JPWO2017073695A1 - 熱可塑性エラストマー組成物、部材、ウェザーシール、ウェザーシール用コーナー部材 - Google Patents
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Abstract
水添ブロック共重合体(II):芳香族ビニル化合物に由来する構造単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、イソプレンおよびブタジエンからなる群から選択される少なくとも1種に由来する構造単位から主としてなり、かつ3,4−結合単位および1,2−結合単位の含有量の合計が45%以上である重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体の水素添加物であって、ピークトップ分子量が50,000〜200,000であり、重合体ブロック(B)中の炭素−炭素二重結合の70モル%以上が水素添加されている水添ブロック共重合体。
Description
自動車用部品の1つとしてウェザーシールが挙げられる。該ウェザーシールの材料としては、これまでは、圧縮永久歪が小さく、且つ柔軟性に優れる加硫ゴムが用いられてきた。しかし、昨今の二酸化炭素の排出量削減に向けた規制に伴い、より成形加工性が良好であり、且つ比重が軽いTPVに置き換わる傾向にある(非特許文献1参照)。
自動車用のウェザーシールは、通常、ストレート部とコーナー部とを有する。工業的には、ストレート部は押出し成形によって製造されるが、コーナー部は射出成形によって製造されるため、コーナー部の材料としては、射出成形が可能なものを選択する必要がある。しかし、加硫ゴムよりも成形加工性が良好なTPVであっても、十分な成形加工性であるとは言えず、更なる改善の余地がある。そのため、ウェザーシールのストレート部の材料としては加硫ゴムまたはTPVが用いられるが、コーナー部の材料としては、諸特性を維持しながら成形加工性にも優れる別の材料を使用することが望まれる。
該特許文献1に記載の熱可塑性エラストマー組成物は、オレフィン系ゴム(I)、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位からなる重合体ブロック(A)と、イソプレンまたはイソプレンおよびブタジエンの混合物に由来する構造単位を含有し、3,4−結合単位および1,2−結合単位の含有量の合計が45%以上である重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体の水素添加物であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量(Mp)が250,000〜500,000である水添ブロック共重合体(II)、前記(I)以外のポリオレフィン系樹脂(III)および軟化剤(IV)を含有する熱可塑性エラストマー組成物であって、オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)をオレフィン系ゴム(I):水添ブロック共重合体(II)=90:10〜10:90(質量比)の割合で含有し、かつオレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)の合計100質量部に対して、ポリオレフィン系樹脂(III)を10〜200質量部、軟化剤(IV)を10〜300質量部の割合で含有する、熱可塑性エラストマー組成物である。
そこで、本発明の課題は、加硫ゴムおよび動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)に対して高い接着力を有し、且つ、柔軟性および耐候性と共に、成形加工性にも優れる熱可塑性エラストマー組成物を提供することにある。さらに、該熱可塑性エラストマー組成物からなる部位を有する部材、該部材を含有するウェザーシール、前記熱可塑性エラストマー組成物からなる部位を有するウェザーシール用コーナー部材を提供することにある。
[1]オレフィン系ゴム(I)、
下記水添ブロック共重合体(II)、
ポリオレフィン系樹脂(III)、および
軟化剤(IV)
を含有してなる熱可塑性エラストマー組成物であって、
オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)との含有割合[(I)/(II)]が質量比で90/10〜10/90であり、
オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)の合計100質量部に対して、ポリオレフィン系樹脂(III)の含有量が10〜200質量部、軟化剤(IV)の含有量が15〜300質量部である、熱可塑性エラストマー組成物。
水添ブロック共重合体(II):芳香族ビニル化合物に由来する構造単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、イソプレンおよびブタジエンからなる群から選択される少なくとも1種に由来する構造単位から主としてなり、かつ3,4−結合単位および1,2−結合単位の含有量の合計が45%以上である重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体の水素添加物であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量が50,000〜200,000であり、重合体ブロック(B)中の炭素−炭素二重結合の70モル%以上が水素添加されている水添ブロック共重合体。
[2]前記水添ブロック共重合体(II)のガラス転移温度が−45〜0℃である、上記[1]の熱可塑性エラストマー組成物。
[3]前記水添ブロック共重合体(II)において、重合体ブロック(A)の含有量が5〜40質量%である、上記[1]または[2]の熱可塑性エラストマー組成物。
[4]水添ブロック共重合体(II)において、重合体ブロック(A)の含有量が5〜18質量%である、上記[1]〜[3]のいずれかの熱可塑性エラストマー組成物。
[5]前記水添ブロック共重合体(II)における前記重合体ブロック(A)が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量が同一または異なる2つの重合体ブロック(A1)と(A2)とを含有し、且つ、該水添ブロック共重合体(II)が、前記重合体ブロック(A1)、前記重合体ブロック(B)および前記重合体ブロック(A2)から構成されるトリブロック共重合体[A1−B−A2]の水素添加物である、上記[1]〜[4]のいずれかの熱可塑性エラストマー組成物。
[6]前記水添ブロック共重合体(II)において、
前記重合体ブロック(A)が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位から主としてなり、且つゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量がMp(A1)である重合体ブロック(A1)と、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位から主としてなり、且つゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量がMp(A2)である重合体ブロック(A2)とを有し、
前記Mp(A1)と前記Mp(A2)との比[Mp(A1)/Mp(A2)]が1/10〜8/10を満たす、上記[5]の熱可塑性エラストマー組成物。
[7]前記オレフィン系ゴム(I)と前記水添ブロック共重合体(II)の重合体ブロック(B)とが架橋されてなる、上記[1]〜[6]のいずれかの熱可塑性エラストマー組成物。
[8]前記オレフィン系ゴム(I)が、(I−1)エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィン1種以上との共重合体ゴムまたはその架橋物、並びに(I−2)エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィン1種以上と、非共役ポリエン1種以上との共重合体ゴムまたはその架橋物、からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[1]〜[7]のいずれかの熱可塑性エラストマー組成物。
[9]前記ポリオレフィン系樹脂(III)が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ(1−ブテン)およびポリ(4−メチル−1−ペンテン)からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[1]〜[8]のいずれかの熱可塑性エラストマー組成物。
[10]上記[1]〜[9]のいずれかの熱可塑性エラストマー組成物からなる部位(X1)を有する部材。
