JPWO2016159371A1 - 経頭蓋磁気刺激装置用コイル装置 - Google Patents

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Abstract

経頭蓋磁気刺激装置用コイル装置は、コイルが人間の頭部表面に対向するように設けられ、電磁誘導によって脳内の磁気刺激対象領域に誘導電場による電流を発生させてニューロンを刺激する経頭蓋磁気刺激装置のためのコイル装置であって、所定の基準面に沿って導線を巻回して構成されたコイルと、上記頭部とは上記コイルを挟み反対側である位置において、前記コイルに対向するように設けられ、前記コイルが駆動されたときに誘導電場による電流が流れ、かつ当該誘導電場による電流により上記脳内の磁気刺激対象領域に流れる誘導電場による電流を、磁性体がないときに比較して増大させる磁性体を備える。

Description

本発明は,経頭蓋磁気刺激装置用コイル装置、及び上記コイル装置を備えた経頭蓋磁気刺激装置に関する。
1.1 従来技術
近年,脳卒中などの生活習慣病の患者数が増加している。生活習慣病の後遺症の1つが,神経障害性疼痛である。神経障害性疼痛とは,何らかの理由によって神経が障害され,それによって生じる手足の痛みである。
通常,神経障害性疼痛の治療法として最初に行われるのは,薬物治療である。しかし,薬物治療は,治療対象範囲が狭く,すべての患者に対して有効というわけではない。このような事情から,頭部に埋め込まれた電極を使って大脳一次運動野を直接電気刺激する方法が提案された。しかし,埋め込み電極を用いた電気刺激治療は,開頭手術が必要であるため,患者の負担が非常に大きい,という問題がある。
そこで,大阪大学の齋藤氏らは,鋭意研究を重ね,埋め込み電極を使わず非侵襲的に大脳一次運動野を刺激する経頭蓋磁気刺激法(具体的には,コイルに交流を流すことによって形成されるパルス磁場で脳を刺激する方法)を提案するとともに,この経頭蓋磁気刺激法によれば脳卒中後の神経障害性疼痛が改善できることを明らかにした。しかし,経頭蓋磁気刺激法は,開頭手術を必要としない点で優れているものの,その治療効果が1日程度しか持続しないため,毎日磁気刺激治療を受ける必要がある。
1.2 経頭蓋磁気刺激法
経頭蓋磁気刺激は,頭部表面に置いたコイル装置に内蔵されたコイルからパルス磁場を発生させ,このパルス磁場によって脳内に誘導された電場で脳を磁気刺激する手法である。そのために、コイルには駆動回路に接続される。この駆動回路によれば、瞬間的な電流をコイルに発生させるために、電源装置(交流電源,電源回路,昇圧回路を含む。)からコンデンサへ電荷を蓄積する。その後,サイリスタをターンオンすることにより刺激コイルに電流を流す。刺激コイルとコンデンサの共振回路にダイオードを通して電流が流れたのち,サイリスタがオフになる。これにより,正弦波1周期分の電流が刺激コイルに流れる。以上の動作を繰り返すことにより、コイルには一定周期の交流が印加されて変動磁場が形成されるとともに、その変動磁場の影響を受けて脳内にはコイル電流とは逆向きの渦電流が誘導され、その渦電流でニューロンを刺激することによって活動電位を発生される。
このようにして脳の一次運動野を磁気刺激すると、その刺激部位に対応した体の部分に影響が表れる。例えば,手又は足の神経につながっている一次運動野を磁気刺激すれば,手又は足の神経が刺激されて対応部位が動く。これは,コイルに流れる電流がそれとは逆向きの電流を脳内に誘導し,それが介在ニューロン,さらには皮質脊髄ニューロンを刺激し,刺激された脳の部位に対応する体の一部が動くものと考えられる。
磁気刺激の優れている点は,侵襲性が非常に低いことである。具体的には,磁場は生体組織に影響されることなく脳内へ達する。従って,痛覚受容器をもつ頭皮を殆ど刺激せず,その刺激に起因する痛みが殆どない。
歴史的には,ヒトに対する磁気刺激は1985年に初めて報告され,その後神経疾患の診断において臨床応用されてきた。また,様々な神経疾患や精神疾患を持つ患者に対して反復的に経頭蓋磁気刺激を与えることによって,その症状が改善することも報告されるようになり,近年は治療への応用が進んでいる。例えば,うつ病の治療に関して,前頭前野への刺激が有効であることが見出され,2008年米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration)は薬物治療抵抗性のうつ病に対する磁気刺激治療を承認した。パーキンソン症候群の治療に関しても多くの臨床研究が行われ,磁気刺激の有効性を示す知見が蓄積されている。既述のように,磁気刺激治療は神経障害性疼痛にも除痛効果を発揮する。従って,現在,日本では,設備の整った病院において様々な神経疾患の患者に対して磁気刺激治療が行われている。
しかし,従来の磁気刺激装置は,約70Kgの重量があり,また設置のために電気工事が必要であるため,設備の整った医療機関でしか利用できない。また,実際の治療時には患者のMRIデータを参照しながら刺激位置を決定するため,熟練した医療従事者による治療が必要である。そのため,医療機関の専門家による治療のみ行われているのが実情であり,除痛効果を継続して得るためには医療機関に毎日通う必要がある。従って,患者の負担を軽減するため,非医療従事者による操作のみで利用可能な在宅用磁気刺激治療装置の開発が求められている。
1.3 経頭蓋磁気刺激装置
現在,医療現場では,種々の経頭蓋磁気刺激装置が導入され利用されている。これらの磁気刺激装置は,医師等の医療従事者が操作することを想定して作られており,刺激する部位は医師によって決められている。具体的な治療の一例として神経障害性疼痛の治療では,患者の脳の一次運動野付近を刺激してトイッチ(twitch)と呼ばれる指が動くけいれん現象を確認し,トイッチが確認出来た脳の位置を刺激ポイントに設定し,トイッチが確認できる刺激強度の90%の電流を治療時にコイルに印加する。脳内部の刺激位置が数ミリでもずれると,目的の刺激部位とは違った部位が刺激されてしまう。そのため,目的の刺激部位に適正強度の刺激が与えられるように,コイルは目的の部位に正確に設置されることが重要である。
しかし,神経障害性疼痛の患者は,手足の痛みによって著しくQOL(Quality of Life:生活の質)が低下している場合が多い。また,経頭蓋磁気刺激による除痛効果が1日程度しか持続しないことが報告されている。そのため,コイルが刺激部位に対して適正に且つ簡単に位置合わせできる,安全で,安価で,且つ小型の在宅用磁気刺激治療装置が望まれている。
1.4 経頭蓋磁気刺激に用いられている従来の刺激位置合わせシステム
上述のとおり,経頭蓋磁気刺激では目的の脳部位を正確に刺激することが重要である。それを行うために,様々な位置合わせシステムが開発されてきた。例えば,赤外線カメラを用いた位置合わせシステムが提案されている。このシステムによれば,頭(脳)と刺激コイルにつけた複数の目印が付属の光学式カメラで撮影され,頭(脳)とコイルの位置関係がモニター画面に表示される。また,患者のMRI画像データとカメラの画像を組み合わせることで,コイルと脳の相対的な位置を正確に把握し,より正確な位置合わせが可能である。実際,位置ずれ誤差は多少異なるが,概ね数ミリ程度である。しかし,システムのサイズが大きい,また医療従事者でないと扱えない,さらに価格が高い,といった問題がある。
1.5 経頭蓋磁気刺激に用いられる従来の刺激コイル
上述のとおり,在宅用の磁気刺激装置はコンパクトであることが望ましい。一方,電力供給部の大きさはコイルの刺激効率に反比例する。従って,高刺激効率であればあるほど電力供給量が少なくてすみ,回路素子の数が少なくなり,装置は小型で且つ安価になる。そのため,より効率良く刺激を与えることができる,様々な刺激コイルが開発されてきた。また,経頭蓋磁気刺激は,その刺激特性に応じて治療効果が異なるため,多様な刺激特性をもつ様々なコイルが開発されてきた。
例えば,1985年,円形コイルの中央直下を強く刺激できる特性の円形コイルが開発された。また,1988年には8字型コイルが開発された[参考文献1,2]。
(a)円形コイル
米国のマグベンチャー社(Magventure)から商業的に提供されている円形コイルがある。この円形コイルは,例えば,一本の導線(導体)をアルキメデスの螺旋に沿って渦巻き状に曲げた一つの渦巻きコイルをケーシングに内蔵したもので,広範囲に刺激が出来るというメリットがある一方で,刺激効率が悪いというデメリットがある。コイル中央部分の刺激強度はほぼゼロに近い。従って,円形コイルは,狭い部分を局所的に刺激する検査や治療に利用するのは不適切であると考えられる。
(b)8字型コイル
米国のマグスティム社(Magstim)によって開発された8字型コイルがある。この8字型コイルは,一本の導線(導体)を曲げて2つの渦巻きコイル部分を有する8字渦巻きコイルをケーシングに内蔵したものである。
動作時,一方の円形コイルには時計回り方向に電流が流され,他方の円形コイルには反時計回りに電流がなされ,これにより,両円形コイルの中央部分に対応する部位を強く刺激することができる。上述した円形コイルに比べ,局所的な刺激が行えるために,高い刺激効率が得られる。しかし,ロバスト性(より広い範囲で渦電流を発生することができ、若干のずれがあっても有効的に磁気刺激を与えることができる性質をいう)が低いという課題がある。一般的に,8字型コイルは,その空間分解能が5mm以内であることから,高い分解能で脳を刺激できるという利点がある。
(c)H−コイル
2005年,Zangen氏らによって,Hコイルが提案された。Hコイルは,脳に垂直な方向成分をもつ部分に流れる電流によって脳の深部を刺激することができるという利点がある。例えば,8字型コイルに比べて約2.5倍の深さまで刺激できる。しかし,Hコイルは,刺激効率が悪いという問題がある。そのため,深部の背外側前頭前野を刺激することが求められるうつ病等の治療には,Hコイルが有効であると考えられる。また,深部を刺激する際に誘導電場の減衰が少ない,ことが特徴として挙げられる。そのため,磁気刺激の際に患者が瞬間的な痛みを感じにくいという利点がある。
特開2012−125546号公報 国際公開第2010/147064号公報 国際公開第2015/122506号公報
1.6 経頭蓋磁気刺激に用いられる位置合わせシステムに関する研究動向
上述のように,従来の位置合わせシステムは高価な機器を用いており,かつ医師による操作が必要であったため,在宅用装置としては適していなかった。この問題を解消する目的から,大阪大学の西川氏らはより操作しやすいデータセット型磁場ナビゲーションシステムを開発した[参考文献3]。ここでいうデータセットとは刺激コイルに取り付けた永久磁石が発する磁場の強度と刺激コイルの3次元位置の組み合わせである。磁場の強度は,複数の磁気センサで計測される。本手法では,まず病院において患者に磁気センサの付いためがね型固定具を装着する。めがね型固定具を同じ位置に装着させるために,コイルに取り付けた複数の永久磁石から発する磁力を磁気センサで検出する。また,医師が最適刺激位置を特定し,最適刺激位置とそれに対応するコイルの三次元位置を予め取得する。患者自身がコイルを位置合わせする場合,予め得られたデータセットを利用し,最適刺激位置に移動させるためにはどのように動かせばいいかをモニターを見ながら判断し,操作する。本システムを20代男性の健常者が利用した際の位置ズレ誤差は5mm程度であった。
1.7 経頭蓋磁気刺激に用いられる高刺激効率激コイルに関する研究動向
上述のように,在宅用の磁気刺激装置はコンパクトであることが重要である。そのために,高効率な刺激コイルが求められている。しかし,これまで開発されてきたコイルは多様な刺激特性を有するものの,在宅用として用いるためには,効率性を改善すべきである。また,医師が操作することなどを前提としており,広範囲に刺激できるロバスト性の高いコイルはまだ開発されていなかった。
1.7.1 変形8字型コイル
現在,種々の変形8字型コイルが利用されている[参考文献4〜15]。これらの変形8字型コイルは、2つの渦巻きコイル部分を部分的に重ね合わせたもの(重ね合わせ型:図11参照)と,2つの渦巻きコイル部分を重ね合わせることなく並列に配置した(非重ね合わせ型:図3参照)に分類される。8字渦巻きコイルはまた,2つの渦巻きコイル部分をアルキメデスの螺旋に沿って曲げたアルキメデス型(非偏心型)と,2000年に関野氏らによって開発された、2つの渦巻きコイル部分のそれぞれの中心を他方の渦巻きコイル部分に向けて偏心させた(偏心型)に分類される。これらのうち,偏心型の8字渦巻きコイルは,円形コイルの中心を他方の円形コイルに近づけた構造で,8字型コイルの中央部分に導線が密に配置されている。そのため,2つの渦巻きコイル部分が接近したコイル部分又は重ね合わされたコイル部分に逆向きに電流を流すことで,渦電流を中心部直下に集中させることができるため,非偏心8字型コイルよりも効率のよい局所的な刺激が得られるという特徴である。ただし、変形8字型コイルについても、ロバスト性については改善の余地があると考えられる。
その他にも,幾つかの変形8字型コイルが提案されているが,基本的な性能について劇的な相違はない。例えば,英国SA34 0HR,カーママゼンジャー,ウィットランド,スプリング・ガーデン(Spring Gardens, Whitland, Carmarthenshire SA34 0HR)にあるMagstim社が開発したMagstim 70mm(P/N 9790)は,一般的な8字型コイルである。また,デンマーク国ファールムDK−3520,ルーサーネマーケン15(Lucernemarken 15, DK−3520, Farum, Denmark)にあるマグロプロ(Magpro)社が開発したザ・メドトロニック・ダンテック MCB70−ダブルコイル(the Medtronic−Dantec MCB70 double coils)は,両側の円形コイル部の患者対向面が脳にフィットするように折り曲げられている。これらの8字型コイルについて,アクセル・シレスシャー(Axel Thielscher)氏らが行った比較解析の結果[参考文献16]によれば,刺激効率の点ではメドトロニック(Medtronic)の方が19%優れていた。刺激範囲の点では,両8字型コイルの間でほとんど違いは無かった。最大刺激強度の50%の強度で刺激できる面積を比較したところ,メドトロニック(Medtronic)の方が16%広範囲に刺激できることが確認できた。以上の結果が示すように,複数の変形8字型コイルが提供されているが,刺激効率や刺激ロバスト性の点では大きな改善がなされていない。また,市販されているコイルでは,コイルが発生する磁場の影響についてほとんど考慮されていない,といった課題もある[参考文献17〜18]。
