JPWO2016136991A1 - 唾液中マーカータンパク質を用いた低栄養状態の判定方法、及びそれに使用する診断薬 - Google Patents

唾液中マーカータンパク質を用いた低栄養状態の判定方法、及びそれに使用する診断薬 Download PDF

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Abstract

本発明は、以下の工程を含む、低栄養状態リスクの検査方法を提供する:(1)ヒト被験者から単離された唾液における、Acidic mammalian chitinase及びPolymeric immunoglobulin receptorからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質又はそのペプチド断片の含有量を測定すること;並びに(2)(1)において測定した含有量と、被験者の低栄養状態リスクとを相関付けること。

Description

本発明は、低栄養状態の判定方法、及びそれに使用する診断薬等に関する。具体的には、本発明は、唾液中に存在するマーカータンパク質を用いた低栄養状態の判定方法、及び当該マーカータンパク質を特異的に認識する抗体を含む、低栄養状態を判定するための診断薬等に関する。
低栄養状態とは、人が生命を維持し、日常生活を営むために必要な栄養、特にエネルギー及び/又はタンパク質が不足している状態である。急激な体重の減少はみられないがタンパク質が欠乏し、血清アルブミン値が低下した状態(クワシオコル型)、筋肉や体脂肪の減少が見られ、体重が減少した状態(マラスムス型)、その両方がみられる状態(クワシオコル・マラスムス型)がある。このような低栄養状態のリスクの有無は、タンパク質及びエネルギーの欠乏状態を示す栄養指標である血清アルブミン値及び、BMIや体重の減少によって評価・判定される。
低栄養状態については統一された基準はないが、厚生労働省より以下の指標が出されている。
(1)BMI(体重÷身長2)が18.5未満
(2)6ヶ月以内に3%以上又は2〜3kgの体重減少がある
(3)血液検査の結果、血清アルブミン値が3.5g/dl以下
(4)食事摂取量が不良(75%以下)
(5)その他低栄養状態にある又はそのおそれが認められる者
このような状態は、不十分な食事摂取量に起因するものである。また、関連する問題として、(a)口腔及び摂食・嚥下機能、(b)生活機能の低下、(c)褥瘡、(d)食欲の低下、(e)閉じこもり、(f)認知症、(g)うつ等が挙げられており、これらの問題が把握される場合にも、適宜低栄養状態のリスクの確認をする必要がある。
低栄養は本人も周囲も気づきにくいものであり、現在、栄養状態の把握には健康診断等で体重の変化やBMI(体格指数)、血液検査の血清アルブミン値が有効な指標として用いられている。しかし、高齢者にとって血液検査は負担が大きいため、非侵襲の簡便な健康状態診断法が必要とされている。
検査検体として、最も一般的に用いられるのは血液である。一方、血液と比較して、採取が容易で且つ痛みを伴わない非侵襲性の検査検体として唾液を挙げることができる。唾液は、血液と異なり、赤血球、白血球、血小板などの細胞性の成分を含まず、凝固することがないので、採取した検体を容易に測定できる(非特許文献1)。
一方、唾液の欠点としては、唾液線から分泌された唾液は、食物や口腔内細菌由来の物質と混合されること、分泌量が必ずしも一定ではなく、個人差が激しいことが挙げられる。したがって、アミノ酸や代謝物、タンパク質などのバイオマーカーを探索する場合においては、食物や口腔内細菌由来、口腔内出血由来のアミノ酸、代謝物あるいはタンパク質と区別して、分析しなくてはならない。また、バイオマーカーが見いだされた場合においても、唾液分泌量の変動に対して、何らかの規格化が必要となる。
現在、歯科臨床で行われている唾液検査は、う蝕に関するもの(唾液量と緩衝能)、歯周病に関するもの(唾液中の潜血量、酵素量)、ストレスに関するもの(アミラーゼ、クロモグラニンA、コルチゾール)がある。正確なストレス評価を行うためには、血中や組織のストレスマーカーを計測することが必要であるが、被験者への精神的なストレスの少ない、唾液や尿、汗などの検体が望まれている。特に、唾液中のストレスマーカーは、近年、その測定キットが市販されたことにより、容易に測定できるようになってきた(非特許文献2)。
このように非侵襲の検体である唾液を対象として、心疾患や癌などの疾患に関わるバイオマーカーの探索が近年積極的に行われている。例えば、心疾患の危険度をモニタリングすることを目的として唾液中のアポリポプロテインA-1およびBのレベルを検出するための方法(特許文献1)や乳癌の診断予後判定をすることを目的として、VEGF、CEAおよびEGFを検出する方法がある(特許文献2)。これらは、血中で見出されたタンパク質マーカーを唾液に適用した例である。
近年、質量分析をもちいたタンパク質の網羅的解析法であるプロテオミクスという分析手法を用いたタンパク質バイオマーカーの探索研究が盛んであり、唾液中のタンパク質の網羅的解析により、疾患マーカーの探索研究もおこなわれているが、前述のとおり、食物、口腔内細菌および潜血由来タンパク質が多く存在することが、真の疾患マーカー探索の妨げとなっている。
