JP5622153B2 - 磁気刺激装置 - Google Patents

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Description

本発明は、被験者(例えば、患者や検査受検者など)の特定部位に磁気刺激を加えるための磁気刺激装置に関する。
近年、薬物治療が必ずしも有効でない数多くの神経疾患患者に対する治療法として、経頭蓋磁気刺激療法への関心が高まっている。この経頭蓋磁気刺激療法は、患者の頭皮表面に配置した磁場発生源により脳の特定部位(例えば、脳内神経)に磁気刺激を加えることによって、治療及び/又は症状の緩和を図ることができる比較的新しい治療法であり、開頭手術が必要で患者の抵抗感が非常に強い留置電極を用いる従来の電気刺激法とは違って、非侵襲的で患者への負担が少なくて済む治療法として普及が期待されている。
かかる経頭蓋磁気刺激療法の具体的な手法としては、患者の頭皮表面に設置したコイルに電流を流して、局所的に微小なパルス磁場を生じさせ、電磁誘導の原理を利用して頭蓋内に渦電流を起こすことにより、コイル直下の脳内神経に刺激を与える方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1においては、かかる方法で施した経頭蓋磁気刺激治療により難治性の神経障害性疼痛が有効に軽減され、更に、より正確な局所刺激がより高い疼痛軽減効果を実現することが確認されている。但し、最適刺激部位は個々の患者によって微妙に異なることも明らかにされている。
従って、経頭蓋磁気刺激療法によるより高い効果を得るためには、個々の患者毎に、患者頭部の最適刺激部位を如何にして特定するか、すなわち患者頭部に対する刺激用コイルの正確な3次元の位置決めを如何にして行うかが重要である。尚、刺激用コイルの位置が同じでも、その方位(姿勢)によって得られる効果に差が生じることも知られている。
かかる刺激用コイルの位置決めについては、例えば赤外線を用いた光学式トラッキングシステムを利用して患者頭部に対する刺激用コイルの位置決めを行う構成のものが公知であり(例えば、特許文献2,3参照)、既に一部には市販され臨床応用されている。更に、特許文献4には、多関節ロボットを用いて患者頭部に対する刺激用コイルの位置決めを行う装置が開示されている。
また、前記特許文献1においては、上述の経頭蓋磁気刺激治療を行うと、疼痛軽減効果は、数時間程度は持続するが、数日間あるいはそれ以上持続するまでには至らないことが明らかにされている。従って、あまり時間間隔を空けずに、できれば毎日、継続的に上記療法を行うことが疼痛軽減の観点からは望ましいとされている。このような継続的な治療を、患者に過度の身体的,時間的等の様々な負担を強いること無く行えるようにするには、在宅、或いは近所のかかりつけの医院等での治療を可能とすることが理想的である。
国際公開第2007/123147号 特開2003−180649号公報 特開2004−000636号公報 特開2006−320425号公報
しかしながら、上記従来のコイル位置決め用の装置やシステム等を含む経頭蓋磁気刺激装置は何れも、熟練した専門医師等による検査や研究用に、比較的大規模な病院や研究機関で用いることを前提としているので、取り扱い及び操作が複雑で、使用するには熟練を要し、また、かなり大掛かりで高価なものとなる。このため、患者あるいはその家族、又は必ずしも専門ではない近所のかかりつけの医師などが操作して治療にあたることは一般に難しく、また、患者個人の自宅や比較的小規模な医院や診療所等では、コスト負担が過大であるばかりでなく、設置スペースを確保することも一般に困難である。
従って、経頭蓋磁気刺激治療を受ける患者は、やはり、治療の度に大掛かりな磁気刺激装置が設置され熟練した専門医師等が居る大規模な病院まで通うか、若しくは入院せざるを得ず、継続反復して治療を受けるためには、様々な面で大きな負担が強いられるのが実情であった。
この発明は、かかる実情に鑑み、患者が、自宅や近所のかかりつけの医院などで、日常的に継続反復して経頭蓋磁気刺激療法を行えることができるように、取り扱いや操作が簡単で、且つ、より小型で安価な磁気刺激装置を提供することを、基本的な目的としてなされたものである。
このため、本願発明に係る磁気刺激装置は、被験者の特定部位に対して磁気刺激を加えるための磁気刺激装置であって、a)前記磁気刺激を加えるための動磁場を発生させる動磁場発生手段を少なくとも含む磁場発生手段と、b)前記被験者の特定部位に対して前記磁場発生手段の相対位置を変位可能に操作される操作手段と、c)前記磁場発生手段が発生させた磁場を検出する複数の磁場検出手段と、d)前記磁気刺激に先立って若しくは磁気刺激中に、前記磁場発生手段から発生する磁場を前記磁場検出手段で検出した結果に基づいて、前記操作手段を用いて行うべき変位の操作を教示するための教示情報を報知する報知手段と、を備えることを特徴としたものである。
また、本願の他の発明に係る磁気刺激装置は、被験者の特定部位に対して磁気刺激を加えるための磁気刺激装置であって、a)前記磁気刺激を加えるための動磁場を発生させる動磁場発生手段を少なくとも含む磁場発生手段と、b)前記被験者の特定部位近傍に前記磁場発生手段を保持する保持手段と、c)前記磁場発生手段が発生させた磁場を検出する複数の磁場検出手段と、d)前記磁気刺激に先立って若しくは磁気刺激中に、前記磁場発生手段から発生する磁場を前記磁場検出手段で検出した結果に基づいて、前記被験者が前記特定部位への磁気刺激のために行うべき身体移動を教示するための教示情報を報知する報知手段と、を備えることを特徴としたものである。
以上の場合において、前記被験者の特定部位に対する所定の相対位置に前記磁場検出手段を固定するための固定手段が備えられることが好ましい。
また、前記磁場発生手段は前記操作手段に取り付けられていることが好ましい。
以上の場合において、前記報知手段は、前記複数の磁場検出手段が検出した磁場強度及び方向に関する各情報を用いた逆解析手法によって得られる磁場源の位置として、前記磁場発生手段の位置を算出して、前記教示情報を生成して報知する、ことができる。尚、逆解析手法を適用するに際しては、ランダムウォーク探索法を用いることができる。
或いは、前記磁場発生手段の位置の情報と、当該位置において発生がなされた磁場を前記各磁場検出手段が検出した磁場強度及び方向に関する各情報と、を対にして予め複数の前記位置において記録した記録手段を更に備え、前記報知手段は、前記磁気刺激に先立って若しくは磁気刺激中に前記各磁場検出手段が検出した磁場強度及び方向に関する各情報と、前記記録手段の記録情報との対比参照に基づいて、前記磁場発生手段の位置を算出して、前記教示情報を生成して報知する、ようにしてもよい。
若しくは、前記被験者の特定部位に対して磁気刺激を加えるための位置またはその許容される近傍範囲内に前記磁場発生手段が位置した状態で前記各磁場検出手段が検出した、磁場強度及び方向に関する各情報を予め複数記録した目標情報記録手段を更に備え、前記報知手段は、前記磁気刺激に先立って若しくは磁気刺激中に前記各磁場検出手段が検出した磁場強度及び方向に関する各情報と、前記目標情報記録手段の記録情報との対比参照結果に基づいて、前記教示情報を生成して報知を行う、ようにしてもよい。
また、前記記録手段は、前記磁場発生手段の位置の情報を異なる複数の座標系内の位置情報として記録可能であり、且つ、前記異なる複数の座標系内の位置情報を相互に整合させて前記対比参照を可能とするための座標変換手段を備える、ようにしてもよい。
また、前記報知手段は、前記被験者の特定部位に対し治療のために磁気刺激を行う際に、その特定部位において、前記動磁場発生手段の少なくとも位置に対応した(より好ましくは、位置および姿勢に対応した)基準磁場データと、前記磁場発生手段の操作中に、前記磁場検出手段が検出した磁場データとの偏差に基づいて、前記操作手段を用いて行うべき変位の操作を教示するための教示情報を報知する、ように構成することができる。
この場合において、前記基準磁場データとこれに対応する少なくとも位置の基準データとを1組にして基準データセットとし、前記報知手段は、前記動磁場発生手段の少なくとも位置に対応して前記磁場検出手段が検出した結果に基づく磁場データと、前記基準データセットを含む複数のデータセットの各磁場データとを比較し、両磁場データの差が最小となるデータセットの位置データに基づいて、前記操作手段を用いて行うべき変位の操作を教示するための教示情報を報知する、ように構成することができる。
この場合、前記基準データセット以外の複数のデータセットは、前記基準データセットの取得とは別途に取得するようにしてもよい。
以上の場合において、前記磁場発生手段が動磁場および静磁場を発生するように構成することができる。
或いは、前記磁場発生手段が動磁場のみを発生するように構成することもできる。
また、前記磁場検出手段は、前記磁場発生手段が発生させた動磁場および静磁場を検出するように構成することができる。この場合において、前記磁場検出手段は、前記磁場発生手段による動磁場の発生を停止した状態で、前記磁場発生手段による静磁場を検出するように構成することができる。
或いは、前記磁場検出手段は、前記磁場発生手段が発生させた動磁場のみを検出するように構成することもできる。
また、本願発明の更に他の形態に係る磁気刺激装置は、被験者の特定部位に対して磁気刺激を加えるための磁気刺激装置であって、a)磁気刺激を加えるための動磁場を発生する動磁場発生手段と、b)少なくともこの動磁場発生手段を含む磁場発生手段が取り付けられ、前記被験者の特定部位に対して変位可能に操作される操作手段と、c)前記磁場発生手段が発生させた磁場を検出する複数の磁場検出手段と、d)該磁場検出手段の前記被験者の特定部位に対する位置を固定する固定手段と、e)前記複数の磁場検出手段の検出信号に基づいて、前記磁場発生手段が発生させた磁場を逆解析し、前記磁場発生手段の3次元データを得る磁場解析手段と、f)前記磁場発生手段の所要の3次元基準データを格納するデータ格納手段と、g)前記磁場解析手段で得られた前記3次元データを前記3次元基準データと比較する比較手段と、h)該比較手段での比較結果に基づいて、前記3次元データの前記3次元基準データからの偏差に応じた前記操作手段の変位の操作を教示するための教示情報を報知する報知手段と、を備えることを特徴としたものである。
尚、前記「磁場発生手段の所要の3次元基準データ」としては、被験者の特定部位中で磁気刺激を加えるべき最適の位置および姿勢に対応する磁場発生手段の3次元データが挙げられる。
以上の場合において、前記操作手段は磁場発生手段として動磁場発生手段のみを有し、前記磁場検出手段は前記動磁場発生手段が発生させた動磁場を検出する、ように構成することができる。
或いは、この代わりに、前記操作手段は磁場発生手段として動磁場発生手段と静磁場発生手段とを有し、前記磁場検出手段は、動磁場発生手段による動磁場の発生を停止した状態で、静磁場発生手段が発生させた静磁場を検出する、ように構成することもできる。
また、前記3次元基準データは当該磁気刺激装置外部の専用の位置決め装置を用いて得ることができる。この「装置外部の専用の位置決め装置」としては、例えば、光学式トラッキングシステムなどが挙げられ、基準データを採取する場合にのみ必要とされる。
或いは、この代わりに、当該磁気刺激装置の前記磁場解析手段を用いて前記3次元基準データを得る、ように構成することもできる。
磁場発生手段が発生させた磁場を逆解析するに際しては、前記磁場解析手段はランダムウォーク探索法を適用して磁場の逆解析を行うことが好ましい。
以上の発明において、前記教示情報を報知する報知手段としては、視覚情報および聴覚情報の少なくとも何れか一方を報知するものが好適である。
特に、報知手段が聴覚情報により前記教示情報を報知するものである場合には、前記操作手段が行うべき変位量または前記被験者が身体移動すべき移動量に応じて、音量,音階および音色の少なくとも一つを変化させて報知することが好ましい。
或いは、報知手段が視覚情報により前記教示情報を報知する報知するものである場合には、前記操作手段が行うべき変位量または前記被験者が身体移動すべき移動量に応じて、教示色を変化させて報知することが好ましい。
また、前記固定手段としては、眼鏡,イヤホン,ヘッドホン或いはヘッドバンドなどを好適に用いることができる。
以上のような磁気刺激装置は、経頭蓋磁気刺激治療のために被験者の少なくとも脳の特定部位に磁気刺激を加える装置として用いることができる。
本願発明によれば、磁気刺激に先立って若しくは磁気刺激中に、磁場発生手段から発生する磁場を磁場検出手段で検出した結果に基づいて、操作手段を用いて行うべき変位の操作を教示するための教示情報が報知手段で報知される。
従って、当該装置の使用者(ユーザ)は、報知手段で報知される教示情報に基づいて操作するだけで、従来のように特別な熟練性を要することもなく、操作手段を用いて行うべき変位の操作を行うことができる。つまり、患者あるいはその家族、又は必ずしも専門ではない近所のかかりつけの医師などでも、比較的容易に操作して使用することができる。また、従来のような大掛かりで高価な装置を用いる必要がないので、コスト負担が小さくて済み、しかも患者個人の自宅や比較的小規模な医院や診療所等でも設置スペースの確保が容易である。
このように、本願発明によれば、取り扱いや操作が簡単で、且つ、より小型で安価な磁気刺激装置を提供することができ、これにより、患者が、自宅や近所のかかりつけの医院などで日常的に継続反復して経頭蓋磁気刺激療法を行うことが可能になる。
また、本願発明の他の形態に係る磁気刺激装置においては、複数の磁場検出手段の検出信号に基づいて、操作手段に取り付けられた磁場発生手段が発生させた磁場を逆解析して前記磁場発生手段の3次元データを得る磁場解析手段が備えられ、この磁場解析手段で得られた3次元データが、比較手段によって3次元基準データと比較され、この比較結果に基づいて、3次元データの前記3次元基準データからの偏差に応じた前記操作手段の変位の操作を教示するための教示情報が報知手段で報知される。
従って、当該装置の使用者(ユーザ)は、報知手段で報知される教示情報に基づいて偏差がゼロ(零)となるように操作手段を変位操作するだけで、従来のように特別な熟練性を要することもなく、かなり容易に磁場発生手段の所要の3次元基準データに対応した(つまり、磁気刺激を加えるべき最適位置および姿勢に対応した)磁場発生手段の3次元位置および姿勢を検出することができる。つまり、患者あるいはその家族、又は必ずしも専門ではない近所のかかりつけの医師などでも、比較的容易に操作して使用することができる。また、かかる磁場発生手段の3次元位置および姿勢を検出するのに、従来のような大掛かりで高価な装置を用いる必要がないので、コスト負担が小さくて済み、しかも患者個人の自宅や比較的小規模な医院や診療所等でも設置スペースの確保が容易である。このように、取り扱いや操作が簡単で、且つ、より小型で安価な磁気刺激装置を提供することができ、これにより、患者が、自宅や近所のかかりつけの医院などで日常的に継続反復して経頭蓋磁気刺激療法を行うことが可能になる。