1.7.2 鉄心を用いたコイル
刺激特性を向上するために,コイルの形状等を変える手法以外にも,多くの手法が提案されている。例えば,2003年には,円形コイルに強磁性体の鉄心を添えることで刺激効率を改善することがビー・エイチ・ハン(B.H.Han)氏らによって提案された[参考文献19〜21]。例えば,円形コイルの上にそれと同じほぼ大きさの積層鉄心を配置したモデルでは,鉄心を挿入しないモデルに比べて,その刺激強度が最大で50〜60%向上することが確認された。本手法によれば,先ほどの手法に比べて,刺激効率改善が約3倍まで改善された。しかし、8字渦巻きコイルについては,治験器として実用化されることが検討されつつも,その刺激特性を向上させるための鉄心の形状・配置に関する研究はこれまで行われていない。
円形コイルだけではなく,脳に垂直な誘導電流をつくるHコイルに鉄心を添えたモデルについて刺激効率の解析が行われた事例がある[参考文献22]。例えば,アール・サルバドール(R.Salvador)氏らの報告によれば,Hコイルに鉄心を添えたモデルの場合,脳表面での誘導電場強度は無鉄心のモデルに比べて50%増加することが確認された。刺激コイルの形状によって適正な鉄心形状は異なるが,現時点では円形コイルにのみ有効な鉄心形状しか検討されていない。また,既に経頭蓋磁気刺激法に利用されている偏心8字型コイルに対しても鉄心の効果は検証されていない。
1.7.3 ドーム型コイル
磁気刺激システムの位置合わせを簡易にするために,より刺激ロバスト性の高いコイルが特許文献3で提案されている。この特許文献で提案されたコイルの解析モデルは,導線の巻数を20回,導線の上側球面半径を56mm,導線の下側球面半径が100mmである。このモデルに5.28kA,パルス幅298μsの電流(脈流)を印加し,半球形脳モデル(電気伝導率0.1065S/m)の表面における誘導電流密度を解析した。その結果,従来の8字型コイルに比べて,刺激ロバスト性の改善が確認された。ただし,刺激効率については更なる改善が望まれる。
本発明の目的は、脳の磁気刺激対象領域(磁気刺激を与えるべき領域をいう)に対して従来技術に比較して高い誘導電場強度を発生でき、従来技術に比較してロバスト性を有し、例えば在宅用磁気刺激装置に用いることができるコイル装置及び、コイル装置を備えた経頭蓋磁気刺激装置を提供することにある。
本発明の一態様にかかる経頭蓋磁気刺激装置用コイル装置は、コイルが人間の頭部表面に対向するように設けられ、電磁誘導によって脳内の磁気刺激対象領域に誘導電場による電流を発生させてニューロンを刺激する経頭蓋磁気刺激装置のためのコイル装置であって、
所定の基準面に沿って導線を巻回して構成されたコイルと,
上記頭部とは上記コイルを挟み反対側である位置において、前記コイルに対向するように設けられ、前記コイルが駆動されたときに誘導電場による電流が流れ、かつ当該誘導電場による電流により上記脳内の磁気刺激対象領域に流れる誘導電場による電流を、磁性体がないときに比較して増大させる磁性体とを備えることを特徴とする。
従って、本発明によれば、脳の磁気刺激対象領域に対して従来技術に比較して高い誘導電場強度を発生でき、従来技術に比較してロバスト性を有し、例えば在宅用磁気刺激装置に用いることができる。
本発明の実施形態に係る経頭蓋磁気刺激装置の概略構成を示す斜視図である。 図1のシステムに組み込まれたコイル駆動回路を示す回路図である。 図1に示すシステムに組み込まれたコイル装置の断面図である。 図1に示すコイル装置における,コイルと磁性体の関係を示す斜視図である。 電磁鋼板をX方向に積層した立方体形状の非ロ字型磁性体の斜視図である。 電磁鋼板をY方向に積層した立方体形状の非ロ字型磁性体の斜視図である。 電磁鋼板をX方向に積層した立方体形状のロ字型磁性体の斜視図である。 電磁鋼板をY方向に積層した立方体形状のロ字型磁性体の斜視図である。 電磁鋼板をXY方向に積層した立方体形状の非ロ字型磁性体の斜視図である。 電磁鋼板をXY方向に積層した立方体形状の非ロ字型磁性体の斜視図である。 電磁鋼板をXY方向に積層した立方体形状のロ字型磁性体の斜視図である。 電磁鋼板をXY方向に積層した立方体形状のロ字型磁性体の斜視図である。 底面が曲面のケーシングに曲面型のコイル(非重ね合わせ型)と磁性体を内蔵したコイル装置の断面図である。 底面が曲面のケーシングに曲面型のコイル(重ね合わせ型)と磁性体を内蔵したコイル装置の断面図である。 底面が曲面のケーシングに平坦なコイル(非重ね合わせ型)と磁性体を内蔵したコイル装置の断面図である。 底面が曲面のケーシングに平坦なコイル(重ね合わせ型)と磁性体を内蔵したコイル装置の断面図である。 底面が屈曲面のケーシングに平坦なコイル(重ね合わせ型又は非重ね合わせ型)と磁性体を内蔵したコイル装置の断面図である。 磁性体を含まない比較モデルを示す斜視図である。 磁性体を含む改変モデルを示す斜視図である。 解析に用いたコイルの模式図である。 電磁鋼板をX方向に積層した直方体形状の非ロ字型磁性体の斜視図である。 電磁鋼板をY方向に積層した直方体形状の非ロ字型磁性体の斜視図である。 電磁鋼板をX方向に積層した直方体形状のロ字型磁性体の斜視図である。 電磁鋼板をY方向に積層した直方体形状のロ字型磁性体の斜視図である。 漏れ磁場解析の評価地点を示す斜視図である。 比較モデルMFにおける脳表面誘導電場強度の分布を示す等高線図である。 改変モデルMXaにおける脳表面誘導電場強度の分布を示す等高線図である。 改変モデルMXにおける脳表面誘導電場強度の分布を示す等高線図である。 改変モデルMYにおける脳表面誘導電場強度の分布を示す等高線図である。 改変モデルMYaにおける脳表面誘導電場強度の分布を示す等高線図である。 改変モデルMXの磁性体内に生じた誘導電場強度分布を示す図である。 改変モデルMYの磁性体内に生じた誘導電場強度分布を示す図である。 モデルAの磁性体内に流れる誘導電流を示す斜視図である。 モデルCの磁性体内に流れる誘導電流を示す斜視図である。 基本的解析モデルを示す斜視図である。 脳モデル中央部の平均誘導電場を算出する際に用いるエレメントを示す斜視図である。 直方体型磁性体を有するモデルを示す平面図である。 四角枠型磁性体を有するモデルを示す平面図である。 脳モデル表面の誘導電場強度を示す等高線図である。 脳モデル表面の誘導電場強度を示す等高線図である。 脳モデル表面の誘導電場強度を示す等高線図である。 脳表面中央部分を通るX軸方向とY軸方向の誘導電場強度分布を示す図である。 直方体型磁性体の表面における誘導電流密度(X方向成分)を示す等高線図である。 直方体型磁性体の表面における誘導電流密度(Y方向成分)を示す等高線図である。 Z軸方向の磁場強度を示す図である。 X軸積層とY軸積層を組み合わせたモデルを示す平面図である。 脳モデル表面の誘導電場強度を示す等高線図である。 脳モデル表面の誘導電場強度を示す等高線図である。 脳モデル表面の誘導電場強度を示す等高線図である。 脳モデル表面の誘導電場強度を示す等高線図である。 脳表面中央部分を通るX軸方向とY軸方向の誘導電場強度分布を示す図である。 XY積層モデルにおける磁性体内の誘導電流分布と脳表面上の誘導電場を示す斜視図である。 XY積層モデルにおける磁性体内の誘導電流分布の解析結果を示す斜視図の写真画像である。 解析モデルを示す平面図である。 解析モデルを示す平面図である。 脳表面中央部分を通るX軸方向とY軸方向の誘導電場強度分布を示す図である。 解析モデルの磁気等価回路を示す回路図である。 解析に用いたドーム型コイルを示す斜視図である。 解析に用いたドーム型コイルを示す側面図である。 解析に用いたドーム型コイルを示す斜視図である。 解析に用いたドーム型コイルを示す側面図である。 脳表面誘導電場の解析結果を示す等高線図である。 脳表面誘導電場の解析結果を示す等高線図である。 脳表面誘導電場の解析結果を示す等高線図である。 磁性体の無いコイルモデルのロバスト性を示す図であって、脳モデル表面のX座標に対する脳表面の誘導電場強度を示す図である。 磁性体の無いコイルモデルのロバスト性を示す図であって、脳モデル表面のX座標に対する脳表面の誘導電場強度を示す図である。 複数のコイルモデルの刺激ロバスト性を示す図であって、X軸方向の有効刺激距離に対するY軸方向の有効刺激距離のグラフ上の各モデルを示す図である。 Y方向積層四角枠型磁性体内の電流とそれが脳表面につくる誘導電場を示す斜視図である。 Y方向積層四角枠型磁性体内の電流とそれが脳表面につくる誘導電場を示す斜視図である。 Y方向積層直方体型磁性体を有するコイルモデルの等価磁気回路を示す回路図である。 解析モデルの概要を示す斜視図である。 磁性体中央央部を通るXZ断面における磁力線の分布を示す断面図である。 改良解析モデルを示す斜視図である。 フランジによって磁束の漏れが阻害される状況を表した断面図である。 有限要素法によるTMSのシミュレーションモデルを示す斜視図である。 縦積層及び横積層の組み合わせ積層鉄鋼板を、中央偏心8字型コイルの上に位置させた際の概略図である。 導電体表面に発生される誘導電場を示す等高線図である。 導電体表面に発生される誘導電場を示す等高線図である。 導電体表面に発生される誘導電場を示す等高線図である。 導電体表面に発生される誘導電場を示す等高線図である。 導電体表面に発生される誘導電場を示す等高線図である。 鉄鋼板表面に発生する損失誘導電流を示す写真画像である。 組み合わせ積層鉄鋼板の側部幅と脳モデルの誘導電場強度の関係を示す表を表した図である。
本発明にかかる実施形態
以下、本発明に係る種々の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
本実施形態では、人間の脳の磁気刺激対象領域に対して従来技術に比較して高い誘導電場強度を発生でき、従来技術に比較してロバスト性を有し、例えば在宅用磁気刺激装置に用いることができるコイル装置及び、コイル装置を備えた経頭蓋磁気刺激装置を提供するために、本発明者らは、下記のことを行って知見を得た。
(1)偏心8字型コイルとドーム型コイルのそれぞれに種々の磁性体(鉄心)を設け,コイルと磁性体の組み合わせのそれぞれについて脳モデル表面における誘導電場強度を数値解析によって求め,最も高効率に磁気刺激できる磁性体のモデルを決定した。
(2)それぞれの組み合わせについて,数値解析の結果をもとに刺激ロバスト性を評価し,磁性体の形状と刺激ロバスト性の相関関係をまとめた。
(3)漏れ磁場を抑えるために偏心8字型コイルにフェライト部材を設けたモデルであって,国際非電離放射線防護協会(ICNIRP)の磁場安全性基準(21A/m)を満足する距離(コイルからの距離)を最小化するモデルを数値解析によって決定した。
本実施形態は、詳細後述する解析結果に基づく知見に基づき,新たな経頭蓋磁気刺激装置用コイル装置及び上記コイル装置を備えた経頭蓋磁気刺激装置を提供するものである。
具体的に,本発明の一形態に係る経頭蓋磁気刺激装置用コイル装置は,基準面に沿って導線を渦巻き状に巻いたコイルと,前記コイルの上方に前記コイルに沿って配置された磁性体を有する。ここで、前記基準面が平面、曲面、又は球面であってもよい。すなわち、実施形態にかかる経頭蓋磁気刺激装置用コイル装置は、巻線コイルが人間の頭部表面に対向するように設けられ、電磁誘導によって脳内の磁気刺激対象領域に誘導電場による電流を発生させてニューロンを刺激する経頭蓋磁気刺激装置のためのコイル装置であって、所定の基準面に沿って導線を巻回して構成されたコイルと、上記頭部とは上記コイルを挟み反対側である、前記コイルの上方の位置において、前記コイルに対向するように設けられ、前記コイルが駆動されたときに誘導電場による電流が流れ、かつ当該誘導電場による電流により上記脳内の磁気刺激対象領域に流れる誘導電場による電流を、磁性体がないときに比較して増大させる磁性体とを備えることを特徴としている。
また、前記コイルが,非偏心渦巻きコイル、偏心渦巻きコイル、又はドーム型コイルのいずれかであってもよい。もしくは、前記コイルが,2つの渦巻きコイル部分を有する非偏心8字渦巻きコイル又は偏心8字渦巻きコイルのいずれかであってもよい。
さらに、前記基準面に沿って前記2つの渦巻きコイル部分の中心を結ぶ線の方向をX方向,前記基準面に沿って前記X方向と直交する方向をY方向とすると,前記磁性体は,複数の電磁鋼板を前記X方向に積層して構成されていてもよい。
またさらに、前記基準面に沿って前記2つの渦巻きコイル部分の中心を結ぶ線の方向をX方向,前記平面に沿って前記X方向と直交する方向をY方向とすると,前記磁性体は,複数の電磁鋼板を前記Y方向に積層して構成されていてもよい。
またさらに、前記基準面に沿って前記2つの渦巻きコイル部分の中心を結ぶ線の方向をX方向,前記平面に沿って前記X方向と直交する方向をY方向とすると,前記磁性体は,複数の電磁鋼板を前記X方向に積層して構成された第1の積層磁性体部分と,複数の電磁鋼板を前記Y方向に積層して構成された第2の積層磁性体部分とを備えていてもよい。
ここで、前記磁性体は、前記コイルの巻回方向に積層して構成されてもよい。すなわち、コイルの各ターン巻線が積み重なる方向へ、磁性体の個々の積層板を積み重ねて構成してもよい。
また、前記X方向に関して,前記第2の積層磁性体部分が前記コイル装置の中央に配置され,前記第1の積層磁性体部分が前記第2の積層磁性体部分の両側に配置されていてもよい。
本発明の他の形態では、前記磁性体は,前記X方向と前記Y方向に直交するZ方向から見たとき、四角形,多角形、円形,卵型,又は楕円型であってもよい。
本発明の他の形態では、前記磁性体は,前記X方向と前記Y方向に直交するZ方向から見たときの中央に開口を有していてもよい。
実施形態に係る経頭蓋磁気刺激装置用コイル装置は,
導線を渦巻き状に巻いた2つの渦巻きコイル部分を有する8字状のコイルと,
前記コイルの上方に前記コイルに沿って配置された磁性体とを有し,
前記磁性体は,前記コイルの中央部における導線の配置方向に複数の電磁鋼板を積層して構成されている。
本発明の別の形態に係る経頭蓋磁気刺激装置用コイル装置は,
導線を渦巻き状に巻いた2つの渦巻きコイル部分を有する8字状のコイルと,
前記コイルの上方に前記コイルに沿って配置された磁性体とを有し,
前記磁性体は,前記2つの渦巻きコイル部分の中心を結ぶ方向と直交する方向に複数の電磁鋼板を積層して構成されている。
実施形態に係る経頭蓋磁気刺激装置は、上述のいずれかのコイル装置を備えている。
実施形態1.
