JPWO2017018514A1 - チタン複合材および熱間圧延用チタン材 - Google Patents

チタン複合材および熱間圧延用チタン材 Download PDF

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Abstract

工業用純チタンまたはチタン合金からなる内層5と、内層5の少なくとも一方の表面に形成された内層5とは異なる化学組成を有する表層3と、内層5と表層3との間に形成され、内層5とは異なる化学組成を有する中間層と、を備え、表層3が、その厚さが2μm以上であり、全厚さに占める割合が片面あたり40%以下であり、中間層の厚さが0.5μm以上である、チタン複合材1。表層3の化学組成は、質量%で、Si:0.1〜0.6%、Nb:0.1〜2.0%、Ta:0.3〜1.0%およびAl:0.3〜1.5%から選択される一種以上、Sn:0〜1.5%、Cu:0〜1.5%、Fe:0〜0.5%、残部:チタンおよび不純物である。このチタン複合材は、安価にも関わらず、耐酸化性を有する。

Description

本発明は、チタン複合材および熱間圧延用チタン材に関する。
チタン材は、耐食性、耐酸化性、耐疲労性、耐水素脆化性、中性子遮断性などの特性に優れている。これらの特性は、チタンに様々な合金元素を添加することにより達成することができる。
チタン材料は、その優れた比強度および耐食性から、航空機分野での利用が進んでおり、さらには、自動車および二輪車の排気装置にも多く使用されている。特に、従来のステンレス素材に代わり、車両軽量化の観点から、二輪車を中心としてJIS2種の工業用純チタン材が使われている。さらに、近年では、JIS2種の工業用純チタン材に代わって、より耐熱性が高い耐熱チタン合金が使用されている。また、排気ガスの有害成分除去のため、高温で使用する触媒を搭載したマフラーも使用されている。
排気ガスの温度は700℃を超え、一時的には800℃にまで達することがある。そのため、排気装置に用いられる素材には、800℃前後の温度における強度、耐酸化性等が要求され、さらに600〜700℃におけるクリープ速度の高温耐熱性の指標が重要視されるようになってきている。
その一方で、こうした耐熱チタン合金は高温強度を向上させるため、Al、CuおよびNbといった高温強度および耐酸化性を向上させる元素を添加する必要があり、工業用純チタンに比べ高コストである。
特開2001−234266号公報(特許文献1)には、Al:0.5〜2.3%(本明細書では特に断りがない限り化学成分に関する「%」は「質量%」を意味する)を含む冷間加工性および高温強度に優れたチタン合金が開示されている。
特開2001−89821号公報(特許文献2)には、Fe:1%超5%以下、O(酸素):0.05〜0.75%を含み、さらにSi:0.01・e0.5[Fe]〜5・e―0.5[Fe]を含む耐酸化性および耐食性に優れたチタン合金([Fe]は合金中の含有率(質量%)を示し、eは自然対数の定数を示す)が開示されている。
特開2005−290548号公報(特許文献3)には、Al:0.30〜1.50%、Si:0.10〜1.0%を含有する冷間加工性に優れる耐熱チタン合金板およびその製造方法が開示されている。
特開2009−68026号公報(特許文献4)には、Cu:0.5〜1.8%、Si:0.1〜0.6%、O:0.1%以下を含有し、必要に応じ、Nb:0.1〜1.0%を含有し、残部がTi及び不可避的不純物からなる表面に保護膜を被覆したチタン合金が開示されている。
さらに、特開2013−142183号公報(特許文献5)には、Si:0.1〜0.6%、Fe:0.04〜0.2%、O:0.02〜0.15%を含有し、FeとOの含有量総量が0.1〜0.3%であり、残部Tiおよび不可避不純物元素からなる700℃における高温強度、および800℃における耐酸化性に優れるチタン合金が開示されている。
チタン材は、通常、以下に示す方法により製造される。まず、クロール法によって、原料である酸化チタンを塩素化して四塩化チタンとした後、マグネシウムまたはナトリウムで還元することにより、塊状でスポンジ状の金属チタン(スポンジチタン)を製造する。このスポンジチタンをプレス成形してチタン消耗電極とし、チタン消耗電極を電極として真空アーク溶解してチタンインゴットを製造する。この際必要に応じて合金元素が添加されて、チタン合金インゴットが製造される。この後、チタン合金インゴットを分塊、鍛造、圧延してチタンスラブとし、さらに、チタンスラブを熱間圧延、焼鈍、酸洗、冷間圧延、および真空熱処理してチタン薄板が製造される。
また、チタン薄板の製造方法として、チタンインゴットを分塊、水素化粉砕、脱水素、粉末解砕、および分級してチタン粉末を製造し、チタン粉末を粉末圧延、焼結、および冷間圧延して製造する方法も知られる。
特開2011−42828号公報(特許文献6)には、チタンインゴットではなくスポンジチタンから直接チタン粉末を製造し、得られるチタン粉末からチタン薄板を製造すべく、チタン金属粉、結着剤、可塑剤、溶剤を含む粘性組成物を薄板状に成形した焼結前成形体を焼結して焼結薄板を製造し、焼結薄板を圧密して焼結圧密薄板を製造し、焼結圧密薄板を再焼結するチタン薄板の製造方法において、焼結薄板の破断伸びを0.4%以上、密度比を80%以上とし、焼結圧密板の密度比を90%以上とする方法が開示されている。
特開2014−19945号公報(特許文献7)には、チタン合金スクラップまたはチタン合金インゴットを原料としたチタン合金粉に、鉄粉、クロム粉または銅粉を適量添加して複合粉とし、複合粉を炭素鋼カプセル押出し、得られた丸棒の表面のカプセルを溶解除去した後、さらに溶体化処理あるいは、溶体化処理および時効処理を行うことにより、粉末法により品質の優れたチタン合金を製造する方法が開示されている。
特開2001−131609号公報(特許文献8)には、スポンジチタン粉末を銅製カプセルに充填した後で押出比1.5以上、押出温度700℃以下で温間押出加工を施して成形し、外側の銅を除く外周加工を施し、成形体の粒界の全長の内20%以上が金属接触しているチタン成形体を製造する方法が開示されている。
熱間圧延素材を熱間圧延するに際し、熱間圧延素材が純チタンまたはチタン合金のように熱間での延性不足で熱間変形抵抗値が高い、いわゆる難加工材である場合、これらを薄板に圧延する技術としてパック圧延方法が知られている。パック圧延方法とは、加工性の悪いチタン合金などのコア材を加工性の良い安価な炭素鋼などのカバー材で被覆し、熱間圧延する方法である。
具体的には、例えば、コア材の表面に剥離剤を塗布し、少なくともその上下2面をカバー材で被覆するか、または、上下面の他に四周面をスペーサー材により覆い、周りを溶接して組み立て、熱間圧延する。パック圧延では、被圧延材であるコア材をカバー材で覆って熱間圧延する。そのため、コア材表面は冷えた媒体(大気またはロール)に直接触れることがなく、コア材の温度低下を抑制できるため、加工性の悪いコア材でも薄板の製造が可能になる。
特開昭63−207401号公報(特許文献9)には、密閉被覆箱の組み立て方法が開示され、特開平09−136102号公報(特許文献10)には、10−3torrオーダー以上の真空度にしてカバー材を密封して密閉被覆箱を製造する方法が開示され、さらに、特開平11−057810号公報(特許文献11)には、炭素鋼(カバー材)で覆って10−2torrオーダー以下の真空下で高エネルギー密度溶接によって密封し、密閉被覆箱を製造する方法が開示されている。
一方、耐食性の高い素材を安価に製造する方法として、チタン材を母材となる素材表面に接合する方法が知られている。
特開平08−141754号公報(特許文献12)には、母材として鋼材を用いるとともに合わせ材としてチタンまたはチタン合金を用い、母材と合わせ材の接合面を真空排気した後に溶接して組み立てた圧延用組立スラブを、熱間圧延で接合するチタンクラッド鋼板の製造方法が開示されている。
特開平11−170076号公報(特許文献13)には、0.03質量%以上の炭素を含有する母材鋼材の表面上に、純ニッケル、純鉄および炭素含有量が0.01質量%以下の低炭素鋼のうちのいずれかからなる厚さ20μm以上のインサート材を介在させてチタン箔材を積層配置した後、その積層方向のいずれか一方側からレーザビームを照射し、チタン箔材の少なくとも縁部近傍を全周にわたって母材鋼材と溶融接合させることによりチタン被覆鋼材を製造する方法が開示されている。
特開2015−045040号公報(特許文献14)では、鋳塊状に成形された多孔質チタン原料(スポンジチタン)の表面を、真空下で電子ビームを用いて溶解して表層部を稠密なチタンとしたチタン鋳塊を製造し、これを熱間圧延および冷間圧延することにより、多孔質チタン原料が鋳塊状に成形された多孔質部と、稠密なチタンで構成されて多孔質部の全表面を被覆する稠密被覆部とを備える稠密なチタン素材(チタン鋳塊)を非常に少ないエネルギーで製造する方法が例示されている。
特開昭62−270277号公報(特許文献15)には、溶射により、自動車用エンジン部材の表面効果処理をすることが記載されている。
特開2001−234266号公報 特開2001−89821号公報 特開2005−290548号公報 特開2009−68026号公報 特開2013−142183号公報 特開2011−42828号公報 特開2014−19945号公報 特開2001−131609号公報 特開昭63−207401号公報 特開平09−136102号公報 特開平11−057810号公報 特開平08−141754号公報 特開平11−170076号公報 特開2015−045040号公報 特開昭62−270277号公報
特許文献1により開示されたチタン合金は、Alを添加しているため、成形加工性、特に肉厚が減じる方向で加工が起こる張り出し成形性に悪影響を与える。
特許文献2により開示されたチタン合金では、FeとO合計含有量が多いため、室温における強度が800N/mmを超えて強すぎ、伸びも20%以下と成形性に乏しい。
特許文献3により開示されたチタン合金では、上記と同様にAlが添加されているため冷間加工性、特に肉厚が減じる方向で加工が起こる張り出し成形性に悪影響を及ぼすおそれがある。
