法は、従来からコイル間中心位置を求めるために用いられてきた方法である。但し、磁界測定素子(ホール素子)を通過する、回転軸109に平行な軸(実施の形態1における回転軸4)からの傾き誤差がある場合、すなわち磁界測定素子(ホール素子)の配置に誤差がある場合には、この方法では、コイル間中心位置に誤差が発生する。この場合の例を、図23と図24に示した。
図24において、磁界分布117は磁界測定素子113で測定した径方向磁界BrのZ方向依存性であり、磁界分布118は磁界測定素子114で測定した径方向磁界BrのZ方向依存性であり、磁界分布119は磁界測定素子115で測定した径方向磁界BrのZ方向依存性である。図23における紙面に垂直方向の回転軸116は、比較例の磁界測定素子113、114、115における傾き誤差を説明するために設定した仮想の回転軸である。図24において、零点120は磁界分布117の零点であり、コイル間中心位置に該当するZ位置である。図24に示した誤差121は、コイル間中心位置の測定において生じる誤差である。図24において、Z方向の位置a、b、cは、それぞれ図20、図21におけるa面、b面、c面の位置である。
図24の磁界分布117に示すように、コイル間中心位置ではコイルが発生する磁界はZ方向(図20、図21の垂直方向)を向いており、径方向磁界Brは零になっている。したがって、磁界測定素子の磁界測定面(ホール素子面)が磁界測定素子113の様に垂直に向いた場合には、磁界測定素子(ホール素子)が検出する磁界は零で、コイル間中心位置を検出することが可能である。
しかしながら、磁界測定素子(ホール素子)の配置において、Z方向に対して傾き誤差がある場合には、図24の磁界分布118や磁界分布119のように、コイル間中心位置の測定で誤差121が発生する。ホール素子は以前述べた様に大きさが数mmと小さく、ホール素子面を高い精度でZ方向に(図20の垂直方向に)向けることは困難である。
一方、実施の形態1の磁界測定装置1及び磁界測定方法は、図12及び図13を用いて説明した様に、磁界測定素子(ホール素子)のZ方向に対する傾きに依存せず、即ち磁界測定素子(ホール素子)の傾き誤差がある場合にも、回転軸4に対する回転前後の磁界分の交点は、Z方向における一定位置を示すため、コイル間中心位置を高精度で求めることが可能である。
今までは、磁界を発生するコイルはスプリットソレノイドコイル7の例を示した。他のコイルでもコイル軸方向に対称であれば、実施の形態1の磁界測定方法を適用できる。この例を示したのが、図25の例である。図25は本発明の測定対象であるバナナ型コイルを示す図であり、図26は図25のバナナ型コイルの断面を示す図である。バナナ型コイル33は、第一コイル93と第二コイル94とを備えている。バナナ型コイル33は、径方向(R方向)の形状は非対称であるが、Z方向の形状は対称である。図26のように、第一コイル93の断面と、第二コイル94の断面とがZ方向に対称の場合には、Z方向の磁界分布も、スプリットソレノイドコイル7の磁界分布(図5参照)と同様に、中央で外側に膨らみ、磁界の大きさはb面を中心面にしてZ方向における上下対称となる。このため、バナナ型コイル33も、実施の形態1の磁界測定方法により、第一コイル93と第二コイル94とにおけるコイル間中心面からの上下位置ずれを検出できる。
なお、今までは第一コイルと第二コイルとの例を示したが、図2の様に1個のソレノイドコイルであっても良い。また、上下に対称に配置された4個以上の偶数個のコイルであっても良い。更には、奇数個のコイルや上下非対称な偶数個のコイルであっても、少なくとの1か所上下に沿ってほぼ対称な磁界分布を有するコイルであれば、実施の形態1の磁界測定方法は適用可能である。なお、測定対象コイルが、コイル軸を同一にした複数のコイルを備えた組合せコイルであり、かつコイル軸に沿った少なくとも1つの径方向における径方向磁界の分布がコイル軸に垂直な面で対称である場合でも、第一コイルと第二コイルの例と同様に、径方向磁界の分布におけるコイル軸方向の中心位置はコイル間中心位置である。なお、第一コイルと第二コイルとを備えたコイル対も、組合せコイルである。測定対象コイルが、1個のソレノイドコイルの場合は、径方向磁界の分布におけるコイル軸方向の中心位置は、コイル内に位置しており、コイル中心位置と呼ぶことにする。
なお、特許文献2の磁界測定方法では、被測定物がCRT(Cathode Ray Tube)用コイルであり、このコイル形状はコイル軸(Z軸)に沿って非対称であり、コイル軸(Z軸)に沿った磁界分布も非対称である。このため、コイル軸(Z軸)に沿って磁界分布が、コイル軸に垂直な面で対称であることを利用した実施の形態1のコイル間中心位置の決定方法を適用することはできない。