慢性的なタンパク質不足により、唾液中のアミラーゼ活性が低下することが報告されている(非特許文献3)。
特表2002-539458号公報 特表2009-510395号公報
歯科における唾液検査 兼平孝、「日本口腔検査学会雑誌」、3(1):13-20(2011) :ストレスマーカーの迅速アッセイ、脇田慎一ら、「ぶんせき」、6、309-316(2004) R. R. Watson et al., J. Nutr. 110: 771-777, 1980
本発明は、採取が容易な非侵襲検体のひとつである唾液を用いた、患者に対する負担の少ない低栄養状態の診断技術を提供することである。
本発明者らは上記課題を解決すべく、低栄養状態との相関性を有する唾液中のタンパク質マーカーの探索を行った。唾液線から分泌された唾液は食物や口腔内細菌由来の物質と混合されるため、唾液由来のタンパク質のみを区別して分析する必要がある。また、唾液分泌量は必ずしも一定ではなく、個人差が激しい。そこで、これらの問題を解決するために、次のストラテジーで唾液中の上記タンパク質マーカーの探索を行った。
(1)食物等の影響を回避するために、モデル動物(ラット)の唾液線から直接採取した唾液を用いた定量プロテオーム解析を行い、個体差を軽減するための適切な規格化法を決定する(使用する唾液量、総タンパク質濃度等)。
(2)(1)の方法を用いて、通常食または低タンパク食を摂取させたラット唾液中タンパク質の種類及び量を比較し、低栄養状態のマーカー候補を探索する。
(3)選択されたマーカー候補が、ヒトにおいても低栄養状態のマーカーとなり得るか試験する。
その結果、唾液中の含有量が低栄養状態と良好に相関するタンパク質マーカーを抽出することに成功した。抽出されたタンパク質マーカーと、低栄養状態との関連性については、未だ報告がない。これらの知見に基づき、更に検討を進め、本発明を完成した。
即ち、本発明は以下に関する。
[1]以下の工程を含む、低栄養状態リスクの検査方法:
(1)ヒト被験者から単離された唾液における、Acidic mammalian chitinase及びPolymeric immunoglobulin receptorからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質又はそのペプチド断片の含有量を測定すること;並びに
(2)(1)において測定した含有量と、被験者の低栄養状態リスクとを相関付けること。
[2]低栄養状態が、タンパク質摂取量の不足によるものである、[1]の検査方法。
[3]工程(1)におけるタンパク質又はそのペプチド断片の含有量の測定を、免疫学的測定方法により行う、[1]又は[2]の検査方法。
[4]工程(1)において、配列番号1で表されるアミノ酸配列の第22番〜第476番アミノ酸からなるタンパク質又はそのペプチド断片の含有量を少なくとも測定する、[1]〜[3]のいずれか記載の検査方法。
[5]工程(1)において、配列番号2で表されるアミノ酸配列の第19番〜第603番アミノ酸からなるタンパク質又はそのペプチド断片の含有量を少なくとも測定する、[1]〜[3]のいずれか記載の検査方法。
[6]Acidic mammalian chitinase及びPolymeric immunoglobulin receptorからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質に特異的に結合する抗体を含む、低栄養状態リスクの診断薬。
[7]低栄養状態が、タンパク質摂取量の不足によるものである、[6]の診断薬。
[8]以下の(A)及び(B)を含む、低栄養状態の治療用キット:
(A)[6]又は[7]に記載の診断薬;及び
(B)タンパク質補給食品、総合アミノ酸製剤又は分岐鎖アミノ酸含有アミノ酸製剤。
[9]低栄養状態が、タンパク質摂取量の不足によるものである、[8]のキット。
[10]低栄養状態リスクの診断に使用するための、Acidic mammalian chitinase及びPolymeric immunoglobulin receptorからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質に特異的に結合する抗体。
[11]低栄養状態が、タンパク質摂取量の不足によるものである、[10]の抗体。
[12]低栄養状態リスクの診断薬の製造のための、Acidic mammalian chitinase及びPolymeric immunoglobulin receptorからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質に特異的に結合する抗体の使用。
[13]低栄養状態が、タンパク質摂取量の不足によるものである、[12]の使用。
[14]低栄養状態の治療に使用するための、以下の(A)及び(B)を含む組み合わせ:
(A)[6]又は[7]の診断薬;及び