図1を参照すると,経頭蓋磁気刺激装置1は,図示しない支持機構(例えば,椅子2又はベッド)に支持された、例えば患者3の脳の磁気刺激対象領域に磁気刺激を与える磁気刺激装置4を有する。磁気刺激装置4は,患者3の脳に磁気刺激を加える動磁場を形成するために,コイル装置5と制御ユニット6を有する。
図1に示すように,コイル装置5は,患者3の頭部表面に沿って自由に移動できるとともに任意の位置に位置決めできるように,適当な位置決めユニット7で支持することが好ましい。コイル装置5は,コイル8とこのコイル8を囲む電気絶縁材料からなるケーシング9を備えている。ケーシング9は,ケーシング9に一体的に形成されたホルダ10を備えており,ホルダ10を介して位置決めユニット7に保持されている。実施形態では,コイル8は8字型コイルである。8字型コイルは,2つの渦巻きコイル部分を部分的に重ね合わせた重ね合わせ型と,2つの渦巻きコイル部分を重ね合わせることなく並列に配置した非重ね合わせ型のいずれであってもよい。また,8字型コイルは,2つの渦巻きコイル部分をアルキメデスの螺旋に沿って曲げた非偏心型と,2つの渦巻きコイル部分のそれぞれの中心を他方の渦巻きコイル部分に向けて移動させた偏心型のいずれであってもよい。
ケーシング9は,3つ又はそれ以上の観察対象(例えば,マーク11又は突起などのターゲット)を一体的に備えている。これらの観察対象は,患者頭部に対するコイル8の相対的な位置と方向を求めるために利用される。
また、経頭蓋磁気刺激装置1は、例えば次のように構成されてもよい。
制御ユニット6は,箱型のハウジング12を備えている。ハウジング12は入力部13と出力部14を備えている。入力部13は,経頭蓋磁気刺激装置1の駆動条件(例えば,コイル8に印加する電圧,電流,周波数)を設定する駆動条件設定部15;断層画像撮影装置(例えば,MRI,CT,PET)〕16で生成された人体(特に頭部)断層画像データを受信するデータ受信部17;コイル装置5のケーシング9に設けたマーク11と患者3が装着した眼鏡等の装着品(例えば,眼鏡)又は患者3の皮膚に設けた3つ又はそれ以上の観察対象(例えば,マーク18又は突起)を同時に撮影するステレオ撮像式光学的3次元位置センシングカメラ(以下,単に「カメラ」という。)19からの画像データを受信するデータ受信部20を備えている。図示しないが,カメラ19は,位置決めユニット7又は経頭蓋磁気刺激装置1が収容される居室の固定部に取り付けられる。
上記の断層画像撮影装置16、データ受信部17、ステレオ撮像式光学的3次元位置センシングカメラ19、データ受信部20等は、コイル装置5の頭部照射部位に対する位置決めを行うために用いる一実施態様であり、その他の態様としてもよい。
本実施形態において,コイルに印加する電流は,時間とともに周期的に流れの方向が変化する電流(交流)だけでなく,流れる方向が一定で,大きさが周期的に変動する電流(いわゆる「脈流」)も含むものと理解すべきである。
出力部14は,液晶表示装置等のディスプレイ21,又はディスプレイを備えたコンピュータ(図示せず)に接続され,制御ユニット6から出力されるデータ(例えば,画像データ)をディスプレイ21に出力してそこに対応する画像を表示することができるように構成されている。
ハウジング12の内部には図2に示すコイル駆動回路25が収容されており,このコイル駆動回路25がケーブル26を介してコイル8と電気的に接続されている。
以上の構成を備えた経頭蓋磁気刺激装置1を用いて患者を治療する場合,カメラ19で撮影された画像をもとに,患者頭部に対するコイル8の位置が求められる。患者頭部に対するコイル8の相対位置はディスプレイ21に表示される。これにより,患者頭部の目的の場所(例えば,最適刺激位置)にコイル8を設置できる。その後,入力部15を通じて入力されたコイル駆動条件をもとにコイル駆動回路25が駆動し,患者3の脳に磁気刺激を与える。コイル駆動回路25は,図2に示すように,電源61の出力電圧を所望電圧に変換する電源回路62,電源回路62の出力を昇圧する昇圧回路63,昇圧回路63から出力を利用して電荷を蓄積するコンデンサ64,コンデンサ64に流れる電流を調整する抵抗65,コンデンサ64からの出力を所定のタイミングで動作して交流を形成する半導体スイッチ66を有し,半導体スイッチ66は制御回路67によりオン/オフ制御されるサイリスタ31と、それに対して逆方向で並列で接続されたダイオード31Dとを備えて構成され、半導体スイッチ66を駆動して得られた電流がコイル8に印加される。
図3はコイル装置5の概略構成を示す。図3に示すように,コイル装置5は,非磁性で非導電性の材料からなるケーシング9を有する。図3の実施形態では,ケーシング9の患者頭部に対向する底面21は,図3の左右方向(X方向)とこれに直交する図の表裏方向(Y方向)を含む平面(XY平面)に平行又はほぼ平行な平坦な面である。本実施形態では,この平面が基準面となる。
ケーシング9の内部にはコイル8が収容されている。実施形態では,コイル8は,一つの導線80を渦巻き状に曲げてなる2つの渦巻きコイル部分81,82を基準面に沿って重ね合わせることなく配置するとともに,2つの渦巻きコイル部分81,82のそれぞれの中心を他方の渦巻きコイル部分に向けて偏心させた偏心型で且つ非重ね合わせ型での8字渦巻きコイルである。実施形態では,図4に示すように,8字渦巻きコイル8を構成している2つの渦巻きコイル部分81,82の中心83,84を結ぶ方向(偏心方向に一致する。)をX方向,基準面に平行で且つX方向に直交する方向をY方向,基準面に垂直な方向をZ方向とする。この場合,コイル部分81,82の中心83,84の中間に位置する中央部85及びその周辺では,巻線80はY方向に延在している。
図3に戻り,ケーシング9の内部には,コイル8の上に,コイル8との間に所定の間隔をあけて,所定の体積を有する立方体形状の磁性体22が収容されている。磁性体22は,電磁鋼板からなる一枚の板(上述した比較モデルの磁性体)であってもよいし,表面が絶縁皮膜で覆われた薄い電磁鋼板を積層した積層体である。ここで、コイル8の下面は脳表面に対向し、コイル8の上面は磁性体22に対向するように構成される。磁性体22を脳とは反対側のコイル8の上側に設けることで、磁性体22を設けないときに比較して、脳の磁気刺激対象領域における誘導電場強度を大幅に増大させかつ当該誘導電場をより広い領域にわたって発生させることができることを特徴としている。
磁性体22は,電磁鋼板をX方向に積層した積層体22A,22C(図5、図7参照),電磁鋼板をY方向に積層した積層体22B,22D(図6、図8参照)、電磁鋼板をXY方向に積層した積層体22E〜22H(図9〜図12)のいずれであってもよい。磁性体22は,その中央部に,上面と下面を貫通する開口23を設けてもよい(図7,図8、図11、図12参照)。なお、図9と図11に示す形態は、両側の領域の電磁鋼板をX方向に積層しそれらの間の領域の電磁鋼板をY方向に積層したものである。図10と図12に示す形態は、両側の領域の電磁鋼板をY方向に積層しそれらの間の領域の電磁鋼板をX方向に積層したものである。
ここで、図5〜図12の各モデルを以下のようにモデル名を付する。
図5のモデル:モデルMX;
図6のモデル:モデルMY;
図7のモデル:モデルMXa;
図8のモデル:モデルMYa;
図9のモデル:モデルMZY;
図10のモデル:モデルMZX;
図11のモデル:モデルMZYa;
図12のモデル:モデルMZXa。
磁性体22の平面形状(Z方向から見た形状)は,四角形,非四角形(例えば,円形,卵型,楕円型(ellipse, oblong))のいずれであってもよい。
上述のように,図3,図4のコイル8は偏心型で且つ非重ね合わせ型の8字渦巻きコイルである。しかし,コイル8の種類は限定的ではなく,偏心型で且つ重ね合わせ型の8字渦巻きコイル,非偏心型で且つ重ね合わせ型の8字渦巻きコイル,非偏心型で且つ非重ね合わせ型の8字渦巻きコイルのいずれも利用可能である。
上記実施形態では,ケーシング9の底面21は平坦な面としたが,図13〜図16に示すように,曲面であってもよい。この場合,コイル8は,曲面に平行である必要はなく,曲面である。基準面に「沿って」配置されていればよく,例えば,X方向とY方向を含む平坦な面に平行に配置してもよいし,曲面に平行に配置してもよい。同様に,磁性体22も,曲面に平行である必要はなく,曲面である。基準面に「沿って」配置されていればよく,例えば,X方向とY方向を含む平坦な面に平行に配置してもよいし,曲面に平行に配置してもよい。なお,球面型のコイルは,導線を球面に沿って配置することにより形成できる。また,球面型の積層型磁性体は,例えば,平坦な積層型磁性体を球面状にプレス加工して形成することが可能である。
図17に示すように,ケーシング9の底面は2つの平坦な面を所定角度をもって交差させた屈曲面であってもよい。この場合,コイル8は偏心型又は非偏心型,重ね合わせ型又は非重ね合わせ型のいずれであってもよい。また,コイル8と磁性体22は,屈曲面である。基準面に「沿って」配置されていればよく,例えば,X方向とY方向を含む平坦な面に平行に配置してもよいし,屈曲面に平行に配置してもよい。
図示しないが,ケーシング9の底面21は球面であってもよい。この場合,コイル8は,球面であって、球面に平行である必要はない。基準面に「沿って」配置されていればよく,例えば,X方向とY方向を含む平坦な面に平行に配置してもよいし,球面に平行に配置してもよい。同様に,磁性体22も,球面であって、球面に平行である必要はない。基準面に「沿って」配置されていればよく,例えば,X方向とY方向を含む平坦な面に平行に配置してもよいし,球面に平行に配置してもよい。
磁性体22の大きさは,コイル8を全体に覆うことができる大きさとすることが好ましい。ただし,コイル8が8字型コイルの場合,2つの渦巻きコイル部分の少なくとも最小内径領域を覆う大きさであることが好ましい。
なお,以上の説明では,コイルは2つの渦巻きコイル部分を含む8字渦巻きコイルとしたが,本発明は3つ又は4つの渦巻きコイル部分を含む渦巻きコイルも同様に適用可能である。
このように構成されたコイル装置5によれば,上述の解析で説明したように,コイルに沿って磁性体を配置したことにより,磁性体の無いコイル装置に比べて,より大きな誘導電場強度を脳表面に形成することができる。特に,8字渦巻きコイルを含むコイル装置の場合,2つの渦巻きコイル部分の中心を結ぶ方向と直交する方向に電磁鋼板を積層して磁性体を構成すると,漏れ磁束を最小限に抑えつつ、また、所定の方向に高いロバスト性をもって、より大きな誘導電場強度を磁気刺激対象領域である目標治療部位に形成することができる。
2.1 数値解析1
本願発明の発明者らは,磁気刺激コイル装置について,磁気刺激効率の向上,漏れ磁場の削減,刺激ロバスト性の向上,及び小型化を図るために,2つの解析モデルを作成し,有限要素法を用いて誘導磁場の強度,漏れ磁場,局所性を評価した。図18に示すように,1つの解析モデルは,直方体の空間(空気領域)の内側に直方体の脳モデルと重ね合わせ型の偏心8字渦巻きコイルを配置したモデル(以下,「比較モデル」という。)である。別の解析モデルは,図19に示すように,直方体の空間(空気領域)の内側に,上述の直方体の脳モデルと偏心8字渦巻きコイルに加えて,立方体の磁性体を配置したモデル(以下,「改変モデル」という。)である。
2.1.1 比較モデルと改変モデル
比較モデルと改変モデルにおいて,直方体空間の大きさは1000×1000×1600mm(「X方向のサイズ×Y方向のサイズ×Z方向のサイズ」を示す。以下,同様に表示する。),脳モデルの大きさは140×140×40mmとした。図20に示すように,偏心8字渦巻きコイルは,幅2mm,高さ6mmの導線(導体)を一つの平面に沿って渦巻き状に巻回して2つの渦巻きコイル部分81,82を形成するとともにそれら2つの渦巻きコイル部分81,82のそれぞれの中心83,84を互いに他方の中心に向けて偏心した,2つの偏心渦巻きコイル部分81,82を有するものである。各偏心渦巻きコイル部分81,82は,最小内径を18mm,最大外径を122mm,偏心量(偏心渦巻きコイル部分の外径中心と内径中心との間の距離)を27.5mm,左右の偏心渦巻きコイル部分81,82の内径中心間距離を42.5mm,偏心側の最小コイルギャップ(図18において,右側に示す偏心渦巻きコイル部分81では左側領域,左側に示す偏心渦巻きコイル部分82では右側領域)を0.5mmとした。以上の構成を有する偏心8字渦巻きコイル8は,2つの偏心渦巻きコイル部分の中心を結ぶ線8L(以下,この線を「偏心8字渦巻きコイルの中心軸」という。)をX方向に向けて配置した。
図18及び図19に示すように,脳モデルと偏心8字渦巻きコイルは,脳モデル90の中心上に偏心8字渦巻きコイルの中心を位置させた。脳モデル90と偏心8字渦巻きコイル8の間に30mmの隙間をあけた。偏心8字渦巻きコイル8は,2つの偏心渦巻きコイル部分81,82の中心83,84を結ぶ線(以下,この線を「偏心8字渦巻きコイルの中心軸」という。)をX方向に向け,コイルの平面上にあって偏心8字渦巻きコイル8の中心軸8Lに直交する方向をY方向に向けて配置した。
図19に示す改変モデルでは,偏心8字渦巻きコイルの上に0.5mmの隙間をあけて、例えば直方体の磁性体22を配置した。直方体の磁性体33は,図21〜図24に示す4種類の磁性体100A〜100Dを用意した。図21の磁性体100Aは,電磁鋼板を図21のY方向に積層して構成した直方磁性体(非ロ字型)である。図22の磁性体100Bは,磁性体100Aの中央に四角形の開口(45mm×80mm)を形成した直方磁性体(ロ字型)である。図23の磁性体100Cは,電磁鋼板を図23のX方向に積層して構成した直方磁性体(非ロ字型)である。図24の磁性体100Dは,磁性体Cの中央に四角形の開口(45mm×80mm)を形成した直方磁性体(ロ字型)である。各磁性体100A〜100Dの大きさは,偏心コイル8の上面全体を覆う程の十分な面積を有するものとした。計算上,電磁鋼板の厚みは無視した。
