JPWO2017006986A1 - 樹脂組成物及びその製造方法、並びに成形体 - Google Patents

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Abstract

製法が簡便であり、生産性に優れ、生産コストが安く、かつ、力学強度が高く、難燃性、耐熱老化性、耐候性に優れた成形品を製造可能な樹脂組成物及びその製造方法、並びに前記樹脂組成物から得られる成形体を提供すること。
本発明の樹脂組成物は、リグノセルロース系混合物、及び熱可塑性樹脂を含有し、リグノセルロース系混合物及び熱可塑性樹脂の合計を100質量%としたとき、リグノセルロース系混合物を0.5質量%以上60質量%以下含有し、成形品において1mm以上のブツが目視にて認められないことを特徴とする。

Description

本発明は、樹脂組成物及びその製造方法、並びに成形体に関する。
樹脂に各種繊維状強化材を配合することで、その強度、剛性を大幅に向上させた繊維強化複合材料は、電気・電子、機械、自動車、建材等の産業分野で広く用いられている。この繊維強化複合材料に配合される繊維状強化材としては、優れた強度と軽量性を有するガラス繊維が主に用いられている。しかし、ガラス繊維強化材料では、高剛性化は達成されるが、比重が大きくなるため、軽量化に限界があった。また、このガラス繊維強化材料を廃棄する場合、ガラス繊維自体が不燃性であるために、焼却処理する際に燃焼炉を傷める、また、燃焼効率が低くなるといった問題があり、サーマルリサイクル性に適さないという欠点もあった。他の繊維状強化材としてポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維といった有機材料からなる繊維強化材が検討されてきたが、これら強化材を配合した繊維強化材料は軽量性やサーマルリサイクル性については確保できるものの、機械的補強効果が十分ではないという問題があった。
近年、カーボンニュートラルの観点から植物由来材料を利用した高機能材料が注目されるなか、竹、ケナフ、サトウキビ、木材等の植物繊維を添加した強化樹脂が検討されている(例えば、特許文献1及び2)。
また、前述したような植物繊維を解繊してミクロフィブリル化したセルロース繊維を樹脂に混合した繊維複合材料が提案されている。このようなミクロフィブリル化したセルロース繊維を樹脂の強化材として用いた場合、機械的強度を向上させることが報告されている(例えば、特許文献3及び4)。
例えば、特許文献3では、パルプからのセルロース繊維を溶液内で変性し二軸混練機を用いてミクロフィブリル化してマトリックス樹脂中に均一に分散させる方法が開示されている。
特許文献4では、リグノフェノール誘導体を被覆した、平均繊維径が2nm以上、200nm以下であるセルロース繊維と、マトリックス樹脂中に該セルロース繊維を分散して含有しているセルロース繊維複合材料が開示されている。
特開平5−92527号公報 特開2002−69208号公報 特開2005−42283号公報 特開2011−38193号公報
特許文献1及び2で提案されている複合材料は、いずれも引張弾性率等の力学特性が不十分であるため、用途が限定されていた。
また、特許文献3に記載された発明では、樹脂中へのセルロース繊維の分散が未だに不十分であり、結果的に得られた繊維複合材料は力学的強度が不十分であった。また、変性したセルロースは水分等が含まれており、生産性の点で問題となったり、水分に影響を受けるような樹脂(例えば、ポリアミドやポリエステル)では、セルロース繊維複合材料を製造することができないなどの問題があった。更に、変性する工程が必要であり、コスト面で不利であった。
更に、特許文献4では、セルロース繊維に対してリグノフェノール誘導体で表面被覆することにより熱分解温度を向上させているが、リグノフェノール誘導体で被覆する工程などが必要であり、この製法も生産性やコストの面で課題があった。
本発明が解決しようとする課題は、製法が簡便であり、生産性に優れ、生産コストが安く、かつ、力学強度が高く、難燃性、耐熱老化性、耐候性に優れた成形品を製造可能な樹脂組成物及びその製造方法、並びに前記樹脂組成物から得られる成形体を提供することである。
本発明者らは鋭意検討した結果、リグノフェノール誘導体とセルロース成分と含み、リグノフェノール系混合物と、熱可塑性樹脂とを特定の比率で配合し、成形品において1mm以上のブツが目視にて認められない樹脂組成物とすること、又は、フェノール化合物を添加したリグノセルロース系物質に酸を添加して混合することにより得られるリグノセルロース系混合物と、熱可塑性樹脂とを特定の比率で配合することにより、上記課題が解決されることを見出した。
即ち、本発明は、以下を提供する。
<1> リグノセルロース系混合物、及び熱可塑性樹脂を含有し、リグノセルロース系混合物及び熱可塑性樹脂の合計を100質量%としたとき、リグノセルロース系混合物を0.5質量%以上60質量%以下含有し、成形品において1mm以上のブツが目視にて認められないことを特徴とする、樹脂組成物。
<2> 前記リグノセルロース系混合物の平均長軸長が10〜500nmであり、平均短軸長が5〜50nmである、前記<1>に記載の樹脂組成物。
<3> 前記リグノセルロース系混合物が、針状又は髭状の結晶を含む組成物である、前記<1>又は<2>に記載の樹脂組成物。
<4> 熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリカーボネート樹脂よりなる群から選択される少なくとも1つである、前記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5> 熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂である、前記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6> 熱可塑性樹脂が、ポリエチレン及びポリプロピレンよりなる群から選択される少なくとも1種である、前記<1>〜<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7> 得られる成形品の耐光暴露後伸び保持率が65%以上である、前記<5>又は<6>に記載の樹脂組成物。
<8> 更に、酸化防止剤を含む、前記<1>〜<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9> リグノセルロース系混合物、及び熱可塑性樹脂を含有し、リグノセルロース系混合物及び熱可塑性樹脂の合計を100質量%としたとき、リグノセルロース系混合物を0.5質量%以上60質量%以下含有し、リグノセルロース系混合物は、フェノール化合物を添加したリグノセルロース系物質に酸を添加して混合することにより得られ、リグノフェノール誘導体とセルロース成分とからなる、前記<1>〜<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<10> 酸が、リン酸、ギ酸、及びトリフルオロ酢酸よりなる群から選択される少なくとも1つである、<9>に記載の樹脂組成物。
<11> リグノセルロース系物質に添加するフェノール化合物が、少なくともオルト位又はパラ位に1以上の置換基を有しているフェノール化合物である、<9>又は<10>に記載の樹脂組成物。