(B)タンパク質補給食品、総合アミノ酸製剤又は分岐鎖アミノ酸含有アミノ酸製剤。
[15]低栄養状態が、タンパク質摂取量の不足によるものである、[14]の組み合わせ。
[16]低栄養状態の治療用キットの製造のための、以下の(A)及び(B)を含む組み合わせの使用:
(A)[6]又は[7]の診断薬;及び
(B)タンパク質補給食品、総合アミノ酸製剤又は分岐鎖アミノ酸含有アミノ酸製剤。
[17]低栄養状態が、タンパク質摂取量の不足によるものである、[16]の使用。
[18]以下の工程を含む、低栄養状態の改善方法:
(1)ヒト被験者から単離された唾液における、Acidic mammalian chitinase及びPolymeric immunoglobulin receptorからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質又はそのペプチド断片の含有量を測定すること;
(2)(1)において測定した含有量と、被験者の低栄養状態リスクとを相関付けること;及び
(3)被験者が低栄養状態にある可能性が高いと判定された場合、当該被験者に対して、栄養療法を施すこと。
[19]栄養療法が、タンパク質補給食品、総合アミノ酸製剤又は分岐鎖アミノ酸含有アミノ酸製剤の有効量の投与により行われる、[18]の方法。
[20]低栄養状態が、タンパク質摂取量の不足によるものである、[18]の方法。
本発明によれば、採血等の侵襲なしに、被験者が低栄養状態、特にタンパク質摂取量の不足による低栄養状態にあるか、判定することが可能である。
本発明によれば、被験者が低栄養状態、特にタンパク質摂取量の不足による低栄養状態にあるかを確認した上で、タンパク質補給食品、総合アミノ酸製剤や分岐鎖アミノ酸含有アミノ酸製剤投与、肉、大豆、乳製品等のタンパク質が豊富な食品の摂取、食事指導等の適切な対処をとることが可能である。
唾液中タンパク質相対定量値の補正法の検討結果を示す。各ドットは左から、以下を示す。●:2ヵ月齢通常食摂取ラット唾液。▲:2ヵ月齢低タンパク食摂取ラット唾液。○:12ヵ月齢通常食摂取ラット唾液。△:12ヵ月齢低タンパク食摂取ラット唾液。 表6の各タンパク質の、通常食摂取ラット又は低タンパク食摂取ラットの耳下腺唾液中の相対定量値を示す。各ドットは左から、以下を示す。●:2ヵ月齢通常食摂取ラット唾液。▲:2ヵ月齢低タンパク食摂取ラット唾液。○:12ヵ月齢通常食摂取ラット唾液。△:12ヵ月齢低タンパク食摂取ラット唾液。 12ヵ月齢ラット耳下腺唾液における、Cysteine-rich secretory protein 1(CRIS1_RAT)、Parotid secretory protein(PSP_RAT)、Acidic mammalian chitinase(CHIA_RAT)、Prolactin-inducible protein homolog (PIP_RAT)、Polymeric immunoglobulin receptor (PIGR_RAT)、Carbonic anhydrase 6 (CAH6_RAT)、Deoxyribonuclease-1(DNAS1_RAT)、Kalikrein-1(KLK1_RAT)及びRibonuclease pancreatic beta-type(RNS1B_RAT)の相対定量値。
1.低栄養状態リスクの検査方法
本発明は、以下の工程を含む、低栄養状態リスクの検査方法を提供するものである:
(1)被験者から単離された唾液における、Acidic mammalian chitinase及びPolymeric immunoglobulin receptorからなる群から選択される少なくとも1つ(1又は2つ)のマーカータンパク質又はそのペプチド断片の含有量を測定すること;並びに
(2)(1)において測定した含有量と、被験者の低栄養状態リスクとを相関付けること。
低栄養状態とは、動物が生命を維持し、日常生活を営むために必要な栄養、特にエネルギー及び/又はタンパク質が不足している状態をいう。低栄養状態には、急激な体重の減少はみられないがタンパク質が欠乏し、血清アルブミン値が低下した状態(クワシオコル型)、筋肉や体脂肪の減少が見られ、体重が減少した状態(マラスムス型)、その両方がみられる状態(クワシオコル・マラスムス型)がある。本発明の検査方法は、特にタンパク質摂取量の不足による低栄養状態(即ち、クワシオコル型又はクワシオコル・マラスムス型の低栄養状態)のリスクの検査に優れる。
本発明の方法における被験者は、ヒトである。特に、低栄養状態に陥る可能性があるヒト又は低栄養状態が疑われるヒトが、被験者となり得る。低栄養状態に陥る可能性があるヒト又は低栄養状態が疑われるヒトとしては、具体的には、高齢者(例えば65歳以上);認知症、うつ病等の精神疾患の患者;寝たきりの患者;食欲不振の患者;引きこもりの患者;褥瘡の患者;摂食又は嚥下機能が低下した患者;過激なダイエットを行ったヒト(特に女性);乳幼児等が挙げられる。また、低栄養状態に陥る可能性があるヒト又は低栄養状態が疑われるヒトとしては、厚生労働省より低栄養状態の指標として示された以下の基準のうちの少なくとも1つを満たすヒトが挙げられる。
