ところが、特許文献1の血管撮影装置を用いて穿刺を行う場合であっても、2つの断層画像(横断面及び縦断面の画像)を確認しながら穿刺針の挿入角度を調整し、目的の部位に確実に穿刺を行うためには、ある程度の技量(スキル)が必要となる。このため、血管撮影装置を用いた作業経験の少ない作業者が、生体組織を損傷させずに簡単かつ確実に穿刺を行えるようにするための技術が望まれている。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、被検体に対する穿刺針の穿刺を簡単かつ確実に行うことができる超音波画像表示装置及び超音波画像表示方法を提供することにある。また、別の目的は、上記超音波画像表示装置に内蔵されるコンピュータを動作させるためのプログラムを格納した記録媒体を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、被検体の横断面を示す第1断層画像と、前記横断面に交差する方向の縦断面を示す第2断層画像とを取得すべく超音波をリニア走査するための複数の超音波振動子が直交するように配列されたプローブ本体と、前記プローブ本体に固定され、前記第2断層画像が示す前記縦断面に沿って穿刺針を予め設定された所定の角度で前記被検体に挿入するよう前記穿刺針を案内する穿刺ガイド用アタッチメントとを備え、前記穿刺ガイド用アタッチメントに前記穿刺針の挿入角度が多段階的に調整可能な角度調整機構が設けられた超音波プローブを用い、前記超音波の送受信を行うことにより前記第1断層画像と前記第2断層画像とを同一画面上に同時に表示する超音波画像表示装置であって、前記穿刺ガイド用アタッチメントにおける前記穿刺針の挿入角度を判定する挿入角度判定手段と、前記第1断層画像上に、前記穿刺針の進む方向を示す第1のガイドラインを表示するとともに、前記第2断層画像上に、前記穿刺針の挿入角度での進路を示す第2のガイドラインを表示するガイドライン表示手段と、前記挿入角度判定手段が判定した前記穿刺針の挿入角度に基づいて、前記第1断層画像と前記第2断層画像とにおいて、前記穿刺針の先端が見え始める深さ位置を予測するとともに、作業者に対してその位置を事前に示す位置表示部を表示する位置表示手段とを備えたことを特徴とする超音波画像表示装置をその要旨とする。
従って、請求項1に記載の発明によると、挿入角度判定手段により、穿刺ガイド用アタッチメントにおける穿刺針の挿入角度が判定される。また、ガイドライン表示手段により、被検体の横断面を示す第1断層画像上に、穿刺針の進む方向を示す第1のガイドラインが表示されるとともに、縦断面を示す第2断層画像上に、穿刺針の挿入角度での進路を示す第2のガイドラインが表示される。さらに、位置表示手段により、穿刺針の挿入角度に基づいて、第1断層画像と第2断層画像とにおいて、穿刺針の先端が見え始める深さ位置が予測されるとともに、作業者に対してその位置を事前に示す位置表示部が表示される。このようにすると、医師(作業者)は、位置表示部を確認することで、第1断層画像と第2断層画像とにおいて穿刺針が見え始める深さ位置を容易に予見することができる。この結果、穿刺針が被検体の処置部(静脈や神経などの組織)に到達する瞬間を各断層画像で捉えることができるか否かを穿刺開始前に判断することができる。そして、捉えられないと判断した場合には、穿刺針の挿入角度を再設定することが可能となる。また、本発明では、各ガイドラインによって穿刺針の進路や穿刺針の挿入角度を確認することができる。このため、作業者の心理的負担を軽減しつつ、被検体の処置部に対して穿刺針の穿刺を確実に行うことができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1において、位置表示手段は、前記位置表示部としての水平ラインを表示することをその要旨とする。
従って、請求項2に記載の発明によると、第1断層画像と第2断層画像とに表示された水平ラインを確認することで、穿刺針が見え始める深さ位置を容易に予見することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記位置表示手段は、前記第1断層画像及び前記第2断層画像のうちの少なくとも一方において、前記ガイドラインと前記水平ラインとの交差位置に、前記位置表示部としてのガイドマークを表示することをその要旨とする。
従って、請求項3に記載の発明によると、断層画像に表示されたガイドマークを確認することで、穿刺針が見え始める位置を容易にかつ正確に予見することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記ガイドマークは、前記交差位置となる枠内に断層画像を表示した枠状のマークであることをその要旨とする。
従って、請求項4に記載の発明によると、枠状のガイドマークの枠内に穿刺針が見え始めるまでは、断層画像が表示されるため、ガイドラインや水平ラインで画像が隠れることなく穿刺針が見え始める瞬間を確実に確認することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項4において、前記ガイドマークは、前記穿刺針の先端に対応した画像の直径よりも大きなサイズを有することをその要旨とする。
従って、請求項5に記載の発明によると、穿刺針の先端に対応した画像の直径よりも大きなサイズを有する枠状のガイドマークが表示されるので、ガイドマークと針先端の画像とが重なり合わず、穿刺針が見え始める瞬間をより確実に確認することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項3乃至5のいずれか1項において、前記位置表示手段は、前記第1断層画像及び前記第2断層画像において、同一形状及び同一サイズの前記ガイドマークを表示することをその要旨とする。