<12> リグノセルロース系物質に添加するフェノール化合物が、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、及び水酸基よりなる群から選択される少なくとも1つの置換基を、オルト位及び/又はパラ位に有しているフェノール化合物である、<9>〜<11>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<13> リグノセルロース系混合物が、p−クレゾール、2,6−キシレノール、2,4−キシレノール、2−メトキシフェノール、2,6−ジメトキシフェノール、カテコール、ホモカテコール、及びピロガロールよりなる群から選択される少なくとも1つのフェノール化合物を添加したリグノセルロース系物質に、濃度が90質量%以上のリン酸を添加して混合することにより得られる、<9>〜<12>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<14> リグノセルロース系混合物と熱可塑性樹脂とを熱溶融混合して得られる、<1>〜<13>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<15> 前記<1>〜<14>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を成形して得られる成形体。
<16> フェノール化合物を添加したリグノセルロース系物質に、酸を添加して混合し、リグノフェノール誘導体とセルロース成分とからなるリグノセルロース系混合物を得る工程、及び前記リグノセルロース系混合物と熱可塑性樹脂とを熱溶融混合する工程を有し、前記リグノセルロース系混合物及び前記熱可塑性樹脂の合計を100質量%としたとき、リグノセルロース系混合物を0.5質量%以上60質量%以下含有する樹脂組成物の製造方法。
<17> 酸が、リン酸、ギ酸、及びトリフルオロ酢酸よりなる群から選択される少なくとも1つである、前記<16>に記載の樹脂組成物の製造方法。
<18> リグノセルロース系物質に添加するフェノール化合物が、少なくともオルト位又はパラ位に1以上の置換基を有しているフェノール化合物である、前記<16>又は<17>に記載の樹脂組成物の製造方法。
<19> リグノセルロース系物質に添加するフェノール化合物が、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、及び水酸基よりなる群から選択される少なくとも1つの置換基を、オルト位及び/又はパラ位に有しているフェノール化合物である、前記<16>〜<18>のいずれか1つに記載の樹脂組成物の製造方法。
<20> リグノセルロース系混合物が、p−クレゾール、2,6−キシレノール、2,4−キシレノール、2−メトキシフェノール、2,6−ジメトキシフェノール、カテコール、ホモカテコール、及びピロガロールよりなる群から選択される少なくとも1つのフェノール化合物を添加したリグノセルロース系物質に、濃度が90質量%以上のリン酸を添加して混合することにより得られる、前記<16>〜<19>のいずれか1つに記載の樹脂組成物の製造方法。
<21> 熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリカーボネート樹脂よりなる群から選択される少なくとも1つである、前記<16>〜<20>のいずれか1つに記載の樹脂組成物の製造方法。
<22> 熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン樹脂である、前記<16>〜<21>のいずれか1つに記載の樹脂組成物の製造方法。
<23> 熱可塑性樹脂が、ポリエチレン及びポリプロピレンよりなる群から選択される少なくとも1種である、前記<16>〜<22>のいずれか1つに記載の樹脂組成物の製造方法。
<24> 工程(2)が、リグノセルロース系混合物及び熱可塑性樹脂に加え、更に、酸化防止剤を熱溶融混合する工程である、<16>〜<23>のいずれか1つに記載の樹脂組成物の製造方法。
本発明によれば、製法が簡便であり、生産性に優れ、生産コストが安く、かつ、力学強度が高く、難燃性、耐熱老化性、耐候性に優れた成形品を製造可能な樹脂組成物及びその製造方法、並びに前記樹脂組成物から得られる成形体を提供することができる。
以下に、本発明を説明する。なお、本明細書において、数値の記載に関する「〜」という用語は、端点を含む数値範囲を表す。また、質量%、質量部は、それぞれ重量%、重量部と同義である。本発明において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
(樹脂組成物)
本発明の第一の樹脂組成物は、リグノセルロース系混合物、及び熱可塑性樹脂を含有し、リグノセルロース系混合物及び熱可塑性樹脂の合計を100質量%としたとき、リグノセルロース系混合物を0.5質量%以上60質量%以下含有し、成形品において1mm以上のブツが目視にて認められないことを特徴とする。
また、本発明の第二の樹脂組成物は、リグノセルロース系混合物、及び熱可塑性樹脂を含有し、リグノセルロース系混合物及び熱可塑性樹脂の合計を100質量%としたとき、リグノセルロース系混合物を0.5質量%以上60質量%以下含有し、リグノセルロース系混合物は、フェノール化合物を添加したリグノセルロース系物質に酸を添加して混合することにより得られ、リグノフェノール誘導体とセルロース成分とからなることを特徴とする。
本発明者らは、熱可塑性樹脂にリグノセルロース系混合物を特定量配合することにより、高強度の材料が得られるとともに、耐熱老化性、耐候性にも優れることを見出した。その詳細な効果の発現機構は不明であるが、樹脂との相溶性に優れたリグノフェノール誘導体にセルロース成分が覆われることにより、セルロース成分が樹脂中に均一分散し、樹脂を補強するとともに、内部応力の緩和に寄与し、更に、抗酸化機能・紫外線吸収能を有するリグノフェノール誘導体によって、優れた耐老化性、耐候性が発現した結果であると推定される。
1.リグノセルロース系混合物
本発明において、リグノセルロース系混合物は、フェノール化合物を添加したリグノセルロース系物質に酸を添加して混合することにより得られ、リグノフェノール誘導体とセルロース成分とからなる。
(1)リグノセルロース系物質
リグノセルロース系物質としては、木質化した材料、主として木材である各種材料、例えば、木粉、チップ、廃材、端材などを挙げることができる。また用いる木材としては、針葉樹、広葉樹など任意の種類のものを使用するこができる。更に、各種草本植物、それに関連する試料、例えば、農産廃棄物なども使用できる。
リグノセルロース系物質は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
リグノセルロース系物質には、あらかじめ、粉砕、乾燥等の前処理を行うことが好ましく、また、必要に応じて脱脂処理を行うことが好ましい。
原料であるリグノセルロース系物質の粉砕は、粉砕後の篩い分け時の目開きが5mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることが更に好ましく、0.5mm以下であることが特に好ましく、0.3mm以下であることが最も好ましい。
また、含水率は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。上記含水率となるように、乾燥を行うことが好ましい。含水率を上記範囲内とすることにより、篩い分け時に目詰まりの発生が抑制され、原料粉の収率が向上するので好ましい。
リグノセルロース系物質の種類によっては、脱脂処理を行うことが好ましい。脱脂処理により、不要な油脂分を除去することができる。脱脂方法としては、例えば、撹拌槽内にリグノセルロース系物質と有機溶剤とを投入し、十分に混合・撹拌することによって行うことができる。有機溶剤で脱脂を行うことにより、リグノセルロース系物質中の水分を除去するという効果も得られる。この目的では、アセトン、ヘキサンなどの有機溶剤を使用することが好ましい。