特許文献4により開示されたチタン合金は、十分な加工性および耐酸化特性を有しているものの、高価なNbを多量に含有しているため、合金コストが高くなってしまう。
さらに、特許文献5により開示されたチタン合金も十分な高温酸化特性を有しているものの、板全面が合金化しているため、合金コストが高くなってしまう。
従来、熱間加工を経てチタン材を製造するに際しては、スポンジチタンをプレス成形してチタン消耗電極とし、チタン消耗電極を電極として真空アーク溶解してチタンインゴットを製造し、さらにチタンインゴットを分塊、鍛造、圧延してチタンスラブとし、チタンスラブを熱間圧延、焼鈍、酸洗、冷間圧延することによって製造されていた。
この場合、チタンを溶解してチタンインゴットを製造する工程が必ず加えられていた。チタン粉末を粉末圧延、焼結、および冷間圧延して製造する方法も知られているが、チタンインゴットからチタン粉末を製造する方法では、やはりチタンを溶解する工程が加えられていた。
チタン粉末からチタン材を製造する方法においては、たとえ溶解工程を経ないとしても、高価なチタン粉末を原料として用いるので、得られたチタン材は非常に高価になる。特許文献9〜特許文献10に開示された方法でも同様である。
パック圧延においては、カバー材で被覆されるコア材はあくまでスラブまたはインゴットであって、溶解工程を経ているか、高価なチタン粉末を原料としており、製造コストを低減することはできない。
特許文献14では、非常に少ないエネルギーで稠密なチタン素材を製造することができるものの、鋳塊状に成形されたスポンジチタンの表面を溶解して稠密なチタン表層部および内部の成分は同種の純チタンまたはチタン合金と規定されており、例えば、表層部のみにチタン合金層を均一かつ広範囲に亘って形成することにより製造コストの低下を図ることはできない。
一方、安価な耐食素材を製造できる、母材の表面にチタンまたはチタン合金を接合させた素材では、その多くが母材として鋼を選択している。そのため、表面のチタン層が失われると耐食性は損なわれてしまう。仮に、母材にもチタン材を採用したとしても、通常の製造工程を経て製造されるチタン材を用いる限り、抜本的なコスト改善は期待できない。そこで、本発明者らは、工業用純チタンまたはチタン合金からなるスラブの表層に、特定の合金元素を含有する合金層を設け、安価で特定性能に優れたチタン材を得ることを考えた。
特許文献15のように、溶射は、金属、セラミックスなどを溶融し、チタン材表面に噴きつけて皮膜を形成させる方法である。この方法で皮膜を形成させた場合、皮膜中の気孔の形成を避けることができない。通常、溶射時には、皮膜の酸化を避けるため、不活性ガスでシールドしながら溶射が行われる。これら不活性ガスは、皮膜の気孔内に巻き込まれる。このような不活性ガスを内包する気孔は、熱間加工などで圧着しない。また、チタンの製造においては、一般的に真空熱処理が実施されるが、この処理時に、気孔内の不活性ガスが膨張して、皮膜が剥がれるおそれがある。本発明者らの経験上、溶射により生じる気孔の存在率(空隙率)は、数vol.%以上となり、溶射条件によっては10vol.%を超えることもある。このように、皮膜内の空隙率が高いチタン材は、製造工程において剥離する危険性があり、また、加工時の割れなどの欠損が生じるおそれがある。
皮膜の形成方法としては、コールドスプレー法がある。この方法により表面に皮膜を形成する場合も、不活性の高圧ガスが使用される。この方法では、その条件によっては空隙率を1vol.%未満にすることも可能であるものの、気孔の発生を完全に防止することは極めて難しい。そして、溶射の場合と同様に、気孔は不活性ガスを内包しているため、その後の加工によっても消滅しない。また、真空中で熱処理を施した場合、気孔内の不活性ガスが膨張して、皮膜が割れるおそれがある。
熱延時の表面疵を抑制するために、電子ビームを用いてスラブの表層を溶融し、再凝固させる処理として、溶融再凝固処理がある。通常、溶融再凝固した表層は、熱延後の酸洗工程で除去される。このため、従来の溶融再凝固処理では、表層部の合金成分の偏析について全く考慮されていない。
そこで、本発明者らは、工業用純チタンまたはチタン合金からなるスラブの表面に、特定の合金元素を含有するチタン板を貼り付けたものを熱間圧延用素材とすることにより、安価で特定性能に優れたチタン材を得ることを考えた。
本発明は、耐酸化性を向上させるために添加する合金元素の含有量(目標特性を発現する特定の合金元素の使用量)を低減し、かつ、チタン材の製造コストを抑制することにより、安価に耐酸化性を有するチタン複合材および熱間圧延用チタン材を得ることを目的としている。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、下記のチタン複合材および熱間圧延用チタン材を要旨とする。
(1)工業用純チタンまたはチタン合金からなる内層と、
前記内層の少なくとも一方の圧延面に形成された前記内層とは異なる化学組成を有する表層と、
前記内層と前記表層との間に形成され、前記内層とは異なる化学組成を有する中間層と、
を備えるチタン複合材であって、
前記表層が、その厚さが2μm以上であり、全厚さに占める割合が片面あたり40%以下であり、
前記表層部の化学組成が、質量%で、
Si:0.1〜0.6%、
Nb:0.1〜2.0%、
Ta:0.3〜1.0%および
Al:0.3〜1.5%から選択される一種以上、
Sn:0〜1.5%、
Cu:0〜1.5%、
Fe:0〜0.5%、
残部:チタンおよび不純物であり、
前記中間層の厚さが0.5μm以上である、
チタン複合材。
(2)前記内層の圧延面以外の面に、他の表層が形成されており、
前記他の表層が、前記表層と同一の化学組成を備える、
上記(1)のチタン複合材。
(3)工業用純チタンまたはチタン合金からなる母材と、
前記母材の少なくとも一方の圧延面に接合された表層材と、
前記母材と前記表層材の周囲を接合する溶接部とを備える熱間圧延用チタン材であって、
前記表層材が、前記母材とは異なる化学組成を有し、かつ、質量%で、
Si:0.1〜0.6%、
Nb:0.1〜2.0%、
Ta:0.3〜1.0%および
Al:0.3〜1.5%から選択される一種以上、
Sn:0〜1.5%、
Cu:0〜1.5%、
Fe:0〜0.5%、
残部:チタンおよび不純物であり、
前記溶接部が、前記母材と前記表層材の界面を外気から遮断する、
熱間圧延用チタン材。
(4)前記母材の圧延面以外の面に、他の表層材が接合されており、
前記他の表層材が、前記表層材と同一の化学組成を備える、
上記(3)の熱間圧延用チタン材。
(5)前記母材が、直接鋳造スラブからなる、
上記(3)または(4)の熱間圧延用チタン材。
(6)前記直接鋳造スラブが、表面の少なくとも一部に溶融再凝固層を形成したものである、
上記(5)の熱間圧延用チタン材。
(7)前記溶融再凝固層の化学組成が、前記直接鋳造スラブの板厚中心部の化学組成とは異なる、
上記(6)熱間圧延用チタン材。
本発明に係るチタン複合材は、工業用純チタンまたはチタン合金からなる内層と、内層とは異なる化学組成を有する表層を備えるものであるから、全体が同一のチタン合金からなるチタン材と比較して、同等の耐酸化性を有するが、安価に製造することができる。
図1は、本発明に係るチタン複合材の構成の一例を示す説明図である。 図2は、本発明に係るチタン複合材の構成の一例を示す説明図である。 図3は、チタン矩形鋳片とチタン板を真空中で溶接することにより、貼り合わせることを模式的に示す説明図である。 図4は、チタン矩形鋳片の表面だけでなく側面にもチタン板を溶接することにより、貼り合わせることを模式的に示す説明図である。 図5は溶融再凝固の方法を示す説明図である。 図6は溶融再凝固の方法を示す説明図である。 図7は溶融再凝固の方法を示す説明図である。
本発明者らは、上記課題を解決するために、最終製品のチタン板の表層のみを合金化することにより、耐酸化性を発現する特定の合金元素の使用量を低減し、かつ、チタン材の製造コストを抑制するべく、鋭意検討を行った結果、工業用純チタンまたはチタン合金からなる母材と母材とは異なる化学組成を有する表層材とを、これらの界面が外気から遮断されるように母材および表層材の周囲を溶接した熱間圧延用チタン材を見出した。この熱間圧延用チタン材を熱間加工して得たチタン複合材は、安価に優れた耐酸化性を有するチタン材となる。
本発明は上記の知見に基づいてなされたものである。以下、本発明に係るチタン複合材およびその熱間圧延用のチタン材を、図面を参照しながら説明する。なお、以降の説明では、各元素の含有量に関する「%」は特にことわりがない限り「質量%」を意味する。
1.チタン複合材
1−1.全体構成
図1,2に示すように、チタン複合材1,2は、工業用純チタンまたはチタン合金からなる内層5と、内層5の少なくとも一方の圧延面に形成された内層5とは異なる化学組成を有する表層3,4と、内層5と表層3,4との間に形成され、内層5とは異なる化学組成を有する中間層(図示省略)とを備える。なお、図1,2に示す例では、内層5の一方または両方の圧延面に表層を形成した例を示しているが、内層5の圧延面以外の面(図1,2に示す例では側面)に他の表層(図示省略)を設けてもよい。以下、表層、内層、中間層を順次説明する。
表層の厚さが薄すぎると、所望の特性が十分に得られない。一方、厚すぎると、チタン複合材全体に占めるチタン合金の割合が増すため、コストメリットが小さくなる。そのため、その厚さは2μm以上とし、全厚さに占める割合は片面あたり40%以下とする。
1−2.表層
(厚さ)
表層のうち外部環境に接する表層の厚さが薄過ぎると、耐酸化性が十分に得られない。表層の厚さは製造に用いる素材の厚さ、またはその後の加工率によって変化するが、2μm以上あれば十分効果を発揮する。表層の厚さは、5μm以上であることが望ましく、10μm以上であることがより望ましい。
一方、表層が厚い場合には耐酸化性には問題はないが、チタン複合材全体に占めるチタン合金の割合が増すため、コストメリットが小さくなる。このため、チタン複合材の全厚さに対する表層の厚さの割合は、片面あたり40%以下とし、30%以下であることがより望ましい。
(化学成分)