従って、請求項6に記載の発明によると、位置表示手段により、第1断層画像及び第2断層画像において、同一形状及び同一サイズのガイドマークが表示されるので、各断層画像において同じ位置を示していることが感覚的にわかりやすい。それゆえ、各断層画像において穿刺針が見え始める位置を比較的容易に確認することができる。
請求項7に記載の発明は、請求項3乃至6のいずれか1項において、前記ガイドマーク及び前記水平ラインが破線であることをその要旨とする。
従って、請求項7に記載の発明によると、ガイドマーク及び水平ラインが破線であり、破線の隙間から画像が部分的に表示されるので、ガイドマーク及び水平ラインが実線で表示される場合と比較して被検体やその周辺の構造が把握し易くなる。
請求項8に記載の発明は、請求項2乃至7のいずれか1項において、前記位置表示手段は、前記ガイドラインと異なる色で前記水平ラインを表示することをその要旨とする。
従って、請求項8に記載の発明によると、ガイドラインと異なる色で水平ラインが表示されるため、水平ラインで示される穿刺針の深さ位置を容易に判断することができる。
請求項9に記載の発明は、請求項2乃至8のいずれか1項において、前記位置表示手段は、前記ガイドラインと異なる線種で前記水平ラインを表示することをその要旨とする。
従って、請求項9に記載の発明によると、ガイドラインと異なる線種で水平ラインが表示されるため、水平ラインで示される穿刺針の深さ位置を容易に判断することができる。
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至9のいずれか1項において、前記穿刺ガイド用アタッチメントにおける前記穿刺針の挿入角度の設定位置に応じた位置情報を入力する位置情報入力手段をさらに備え、前記挿入角度判定手段は、前記位置情報入力手段により入力された前記位置情報に基づいて、前記穿刺針の挿入角度を判断することをその要旨とする。
従って、請求項10に記載の発明によると、位置情報入力手段によって現時点での穿刺針の挿入角度の設定位置に応じた位置情報を入力することにより、穿刺針の挿入角度が判断される。そして、第2断層画像上に、その挿入角度での進路を示す第2のガイドラインが表示される。また、穿刺針の挿入角度に基づいて、穿刺針の先端が見え始める位置が予測され、その位置を示す位置表示部が各断層画像に表示される。この場合、作業者は、各断層画像に表示された位置表示部を確認することで、穿刺針が見え始める深さ位置を容易に予見することができ、第2断層画像上において第2のガイドラインが示す挿入角度で被検体に穿刺針を確実に挿入することができる。
請求項11に記載の発明は、被検体の横断面を示す第1断層画像と、前記横断面に交差する方向の縦断面を示す第2断層画像とを取得すべく超音波をリニア走査するための複数の超音波振動子が直交するように配列されたプローブ本体と、前記プローブ本体に固定され、前記第2断層画像が示す前記縦断面に沿って穿刺針を予め設定された所定の角度で前記被検体に挿入するよう前記穿刺針を案内する穿刺ガイド用アタッチメントとを備え、前記穿刺ガイド用アタッチメントに前記穿刺針の挿入角度が多段階的に調整可能な角度調整機構が設けられた超音波プローブを用い、前記超音波の送受信を行うことにより前記第1断層画像と前記第2断層画像とを同一画面上に同時に表示する方法において、前記穿刺ガイド用アタッチメントにおける前記穿刺針の挿入角度を判定する挿入角度判定ステップと、前記第1断層画像上に、前記穿刺針の進む方向を示す第1のガイドラインを表示するとともに、前記第2断層画像上に、前記穿刺針の挿入角度での進路を示す第2のガイドラインを表示するガイドライン表示ステップと、前記挿入角度判定手段が判定した前記穿刺針の挿入角度に基づいて、前記第1断層画像と前記第2断層画像とにおいて、前記穿刺針の先端が見え始める深さ位置を予測するとともに、作業者に対してその位置を事前に示す位置表示部を表示する位置表示ステップとを含むことを特徴とする超音波画像表示方法をその要旨とする。
従って、請求項11に記載の発明によると、挿入角度判定ステップにおいて、穿刺ガイド用アタッチメントにおける穿刺針の挿入角度が判定される。また、ガイドライン表示ステップにおいて、第1断層画像上に、穿刺針の進む方向を示す第1のガイドラインが表示されるとともに、第2断層画像上に、穿刺針の挿入角度での進路を示す第2のガイドラインが表示される。さらに、位置表示ステップにおいて、挿入角度判定手段が判定した穿刺針の挿入角度に基づいて、第1断層画像と第2断層画像とにおいて、穿刺針の先端が見え始める深さ位置が予測されるとともに、作業者に対してその位置を事前に示す位置表示部が表示される。このようにすると、作業者は、位置表示部を確認することで、第1断層画像と第2断層画像とにおいて穿刺針が見え始める深さ位置を容易に予見することができる。この結果、穿刺針が被検体の処置部に到達する瞬間を各断層画像で捉えることができるか否かを穿刺開始前に判断することができる。そして、捉えられないと判断した場合には、穿刺針の挿入角度を再設定することが可能となる。また、本発明では、各ガイドラインによって穿刺針の進路や穿刺針の挿入角度を確認することができる。このため、作業者の心理的負担を軽減しつつ、被検体の処置部に対して穿刺針の穿刺を確実に行うことができる。
請求項12に記載の発明は、被検体の横断面を示す第1断層画像と、前記横断面に交差する方向の縦断面を示す第2断層画像とを取得すべく超音波をリニア走査するための複数の超音波振動子が直交するように配列されたプローブ本体と、前記プローブ本体に固定され、前記第2断層画像が示す前記縦断面に沿って穿刺針を予め設定された所定の角度で前記被検体に挿入するよう前記穿刺針を案内する穿刺ガイド用アタッチメントとを備え、前記穿刺ガイド用アタッチメントに前記穿刺針の挿入角度が多段階的に調整可能な角度調整機構が設けられた超音波プローブを用い、前記超音波の送受信を行うことにより前記第1断層画像と前記第2断層画像とを同一画面上に同時に表示する超音波画像表示装置に内蔵されるコンピュータを、前記穿刺ガイド用アタッチメントにおける穿刺針の挿入角度を判定する挿入角度判定手段と、前記第1断層画像上に、前記穿刺針の進む方向を示す第1のガイドラインを表示するとともに、前記第2断層画像上に、前記穿刺針の挿入角度での進路を示す第2のガイドラインを表示するガイドライン表示手段と、前記挿入角度判定手段が判定した前記穿刺針の挿入角度に基づいて、前記第1断層画像と前記第2断層画像とにおいて、前記穿刺針の先端が見え始める深さ位置を予測するとともに、作業者に対してその位置を事前に示す位置表示部を表示する位置表示手段として動作させるためのプログラムを格納した記録媒体をその要旨とする。
