以下、発明を実施するための実施形態について説明する。実施形態における、画像解析機能141、画像生成機能151、判定機能153を実行する処理回路は、それぞれ特許請求の範囲における、画像解析部、画像生成部、判定部の一例である。また、実施形態におけるディスプレイ16は、特許請求の範囲における表示部の一例である。
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、被検体に挿入される器具とプローブ10との位置関係情報を出力する位置情報取得部14を備え、処理回路15の判定機能153が位置関係情報に基づいていずれの振動子アレイで走査するかを判定する。以下、第1の実施形態に係る超音波診断装置1が備える各部を説明し、続いて、いずれの振動子アレイで走査するかを自動で切り替える流れについて詳述する。
図1は、第1の実施形態にかかる超音波診断装置1の概略図を示す。超音波診断装置1は、超音波を送受信する振動子アレイ101を有するプローブ10と、送信回路11と、受信回路12と、画像生成機能151や走査制御機能152、判定機能153を有する処理回路15と、ディスプレイ16と、記憶回路17と、操作者の入力を受け付ける入力回路18と、プローブ10などの位置関係情報を出力する位置情報取得部14と、を備える。本実施形態では、画像生成機能151、走査制御機能152、判定機能153は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路17に記憶されている。処理回路15はプログラムを記憶回路17から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路15は、図1の処理回路15内に示された各機能を有することとなる。なお、図1においては単一の処理回路15上で、画像生成機能151、走査制御機能152、判定機能153の各機能が実現されるものとして説明しているが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
本実施形態では、プローブ10で被検体を走査しながら、別途器具を被検体内部に挿入する。被検体に挿入される器具は、例えば穿刺針20である。
プローブ10は、複数の振動子を有する。振動子は、電圧が印加されると振動して超音波を送信し、超音波の振動を受信すると電圧を発生する。複数の振動子をまとめて配列し、振動子アレイ101を構成することで、対象物を2次元的に走査できる。例えば、振動子を直線上に配列したリニア型やセクタ型、振動子を凸状に配列したコンベックス型が挙げられる。また、振動子アレイ101は、走査方向が傾斜させられるように構成してもよい。本実施形態におけるプローブ10は、振動子アレイ101を複数種類有する。図2は、2つの振動子アレイ101を有するプローブ10の斜視図を示す。図2のプローブ10は、肛門などから体腔内に挿入可能なように、把持部102からプローブ10の先端部までが細長い形状となっている。このプローブ10は、挿入方向と平行な面で走査する第1の振動子アレイ101aと、第1の振動子アレイ101aの走査面とは異なる面を超音波走査する第2の振動子アレイ101bとを備える。第1の振動子アレイ101aの走査面を含む平面と第2の振動子アレイ101bの走査面を含む平面とは交差する。ここで言う「平面」とは、無限遠に広がる面を指し、一方で「走査面」は振動子アレイ101で走査可能な有限の面を意味する。以下、同様な定義で平面と走査面とを用いる。
例えば、プローブ10は、第1の振動子アレイ101aの走査面に対して第2の振動子アレイ101bの走査面が垂直となるように構成する。図2では、白地に黒の斜線を付した領域が第1の振動子アレイ101aで、黒地に白の斜線を付した領域が第2の振動子アレイ101bである。2つの振動子アレイ101の走査面は垂直な関係となるように構成している。各振動子アレイは、例えば第1の振動子アレイ101aをリニア型に、第2の振動子アレイ101bをコンベックス型で構成する。このほか、振動子アレイの種類の組み合わせは任意に設定でき、コンベックス型とコンベックス型というように同じ種類の組み合わせでもよい。また、第1の振動子アレイ101aの走査面と第2の振動子アレイ101bの走査面との位置関係は、垂直な関係に限らず、例えば、第2の振動子アレイ101bの走査面が、第1の振動子アレイ101aに垂直な面に対して所定の角度傾くようにプローブ10を構成してもよい。
