JPWO2017038606A1 - 積層型フィルムコンデンサ - Google Patents

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Abstract

本発明の積層型フィルムコンデンサは、第一のガラスフィルムと第二のガラスフィルムを交互に積層させた積層体を有する積層型フィルムコンデンサであって、第一のガラスフィルムが第一の表面と第二の表面を有し、第一のガラスフィルムの第一の表面に第一の金属膜が形成されており、第二のガラスフィルムが第三の表面と第四の表面を有し、第二のガラスフィルムの第三の表面に第二の金属膜が形成されており、且つ第一のガラスフィルムの第二の表面と第二のガラスフィルム上の第二の金属膜とが対向するように、第一のガラスフィルムと第二のガラスフィルムが積層されていることを特徴とする。

Description

本発明は、積層型フィルムコンデンサに関し、具体的には、絶縁体であるガラスフィルムを積層させた積層型フィルムコンデンサに関する。
電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)には、バッテリーの直流電力を交流電力に変換して交流モーターを駆動するために、インバーターが用いられる。
インバーターのスイッチング回路へ接続される直流電源回路(コンバーター、バッテリー等)は、一般的にDCリンクと呼ばれており、その直流電源電圧はDCリンク電圧と呼ばれている。インバーターのDCリンクには、DCリンクコンデンサと呼ばれる大容量のコンデンサが直流電源と並列に接続されており、これらのコンデンサがスイッチング回路による瞬間的な負荷変動を補償している。
この用途に用いられるコンデンサには、以下のような特徴が求められる。(1)瞬間的な負荷変動を補償するために、大容量のエネルギーを瞬時に放出/蓄積できること、(2)温度変化により回路が適正に作動しない事態を防止するために、誘電率の温度依存性が小さいこと。
特表2004−524796号公報
この用途に用いられるコンデンサは、現在のところ、BaTiOを使用したセラミックコンデンサが主流である。しかし、BaTiOを使用したセラミックコンデンサは、高い電圧を印加した場合に絶縁破壊が起こることが問題になっている。この理由は、セラミックコンデンサに存在する結晶粒の凸部が電極と接触し、その接触部分に高電圧が印加されると、電界集中が起こり、短絡が生じ易くなるためである。
また、BaTiOを使用したセラミックコンデンサは、誘電率の温度依存性が大きく、温度変化により誘電率が変化し易いことが知られている。このため、誘電率の温度依存性を低下させるために、BaTiO中にMgやMn等をドープすることが検討されている。しかし、MgやMn等をドープすると、BaTiOの結晶格子中に相対的に−2の電荷が誘起される。これによってBaTiO中に酸素欠陥が発生する場合がある。この酸素欠陥は、直流電圧下において誘電率の低下を招く虞がある。従って、BaTiOを使用したセラミックコンデンサは、誘電率を高めつつ、誘電率の温度依存性を低下させることが困難であった。
更に、コンデンサは、大容量のエネルギーを蓄えるために、単位体積当たりで大きな面積を確保する必要がある。しかし、従来のセラミック材料は、大きな面積を確保することが困難であり、コストアップの要因になっている。
そこで、本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、その技術的課題は、大容量のエネルギーを瞬時に放出/蓄積することができるコンデンサを創案することである。
本発明者等は、鋭意努力の結果、片面に金属膜を有するガラスフィルムを積層することにより、上記技術的課題を解決し得ることを見出し、本発明として提案するものである。すなわち、本発明の積層型フィルムコンデンサは、第一のガラスフィルムと第二のガラスフィルムを交互に積層させた積層体を有する積層型フィルムコンデンサであって、第一のガラスフィルムが第一の表面と第二の表面を有し、第一のガラスフィルムの第一の表面に第一の金属膜が形成されており、第二のガラスフィルムが第三の表面と第四の表面を有し、第二のガラスフィルムの第三の表面に第二の金属膜が形成されており、且つ第一のガラスフィルムの第二の表面と第二のガラスフィルム上の第二の金属膜とが対向するように、第一のガラスフィルムと第二のガラスフィルムが積層されていることを特徴とする。
本発明の積層型フィルムコンデンサは、第一のガラスフィルムと第二のガラスフィルムを交互に積層させた積層体を有する。ガラスフィルムは、酸素欠損が発生し難いため、誘電率を低下させることなく、誘電率の温度依存性を小さくすることができる。よって、ガラスフィルムをコンデンサに用いると、温度変化により、回路が適正に作動しない事態を有効に防止することができる。
本発明の積層型フィルムコンデンサにおいて、第一のガラスフィルムが第一の表面と第二の表面を有し、第一のガラスフィルムの第一の表面に第一の金属膜が形成されており、第二のガラスフィルムが第三の表面と第四の表面を有し、第二のガラスフィルムの第三の表面に第二の金属膜が形成されており、且つ第一のガラスフィルムの第二の表面と第二のガラスフィルム上の第二の金属膜とが対向するように、第一のガラスフィルムと第二のガラスフィルムを交互に積層させた積層体を有する。このように第一の金属膜と第二の金属膜が接触しないように、第一のガラスフィルムと第二のガラスフィルムを積層すると、コンデンサとしての機能を発揮することができる。
第二に、本発明の積層型フィルムコンデンサは、第一のガラスフィルムの第二の表面に金属膜が形成されておらず、且つ第二のガラスフィルムの第四の表面に金属膜が形成されていないことが好ましい。
第三に、本発明の積層型フィルムコンデンサは、積層体が、厚み方向に垂直な方向に相対する第一の側面と第二の側面を有し、第一の金属膜が、積層体の第一の側面側にオフセットして形成されており、第二の金属膜が、積層体の第二の側面側にオフセットして形成されていることが好ましい。このようにすれば、積層体の側面に電極層を形成した場合に、第一の金属膜と第二の金属膜が電気的に接続される事態を有効に回避することができる。