従って、請求項12に記載の発明によると、記録媒体に格納されたプログラムに従ってコンピュータを動作させることにより、請求項1に記載の超音波画像表示装置を実現することができる。そして、超音波画像表示装置を用いることにより、作業者の心理的負担を軽減しつつ、被検体の処置部に対して穿刺針の穿刺を確実に行うことができる。
以上詳述したように、請求項1〜12に記載の発明によると、被検体に対する穿刺針の穿刺を簡単かつ確実に行うことができる。
以下、本発明を超音波画像表示装置としての血管撮影装置に具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本実施の形態の血管撮影装置1を示す正面図であり、図2は、その血管撮影装置1の電気的構成を示すブロック図である。
図1及び図2に示されるように、血管撮影装置1は、装置本体2と、その装置本体2に接続される超音波プローブ3とを備えている。本実施の形態の血管撮影装置1は、例えば生体組織4(被検体)内の静脈5にカテーテルなどの穿刺針6を挿入する際に使用される装置であり、静脈5の横断面を示す第1断層画像8(短軸像)と静脈5の縦断面を示す第2断層画像9(長軸像)とを同一画面10上に同時に表示する(図3参照)。
超音波プローブ3は、信号ケーブル11と、信号ケーブル11の先端に接続されるプローブ本体12と、プローブ本体12に対して着脱可能に固定される穿刺ガイド用アタッチメント14と、信号ケーブル11の基端に設けられるプローブ側コネクタ15とを備える。装置本体2にはコネクタ16が設けられ、そのコネクタ16に超音波プローブ3のプローブ側コネクタ15が接続されている。
超音波プローブ3は、リニア式電子走査を行うためのリニアプローブであり、例えば、5MHzの超音波を直線的に走査する。プローブ本体12の底面となる振動子設置面20上には、配列方向が相互に直交して略T字状となるように複数の超音波振動子23,24(探触子)が配列している。
より詳しくは、プローブ本体12は、第1断層画像8を取得するための複数の第1の超音波振動子23を収納する第1素子ユニット25と、第2断層画像9を取得するための複数の第2の超音波振動子24を収納する第2素子ユニット26とを有する。第1素子ユニット25における複数の第1の超音波振動子23は、横断面に対応した短軸方向Xに沿って直線的に配列されている。また、第2素子ユニット26における複数の第2の超音波振動子24は、縦断面に対応した長軸方向Yに沿って直線的に配列されている。本実施の形態において、第1素子ユニット25に収納される第1の超音波振動子23の素子数は、例えば48個であり、第2素子ユニット26に収納される第2の超音波振動子24の素子数は、例えば80個である。従って、各超音波振動子23,24の配列方向の長さは、第1素子ユニット25よりも第2素子ユニット26の方が長くなっている。
第2素子ユニット26において、長軸方向Yに複数の超音波振動子24が配列してなる超音波振動子列27は、振動子設置面20におけるプローブ本体12の中心線L0上に沿って配置されている。つまり、本実施の形態では、振動子設置面20において長軸方向Yの超音波振動子列27の延長線L0とプローブ本体12の中心線L0とが一致する。さらに、長軸方向Yの超音波振動子列27は、その始端が短軸方向Xの超音波振動子列28のほぼ中央に位置するように配列している。
本実施の形態の超音波プローブ3において、略T字状の超音波振動子列27,28における超音波の走査は、例えば、短軸方向Xの超音波振動子列28の一端(例えば図2の右端となる始端)の超音波振動子23から開始される。そして、短軸方向Xの超音波振動子列28の他端(例えば図2の左端となる終端)の超音波振動子23に向けて1素子ずつ順番に行われる。その後、短軸方向Xの超音波振動子列28のほぼ中央に位置する長軸方向Yの超音波振動子列27の一端(図2では下端となる始端)の超音波振動子24から他端(図2では上端となる終端)の超音波振動子24に向けて1素子ずつ順番に超音波の走査が行われる。
本実施の形態の超音波プローブ3では、プローブ本体12において底面に位置する振動子設置面20が生体組織4との接触面であり、超音波の送受信を行うための送受信面となる。この振動子設置面20において、略T字状に超音波振動子列27,28が配置される部分には、図示しない音響整合層を介して略T字状の音響レンズ29が配設されている。音響レンズ29は、例えばシリコーン樹脂からなり、第1素子ユニット25及び第2素子ユニット26において超音波振動子23,24の超音波放射面30側に設けられている。音響レンズ29は、生体組織4と接触する外面が湾曲した凸面状に形成されており、超音波振動子23,24の超音波放射面30からその法線方向に出力される超音波のビームを絞って所定の焦点位置にて収束させる。
プローブ本体12において、長軸方向Yの超音波振動子列27の延長線(振動子設置面20におけるプローブ本体12の中心線L0)上かつ振動子設置面20の端縁部(図2では下側、図4では左側の端縁部)には、位置決め部31が設けられている。位置決め部31は、穿刺針6の先端側が当接して生体組織4に対する穿刺針6の挿入位置を決めるための凹部である。さらに、生体組織4が接触するプローブ本体12の振動子設置面20において、短軸方向Xの両端部には、生体組織4の観察部位の圧迫を回避するための凸条部32が長軸方向Yに沿って設けられている(図4参照)。プローブ本体12の振動子設置面20にて一対の凸条部32を離間して設けることで、振動子設置面20側における一対の凸条部32間の領域があまり強く圧迫されなくなる。よって、観察部位にある静脈5が押し潰されることが防止され、静脈5への穿刺を確実に行うことが可能となる。