送信回路11は、各振動子を振動させるための電圧である駆動パルスを所定の間隔で送信する。
受信回路12は、被検体で反射した超音波信号を各振動子が受信して電気信号(電圧)に変換し、受信信号を出力する。
処理回路15の画像生成機能151は、受信回路12が出力した受信信号を、超音波信号の送信時の設定に基づいて処理し、超音波画像を生成する。この超音波画像は、例えば、超音波の反射波の強度の違いを輝度の違いで表現したBモード画像である。また、画像生成機能151は、超音波画像を加工してディスプレイ16で表示する表示画像を生成する。
なお、送信回路11と受信回路12と処理回路15の画像生成機能151とは、プローブ10に内蔵させてもよい。
位置情報取得部14は、プローブ10と穿刺針20の位置関係情報を取得する。位置関係情報は、例えばプローブ10と穿刺針20のそれぞれの3次元座標情報や、プローブ10と穿刺針20との距離情報である。
位置情報取得部14は、例えば磁気センサなどの位置センサ141を有する。磁気センサを有する位置情報取得部14は、磁場発生器142と、位置センサ141としての磁気センサと、位置情報算出回路143とを備えている。磁気センサは、プローブ10と穿刺針20のそれぞれの表面あるいは内部に取り付けられ、磁場発生器142が発生する磁場を検出して電気信号を出力する。位置情報算出回路143は、磁気センサが出力した電気信号に基づいて、任意の点を原点とした、磁気センサの3次元座標情報と傾き情報とを算出する。
入力回路18は、押しボタンやダイヤル、タッチパネルなどのインターフェイスからの入力信号を取得し、操作者からの操作入力を受け付ける。入力回路18が受け付けた操作入力は、走査制御機能152に送られ、使用するプローブ10の種類の指定やプローブ10の走査方向、駆動させる振動子アレイ101の選択を行う。
処理回路15の走査制御機能152は、送信回路11が振動子に駆動パルスを送信する。また、走査制御機能152は、複数種類の振動子アレイ101のうちいずれで走査するかを制御する。
処理回路15の判定機能153は、位置情報取得部14が取得したプローブ10と穿刺針20の位置関係情報に基づいて、第1の振動子アレイ101aと第2の振動子アレイ101bとのうち、いずれの振動子アレイ101で走査するかを判定する。走査させる振動子アレイ101が判定されると、判定機能153は、走査させる振動子アレイ101を指定する情報を走査制御機能152に送り、走査制御機能152は、送られてきた情報に基づいて送信回路11を制御する。また、画像生成機能151は、走査中の振動子アレイ101に対応する超音波画像をディスプレイ16に出力する。
第1と第2のいずれの振動子アレイ101で走査するかは、例えば、穿刺針20の先端部から第2の振動子アレイ101bの走査面を含む平面までの距離に基づいて決定する。第2の振動子アレイ101bの走査面の位置情報は、プローブ10に取り付けられた磁気センサの出力に基づいて取得されるプローブ10の3次元座標情報と、プローブ10における第2の振動子アレイ101bの配置位置情報と、第2の振動子アレイ101bの走査方向とを取得すれば算出できる。また、穿刺針20の先端部の位置情報は、穿刺針20に取り付けられた磁気センサの出力に基づいて取得される穿刺針20の3次元座標情報と、事前に登録しておいた穿刺針20の先端部から磁気センサまでの距離とを用いて算出できる。また、穿刺針20の先端部に磁気センサが取り付けられている場合は、その磁気センサの3次元座標情報をそのまま穿刺針20の先端部の3次元座標情報として用いることができる。
また、処理回路15の判定機能153は、第1と第2のいずれの振動子アレイ101で走査するかを判定する頻度の調整や判定処理の一時停止を入力回路18からの入力に基づいて行うことができる。頻度の調整とは、例えば、判定が行われるタイミングの最小時間間隔の設定である。走査させる振動子アレイ101を判定する頻度を調整する機能により、超音波画像が頻繁な判定処理によって過度に切り替わり視認性が低下する、といったことを防止できる。
位置情報取得部14で取得した位置関係情報に基づいて、第2の振動子アレイ101bの走査面を含む平面を3次元方程式で表現すると、数式(1)のようになる。
数式(1)において、a、b、c、dは定数で、x、y、zは変数である。穿刺針20の先端部の3次元座標情報が、位置情報取得部14から(x