本発明の一実施形態に係る経頭蓋磁気刺激装置の全体構成を概略的に示す説明図である。 前記実施形態で用いられる刺激用コイル及びコイルホルダの一例を示す斜視図である。 前記実施形態で用いられる磁場解析ユニットの構成を概略的に示すブロック構成図である。 専門医師が居る病院で行われる初期診療時の前記経頭蓋磁気刺激装置の操作方法を説明するためのフローチャートである。 在宅治療時の前記経頭蓋磁気刺激装置の操作方法を説明するためのフローチャートである。 円形コイルの磁場順解析を模式的に示す説明図である。 円形コイルの磁場逆解析を模式的に示す説明図である。 円形コイルの磁場順解析での厳密解に係るベクトルを示す説明図である。 円形コイルの磁場順解析での近似解を得るための分割モデルを模式的に示す説明図である。 前記実施形態で用いられる8の字型渦巻きコイルを示す説明図である。 コイル位置探索における信頼領域法を模式的に示す説明図である。 コイル位置探索におけるランダムウォーク探索法を説明するためのフローチャートである。 永久磁石を用いた場合の座標表示を模式的に示す説明図である。 前記8の字型渦巻きコイルを用いた場合の座標表示を模式的に示す説明図である。 前記8の字型渦巻きコイルを用いた場合の座標変換を説明するための線図である。 シングルコイル逆解析シミュレーション1での仮定コイル初期位置の発生範囲とセンサ位置の位置関係の一例を示す説明図である。 前記シミュレーション1において真値との誤差が10[cm]以内に収まった試行回数の割合を示すグラフである。 前記シミュレーション1において真値との誤差が5[cm]以内に収まった試行回数の割合を示すグラフである。 前記シミュレーション1におけるコイル位置探索ルートの一例を示す説明図である。 図19の探索ルートを通った場合の関数fの極小値と最小値を示すグラフである。 シミュレーション2において真値との誤差が1[mm]以内に収まった試行回数の割合を示すグラフである。 シミュレーション3の実行手順を説明するためのフローチャートである。 最小二乗法の関数fとコイルの位置誤差との相関関係を示すグラフである。 図23Aの一部を拡大して示すグラフである。 前記関数fとコイルのロール角誤差との相関関係を示すグラフである。 図24Aの一部を拡大して示すグラフである。 前記関数fとコイルのピッチ角誤差との相関関係を示すグラフである。 図25Aの一部を拡大して示すグラフである。 前記関数fとコイルのヨー角誤差との相関関係を示すグラフである。 図26Aの一部を拡大して示すグラフである。 探索開始時のfの初期値(f)とコイル位置特定の可否との相関関係を示すグラフである。 最適姿勢との誤差がゼロであるパターンについて収束の割合を示すグラフである。 最適姿勢との誤差が±10[deg]の範囲内にてランダムであるパターンについて収束の割合を示すグラフである。 最適姿勢との誤差が±20[deg]の範囲内にてランダムであるパターンについて収束の割合を示すグラフである。 最適姿勢との誤差が±30[deg]の範囲内にてランダムであるパターンについて収束の割合を示すグラフである。 データセットを利用した手法に係る実施形態(第2の実施形態)の実験で用いた刺激用コイル及びコイルホルダの一例を示す斜視図である。 前記第2の実施形態の実験で用いた磁気センサ固定具の一例を示す斜視図である。 前記第2の実施形態で用いられるデータセット解析ユニットの構成を概略的に示すブロック構成図である。 前記第2の実施形態で用いられる表示装置の画面の画像表示例を示す説明図である。 前記第2の実施形態において病院で行われる磁気刺激装置の操作方法を説明するためのフローチャートである。 前記第2の実施形態において在宅治療時の磁気刺激装置の操作方法を説明するためのフローチャートである。
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係る経頭蓋磁気刺激装置の全体構成を概略的に示す説明図である。この図において、その全体が数字符号10で表示される経頭蓋磁気刺激装置(以下、適宜、「磁気刺激装置」或いは単に「装置」と略称する)は、治療用の椅子2に固定的に着座した患者M(被験者)の頭皮表面に配置した刺激用コイル11により脳内神経に磁気刺激を加えることによって、治療及び/又は症状の緩和を図るものである。
前記刺激用コイル11は、患者Mの少なくとも脳の特定部位に磁気刺激を加えるための動磁場を発生するものであり、患者Mの頭部表面に対して変位可能に操作することができるコイルホルダ12に取り付けられている。
尚、図1においては、コイルホルダ12を把持し刺激用コイル11を患者頭皮に沿って変位させ、当該コイル11の位置決めを行った後、当該コイル11が不用意に移動することがないように、より好ましくは、コイルホルダ12をホルダ固定具3に固定した状態が示されている。
前記刺激用コイル11としては、種々のタイプの公知の磁気コイルを使用することができる。図2は、本実施形態の経頭蓋磁気刺激療法において動磁場発生手段として用いることができる刺激用コイル及びコイルホルダの一例を示す斜視図である。この図2に示す刺激用コイル11は、2つの渦巻き形コイルを同一平面上で数字の「8」の字型に並べた、所謂、8の字型渦巻きコイルであり、8の字の交点に相当する点直下にて誘導電流密度が最大となる。このタイプの磁気コイル11は、その姿勢の特定を含めて固定がやや難しいが、限局した刺激をもたらすのに好適である。かかる刺激用コイル11は、合成樹脂製のコイルホルダ12の成形時に、該コイルホルダ12と共に一体的に樹脂成形されることが好ましい。
前記刺激用コイル11は、ケーブル15を介して磁気刺激制御装置16に電気的に接続されている。この磁気刺激制御装置16は、刺激用コイル11への電流パルスの供給を制御するもので、従来公知の種々のタイプのものを用いることができる。磁気刺激制御装置16のオン/オフ(ON/OFF)操作は操作者によって行われる。また、磁気刺激の強度やサイクルを決定付ける電流パルスの強度やパルス波形の設定等も、操作者によって行うことができる。
本実施形態では、刺激用コイル11が発生させた磁場を検出し得る磁場検出手段としての磁場センサ13が、患者Mが装着した眼鏡14の左右のフレーム部分にそれぞれ1個ずつ取り付けられている。
かかるセンサ13としては、例えば、所謂サーチコイルなどの誘導型センサ,ホール効果を利用したホールセンサ,磁気抵抗(Magnetoresistance)効果を利用したMRセンサ,磁気インピーダンス(Magneto-impedance)を用いたMIセンサ、更にはフラックスゲート型センサなど、様々なタイプの公知の磁場センサ(磁気センサ)を用いることができる。数ミリ(mm)角のサイズで数グラム(g)の重量の量産品であれば、1個当たり数百円程度の価格での入手が期待できるものも少なくない。経頭蓋磁気刺激療法に用いるものとしては、十分な小型・軽量・低価格が達成可能であると言える。
前記眼鏡14は、複数(本実施形態では、例えば2個)の磁場センサ13の患者頭部に対する位置を固定する固定手段としての役割を果たすものである。患者Mの頭部に対する磁場センサ13の固定位置には再現性が求められ、患者Mに対して磁場センサ13を常に同じ位置に固定する必要があるが、このような固定位置の繰り返し再現性を確保した上で、患者Mに不快感や違和感を及ぼすことなく、比較的自然に患者頭部に対して磁場センサ13を固定する手段としては、日常的に身に付けて用いられる機会が多く馴染みのある装具(身体装着具)が望ましい。この点、眼鏡14は好適である。尚、一般的な眼鏡では上下に微妙に位置ズレが生じる場合もあるが、所謂、保護用(安全用)眼鏡やスポーツ用眼鏡などは、かかる位置ズレが生じ難い設計になっており、磁場センサ13の取付装具として特に好適である。
本実施形態に係る経頭蓋磁気刺激装置10は、前記複数の磁場センサ13の検出信号に基づいて、検出された磁場(磁場強度および方向)を逆解析し、この逆解析手法によって得られる磁場源の少なくとも位置(好ましくは位置および姿勢)として、当該磁場を発生させた前記刺激用コイル11の3次元データを算出して取得すると共に、この取得データを後述する基準データ(3次元基準データ)と対比して該3次元基準データからの偏差(ずれ)を検知することができる、磁場解析ユニット20を備えている。
また、この磁場解析ユニット20には、当該ユニット20で検知された前記偏差を、例えば視覚情報によってユーザ(例えば操作者)に報知することができる、例えば液晶タイプの表示パネルを備えた表示装置28が付設されている。
この表示装置28は、磁場逆解析を行って刺激用コイル11の現在位置(好ましくは現在の位置および姿勢)を把握した後、このコイル11の現在位置(および姿勢)をユーザに報知し、刺激用コイル11を最適位置(つまり、最適刺激部位に相当する位置)および姿勢まで誘導するインタフェースの役割を果たすものである。尚、この場合、「ユーザ」とは、例えば、患者,その家族,かかりつけの医院等の医師や医療従事者などである。
前記磁場解析ユニット20は、例えば、CPU(中央演算処理装置)を備えた所謂パーソナルコンピュータを主要部として構成され、図3のブロック構成図に示されるように、信号解析部22と格納部23と比較部24とユーザ情報出力部25とを備えている。
前記信号解析部22は、好ましくは無線信号として入力される前記複数の磁場センサ13(センサ1,センサ2,…,センサN)から入力される検出信号に基づいて(図3:矢印Y1参照)、刺激用コイル11が発生させた磁場を逆解析し、当該刺激用コイル11の3次元データ、つまり、刺激用コイル11の位置および姿勢についての3次元データを得るものである。
尚、本明細書において、「刺激用コイルの姿勢」とは、刺激用コイル11の方向および角度を意味し、「刺激用コイルの方向」とは、患者Mの頭皮表面におけるコイル11の向きのことであり、「刺激用コイルの角度」とは、患者Mの頭皮表面の法線とコイル11の磁場方向とが為す角度を意味するものとする。
また、前記格納部23は、患者Mの頭部で磁気刺激を加えるべき最適位置および姿勢に対応する刺激用コイル11の3次元データ(つまり、刺激用コイル11の位置および姿勢についての3次元データ)を基準データとして格納するもので(図3:矢印Y2参照)、読み出し可能なメモリ装置で構成されている。
この3次元基準データは、刺激用コイル11を用いて患者Mの脳の特定部位に磁気刺激を加える際に、患者Mの神経障害性疼痛が最も軽減される最適のコイル位置(所謂スイートスポット)および姿勢であり、初期診療時など病院で診療を行う際に、経頭蓋磁気刺激装置10の外部の専用の位置決め装置を用いて決定することができる。
この「装置外部の専用の位置決め装置」としては、例えば、従来公知の光学式トラッキング装置および医用画像(共に不図示)を含む光学式トラッキングシステムが挙げられ、前記3次元基準データを採取する場合にのみ必要とされる。
或いは、このような「装置外部の専用の位置決め装置」を用いる代わりに、当該経頭蓋磁気刺激装置10の磁場解析ユニット20自体を用いて、具体的には、磁場解析ユニット20の信号解析部22の機能を利用して3次元基準データを決定するように構成することもできる。
前記比較部24は、信号解析部22で得られた3次元データを格納部23に格納された前記3次元基準データと比較するもので(図3:矢印Y3,Y4参照)、これにより、信号解析部22で得られた3次元データの前記3次元基準データからの偏差(ずれ)を検知することができる。
そして、この比較部24での比較結果によって検知された前記偏差データが、ユーザ情報出力部25を介してユーザ・インタフェース部28(本実施形態では、前述の表示装置)に信号出力される(図3:矢印Y5,Y6参照)。ユーザ・インタフェース部28は、このユーザ情報出力部25からの出力信号に基づいて、操作手段(コイルホルダ12)を用いて行うべき変位の操作を教示するための教示情報(前述の表示装置の場合には、例えば映像信号等の表示のための信号)を生成してユーザに報知するようになっている。
装置10の操作者(ユーザ)は、表示装置28を視認しながら(図3:矢印Y7参照)、表示装置28の画面上に表示された偏差が極力ゼロ(零)となるように、コイルホルダ12を患者Mの頭皮に沿って変位操作する。そして、表示装置28の画面上に表示された偏差がゼロ(零)若しくは限りなくゼロに近くなった刺激用コイル11の位置および姿勢で、当該刺激用コイル11の変位操作を停止し、その状態を保持する。尚、このとき、図1に示すように、ホルダ固定具3を用いてコイルホルダ12を固定するようにすれば便利である。
以上のように構成された経頭蓋磁気刺激装置10の操作方法について、専門の医師が病院で行う初期診療時と、患者Mあるいはその家族等が自宅で行う在宅治療時とに分けて、図4及び図5のフローチャートを参照しながら説明する。
まず、専門の医師が居る比較的大規模な病院で行われる初期診療時の装置10の操作方法を、図4のフローチャートに基づいて説明する。
尚、この病院には、経頭蓋磁気刺激療法に用いる磁気刺激用コイル11の最適位置(および姿勢)への位置決めを行う装置外部の専用の装置として、従来公知の光学式トラッキング装置および医用画像表示装置(共に不図示)を含む光学式トラッキングシステム(以下、適宜、「基準計測系」と称する)が備えられているものとする。光学式トラッキングシステムを用いることで、医用画像表示装置に表示された患者Mの脳の医用画像(例えばMRI(magnetic resonance imaging:磁気共鳴映像法)画像)に基づいて、ターゲットを確認しつつ、コイルの位置や脳表に対する方向・角度をリアルタイムにモニタしながら、例えば脳内神経を磁気刺激することができる。
初期診療に際して、装置10の操作が開始されると、まず、ステップ#11で、患者Mがセンサ部13を装着する。つまり、複数(本実施形態では2個)の磁場センサ13を取り付けた眼鏡14を患者Mが装着する。これに伴って、前記複数の磁場センサ13(センサ1,センサ2,…,センサN)から検出信号が信号解析部22に入力される(図3:矢印Y1参照)。次いで、ステップ#12で、医師が、光学式トラッキング装置および医用画像(共に不図示)を見ながら、また、患者Mが痛みを感じる領域での筋肉の反応を参照しながら、刺激用コイル11の最適位置および姿勢を探索し、刺激用コイル11が最適の位置および姿勢に到達したか否かが継続的に判定される(ステップ#13)。
そして、刺激用コイル11が最適位置および姿勢に到達してステップ#13での判定結果がYESになると、医師からのトリガー入力(スイッチ:ON/図3:矢印Y8参照)により、その時点で入力された磁場センサ13の検出信号に基づいて、信号解析部22で刺激用コイル11の位置および姿勢が3次元データとして計算される(ステップ#14)。つまり、刺激用コイル11の最適位置および姿勢に対応するセンサシステム(以下、適宜、センサ計測系と称する)での3次元データが得られる。そして、図3において矢印Y2で示されるように、ステップ#14で得られた3次元データが基準データとして格納部23に格納されるようになっている(ステップ#15)。このように、病院で行う初期診療において3次元基準データを設定する際には、比較部24及びユーザ情報出力部25並びにユーザ・インタフェース部28は、何れも作動することはない。
次に、患者Mあるいはその家族等が自宅で行う在宅治療時の装置10の操作方法を、図5のフローチャートに基づいて説明する。尚、在宅治療時には、経頭蓋磁気刺激装置10の前記磁場解析ユニット20には、図4のフローチャートを用いて説明した病院での初期治療によって、3次元基準データが予め前記格納部23に格納されているものとする。従って、この在宅治療時には、図3において矢印Y8で示された医師からのトリガー入力、及びこれに伴う3次元基準データの格納部23への格納(図3:矢印Y2参照)は、共に行われることはない。
