JPWO2017013922A1 - 非接触環状シール及びこれを備える回転機械 - Google Patents

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Abstract

回転軸の周方向の旋回流に起因する不安定振動の抑制効果の向上を図りつつ、シール内部を通過する流体の漏れ量の増加を抑制する。本発明によれば、回転機械の回転部に設けられる回転体と、前記回転機械の固定部に設けられる固定体と、を有し、前記回転体と前記固定体との隙間を流れる流体をシールするように構成された非接触環状シールが提供される。非接触環状シールは、前記隙間を形成する前記回転体の表面及び前記固定体の表面の少なくとも一方に設けられるネジ溝を有し、前記ネジ溝は、前記回転体の軸方向に直交する平面に対する前記ネジ溝のリード角を画定し、シール入口側の前記ネジ溝の前記リード角は、シール出口側の前記ネジ溝の前記リード角よりも大きい。

Description

本発明は、非接触環状シール及びこれを備える回転機械に関し、特に、非圧縮性流体を扱う回転機械における、羽根車等とケーシングとの間の流体の漏洩量を低減し且つ振動を少なくし、安定した軸封特性を発揮する非接触環状シール及びこれを備える回転機械に関する。
液体を移送する回転機械(以下、「ポンプ」という)は、発電、化学プロセス、下水道、上水道等を目的とするプラント又は設備に幅広く使用されている。ポンプは、ケーシングと、羽根車を装着した回転軸とを有する。回転軸は、ケーシング内部に配置され、軸受により回転可能に支持される。ケーシングの吸込口から吸い込まれた液体は、羽根車の回転により昇圧され、ケーシングの吐出口から吐出される。即ち、ポンプ内部の流路においては、高圧の領域と低圧の領域とが形成され、高圧領域から低圧領域へと流体が流れる。ここで、ケーシング(固定部)と回転軸(回転部)との僅かな隙間において、高圧の領域からこの隙間を介して低圧の領域へと流体が移動(漏洩)すると、ポンプ効率が低下する。このため、ケーシングと回転軸との隙間は非接触環状シールによりシールされる。これにより、昇圧された液体が低圧側へ漏洩することが抑制される。
例えば、図1に示す典型的な多段遠心ポンプ(JISハンドブック ポンプ 第1版 第74頁から引用)では、非接触環状シールは、図中丸で囲まれた部位に用いられる。即ち、羽根車の入口部、前段の羽根車と後段の羽根車との間、最後段の羽根車出口部と低圧側(ポンプ入口圧力)との間等に用いられる。特に、羽根車出口部と低圧側との間は差圧が大きく、流体の漏洩が大きいので、この部分における流体の漏洩はポンプ性能に与える影響が大きい。このため、流体の漏洩量を減らすことができる様々な構造の非接触環状シールが知られている。
最も基本的な非接触環状シールとしては、平滑シールが知られている。平滑シールは、平滑な面を有する円筒を二重に配置して形成されたシールである。平滑シールのような非接触環状シールの漏れ量を低減するためには、非接触環状シールの回転側と静止側の径方向の隙間を小さくすることが効果的である。しかしながら、回転軸の振動やたわみ等の実用上の問題から、径方向の隙間を極端に小さくすることはできない。このため、径方向の隙間を小さくすることなく漏れ量を低減する非接触環状シールが必要とされる。このような非接触環状シールとして、平行溝シール、ダンパーシール、ネジ溝シール等が知られている。以下、従来の非接触環状シールの例を説明する。
図18は、従来の平行溝シールの部分断面図である。図18においては、固定体131を断面図で示し、回転軸121を側面図で示している。平行溝シール111は、外周面が平滑な回転体である回転軸121と、回転軸121と対向する面に同心円状の溝141が複数設けられた固定体131とを有する。この平行溝シール111は、回転軸121と固定体131との隙間を流れる流体が溝141を通過する際に発生する渦によるエネルギー損失や、流路の急拡大及び急縮小により発生する圧力損失等により、流体の漏洩量(移動量)を低減することができる。
図19及び図20は、従来のダンパーシールの部分断面図である。図19はダンパー構造としてハニカムパターンを採用したダンパーシールを示す。図19においては、固定体132を断面図で示し、回転軸122を側面図で示している。ダンパーシール112は、外周面が平滑な回転体である回転軸122と、回転軸122と対向する面に複数の凹部142が設けられた固定体132とを有する。図示の例では、凹部142として六角形状のハニカムパターンが用いられている。このダンパーシール112は、回転軸122と固定体132との隙間を流れる流体が凹部142を流れる際に発生する流体の圧力損失により、流体の漏洩量を低減することができる。
図20はダンパー構造としてホールパターンを採用したダンパーシールを示す。図20においては、固定体133を断面図で示し、回転軸123を側面図で示している。このダンパーシール113は、外周面が平滑な回転体である回転軸123と、回転軸123と対向する面に複数の凹部143が設けられた固定体133とを有する。図示の例では、凹部143として円形凹状のホールパターンが用いられている。このダンパーシール113は、回転軸123と固定体133との隙間を流れる流体が凹部143を流れる際に発生する流体の圧力損失により、流体の漏洩量を低減することができる。