0,y
0,z
0)と出力される場合、穿刺針20の先端部から第2の振動子アレイ101bの走査面を含む平面までの距離Lは数式(2)に基づいて求められる。
上記では、操作させる振動子アレイ101を決定するために、穿刺針20の先端部から第2の振動子アレイ101bの走査面を含む平面までの距離を用いたが、この他、穿刺針20の先端部とは異なる穿刺針20上の任意の一点から第2の振動子アレイ101bの走査面を含む平面までの距離を用いてもよい。また、穿刺針20の進行方向を推定して、その進行方向と第2の振動子アレイ101bの走査面を含む平面との交点を求め、この交点から穿刺針20の先端部までの距離を用いてもよい。
ディスプレイ16は、液晶やLED(Light Emitting Diode)などで構成され、画像生成機能151が生成した超音波画像を表示する。また、ディスプレイ16は、超音波画像に加えて、穿刺針20の操作案内を表示することもできる。ディスプレイ16で表示される超音波画像は、動画像でも静止画像でもよい。
記憶回路17は、過去に取得した超音波画像やプローブ10の設定情報を記憶する。記憶回路17は、ハードディスクや半導体メモリ(例えば、ランダムアクセスメモリやソリッドステートドライブ、USBメモリ)などで構成される。記憶回路17は、内蔵ドライブとして構成してもよいし、外付けのリムーバブルメディアとして構成してもよい。なお、記憶回路17は、DVDやCDなどから情報を読み出すことが可能なメディアプレーヤーとして構成してもよい。
以下に、処理回路15がいずれの振動子アレイ101で走査するかを自動で切り替える処理の流れについて、図3のフローチャートを参照して説明する。なお、この流れを説明するにあたり、図4に示す、プローブ10と、穿刺針20と、プローブ10に取り付けられた穿刺ガイド21と、前立腺30との位置関係を参照する。図4では、穿刺針20が挿入される方向から見た図と穿刺針20が挿入される方向と直交する方向から見た図とを並べて示している。また、プローブ10の第1の振動子アレイ101aと第2の振動子アレイ101bのそれぞれの走査面を実線または破線で示した。実線で示される走査面は、走査中の振動子アレイ101の走査面であり、破線で示される走査面は、走査を停止している振動子アレイ101の走査面である。さらに、図5に示す被検体の体軸断面とプローブ10の位置関係を参照する。前立腺30は、穿刺対象物の一例であり、被検体内部の他の部位であってもよい。
まず、いずれの振動子アレイ101で走査するかを自動で切り替える処理を開始する操作入力を入力回路18が受け付け、処理回路15が走査させる振動子アレイ101の自動切り替え処理を開始する。操作者は、図5に示す被検体の体軸方向の断面図のように、プローブ10を被検体の直腸31に挿入し、前立腺30を第2の振動子アレイ101bで走査可能な位置までプローブ10を押し進める。また、プローブ10の長手方向を軸としてプローブ10を回転させ、穿刺針20の推定到達点が前立腺30の適切な位置となるように調整する。穿刺針20の推定到達点は、例えば、穿刺ガイド21の孔の位置を事前に取得しておくことによって求めることができる。穿刺ガイド21は、プローブ10に取り付けて用いる、穿刺針20の挿入方向をガイドするための、穿刺針20の径よりも大きい径の孔を複数有する金属部材である。
ステップS1は、処理回路15の判定機能153を起動させるステップである。処理回路15が記憶回路17から判定機能153に対応する所定のプログラムを呼び出して実行することにより、判定機能153は起動する。
ステップS2は、処理回路15の画像生成機能151が第2の振動子アレイ101bで受信した超音波信号に基づいて順次第2の超音波画像を生成するステップである。第2の超音波画像は順次画像が更新される動画像である。
ステップS3は、ディスプレイ16が第2の超音波画像を表示するステップである。S3のステップにおいて、プローブ10と穿刺針20と前立腺30とは、図4(a)に示す位置関係にある。このとき操作者は、第1の振動子アレイ101aで走査して得られる第1の超音波画像を見て、穿刺針20の進行方向を調整する。例えば、図4(a)の穿刺針20の進行方向から見た図のように、第2の振動子アレイ101bの走査面で前立腺30をとらえ、プローブ10を長手方向を軸にして回転させ、前立腺30の所望の部位に穿刺針20が刺さるようにする。同図において第2の振動子アレイの走査面上に点列を示したが、これは穿刺針20の推定到達点である。画像生成機能151は穿刺ガイド21の各孔に対応した推定到達点を超音波画像に重ねあわせた表示画像を生成することができ、操作者はディスプレイ16に表示される表示画像を見ながら穿刺針20の推定到達点を調整する。S3のステップにおいては、第1の振動子アレイの走査面の領域内に穿刺針20は進入していない状態である。
