JPWO2016157693A1 - 電解コンデンサ - Google Patents

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Abstract

本発明に係る電解コンデンサは、誘電体層を有する陽極部材と、前記誘電体層の表面に形成された導電性高分子を含む固体電解質層と、非水溶媒または電解液と、を含み、前記非水溶媒または前記電解液は、炭酸エステルおよびその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む第1溶媒と、前記第1溶媒とは異なる第2溶媒と、を含むことを特徴とする。

Description

本発明は、電解コンデンサに関し、詳細には、耐電圧特性および信頼性に優れる電解コンデンサに関する。
電子機器のデジタル化に伴い、これに使用されるコンデンサにも小型、大容量で高周波領域における等価直列抵抗(ESR)の小さいものが求められるようになってきている。
小型、大容量で低ESRのコンデンサとしては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン等の導電性高分子を陰極材として用いた電解コンデンサが有望である。例えば、誘電体層を形成した陽極箔に、陰極材として固体電解質層を設けた固体電解コンデンサが提案されている。
固体電解コンデンサは、誘電体層の修復性能に乏しいため、耐電圧特性が低いことが指摘されている。そのため、誘電体層の修復性能に優れる溶媒または電解液を、固体電解質層と併用する技術が開発されている。例えば、特許文献1には、固体電解質層に、γ−ブチロラクトンまたはスルホラン等を含有する溶媒を含浸させた電解コンデンサが開示されている。
特開2009−111174号公報
一般に電解コンデンサの静電容量は、使用温度によって変化する。コンデンサを搭載した電子機器の用途が多岐にわたってきていることから、電解コンデンサには、使用温度によって静電容量の変化が少ない、優れた温度特性や耐久性(以下、併せて信頼性と称す)が求められている。しかし、固体電解コンデンサに使用する溶媒の種類により、耐電圧特性および信頼性は大きく変化する。
本発明の一局面は、誘電体層を有する陽極部材と、前記誘電体層の表面に形成された導電性高分子を含む固体電解質層と、非水溶媒または電解液と、を含み、前記非水溶媒または前記電解液は、炭酸エステルおよびその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む第1溶媒と、前記第1溶媒とは異なる第2溶媒と、を含む、電解コンデンサに関する。
本発明によれば、耐電圧特性および信頼性に優れた電解コンデンサを提供することができる。
本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの断面模式図である。 同実施形態に係るコンデンサ素子の構成を説明するための概略図である。
本発明の電解コンデンサは、誘電体層を有する陽極部材と、前記誘電体層の表面に形成された導電性高分子を含む固体電解質層と、非水溶媒または電解液と、を含み、前記非水溶媒または前記電解液は、炭酸エステルおよびその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む第1溶媒と、前記第1溶媒とは異なる第2溶媒と、を含む。これにより、電解コンデンサの耐電圧特性および信頼性が向上する。
炭酸エステルは、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレンおよび炭酸プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これにより、耐電圧特性および信頼性がさらに向上する。
第2溶媒は、エチレングリコール、γ−ブチロラクトンおよびスルホランよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。これにより、非水溶媒または電解液の固体電解質層への含浸性が向上し、耐電圧特性がさらに向上する。
第1溶媒と第2溶媒との質量割合は、3:7〜5:5であることが好ましい。これにより、低温域から高温域までの特性のばらつきが小さくなり、信頼性がさらに向上する。
導電性高分子は、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンおよびこれらの誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。これにより、導電性高分子と炭酸エステルおよび/またはその誘導体を含む溶媒(電解液)との相互作用が高まり、耐電圧特性がさらに向上する。
固体電解質層は、第3溶媒に導電性高分子が溶解した導電性高分子溶液、または、第3溶媒と導電性高分子の粒子とを含む導電性高分子分散液を、誘電体層の表面に付与した後、乾燥させることにより形成されていることが好ましい。これにより、非水溶媒または電解液の固体電解質層への含浸性が向上し、耐電圧特性がさらに向上する。