また、脱脂処理を行うための有機溶剤としては、特に限定されず、エタノール−ベンゼン混合溶媒、アセトン−メタノール混合溶媒等が好ましく例示される。
有機溶剤の使用量としては、リグノセルロース系物質の1〜10倍量が好ましい。なお、ここで規定する「倍量」とは、原料1kgに対する有機溶剤の量(リットル数)を意味し、例えば、「5倍量」とは、原料1kgに対して、有機溶剤を5L加えることを意味する。また、有機溶剤を添加した後、1〜120時間撹拌することが好ましく、1〜60時間撹拌することがより好ましい。
フェノール化合物を添加する前に、脱脂に使用した有機溶剤を除去することが好ましいが、フェノール化合物の溶剤と、脱脂に使用する有機溶剤が同じものである場合には、除去工程を省略してもよい。
(2)フェノール化合物
フェノール化合物は、芳香環上に少なくとも1つのOH基を有する化合物であれば特に限定されないが、ベンゼン環上に少なくとも1つのOH基を有する化合物であることが好ましい。
具体的には、フェノール化合物は、1価のフェノール化合物、2価のフェノール化合物、又は、3価のフェノール化合物などを用いることができる。
1価のフェノール化合物の具体例としては、1以上の置換基を有していてもよいフェノール、1以上の置換基を有していてもよいナフトール、1以上の置換基を有していてもよいアントロールなどが挙げられる。
2価のフェノール化合物の具体例としては、1以上の置換基を有していてもよいカテコール、1以上の置換基を有していてもよいレソルシノール、1以上の置換基を有していてもよいヒドロキノンなどが挙げられる。
3価のフェノール化合物の具体例としては、1以上の置換基を有していてもよいピロガロールなどが挙げられる。
フェノール化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
1価〜3価のフェノール化合物が有していてもよい置換基の種類は特に限定されず、任意の置換基を有していてもよいが、好ましくは、電子供与性基であり、例えば、炭素数1以上6以下のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、炭素数1〜6のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基など)、アリール基(フェニル基など)などが挙げられる。これらのなかでも、フェノール化合物は、炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数1〜6のアルコキシ基よりなる群から選択された置換基を少なくとも1つ有することが好ましい。また、アルキル基の炭素数は1〜5であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましく、1〜3であることが特に好ましい。アルコキシ基の炭素数は1〜5であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましく、1〜3であることが特に好ましい。上記アルキル基、アルコキシ基は更に置換基を有していてもよく、該置換基としては、水酸基が例示される。
フェノール化合物が、少なくともオルト位又はパラ位に1以上の置換基を有しているフェノール化合物であることが好ましく、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基及び水酸基よりなる群から選択される少なくとも1つの置換基を、オルト位及び/又はパラ位に有しているフェノール化合物であることがより好ましい。
フェノール化合物は、オルト位のうちの少なくとも片方は無置換であることが好ましい。
フェノール化合物の好ましい例としては、p−クレゾール、2,6−キシレノール、2,4−キシレノール、2−メトキシフェノール(Guaiacol)、2,6−ジメトキシフェノール、カテコール、レソルシノール、ホモカテコール、ピロガロール、及びフロログルシノールなどが挙げられ、p−クレゾール、2,6−キシレノール、2,4−キシレノール、2−メトキシフェノール、2,6−ジメトキシフェノール、カテコール、ホモカテコール、及びピロガロールがより好ましい。
なお、使用するフェノール化合物の種類を選択することにより、得られる本発明の成分であるリグノセルロース系混合物の総体としての機能(親水性、疎水性などの化学的・物理的機能)を制御することができる。
また、本発明で用いるフェノール化合物としては、4位(パラ位)に置換基を有するフェノール化合物、2位(オルト位)に置換基を有するフェノール化合物、2位(オルト位)及び4位(パラ位)に置換基を有するフェノール化合物が好ましい。4位(パラ位)に置換基を有するフェノール化合物とは、2つのオルト位に置換基を有していないフェノール化合物である。また、2位(オルト位)及び4位(パラ位)に置換基を有するフェノール化合物とは、6位(片方のオルト位)に置換基を有していないフェノール化合物である。
リグノフェノール誘導体を、アルカリ条件下で架橋性官能基形成化合物と反応させて、リグノフェノール誘導体中のフェノール性水酸基のオルト位に架橋性官能基を有する架橋性リグノフェノール誘導体を調製し、この架橋性リグノフェノールを架橋することにより高分子材料を調製して使用することもできる。この場合、使用するフェノール化合物の種類を選択することにより、架橋性官能基の導入頻度を調節することができる。即ち、4位(パラ位)に置換基を有するフェノール化合物を使用した場合には、該フェノール化合物は2位又は6位の炭素原子でリグニンのフェニルプロパン単位のベンジル位の炭素原子に結合することになる。この場合、残りの2位又は6位の炭素原子の片方はフリーのまま存在し、架橋性官能基の導入部位となる。
一方、2位(オルト位)及び4位(パラ位)に置換基を有するフェノール化合物を使用した場合には、該フェノール化合物は6位の炭素原子でリグニンのフェニルプロパン単位のベンジル位の炭素原子に結合することになる。この場合、フリーな状態のオルト位及びパラ位は存在しないため、導入フェノール化合物には架橋性官能基導入部位は存在しない。従って、架橋性官能基は、リグニン母体側のみに導入されることになる。
このように、反応性の異なる架橋性官能基導入部位を有するフェノール化合物や、導入部位数がないか、あるいは異なるフェノール化合物を1種あるいは2種以上組み合わせてリグニンに導入することにより、リグノフェノール誘導体における架橋性官能基の導入部位数を制御することができ、結果として、架橋性リグニン誘導体の架橋密度を制御することができる。
即ち、リグノセルロース系物質をフェノール化合物の存在下で酸で処理することにより分離されるリグノフェノール誘導体又はそれを含む高分子材料において、2位(オルト位)又は4位(パラ位)に置換基を有するフェノール化合物を反応性スイッチング素子として使用し、2位(オルト位)及び4位(パラ位)に置換基を有するフェノール化合物をブロッキング性スイッチング素子として使用することにより、リグノフェノール誘導体の機能又は構造を制御することも可能である。
更に、導入フェノール化合物として2位(オルト位)及び6位(オルト位)に置換基を有するフェノール化合物を使用した場合には、該フェノール化合物は4位の炭素原子でリグニンのフェニルプロパン単位のベンジル位の炭素原子に結合することになる。この場合、フリーな状態のオルト位及びパラ位は存在しないため、導入フェノール化合物には架橋性官能基導入部位は存在しない。また、2位(オルト位)及び6位(オルト位)に置換基を有するフェノール化合物はスイッチング機能を発揮することもないため、安定なコントロール素子として機能する。本発明では、4位(パラ位)に置換基を有するフェノール化合物、2位(オルト位)及び4位(オルト位)に置換基を有するフェノール化合物、あるいは2位(オルト位)及び6位(オルト位)に置換基を有するフェノール化合物を、目的に応じて適宜選択して使用することができる。