(1) BMI(体重÷身長2)が18.5未満
(2) 6ヶ月以内に3%以上又は2〜3kgの体重減少がある
(3) 血液検査の結果、血清アルブミン値が3.5g/dl以下
(4) 食事摂取量が不良(75%以下)
本明細書において、唾液とは、口腔液を指し、唾液が口腔中のどの部分で分泌されるか、またはどのように集められるかを問わない。口腔液は、唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺、副腺等)又は口腔粘膜(歯肉粘膜、頬粘膜等)からの分泌物、又はこれらの混合物である。唾液には、安静時唾液及び刺激時唾液が包含される。安静時唾液は、例えば、吐唾法、ワッテ法等により採取することができる。刺激時唾液は、例えば、ガム法により採取することができる。唾液の採取方法は、当該技術分野において確立されており、当業者であれば、適宜選択することが可能である。
本発明の方法においては、被験者から単離された唾液における、Acidic mammalian chitinase及びPolymeric immunoglobulin receptorからなる群から選択される少なくとも1つ(1又は2つ)のマーカータンパク質又はそのペプチド断片の含有量を測定する(工程(1))。
ヒトAcidic mammalian chitinaseの代表的なアミノ酸配列を、配列番号1(成熟タンパク質:第22〜第476番アミノ酸)に示す。
ヒトPolymeric immunoglobulin receptorの代表的なアミノ酸配列を、配列番号2(分泌型タンパク質:第19〜第603番アミノ酸)に示す。
ペプチド断片の含有量を測定する場合、測定対象のペプチド断片の長さは、当該ペプチド断片が由来するマーカータンパク質を同定可能な限り特に限定されないが、通常7アミノ酸以上、好ましくは10アミノ酸以上である。
ペプチド断片が含まれる領域は、特に限定されないが、Polymeric immunoglobulin receptorの断片を測定する場合、ヒト唾液中には、配列番号2で表されるアミノ酸配列中の第19〜第603番アミノ酸の領域内のペプチド断片が検出されることが知られているため、当該領域内のペプチド断片を測定することが好ましい。
好適には、Acidic mammalian chitinaseについては成熟タンパク質の全長、Polymeric immunoglobulin receptorについては分泌型タンパク質の全長の唾液中含有量が測定される。
上記マーカータンパク質又はそのペプチド断片の含有量の測定方法は、特に限定されないが、唾液試料を、トリプシン等のエンドペプチダーゼで処理した上で、各種の分子量測定法、例えば、ゲル電気泳動や、各種の分離精製法(例:イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーなど)、イオン化法(例:電子衝撃イオン化法、フィールドディソープション法、二次イオン化法、高速原子衝突法、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法、エレクトロスプレーイオン化法など)、質量分析計(例:二重収束質量分析計、四重極型分析計、飛行時間型質量分析計、フーリエ変換質量分析計、イオンサイクロトロン質量分析計など)を組み合わせる方法等に供し、上記マーカータンパク質又はそれ由来のペプチド断片の分子量と一致するバンドもしくはスポット、あるいはピークを検出することにより行うことができる。あるいは、上記マーカータンパク質に特異的に結合する抗体を用いた免疫学的手法により、上記マーカータンパク質又はそのペプチド断片を定量することにより測定することができる。免疫学的手法においては、被検試料中の抗原量に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する。
後述する試験例に示すように、ラットにおいて、質量分析を用いてマーカータンパク質を断片化し、マーカータンパク質の全長とペプチド断片の総和を測定した場合、低栄養状態においては、Acidic mammalian chitinase及びPolymeric immunoglobulin receptorの唾液中含有量は減少したが、ヒトにおいて、免疫学的手法によりマーカータンパク質(成熟型又は分泌型)の全長を測定した場合には、逆に低栄養状態においてAcidic mammalian chitinase及びPolymeric immunoglobulin receptorの唾液中含有量は上昇したことから、マーカータンパク質の測定方法により、各マーカータンパク質と低栄養状態との相関関係に差異が生じる可能性がある。理論に束縛されるものではないが、この原因として、低栄養状態と良好な栄養状態との間で、これらのマーカータンパク質の分解度合が異なり、全長タンパク質は、良好な栄養状態よりも低栄養状態において、唾液中含有量が増加するが、分解断片は、低栄養状態よりも良好な栄養状態において、唾液中含有量が増加している可能性が考えられる。本発明の方法においては、ヒトにおいて良好な相関関係が確認された、各マーカータンパク質の成熟タンパク質の全長の唾液中含有量を測定する観点から、免疫学的手法が好適に用いられる。