[11]前記部位(X1)の他に、上記[1]〜[9]のいずれかの熱可塑性エラストマー組成物とは異なる材料からなる部位(Y1)を有する、上記[10]の部材。
[12]前記部位(Y1)の材料が、加硫ゴムまたは動的架橋型オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPV)である、上記[11]の部材。
[13]前記部位(X1)の他に、上記[1]〜[9]のいずれかの熱可塑性エラストマー組成物(但し、前記部位(X1)を形成する熱可塑性エラストマー組成物と同一であっても異なっていてもよい。)からなる部位(X2)を有する、上記[10]の部材。
[14]前記部位(X1)が射出成形により得られた部位である、上記[10]〜[13]のいずれかの部材。
[15]上記[10]〜[14]のいずれかの部材を含有するウェザーシール。
[16]上記[1]〜[9]のいずれかの熱可塑性エラストマー組成物からなる部位(X1)を有し、且つ、
前記部位(X1)の他に、上記[1]〜[9]のいずれかの熱可塑性エラストマー組成物とは異なる材料からなる部位(Y1)を有するか、または、前記部位(X1)の他に、上記[1]〜[9]のいずれかの熱可塑性エラストマー組成物(但し、前記部位(X1)を形成する熱可塑性エラストマー組成物と同一であっても異なっていてもよい。)からなる部位(X2)を有する部材を含有するウェザーシールであって、
前記部位(X1)からなるコーナー部と、前記部位(X2)または(Y1)からなるストレート部とを有するウェザーシール。
[17]自動車用、船舶用または航空機用である、上記[15]または[16]のウェザーシール。
[18]上記[1]〜[9]のいずれかの熱可塑性エラストマー組成物からなる部位(X1)を有する、ウェザーシール用コーナー部材。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ウェザーシール用、特にウェザーシールのコーナー部用として適しているため、本発明の熱可塑性エラストマー組成物からなる部位を有する部材を含有するウェザーシール、本発明の熱可塑性エラストマー組成物からなる部位を有するウェザーシール用コーナー部材をも提供することができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、
オレフィン系ゴム(I)、
下記水添ブロック共重合体(II)、
ポリオレフィン系樹脂(III)、および
軟化剤(IV)
を含有してなる熱可塑性エラストマー組成物であって、
オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)との含有割合[(I)/(II)]が質量比で90/10〜10/90であり、
オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)の合計100質量部に対して、ポリオレフィン系樹脂(III)の含有量が10〜200質量部、軟化剤(IV)の含有量が15〜300質量部の熱可塑性エラストマー組成物である。
水添ブロック共重合体(II):芳香族ビニル化合物に由来する構造単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、イソプレンおよびブタジエンからなる群から選択される少なくとも1種に由来する構造単位から主としてなり、かつ3,4−結合単位および1,2−結合単位の含有量の合計が45%以上である重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体の水素添加物であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量が50,000〜200,000であり、重合体ブロック(B)中の炭素−炭素二重結合の70モル%以上が水素添加されている水添ブロック共重合体。
以下、各成分について順に詳細に説明する。
オレフィン系ゴム(I)としては、
(I−1)エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィン1種以上との共重合体ゴム(以下、「エチレン/α−オレフィン共重合体ゴム」ということがある)またはその架橋物、
(I−2)エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィン1種以上と、非共役ポリエン1種以上との共重合体ゴム(以下、「エチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体ゴム」ということがある)またはその架橋物、
などが挙げられる。オレフィン系ゴム(I)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
2種以上を併用する場合、前記エチレン/α−オレフィン共重合体ゴムの架橋物と、前記エチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体ゴムの架橋物を併用することが好ましい。
中でも、オレフィン系ゴム(I)としては、エチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体ゴムまたはその架橋物であることが、高温での歪み回復性がより良好になる点から好ましく、エチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体ゴムであってもよいし、エチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体ゴムの架橋物であってもよい。
中でも、環状ポリエン、内部不飽和結合を有する炭素数6〜15の鎖状ポリエンが好ましく、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンおよび7−メチル−1,6−オクタジエンからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、架橋剤との反応性に優れるという観点から、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエンおよび5−ビニル−2−ノルボルネンからなる群から選択される少なくとも1種がさらに好ましい。
なお、本明細書でいう「ムーニー粘度(ML1+4,100℃)」とは、JIS K6300−1(2013年)に記載の方法で測定した粘度をいう。
なお、上記架橋反応に使用し得る架橋剤および架橋助剤は、後述する架橋剤および架橋助剤と同じものを使用することができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、水添ブロック共重合体(II)を含有してなるものである必要がある。該水添ブロック共重合体(II)を含有しない場合、加硫ゴムおよび動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)に対して高い接着力を有し、且つ、柔軟性および耐候性と共に、成形加工性にも優れるという課題のうちの少なくとも1つを解決することができなくなる。特に、成形加工性、並びにTPVおよび加硫ゴムに対する接着力の影響が大きい。
水添ブロック共重合体(II)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、イソプレンおよびブタジエンからなる群から選択される少なくとも1種に由来する構造単位から主としてなり、かつ3,4−結合単位および1,2−結合単位の含有量の合計が45%以上である重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体の水素添加物であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量が50,000〜200,000であり、重合体ブロック(B)中の炭素−炭素二重結合の70モル%以上が水素添加されている水添ブロック共重合体である。
本明細書では、イソプレンに由来する構造単位における3,4−結合単位および1,2−結合単位並びにブタジエンに由来する構造単位における1,2−結合単位を「ビニル結合単位」と総称し、その合計量を「ビニル結合含有量」と称することがある。
なお、重合体ブロック(B)は、イソプレンに由来する構造単位、またはイソプレンとブタジエンの混合物に由来する構造単位から主としてなることが好ましい。
該共重合体ブロックでは、イソプレンに由来する構造単位とブタジエンに由来する構造単位の結合形態は、ランダム状、ブロック状、テーパード状のいずれであってもよい。