脳モデル90の電気伝導率は0.11(S/m)(これは,脳の灰白質のそれに等しい。),比透磁率は1とした。空気領域の電気伝導率は0(S/m),比透磁率は0とした。磁性体の電気伝導率は10(S/m),比透磁率は5000とした。両解析モデルの要素数は,約1,000,000とした。以下,磁性体100A,100B,100C,100Dを含む改変モデルをそれぞれ,「改変モデルMY」,「改変モデルMYa」,「改変モデルMX」,「改変モデルMXa」という。
2.1.2 解析方法
(a)誘導電場の計算式
電流密度の解析は有限要素法に基づき,EDDY−jω法で行った。電磁場の満たす方程式は磁場をB,コイル電流のベクトルポテンシャルをAc,渦電流のベクトルポテンシャルをAe,電場をE,電流をJ,スカラーポテンシャルをφ,時間をtとすると、磁場Bは式(1)、電場Eは式(2)で与えられる。
Figure 2016159371
Figure 2016159371
Figure 2016159371
φ=0,μを真空の透磁率として(1)式の渦電流のベクトルポテンシャルに関する項を式(3)に代入すると、次式の式(4)が得られる。
Figure 2016159371
ここで、Jeは渦電流である。コイル電流のベクトルポテンシャルは、公知のビオ・サバールの法則より次式の式(5)で与えられる。
Figure 2016159371
従って、式(2)〜(4)及び式(6)より、式(7)が得られる。
Figure 2016159371
Figure 2016159371
電磁場が正弦波状に時間変化する場合,複素場Ac(XYZ)は次式の式(8)で与えられる。
Figure 2016159371
従って、式(8)を式(7)に代入すると,複素場が満たすべき方程式は次式の式(9)で与えられる。
Figure 2016159371
本解析では,この複素場を解析結果として得た。
(b)誘導電場強度の解析
磁気刺激効率を評価するため,比較モデルと4つの改変モデルのそれぞれについて,脳モデル90の上面における誘導電場強度(以下,「脳表面誘導電場強度」という。)の分布と,脳モデル90の上面の中央点(以下,「ターゲット点」という。)における誘導電場を解析した。ターゲット点における誘導電場を評価するために,図36に示すように、ターゲット点90Cから半径10mmの半球90Sの内側にある脳エレメント(解析にあたって定義された脳モデル90の要素)における誘導電場の平均値を有効刺激脳表面誘導電場強度とした。
(c)コイルの上方向漏れ磁場の解析
図18の比較モデルと,図21〜図24に示す4つの磁性体100A〜100Dを含む図19の改変モデルについて,図25に示すように,ターゲット点から上方(Z軸方向)に60cm離れた評価地点の磁場強度を計算した。
(d)刺激ロバスト性の解析
刺激コイル8が所定の位置からずれた場合でも目的の刺激位置に所望の刺激強度を与えることができる領域の大きさ(ロバスト性)を評価するため,脳表面における最大誘導電場の70%を有効刺激強度とし,有効刺激強度と同じ又はそれ以上の電場を有する領域を有効刺激領域とした。有効刺激領域のX方向幅とY方向をそれぞれ求め,それらの半分の値を最大許容ずれ誤差とした。
2.1.3 解析結果
(a)脳表面の誘導電場強度
比較モデルMF(図18)における脳表面誘導電場強度の分布を図26,改変モデルMY,MYa,MX,MXa(図19,図21〜図24を参照)における脳表面誘導電場強度の分布を図27〜図30に示す。
(b)ターゲット点の有効刺激脳表面誘導電場強度
ターゲット点における有効刺激脳表面誘導電場強度を表1に示す。
Figure 2016159371
表1に示すとおり,磁性体がない比較モデルの有効脳表面誘導電場強度は118(V/m)であった。これに対し,4種の改変モデルMX,MXa,MY,MYaの有効脳表面誘導電場強度はそれぞれ120(V/m),129(V/m),297(V/m),207(V/m)で,いずれの改変モデルも比較モデルよりも大きな有効脳表面誘導電場強度が得られた。特に,改変モデルMY(Y方向に電磁鋼板を積層した直方磁性体を有するモデル)では,比較モデルの約2.5倍の有効脳表面誘導電場強度が得られた。この結果より,偏心8字渦巻きコイル8の上に磁性体22を配置したいずれの改変モデルMX,MXa,MY,MYaも,比較モデルMFに比べてより多くの誘導電場を脳モデル90の表面及びその内部に形成し得ることが分かる。また,偏心8字渦巻きコイル8の中心軸8L(X方向)に直交する方向(Y方向)に電磁鋼板を積層した改変モデルMY,MYaの場合,偏心8字渦巻きコイルの中心軸を平行な方向(X方向)に電磁鋼板を積層したモデルMX,MXaよりも遙かに大きな誘導電場を脳モデル90の表面及びその内部に形成し得ることが分かる。
(c)磁性体内誘導電場
X方向、Y方向にそれぞれ電磁鋼板を積層した直方磁性体22を備えた改変モデルMX,MYについて,磁性体中央部のY方向断面とX方向断面に生じた誘導電場の強度分布を解析した。解析結果を図31及び図32に示す。図31及び図32に示すように,改変モデルMXの場合,高強度の誘導電場が磁性体22の下面側に表れ,低強度の誘導電場が磁性体22の上面側に表れるという結果が得られた。改変モデルMYの場合,左側領域では高強度の誘導電場が磁性体22の上面側に表れるとともに低強度の誘導電場が磁性体22の下面側に表れるが,右側領域では高強度の誘導電場が磁性体22の下面側に表れるとともに低強度の誘導電場が磁性体22の上面側に表れる,という結果が得られた。
この結果から,図31〜図34に矢印で示すように,改変モデルMXではY方向断面に沿った一つの環状に誘導電流が流れ,改変モデルMYでは左右のそれぞれの領域でX方向断面に沿った環状に誘導電流が逆方向に流れるものと考えられる。従って,いずれの改変モデルにあっても,磁性体の持つ高い透磁率により,コイル周囲の磁気抵抗が減り,脳表面での磁場が増強されて脳内の電場が強まると考えられる。X方向に電磁鋼板を積層した改変モデルMXの直方磁性体22には,図33のような誘導電流が流れ,その誘導電流が脳表面に作る誘導電流を弱める向きに,脳表面のターゲット地点に電流を流すものと考えられる。またX方向に電磁鋼板を積層した改変モデルMXaのロ字型磁性体の場合,中央部分に誘導電流が流れないため,脳の誘導電流を減少させることがないと考えられる。
Y方向に電磁鋼板を積層した改変モデルMYの直方磁性体22には,図34のような誘導電流が流れるため,コイル部分81,82に流れる電流が脳表面に作る誘導電流に直交する向きの電流をターゲット地点に作り,Y方向に電磁鋼板を積層した改変モデルMYaのロ字型直方磁性体の場合,透磁率は減少するが,コイル部分81,82に流れる電流が脳表面に作る誘導電場を弱めることがないと考えられる。従って,表1に示すように、Y方向に電磁鋼板を積層した直方磁性体22の改変モデルMYが,最も高効率な刺激を得ることができるものと考えられる。
(d)漏れ磁場
比較モデルと4種の改変モデルについて,偏心8字渦巻きコイル8の上表面の中心点から上方(Z軸方向)に60cm離れた位置(「評価地点」という。)の漏れ磁場強度を計算した結果を得たが,評価地点における漏れ磁場の強度は,比較モデルでは8(A/m),4種の改変モデルではそれぞれ9(A/m),24(A/m),9(A/m),20(A/m)であった。また,改変モデルMXa(X方向積層のロ字型磁性体を有するモデル)を除く改変モデルMY,MYa,MXはいずれも,国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が定める安全基準を満たす結果が得られた。
磁性体22の有無及び形状についてみると,磁性体22の無い比較モデルの漏れ磁場が最も少なく,非ロ字型直方磁性体,ロ字型直方磁性体の順に漏れ磁場が大きくなることが分かった。これはロ字型磁性体ではその中央開口部分を通じてZ軸上方に向かって磁場が抜ける一方,非ロ字型直方磁性体ではそのような抜け磁場が磁性体内の誘導電流によって遮断されることから漏れ磁場が減少するものと考えられる。
(e)刺激ロバスト性
誘導電場のピーク(最大)値の70%以上の誘導電場強度を有する範囲のX方向とY方向の幅を計算し,その幅の半分の値を最大許容ずれ範囲(コイル中心の位置ずれが許容される範囲)を比較モデルと4種の改変モデルについて求めた,最大許容ずれ範囲を表2に示す。
Figure 2016159371
表2から明らかなように,X方向に電磁鋼板を積層した改変モデルMX,MXaの場合,Y方向の最大許容ずれ範囲とX方向の最大許容ずれ範囲との差(改変モデルMXは23mm,改変モデルMXaは18mm)が大きかった。これに対し,Y方向に電磁鋼板を積層した改変モデルMY,MYaの場合,改変モデルMX,MXaに比べて,X方向の最大許容ずれ範囲はY方向の最大許容ずれ範囲との差(改変モデルMXは7mm,改変モデルMXaは14mm)が小さかった。従って,Y方向に電磁鋼板を積層した改変モデルMY,MYaは,X方向に電磁鋼板を積層した改変モデルMX,MXaよりも高いロバスト性を有することが確認された。改変モデルMX,MXaでは,磁性体22が持つ高い透磁率によって,コイル8の上方や側方の磁束線が磁性体22に引き寄せられ,上方や側方の漏れ磁束が減少する効果が発揮されることが確認された。従って、特に在宅治療用の磁気刺激装置では、周辺機器との干渉を避けるために漏れ磁束の減少が求められるため,磁性体22の使用が有効であると考えられる。また,磁性体22における電磁鋼板の積層方法を変えることによって,脳の誘導電流の分布を調整できることが確認された。さらに、誘導電流の分布範囲を拡大することによって,コイルの位置ずれが生じてもターゲット地点での刺激効果には影響が生じない,すなわち位置ずれに対するロバスト性を高めることができることが確認された。この点も,位置決め機構を簡便化できるという点で,在宅治療用磁気刺激装置に有用である。
2.2 数値解析2
2.2.1 解析モデル
シミュレーションによって最適な刺激効率の磁性体の形状モデルを求めるために,実際の治療環境に近い有限要素解析モデルを作成した。磁性体の形状や空気領域の設定等の点で解析条件ごとに多少の差異はあるが,概略図35に示す構成の基本解析モデルについて解析を行った。各解析モデルにおいて,実際の人の頭の皮膚から脳の灰白質までの平均距離が約13mm[参考文献23]であることから,コイル8と脳モデル90の表面との距離は13mmに設定した。また,脳や磁性体22よりも大きな空気領域を設定した。脳や磁性体22に比べて空気領域が小さ過ぎると,空気領域の端領域における解析磁場が変形し,実際に形成される磁場と相違する可能性があると考えられるからである。さらに,磁性体22はコイル8の上方に配置した。脳内に磁性体22を埋め込む侵襲性モデルを除外するためである。
解析モデルは,SIMENS株式会社から商業的販売されている「Femap with NX Nastran v10.3.1」を用いて作成した。解析モデルの各要素を作成するにあたって,分解能は1〜5mmに設定した。
2.2.2 刺激コイル
解析には,図37に示す偏心8字型コイルを用いた。このコイルは,2012年関野氏によって開発されたコイルで,非偏心8字型コイルに比べてより高い刺激効率が得られるという利点がある。図36の左側のコイルには,反時計回り方向に,3.15kHz,3kAのパルス電流を印加した。図36の右側のコイルには,時計回り方向に,3.15kHz,3kAのパルス電流を印加した。
2.2.3 磁性体の特性
解析に用いた磁性体(鉄心)は,入手が容易な強磁性体の鉄とした。鉄の比透磁率を5,000,鉄の電気伝導率を10,000,000(S/m)に設定した。鉄の形状は,加工の容易性を考慮して直方体とした。薄い鉄板の積層体からなる磁性体を想定したモデルについては,磁性体の電気伝導性に方向性を持たせるために,電磁場を解析する際に積層方向と直交する方向の電気伝導率を0(S/m)に設定した。
2.2.4 有限要素法
有限要素法の解析は,株式会社フォトンから商業的に入手可能な電気伝導率ソフトウェアPhotoSeries[参考文献28]を用いて行った。その際,過電流解析は,動磁場の周波数応答解析ソフトPHOTO−EDDYjw[参考文献27]を用いて行った。このプログラムは,形状データ,物性値,境界条件,コイル電流の入力条件に基づいて磁場分布を有限要素法により計算するものである[参考文献24〜26]。
2.2.5 誘導磁場の計算
誘導電場の計算式は「2.1.2 解析方法(a)誘導電場の計算式」で説明した通りである。有限要素法を用いた解析の計算は,分解能を約1mmに設定した場合,約20時間要した。解析結果の表示には,Femapを用いた。
2.2.6 高刺激効率な磁性体の設計及び誘導電場解析
2.2.6.1 磁性体の形状による刺激効率とロバスト性の変化
偏心8字型コイルに強磁性体である鉄の部材を設けることで,コイルから上方向に広がる磁場を磁性体に集めることにより脳モデル表面に向けて強い磁場を形成すること,また,磁性体内の誘導電流が新たに脳表面に誘導電場をつくることで刺激効率を向上すること,を確認すべく解析を行った。また,種々の形態の磁性体を付設したコイルのロバスト性を評価した。
(a) 解析方法と評価基準
解析方法は上述のとおりである。刺激効率は,脳モデル表面の中央部分における誘導電場強度の平均値で評価する。具体的には,図37A及び図37Bに示す脳モデルの表面中央部分から半径10mmの球内にある要素が有する誘導電場強度の平均値を平均誘導電場強度とした。