本発明に係るチタン複合材1では、表層の少なくとも一方(少なくとも外部環境に接する表層)の耐酸化性を高めるために、以下に掲げる各種合金元素を含有させてもよい。
Si:0.1〜0.6%
Siは、600〜800℃における高温での耐酸化性を向上させる作用を有する。Si含有量が0.1%未満であると、耐酸化性の向上代が少ない。一方、Si含有量が0.6%を超えると、耐酸化性への影響が飽和するとともに、室温のみならず高温での加工性が著しく低下する。よって、Siを含有させる場合にはその含有量を0.1〜0.6%とする。Si含有量は0.15%以上であるのが好ましく、0.20%以上であるのがより好ましい。また、0.55%以下であるのが好ましく、0.50%以下であるのがより好ましい。
Nb:0.1〜2.0%
Nbも、高温での耐酸化性を向上させる作用を有する。耐酸化性を向上させるために、Nb含有量は0.1%以上とする。一方、Nb含有量が2.0%を超えて含有させても効果が飽和するうえ、Nbは高価な添加元素であるため、合金コストの増加に繋がる。よって、Nbを含有させる場合にはその含有量は0.1〜2.0%とする。Nb含有量は0.3%以上であるのが好ましく、0.5%以上であるのがより好ましい。また、1.5%以下であるのが好ましく、1.0%以下であるのがより好ましい。
Ta:0.3〜1.0%
Taも、高温での耐酸化性を向上させる作用を有する。耐酸化性を向上させるために、Ta含有量は0.3%以上とする。一方、Ta含有量が1.0%を超えて含有させても、Taは高価な添加元素であるため、合金コストの増加に繋がるだけでなく、熱処理温度によってはβ相の生成が懸念される。よって、Taを含有させる場合にはその含有量は0.3〜1.0%とする。Ta含有量は0.4%以上であるのが好ましく、0.5%以上であるのがより好ましい。また、0.9%以下であるのが好ましく、0.8%以下であるのがより好ましい。
Al:0.3〜1.5%
Alも高温での耐酸化性を向上させる元素である。その一方で、Alは多量に含有すると室温での延性を著しく低下させる。Al含有量が0.3%以上であれば十分に耐酸化特性を発現する。また、Al含有量が1.5%以下であれば、冷間での加工を十分に担保できる。よって、Alを含有させる場合にはその含有量を0.3〜1.5%とする。Al含有量は0.4%以上であるのが好ましく、0.5%以上であるのがより好ましい。また、1.2%以下であるのが好ましい。
なお、Si、Nb、TaおよびAlは、それぞれ単独でも含有すれば耐酸化性は向上するが、複合して含有することにより、耐高温酸化性をさらに向上させることができる。
上記の元素に加え、Sn、CuおよびFeから選択される1種以上を含有させてもよい。
Sn:0〜1.5%
Snは、α相安定化元素であり、かつ、Cuと同様に、高温強度を高める元素である。しかしながら、Sn含有量が1.5%を超えると、双晶変形を抑止し、室温での加工性を低下させる。そのため、Snを含有させる場合にはその含有量は1.5%以下とする。Sn含有量は1.3%以下であるの好ましく、1.2%以下であるのがより好まし)い。上記の効果を得たい場合には、Sn含有量は0.2%以上であるのが好ましく、0.5%以上であるのがより好ましい。
Cu:0〜1.5%
Cuは、高温強度を高める元素である。また、α相に一定程度固溶するため、高温で使用した際にもβ相を生成しない。しかしながら、Cu含有量が1.5%を超えると、温度によってはβ相を生成してしまう。そのため、Cuを含有させる場合にはその含有量は1.5%以下とする。Cu含有量は1.4%以下であるのが好ましく、1.2%以下であるのがより好ましい。上記の効果を得たい場合には、Cn含有量は0.2%以上であるのが好ましく、0.4%以上であるのがより好ましい。
Fe:0〜0.5%
Feは、β相安定化元素であるが、少量であればβ相の生成が少なく、耐酸化性に大きな影響を与えない。しかしながら、Fe含有量が0.5%を超えるとβ相の生成量が多くなり、耐酸化性を劣化させる。そのため、Feを含有させる場合にはその含有量は0.5%以下とする。Fe含有量は0.4%以下であるのが好ましく、0.3%以下であるのがより好ましい。
Sn、CuおよびFeの合計含有量が2.5%を超えると、室温での加工性を低下させ、温度によってはβ相が生成するようになる。このため、Sn、CuおよびFeから選択される1種以上を含有させる場合には、その合計含有量を2.5%以下とするのが好ましい。
上記以外の残部は、不純物である。不純物としては、目標特性を阻害しない範囲で含有することができ、その他の不純物は主にスクラップから混入する不純物元素としてCr、V、Cr、MnおよびMo等があり、一般的な不純物元素であるC、N、OおよびHと併せて、総量で5%以下であれば許容される。
1−3.内層
内層5には、工業用純チタンまたはチタン合金からなる。例えば、内層5に工業用純チタンを用いると、全体が同一のチタン合金からなるチタン材と比べて、室温での加工性に優れる。
なお、ここでいう工業用純チタンは、JIS規格の1種〜4種、およびそれに対応するASTM規格のGrade1〜4、DIN規格の3・7025,3・7035、3・7055で規定される工業用純チタンを含むものとする。すなわち、本発明で対象とする工業用純チタンは、例えば、C:0.1%以下、H:0.015%以下、O:0.4%以下、N:0.07%以下、Fe:0.5%以下、残部Tiからなるものである。
また、特定の性能に加え、強度も要求される用途に供される場合には、内層5にチタン合金を用いてもよい。表層のB含有量を高めるとともに内層5をチタン合金により構成することにより、合金コストを大幅に削減できるとともに、高強度を得ることができる。
内層5をなすチタン合金には、必要とする用途に応じて、α型チタン合金、α+β型チタン合金、β型チタン合金のいずれも用いることが可能である。
ここで、α型チタン合金としては、例えば高耐食性合金(ASTM Grade 7、11、16、26、13、30、33あるいはこれらに対応するJIS種や更に種々の元素を少量含有させたチタン材)、Ti−0.5Cu、Ti−1.0Cu、Ti−1.0Cu−0.5Nb、Ti−1.0Cu−1.0Sn−0.3Si−0.25Nb、Ti−0.5Al−0.45Si、Ti−0.9Al−0.35Si、Ti−3Al−2.5V、Ti−5Al−2.5Sn、Ti−6Al−2Sn−4Zr−2Mo、Ti−6Al−2.75Sn−4Zr−0.4Mo−0.45Siなどを用いることができる。
α+β型チタン合金としては、例えば、Ti−6Al−4V、Ti−6Al−6V−2Sn、Ti−6Al−7V、Ti−3Al−5V、Ti−5Al−2Sn−2Zr−4Mo−4Cr、Ti−6Al−2Sn−4Zr−6Mo、Ti−1Fe−0.35O、Ti−1.5Fe−0.5O、Ti−5Al−1Fe、Ti−5Al−1Fe−0.3Si、Ti−5Al−2Fe、Ti−5Al−2Fe−0.3Si、Ti−5Al−2Fe−3Mo、Ti−4.5Al−2Fe−2V−3Moなどを用いることができる。
さらに、β型チタン合金としては、例えば、Ti−11.5Mo−6Zr−4.5Sn,Ti−8V−3Al−6Cr−4Mo−4Zr,Ti−10V−2Fe−3Mo,Ti−13V−11Cr−3Al,Ti−15V−3Al−3Cr−3Sn,Ti−6.8Mo−4.5Fe−1.5Al、Ti−20V−4Al−1Sn、Ti−22V−4Alな どを用いることができる。
ただし、内層5の0.2%耐力が1000MPaを超えると、加工性が悪化し、例えば、曲げ加工時に割れが生じる恐れがある。そのため、内層5に用いるチタンおよびチタン合金は、0.2%耐力が1000MPa以下であることが望ましい。
1−4.中間層
本発明のチタン複合材は、前記内層と前記表層との間に中間層を備えている。すなわち、後述する熱間圧延用チタン材は、母材に表層材を貼り付け周囲を溶接したものであるが、その後の熱延加熱時、および、冷延後の熱処理工程において、母材と表層材との界面で拡散が生じ、最終的にチタン複合材に仕上げた時には、上記母材由来の内層と、上記表層材由来の表層との間には中間層が形成される。この中間層は、母材の化学組成とは異なる化学組成を有している。この中間層が、上記内層と上記表層とを金属結合させ、強固に接合する。また、中間層では連続した元素勾配を生じるため、上記内層と上記表層との強度差を和らげることができ、加工時の割れを抑制することができる。
なお、中間層の厚さは、EPMAまたはGDSを用いて測定することができる。GDSを用いればより詳細な測定が可能である。GDSの場合は表層をある程度、研磨で除去した後、表面から深さ方向にGDS分析を行うことで中間層の厚みを測定することが可能である。中間層とは、母材からの増加含有量(母材には含まれない元素の場合は、その含有量、母材にも含まれる元素の場合には、母材からの含有量の増加分)をCMIDとし、表層部における増加含有量の平均をCAVEとするとき、0<CMID≦0.8×CAVEの領域を意味する。
この中間層の厚さは、0.5μm以上とする。一方、中間層の厚みが大きくなり過ぎると、その分だけ表層の合金層が薄くなってしまい効果を発現しない場合がある。よって、その上限は15μmとするのがよい。
2.熱間圧延用チタン材
本発明の熱間圧延用チタン材は、熱間圧延に供される素材(スラブ、ブルーム、ビレットなどの鋳片)であり、熱間圧延後、必要に応じて、冷間加工、熱処理などを施して、チタン複合材に加工される。以下、図面を用いて、本発明本発明の熱間圧延用チタン材を説明する。また、以下の説明において、各元素の含有量に関する「%」は「質量%」を意味する。
2−1.全体構成
図3は、母材(チタン矩形鋳片、スラブ)6と表層材(チタン板)7を真空中で溶接することにより貼り合わせることを模式的に示す説明図であり、図4は、母材(チタン矩形鋳片、スラブ)6の表面(圧延面)だけでなく側面(圧延面以外の面)にも表層材(チタン板)7,8を溶接することにより貼り合わせることを模式的に示す説明図である。
本発明では、図3,4に示すように、母材であるスラブ6の表面に耐酸化性を発現する合金元素を含有したチタン板7,8を貼り合わせた後、熱延クラッド法により接合させることによりチタン複合材1,2の表層を合金化する。