第四に、本発明の積層型フィルムコンデンサは、積層体の第一の側面側に第一の金属膜と接し、第二の金属膜と接しない第一の電極層が形成されており、且つ積層体の第二の側面側に第二の金属膜と接し、第一の金属膜と接しない第二の電極層が形成されていることが好ましい。このようにすれば、インダクタとしての作用が抑制されるため、高周波での抵抗を抑制し易くなる。
図1は、本発明の積層型フィルムコンデンサの断面構造の一例を示す概念断面図である。図1から分かるように、積層型フィルムコンデンサ1は、第一の金属膜10、第一のガラスフィルム11、第二の金属膜12、第二のガラスフィルム13の順に積層された積層構造を有しており、この積層構造が積層回数に応じて繰り返されている。この積層体により、第一のガラスフィルム11と第二のガラスフィルム13は、第一の金属膜10と第二の金属膜12が接触しないように配置されることになる。また、第一のガラスフィルム11の第一の表面11aには、第一の金属膜10が成膜されており、第二の表面11bには、金属膜が成膜されていない。そして、第一のガラスフィルム11の第一の表面11aは、第一の金属膜10が成膜されている第一の端縁部11cと、第一の端縁部11cとは反対側の第一の金属膜10が成膜されていない第二の端縁部11dとを有している。これにより、第一の金属膜10は、第一のガラスフィルム11の第一の端面11e側(積層体の第一の側面側)にオフセットされて、第一のガラスフィルム11の第二の端面11f側には形成されない。更に、第二のガラスフィルム13の第三の表面13aには、第二の金属膜12が成膜されおり、第四の表面13bには、金属膜が成膜されていない。また、第二のガラスフィルム13の第三の表面13aは、第二の金属膜12が成膜されている第三の端縁部13cと、第三の端縁部13cとは反対側の第二の金属膜12が成膜されていない第四の端縁部13dとを有している。これにより、第一の金属膜12は、第二のガラスフィルム13の第三の端面13e側(積層体の第二の側面側)には形成されず、第二のガラスフィルム13の第四の端面13f側(第一のガラスフィルム11の第二の端面11f側)にオフセットされる。そして、第一のガラスフィルム11の第一の端面11eと第二のガラスフィルム13の第三の端面13eには、第一の金属膜10と接し、第二の金属膜12と接しない第一の電極層14が形成されており、且つ第一のガラスフィルム11の第二の端面11fと第二のガラスフィルム13の第四の端面13fには、第二の金属膜12と接し、第一の金属膜10と接しない第二の電極層15が形成されている。第一の電極層14により、積層体の一方の側面(第一の側面)が被覆されて、第一の金属膜10の端部全体が第一の電極層14と電気的に接続されると共に、第二の電極層15により、積層体の他方の側面(第二の側面)も被覆されて、第二の金属膜12の端部全体が第二の電極層15と電気的に接続される。
第五に、本発明の積層型フィルムコンデンサは、第一のガラスフィルムと第二のガラスフィルムの厚みが50μm以下であることが好ましい。このようにすれば、単位体積当たりの面積が大きくなるため、大容量のエネルギーを蓄え易くなる。
第六に、本発明の積層型フィルムコンデンサは、第一のガラスフィルムと第二のガラスフィルムの誘電率が5以上であることが好ましい。なお、ここでいう「誘電率」は、温度25℃においてASTM D150に準拠した方法により測定した値を指す。
第七に、本発明の積層型フィルムコンデンサは、第一のガラスフィルムと第二のガラスフィルムの平均表面粗さRaが50Å以下であることが好ましい。ここで、「平均表面粗さRa」は、JIS B0601:2001に準拠した方法で測定した値を指す。
第八に、本発明の積層型フィルムコンデンサは、第一のガラスフィルムと第二のガラスフィルムが、ガラス組成として、質量%で、SiO 20〜70%、Al 0〜20%、B 0〜17%、MgO 0〜10%、CaO 0〜15%、SrO 0〜15%、BaO 0〜40%を含有することが好ましい。このようにすれば、成形時に失透が生じ難くなるため、大型のガラスフィルムを成形し易くなる。結果として、大容量のエネルギーを蓄積することができる。
第九に、本発明の積層型フィルムコンデンサは、第一の金属膜と第二の金属膜のうち少なくとも一方の金属膜が50℃の耐熱性を有することが好ましい。なお、ここでいう、「金属膜が50℃の耐熱性を有する」とは、金属膜を成膜したガラスフィルムを50℃の大気中にて1時間熱処理し、熱処理後の抵抗値が熱処理前の抵抗値の2倍を越えないことを意味するものとする。
このように金属膜を形成することにより、高温環境下でも金属膜が酸化、変質しにくいため、周辺環境の温度に依存することなくコンデンサの性能を発揮することができる。また、冷却装置等の設置が不要となり、周辺機器を含めたコンデンサ装置全体としての小型化が可能になる。
第十に、本発明の積層型フィルムコンデンサは、第一の金属膜と第二の金属膜のうち少なくとも一方の金属膜がAl膜であることが好ましい。金属膜には種々の材料が使用可能であり、例えばAl、Pt、Ni、Cu、Ag、Mo、Znからなる群から選ばれる一種又は二種以上の単体金属または合金の金属材料が好適であるが、その中でも例えばコストや自己修復機能の観点からはAlが好適である。
第十一に、本発明の積層型フィルムコンデンサは、第一の金属膜と第二の金属膜のうち少なくとも一方の金属膜がAg合金で形成されていることが好ましい。上述した金属群の中でもAgは良好な耐熱性を示し、特にAg合金はAg単体に比べても良好な耐熱性を示す。従って、コスト面、導電性の観点をも含めると、金属膜をAg合金で形成するのが好ましい。