ステップS4は、位置情報取得部14が位置関係情報を取得するステップである。位置情報取得部14は、例えば、磁気センサが出力する、プローブ10と穿刺針20の3次元座標情報を位置関係情報として出力する。
ステップS5は、処理回路15の判定機能153が、位置情報取得部14が出力する位置関係情報に基づいて、穿刺針20が第1の振動子アレイ101aの走査面に十分近づいたかどうかを判定するステップである。以下に示す処理では、穿刺針20と第2の振動子アレイ101bの走査面を含む平面までの距離を求めることで、間接的に穿刺針20が第1の振動子アレイ101aの走査面に十分近づいたかを判定している。
穿刺針20の先端部から第2の振動子アレイ101bの走査面までの距離を図4(a)の穿刺針20の進行方向と直交する方向から見た図のようにL2とする。また、穿刺針20と第1の振動子アレイ101aの走査面とが十分近づいたかを判定するための閾値としてT1を定める。T1は、例えば図4(b)の穿刺針20の進行方向と直交する方向から見た図のように、第1の振動子アレイ101aの長手方向の把持部102側端点から第2の振動子アレイ101bまでの距離である。このようにT1を設定すると、L2がT1よりも小さくなる時が、穿刺針20の先端部が第1の振動子アレイ101aの走査面に進入する時点となり、判定機能153は穿刺針20が第1の振動子アレイ101aの走査面に十分近づいたと判定できる。T1の定め方は、上記に限定するものではなく、穿刺針20の先端部が第1の振動子アレイ101aの走査面から所定の距離だけ離れている場合の値を適用してもよいし、穿刺針20の先端部が所定の距離以上走査面に進入した場合の値を適用してもよい。
なお、L2がT1と一致した場合は、直前に取得した穿刺針20の3次元座標情報から穿刺針20の進行方向を求め、進行方向が第1の振動子アレイ101aの走査面へ近づく方向であれば、判定機能153は穿刺針20が第1の振動子アレイ101aの走査面に十分近づいたと判定する。また、L2がT1と一致した場合は判定を見送ってもよい。
判定機能153が、穿刺針20が第1の振動子アレイ101aの走査面に十分近づいたと判断した場合は、ステップS6へ進み、そうでない場合は、ステップS4へ戻る。このS5のステップにおける、プローブ10と穿刺針20と前立腺30とは、図4(b)に示す位置関係にあり、第1の振動子アレイ101aの走査面の領域内に穿刺針20が進入している。
ステップS6は、処理回路15の走査制御機能152が第2の振動子アレイ101bから第1の振動子アレイ101aへ走査させる振動子アレイ101を切り替えるステップである。走査制御機能152は、まず送信回路11を制御して、第2の振動子アレイ101bによる走査を停止し、第1の振動子アレイ101aによる走査を開始させる。
ステップS7は、画像生成機能151が第1の振動子アレイ101aで受信した超音波信号に基づいて順次第1の超音波画像を生成するステップである。第1の超音波画像は順次画像が更新されていく動画像である。
ステップS8は、ディスプレイ16が第1の超音波画像を表示するステップである。ディスプレイ16が第1および第2の超音波画像を表示する様子を図6に例示する。図6は、図7(b)に示すように第1の振動子アレイ101aをリニア型とし、図7(a)に示すように、第2の振動子アレイ101bをコンベックス型としたプローブ10で前立腺30を走査する場合に、各振動子アレイ101で走査して得られる超音波画像をディスプレイ16が表示する様子を示す。両向き矢印は、走査させる振動子アレイ101が、第1の振動子アレイ101aと第2の振動子アレイ101bとで互いに切り替わることを意味する。
図6(a)は、走査可能な状態の振動子アレイ101に対応する超音波画像を単独でディスプレイ16が表示した様子を示す。左側は、第2の振動子アレイ101bが走査中の場合で、右側は第1の振動子アレイ101aが走査中の場合である。