在宅での治療に際して、装置10の操作が開始されると、まず、ステップ#21で、患者Mがセンサ部13を装着する。つまり、複数(本実施形態では2個)の磁場センサ13を取り付けた眼鏡14を装着する。これに伴って、前記複数の磁場センサ13(センサ1,センサ2,…,センサN)から検出信号が信号解析部22に入力される(図3:矢印Y1参照)。次いで、ステップ#22で、患者Mまたはその家族等がコイルホルダ12を把持して、刺激用コイル11ができるだけ最適位置および姿勢となるように、刺激用コイル11を患者Mの頭皮表面に沿って変位操作する。
この刺激用コイル11の変位に対応して、ステップ#23で、信号解析部22により刺激用コイル11の位置および姿勢が3次元データとして計算される。この信号解析部22で計算して得られた3次元データと格納部23に格納された前記3次元基準データとが比較部24で比較され(図3:矢印Y3,Y4参照)、これにより、信号解析部22で得られた3次元データの前記3次元基準データからの偏差(ずれ)が検知される。そして、この比較部24での比較結果で検知された前記偏差データが、ユーザ情報出力部25を介してユーザ・インタフェース部28(本実施形態では、前述の表示装置)に信号出力される(図3:矢印Y5,Y6参照)。
患者Mまたはその家族等は、表示装置28に映し出された画像を見ながら(図3:矢印Y7参照)、画面上に表示された偏差が極力ゼロ(零)となるように、コイルホルダ12を患者Mの頭皮に沿って変位操作する。つまり、患者Mまたはその家族は、ユーザ・インタフェース部28(表示装置)によって、刺激用コイル11の最適位置および姿勢をナビゲーションされることになる(ステップ#24)。
このとき、信号解析部22で得られた3次元データの前記3次元基準データからの偏差の大きさ(コイルホルダ12が行うべき変位量)に応じて、つまり、刺激用コイル11が最適位置に近付くに連れて、表示装置28に映し出された画像の色を、例えば、偏差が小さくなるにつれて、例えば、青色から黄色へ、更には赤色などに順次変化させるように構成することで、刺激用コイル11の最適位置および姿勢への誘導がより容易になり、利便性をより高めることができる。
そして、ステップ#25で、刺激用コイル11が最適位置および姿勢に到達したか否かが判定され、この判定結果がNOである間はステップ#22以降の各ステップが繰り返して実行される。その後、表示装置28の画面上に表示された偏差がゼロ(零)若しくは限りなくゼロに近くなって前記ステップ#25での判定結果がYESになると、その時点の刺激用コイル11の位置および姿勢で、当該刺激用コイル11の変位操作を停止し、その状態を保持する。このとき、前述のように、ホルダ固定具3(図1参照)を用いてコイルホルダ12を固定するようにすれば便利である。
以上、説明したように、本実施形態によれば、複数の磁場センサ13(磁場検出手段)の検出信号に基づいて、コイルホルダ12(操作手段)に取り付けられた刺激用コイル11(磁場発生手段)が発生させた磁場を逆解析して前記刺激用コイル11の3次元データを得る磁場解析ユニット20の信号解析部22(磁場解析手段)が備えられ、この信号解析部22で得られた3次元データが、比較部24(比較手段)によって、格納部23に格納された3次元基準データと比較され、この比較結果に基づいて、3次元データの前記3次元基準データからの偏差がユーザ・インタフェース部28(報知手段)で報知される。
従って、当該磁気刺激装置10の使用者(ユーザ)は、ユーザ・インタフェース28で報知される偏差がゼロ(零)となるようにコイルホルダ12を変位操作するだけで、従来のように特別な熟練性を要することもなく、かなり容易に刺激用コイル11の所要の3次元基準データに対応した(つまり、磁気刺激を加えるべき最適の位置および姿勢に対応した)刺激用コイル11の3次元位置および姿勢を検出することができる。つまり、患者Mあるいはその家族、又は必ずしも専門ではない近所のかかりつけの医師などでも、比較的容易に操作して使用することができる。また、かかる刺激用コイル11の3次元位置および姿勢を検出するのに、従来のような大掛かりで高価な装置を用いる必要がないので、コスト負担が小さくて済み、しかも患者個人の自宅や比較的小規模な医院や診療所等でも設置スペースの確保が容易である。すなわち、取り扱いや操作が簡単で、且つ、より小型で安価な磁気刺激装置10を提供することができ、これにより、患者Mが、自宅や近所のかかりつけの医院などで日常的に継続反復して経頭蓋磁気刺激療法を行うことが可能になる。
尚、前述の操作方法の説明において、図4のフローチャートで示した病院での初期診療のプロセスでは、医師が刺激用コイル11の最適位置および姿勢を探索するステップ(図4:ステップ#12)は、公知の光学式トラッキングシステム(基準計測系)を用いて行うことを想定している。そして、この基準計測系を用いて特定(図4:ステップ#13)された刺激用コイル11の最適位置および姿勢に対応するセンサ計測系での3次元データが計算され(図4:ステップ#14)、これが3次元基準データとして格納部23に格納される(図4:ステップ#15)ようになっていたが、患者Mに装着したセンサシステム(センサ計測系)と光学式トラッキングシステム(基準計測系)とのレジストレーションは、後述の通り容易に行えるので、より簡便なバージョンでは、図4のステップ#14での「刺激用コイル11の最適位置および姿勢に対応するセンサ計測系での3次元データの計算」を不要とし、基準計測系で特定された刺激用コイル11の最適位置および姿勢の3次元データをそのまま格納部23に格納するようにしてもよい。
このように構成しても、医師が特定した刺激用コイル11の最適位置および姿勢の基準計測系での3次元データは、単純な座標変換にてセンサ計測系に焼き直すことができるので、在宅治療時に3次元基準データとして特に支障なく用いることができる。
但し、座標変換に伴って生じる可能性がある誤差を考慮しなければならない場合には、図4のステップ#14及び#15で示されるように、やはり、センサ計測系での3次元データを計算し、これを3次元基準データとして格納部23に格納することが必要である。
尚、前記「レジストレーション」としては既知の種々の手法があるが、その一例について説明する。例えば、座標系Bから座標系Aへの座標変換を行う場合、以下の基本手順により座標変換行列を導出し、これを用いて座標変換することができる。
(1)まず、安定して計測できる同一平面上にない4つの特徴点を定めておく。
(2)次に、座標系Aでみた前記4つの特徴点の位置座標:
(x,y,z),(x,y,z),(x,y,z),(x,y,z
を取得する。
(3)更に、座標系Bでみた同じ4つの特徴点の位置座標:
(X,Y,Z),(X,Y,Z),(X,Y,Z),(X,Y,Z
を取得する。
(4)座標変換行列Tを数1により計算する。
Figure 0005622153
(5)この座標変換行列Tを用いることで、数2に示すように、座標系Bで取得した任意の特徴点の位置座標(X,Y,Z)を座標系Aでみた位置座標(x、y、z)に変換することができる。
Figure 0005622153
ここで、座標変換行列Tが数1で算出できる理由を説明する。座標系Aでみた4つの特徴点と座標系Bでみた4つの特徴点とはそれぞれが物理的に同一の点であるので、数3が成立することになる。
Figure 0005622153
同一平面上にない4つの特徴点を選んでいるので、数4で示される行列の逆行列が存在し、この逆行列を数3の両辺に右から掛けることにより、数1の計算式が得られるのである。
Figure 0005622153
このような手法を用いて行う、前述のセンサシステム(センサ計測系:座標系Aとする)と光学式トラッキングシステム(基準計測系:座標系Bとする)とのレジストレーションについて説明する。
(1)まず、磁場センサ取付装具(この場合、例えば眼鏡14)上に、安定して計測できる同一平面上にない4つの特徴点を定めておく。
(2)次に、座標系Aでみた前記4つの特徴点の位置座標:
(x,y,z),(x,y,z),(x,y,z),(x,y,z
を取得する。この場合、座標系Aは、磁場センサ取付装具(眼鏡14)に固定された座標系であるので、前記4つの特徴点の位置座標は磁場センサ固定具(眼鏡14)の設計値から得ることができる。
(3)更に、病院の3次元位置計測装置(光学式トラッキングシステム)を用いて、座標系Bでみた同じ4つの特徴点の位置座標:
(X,Y,Z),(X,Y,Z),(X,Y,Z),(X,Y,Z
を取得する。
(4)座標変換行列Tを前記数1により計算する。
(5)この座標変換行列Tを用いることで、前記数2に示すように、座標系B(光学式トラッキングシステム)で取得した任意の特徴点の(従って、最適刺激位置の)位置座標(X,Y,Z)を座標系Aでみた位置座標(x、y、z)に変換することができる。
また、前述の操作方法の説明において、図4のフローチャートで示した病院での初期診療のプロセスでは、格納部23に格納されるデータは、医師が特定した刺激用コイル11の最適位置および姿勢に対応するセンサ計測系での3次元基準データのみであるが、これ以外に、例えば、在宅治療時に患者Mが刺激用コイル11を置くことが想定される頭部位置にコイル11を置き、そのときのセンサ検出値とコイル11の位置および姿勢の3次元データ(基準計測系で取得したものをセンサ計測系に変換したデータ)も同時に格納部23に格納しておくことで、在宅治療時における信号解析プログラムの高速化および/または高精度化を図ることも可能である。
尚、この場合、在宅治療時に患者Mが刺激用コイル11を置くことが想定される頭部位置については、当該頭部をメッシュ状に区切って座標表示することで、位置の特定をし易くすればよい。
更に、前述の操作方法の説明において、図4のフローチャートで示した病院での初期診療のプロセスでは、医師が刺激用コイル11の最適の位置および姿勢を探索するステップ(図4:ステップ#12)は、公知の光学式トラッキングシステム(基準計測系)を用いて行うことを想定しているが、このような光学式トラッキングシステムを用いることなく、当該装置10の磁場解析ユニット20を用いて刺激用コイル11の最適の位置および姿勢を探索することも可能である。
周知のように、公知の光学式トラッキングシステムでは、一般に光学マーカが利用されるが、磁場解析ユニット20を適用する場合には、光学マーカの代わりに永久磁石を用いればよい。この永久磁石を利用し、通常のキャリブレーションと同様に、鼻や耳の位置に反射マーカに代えて磁石マーカを当てて行き、センサシステムで逆解析して磁石マーカの位置座標を求めることで、センサ座標と医用画像座標との関係のレジストレーションが可能となる。このレジストレーションも、前述の手法を適用して同様に行うことができる。
以上の実施形態では、磁場センサ13を取り付ける取付装具として眼鏡14を用いていたが、この代わりに、例えば、イヤホン,ヘッドホン及びヘッドバンドなど、他の身体装身具を用いることもできる。
ヘッドバンドについては、種々の材料を用いて、使用者の額やその近傍などの形状に沿って装着するものが数多く市販されており、また、イヤホンやヘッドホンについても、近年では、使用者の耳の形にぴったりフィットして装着できるものが市販されており、何れも磁場センサ13の取付装具として好適に使用可能である。
また、以上の実施形態では、磁場解析ユニット20で得られた3次元データの3次元基準データからの偏差を報知する報知手段としてのユーザ・インタフェース部28には、視覚情報により前記偏差を報知する例えば液晶タイプの表示パネルを備えた表示装置28が用いられていたが、この代わりに、或いはこれに加えて、スピーカ等による聴覚情報によって前記偏差を報知するようにすることも可能である。この場合には、前記偏差の大きさ(コイルホルダ12が行うべき変位量)に応じて、つまり、刺激用コイル11が最適位置に近付くに連れて、音量,音階および音色の少なくとも一つを変化させるように構成することで、刺激用コイル11の最適の位置および姿勢への誘導がより容易になり、利便性をより高めることができる。
更に、以上の実施形態では、刺激用コイル11として、限局した磁気刺激をもたらすのに好適な所謂8の字型渦巻きコイルを用いていたが、例えば、磁気刺激を加えるべきスポットが比較的大きい(広い)場合などには、コイル姿勢の特定を含めて操作時の取り扱い性が良好で磁場解析も容易に行える単純な円形コイルを、好適に用いることができる。
尚、刺激用コイル11は、本明細書中で開示したものに限定されるものではなく、磁気刺激の目的や要求される刺激の強さ、その他さまざまの要因に応じて、種々のタイプのものを用いることができる。
また、以上の実施形態では、予め初期診療時に求めておいた刺激用コイル11の最適の位置および姿勢に対応する3次元基準データと、在宅治療時に得られた刺激用コイル11の磁場逆解析による3次元データとを比較し、前者に対する後者の偏差に応じて、視覚情報や聴覚情報によりナビゲーションすることで、コイル11を最適の位置および姿勢に誘導するものであったが、このように磁場情報から3次元データを求めて対比する代わりに、磁場情報どうしを直接に比較してコイル11を最適の位置および姿勢に導くことも可能である。
例えば、前述のように、光学式トラッキングシステムを用いることなく、当該装置10の磁場解析ユニット20を用いて刺激用コイル11の最適の位置および姿勢を探索することができ、この初期診療時に磁場センサ13から求めた基準となるべき磁場データと、在宅治療時に磁場センサ13から得られた磁場データとを、それぞれ3次元データに変換することなく直接に比較し、後者(在宅治療時)の磁場データが前者(初期診療時)の磁場データに限りなく近付き実質的に一致するように誘導することで、コイル11の実際の3次元位置および姿勢は分からなくても、磁場情報をそのまま用いてコイル11を最適の位置および姿勢に誘導することが可能である。
更に、以上の実施形態では、磁場検出手段としての磁場センサ13は、操作手段としてのコイルホルダ12に取り付けられた動磁場発生手段としての刺激用コイル11が発生させる磁場を検出するものであったが、刺激用コイル11に加えて静磁場発生手段としての永久磁石をコイルホルダ12(操作手段)に設けておき、この永久磁石を位置決め専用に用いるように構成することができる。この構成では、磁場センサ13は、動磁場だけでなく静磁場をも検出することになる。
この場合には、刺激用コイル11による動磁場の発生を停止した状態で、永久磁石が発生させた静磁場を検出することにより、動磁場の干渉を回避して、永久磁石が発生させた静磁場による位置決め用の信号を正確に検出することができる。特に、経頭蓋磁気刺激療法では、治療中、動磁場の発生と停止を断続的に繰り返すので、動磁場停止のタイミングに同期させて磁場センサをONすることも考えられる。但し、感度の異なる複数の磁場センサを備えるなどして、治療中などにおいて、動磁場の発生を停止することなく静磁場(永久磁石)を検出して磁場解析を行うようにすることも可能である。
更には、刺激中(治療中)、動磁場は瞬間的なパルス(例えば毎秒10回)で発生させるので、パルスのタイミングに同期させて、磁場センサのON/OFFを切り替えることも考えられる。パルス発生中は磁場センサをOFFにすることで、動磁場の干渉は回避でき、この場合、感度の異なるセンサを備えなくてもよい。
また、静磁場を用いることなく動磁場のみを用いてコイルの位置決めと磁気刺激による治療の両方を行う場合でも、磁気刺激治療に先立って比較的弱い動磁場を発生させてコイルの位置決めを行い、その後に、比較的強い動磁場を発生させて磁気刺激治療を行いながらコイル位置の微調整を行うように構成することができる。この場合には、磁場センサ13は、比較的弱い動磁場と比較的強い動磁場の2通りの動磁場を検出する必要がある。