第十二に、本発明の積層型フィルムコンデンサは、第一の電極層と第二の電極層のうち少なくとも一方の電極層が50℃の耐熱性を有するものであってもよい。なお、ここでいう、「電極層が50℃の耐熱性を有する」とは、50℃の大気中で1時間熱処理した後、目視で確認した時に、亀裂等の破損が生じていないことを意味するものとする。
電極層の形成には、金属粉末を含む導電性ペースト(所定の粘性を有するペースト状の導電性材料)を使用することが考えられる。導電性ペーストとして、取扱いが比較的容易な有機系の導電性ペーストがあり、有機系の導電性ペーストとして、例えば二液を混合することで上記金属粉末を含む樹脂を硬化させるタイプのものがある。しかしながら、この種のペーストを使用した場合、形成した電極層には有機成分が含まれることになるため、電極層を高温環境下に曝すと有機成分が揮発し、電極層に体積収縮が生じることがある。その結果、目視確認できる程度の大きな亀裂を生じ、コンデンサの破損につながる可能性がある。そこで、電極層に、50℃の耐熱性をもたせることにより、上記のような事態を可及的に回避することができる。従って、周辺環境の温度に依存することなくコンデンサの性能を発揮することができる。
第十三に、本発明の積層型フィルムコンデンサは、第一の電極層と第二の電極層のうち少なくとも一方の電極層が金属粉末を含む無機物のみで構成されているものであってもよい。
このように、電極層を、金属粉末を含む無機物のみで構成することにより、積層型フィルムコンデンサに、より優れた耐熱性を付与することが可能となる。
第十四に、本発明に係る積層型フィルムコンデンサは、第一の電極層と第二の電極層のうち少なくとも一方の電極層中の金属粉末がAgであってもよい。電極層中の金属粉末として、種々の材料が使用可能であるが、例えばAl、Pt、Ni、Cu、Ag、Mo、Znからなる群から選ばれる一種又は二種以上の単体金属または合金が好適である。上述した金属群の中でもAgは良好な耐熱性を示す。従って、コスト面、導電性の観点をも含めると、電極層中の金属粉末はAgが好ましい。
第十五に、本発明の積層型フィルムコンデンサの製造方法は、第一の表面と第二の表面を有する第一のガラスフィルムと、第三の表面と第四の表面を有する第二のガラスフィルムとを用意する準備工程と、第一のガラスフィルムの第一の表面に第一の金属膜を形成し、第二のガラスフィルムの第三の表面に第二の金属膜を形成する成膜工程と、第一の金属膜と第二の金属膜をパターニングするパターニング工程と、第一のガラスフィルムの第二の表面と第二のガラスフィルム上の第二の金属膜とが対向するように、第一のガラスフィルムと第二のガラスフィルムを積層して、積層体を得る積層工程と、を有することを特徴とする。
第十六に、本発明の積層型フィルムコンデンサの製造方法は、更に、積層体を厚み方向に切断する切断工程を有することが好ましい。このようにすれば、大型の積層体から、小片の積層体を多量に採取することができる。結果として、積層型フィルムコンデンサの製造コストを低減することができる。
第十七に、本発明の積層型フィルムコンデンサの製造方法は、レーザーを用いて、積層体を切断することが好ましい。レーザーを用いると、ガラスフィルムを破損させることなく、所望の形状に切断し易くなる。
本発明の積層型フィルムコンデンサの断面構造の一例を示す概念断面図である。 本発明に係るガラスフィルムの一例を示す斜視図である。 本発明の積層型フィルムコンデンサの製造方法の一例を示す概念断面図である。 [実施例1]に係るガラスフィルムの一方の表面に対してAl膜が成膜された状態を示す概念断面図である。
本発明の積層型フィルムコンデンサは、第一のガラスフィルムが第一の表面と第二の表面を有し、第一のガラスフィルムの第一の表面に第一の金属膜が形成されており、第二のガラスフィルムが第三の表面と第四の表面を有し、第二のガラスフィルムの第三の表面に第二の金属膜が形成されている。これらの金属膜は電極として作用する。
金属膜の耐熱温度としては、少なくとも50℃の耐熱性を有するように、好ましくは80℃の耐熱性を有するように、より好ましくは100℃の耐熱性を有するように、さらにいえば150℃、200℃、300℃、400℃の順で好適な耐熱性を有するように、特に好ましくは500℃の耐熱性を有するように、第一及び第二の金属膜を形成するのがよい。高温環境下において、金属膜が酸化したり、金属膜の変質、つまり金属膜表面が突起状に変形したり、表面粗さが大きくなったりすると、コンデンサの性能が低下したり、絶縁破壊の原因となったりする虞がある。なお、各金属膜の耐熱性は、デジタルマルチメーター(カスタム社製M‐04)を用いて上述した熱処理前後の抵抗値を測定することにより評価することが可能である。
また、金属膜として種々の材料が使用可能であるが、コストと導電性の観点から、Al、Pt、Ni、Cu、Ag、Mo、Zn等の群から選ばれる一種又は二種以上の単体金属または合金が好適であり、コストや自己修復機能の観点からは特にAlが好適である。Alは蒸発潜熱が低いため、絶縁破壊時に自己修復機能を誘発しやすい。
また、耐熱性の観点からはAgが好適であり、更に、Ag合金はAg単体に比べても良好な耐熱性を示す。更に、アルミニウム-ネオジム合金、アルミニウム-タンタル合金、モリブデン-ニオブ合金も好適である。
本発明の積層型フィルムコンデンサは、第一のガラスフィルムの第二の表面と第二のガラスフィルム上の第二の金属膜とが対向するように、第一のガラスフィルムと第二のガラスフィルムを重ね合わせて積層されている。このようにすれば、第一の金属膜と第二の金属膜の接触を有効に回避することができる。