以下、本発明を実施形態に基づいて、より具体的に説明する。ただし、以下の実施形態は本発明を限定するものではない。
≪電解コンデンサ≫
本発明に係る電解コンデンサは、固体電解質層と、非水溶媒または電解液とを有している。非水溶媒または電解液は、炭酸エステルおよびその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む第1溶媒と、前記第1溶媒とは異なる第2溶媒と、を含んでいる。
従来、耐電圧特性を向上させる視点から、固体電解質層に、エチレングリコール(EG)またはスルホランなどの高沸点溶媒を含浸させた電解コンデンサが知られている。しかし、高沸点溶媒を、固体電解質層を有するコンデンサ素子に適用しただけでは、耐電圧特性や信頼性の十分な向上は期待できない。固体電解質層を有する電解コンデンサにおいて、コンデンサ素子に含浸させる溶媒(電解液)の種類が、耐電圧特性や信頼性などに大きく影響するためである。
例えば、溶媒としてEGを使用すると、耐電圧特性が低下したり、ESRが増加したりする場合がある。しかし、EGとともに炭酸エステルおよび/またはその誘導体を用いると、耐電圧特性が向上し、ESRの増加が抑制される。また、スルホランは高温特性に優れるが、低温では凝固してしまい、容量が減少する。しかし、スルホランとともに炭酸エステルおよび/またはその誘導体を用いると、低温特性が向上する。
すなわち、本発明に係る電解コンデンサは、固体電解質層に含浸させる溶媒(電解液)として、炭酸エステルおよびその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む第1溶媒と、第1溶媒とは異なる第2溶媒とを用いる。これにより、耐電圧特性および信頼性のいずれもが向上する。この理由は定かではないが、炭酸エステルおよび/またはその誘導体を含む溶媒(電解液)と固体電解質層に含まれる導電性高分子との相互作用によるものであると考えられる。
第1溶媒としては、具体的には、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチレン(EC)および炭酸プロピレン(PC)などが好ましい。また、これらの誘導体、例えば、フッ素含有の炭酸エステルであるフルオロエチレンカーボネート等であってもよい。これらは、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。なかでも、高沸点であり、かつ、凝固点が低い点で、PCが好ましい。
従来、PCは高沸点溶媒であるものの、これを溶媒として用いた電解コンデンサは、高温下での使用において、信頼性が低下するとされている。しかし、溶媒として、PCに加えて、PCとは異なる溶媒(第2溶媒)を用いることにより、高温下における信頼性は向上する。
第2溶媒としては、第1溶媒とは異なる溶媒であればよく、特に限定されるものではない。第2溶媒は、例えば、沸点180℃以上の高沸点溶媒である。高沸点溶媒としては、例えば、エチレングリコール(EG)、γ−ブチロラクトン(GBL)およびスルホランなどを挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
第1溶媒と第2溶媒との質量割合(第1溶媒:第2溶媒)は、2:8〜5:5であることが好ましい。質量割合がこの範囲であると、信頼性のさらなる向上が期待できる。質量割合(第1溶媒:第2溶媒)は、3:7〜5:5であることがより好ましい。
固体電解質層に含まれる導電性高分子としては、ポリピロール、ポリチオフェンおよびポリアニリンなどが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、2種以上のモノマーの共重合体でもよい。固体電解質層が、このような導電性高分子を含むことにより、耐電圧特性のさらなる向上が期待できる。
なお、本明細書では、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどは、それぞれ、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどを基本骨格とする高分子を意味する。したがって、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなどには、それぞれの誘導体も含まれ得る。例えば、ポリチオフェンには、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)などが含まれる。
図1は、本実施形態に係る電解コンデンサの断面模式図であり、図2は、同電解コンデンサに係るコンデンサ素子の一部を展開した概略図である。
電解コンデンサは、例えば、コンデンサ素子10と、コンデンサ素子10を収容する有底ケース11と、有底ケース11の開口を塞ぐ封止部材12と、封止部材12を覆う座板13と、封止部材12から導出され、座板13を貫通するリード線14A、14Bと、各リード線とコンデンサ素子10の各電極とを接続するリードタブ15A、15Bと、電解液(図示せず)とを備える。有底ケース11の開口端近傍は、内側に絞り加工されており、開口端は封止部材12にかしめるようにカール加工されている。