図21は、従来のネジ溝シールの部分断面図である。図21においては、固定体134を断面図で示し、回転軸124を側面図で示している。ネジ溝シール114は、内周面が平滑な円筒状の固定体134と、固定体134と対向する面にネジ溝144が形成された回転軸124とを有する。ネジ溝シール114は、回転軸124が回転すると、回転方向に応じてポンピング効果により流体を高圧側に押し戻し、漏洩量を低減させる効果がある。ネジ溝144はシール入口側(高圧側)からシール出口側(低圧側)までの連続した溝である。ネジ溝シール114の入口側と出口側との圧力差が大きい場合は圧力差による漏れ流れが大きくなるので、リード角を小さくした方が漏れ量を小さくできる場合が多い。
なお、ターボ分子ポンプ等の流体機械に用いられる非接触環状シールが、実開昭62−98798号公報(特許文献1)等に開示されている。
実開昭62−98798号公報
ところで、非接触環状シールでは、シール内部を通過する流体が回転軸の外周を旋回することにより、回転軸に不安定振動(自励振動とも呼ばれる)が発生し、回転軸に異常な振動状態が生じる場合がある。この不安定振動の発生のし難さが非接触環状シールの重要な特性の一つとなっている。この不安定振動は、シール内部の回転軸の周方向の旋回流が大きいほど発生し易くなることがわかっている。
ネジ溝シールの場合、固定体に適切な溝を設けることで、回転軸の回転に伴うシール内部の流体の旋回流を低減させることができる。このため、固定体にネジ溝を有するネジ溝シールは、不安定振動を抑制する手段としてしばしば用いられる。この固定体に設けられるネジ溝による不安定振動を抑制する作用はネジ溝のリード角が大きいほど顕著であることが分かった。しかしながら、上述したように、ネジ溝のリード角を大きくすると漏れ量が大きくなることが多く、不安定振動を抑制する作用と漏れ量を低減する作用はトレードオフの関係にあるということができる。したがって、漏れ量を低減することと不安定振動を抑制することとを高いレベルで両立させることは困難であった。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、回転軸の周方向の旋回流に起因する不安定振動の抑制効果の向上を図りつつ、シール内部を通過する流体の漏れ量の増加を抑制することである。
また、本発明の他の目的の一つは、羽根車を取付けた回転軸を回転させ、流体を移送する回転機械において、羽根車によって昇圧された流体が低圧側に漏れることを低減してポンプ効率を上げつつ、シール内部を通過する流体による不安定振動を抑制することである。
本発明者らは、上記問題点に対して鋭意検討した結果、以下の知見を得た。即ち、ネジ溝のリード角が比較的大きいネジ溝シールにおいては、低圧側(シール出口側)における不安定振動を抑制する作用よりも、高圧側(シール入口側)における不安定振動を抑制する作用が大きいことが分かった。また、ネジ溝のリード角が比較的小さいネジ溝シールは、その低圧側と高圧側とで、ほぼ同等の漏れ量を低減する効果を有することが分かった。
本発明は、上記知見に基づきなされた。本発明の一形態によれば、回転機械の回転部に設けられる回転体と、前記回転機械の固定部に設けられる固定体と、を有し、前記回転体と前記固定体との隙間を流れる流体をシールするように構成された非接触環状シールが提供される。この非接触環状シールは、前記隙間を形成する前記回転体の表面及び前記固定体の表面の少なくとも一方に設けられるネジ溝を有し、前記ネジ溝は、前記回転体の軸方向に直交する平面に対する前記ネジ溝のリード角を画定し、シール入口側の前記ネジ溝の前記リード角は、シール出口側の前記ネジ溝の前記リード角よりも大きい。これによれば、不安定化振動を抑制する作用が大きい高圧側(シール入口側)においては、ネジ溝のリード角が相対的に大きくされるので、不安定化振動を抑制する作用を向上させることができる。また、低圧側(シール出口側)においては、ネジ溝のリード角が相対的に小さくされるので、シールを通過する流体の漏れ量の増加を抑制することができる。したがって、本発明の一形態によれば、非接触環状シールの不安定振動を抑制する効果と高い軸封性能とを両立することができる。
本発明の他の一形態によれば、上記非接触環状シールの一形態において、前記ネジ溝は、前記ネジ溝のリード角がシール入口側からシール出口側に向かって段階的に小さくなるように形成される。これによれば、上記非接触環状シールは、リード角の異なるネジ溝を有する複数の非接触環状シールを互いに接合することで製造され得る。このため、上記非接触環状シールは、例えば、従来から存在する非接触環状シールを利用する等して、容易に製造することができる。
本発明の他の一形態によれば、上記非接触環状シールの一形態において、前記ネジ溝は、前記ネジ溝のリード角がシール入口側からシール出口側に向かって連続的に小さくなるように形成される。これによれば、ネジ溝のリード角を、軸方向位置に応じて適切な角度に細かく設定することができる。ひいては、非接触環状シールの不安定振動を抑制する効果と軸封性能とより向上させることができる。
本発明の他の一形態によれば、上記非接触環状シールの一形態において、シール入口側の前記ネジ溝の深さは、シール出口側の前記ネジ溝の深さよりも大きい。非接触環状シールにおいて所定の条数を有するネジ溝のリード角を大きくした場合、ネジ溝の幅を大きくせざるを得ず、ネジ溝の断面積の総和が大きくなる。また、所定の幅を有するネジ溝のリード角を大きくした場合は、条数を増加せざるを得ず、ネジ溝の断面積の総和が大きくなる。ネジ溝の断面積の総和が大きくなると、流体がシール間を流れやすくなる。本発明の一形態によれば、非接触環状シールのネジ溝の断面積の総和を小さくすることができるので、シール間を通過する流体の漏れ量をさらに低減することができる。
