JP2004276456A - 積層体及び自動車部品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも2つの(A)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック及びビニル芳香族化合物を特定割合で共重合する少なくとも1つの(B)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロックとの構造体を含有し、水添ジエン系共重合体中に占める全ビニル芳香族化合物単位含有量が20〜70質量%、ビニル結合含量が30〜75%である水添ジエン系共重合体とオレフィン系樹脂を含有する熱可塑性エラストマー組成物からなる層と、オレフィン系樹脂発泡体からなる層とを含有する積層体を用いる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインストルメントパネル、ドアー部品、コンソールボックス等の自動車用内装部品分野に使用されるポリオレフィン系の積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車のインストルメントパネルのような内装部品は、複雑な形状に一体的に成形されていなければならないだけでなく、良好な柔軟性及び弾発性を有するために良好な感触を与え、かつ表面に絞り状のパターン等がきれいに形成されていなければならない。そのため従来からインストルメントパネル等の内装部品は基材と表皮層との間に発泡層を設けた積層構造としていた。
従来から内装部品の表皮は、感触、耐擦傷性、耐候性、耐久性等を考慮して、塩化ビニル樹脂により形成されており、内部の発泡層は主としてポリウレタン発泡体により形成されていた。また基材は、成形性、強度及び耐久性等を考慮して、ポリプロピレンやABS樹脂等により形成されていた。このように塩化ビニル樹脂表皮層/ポリウレタン発泡層/PP又はABS樹脂基材からなる積層構造を有する内装部品を製造するには、まずスラッシュ成形法により塩化ビニル樹脂の粉末から緻密な表皮層を成形し、別途射出成形したポリプロピレン又はABS樹脂からなる基材とともに前記表皮層を発泡型にセットし、両者の間にウレタンを注入し加熱することにより、発泡・ 硬化させる。
このような積層構造を有する従来の内装部品は異なる樹脂により構成されているので、リサイクルを行う場合には樹脂ごとに分別を行う必要がある。しかしながら、ポリウレタン発泡層により密着された塩化ビニル樹脂表皮層及びABS樹脂又はポリプロピレンからなる基材を分離するには手間がかかるだけでなく、架橋発泡したポリウレタン層は再利用が不可能であるという問題があった。その上塩化ビニル樹脂の焼却には環境に悪影響を及ぼすガスが発生するため、環境対策装置を具備した大型焼却炉により焼却しなければならない。そのため自動車の内装部品を微細に粉砕した後、ダストとして処分場に廃棄するのが実情であった。
【0003】
近年のごみ問題及び環境問題に鑑みて自動車から出る廃材をできるだけ低減するために、内装部品のリサイクル化が強く望まれており、一部実施が試みられている。そのためには各層の樹脂成分を同一系統のもの、特にオレフィン樹脂に統一するのが好ましい。このような試みとして、オレフィン系樹脂積層体からなるコアと、表面にポリプロピレンとオレフィン系エラストマーからなる熱可塑性エラストマー組成物の表皮層を有するオレフィン系樹脂発泡体からなる自動車内装部品が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
さらには、オレフィン系樹脂成形体からなるコアと、表面にポリプロピレンと低スチレン含量のスチレン系熱可塑性エラストマーからなる熱可塑性エラストマー組成物の表皮層を有するオレフィン系樹脂発泡体からなる積層体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、ポリプロピレンとオレフィン系エラストマーからなる熱可塑性エラストマー組成物の表皮層では、耐傷付性や折り曲げた際に白化しやすい性質を有するため、該積層体を製造したのち金型から脱型する際などに、折り曲げられた部分が白化して外観不良が生じる傾向があった。
また、ポリプロピレンと低スチレン含量のスチレン系熱可塑性エラストマーからなる熱可塑性エラストマー組成物の表皮層では、耐傷付性、耐熱性、耐圧痕性が不十分であるという問題がある。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−15758号公報
【特許文献2】
特開2002−166498号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来の技術的課題を背景になされたもので、表皮層部に特定の水添ジエン系共重合体とオレフィン系重合体とを必須の成分とする熱可塑性エラストマーを使用することにより、発泡時に表皮層に変形等を起こすことなく精度良く製造するとともに、表層部は柔軟性に富み、成形外観、耐傷付性、耐候性、耐熱性、曲げ白化性及び耐圧痕性に優れた積層体を提供することである。
【0006】
【発明を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、表皮層の熱可塑性エラストマー成分に特定の構造を有する水添ジエン系共重合体を使用することにより積層体の耐傷付き性、耐熱性、曲げ白化性及び耐圧痕性を改良できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の積層体が提供される。
[1]下記(a)層と(b)層とを含有する積層体。
(a)下記(イ)100質量部及び(ロ)10〜10000質量部を含有する熱可塑性エラストマー組成物からなる層
(イ)オレフィン系樹脂
(ロ)少なくとも2つの(A)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック及び少なくとも1つの(B)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロックとの構造体を含有し、下記▲1▼〜▲3▼のすべての条件を充足することを特徴とする水添ジエン系共重合体。
▲1▼:水添ジエン系共重合体中に占める全ビニル芳香族化合物単位含有量が20〜70質量%である。
▲2▼:水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する(B)ブロックに含有されるビニル芳香族化合物単位含有量割合(BS)が10〜80%である。
▲3▼:水添ジエン系共重合体中の共役ジエン系化合物由来のビニル結合含量が30〜75%である。
(b)オレフィン系樹脂発泡体からなる層
[2]下記(a)層と(b)層とを含有する積層体。
(a)下記(イ)100質量部及び(ロ)10〜10000質量部を含有する熱可塑性エラストマー組成物からなる層
(イ)オレフィン系樹脂
(ロ)少なくとも2つの(A)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック及び少なくとも1つの(B)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロックとの構造体を含有し、下記▲1▼〜▲3▼のすべての条件を充足することを特徴とする水添ジエン系共重合体。
▲1▼:水添ジエン系共重合体中に占める全ビニル芳香族化合物単位含有量が20〜70質量%である。
▲2▼:水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に占める長連鎖のビニル芳香族化合物単位含有量割合(LS)が10〜80%である。
▲3▼:水添ジエン系共重合体中の共役ジエン系化合物由来のビニル結合含量が30〜75%である。
(b)オレフィン系樹脂発泡体からなる層
[3]上記水添ジエン系共重合体中の共役ジエン系化合物由来の二重結合の90%以上が水添されていることを特徴とする上記[1]又は[2]のいずれかに記載の積層体。
[4]上記水添ジエン系共重合体の230℃、21.2N荷重で測定されるメルトフローレート(MFR)が0.01〜200g/10分である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の積層体。
[5]上記水添ジエン系共重合体の230℃、0.1Hzにおける溶融粘度が2000Pa・s以下であることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の積層体。
[6]上記オレフィン系樹脂発泡体は、上記水添ジエン系共重合体が含有することを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれかに記載の積層体。