かかる他の共重合性単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ジフェニルエチレン、1−ビニルナフタレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレンなどの芳香族ビニル化合物などの、アニオン重合可能な共重合性単量体が挙げられる。これら他の共重合性単量体は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。重合体ブロック(B)がイソプレンに由来する構造単位またはイソプレンとブタジエンの混合物に由来する構造単位以外に、上記した他の共重合性単量体に由来する構造単位を有する場合、それらの結合形態は、ランダム状、テーパード状のいずれでもよい。
なお、重合体ブロック(B)中の炭素−炭素二重結合の水素添加率は、重合体ブロック(B)中の炭素−炭素二重結合の含有量を、水素添加の前後において、後述する実施例に記載されたヨウ素価測定から求めることができる。
また、水添ブロック共重合体(II)が重合体ブロック(A)を2個以上または重合体ブロック(B)を2個以上有する場合には、それぞれの重合体ブロック(A)およびそれぞれの重合体ブロック(B)は互いに同じ構成のブロックであっても異なる構成のブロックであってもよい。例えば、〔A−B−A〕で表されるトリブロック構造における2個の重合体ブロック(A)は、それらを構成する芳香族ビニル化合物の種類が、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
この場合、水添ブロック共重合体(II)は、前記重合体ブロック(A)が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位から主としてなり、且つゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量がMp(A1)である重合体ブロック(A1)と、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位から主としてなり、且つゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量がMp(A2)である重合体ブロック(A2)とを有し、前記Mp(A1)と前記Mp(A2)との比[Mp(A1)/Mp(A2)]が1/10〜8/10を満たすことが、成形加工性の観点からは好ましい。該比[Mp(A1)/Mp(A2)]は、Mp(A1)がMp(A2)より小さいことを示しており、同様の観点から、より好ましくは3/10〜7/10である。該トリブロック共重合体[A1−B−A2]の水素添加物は、Mp(A1)とMp(A2)が上記の通りに異なるため、見かけ上、左右が非対称のトリブロック共重合体であるといえる。
なお、Mp(A1)とMp(A2)とが略等しい水添ブロック共重合体(II)も好ましい。ここで、略等しいとは、[Mp(A1)/Mp(A2)]がおおよそ1/1であるか、または1/1に近いことであり、より具体的には、9/10〜11/10の範囲にあることをいう。
また、Mp(A1)、Mp(A2)は、それぞれ、好ましくは1,000〜30,000、より好ましくは2,000〜20,000、さらに好ましくは2,000〜15,000である。前記数値範囲の中でも、Mp(A1)としては、特に好ましくは3,000〜10,000であり、Mp(A2)としては、特に好ましくは4,000〜14,000である。
なお、該ピークトップ分子量(Mp)は、実施例に記載の方法によって求めた値である。
水添ブロック共重合体(II)の製造方法は、例えば、アニオン重合やカチオン重合などのイオン重合法、シングルサイト重合法、ラジカル重合法などの重合方法が挙げられる。アニオン重合法による場合は、例えば、アルキルリチウム化合物などを重合開始剤として用いて、n−ヘキサンやシクロヘキサンなどの不活性有機溶媒中で、芳香族ビニル化合物と、イソプレンおよびブタジエンからなる群から選択される少なくとも1種とを逐次重合させ、所望の分子構造および分子量を有するブロック共重合体を製造した後、アルコール類、カルボン酸類、水などの活性水素化合物を添加して重合を停止させることによりブロック共重合体を製造することができる。そして得られたブロック共重合体を好ましくは単離せずに引き続き不活性有機溶媒中で水素添加触媒の存在下に水素添加反応を行うことにより、水添ブロック共重合体(II)を得ることができる。
水添触媒としては、ラネーニッケル;Pt、Pd、Ru、Rh、Niなどの金属をカーボン、アルミナ、珪藻土などの単体に担持させたものなどの不均一触媒;遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物、アルキルリチウム化合物などの組み合わせからなるチーグラー系触媒などが用いられる。
反応は、通常、水素圧力が好ましくは0.1〜20MPa、反応温度が好ましくは20℃〜250℃、反応時間が好ましくは0.1〜100時間の条件で行われる。
上記の水素添加反応後に濾過により水添触媒を除去した反応溶液を40〜150℃、好ましくは60〜150℃に加熱し、必要に応じて脂肪酸塩やポリオキシアルキレン誘導体などの界面活性剤を混和した状態で、100質量部/時間の速度で80〜130℃の熱水中に供給する。同時に、1MPaのスチームを40〜60質量部/時間の速度で供給し、飽和炭化水素などの不活性有機溶媒の沸点または不活性有機溶媒と水とが共沸する場合はその共沸温度以上から150℃以下の温度でスチームストリッピングした後、圧縮水絞機で含水率55質量%/WB(ウェットベース、以下同じ)以下、好ましくは45質量%/WB以下まで脱水する。次いで、スクリュー押出機型乾燥機、エキスパンダー乾燥機、伝導伝熱型乾燥機、熱風乾燥機などを用いて60〜100℃で乾燥することにより、含水率0.1質量%/WB以下の所望の粉末の水添ブロック共重合体(II)を製造できる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物において、オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)との含有割合[(I)/(II)]は、質量比で、90/10〜10/90であり、好ましくは90/10〜50/50、より好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは80/20〜60/40である。この範囲であれば、成形加工性、柔軟性および高温での歪み回復性に優れる。
本発明で用いるポリオレフィン系樹脂(III)としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ(1−ブテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂(III)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、成形加工性の観点から、ポリエチレン系樹脂およびポリプロピレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、ポリプロピレン系樹脂がより好ましい。
ここで、ポリエチレン系樹脂とは、エチレンに由来する構造単位の含有量(以下、エチレン含有量と略称することがある。)が60モル%以上である重合体を言い、該エチレン含有量は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上である。また、ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンに由来する構造単位の含有量(以下、プロピレン含有量と略称することがある。)が60モル%以上である重合体を言い、該プロピレン含有量は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。
なお、言うまでもなく、ポリオレフィン系樹脂(III)は、「ゴム」であるオレフィン系ゴム(I)とは区別される。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物において、ポリオレフィン系樹脂(III)の含有量を上記範囲とすることによって、熱可塑性エラストマー組成物中でポリオレフィン系樹脂(III)が連続相をなし、その連続相中に、オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)が微粒子状で分散したモルフォロジーとなり、これが、加硫ゴムおよび動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)に対する接着力、柔軟性、耐候性および成形加工性に良好な影響を与えているものと推測される。
軟化剤(IV)としては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等の石油系プロセスオイル;芳香族系プロセスオイル;ジオクチルフタレート、ジブチルフタレートなどのフタル酸誘導体;ホワイトオイル;ミネラルオイル;落花生油、ロジンなどの植物油系軟化剤;流動パラフィン;エチレンとα−オレフィンとの液状コオリゴマー、液状ポリブテン、液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、液状ポリイソプレン/ブタジエン共重合体、液状スチレン/ブタジエン共重合体、液状スチレン/イソプレン共重合体などの合成軟化剤などが挙げられる。