本発明の他の一形態によれば、上記非接触環状シールの一形態において、前記ネジ溝は、少なくとも前記固定体の前記表面に形成される。ネジ溝が少なくとも固定体の表面に形成されることにより、不安定振動を抑制する作用を向上させつつ、漏れ量の増加を抑制することができる。ところで、非接触環状シールの回転体にもネジ溝を設けた場合、回転体の回転により流体を高圧側に押し戻すポンピング効果が増加する。一方で、回転体の回転により、回転体の周囲の流体が旋回し、不安定振動が助長される可能性がある。ここで、固定体の表面に上記ネジ溝が形成されていれば、回転体の表面にネジ溝が形成されていても、回転体の回転により生じる流体の旋回を固定体の表面のネジ溝により抑制することができる。また、この場合、回転体の表面に形成されたネジ溝によるポンピング効果により、一層流体の漏れ量を低減することができる。したがって、固定体と回転体の両方に上記ネジ溝が形成されている場合は、不安定振動を抑制しつつ、漏れ量を一層抑制することができる。
本発明の他の一形態によれば、回転機械が提供される。この回転機械は、電動機と、前記電動機と連結されて回転可能に構成される主軸と、前記主軸に嵌合され、該主軸とともに回転可能に構成される羽根車と、前記羽根車を収容するケーシングと、前記ケーシングに取り付けられ、前記主軸を回転可能に支持する軸受と、を備え、前記主軸は回転部を有し、前記ケーシングは固定部を有し、前記回転部及び前記固定部は、上記非接触環状シールを有する。
本発明の一つによれば、回転軸の周方向の旋回流に起因する不安定振動の抑制効果の向上を図りつつ、シール内部を通過する流体の漏れ量の増加を抑制することができる。
また、本発明の一つによれば、羽根車を取付けた回転軸を回転させ、流体を移送する回転機械において、羽根車によって昇圧された流体が低圧側に漏れることを低減してポンプ効率を上げつつ、シール内部を通過する流体による不安定振動を抑制することができる。
本実施形態に係る非接触環状シールを適用することができる高圧ポンプの断面図を示す。 図1に示した高圧ポンプの1段目羽根車の拡大断面図である。 図2に示した非接触環状シールに適用可能な本実施形態の非接触環状シールを示す部分断面図である。 固定体に形成されるネジ溝の断面形状の他の例を示す図である。 固定体に形成されるネジ溝の断面形状の他の例を示す図である。 固定体に形成されるネジ溝の断面形状の他の例を示す図である。 図3に示した固定体の、中心軸を含む平面で切断した場合の断面図である。 図3に示した非接触環状シールに使用される固定体の他の例を示す断面図である。 図3に示した非接触環状シールに使用される固定体のさらに他の例を示す断面図である。 図3に示した非接触環状シールに使用される固定体のさらに他の例を示す断面図である。 図3に示した非接触環状シールに使用される固定体のさらに他の例を示す断面図である。 図3に示した非接触環状シールに使用される固定体のさらに他の例を示す断面図である。 図3に示した非接触環状シールに使用される固定体のさらに他の例を示す断面図である。 図3に示した非接触環状シールに使用される固定体のさらに他の例を示す断面図である。 図2に示した非接触環状シールに適用可能な他の実施形態の非接触環状シールを示す部分断面図である。 図2に示した非接触環状シールに適用可能な他の実施形態の非接触環状シールを示す部分断面図である。 図2に示した非接触環状シールに適用可能な他の実施形態の非接触環状シールを示す部分断面図である。 図2に示した非接触環状シールに適用可能な他の実施形態の非接触環状シールを示す部分断面図である。 評価試験の結果を示すグラフである。 従来の平行溝シールの部分断面図である。 従来のダンパーシールの部分断面図である。 従来のダンパーシールの部分断面図である。 従来のネジ溝シールの部分断面図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。なお、以下で説明する実施形態では、本発明の回転機械の一例として高圧ポンプが説明される。
図1は、本実施形態に係る非接触環状シールを適用することができる高圧ポンプ(多段遠心ポンプ)の断面図を示す。この高圧ポンプ1は、図示しない電動機に連結されて回転する主軸11と、主軸11に嵌合された羽根車21a,21b,21cと、羽根車21a,21b,21cを収容するケーシング31と、ケーシング31に取り付けられた軸受45a,45bとを備える。軸受45a,45bは、主軸11を回転可能に支持する。高圧ポンプ1を回転駆動するための図示しない電動機は、主軸11の左端に嵌合されたカップリング13を介して主軸11に連結される。
ケーシング31は水等の非圧縮性流体(以下、単に流体という)を外部から吸い込むための吸込口33と、吸い込んだ流体を吐出するための吐出口37を有する。主軸11に嵌合された1段目羽根車21aは、主軸11の回転に伴って回転し、吸込口33から流体をケーシング31内に吸い込む。1段目羽根車21aにより吸い込まれ、昇圧された流体は、第1流路35aを通過し、2段目羽根車21bへ到達する。2段目羽根車21bによって昇圧された流体は、第2流路35bを通過し、3段目羽根車21cへ到達する。流体は、3段目羽根車21cでさらに昇圧され、吐出口37より吐出され、図示しない配管を通じて移送される。即ち、流体は、1段目羽根車21a、2段目羽根車21b、及び3段目羽根車21cによって昇圧される。