リグノセルロース系物質に添加するフェノール化合物の添加量は、リグノセルロース系物質100質量部に対して、10〜50質量部であることが好ましく、15〜45質量部であることがより好ましく、20〜40質量部であることが更に好ましい。
また、リグノセルロース系物質のリグニンのフェニルプロパン単位(以下、「C9単位」ともいう。)あたり、1〜5モル倍量のフェノール化合物を添加することが好ましく、1.5〜4.5モル倍量のフェノール化合物を添加することがより好ましく、2〜4モル倍量のフェノール化合物を添加することが更に好ましい。
ここで、リグニンのフェニルプロパン単位は、以下のようにして求められる。具体的には、元素分析値よりC9単位としての示性式を算出し、それを平均基本骨格(C9単位)とする。針葉樹内、広葉樹内での変動はそれほど大きくなく、ここでは針葉樹C9単位(全てグアイアシル単位、C9単位あたりOCH 1個)の分子量を200、広葉樹C9単位(グアイアシル単位(OCH 1個):シリンギル単位(OCH 2個)=50:50)の分子量を215として計算する。
(3)酸
リグノセルロース系物質、より好ましくは、フェノール化合物が収着したリグノセルロース系物質に添加する酸としては、セルロースを膨潤させる作用を有し、かつ、セルロースを加水分解する作用が低い酸が好ましい。なお、リグノセルロース系物質、好ましくはフェノール化合物が収着したリグノセルロース系物質に添加する酸は、上述のフェノール化合物を除く酸である。具体的には、リン酸、塩酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ギ酸などを挙げることができる。好ましくは、リン酸、ギ酸又はトリフルオロ酢酸であり、特に好ましくはリン酸である。リン酸は、濃度が85質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上であり、更に好ましくは95質量%以上である。塩酸は濃度が38質量%以上であることが好ましい。
なお、上記の濃度のリン酸は、99%リン酸から調製することが好ましい。また、上記濃度の塩酸は、冷却、加圧下にて調製することが好ましい。
酸の添加量としては、フェノール化合物で処理後のリグノセルロース系物質100質量部に対して、10〜50質量部であることが好ましく、15〜45質量部であることがより好ましく、20〜40質量部であることが更に好ましい。
(4)リグノセルロース系混合物の製造方法
本発明において、リグノセルロース系混合物は、リグノフェノール誘導体とセルロース成分とからなり、フェノール化合物を添加したリグノセルロース系物質に、酸を添加して混合することによって製造される。
本明細書でいう「リグノフェノール誘導体」とは、リグニンのフェニルプロパン単位の側鎖α位に、フェノール化合物がC−C結合で導入されたジフェニルプロパン単位を含む重合体を意味するものである。この重合体における導入フェノール化合物の量や、分子量は、原料となるリグノセルロース系物質及び反応条件により変動する。
リグノセルロース系物質から本発明のリグノセルロース系混合物を得るには、かかるリグノセルロース系物質中のリグニンをフェノール化合物で処理してリグノフェノール誘導体とする必要がある。リグノセルロース系物質中のリグニンを、リグノフェノール誘導体に変換する方法としては以下の2つの方法が挙げられる。
第1の方法は、木粉等のリグノセルロース系物質に液体状のフェノール化合物(上記で説明したもの、例えば、p−クレゾール等)を浸透させ、リグニンをフェノール化合物により溶媒和させ、次に、リグノセルロース系物質に濃酸(上記で説明したもの、例えば、95質量%リン酸)を添加し混合して、セルロース成分を溶解する。この方法によると、リグニンを溶媒和したフェノール化合物と、セルロース成分を溶解した濃酸とが2相分離系を形成する。フェノール化合物により溶媒和されたリグニンは、フェノール化合物相が濃酸相と接触する界面においてのみ、酸と接触され、酸との接触により生じたリグニン基本構成単位の高反応サイトである側鎖α位(ベンジル位)のカチオンが、フェノール化合物により攻撃される。その結果、前記α位にフェノール化合物がC−C結合で導入され、またベンジルアリールエーテル結合が解裂することにより低分子化される。これによりリグニンが低分子化され、同時にその基本構成単位のベンジル位にフェノール化合物が導入されたリグノフェノール誘導体がフェノール化合物相に生成される。
第2の方法は、リグノセルロース系物質に、固体状又は液体状のフェノール化合物を溶解した溶媒(例えば、エタノール、アセトン、ヘキサン等)を浸透させた後、溶媒を留去する(フェノール化合物の収着工程)。次に、このリグノセルロース系物質に濃酸(上記で説明したもの、例えば、95質量%リン酸)を添加してセルロース成分を溶解する。この結果、第1の方法と同様、フェノール化合物により溶媒和されたリグニンは、濃酸と接触して生じたリグニンの高反応サイト(側鎖α位)のカチオンがフェノール化合物により攻撃されて、フェノール化合物が導入される。また、ベンジルアリールエーテル結合が解裂してリグニンが低分子化される。
第2の方法において、リグノセルロース系物質に対して、フェノール化合物を十分に分散又は溶解させた状態で添加することが好ましく、そのためには、フェノール化合物を有機溶剤に混合・溶解して、溶剤中に分散又は溶解させた状態でリグノセルロース系物質に添加することが好ましい。フェノール化合物とリグノセルロース系物質との反応を効率的に行うためには、フェノール化合物を有機溶剤中に分散又は溶解させた溶液(以下、フェノール化合物溶液ともいう。)を、リグノセルロース系物質1kgに対して、3〜50Lの割合(ここでは、これを3〜50倍量と称する。)にて添加することが好ましく、5〜15倍量で添加することがより好ましい。
フェノール化合物溶液の温度は、特に限定されないが、10〜50℃であることが好ましく、15〜40℃であることがより好ましく、20〜30℃であることが更に好ましい。
フェノール化合物溶液をリグノセルロース系物質に添加したのち、撹拌を行うとともに、好ましくは1〜60時間に渡って、リグノセルロース系物質をフェノール化合物溶液に含浸させることが好ましい。2〜48時間であることがより好ましく、4〜36時間であることが更に好ましい。なお、撹拌は、小スケールの場合にはガラス棒で撹拌する方法や、マグネティックスターラーを使用する方法などが使用でき、大スケールの場合には、マグネティックスターラーを使用する方法や、撹拌翼を有するタンクなどが使用される。
また、上記含浸を行った後、有機溶剤を除去して、フェノール化合物を収着させることが好ましい。
酸の添加は、10〜50℃にて行うことが好ましく、20〜40℃にて行うことがより好ましい。また、酸を添加した後、均一に反応を進行させるために、むらなく十分に撹拌することが好ましく、混練機を使用してもよい。
酸による処理時間は、5分〜2時間であることが好ましく、10分〜1時間であることがより好ましい。
(5)リグノセルロース系混合物
上記反応混合物からリグノセルロース系混合物を調製するためには、濃酸処理後の全反応液を過剰の水中に投入し、不溶画分を遠心分離にて集め、脱酸後、乾燥すればよい。この乾燥物のなかには、リグノフェノール誘導体とセルロース成分が均一に、すなわち、リグノフェノールマトリックス中にセルロース成分が偏在なく一様に存在している。