軟化剤(IV)としては、特に40℃における動粘度が20〜800mm2/s(好ましくは40〜600mm2/s、より好ましくは60〜400mm2/s、さらに好ましくは60〜200mm2/s、特に好ましくは70〜120mm2/s)である軟化剤が好ましい。なお、動粘度はJIS K2283(2000年)に準拠して測定した値である。
軟化剤(IV)の流動点は、好ましくは−40〜0℃、より好ましくは−30〜0℃である。また、軟化剤(IV)の引火点(COC法)は、好ましくは200〜400℃、より好ましくは250〜350℃である。
軟化剤(IV)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
軟化剤(IV)の市販品としては、例えば出光興産株式会社が上市している商品名「ダイアナプロセスオイル」シリーズにおけるパラフィン系プロセスオイルおよびナフテン系プロセスオイル(好ましくはパラフィン系プロセスオイル)などを使用できる。
なお、本発明の熱可塑性エラストマー組成物であれば、該軟化剤(IV)の含有量を少なくしても、十分な柔軟性および成形加工性を有するという利点がある。例えば特開2014−080488号公報(特許文献1)に記載の熱可塑性エラストマー組成物と比較して、同等以上の柔軟性および成形加工性を付与するための軟化剤(IV)の含有量は少ない。そのため、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、前記軟化剤(IV)の含有量の上限値は、上記いずれの数値範囲においても、60質量部であってもよいし、50質量部であってもよいし、40質量部であってもよいし、30質量部であってもよい。
架橋剤(V)としては、例えばラジカル発生剤、硫黄および硫黄化合物などが挙げられる。
ラジカル発生剤としては、例えば、ジクミルペルオキシド、ジt−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシドなどのジアルキルモノペルオキシド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレートなどのジペルオキシド;ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド;t−ブチルペルオキシベンゾエートなどのモノアシルアルキルペルオキシド;t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネートなどの過炭酸;ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシドなどの有機過酸化物が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジクミルペルオキシドが反応性の観点から好ましい。
ラジカル発生剤を用いる場合、その含有量は、オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)の合計100質量部に対して、好ましくは0.01〜15質量部、より好ましくは0.05〜10質量部である。
硫黄または硫黄化合物を用いる場合、その含有量は、オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜10質量部、さらに好ましくは1〜10質量部である。
架橋助剤(VI)としては、公知の架橋助剤を使用することができる。例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメリット酸トリアリルエステル、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、グリセロールジメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルメタクリレートなどの多官能性単量体;塩化第一錫、塩化第二鉄、有機スルホン酸、ポリクロロプレン、クロルスルホン化ポリエチレンなどが挙げられる。中でも、トリアリルイソシアヌレートが好ましい。
架橋助剤(VI)は、珪藻土、ホワイトカーボンなどに含浸させて用いてもよい。特に、前記多官能性単量体(さらにはトリアリルイソシアヌレート)は、珪藻土またはホワイトカーボンに含浸されていることが好ましく、ホワイトカーボンに含浸されていることがより好ましい。
架橋助剤(VI)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
架橋助剤(VI)を用いる場合、その含有量は、オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1〜40質量部、より好ましくは0.5〜20質量部、さらに好ましくは2〜20質量部である。
架橋促進剤(VII)としては、例えば、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾール−スルフェンアミド、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(4−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなどのチアゾール類;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジンなどのグアニジン類;ブチルアルデヒド−アニリン反応物、ヘキサメチレンテトラミン−アセトアルデヒド反応物などのアルデヒド−アミン系反応物またはアルデヒド−アンモニア系反応物;2−メルカプトイミダゾリンなどのイミダゾリン類;チオカルバニリド、ジエチルウレア、ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア、ジオルソトリルチオウレアなどのチオウレア類;ジベンゾチアジルジスルフィド;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどのチウラムモノスルフィド類またはチウラムポリスルフィド類;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸テルルなどのチオカルバミン酸塩類;ジブチルキサントゲン酸亜鉛などのキサントゲン酸塩類;亜鉛華などが挙げられる。架橋促進剤(VII)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、さらに他の熱可塑性重合体を含有してなるものであってもよい。他の熱可塑性重合体としては、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド6・10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6・12、ポリヘキサメチレンジアミンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンジアミンイソフタルアミド、キシレン基含有ポリアミドなどのポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂;ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマーなどのポリオキシメチレン系樹脂;スチレン単独重合体、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂などのスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;スチレン/ブタジエン共重合体ゴム、スチレン/イソプレン共重合体ゴムなどのスチレン系エラストマーおよびその水素添加物またはその変性物(但し、液状のものを除く。);天然ゴム;クロロプレンゴム;アクリルゴム;アクリロニトリル・ブタジエンゴム;エピクロロヒドリンゴム;シリコーンゴム;クロロスルホン化ポリエチレン;ウレタンゴム;ポリウレタン系エラストマー;ポリアミド系エラストマー;ポリエステル系エラストマー;軟質塩化ビニル樹脂などが挙げられる。
なお、他の熱可塑性重合体を含有する場合、その含有量は、熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性および機械的強度が損なわれない範囲で用いればよく、他の熱可塑性重合体を添加する前の熱可塑性エラストマー組成物100質量部に対して、好ましくは200質量部以下、より好ましくは100質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下である。