コンデンサ素子10は、図2に示すような巻回体から作製される。巻回体とは、コンデンサ素子10の半製品であり、表面に誘電体層を有する陽極体21と陰極体22との間に、導電性高分子を含む固体電解質層が形成されていないものをいう。巻回体は、リードタブ15Aと接続された陽極体21と、リードタブ15Bと接続された陰極体22と、セパレータ23とを備える。陽極体21および陰極体22は、セパレータ23を介して巻回されている。巻回体の最外周は、巻止めテープ24により固定される。なお、図2は、巻回体の最外周を止める前の、一部が展開された状態を示している。
陽極体21は、表面が凹凸を有するように粗面化された金属箔を具備し、凹凸を有する金属箔上に誘電体層が形成されている。誘電体層の表面の少なくとも一部に、導電性高分子を付着させることにより、固体電解質層が形成される。固体電解質層は、陰極体22の表面および/またはセパレータ23の表面の少なくとも一部を被覆していてもよい。固体電解質層が形成されたコンデンサ素子10は、電解液とともに、外装ケースに収容されてもよい。
≪電解コンデンサの製造方法≫
以下、本実施形態に係る電解コンデンサの製造方法の一例について、工程ごとに説明する。
(i)誘電体層を有する陽極体21を準備する工程
まず、陽極体21の原料である金属箔を準備する。金属の種類は特に限定されないが、誘電体層の形成が容易である点から、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁作用金属または弁作用金属を含む合金を用いることが好ましい。
次に、金属箔の表面を粗面化する。粗面化により、金属箔の表面に、複数の凹凸が形成される。粗面化は、金属箔をエッチング処理することにより行うことが好ましい。エッチング処理は、例えば直流電解法や交流電解法により行えばよい。
次に、粗面化された金属箔の表面に誘電体層を形成する。誘電体層の形成方法は特に限定されないが、金属箔を化成処理することにより形成することができる。化成処理では、例えば、金属箔をアジピン酸アンモニウム溶液などの化成液に浸漬して熱処理する。また、金属箔を化成液に浸漬して電圧を印加してもよい。
通常は、量産性の観点から、大判の弁作用金属などの箔(金属箔)に対して、粗面化処理および化成処理が行われる。その場合、処理後の箔を所望の大きさに裁断することによって、陽極体21が準備される。
(ii)陰極体22を準備する工程
陰極体22にも、陽極体と同様、金属箔を用いることができる。金属の種類は特に限定されないが、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁作用金属または弁作用金属を含む合金を用いることが好ましい。必要に応じて、陽極体22の表面を粗面化してもよい。
(iii)巻回体の作製
次に、陽極体21および陰極体22を用いて巻回体を作製する。
まず、陽極体21と陰極体22とを、セパレータ23を介して巻回する。このとき、リードタブ15A、15Bを巻き込みながら巻回することにより、図2に示すように、リードタブ15A、15Bを巻回体から植立させることができる。
セパレータ23の材料は、例えば、合成セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ビニロン、アラミド繊維などを主成分とする不織布を用いることができる。
リードタブ15A、15Bの材料も特に限定されず、導電性材料であればよい。リードタブ15A、15Bの各々に接続されるリード線14A、14Bの材料についても、特に限定されず、導電性材料であればよい。
次に、巻回された陽極体21、陰極体22およびセパレータ23のうち、最外層に位置する陰極体22の外側表面に、巻止めテープ24を配置し、陰極体22の端部を巻止めテープ24で固定する。なお、陽極体21を大判の金属箔を裁断することによって準備した場合には、陽極体21の裁断面に誘電体層を設けるために、巻回体に対し、さらに化成処理を行ってもよい。
(iv)コンデンサ素子10を形成する工程
次に、第3溶媒に導電性高分子が溶解した導電性高分子溶液、または、第3溶媒と導電性高分子の粒子とを含む導電性高分子分散液(以下、併せて液状組成物と称する場合がある)を誘電体層の表面に付与し、その後、乾燥させることにより、固体電解質層が形成され、コンデンサ素子10が形成される。
導電性高分子溶液に含まれる導電性高分子は、第3溶媒に溶解しており、溶液中に均一に分布している。よって、導電性高分子溶液は、より均一な固体電解質層を形成しやすい点で好ましい。導電性高分子分散液に含まれる導電性高分子は、粒子または粉末の状態で第1溶媒に分散している。導電性高分子分散液は、例えば、第3溶媒に導電性高分子を分散させる方法や、第3溶媒中で導電性高分子の前駆体モノマーを重合させて、第3溶媒中に導電性高分子の粒子を生成させる方法などにより得ることができる。