免疫学的手法としては、サンドイッチ法、競合法、イムノメトリック法、ネフメトリー法、ウェスタンブロッティング、凝集法等を挙げることができる。
サンドイッチ法は測定対象の抗原と特異的に結合する2種類の抗体を使用する方法であり、例えば、片方の抗体をプレートやビーズ等の固相に固定化したものに試料溶液を反応させ、試料中の抗原を固相上の抗体と結合させた後、酵素、ビオチン、放射性同位元素、蛍光物質等で標識したもう一方の抗体を反応させて、固相上の抗体と結合した抗原にさらに該標識抗体を結合させ、該標識抗体の結合量を標識物質を利用して測定し、その結合量から本抗原を定量する方法があげられる。例えば、5〜10点の濃度を決めた抗原の溶液を調製し、この溶液を試料溶液とした場合の、標識抗体への結合量を測定して、抗原の濃度と標識の結合量をプロットした検量線を作成し、抗原を定量する試料溶液についての、標識抗体の結合量を検量線にあてはめることにより、試料溶液の抗原を定量することができる。
競合法では、被検試料中の抗原と標識抗原とを抗体に対して競合的に反応させた後、未反応の標識抗原(F)と、抗体と結合した標識抗原(B)とを分離し(B/F分離)、B、Fいずれかの標識量を測定し、被検試料中の抗原量を定量する。本反応法には、抗体として可溶性抗体を用い、B/F分離をポリエチレングリコール、前記抗体に対する第2抗体などを用いる液相法、および、第1抗体として固相化抗体を用いるか、あるいは、第1抗体は可溶性のものを用い第2抗体として固相化抗体を用いる固相化法とが用いられる。
イムノメトリック法では、被検試料の抗原と固相化抗原とを一定量の標識化抗体に対して競合反応させた後固相と液相を分離するか、あるいは、被検試料中の抗原と過剰量の標識化抗体とを反応させ、次に固相化抗原を加え未反応の標識化抗体を固相に結合させた後、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し被検試料中の抗原量を定量する。
ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の量を測定する。被検試料中の抗原量が僅かであり、少量の沈降物しか得られない場合には、レーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
ウェスタンブロットは、試料に含まれるタンパク質およびペプチドをSDS−ポリアクリルアミドゲルで分離した後、ゲルからポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜、ニトロセルロース膜等にタンパク質およびペプチドをブロットし、酵素、ビオチン、放射性同位元素等で標識した抗体を反応させた後、標識物質を利用して抗体を検出し、膜上の抗原を検出する方法である。
凝集法は、抗体を固定化したラテックス等の粒子と、試料溶液とを反応させて、試料中の抗原に粒子上の抗体が結合することにより生ずる粒子の凝集を、吸光度の測定により検出または定量する方法である。
本明細書において、抗体の抗原Agへの「特異的な結合」とは、抗原抗体反応における、抗体の抗原Agに対するアフィニティが、コントロール(例、BSA)に対するアフィニティよりも強いことを意味する。
一態様において、抗原抗体反応における、本発明において使用する抗体の抗原(即ち、ヒトAcidic mammalian chitinase又はヒトPolymeric immunoglobulin receptor)に対する結合親和性についてのK値が1×10−7M以下(例えば、1×10−8M以下、1×10−9M以下、1×10−10M以下、1×10−11M以下)である。
上記マーカータンパク質へ特異的に結合する抗体が認識するエピトープは、当該マーカータンパク質又はそのペプチド断片を免疫学的方法により定量可能な限り特に限定されないが、例えば、以下の領域内にエピトープを有する抗体が使用される。
Acidic mammalian chitinase:配列番号1で表されるアミノ酸配列における、第22〜50番、第25〜75番、第50〜100番、第75〜125番、第100〜150番、第125〜175番、第150〜200番、第175〜225番、第200〜250番、第225〜275番、第250〜300番、第275〜325番、第300〜350番、第325〜375番、第350〜400番、第375〜425番、第400〜450番、又は第425〜476番アミノ酸。
Polymeric immunoglobulin receptor:配列番号2で表されるアミノ酸配列における、第19〜50番、第25〜75番、第50〜100番、第75〜125番、第100〜150番、第125〜175番、第150〜200番、第175〜225番、第200〜250番、第225〜275番、第250〜300番、第275〜325番、第300〜350番、第325〜375番、第350〜400番、第375〜425番、第400〜450番、第425〜476番、第450〜500番、第475〜525番、第500〜550番、第525〜575番、第550〜603番、又は第575〜603番アミノ酸。