本発明の積層型フィルムコンデンサにおいて、第一のガラスフィルムは、厚み方向に垂直な方向に相対する第一の端面と第二の端面を有し、第二のガラスフィルムは、厚み方向に垂直な方向に相対する第三の端面と第四の端面を有している。また、第一のガラスフィルムの第一の端面と第二のガラスフィルムの第三の端面は同じ側になり、第一のガラスフィルムの第三の端面と第二のガラスフィルムの第四の端面は同じ側になる。そして、第一の金属膜が第一のガラスフィルムの第一の端面側にオフセットして形成されており、第二の金属膜が第一の金属膜とは反対の第二のガラスフィルムの第四の端面側にオフセットして形成されていること、つまり第一の金属膜が積層体の一方の側面(第一の側面)側に、また第二の金属膜が積層体の他方の側面(第二の側面)側にオフセットして形成されていることが好ましい。更に、ガラスフィルムの表面上で金属膜の形成されていない領域は、端面から1mmまでの領域が好ましく、端面から3mmまでの領域が更に好ましい。このようにすれば、積層体の側面に電極層を形成した場合に、第一の金属膜と第二の金属膜が電気的に接続される事態を有効に回避することができる。なお、ガラスフィルムの表面上で金属膜の形成されていない領域に金属膜と同等の膜厚の絶縁膜を形成してもよい。また、第一のガラスフィルムと第二のガラスフィルムを積層する際に、ガラスフィルムの表面上で金属膜の成形されていない領域同士を直接的に密着(いわゆるオプティカルコンタクト)させることで強固に固定してもよい。
本発明の積層型フィルムコンデンサは、積層体の第一の側面側に第一の金属膜と接し、第二の金属膜と接しない第一の電極層が形成されており、且つ積層体の第二の側面側に第二の金属膜と接し、第一の金属膜と接しない第二の電極層が形成されていることが好ましい。このようにすれば、インダクタとしての作用が抑制されるため、高周波での抵抗を抑制し易くなる。
電極層として、耐熱温度の観点からは、50℃の耐熱性を有するように、好ましくは80℃の耐熱性を有するように、より好ましくは100℃の耐熱性を有するように、さらにいえば150℃、200℃、300℃、400℃の順で好適な耐熱性を有するように、特に好ましくは500℃の耐熱性を有するように、第一の電極層と第二の電極層を形成するのがよい。なお、電極層は、例えば金属の粉末を含む導電性ペースト(所定の粘性を有するペースト状の導電性材料)を積層体の第一及び第二の側面に塗布し、固化させることにより形成することが可能である。
また、各電極層に少なくとも50℃の耐熱性を付与する目的で、金属の粉末を含む導電性ペーストを無機物のみで構成することも可能である。無機系の導電性ペーストとしては、例えば、金属粉末を分散させた水ガラスが挙げられる。水ガラスペーストは有機物を含まないため、高温環境下でも、形成後の電極に体積収縮や変形が起こることがなく、その結果コンデンサの破損を抑制することができる。また、前記水ガラスペーストに適宜水を添加することで、好ましい粘度へと粘性を低下させ、容易に電極を形成することが可能である。更に、電極形成後に水を蒸発させ、水ガラス中の脱水縮合を促進させることで、緻密な電極を形成することができる。
また、電極層に用いる金属粉末として種々の材料が使用可能であるが、コストと導電性の観点から、Al、Pt、Ni、Cu、Ag、Mo、Zn等の群から選ばれる一種又は二種以上の単体金属または合金が好適であり、コストの観点からは、特にAlが好適であり、導電性や耐熱性の観点からは、Agが好適である。
ガラスフィルム(第一のガラスフィルム及び/又は第二のガラスフィルム)は、以下のガラス特性及びガラス組成を有することが好ましい。
ガラスフィルムの誘電率は、好ましくは5以上、5.5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、特に11以上である。ガラスフィルムの誘電率が低過ぎると、大容量のエネルギーを蓄積し難くなる。
ガラスフィルムの液相温度は、好ましくは1200℃以下、1150℃以下、1090℃以下、1050℃以下、1030℃以下、特に1000℃以下である。ガラスフィルムの液相温度が高過ぎると、成形時にガラスが失透し易くなるため、ガラスフィルムの表面精度を高めることが困難になる。また、ガラスフィルムの液相粘度は、好ましくは103.5dPa・s以上、104.0dPa・s以上、104.5dPa・s以上、104.8dPa・s以上、特に105.0dPa・s以上である。ガラスフィルムの液相粘度が低過ぎると、成形時にガラスが失透し易くなるため、ガラスフィルムの表面精度を高めることが困難になる。なお、「液相粘度」は、液相温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値を指す。「液相温度」は、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れ、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶が析出する温度を測定した値を指す。
ガラスフィルムの密度は4.5g/cm以下、4.0g/cm以下、3.6g/cm以下、3.3g/cm以下、3.0g/cm以下、2.8g/cm以下、特に2.5g/cm以下が好ましい。密度が小さい程、デバイスを軽量化し易くなる。ここで、「密度」は、周知のアルキメデス法で測定した値を指す。
ガラスフィルムの熱膨張係数は、好ましくは25×10−7〜120×10−7/℃、30×10−7〜120×10−7/℃、40×10−7〜110×10−7/℃、60×10−7〜100×10−7/℃、特に70×10−7〜95×10−7/℃である。
ガラスフィルムの熱膨張係数が上記範囲外になると、ガラスフィルムと金属膜の熱膨張係数が整合し難くなるため、金属膜の反りを防止し難くなる。ここで、「熱膨張係数」は、30〜380℃の温度範囲において、ディラトメーターにより測定した平均値を指す。
ガラスフィルムの102.5dPa・sにおける温度は、好ましくは1550℃以下、1450℃以下、1350℃以下、1250℃以下、1200℃以下、1170℃以下、特に1150℃以下である。ガラスフィルムの102.5dPa・sにおける温度が低い程、低温でガラスを溶融し易くなり、ガラスフィルムの製造コストを低廉化し易くなる。ここで、「102.5dPa・sにおける温度」は、白金球引き上げ法で測定した値を指す。