ロバスト性に関して,脳モデル表面の中央部分における誘導電場の最大値の70%の強度を持つ領域を有効刺激強度とし,その領域のX軸方向とY軸方向のそれぞれの最大長の半値をロバスト性評価指標の有効刺激距離とした。この有効刺激距離は,脳モデルの上表面中央部を通るX軸方向の直線とY軸方向の直線の上にあって,脳モデルの上表面中央部における誘導電場強度の70%の強度になる座標と脳モデルの上表面中央部との距離を「有効刺激距離」と設定した。
(b) 解析モデル
磁性体22の無いモデル(モデル1)と,直方体型磁性体を有するモデル(モデル2),直方体型磁性体の中央部分に四角形の開口を形成した四角枠型磁性体を有するモデル(モデル3)を作成した。コイルと磁性体の配置22は前述のとおりである。なお、各解析において、モデル番号を1から付すものとする。モデル2とモデル3の寸法は図37A及び図37Bに示すとおりである。図37Bの四角枠型磁性体の場合,開口の範囲は最も誘導電流が流れる部分が好ましいと考えられる。従って,開口22aの大きさは,左右円形コイル部分81,82の最外周導線部分の中心が開口縁に一致するように決めた。磁性体22の比透磁率は5,000とした。磁性体の電気伝導率は,等方的であり,10,000,000S/mとした。コイル8の下面と脳モデル90の上面との距離は30mmにした。
図37Aの直方体型磁性体の場合,磁性体22内を流れる誘導電流は磁性体22の中央部分で最も大きくなると考えられる。これは,ファラデーの電磁誘導の法則から明らかなように,磁性体22の中央部分は磁束密度の変化率が最も大きく,そのため該中央部分における誘導電場が大きくなるためである。また,電気伝導率が等方的であることから,誘導電流も大きくなる。磁性体22の中央部分を切除したモデル3(図37B)の場合,磁束は磁気抵抗の低い四角枠型磁性体の上部と下部をY軸方向に伸びると考えられる。従って,四角枠型磁性体では,磁場の漏れは少ないと考えられる一方で,直方体型磁性体では磁性体22の中央部分の誘導電流が脳モデル90の表面中央部に電場を誘導するのに対して四角枠型磁性体ではそのような電場を誘導することないため,四角枠型磁性体を有するモデル3では最も高い刺激効率が得られたものと考えられる。
(c) 解析結果
上記モデル1〜3の脳モデル90の表面における誘導電場強度の解析結果を図38A〜図38Cに示す。解析結果から、磁性体22の無いモデル1(図38A)の脳表面平均誘導電場強度は69.3V/m,直方体型磁性体22を有するモデル2(図38B)の表面平均誘導電場強度は49.5V/m,枠型磁性体22を有するモデル3(図38C)の表面平均誘導電場強度は120V/mであった。
モデル1〜3のそれぞれの刺激ロバスト性の評価結果を図39に示す。図39(a),(d)に示すように、磁性体22の無いモデル1の場合,X軸方向有効刺激距離は0.041m,Y軸方向有効刺激距離は 0.0678mであった。図39(b),(e)に示すように、直方体型磁性体22を有するモデル2の場合,X軸方向有効刺激距離は 0.0304m,Y軸方向有効刺激距離は0.0735mである。図39(c),(f)に示すように、四角枠型磁性体22を有するモデル3の場合,X軸方向有効刺激距離は0.303m,Y軸方向有効刺激距離は0.0689mであった。
刺激効率に関して,モデル3の刺激効率は大幅に改善された。具体的に,モデル3の刺激効率はモデル1の刺激効率の173%であった。しかし,モデル2の刺激効率はモデル1の刺激効率の約71%であった。刺激のロバスト性に関しては,モデル間で顕著な相違は無かった。
四角枠型磁性体22を有するモデル3が磁性体22の無いモデル1よりも高い刺激効率が得られたのは,コイル8の磁場が強磁性体(鉄)の存在によって磁性体22に集められたことによると考えられる。また,直方体型磁性体22を有するモデル2に比べて四角枠型磁性体22を有するモデル3ではより高い刺激効率が得られたのは,直方体型磁性体22では磁性体22の中央部分を流れる誘導電流が脳モデル90の表面にコイル8の電場とは逆向きの電場を形成するのに対し,四角枠型磁性体22ではそのような逆向きの電場を形成することがないためであると考えられる。
モデル3が高刺激効率であったことに関して,より電磁気的な説明を加えるならば,磁性体が存在する部分は磁気抵抗が著しく低下するため,磁束がほぼ磁性体を通り,より効率的に脳表面へ磁場を送り込むことができるためである。
図40Aは直方体型磁性体の表面における誘導電流密度(X方向成分)を示す等高線図であり、図40Bは直方体型磁性体の表面における誘導電流密度(Y方向成分)を示す等高線図である。図40Aから分かるように,磁性体22の中央部分では電流密度のY軸方向成分はY+方向により強い強度を持ち,これが脳モデル90の表面においてコイル8が作る誘導電場とは逆向き(すなわち,Y方向)の誘導電場を誘導する。これに対し,図40Bに示すように、四角枠型磁性体では,切除された中央部分にY+方向の誘導電流が誘導されることがないので,コイル8が脳モデル90の中央部に誘導する誘導電場を減衰させることがない。
図41は,四角枠型磁性体を有するコイルのコイル中央部分を磁性体から脳モデルに向かってZ−方向に伸びる線上の磁場強度部分の近似グラフを示す。図41において、Z座標の0は脳表面であり、図41はコイル中央を貫くZ方向ライン上の磁場密度を表す。図41から,磁性体22の無いモデルに比べて,四角枠型磁性体22を有するモデルでは,Z−方向に強い磁場が形成されることが分かる。
2.2.6.2 磁性体の電気特性による刺激効率とロバスト性の変化
磁性体の電気特性,すなわち,誘導電流の方向,が刺激効率に及ぼす影響を検討した。
磁性体22を複数の磁性板を積層することによって構成するとともにその積層方向を変えることによって,誘導電流の流れる方向を制限した。上述の解析結果から明らかなように,磁性板をY軸方向に積層すると同方向には誘導電流が流れなくなるので,四角枠型磁性体22を有するモデルでは,コイルによって脳表面中央部に形成される誘導電場が影響を受けることがないと考えられる。また,X軸方向の磁性体両端部分をX軸方向に積層すると,コイルが脳モデル表面上で誘導渦電流の向きに形成する誘導電流を磁性体内に流すことができると考えられる。
検討は直方体型磁性体のみについて行った。理由は,磁性体中央部に流れる誘導電流は磁性板の積層方向を調整することによって概ね制御できる,また,モデル全体を磁気回路として見た場合,直方体型磁性体の磁気抵抗は四角枠型磁性体のそれよりも小さいからである。
(a)解析モデル
直方体型磁性体を有する4つの解析モデル,すなわち,磁性板をX軸方向に積層したX積層モデル1(誘導電流がYZ面に沿って流れるモデル),磁性板をY軸方向に積層したY積層モデル2(誘導電流がXZ平面に沿って流れるモデル),磁性板をX軸方向とY軸方向に積層したXY積層モデル3,磁性体の無い無磁性体モデル4を用意した。
XY積層モデル3は,図42に示すように,X軸方向両端側の領域では磁性板をX軸方向に積層し,該両端側の領域の間にある中間領域では磁性板をY軸方向に積層したものである。このXY積層モデル3では,偏心8字型コイル8単体が脳内に作る誘導電流とは逆向きの誘導電流が磁性体内に流れ,その結果,該誘導電流によって,脳表面中央部には偏心8字型コイル8が作る誘導電場と同じ向きに電場が作られて,刺激効率が向上すると考えられる。各モデルにおいて,脳モデル90の表面とコイル8の下側表面との距離は,実際の刺激環境とほぼ同一の13mmに設定した。
(b)解析結果
4つの解析モデル1〜4についてそれぞれ,脳モデル90の表面のターゲット部位における平均誘導電場強度の解析結果を図43A〜図43Dに示す。解析結果から、X積層モデル1の平均誘導電場強度は120V/m,Y積層モデル2の平均誘導電場強度は415V/m,XY積層モデル3の平均誘導電場強度は502V/m,無磁性体モデル4の平均誘導電場強度は139V/mであった。
ロバスト性の評価結果を図44に示す。図44(a),(b)に示すように,X軸積層モデル1のX軸方向有効刺激距離とY軸方向有効刺激距離はそれぞれ0.0242m,0.0644mであり、図44(c),(d)に示すように、Y軸積層モデル2のX軸方向有効刺激距離とY軸方向有効刺激距離はそれぞれ0.0346m,0.0649mであり、図44(e),(f)に示すように,XY軸積層モデル3のX軸方向有効刺激距離とY軸方向有効刺激距離はそれぞれ0.0607m,0.0697mであり、図44(g)、(h)に示すように、無磁性体モデル4のX軸方向有効刺激距離とY軸方向有効刺激距離はそれぞれ0.0327m,0.0598mであった。
脳の一次運動野付近に約18A/mの誘導電流密度を印加すると指にトイッチが見られることが過去の臨床実験結果で確認されたことを考慮すると,刺激部位を灰白質(灰白質の電気伝導率を0.11S/mとする)とした場合,j=σEの関係によれば,刺激効果が得られる誘導電場強度は約164V/mと考えられる。従って,積層モデル3は治療に必要な刺激強度を有していることが確認できた。
図44に示す脳表面誘導電場の解析結果より,XY積層モデル3が最も高い刺激効率を示すことが分かる。Y積層モデル2は,無磁性体モデル4の刺激効率の2〜3倍の高い刺激効率を示すが,脳モデルの両端領域で下向きの誘導電場が作用する。XY積層モデル3では,磁性体内に図45に示す誘導電流が流れ,それによって脳表面中央部分に偏心8字型コイルが作る誘導電場の向きと同じ向きに誘導電場が作られる。このような理由から,ターゲット部分である中央部分に高い誘導電場強度が得られたものと考えられる。
X積層モデル1の磁性体内に流れる電流が最も大きいため,脳モデル上表面の中央部における誘導電場強度が低下した現象が発生したと考えられる。
すべてのモデルについて,ファラデーの法則によれば,磁性体の中央部分を貫通する最も大きな磁場が形成されるため,そこに最も大きな電場が誘導されると考えられる。しかし,誘導電場はY軸方向成分がX軸方向成分よりも相当大きいため,Y積層モデル2の磁性体内ではY軸方向の誘導電流が流れることはない。そのため,二番目に大きな磁場の変化率を生じたX積層モデル1の磁性体内に生じる誘導電流が最大となった。
磁性体内の誘導電流密度の解析結果の写真画像を図46に示す。図46から明らかなように、図45に示す誘導電流が磁性体内に流れていることが確認できる。
ロバスト性に関しては,Y積層モデル2とXY積層モデル3のロバスト性が無磁性体モデル4のそれよりも約10%向上した。また,XY積層モデル3の場合,有効刺激距離がX軸方向に2倍程度広がった。これは,偏心8字型コイルがつくる誘導電場は極めて局所性が高いものであるが,Y軸方向積層磁性体を設けることによって脳表面にX軸方向の誘導電場が誘導され,それにより,誘導電場が全体的にX軸方向に広がったものと考えられる。XY積層モデル3の場合,併せて,脳表面の両端部分に形成される強い誘導電場によって,誘導電場が全体的にX軸方向に広がったものと考えられる。
2.2.6.3磁性体の形状と電気特性の組み合わせによる刺激効率の変化
上述した,磁性体形状による刺激効率の変化と磁性体の電気的特性による刺激効率の変化の検討をもとに,最適な刺激効率を有する磁性体の構成を検討した。上述のように,磁性体は,その形状により,Z+方向の磁場を集めて脳表面に向かう大きな磁場を作ることが確認できた。しかし,偏心8字型コイルの最外周導線部分の近くでは,コイルによって誘導される誘導電流が小さく,コイルから発生する磁場も弱いため,磁性体のY軸方向長さがコイルの同方向長さより短くても,刺激効率に影響はないと考えられる。
(a)解析モデル
解析のために,磁性体の大きさが異なる3つのXY積層モデル−220×122×10mm(モデル1(図47B)),220×100×10mm(モデル2(図47A)),220×140×10mm(モデル3)―を作成した。このようなモデルを用意したのは,偏心8字型コイル8の全体を覆う大きさの直方体型磁性体22はコイル8が形成するほぼ全ての磁場を集めることから最も刺激効率が良いと考えられる。また,上述のとおりXY積層モデルが最も刺激効率が良いと考えられる。さらに,そのような磁性体と比較することによって最適な磁性体形状が得られると考えられるからである。
(b)解析結果
3つの解析モデル1,2,3について,脳モデル表面のターゲット部位における平均誘導電場強度を解析した結果から、モデル1の平均誘導電場強度は502V/m,モデル2の平均誘導電場強度は507V/m,モデル3の平均誘導電場強度は506V/mであった。従って,X方向の長さは最も小さい(100mm)モデル2が最適であることが確認された。
モデル1〜3のロバスト性を評価した結果を図48に示す。図47Bのモデル1のX軸方向有効刺激距離とY軸方向有効刺激距離はそれぞれ0.0607m,0.0697mであり,図47Aのモデル2のX軸方向有効刺激距離とY軸方向有効刺激距離はそれぞれ0.0529m,0.0666mであり、モデル3のX軸方向有効刺激距離とY軸方向有効刺激距離はそれぞれ0.0526m,0.0669mであった。
以上説明したように、刺激効率に関して,モデル1,2,3は同程度の値を示した。これは,Y軸方向の長さが100mmのモデル2でも,Y軸方向の長さがそれよりも大きなモデル1,3と同程度の刺激効率が得られることを示す。Y軸方向の刺激ロバスト性に関して,モデル1,2,3の間で大きな差異は無かった。X軸方向の刺激ロバスト性に関して,モデル1がもっとも刺激範囲が広く,これに比べて他のモデル1,3の刺激範囲は約13%小さかった。しかし,X軸方向の許容誤差(約25mm),位置合わせ用ヘルメットモデルの位置ずれ誤差等を考慮すれば,Y軸方向長さが100mmの最小モデル2の磁性体が最適な刺激効率を有するといえる。
2.2.6.4在宅用コイルに用いる積層磁性体の最適な厚さ
在宅治療用に適した重さの刺激コイル8を得るという観点から,コイルが発生する磁束を十分に集めることができ且つ必要な刺激効率が得られる磁性体の厚さを検討した。
(a)コイルで発生した磁束を集めることができる磁性体の厚さ