以上より、磁場センサが検出すべき磁場の種類としては、磁場強度が異なる次の3種類が考えられる。
(a)比較的弱い動磁場(磁気刺激治療に先立って発生させる)
(b)比較的強い動磁場(磁気刺激治療を主目的として発生させる)
(c)永久磁石による静磁場(位置決め専用に導入される)
同一の磁場センサでは、このような磁場強度が互いに異なる磁場を検出することは、実際上無理である。このような場合には、例えば以下のような、感度が異なる複数の磁場センサ群を備えていれば好都合である。
(1)例えば、前述のように、病院での初期治療時に、医用画像情報との位置合わせのために永久磁石マーカを検出するための磁場センサ群:この磁場センサ群では、(c)の静磁場を検出する。
(2)在宅での使用時において、磁気刺激治療に先立ってコイルを位置決めするための磁場センサ群:この磁場センサ群では、(a)の比較的弱い動磁場または(c)の静磁場を検出する。
(3)在宅での使用時において、磁気刺激治療中にコイル位置を微調整するための磁場センサ群:この磁場センサ群では、(b)の比較的強い動磁場または(b)と(c)の合成された磁場を検出する。
以上のような感度が異なる複数の磁場センサ群を備えることにより、コイルの位置検出の原理やその具体的なアルゴリズムなどを全く変更することなく、磁場強度が互いに異なる磁場を検出してコイルの位置決めを行うことができる。
次に、磁場解析ユニット20の信号解析部22によって行われる刺激用コイル11の3次元位置特定手法について説明する。
刺激用コイル11の3次元位置を特定するには「磁場逆解析」が必要であり、この磁場逆解析には磁場順解析が必要になる。周知のように、「磁場順解析」とは、磁場発生源の位置が既知であって任意の場所での磁場信号を解析するものであり(図6参照)、一方、「磁場逆解析」とは、或る複数の場所での磁場信号が既知であって磁場発生源の位置を解析するものである(図7参照)。
<磁場順解析手法>
まず、磁場順解析の手法について、単純な円形(円環状)コイルの場合を例にとって説明する。
図8に示すように、半径aの円形コイルが原点を中心としてz軸に垂直な面内にあり、コイルには電流Iが通電されているとする。このとき、円形コイルが発生する磁場ベクトルは、厳密解による場合と近似解による場合とで、それぞれ以下のようになる。ここに、μoは真空の透磁率であり、単位はMKSA単位系とする。
[厳密解の場合]
図8に示す任意の点(r,θ,φ)における磁場ベクトルをB=(B,Bθ,Bφ)とすると、厳密解による各成分は数5で表される。
ここに、Aφはベクトルポテンシャルであって数6で表され、K(k)及びE(k)はそれぞれ第1種および第2種完全楕円積分であり、kは数7で表される。
Figure 0005622153
Figure 0005622153
Figure 0005622153
[近似解の場合]
近似解を得るに際しては、図9に示すように、円形コイルを円周方向にN個に分割したモデルを想定し、分割した各要素は直線(線分)で近似した。この分割モデルにおいて、位置r’に在るn番目の要素が位置rに発生させる磁場は、数8で表されるビオ・サバールの法則で与えられる。ここに、数8中の「Δs」,「r’」及び「t(r’)」は、それぞれ以下の式で与えられるものである。
・Δs=2πa/N
・t(r’)=(−sinθn,cosθn,0)
・r’=(a・cosθn,a・sinθn,0)
但し、θn=2πn/N
Figure 0005622153
円形コイルが全体として発生させる磁場は、各要素が発生させる磁場ベクトルの和であり、次の数9で表される。
Figure 0005622153
以上に基づいて近似した磁場分布は、以下の数10及び数11で表される。
Figure 0005622153
Figure 0005622153
前述のように、本実施形態の磁気刺激に用いられるコイルは、単純な円形(円環状)ではなく、図10に模式的に示すように、2つの渦巻型コイルを同一平面上で数字の「8」の字型に並べて形成したコイルである。尚、2つの渦巻型コイルが所定の角度を挟んで山型をなすように折れ曲がった形状のものもある。
そこで、本実施形態では、コイルの形状の違いに対して応用が効く近似解の手法を用いて、磁場分布を順解析するようにした。磁場は重ね合わせの法則が成り立つので、左右それぞれの渦巻コイルから発生する磁場を重ね合わせて表現すると次の数12のようになる。数12において、第1項は左側の渦巻の寄与を表し、第2項は右側の渦巻の寄与を表している。また、数12において、Kはコイルの巻数を、aは外半径寸法を、aは内半径寸法を、hは2つのコイルの中心間距離を、それぞれ表している。
Figure 0005622153
<磁場逆解析手法>
次に、磁場逆解析の手法について説明する。本実施形態では、磁場信号からコイルの3次元位置を特定する磁場逆解析において、数12で表された磁場順解析に加えて、最小二乗法を利用するようにした。
[最小二乗法]
この場合、次のようなn変数のn個の非線形方程式を想定する。
・f(x,x,…,x)=0
・f(x,x,…,x)=0
……
・f(x,x,…,x)=0
ここで、n個の変数の組[x,x,…,x]をxで表すと、n個の関数の組[f(x),f(x),…,f(x)]はf(x)で表すことができ、上記のn個の非線形方程式は、f(x)=0と表記することができる。
この方程式f(x)=0は非線形方程式であるため、殆どの場合いわゆる厳密解は存在しない。従って、この方程式を解くためには何らかの近似を行うことが必要になる。その近似の一つとして、前記の方程式を解く代わりに、f(x)の大きさ、すなわちF(x)=‖f(x)‖を利用し、その値を最小にするようなx*値を見つけるという方法が考えられる。F(x*)が十分にゼロ(零)に近ければ、このx*を解としても良いと考えられる。この手法が、所謂、最小二乗法である。
本実施形態では、α番目のセンサが読み取る磁場をBαとし、(座標が既知の)或る位置にコイルが存在すると仮定したときに、順解析によって求められるセンサ位置での磁場をBとすると、方程式は次の数13で表すことができる。
Figure 0005622153
このfの値が最小になるようにBを更新、すなわち、仮定したコイルの位置を更新していく。この更新の方法については、以下に説明する。
前記fが最小となるときのBを与える仮定コイル位置が、実際のコイル位置と近似され、刺激用コイルの現座標(3次元データ)を求めることができる。この現在位置の3次元データに基づいて、初期診療時に特定された最適位置(3次元基準データ)からの偏差(ずれ)がゼロとなるように、コイル位置を探索し更新しながら誘導する。
[コイル位置更新法1]
コイル位置の更新方法(つまり探索方法)の一つとして、所謂ドッグレッグ型信頼領域法(Trust Region Dogleg Method)を利用することが考えられる。この方法は、ニュートン(Newton)法では初期値によって収束しないという問題があることに鑑み、この欠点を補うように開発された手法であり、大域的収束性が保証されており収束性も良いとされている。但し、ニュートン法に比してアルゴリズムが複雑になり解析時間も長くなるという難点もある。
信頼領減法は、図11に示されるように、ニュートン法と最急降下法に信頼領域というものを加えて構築された手法である。
をヘッセ行列∇f(x)若しくはその近似行列とし、信頼半径をΔとし、前記Bが正定値である次式の2次モデル関数q(s)(制約条件:|s|≦Δ)と、Δ>0が与えられるものとする。
(s)=f(x)+∇f(x+1/2・s
このとき、ニュートン法として得られる点をx=x−Bk−1∇f(x)と置き、点xから最急降下方向−∇f(x)に沿って移動したときの2次モデルq(s)の最小点をxcpと置く。このxcpをCauchy点と呼ぶ。もしxが信頼領域の内部にあるならば、x+s=xとし、そうでない場合には、x,xcp,xを結ぶ区分的線形な点で、且つ、xからの距離がΔである点をx+sとして選ぶ(図11参照)。すなわち、信頼半径が十分に大きいときはニュートン法が採用され、信頼半径が小さいときは最急降下方向も考慮した方法が採用される。
更に、モデル関数値の減少量
Δq=q(s)−q(0)=∇f(x+1/2・s
と、目的関数値の減少量
Δf=f(x+s)−f(x
とを比較して、これらの減少量の大小に基づいて近似解を適宜更新する(更新条件は任意である)。また、そのときの状況に応じて信頼領域の大きさを適宜変更する。
[コイル位置更新法2]
今一つのコイル位置の更新方法(つまり探索方法)として、ランダムウォーク(Random Walk:RW)探索法を利用することが考えられる。
このRW法は、例えば図12のフローチャートに示されるように、コイル仮定位置の近傍をランダムに選び、その位置にコイルが移動したと仮定したときの最小二乗法によるfの値を計算し、fの値が改善するならばコイル位置を更新するという方法である。これを繰り返すことで徐々に正しいコイルの位置に収束するという、比較的シンプルな方法である。
図12のフローチャートに示したRW法における各パラメータは、以下の事項を表している。
・nth:半径探索回数(n)の上限閾値
・rth:探索半径(r)の下限閾値
・α:半径更新パラメータ(但し、α<1)
図12のフローチャートにおいて、初期状態では半径探索回数n=0であり、この初期状態から探索が開始されると、まず、ステップ#51で、コイル仮定現在位置でのfの値が計算される。この時点でのfの値(つまり、fの初期値)をfとする(f=f)。次に、ステップ#52で、ステップ#51の「現在位置」から半径rだけ離れたランダムな位置でのfの値を計算する。そして、ステップ#53で、この計算値fが初期値fよりも小さい(f<f)か否かを判定する。このステップ#53での判定結果がYESの場合には、fの値が改善しているので、位置の更新を行う(ステップ#54)。つまり、探索成功である。
一方、ステップ#53での判定結果がNOの場合には、ステップ#55で、半径探索回数nがその上限閾値nthに達していない(n<nth)か否かが判定され、達していない(ステップ#55:YES)場合には、ステップ#58で、半径探索回数nのカウンタ値をインクリメントし(つまり、カウンタ値nを1だけ増進させ)、ステップ#52に戻ってそれ以降の各ステップを繰り返す。また、ステップ#55での判定結果がNOの場合には、半径探索回数nが上限閾値nthに達しているので、ステップ#56で、半径探索回数nのカウンタをリセットする(n=0)と共に、探索半径rをαrとおき(r=αr)、更に、ステップ#57で、探索半径rがその下限閾値rthに達している(r<rth)か否かを判定する。このステップ#57での判定結果がNOの場合には、ステップ#52に戻ってそれ以降の各ステップを繰り返す。一方、ステップ#57の判定結果がYESの場合には、探索半径rがその下限閾値rthに達しているので、探索失敗である。
<座標変換>
図13に示されるように、永久磁石の場合には、N極とS極とを結ぶ軸線を中心にして磁石が回転しても磁場は変化しないが、図14に示されるように、本実施形態で用いた8の字型コイルの場合には、U軸,V軸,W軸の何れの軸を中心に回転しても磁場センサが検知する磁場は変化する。つまり、永久磁石の場合にはN極とS極の2つの座標がわかれば逆解析が可能であるが、8の字型コイルの場合には、更に、コイルが置かれている平面内での座標が分からなければ逆解析はできない。また、8の字型コイルの場合には、コイル座標系(UVW座標系)においてのみ順解析が可能であるため、仮定コイル位置更新ごとに新しいコイル座標系にセンサ位置を座標変換しなければならない。ここが、コイル磁場逆解析の難しい点てあると言える。
次に、コイル磁場逆解析に求められる3次元座標系の座標変換について説明する。
図15に示すように、2つの3次元直交座標系Σが設定されているものとする。ここで、点Pを座標系Σで表現したものをp、座標系Σで表現したものをp、座標系Σの原点の位置ベクトルを座標系Σで表現したベクトルをとする。このとき、pとpの関係は、次式で表される。
p= p+
ここで,は座標系Σの座標系Σaに対する姿勢を表した3×3の行列で、回転行列と呼ばれるものである。その各列ベクトルは座標系Σの各軸の単位ベクトルを表していることから、次の式が成り立つ。
=( −1
従って、pとpの関係は、次の数14とも表される。
また、X軸,Y軸,Z軸の各軸回りの回転行列については、X軸回りにθ回転する場合には数15で、Y軸回りにφ回転する場合には数16で、Z軸回りにψ回転する場合には数17で、それぞれ表される。
Figure 0005622153
Figure 0005622153
Figure 0005622153
Figure 0005622153
以上のような逆解析手法を用いて種々のシミュレーションを行った。
次に、この逆解析シミュレーションについて説明する。
<シミュレーション1>
まず、シミュレーションの第1段階として、簡単化のために巻数が1回の所謂シングルコイルを想定し、コイルの姿勢を一定としたときに(つまり、コイル座標系が絶対座標系を平行移動しただけのときに)、コイルの正確な座標を逆解析できるか否かについて検証した。より具体的には、仮定コイル初期位置の違いにより収束性がどの程度変わるか(つまり、収束性の初期位置依存性)を検証し、且つ、磁場センサ数の違いによる収束性の違いについても検証した。コイルは位置・姿勢による自由度がそれぞれ3つずつの計6自由度である。よって、磁場センサの数は理論上2つあれば逆解析可能である。ここでは、センサ数が2,3,4の各場合についてシミュレーションを行った。
本シミュレーションでは、実際のコイルの中心位置は、x=0.90〜1.10[m],y=0.90〜1.10[m],z=1.10〜1.20[m]で表される直方体の中からランダムに決定した。センサ座標は、センサ数が2,3,4の各場合について、それぞれ数18,数19,数20のように設定した。
Figure 0005622153
Figure 0005622153
Figure 0005622153
また、仮定コイル初期位置の発生パターンは表1のように設定した。
Figure 0005622153
尚、表1におけるパターンS3の場合を例にとって、仮定コイル初期位置の発生範囲と、実際のコイルの中心位置の範囲と、センサ位置との関係を図16に示す。
仮定コイルの位置更新には信頼領域法のみを利用して、各パターンにおいて、それぞれ100回ずつ仮定コイル初期位置を変化させて収束性の検証を行った。尚、各試行において、信頼領域法による計算回数の上限閾値は30回に設定した。
[シミュレーション1の結果および考察]
100回の試行のうち最も真値に近づいた試行の時の誤差(つまり、最小誤差)を表2に示す。また、図17は、100回の試行のうち真値との誤差が10[cm]以内に収まった試行回数の割合をパターン別に表し、図18は、同じく真値との誤差が5[cm]以内に収まった試行回数の割合をパターン別に表している。
Figure 0005622153
前記表2,図17及び図18の各データから、仮定コイル初期位置を真値に近い場所からスタートさせたとき(パターンS2,S4,S6)の方が、真値から遠い場所からスタートさせたとき(パターンS1,S3,S5)よりも、明らかに収束性が良いことが分かった。すなわち、磁場逆解析を行う際の収束性には、初期位置依存性があると言える。