各マーカータンパク質の全長を好感度で検出し、測定結果への分解断片の影響をできる限り排除する観点から、免疫学的手法においては、抗原の捕捉と、捕捉した抗原の検出に、それぞれ異なるエピトープを認識する抗体を組み合わせて用いることが好ましい。例えば、各エピトープは、上述した領域中、それぞれ異なる領域内に存在する。各マーカータンパク質の全長を検出し、測定結果への分解断片の影響をできる限り排除する観点から、2つの抗体が認識するエピトープはできる限り離れて存在していることが好ましい。Acidic mammalian chitinaseを測定する場合、エピトープ間の距離は、例えば、50アミノ酸以上、好ましくは100アミノ酸以上、200アミノ酸以上、300アミノ酸以上、又は400アミノ酸以上である。Polymeric immunoglobulin receptorを測定する場合、エピトープ間の距離は、例えば、50アミノ酸以上、好ましくは100アミノ酸以上、200アミノ酸以上、300アミノ酸以上、400アミノ酸以上、500アミノ酸以上、又は550アミノ酸以上である。
上記マーカータンパク質に特異的に結合する抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれであってもよく、周知の方法により作製することができる。また、該抗体には完全抗体分子だけでなくその結合性断片も包含される。結合性断片とは、特異的結合活性を有する前述の抗体の一部分の領域を意味する。結合性断片としては例えばF(ab’)、Fab’、Fab、Fv、sFv、dsFv、sdAb等が挙げられる。例えば、ポリクローナル抗体は、上記タンパク質又はその部分ペプチド(必要に応じて、ウシ血清アルブミン、KLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)等のキャリアータンパク質に架橋した複合体とすることもできる)を抗原として、市販のアジュバント(例えば、完全または不完全フロイントアジュバント)とともに、動物の皮下あるいは腹腔内に2〜3週間おきに2〜4回程度投与し(部分採血した血清の抗体価を公知の抗原抗体反応により測定し、その上昇を確認しておく)、最終免疫から約3〜約10日後に全血を採取して抗血清を精製することにより取得できる。抗原を投与する動物としては、ラット、マウス、ウサギ、ヤギ、モルモット、ハムスターなどの哺乳動物が挙げられる。
また、モノクローナル抗体は、細胞融合法等により作成することができる。例えば、上記タンパク質もしくはその部分ペプチドを市販のアジュバントと共にマウスに2〜4回皮下あるいは腹腔内に投与し、最終投与の約3日後に脾臓あるいはリンパ節を採取し、白血球を採取する。この白血球と骨髄腫細胞(例えば、NS−1,P3X63Ag8など)を細胞融合して該ペプチドに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得る。細胞融合はPEG法、電圧パルス法等により実施することができる。所望のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、周知のEIAまたはRIA法等を用いて抗原と特異的に結合する抗体を、培養上清中から検出することにより選択できる。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの培養は、インビトロ、またはマウスもしくはラット、このましくはマウス腹水中等のインビボで行うことができ、抗体はそれぞれハイブリドーマの培養上清および動物の腹水から取得することができる。測定系の安定性の観点からは、モノクローナル抗体が好適に用いられる。
一態様において、唾液中に含まれる特定のマーカータンパク質又はそのペプチド断片の総量を高感度で測定可能なように、当該マーカータンパク質の全長(例えば、成熟タンパク質の全長又は分泌型タンパク質の全長)を含むポリペプチドを免疫することにより得られるポリクローナル抗体が、免疫学的測定方法において採用される。
次に、工程(1)において測定した含有量と、被験者の低栄養状態リスクとを相関付ける。
唾液サンプルは、サンプル間の総タンパク質濃度の変動が大きいので、相関付けに際しては、工程(1)において測定した含有量を補正することが好ましい。補正の基準としては、(i)総タンパク質濃度、(ii) 使用唾液量、(iii) 総タンパク質濃度及び使用唾液量、(iv) 栄養状態による変動の少ないマーカータンパク質の唾液中含有量等を挙げることができるが、好ましくは、総タンパク質濃度を基準に補正する。例えば、工程(1)において測定した唾液サンプル中のマーカータンパク質又はそのペプチド断片の濃度を、当該サンプルの総タンパク質濃度で除することにより、単位タンパク質量あたりの相対的含有量を算出し、この相対的含有量と被験者の低栄養状態リスクとを相関付ける。従って、総タンパク質濃度を基準に補正する場合、工程(1)においては、各唾液サンプルの総タンパク質濃度を併せて測定することが好ましい。