[7]上記用熱可塑性エラストマー組成物が、更に(イ)100質量部あたり、下記(ハ)250質量部以下を含有する上記[1]〜[6]のいずれかに記載の積層体。
(ハ)エチレン−α−オレフィン系ランダム共重合体
[8](a)層が粉末成形さることを特徴とする上記[1]〜[7]のいずれかに記載の積層体。
[9](a)層が押出成形さることを特徴とする上記[1]〜[7]のいずれかに記載の積層体。
[10]上記[1]〜[9]のいずれかに記載の(a)層と(b)層、並びに(c)非発泡オレフィン系樹脂層が含有する積層体。
[11]上記[1]〜[10]のいずれかに記載の積層体からなるリサイクル可能な自動車部品。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の積層体の実施の形態を具体的に説明する。
本発明は、下記(a)層と(b)層とを含有する積層体である。
(a)下記(イ)100質量部及び(ロ)10〜10000質量部を含有する熱可塑性エラストマー組成物からなる層
(イ)オレフィン系樹脂
(ロ)少なくとも2つの(A)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック及び少なくとも1つの(B)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロックとの構造体を含有し、下記▲1▼〜▲3▼のすべての条件を充足することを特徴とする水添ジエン系共重合体。
▲1▼:水添ジエン系共重合体中に占める全ビニル芳香族化合物単位含有量が20〜70質量%である。
▲2▼:水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する(B)ブロックに含有されるビニル芳香族化合物単位含有量割合(BS)が10〜80%であるか、
あるいは、水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に占める長連鎖のビニル芳香族化合物単位含有量割合(LS)が10〜80%である。
▲3▼:水添ジエン系共重合体中の共役ジエン系化合物由来のビニル結合含量が30〜75%である。
(b)オレフィン系樹脂発泡体からなる層
以下、各構成要素ごとにさらに具体的に説明する。
【0009】
(I)熱可塑性エラストマー組成物からなる層
本発明の熱可塑性エラストマー組成物からなる層(以下「(a)層」ともいう)は、下記(イ)と(ロ)とを含有する熱可塑性エラストマー組成物(以下「(a)層に使用する熱可塑性エラストマー組成物」ともいう)からなる層である。
(イ)オレフィン系樹脂
オレフィン系樹脂(以下「(イ)成分」ともいう)は、炭素原子数2〜20のα−オレフィンの単独重合体または共重合体が挙げられる。
上記オレフィン系樹脂の具体的な例としては、以下のような(共)重合体が挙げられる。(1)エチレン単独重合体(製法は、低圧法、高圧法のいずれでも良い)(2)エチレンと、10モル%以下の他のα−オレフィンまたは酢酸ビニル、エチルアクリレートなどのビニルモノマーとの共重合体(3)プロピレン単独重合体(4)プロピレンと20モル%以下の他のα−オレフィンとのランダム共重合体(5)プロピレンと30モル%以下の他のα−オレフィンとのブロック共重合体(6)1−ブテン単独重合体(7)1−ブテンと10モル%以下の他のα−オレフィンとのランダム共重合体(8)4−メチル−1−ペンテン単独重合体(9)4−メチル−1−ペンテンと20モル%以下の他のα−オレフィンとのランダム共重合体上記のα−オレフィンとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられる。上記のオレフィン系樹脂の中でも、プロピレン単独重合体、プロピレンと20モル%以下の他のα−オレフィンとのランダム共重合体が好ましい。特に、結晶化度が50%以上、密度が0.89g/cm3以上であり、エチレン単位の含有量が20モル%以下であり、融点が100℃以上であるポリプロピレン及び/又はプロピレンと、エチレンとの共重合体を用いることが好ましい。上記のようなオレフィン系樹脂は、単独で、あるいは組合せて用いることができる。
【0010】
オレフィン系樹脂の分子量はデカリン溶媒中135℃で測定した場合の極限粘度[η]は、好ましくは0.3〜10dl/g、より好ましくは0.5〜6dl/gである。
また、230℃、2.16kg荷重で測定されるメルトフローレートは、好ましくは0.1〜200g/10分、より好ましくは0.5〜100g/10分である。
【0011】
(ロ)水添ジエン系共重合体
水添ジエン系共重合体(以下「(ロ)成分」ともいう)は、「少なくとも2つの(A)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック及び少なくとも1つの(B)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロックとの構造体を含有し、下記▲1▼〜▲3▼のすべての条件を充足することを特徴とする水添ジエン系共重合体」である。
▲1▼:水添ジエン系共重合体中に占める全ビニル芳香族化合物単位含有量が20〜70質量%である。
▲2▼:水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する(B)ブロックに含有されるビニル芳香族化合物単位含有量割合(BS)が10〜80%であるか、
あるいは、水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に占める長連鎖のビニル芳香族化合物単位含有量割合(LS)が10〜80%である。
▲3▼:水添ジエン系共重合体中の共役ジエン系化合物由来のビニル結合含量が30〜75%である。
【0012】
具体的には、例えば下記構造式で表せるブロック共重合体の水添物が挙げられる。
(A−B)m 構造式1
(A−B)m−Y 構造式2
A−(B−A)n 構造式3
[構造式1〜3中、Aはビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックで、実質的にビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックであれば一部共役ジエン化合物が含まれていてもよい。好ましくは、ビニル芳香族化合物を90質量%以上、好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上含有する重合体ブロック(以下、「(A)ブロック」ともいう)であり、Bは共役ジエン化合物が20質量%以上含有するビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体(以下、「(B)ブロック」ともいう)であり、Yはカップリング剤の残基であり、mは2〜5の整数、nは1〜5の整数をそれぞれ表す]。
ここで、共重合体の2つ以上の「(A)ブロック」は、それぞれ同一であってもよく、あるいは、組成、又は分子量等が異なるものであってもよい。同様に「(B)ブロック」が共重合体に2つ以上有する場合は、2つ以上の「(B)ブロック」は、それぞれ同一であってもよく、あるいは、組成、又は分子量等が異なるものであってもよい。
更には、上記重合体ブロック以外の例えば、共役ジエン化合物が水添された重合体等の他の重合体ブロック(以下、「(C)ブロック」ともいう)が、共重合体末端あるいは共重合体鎖中に、1つ又は2つ以上共重合されていてもよい。
【0013】
このようなブロック共重合体は、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素溶媒、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素溶媒、ベンゼン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒等の不活性有機溶媒中、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物、又はビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とこれらと共重合可能な他の単量体とを、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としてリビングアニオン重合し、ブロック共重合体(以下「水添前重合体」ともいう)を得た後、該共重合体を水素添加することにより容易に得ることができる。
【0014】
ビニル芳香族化合物としては、スチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等が挙げられる。この中で、スチレンが好ましい。