以上のように、実施の形態1の磁界測定方法は、コイル軸3を同一にした複数のコイル(第一コイル60、第二コイル61)を備えた組合せコイルであり、かつコイル軸3に沿った少なくとも1つの径方向における径方向磁界の分布がコイル軸3に垂直な面で対称になる測定対象コイル(スプリットソレノイドコイル7、バナナ型コイル33)における、径方向磁界の分布におけるコイル軸方向の中心位置であるコイル間中心位置を決定する磁界測定方法である。実施の形態1の磁界測定方法は、コイル軸3から径方向に設定長(オフセット長r0)だけ離れたオフセット位置に配置された磁界測定素子2により、オフセット位置でコイル軸3に平行なオフセット軸(回転軸4)に沿った第一の径方向磁界を測定する第一径方向磁界測定手順と、オフセット位置にて、オフセット軸(回転軸4)を中心に設定角度だけ回転された磁界測定素子2により、オフセット軸(回転軸4)に沿った第二の径方向磁界を測定する第二径方向磁界測定手順と、第一径方向磁界測定手順にて測定された第一の径方向磁界のオフセット軸方向の特性である第一径方向磁界特性(磁界分布64、87a、88a、89a)と、第二径方向磁界測定手順にて測定された第二の径方向磁界のオフセット軸方向の特性である第二径方向磁界特性(磁界分布65、87b、88b、89b)とに基づいて、コイル間中心位置を決定する中心位置決定手順とを含むことを特徴とする。実施の形態1の磁界測定方法は、オフセット位置にてコイル軸3に平行なオフセット軸(回転軸4)を中心に回転させる前後の径方向磁界特性(磁界分布64、65)に基づいて、コイル間中心位置を決定するので、測定対象である複数のコイル(第一コイル、第二コイル)を備えた組合せコイル(スプリットソレノイドコイル7、バナナ型コイル33)のコイル間中心位置を高精度に決定することができる。
また、実施の形態1の磁界測定方法は、コイル軸3に沿った径方向磁界の分布がコイル軸3に垂直な面で対称になる測定対象コイル(コイル6)における、径方向磁界の分布を用いてコイル軸方向に沿った上下コイル中心(コイル中心位置)を決定する磁界測定方法である。実施の形態1の磁界測定方法は、コイル軸3から径方向に設定長(オフセット長r0)だけ離れたオフセット位置に配置された磁界測定素子2により、オフセット位置でコイル軸3に平行なオフセット軸(回転軸4)に沿った第一の径方向磁界を測定する第一径方向磁界測定手順と、オフセット位置にて、オフセット軸(回転軸4)を中心に設定角度だけ回転された磁界測定素子2により、オフセット軸(回転軸4)に沿った第二の径方向磁界を測定する第二径方向磁界測定手順と、第一径方向磁界測定手順にて測定された第一の径方向磁界のオフセット軸方向の特性である第一径方向磁界特性(磁界分布64、87a、88a、89a)と、第二径方向磁界測定手順にて測定された第二の径方向磁界のオフセット軸方向の特性である第二径方向磁界特性(磁界分布65、87b、88b、89b)とに基づいて、上下コイル中心(コイル中心位置)を決定する中心位置決定手順とを含むことを特徴とする。実施の形態1の磁界測定方法は、オフセット位置にてコイル軸3に平行なオフセット軸(回転軸4)を中心に回転させる前後の径方向磁界特性(磁界分布64、65)に基づいて、上下コイル中心(コイル中心位置)を決定するので、測定対象である1つのソレノイドコイル(コイル6)の上下コイル中心(コイル中心位置)を高精度に決定することができる。
実施の形態2.
図27は、本発明の実施の形態2による磁界測定装置を示す図である。図28〜図30は、図27の磁界測定素子の回転を説明する図である。図31は図28の磁界測定素子における面垂直方向磁界成分を示す図であり、図32は図30の磁界測定素子における面垂直方向磁界成分を示す図である。実施の形態1の磁界測定装置1では、磁界測定素子2がコイル軸3に対して回転せずに、回転軸4を中心に回転する例を示した。実施の形態2の磁界測定装置1では、測定対象コイルのコイル軸に一致する位置にある回転軸23に対して磁界測定素子2が回転する例を示す。特許文献1に記載された装置は、回転する円盤上にホール素子が載っていたが、上記特許文献1は円盤上ではホール素子自体は回転しなかった。実施の形態2の磁界測定装置1は、回転する円盤22の上で、かつ回転軸23から径方向(R方向)にオフセット長r0だけ離れた位置において、磁界測定素子2が回転する機構を有している。
実施の形態2の磁界測定装置1は、磁界測定素子2と、磁界測定素子2を支持する磁界測定素子支持台71と、磁界測定素子支持台71を搭載する回転台5と、回転台5を搭載する円盤22と、円盤22に固定された回転棒99と、回転棒99を回転するモータ100と、回転台5に固定された回転棒72と、回転棒72を回転するモータ73と、磁界測定素子2から入力された磁界データからコイル間中心位置を演算するデータ処理装置74を備える。円盤22は基準軸である回転軸23に対して回転する。
実施の形態2の磁界測定装置1は、磁界測定素子2が回転軸4を中心に回転し、かつ回転軸23に対して回転するので、2軸の回転軸を有する磁界測定装置である。特許文献1に記載された装置は、回転する円盤上にホール素子が載っていたが、円盤上ではホール素子自体は回転しなかった。特許文献1に記載された装置は、コイル軸の傾き、コイル軸のずれを調整できたが、実施の形態1で説明したように、測定対象であるコイル対のコイル間中心位置を正確に決定できず、コイル対におけるコイル間中心位置の基準面に対する位置ずれを調整することはできなかった。特許文献1の構成を改良し、本発明の基本構成である、測定対象コイルのコイル軸に一致する位置にある回転軸23から径方向(R方向)にオフセット長r0だけ離れた位置において、磁界測定素子2が回転する機構を追加することにより、コイル軸の傾き、コイル軸のずれのみならず、コイル軸方向に対称なコイルにおけるコイル間中心位置のずれを調整できる。即ち、コイル位置誤差関係の全て、すなわち第一のコイル位置ずれ、第二のコイル位置ずれ、第三のコイル位置ずれを調整可能である。実施の形態2では、測定対象であるコイル対のコイル間中心位置を決定する方法を説明する。この実施の形態2の磁界測定装置1に、コイル軸の傾き、コイル軸のずれを調整する工程を追加した磁界測定方法及び磁界測定装置の例は、実施の形態4で説明する。