ガラスフィルムは、ガラス組成として、質量%で、SiO 20〜70%、Al 0〜20%、B 0〜17%、MgO 0〜10%、CaO 0〜15%、SrO 0〜15%、BaO 0〜40%を含有することが好ましい。上記のように各成分の含有量を限定した理由を以下に示す。なお、各成分の含有量の説明において、%表示は質量%を意味する。
SiOの含有量が多くなると、溶融性、成形性が低下し易くなる。よって、SiOの含有量は、好ましくは70%以下、65%以下、60%以下、58%以下、55%以下、50%以下、特に45%以下である。一方、SiOの含有量が少なくなると、ガラス網目構造を形成し難くなるため、ガラス化が困難になる。よって、SiOの含有量は、好ましくは20%以上、25%以上、特に30%以上である。
Alの含有量は0〜20%である。Alの含有量が多くなると、ガラスに失透結晶が析出し易くなり、液相粘度が低下し易くなる。よって、Alの含有量は、好ましくは20%以下、18%以下、15%以下、12%以下、特に10%以下である。一方、Alの含有量が少なくなると、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、ガラスが失透し易くなる。よって、Alの含有量は、好ましくは0%以上、1%以上、3%以上、特に5%以上である。
の含有量が多くなると、誘電率が低下し易くなり、また耐熱性が低下して、高温時のコンデンサの信頼性が低下し易くなる。よって、Bの含有量は、好ましくは15%以下、13%以下、11%以下、7%以下、特に5%以下である。
MgOは、歪点を高める成分であり、また高温粘度を低下させる成分である。しかし、MgOの含有量が多過ぎると、液相温度、密度、熱膨張係数が高くなり過ぎる。よって、MgOの含有量は、好ましくは10%以下、5%以下、3%以下、2%以下、1.5%以下、1%以下、特に0.5%以下である。
CaOの含有量が多くなると、密度、熱膨張係数が高くなり、またガラス組成の成分バランスが損なわれて、耐失透性が低下し易くなる。よって、CaOの含有量は、好ましくは15%以下、12%以下、10%以下、9%以下、特に8.5%以下である。一方、CaOの含有量が少なくなると、誘電率、溶融性が低下し易くなる。よって、CaOの含有量は、好ましくは0%以上、0.5%以上、1%以上、2%以上、3%以上、特に5%以上である。
SrOの含有量が多くなると、密度、熱膨張係数が高くなり易い。よって、SrOの含有量は、好ましくは15%以下、特に12%以下である。一方、SrOの含有量が少なくなると、誘電率、溶融性が低下し易くなる。よって、SrOの含有量は、好ましくは0%以上、0.5%以上、1%以上、3%以上、特に5%以上である。
BaOの含有量が多くなると、密度、熱膨張係数が高くなり易い。よって、BaOの含有量は、好ましくは40%以下、特に35%以下である。一方、BaOの含有量が少なくなると、誘電率が低下し易くなり、また失透の抑制が困難になる。よって、BaOの含有量は、好ましくは0%以上、0.5%以上、1%以上、2%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、特に25%以上である。
MgO、CaO、SrO及びBaOの各成分は、誘電率、耐失透性、溶融性、成形性を高める成分である。しかし、MgO+CaO+SrO+BaOの含有量(MgO、CaO、SrO及びBaOの合量)が少なくなると、誘電率を高め難くなることに加えて、融剤としての働きを十分に発揮できず、溶融性が低下し易くなる。よって、MgO+CaO+SrO+BaOの含有量は、好ましくは5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、特に30%以上である。一方、MgO+CaO+SrO+BaOの含有量が多くなると、密度が上昇し易くなる上、ガラス組成の成分バランスが崩れて、逆に耐失透性が低下する傾向にある。よって、MgO+CaO+SrO+BaOの含有量は、好ましくは60%以下、55%以下、特に50%以下である。
LiO、NaO及びKOの各成分は、粘性を低下させて、熱膨張係数を調整する成分であるが、多量に含有させると、絶縁破壊を起こす電圧が低下し易くなる。また誘電率の温度特性が低下する傾向にある。よって、これらの成分の合量は、好ましくは15%以下、10%以下、5%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、特に0.1%以下である。
ZnOは、誘電率を高める成分であり、また溶融性を高める成分であるが、多量に含有させると、ガラスが失透し易くなり、また密度が上昇し易くなる。よって、ZnOの含有量は、好ましくは0〜30%、0〜20%、0.5〜15%、特に1〜10%である。
ZrOは、誘電率を高める成分であるが、多量に含有させると、液相温度が急激に上昇し、ジルコンの失透異物が析出し易くなる。よって、ZrOの上限範囲は20%以下、15%以下、特に10%以下が好ましい。また、ZrOの下限範囲は0%以上、0.1%以上、0.5%以上、1%以上、2%以上、特に3%以上が好ましい。
、Nb、Laは、それぞれ20%まで添加することができる。これらの成分は、誘電率等を高める働きがあるが、多く含有させると、密度が上昇し易くなる。
清澄剤として、As、Sb、CeO、SnO、F、Cl、SOの群から選択される一種又は二種以上を0〜3%添加することができる。但し、As、Sb、Fは、環境的観点から、その使用を極力控えることが好ましく、それぞれの含有量は0.1%未満が好ましい。環境的観点から、清澄剤としては、SnO、Cl、SOが好ましい。SnO+Cl+SO(SnO、Cl、SOの合量)の含有量は0.001〜1%、0.01〜0.5%、特に0.01〜0.3%が好ましい。SnOの含有量は0〜1%、0.01〜0.5%、特に0.05〜0.4%が好ましい。
上記の成分以外にも、例えば、他の成分を20%、特に10%までガラス組成中に添加することができる。