図1に示すチタン複合材1を製造する場合には、図3に示すようにスラブ6の片面にのみチタン板7を真空中で貼り合わせればよく、スラブ6のもう片面にはチタン板7を貼り付けずに熱間圧延してもよい。
図4に示すように、スラブ6の片面とともにもう片面にもチタン板7を貼り合わせてもよい。これにより、上述したように熱間圧延工程での熱延疵の発生を抑制できる。
さらに、図2に示すチタン複合材2を製造する場合には、図4に示すようにスラブ6の両圧延面に合金元素を含有する板を貼り合わせればよい。
さらに、図4に示すように、熱間圧延時のエッジ側となるスラブ6の側面についても、圧延面と同様に同一規格のチタン板8を真空中で貼り合わせて溶接してもよい。
すなわち、熱間圧延においては、通常、スラブ6に圧下が加えられることによって、スラブ6の側面の少なくとも一部が熱延板の表面側に回り込む。そのため、スラブ6の側面の表層の組織が粗大であったり、多数の欠陥が存在していたりすると、熱延板の幅方向の両端近くの表面に表面疵が発生する可能性がある。このため、スラブ6の側面にもチタン板8を真空中で貼り合わせて溶接することによって、熱延板の幅方向の両端近くの表面における表面疵の発生を有効に防止できる。
なお、熱間圧延時にスラブ6の側面が回り込む量は、製造方法により異なるが、通常は20〜30mm程度であるため、スラブ6の側面全面にチタン板8を貼り付ける必要はなく、製造方法に則した回り込み量に相当する部分にのみチタン板8を貼り付ければよい。
2−2.表層材
チタン複合材1,2を製造する際には、熱間圧延により形成した酸化層を除去するため、熱間圧延後にショット−酸洗の工程を経て製造される。しかしながら、この工程の際に熱延クラッドにより形成した表層が除去されてしまうと、耐酸化性を発現させることができない。
また、チタン複合材1,2の表層の厚みが薄くなり過ぎると、狙いとする耐酸化性を発現しなくなってしまう。一方で、表層の厚みが厚過ぎると、その分だけ製造コストが増加する。チタン複合材1,2が使用目的に合わせた表層の厚みを有すればよいことから、素材として使用するチタン板7,8の厚さは、特に限定する必要はないが、スラブ6の厚みの5〜40%の範囲にあることが好ましい。
表層材(チタン板)としては、前記のチタン複合材の表層の項で説明した所定の化学組成を有するチタン板を用いる。特に、チタン板の化学組成は、熱間圧延での板破断を抑制するため、上記の母材と同様の成分を基本とし、これに所定の元素が含有されている成分に調整することが望ましい
2−3.母材(スラブ)
母材としては、前記のチタン複合材の内層の項で説明した工業用純チタンまたはチタン合金を用いる。特に、母材として直接鋳造スラブを用いるのがよい。直接鋳造スラブは、表面の少なくとも一部に溶融再凝固層を形成したものであってもよい。また、直接鋳造スラブの表面に溶融再凝固処理を実施する際に所定の元素を添加して、直接鋳造スラブの板厚中心部とは異なる化学組成を有する溶融再凝固層を形成したものであってもよい。
2−4.溶接部
スラブ6の圧延面に当たる表面に、合金元素を含有するチタン板7を貼り合わせた後、真空容器内で、少なくとも周囲を溶接部9により溶接することによって、スラブ6とチタン板7,8の間を真空で密閉し、外気と遮断し、圧延することによりスラブ6とチタン板7,8とを貼り合わせる。スラブ6にチタン板7,8を貼り合わせた後に接合する溶接部は、スラブ6とチタン板7,8の界面を大気から遮断するように、例えば、図3,4に示すように全周を溶接する。
チタンは活性な金属であるため、大気中に放置すると表面に強固な不動態皮膜を形成する。この表面部の酸化濃化層を除去することは不可能である。しかし、ステンレス等とは異なり、チタンには酸素が固溶し易いため、真空中で密閉されて外部からの酸素の供給が無い状態で加熱されると、表面の酸素は内部に拡散し固溶するため、表面に形成した不動態皮膜は消滅する。そのため、スラブ6とその表面のチタン板7,8とは、その間に介在物なども発生せずに、熱延クラッド法により完全に密着することができる。
さらに、スラブ6として鋳造ままのスラブを用いると、凝固時に生成した粗大な結晶粒に起因し、その後の熱間圧延工程で表面疵が発生してしまう。これに対し、本発明のようにスラブ6の圧延面にチタン板7,8を貼り合わせると、貼り合わせたチタン板7が微細な組織を有するために熱間圧延工程での表面疵も抑制できる。
3.熱間圧延用チタン材の製造方法
3−1.母材の製造方法
熱間圧延用チタン材の母材は、通常、インゴットをブレークダウンによりスラブやビレット形状にした後、切削精整して製造される。また、近年ではインゴット製造時に直接熱延可能な矩形スラブを製造し、熱延に供されることもある。ブレークダウンにより製造された場合、ブレークダウンにより表面が比較的平坦になっているため、合金元素を含有する素材を比較的均一に散布し易く、合金相の元素分布を均一にしやすい。
一方、鋳造時に熱延用素材の形状に直接製造された鋳塊(直接鋳造スラブ)を母材として用いる場合、切削精整工程を省略できるため、より安価に製造することができる。また、鋳塊を製造後に、表面を切削精整してから用いれば、ブレークダウンを経て製造した場合同様の効果が期待できる。本発明においては、表層に安定的に合金層が形成すればよく、状況に合わせて適切な素材を選べばよい。
例えば、スラブを組み立て、周囲を溶接した後、700〜850℃に加熱し10〜30%の接合圧延を行い、その後β域温度で3〜10時間加熱し母材成分を表層部に拡散させた後に、熱間圧延を行うことが好ましい。β域温度で熱間圧延を行うことによって、変形抵抗が低くなり圧延し易くなるからである。
母材として用いる直接鋳造スラブは、表面の少なくとも一部に溶融再凝固層を形成したものであってもよい。また、直接鋳造スラブの表面に溶融再凝固処理を実施する際に所定の元素を添加して、直接鋳造スラブの板厚中心部とは異なる化学組成を有する溶融再凝固層を形成したものであってもよい。以下、溶融再凝固処理について詳しく説明する。
図5〜7は、いずれも溶融再凝固の方法を示す説明図である。熱間圧延用チタン材の母材表面を溶融再凝固させる方法としては、レーザー加熱、プラズマ加熱、誘導加熱、電子ビーム加熱などがあり、いずれかの方法で行えばよい。特に、特に電子ビーム加熱の場合、高真空中で行うため、溶融再凝固処理の際に、この層にボイド等を形成しても、真空であるため、後の圧延で圧着し無害化できる。
さらに、エネルギー効率が高いことから大面積を処理しても深く溶融させることができるため、特にチタン複合材の製造に適している。真空中で溶融する場合の真空度は、3×10−3Torr以下のより高い真空度であることが望ましい。また、熱間圧延用チタン材の表層を溶融再凝固する回数については、特に制限はない。ただし、回数が多くなるほど、処理時間が長くなりコスト増につながるため、1回ないし2回であることが望ましい。
表層の溶融再凝固法は、矩形のスラブの場合では図5に示しているように実施する。すなわち、矩形スラブ10の外表面のうち、少なくとも熱間圧延工程での圧延面(熱延ロールに接する面)となる幅広な2面10A,10Bについて、電子ビームを照射して、その面における表面層のみを溶融させる。ここでは先ずその2面10A,10Bのうちの一方の面10Aについて実施するものとする。
ここで、図5に示しているように、矩形鋳片10の面10Aに対する一基の電子ビーム照射ガン12による電子ビームの照射領域14の面積は、照射すべき面10Aの全面積と比較して格段に小さいのが通常である、そこで、実際には、電子ビーム照射ガン12を連続的に移動させながら、または、矩形鋳片10を連続的に移動させながら、電子ビーム照射を行なうのが通常である。この照射領域は、電子ビームの焦点を調整することによって、あるいは電磁レンズを使用して小ビームを高周波数で振動(オシレーション Oscillation)させてビーム束を形成させることによって、その形状や面積を調整することができる。
そして、図5中の矢印Aで示しているように、電子ビーム照射ガン12を連続的に移動させるものとして、以下の説明を進める。なお電子ビーム照射ガンの移動方向は特に限定されないが、一般には矩形鋳片10の長さ方向(通常は鋳造方向D)または幅方向(通常は鋳造方向Dと垂直な方向)に沿って連続的に移動させ、前記照射領域14の幅W(円形ビームまたはビーム束の場合は、直径W)で連続的に帯状に照射する。さらにその隣の未照射の帯状領域について逆方向(もしくは同方向)に照射ガン12を連続的に移動させながら帯状に電子ビーム照射を行なう。また場合によっては複数の照射ガンを用いて、同時に複数の領域について同時に電子ビーム照射を行なっても良い。図5では、矩形鋳片10の長さ方向(通常は鋳造方向D)に沿って矩形ビームを連続的に移動させる場合を示している。
このような表層加熱処理工程によって矩形チタン鋳片10の表面(面10A)に電子ビームを照射して、その表面を溶融するように加熱すれば、図6の中央左寄りに示すように、矩形チタン鋳片10の面10Aの表面層が、入熱量に応じた深さだけ最大溶融される。しかしながら、電子ビームの照射方向に対して垂直方向からの深さは図7に示すように一定ではなく、電子ビーム照射の中央部が最も深さが大きくなり、帯状の端部に行くほどその厚みが減少する、下に凸の湾曲形状となる。
またその溶融層16よりも鋳片内部側の領域も、電子ビーム照射による熱影響によって温度上昇し、純チタンのβ変態点以上の温度となった部分(熱影響層=HAZ層)がβ相に変態する。このように表層加熱処理工程での電子ビーム照射による熱影響によってβ相に変態した領域も、溶融層16の形状と同様に下に凸の湾曲形状となる。
表層を、目的とする合金元素から成る素材とともに溶融再凝固を行うことにより、熱間圧延用素材表層を合金化し、母材とは異なる化学組成の合金層を形成することができる。この際に用いる素材としては、粉末、チップ、ワイヤー、薄膜、切り粉、メッシュのうちの1種以上を用いればよい。溶融前に配置する材料の成分および量については、素材表面とともに溶融し凝固した後の元素濃化領域の成分が目標成分となるように定める。