実施の形態1と同様に、実施の形態2のコイルの位置ずれ修正方法では、特許文献1の測定及び修正工程等を適用して、すでに第一コイル位置ずれと第二のコイル位置ずれは修正できているとする。実施の形態2による磁界測定方法を含むコイルの位置ずれ修正方法のフローチャートは、図1と同様である。実施の形態2の磁界測定方法は、ステップS1において、コイル軸のオフセット位置(第一のオフセット位置)で、径方向磁界分布Aを測定する。ステップS2において、磁界測定素子(ホール素子)2を、第1の回転軸である回転軸23に関して180度回転(第一次回転)させて、磁界測定素子(ホール素子)2をコイル軸のオフセット位置(第二のオフセット位置)に配置する。そして、この第二のオフセット位置で、第2の回転軸である回転軸4に関して180度回転(第二次回転)させて、径方向磁界分布Bを測定する。ステップS3にて、径方向磁界分布Aと径方向磁界分布Bとの交点からコイル間中心位置を決定する。ステップS4、S5の手順は、実施の形態1と同じである。なお、回転軸23から径方向(R方向)に離れた長さであるオフセット長r0は、第一回転した状態でも変わらない。オフセット長r0が同一である第一のオフセット位置及び第二のオフセット位置において、測定対象のコイルにおける磁界は同じである。
第一のオフセット位置において径方向磁界分布Aを測定し、第二のオフセット位置において、第2の回転軸である回転軸4を回転させて磁界測定素子(ホール素子)2を回転(第二次回転)させ、磁界測定素子(ホール素子)2をZ方向に上下させた場合の径方向磁界分布Bを求めれば、径方向磁界分布Aと径方向磁界分布Bとの交点から測定対象のコイルにおけるコイル間中心位置を決定でき、コイル間中心位置のずれを検出できる。コイル間中心位置を決定する原理は、図8から図16を用いて、実施の形態1で述べた通りである。
図28から図30には、回転軸23に関して磁界測定素子2を回転させた後、更に回転軸4に関して回転した場合の例を示した。図28には、回転軸23に関して回転させる前の磁界測定素子2を示している。図29には、円盤22の回転軸23を中心にして180度回転させた場合の磁界測定素子を、磁界測定素子24を示している。図30には、磁界測定素子24を回転軸4を中心にして180度回転させた磁界測定素子を、磁界測定素子25として示している。
図28から図30の磁界測定素子の配置を元に、実施の形態2による磁界測定方法を含むコイルの位置ずれ修正方法を説明する。図31では、円盤22の回転軸23及び磁界測定素子2の回転軸4を回転させる前の状態で磁界測定素子2の磁界測定面(ホール素子面)が受ける磁界を示している。この図31は、図9と同じ状態を示している。図31では、磁界測定素子の符号以外に、図9のコイル軸3に代わって、測定対象コイルのコイル軸に一致する位置にある回転軸23になって点で異なるだけである。図32は、図30の状態で磁界測定素子25をZ軸方向に沿って上下させた場合の磁界測定素子の磁界測定面(ホール素子面)が受ける磁界を示している。
図32において、磁界ベクトル26は、180度円盤回転時の磁界測定素子25がa面において受けるコイルの磁界ベクトルである。磁界ベクトル28は磁界測定素子25がb面において受けるコイルの磁界ベクトルであり、磁界ベクトル30は、磁界測定素子25がc面において受けるコイルの磁界ベクトルである。磁界成分27はa面で磁界測定素子25の磁界測定面(ホール素子面)が受ける面垂直方向磁界成分であり、磁界成分29はb面で磁界測定素子25の磁界測定面(ホール素子面)が受ける面垂直方向磁界成分である。
図32の磁界測定素子25の磁界測定面(ホール素子面)が受ける磁界成分は、磁界測定面(ホール素子面)の傾き方向は異なるが、図10と同じになる。即ちa面での磁界成分27が最大の磁界で、c面での磁界成分は零になる。図32の磁界測定素子25の磁界測定面(ホール素子面)が受ける径方向磁界BrのZ軸に沿った磁界分布と、図31の磁界測定素子2の磁界測定面(ホール素子面)が受ける径方向磁界BrのZ軸に沿った磁界分布を描くと、図11と同じ分布になる。すなわち、図32の磁界測定素子25の磁界測定面(ホール素子面)が受ける径方向磁界BrのZ軸に沿った磁界分布は、図11の磁界分布65と同じになる。図31の磁界測定素子2の磁界測定面(ホール素子面)が受ける径方向磁界BrのZ軸に沿った磁界分布は、図11の磁界分布64と同じになる。
実施の形態1で説明したように、回転前の径方向磁界BrをZ方向に変化させた磁界分布64と、第二のオフセット位置で180度回転後の径方向磁界BrをZ方向に変化させた磁界分布65の交点からコイル間中心位置を検出できる。