導電性高分子溶液における導電性高分子の濃度は、0.5〜10質量%であることが好ましく、導電性高分子分散液における導電性高分子の粒子または粉末の濃度も、0.5〜10質量%であることが好ましい。このような濃度の液状組成物は、適度な厚みの固体電解質層を形成するのに適するとともに、巻回体に対して含浸されやすい。
固体電解質層は、モノマー、ドーパントおよび酸化剤などを含有する溶液を誘電体層上に付与して、その場で化学重合させる方法で形成してもよい。なかでも、優れた耐電圧特性を期待できる点で、導電性高分子を誘電体層に付与する方法により、固体電解質層を形成することが好ましい。
導電性高分子は、ドーパントを含んでいてもよい。ドーパントとしては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸などのアニオンが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらは単独重合体であってもよく、2種以上の共重合体であってもよい。なかでも、ポリスチレンスルホン酸由来のポリアニオンが好ましい。
導電性高分子の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば1000〜100000である。また、ポリアニオンの重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば1000〜100000である。このような導電性高分子およびポリアニオンは、均質な固体電解質層を形成しやすい。また、導電性高分子が、粒子または粉末の状態で分散媒に分散している場合、その粒子または粉末の平均粒径D50は、例えば0.01〜0.5μmであることが好ましい。ここで、平均粒径D50は、動的光散乱法による粒度分布測定装置により求められる体積粒度分布におけるメディアン径である。
液状組成物における導電性高分子(ドーパントを含む)濃度は、0.5〜10質量%であることが好ましい。このような濃度の液状組成物は、適度な厚みの固体電解質層を形成するのに適するとともに、巻回体に対して含浸されやすいため、生産性を向上させる上でも有利である。
第3溶媒は、水でもよく、水と非水溶媒との混合物でもよく、非水溶媒でもよい。非水溶媒とは、水を除く液体の総称であり、有機溶媒やイオン性液体が含まれる。非水溶媒は、特に限定されないが、例えば、プロトン性溶媒、非プロトン性溶媒を用いることができる。プロトン性溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類、ホルムアルデヒド、1,4−ジオキサンなどのエーテル類などが例示できる。非プロトン性溶媒としては、N−メ
チルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのア
ミド類や、酢酸メチルなどのエステル類、メチルエチルケトンなどのケトン類などが例示できる。
液状組成物を誘電体層の表面に付与する方法としては、特に限定されないが、例えば、容器に収容された液状組成物に巻回体を浸漬させる方法が簡易で好ましい。浸漬時間は、巻回体のサイズにもよるが、例えば1秒〜5時間、好ましくは1分〜30分である。また、含浸は、減圧下、例えば10〜100kPa、好ましくは40〜100kPaの雰囲気で行うことが好ましい。また、液状組成物に浸漬させながら、巻回体または液状組成物に超音波振動を付与してもよい。
液状組成物から巻回体を引上げた後、巻回体を加熱することにより、液状組成物に含まれる水や非水溶媒の蒸散を促進してもよい。加熱温度は、例えば50〜300℃が好ましく、100〜200℃が特に好ましい。
液状組成物を誘電体層の表面に付与する工程と、巻回体を乾燥させる工程とは、2回以上繰り返してもよい。これらの工程を複数回行うことにより、誘電体層に対する固体電解質層の被覆率を高めることができる。固体電解質層は、誘電体層の表面の少なくとも一部を覆うように形成される。このとき、誘電体層の表面だけでなく、陰極体22セパレータ23の表面にも固体電解質層が形成されてもよい。
以上により、陽極体21と陰極体22との間に固体電解質層が形成され、コンデンサ素子10が作製される。なお、誘電体層の表面に形成された固体電解質層は、事実上の陰極材料として機能する。
(v)コンデンサ素子10に非水溶媒または電解液を含浸させる工程
次に、コンデンサ素子10に、第1溶媒と第2溶媒とを含む非水溶媒を含浸させる。第1溶媒と第2溶媒とは、予め混合させても良い。非水溶媒は、コンデンサ素子10が有する隙間に侵入する。また、非水溶媒は、固体電解質層により被覆されていない誘電体層の隙間にも侵入することができる。よって、誘電体層の修復機能が向上する。
非水溶媒にイオン性物質(溶質)として有機塩を溶解させた電解液を用いてもよい。有機塩とは、アニオンおよびカチオンの少なくとも一方が有機物を含む塩である。有機塩としては、有機アミン塩が好ましく、特に有機アミンと有機カルボン酸との塩が好ましい。具体的には、マレイン酸トリメチルアミン、ボロジサリチル酸トリエチルアミン、フタル酸エチルジメチルアミン、フタル酸モノ1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、フタル酸モノ1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリニウムなどを用いることができる。