すなわち、上述の方法により得られたリグノセルロース系混合物は、リグノフェノール誘導体とセルロース成分とを均一に含み、リグノフェノール誘導体のマトリックス中にセルロース成分が偏在することなく一様に存在する組成物であり、特許文献4に記載されているように、セルロース繊維がリグノフェノール誘導体で被覆されているものではない。リグノセルロース系混合物は、セルロースの非晶質部分が加水分解することによって、リグノフェノール誘導体中に単分散した結晶セルロース成分が均一に分布している。本発明において、このようなリグノセルロース系混合物を使用することにより、1mm以上のブツが目視にて認められない、外観に優れた成形品が得られる。
リグノセルロース系混合物は、針状又は髭状の結晶(結晶性セルロース)を含む組成物であることが好ましい。セルロースの結晶性は製造上結晶のみが生成される方法であるが、X線解析によって結晶性を確認することができる。また、力学強度に優れた成形品を得る観点や、熱可塑性樹脂への配合の容易さから、リグノセルロース系混合物の長軸方向の長さの平均(平均長軸長)は、好ましくは10〜500nm、より好ましくは20nm以上、更に好ましくは30nm以上であり、長軸に直行する方向の長さの平均(平均短軸長)は、好ましくは5〜50nm、より好ましく5〜30nm、更に好ましくは10〜20nmである。また、長軸長/短軸長は、5以上が好ましい。なお、平均長軸長は、リグノセルロース系混合物の電子顕微鏡画像を観察することによって求められる。具体的には、電子顕微鏡を用い、ランダムに選択した50個のリグノセルロース系混合物について、各々長軸長と短軸長とを測定し、その平均から平均長軸長及び平均短軸長を求めることができる。なお、長軸に直行する方向(単軸方向)の断面が円形でない場合の単軸長は、含軸方向の測定で最も長い箇所の長さを単軸長とする。
リグノセルロース系混合物は通常流動性を有するものである。しかし、該混合物中のリグノフェノール誘導体画分を抽出すると流動性は失われる。従って、リグノセルロース系混合物では、リグノフェノール誘導体画分が重要な可塑効果を発現しているものと考えられる。
また、本発明の成分であるリグノセルロース系混合物中におけるリグノフェノール誘導体をアシル化(例えば、アセチル化など)することにより、該混合物の流動性を高めることができる。即ち、本発明において、リグノセルロース系混合物中においてリグノフェノール誘導体はそれ同士、あるいはセルロース区分と水素結合で結合し、素材同士が会合する傾向がある。この場合、該組成物の流動性はそれ程高くはない。しかし、リグノフェノール誘導体をアシル化(例えば、アセチル化など)することにより素材間の会合を解消することができ、これによりリグノセルロース系混合物全体の流動性が向上し、成形体などへの加工の際の加工エネルギーを低下させることができる。更に、リグノセルロース系混合物中におけるリグノフェノール誘導体はメチロール化して用いてもよい。メチロール化した材料を用いた場合、比較的密度が低く、吸水率が高く、しかも優れた安定性を有する成形物を作製することができる。
2.熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂としては、例えば、以下のものが挙げられる。
(1)ポリオレフィン系樹脂
ポリオレフィン系樹脂としては、主として以下のものが挙げられる。
(1−1)ポリプロピレン系樹脂
ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体、及びプロピレンを主成分とする共重合体等から選ばれる1種又は2種以上で構成することができる。
プロピレンの単独重合体としては、特に制限はないが、軽量かつ優れた成形性を得る観点から、230℃でのメルトマスフローレートが0.1〜200g/10分であるプロピレン単独重合体が好ましい。更に樹脂組成物の剛性や耐衝撃性の観点から230℃でのメルトマスフローレートが0.2〜60g/10分であることがより好ましい。
プロピレンを主成分とする共重合体としては、特に制限はないが、例えば、プロピレンとエチレンとの共重合体、プロピレンとプロピレン以外の1種又は2種以上のα−オレフィンとのランダム共重合体、及びプロピレンとプロピレン以外の1種又は2種以上のα−オレフィンとのブロック共重合体等が挙げられる。プロピレンを主成分とする共重合体のなかでも、軽量かつ成形性に優れる樹脂組成物を得るという観点から、230℃でのメルトマスフローレートが0.1〜200g/10分であるプロピレン共重合体が好ましい。更に樹脂組成物の剛性や耐衝撃性の観点から230℃でのメルトマスフローレートが0.2〜60g/10分であることがより好ましい。
プロピレン以外のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、及び1−エイコセン等が挙げられる。
(1−2)ポリエチレン系樹脂
ポリエチレン系樹脂は、エチレンの単独重合体、及びエチレンを主成分とする共重合体等から選ばれる1種又は2種以上で構成することができる。
エチレンの単独重合体としては、例えば、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等が挙げられるが、軽量かつ優れた成形性を得る観点から、密度が0.910〜0.965g/cm3であり、190℃でのメルトマスフローレートが0.01〜200g/10分であるエチレン単独重合体が好ましい。190℃でのメルトマスフローレートが上記範囲内であれば、樹脂組成物の流動性及び成形体の表面外観に不具合を生じるおそれがない。190℃でのメルトマスフローレートは、0.01〜60g/10分であることがより好ましい。
エチレンを主成分とする共重合体としては、例えば、エチレンとエチレン以外のα−オレフィンとのランダム共重合体、及びエチレンとエチレン以外のα−オレフィンとのブロック共重合体が挙げられる。エチレンを主成分とする共重合体のなかでも、軽量かつ成形性に優れる樹脂組成物を得るという観点から、190℃でのメルトマスフローレートが0.01〜200g/10分であるエチレン共重合体が好ましい。また、190℃でのメルトマスフローレートが上記範囲内であれば、樹脂組成物の流動性及び成形体の表面外観に不具合を生じるおそれがない。190℃でのメルトマスフローレートは、0.01〜60g/10分であることがより好ましい。
エチレン以外のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、及び1−エイコセン等が挙げられる。
市販のポリオレフィン系樹脂としては、プライムポリマー(株)製のポリプロピレン系樹脂「プライムポリプロ」、「ポリファイン」、「プライムTPO」の各シリーズ等、例えば、品番:J-700GP、出光興産(株)製のポリプロピレン系樹脂(品番:J−966HP)やプライムポリマー(株)製の各種ポリエチレン樹脂「ハイゼックス」、「ネオゼックス」、「ウルトゼックス」、「モアテック」、「エボリュー」の各シリーズ(例えば、高密度ポリエチレン樹脂、品番:2200J)、及び東ソー(株)製の低密度ポリエチレン(例えば、品番:ペトロセン190)等が挙げられる。
(2)ポリスチレン系樹脂
ポリスチレン系樹脂は、例えば、ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(m−メチルスチレン)、ポリ(p−tert−ブチルスチレン)、ポリ(p−クロロスチレン)、ポリ(m−クロロスチレン)、ポリ(p−フルオロスチレン)、水素化ポリスチレン、及びこれらの構成単位を含む共重合体等が挙げられる。これらポリスチレン系樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