穿刺ガイド用アタッチメント14は、穿刺針6を案内するためのガイド溝33が形成された穿刺針ガイド部34と、穿刺針6の挿入角度を多段階的に調整可能な角度調整機構35と、プローブ本体12の側面下部に嵌め込んで固定する固定部36とを備える。穿刺ガイド用アタッチメント14は、第1断層画像8が示す横断面の中央部に穿刺針6が位置するとともに、第2断層画像9が示す縦断面に沿って穿刺針6を所定の角度で生体組織4に挿入するよう穿刺針6を案内する。本実施の形態の穿刺ガイド用アタッチメント14は、可撓性を有する樹脂材料を用いて形成された樹脂成型部品である。
プローブ本体12の下部は、先端側に配置される第1素子ユニット25が横方向に出っ張ったハンマーヘッド型の外形形状(略T字形状)を有する(図2及び図4参照)。穿刺ガイド用アタッチメント14において、固定部36は、そのハンマーヘッド型の外形形状に沿って環状に形成されている。固定部36の内周側には、例えば係合凹部(図示略)が形成されており、プローブ本体12に形成された係合凸部(図示略)に係合凹部が係合することによって、穿刺ガイド用アタッチメント14がプローブ本体12に固定されている。
穿刺ガイド用アタッチメント14において、固定部36の一端に角度調整機構35が設けられ、角度調整機構35に穿刺針ガイド部34が着脱可能に装着されている。穿刺針ガイド部34は、振動子設置面20から上方に離間した位置にて突出している。角度調整機構35は、プローブ本体12の位置決め部31を中心とした周方向に穿刺針ガイド部34を多段階的に移動させるとともに各位置にて固定可能に設けられた調整機構である。この角度調整機構35には、例えば3段階の切り替え位置が設けられている。
穿刺針ガイド部34のガイド溝33は、振動子設置面20からの投影視にて超音波振動子列27の延長線L0上に沿って延びるように形成されている。穿刺針ガイド部34は、長軸方向Yの超音波振動子列27の配列方向と平行な方向に延設されかつ基端部が互いに連結された2本の棒状部材40により構成され、上方から見た形状が略U字状となるよう形成されている。そして、穿刺針ガイド部34において2本の棒状部材40間に設けられた隙間がガイド溝33となっている。穿刺ガイド用アタッチメント14をプローブ本体12に装着した状態では、プローブ本体12の中心線L0上にガイド溝33が配置される。ガイド溝33には、穿刺針6を導入するための開口41と、導入した穿刺針6を当接させる底部42とが設けられている。さらに、穿刺針ガイド部34のガイド溝33には、開口41の側に行くに従って徐々に溝幅が広くなるよう形成された穿刺針導入部43が設けられている。
そして、ガイド溝33の底部42とプローブ本体12の位置決め部31との組み合わせにより穿刺針6の挿入角度が決定される。つまり、プローブ本体12の位置決め部31に穿刺針6の針先を当接させるとともに、ガイド溝33の底部42に穿刺針6の側面を当接させることによって、生体組織4に対する穿刺針6の挿入角度が決定される。また、穿刺ガイド用アタッチメント14において、角度調整機構35を操作し、穿刺針ガイド部34を移動させてガイド溝33の底部42の位置を変更することにより、底部42と位置決め部31とにより決定される穿刺針6の挿入角度が多段階的に調整されるようになっている。
次に、血管撮影装置1における電気的な構成について詳述する。
図2に示されるように、血管撮影装置1の装置本体2は、コントローラ50、パルス発生回路51、送信回路52、受信回路53、信号処理回路54、画像処理回路55、メモリ56、記憶装置57、入力装置58、表示装置59等を備える。コントローラ50は、周知の中央処理装置(CPU)を含んで構成されたコンピュータであり、メモリ56を利用して制御プログラムを実行し、装置全体を統括的に制御する。
パルス発生回路51は、コントローラ50からの制御信号に応答して動作し、所定周期のパルス信号を生成して出力する。送信回路52は、超音波プローブ3における超音波振動子23,24の素子数に対応した複数の遅延回路(図示略)を含み、パルス発生回路51から出力されるパルス信号に基づいて、各超音波振動子23,24に応じて遅延させた駆動パルスを出力する。各駆動パルスの遅延時間は、超音波プローブ3から出力される超音波が所定の照射点で焦点を結ぶように設定されている。
受信回路53は、図示しない信号増幅回路、遅延回路、整相加算回路を含む。この受信回路53では、超音波プローブ3における各超音波振動子23,24で受信された各反射波信号(エコー信号)が増幅されるとともに、受信指向性を考慮した遅延時間が各反射波信号に付加された後、整相加算される。この加算によって、各超音波振動子23,24の受信信号の位相差が調整される。
信号処理回路54は、図示しない対数変換回路、包絡線検波回路、A/D変換回路などから構成されている。信号処理回路54における対数変換回路は反射波信号を対数変換し、包絡線検波回路は対数変換回路の出力信号の包絡線を検波する。また、A/D変換回路は、包絡線検波回路から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。
画像処理回路55は、信号処理回路54から出力される反射波信号に基づいて、画像処理を行いBモードの超音波画像(断層画像)の画像データを生成する。具体的には、画像処理回路55は、反射波信号の振幅(信号強度)に応じた輝度の画像データを生成する。画像処理回路55で生成された画像データは逐次メモリ56に記憶される。なおここでは、生体組織4の横断面を示す第1断層画像8及び生体組織4の縦断面を示す第2断層画像9の画像データが生成され、メモリ56に記憶される。そして、メモリ56に記憶された1フレーム分の画像データに基づいて、生体組織4の第1断層画像8及び第2断層画像9が白黒の濃淡で表示装置59に表示される。