なお、図27に示した実施の形態2の磁界測定装置1で回転軸23に沿って回転して磁界を測定した場合、回転時に磁界測定素子2の位置ずれがない限り、回転軸4に関する回転前の0度における分布と、回転後の180度における分布とは理想的にはCOS分布(COS波形形状の分布)になるはずである。一方、コイル等のゆがみ等があると高調波が載った異なる分布になると考えられ、コイルの歪みも分かる。即ち、実施の形態2の磁界測定装置1では、フーリエ変換することで、コイルの歪みを判別可能である。
今までは、磁界測定素子2は方向性であっても、磁界測定素子2が回転や移動をしなくても磁界の検出ができる素子を前提としていた。しかし、磁界測定素子2は、回転しなければ起電力が生じない素子、例えばサーチコイルであっても良い。次に、サーチコイルについて述べる。図33は本発明の実施の形態2による他の磁界測定素子を示す図であり、図34は図33の磁界測定素子による出力電圧波形を示す図である。図34において、縦軸は電圧Vであり、横軸は時間tである。図33、図34を用いて、サーチコイル95の検出原理を説明する。サーチコイル95を回転軸97に関し回転させると、サーチコイル95の鎖交する磁束96の変化に応じた電圧が、サーチコイル95の両端に図34の電圧波形98の様に出力される。更に、電圧を積分することで、サーチコイル95のサーチコイル面に垂直な磁界を測定することが可能である。
以下、回転軸97を図33のように鉛直方向(Z方向)に向けるとする。サーチコイル95は、ホール素子に比べて大きいので、回転軸97を鉛直方向(Z方向)に向けることは容易である。Z方向に垂直な径方向磁界Brの測定には、サーチコイル95の回転軸97を鉛直方向(Z方向)に向ければ可能である。また、サーチコイル95あるいはサーチコイル95を支持する支持棒(図示せず)は、仮にZ軸方向に長ければ、回転時の回転軸ずれを最小化できる。
サーチコイル95を基準軸(コイルのコイル軸)から離れた位置に配置し、かつZ方向で上下させた場合には、サーチコイル95の検出する磁界ベクトルは図31と同じになる。更に、円盤22を180度回転させて測定した場合の磁界ベクトルは図32と同じになる。したがって、サーチコイル95により検出した磁界分布は、図13に示す様になり、回転軸23に対する回転前後の磁界分布の交点からコイル間中心位置を求めることが可能である。
実施の形態2の磁界測定方法は、実施の形態1の磁界測定方法と同様に、測定対象である複数のコイル(第一コイル、第二コイル)を備えた組合せコイル(スプリットソレノイドコイル7、バナナ型コイル33)のコイル間中心位置を高精度に決定することができる。また、実施の形態2のコイルの位置ずれ修正方法は、実施の形態1のコイルの位置ずれ修正方法と同様に、コイル間中心面9と磁界測定基準面(測定対象コイルの基準面)とが一致する様に、組合せコイルの各コイルの相対位置の調整を実施すればよく、前述した第三のコイル位置ずれを高精度に調整することができる。組合せコイルがスプリットソレノイドコイル7の場合は、コイル間中心面9と磁界測定基準面(測定対象コイルの基準面)とが一致する様に、第一コイル60と第二コイル61の相対位置の調整を実施する。
実施の形態3.
実施の形態3の磁界測定方法を説明する。図35は、本発明の実施の形態3による磁界測定素子の位置を説明する図である。図35には、スプリットソレノイドコイルの径方向磁界Brにおける径方向(R方向)依存性を示した。縦軸は径方向磁界Brであり、横軸は径方向の位置Rである。図35において、コイル内径位置35と、コイル内径位置36を示した。コイル内径位置36は、コイル内半径R0の4/5の位置である。図35に示すように、R=0では、径方向磁界Brは零であるので、図35はコイル軸からR方向に沿って少し位置がずれた場合の例である。この磁界分布はスプリットソレノイドコイルの形状に関係がある。
径方向磁界Brが大きいほど、磁界測定素子2の感度も良くなる。図35の例では、径方向(R方向)のR位置がコイル内半径R0の4/5を超えた場合(コイル内径位置36を超えた場合)に急激に磁界が増大する。即ち、径方向磁界Brはコイル内径位置35に近い方が大きくなる。このR方向の位置の増加に応じて、径方向磁界Brが増加するのは、コイル形状に依存する。磁界測定素子2を配置する位置、すなわちコイル軸からのオフセット位置は、少なくとも、4/5R0以上の大きい領域であれば、4/5R0未満の領域よりも大きな径方向磁界Brを得られると言える。
実施の形態3の磁界測定方法は、磁界測定素子2をソレノイドコイルのコイル内半径R0の4/5以上の場所で径方向磁界Brを測定する。実施の形態3の磁界測定装置1は、磁界測定素子2の径方向(R方向)の配置位置、すなわちコイル軸3からのオフセット長r0だけ離れたオフセット位置が、コイル内半径R0の4/5以上になるように、磁界測定素子2を配置したものである。実施の形態3の磁界測定方法は、大きな径方向磁界Brを測定できるので、磁界測定素子2の径方向(R方向)の配置位置がコイル内半径R0の4/5未満で測定する方法よりも、高感度で高精度に径方向磁界Brを測定できる。しがって、実施の形態3の磁界測定方法は、測定対象(スプリットソレノイドコイル7、バナナ型コイル33)であるコイル対(第一コイル、第二コイル)、すなわち組合せコイルのコイル間中心位置を更に高精度に決定することができる。
実施の形態4.