また、共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、ミルセン、クロロプレン等が挙げられる。この中で、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
【0015】
重合開始剤である有機アルカリ金属化合物としては、有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物等が挙げられ、特にn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム等の有機リチウム化合物が好ましい。
有機アルカリ金属化合物の使用量については特に限定はなく、必要に応じて種々の量を使用できるが、通常はモノマー100質量%あたり0.02〜15質量%の量で、好ましくは0.03〜5質量%の量で用いられる。
また、重合温度は、一般に−10℃〜150℃、好ましくは0℃〜120℃である。更に、重合系の雰囲気は窒素ガス等の不活性ガスをもって置換することが望ましい。重合圧力は、上記重合範囲でモノマー及び溶媒を液相に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に限定されるものではない。
また、ビニル芳香族化合物および共役ジエン系化合物を含有する共重合ブロックを重合する過程において、それら化合物の単量体を重合系に投入する方法としては特に限定されず、一括、連続的、間欠的およびこれらの組み合わせの方法があげられる。
更には、ビニル芳香族化合物および共役ジエン系化合物を含有する共重合ブロックを重合するときの、その他の共重合成分の添加量、極性物質の添加量、重合容器の個数と種類等、および上記単量体の投入方法は、得られる水添ジエン系共重合体、その組成物、該組成物の積層体の物性が好ましくなるよう選べばよい。
【0016】
水添前重合体は、上記の方法でブロック共重合体を得た後、カップリング剤を使用して共重合体分子鎖がカップリング残基を介した共重合体であってもよい。
使用されるカップリング剤として、例えばジビニルベンゼン、1,2,4−トリビニルベンゼン、エポキシ化1,2−ポリブタジエン、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、ベンゼン−1,2,4−トリイソシアナート、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、テレフタル酸ジエチル、ピロメリット酸ジアンヒドリド、炭酸ジエチル、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン、トリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、テトラクロロシラン、(ジクロロメチル)トリクロロシラン、ヘキサクロロジシラン、テトラエトキシシラン、テトラクロロスズ、1,3−ジクロロ−2−プロパノンなどが挙げられる。この中で、ジビニルベンゼン、エポキシ化1,2−ポリブタジエン、トリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、テトラクロロシランが好ましい。
【0017】
水添ジエン系共重合体は、上記のようにして得られたブロック共重合体を部分的あるいは選択的に水添を行う。この水添の方法、反応条件については特に限定はなく、通常は、20〜150℃、0.1〜10MPaの水素加圧下、水添触媒の存在下に水添する事によって行われる。
この場合、水添率は、水添触媒の量、水添反応時の水素圧力、又は反応時間等を変えることにより任意に選定することができる。水添触媒として通常は、元素周期表Ib、IVb、Vb、VIb、VIIb、VIII族金属のいずれかを含む化合物、例えば、Ti、V、Co、Ni、Zr、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Pt原子を含む化合物を用いることができる。具体的には、例えば、Ti、Zr、Hf、Co、Ni、Pd、Pt、Ru、Rh、Re等のメタロセン系化合物、Pd、Ni、Pt、Rh、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等の担体に担持させた担持型不均一系触媒、Ni、Co等の金属元素の有機塩又はアセチルアセトン塩と有機アルミニウム等の還元剤とを組み合わせた均一系チーグラー型触媒、Ru、Rh等の有機金属化合物又は錯体、及び水素を吸蔵させたフラーレンやカーボンナノチューブ等が挙げられる。この中で、Ti、Zr、Hf、Co、Niのいずれかを含むメタロセン化合物は、不活性有機溶媒中、均一系で水添反応できる点で好ましい。更に、Ti,Zr,Hfのいずれかを含むメタロセン化合物が好ましい。特にチタノセン化合物とアルキルリチウムとを反応させた水添触媒は安価で工業的に特に有用な触媒であるので好ましい。尚、上記水添触媒は1種のみ用いてもよく、又は2種以上を併用することもできる。本発明では、水添後、必要に応じて触媒の残渣を除去し、又はフェノール系又はアミン系の老化防止剤を添加し、その後、水添ジエン系共重合体溶液から水添ジエン系共重合体を単離する。水添ジエン系共重合体の単離は、例えば、水添ジエン系共重合体溶液にアセトン又はアルコール等を加えて沈殿させる方法、水添ジエン系共重合体溶液を熱湯中に撹拌下投入し、溶媒を蒸留除去する方法等により行うことができる。
【0018】
水添ジエン系共重合体中に占める全ビニル芳香族化合物単位の含有量は、20〜70質量%、好ましくは25〜65質量%の範囲内である。ビニル芳香族化合物単位の含有量が70質量%を超えると、該重合体組成物を成形してなる積層体が硬くなる傾向にある。また、ビニル芳香族化合物単位の含有量が20質量%未満であると、得られた積層体の耐傷付性、耐圧痕性が低下する傾向にある。
【0019】
水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する(B)ブロックに含有されるビニル芳香族化合物単位含有量割合(BS)(以下単に「BS割合」と記す場合もある)は10〜80%、好ましくは25〜75%、更に好ましくは30〜70%範囲内である。BS割合が10%未満であると、得られた積層体の柔軟性、耐傷付性が低下する。また、80%を超えると、積層体の耐傷付性、耐圧痕性が低下する。
尚、BS割合は、重合時のビニル芳香族化合物の仕込量から以下の式を用いて求められる。
BS割合(%)=(水添ジエン系共重合体のそれぞれの(B)ブロックに含有されるビニル芳香族化合物の仕込合計量/水添ジエン系共重合体中に占める全ビニル芳香族化合物の仕込合計量)×100
【0020】
また、水添ジエン系共重合体は、水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に占める長連鎖のビニル芳香族化合物単位含有量割合(LS)(以下単に「LS割合」と記す場合もある)は10〜80%、好ましくは20〜70%、更に好ましくは30〜50%範囲内である。LS割合が10%未満であると、得られた積層体の積層体の耐傷付性、耐圧痕性が低下する。また、80%を超えると、積層体の柔軟性、耐傷付性が低下する。ここで、LS割合は以下に説明する値である。
一般に、スチレン・ブタジエン共重合体の1H−NMRスペクトルでは、スチレンのフェニルプロトンは、ケミカルシフトが7ppm付近および6.5ppm付近の二つのピークを示し、6.5ppm付近ピークは長連鎖を形成したスチレンのオルト位のフェニルプロトンであるとされている(J.Polym.Sci.Vol38,1959, Boveyら、p73〜90)。
そこで、後述の製造例1に準じて製造した水添ジエン系共重合体(H−2)の7.6〜6.0ppm領域の1H−NMRスペクトル(図1)で示すように、これらのピークのうち、高磁場側の6.5ppm付近ピークを「長連鎖のビニル芳香族化合物」として、270MHzの1H−NMRで測定される7.6ppmから6.0ppm部分の面積強度を全ビニル芳香族化合物単位含有量、6.8ppmから6.0ppm部分の面積強度を長連鎖のビニル芳香族化合物単位含有量とし、LS割合は、以下の式を用いて求めた値である。
LS割合(%)=〔(6.8〜6.0ppm部分の面積強度×2.5)/(7.6〜6.0ppm部分の面積強度)〕×100
【0021】
水添ジエン系共重合体における水添前の共役ジエン化合物由来のビニル結合(1,2−及び3,4−ビニル結合)含量は30〜75%、好ましくは40〜75%、更に好ましくは50〜75%、最も好ましくは60〜75%の範囲内である。かかる割合が30%未満であると、得られた積層体が硬くなり、柔軟性に劣る。一方、75%を超えると積層体の耐熱性、耐傷付性が悪くなる。
【0022】