しかし、仮定コイル初期位置が同等でセンサ個数が異なる場合(パターンS1とS3とS5の場合、及びパターンS2とS4とS6の場合)、本シミュレーションに係るコイル磁場逆解析では、センサ数による収束性への影響は認められなかった。
また、前述のように、各試行において、信頼領域法による計算回数の上限閾値を30回に設定したが、この計算回数を更に増やしても、真値との誤差に大きな変化は認められなかった。これは、各試行では、それぞれの最終地点で最小二乗法により求められたfの値が極小値をとっているためと考えられる。つまり、関数fが真値から数センチの場所で極小値を複数特っているためではないかと考えられる。信頼領域法では、計算回数を増やせば解が発散することなく必ず極小値に収束するのであるが、関数fが真値の付近に極小値を複数持つ場合には、真値との誤差の大小の如何に拘わらず、何れかの極小値(最小値ではない)に収束してしまう、という不都合が生じることになる。
<シミュレーション2>
[極小値存在の検証]
本実施形態では、コイルが発生する磁場は、当該コイルから約4〜5[cm]以上離れると弱く、それより近傍になると急激に強くなる。そのため、図19に示すように、信頼領域法による仮定コイル位置の探索経路が、一旦、実際のコイルの位置よりも磁場センサに近付いてしまうと、順解析で求めた磁場と磁場センサで得られた磁場の値が急激にずれてしまい、図20に示すように、関数fが最小値(global minimum)ではない極小値(local minimum)をもってしまう。尚、信頼領域法は、その性質上、図19で示されるような経路を通って真値に近付いて行き易いことが知られている。
前記図20は、数21で表される3点を直線的に順に移動したときの各軸方向における1[mm]刻みのfの値をプロットしたものである。実際のコイルが2点目と3点目の間にあるため、これに対応する位置でfの値がゼロをとっている。センサ配置は、前述のシミュレーション1におけるセンサ数=4の場合と同じとした。
Figure 0005622153
前述のように(最小値ではない)極小値を取らないようにするための改善策として、磁場センサを十分に離れた位置に配設することが考えられるが、本実施形態では、磁場センサの取付位置が制約されており、十分に離れた位置に配設することは、実際には難しい。また、磁場センサを離し過ぎると、外乱の影響を受け易くなり好ましくない、という不都合が生じることも考えられる。
[ランダムウォーク探索法の導入]
経頭蓋磁気刺激療法では、コイルの位置が最適位置から例えば5[mm]程度以上ずれると、治療の効果が薄れてしまう場合がある。このような場合には、真値との誤差は少なくとも5[mm]以内を目標としなければならない。しかし、前述のように、信頼領域法のみでは、極小値に収束してしまって、要求を満たすことは一般に難しいものと考えられる。以上のシミュレーション結果も、このことを物語っている。
極小値ではなく最小値に収束させるアルゴリズムとしては、所謂、「焼き鈍し(Simulated Annealing)法」などが公知であるが、この方法の場合には、一般にパラメータ設定などに実用上の難しさがあることが知られている。
そこで、比較的実装が容易なランダムウォーク探索法(RW法)を導入することを考えた。すなわち、信頼領域法による更新が終わった位置(つまり、真値から数[cm]程度内の位置)からRW法を用いるというアルゴリズムである。
シミュレーション2では、このアルゴリズムを用いて、前記シミュレーション1における表1の各パターンで収束性の検証を行った。尚、RW法における各パラメータは、以下のように設定した。
・半径探索回数nの上限閾値:nth=10
・探索半径rの下限閾値:rth=0.1[mm]
・半径更新パラメータ:α=0.9
・探索半径rの初期値:r=10[mm]
[シミュレーション2の結果および考察]
図21は、100回の試行のうち真値との誤差が1[mm]以内に収まった試行回数の割合をパターン別に示している。この図21から良く分かるように、シミュレーション1の場合と同じく、仮定コイル初期位置を真値に近い場所からスタートさせたとき(パターンS2,S4,S6)の方が、真値から遠い場所からスタートさせたとき(パターンS1,S3,S5)よりも、明らかに収束性が良く、また、仮定コイル初期位置を真値に近い場所からスタートさせたパターンS2,S4,S6では、センサ数に拘わらず、収束率が70%を越えている。
従って、計算を2,3回行えば、信頼領域法とRW法とを組み合わせることで、コイルの姿勢を考慮しない場合のシングルコイルの位置推定は可能であると言える。
また、本治療では、通常、患者は自身の最適位置をある程度把握しており、刺激用コイルを置く初期位置を大きく間違えることはないと考えられる。従って、磁場逆解析は、基本的にはRW法のみで問題はなく、信頼領域法の適用は、万が一、患者がコイルを置く初期位置を大きく間違えた場合のみに限定しても良い。信頼領域法は2階の偏微分計算を含んでおり、計算工数上の負担が増すことになるので、かかる観点からは、全く使用しない方が好ましいとも言える。
<シミュレーション3>
このシミュレーション3では、刺激用コイルを前述のシングルコイルから本実施形態に係る8の字型渦巻コイルに変更し、且つ、コイルの姿勢をも考慮したシミュレーションを行った。
前述のように、患者が刺激用コイルを動かす場合、初期診療にて専門医に指示された最適位置から大きくずれることはない(つまり、ある程度以上の再現性を有する)ものと考えられるため、仮定コイル初期位置発生空間を最適位置の近傍に設定することが可能である。従って、本シミュレーション3においては、信頼領域法は使用せず、RW法のみを適用することとした。尚、絶対座標系としてXYZ軸を設定し、コイル座標系としてUVW軸を設定した。また、センサ配置は、前述のシミュレーション1におけるセンサ数=4の場合と同じとした。
[実行手順]
次に、シミュレーション3の実行手順について、図22のフローチャートを参照しながら説明する。
シミュレーションがスタートすると、まず、ステップ#71で実際のコイル位置を設定する。本シミュレーション3においては、患者が、初期診療で指示された最適位置より少しずれた位置に、また、最適姿勢より少しずれた姿勢で、コイルを置いたと仮定した。具体的には、最適位置から初期偏差s[cm]だけ平行移動した地点に実際のコイル位置を設定し、更に、U軸,V軸,W軸それぞれに対してβ[deg]の範囲内でランダムに回転させた姿勢を、実際のコイル姿勢と仮定した。
そして、ステップ#72で探索を開始する。この探索初期状態では探索回数i=0であり、また、仮定コイル初期位置の変更回数j=0である。この初期状態から探索が開始されると、まず、仮定コイル位置を最適位置に設定する(ステップ#73)と共に、コイル姿勢について、U軸,V軸,W軸の各軸回りに回転(座標変換)し、fの値が最小となる姿勢にする(ステップ#74)。次に、RW法を適用し(ステップ#75)、算出されたコイル仮定現在位置でのfの値がその上限閾値fthよりも小さい(f<fth)か否かを判定する(ステップ#76)。このステップ#76での判定結果がYESの場合には、探索成功である。
一方、ステップ#76での判定結果がNOの場合には、ステップ#77で、探索回数iがその上限閾値ithに達していない(i<ith)か否かが判定され、達していない(ステップ#77:YES)場合には、ステップ#80で、探索回数iのカウンタをインクリメントし(つまり、カウンタ値iを1だけ増進させ)、ステップ#74に戻ってそれ以降の各ステップを繰り返す。また、ステップ#77での判定結果がNOの場合には、探索回数iが上限閾値ithに達しているので、ステップ#78で、仮定コイル初期位置を変更する。
このステップ#78では、仮定コイル初期位置を最適位置から、例えばs=5.0γ[cm](γ:0<γ<1の範囲内にあるランダムな定数)だけずらせた位置に設定し、探索回数iのカウンタをリセットする(i=0)と共に、仮定コイル初期位置の変更回数jのカウンタをインクリメントする(つまり、カウンタ値jを1だけ増進させ)。そして、更に、ステップ#79で、仮定コイル初期位置の変更回数jがその上限閾値jthに達していない(j<jth)か否かを判定する。このステップ#79での判定結果がYESの場合には、ステップ#74に戻ってそれ以降の各ステップを繰り返す。一方、ステップ#79の判定結果がNOの場合には、仮定コイル初期位置の変更回数jが上限閾値jthに達しているので、探索失敗であり、探索を断念する。
[最適位置の評価(fthの決定)]
上述のシミュレーションでは、実際のコイル位置を把握した状態で行っているため、収束したか否かは、探索終了時のコイルの位置・姿勢と実際のコイルの位置・姿勢を対比することによって判断できた。しかし、実際に治療する場合には、実際のコイルの位置(患者がコイルを当てた位置)は分からないため、最小二乗法によるf値のみで収束したか否かを判断する必要がある。そこで、fの値がどの程度小さくなれば要求仕様を満たすのか、すなわち、図22で説明したアルゴリズムにおける閾値fthをどれくらいに設定すれば良いかを検証しておく必要がある。
ここで、前記要求仕様とは、好ましくは臨床研究に基づいて算出されたものであり、本実施形態では、コイルの中心位置,姿勢の誤差が、例えば以下の範囲内にあるものと設定した。
・コイル中心位置の誤差:5[mm]以内
・コイルの姿勢の誤差:コイル各軸に対して5[deg]以内
図23Aは、最小二乗法によるfの値と最適位置からの誤差との相関関係を示す相関図であり、図23Bは、図23Aの一部を拡大して示したものである。また、図24A,24Bは前記fの値とロール角誤差との相関関係を示す相関図、図25A,25Bは前記fの値とピッチ角誤差との相関関係を示す相関図、図26A,26Bは前記fの値とヨー角誤差との相関関係を示す相関図である。ここに、前記ロール角とは、図14及び図15に示したU軸回りの回転角を指称し、ピッチ角,ヨー角とは、それぞれV軸回り,W軸回りの回転角を指称するものとする。
図23A,23B〜図26A,26Bの各図に示されるように、何れの誤差についても、最小二乗法によるfの値が大きくなると誤差が増加しており、fの値と各誤差との間に正の相関性があることが分かった。
そして、図23A,23Bより、最小二乗法によるfの値の最適位置からの誤差が前記要求仕様を満たす条件は、概ねf<5.0×10−8であると言える。また、図24A,24B〜図26A,26Bより、前記fの値の最適姿勢からの誤差が前記要求仕様を満たす条件は、概ねf<1.5×10−7であると言える。従って、fth=5.0×10−8と設定すれば、コイル位置をほぼ正確に特定可能であることが分かる。
[特定されたコイル位置姿勢の信頼度]
前記fthの値を小さく設定すればするほど、特定されたコイルの位置および姿勢の信頼度は高くなるのであるが、反面、逆解析に要する平均的な時間は一般に長<なる。状況等に応じて必要な信頼度を確保しつつ、解析処理の所要時間の短縮を図ることも、実用面から重要である。
経頭蓋磁気刺激治療は患者の頭部に刺激用コイルを押し当てながら行うものであるため、コイル座標系のW軸方向(コイル平面に垂直な方向:図14参照)の誤差については許容度が比較的大きく、位置の誤差に関しても閾値をもう少し上げることができると考えられる。また、fth≧5.0×10−8であっても、かなりの確率で要求仕様を満たしていることが、図23A,23B〜図26A,26Bから分かる。従って、状況等の如何に拘わらず、fth≧5.0×10−8の範囲を全て排除するのは得策ではない。
例えば、コイルの現在位置が最適位置から大きく離間している場合などでは、時間をかけてコイル位置の信頼度を高めるよりも、信頼度は若干劣るが短時間で概略的なコイルの位置および姿勢を把握し、少しでも早く最適位置に近付くことを優先した方が一般に良いと考えられる。
そこで、例えば下記表3に示されるように、最小二乗法によるfの値と信頼度との関係を定義付け、逆解析で求められたコイルの位置および姿勢の情報と共に、その情報の信頼度も併せて患者に伝えるようにしても良い。経頭蓋磁気刺激治療は、最適位置から少しずれた場所を刺激したとしても、一般に、治療の効果が薄れるだけで安全性に問題はない。例えば、信頼度が低い情報に基づく治療の場合に、治療効果が小さいと患者が感じたときにはその信頼度が低い情報は利用しないというように、信頼度に応じて患者が情報を取捨選択することができるようにすることも可能である。
Figure 0005622153
[fの初期値(f)の決定]
磁場逆解析について以上の検討を進めて行く中で、探索を開始する際のfの値(初期値(f))がある程度以上大きい場合には、略確実に要求仕様を満たさない(つまり、探索を失敗する)という傾向が認められた。このような場合には、fの初期値(f)が或る閾値よりも大きければ、その位置からの探索は最初から行わないように設定する(所謂フィルタをかける)ことで、解析時間の短縮が可能になる。
図27に、探索を開始する際のfの初期値(f)とコイル位置特定の可否との相関関係を示す。この図27のグラフは、RW法による探索後に要求仕様を満たさなかったときのfのデータと、要求仕様を満たしたときのfのデータを、それぞれ50個ずつプロットしたものである。図27のグラフから、「f>2.5×10−4のときには探索を行わない」というフィルタをかけることにより、探索が「成功」する試行が省かれることは殆ど無いが、探索が「失敗」する試行の約半数が省かれることとなり、探索効率の向上が達成できることが分かる。
[探索可能範囲と収束時間]
前述のfth及びfを考慮した上で、逆解析がどの程度の範囲まで可能であるのか、すなわち、患者が刺激用コイルを最適位置からずれて置いてしまった場合、どの程度までの「ずれ」であればコイルの位置を特定することができるのか、について検証する。
この検証では、初期条件を表4のように設定した。表4に示される各パターンにおいて100回ずつ最適位置・姿勢を変えて、探索試行を行った。表4中のパターンT12の場合を例にとって説明すれば、このパターンT12では、患者が最適位置から1[cm]ずれた位置にコイルを置き、且つ、コイルの姿勢を各軸回りに±20[deg]の範囲内でランダムに100回ずらせて置き、探索試行を行った。他のパターンについても、誤差sと誤差βの範囲の組み合わせが異なるだけで、手法は同様である。尚、RW法の実行回数の上限閾値(ith)を1000回、探索初期位置の変更回数の上限閾値(jth)を10回に設定して、検証を行った。
Figure 0005622153
図28〜図31は、各パターンにおいて100回ずつ最適位置・姿勢を変えて、探索試行を行ったときの収束の割合を示すグラフである。
より詳しく説明すれば、図28は最適姿勢との誤差βがゼロ(β=±0[deg])である3つのパターン(T10,T30,T50)の組み合わせについて、図29は最適姿勢との誤差βが±10[deg]の範囲内にてランダムであって最適位置との誤差sがそれぞれ異なる3つのパターン(T11,T31,T51)の組み合わせについて、図30は最適姿勢との誤差βが±20[deg]の範囲内にてランダムであって最適位置との誤差sがそれぞれ異なる3つのパターン(T12,T32,T52)の組み合わせについて、また、図31は最適姿勢との誤差βが±30[deg]の範囲内にてランダムであって最適位置との誤差sがそれぞれ異なる3つのパターン(T13,T33,T53)の組み合わせについて、それぞれ収束の割合を示している。尚、各図において、信頼度Eの場合には、探索初期位置を10回変えて探索を行っても信頼度B以上にならなかった割合を示している。