ガラスフィルムの厚みは、好ましくは50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、10μm以下、8μm以下、6μm以下、5μm以下、3μm以下、特に1μm以下である。ガラスフィルムの厚さが小さい程、単位体積当たりの面積が大きくなるため、大容量のエネルギーを蓄え易くなる。
ガラスフィルムの平均表面粗さRaは、好ましくは50Å以下、30Å以下、10Å以下、8Å以下、4Å以下、3Å以下、特に2Å以下である。ガラスフィルムの平均表面粗さRaが大き過ぎると、高電圧を印加した時に絶縁破壊を起こす電圧が低下し易くなる。また、ガラスフィルム同士の密着性向上の観点からは、10Å以下とするのが好ましく、さらにいえば8Å以下、4Å以下、3Å以下の順で好ましく、2Å以下とするのが特に好ましい。また、ガラスフィルムの表面粗さRmaxは、好ましくは10nm以下、5nm以下、特に3nm以下である。ガラスフィルムの表面粗さRmaxが大き過ぎると、高電圧を印加したときに絶縁破壊を起こす電圧が低下し易くなる。ここで、「表面粗さRmax」は、JIS B0601:2001に準拠した方法で測定した値を指す。
ガラスフィルムの積層枚数(第一のガラスフィルムと第二のガラスフィルムの合計枚数)は、好ましくは2枚以上、4枚以上、6枚以上、8枚以上、特に10枚以上である。ガラスフィルムの積層枚数が多い程、大容量のエネルギーを蓄え易くなる。
図2は、本発明に係るガラスフィルムの一例を示す斜視図である。ガラスフィルムの長辺寸法L1及び短辺寸法W1は、好ましくは1mm以上、10mm以上、30mm以上、50mm以上、100mm以上、300mm以上である。このようにガラスフィルムの長辺寸法の大きさを設定することで、例えば電流回路用に必要とされるレベルの静電容量を確保することが可能となる。
また、ガラスフィルムの短辺寸法W1を厚み寸法t1で除した値は、好ましくは1000以上、1200以上、1400以上、1600以上、1800以上、2000以上、2400以上である。短辺寸法W1と厚み寸法t1との比が上述の範囲となるよう、両寸法W1,t1を設定することで、例えば電流回路用に必要とされるレベルの静電容量を確保することが可能となる。
ガラスフィルムは、未研磨の表面を有することが好ましく、ガラスフィルムの第一の表面と第二の表面の全部が未研磨であることが特に好ましい。ガラスの理論強度は非常に高いが、理論強度よりも遥かに低い応力でも破壊に至ることが多い。これは、ガラスの表面にグリフィスフローと呼ばれる小さな欠陥が成形後の工程、例えば研磨工程等で生じるからである。そこで、ガラスフィルムの表面を未研磨にすれば、本来の機械的強度を損ない難くなり、ガラスフィルムが破壊し難くなる。なお、リドロー法又はオーバーフローダウンドロー法であれば、未研磨で表面精度が高いガラスフィルムを成形することができる。
ガラスフィルムはリドロー法で成形されていることが好ましい。このようにすれば、ガラスフィルムの厚みを低減し易くなる。またガラスフィルムの表面品位を高めることができる。更にガラスフィルムの両端面を火造り面にすることが可能になる。そして、両端面が火造り面であれば、ガラスフィルムが端面から破損し難くなる。なお、「リドロー法」は、成形済みのガラスを再度、軟化点付近の温度にまで加熱した後、延伸成形してガラスフィルムを成形する方法である。
ガラスフィルムの成形方法として、リドロー法以外にも、種々の方法を採用することができる。例えば、オーバーフローダウンドロー法、スロットダウンドロー法等を採用することができる。なお、「オーバーフローダウンドロー法」は、フュージョン
法とも称されており、溶融ガラスを耐熱性の樋状構造物の両側から溢れさせて、溢れた溶融ガラスを樋状構造物の下端で合流させながら、下方に延伸成形してガラスフィルムを成形する方法である。オーバーフローダウンドロー法でガラスフィルムを成形すれば、ガラスフィルムの表面品位を高めることができる。
本発明の積層型フィルムコンデンサの製造方法は、第一の表面と第二の表面を有する第一のガラスフィルムと、第三の表面と第四の表面を有する第二のガラスフィルムとを用意する準備工程と、第一のガラスフィルムの第一の表面に第一の金属膜を形成し、第二のガラスフィルムの第三の表面に第二の金属膜を形成する成膜工程と、第一の金属膜と第二の金属膜をパターニングするパターニング工程と、第一のガラスフィルムの第二の表面と第二のガラスフィルム上の第二の金属膜とが対向するように、第一のガラスフィルムと第二のガラスフィルムを積層して、積層体を得る積層工程と、を有することを特徴とする。本発明の積層型フィルムコンデンサの製造方法の技術的特徴は、本発明の積層型フィルムコンデンサの説明欄に記載済みであり、便宜上、その重複部分の説明を省略する。
図3は、本発明の積層型フィルムコンデンサの製造方法の一例を説明するための概念断面図である。まず、図3(a)に示すように、ガラスフィルム20の片面に金属膜21を形成した後、図3(b)に示すように、エッチングにより金属膜21をパターニングする。次に、図3(c)から分かるように、図3(b)に示すガラスフィルム20は、第一のガラスフィルム22又は第二のガラスフィルム23として積層されて、積層体24を構成する。そして、金属膜21は、第一の金属膜25又は第二の金属膜26となる。
図3(c)に示すように、第一のガラスフィルム22の第一の表面22aには、第一の金属膜25が成膜されており、第二の表面22bには、金属膜が成膜されていない。また、第二のガラスフィルム23の第三の表面23aには、第二の金属膜26が成膜されおり、第四の表面23bには、金属膜が成膜されていない。ここで、第一の金属膜25が形成されていない領域と第二の金属膜26が成膜されていない領域は、一定間隔で規則的に設けられている。そして、第一のガラスフィルム22の第一の表面22a上で第一の金属膜25が形成されていない領域は、厚み方向から見て同じ位置になっており、第二のガラスフィルム23の第三の表面23a上で第二の金属膜26が形成されていない領域も、厚み方向から見て同じ位置になっている。更に、第一の金属膜25が形成されていない領域と第二の金属膜26が成膜されていない領域は、第一のガラスフィルム22や第二のガラスフィルム23を介して、相対しないように配置されている。