流体には、各羽根車21a,21b,21cの吸込側と吐出側との間に圧力差が生じる。即ち、吸込側が低圧側になり、吐出側が高圧側になる。この圧力差が生じると、僅かな隙間を通じて、高圧側の流体の一部は低圧側へ漏洩する。本実施形態の非接触環状シールは、その漏洩を低減する。図1に示した高圧ポンプ1では、円で囲んだ部位に本実施形態の非接触環状シールが設けられる。図1に示した高圧ポンプ1は多段遠心ポンプであるので、流体の圧力が単段遠心ポンプに比べて高くなり、流体の漏洩量は必然的に多くなる。漏洩量が多ければ、ポンプ効率は低下する。
図2は、図1に示した高圧ポンプ1の1段目羽根車21aの拡大断面図である。図示のように、1段目羽根車21aは流体を吸い込む吸込口23と、流体を吐出する吐出口25とを有する。ここで、流体の圧力は、吸込口23側が低圧になり、吐出口25側が高圧となる。即ち、吸込口23は低圧部36であり、吐出口25は高圧部38である。ここで、高圧ポンプ1における流体の漏洩箇所は主に、吸込口23の外周面とケーシング31aとの対向部位Xと、羽根車21aの背面の外周面とケーシング31bとの対向部位Yである。これら各対向部位X,Yに形成される隙間に、本実施形態に係る非接触環状シール41,43が設けられる。
非接触環状シール41,43は、高圧ポンプ1の回転部である羽根車21aに設けられる回転体41a,43aと、固定部であるケーシング31a,31bに設けられる固定体41b,43bと、を有する。なお、図示の例では回転体41a,43aが羽根車21aとは別の部材として設けられているが、回転体41a,43aは羽根車21aと一体に形成されていてもよい。同様に、図示の例では固定体41b,43bがケーシング31a,31bとは別の部材として設けられているが、固定体41b,43bはケーシング31a,31bと一体に形成されていてもよい。
図3は、図2に示した非接触環状シール41,43に適用可能な本実施形態の非接触環状シールを示す部分断面図である。図3においては、固定体71を断面図で示し、回転体61を側面図で示している。
図示のように、本実施形態の非接触環状シール51は、図2に示した回転部である羽根車21aに設けられる回転体61と、図2に示した固定部であるケーシング31a,31bに設けられる固定体71とを備える。回転体61は、羽根車21aとともに回転可能に構成される。回転体61は、中心軸151を中心として所定の方向に回転する。なお、中心軸151は、例えば、図1及び図2に示した主軸11の軸心と一致する。
また、固定体71は、その内表面にらせん状に形成されたネジ溝81を備える。即ち、本実施形態の非接触環状シール51はネジ溝シールである。固定体71は略円筒状に形成される。回転体61は、固定体71の内径よりも小さい外径を有する略円筒状の部材である。回転体61は、固定体71の内面に対して所定の隙間を有するように、固定体71の内部に配置される。
非接触環状シール51が図1に示した高圧ポンプ1に適用されるとき、流体は、固定体71と回転体61との隙間を、高圧側155(シール入口側)から低圧側156(シール出口側)に向かって、即ち図中矢印Aの方向に向かって漏洩する。
図3に示すように、固定体71に形成されるネジ溝81の断面形状は略矩形である。しかしながら、これに限らず、図4Aに示すようにネジ溝81の断面形状は略三角形であってもよい。また、図4Bに示すように、ネジ溝81の断面形状は略U字形であってもよい。さらに、図4Cに示すように、ネジ溝81の断面形状は略半円形であってもよい。なお、ネジ溝81の断面形状としては、図3及び図4A−4Cに示した断面形状以外の任意の断面形状を採用することもできる。
上述したように、本発明者らは、鋭意検討により以下の知見を得た。即ち、ネジ溝のリード角が比較的大きいネジ溝シールにおいては、低圧側(シール出口側)における不安定振動を抑制する作用よりも、高圧側(シール入口側)における不安定振動を抑制する作用が大きいことが分かった。また、ネジ溝のリード角が比較的小さいネジ溝シールは、その低圧側と高圧側とで、ほぼ同等の漏れ量を低減する効果を有することが分かった。
このため、図3に示した本実施形態に係る非接触環状シール51では、高圧側155(シール入口側)のネジ溝81のリード角が、低圧側156(シール出口側)のネジ溝81のリード角よりも大きくなるように、ネジ溝81が形成される。即ち、本実施形態に係る非接触環状シール51では、高圧側におけるネジ溝81により不安定振動を効率よく抑制し、且つ低圧側におけるネジ溝81により漏れ量を低減する。したがって、本実施形態に係る非接触環状シール51は、不安定振動を抑制する効果と高い軸封性能とを両立することができる。
図5は、図3に示した固定体71の、中心軸151を含む平面で切断した場合の断面図である。図示のように固定体71は、高圧側155(シール入口側)に位置するネジ溝81Aと、低圧側156(シール出口側)に位置するネジ溝81Cと、ネジ溝81Aとネジ溝81Cとの間に位置するネジ溝81Bとを有する。ここでは、ネジ溝81A,81B,81Cの全体の総称としてネジ溝81と呼ぶ。ネジ溝81A,81B,81Cは、それぞれ、回転体61(図3参照)の軸方向(中心軸151の軸方向)に直交する平面に対するリード角θ1A,θ1B,θ1Cを画定する。また、ネジ溝81A,81B,81Cは、それぞれ、幅W1A,W1B,W1Cを有する。ここで、幅W1A,W1B,W1Cは、ネジ溝81A,81B,81Cの側面の任意の点からの幅方向の最短距離を示す。なお、ネジ溝81A,81B,81Cの深さは全て同一である。