図28より、最適姿勢との誤差βがゼロ(β=±0[deg])であれば、極めて高い信頼度でコイルの位置を特定できることが分かる。また、図28〜図31より、最適位置から離間するほど、コイルの位置・姿勢を特定できる割合が低くなることが分かる。初期姿勢に関しては、最適姿勢に近いパターンの方が僅かに収束率が高いものの、さほど優位性は見られない。つまり、コイル姿勢の誤差(β)よりもコイル位置の誤差(s)の方が、コイル逆解析により大きく影響を及ぼすことが分かる。
パターンT53で信頼度B以上(S+A+B)になる割合が約50%であることから(図31参照)、最適位置との誤差sが5[cm]を越えると、更に割合が低くなり50%を下回ることが予想される。収束率が悪くなれば、それだけ逆解析に時間が掛かり、患者にストレスを与えることにもなる。従って、患者がコイルの誘導をスムースに行えるようにする観点から、最適位置からの誤差sは5[cm]以内とすることが好ましい。
また、患者は余り急激にコイルを移動させることはないと考えられる。従って、一旦コイルの位置を特定すれば、次はそのコイル位置の近傍に仮定コイルの初期位置を与えることが想定できる。つまり、常に実際のコイル位置の近傍から逆解析を行うことができ、高い信頼度でコイルの位置を把握できるものと考えられる。
表5は、前記表4の各パターンにおいて、fth<3.0×10−7を満たしコイルの位置を特定できたときの収束時間を示している。
Figure 0005622153
表5に示されるように、最短で0.51[sec]、最長で8.90[sec]の探索時間を要している。このシミュレーションは1回の探索試行で収束しなかったときは、仮定コイルの探索初期位置を10回まで変更し再度探索しているので、初期位置の変更が多く行われると、それだけ探索に時間を要することになる。また、平均探索時間を比べると、パターンT10,T30,T50の場合は1[sec]以下で収束し、その他のパターンの場合には全て1.5[sec]前後で収束している。このことから、最適位置から仮定コイルの初期位置が離れるに従って収束率は低下するものの、どのパターンにおいても収束するときは、ほぼ同程度の時間で収束することが分かる。
以上、説明したように、本実施形態によれば、以上の手法を用いることで、複数の磁場センサ13の検出信号に基づいて、刺激用コイル11が発生させた磁場を逆解析し、当該刺激用コイル11の現在位置および姿勢を特定することができる。特に、ランダムウォーク探索法を適用することにより、比較的容易に、最小二乗法における関数fを極小値ではなく最小値に収束させることができ、刺激用コイル11の現在位置および姿勢をより確実に特定することができる。
このような磁場逆解析を可能とすることで、磁気刺激装置10の小型化、低コスト化および操作の容易化に貢献し、ひいては、患者Mが自宅や近所のかかりつけの医院などで日常的に継続反復して経頭蓋磁気刺激療法を行えるようにすることができる。
以上の説明は何れも、磁場検出手段(磁場センサ13)が検出した磁場強度及び方向に関する各情報を用いた逆解析手法を利用して、磁気刺激を加えるべき最適の位置および姿勢に対応した3次元位置および姿勢に刺激用コイルを誘導するようにしたものであったが、この代わりに、或いは、これと併用して、磁場発生手段の少なくとも位置の(より好ましくは、位置および姿勢の)情報(データ)と、当該位置で発生した磁場を磁場検出手段が検出した磁場強度及び方向に関する各情報(データ)と、を対にして組み合わせたデータの組み合わせを利用することにより(本明細書においては、かかるデータの組み合わせを「データセット」と称する)、最適の刺激位置(および姿勢)に対応した3次元位置(および姿勢)に刺激用コイルを誘導することができる。
以下、このデータセットを利用した手法に係る実施形態(以下、適宜、第2の実施形態と言う)について説明する。尚、以下の説明において、前述の逆解析手法を利用した実施形態(以下、適宜、第1の実施形態と言う)における場合と、基本的に、同じ又は類似した構成を有し、同じ又は類似した作用をなすものについては、同一の符号を付し、それ以上の説明は省略する。
図32は、本実施形態での実験例で用いられる刺激用コイル及びコイルホルダの一例を示す斜視図である。この図に示すように、第2の実施形態での実験例で用いられる刺激用コイル11は、第1の実施形態で用いられたものと同様で、所謂、「8の字型」渦巻きコイルであり、より好ましくは、合成樹脂製のコイルホルダ12の成形時に、該コイルホルダ12と共に一体的に樹脂成形されている。尚、第1の実施形態における場合と同様に、かかる刺激用コイルとして、他の種々のタイプの公知の磁気コイルを使用することができることは、言うまでもない。
本実施形態では、前記コイルホルダ12の所定部位に、例えば、前記刺激用コイル11の長手方向における両端部よりも更に外側に対応する表面部位に、位置検出用の静磁場発生手段としての永久磁石41,41がそれぞれ固定されている。
また、コイルホルダ12の上面には、刺激用コイル11の長手方向における中央部位に当該長手方向と直交する方向に、例えば樹脂製で透明な板状のベース板42が立設されるようにして固定されている。ベース板42は、例えばネジ部材等を用い、コイルホルダ12に対して取り外し可能に固定されることが好ましい。
そして、このベース板42には、公知の光学式トラッキングシステム(例えば、NDI社製 POLARIS)によってコイルホルダ12の位置(つまり、刺激用コイル11の位置)を検出する際に、検出対象マーカとして用いられる所謂ポラリスマーカ43が固定されている。このマーカ43は、好ましくは複数設けられる。この場合、より好ましくは、3個の球体状のマーカ43が、ベース板42上で所定形状の三角形の各頂点に位置するように配置されている。
図32の例では、コイルホルダ12の位置(つまり、刺激用コイル11の位置)を検出するために静磁場発生手段(永久磁石41,41)が用いられており、この場合には、刺激用コイル11による動磁場の発生を停止した状態で、永久磁石が発生させた静磁場を検出することにより、動磁場の干渉を回避して、永久磁石が発生させた静磁場による位置決め用の信号を正確に検出することができる。但し、感度の異なる複数の磁場センサを備えるなどして、治療中などにおいて、動磁場の発生を停止することなく静磁場(永久磁石)を検出し、コイルホルダ12の位置検出を行うようにすることも可能である。
また、この代わりに、第1の実施形態の説明において述べたように、動磁場発生手段(例えば刺激用コイル11)を用いて位置検出を行うこともできる。
図33は、患者の特定部位に対する所定の相対位置に磁場センサを固定するための磁場センサ固定具の一例を示す斜視図である。磁場センサ固定具50は、平面視でコ字形のフレーム体で構成され、このフレーム体50は、その内縁部が患者の頭部にしっかりと係止されるように、寸法形状が設定されている。尚、本実施形態の実験例では、患者の頭部の代わりにマネキンの頭部Hmを用いた。
このフレーム体50の上面に、好ましくは複数の磁場センサ51が固定されている。本実験例では、フレーム体50の左右側辺部50a,50bに前後一対の磁場センサ51をそれぞれ取り付け、計4個の磁場センサ51を用いるようにした。これにより、頭部Hmを囲む前後左右の4箇所で、磁場を検出(つまり、磁場強度および磁場の方向を検出)することができる。前記磁場センサ51としては、好ましくは、所謂3軸センサを用いた。この代わりに、第1の実施形態における場合と同様に、他の種々のタイプの公知の磁場センサを使用することができることは、言うまでもない。
尚、本実験例では、より好ましくは、フレーム体50の前辺部50cの所定箇所に、例えば樹脂製で透明な板状のベース板52が垂下するようにして固着されており、このベース板52に、光学式トラッキングシステムによる検出対象として、3個の球体状のポラリスマーカ53が取り付けられている。このマーカ53は、実験時における誤差評価のためにのみ用いるものである。
前記磁場センサ固定具50は、複数(本実施形態では、例えば4個)の磁場センサ13の患者頭部に対する位置を固定する固定手段としての役割を果たすものであり、第1の実施形態における場合と同様に、患者の頭部に対する磁場センサ13の固定位置には再現性が求められ、患者に対して磁場センサ13を常に同じ位置に固定する必要があるが、このような固定位置の繰り返し再現性を確保した上で、患者に不快感や違和感を及ぼすことなく、比較的自然に患者頭部に対して磁場センサ13を固定する手段としては、日常的に身に付けて用いられる機会が多く馴染みのある装具(身体装着具)が望ましい。
従って、実用に際しては、第1の実施形態における場合と同様に、眼鏡、特に保護用(安全用)眼鏡やスポーツ用眼鏡、或いは、イヤホン,ヘッドホン及びヘッドバンドなどの身体装身具を用いることが好ましい。
図33の例では、4個の磁場センサ13が磁場センサ固定具50に取り付けて使用されていたが、他の個数の磁場センサを用いるようにしても良い。周知のように、センサ個数が多い程、測定精度を高める上で一般に好ましいのであるが、それだけ、システムが複雑化しコスト高にもなる。このため、できるだけセンサ個数を減らすことが望まれるが、その場合でも、一定以上の測定精度を確保するためには、少なくとも2個以上のセンサを用いることが好ましく、また、これらセンサを、患者の頭部に関し等方的に配置して用いることがより好ましい。
以上のコイルホルダ12及び磁場センサ固定具50を用いてより具体的に説明すれば、本実施形態では、前述のように、刺激用コイル11を保持するコイルホルダ12に例えば永久磁石41を取り付けておき、病院にて、前記磁場センサ固定具50を患者に装着してもらい、コイルホルダ12の永久磁石41が発する磁場を磁場センサ13で検出して得られた磁場データ(磁場の強度および方向に関するデータ)と、例えば光学式トラッキングシステムによって得られるコイルホルダ12の(つまり刺激用コイル11の)3次元位置および姿勢のデータと、を同時に計測し、両データの組み合わせを1つの「データセット」として記録する。そして、従来の手法で医師が特定した最適刺激位置およびその周辺の複数(多数)の位置について、前記データセットを収集し記録しておくようにしている。
このようにして収集したデータセットの例を表6に示す。
この例では、磁気センサ数は4個であり、それぞれ添字a,b,c,dを用いて表示している。コイルの位置・姿勢は、コイルの中心位置をP,姿勢をRで表している。また、1〜Nの添字を用いて表示したデータは、それぞれデータセット番号1〜Nに対応したものを表している。磁気センサは、それぞれx,y,zの3方向の値を計測するため、磁場データB〜Bは3次元ベクトルであり、それぞれの方向の値をx,y,zの添字を付して表示する。添字aを用いて表示される磁気センサについてデータセット番号1の場合を例にとって示せば、磁場データBa1は次式で表される。
・Ba1=(Ba1x,Ba1y,Ba1z
同様に、位置データP及び姿勢データRも3次元ベクトルであり、データセット番号1の場合を例にとって示せば、位置データPは次式で表される。
・P=(P1x,P1y,P1z
また、姿勢データR1は、ロール角をα,ピッチ角をβ,ヨー角をγで表示すれば、データセット番号1の場合には、次式で表される。
・R=(α,β,γ
Figure 0005622153
図34は、第2の実施形態で用いられるデータセット解析ユニットの構成を概略的に示すブロック構成図である。
前記データセット解析ユニット120は、例えば、CPU(中央演算処理装置)を備えた所謂パーソナルコンピュータを主要部として構成され、図34のブロック構成図に示されるように、信号解析部122と記録部123と比較部124とユーザ情報出力部125とを備えている。
前記信号解析部122は、好ましくは無線信号として入力される前記複数の磁場センサ13(センサ1,センサ2,…,センサN)から入力される検出信号に基づいて(図34:矢印Y1参照)、コイルホルダ12の永久磁石41が発する磁場の磁場データ(磁場の強度および方向に関するデータ)を取得し、記録部123に入力する(図34:矢印Y2参照)。これと同時に、例えば医師は、光学式トラッキングシステムによって得られるコイルホルダ12の(つまり刺激用コイル11の)3次元位置および姿勢のデータを取得し、記録部123に入力する(図34:矢印Y8参照)。
記録部123は、以上のように同時計測で得られた前記磁場データと3次元位置および姿勢のデータとの組み合わせを1つの「データセット」として記録し、そして、従来の手法で医師が特定した最適の刺激位置および姿勢ならびにその周辺の複数(多数)の位置および姿勢について、前記データセットを収集し記録しておくもので、読み出し可能なメモリ装置で構成されている。
前記比較部124は、治療中などにおいて、信号解析部122で得られた磁場データを記録部123に記録された前記データセットと比較するもので(図34:矢印Y3,Y4参照)、この場合、記録されているデータセットの中から、信号解析部122で得られた磁場データに(完全に一致しなくても)最も近い磁場を持ったデータセットが抽出される。そのデータセットの3次元位置および姿勢のデータにより、前記最適の刺激位置および姿勢に対応する3次元位置および姿勢のデータ(3次元基準データ)からの偏差(ずれ)を検知することができるのである。
そして、この比較部124での比較結果によって抽出されたデータセットの3次元位置および姿勢のデータが、ユーザ情報出力部125を介してユーザ・インタフェース部128(本実施形態では表示装置)に信号出力されるようになっている(図34:矢印Y5,Y6参照)。このとき、最適の刺激位置および姿勢の3次元データ(3次元基準データ)は、予めユーザ・インタフェース部128(表示装置)に信号入力されていることが好ましい。尚、前記3次元基準データに対応する磁場データが基準磁場データである。
ユーザ・インタフェース部128は、このユーザ情報出力部125からの出力信号に基づいて、操作手段(コイルホルダ12)を用いて行うべき変位の操作を教示するための教示情報(前述の表示装置の場合には、例えば映像信号等の表示のための信号)を生成してユーザに報知するようになっている。
コイルホルダ12の操作者(ユーザ)は、表示装置128を視認しながら(図34:矢印Y7参照)、表示装置128の画面上に表示された偏差が極力ゼロ(零)となるように、コイルホルダ12を患者の頭皮に沿って変位操作する。そして、表示装置128の画面上に表示された偏差がゼロ(零)若しくは限りなくゼロに近くなった刺激用コイル11の位置および姿勢で、当該刺激用コイル11の変位操作を停止し、その状態を保持する。このとき、第1の実施形態における場合と同様に、ホルダ固定具を用いてコイルホルダ12を固定するようにすれば便利である。
本実施形態では、表示装置128での画像表示のために、グラフィック用のプログラム・インタフェースOpen GLがインストールされており、図35に示すように、最適刺激位置に対応するコイルホルダ画像55(図35:一点鎖線)と現在位置のコイルホルダ画像56(図35:実線)とが同じ画面内に表示されるようになっている。尚、より好ましくは、センサ固定具画像57も同じ画面内に表示される。
従って、コイルホルダ12の操作者(ユーザ)は、表示装置128の画面を視認しながら、画面上に表示された実線のコイルホルダ画像56(現在位置)が、一点鎖線のコイルホルダ画像55(最適刺激位置)にできるだけ重なるように、コイルホルダ12を患者の頭皮に沿って変位操作すればよい。
以上のように構成されたデータセット解析ユニット120を備えた磁気刺激装置の操作方法を、図36及び図37のフローチャートを参照しながら説明する。