例えば、測定したマーカータンパク質又はそのペプチド断片の含有量を、健常者(栄養状態が良好なヒト)における当該マーカータンパク質又はそのペプチド断片の含有量と比較する。あるいは、マーカータンパク質又はそのペプチド断片の含有量を、あらかじめ求めておいた、栄養状態が良好なヒトにおける当該マーカータンパク質又はそのペプチド断片の含有量の平均値、低栄養状態の患者における当該マーカータンパク質又はそのペプチド断片の含有量の平均値、栄養状態とマーカータンパク質又はそのペプチド断片の含有量の相関図などと比較してもよい。マーカータンパク質又はそのペプチド断片の含有量の比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行われる。
後述の実施例に示すように、低栄養状態にあるヒトにおいては、栄養状態が良好なヒトと比較して、Acidic mammalian chitinase、及びPolymeric immunoglobulin receptorの唾液中の含有量が高かった。即ち、Acidic mammalian chitinase、及びPolymeric immunoglobulin receptorの唾液中の含有量と、栄養状態との間の負の相関に基づき、低栄養状態のリスクを検査することができる。例えば、Acidic mammalian chitinase、及びPolymeric immunoglobulin receptorからなる群から選択される少なくとも1つのマーカータンパク質又はそのペプチド断片の唾液中含有量が、相対的に高い場合には、被験者は、低栄養状態(好ましくは、タンパク質摂取量の不足による低栄養状態)にある可能性が高いと判定することができる。
また、上記各マーカータンパク質又はそのペプチド断片の唾液中含有量のカットオフ値をあらかじめ設定しておき、測定した含有量とこのカットオフ値とを比較してもよい。例えば、Acidic mammalian chitinase、及びPolymeric immunoglobulin receptorについては、当該マーカータンパク質又はそのペプチド断片の唾液中含有量が、前記カットオフ値を上回る場合、被験者が低栄養状態(好ましくは、タンパク質摂取量の不足による低栄養状態)にある可能性が高いと判定することができる。
「カットオフ値」は、その値を基準として治療の有効性の判定をした場合に、高い診断感度及び高い診断特異度の両方を満足できる値である。例えば、低栄養状態のヒトで高い陽性率を示し、かつ、栄養状態が良好なヒトで高い陰性率を示す、マーカータンパク質又はそのペプチド断片の唾液中含有量をカットオフ値として設定することが出来る。
カットオフ値の算出方法は、この分野において周知である。例えば、低栄養状態のヒト及び栄養状態が良好なヒトの、各マーカータンパク質又はそのペプチド断片の唾液中含有量を測定し、測定された値における診断感度および診断特異度を求め、これらの値に基づき、市販の解析ソフトを使用してROC(Receiver Operating Characteristic)曲線を作成する。そして、診断感度と診断特異度が可能な限り100%に近いときの値を求めて、その値をカットオフ値とすることができる。また、例えば、検出された値における診断効率(全症例数に対する、低栄養状態のヒトを「低栄養状態」と正しく判定した症例と、栄養状態が良好なヒトを「栄養状態良好」と正しく判定した症例との合計数の割合)を求め、最も高い診断効率が算出される値をカットオフ値とすることができる。
尚、本発明の方法においては、被験者の唾液中の、Acidic mammalian chitinase、及びPolymeric immunoglobulin receptorからなる群から選択される少なくとも1つマーカータンパク質又はそのペプチド断片の含有量を測定すれば足りるが、これらのマーカータンパク質の両方の含有量を測定し、低栄養状態リスクと相関付けることにより、より高い精度での、低栄養状態リスクの判定が期待できる。複数マーカーを測定する場合、少なくとも1つのマーカーの測定結果に基づき、被験者が低栄養状態にある可能性が高いとの判定がなされた場合には、仮に他方のマーカーに基づき、これとは異なる判定がなされたとしても、「被験者が低栄養状態にある可能性が高い」との判定が優先される。また、Acidic mammalian chitinase及びPolymeric immunoglobulin receptorの両方のマーカータンパク質又はそのペプチド断片の唾液中含有量が、相対的に高い場合には、被験者は、低栄養状態(好ましくは、タンパク質摂取量の不足による低栄養状態)にある可能性がより高いと判定することができる。