ただし、この添加する素材が大きすぎると、合金成分の偏析の原因となる。そして、合金成分の偏析が存在すると、所望の性能を十分に発揮できないか、劣化が早まってしまう。このため、チタン母材表面の被加熱部位が溶融状態にあるうちに、合金素材が溶融し終えるサイズにすることが重要である。また、特定の時間における溶融部の形状および広さを考慮した上で、上記合金素材をチタン母材表面に均等に配置しておくことが重要である。しかしながら、電子ビームを使って照射位置を連続的に移動させる場合には、溶融部は溶融したチタンおよび合金とともに連続的に移動しながら攪拌されるため、合金素材は必ずしも連続的に配置しておく必要はない。そのほか、チタンの融点よりも極端に高い融点を有する合金素材の使用は避けなければならないことは当然である。
溶融再凝固処理後は、100℃以上500℃未満の温度で1時間以上保持するのがよい。溶融再凝固後、急激に冷却すると凝固時の歪で表層部に微細な割れが発生するおそれがある。その後の熱延工程や冷延工程において、この微細な割れが起点となって、表層の剥離が発生する、部分的に合金層が薄い部位が発生するなど、特性が劣化するおそれがある。また、微細な割れによって内部が酸化すると、酸洗工程で除去する必要があり、合金層の厚さをさらに減少させる。上記の温度で保持することで表面の微細な割れを抑制できる。また、この温度であれば大気中で保持しても大気酸化は殆どしない。
溶融再凝固処理によって形成した表層部を備える母材表面に所定の合金成分を含有するチタン板を貼り付けることにより熱間圧延用チタン材を製造することができる。
3−2.熱延クラッド法
熱間圧延用チタン材は、熱延クラッド法により、予め、周囲を溶接したスラブ6とチタン板7,8を接合するのがよい。
図3,4に示すように、スラブ6の表層に特性を発現する合金元素を含有したチタン板7,8を貼り合わせた後、熱延クラッド法により接合させることによりチタン複合材の表層を合金化する。すなわち、スラブ6の圧延面に当たる表面に、合金元素を含有するチタン板7を貼り合わせた後、好ましくは真空容器内で、少なくとも周囲を溶接部9により溶接することによって、スラブ6とチタン板7の間を真空で密閉し、圧延することによりスラブ6とチタン板7とを貼り合わせる。スラブ6にチタン板7を貼り合わせる溶接は、スラブ6とチタン板7の間に大気が侵入しないよう、例えば、図3,4に示すように全周を溶接する。
チタンは活性な金属であるため、大気中に放置すると表面に強固な不動態皮膜を形成する。この表面部の酸化濃化層を除去することは不可能である。しかし、ステンレス等とは異なり、チタンには酸素が固溶し易いため、真空中で密閉されて外部からの酸素の供給が無い状態で加熱されると、表面の酸素は内部に拡散し固溶するため、表面に形成した不動態皮膜は消滅する。そのため、スラブ6とその表面のチタン板7とは、その間に介在物なども発生せずに、熱延クラッド法により完全に密着することができる。
さらに、スラブ6として鋳造ままのスラブを用いると、凝固時に生成した粗大な結晶粒に起因し、その後の熱間圧延工程で表面疵が発生してしまう。これに対し、本発明のようにスラブ6の圧延面にチタン板7を貼り合わせると、貼り合わせたチタン板7が微細な組織を有するために熱間圧延工程での表面疵も抑制できる。
図3に示すように、スラブ6の片面たけでなく両面にチタン板7を貼り合わせてもよい。これにより、上述したように熱間圧延工程での熱延疵の発生を抑制できる。熱間圧延においては、通常、スラブ6に圧下されることによって、スラブ6の側面の少なくとも一部が熱延板の表面側に回り込む。そのため、スラブ6の側面の表層の組織が粗大であったり、多数の欠陥が存在していたりすると、熱延板の幅方向の両端近くの表面に表面疵が発生する可能性がある。このため、図4に示すように、熱間圧延時のエッジ側となるスラブ6の側面についても、圧延面と同様に同一規格のチタン板8を貼り合わせて溶接するのがよい。これにより、熱延板の幅方向の両端近くの表面における表面疵の発生を有効に防止できる。この溶接は、真空中で行うのが好ましい。
なお、熱間圧延時にスラブ6の側面が回り込む量は、製造方法により異なるが、通常は20〜30mm程度であるため、スラブ6の側面全面にチタン板8を貼り付ける必要はなく、製造方法に則した回り込み量に相当する部分にのみチタン板8を貼り付ければよい。熱間圧延以降に高温長時間焼鈍を行うことにより、母材由来成分をチタン複合材の内部に含有させることができる。例えば700〜900℃で30時間の熱処理が例示される。
スラブ6とチタン板7,8を真空中で溶接する方法は、電子ビーム溶接やプラズマ溶接などがある。特に電子ビーム溶接は、高真空下で実施できることから、スラブ6とチタン板7,8との間を高真空にすることができるため、望ましい。チタン板7,8を真空中で溶接する場合の真空度は3×10-3Torr以下のより高い真空度であることが望ましい。
なお、スラブ6とチタン板7との溶接は、必ずしも真空容器内で行う必要はなく、例えば、チタン板7の内部に真空吸引用孔を設けておき、チタン板7をスラブ6と重ね合わせた後に、真空吸引孔を用いてスラブ6とチタン板7との間を真空引きしながらスラブ6とチタン板7とを溶接し、溶接後に真空吸引孔を封止してもよい。
クラッドとしてスラブ6の表面に目的とする合金元素を有するチタン板7,8を使用し、熱延クラッドによりチタン複合材1,2の表層に合金層を形成する場合、表層の厚みや化学成分は貼り合わせる前のチタン板7,8の厚みや合金元素の分布に依存する。もちろん、チタン板7,8を製造する際には、最終的に必要とする強度や延性を得るために、真空雰囲気などで焼鈍処理が施されるため、界面での拡散を生じ、界面近傍では深さ方向に濃度勾配を生じる。
しかしながら、最終焼鈍工程で生じる元素の拡散距離は数μm程度であり、合金層の厚み全体が拡散するわけではなく、特に特性発現に重要となる表層の近傍の合金元素の濃度には影響しない。
このため、チタン板7,8全体での合金成分の均一性が特性の安定的な発現につながる。熱延クラッドの場合、製品として製造されたチタン板7,8を使用することが可能であるため、板厚精度はもちろんのこと、合金成分の偏析をコントロールし易く、製造後に均一な厚みかつ化学成分を有する表層を備えるチタン複合材1,2を製造することが可能であり、安定した特性を発現できる。
また、上述したように、チタン複合材1,2の表層と内層5との間に介在物が発生しないことから、密着性の他、割れや疲労などの起点になることもない。
3.チタン複合材の製造方法
スラブ表面にチタン板を貼り付けることにより形成した合金層を最終製品として残存させることが重要であり、スケールロスや表面疵による表面層の除去を可能な限り抑制する必要がある。具体的には、下記のような熱間圧延工程上の工夫を、生産に使用する設備の特性や能力を考慮した上で最適化し適宜採用することにより、達成される。
4−1.加熱工程
熱間圧延用素材を加熱する際には低温短時間加熱を行うことによりスケールロスを低く抑制できるが、チタン材は熱伝導が小さくスラブ内部が低温状態で熱間圧延を行うと内部で割れが発生し易くなる欠点もあり、使用する加熱炉の性能や特性に合わせてスケール発生を最小限に抑制するように最適化する。
4−2.熱間圧延工程
熱間圧延工程においても、表面温度が高すぎると通板時にスケールが多く生成し、スケールロスが大きくなる。一方で、低すぎると、スケールロスは小さくなるが、表面疵が発生し易くなるため、後工程の酸洗で除去する必要があり、表面疵が抑制できる温度範囲で熱間圧延することが望ましい。そのため、最適温度域で圧延することが望ましい。また、圧延中にチタン材の表面温度が低下するため、圧延中のロール冷却は最小限とし、チタン材の表面温度の低下を抑制することが望ましい。
4−3.酸洗工程
熱間圧延された板には、表面に酸化層があるため、その後の工程で酸化層を除去するデスケーリングの工程がある。チタンでは主に、ショットブラスト後に、硝ふっ酸溶液による酸洗で酸化層を除去するのが一般的である。また、場合によっては酸洗後に砥石研磨により表面を研削する場合もある。デスケーリング後に、熱間圧延用チタン材の母材および表層部に由来する、内層および表層からなる、2層または3層構造となっていればよい。
熱間圧延工程で生成したスケールは厚いため、通常は酸洗処理の前処理としてショットブラスト処理を行い表面のスケールの一部を除去すると同時に、表面にクラックを形成させ、その後の酸洗工程で液をクラックに浸透させ、母材の一部も含めて除去している。このとき、母材表面にクラックを生じさせないに弱いブラスト処理を行うことが重要であり、チタン材表面の化学成分に応じて最適なブラスト条件を選択する必要がある。具体的には、例えば適正な投射材の選択や投射速度(エンペラーの回転速度で調整可能)を最適化することによって、母材にクラックが生じない条件を選択する。これらの条件の最適化は、スラブ表面に貼り付けたチタン板の特性によって異なるため、予め最適条件をそれぞれ決めておけばよい。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
図2に示すチタン複合材2を以下の手順で製造した。
すなわち、電子ビーム溶解を行い、角型鋳型にて鋳造した厚さ200mm×幅1000mm×長さ4500mmの寸法を有する、図4に示すスラブ6の表面に、Si,Nb,Taを少なくとも一種以上を含有するチタン合金板7を、真空中で溶接した。No.3および4の実施例においては、スラブ6の側面にもチタン合金板8を真空中で溶接した。その後、チタン合金板7,8を溶接されたスラブ6を820℃に加熱し、厚さ5mmまで熱間圧延した後に、ショットブラストおよび硝ふっ酸を用いて、表裏面ともデスケーリング処理を行った。さらに冷間圧延を行い、厚さ1mmのチタン板とし、焼鈍処理として、真空あるいは不活性ガス雰囲気中で600〜750℃まで加熱し、240分間保持する熱処理を行うことにより、表1に示すNo.1〜20の実施例(本発明例)および比較例の供試材であるチタン複合材2を製造した。
Figure 2017018514
これらの供試材1〜21から20mm×20mmの試験片を切り出し、その表面と端部を#400のサンドペーパーで研磨した後、700℃,750℃の各温度に大気中に200時間暴露し、試験前後の重量の変化を測定し、単位断面積あたりの酸化増量を求めた。結果を表1に併せて示す。なお、表1における表層3,4の元素濃度は、EPMAを用いて線分析を行い、表面から合金層の下端までの範囲を平均した結果である。