図36は、本発明の実施の形態4によるコイルの位置ずれ修正方法のフローチャートである。図37は本発明の実施の形態4による磁界測定装置を示す図であり、図38は図37の移動機構を示す図である。図39は図38の移動機構の側面図であり、図40は図37のデータ処理装置を示す図である。図36のフローチャートは、図1のフローチャートに、コイル軸傾きを調整する工程(ステップS11)とコイル水平方向位置ずれを調整する工程、すなわちコイル軸位置を調整する工程(ステップS12)を追加したものである。ステップS11のコイル軸傾き調整工程及び、ステップS12のコイル水平方向位置ずれ調整工程(コイル軸位置調整工程)は、複数のコイル(第一コイル、第二コイル)におけるそれぞれのコイル軸を基準軸に一致するように調整するコイル軸調整工程である。スプリットソレノイドコイル7を例にして、フローチャートを説明する。
ステップS11のコイル軸傾き調整工程及び、ステップS12のコイル水平方向位置ずれ調整工程は、特許文献1の測定及び修正工程を適用する。ステップS11のコイル水平方向位置ずれ調整工程及び、ステップS12のコイル軸傾き調整工程を実行することで、ステップS1からステップS5のコイル間中心位置を修正する工程を高精度に確実に行うことができる。ステップS1からステップS5のコイル間中心位置を修正する工程を実行する前に、コイル水平方向位置ずれ(第一のコイル位置ずれ)とコイル軸傾きずれ(第二のコイル位置ずれ)の調整を実施していないと図9等の磁界分布に、第一のコイル位置ずれ及び第二のコイル位置ずれにより磁界が傾き、この磁界の傾きによる磁界が磁界測定素子に印加され、コイル間中心位置の決定の際に角度誤差が発生する。
ステップS11のコイル軸傾き調整工程及び、ステップS12のコイル水平方向位置ずれ調整工程は、スプリットソレノイドコイル7の第一コイル60、第二コイル61毎に行う。第一コイル60を例にして説明する。まず、ステップS11のコイル軸傾き調整工程を実行する。磁界測定素子2の磁界測定面(ホール素子面)2aをコイル軸方向(Z軸方向)に向けて、すなわち、磁界測定面(ホール素子面)2aの延在方向がコイル軸に垂直になるようにして、回転軸23の回転角度をパラメータにして、磁界測定素子2の径方向位置(R位置)に対するコイル軸方向磁界Bzを測定する(第一測定手順)。回転軸23の傾きを修整(コイル軸変更手順)しながら、第一測定手順を行う。回転軸23の回転角度を変化させた場合の、磁界測定素子2の径方向位置(R位置)に対するコイル軸方向磁界Bzの特性が、それぞれ平行になったら、回転軸23の傾きがコイル軸3と一致したと判定し、コイル軸傾き調整工程を終了する。コイル軸変更手順は、調整対象である第一コイル60又は第二コイル61の姿勢を変更し、調整対象の基準軸に対するコイル軸3の傾きを変更する。
ステップS11のコイル軸傾き調整工程の後に、ステップS12のコイル水平方向位置ずれ調整工程を実行する。磁界測定素子2の磁界測定面(ホール素子面)2aを径方向(R方向)に向けて、すなわち、磁界測定面(ホール素子面)2aの延在方向がコイル軸に平行になるようにして、回転軸23の回転角度をパラメータにして、磁界測定素子2の径方向位置(R位置)に対する径方向磁界Brを測定する(第二測定手順)。回転軸23の位置を径方向に移動して、コイル水平方向位置を修正(コイル軸位置変更手順)しながら、第二測定手順を行う。回転軸23の回転角度を変化させた場合の、磁界測定素子2の径方向位置(R位置)に対する径方向磁界Brの特性が、一本に重なったら、回転軸23のコイル水平方向位置がコイル軸3と一致したと判定し、コイル水平方向位置ずれ調整工程を終了する。コイル軸位置変更手順は、調整対象を径方向に移動し、調整対象の基準軸に対するコイル軸3の径方向位置を変更する。コイル軸位置変更手順後の第二測定手順においては、初回の第二測定手順において回転させた回転軸23を中心に回す回転角度をパラメータにして、磁界測定素子の径方向位置毎に径方向磁界を測定する(第三測定手順)。第三測定手順は、コイル軸位置変更手順後の第二測定手順である。
ステップS11のコイル軸傾き調整工程及び、ステップS12のコイル水平方向位置ずれ調整工程を実行できる磁界測定装置1を図37に示した。実施の形態4の磁界測定装置1は、磁界測定素子2の磁界測定面(ホール素子面)2aをコイル軸方向(Z軸方向)に向けられるように、磁界測定素子支持台71は回転棒92で回転可能になっている。また、実施の形態4の磁界測定装置1は、磁界測定素子2の径方向位置(R位置)を変更できる移動機構67を備えている。また、実施の形態4の磁界測定装置1のデータ処理装置74は、図40に示しように、コイル軸方向磁界特性演算部79も備えている。コイル軸方向磁界特性演算部79により、磁界測定素子2から送られた磁界データに基づいて第一測定手順のコイル軸方向磁界Bzを演算し、表示部78の画面にコイル軸方向磁界Bzの分布を表示する。コイル軸方向磁界特性演算部79は、プロセッサ80がメモリ81に記憶されたプログラムを実行することにより、実現される。また、複数のプロセッサ80および複数のメモリ81が連携して上記機能を実行してもよい。