その後、図3(d)に示す切断予定線27に沿って、積層体24を切断すると、図3(e)に示す小片の積層体28に分断される。なお、図3(d)では切断予定線27は、第一の金属膜25が形成されていない領域の右側縁部を通過し、且つ第二の金属膜26が形成されていない領域の左側縁部を通過している。切断後の積層体28において、第一の金属膜25は、第一のガラスフィルム22の左側(第一の端面側)にオフセットして形成されており、第一のガラスフィルム22の右側(第二の端面側)には形成されていない。第二の金属膜26は、第二のガラスフィルム23の右側(第三の端面側)にオフセットして形成されており、第二のガラスフィルム23の左側(第四の端面側)には形成されていない。
更に、その他の形態として、切断予定線27を、第一及び第二の金属膜が成膜されていない領域の真ん中辺りを通過するようにしてもよい。これは、第一及び第二の金属膜を成膜する際、マスキング等のパターニングにより、第一及び第二の金属膜を成膜しない領域を広めにとることで達成できる。
最後に、図3(f)に示すように、積層体28の第一の側面28aを第一の電極層29で被覆することにより、第一の金属膜25の端部全体を電気的に接続すると共に、積層体28の第二の側面28bを第二の電極層30で被覆することにより、第二の金属膜26の端部全体を電気的に接続する。このようにして、積層型フィルムコンデンサを得ることができる。
本発明の積層型フィルムコンデンサの製造方法では、金属膜のパターニングを薬液によるエッチングで行うことが好ましい。このようにすれば、ガラスフィルム上の金属膜を正確にパターニングすることができる。また、ガラスフィルムの表面をマスキングした後に、ガラスフィルム上に金属膜を成膜することでも、金属膜をパターニングすることができる。このように、金属膜の成膜工程とパターニング工程とを同時に行っても良い。
本発明の積層型フィルムコンデンサの製造方法では、ガラスカッター、ダイヤモンドカッター、熱等を用いて、積層体を厚み方向に切断してもよいが、レーザーを用いて、積層体を厚み方向に切断することが好ましい。このようにすれば、ガラスフィルムの切断端面の表面状態が良好になり、また切断時にガラスフィルムが破損する確率を低下させることができる。
以下、実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例に何ら限定されない。以下の実施例は単なる例示である。
<ガラス板の作製>
まず表中に記載のガラス組成になるように、ガラス原料を調合した後、得られたガラスバッチをガラス溶融炉に供給して1500〜1600℃で溶融した。次に、得られた溶融ガラスをカーボン板の上に流し出し、平板形状に成形した後、歪点より室温まで10時間かけて徐冷処理を行った。最後に、得られたガラス板について、必要に応じて加工を行い、種々の特性を評価した。その結果を表1に示す。
Figure 2017038606
密度は、周知のアルキメデス法で測定した値である。
歪点と徐冷点は、ASTM C336−71の方法に基づいて測定した値である。
軟化点は、ASTM C338−93の方法に基づいて測定した値である。
高温粘度104.0dPa・s、103.0dPa・s及び102.5dPa・sにおける温度は、白金球引き上げ法で測定した値である。
熱膨張係数は、30〜380℃の温度範囲において、ディラトメーターにより測定した平均値である。
液相温度は、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れ、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶が析出する温度を測定した値である。
液相粘度は、液相温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値である。
誘電率は、ASTM D150に準拠した方法により測定した値である。
<コンデンサの作製>
上記試料No.1に係るガラス板を軟化点付近まで加熱した後、リドロー法により延伸成形して、長さ寸法30mm、幅寸法25mm、厚み10μmのガラスフィルムを得た。得られたガラスフィルムの平均表面粗さRaは2Åであった。
次に、複数のガラスフィルムの片面に対して、45nm厚のAl膜を成膜した(第一のガラスフィルム及び第二のガラスフィルムに相当する)。成膜に際し、ガラスフィルムの表面の一方の端面から6mmの領域をマスキングし、その部分についてAl膜が成膜されないようにした。更に、Al膜を成膜した後、マスキングを除去した。なお、図4は、ガラスフィルムの片面に対してAl膜が成膜された状態を示す概念断面図である。
続いて、2枚のガラスフィルムを積層した。2枚のガラスフィルムを重ね合わせる際に、Al膜同士が重ならず、且つAl膜が成膜されていない部分が厚み方向から見て互いに相対しないようにした。つまり2枚のガラスフィルムを重ね合わせる際に、Al膜がオフセットされている部分が厚み方向から見て互いに反対側になるようにした。
更に、2枚のガラスフィルムを積層し、積層体を得た後、積層体の一方の側面(第一の側面に相当)側の金属膜(第一の金属膜に相当する)同士が電気的に接続し、且つそれとは反対の他方の側面(第二の側面に相当)側の金属膜(第二の金属膜に相当する)同士が電気的に接続するように、積層体の両側面に導電性ペーストを塗布することにより、積層体の両側面に電極層(第一の電極層と第二の電極層に相当)を形成した。ここで、導電性ペーストとして、ITWChemtronics社製CW2400を用いた。このようにして、試料No.1に係る積層型フィルムコンデンサを作製した。
[実施例1]と同様の条件で、試料No.2〜9について、積層型フィルムコンデンサを作製した。