表1のNo.1の比較例は、内部5が工業用純チタンJIS2種からなり、表層3,4を有していない。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は40g/m以上、750℃における200時間の加熱での酸化増量は100g/m以上と非常に高い。
No.2の比較例は、内部5が工業用純チタンJIS2種からなり、表層3,4が、Siを含有するが、その厚みが1μmと非常に薄い。また、中間層の厚みも非常に薄い。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は40g/m以上、750℃における200時間の加熱での酸化増量は100g/m以上と非常に高い。
No.3の本発明例は、内部5が工業用純チタンJIS1種からなり、表層3,4が、Siを含有している。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、750℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示している。
No.4の本発明例は、内部5が工業用純チタンJIS2種からなり、表層3,4が、Siを含有している。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、750℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示している。
No.5の本発明例は、内部5が工業用純チタンJIS3種からなり、表層3,4が、Siを含有している。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、750℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示している。
No.6の本発明例は、内部5が工業用純チタンJIS3種からなり、表層3,4が、Siを含有している。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、750℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示している。
No.7の比較例は、内部5が工業用純チタンJIS2種からなり、表層3,4が、Siを含有しているものの、表層3,4のSi含有量が0.7%と高い。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、750℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示しているが、熱間圧延時および冷間圧延時に割れが発生し、加工性が劣化している。
No.8〜21の本発明例は、内部5が工業用純チタンJIS2種からなり、表層3,4が、Si,Nb,Ta,Alを1種類以上含有している。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、750℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示している。
図2に示すチタン複合材2を以下の手順で製造した。
すなわち、No.22および23の本発明例では、スラブ6は電子ビーム溶解を行い、角型鋳型にて鋳造した後、圧延面に当たる面を切削整精した厚さ200mm×幅1000mm×長さ4500mmの寸法を有する、図3に示すスラブ6の表面に、Si,Nb,Ta,Alを少なくとも一種類以上含有するチタン合金板7を真空中で溶接した。また、No.24の本発明例では電子ビーム溶解を行い、角型鋳型にて鋳造した後、圧延面に当たる面を切削整精した厚さ100mm×幅1000mm×長さ4500mmの寸法を有する、図4に示すスラブ6の表面を、切削精整した後、Si,Nb,Ta,Alを少なくとも一種以上を含有するチタン合金板7を真空中で溶接した。
その後、チタン合金板7を溶接されたスラブ6を820℃に加熱し、厚さ5mmまで熱間圧延した後に、ショットブラストおよび硝ふっ酸を用いて、表裏面ともデスケーリング処理を行った。さらに、冷間圧延を行い、厚さ1mmのチタン板とし、焼鈍処理として、真空あるいは不活性ガス雰囲気中で600〜700℃まで加熱し、240分保持する熱処理を行うことにより、表2に示すNo.22〜24の本発明例の供試材であるチタン複合材2を製造した。
Figure 2017018514
これらの供試材について、実施例1と同様に、単位断面積あたりの酸化増量を求めた。結果を表2に併せて示す。なお、表2における表層部の元素濃度は、EPMAを用いて線分析を行い、表面から合金層の下端までの範囲を平均した結果である。
No.22の本発明例は、内部5が工業用純チタンJIS1種からなり、表層3,4が、Siを含有している。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、750℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示している。
No.23の本発明例は、内部5が工業用純チタンJIS2種からなり、表層3,4が、Nbを含有している。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、750℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示している。
No.24の本発明例は、内部5が工業用純チタンJIS3種からなり、表層3,4が、SiおよびAlを含有している。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、750℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示している。
図2に示すチタン複合材2を以下の手順で製造した。
すなわち、プラズマアーク溶解を行い、角型鋳型にて鋳造した後、圧延面に当たる面を切削整精した厚さ200mm×幅1000mm×長さ4500mmの寸法を有する、図4に示すスラブ6の表面に、各元素を含有するチタン合金板を真空中で溶接した。その後、当該スラブを820℃に加熱し、厚さ5mmまで熱間圧延した後に、ショットブラストおよび硝ふっ酸を用いて、表裏面ともデスケーリング処理を行った。さらに冷間圧延を行い、厚さ1mmのチタン板とし、焼鈍処理として、真空あるいは不活性ガス雰囲気中で600〜750℃まで加熱し、240分間保持する熱処理を行うことにより、表3に示すNo.25〜27の実施例(本発明例)の供試材であるチタン複合材2を製造した。
これらの供試材について、実施例1と同様に、単位断面積あたりの酸化増量を求めた。結果を表3に併せて示す。なお、表3における表層部の元素濃度は、EPMAを用いて線分析を行い、表面から合金層の下端までの範囲を平均した結果である。
Figure 2017018514
No.25の本発明例は、内部5が工業用純チタンJIS1種からなり、表層3,4が、Siを含有し、その厚みが5μm以上と十分な厚みを有する。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、750℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示している。
No.26の本発明例は、内部5が工業用純チタンJIS2種からなり、表層3,4が、Nbを含有し、その厚みが5μm以上と十分な厚みを有する。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、750℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示している。
No.27の本発明例は、内部5が工業用純チタンJIS3種からなり、表層3,4が、SiおよびAlを含有し、その厚みが5μm以上と十分な厚みを有する。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、750℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示している。
図2に示すチタン複合材2を以下の手順で製造した。
すなわち、チタン鋳塊をブレークダウンより矩形形状にした後、圧延面に当たる面を切削整精した厚さ200mm×幅1000mm×長さ4500mmの寸法を有するインゴットの表面を切削精整した、図4に示すスラブ6の表面に、合金元素を含有するチタン合金板7を真空中で溶接した。その後、チタン合金板7を溶接されたスラブ6を820℃に加熱し、厚さ5mmまで熱間圧延した後に、ショットブラストおよび硝ふっ酸を用いて、表裏面ともデスケーリング処理を行った。さらに冷間圧延を行い、厚さ1mmのチタン板とし、焼鈍処理として、真空あるいは不活性ガス雰囲気中で600〜750℃まで加熱し、240分間保持する熱処理を行うことにより、表4に示すNo.28,29の本発明例の供試材であるチタン複合材2を製造した。
Figure 2017018514
これらの供試材について、実施例1と同様に、単位断面積あたりの酸化増量を求めた。結果を表4に併せて示す。なお、表4における表層部の元素濃度は、EPMAを用いて線分析を行い、表面から合金層の下端までの範囲を平均した結果である。
No.28の本発明例は、内部5が工業用純チタンJIS1種からなり、表層3,4が、Siを含有し、その厚みが5μm以上と十分な厚みを有する。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、750℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示している。
No.29の本発明例は、内部5が工業用純チタンJIS2種からなり、表層3,4が、Siを含有し、その厚みが5μm以上と十分な厚みを有する。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、750℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示している。