移動機構67は、例えば、円盤22に径方向に延伸して設けられたガイド孔68と、回転棒72に摺動可能に設けられた支持部材101により構成される。支持部材101は2つの突起69を備え、突起69がガイド孔68に接触している。実施の形態4の磁界測定装置1は、支持部材101に設けられた回転棒72がガイド孔68に沿って移動することができ、複数の径方向の位置において、回転棒72の回転により回転台5を回転することができる。すなわち、実施の形態4の磁界測定装置1は、ステップS11のコイル軸傾き調整工程と、ステップS12のコイル水平方向位置ずれ調整工程と、ステップS2における磁界測定素子2の180度回転も行うことができる。実施の形態4の磁界測定装置1のその他の構成は、実施の形態2の磁界測定装置1の構成と同じであり、実施の形態2の磁界測定装置1と同様に動作する。
実施の形態4によるコイルの位置ずれ修正方法は、ステップS11のコイル水平方向位置ずれ調整工程及び、ステップS12のコイル軸傾き調整工程を実行することで、ステップS1からステップS5のコイル間中心位置を修正する工程を高精度に確実に行うことができる。
実施の形態5.
実施の形態5では、加速器用電磁石を対象にして、磁界測定を行う例を説明する。この測定結果を用いてコイル位置修正を行う。図41は、本発明の実施の形態5による第1の磁界測定装置の磁界測定素子を加速器用電磁石に配置した例を示す図である。図42は、本発明の実施の形態5による第2の磁界測定装置の磁界測定素子を加速器用電磁石に配置した例を示す図である。図43は図42の磁界測定装置における要部を示す図であり、図44は図43の磁界測定装置における要部をコイル軸方向から見た上面図である。図45は、本発明の実施の形態5による第3の磁界測定装置の磁界測定素子を加速器用電磁石に配置した例を示す図である。図46は図45の磁界測定装置における要部を示す図であり、図47は図46の磁界測定装置における要部をコイル軸方向から見た上面図である。図41、図42、図45において、磁極にコイルが配置された円形加速器用電磁石70の部分断面を示した。
円形加速器用電磁石70は、2つの電磁石に分割されている。第一電磁石は、コイル42a、磁極41a、リターンヨーク43aを備えている。第二電磁石も、第一電磁石と同様に、コイル42b、磁極41b、リターンヨーク43bを備えている。第一電磁石の磁極41aには貫通孔37が設けられている。磁界測定装置1の磁界測定素子2が、磁極41aと、磁極41bとの間の領域である磁極間領域40に配置されている。磁界測定素子2は回転棒39に接続され、回転棒39はモータ73に接続されている。図41、図42、図45において、コイル42a、42bのコイル軸55、磁界測定素子2の回転軸38、円形加速器用電磁石70により加速されるビームが通過する軌道面44、コイル42aの第一コイル面56a、コイル42bの第二コイル面56bを示した。磁界測定素子2の回転軸38は、実施の形態1〜4における回転軸4と同じであるが、磁極41aを貫通している。回転軸38は、コイル軸55から径方向の離れた位置に配置されており、コイル軸55までの長さがオフセット長r0である。
磁極41a、41bはNC装置(数値制御装置)などで高精度に作れる。このため、磁界測定装置1は、磁極41a、41bを基準に基準軸及び基準面を設定することが多い。磁極41aの外部、即ち円形加速器用電磁石70の外部から回転棒39を挿入する。この場合、回転棒39は長いので回転軸38の傾きなどは非常に小さく、高精度で構成できる、また、回転棒39を円形加速器用電磁石70の外部からモータ73により回転させることで、容易に円形加速器用電磁石70の外部から磁界測定素子2を回転させることが可能である。更に、回転棒39をZ軸方向に移動(図41において上下)させることで、磁界測定素子2をZ軸方向に移動させ、コイル軸方向(Z軸方向)の磁界分布も測定可能である。円形加速器用電磁石70においては、軌道面44がコイル間中心位置を合わす基準面である。
実施の形態5の第1の磁界測定装置1は、磁界測定素子2をコイル軸55から離れた位置に回転可能に配置したので、実施の形態1の磁界測定方法を実行でき、測定対象である円形加速器用電磁石70のコイル対(コイル42a、コイル42b)のコイル間中心位置を高精度に決定することができる。また、円形加速器用電磁石70のコイル対(コイル42a、コイル42b)のコイル間中心位置を高精度に決定することができるので、測定対象の構造物を動かしてコイル間中心位置を基準面(軌道面44)に一致するように修正することができる。
なお、円形加速器用電磁石70の磁極41a、41b及びリターンヨーク43a、43bの重量は重く分解が難しい。このため、磁界測定装置1の構成部品も一度円形加速器用電磁石70に配置した後は、磁界測定が完了するまで、リターンヨーク43a、43b等は分解しないことが望ましい。このため、円形加速器用電磁石70の外部から磁界測定素子2を動作させることは重要である。