コイル8の取り扱いの点から,磁性体は軽ければ軽いほど好ましい。しかし,磁性体を薄くしすぎると,コイル8から発生する磁力線を磁性体22内に集めることができなくなる。そこで,コイル8から発生する磁束線をほぼすべて集めることができる磁性体の厚さを,3つのY軸積層モデル(磁性体の厚さが2mm,5mm,10mmのモデル1,2,3)について近似的に計算した。計算上,各モデルを図49の等価磁気回路に置き換えた。図49において、Sは磁性体22のYZ断面の面積である。
図49の等価回路で得られる磁束Φは式(10)で与えられる。式(10)において,r,…,r10(10回巻きコイルの場合)は偏心8字型コイルの各導線ループの平均半径である。ここで、磁場Hは次式で表される。
Figure 2016159371
次に,等価回路の方程式は次式の式(11)のように表すことができる。
Figure 2016159371
ここで、Nはコイル8の巻き数,NIは起磁力である。回路に流れる電流は3kA,N=10である。空気の断面積100cm×100cm=1mとすると,求める断面積はS=2.93となる。ここで,磁性体22のYZ断面におけるY軸方向の長さは120mmであるあるため,コイルから発生する磁力線をすべて磁性体22内に集めることができる磁性体22の厚さは約1.5mm(=2.93/120)である。
(b)解析モデルと評価方法
3つのY積層モデル(磁性体の厚さがそれぞれ2mm,5mm,10mmのモデル1,2,3)を作成し,それぞれのモデルについて脳表面誘導電場強度を計算し比較した。
(c)解析結果
この解析結果から、モデル1,2,3における脳表面中央部分の平均誘導電場強度はそれぞれ390V/m,380V/m,415V/mであった。この解析結果が示すように,磁性体の厚さは脳表面誘導電場の平均値に大きな影響を与えることがなく,磁性体22の厚さが2mmの場合でも,コイル8から発生する磁束をすべて集めることができることが分かった。厚さが2mmの磁性体22の重量は40グラムで,実際の使用において重量が問題となることはないと考えられる。
磁性体22の厚さが10mmの場合,少しだけ高い刺激効率が得られる。理由は,磁性体の上表面に流れる誘導電流はコイルが脳表面に形成する誘導電場を弱める作用をするものの,ビオ・サバールの法則により誘導電場の強さは距離の二乗に反比例するからである。磁性体22の上表面と脳モデル90の表面との距離が最も大きいモデル3(磁性体の厚さが10mmのモデル)が最もこの効果が弱いため,最も高刺激効率であったと考えられる。
モデル1のX軸方向有効刺激距離とY軸方向有効刺激距離はそれぞれ0.0490m,0.0606m,モデル2のX軸方向有効刺激距離とY軸方向有効刺激距離はそれぞれ0.0485m,0.0590m,モデル3のX方向のX軸方向有効刺激距離とY軸方向有効刺激距離はそれぞれ0.0461m,0.0613mであった。
2.2.6.5ドーム型コイルの特性評価
(a)在宅用経頭蓋磁気刺激装置に最適な刺激ロバスト性
患者自身によるコイル位置の調整を可能にするヘルメット型の位置合わせシステムが検討されているが,このような自己調整型システムは約20〜30mmの位置合わせ誤差を許容できるロバスト性能が望まれる。また,磁性体の特性とロバスト性の関係を予め知見しておくことが大切である。そこで,種々の磁性体モデルを用意し,それぞれについて刺激ロバスト性能を評価した。
(b)磁性体を有するドーム型コイルの刺激ロバスト性
特許文献3で提案されたドーム型コイル(図50A及び図50B参照)に磁性体を設けたモデル(図51A及び図51B)のロバスト性を評価した。
(c)解析モデル
図50A及び図50Bに示すドーム型コイルの中空部にX軸方向積層磁性体を配置したモデル(図51A及び図51B)について,脳表面誘導電場と,X軸方向とY軸方向の刺激ロバスト性を評価した。磁性体の無いドーム型コイルモデル(モデル1),厚さ4mmの磁性体を有するドーム型コイルモデル(モデル2),厚さ12mmの磁性体を有するドーム型コイルモデル(モデル3)を用意した。図51A及び図51Bにおいてコイルモデルの下に表れる部分は脳モデル90である。
X方向に磁性板を積層した磁性体22を採用したのは,ドーム型コイルが脳モデル内に作る誘導電場の分布を乱さないようにするためである。このモデルは,刺激ロバスト性を過剰に変化させることなく刺激効率を上げることができると考えられる。
(d)解析結果
コイルモデル1〜3に対する脳表面誘導電場の解析結果をそれぞれ図52A〜図52Cに示す。解析結果から,コイルモデル1(無磁性体、図52A)の平均誘導電場強度は71.8V/m,コイルモデル2(磁性体の厚さが4mm、図52B)の平均誘導電場強度は453V/m,コイルモデル3(磁性体の厚さが12mm、図52C)の平均誘導電場強度は501V/mであった。この結果が示すように,X方向積層磁性体を設けることにより,ドーム型コイルの作る磁場を磁性体に集め,脳の刺激効率が飛躍的に向上することが分かる。また,磁性体22の厚さが大きくなると,磁性体22の下表面と上表面との距離が大きくなり,それにより上表面の誘導電流によって脳表面誘導電場が弱まる作用が小さくなることから,磁性体22の厚さが12mmのコイルモデル3では脳表面誘導電場が更に増加したと考えられる。
磁性体22の無いコイルモデル1におけるX軸方向とZ軸方向のロバスト性を図53A及び図53Bに示す。磁性体22の無いコイルモデル1のX軸方向とY軸方向の有効刺激距離は0.0821m,0.0450mであり、厚さ4mmの磁性体22を有するコイルモデル2のX軸方向とY軸方向の有効刺激距離は0.0755m,0.0555m,厚さ12mmの磁性体を有するコイルモデル3のX軸方向とY軸方向の有効刺激距離は0.0745m,0.0560mであった。
この結果から,X軸方向の積層磁性体22を設けることでX軸方向の有効刺激距離が減少することが分かる。また,磁性体22を配置することにより,刺激範囲の形状がより円形に近くなることが確認された。厚さ4mmの磁性体22を有するコイルモデル2のインダクタンスは85.9μHであった。偏心8字型コイルに比べて,コイル8の巻き密度及び断面積が大きく且つコイル8の内部に磁性体が配置されていることから,インダクタンスが大きくなったと考えられる。
(d)刺激ロバスト性の比較
上述した複数の解析モデルについて評価した刺激ロバスト性(有効刺激距離)を図54にまとめた。図54の番号のコイルモデル(以下、CM1〜CM14とする。)は以下の通りである。
CM1:X積層直方体型磁性体(220×122×10mm)を有するコイルモデル;
CM2:Y積層直方体型磁性体(220×122×10mm)を有するコイルモデル;
CM3:XY積層直方体型磁性体(220×122×10mm)を有するコイルモデル;
CM4:無磁性体コイルモデル;
CM5:XY積層直方体型磁性体(220×100×10mm)を有するコイルモデル;
CM6:XY積層直方体型磁性体(220×140×10mm)を有するコイルモデル;
CM7:Y積層直方体型磁性体(220×122×2mm)を有するコイルモデル;
CM8:Y積層直方体型磁性体(220×122×5mm)を有するコイルモデル;
CM9:無磁性体ドーム型コイルモデル;
CM10:X積層直方体型磁性体(厚さ4mm)を有するドーム型コイルモデル;
CM11:X積層直方体型磁性体(厚さ12mm)を有するドーム型コイルモデル;
CM12:磁性体から距離10mmの位置にフェライト(返しが15mm)を挿入したコイルモデル;
CM13:X積層四角枠型磁性体を有するコイルモデル;
CM14:Y積層四角枠型磁性体を有するコイルモデル。
図54から以下のことが分かる。無磁性体モデルCM4よりもX軸方向の有効刺激距離が小さいモデルは,X積層直方体型磁性体(220×122×10mm)を有するコイルモデルCM1だけである。理由は,X方向積層磁性体内の誘導電流が,コイルによって作られる脳表面誘導電場を小さくするように作用するためである。
偏心8字型コイルに磁性体22を設けても,Y軸方向の有効刺激距離は大きな変化しない。理由は,偏心8字型コイルが脳表面中央部分に作る誘導電場のY軸方向成分が十分に強いため,磁性体22によって作られる誘導電場の影響を受けても依然として大きな値を維持するからであると考えられる。
XY積層磁性体のコイルモデルCM3,CM5,CM6は,高ロバスト性のドーム型コイルと刺激方向は異なるものの,同等の刺激範囲を有する。理由は,XY積層磁性体の中で,X方向積層磁性体部分の誘導電流は,偏心8字型コイルが脳モデルの両端領域に作る誘導電場を強める向きに作用するが,Y方向積層磁性体部分の誘導電流は,偏心8字型コイルが脳モデルの中央に作る誘導電場と直交する向きの電場を作るためである。すなわち,8字型コイルが作る脳内誘導電場をX軸方向に引き伸ばすように,磁性体内の誘導電流が作用するためである。
四角枠型Y積層磁性体を有するコイルモデルCM14では,積層方向を調整することで,コイルが脳表面につくる誘導電場を相殺することができる。また,中央部分の磁性体部分が切除されたコイルモデルCM13,CM14では,該中央部分の真下の部分に形成される誘導電場が影響を受けず,そのためにX軸方向とY軸方向の有効刺激距離が図55A及び図55Bに示すように伸びたものと考えられる。
2.2.7 漏れ磁場を抑制する磁性体の設計と漏れ磁場の解析
(a)漏れ磁場
放射線を利用した在宅システムは,国際非電離放射線防護協会(ICNIRP)が定める,人間が被曝しても安全とされる電磁波レベルの安全基準(表3参照)を満たす必要がある。経頭蓋磁気刺激装置では,そこで想定されている刺激条件が約3kHzであるため,許容磁場レベルは21A/mである。
Figure 2016159371
患者以外の非医療従事者がシステムを操作する場合では,非医療従事者は刺激コイル8から60〜100cmまで接近すると考えられる。従って,非医療従事者への安全性を確保するためには,刺激コイル8から60〜100cm離れた場所での磁場レベルを安全値以下に設定することが望まれる。
一方,Y方向積層直方体型磁性体を有するコイルモデルでは,コイル8から発生する磁場のすべてが積層磁性体22の内部を通過せず,一部は磁性体22の外部の空間に漏れると考えられる。そこで,Y方向積層直方体型磁性体22を有するコイルモデルについて,磁性体22の外部に漏れる磁束を解析する。解析に用いた等価磁気モデルを図56に示す。図56の等価回路の磁気回路方程式を式(12)に示す。
Figure 2016159371
式(12)において,(Φiron+Φair−above)はコイル8から発生する磁束の密度に空気の透磁率を乗じて得られる値と同等である。コイル8から発生される磁場を式(11)のように近似し,次式を代入する。
N=10.1,
I=3.03,
μ=4π×10−7
air−below=0.04π,
iron=0.22,
μ=5000,
iron=0.122×0.01
このとき,磁性体22を通る磁束は式(13)のとおり計算される。
Figure 2016159371
磁気回路を流れる磁束は減少しないと仮定できるので式(14)が成立する。
Figure 2016159371
磁気回路の表面積も減少しないと仮定できるので式(15)が成立する。
Figure 2016159371
式(14)と(15)の連立方程式を解くと,磁性体に入らず,空気領域に漏れる磁束の大きさは式(16)で与えられる。
Figure 2016159371
このように,磁性体22から漏れる磁束は大きく,そのために,コイル8の周囲には強い漏れ磁場が発生すると予想できる。Z軸方向に漏れる磁束が最も強いと考えられるが,X軸方向やY軸方向の漏れ磁束も予想される。従って,磁性体22とコイル8を覆う形の磁気シールドを想定し,漏れ磁場の削減を考慮する。
磁気シールドの媒質について検討する。磁性体22の表面に流れる電流Iは,コイル電流が3kAとすれば,最大で約1kAと考えられる。従って,磁性体22内の誘導電流によってコイル中央部からZ軸方向へ約1m離れた場所に生じる磁場の強度は,ビオ・サバールの方程式に基づいて式(17)のとおり得られる。
Figure 2016159371
実際に磁気シールドに流れる電流は若干小さいと考えられるが,磁場の安全性基準が21A/mであることを考慮すると,磁性体22内の誘導電流が作る磁場強度は無視できない大きさとなる。磁気シールドは,漏れ磁場を防ぐだけでなく,その中に誘導電流が極力流れないような,フェライトのような材質を用いることが好ましい。
(b)解析モデルと評価基準
図57の解析モデルは,図35に示す解析モデルと似ているが,空気領域の大きさと磁気シールドの存在の点で相違する。空気領域の大きさは,広い範囲に亘って漏れ磁場の影響を検討するために,2m×2m×2mに設定した。図57に示すように,磁性体22は,Y軸方向に磁性板を積層した,220mm×120mm×10mmの直方体型磁性体である。磁性体22の電気伝導率は10S/m,比透磁率は1,500とした。磁性体22の上方と4つの側方を囲む磁気シールド91は,Ni−Znフェライトで作られており,その電気伝導率は10−5S/m,比透磁率は1,500とした。磁性体22と磁気シールド91のZ方向の間隔は20mm,磁性体22の下面と磁気シールド91の天井面(内面)との距離は46mmに設定した。磁性体22と磁気シールド91のXY方向の間隔が異なる3つのモデル−間隔5mm(モデル1),間隔10mm(モデル2),間隔20mm(モデル3)−と,磁気シールドの無いモデル(モデル4)を作成し,それぞれの漏れ磁場強度を計算した。
漏れ磁場の安全性基準21A/mは比較的小さな値であることから,強磁性体内部に発生する比較的小さな誘導電流の影響も考慮することが重要であると考えられる。従って,フェライトのような電気伝導率の小さい物質で積層磁性体22を囲むことにより,コイル8から発生する磁場だけでなく,磁性体22から発生する磁場も外部に漏らさないようにすることが好ましい。コイル装置の小型化の点では,フェライトと積層磁性体22の距離はできるだけ小さい方が好ましいが,両者が接近し過ぎると,積層磁性体22ではなくフェライトの方が磁気抵抗の小さい磁気通路となり,脳への刺激効率が低下する。