図2に示すチタン複合材2を以下の手順で製造した。
すなわち、スラブ6として、電子ビーム溶解を行い、角型鋳型にて鋳造した後、圧延面に当たる面を切削整精した厚さ220mm×幅1000mm×長さ4500mmのインゴットを用いた。
チタン合金板7として、表5のNo.30ではTi−1.0Cu−1.0Sn−0.45Si−0.2Nbからなるチタン合金板を、No.31ではTi−1.0Cu−0.5Nbからなるチタン合金板を、No.32ではTi−0.25Fe−0.45Siからなるチタン合金板を、No.33ではTi−0.35Fe−0.45Siからなるチタン合金板を、それぞれスラブ6の表面に真空中で溶接した。
その後、当該スラブを820℃に加熱し、厚さ5mmまで熱間圧延した後に、ショットブラストおよび硝ふっ酸を用いて、表裏面ともデスケーリング処理を行った。さらに冷間圧延を行い、厚さ1mmのチタン板とし、焼鈍処理として、真空あるいは不活性ガス雰囲気中で600〜700℃まで加熱し、240分保持する熱処理を行うことにより、表5に示すNo.30〜33の本発明例の供試材であるチタン複合材2を製造した。
Figure 2017018514
これらの供試材について、実施例1と同様に、単位断面積あたりの酸化増量を求めた。結果を表5に併せて示す。なお、表5における表層部の元素濃度は、EPMAを用いて線分析を行い、表面から合金層の下端までの範囲を平均した結果である。
No.30〜33の本発明例は、内部5が工業用純チタンJIS2種であり、表層3,4が、Si,Nb,Ta,Alを1種類以上含有し、その厚みが5μm以上と十分な厚みを有する。さらに、その他合金を含有しているがその含有量は2.5%未満である。さらに、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、750℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示している。
図2に示すチタン複合材2を以下の手順で製造した。
すなわち、スラブ6として、電子ビーム溶解を行い、角型鋳型にて鋳造した後、圧延面に当たる面を切削整精した厚さ200mm×幅1000mm×長さ4500mmのチタン合金インゴットを用いた。
表6のNo.34では、Ti−1.0Cu−1.0Sn、No.35ではTi−1.0Cu―1.0Sn、No.36ではTi−0.5Al、No.37ではTi−0.9Al、No.38ではTi−3Al−2.5V、No39ではTi−1Fe−0.35O、No.40ではTi−1.5Fe−0.5O、No41ではTi−0.5Cu、No.42ではTi−5Al−1Fe、No.43ではTi−6Al−4V、No44ではTi−20V−4Al−1Sn、No45ではTi−15V−3Al−3Cr−3Snからなるスラブ6の表面に、Si,Nb,Ta,Alの内、一種類以上を含有するチタン板7を、それぞれ真空中で溶接した。その後、当該スラブを950℃に加熱し、厚さ5mmまで熱間圧延した後に、ショットブラストおよび硝ふっ酸を用いて、表裏面ともデスケーリング処理を行った。さらに、No.34〜41は、さらに冷間圧延を行い、厚さ1mmのチタン板とし、焼鈍処理として、真空あるいは不活性ガス雰囲気中で600〜700℃まで加熱し、240分間保持する熱処理を行うことにより、表6に示すNo.34〜41の本発明例の供試材であるチタン複合材2を製造した。また、さらに、No.42〜45は、デスケーリング処理後に焼鈍処理として、真空あるいは不活性ガス雰囲気中で600〜700℃まで加熱し、240分間保持する熱処理を行うことにより、表6に示すNo.42〜45の本発明例の供試材であるチタン複合材2を製造した。
Figure 2017018514
これらの供試材について、実施例1と同様に、単位断面積あたりの酸化増量を求めた。結果を表6に併せて示す。なお、表6における表層部の元素濃度は、EPMAを用いて線分析を行い、表面から合金層の下端までの範囲を平均した結果である。
No.34〜45の本発明例のいずれも、表層3,4が、Si,Nb,Ta,Alを1種類以上含有し、その厚みが5μm以上と十分な厚みを有する。さらに、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、750℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示している。
熱間圧延用チタン素材は電子ビーム溶解を行い、角型鋳型にて鋳造した厚さ200mm×幅1000mm×長さ4500mmを用いた。熱間圧延用チタン素材の表面に、Nb,Si,Ta,Alの1種類以上からなる素材とともに表層溶融を行った。その後、熱間圧延用チタン素材の表面温度を150℃の温度で1時間以上保持した。その後、当該熱間圧延用チタン素材を820℃に加熱し、厚さ5mmまで熱間圧延した後に、ショットブラストおよび硝ふっ酸を用いて、表裏面ともデスケーリング処理を行った。さらに冷間圧延を行い、厚さ1.0mmのチタン板とし、焼鈍処理として、真空あるいは不活性ガス雰囲気中で600〜750℃まで加熱し、240分間保持する熱処理を行うことにより、表7のNo.46〜66に示す参考例および本発明例の供試材を作製した。これらの供試材の多くは、図1,2に示すチタン複合材1,2の構造を有する。
これらの供試材から20mm×20mmの試験片を表面と端部を#400のサンドペーパーで研磨した後、700,750℃の各温度に大気中に200時間暴露し、試験前後の重量の変化を測定し、単位断面積あたりの酸化増量を求めた。結果を表7にまとめて示す。なお、表7における表層部の元素濃度は、EPMAを用いて線分析を行い、表面から合金層の下端までの範囲を平均した結果である。
Figure 2017018514
なお、表層部には、スラブ(母材)に由来する元素が含まれるが、表には、スラブには含まれない元素の含有量のみを示している。
No.46の比較例は、内部5が工業用純チタンJIS2種であり、表層3,4を有していない。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は40g/m以上、750℃における200時間の加熱での酸化増量は100g/m以上と非常に高い。
No.47の比較例は、内部5が工業用純チタンJIS2種であり、表層3,4がSiを含有するが、その厚みが1μmと非常に薄い。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は40g/m以上、750℃における200時間の加熱での酸化増量は100g/m以上と非常に高い。
No.48の本発明例は、内部5が工業用純チタンJIS1種であり、表層3,4がSiを含有し、その厚みも5μm以上と十分な厚みを有している。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、750℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示している。
No.49の本発明例は、内部5が工業用純チタンJIS2種であり、表層3,4がSiを含有し、その厚みも5μm以上と十分な厚みを有している。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、750℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示している。
No.50の本発明例は、内部5が工業用純チタンJIS3種であり、表層3,4がSiを含有し、その厚みも5μm以上と十分な厚みを有している。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、750℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示している。
No.51の本発明例は、内部5が工業用純チタンJIS4種であり、表層3,4がSiを含有し、その厚みも5μm以上と十分な厚みを有している。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、750℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示している。
No.52の比較例は、内部5が工業用純チタンJIS2種であり、表層3,4がSiを含有し、その厚みも5μm以上と十分な厚みを有しているが、Si含有量が0.7%と高い。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、750℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示しているが、熱間圧延および冷間圧延時に割れが発生し、加工性が劣化している。
No.53〜66の本発明例は、内部5が工業用純チタンJIS2種であり、表層3,4がSi,Nb,Ta,Alを1種類以上含有し、その厚みも5μm以上と十分な厚みを有している。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、750℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示している。
No.67〜69に示す本発明例では、熱間圧延用チタン素材は電子ビーム溶解を行い、角型鋳型にて鋳造した後、圧延面に当たる面を切削整精した厚さ100mm×幅1000mm×長さ4500mmのを用いた。熱間圧延用チタン素材に、Nb,Si,Alの1種類以上からなる素材を散布した後、表層溶融を行った後、300℃の温度で1時間以上保持した。
その後、当該スラブを820℃に加熱し、厚さ5mmまで熱間圧延した後に、ショットブラストおよび硝ふっ酸を用いて、表裏面ともデスケーリング処理を行った。さらに冷間圧延を行い、厚さ1.0mmのチタン板とし、焼鈍処理として、真空あるいは不活性ガス雰囲気中で600〜700℃まで加熱し、240分間保持する熱処理を行うことにより、表8のNo.67〜69に示す本発明例のチタン複合材2を製造した。