市販のポリスチレン系樹脂としては、PSジャパン(株)製、PSJ-ポリスチレンシリーズ(例えば、品番:H8672)、東洋スチレン(株)製、トーヨースチロールシリーズ等が挙げられる。
(3)ポリエステル樹脂
ポリエステル樹脂としては、ポリオール−ポリカルボン酸型ポリエステル樹脂、及びヒドロキシカルボン酸型ポリエステル樹脂が挙げられる。上記ポリオール−ポリカルボン酸型ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、テレフタル酸と1,3−プロパンジオールあるいは1,4−ブタンジオールとの共重合体が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸型ポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸及び/又はポリ乳酸を含む共重合樹脂が例示される。ポリ乳酸樹脂及び/又はポリ乳酸を含む共重合樹脂は、乳酸又は乳酸とそれ以外のヒドロキシカルボン酸を加熱脱水重合することにより、低分子量のポリ乳酸又はその共重合体が得られ、これを更に減圧下に加熱分解することにより、乳酸又はその共重合体の環状二量体であるラクチドが得られ、次いでラクチドを金属塩等の触媒存在下で重合してポリ乳酸樹脂及び/又はポリ乳酸を含む共重合樹脂が得られる。
これらポリエステル樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
市販のポリオール−ポリカルボン酸型ポリエステル樹脂としては、三井化学(株)製、三井PETTMシリーズ(例えば、品番:三井J125)や東洋紡(株)製、バイロンシリーズ等が挙げられる。
市販のポリ乳酸樹脂及び/又はポリ乳酸を含む共重合樹脂としては、浙江海正生物材料股分有限公司製の結晶性ポリ乳酸樹脂(品番:レヴォダシリーズ、L体/D体比=100/0〜85/5)や三井化学(株)製のポリ乳酸樹脂(植物澱粉を乳酸発酵して製造)であるレイシアシリーズ等が挙げられる。
(4)ポリアミド樹脂
ポリアミド樹脂は、例えば、ラクタムの開環重合体、ジアミンと二塩基酸との重縮合体、ω−アミノ酸の重縮合体等が挙げられる。これらポリアミド樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
市販のポリアミド樹脂としては、東レ(株)製のナイロン6やナイロン66であるアミランシリーズ、旭化成(株)製のポリアミド66樹脂であるレオナシリーズ、及び帝人(株)のn−ナイロンやn,m−ナイロンシリーズ等が挙げられる。
(5)ポリカーボネート樹脂
ポリカーボネート樹脂は、芳香族ポリカーボネート樹脂であっても脂肪族ポリカーボネート樹脂であってもよいが、リグノセルロース系混合物との親和性の観点及び耐衝撃性と耐熱性の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂を用いることがより好ましい。
芳香族ポリカーボネート樹脂としては、通常、2価フェノールとカーボネート前駆体との反応により製造される芳香族ポリカーボネート樹脂を用いることができる。芳香族ポリカーボネート樹脂は、他の熱可塑性樹脂に比べて、耐熱性、難燃性及び耐衝撃性が良好であるため樹脂組成物の主成分とすることができる。
また、芳香族ポリカーボネート樹脂として、芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体、又は芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を含む樹脂を用いる場合、難燃性及び低温における耐衝撃性を更に向上することができる。該共重合体を構成するポリオルガノシロキサンは、ポリジメチルシロキサンであることが難燃性の点からより好ましい。
市販の芳香族ポリカーボネート樹脂としては、出光興産(株)製のタフロンシリーズや帝人(株)製のパンライトシリーズ等が挙げられる。
熱可塑性樹脂は相溶性のあるものは適宜混合して用いてもよい。例えば、一般に流動性が悪いと考えられている芳香族ポリカーボネート樹脂にポリエステル樹脂を適量混合すれば、流動性が改善される。
また、前記(1)〜(5)に記載した熱可塑性樹脂以外に、それらと相溶性のある他の熱可塑性樹脂、例えば、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン樹脂)や(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体等を適量混合してもよい。
熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリカーボネート樹脂よりなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましく、ポリオレフィン樹脂であることがより好ましい。
3.割合
本発明の樹脂組成物は、リグノセルロース系混合物及び熱可塑性樹脂の合計を100質量%としたとき、リグノセルロース系混合物を0.5質量%以上60質量%以下含有する。
リグノセルロース系混合物の含有量が0.5質量%未満であると、強度や難燃性が不十分であり、60質量%を超えると流動性が大きく低下し、成形品外観が大きく低下する。好ましくはリグノセルロース系混合物の含有量が2質量%以上40質量%以下であり、更に好ましくは4質量%以上30質量%以下である。
なお、本発明の樹脂組成物は、後述するように、リグノセルロース系混合物及び熱可塑性樹脂以外の成分、例えば、各種添加剤を含有していてもよいが、樹脂組成物中のリグノセルロース系混合物及び熱可塑性樹脂の総含有量は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。
4.その他の添加剤
(各種添加剤)
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、各種添加剤を含有してもよい。そのような添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、結晶核剤、軟化剤、帯電防止剤、金属不活性化剤、抗菌・抗カビ剤、顔料等が挙げられる。これらのなかでも、本発明の樹脂組成物は、少なくとも酸化防止剤を含有することが好ましい。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾエート系化合物、ポリアミドポリエーテルブロック共重合体(永久帯電防止性能付与)等が挙げられる。
酸化防止剤としては、特に限定されないが、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等が挙げられる。市販の酸化防止剤としては、イルガノックス1010、イルガノックス1076(BASF社製、フェノール系酸化防止剤)、アデカスタブ2112、アデカスタブPEP36(ADEKA社製、リン系酸化防止剤)が例示される。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
滑剤としては、特に限定されないが、脂肪酸アミド系滑剤、脂肪酸エステル系滑剤、脂肪酸系滑剤、脂肪酸金属塩系滑剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
結晶核剤としては、特に限定されないが、ソルビトール類、リン系核剤、ロジン類、石油樹脂類等が挙げられる。
軟化剤としては、特に限定されないが、流動パラフィン、鉱物油系軟化剤(プロセスオイル)、非芳香族系ゴム用鉱物油系軟化剤(プロセスオイル)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