図6(b)は、走査させる振動子アレイ101の切り替えに際して、切り替え後に走査を開始した振動子アレイ101に対応する超音波画像と、切り替え後に走査を停止した振動子アレイ101に対応する超音波画像とを並べて表示した様子を示す。切り替え後に走査を開始した振動子アレイ101に対応する超音波画像は、動画像として表示される。一方、切り替え後に走査を停止した振動子アレイ101に対応する超音波画像は、切り替え直前に生成された超音波画像を静止画像表示したものである。
切り替え後に走査を開始した振動子アレイ101に対応する超音波画像は、枠の色や太さで強調表示される。図6(b)に示される、両向き矢印を挟む2つの表示画像に関して、左側は、第2の振動子アレイ101bが走査中の場合で、右側は第1の振動子アレイ101aが走査中の場合である。例えば、走査させる振動子アレイ101が、第2の振動子アレイ101bから第1の振動子アレイ101aへ切り替わった時、第1の超音波画像は太い枠付きで表示される。
図6(c)は、走査させる振動子アレイ101の切り替えに際して、切り替え後に走査を開始した振動子アレイ101に対応する超音波画像に加えて、その超音波画像よりも小さなサイズで、切り替え後に走査を停止した振動子アレイ101に対応する超音波画像を表示する。図6(c)に示される、両向き矢印を挟む2つの表示画像に関して、左側は、第2の振動子アレイ101bが走査中の場合で、右側は第1の振動子アレイ101aが走査中の場合である。切り替え後に走査を停止した振動子アレイ101に対応する超音波画像は、図6(b)と同様に切り替え直前に生成された超音波画像を静止画表示した画像である。
S8のステップでディスプレイ16が超音波画像に基づく表示画像を表示する方法をいくつか示したが、どの表示画像形式を採るかは、操作者が入力回路18を介して指定することができ、また術者に応じたプリセットを記憶回路17に記憶させることもできる。
ステップS9は、ステップS4と同様に位置情報取得部14が位置関係情報を取得するステップである。位置情報取得部14は、例えば、磁気センサが出力する、プローブ10と穿刺針20の3次元座標情報を位置関係情報として出力する。
ステップS10は、判定機能153が、穿刺針20が第2の振動子アレイ101bの走査面に近づいたかどうかを判定するステップである。S10のステップに入る時点では、図4(c)に示すように穿刺針20が穿刺対象物に到達したあと、術者は、穿刺針20の位置を固定したまま、プローブ10を挿入方向とは逆の方向に、図4(e)に示す穿刺針20の先端部が第2の振動子アレイ101bの走査面で捉えられるところまで引き抜く。
穿刺針20が第2の振動子アレイ101bの走査面を含む平面に十分近づいたかを判定するための閾値としてT2を定める。T2は、例えば、第1の振動子アレイ101aの長手方向の第2の振動子アレイ101b側端点と第2の振動子アレイ101bの走査面を含む平面までの距離とする。図4(c)の、穿刺針20の進行方向と直交する方向から見た図にT2を示す。操作者がプローブ10を引き抜いていき、図4(d)に示す、L2=T2となる時点を境界とし、L2<T2となった時に、判定機能153は、穿刺針20が第2の振動子アレイ101bの走査面に十分近づいたと判定する。図4(d)では、第1の振動子アレイ101aの走査面と第2の振動子アレイ101bの走査面とをともに実線で示しているが、これは第1と第2の振動子アレイが同時に走査していることを意味しているのではなく、どちらの振動子アレイ101で走査させてもよいことを意味する。なお、穿刺針20が第2の振動子アレイ101bの走査面に十分近づいたかの判定は、L2=0として、第2の振動子アレイ101bの走査面を含む平面と穿刺針20の先端部が交わるときとしてもよい。さらに、第1の振動子アレイ101aの長手方向の第2の振動子アレイ101b側端点と第2の振動子アレイ101bの走査面を含む平面との間の任意の点から第2の振動子アレイ101bの走査面を含む平面までの距離をT2としてもよい。このようにT2を設定すると、L2がT2よりも小さくなる時が、穿刺針20の先端部が第2の振動子アレイ101bの走査面に十分近づいた、あるいは到達した時点となり、判定機能153は、穿刺針20が第2の振動子アレイ101bの走査面に十分近づいたと判定する。