水添ジエン系共重合体の水添率は、水添前の共役ジエン化合物由来の二重結合の90%以上、特に95%以上が水添されていることが好ましい。水添率が90%未満の場合、得られた積層体の耐候性が低下する傾向にある。尚、共役ジエン化合物由来の二重結合は側鎖二重結合として1,2−及び3,4−ビニル結合と、主鎖二重結合として1,4−結合とがあるが、それらのうち、少なくとも1,2−及び3,4−ビニル結合は90%以上水添されていることが好ましい。
【0023】
水添ジエン系共重合体の230℃、21.2N荷重で測定したメルトフローレート(MFR)は、0.01〜200g/10分の範囲内では特に限定されるものではないが、使用用途により異なる。粉末成形に使用する場合は、10〜200g/10分であることが好ましく、より好ましくは15〜100g/10分、特に好ましくは20〜100g/10分である。メルトフローレート(MFR)が10g/10分未満の場合、微粉末が容易に得られない傾向にあり、又得られた積層体の成形外観が劣る傾向にある。一方、メルトフローレート(MFR)が200g/10分を超えると、得られた積層体の耐熱性、耐候性、耐傷付性が劣る傾向にある。
【0024】
押出成形に使用する場合は、0.01〜100g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.05〜50g/10分、特に好ましくは0.05〜15g/10分である。メルトフローレート(MFR)が0.01g/10分未満では、押出成形時の負荷が過大となり、また押出成形品の肌が荒れるなど、好ましくない。一方、メルトフローレート(MFR)が100g/10分を越えると、ドローダウン等の押出し成形性に問題が生じる恐れがあるため好ましくない。
【0025】
水添ジエン系共重合体の230℃、0.1Hzにおける溶融粘度は、2000Pa・s以下であることが好ましく、特に10〜1500Pa・sであることが好ましい。
【0026】
水添ジエン系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、外観、強度に優れる積層体を得るためには3万〜40万であることが好ましく、特に5万〜30万であることが好ましい。該重量平均分子量が3万未満であると、得られた積層体に粘着性が発生するほか、耐熱性及び耐候性が不十分となる。また、該重量平均分子量が40万を超える場合は、流動性が劣るため、十分な外観及び耐傷付性を有する積層体を得ることができない。
【0027】
水添ジエン系共重合体のガラス転移温度(Tg)は耐熱性や耐寒性に影響を与えることがある。水添ジエン系共重合体は、少なくとも2つのTgをもち、最も高温のTgをTg(A)、最も低温のTgをTg(B)とすると、Tg(A)は80〜110℃、好ましくは90〜110℃であり、Tg(B)は−60〜10℃、好ましくは−55〜5℃である。尚、耐寒性を必要とする場合は、Tg(B)は−55〜−30℃が望ましい。
【0028】
なお、水添ジエン系共重合体は、アミノ基、アルコキシシリル基、ヒドロキシル基、酸無水物基、エポキシ基等の官能基を該水添ジエン系共重合体に導入して、変性水添ジエン系共重合体として用いることも可能である。かかる変性水添ジエン系共重合体として、例えば下記の共重合体が挙げられる。
(a)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物をアミノ基を有する有機アルカリ金属化合物の存在下で共重合し、その後、該重合体を水素添加した共重合体。
(b)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とアミノ基を有する不飽和単量体とを有機アルカリ金属化合物の存在下で共重合し、その後、該重合体を水素添加した共重合体。
(c)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物を有機アルカリ金属化合物の存在下で共重合し、得られた重合体の活性点に、アルコキシシラン化合物を反応させた重合体とし、その後、該重合体を水素添加した共重合体。
(d)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物を有機アルカリ金属化合物の存在下で共重合し、得られた重合体の活性点に、エポキシ化合物又はケトン化合物を反応させた重合体とし、その後、該重合体を水素添加した共重合体。
(e)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物を有機アルカリ金属化合物の存在下で共重合し、該重合体を水素添加した重合体に(メタ)アクリロイル基含有化合物、エポキシ基含有化合物または無水マレイン酸から選ばれる少なくとも1種を溶液中又は押し出し機等の混練り機中で反応して得られる共重合体。さらには、
(f)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物を有機アルカリ金属化合物の存在下で共重合し、カップリング剤として、エポキシ化1,2−ポリブタジエン、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、ベンゼン−1,2,4−トリイソシアナート、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、テレフタル酸ジエチル、ピロメリット酸ジアンヒドリドなどを用いることにより、分子鎖の中央に−OH基、−NH−CO基、−NH基などの官能基を導入することもできる。
【0029】
本発明の(a)層に使用する熱可塑性エラストマー組成物は、上記(イ)、(ロ)を必須成分とする。(ロ)成分の含有量は、(イ)成分100質量部に対して、(ロ)成分が10〜1000質量部含有することが必要であり、40〜200質量部含有することが好ましい。(イ)成分100質量部に対する(ロ)成分の含有量が10質量部未満である場合は、得られた積層体の柔軟性が劣り、また折り曲げた時に折り曲げられた部分が白化しやすくなり、1000質量部を超える場合は、得られた積層体に粘着性が発生するほか、耐熱性及び耐候性が不十分となる。
【0030】
なお、(a)層に使用する熱可塑性エラストマー組成物は、必須の成分である(イ)及び(ロ)成分に加えて、以下の(ハ)エチレン−α−オレフィン系ランダム共重合体を含有してもよい。(ハ)を含有する場合には、得られる積層体を折り曲げた時に折り曲げられた部分の耐白化性を低下させることなしに、80℃程度からオレフィン系樹脂の融点未満の温度で加熱したときに光沢を発することがなく、更には耐寒衝撃性に優れる積層体を与える。
【0031】
(ハ)エチレン−α−オレフィン系ランダム共重合体
エチレン−α−オレフィン系ランダム共重合体(以下「(ハ)成分」ともいう)は、例えば、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三元共重合ゴム、エチレン−1−ブテン共重合ゴム、エチレン−1−ブテン−非共役ジエン三元共重合ゴムのような、エチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンを主成分とするランダム共重合体が挙げられる。
上記炭素数3〜10のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等を挙げることができ、特にプロピレン、1−ブテンが好ましい。
上記非共役ジエンとしては、例えば、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、3,6−ジメチル−1,7−オクタジエン、4,5−ジメチル−1,7−オクタジエン、5−メチル−1,8−ノナジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデンノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、2,5−ノルボルナジエンなどを挙げることができ、特に1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンが好ましい。
【0032】