入力装置58は、キーボード61やトラックボール62などで構成されており、ユーザからの要求や指示等の入力に用いられる。表示装置59は、例えば、LCDやCRTなどのディスプレイであり、生体組織4の第1断層画像8及び第2断層画像9(図3参照)や、各種設定の入力画面を表示するために用いられる。
本実施の形態の表示装置59の表示画面10には、図3に示すように、第1断層画像8及び第2断層画像9が左右に並べて同時に表示される。第1断層画像8上には、穿刺針6の進む方向を示す第1のガイドライン65が、画面上下方向に沿って直線的に延びるように示される。また、第2断層画像9上に、穿刺針6の挿入角度での進路を示す第2のガイドライン66が、画面左上から右下の方向に向かって直線的に延びるように表示される。第1断層画像8上及び第2断層画像9上の各ガイドライン65,66は、本実施の形態では同じ線種(具体的には点線)及び線色(具体的には黄色)で表示される。
さらに、第1断層画像8上及び第2断層画像9上には、穿刺針6の先端が見え始める深さ位置を作業者に事前に示す位置表示部が表示される。本実施の形態では、位置表示部として、水平ライン67及びガイドマーク68が表示される。本実施の形態のガイドマーク68は、ガイドライン65,66と水平ライン67との交差位置において、枠内に断層画像を表示した四角形の枠状のマークであり、穿刺針6の先端71に対応した画像の直径よりも大きなサイズ(例えば1.5倍〜3倍程度大きなサイズ)を有する。また、ガイドマーク68は、第1断層画像8上及び第2断層画像9上において、互いに同じ高さ位置に、かつ、同一形状及び同一サイズで表示される。なお、第2断層画像9上において、ガイドマーク68は、画面左端であって第2のガイドライン66の始端となる位置に表示されている。
水平ライン67は、プローブ本体12における振動子設置面20に対して水平なラインである。水平ライン67は、ガイドライン65,66と異なる線種(具体的には1点鎖線)及び異なる線色(具体的には赤色)で表示される。一方、ガイドマーク68は、ガイドライン65,66と同じ線種(具体的には点線)及び線色(具体的には黄色)で表示される。
記憶装置57は、磁気ディスク装置や光ディスク装置などであり、制御プログラム及び各種のデータを記録媒体に格納している。コントローラ50は、入力装置58による指示に従い、プログラムやデータを記憶装置57からメモリ56へ転送し、それを逐次実行する。なお、コントローラ50が実行するプログラムとしては、メモリカード、フレキシブルディスク、光ディスクなどの記憶媒体に記憶されたプログラムや、通信媒体を介してダウンロードしたプログラムでもよく、その実行時には記憶装置57にインストールして利用する。
次に、本実施の形態の血管撮影装置1を用いてカテーテルの穿刺針6を生体組織4の静脈5に挿入する際の操作例について説明する。
ここでは、先ず、医者などの作業者は、患者の処置部に適した穿刺針6の挿入角度を判断する。そして、作業者は、その挿入角度となるように角度調整機構35を操作して穿刺針ガイド部34の位置を設定した穿刺ガイド用アタッチメント14をプローブ本体12に装着する。その後、作業者は、位置情報入力手段としての入力装置58のキーボード61を操作し、角度調整機構35で設定している穿刺針6の挿入角度の設定位置に応じた位置情報を入力する。このとき、コントローラ50は、その位置情報をメモリ56に一旦記憶する。
さらに、作業者は、処置部となる生体組織4の表面(例えば、図5に示すような静脈5がある前腕4aの表面)に、音響媒体(無菌ゲルや滅菌ゲル)を塗った後、その音響媒体を介してプローブ本体12の振動子設置面20を接触させる。この後、作業者は、入力装置58に設けられている走査開始ボタン(図示略)を操作する。すると、コントローラ50は、そのボタン操作を判断し、生体組織4の断層画像8,9を表示するための処理を開始する。
この処理において、コントローラ50は、パルス発生回路51を動作させ、超音波プローブ3による超音波の送受信を開始させる。具体的には、コントローラ50から出力される制御信号に応答してパルス発生回路51が動作し、所定周期のパルス信号が送信回路52に供給される。そして、送信回路52では、パルス信号に基づいて、各超音波振動子23,24に対応した遅延時間を有する駆動パルスが生成され、超音波プローブ3に供給される。これにより、超音波プローブ3の各超音波振動子23,24が振動して超音波が生体組織4に向けて照射される。生体組織4内を伝搬する超音波の一部は、生体組織4における組織境界面(例えば血管壁)などで反射して超音波プローブ3で受信される。このとき、超音波プローブ3の各超音波振動子23,24によって反射波が電気信号(反射波信号)に変換される。そして、その反射波信号は、受信回路53で増幅等された後、信号処理回路54に入力される。
信号処理回路54では、対数変換、包絡線検波、A/D変換といった信号処理が行われ、デジタル信号に変換された反射波信号が画像処理回路55に供給される。画像処理回路55では、その反射波信号に基づいて、断層画像8,9の画像データを生成するための画像処理が行われる。そして、コントローラ50は、画像処理回路55で生成された各画像データをメモリ56に一旦記憶する。
コントローラ50は、メモリ56に記憶された各画像データを読み出し、第1断層画像8及び第2断層画像9の1フレーム分のデータを生成する。また、挿入角度判定手段としてのコントローラ50は、メモリ56に記憶された位置情報を読み出し、その位置情報に基づいて穿刺針6の挿入角度を判断する(挿入角度判定ステップ)。そして、ガイドライン表示手段としてのコントローラ50は、穿刺針6の挿入角度に応じたガイドライン65,66の表示データを生成する(ガイドライン表示ステップ)。さらに、位置表示手段としてのコントローラ50は、穿刺針6の挿入角度に基づいて、第1断層画像8と第2断層画像9とにおいて、穿刺針6の先端が見え始める深さ位置を予測するとともに、作業者に対してその深さ位置を事前に示す位置表示部(水平ライン67及びガイドマーク68)の表示データを生成する(位置表示ステップ)。