なお、L2がT2と一致した場合は、直前に取得した穿刺針20の3次元座標情報から穿刺針20の進行方向を求め、進行方向が第2の振動子アレイ101bの走査面へ近づく方向であれば、判定機能153は穿刺針20が第2の振動子アレイ101bの走査面に十分近づいたと判定する。また、L2がT2と一致した場合は判定を見送ってもよい。
判定機能153が、穿刺針20が第2の振動子アレイ101bの走査面に十分近づいたと判断した場合はS11へ進み、そうでない場合はS9へ戻る。
ステップS11は、処理回路15の走査制御機能152が、走査させる振動子アレイ101を第1の振動子アレイ101aから第2の振動子アレイ101bへ切り替えるステップである。走査制御機能152は、まず送信回路11を制御して、第1の振動子アレイ101aによる走査を停止し、第2の振動子アレイ101bによる走査を開始する。
ステップS12は、画像生成機能151が第2の振動子アレイ101bで受信した超音波信号に基づいて順次第1の超音波画像を生成するステップである。第2の超音波画像は順次画像が更新されていく動画像である。
ステップS13は、ディスプレイ16が第2の超音波画像を表示するステップである。S13のステップにおいて超音波画像を表示する方法は、ステップS8で説明した第1の超音波画像を表示する手順と同様である。
S14は、走査させる振動子アレイ101の自動切り替え処理を終了するか否かを判断する。例えば、入力回路18が操作者の入力を受け付けて終了する。穿刺を終えて穿刺針20を引き抜き、再び異なる部位に対して穿刺を行う場合などは、S4に戻って同様なフローを繰り返す。
以上に説明したフローにおけるステップS6とステップS11では、走査制御機能152が送信回路11を制御して、複数種類ある振動子アレイ101のうちいずれか1つを走査させていた。プローブ10が、上記とは異なり複数の振動子アレイ101で同時に走査可能な構成を有する場合でも、上記のフローと同様に超音波画像の生成と表示を行うことができる。例えば、図4(b)に示す、第1の振動子アレイ101aの走査面が観察の対象である場合は、処理回路15の画像生成機能151が、第1の振動子アレイ101aが受信する超音波信号に対してのみ画像化処理を行い、第2の振動子アレイ101bが受信する超音波信号に対しては画像化処理を行わない。これにより、走査可能な振動子アレイ101が1つのプローブ10を用いた上記フローと同様に、観察対象の振動子アレイ101に対応する超音波画像は動画表示させ、もう一方の振動子アレイ101に対応する超音波画像は静止画表示させる、といったことが可能になる。
以上、被検体に挿入される器具を穿刺針20として説明したが、位置情報取得部14で位置が取得でき、被検体の診断や治療に用いられる器具であれば、本実施形態と同様な効果を得られる。また、位置センサ141を磁気センサとして説明したが、位置情報を取得できる超音波センサと傾き情報を取得できるジャイロセンサとを併用することで、磁気センサに置き換えることもできる。さらには、赤外線や電波を用いてプローブ10や穿刺針20の位置情報を求めることができるセンサ、あるいは、プローブ10や穿刺針20の移動量をモーターなどの駆動部の駆動量に基づいて位置情報を求める計測器を位置センサ141として用いることも可能である。
上述した第1の実施形態によれば、位置情報取得部14が出力する位置関係情報に基づいて、判定機能153が穿刺針20と第2の振動子アレイ101bの走査面を含む平面との距離を求め、その距離に応じて第1の振動子アレイ101aと第2の振動子アレイ101bとのうちいずれで走査するかを判定する。これにより、どの振動子アレイ101で走査して得られる画像を表示させるかを術者が穿刺針20の位置に応じて手動で変更する必要がなくなる。術者が一人で穿刺する場合には、穿刺針20やプローブ10から手を離すことなく穿刺作業を行えるので安全である。また、プローブ10や穿刺針20の操作を行う術者の他に、どの振動子アレイ101で走査して得られる画像を表示させるかを変更する操作者を配置していた場合には、その操作者が不要となるので従来の超音波診断装置1よりも少ない人手で穿刺を行うことができるようになる。
また、ディスプレイ16が現在の穿刺針の位置において注目したい方の振動子アレイ101が走査して得た超音波画像を動画像表示し、現在注目する必要のない振動子アレイ101に対応する超音波画像は、非表示にするか、または、静止画像で表示する。これにより、どちらの振動子アレイ101で走査した超音波画像に注目すべきか迷ってしまったり、注目すべきでない超音波画像に気を取られてしまったりする心配がない。