コンデンサ素子10に非水溶媒または電解液を含浸させる方法は、特に限定されない。なかでも、容器に収容された非水溶媒または電解液にコンデンサ素子10を浸漬させる方法が簡易である点で好ましい。浸漬時間は、コンデンサ素子10のサイズにもよるが、例えば1秒〜5分である。また、含浸は、減圧下、例えば10〜100kPa、好ましくは40〜100kPaの雰囲気で行うことが好ましい。
(vi)コンデンサ素子を封止する工程
次に、コンデンサ素子10を封止する。具体的には、まず、リード線14A、14Bが有底ケース11の開口する上面に位置するように、コンデンサ素子10を有底ケース11に収納する。有底ケース11の材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、鉄、真鍮などの金属あるいはこれらの合金を用いることができる。
次に、リード線14A、14Bが貫通するように形成された封止部材12を、コンデンサ素子10の上方に配置し、コンデンサ素子10を有底ケース11内に封止する。封止部材12は、絶縁性物質であればよい。絶縁性物質としては弾性体が好ましく、中でも耐熱性の高いシリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、ハイパロンゴム、ブチルゴム、イソプレンゴムなどが好ましい。
次に、有底ケース11の開口端近傍に、横絞り加工を施し、開口端を封止部材12に加締めてカール加工する。そして、カール部分に座板13を配置することによって、図1に示すような電解コンデンサが完成する。その後、定格電圧を印加しながら、エージング処理を行ってもよい。
上記の実施形態では、巻回型の電解コンデンサについて説明したが、本発明の適用範囲は上記に限定されず、他の電解コンデンサ、例えば、陽極体として金属の焼結体を用いるチップ型の電解コンデンサや、金属板を陽極体として用いる積層型の電解コンデンサにも適用することができる。
[実施例]
以下、実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
《実施例1》
本実施例では、定格電圧100V、定格静電容量15μFの巻回型の電解コンデンサ(Φ8.0mm×L(長さ)12.0mm)を作製した。以下に、電解コンデンサの具体的な製造方法について説明する。
(陽極体の準備)
厚さ100μmのアルミニウム箔にエッチング処理を行い、アルミニウム箔の表面を粗面化した。その後、アルミニウム箔の表面に、化成処理により、誘電体層を形成した。化成処理は、アジピン酸アンモニウム溶液にアルミニウム箔を浸漬し、これに60Vの電圧を印加することにより行った。その後、アルミニウム箔を、縦×横が6mm×120mmとなるように裁断して、陽極体を準備した。
(陰極体の準備)
厚さ50μmのアルミニウム箔にエッチング処理を行い、アルミニウム箔の表面を粗面化した。その後、アルミニウム箔を、縦×横が6mm×120mmとなるように裁断して、陰極体を準備した。
(巻回体の作製)
陽極体および陰極体に陽極リードタブおよび陰極リードタブを接続し、陽極体と陰極体とを、リードタブを巻き込みながら、セパレータを介して巻回した。巻回体から突出する各リードタブの端部には、陽極リード線および陰極リード線をそれぞれ接続した。そして、作製された巻回体に対して、再度化成処理を行い、陽極体の切断された端部に誘電体層を形成した。次に、巻回体の外側表面の端部を巻止めテープで固定して巻回体を作製した。
(導電性高分子分散液の調製)
3,4−エチレンジオキシチオフェンと、ドーパントとしてのポリスチレンスルホン酸とを、イオン交換水(第3溶媒)に溶かした混合溶液を調製した。得られた混合溶液を撹拌しながら、イオン交換水に溶かした硫酸鉄(III)(酸化剤)を添加し、重合反応を行
った。反応後、得られた反応液を透析して、未反応モノマーおよび過剰な酸化剤を除去し、約5質量%のポリスチレンスルホン酸がドープされたポリエチレンジオキシチオフェンを含む導電性高分子分散液を得た。
(固体電解質層の形成)
減圧雰囲気(40kPa)中で、所定容器に収容された導電性高分子分散液に巻回体を5分間浸漬し、その後、導電性高分子分散液から巻回体を引き上げた。次に、導電性高分子分散液を含浸した巻回体を、150℃の乾燥炉内で20分間乾燥させ、導電性高分子を含む固体電解質層を陽極部材と陰極部材との間に形成した。
(非水溶媒または電解液の含浸)
減圧雰囲気(40kPa)中で、PCとGBLとの4:6の混合溶媒に、固体電解質層を具備するコンデンサ素子を5分間浸漬した。
(コンデンサ素子の封止)
非水溶媒を含浸させたコンデンサ素子を封止して、電解コンデンサを完成させた。具体的には、まず、有底ケースの開口側にリード線が位置するようにコンデンサ素子を有底ケースに収納し、リード線が貫通するように形成された封止部材であるゴムパッキングをコンデンサ素子の上方に配置して、コンデンサ素子を有底ケース内に封止した。そして、有底ケースの開口端近傍に絞り加工を施し、更に開口端をカール加工し、カール部分に座板を配置することによって、図1に示すような電解コンデンサを完成させた。その後、定格電圧を印加しながら、130℃で2時間エージング処理を行った。