これらのエチレン−α−オレフィン系ランダム共重合体において、エチレンが35〜85質量%、特に40〜80質量%、α−オレフィンが15〜65質量%、特に20〜60質量%の割合で共重合されていることが好ましい。また、非共役ジエンとしては、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエンが好ましく、その含量は、0〜20質量%、特に1〜10質量%の割合で共重合されていることが好ましい。また、ヨウ素価表示で40以下、特に5〜30、更には7〜20であることが好ましい。エチレン−α−オレフィン系ランダム共重合体において、エチレン含有量が85質量%より多くなり、α−オレフィン含有量が15質量%未満では、該共重合ゴムの柔軟性が不足し好ましくない。また、エチレン−α−オレフィン系ランダム共重合体のデカリン溶媒中135℃で測定した場合の極限粘度[η]は、1.0dl/g以上であるが、好ましくは2.0〜6.8dl/g、より好ましくは3.5〜6.0dl/gである。更に、X線回折測定による結晶化度は20%以下、特に15%以下であることが好ましい。結晶化度が20%を超える場合は共重合ゴムの柔軟性が低下する傾向があり好ましくない。
エチレン−α−オレフィン系ランダム共重合体は軟化剤が重合時に添加された油展ポリマーであってもよい。
【0033】
(ハ)成分を用いる場合の(ハ)成分の量は、(イ)成分100質量部に対して250質量部以下であり、好ましくは20〜100質量部である。(ハ)成分が過多であると得られた積層体の機械的強度、成形外観が低下する場合がある。
また、(a)層に使用する熱可塑性エラストマー組成物は、(イ)及び(ロ)成分、並びに必要に応じて配合される(ハ)成分に加えて、本発明の効果を損なわない程度に、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、アクリルゴム等のゴム質重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びそのけん化物、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸グリシジル−酢酸ビニル共重合体、極性基含有エチレン−α−オレフィン共重合体及びその金属架橋体などの他の重合体成分を含有していてもよい。
【0034】
また、(a)層に使用する熱可塑性エラストマー組成物は、必要に応じて各種添加剤、例えばフェノール系、サルファイト系、フェニルアルカン系、ホスファイト系、アミン系、アミド系等の耐熱安定剤、耐候安定剤、金属不活性剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、光安定剤、銅害防止剤などの安定剤、防菌・防かび剤、抗菌剤、分散剤、鉱物油系軟化剤、可塑剤、滑剤、発泡剤、発泡助剤、酸化チタン、顔料、フェライトなどの金属粉末、ガラス繊維、金属繊維などの無機繊維、炭素繊維、アラミド繊維などの有機繊維、複合繊維、チタン酸カリウムウィスカーなどの無機ウィスカー、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスフレーク、アスベスト、マイカ、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、ハイドロタルサイト、カオリン、けい藻土、グラファイト、軽石、エボ粉、コットンフロック、コルク粉、硫酸バリウム、フッ素樹脂、ポリマービーズなどの充填剤またはこれらの混合物、ポリオレフィンワックス、セルロースパウダー、ゴム粉などの充填剤、低分子量ポリマーなどを配合して用いることができる。
滑剤として、シリコーンオイル、シリコーンガム、脂肪酸アミド、フッ素樹脂を使用することにより得られた積層体の耐傷付性が一層向上する。
【0035】
(a)層に使用する熱可塑性エラストマー組成物が顔料を含有する場合、顔料としては、アゾ系、フタロシアン系、スレン系、染色レーキ等の有機顔料、酸化チタン等の酸化物系、クロモ酸モリブデン酸系、硫化セレン化合物、フェロシアン化合物、カーボンブラック等の無機顔料が用いられる。
また、(a)層に使用する熱可塑性エラストマー組成物は、必要に応じて従来公知の方法により、硫黄架橋、過酸化物架橋、金属イオン架橋、シラン架橋、樹脂架橋などの架橋を行うこともできる。
【0036】
(a)層に使用する熱可塑性エラストマー組成物を得る方法としては、例えば(イ)及び(ロ)成分並びに必要に応じて配合される(ハ)成分を溶融混練する方法が挙げられる。混練には、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、ロール等を用いることができる。なお、先述の各種添加剤及び各種重合体の配合は、たとえば、これらの添加剤が予め配合された(イ)、(ロ)、(ハ)成分を用いたり、上記成分の混練の際に配合することにより行うことができる。
【0037】
(a)層に使用する熱可塑性エラストマー組成物は、射出成形、二色射出成形、押出成形、回転成形、プレス成形、中空成形、サンドイッチ成形、圧縮成形、真空成形、粉末(パウダースラッシュ)成形、ダブルフラッシュ成形、積層成形、カレンダー成形、ブロー成形等の公知の方法で所望の形状の成形品を製造することができる。また、必要に応じて、発泡、延伸、接着、印刷、塗装、メッキ等の加工をしてもよい。尚、押出成形の場合、異型押出、シート押出、複層押出等の押出成形用途にも幅広く適用できる。粉末成形する場合、熱可塑性エラストマー組成物を予め粉末にしておく必要がある。
【0038】
(a)層に使用する熱可塑性エラストマー組成物の粉末は、機械的に粉砕する方法、ストランドカット法、ダイフェースカット法等によって容易に微細なパウダーが得られ、そのパウダーを用いて粉末形成することができる。
機械的に粉砕する方法として、例えば、ターボミル、ローラーミル、ボールミル、ピンミル、ハンマーミル、遠心力粉砕機等の粉砕機などを用いて、冷凍又は常温粉砕することができる。
ストランドカットで粉砕する方法としては、溶融している熱可塑性エラストマー組成物をダイスから空気中又は水中に押し出してストランドとし、これを冷却して切断する。ダイスの吐出口径は、通常は0.1〜3mm、好ましくは0.2〜2mmの範囲にある。ダイスの吐出口1個あたりの熱可塑性エラストマー組成物の吐出速度は、通常は0.1〜5kg/時、好ましくは0.5〜3kg/時の範囲にある。ストランドの引取速度は、通常は1〜100m/分、好ましくは5〜50m/分の範囲にある。また、冷却されたストランドは、通常は1.2mm以下、好ましくは0.1〜1.0mmに切断される。
ダイフェースカットで粉砕する方法としては、溶融している熱可塑性エラストマー組成物をダイスから水中に押し出しながら切断する。ダイスの吐出口径は、通常は0.1〜3mm、好ましくは0.2〜2mmの範囲にある。ダイスの吐出口1個あたりの熱可塑性エラストマー組成物の吐出速度は、通常は0.1〜5kg/時、好ましくは0.5〜3kg/時の範囲にある。水の温度は、通常は30〜70℃、好ましくは40〜60℃の範囲にある。
上記粉砕方法により、かさ比重が0.38以上、好ましくは0.40以上、0.70以下、かつ球換算平均粒径が1.2mm以下、好ましくは0.1〜0.7mmのパウダーが得られる。
【0039】
(II)オレフィン系樹脂発泡体からなる層
本発明のオレフィン系樹脂発泡体からなる層(以下「(b)層」ともいう)は、上記(イ)成分で例示したオレフィン系樹脂を発泡した発泡体からなる層である。
かかるオレフィン系樹脂発泡体は、(a)層に使用する熱可塑性エラストマー組成物のオレフィン系樹脂と同一、又は異なる種類のオレフィン系樹脂に熱分解型化学発泡剤を添加し発泡させたものである。
【0040】
熱分解型化学発泡剤の種類は、熱を加えることで分解しガスを放出する化学発泡剤であれば特に限定するものではなく、例えば有機、無機系の各種があり、有機系にはアゾジカルボンアミド、N,N´−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、P,P´−オキシベンゼンスルフォニルヒドラジドなど、無機系には重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、カルシウムアジドなどが例示され、それぞれ単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
熱分解型化学発泡剤の添加量は加熱加工し発泡体としたときの発泡倍率が2〜40倍の範囲、より好ましくは5〜20倍の範囲となるように調整をすると好ましい。発泡倍率が2倍未満であると緩衝性、断熱性、軽量性などの発泡体の特徴が著しく損なわれる場合があり、発泡倍率が40倍を越える場合であれば該化学発泡剤の分解により大量に発生したガスの圧力が著しく大きくなり樹脂のガス保持力を上回ることで発泡ガスが逃散し良好な発泡体とならない場合がある。ここで示す発泡倍率とは、発泡能力を有するオレフィン系樹脂を加熱加工し発泡体とした上で、JIS K−6767に準じた測定方法で測定した見掛け密度の逆数を示す。
【0042】