なお、プローブ10に、走査させる振動子アレイ101を切り替えるスイッチなどを設けることも考えられるが、構造の複雑化で把持する部分が大きくなり操作性が低下したり、把持した時に誤作動させてしまったりするおそれがあるので、本実施形態の超音波診断装置1のように、処理回路15の判定機能153がいずれの振動子アレイ101で走査した超音波画像を表示させるかを制御したほうがよい。
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る超音波診断装置1は、画像解析機能141を有する位置情報取得部14を備え、被検体に挿入される器具とプローブ10との位置関係情報を超音波画像に基づいて求め、走査させる振動子アレイ101を切り替える。以下、第1の実施形態にかかる超音波診断装置1と同等な構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
図8は、第2の実施形態にかかる超音波診断装置1の概略図を示す。第1の実施形態と異なる点は、位置情報取得部14が画像解析機能141を有することである。本実施形態では、画像解析機能141、画像生成機能151、走査制御機能152、判定機能153は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路17に記憶されている。位置情報取得部14と処理回路15は、プログラムを記憶回路17から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路15は、図1の処理回路15内に示された各機能を有することとなる。また、図1の位置情報取得部14内に示された画像解析機能141を有することとなる。なお、図1においては単一の処理回路上で、画像生成機能151、走査制御機能152、判定機能153の各機能が実現されるものとして説明しているが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、位置情報取得部14と処理回路15とが単一の処理回路で構成されていても構わない。
位置情報取得部14は、プローブ10と穿刺針20の位置関係情報を取得する。位置関係情報は、例えばプローブ10に対する穿刺針20の相対的な2次元座標情報や、プローブ10と穿刺針20との距離情報である。
位置情報取得部14は、画像解析機能141を有する。画像解析機能141は、被検体に挿入される器具である穿刺針20の像が映し出された超音波画像が入力されると、穿刺針20に対応する画像成分を検出して、超音波画像内における穿刺針20の2次元座標情報を出力する。穿刺針20の画像成分の検出には、例えばパターンマッチングを用いる。パターンマッチングでは、穿刺針の形状のテンプレートを用意し、超音波画像中の、テンプレートに近い形状の像を穿刺針と認識する。穿刺針20の画像成分を検出した後、超音波画像上の任意の点を原点とした穿刺針20の例えば先端部の2次元座標情報が算出される。
また、画像解析機能141は、超音波画像を生成するための超音波信号を受信した振動子アレイ101の走査方向と、振動子アレイ101のプローブ上における配置位置情報とを取得することにより、算出した穿刺針20の先端部から振動子アレイ101の走査面を含む平面までの距離を算出することができる。
以下に、入力回路18が術者(操作者)からの入力を受け付け、走査させる振動子アレイ101の自動切り替え処理が開始され、終了されるまでの流れについて、第1の実施形態とは処理が異なる図3のステップS4、S5、S9、S10を説明する。
ステップS4は、位置情報取得部14が位置関係情報を取得するステップである。位置情報取得部14は、例えば、画像解析機能141が出力する、穿刺針20の第1の超音波画像における2次元座標情報である。ステップS4では、主として走査させるのは第2の振動子アレイ101bであるが、画像解析機能141に入力するために、第2の超音波画像の生成に加えて、第1の超音波画像の生成も行う。例えば、一度に走査可能な振動子アレイ101が1つに限られている場合は、主として走査を行う第2の超音波画像の生成よりも低い頻度で第1の超音波画像を生成させる。例えば、10フレームの超音波画像を生成する場合、9フレーム分の超音波画像の生成は第2の振動子アレイ101bで行い、残る1フレーム分の超音波画像の生成は第1の振動子アレイ101aで行う。