その後、コントローラ50は、生成した断層画像8,9のデータを表示装置59に出力するとともに、ガイドライン65,66、水平ライン67及びガイドマーク68の表示データを表示装置59に出力する。この結果、図3に示されるように、表示装置59の表示画面10に第1断層画像8及び第2断層画像9が左右に並べて同時に表示されるとともに、各断層画像8,9上にガイドライン65,66、水平ライン67及びガイドマーク68が重ね合わせて表示される。
作業者は、表示装置59に表示された第1断層画像8及び第2断層画像9を確認し、超音波プローブ3の位置を調整する。具体的には、先ず、作業者は、図5及び図6に示されるように、第1断層画像8(短軸像)上に静脈5の横断面が撮影されるとともに第1断層画像8上の第1のガイドライン65が静脈5の中心に位置するように超音波プローブ3の第1素子ユニット25側を移動させる。さらに、図5及び図7に示されるように、第2断層画像9(長軸像)上に沿って静脈5の縦断面が撮影されるように、超音波プローブ3の第2素子ユニット26側を移動させて、静脈5が延びる方向(軸方向)とプローブ本体12の長軸方向Yとを一致させる。なおこのとき、超音波プローブ3の第1素子ユニット25側(短軸側)の位置をキープした状態で、後側となる第2素子ユニット26側(長軸側)を左右に振るようにして位置合わせを行う。
作業者は、第1断層画像8上及び第2断層画像9上の水平ライン67及びガイドマーク68、第2断層画像9上の第2のガイドライン66に基づいて、穿刺針6の挿入角度が静脈5への穿刺に適した角度か否かを判定する。そして、図7に示されるように、静脈5への穿刺を行う処置部よりも水平ライン67及びガイドマーク68が上方にあり、穿刺針6の挿入角度が静脈5への穿刺に適した角度であると判定した場合、作業者は、穿刺ガイド用アタッチメント14の穿刺針ガイド部34において、ガイド溝33の開口41からカテーテルの穿刺針6を導入する。そして、作業者は、プローブ本体12の位置決め部31の位置に穿刺針6の針先を当接させるとともに、ガイド溝33の底部42に穿刺針6の側面を当接させた後、生体組織4(前腕4a)に対して穿刺針6を挿入していく。すると、図3に示されるように、第1断層画像8及び第2断層画像9に穿刺針6が表示される。なお、ここでは、第1断層画像8におけるガイドマーク68の枠内に穿刺針6が表示された後、第2断層画像9におけるガイドマーク68の枠内に穿刺針6が表示される。作業者は、第2断層画像9における第2のガイドライン66に沿って穿刺針6の挿入位置を確認しつつ、穿刺針6を挿入していく。
そして、穿刺針6の先端71が静脈5の血管壁に達すると、先端71が血管壁を貫通せずに血管壁がテント状に凹んでいく(テンティング)。作業者は、血管壁の凹みに基づいて、テンティングが十分に進行した旨を判定したとき、穿刺針6の後端側をガイド溝33に沿って開口41の側に移動させる。これにより、静脈5の方向に対して穿刺針6を沿わせるように穿刺針6の挿入角度が変更されるため、静脈5の血管壁を穿刺針6の先端71が容易に貫通し、先端71が血管内に挿入される。図8に示されるように、作業者は、第2断層画像9に基づいて、穿刺針6の先端71が静脈5内に達したことを確認し、穿刺針6の穿刺動作を止める。
一方、図9及び図10に示されるように、穿刺を行う静脈5が比較的浅い位置にあると、静脈5への穿刺を行う処置部よりも水平ライン67及びガイドマーク68が下方になる場合がある。この場合、上記のように穿刺針6の穿刺を行うと、図11に示されるように、第1断層画像8及び第2断層画像9に穿刺針6が見え始める際には、すでに静脈5の血管壁を先端71が貫通した状態であり、静脈5内で穿刺針6の穿刺動作を止めることが困難となる。
従って、静脈5への穿刺を行う処置部よりも水平ライン67及びガイドマーク68が下方になる場合には、作業者は、穿刺針6の挿入角度に問題があると判断する。そして、適した挿入角度となるように角度調整機構35を操作して穿刺針ガイド部34の位置を再設定する。具体的には、作業者は、穿刺針6の傾斜角度が小さくなるよう角度調整機構35を操作して穿刺針ガイド部34の位置を調整する。その後、作業者は、入力装置58のキーボード61を操作し、角度調整機構35で設定した穿刺針6の挿入角度に応じた位置情報を再度入力する。コントローラ50は、その位置情報に基づいて位置表示部(水平ライン67及びガイドマーク68)の表示データを生成し、表示装置59に出力する。この結果、図12に示されるように、第1断層画像8及び第2断層画像9において、静脈5への穿刺を行う処置部よりも上側の位置に水平ライン67及びガイドマーク68が表示される。このため、第1断層画像8及び第2断層画像9において、穿刺針6の先端71の位置を確認した後に、静脈5への穿刺を行うことが可能となる。つまり、作業者は、第1断層画像8及び第2断層画像9において、テンティングが十分に進行した旨を判定することができ、その判定後に、静脈5の血管壁内に穿刺針6を挿入する。そして、作業者は、第2断層画像9に基づいて、穿刺針6の先端71が静脈5内に達したことを確認し、穿刺針6の穿刺動作を止める。
その後、作業者は、入力装置58に設けられている走査終了ボタン(図示略)を操作する。コントローラ50は、そのボタン操作を判断し、生体組織4の断層画像8,9を表示するための処理を終了する。さらに、作業者は、穿刺針6の穿刺状態を維持したまま(穿刺ルートを残したまま)、ガイド溝33に沿ってプローブ本体12を移動させる。そして、作業者は、ガイド溝33の開口41を通して超音波プローブ3(穿刺ガイド用アタッチメント14及びプローブ本体12)を穿刺針6から取り外す。この後、作業者は、カテーテル操作を行い、静脈5内にカテーテルを挿入して所定の治療を行う。