本発明のオレフィン系樹脂発泡体は、発泡体となる気泡構造を形成させるため、樹脂の増粘度が必要であれば架橋を行うことができる。架橋方法は、特に限定されないが、電離性放射線を照射し架橋させる電子線架橋法、有機過酸化物を混練し発泡時に有機過酸化物を分解し架橋させる化学架橋法、シラン基を持つオレフィン系樹脂を混合し水分と接触することで架橋させるシラン架橋法が例示され、これらの架橋方法はそれぞれ単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。このときの架橋度は、0〜20%が好ましく、さらに0〜10%がより好ましい。電離性放射線を照射するエネルギー、有機過酸化物を添加する量、樹脂中に含まれるシラン基の量や水分の接触条件などの諸条件は、架橋度が0〜20%の範囲であれば特に限定するものではない。
【0043】
本発明のオレフィン系樹脂発泡体は、オレフィン系樹脂に上記水添ジエン系共重合体を配合することにより、独泡で、一つ一つの気泡径を小さくすることができる。その配合割合は、オレフィン系樹脂100質量部あたり5〜50質量部である。
【0044】
本発明のオレフィン系樹脂発泡体は、必要に応じて例えば熱安定剤、耐候剤、難燃剤、難燃助剤、分散剤、顔料、流動性改良剤、離型剤、充填剤、造核剤など公知の各種添加剤が添加されたものであっても良い。
【0045】
(III)積層体の製法
本発明の積層体は、(a)層と(b)層とを含有する積層体であれば特に限定するものではなく、たとえば、(a)層と(b)層の間に他の素材あるいは形態の層、あるいは、(a)層又は(b)層のどちらか一方、又は両方に他の素材あるいは形態の層が積層されは3層、又は4層以上の積層体であっても良い。
(a)層と(b)層の積層体は、例えば、(1)予め射出成形等の方法で成形されてなる(a)層と(b)層を貼合せる。この場合、貼合は各基材層に接着剤等を塗布した後、必要に応じて加圧する方法、又は(2)加熱したスラッシュ成形型内に本発明の(a)層に使用する熱可塑性エラストマー組成物の粉末を充填して所定の厚さの(a)層を形成し、次いで、発泡剤を含有するオレフィン樹脂組成物の粉末を前記スラッシュ成形型内に充填し、再度加熱することにより発泡剤を含有するオレフィン樹脂組成物の粉末を発泡させて、前記(a)層に一体的に積層された発泡層を形成させる方法等により行われる。一体的に積層された発泡層を形成させる場合、(b)層の平滑性を発現させるために球状又はサイコロ状又は棒状の冶具を用いて(b)層面の凹凸を予め無くしておくことが好ましい。本発明の(a)層に使用される熱可塑性エラストマー組成物は、機械的に粉砕、ストランドカット、ダイフェースカット等によって容易に微細なパウダーが得られるため、そのパウダーを用いて、上記(2)の方法で製造するこことが効率的で好ましい。
【0046】
上記熱可塑性エラストマー組成物からなる(a)層とオレフィン系樹脂発泡体からなる(b)層が積層された積層体は、耐衝撃性、防音性強度に優れ、さらには軽量性に優れるために、熱可塑性樹脂基材がなくとも、自動車内装材料等に使用することができる。
【0047】
必要なら、上記積層体に、(b)層と同一、又は異なる種類の非発泡オレフィン系樹脂からなる層(以下「(c)層」という)が積層されていても良い。この場合、強度にさらに優れた積層体を得ることができる。この場合、該積層体は、(a)層−(b)層−(c)層からなる層の順で積層されることが好ましい。
この場合、例えば(a)層と(c)層を作成し、ビーズ発泡金型に装着し、(a)層と(c)層の空隙に発泡ビーズを注入し加熱することで容易に(a)層−(b)層−(c)層を製造する事ができる。(c)層は射出成形、2色射出成形、押出成形、プレス成形、中空成形、サンドイッチ成形、圧縮成型、真空成形、カレンダー成形、粉末成形、積層成形、ブロー成形などの公知の方法で所望の形状の成形品を製造することができる。
【0048】
具体的には、解放された一対のビーズ発泡金型に本発明の(a)層と(c)層をそれぞれの型面に装着し、ついで(a)層と(c)層の空隙に発泡ビーズを充填する。発泡ビーズとしてポリプロピレン発泡ビーズを使用する場合の型温は、充填中若しくは充填後高圧蒸気などで120〜150℃とし5〜120秒で発泡させ(b)層を作製する。
【0049】
また非発泡オレフィン系樹脂からなる(c)層は、予め射出成形等の方法で成形されてなるものを、積層体の樹脂発泡体側に貼合することもできる。この場合、貼合はオレフィン系樹脂発泡体からなる層及び/又は非発泡オレフィン系樹脂からなる層に接着剤等を塗布した後、必要に応じて加圧する等の方法により行われる。
【0050】
本発明の積層体は、各層が全てオレフィン系樹脂により形成されているので、分別することなしにリサイクルが可能であり、インストルメントパネル、ハンドル、ドアパネル、コンソールボックス等の自動車部品に用いることができる。この場合、積層体の各層の厚さは、表皮層となる(a)層が概ね0.3〜3mm、発泡層である(b)層が概ね2〜50mm、基材となる(c)層は概ね1〜5mm程度のものが使用される。
また、(b)層の発泡倍率は概ね2〜40倍のものが使用される。
【0051】
本発明の積層体は、必要に応じて表皮層となる(a)層表面を塗料により塗装することにより、積層体の耐傷つき性及び耐摩耗性を向上させることも可能である。塗料としては、公知のウレタン系、アクリル系等の塗料を使用することができる。さらには、シームレスエアバッグシステムを内蔵した自動車内装材料として用いることも可能である。
【0052】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限を受けるものではない。
なお、実施例、比較例中の部及び%は、特に断らない限り質量基準である。
【0053】
以下に記載の方法により、水添ジエン系共重合体を製造した。尚、共重合体の特性は以下の方法で測定した。
水添率
共役ジエンの水添率は、四塩化炭素溶液を用い、270MHz、1H−NMRスペクトルから算出した。
メルトフローレート(MFR)
JIS K7210に準拠して、230℃、21.2N荷重で測定した。
全スチレン単位含有量(「全結合スチレン含有量」ともいう)
四塩化炭素溶液を用い、270MHz、1H−NMRスペクトルから算出した。
ビニル結合含量(V)
ビニル結合含量は、赤外分析法を用い、ハンプトン法により算出した。
BS割合
以下の式を用いて仕込量からから算出した。
BS(%)=(水添ジエン系共重合体のそれぞれの(B)ブロックに含有されるビニル芳香族化合物の仕込合計量/水添ジエン系共重合体中に占める全ビニル芳香族化合物の仕込合計量)×100
LS割合
試料30mgを0.6mlの四塩化炭素に溶解した溶液を、テトラメチルシランを標準物質とし、1H−NMR(270MHz)を用いて、23℃で50回積算した。
LS(%)=〔(6.8〜6.0ppm部分の面積強度×2.5)/(7.6〜6.0ppm部分の面積強度)〕×100
溶融粘度
20mmΦのコーンプレート(コーン角:2°)を用いて粘弾性測定装置(レオロジ社製「MR−500」)で温度230℃、周波数0.1Hz、歪み0.1の条件で溶融粘度η*(複素動的粘度)を測定した。
水添ジエン系共重合体の重量平均分子量(Mw)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(室温GPC、カラム;東ソー社製、GMH−XL)を用いて、ポリスチレン換算で求めた。
【0054】
(1)水添ジエン系共重合体の製造例
製造例1:水添ジエン系共重合体(H−1)の製造
内容積50リットルのオートクレーブに、脱気・脱水したシクロヘキサン25kg、スチレン400gを仕込んだ後、テトラヒドロフラン300g及びn−ブチルリチウム3.5gを加え、50℃からの断熱重合を20分行った。反応液を20℃とした後、1,3−ブタジエン3500g及びスチレン700gを加え断熱重合を行った。転化率がほぼ100%になった後、さらにスチレン400gを加え重合を行った。
重合が完結したのち、水素ガスを0.4MPa−Gの圧力で供給し、20分間撹拌し、リビングアニオンとして生きているポリマー末端リチウムと反応させ、水素化リチウムとした。反応溶液を90℃にし、テトラクロロシラン(1.5g)を添加し、約20分間撹拌した後、特開2000−37632号公報記載のチタノセン化合物を使用して水添反応を行った。
得られた水添ブロック共重合体(H−1)の水添率は98%、重量平均分子量は12万、結合スチレン含量は30質量%、BS割合は47%、LS割合は48%、Bブロックのビニル結合含量は73%、MFRは20g/10分、溶融粘度は450Pa・sであった。
【0055】
以下、同様の方法により、表1及び表2の各水添ジエン系共重合体となるように、モノマー量、テトラヒドロフラン添加量、触媒量、重合温度、重合時間などを変量することにより作製した。これらの結果を表1及び表2に示す。尚、H−7、及びH−15の水添ジエン系共重合体はカップリング剤としてテトラクロロシランを用いたものである。
【0056】