コイル中心から磁場強度21A/mになる位置までの距離をX+方向及びX方向,Y+及びY方向,Z+方向の5方向について計測し比較する。解析モデルにおける空気エレメントの大きさが大きいため,各空気エレメントの磁場強度を縦軸,磁性体22の上表面中央部からの距離を横軸にとったグラフに対して累乗関数近似を行った上で,磁場強度を計測した。近似手法としてはy=Cx−2の形に近づくように,統計分析フリーソフト「R」を用いて非線形回帰分析を用いて累乗近似を行った。理由としては,電磁波の減衰は距離の2乗に反比例するためである。
(c)解析結果
モデル1〜4について計算した漏れ磁場強度を表4に示す。磁場強度が21A/mに収束しなかった解析(表中,数値を()で囲った解析)では,空気領域の端に位置する,コイル8の中央部から1mの位置での磁場強度を記載した。
Figure 2016159371
表4から明らかなように,磁気シールドを有するモデル(モデル1〜3)のZ+方向漏れ磁場は,磁気シールド91の無いモデル(モデル4)よりも減少した。また,磁気シールド91と磁性体22の距離が小さくなるほど,漏れ磁場が減少した。
X軸方向とY軸方向に関して,磁気シールド91を設けることによって漏れ磁場が減少することが確認できたが,磁性体22と磁気シールド91の距離が小さくなるほど漏れ磁場が大きくなることが分かった。これは,磁性体22と磁気シールド91の距離が大きくなるに従って,磁力線の曲率半径が広くなることによるものと考えられる。例えば,磁気シールド91と磁性体22の距離が5mmの場合,磁気シールド91に対する磁力線の入射角が小さくなり,その結果,磁力線は磁気シールド91により吸収され易くなり,Z軸方向の漏れ磁場が小さくなるものと考えられる。
実際,磁性体22の中央を通るXZ断面の磁場分布を表した図58に示すように,磁気シールド91と磁性体22の水平方向の距離が5mmのとき(磁気シールド91A)の磁気シールド91に対する磁力線の入射角は,磁気シールド91と磁性体22の水平方向距離が20mmのとき(磁気シールド91B)の入射角よりも大きく,そのために,Z+方向に関してより遠くまで磁力線が届く。なお、磁気シールド91Aと91Bは択一的である。図58において、実線93は磁性体とフェライトの距離が5mmのときの磁力線であり、点線94は磁性体とフェライトの距離が20mmのときの磁力線である。
また,X軸方向及びY軸方向に関しては,X軸方向の磁気シールド91の上面に沿った磁場強度を評価しているが,フェライトの磁気シールド91と磁性体22の距離が5mmの場合においては磁場強度のピークが部分93mに近い部分にあり,20mmの場合は磁場強度のピークが部分94mからZ軸負方向の少し遠い部分にある。磁性体−フェライト間距離が20mmのモデルでは磁場強度が小さくなった。
磁気シールド91の無いモデル4のインダクタンスは16.7μH,磁気シールド91と磁性体22の距離を5mmに設定したモデル1〜3のインダクタンスはそれぞれ17.0μH,16.8μH,16.7μHであった。磁気シールド91と磁性体22の距離が小さくなるほど,コイル8からの磁束が磁気シールド91を通過することから,インダクタンスが大きくなったものと考えられる。
モデル1〜4における脳表面中央部分の誘導電場強度の平均値はそれぞれ,287V/m,307V/m,304V/m,300V/mであった。この結果から,磁性体22と磁気シールド91の距離が10mm以下になると,磁気シールド91の磁気抵抗が磁性体22の磁気抵抗よりも小さくなり,その結果,脳表面誘導電場が弱くなると考えられる。従って,磁性体22と磁気シールド91の距離は,約10mmに設定するのが適当と考えられる。
2.2.8 漏れ磁場を最小限に抑える磁気シールドの最適化
表4から分かるように,国際非電離放射線防護協会(ICNIRP)が定める安全基準21A/mをすべての方向について満足するモデルは無かった。従って,磁性体22と磁気シールド91の距離を10mmに設定したモデルを改良し,図59に示すように,箱型磁気シールド91のコイルに対向する下端開口に該下端から内方に向かって水平方向に突出する環状のフランジ(返し)91Fを設けた解析モデルを作成した。
(a)解析モデル
図59に示すように,フランジ91Fの幅が5mm,10mm,15mmの3つの解析モデル(モデルM1〜M3)を作成した。フランジ91Fの材料はNi−Znフェライトである。
(b)解析結果
図59の各解析モデルについて解析した漏れ磁場を表5に示す。磁場強度が21A/mに収束しなかった解析(表中,数値を()で囲った解析)では,空気領域の端であるコイル中央から水平方向に1mの位置での磁場強度を記載した。
Figure 2016159371
ここで、フェライトの返しは上記フランジ91Fである。モデルM1〜M3のターゲット地点における脳表面誘導電場の平均値はそれぞれ,309,309,309V/mであった。従って,フランジ91Fの長さは15mmが最適である。最も長いフランジ91Fが有効な理由は,図60に示すように,磁気シールド91の底部開口から漏れ出ようとする磁束の一部がフランジ91Fにトラップされるためである。
解析の結果,磁性体22と磁気シールド91との距離を10mmに設定し,長さ15mmのフランジ91Fを設けたモデルの漏れ磁場は,磁気シールド91及びフランジ91Fの無いモデルの,X+方向に関して56.8%,X方向に関して51.2%,Y+方向に関して67.0%,Y方向に関して70.0%,Z方向に関して51.2%まで改善された。
医療従事者はコイル8の背後(コイルに対してY方向に離れた場所)に居ると仮定すると,X方向の漏れ磁場は問題にならない。また,医療従事者がその手で刺激コイルを支えた状態を想定した場合,腕の長さの分だけY方向とZ方向に距離をかせぐことができる。
5mmのフランジ91Fを有するモデルのコイルインダクタンスは16.9μH,10mmのフランジ91Fを有するモデルのコイルインダクタンスは17.1μH,15mmのフランジ91Fを有するモデルのコイルインダクタンスは17.4μHであった。フランジ91Fの長さが大きくなるほど,磁気シールド91を通過する磁束が多くなり,インダクタンスが大きくなるものと考えられる。
磁気シールド91の無いモデルのX軸方向有効刺激距離及びY軸方向有効刺激距離はそれぞれ0.0455m,0.0604m,フランジ91F付き磁気シールド91(磁性体22と磁気シールド91の水平方向の距離は10mm,フランジ91Fの長さ5mm)を有するモデルのX軸方向有効刺激距離及びY軸方向有効刺激距離はそれぞれ0.0459m,0.0605mであり,フランジ91F付き磁気シールド(磁性体22と磁気シールド91の距離は10mm,フランジ91Fの長さ10mm)を有するモデルのX軸方向有効刺激距離及びY軸方向有効刺激距離はそれぞれ0.0461m,0.0608mであり,フランジ91F付き磁気シールド91(磁性体22と磁気シールド91の水平方向の距離は10mm,フランジ91Fの長さ15mm)を有するモデルのX軸方向有効刺激距離及びY軸方向有効刺激距離はそれぞれ0.0464m,0.0629mであった。
3 考察
3.1 磁性体を8字型コイルの上に配置する理由
磁束を誘導するために,例えば,ソレノイドではコイル8の内側に磁性体を配置することが行われている。しかし,経頭蓋磁気刺激装置で利用される偏心8字型コイルの両円形コイル部分81,82は導線を例えば10回程度らせん状(スパイラル)に巻いたものであるため,該円形コイル部分81,82の中央に形成された小さな空間に鉄心等の磁性体22を効果的に配置するのは難しく且つ費用もかかることから,在宅用コイル8には不向きである。代わりに,患者の頭部に磁性体を埋め込み,そこに磁束を集める方法も提案されている。しかし,この方法は開頭手術を要し,非侵襲性を利点とする経頭蓋磁気刺激治療の特徴を生かすことができないことになる。これに対し,コイル8の上に磁性体22を配置する構成は,上述したすべての問題を解消するものであり,かつ,コイルから発生する磁束を治療に必要な程度まで集めることができる,という利点がある。
3.2 Ni−Znフェライトコアを磁気シールドに用いる理由
コイルの内側に配置した磁性体22も磁気シールド91として機能し得る。例えば,3kHz程度の周波数であれば,磁性体22内部の誘導電流は実質的に打ち消され,磁性体22の表面に僅かに存在するだけである。しかし,経頭蓋磁気刺激装置にあっては,微小な電流であってもそれによって発生する電磁波が治療効果を減じかねないため,磁性体は磁気シールド91として十分に有効とは言い難い。
これに対し,Ni−Znフェライトは,比透磁率が1,500,電気伝導率が0.00001S/m程度で,実質的に絶縁体とみなすことができる。また,Ni−Znフェライトは,相対温度係数も約1〜3で,透磁率は温度の影響を受けにくい。さらに,フェライトは,その透磁率がある周波数までは一定の値をとるが,その周波数を超えると磁場の変化に磁束密度が追随できず,磁場に対する磁束密度の位相の遅れが生ずることがある。しかし,Ni−Znフェライト(HF70)はある透磁率−周波数特性を有し,刺激周波数が約3kHzの経頭蓋磁気刺激治療に悪い影響を及ぼすことがない。従って,磁気シールド91に用いる材料には,Ni−Znフェライトが適当と考えられる。
3.3 在宅治療における刺激コイル固定方法
在宅治療用の経頭蓋磁気刺激装置を神経障害性疼痛患者が自ら操作して治療を行う状況を想定した場合,患者自身が刺激コイル8を毎回同じ場所に位置決めできることが好ましい。そのため,患者にヘルメットを装着させるとともに,そのヘルメットに刺激コイル8を固定する技術が提案されている。このような形態にあっては,ヘルメットに対して刺激コイル8を簡単に装着できることが望まれる。
3.4 刺激コイルの重量
上述の解析から求められた最適な形状の磁性体22と磁気シールド91の合計重量は約2.1kgである。偏心8字型コイル自体の重量は約1kgである。従って,磁性体22と磁気シールド91を含むコイル装置全体は約3kgで,それは在宅用システムでも安定して支持できる重量である。
3.5 刺激コイル装置のインダクタンス
最も適当との思われる磁性体フェライトモデルのインダクタンスは約17.4μHであった。コイルのインダクタンスは,空気領域のみで解析を行い,空気領域中の磁場エネルギーの総和を用いて式(18)に基づいて計算した。
Figure 2016159371
磁気刺激治療の効果を得るために有効と考えられるパルス幅(T)は約200〜300μsである。従って,コイルの容量をC=180μFとすると,式(19)から,コイル8のインダクタンスは5.63μH〜12.6μHである。
Figure 2016159371
3.6 鉄芯内の誘導電流
磁性体22を流れる誘導電流は,ファラデーの法則に基づいて,磁束の変化率によって決定される。この場合,誘導電流は,磁性体が磁場によって磁化される速度とコイルから発生する磁場が変化する速度の影響を受けると考えられるが,前者は後者よりも十分に大きいため,実際に磁性体内に流れる誘導電流は解析で得られる誘導電流にほぼ等しいと考えられる。
3.7 鉄の磁気飽和について
鉄は,ヒステリシスの磁気特性を持つ。一方,磁性体22を通過する磁束は0.328τと算出した(式(13)参照)が,ヒステリシスを考慮すると,高磁場では比透磁率は低くなる。この点を考慮すると,磁性体内の誘導電場密度は約10〜50τと考えられる。鉄の飽和磁束密度は2.15τであることから,鉄で所望の特性を得るためには,鉄の厚さを厚くすることで磁束を増やすなどの改善が必要になる可能性がある。
3.8 積層磁性体に使用する絶縁体
積層磁性体22は,複数の磁性板の間に絶縁体を挟んで形成される。この場合,絶縁体には,Mn−Zn系フェライトが好適に利用できると考えられる。Mn−Zn系フェライトは,その比透磁率が鉄と同じ5,000,体積抵抗率が0.3Ω・mで,適応周波数が1MHzまでである。
3.9 刺激効率の改善による,刺激装置の小型化(低価格化)
無磁性体コイルモデルの3.93倍の刺激効率が得られる有磁性体コイルモデルが作成できた。有効な治療効果を得るために必要な一次運動野の誘導電流強度は一定であるが,脳内誘導電流の大きさはコイル電流に比例する。上述した解析では,コイル電流を3kAに設定した。このとき,XY積層磁性体を含むコイルモデルによって脳内に誘導される電場は507V/mであった。有効な治療効果を得るために一次運動野に必要な誘導電流密度は180A/mであることが過去の臨床実験結果で報告されている。刺激部位の電気伝導率を灰白質のそれと同じ0.11S/mと仮定すると,有効な治療効果を得るために必要な脳内誘導電場強度は200V/mである。従って,積層磁性体コイルモデルの場合,1.18kAにピーク値を持つパルス電流をコイルに印加すれば,有効な治療効果を発揮できると考えられる。ピーク電流を下げることができれば,磁場発生装置のコンデンサや昇圧回路を大幅に縮小でき,それに伴って,システムのコストも大幅に下げることができる。
4 結論
本実施形態は,経頭蓋磁気刺激による神経障害性疼痛患者の在宅治療を目的とした刺激コイルの開発に関する。そのために,数値解析により,最も刺激効率の良いコイルモデルを求めた。次に,数値解析により,良好な刺激効率を維持しつつ,軽量なコイルモデルを求めた。また,数値解析により,人体への影響を減らす磁気シールド付きコイルモデルを求めた。以上の数値解析から,以下の結論が得られた。
4.1 偏心8字型コイルに220mm×100mm×2mmのXY積層磁性体(X方向両端部にX積層,中央部にY積層)を設けたコイルモデルでは,コイルから13mm離れた脳モデル表面の中央部分における誘導電場強度を507V/mにでき,磁性体の無いコイルモデルに対して刺激効率を265%改善する。