なお、磁極41a、41bがない空芯コイルでもコイル軸方向の長さを十分長くとれば同様に回転時の誤差を最小にできる。また、磁極41aに貫通孔37を開けると、貫通孔37の部分は磁界を作らないので磁界の誤差になる可能性がある。この場合には、第1の磁界測定装置1による磁界測定及びコイル位置ずれが終了した後に、貫通孔37を埋めれば良い。すなわち、図1のステップS4において、コイル間中心位置が基準面に一致すると判定され後に、磁極41aに設けられた貫通孔37を磁界測定後に埋め戻す手順(貫通孔埋戻手順)を追加する。このように、磁極41aに設けられた貫通孔37を磁界測定後に埋め戻すことで、円形加速器用電磁石70における貫通孔37に起因する磁界誤差を最小限にすることができる。
図42〜図44を用いて、実施の形態5の第2の磁界測定装置1について説明する。円形加速器用電磁石70には電磁石中心軸にイオン源用のイオン源孔45が開いている場合がある。このイオン源孔45を利用して磁界測定素子2を動作させることを考える。もともとイオン源孔45が開いているので、図41に示したように、磁極41aに貫通孔37を開ける必要がなく、貫通孔37を開けることによる磁界分布の誤差をなくすことが可能になる。
実施の形態5の第2の磁界測定装置1は、回転棒46と、回転棒46を回転させる回転棒回転用のモータ50と、磁界測定素子2を回転可能に支持する素子支持機構102とを備えている。素子支持機構102は、磁界測定素子2を回転棒46に対し支持する支持材47と、磁界測定素子2が搭載される台48と、回転棒46と磁界測定素子2が載った台48をつなぐベルト49とを備えている。台48はプーリーでもあり、台48の外周にベルト49が接触している。支持材47は、一端が回転棒46に摺動可能に接続されており、他端が台48の台棒48aを回転可能に支持している。なお、支持材47は、回転棒46の回転に伴ってコイル軸55に対して回転しないように、磁極41aに係合される。但し、支持材47は上下に移動可能な機構を有する。例えば、支持材47は、イオン源孔45側においてイオン源孔45の内壁に設けられた凹部に係合する係合部を有するようにすればよい。このように構成された支持材47は、回転棒46の回転に伴ってコイル軸55に対して回転することなく、磁極41aに対して配置位置を維持できる。
イオン源孔45に回転棒46を挿入し、この回転棒46を磁界測定素子2が載った台48をベルト49でつなげば、モータ50により回転棒46を回転させることで、磁界測定素子2を外部から回転させることができる。
実施の形態5の第2の磁界測定装置1は、磁界測定素子2をコイル軸55から離れた位置に回転可能に配置したので、実施の形態1の磁界測定方法を実行でき、測定対象である円形加速器用電磁石70のコイル対(コイル42a、コイル42b)のコイル間中心位置を高精度に決定することができる。また、円形加速器用電磁石70のコイル対(コイル42a、コイル42b)のコイル間中心位置を高精度に決定することができるので、測定対象の構造物を動かしてコイル間中心位置を基準面(軌道面44)に一致するように修正することができる。
図45〜図47を用いて、実施の形態5の第3の磁界測定装置1について説明する。実施の形態5の第3の磁界測定装置1は、リターンヨーク43a、43bのサイド側に貫通孔51が開けられた、円形加速器用電磁石70に適用した装置である。
実施の形態5の第3の磁界測定装置1は、磁界測定素子2を回転可能に支持する素子支持機構103と、磁界測定素子2を回転させるためのモータ54を備えている。素子支持機構103は、磁界測定素子2が搭載される台48と、モータ54に接続されるプーリー53と、プーリー53のプーリー棒53aと台48の台棒48aを接続し、磁界測定素子2を支持する支持材52と、プーリー53と磁界測定素子2が載った台48をつなぐベルト49を備えている。台48はプーリーでもあり、台48の外周にベルト49が接触している。支持材52は、円形加速器用電磁石70の外部で図示しない、固定台に固定される。支持材52は、一端がプーリー棒53aを回転可能に接続しており、他端が台48の台棒48aを回転可能に接続している。実施の形態5の第3の磁界測定装置1は、支持材52をZ方向に移動(図45において上下)させることで、磁界測定素子2をZ軸方向に移動させ、コイル軸方向(Z軸方向)の磁界分布も測定可能である。
実施の形態5の第3の磁界測定装置1を用いれば、円形加速器用電磁石70のリターンヨーク43a、43bに貫通孔51を開けることで、磁極41a、41bに貫通孔37を開けることなく、円形加速器用電磁石70内部の磁界分布を測定することができる。実施の形態5の第3の磁界測定装置1は、イオン源孔45を利用する実施の形態5の第2の磁界測定装置1と同様に、磁界分布への影響を最小限にできる。