帯電防止剤としては、特に限定されないが、カチオン系帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤、ノニオン系帯電防止剤、両性系帯電防止剤、グリセリン脂肪酸モノエステル等の脂肪酸部分エステル類が挙げられる。
金属不活性化剤としては、特に限定されないが、ヒドラジン系金属不活性化剤、窒素化合物系金属不活性化剤、亜リン酸エステル系金属不活性化剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
抗菌・抗カビ剤としては、特に限定されないが、有機化合物系抗菌・抗カビ剤、天然物有機系抗菌抗カビ剤、無機物系抗菌・抗カビ剤等が挙げられる。
顔料としては、特に限定されないが、無機顔料、有機顔料等が挙げられる。無機顔料としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、カーボンブラック等が挙げられる。有機顔料としては、アゾ顔料、酸性染料レーキ、塩基性染料レーキ、縮合多環顔料等が挙げられる。これらの顔料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
添加剤成分の配合量は、本発明の樹脂組成物の特性が損なわれない範囲であれば特に制限はない。
5.製法
本発明の樹脂組成物の製造方法は特に限定されないが、リグノセルロース系混合物と熱可塑性樹脂を熱溶融混合して得ることが好ましい。
(混練・成形)
本発明の樹脂組成物は、リグノセルロース系混合物と熱可塑性樹脂を前記割合で、更に必要に応じて添加される各種添加剤を配合し、熱溶融混合することにより得られる。このときの配合及び混練は、通常用いられている機器、例えばリボンブレンダー、ドラムタンブラー等で予備混合して、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、及びコニーダ等を用いる方法で行うことができる。
混練の際の加熱温度は、熱可塑性樹脂の種類により通常160〜350℃の範囲で適宜選択されるが、熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂を用いる場合は160〜250℃の範囲、ポリスチレン系樹脂を用いる場合は170〜280℃の範囲、ポリエステル樹脂を用いる場合は230〜280℃の範囲で選択することが好ましい。
また、ポリアミド樹脂を用いる場合は240〜290℃の範囲、ポリカーボネート樹脂を用いる場合は270〜350℃の範囲、ポリ乳酸樹脂を用いる場合は190〜250℃の範囲で選択することが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、上記の溶融混練及びペレット化によって得られたペレットを原料として、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法、真空成形法、及び発泡成形法等により各種成形体を製造することができる。特に、上記溶融混練方法により、ペレット状の成形原料を製造し、次いでこのペレットを用いて、射出成形又は射出圧縮成形による射出成形体の製造、及び押出成形による押出成形体の製造に好適に用いることができる。また、押出成形にて押出シートにした後に加圧・熱成形して成形体としてもよい。
本発明の樹脂組成物から得られる成形品は、1mm以上のブツ(粒状物)が目視にて認められないことが好ましい。リグノセルロース系混合物を熱可塑性樹脂と混合した場合、好ましくは熱溶融混合した場合に、リグノセルロース系混合物は熱可塑性樹脂中での分散性に優れるため、ブツ(粒状物)の発生が抑制できる。これは、リグノセルロース系混合物がリグノフェノールフェノール誘導体のマトリックス中にセルロース成分が偏在することなく一様に存在しているためである。
また、本発明の樹脂組成物から得られる成形品は、リグノセルロース系混合物を添加しない場合に比べて、引張降伏強さ及び引張弾性率に優れることが好ましい。
更に、本発明の樹脂組成物から得られる成形品は、リグノセルロース系混合物を添加しない場合に比べて、耐光暴露後伸び保持率が向上することが好ましい。熱可塑性樹脂としてポリオレフィン樹脂(好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンよりなる群から選択される少なくとも1種、より好ましくはポリプロピレン)を使用した場合、耐光暴露後伸び保持率が、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上、より更に好ましくは85%以上である。耐光暴露後伸び保持率は、実施例に記載の方法により測定される。
本発明の樹脂組成物から得られる成形品は、リグノセルロース系混合物を添加しない場合に比べて、オーブン暴露後伸び保持率が向上することが好ましい。熱可塑性樹脂としてポリオレフィン樹脂(好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンよりなる群から選択される少なくとも1種、より好ましくはポリプロピレン)を使用した場合、オーブン暴露後伸び保持率が、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上、より更に好ましくは90以上である。オーブン暴露後伸び保持率は、実施例に記載の方法により測定され、熱可塑性樹脂に適した温度に暴露する。
また、本発明の樹脂組成物から得られる成形品は、リグノセルロース系混合物を添加しない場合に比べて、難燃性(LOI)に優れることが好ましい。
6.用途
本発明の樹脂組成物、及び前記樹脂組成物より得られた成形体は、OA材料、電気・電子材料、自動車材料、産業資材、電線被覆材料、フィルム、繊維等に好適に用いることができる。
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
(製造例1:リグノセルロース系混合物の調製と評価)
(1)脱脂試料の調製
ヒノキ(Chamaecyparis obtusa)の木粉を振動ミル(HEIKO製作所、TI−50)にて微粉化し、80mesh(目開き0.18mm)のふるい((株)飯田製作所)にかけ、80mesh passの木粉を得た。この木粉を室温にてエタノール:ベンゼン=1:2(還流下で着色がなくなるまで添加した。木粉の10〜50倍量程度である。)で48時間、25℃にて抽出後、可溶分を溶媒とともに除去し、更に、ドラフト内で抽出残渣の溶媒を完全に留去し、供試試料とした。
(2)リン酸系相分離処理
(2−1)フェノール化合物収着木粉の製造
500ml容ビーカーに上記脱脂木粉23gを量り取り、p−クレゾールのアセトン溶液(リグニンC9単位当たり3モル倍のフェノール化合物を含む)を加え、ガラス棒で撹拌し、アルミホイル及びパラフィルムでビーカーに蓋をし、24時間静置させた。その後、60分ドラフト内で木粉を激しく撹拌し、その後、アセトンを留去した。
(2−2)リン酸処理(相分離処理)
上記で得られたフェノール化合物収着木粉に濃度が95質量%のリン酸200ml(50℃)を3回に分けて加え、ガラス棒及びテフロン(登録商標)へらで練り込み、1時間50℃で激しく撹拌した。その後、反応物を約3,500mlの脱イオン水に投入することでリン酸濃度を10%以下にし、反応を停止させ、更に反応物を分散させるためにスターラーで1時間激しく撹拌した。次に、遠心分離(8,800rpm、8分、4℃)により不溶画分を分離回収し、脱酸を行い、凍結乾燥・減圧乾燥し、相分離処理木粉を得た。