ネジ溝81は、ネジ溝81のリード角が変化する境界部161,162を有する。具体的には、ネジ溝81Aのリード角θ1Aは、境界部161においてネジ溝81Bのリード角θ1Bに変化する。また、ネジ溝81Bのリード角θ1Bは、境界部162においてネジ溝81Cのリード角θ1Cに変化する。境界部161,162は実質的な幅を有していないので、ネジ溝81は、固定体71の表面に連続的に形成される。なお、本実施形態では、境界部161,162は、中心軸151に直交する平面と平行に形成される。しかしながら、この境界部161,162は、平面状又は直線状に形成される場合に限らず、任意の形状であってもよい。また、後述するように、境界部161,162の数は、2つに限らず、1又は3以上であってもよい(図10及び図11参照)。
ここで、リード角θ1Aは、リード角θ1Bよりも大きい。また、リード角θ1Bは、リード角θ1Cよりも大きい。したがって、ネジ溝81のリード角は、高圧側155から低圧側156に向かって段階的に小さくなるように形成される。即ち、不安定化振動を抑制する作用が大きい高圧側155においては、ネジ溝81Aのリード角θ1Aが相対的に大きくされるので、不安定化振動を抑制する作用を向上させることができる。また、低圧側156においては、ネジ溝81Bのリード角θ1B及びネジ溝81Cのリード角θ1Cが相対的に小さくされるので、非接触環状シール51を通過する流体の漏れ量の増加を抑制することができる。
また、ネジ溝81は、そのリード角が高圧側155から低圧側156に向かって段階的に小さくなるように形成されるので、この固定体71にネジ溝81を容易に加工することができる。具体的には、ネジ溝81は、固定体71の内周面に、一定幅のネジ溝81A,81B,81Cをそれぞれ加工することで形成することができる。又は、例えばネジ溝81Aを有する固定体と、ネジ溝81Bを有する固定体と、ネジ溝81Cを有する固定体とそれぞれ製造し、これらの固定体を組み合わせることで固定体71を容易に製造することができる。
ネジ溝81Aの条数と、ネジ溝81Bの条数と、ネジ溝81Cの条数は、それぞれ同一である。ネジ溝81は、条数が一定の場合、リード角が小さくなるに従って、ネジ溝81の幅が小さくなる。このため、境界部161よりも高圧側155のネジ溝81Aの幅W1Aは、境界部161よりも低圧側156のネジ溝81Bの幅W1Bよりも大きい。また、境界部162よりも高圧側155のネジ溝81Bの幅W1Bは、境界部162よりも低圧側156のネジ溝81Cの幅W1Cよりも大きい。即ち、ネジ溝81の幅は、高圧側155から低圧側156に向かって段階的に小さくなるように形成される。なお、後述するように、ネジ溝81Aの条数と、ネジ溝81Bの条数と、ネジ溝81Cの条数は、それぞれ異なっていてもよい(図7参照)。また、後述するように、幅W1Aと、幅W1Bと、幅W1Cとは、互いに同一の大きさであってもよい(図7参照)。
図示のように、境界部161において、高圧側155のネジ溝81Aの断面積は、低圧側156のネジ溝81Bの断面積と同一である。同様に、境界部162において、高圧側155のネジ溝81Bの断面積は、低圧側156のネジ溝81Cの断面積と同一である。なお、後述するように、境界部161,162における高圧側155のネジ溝81の断面積は、低圧側156のネジ溝81の断面積と異なっていてもよい(図7参照)。
また、図示のように、境界部161,162において、高圧側155のネジ溝81は、低圧側156のネジ溝81に連続して形成される。言い換えれば、境界部161,162において、高圧側155のネジ溝81の断面が、低圧側156のネジ溝81の断面と一致する。具体的には、境界部161において、高圧側155のネジ溝81Aの断面は、低圧側156のネジ溝81Bの断面と一致する。また、境界部162において、高圧側155のネジ溝81Bの断面は、低圧側156のネジ溝81Cの断面と一致する。これにより、ポンピング効果が境界部161,162におけるネジ溝81によって阻害されることを抑制することができる。なお、後述するように、境界部161,162において、高圧側155のネジ溝81は、低圧側156のネジ溝81に連続しないように形成されてもよい(図6、図7参照)。
以上で説明したように、図3に示した非接触環状シール51は、高圧側155のネジ溝81のリード角が低圧側156のネジ溝81のリード角よりも大きい固定体71を有する。この非接触環状シール51は、例えば以下で説明するような他の固定体を備えることもできる。
図6は、図3に示した非接触環状シール51に使用される固定体の他の例を示す断面図である。図6においては、図3に示した中心軸151を含む平面で切断した場合の固定体の断面図を示す。図6に示す固定体72は、図5に示した固定体71に比べて、境界部161,162においてネジ溝81が不連続である点が異なる。固定体72の他の部分については、図5に示した固定体71と同一であり、その効果も同一であるので、詳細な説明は省略する。
図示のように、境界部161,162において、高圧側155のネジ溝81の断面は、低圧側156のネジ溝81の断面と一致しないように形成される。具体的には、境界部161において、高圧側155のネジ溝81Aの断面は、低圧側156のネジ溝81Bの断面と一致しない。また、境界部162において、高圧側155のネジ溝81Bの断面は、低圧側156のネジ溝81Cの断面と一致しない。
図7は、図3に示した非接触環状シール51に使用される固定体のさらに他の例を示す断面図である。図7においては、図3に示した中心軸151を含む平面で切断した場合の固定体の断面図を示す。図7に示す固定体73は、図5に示した固定体71に比べて、高圧側155のネジ溝81の断面積が低圧側156に比べて異なる点、境界部161,162においてネジ溝81が不連続である点、及びネジ溝81の幅が一定である点が異なる。