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施の形態の血管撮影装置1では、穿刺針6の挿入角度に基づいて、第1断層画像8と第2断層画像9とにおいて、穿刺針6の先端71が見え始める深さ位置が予測されるとともに、作業者に対してその位置を事前に示す水平ライン67及びガイドマーク68が表示される。このようにすると、医師(作業者)は、水平ライン67及びガイドマーク68を確認することで、第1断層画像8と第2断層画像9とにおいて穿刺針6が見え始める深さ位置を容易に予見することができる。この結果、穿刺針6が生体組織4aの処置部(具体的には、静脈5)に到達する瞬間を各断層画像8,9で捉えることができるか否かを穿刺開始前に判断することができる。そして、捉えられないと判断した場合には、穿刺針6の挿入角度を再設定することが可能となる。また、本実施の形態では、各ガイドライン65,66によって穿刺針6の進路や穿刺針6の挿入角度を確認することができる。このため、作業者の心理的負担を軽減しつつ、静脈5に対して穿刺針6の穿刺を確実に行うことができる。
(2)本実施の形態の血管撮影装置1において、ガイドマーク68は、ガイドライン65,66と水平ライン67との交差位置となる枠内に断層画像を表示した枠状のマークである。また、ガイドマーク68は、穿刺針6の先端71に対応した画像の直径よりも大きなサイズを有する。このようにすると、ガイドマーク68の枠内に穿刺針6が見え始めるまでは、断層画像が表示されるため、ガイドライン65,66や水平ライン67で画像が隠れることなく穿刺針6が見え始める瞬間をより確実に確認することができる。さらに、第1断層画像8及び第2断層画像9に表示されるガイドマーク68が同一形状及び同一サイズであるので、各断層画像8,9において穿刺針6が見え始める位置を比較的容易に確認することができる。
(3)本実施の形態の血管撮影装置1では、水平ライン67及びガイドマーク68が一点鎖線及び点線であり、それら一点鎖線及び点線の隙間から画像が部分的に表示されるので、水平ライン67及びガイドマーク68が実線で表示される場合と比較して静脈5やその周辺の構造が把握し易くなる。
(4)本実施の形態の血管撮影装置1では、ガイドライン65,66の色(黄色)と異なる色(赤色)で水平ライン67が表示されるとともに、ガイドライン65の線種(点線)と異なる線種(一点鎖線)で水平ライン67が表示されている。このようにすると、水平ライン67で示される穿刺針6の深さ位置を容易に判断することができる。
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態の血管撮影装置1では、第1断層画像8上及び第2断層画像9上に、位置表示部として水平ライン67を表示するものであったがこれに限定されるものではない。具体的には、第1断層画像8上及び第2断層画像9上において、穿刺針6の先端71が見え始める深さ位置よりも上側領域の画像をその下側領域とは異なる輝度または色の濃淡で表示することにより、各領域の画像間におけるライン状の境界が位置表示部として見えるように構成してもよい。
・上記実施の形態の血管撮影装置1では、位置表示部としての水平ライン67及びガイドマーク68を第1断層画像8上及び第2断層画像9上に表示させるものであったが、水平ライン67のみを表示させるように構成してもよい。この場合、作業者は、各断層画像8,9に表示されているガイドライン65,66と水平ライン67との交差位置を確認することで、穿刺針6の先端が見え始める位置を予測することができる。また、ガイドマーク68は、第1断層画像8及び第2断層画像9の両画像上に表示されていたが、少なくとも一方の画像上に表示されるものであってもよい。例えば、第1断層画像8上のみにガイドマーク68が表示される場合、穿刺針6が先に表示される第1断層画像8において、穿刺針6が見え始める位置をガイドマーク68により確認することができる。そして、第2断層画像9にガイドマーク68が表示されていなくても、第1断層画像8のガイドマーク68内に表示された穿刺針6に基づいて、第2断層画像9において穿刺針6が見え始める深さ位置を予測することができる。また、第2断層画像9上のみにガイドマーク68が表示される場合、第2断層画像9において穿刺針6が見え始める深さ位置を確実に予測することができる。
・上記実施の形態の血管撮影装置1において、水平ライン67及びガイドマーク68について、表示または非表示に設定する選択機能を設けてもよい。具体的には、コントローラ50は、表示装置59の設定画面において、水平ライン67及びガイドマーク68を表示または非表示に設定するための選択ボタンを表示させる。そして、コントローラ50は、作業者のボタン操作に基づいて、第1断層画像8上及び第2断層画像9上に水平ライン67及びガイドマーク68を表示したり、消去したりする。例えば、血管撮影装置1の操作に慣れた熟練の作業者は、各断層画像8,9に表示されているガイドライン65,66の位置に基づいて、穿刺針6の先端が見え始める位置を予測することができる。このため、熟練の作業者が血管撮影装置1を使用する場合には、水平ライン67及びガイドマーク68を表示させない状態で穿刺針6の穿刺を行ってもよい。また、血管撮影装置1の操作に慣れていない作業者が使用する場合には、水平ライン67及びガイドマーク68を表示させることにより、穿刺針6の穿刺を安心して確実に行うことが可能となる。
・上記実施の形態において、位置表示部としてのガイドマーク68は、四角形の枠状であったが、三角形や円形の枠状としてもよい。また、ガイドマーク68は枠状のマークに限定されるものではなく、位置を認識できるマークであれば、例えば十字形状のマークや点状のマーク等であってもよい。