[実施例1]のガラスフィルムの幅寸法を50mm、厚みを20μmに変更したこと以外は、[実施例1]と同様の条件で試料No.1〜9に係る積層型フィルムコンデンサを作製した。
[実施例1]の金属膜を65nm厚の銀合金膜(株式会社フルヤ金属製「APC−TR」)に変更し、電極層に用いる導電性ペーストとして、アレムコ社製パイロダクト597−Aを用いた以外は、[実施例1]と同様の条件で試料No.1〜9に係る積層型フィルムコンデンサを作製した。
1 積層型フィルムコンデンサ
10、25 第一の金属膜
11、22 第一のガラスフィルム
11a、22a 第一の表面
11b、22b 第二の表面
11e 第一の端面
11f 第二の端面
12、26 第二の金属膜
13、23 第二のガラスフィルム
13a、23a 第三の表面
13b、23b 第四の表面
13e 第三の端面
13f 第四の端面
14、29 第一の電極層
15、30第二の電極層
24、28 積層体
28a 第一の側面
28b 第二の側面

Claims (17)

  1. 第一のガラスフィルムと第二のガラスフィルムを交互に積層させた積層体を有する積層型フィルムコンデンサであって、
    第一のガラスフィルムが第一の表面と第二の表面を有し、第一のガラスフィルムの第一の表面に第一の金属膜が形成されており、
    第二のガラスフィルムが第三の表面と第四の表面を有し、第二のガラスフィルムの第三の表面に第二の金属膜が形成されており、
    且つ第一のガラスフィルムの第二の表面と第二のガラスフィルム上の第二の金属膜とが対向するように、第一のガラスフィルムと第二のガラスフィルムが積層されていることを特徴とする積層型フィルムコンデンサ。
  2. 第一のガラスフィルムの第二の表面に金属膜が形成されておらず、且つ第二のガラスフィルムの第四の表面に金属膜が形成されていないことを特徴とする請求項1に記載の積層型フィルムコンデンサ。
  3. 積層体が、厚み方向に垂直な方向に相対する第一の側面と第二の側面を有し、
    第一の金属膜が、積層体の第一の側面側にオフセットして形成されており、第二の金属膜が、積層体の第二の側面側にオフセットして形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層型フィルムコンデンサ。
  4. 積層体の第一の側面側に第一の金属膜と接し、第二の金属膜と接しない第一の電極層が形成されており、且つ積層体の第二の側面側に第二の金属膜と接し、第一の金属膜と接しない第二の電極層が形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の積層型フィルムコンデンサ。
  5. 第一のガラスフィルムと第二のガラスフィルムの厚みが50μm以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の積層型フィルムコンデンサ。
  6. 第一のガラスフィルムと第二のガラスフィルムの誘電率が5以上であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の積層型フィルムコンデンサ。
  7. 第一のガラスフィルムと第二のガラスフィルムの平均表面粗さRaが50Å以下であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の積層型フィルムコンデンサ。
  8. 第一のガラスフィルムと第二のガラスフィルムが、ガラス組成として、質量%で、SiO 20〜70%、Al 0〜20%、B 0〜17%、MgO 0〜10%、CaO 0〜15%、SrO 0〜15%、BaO 0〜40%を含有することを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の積層型フィルムコンデンサ。
  9. 第一の金属膜と第二の金属膜のうち少なくとも一方の金属膜が50℃の耐熱性を有する請求項1〜8の何れかに記載の積層型フィルムコンデンサ。
  10. 第一の金属膜と第二の金属膜のうち少なくとも一方の金属膜がAl膜であることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の積層型フィルムコンデンサ。
  11. 第一の金属膜と第二の金属膜のうち少なくとも一方の金属膜がAg合金で形成されている請求項1〜9の何れかに記載の積層型フィルムコンデンサ。
  12. 第一の電極層と第二の電極層のうち少なくとも一方の電極層が50℃の耐熱性を有する請求項4〜11の何れかに記載の積層型フィルムコンデンサ。
  13. 第一の電極層と第二の電極層のうち少なくとも一方の電極層が金属粉末を含む無機物のみで構成されている請求項4〜12の何れかに記載の積層型フィルムコンデンサ。
  14. 第一の電極層と第二の電極層のうち少なくとも一方の電極層中の金属粉末がAgである請求項4〜13の何れかに記載の積層型フィルムコンデンサ。
  15. 第一の表面と第二の表面を有する第一のガラスフィルムと、第三の表面と第四の表面を有する第二のガラスフィルムとを用意する準備工程と、
    第一のガラスフィルムの第一の表面に第一の金属膜を形成し、第二のガラスフィルムの第三の表面に第二の金属膜を形成する成膜工程と、
    第一の金属膜と第二の金属膜をパターニングするパターニング工程と、
    第一のガラスフィルムの第二の表面と第二のガラスフィルム上の第二の金属膜とが対向するように、第一のガラスフィルムと第二のガラスフィルムを積層して、積層体を得る積層工程と、を有することを特徴とする積層型フィルムコンデンサの製造方法。
  16. 更に、積層体を厚み方向に切断する切断工程を有することを特徴とする請求項15に記載の積層型フィルムコンデンサの製造方法。
  17. レーザーを用いて、積層体を切断することを特徴とする請求項16に記載の積層型フィルムコンデンサの製造方法。
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