まず、病院において(図36参照)、ステップ#101で、磁場センサ固定具50を患者に装着してもらう。このとき、磁場センサ固定具50の装着位置に関するキャリブレーションを行う(ステップ#102)。そして、医師が、従来の光学式トラッキングシステムを用いた手法で最適刺激位置を特定する(ステップ#103)。その後、ステップ#104で、最適刺激位置およびその周辺の複数(多数)の位置についてデータセットを収集し、データセット解析ユニット120の記録部123に記録する。
次に、在宅治療時には、病院の場合と同様に、まず、磁場センサ固定具50を患者に装着してもらう(ステップ#121)。このとき、患者は、病院での場合と同じようにして磁場センサ固定具50を装着するのであるが、毎回、位置ズレ等なく同じように装着することは実際には難しいので、磁場センサ固定具50の装着位置に関するキャリブレーションを行う必要がある(ステップ#122)。そして、データセット解析ユニット120のユーザ・インタフェース部128のナビゲーション機能を利用して、表示画面を見ながらコイルホルダ12を移動操作し、最適の刺激位置および姿勢にできるだけ近い位置および姿勢に刺激用コイル11を誘導して治療を行う(ステップ#123)。尚、このとき、コイルホルダ12にネジ部材等により固定していたベース板42(及びポラリスマーカ43)は取り外した上で、コイルホルダ12の移動操作を行えばよい。また、磁場センサ固定具50に取り付けられていたベース板52及びポラリスマーカ53も不要である。
前記ステップ#102及びステップ#122で行う磁場センサ固定具50の装着位置に関するキャリブレーションは、例えば、次のようにして行うことができる。尚、この場合、好ましくは、磁場センサ固定具50が望ましい範囲内の位置に装着されるように、この望ましい範囲内での或る装着位置を基準装着位置と定め、患者がその基準装着位置に磁場センサ固定具50を装着した状態で、鼻や耳の位置に例えば磁石マーカを当てて行き、センサシステムで前記磁石マーカの磁場データを取得し、この磁場データをキャリブレーション用の基準磁場データとして記録しておく。
そして、病院と在宅治療時のそれぞれの場合について、前記基準磁場データを取得した場合と同様に、鼻や耳の位置に磁石マーカを当てて行き、センサシステムで磁石マーカの磁場データを取得し、この取得した磁場データが前記基準磁場データとできるだけ合致するように、それぞれの場合での磁場センサ固定具50の装着位置を調整すればよい。
尚、このようにキャリブレーション用の基準磁場データを別途に設定する代わりに、病院で取得した前記磁石マーカの磁場データを記録しておき、在宅治療の際に取得した磁石マーカの磁場データが病院で取得した前記磁場データとできるだけ合致するように、在宅治療時の磁場センサ固定具50の装着位置を調整することで、キャリブレーションを行うこともできる。
以上のようなデータセットを利用した手法について、最適の刺激位置および姿勢に対応した最終誘導位置および姿勢までの誘導に要する時間および操作による移動軌跡,最終誘導位置および姿勢の最適刺激位置および姿勢に対する誤差、並びにデータセット数の影響などを検証するための実験を行った。
最終誘導位置および姿勢の最適刺激位置および姿勢に対する誤差はPOLARISを用いて測定した。誤差としては、刺激用コイルの中心位置誤差,ロール角誤差,ピッチ角誤差およびヨー角誤差を測定した。
本実験では、患者の頭部の代わりにマネキンの頭部Hmを使用し、コイルホルダ12の操作者を被験者とした。被験者は、複数名(例えば3名)で、何れも非医療従事者とし、実験開始に先立って、Open GLに慣れる等のために所定時間(例えば数分間程度)の誘導操作トレーニングを行った。尚、本実験での最適の刺激位置および姿勢の指定およびデータセットの収集も非医療従事者(発明者の一人)が行った。尚、本実験で用いたシステムでは、データのサンプリングレートは、例えば4Hzであった。
また、データセット数が500個の場合と1000個の場合の2つのパターンで実験を行った。これらデータセットは、最適刺激位置付近を重点的に収集したものである。被験者は、各パターン3回ずつ計6回の誘導操作を行うようにした。
以上の実験の結果、次の事項が確認された。
イ)被験者の如何に拘わらず、データセット数が1000個の場合には500個の場合に比して、何れの誤差も大きく減少した。
:本手法では、永久磁石の発する磁場がデータセットの磁場と完全に一致しなくても、最も近い磁場をもったデータセットを抽出して、その位置データが表示される。
つまり、システム上で誘導操作が終了したと認識しても、最適刺激位置として指定したデータセットとは誤差が生じ得る。そのため、データセット数が少ないと、刺激用コイルの実際の位置と、Open GL上に表示されている刺激用コイルの位置との誤差が平均的に大きくなってしまうと考えられる。
ロ)また、データセット数が1000個の場合には、殆どの場合、以下の要求仕様誤差内に収まっていた。データセット数を更に増やすことで、全ての場合について要求仕様誤差を満たすようにできることが想定される。
尚、前記要求仕様とは、好ましくは臨床研究に基づいて算出されたものであり、本実施形態では、第1の実施形態における場合と同じく、コイルの中心位置,姿勢の誤差が、例えば以下の範囲内にあるものと設定した。
・コイル中心位置の誤差:5[mm]以内
・コイルの姿勢の誤差:コイル各軸に対して5[deg]以内
ハ)データセット数が1000個の場合には500個の場合に比して、誘導に要する時間が概して長くなる。
:本実験では、最適刺激位置および姿勢に指定したデータセットと同じデータセットがOpen GL上に表示された時を誘導操作の終了条件としている。そのため、たとえ要求仕様誤差の範囲内に収まっていたとしても、データセットが一致しないと誘導操作終了とはならない。データセット数が多いと、その分だけ、最適刺激位置および姿勢のデータセットではないデータセットと認識される確率も高くなるので、誘導に時間が掛かってしまうことになる。
しかし、本実験の場合、最長の例でも55秒しか掛かっておらず、十分に実用に耐える手法であると言える。また、誘導に要する時間は、被験者(或いは患者)の慣れによって短縮が期待できるものである。更に、誘導操作の終了条件として、例えば前述の要求仕様誤差の範囲内に収まることを採用すれば、更に短縮が期待できる。
以上、説明したように、刺激用コイル11による磁気刺激に先立って若しくは磁気刺激中に、磁場センサが検出した磁場強度および方向に関するデータと、記録部123の記録情報(データセット)との対比参照に基づいて、刺激用コイル11の位置を算出して、ユーザ・インタフェース部(表示画面)128によって表示するようにしたことにより、複雑なアルゴリズムを用いる必要無しに、磁気刺激装置の小型化、低コスト化および操作の容易化に貢献し、ひいては、患者Mが自宅や近所のかかりつけの医院などで日常的に継続反復して経頭蓋磁気刺激療法を行えるようにすることができる。
また、前述のように、データセットを利用する手法の有効性が検証されたが、この手法を採用する場合、磁場の逆解析を利用する手法に比べて、データセットを収集するという手間が発生することになる。例えば、前記実験の場合には、データのサンプリングレートは例えば4Hzであるので、1000個のデータセットを収集するのに約5分間程度かかることになる。
データセットを利用する手法を実際に医療現場に適用する場合、医師は、患者頭部の最適刺激位置を特定した上で、その付近の数多くのポイントについてデータセットを収集する必要があり、このデータセット収集作業は医師にとって負担となる。そこで、このデータセット収集に要する時間の短縮など、データセット収集作業の負担を軽減する手法を併せて導入することが望ましい。
データセット収集に要する時間をより短くするためには、より少ないデータセット数での誘導を可能にすることができれば好都合である。これを可能にする一つの手法として、補間法を適用してデータセット同士を補間する方法が挙げられる。補間法としては、例えば、多重回帰分析を応用した方法や重み付き平均を利用した方法など、種々の公知の手法が適用できる。
このようなデータセットの補間手法の一例として多重回帰分析を応用した手法について説明する。
例えば、n個のデータセットのうち、[センサ数×3(軸)−2]個(センサが4個の場合は10個)のデータセット数を用いて補間を行うようにしてもよい。この場合には、センサが多い方が補間の信頼性が高まることになる。
磁場センサがリアルタイムに取得した磁場データ(つまり患者がコイルを置いた位置での磁場データ)をAとする。AとN個のデータセットの磁場データB(i=1,2,…,N)とを比較し、数22で表されるf値をそれぞれのデータセットについて求める(f〜f)。
Figure 0005622153
ただし、Aは4個の磁場センサa,b,c,dについてそれぞれx,y,zの3方向の値を順番に縦に並べた12行1列の列ベクトルであり、Bは表6のデータセット番号iに対応した4個の3次元ベクトルBai,Bbi,Bci,Bdiを縦に並べた12行1列の列ベクトルである。
次に、データセットの中からf値の小さいものを10組抽出する。この10組の磁場データを横に並べた12行10列の組み合わせ行列をDとする。10行1列の回帰係数ベクトルをθ、12行1列の誤差ベクトルをεとすると、前記磁場データAは数23で表される。
Figure 0005622153
この数23から最小二乗推定量Θを求める。このΘを用いて、磁場センサの検出値がAのときのコイルの位置P及び姿勢Rを、以下の数24及び数25により補間する。
Figure 0005622153
Figure 0005622153
ただし、数24におけるP及び数25におけるRは、前記データセットから抽出された10組の磁場データに対応するコイルの位置及び姿勢データである。
前述の実験と同様の手法および条件にて、実際のデータセット数が500個で上記の補間法を適用した場合と、実際のデータセット数が1000個の場合とについて、最適刺激位置および姿勢にコイルを誘導するのに要する時間および誘導後の誤差を比較する実験を行った所、両者で略同等の結果が得られ、上記の補間法が有効であることを確認できた。
また、最適刺激位置を中心にしてデータセットの収集を旨く工夫することで、より少ないデータセット数での誘導を可能にすることも考えられる。
データセットを利用してコイルを最適刺激位置および姿勢に誘導する場合、コイルの位置および姿勢を最適刺激位置および姿勢にできるだけ一致させるには、この最適刺激位置近辺で多くのデータセットが在ることが望まれる。一方、最適刺激位置から大きく外れた領域では、最適刺激位置近辺のように多くのデータセットを収集することが必要とされることはない。
経頭蓋磁気刺激療法の対象疾患によって、脳のどの部位を刺激するのが望ましいかが明らかになっている場合がある。例えば、神経障害性疼痛の場合には、「一次運動野」を刺激するのが望ましいとされている(例えば、特許文献1:段落[0026],[0027]等参照)。また、最適刺激部位は一般に限局されたものである(例えば、神経障害性疼痛の場合には、直径20mmを超えず、好適には直径10mm以下;特許文献1の段落[0028]参照)。
従って、データセット収集の観点からは、最適刺激部位近辺の領域を重点的に高い密度でデータ収集し、これに対して最適刺激部位から大きく外れた領域では、比較的低い密度でデータ収集しておくことが効率的である。すなわち、コイルを最適刺激位置および姿勢に誘導する際の所要時間および精度を維持しつつ、収集データセット数を少なくすることが可能である。
尚、治療対象として想定される神経疾患によって、最適刺激部位は異なる。この場合、各神経疾患に応じた特定領域を重点的に高い密度でデータ収集する一方、この特定領域から大きく外れた領域では比較的低い密度でデータ収集しておくことにより、神経障害性疼痛の場合と同様の効果を奏することができる。
また、データセット数を低減するものではないが、データセットを収集する際の効率化を図る場合の一つの手法として、患者の頭部をメッシュ状に区切って座標表示することで、位置の特定をし易くすることも考えられる。
以上に説明したような手法を適用してデータセット収集を効率化することが考えられるが、それでも、データセットの収集を医師が行う以上は、その作業は医師にとって負担となる。
そこで、データセット収集作業を、医師にしかできないことと、医師でなくてもできることとに分けて行うことで、医師の負担を軽減することができる。
具体的に説明すれば、最適刺激位置の特定は医師にしかできないが、それ以外のデータセットの収集作業自体は、医師でなくてもできるはずのものである。すなわち、最適刺激位置の特定は、病院で、当該病院の3次元位置計測装置(例えば、光学式トラッキングシステム)を用いて、治療対象の患者に対し、医師によって行う必要がある。一方、最適刺激位置および姿勢の特定以外のデータセット収集作業は、病院でなくても、また、病院に設置の3次元位置計測装置でなくても、更には患者がいなくても、医師でないものでも行うことができる。
従って、データセットの収集は、病院での医師による最適刺激位置および姿勢の特定とは、別途に行えばよい。例えば、磁気刺激装置の製造業者(メーカ)の出荷前検査の一環として行うのが好適である。
すなわち、データセットは、メーカ側にて、メーカの3次元位置計測装置を用いて、座標系Aで取得しておく。一方、最適刺激位置および姿勢は、病院にて、病院の3次元位置計測装置を用いて別の座標系Bで取得する。座標系Aと座標系Bとの関係をレジストレーションすることは、後述するように既知の手法で容易に行える。そして、座標系Bで取得した最適刺激位置および姿勢を座標系Aに変換することで、メーカ側で取得したデータセットを用いたナビゲーションが可能になる。その結果、データセット収集に伴う医師の負担は劇的に軽減されることになる。
この場合、データセット解析ユニットの記録部が、磁場発生手段の少なくとも位置の(好ましくは、位置および姿勢の)情報を異なる複数の座標系の位置(および姿勢)情報として記録する機能を有するとともに、これら異なる複数の座標系内の位置(および姿勢)情報を相互に整合させて対比参照できるようにする座標変換機能を有する、ことが好ましい。
メーカの3次元位置計測装置による座標系Aと病院の3次元位置計測装置による座標系Bとのレジストレーションの具体例について説明する。この場合にも、前述の数1及び数2を用いる手法を適用することができる。すなわち、
(1)まず、磁場センサ固定具50上に、安定して計測できる同一平面上にない4つの特徴点を定めておく。
(2)次に、メーカの3次元位置計測装置を用いて、座標系Aでみた前記4つの特徴点の位置座標:
(x,y,z),(x,y,z),(x,y,z),(x,y,z
を取得する。
(3)更に、病院の3次元位置計測装置を用いて、座標系Bでみた同じ4つの特徴点の位置座標:
(X,Y,Z),(X,Y,Z),(X,Y,Z),(X,Y,Z
を取得する。
(4)座標変換行列Tを前記数1により計算する。
(5)この座標変換行列Tを用いることで、前記数2に示すように、座標系B(病院の3次元位置計測装置)で取得した任意の特徴点の(従って、最適刺激位置の)位置座標(X,Y,Z)を、メーカの3次元位置計測装置による座標系Aでみた位置座標(x、y、z)に変換することができ、データセットを用いたナビゲーションが可能になる。