・上記実施の形態の血管撮影装置1では、キーボード61を操作して入力した位置情報に基づいて穿刺針6の挿入角度を判定するものであったが、これに限定されるものではない。具体的には、例えば、角度調整機構35において、穿刺針6の挿入角度を検出するための位置検出手段(センサやスイッチ)を設ける。そして、コントローラ50は、位置検出手段により検出された穿刺針6の挿入角度に基づいて水平ライン67やガイドマーク68を各断層画像8,9上に表示するよう構成してもよい。このようにすると、角度調整機構35の操作位置に応じた穿刺針6の挿入角を自動で判定することができるため、穿刺針6の穿刺を迅速に行うことができる。
・上記実施の形態の血管撮影装置1では、静脈5の断層画像8,9を表示してカテーテルを用いた治療を行うものであったが、採血などの他の処置を行う場合に血管撮影装置1を用いてもよい。また、血管撮影装置1に限定されるものではなく、血管以外に神経などの断層画像を表示して神経ブロック注射などの他の処置を行う超音波画像表示装置に本発明を具体化してもよい。
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)請求項2において、前記水平ラインは、前記プローブ本体における振動子設置面に対して平行なラインであることを特徴とする超音波画像表示装置。
(2)請求項1において、前記位置表示手段は、前記第1断層画像及び前記第2断層画像において、前記穿刺針の先端が見え始める深さ位置よりも上側領域の画像をその下側領域の画像とは異なる輝度または異なる色の濃淡で表示することにより、各領域の画像間におけるライン状の境界が前記位置表示部として見えるようにしたことを特徴とする超音波画像表示装置。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、被検体の横断面を示す第1断層画像と、前記横断面に交差する方向の縦断面を示す第2断層画像とを取得すべく超音波をリニア走査するための複数の超音波振動子が直交するように配列されたプローブ本体と、前記プローブ本体に固定され、前記第2断層画像が示す前記縦断面に沿って穿刺針を予め設定された所定の角度で前記被検体に挿入するよう前記穿刺針を案内する穿刺ガイド用アタッチメントとを備え、前記穿刺ガイド用アタッチメントに前記穿刺針の挿入角度が多段階的に調整可能な角度調整機構が設けられた超音波プローブを用い、前記超音波の送受信を行うことにより前記第1断層画像と前記第2断層画像とを同一画面上に同時に表示する超音波画像表示装置であって、前記穿刺ガイド用アタッチメントにおける前記穿刺針の挿入角度を判定する挿入角度判定手段と、前記第1断層画像上に、前記穿刺針の進む方向を示す第1のガイドラインを表示するとともに、前記第2断層画像上に、前記穿刺針の挿入角度での進路を示す第2のガイドラインを表示するガイドライン表示手段と、前記挿入角度判定手段が判定した前記穿刺針の挿入角度に基づいて、前記第1断層画像と前記第2断層画像とにおいて、前記穿刺針の先端が見え始める深さ位置を予測するとともに、作業者に対してその位置を事前に示す位置表示部としての水平ラインを表示する位置表示手段とを備えたことを特徴とする超音波画像表示装置をその要旨とする。
従って、請求項1に記載の発明によると、挿入角度判定手段により、穿刺ガイド用アタッチメントにおける穿刺針の挿入角度が判定される。また、ガイドライン表示手段により、被検体の横断面を示す第1断層画像上に、穿刺針の進む方向を示す第1のガイドラインが表示されるとともに、縦断面を示す第2断層画像上に、穿刺針の挿入角度での進路を示す第2のガイドラインが表示される。さらに、位置表示手段により、穿刺針の挿入角度に基づいて、第1断層画像と第2断層画像とにおいて、穿刺針の先端が見え始める深さ位置が予測されるとともに、作業者に対してその位置を事前に示す位置表示部が表示される。このようにすると、医師(作業者)は、位置表示部を確認することで、第1断層画像と第2断層画像とにおいて穿刺針が見え始める深さ位置を容易に予見することができる。この結果、穿刺針が被検体の処置部(静脈や神経などの組織)に到達する瞬間を各断層画像で捉えることができるか否かを穿刺開始前に判断することができる。そして、捉えられないと判断した場合には、穿刺針の挿入角度を再設定することが可能となる。また、本発明では、各ガイドラインによって穿刺針の進路や穿刺針の挿入角度を確認することができる。このため、作業者の心理的負担を軽減しつつ、被検体の処置部に対して穿刺針の穿刺を確実に行うことができる。また、位置表示手段が位置表示部としての水平ラインを表示することから、第1断層画像と第2断層画像とに表示された水平ラインを確認することで、穿刺針が見え始める深さ位置を容易に予見することができる。
請求項10に記載の発明は、被検体の横断面を示す第1断層画像と、前記横断面に交差する方向の縦断面を示す第2断層画像とを取得すべく超音波をリニア走査するための複数の超音波振動子が直交するように配列されたプローブ本体と、前記プローブ本体に固定され、前記第2断層画像が示す前記縦断面に沿って穿刺針を予め設定された所定の角度で前記被検体に挿入するよう前記穿刺針を案内する穿刺ガイド用アタッチメントとを備え、前記穿刺ガイド用アタッチメントに前記穿刺針の挿入角度が多段階的に調整可能な角度調整機構が設けられた超音波プローブを用い、前記超音波の送受信を行うことにより前記第1断層画像と前記第2断層画像とを同一画面上に同時に表示する方法において、前記穿刺ガイド用アタッチメントにおける前記穿刺針の挿入角度を判定する挿入角度判定ステップと、前記第1断層画像上に、前記穿刺針の進む方向を示す第1のガイドラインを表示するとともに、前記第2断層画像上に、前記穿刺針の挿入角度での進路を示す第2のガイドラインを表示するガイドライン表示ステップと、前記挿入角度判定手段が判定した前記穿刺針の挿入角度に基づいて、前記第1断層画像と前記第2断層画像とにおいて、前記穿刺針の先端が見え始める深さ位置を予測するとともに、作業者に対してその位置を事前に示す位置表示部としての水平ラインを表示する位置表示ステップとを含むことを特徴とする超音波画像表示装置の作動方法をその要旨とする。