滑剤を含有する場合、その含有量は、滑剤を除く熱可塑性エラストマー組成物100質量部に対して、好ましくは0.01〜3質量部、より好ましくは0.05〜1質量部、さらに好ましくは、0.1〜0.8質量部である。
このように、ウェザーシールを発泡体とする場合には、必要に応じて造核剤を含有させてもよい。造核剤としては、例えば、タルク、シリカ、アルミナ、マイカ、チタニア、酸化亜鉛、ゼオライト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウムなどの、金属酸化物、複合酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属水酸化物などを用いることができる。造核剤を用いることにより、発泡体の発泡セルのセル径の調整が容易となる傾向にあり、適度な柔軟性を有する発泡体を得易い。
前述のとおり、オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)の重合体ブロック(B)の部分が架橋されていてもよい。架橋方法としては、オレフィン系ゴム(I)および水添ブロック共重合体(II)に、架橋剤(V)、架橋助剤(VI)および架橋促進剤(VII)を適宜添加して混練する方法(架橋方法1)、樹脂架橋法(架橋方法2)、キノイド架橋法(架橋方法3)、活性エネルギー線などを用いる方法(架橋方法4)などが挙げられる。以下、これらの架橋方法について順に説明する。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物では、オレフィン系ゴム(I)および水添ブロック共重合体(II)に、架橋剤(V)、架橋助剤(VI)および架橋促進剤(VII)を適宜添加して混練することで、オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)の重合体ブロック(B)を架橋できる。
例えば、前記ラジカル発生剤などの架橋剤(V)と共に、必要に応じて、前記多官能性単量体などの架橋助剤(VI)と、ジベンゾチアジルジスルフィドおよびテトラメチルチウラムジスルフィド(いわゆるジスルフィド系化合物)などの架橋促進剤(VII)を用いてもよい。
かかる方法で架橋を行う場合、例えば、ラジカル発生剤および必要に応じて他の熱可塑性樹脂を含有する熱可塑性エラストマー組成物を、加熱下で溶融混練する方法などが挙げられる。加熱温度は、好ましくは140〜230℃である。溶融混練は、押出機、ニーダー、ロール、プラストグラフなどの装置でバッチ式または連続式で行うことができる。かかる溶融混練工程により架橋反応が進行する。
かかる方法で架橋を行う場合、架橋剤(V)、架橋促進剤(VII)などをロール、バンバリーミキサーなどのミキサー類を用いて、好ましくは50〜250℃(より好ましくは80〜200℃)で混練後、好ましくは60℃以上(より好ましくは90〜250℃)で通常1分〜2時間(より好ましくは5分〜1時間)維持することによって架橋を形成することができる。
樹脂架橋法による架橋方法では、架橋剤(V)としてアルキルフェノール樹脂、臭素化アルキルフェノール樹脂などのフェノール系樹脂を用い、架橋助剤(VI)として塩化第一錫、塩化第二鉄、有機スルホン酸、ポリクロロプレンまたはクロルスルホン化ポリエチレンなどを用いる。
かかる方法で架橋を行う場合、架橋温度については、100〜250℃であるのが好ましく、より好ましくは130〜220℃である。樹脂架橋を行う場合は、架橋促進剤(VII)を併用するのが極めて好ましい。
キノイド架橋法による架橋方法では、架橋剤(V)としてp−キノンジオキシムと二酸化鉛、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシムと四酸化三鉛の組み合わせなどを用いる。
かかる方法で架橋を行う場合、架橋温度については、90〜250℃であるのが好ましく、より好ましくは110〜220℃である。キノイド架橋を行う場合は、架橋促進剤(VII)を併用するのが好ましい。
活性エネルギー線による架橋方法で使用し得る活性エネルギー線としては、例えば、粒子線、電磁波、およびこれらの組み合わせが挙げられる。粒子線としては、電子線(EB)、α線などが挙げられ、電磁波としては、紫外線(UV)、可視光線、赤外線、γ線、X線などが挙げられる。これらの中でも、電子線(EB)または紫外線(UV)が好ましい。
照射時間および照射量に特に制限はなく、架橋の程度に合わせて任意に選択できる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法に特に制限はない。
例えば、[1]オレフィン系ゴム(I)、水添ブロック共重合体(II)、ポリオレフィン系樹脂(III)および軟化剤(IV)を特定の割合で含有してなる熱可塑性エラストマー組成物を製造する場合、予め架橋処理したオレフィン系ゴム(I)、ポリオレフィン系樹脂(III)および軟化剤(IV)の混合物を準備し、これに水添ブロック共重合体(II)、ポリオレフィン系樹脂(III)および軟化剤(IV)の混合物をさらに添加してから溶融混合する方法が挙げられる。
また、[2]オレフィン系ゴム(I)、ポリオレフィン系樹脂(III)、軟化剤(IV)、並びに必要に応じて、架橋剤(V)、架橋助剤(VI)および架橋促進剤(VII)などを混合した後、水添ブロック共重合体(II)、または水添ブロック共重合体(II)および軟化剤(IV)を添加して、その混合物を溶融条件下に動的架橋する方法が、オレフィン系ゴム(I)を架橋すると同時に各成分を均一に混合できる点で好ましい。
ここで、本明細書における「溶融条件下に動的架橋する」とは、溶融状態にした前記混合物に、混練によって剪断応力をかけながら架橋することを意味する。
得られた熱可塑性エラストマー組成物を、公知の成形方法、好ましくは押出成形または射出成形によって、ウェザーシールを得ることができる。特に、ウェザーシールのコーナー部を形成する場合には、射出成形が利用される。ウェザーシールのストレート部を形成する場合には、押出成形が好ましく利用される。
また、発泡剤を含有する熱可塑性エラストマー組成物の場合、発泡成形を行なうが、発泡成形する方法としては、発泡剤の分解または反応により発泡させる化学的方法と、前記化学的方法と超臨界発泡または水発泡などの物理的方法とを併用する方法などが挙げられる。これらの方法を利用し、射出発泡成形、押出発泡成形など、発泡成形に通常用いられる方法によって発泡成形することができる。例えば、ウェザーシールのコーナー部を形成するための発泡体は、発泡剤をドライブレンドした熱可塑性エラストマー組成物を、所望の形状をしたキャビティーを備えた金型内に射出発泡成形することにより得られる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、実施例に記載の方法に従って測定した硬度(JIS−A)が30〜90となり、詳細には40〜80となり、ウェザーシールとして相応しい柔軟性を有する。特に、グラスランのコーナー部用であれば、硬度の上限値は80以下が好ましく、76以下がより好ましく、ドアシールのコーナー部用であれば、硬度の上限値は57以下が好ましく、52以下がより好ましい。
また、実施例に記載の方法に従って測定した加硫ゴムに対する接着力が、100〜300N/cm2であり、TPVに対する接着力が100〜400N/cm2であるため、加硫ゴムおよびTPVに対する接着力に優れる。特に、グラスランのコーナー部用であれば、TPVに対する接着力は、250N/cm2以上が好ましく、310N/cm2以上がより好ましく、加硫EPDMに対する接着力は、220N/cm2以上が好ましく、240N/cm2以上がより好ましい(表3参照)。また、ドアシールのコーナー部用であれば、TPVに対する接着力は、110N/cm2以上が好ましく、140N/cm2以上がより好ましく、加硫EPDMに対する接着力は、100N/cm2以上が好ましく、115N/cm2以上がより好ましい(表4参照)。
さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、耐候性および成形加工性にも優れている。
本発明は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物からなる部位(X1)を有する部材を提供する。部位(X1)は、部材の一部であってもよいし、全体であってもよい。つまり、本発明は、部位(X1)の他に、本発明の熱可塑性エラストマー組成物とは異なる材料からなる部位(Y1)を有する部材も提供する。
部位(Y1)の材料に特に制限はないが、ウェザーシール用途の場合、加硫ゴム、動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)などが挙げられる。