4.2 刺激ロバスト性については,磁性体の形状や磁気シールドにフェライトを使用することで,X軸方向の有効刺激距離が拡大する。具体的には,Y軸積層磁性体を挿入した際にはX軸方向の有効刺激距離を2倍程度大きくすることができる。また,XY積層磁性体と磁気シールドを組み合わせたコイルモデルによれば,X軸方向有効刺激距離が0.0464m,Y軸方向の有効刺激距離が0.0629mの,位置ずれ許容誤差の大きい刺激ロバスト性を有する在宅治療用コイルが得られる。
4.3 Ni−Zn フェライトの250×150×5mmの大きさの直方体(天板)と,240×5×46mmの大きさの2つの直方体(前後板)と,5×150×46mmの大きさの2つの直方体(側板)からなる箱型磁気シールドで磁性体を覆い(磁性体との距離は10mm),箱型磁気シールドの下部開口縁に沿って幅15mmのフランジを取り付けたコイルモデルの場合,X+方向に1m離れた場所の磁場強度が51.4A/m,X方向に1m離れた場所の磁場強度が42.1A/m,Y+方向に1m離れた場所の磁場強度が21.84A/m,Y方向に0.965m離れた場所の磁場強度が21A/m,Z+方向に0.329m離れた場所の磁場強度が21A/mである。従って,磁気シールドを設けたコイルモデルは,コイルの中央からZ+方向に33cm,Y方向に97cmまで接近しても,人体に影響はない。
4.4 コイルと積層鉄鋼板の寸法
本実施形態において、コイルの寸法は以下のものとしてシミュレーションを行った。最外径は100mm、内径は20mm、ターン数は10とした。導線は、縦6mm×横2mmの断面とした。導線同士で最も接近する部分の間隙は0.5mmとした。コイルに印加される電流は3kA、周波数は3.15kHzとした。また、鉄鋼板の寸法については以下の通り、幅220mm、高さ122mm、厚み10mmとした。鉄鋼板の重量は鉄の比重を7.85t/m3として、およそ2.1kgとなる。比透磁率は5000、導電率については1.0×10S/m、また積層に垂直な方向には1.0×10−7S/mとした。鉄鋼板は中央偏心8字型コイルの上部表面から3.5mm上部に位置するとした。脳を模擬した導電体は導電率を0.11S/mとし、縦140mm、横140mm、高さ40mmとした。この導電体は、コイル下部表面から10mm下に位置するように設定した。実験全体のモデルは図61に示した通りである。刺激強度は、刺激中心より半径10mm以内のエレメントにおける電場ベクトルの大きさを平均したものにより評価した。
4.5 異方向の積層鉄鋼板の組み合わせ
鉄鋼板の最適な積層方向について検討するため、実験全体の外観を変えずに鉄鋼板の種類を変更したモデルを用意した。まず、3種類の鉄鋼板について、積層のない鉄鋼板、縦方向積層の鉄鋼板、横方向積層の鉄鋼板をモデル化した。これらの3モデルは、鉄鋼板を併用しないモデルにおける刺激強度との比較を行った。次に、中央部が横積層となり、側部が縦積層となるような、異方向の積層を組み合わせた鉄鋼板のモデルを用意した。同モデルの外形は図62に示す通りである。側部の縦積層部分の幅をそれぞれ6mmから36mmで変化させ、側部の幅と達成される平均電場強度の関係をプロットした。図62において、22XはX方向積層磁性体であり、22YはY方向積層磁性体であり、Y方向積層磁性体22YはX方向で1対のX方向積層磁性体22Xで挟設される。
4.6 積層鉄鋼板による刺激強度への影響
図63A〜図63Eに示すように、刺激強度(誘導電場強度)は積層鉄鋼板によって大きく向上した。積層のない鉄鋼板と横方向積層の鉄鋼板については、中央における平均電場強度がそれぞれ218V/m、335V/mとなった(図63B及び図63C)。これは、鉄鋼板のない場合の電場強度(160V/m、図63A)に対しそれぞれ1.5倍、2.1倍である。一方で、縦方向積層による刺激強度は111V/m(図63D)となり、鉄鋼板のない場合に対し減少している。
本結果は基本原理として、鉄鋼板の高い透磁率による、コイル磁界の強度上昇があった事を示唆するものである。またこれらの結果から、高透磁率による刺激強度の上昇効果よりも、鉄鋼板内に発生する損失誘導電流による刺激強度の減少効果が高くなってしまうケースがあるということもわかる。この悪いケースは、すなわち縦方向積層のことである。
図64(a1)及び図64(a2)のように、縦方向積層鉄鋼板内には8字型コイルによる渦電流が発生しており、この誘導電流が刺激強度に対して大きな抑制効果を持つ。このケースにおいては、コイルから発生する磁束について、鎖交磁束群に対する鉄鋼板の断面積が非常に大きくなることが原因となり、大きな損失電流が発生してしまっている。また、図64(b1)及び図64(b2)のように横方向積層の場合についても、鉄鋼板内に損失電流が発生している領域が存在することがわかる。従って、横方向積層の鉄鋼板を用いた際の刺激強度は鉄鋼板がない場合よりも上昇しているものの、刺激強度に若干の減弱があることが想定される。
4.7 中央偏心8字型コイルに対する、鉄鋼板の最適な積層方向の比率について
図63Eに示すように、異方向の積層鉄鋼を組み合わせたモデルは、単方向の積層鉄鋼としたものに比較してより強い刺激強度を達成できることがわかった。図65には、縦方向積層となっている側部の幅と刺激強度の関係を示している。側部幅を最適化すると、幅30mmの場合に刺激強度が456V/mとなった。また、インダクタンスについては、鉄心のないモデルで11.7μHであったのに対し、30mm幅の組み合わせ積層鉄鋼板を利用した場合17.2μHとなった。
これらの結果は一般に、コイル磁界の方向が空間位置によって変化するので、積層のデザインも別々にすることが効果的である。ということを示唆するものである。前述した通り、鉄鋼板の中央部においては、鉄鋼板上部から見て横向きの磁界が多く存在するため、積層の方向も横方向であることが適切となる。この横向きの磁界が支配的である。領域は、縦方向積層の幅を30mmとした時に最も大きい刺激強度を達成できたことにより予想できる。一方で、鉄鋼板の端部においては、磁束は鉄鋼板表面に垂直に入るものが多くなる。この垂直な磁場については、横方向の積層、縦方向の積層、いずれでも良いということになる。図64Cに示すように、横方向の積層部と縦方向の積層部の断絶が鉄鋼板内に発生する損失誘導電流を上手く阻害しており、横向きに単方向の積層鉄心を用いた場合に比べ、組み合わせ鉄鋼板では誘導電流がかなり小さく抑えられていることがわかる。最終的に、中央偏心8字型コイルに組み合わせ積層鉄鋼板を併用したモデルは、鉄鋼板なしの場合に比べ2.8倍の刺激強度が、また従って鉄心のない通常の8字型コイルに比べ3.4倍の刺激強度が達成できた。
一方、鉄鋼板を併用することによってインダクタンスの値は鉄鋼板を用いない場合よりも若干大きくなってしまったため、TMSにおける刺激パルスの周波数に若干の変化があることが予想される。しかしながら、TMSコイルのインダクタンスは典型的には10μHから35μHの値であり、このインダクタンスの変化は、適切な値のキャパシタを持った回路を適切に選ぶことにより対処可能であると考えられる。加えて近年では、自由な形状のパルスをインダクタンスの値に依らず生成可能な回路の研究もなされており、こういった回路を用いることにより、インダクタンスの変化を考慮せずとも良くなると考えられる。
最終結論として、横方向の積層と縦方向の積層を組み合わせた鉄鋼板が刺激強度の向上に非常に効果的であり、その強度は鉄鋼板を用いない場合に比べ、2.8倍になることがわかった。この結果より、TMSコイルから発生する磁界の方向を考慮して鉄鋼板の積層方向を定めることが重要であることが示唆される。積層鉄鋼板を用いることで、コイル8に印加する電流を減らすことができ、従って除熱機構を使うことなくコイル8の加熱を抑えることができる。これにより、高出力かつ高頻度なrTMSの施術が可能となり、またTMS機器自体も小さく安価に作成が可能となる。
以上説明したように、偏心8字型コイル8に磁性体22と磁気シールド91を組み合わせたコイルは,在宅用磁気刺激装置用のコイルとして十分に利用可能である。
以上詳述したように、本発明によれば、脳の磁気刺激対象領域(磁気刺激を与えるべき領域をいう)に対して従来技術に比較して高い誘導電場強度を発生でき、従来技術に比較してロバスト性を有し、例えば在宅用磁気刺激装置に用いることができるコイル装置及び、コイル装置を備えた経頭蓋磁気刺激装置を提供することができる。
本発明の経頭蓋磁気刺激装置用コイル装置は、巻線コイルが人間の頭部表面に対向するように設けられ、電磁誘導によって脳内の磁気刺激対象領域に誘導電場による電流を発生させてニューロンを刺激する経頭蓋磁気刺激装置のためのコイル装置であって、所定の基準面に沿って導線を巻回して構成されたコイルと,上記頭部とは上記コイルを挟み反対側である、前記コイルの上方の位置において、前記コイルに対向するように設けられ、前記コイルが駆動されたときに誘導電場による電流が流れ、かつ当該誘導電場による電流により上記脳内の磁気刺激対象領域に流れる誘導電場による電流を、磁性体がないときに比較して増大させる磁性体を備えることを特徴とする。従って、本発明によれば、脳の磁気刺激対象領域に対して従来技術に比較して高い誘導電場強度を発生でき、従来技術に比較してロバスト性を有し、例えば在宅用磁気刺激装置に用いることができる。さらに、前記磁性体は、前記コイルの巻回方向に積層して構成される場合に、上記脳内の磁気刺激対象領域に流れる誘導電場による電流をさらに増大させることができる。
1…経頭蓋磁気刺激装置、
4…磁気刺激装置、
5…コイル装置、
6…制御ユニット、
8…コイル、
8L…中心軸、
9…ケーシング、
22,22A〜22H…磁性体、
25…コイル駆動回路、
26…ケーブル、
31…サイリスタ、
31D…ダイオード、
61…交流電源、
62…電源回路、
63…昇圧回路、
64…コンデンサ、
65…抵抗、
66…半導体スイッチ、
67…制御回路、
80…導線、
81,82…コイル部分、
83,84…コイル部分の中心、
85…コイルの中央部、
90…脳モデル、
91,91A,91B…磁気シールド、
91F…フランジ、
100A〜100D…磁性体。
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Claims (12)

  1. コイルが人間の頭部表面に対向するように設けられ、電磁誘導によって脳内の磁気刺激対象領域に誘導電場による電流を発生させてニューロンを刺激する経頭蓋磁気刺激装置のためのコイル装置であって、
    所定の基準面に沿って導線を巻回して構成されたコイルと、
    上記頭部とは上記コイルを挟み反対側である位置において、前記コイルに対向するように設けられ、前記コイルが駆動されたときに誘導電場による電流が流れ、かつ当該誘導電場による電流により上記脳内の磁気刺激対象領域に流れる誘導電場による電流を、磁性体がないときに比較して増大させる磁性体とを備えることを特徴とする経頭蓋磁気刺激装置用コイル装置。
  2. 前記基準面は平面、曲面又は球面であることを特徴とする請求項1の経頭蓋磁気刺激装置用コイル装置。
  3. 前記コイルは、非偏心渦巻きコイル、又は偏心渦巻きコイルであることを特徴とする請求項1又は2記載の経頭蓋磁気刺激装置用コイル装置。
  4. 前記コイルは、2つのコイル部分を有する非偏心8字渦巻きコイル、又は2つのコイル部分を有する偏心8字渦巻きコイルであることを特徴とする請求項1又は2記載の経頭蓋磁気刺激装置用コイル装置。
  5. 前記コイルは、ドーム型コイルであることを特徴とする請求項1又は2記載の経頭蓋磁気刺激装置用コイル装置。
  6. 前記磁性体は、前記コイルの各ターン巻線が積み重なる方向へ、当該磁性体を構成する個々の積層板を積み重ねて構成されたことを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載の経頭蓋磁気刺激装置用コイル装置。
  7. 前記基準面に沿って前記2つのコイル部分の中心を結ぶ線の方向を第1の方向とし、前記基準面に沿って前記第1の方向と直交する方向を第2の方向とするとき、前記磁性体は、複数の電磁鋼板を前記第1の方向又は前記第2の方向に積層して構成されたことを特徴とする請求項4記載の経頭蓋磁気刺激装置用コイル装置。
  8. 前記基準面に沿って前記2つのコイル部分の中心を結ぶ線の方向を第1の方向とし、前記基準面に沿って前記第1の方向と直交する方向を第2の方向とするとき、前記磁性体は、複数の電磁鋼板を前記第1の方向に積層して構成された第1の積層磁性体部分と、複数の電磁鋼板を前記第2の方向に積層して構成された第2の積層磁性体部分とを備えたことを特徴とする請求項4記載の経頭蓋磁気刺激装置用コイル装置。
  9. 1個の前記第2の積層磁性体部分と1対の前記第1の積層磁性体部分とを備え、
    前記第1の方向で、前記第2の積層磁性体部分を上記1対の第1の積層磁性体部分で挟設するように設けられたことを特徴とする請求項8記載の経頭蓋磁気刺激装置用コイル装置。
  10. 前記磁性体は、前記第1の方向と前記第2の方向に直交する第3の方向から見たとき、四角形、多角形、円形、卵型、又は楕円型の形状を有することを特徴とする請求項1〜9のうちのいずれか1つに記載の経頭蓋磁気刺激装置用コイル装置。
  11. 前記磁性体は、前記第1の方向と前記第2の方向に直交する第3の方向から見たときの中央に開口を有することを特徴とする請求項1〜10のうちのいずれか1つに記載の経頭蓋磁気刺激装置用コイル装置。
  12. 請求項1〜11のいずれかの経頭蓋磁気刺激装置用コイル装置を備えたことを特徴とする経頭蓋磁気刺激装置。
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