得られた電解コンデンサについて、静電容量、ESRおよび破壊耐電圧(BDV)を測定した。破壊耐電圧(BDV)は、1.0V/秒のレートで昇圧しながら電圧を印加し、0.5Aの過電流が流れるときの電圧を測定した。
更に、長期信頼性を評価するために、定格電圧を印加しながら125℃で5000時間保持し、静電容量の変化率(ΔCap125)およびESRの増加率(ΔESR125)を確認した。ΔCap125は、初期の静電容量をX0、5000時間保持後の静電容量をXとして、[(X−X0)/X0]×100により算出した。ΔESR125は、初期値(Y0)に対する5000時間保持後のESR(Y)の比(Y/Y0)で示した。
また、温度特性を評価するために、−60℃〜105℃での静電容量の変化率(ΔCaptem)を確認した。ΔCaptemは、25℃における静電容量Z0を基準として、各温度
における容量Ztemの変化率=[(Ztem−Z0)/Z0]×100として算出した。それぞれの特性を30個の試料の平均値として求めた。その結果を表1に示す。
《実施例2〜3および比較例1〜4》
表1に示すように、第1溶媒および第2溶媒を使用した、あるいは、使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして電解コンデンサを作製し、上記と同様に評価した。結果を表1に示す。
Figure 2016157693
溶媒としてPCのみを使用した比較例1およびGBLのみを使用した比較例2と比較して、実施例1〜3では、特に高温時の容量変化(ΔCap 125)が小さく、ESRの増加も
抑制されている。また、スルホランのみを使用した比較例3は、ΔCap 125に対してΔCap
temの範囲が広く、低温特性に劣ることがわかる。EGのみを使用した比較例4は、耐電圧特性が非常に低く、ESRも増加している。
《実施例4〜6》
表2に示すように、第1溶媒と第2溶媒との比率を変えたこと以外は、実施例1と同様にして電解コンデンサを作製し、上記と同様に評価した。結果を表2に示す。
Figure 2016157693
第1溶媒および第2溶媒を2:8〜の〜5:5割合で含む実施例2および4〜6は、温度変化による容量の変化(ΔCaptem)が小さく、さらに耐電圧特性に優れている。なか
でも、第1溶媒および第2溶媒を3:7〜5:5の割合で含む実施例2および4〜5は、温度変化による容量の変化が特に小さい。
本発明は、陰極材料として固体電解質層を具備する電解コンデンサに利用することができる。
10:コンデンサ素子、11:有底ケース、12:封止部材、13:座板、14A,14B:リード線、15A,15B:リードタブ、21:陽極体、22:陰極体、23:セパレータ、24:巻止めテープ

Claims (6)

  1. 誘電体層を有する陽極部材と、
    前記誘電体層の表面に形成された導電性高分子を含む固体電解質層と、
    非水溶媒または電解液と、を含み、
    前記非水溶媒または前記電解液は、炭酸エステルおよびその誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む第1溶媒と、
    前記第1溶媒とは異なる第2溶媒と、を含む、電解コンデンサ。
  2. 前記炭酸エステルが、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレンおよび炭酸プロピレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の電解コンデンサ。
  3. 前記第2溶媒が、エチレングリコール、γ−ブチロラクトンおよびスルホランよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の電解コンデンサ。
  4. 前記第1溶媒と前記第2溶媒との質量割合が、3:7〜5:5である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電解コンデンサ。
  5. 前記導電性高分子が、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンおよびこれらの誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電解コンデンサ。
  6. 前記固体電解質層が、第3溶媒に前記導電性高分子が溶解した導電性高分子溶液、または、前記第3溶媒と前記導電性高分子の粒子とを含む導電性高分子分散液を、前記誘電体層の表面に付与した後、乾燥させることにより形成された、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電解コンデンサ。
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