加硫ゴムとしては、(1)エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィン1種以上との共重合体の架橋物、(2)エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィン1種以上と、非共役ポリエン1種以上との共重合体の架橋物、などが挙げられる。特に、加硫ゴムとしては、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィン1種以上と、非共役ポリエン1種以上との共重合体の架橋物が好ましく、エチレンとプロピレンと非共役ポリエンとの共重合体の架橋物がより好ましい。
TPVとしては、オレフィン系樹脂とオレフィン系ゴムとを含有してなるオレフィン系TPVが好ましく、ポリプロピレン樹脂とオレフィン系ゴムとを含有してなるオレフィン系TPVがより好ましい。該オレフィン系ゴムとしては、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィン1種以上と、非共役ポリエン1種以上との共重合体の架橋物が好ましく、エチレンとプロピレンと非共役ポリエンとの共重合体(EPDM)の架橋物がより好ましい。TPVとしては、「Excelink 1303B」、「Excelink 1703B」(いずれもJSR株式会社製)などの市販品を使用することもできる。
なお、「炭素数3〜20のα−オレフィン」および「非共役ポリエン」については、前記オレフィン系ゴム(I)における説明と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
加硫ゴムおよびTPVは、必要に応じて、例えば加硫助剤、加硫促進剤、軟化剤、老化防止剤、カーボンブラック、酸化亜鉛、滑剤などの各種添加剤を含有してなるものであってもよい。
該ウェザーシールは、自動車用、船舶用または航空機用として有用である。
前記部位(X1)は、柔軟性および成形加工性に優れるため、特にコーナー部材として有用であり、ウェザーシール用コーナー部材として有用である。例えば、自動車用途であれば、グラスランのコーナー部材、ドアシールのコーナー部材などとして有用である。
下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により、水素添加前の重合体ブロック(A1)および(A2)と、水素添加後の水添ブロック共重合体(II)とにおいて、ポリスチレン換算のピークトップ分子量(Mp)を求めた。なお、重合体ブロック(A2)のMp(A2)は、水素添加後の水添ブロック共重合体(II)のMpから、水素添加前の重合体ブロック[A1−B]のMpを差し引くことによって求めた。
(GPC測定装置および測定条件)
・装置 :GPC装置「HLC−8320」(東ソー株式会社製)
・分離カラム :カラム「TSKgelSuperHZM−M」(東ソー株式会社製)
・溶離液 :テトラヒドロフラン
・溶離液流量 :0.7ml/min
・サンプル濃度:5mg/10mL
・カラム温度 :40℃
・検出器:示差屈折率(RI)検出器
・検量線:標準ポリスチレンを用いて作成
水素添加後のブロック共重合体(II)をCDCl3に溶解して1H−NMRスペクトルを測定[装置:JNM−Lambda 500(日本電子株式会社製)、測定温度:50℃]し、スチレンに由来するピーク強度から重合体ブロック(A)の含有量を算出した。
水素添加前後におけるブロック共重合体のヨウ素価を測定し、その測定値を用いて、下記式により水添ブロック共重合体(II)の水素添加率(%)を算出した。
水素添加率(%)={1−(水素添加後のブロック共重合体のヨウ素価/水素添加前のブロック共重合体のヨウ素価)}×100
(ヨウ素価の測定方法)
水素添加前後におけるブロック共重合体のシクロヘキサン溶液を用いて、ウィイス法によってヨウ素価を測定した。
水素添加前のブロック共重合体をCDCl3に溶解して1H−NMRスペクトルを測定[装置:JNM−Lambda 500(日本電子株式会社製)、測定温度:50℃]し、イソプレンおよび/またはブタジエン由来の構造単位の全ピーク面積と、イソプレン構造単位における3,4−結合単位および1,2−結合単位、ブタジエン構造単位における1,2−結合単位、または、イソプレンとブタジエンの混合物に由来する構造単位の場合はそれぞれの前記結合単位に対応するピーク面積の比からビニル結合含有量(3,4−結合単位と1,2−結合単位の含有量の合計)を算出した。
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算で求めた。
測定装置および条件は、前記ピークトップ分子量(Mp)の測定におけるGPC測定装置および測定条件と同様とした。
示差走査型熱量計「DSC6200」(セイコーインスツル株式会社製)を用い、水添ブロック共重合体(II)を精秤し、10℃/分の昇温速度にて−120℃から100℃まで昇温し、測定曲線の変曲点の温度を読みとり、ガラス転移温度とした。
以下に、実施例および比較例で用いた各成分の詳細または製造方法を示す。
オレフィン系ゴム(I):エチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム「JSR EP37F」(JSR株式会社製、ヨウ素価=8、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)=100、エチレン含有量54モル%)
(II)−1:スチレン−(ブタジエン/イソプレン)−スチレンブロック共重合体の水素添加物(製造例1および表1参照)
(II)−2:スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(製造例2および表1参照)
(II)−3:スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(製造例3および表1参照)
(II)−4:スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(製造例4および表1参照)
(II')−5:スチレン−(ブタジエン/イソプレン)−スチレンブロック共重合体の水素添加物(製造例5および表1参照)
(II')−6:スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(製造例6および表1参照)
(II')−7:スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(製造例7および表1参照)
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、表1に示す使用量にて、溶媒としてシクロヘキサン、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)を仕込み、ルイス塩基としてテトラヒドロフランを仕込んだ。60℃に昇温した後、スチレン(A1)を加えて1時間重合させ、引き続いてブタジエンおよびイソプレンの混合物を加えて2時間重合を行い、さらにスチレン(A2)を加えて1時間重合することにより、スチレン−(ブタジエン/イソプレン)−スチレンブロック共重合体を含む反応液を得た。
この反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。
放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、さらに真空乾燥することにより、スチレン−(ブタジエン/イソプレン)−スチレンブロック共重合体の水素添加物(水添ブロック共重合体(II)−1と称する)を得た。各成分の使用量および水添ブロック共重合体(II)−1の各物性の測定結果を表1に示す。
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、表1に示す使用量にて、溶媒としてシクロヘキサン、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)を仕込み、ルイス塩基としてN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンを仕込んだ。40℃に昇温した後、スチレン(A1)を加えて1時間重合させ、引き続いてブタジエンを加えて2時間重合を行い、さらにスチレン(A2)を加えて1時間重合することにより、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体を含む反応液を得た。
この反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。
放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、さらに真空乾燥することにより、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(水添ブロック共重合体(II)−2と称する)を得た。各成分の使用量および水添ブロック共重合体(II)−2の各物性の測定結果を表1に示す。