尚、メーカ側で十分に高い密度でデータセット(補間計算した値も含めて)が用意されている場合には、この座標変換プロセス(つまりレジストレーション)自体を不要とすることも可能である。つまり、医師が病院において最適刺激位置および姿勢を決定すれば、メーカ側で用意されたデータセットを参照して、そのときの磁場に対応する3次元位置および姿勢(病院での計測値ではなく、データセットから呼び出した値もしくは補間計算した値)をそのまま最適刺激位置および姿勢とすればよい。この場合、前述の座標変換プロセスを、データセットを用いて行ったことになる。
以上の手順をより具体的に説明する。
<メーカにて>:例えば出荷前検査時
イ)成人の標準的頭部構造に基づく頭部模型に磁場センサ固定具(例えば、磁場センサを取り付けた眼鏡)を装着する。
ロ)メーカに設置された3次元位置計測装置(座標系A)を用いて、刺激用コイルと共にコイルホルダに取り付けた永久磁石が発する磁場(眼鏡に取り付けた磁場センサで計測)と、刺激用コイルの座標系Aでの3次元位置および姿勢との組み合わせ(データセット)を、コイルホルダを移動操作しながら収集する。このとき、頭部模型と実際の患者頭部の相違や、眼鏡の装着位置にズレが生じること等を考慮し、できるだけ数多くのデータセットを収集する。
<病院にて>:初期治療時
イ)患者に磁場センサ固定具(例えば、磁場センサを取り付けた眼鏡)を装着してもらう。
ロ)病院に設置された3次元位置計測装置(座標系B)を用いて、刺激用コイルと共にコイルホルダに取り付けた永久磁石が発する磁場(眼鏡に取り付けた磁場センサで計測)と、刺激用コイルの座標系Aでの3次元位置および姿勢(メーカで取得したデータセットにより推定)と、刺激用コイルの座標系Bでの3次元位置および姿勢との組み合わせを、コイルホルダを移動操作しながら、数個の点(少なくとも4点以上)について収集する。
ハ)これらの点での座標系Aと座標系Bとの対応から、前述のレジストレーションを適用して、座標系Aと座標系Bの座標変換行列が求められる。
ニ)次に、医師が、座標系Bで最適刺激位置および姿勢を特定する。
ホ)前記ハ)項で求められた座標変換行列を用いて、最適刺激位置および姿勢を座標系Aに変換して記録する。
<在宅にて>
メーカで収集したデータセット(座標系A)に、病院で取得した最適刺激位置および姿勢のデータセットが同じ座標(座標系A)に変換されて追加記録されているので、患者は、通常通りにナビゲーション操作を行うことができる。
以上のように、データセットを利用した手法の枠組を殆ど変えることなく、医師の負担を最小限に抑えることができる。
ここで、前述の「最適刺激位置を中心にしてデータセットの収集を旨く工夫する手法」を、メーカ側でのデータセット収集時に適用する手法について説明する。
例えば、前述したように、経頭蓋磁気刺激療法の対象疾患によって、脳のどの部位を刺激するのが望ましいかが明らかになっている場合がある。そこで、メーカ側でデータセットを収集する際に、頭部模型上で、最適刺激部位が位置するであろう領域をおおまかに把握し、その領域を重点的により高い密度でデータ収集する一方、当該領域から大きく外れた領域では比較的低い密度でデータ収集しておくことにより、効率の良いデータセット収集を行うことができる。
さらには、病院で患者の頭部や最適刺激位置に関する情報を取得した上で、その情報をメーカ側に送り、その情報をもとに、メーカ側で患者にあわせたデータセットを収集することも考えられる。この場合、メーカ側では、最適刺激位置の位置情報に基づいて、最適刺激位置近辺を重点的により高い密度でデータ収集する一方、この最適刺激位置から大きく外れた領域では比較的低い密度でデータ収集しておけばよい。この場合、病院から(たとえ大雑把でも)最適刺激位置に関する位置情報が得られることにより、効率の良いデータセット収集を行うことができる。
以上の説明では、最適刺激位置および姿勢のデータセットを含むデータセットの取得は、専ら光学式トラッキング装置等の3次元位置計測装置を用いて行っていたが、この代わりに、第1の実施形態で説明した磁場の逆解析手法を利用して、データセットの取得を行うことも可能である。
また、磁場の逆解析手法を利用する手法とデータセットを利用する手法とを組み合わせて、刺激用コイルをより効率良く最適刺激位置および姿勢へ誘導するように構成することも可能である。
この場合には、例えば、データセットが取得されていない領域(つまり、最適刺激位置から或る程度以上離れた領域)では、磁場の逆解析手法を利用する手法で刺激用コイルを誘導し、データセットが取得されている領域(つまり、最適刺激位置に比較的近い領域)では、データセットを利用する手法で刺激用コイルを誘導するように構成することにより、データセット数が比較的少なくても、効率の良いスムースな刺激用コイルの誘導を行うことが可能である。
前述のように、データセットを利用してコイルを最適刺激位置および姿勢に誘導する場合、コイルの位置および姿勢を最適刺激位置および姿勢にできるだけ一致させるには、データセット数が多いことが望ましく、特に、最適刺激位置近辺でのデータセット数はコイルの誘導位置および姿勢の精度に影響を及ぼす。そこで、最後までデータセットだけでコイル誘導を行うのではなく、コイル誘導の最終プロセスでは、逆解析手法を適用することも考えられる。この場合には、最適刺激位置近辺でのデータセット数を或る程度少なくすることも可能である。
また、コイル誘導プロセスの初期など、コイル位置が最適刺激位置から或る程度以上離れておりデータセットが取得されていない領域では逆解析手法を適用し、コイル誘導プロセスが進むに連れてデータセットが取得されている領域になるとデータセット手法を用いておおまかな位置合わせを行い、更に、コイル誘導の最終プロセスでは、逆解析手法を適用して、最終の位置合わせを行うようにすることも考えられる。
以上の実施形態は、基本的には、固定された患者頭部に対し刺激用コイルを操作して相対変位させるものであったが、この代わりに、刺激用コイルを固定しておき、この固定された刺激用コイルに対し患者の頭部を相対変位させるように構成することもできる。或いは、患者頭部と刺激用コイルの両者が動作して相対変位する場合でも、本発明を有効に適用することができる。
その実施形態の一例として、特に、在宅での治療時における最適刺激位置への位置決め手順を例示すれば、次の通りである。
まず、これまでの実施形態と同様に、磁場検出手段としての磁場センサを、眼鏡などの固定手段を用いて患者の頭部に固定する。一方、刺激用コイルを、頭部のおおまかな刺激位置(例えば、一次運動野に相当する領域)に相対するようにホルダ固定具で固定する。
以上のセッティング完了後は、基本的に、前述の図5に示すフローチャートのプロセスに相当するプロセスに従って、位置決めを行えばよい。図5のフローチャートを用いて説明すれば、本実施形態では、ステップ#22において、最適位置に合うように、患者が自らの頭部を移動させることになる。ステップ#23では、これまでの実施形態と同様に、刺激用コイルの最適位置および姿勢からの偏差(ずれ)が検出される。そして、ステップ#24では、ユーザ・インタフェース部が、患者が自らの頭部をどのように移動すべきかを報知する。つまり、刺激用コイルが最適位置および姿勢となるように、患者の頭部移動をナビゲーションする。このプロセスを通じて、これまでの実施形態と同様、最適刺激位置での治療が可能となる。
尚、前記ステップ#22で、患者が自らの頭部を移動させると共に刺激用コイルも併せて変位操作するようにしてもよい。この場合には、ユーザ・インタフェース部が、刺激用コイルの変位操作の誘導のための報知手段と患者の頭部の移動の誘導のための報知手段として機能することで、刺激用コイルの最適刺激位置および姿勢への効果的なナビゲーションを行うことが可能になる。
以上の実施形態は、全て、患者の頭皮表面に配置した刺激用コイルにより、脳内神経に磁気刺激を加えて神経障害性の疼痛を緩和する経頭蓋磁気刺激療法に用いる場合についてのものであったが、本発明は、かかる場合に限定されるものではなく、他の磁気刺激用途においても、有効に適用できるものである。
このように、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更や設計上の改良等を行い得るものであることは、言うまでもない。
本発明は、被験者の特定部位に磁気刺激を加えるための磁気刺激装置に関し、例えば、患者の頭皮表面に配置した刺激用コイルにより例えば脳内神経に磁気刺激を加える経頭蓋磁気刺激療法に用いる装置として、有効に利用することができる。
10 経頭蓋磁気刺激装置
11 刺激用コイル
12 コイルホルダ
13 磁場センサ
14 眼鏡
15 ケーブル
16 磁気刺激制御装置
20 磁場解析ユニット
22,122 信号解析部
23 格納部
24,124 比較部
25,125 ユーザ情報出力部
28,128 ユーザ・インタフェース部
41 永久磁石
50 磁場センサ固定具
51 磁場センサ
120 データセット解析ユニット
123 記録部
M 患者

Claims (19)

  1. 被験者の特定部位に対して磁気刺激を加えるための磁気刺激装置であって、
    前記磁気刺激を加えるための動磁場を発生させる動磁場発生手段を少なくとも含む磁場発生手段と、
    前記被験者の特定部位に対して前記磁場発生手段の相対位置を変位可能に操作される操作手段と、
    前記磁場発生手段が発生させた磁場を、所定の方向成分の磁界の大きさとして検出する複数の磁場検出手段と、
    前記磁気刺激に先立って若しくは磁気刺激中に、前記磁場発生手段から発生する磁場を前記複数の磁場検出手段で検出した結果に基づいて、前記磁場発生手段の少なくとも空間内における位置を算出し、当該算出された結果を用いて、前記操作手段を用いて行うべき変位の操作を教示するための教示情報を報知する報知手段と、
    を備えることを特徴とする磁気刺激装置。
  2. 被験者の特定部位に対して磁気刺激を加えるための磁気刺激装置であって、
    前記磁気刺激を加えるための動磁場を発生させる動磁場発生手段を少なくとも含む磁場発生手段と、
    前記被験者の特定部位近傍に前記磁場発生手段を保持する保持手段と、
    前記磁場発生手段が発生させた磁場を、所定の方向成分の磁界の大きさとして検出する複数の磁場検出手段と、
    前記磁気刺激に先立って若しくは磁気刺激中に、前記磁場発生手段から発生する磁場を前記複数の磁場検出手段で検出した結果に基づいて、前記磁場発生手段の少なくとも空間内における位置を算出し、当該算出された結果を用いて、前記被験者が前記特定部位への磁気刺激のために行うべき身体移動を教示するための教示情報を報知する報知手段と、
    を備えることを特徴とする磁気刺激装置。
  3. 前記報知手段は、更に、前記複数の磁場検出手段が検出した結果に基づいて前記磁場発生手段の空間内における姿勢を算出し、前記教示情報の報知に用いることを特徴とする、請求項1または2に記載の磁気刺激装置。
  4. 前記被験者の特定部位に対する所定の相対位置に前記磁場検出手段を固定するための固定手段を備える、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気刺激装置。
  5. 前記操作手段に前記磁場発生手段が取り付けられていることを特徴とする請求項1、3及び4のいずれか1項に記載の磁気刺激装置。
  6. 前記報知手段は、前記複数の磁場検出手段が検出した、所定の方向成分の磁界の大きさに関する情報を用いた逆解析手法によって得られる磁場源の位置として、前記磁場発生手段の位置を算出して、前記教示情報を生成して報知する、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の磁気刺激装置。
  7. 前記磁場発生手段の位置の情報と、当該位置において発生がなされた磁場を前記各磁場検出手段が検出した、所定の方向成分の磁界の大きさに関する情報と、を対にして予め複数の前記少なくとも位置において記録した記録手段を更に備え、
    前記報知手段は、前記磁気刺激に先立って若しくは磁気刺激中に前記各磁場検出手段が検出した、所定の方向成分の磁界の大きさに関する情報と、前記記録手段の記録情報との対比参照に基づいて、前記磁場発生手段の位置を算出して、前記教示情報を生成して報知する、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の磁気刺激装置。
  8. 前記被験者の特定部位に対して磁気刺激を加えるための位置またはその許容される近傍範囲内に前記磁場発生手段が位置した状態で前記各磁場検出手段が検出した、所定の方向成分の磁界の大きさに関する情報を予め複数記録した目標情報記録手段を更に備え、前記報知手段は、前記磁気刺激に先立って若しくは磁気刺激中に前記各磁場検出手段が検出した、所定の方向成分の磁界の大きさに関する情報と、前記目標情報記録手段の記録情報との対比参照結果に基づいて、前記教示情報を生成して報知を行う、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の磁気刺激装置。
  9. 前記記録手段は、前記磁場発生手段の位置の情報を異なる複数の座標系内の位置情報として記録可能であり、且つ、前記異なる複数の座標系内の位置情報を相互に整合させて前記対比参照を可能とするための座標変換手段を備えている、ことを特徴とする請求項7に記載の磁気刺激装置。
  10. 前記磁場発生手段が動磁場および静磁場を発生することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の磁気刺激装置。
  11. 前記磁場発生手段が動磁場のみを発生することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の磁気刺激装置。
  12. 前記磁場検出手段は前記磁場発生手段が発生させた動磁場および静磁場を検出することを特徴とする請求項10に記載の磁気刺激装置。
  13. 前記磁場検出手段は、前記磁場発生手段による動磁場の発生を停止した状態で、前記磁場発生手段による静磁場を検出する、ことを特徴とする請求項12に記載の磁気刺激装置。
  14. 前記磁場検出手段は、前記磁場発生手段が発生させた動磁場のみを検出する、ことを特徴とする請求項10又は11に記載の磁気刺激装置。
  15. 前記報知手段は、視覚情報および聴覚情報の少なくとも何れか一方を報知する、ことを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の磁気刺激装置。
  16. 前記報知手段は、聴覚情報により前記教示情報を報知する報知手段であり、前記操作手段が行うべき変位量または前記被験者が身体移動すべき移動量に応じて、音量,音階および音色の少なくとも一つを変化させる、ことを特徴とする請求項15に記載の磁気刺激装置。
  17. 前記報知手段は、視覚情報により前記教示情報を報知する報知手段であり、前記操作手段が行うべき変位量または前記被験者が身体移動すべき移動量に応じて教示色を変化させる、ことを特徴とする請求項15に記載の磁気刺激装置。
  18. 前記固定手段は、眼鏡,イヤホン,ヘッドホン及びヘッドバンドの中から選択されるものである、ことを特徴とする請求項4から17のいずれか1項に記載の磁気刺激装置。
  19. 前記磁気刺激装置は、経頭蓋磁気刺激治療のために被験者の少なくとも脳の特定部位に磁気刺激を加える、ことを特徴とする請求項1から18のいずれか1項に記載の磁気刺激装置。
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