固定体73の他の部分については、図5に示した固定体71と同一であり、その効果も同一であるので、詳細な説明は省略する。
図示のように、境界部161において、高圧側155のネジ溝81Aの断面積は、低圧側156のネジ溝81Bの断面積と異なる。また、境界部162において、高圧側155のネジ溝81Bの断面積は、低圧側156のネジ溝81Cの断面積と異なる。ネジ溝81の断面積が境界部161,162において変化するようにネジ溝81が形成されるので、境界部161,162の前後においてネジ溝81の条数を変化させることができる。このため、ネジ溝81A,81B,81Cのリード角θ1A,θ1B,θ1Cをより柔軟に設定することができる。
また、境界部161,162において、高圧側155のネジ溝81の断面は、低圧側156のネジ溝81の断面と一致しないように形成される。具体的には、境界部161において、高圧側155のネジ溝81Aの断面は、低圧側156のネジ溝81Bの断面と一致しない。また、境界部162において、高圧側155のネジ溝81Bの断面は、低圧側156のネジ溝81Cの断面と一致しない。
また、図示のように、固定体73においては、境界部161よりも高圧側155のネジ溝81Aの幅W1Aが、境界部161よりも低圧側156のネジ溝81Bの幅W1Bと同一である。また、境界部162よりも高圧側155のネジ溝81Bの幅W1Bが、境界部162よりも低圧側156のネジ溝81Cの幅W1Cと同一である。これにより、ネジ溝81Aの条数と、ネジ溝81Bの条数と、ネジ溝81Cの条数とが異なっている。具体的には、ネジ溝81Aの条数は、ネジ溝81Bの条数よりも多く、ネジ溝81Bの条数は、ネジ溝81Cの条数よりも多い。
図8は、図3に示した非接触環状シール51に使用される固定体のさらに他の例を示す断面図である。図8においては、図3に示した中心軸151を含む平面で切断した場合の固定体の断面図を示す。図8に示す固定体74は、図5に示した固定体71に比べて、境界部161,162が所定の幅を有する点が異なる。固定体74の他の部分については、図5に示した固定体71と同一であり、その効果も同一であるので、詳細な説明は省略する。
図8に示すように、ネジ溝81Aとネジ溝81Bとの間の境界部161が所定の幅を有する。また、ネジ溝81Bとネジ溝81Cとの間の境界部162が所定の幅を有する。言い換えれば、ネジ溝81は、固定体74の表面に間欠的に形成される。このように、ネジ溝81が固定体74の表面に間欠的に形成されても、図5に示した固定体71と同様の作用を奏し得る。
図9は、図3に示した非接触環状シール51に使用される固定体のさらに他の例を示す断面図である。図9においては、図3に示した中心軸151を含む平面で切断した場合の固定体の断面図を示す。図9に示す固定体75は、図5に示した固定体71に比べて、ネジ溝81の深さが段階的に浅くなるように形成されている点が異なる。固定体75の他の部分については、図5に示した固定体71と同一であり、その効果も同一であるので、詳細な説明は省略する。
図示のように、ネジ溝81A,81B,81Cは、それぞれ、深さD1A,D1B,D1Cを有する。境界部161より高圧側155のネジ溝81Aの深さD1Aは、境界部161より低圧側156のネジ溝81Bの深さD1Bよりも大きい。また、境界部162より高圧側155のネジ溝81Bの深さD1Bは、境界部162より低圧側156のネジ溝81Cの深さD1Cよりも大きい。
一般的に、非接触環状シールにおいて、所定の条数を有するネジ溝のリード角を大きくする場合、ネジ溝の幅を大きくせざるを得ず、ネジ溝の断面積の総和が大きくなる。また、所定の幅を有するネジ溝のリード角を大きくする場合は、条数を増加せざるを得ず、ネジ溝の断面積の総和が大きくなる。ネジ溝の断面積の総和が大きくなると、流体がシール間を流れやすくなる。
図9に示す固定体75のように、所定の条数を有するネジ溝81のうち、ネジ溝81Aのリード角θ1Aを相対的に大きくした場合、ネジ溝81Aの幅が相対的に大きくなり、ネジ溝81の断面積の総和が大きくなる。そこで、図9に示す固定体75のように、高圧側155から低圧側156に向かって、ネジ溝81の深さを段階的に浅くなるように形成することにより、ネジ溝81の断面積の総和を小さくすることができる。これにより、シール間を通過する流体の漏れ量をさらに低減することができる。
なお、図7に示した固定体73のように、所定の幅を有するネジ溝81のうち、ネジ溝81Aのリード角θ1Aを相対的に大きくした場合、ネジ溝81Aの条数が相対的に多くなる。このような場合にも、シール間を通過する流体の漏れ量をさらに低減するためには、ネジ溝81の深さを段階的に浅くなるように、ネジ溝81を形成することが有効である。
図10は、図3に示した非接触環状シール51に使用される固定体のさらに他の例を示す断面図である。図10においては、図3に示した中心軸151を含む平面で切断した場合の固定体の断面図を示す。図10に示す固定体76は、図5に示した固定体71に比べて、リード角の変化位置(境界部)が多い点が異なる。固定体76の他の部分については、図5に示した固定体71と同一であり、その効果も同一であるので、詳細な説明は省略する。