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、表1に示す使用量にて、溶媒としてシクロヘキサン、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)を仕込み、ルイス塩基としてテトラヒドロフランを仕込んだ。60℃に昇温した後、スチレン(A1)を加えて1時間重合させ、引き続いてイソプレンを加えて2時間重合を行い、さらにスチレン(A2)を加えて1時間重合することにより、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を含む反応液を得た。
この反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。
放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、さらに真空乾燥することにより、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(水添ブロック共重合体(II)−3と称する)を得た。各成分の使用量および水添ブロック共重合体(II)−3の各物性の測定結果を表1に示す。
製造例3において、各成分の使用量を表1に記載のとおりに変更したこと以外は同様にして操作を行うことにより、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(水添ブロック共重合体(II)−4と称する)を得た。各成分の使用量および水添ブロック共重合体(II)−4の各物性の測定結果を表1に示す。
製造例1において、各成分の使用量を表1に記載のとおりに変更したこと以外は同様にして操作を行うことにより、スチレン−(ブタジエン/イソプレン)−スチレンブロック共重合体の水素添加物(水添ブロック共重合体(II’)−5と称する)を得た。各成分の使用量および水添ブロック共重合体(II’)−5の各物性の測定結果を表1に示す。
製造例3において、各成分の使用量を表1に記載のとおりに変更したこと以外は同様にして操作を行うことにより、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(水添ブロック共重合体(II’)−6と称する)を得た。各成分の使用量および水添ブロック共重合体(II’)−6の各物性の測定結果を表1に示す。
製造例3において、各成分の使用量を表1に記載のとおりに変更したこと以外は同様にして操作を行うことにより、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(水添ブロック共重合体(II’)−7と称する)を得た。各成分の使用量および水添ブロック共重合体(II’)−7の各物性の測定結果を表1に示す。
ポリオレフィン系樹脂(III):ランダムポリプロピレン(プロピレンエチレンランダム共重合体)「J226T」(MFR[230℃、荷重21.2N]=20g/10分、株式会社プライムポリマー製)
〔軟化剤(IV)〕
軟化剤(IV):パラフィン系プロセスオイル「ダイアナプロセスPW−90」(動粘度=95.54mm2/s(40℃)、出光興産株式会社製)
〔架橋剤(V)〕
架橋剤(V):2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン/シリカ(質量比:40/60)「パーヘキサ(登録商標)25B−40」(日本油脂株式会社製)
〔架橋助剤(VI)〕
架橋助剤(VI):トリアリルイソシアヌレート/ホワイトカーボン(質量比:60/40)「タイク(登録商標)WH−60」(日本化成株式会社製)
〔滑剤〕
滑剤:不飽和脂肪酸モノアマイド「ダイヤミッド(登録商標)L−200」(日本化成株式会社製)
表3または表4に示す配合割合(単位:質量部)で全成分をスーパーミキサーV−20(株式会社カワタ製)を用いてドライブレンドにて予備混合した後、二軸押出機[株式会社日本製鋼所製「TEX−44XCT」、スクリュー長(L)/スクリュー径(D)=42]に供給して温度170〜200℃、回転数300min−1で溶融混練し、ホットカットすることによって、ペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を製造した。
得られたペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を用いて、各物性および特性を下記方法に従って測定または評価した。結果を表3および表4に示す。
(7)硬度(JIS−A)
各例で得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットを、射出成形機「EC75SX」(東芝機械株式会社製)によりシリンダー温度230℃で射出成形し、縦100mm、横35mm、厚み2mmのシートを作製した。次いで、JIS K6253−3(2012年)に準拠して、得られたシートを3枚重ねて厚み6mmの積層体とし、その硬度を測定した。硬度計はタイプAデュロメータを用い、測定値は瞬間の数値を記録した。
硬度が小さいほど、得られる成形体は柔軟性に優れることを示す。
各例で得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットを、射出成形機「EC75SX」(東芝機械株式会社製)によりシリンダー温度230℃で射出成形し、縦100mm、横35mm、厚み2mmのシートを作製し、該シートを縦50mm、横35mmに切り取り、試験片を作製した。該試験片中のフローマークの有無を目視で観察し、下記の基準によって、成形加工性を評価した。
A:フローマークが無い
B:フローマークが少ない
C:フローマークが多い
下記方法によって、動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)からなる被着体、または加硫ゴムからなる被着体との接着力を測定した。
(TPVからなる被着体)
TPV−1:「Excelink 1703B」(JSR株式会社製)のペレットを用いて、前記「(8)成形加工性」に記載の方法に従って、縦50mm、横35mm、厚み2mmの試験片を作成し、これを被着体「TPV−1」とした。該TPV−1の前記「(7)硬度」に記載の方法に従って測定した硬度は71であった。
TPV−2:「Excelink 1303B」(JSR株式会社製)のペレットを用いたこと以外は上記TPV−1と同様にして試験片を作成し、これを被着体「TPV−2」とした。該TPV−2の前記「(7)硬度」に記載の方法に従って測定した硬度は42であった。
(加硫ゴムからなる被着体)
加硫EPDM−3:下記表2に示す配合量にて、エチレン/プロピレン/ジエン共重合体ゴム「EPT4045」(三井化学株式会社製)、カーボンブラック「ダイアブラックH」(三菱化学株式会社製)、老化防止剤「ノクラック6C」(大内進興化学工業株式会社製)、ステアリン酸「ルナックS−20」(花王株式会社製)および亜鉛華「酸化亜鉛」(堺化学工業株式会社製)を、バンバリーミキサーを用いて150℃で6分間混練した(混練第一ステージ)。次いで、得られた組成物を取り出して冷却した後、下記表2に示す配合量にて加硫剤「硫黄」(微粉硫黄、200メッシュ、鶴見化学工業株式会社製)並びに加硫促進剤(1)「ノクセラーTS」(大内進興化学工業株式会社製)および加硫促進剤(2)「ノクセラーM−P」(大内進興化学工業株式会社製)を加え、バンバリーミキサーを用いて温度50℃および圧力1MPaにて20分間混練し(混練第二ステージ)、混練物を得た。
さらに圧縮成形機を用いて、下記表2に示す加硫条件にて圧縮成型し、シート(縦150mm×横150mm×厚さ2mm)を得た。このシートから縦50mm、横35mm、厚み2mmを打ち抜いて試験片を作成し、これを被着体「加硫EPDM−3」とした。この加硫EPDM−3の前記「(7)硬度」に記載の方法に従って測定した硬度は70であった。
上記のようにして得られた各被着体(縦50mm×横35mm×厚み2mm)を、縦100mm×横35mm×厚み2mmのキャビティー内に装着して、そこへ、射出成形機「EC75SX」(東芝機械株式会社製)にて、熱可塑性エラストマーを230℃で射出成形し、複合成形体のシートを得た。なお、該複合成形体のシートは完全溶融して、2mm厚の1枚のシートとなり、つまり、それぞれの被着体(TPV−1、TPV−2または加硫EPDM−3)と熱可塑性エラストマー組成物とは、そのシートの側面において接着した状態である(接着面積:35mm×2mm)。
得られた複合成形体のシート(縦100mm×横35mm×厚さ2mm)を縦100mm×横10mm×厚さ2mmに切り取り、23℃の温度条件および200mm/minの引張速度条件下でインストロン万能試験機「インストロン5566」(インストロンジャパン社製)を用いて、熱可塑性エラストマー組成物と被着体との間の接着力を測定した。