こうして得られた試料は、セルロース成分が一度溶解し、再結晶するため、リグノフェノール誘導体とセルロース成分とを均一に含む、すなわち、リグノフェノール誘導体のマトリックス中にセルロース成分が偏在することなく一様に存在する針状又は髭状の結晶からなる組成物(本明細書では、リグノセルロース系混合物とも称する。)である。電子顕微鏡で得られた組成物の大きさを観察したところ、平均長軸長は10〜500nmであり、平均短軸長は5〜50nmであった。
(実施例1〜9、及び比較例1〜8)
表1及び表2に示す割合で各成分を配合し、押出機(機種名:PCM−30、(株)池貝製)に供給し、160〜220℃で溶融混練し、ペレット化した。なお、全ての実施例及び比較例において、樹脂組成物100質量部に対して、酸化防止剤としてイルガノックス1010(BASF社製)0.2質量部及びアデカスタブ2112(ADEKA製)0.1質量部をそれぞれ配合した。得られたペレットを、80℃で12時間乾燥させ後、射出成形機(東芝機械(株)製、型式:IS100N)シリンダー温度210〜260℃、金型温度40℃の条件で射出成形してASTM規格準拠試験片を得た。得られた試験片を用いて性能を各種試験によって評価し、その結果を表1及び表2に示した。
なお、表中の「−」の記載は、当該成分を含有しないことを意味する。
表1及び2で使用した各成分は、以下のとおりである。
・ポリプロピレン(J−966HP):ポリプロピレン、出光興産(株)製、商品名「IDEMITSU PP:J−966HP」
・高密度ポリエチレン(2200J):高密度ポリエチレン、(株)プライムポリマー製、商品名「HI−ZEX 2200J」
・PC(A1900):ポリカーボネート樹脂、出光興産(株)製、商品名「タフロンA1900」
・ABS(テクノABS130):アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、テクノポリマー(株)製、商品名「テクノABS130」
・PHBH(X131A):ポリ(R−3−ヒドロキシブチレート−co−R−3−ヒドロキシヘキサナート)、(株)カネカ製、商品名「アオニレックス X131A」
・リグノセルロース系混合物:上記製造例1にて調製したリグノセルロース系混合物
・セルロース:セルロースファイバー、セライト社製、SW−10
なお、得られた樹脂組成物及び成形体の評価を以下の項目について行った。
(引張試験)
ASTM D638準拠して、引張降伏強さ(MPa)、及び引張弾性率(MPa)を測定した。
(破断伸び率)
ASTM D638準拠して、破断伸び率(%)を測定した。
(耐光暴露後伸び保持率)
キセノンランプに83℃雰囲気下で300時間暴露し、上記と同様に破断伸び率を測定し、未処理の値をもとに伸び保持率を評価した。
(オーブン暴露後伸び保持率)
オーブンに120℃雰囲気下で500時間暴露し、上記と同様に破断伸び率を測定し、未処理の値をもとに伸び保持率を評価した。
(難燃性(LOI))
JIS K7201−2準拠して、難燃性の指標であるLOI値を測定した。
(セルロース分散状態)
セルロースの分散状態は、成形品を目視にて評価した。
評価基準は、以下のとおりである。
A:ブツが認められない
B:1mm未満のブツが認められる
C:1mm以上のブツが認められる
また、得られた試験片について、色調の観察を行った結果、樹脂としてポリプロピレン又は高密度ポリエチレンを使用した実施例1〜4では顕著な着色は観察されなかったが、ポリカーボネート樹脂を使用した実施例6では強い着色があり(YI=45)、また、ポリカーボネート樹脂とABSを併用した実施例5でも着色が認められた(YI=27)。
得られるリグノフェノール誘導体−セルロース成分混合物(リグノセルロース系混合物)は、セルロースをフィブリル化したり、リグノフェノールを被覆する工程が無く、製造が簡単であるとともに、得られる混合物は粉末状であり、熱可塑性樹脂に溶融混合しても分散が良好であり、成形外観に悪影響を及ぼさない。請求項の含有割合の範囲内であれば、強度が高く、耐熱性、耐候性、難燃性に優れる組成物となることが明らかとなった。

Claims (14)

  1. リグノセルロース系混合物、及び熱可塑性樹脂を含有し、
    リグノセルロース系混合物及び熱可塑性樹脂の合計を100質量%としたとき、リグノセルロース系混合物を0.5質量%以上60質量%以下含有し、
    成形品において1mm以上のブツが目視にて認められないことを特徴とする、樹脂組成物。
  2. 前記リグノセルロース系混合物の平均長軸長が10〜500nmであり、平均短軸長が5〜50nmである、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記リグノセルロース系混合物が、針状又は髭状の結晶を含む組成物である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリカーボネート樹脂よりなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1〜3のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
  5. 熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
  6. 熱可塑性樹脂が、ポリエチレン及びポリプロピレンよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
  7. 得られる成形品の耐光暴露後伸び保持率が65%以上である、請求項5又は6に記載の樹脂組成物。
  8. 更に、酸化防止剤を含む、請求項1〜7のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれか1つに記載の樹脂組成物を成形して得られる成形体。
  10. フェノール化合物を添加したリグノセルロース系物質に、酸を添加して混合し、リグノフェノール誘導体とセルロース成分とからなるリグノセルロース系混合物を得る工程、及び
    前記リグノセルロース系混合物と熱可塑性樹脂とを熱溶融混合する工程を有し、
    前記リグノセルロース系混合物及び前記熱可塑性樹脂の合計を100質量%としたとき、リグノセルロース系混合物を0.5質量%以上60質量%以下含有する
    樹脂組成物の製造方法。
  11. 酸が、リン酸、ギ酸、及びトリフルオロ酢酸よりなる群から選択される少なくとも1つである、請求項10に記載の樹脂組成物の製造方法。
  12. リグノセルロース系物質に添加するフェノール化合物が、少なくともオルト位又はパラ位に1以上の置換基を有しているフェノール化合物である、請求項10又は11に記載の樹脂組成物の製造方法。
  13. リグノセルロース系物質に添加するフェノール化合物が、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、及び水酸基よりなる群から選択される少なくとも1つの置換基を、オルト位及び/又はパラ位に有しているフェノール化合物である、請求項10〜12のいずれか1つに記載の樹脂組成物の製造方法。
  14. リグノセルロース系混合物が、p−クレゾール、2,6−キシレノール、2,4−キシレノール、2−メトキシフェノール、2,6−ジメトキシフェノール、カテコール、ホモカテコール、及びピロガロールよりなる群から選択される少なくとも1つのフェノール化合物を添加したリグノセルロース系物質に、濃度が90質量%以上のリン酸を添加して混合することにより得られる、請求項10〜13のいずれか1つに記載の樹脂組成物の製造方法。
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