これらの供試材から20mm×20mmの試験片を表面と端部を#400のサンドペーパーで研磨した後、700,750℃の各温度に大気中に200時間暴露し、試験前後の重量の変化を測定し、単位断面積あたりの酸化増量を求めた。結果を表8にまとめて示す。なお、表8における表層部の元素濃度は、EPMAを用いて線分析を行い、表面から合金層の下端までの範囲を平均した結果である。
Figure 2017018514
なお、表層部には、スラブ(母材)に由来する元素が含まれるが、表には、スラブには含まれない元素の含有量のみを示している。
No.67の本発明例は、内部5が工業用純チタンJIS1種であり、表層3,4がSiを含有し、その厚みも5μm以上と十分な厚みを有している。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、750℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示している。
No.68の本発明例は、内部5が工業用純チタンJIS2種であり、表層3,4がNbを含有し、その厚みも5μm以上と十分な厚みを有している。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、750℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示している。
No.69の本発明例は、内部5が工業用純チタンJIS3種であり、表層3,4がSiおよびAlを含有し、その厚みも5μm以上と十分な厚みを有している。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、75℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示している。
表9のNo.70〜72に示す本発明例において、熱間圧延用チタン素材はプラズマ溶解を行い、角型鋳型にて鋳造した厚さ200mm×幅1000mm×長さ4500mmを用いた。熱間圧延用チタン素材に、Nb,Si,Alの1種類以上からなる素材を散布した後、表層溶融を行った後、素材表面温度を300℃の温度で1時間以上保持した。また、No.27に示す本発明例において、熱間圧延用チタン素材はプラズマ溶解を行い、角型鋳型にて鋳造した後、圧延面に当たる面を切削整精した厚さ200mm×幅1000mm×長さ4500mmを用いた。熱間圧延用チタン素材に、Nb,Si,Alの1種類以上からなる素材を散布した後、表層溶融を行った後、素材表面温度を250度の温度で1時間以上保持した。
その後、当該スラブを820℃に加熱し、厚さ5mmまで熱間圧延した後に、ショットブラストおよび硝ふっ酸を用いて、表裏面ともデスケーリング処理を行った。さらに、焼鈍処理として、真空あるいは不活性ガス雰囲気中で600〜700℃まで加熱し、240分間保持する熱処理を行った。
これらの供試材から20mm×20mmの試験片を表面と端部を#400のサンドペーパーで研磨した後、700,750℃の各温度に大気中に200時間暴露し、試験前後の重量の変化を測定し、単位断面積あたりの酸化増量を求めた。結果を表9にまとめて示す。なお、表9における表層部の元素濃度は、EPMAを用いて線分析を行い、表面から合金層の下端までの範囲を平均した結果である。
Figure 2017018514
なお、表層部には、スラブ(母材)に由来する元素が含まれるが、表には、スラブには含まれない元素の含有量のみを示している。
No.70の本発明例は、内部5が工業用純チタンJIS1種であり、表層3,4がSiを含有し、さらに、その厚みも5μm以上と十分な厚みを有している。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、750℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示している。
No.71の本発明例は、内部5が工業用純チタンJIS2種であり、表層3,4がNbを含有し、その厚みも5μm以上と十分な厚みを有している。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、750℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示している。
No.72の本発明例は、内部5が工業用純チタンJIS3種であり、表層3,4がSiおよびAlを含有し、その厚みも5μm以上と十分な厚みを有している。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、750℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示している。
表10に記載のNo.73に示す本発明例において、熱間圧延用チタン素材はブレークダウンより矩形形状にした後、圧延面に当たる面を切削整精した厚さ200mm×幅1000mm×長さ4500mmを用いた。熱間圧延用チタン素材に、Siからなる各元素を含有する素材を散布した後、表層溶融を行った後、熱間圧延用チタン素材の表面温度を150℃の温度で1時間以上保持した。また、No.74に示す本発明例において、熱間圧延用チタン素材をブレークダウンより矩形形状にした後、圧延面に当たる面を切削整精した厚さ50mm×幅1000mm×長さ4500mmを用いた。熱間圧延用チタン素材に、Siからなる各元素を含有する素材を散布した後、表層溶融を行った後、熱間圧延用チタン素材の表面温度を350℃の温度で1時間以上保持した。
その後、当該スラブを820℃に加熱し、厚さ5mmまで熱間圧延した後に、ショットブラストおよび硝ふっ酸を用いて、表裏面ともデスケーリング処理を行った。さらに、焼鈍処理として、真空あるいは不活性ガス雰囲気中で600〜700℃まで加熱し、240分保持する熱処理を行った。
これらの供試材から20mm×20mmの試験片を表面と端部を#400のサンドペーパーで研磨した後、700,750℃の各温度に大気中に200時間暴露し、試験前後の重量の変化を測定し、単位断面積あたりの酸化増量を求めた。結果を表10にまとめて示す。なお、表10における表層3,4の元素濃度は、EPMAを用いて線分析を行い、表面から合金層の下端までの範囲を平均した結果である。
Figure 2017018514
なお、表層部には、スラブ(母材)に由来する元素が含まれるが、表には、スラブには含まれない元素の含有量のみを示している。
No.73の本発明例は、内部5が工業用純チタンJIS1種であり、表層3,4がSiを含有し、その厚みも5μm以上と十分な厚みを有している。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、750℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示している。
No.74の本発明例は、内部5が工業用純チタンJIS2種であり、表層3,4がSiを含有し、その厚みも5μm以上と十分な厚みを有している。そのため、700℃における200時間の加熱での酸化増量は25g/m以下、750℃における200時間の加熱での酸化増量は70g/m以下と優れた耐酸化性を示している。
1,2 本発明に係るチタン複合材
3,4 表層
5 内層
6 母材(スラブ)
7,8 表層材(チタン板)
9 溶接部

Claims (7)

  1. 工業用純チタンまたはチタン合金からなる内層と、
    前記内層の少なくとも一方の圧延面に形成された前記内層とは異なる化学組成を有する表層と、
    前記内層と前記表層との間に形成され、前記内層とは異なる化学組成を有する中間層と、
    を備えるチタン複合材であって、
    前記表層が、その厚さが2μm以上であり、全厚さに占める割合が片面あたり40%以下であり、
    前記表層部の化学組成が、質量%で、
    Si:0.1〜0.6%、
    Nb:0.1〜2.0%、
    Ta:0.3〜1.0%および
    Al:0.3〜1.5%から選択される一種以上、
    Sn:0〜1.5%、
    Cu:0〜1.5%、
    Fe:0〜0.5%、
    残部:チタンおよび不純物であり、
    前記中間層の厚さが0.5μm以上である、
    チタン複合材。
  2. 前記内層の圧延面以外の面に、他の表層が形成されており、
    前記他の表層が、前記表層と同一の化学組成を備える、
    請求項1に記載のチタン複合材。
  3. 工業用純チタンまたはチタン合金からなる母材と、
    前記母材の少なくとも一方の圧延面に接合された表層材と、
    前記母材と前記表層材の周囲を接合する溶接部とを備える熱間圧延用チタン材であって、
    前記表層材が、前記母材とは異なる化学組成を有し、かつ、質量%で、
    Si:0.1〜0.6%、
    Nb:0.1〜2.0%、
    Ta:0.3〜1.0%および
    Al:0.3〜1.5%から選択される一種以上、
    Sn:0〜1.5%、
    Cu:0〜1.5%、
    Fe:0〜0.5%、
    残部:チタンおよび不純物であり、
    前記溶接部が、前記母材と前記表層材の界面を外気から遮断する、
    熱間圧延用チタン材。
  4. 前記母材の圧延面以外の面に、他の表層材が接合されており、
    前記他の表層材が、前記表層材と同一の化学組成を備える、
    請求項3に記載の熱間圧延用チタン材。
  5. 前記母材が、直接鋳造スラブからなる、
    請求項3または4に記載の熱間圧延用チタン材。
  6. 前記直接鋳造スラブが、表面の少なくとも一部に溶融再凝固層を形成したものである、
    請求項5に記載の熱間圧延用チタン材。
  7. 前記溶融再凝固層の化学組成が、前記直接鋳造スラブの板厚中心部の化学組成とは異なる、
    請求項6に記載の熱間圧延用チタン材。


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