前記「(8)成形加工性」の記載と同じ操作を行うことによりシート(縦100mm×横35mm×厚さ2mm)を得た。このシートを、「サンテストCPS+」(光源:キセノン、照射強度:550W/m2、株式会社東洋精機製作所製)を用いて、24時間、光暴露試験を行った。試験前後の変化の触感を調査し、下記の基準に従って耐候性を評価した。
A:変化が無い
B:若干のべたつきがある
C:べたつく
さらに、実施例6と実施例8とを対比すると、水添ブロック共重合体(II)中の重合体ブロック(A1)と(A2)におけるピークトップ分子量(Mp)の比[Mp(A1)/Mp(A2)]が1/10〜8/10を満たしている実施例8の方が、より一層、成形加工性に優れていることが分かる。
実施例1〜8で得られた熱可塑性エラストマー組成物は、特に、自動車におけるグラスランのコーナー部用として有用である。また、実施例9〜16で得られた熱可塑性エラストマー組成物は、特に、自動車におけるドアシールのコーナー部用として有用である。
一方、水素添加率が低い水添ブロック共重合体を用いた比較例1、2、8および9では、TPVに対する接着力が不十分な場合があり(比較例2参照)、また、耐候性が不足している(比較例1、2、8および9参照)ことが分かる。重合体ブロック(B)のビニル結合含有量が45%未満である水添ブロック共重合体を用いた比較例3、4、10および11では、柔軟性が不足している場合があり(比較例3および10参照)、また、TPVおよび加硫ゴムに対する接着力に乏しい場合がある(比較例4および11参照)ことがわかる。ピークトップ分子量(Mp)が20万を超える水添ブロック共重合体を用いた比較例5、6、12および13では、成形加工性に乏しく、また、柔軟性が不足する場合もある(比較例12参照)ことが分かる。さらに、水添ブロック共重合体(II)を用いなかった比較例7および14では、成形加工性に乏しく、また、加硫ゴムに対する接着力が不足する場合もある(比較例14参照)ことが分かった。
Claims (18)
- オレフィン系ゴム(I)、
下記水添ブロック共重合体(II)、
ポリオレフィン系樹脂(III)、および
軟化剤(IV)
を含有してなる熱可塑性エラストマー組成物であって、
オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)との含有割合[(I)/(II)]が質量比で90/10〜10/90であり、
オレフィン系ゴム(I)と水添ブロック共重合体(II)の合計100質量部に対して、ポリオレフィン系樹脂(III)の含有量が10〜200質量部、軟化剤(IV)の含有量が15〜300質量部である、熱可塑性エラストマー組成物。
水添ブロック共重合体(II):芳香族ビニル化合物に由来する構造単位から主としてなる重合体ブロック(A)と、イソプレンおよびブタジエンからなる群から選択される少なくとも1種に由来する構造単位から主としてなり、かつ3,4−結合単位および1,2−結合単位の含有量の合計が45%以上である重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体の水素添加物であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量が50,000〜200,000であり、重合体ブロック(B)中の炭素−炭素二重結合の70モル%以上が水素添加されている水添ブロック共重合体。 - 前記水添ブロック共重合体(II)のガラス転移温度が−45〜0℃である、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 前記水添ブロック共重合体(II)において、重合体ブロック(A)の含有量が5〜40質量%である、請求項1または2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 水添ブロック共重合体(II)において、重合体ブロック(A)の含有量が5〜18質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 前記水添ブロック共重合体(II)における前記重合体ブロック(A)が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量が同一または異なる2つの重合体ブロック(A1)と(A2)とを含有し、且つ、該水添ブロック共重合体(II)が、前記重合体ブロック(A1)、前記重合体ブロック(B)および前記重合体ブロック(A2)から構成されるトリブロック共重合体[A1−B−A2]の水素添加物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 前記水添ブロック共重合体(II)において、
前記重合体ブロック(A)が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位から主としてなり、且つゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量がMp(A1)である重合体ブロック(A1)と、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位から主としてなり、且つゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算で求めたピークトップ分子量がMp(A2)である重合体ブロック(A2)とを有し、
前記Mp(A1)と前記Mp(A2)との比[Mp(A1)/Mp(A2)]が1/10〜8/10を満たす、請求項5に記載の熱可塑性エラストマー組成物。 - 前記オレフィン系ゴム(I)と前記水添ブロック共重合体(II)の重合体ブロック(B)とが架橋されてなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 前記オレフィン系ゴム(I)が、(I−1)エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィン1種以上との共重合体ゴムまたはその架橋物、並びに(I−2)エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィン1種以上と、非共役ポリエン1種以上との共重合体ゴムまたはその架橋物、からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 前記ポリオレフィン系樹脂(III)が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ(1−ブテン)およびポリ(4−メチル−1−ペンテン)からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる部位(X1)を有する部材。
- 前記部位(X1)の他に、請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物とは異なる材料からなる部位(Y1)を有する、請求項10に記載の部材。
- 前記部位(Y1)の材料が、加硫ゴムまたは動的架橋型オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPV)である、請求項11に記載の部材。
- 前記部位(X1)の他に、請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物(但し、前記部位(X1)を形成する熱可塑性エラストマー組成物と同一であっても異なっていてもよい。)からなる部位(X2)を有する、請求項10に記載の部材。
- 前記部位(X1)が射出成形により得られた部位である、請求項10〜13のいずれか1項に記載の部材。
- 請求項10〜14のいずれか1項に記載の部材を含有するウェザーシール。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる部位(X1)を有し、且つ、
前記部位(X1)の他に、請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物とは異なる材料からなる部位(Y1)を有するか、または、前記部位(X1)の他に、請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物(但し、前記部位(X1)を形成する熱可塑性エラストマー組成物と同一であっても異なっていてもよい。)からなる部位(X2)を有する部材を含有するウェザーシールであって、
前記部位(X1)からなるコーナー部と、前記部位(X2)または(Y1)からなるストレート部とを有するウェザーシール。 - 自動車用、船舶用または航空機用である、請求項15または16に記載のウェザーシール。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる部位(X1)を有する、ウェザーシール用コーナー部材。
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