図10に示すように、固定体76は、境界部161,162に加えて、高圧側155に境界部163を有する。したがって、固定体76は、ネジ溝81A,81B,81Cに加えて、高圧側にネジ溝81Dを有する。ネジ溝81Dのリード角θ1Dは、ネジ溝81Aのリード角θ1Aよりも大きい。このように、境界部161,162,163により、ネジ溝81のリード角が、図5に示した固定体71に比べてより多くの位置で変化する。したがって、ネジ溝81のリード角を、軸方向位置に応じて適切な角度に細かく設定することができる。ひいては、非接触環状シール51の不安定振動を抑制する効果と軸封性能とより向上させることができる。なお、境界部161,162,163の数は、3つに限らず、4以上としてもよい。
図11は、図3に示した非接触環状シール51に使用される固定体のさらに他の例を示す断面図である。図11においては、図3に示した中心軸151を含む平面で切断した場合の固定体の断面図を示す。図11に示す固定体77は、図5に示した固定体71に比べて、リード角の変化位置(境界部)が少ない点が異なる。固定体77の他の部分については、図5に示した固定体71と同一であり、その効果も同一であるので、詳細な説明は省略する。
図11に示すように、固定体77は、境界部161のみを有する。したがって、固定体77は、図5に示したネジ溝81Cを有さず、ネジ溝81A及びネジ溝81Bのみを有する。このように、固定体71が、少なくとも1つの境界部161を有し、少なくとも2つのネジ溝81A及びネジ溝81Bを有していれば、図5に示した固定体71と同様の作用を奏し得る。
図12は、図3に示した非接触環状シール51に使用される固定体のさらに他の例を示す断面図である。図12においては、図3に示した中心軸151を含む平面で切断した場合の固定体の断面図を示す。図12に示す固定体78は、図5に示した固定体71に比べて、ネジ溝81のリード角θ1が連続的に小さくなる点が異なる。
図12に示すように、固定体78には、リード角θ1が高圧側155から低圧側156に向かって連続的に小さくなるようにネジ溝81が形成される。したがって、固定体78は、図3に示した境界部161,162のような、リード角θ1が変化する境界部は有していない。
図12に示す固定体78においては、高圧側155から低圧側156の間で、ネジ溝81の条数が変化することはなく、ネジ溝81の幅が高圧側155から低圧側156に向かって連続的に小さくなるように、ネジ溝81が形成される。
図12に示す固定体78によれば、ネジ溝81のリード角θ1が、図5に示した固定体71に比べてより多くの位置で変化する。したがって、ネジ溝81のリード角θ1を、軸方向位置に応じて適切な角度に細かく設定することができる。ひいては、非接触環状シール51の不安定振動を抑制する効果と軸封性能とより向上させることができる。なお、図12に示すネジ溝81のようにリード角が連続的に変化する部分を、図5−図11に示した固定体に組み込むことも可能である。
以上で説明したネジ溝81は、固定体に設けられるものとして説明したが、これに限らず、図3に示した回転体62の外周面に設けられてもよい。しかしながら、上記ネジ溝81は、少なくとも固定体の表面に形成されることが好ましい。ネジ溝81が少なくとも固定体の表面に形成されることにより、不安定振動を抑制する作用を向上させつつ、漏れ量の増加を抑制することができる。
次に、図3に示した非接触環状シール51とは異なる非接触環状シールの例を説明する。図13は、図2に示した非接触環状シール41,43に適用可能な他の実施形態の非接触環状シールを示す部分断面図である。図13に示す非接触環状シール52は、図3に示した非接触環状シール51に比べて、回転体62の構成が異なる。非接触環状シール52の他の部分については、図3に示した非接触環状シール51と同一であり、その効果も同一であるので、詳細な説明は省略する。なお、図13に示す非接触環状シール52は、固定体71に代えて、図6ないし図12に示した固定体72,73,74,75,76,77,78のいずれかを有してもよい。
非接触環状シール52は、その表面にネジ溝91A,91B,91Cが形成された回転体62を有する。ここでは、ネジ溝91A,91B,91Cの全体の総称としてネジ溝91と呼ぶ。ネジ溝91A,91B,91Cは、固定体71に形成されたネジ溝81A,81B,81Cと同様の形状を有する。即ち、ネジ溝91は、ネジ溝91のリード角が変化する境界部164,165を有し、ネジ溝91のリード角は、高圧側155から低圧側156に向かって段階的に小さくなるように形成される。
非接触環状シール52の回転体62にネジ溝91を設ける場合、回転体62の回転により流体を高圧側155に押し戻すポンピング効果が増加する。一方で、回転体62の回転により、回転体62の周囲の流体が旋回し、不安定振動が助長される可能性がある。しかしながら、ネジ溝81が固定体71の表面に形成されることにより、回転体62の表面にネジ溝91が形成されていても、回転体62の回転により生じる流体の旋回を固定体71の表面のネジ溝91により抑制することができる。また、この場合、回転体62の表面に形成されたネジ溝91によるポンピング効果により、流体の漏れ量をより低減することができる。したがって、固定体71と回転体62に、それぞれ、高圧側155のリード角が低圧側156リード角よりも大きいネジ溝81,91が形成されている場合は、不安定振動を抑制しつつ、漏れ量を一層抑制することができる。
また、非接触環状シール52は、図14に示すように、回転体62の表面に平行溝92を有してもよい。さらに、非接触環状シール52は、図15に示すように、回転体62の表面にハニカムパターンを採用したダンパーシール93を有してもよく、図16に示すように、回転体62の表面にホールパターンを採用したダンパーシール94を有してもよい。