実施の形態5の第3の磁界測定装置1は、リターンヨーク43a、43bのサイド側に設けた貫通孔51から、磁界測定素子2を回転可能に支持する素子支持機構103を挿入するので、円形加速器用電磁石70の外部から磁界測定素子2を回転軸38を中心にして回転でき、素子支持機構103をZ方向に移動(図45において上下)できる。
実施の形態5の第3の磁界測定装置1は、磁界測定素子2をコイル軸55から離れた位置に回転可能に配置したので、実施の形態1の磁界測定方法を実行でき、測定対象である円形加速器用電磁石70のコイル対(コイル42a、コイル42b)のコイル間中心位置を高精度に決定することができる。また、円形加速器用電磁石70のコイル対(コイル42a、コイル42b)のコイル間中心位置を高精度に決定することができるので、測定対象の構造物を動かしてコイル間中心位置を基準面(軌道面44)に一致するように修正することができる。
実施の形態5のコイル位置修正方法は、実施の形態5の磁界測定装置1(第1の磁界測定装置1、第2の磁界測定装置1、第3の磁界測定装置1)を用いて電磁石(円形加速器用電磁石70)のコイル位置ずれを修正するコイル位置修正方法であって、中心位置決定手順にて決定されたコイル間中心位置に基づいて、電磁石(円形加速器用電磁石70)における磁極41a、41b、コイル42a、42b、リターンヨーク43a、43bのいずれか1つ、又は複数の位置を変更して、コイル間中心位置を基準面(軌道面44)上に位置するように調整するコイル間中心位置調整工程を実行し、コイル間中心位置調整工程の後に、磁界測定素子2及び回転機構(回転棒39、素子支持機構102、素子支持機構103)を貫通孔37から引き抜いた後に、磁極41a、41bに設けた貫通孔37を埋め戻すことを特徴とする。実施の形態5のコイル位置修正方法は、この特徴により、測定対象の構造物を動かしてコイル間中心位置を基準面(軌道面44)に一致するように修正することができ、貫通孔37を磁界測定後に埋め戻すことで、円形加速器用電磁石70における貫通孔37に起因する磁界誤差を最小限にすることができる。
最後に、鉄製磁極の磁界分布測定に与える影響について述べる。コイル42a、42bが超電導コイルの場合、円形加速器用電磁石70は、一般に5Tから6Tの磁界を発生する。この内、2Tの磁界が鉄の磁極41a、41bが発生し、残りの3Tから4Tの磁界が超電導コイルに発生する。この高磁界下では、鉄は飽和しており、磁極41a、41bは高精度で製作できるので、コイル軸55の方向に上下対称の磁界を発生し、磁極中心を基準面として設定する。磁極41a、41bが飽和している場合には、ビームが通過する軌道面44付近に、コイル42a、42bの磁界が100%ではないが直接加わる。即ち、コイル間中心位置が基準面からZ軸上の上下にずれていると、コイル42a、42bが発生する磁界が軌道面44付近に上下非対称成分を発生する。しかし、本発明の磁界測定方法を適用すれば、円形加速器用電磁石70のコイル対(コイル42a、コイル42b)のコイル間中心位置を高精度に決定することができるので、測定対象の構造物を動かしてコイル間中心位置を基準面(軌道面44)に一致するように修正することができる。
なお、実施の形態5において、円形加速器用電磁石70が2つのコイル42a、42bを備えた例を示したが、円形加速器用電磁石70が、コイル軸を同一にした複数のコイルを備えた組合せコイルを備えていても良い。すなわち、円形加速器用電磁石70が、コイル軸を同一にした複数のコイルを備えた組合せコイルであり、かつコイル軸に沿った径方向磁界の分布がコイル軸に垂直な面で対称である組合せコイルを備えていても、円形加速器用電磁石70が2つのコイル42a、42bを備えた例と同様の効果を奏する。
なお、本発明は、矛盾のない範囲内において、各実施の形態の内容を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
本発明の磁界測定方法は、コイル軸を同一にした複数のコイルを備えた組合せコイルであり、かつコイル軸に沿った少なくとも1つの径方向における径方向磁界の分布がコイル軸に垂直な面で対称になる測定対象コイルにおける、径方向磁界の分布におけるコイル軸方向の中心位置であるコイル間中心位置を、コイルが組み込まれる機器の水平方向の磁界の基準面に対して決定する磁界測定方法であって、組合せコイルのそれぞれのコイルのコイル軸は、コイルが組み込まれる機器の基準軸に対して、水平方向傾きが一致しており、コイル軸から径方向に設定長だけ離れたオフセット位置に配置された磁界測定素子により、オフセット位置でコイル軸に平行なオフセット軸に沿った第一の径方向磁界を測定する第一径方向磁界測定手順と、オフセット位置にて、オフセット軸を中心に設定角度だけ回転された磁界測定素子により、オフセット軸に沿った第二の径方向磁界を測定する第二径方向磁界測定手順と、第一径方向磁界測定手順にて測定された第一の径方向磁界のオフセット軸方向の特性である第一径方向磁界特性と、第二径方向磁界測定手順にて測定された第二の径方向磁界のオフセット軸方向の特性である第二径方向磁界特性とに基づいて、コイル間中心位置を決定する中心位置決定手順とを含むことを特徴とする。