なお、例えば複数種類の振動子アレイ101が同時に超音波信号を受信して複数の超音波画像が生成できる場合は、画像解析機能141が第1の超音波画像と第2の超音波画像から位置関係情報の取得に用いる超音波画像を選択して用いる。
ステップS5は、処理回路15の判定機能153が、穿刺針20が第1の振動子アレイ101aの走査面に十分近づいたかどうかを判定するステップである。例えば、第1の振動子アレイ101aで走査して生成される第1の超音波画像を画像解析機能141が解析して穿刺針20の像が検出された場合、穿刺針20が第1の振動子アレイ101aの走査面に十分近づいたと判定する。このときの第1の超音波画像の例を図9(a)に示す。図9(a)では、第1の超音波画像の縁に近いところに穿刺針20の先端部が映し出されている。
判定機能153が、穿刺針20が第1の振動子アレイ101aの操作面に十分近づいたと判断した場合は、ステップS6へ進み、そうでない場合は、ステップS4へ戻る。
ステップS9は、ステップS4と同様に位置情報取得部14が位置関係情報を取得するステップである。位置関係情報は、例えば、画像解析機能141が出力する穿刺針20の第1の超音波画像における2次元座標情報である。
ステップS10は、判定機能153が、穿刺針20が第2の振動子アレイ101bの走査面に十分近づいたかどうかを判定する。例えば、図9に示すように、超音波画像上に、穿刺針20が第2の振動子アレイ101bの走査面に十分近づいたかを識別するための境界を設ける。図9では、第1の超音波画像の垂直方向にのびる破線で境界線Bを示している。この第1の超音波画像では、左側に第2の振動子アレイ101bが位置するので、境界線Bが第1の超音波画像の左端付近に設けられている。図9(b)のように穿刺針の先端部が境界線Bを越えた場合を、穿刺針20が第2の振動子アレイ101bの走査面に十分近づいたと判定する。判定方法はこれにかぎらず、例えば、穿刺針20の先端部の像が第1の超音波画像の領域内で見えなくなった時を、穿刺針20が第2の振動子アレイ101bの走査面に十分近づいた時と判定してもよい。
なお、穿刺針20の先端部が境界線B上に位置した場合は、直前に取得した穿刺針20の2次元座標情報から穿刺針20の進行方向を求め、進行方向が第2の振動子アレイ101bの走査面へ近づく方向であれば、判定機能153が穿刺針20が第2の振動子アレイ101bの走査面に十分近づいたと判定する。また、穿刺針の先端部が境界線B上に位置した場合は判定を見送ってもよい。
以上、被検体に挿入される器具を穿刺針20として説明したが、位置情報取得部14で位置が取得でき、被検体の診断や治療に用いられる器具であれば、本実施形態と同様な効果を得られる。
上述した第2の実施形態によれば、位置情報取得部14の画像解析機能141が超音波画像から穿刺針20の像を検出して、穿刺針20の2次元座標情報を出力する。判定機能153は、穿刺針20の2次元座標情報に基づいて、第1の振動子アレイ101aと第2の振動子アレイ101bとのうちいずれの振動子アレイ101で走査するかを判定する。これにより、第1の実施形態と同様に、術者が穿刺針20の位置に応じて、走査させる振動子アレイ101を手動で変更する必要がなくなる。また、磁気センサなどの位置センサ141が備えられていない超音波診断装置1であっても、超音波画像の解析で穿刺針と第2の振動子アレイ101bの走査面との位置関係情報が取得できるので、超音波診断装置1に新たな機器を導入する必要がない。
以上説明した少なくとも1つの実施形態の超音波診断装置1によれば、位置情報取得部14が穿刺針20と第2の振動子アレイ101bの走査面との位置関係情報を取得し、位置関係情報に基づいて走査させる振動子アレイ101を切り替えることにより、人手を増やすことなく安全に穿刺することができる。
なお、以上説明した少なくとも1つの実施形態において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、あるいは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路17に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路17にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。