次に、本実施形態に係る非接触環状シールを用いたポンプにおける不安定化力と漏れ量の評価試験の結果について説明する。本評価試験では、図3に示した非接触環状シール51を使用したポンプ(実施例)を運転したときの不安定化力(不安定振動)と、シール間を漏洩する液体量(漏れ量)を評価した。評価試験の条件は以下の通りである。なお、固定体71の最小内径とは、固定体71のネジ山位置における内径を意味する。
固定体71の軸方向長さ/固定体71の最小内径:0.817
固定体71の内周面と回転体61の外周面との隙間/固定体71の最小内径:0.004
ネジ条数:8
ポンプ回転数:3000rpm
シール入口側とシール出口側との差圧:1.0MPa
ネジ溝81Aと、ネジ溝81Bと、ネジ溝81Cの軸方向長さは同一である。即ち、固定体71の内周面の高圧側155の1/3の領域にネジ溝81Aが、低圧側156の1/3の領域にネジ溝81Cが、残りの1/3の中間領域にネジ溝81Bが形成されている。また、固定体71のネジ溝81Aのリード角θ1Aと、ネジ溝81Bのリード角θ1Bと、ネジ溝81Cのリード角θ1Cの関係は、以下の通りとした。
リード角θ1B=1/2×リード角θ1A=2×リード角θ1C
比較例として、図3に示した非接触環状シール51のネジ溝81のリード角を一定に形成した非接触環状シールを使用したポンプを運転したときの不安定化力と漏れ量を評価した。比較例1は、ネジ溝81のリード角がリード角θ1Bである非接触環状シールを使用したポンプである。比較例2は、ネジ溝81のリード角がリード角θ1Aである非接触環状シールを使用したポンプである。比較例3は、ネジ溝81のリード角がリード角θ1Cである非接触環状シールを使用したポンプである。
図17は、本評価試験の結果を示すグラフである。本評価試験の結果を比較するために、比較例1の不安定化力及び漏れ量を100%として、比較例2、比較例3、及び実施例の不安定化力及び漏れ量を示す。
図17に示すように、相対的に大きいリード角θ1Aの比較例2において、不安定化力は31%に抑制されており、比較例1に比べて不安定振動が低減されているが、漏れ量が128%に増加している。また、相対的に小さいリード角θ1Cの比較例3においては、漏れ量が92%に減少しており、比較例1に比べて漏れ量は抑制されているが、不安定化力が200%に増加していることが分かる。
一方で、実施例においては、不安定化力が42%であり、漏れ量が100%である。即ち、実施例においては、不安定振動が効果的に抑制されつつ、シール内部を通過する流体の漏れ量の増加も抑制することができていることが分かる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲及び明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、又は省略が可能である。
1 高圧ポンプ
155 高圧側
156 低圧側
161,162,163,164 境界部
61,62 回転体
71,72,73,74,75,76,77,78 固定体
51,52 非接触環状シール
81,81A,81B,81C,81D,91,91A ネジ溝
θ1,θ1A,θ1B,θ1C,θ1D リード角
W1A,W1B,W1C 幅
D1A,D1B,D1C 深さ
11 主軸
21a,21b,21c 羽根車
31,31,31b ケーシング
45a,45b 軸受

Claims (6)

  1. 回転機械の回転部に設けられる回転体と、前記回転機械の固定部に設けられる固定体と、を有し、前記回転体と前記固定体との隙間を流れる流体をシールするように構成された非接触環状シールであって、
    前記隙間を形成する前記回転体の表面及び前記固定体の表面の少なくとも一方に設けられるネジ溝を有し、
    前記ネジ溝は、前記回転体の軸方向に直交する平面に対する前記ネジ溝のリード角を画定し、
    シール入口側の前記ネジ溝の前記リード角は、シール出口側の前記ネジ溝の前記リード角よりも大きい、非接触環状シール。
  2. 請求項1に記載された非接触環状シールにおいて、
    前記ネジ溝は、前記ネジ溝のリード角がシール入口側からシール出口側に向かって段階的に小さくなるように形成される、非接触環状シール。
  3. 請求項1に記載された非接触環状シールにおいて、
    前記ネジ溝は、前記ネジ溝のリード角がシール入口側からシール出口側に向かって連続的に小さくなるように形成される、非接触環状シール。
  4. 請求項1ないし3のいずれか一項に記載された非接触環状シールにおいて、
    シール入口側の前記ネジ溝の深さは、シール出口側の前記ネジ溝の深さよりも大きい、非接触環状シール。
  5. 請求項1ないし4のいずれか一項に記載された非接触環状シールにおいて、
    前記ネジ溝は、少なくとも前記固定体の前記表面に形成される、非接触環状シール。
  6. 電動機と、
    前記電動機と連結されて回転可能に構成される主軸と、
    前記主軸に嵌合され、該主軸とともに回転可能に構成される羽根車と、
    前記羽根車を収容するケーシングと、
    前記ケーシングに取り付けられ、前記主軸を回転可能に支持する軸受と、を備え、
    前記主軸は回転部を有し、
    前記ケーシングは固定部を有し、
    前記回転部及び前記固定部は、請求項1ないし5のいずれか一項に記載された非接触環状シールを有する、回転機械。
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