製造例2 水添ジエン系共重合体(H−6)の製造
内容積50リットルのオートクレーブに、脱気・脱水したシクロヘキサン25kg、スチレン400gを仕込んだ後、テトラヒドロフラン150g及びn−ブチルリチウム3.2gを加え、50℃からの断熱重合を20分行った。反応液を20℃とした後、1,3−ブタジエン2950g及びスチレン1200gを加え断熱重合を行った。転化率がほぼ100%になった後、さらにスチレン400gを加え断熱重合を20分行った後、1,3−ブタジエン50gを加え断熱重合を行った。
重合が完結したのち、水素ガスを0.4MPa−Gの圧力で供給し、20分間撹拌し、リビングアニオンとして生きているポリマー末端リチウムと反応させ、水素化リチウムとした。反応溶液を90℃にし、テトラクロロシラン(1.5g)を添加し、約20分間撹拌した後、特開2000−37632号公報記載のチタノセン化合物を使用して水添反応を行った。
得られた水添ブロック共重合体(H−6)の水添率は98%、重量平均分子量は13万、結合スチレン含量は40質量%、BS割合は60%、LS割合は36%、Bブロックのビニル結合含量は56%、MFRは18g/10分、溶融粘度は520Pa・sであった。尚、表1に示す水添ブロック共重合体(H−6)の構造2のCは、水添ポリブタジエンブロックを表す。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
ここで、H−1〜H−16は本発明の水添ジエン系共重合体で、R−1〜R−8は、本発明の範囲外の水添ジエン系共重合体である。
R−1は、(B)ブロックにビニル芳香族化合物が共重合されていない例である。
R−2、R−3は、BS割合、LS割合が本発明の範囲外となったものである。
R−4、R−5、R−8は、ビニル結合含量が本発明の範囲外となったものであ
る。
R−6は、全ビニル芳香族化合物単位含量が本発明の範囲外となったものである。
R−7は、(A)ブロックに共役ジエン化合物単位が50質量%含量するものである。
【0060】
(2)各種成分
(イ)成分:オレフィン系樹脂;サンアロマー社製、ポリプロピレン、PM940M、MFR=30g/10分(230℃、21.2N荷重)
(ロ)成分:水添ジエン系共重合体;表1及び表2に示す構造を有する水添ジエン系共重合体
(ハ)成分:エチレン−α−オレフイン系共重合体;ジェイエスアール社製、EP51、プロピレン含量26%、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)=38
【0061】
(3)積層体評価
硬度(柔軟性)
積層体をASTM D−2240に従ってショアーA硬度を測定し、以下の基準で判定した。
○:柔軟性に優れる:硬度が90未満
×:柔軟性に劣る:硬度が90を超える
成形外観
下記の基準に従って、積層体の成形外観を目視評価した。
○:ピンホールがなく、シボ転写性が良好である。
×:ピンホールや欠肉がある、シボ転写性が悪い、艶むらがあるなど、外観不良現象が見られる。
耐傷付性
東洋精機製作所社製のテーバースクラッチテスター試験機を用い、積層体を50gずつ荷重を変えながら引っ掻き試験を実施した。試験後の試料表面の傷の有無を目視で判定し、傷が付く最低の荷重を傷付き荷重とし、以下の基準で判定した。
○:耐傷付性に優れる:傷付き荷重が200gを超える
×:耐傷付性に劣る:傷付き荷重が200g未満
耐熱性
積層体を110℃、24時間放置し、加熱前後のグロス値(光沢)の変化を下記の基準で判定した。グロス値はデジタル光度計(村上色彩技術研究所製、GM−26D、反射角60度)により測定した。
○:耐熱性に優れる:グロス値の差が1.0未満
×:耐熱性に劣る:グロス値の差が1.0を超える
耐候性
サンシャインウェザーメーター(スガ試験社製)を用い、積層体をブラックパネル温度83℃(雨無し)で50時間放置し、その前後における引張強度の保持率を求め、下記の基準で判定した。
○:耐候性に優れる:保持率が90%を超える
×:耐候性に劣る:保持率が90%未満
曲げ白化性
積層体を、1cm×5cmに切断し、折り曲げ荷重1kgで折り曲げたのち1分後に荷重を除き、折り曲げにより白化した部分の幅を基にして下記の基準によって評価した。○:白化部分が認められなかった。
×:白化部分が認められた。
耐圧痕性(圧痕復元性)
広がり面の形状が30mm×30mmの積層体の厚さを測定し、次に、積層体を加熱して90℃、30分間に保つ。この後、オーブン内において、積層体の上に2kgで直径20mmの円形のおもりのを1分間載せ、その後、該おもりを取り除いて、積層体を常温に30分間保持した後の該積層体の厚さを測定し、初期の厚さとの差(へこみ量)を求め、このへこみ量を耐圧痕性の指標とし、下記の基準で判定した。
○:0.00mm〜0.05mm
×:0.05mm以上
【0062】
実施例1(粉末成形による積層体の製法)
上記製造例で得た水添ジエン系共重合体(H−1)70質量部とオレフィン系樹脂(PM940M)30質量部を30mmφ押出機(田辺プラスッチック社製)に入れて190℃に加熱・混練したのち、吐出口径1.0mmのダイス(温度190℃)から吐出速度1kg/時/穴で吐き出し、引取速度32m/分で引き取った後、室温に戻して、直径0.8mmのストランドを得た。次いでこれをペレタイザーで切断することにより、かさ比重0.42、球換算平均粒径0.65mmのパウダーを得た。
【0063】
上記の方法で得たパウダーをビーズ発泡成形金型にセットし、閉じられた一対の金型間に、予め20倍に予備発泡されたポリプロピレン発泡ビーズ(三菱化学BASF社製、商品名EPポールEA)を投入し、140℃の加圧蒸気を加えてポリプロピレン発泡ビーズを融着させることにより、熱可塑性エラストマー組成物からなる厚さ0.6mmの(a)層及びオレフィン系樹脂発泡体からなる厚さ3.5mm、発泡倍率10倍の(b)層が積層されてなる積層体を得た。その評価結果を表3に示す。尚、積層体の物性は前述の方法で測定した。
【0064】
実施例2〜10
表3に示す配合を用い実施例1と同様にしてパウダーを用いて積層体を得た。その評価結果を表3に示す。尚、実施例10の積層体は別途射出成形法によりポリプロピレン(日本ポリオレフィン社製、商品名BC06C)の基材(厚さ2.5mm)を作製し、該基材面と上記の積層体の(b)層面とを水添石油樹脂(荒川化学社製、商品名アルコンP−90)を用いて、140℃で融着させて3層の積層体を得た。
【0065】
【表3】
【0066】
比較例1〜7
表4示す配合を用い実施例1と同様にしてパウダーを用いて積層体を得た。その評価結果を表4に示す。尚、比較例8で使用したオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)は以下の方法で作製した。
【0067】
TPOの製法
エチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン三元共重合体(エチレン含有量66質量%、 5−エチリデン−2−ノルボルネン含有量4.5質量%、デカリン溶媒中135℃で測定した極限粘度[η]=4.7、パラフィン系鉱物油系軟化剤(品名「ダイアナプロセスオイルPW380」、出光興産社製)含有量50質量%)を70部、プロピレン/エチレンランダム共重合体(MFR(温度230℃、荷重21.2N)23g/10min、日本ポリケム社製、品名「ノバテックPPFL25R」)25部とプロピレン/1−ブテン非晶質共重合体(プロピレン含量71モル%、溶融粘度8000cSt、密度0.87g/cm3、Mn6500、宇部興産社製、品名「APAO UT2780」)5部、老化防止剤(チバスペシャルティケミカルズ社製、品名「イルガノックス1010」)0.1部およびシリコーンオイル(東レダウコーニングシリコーン社製、品名「SH−200(100cSt)」)0.2部を150℃に加熱した10リッター双腕型加圧ニーダー(モリヤマ社製)に投入し、40rpmで20分間混練りした。その後、溶融状態の組成物を180℃、40rpmに設定したフィーダールーダー(モリヤマ社製)にてペレット化した。更に、得られたペレット物に2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂社製、品名「パーヘキサ25B−40」)1部及びN,N’−m−フェニレンビスマレイミド(大内新興化学工業社製、品名「バルノックPM」)0.5部を配合し、ヘンシェルミキサーにて30秒混合、二軸押出機(池貝社製、型式「PCM−45」、同方向完全噛み合い型スクリューであり、スクリューフライト部の長さLとスクリュー直径Dとの比であるL/Dが33.5である)を用いて、230℃、300rpmで2分間滞留する条件にて動的熱処理を施しながら押し出して、ペレット状の動的架橋型TPOを得た。
【0068】
【表4】
【0069】
実施例11(押出成形による積層体の製法)
水添ジエン系共重合体(H−9)2100gとオレフィン樹脂(PM940M)900gとを40mmφ押出機(池貝社製、FS−40)を用いて、190℃にて溶融混練りしてペレット化し、1500gのペレットを得た。該ペレットを20mmφ押出機(東洋精機社製)の先にTダイ(200mm幅、リップ間隔0.7mm)を取り付けて、押出機のシリンダー温度190℃、T−ダイの温度200℃、引き取り機のロール温度は30℃、引き取り速度は10m/分の条件で押出し、引き取り機で引き取って厚み1mmのシートを作製し、該シートの硬度、耐候性を評価した。さらに、該シートを電熱加圧プレス成形機(関西ロール社製)を用いて、金型温度が190℃、加圧加熱時間が10分間、加圧冷却時間が5分間の条件でプレス成形し、厚みが1mmのシボ付きシートを作製し、その後、金型平板面を外し該シボ付きシート上にポリプロピレン発泡ビーズ(三菱化学BASF社製、商品名EPポールEA)を投入し、金型温度140℃、5分間発泡させて厚さ1mmの(a)層及びオレフィン系樹脂発泡体からなる厚さ3.8mm、発泡倍率12倍の(b)層が積層されてなる積層体を得た。その評価結果を表5に示す。
【0070】
実施例12〜20
表5に示す配合を用い実施例11と同様にして押出積層体を作製し、評価を行った。結果を表5に示す。尚、実施例20の積層体は別途射出成形法によりポリプロピレン(日本ポリオレフィン社製、商品名BC06C)の基材(厚さ2.5mm)を作製し、該基材面と上記の積層体の(b)層面とを水添石油樹脂(荒川化学社製、商品名アルコンP−90)を用いて、140℃で融着させて3層の積層体を得た。
【0071】
【表5】
【0072】
比較例9〜17
表6に示す配合を用い実施例11と同様にして押出積層体を作製し、評価を行った。結果を表6に示す。尚、比較例16で使用したオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)は上記の方法で作製したものである。
【0073】
【表6】
【0074】
表3〜表6より、本発明の積層体は、柔軟性に富み、成形外観、耐傷付性、耐熱性、曲げ白化性及び耐圧痕性に優れることが分かる。これに対し、(B)ブロックにビニル芳香族化合物が共重合されていない水添ジエン系共重合体を用いた比較例1の粉末成形積層体は、柔軟性(硬度)、成形外観、耐傷付性、曲げ白化性に劣り、また、比較例9の押出積層体は、柔軟性(硬度)、耐傷付性、曲げ白化性に劣る。BS割合が80%を超え、LS割合が10%未満の水添ジエン系共重合体を用いた比較例2及び比較例10では、耐傷付性、耐圧痕性が充分ではなかった。また、BS割合が10%未満、LS割合が80%を超える水添ジエン系共重合体を用いた比較例3の粉末成形積層体、および、ビニル結合含量が30%未満の水添ジエン系共重合体を用いた比較例4の粉末成形積層体は、柔軟性、成形外観、耐傷付性、曲げ白化性に劣り、また、その押出積層体は、比較例11及び比較例12から柔軟性、耐傷付性、曲げ白化性が充分ではことが分かる。ビニル結合含量が75%を越える水添ジエン系共重合体を用いた比較例5の粉末成形積層体では、耐熱性、耐傷付性、耐圧痕性が、また比較例13では、耐傷付性、耐圧痕性が充分ではなかった。全結合スチレン含有量が本発明の範囲外の水添ジエン系共重合体を用いた比較例6及び比較例14では、耐傷付性、耐圧痕性に劣る。また、(A)ブロックに共役ジエン化合物が共重合した比較例7では、耐熱性、耐傷付性に、また、比較例15では、耐傷付性に劣る。また、TPOを用いた比較例8及び比較例16では耐傷付性、曲げ白化性に劣ることが分かる。また、ビニル結合含量が30%未満の水添ジエン系共重合体を用いた比較例17の押出積層体は柔軟性、曲げ白化性に劣ることが分かる。
【0075】
【発明の効果】
本発明の積層体は、柔軟性に富み、成形外観、耐傷付性、耐熱性、耐候性、曲げ白化性、耐圧痕性に優れるため、自動車内装材であるインストルメントパネル、コンソールボックス、ハンドル、カーテンエアバッグ、天井、ドア、座席シート、ピラー、ステアリングホイール、取っ手などに有用である。
【0076】
【図面の簡単な説明】
【図1】1H−NMR(270MHz)で測定された水添ジエン系共重合体(H−2)の7.6〜6.0ppm領域のスペクトル。
Claims (11)
- 下記(a)層と(b)層とを含有する積層体。
(a)下記(イ)100質量部及び(ロ)10〜10000質量部を含有する熱可塑性エラストマー組成物からなる層
(イ)オレフィン系樹脂
(ロ)少なくとも2つの(A)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック及び少なくとも1つの(B)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロックとの構造体を含有し、下記▲1▼〜▲3▼のすべての条件を充足することを特徴とする水添ジエン系共重合体。
▲1▼:水添ジエン系共重合体中に占める全ビニル芳香族化合物単位含有量が20〜70質量%である。
▲2▼:水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する(B)ブロックに含有されるビニル芳香族化合物単位含有量割合(BS)が10〜80%である。
▲3▼:水添ジエン系共重合体中の共役ジエン系化合物由来のビニル結合含量が30〜75%である。
(b)オレフィン系樹脂発泡体からなる層 - 下記(a)層と(b)層とを含有する積層体。
(a)下記(イ)100質量部及び(ロ)10〜10000質量部を含有する熱可塑性エラストマー組成物からなる層
(イ)オレフィン系樹脂
(ロ)少なくとも2つの(A)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック及び少なくとも1つの(B)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロックとの構造体を含有し、下記▲1▼〜▲3▼のすべての条件を充足することを特徴とする水添ジエン系共重合体。
▲1▼:水添ジエン系共重合体中に占める全ビニル芳香族化合物単位含有量が20〜70質量%である。
▲2▼:水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に占める長連鎖のビニル芳香族化合物単位含有量割合(LS)が10〜80%である。
▲3▼:水添ジエン系共重合体中の共役ジエン系化合物由来のビニル結合含量が30〜75%である。
(b)オレフィン系樹脂発泡体からなる層 - 上記水添ジエン系共重合体中の共役ジエン系化合物由来の二重結合の90%以上が水添されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層体。
- 上記水添ジエン系共重合体の230℃、21.2N荷重で測定されるメルトフローレート(MFR)が0.01〜200g/10分であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
- 上記水添ジエン系共重合体の230℃、0.1Hzにおける溶融粘度が2000Pa・s以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層体。
- 上記オレフィン系樹脂発泡体は、上記水添ジエン系共重合体が含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層体。
- 上記用熱可塑性エラストマー組成物が、更に(イ)100質量部あたり、下記(ハ)250質量部以下を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の積層体。
(ハ)エチレン−α−オレフィン系ランダム共重合体 - (a)層が粉末成形さることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の積層体。
- (a)層が押出成形さることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の積層体。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の(a)層と(b)層、並びに(c)非発泡オレフィン系樹脂層が含有する積層体。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の積層体からなるリサイクル可能な自動車部品。
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2003
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