更に、唾液中のAcidic mammalian chitinase及びPolymeric immunoglobulin receptorタンパク質又はそのペプチド断片の含有量に加えて、低栄養と有意な相関を示す可能性のある唾液中の他のタンパク質(例、アルファアミラーゼ、Cysteine-rich secretory protein 1、Parotid secretory protein、Prolactin-inducible protein homolog、Carbonic anhydrase 6等)又はそのペプチド断片の含有量や、他の低栄養の指標(例、BMI、栄養アセスメント(MNA等)、血中アルブミン又はプレアルブミン濃度)と組み合わせて、低栄養状態リスクと相関付けることにより、より高い精度での、低栄養状態リスクの判定が期待できる。
2.低栄養状態の改善方法
上記本発明の検査方法において、被験者が低栄養状態にある可能性が高いと判定された場合、当該被験者に対して、栄養療法を施すことにより、低栄養状態を改善することができる。従って、本発明は、このような低栄養状態の改善方法をも提供するものである。本明細書において、栄養療法とは、不足している栄養素を補充することを意味する。上記本発明の検査方法は、特にタンパク質摂取量の不足による低栄養状態(即ち、クワシオコル型又はクワシオコル・マラスムス型の低栄養状態)のリスクの検査に優れているので、当該検査において、被験者が、タンパク質摂取量の不足による低栄養状態にある可能性が高いと判定された場合、当該被験者に対して、例えば、タンパク質補給食品、総合アミノ酸製剤、分岐鎖アミノ酸(BCAA)(L-ロイシン、L-イソロイシン及びL-バリン)含有アミノ酸製剤の有効量の投与、肉、大豆、乳製品等のタンパク質が豊富な食品の摂取、食事指導等の適切な対処を行う。総合アミノ酸製剤とは、一般的には、L-ロイシン、L-イソロイシン、L-バリン、L-リジン、L-トレオニン、L-トリプトファン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-シスチン、L-システイン、L-チロシン、L-アルギニン、L-ヒスチジン、L-アラニン、L-プロリン、アミノ酢酸、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸のうち、少なくとも11種(例えば、11、12、13、14、15、16、17又は18種)(好ましくは、必須アミノ酸(L-トリプトファン、L-リジン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-トレオニン、L-バリン、L-ロイシン、L-イソロイシン、及びL-ヒスチジン)をすべて含む)を含有する製剤を意味する。総合アミノ酸製剤の剤型は、注射剤、輸液等の非経口製剤が一般的である。総合アミノ酸製剤のアミノ酸含有量は、好ましくは、5重量%以上、より好ましくは9重量%以上である。総合アミノ酸製剤の乾燥時のアミノ酸含有量は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上である。総合アミノ酸製剤としては、モリアミンS、モリプロンF、アミニック、ネオアミユー(以上、味の素社)等が挙げられるが、これらに限定されない。分岐鎖アミノ酸含有アミノ酸製剤とは、L-ロイシン、L-イソロイシン及びL-バリンを含有するアミノ酸製剤を意味する。分岐鎖アミノ酸含有アミノ酸製剤の剤型は、顆粒、粉末、ゼリー等の経口製剤が一般的である。分岐鎖アミノ酸含有アミノ酸製剤のアミノ酸含有量は、好ましくは、3重量%以上、より好ましくは5重量%以上である。総合アミノ酸製剤の乾燥時のアミノ酸含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。分岐鎖アミノ酸含有アミノ酸製剤においては、含有される全てのアミノ酸のうち、分岐鎖アミノ酸の割合が、好ましくは20重量%以上、より好ましくは25重量%以上である。一態様において、分岐鎖アミノ酸含有アミノ酸製剤に含有されるアミノ酸は、L-ロイシン、L-イソロイシン及びL-バリンのみである。分岐鎖アミノ酸含有アミノ酸製剤としては、アミノバイタルシリーズ(味の素社);リーバクト顆粒、リーバクトゼリー(味の素製薬)等が挙げられるが、これらに限定されない。タンパク質補給食品とは、タンパク質が不足している者に対してこれを補うことを目的とする食品をいう。タンパク質補給食品中のタンパク質含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは4重量%以上である。タンパク質補給食品の乾燥時のタンパク質含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上である。タンパク質補給食品としては、メディエフバック(味の素社)等が挙げられるが、これに限定されない。
3.低栄養状態リスクの診断薬
本発明は、Acidic mammalian chitinase、及びPolymeric immunoglobulin receptorからなる群から選択される少なくとも1つ(1又は2つ)のマーカータンパク質に対して特異的に結合する抗体を含む、低栄養状態リスクの診断薬を提供するものである。本発明の診断薬を用いれば、上記本発明の検査方法により、低栄養状態リスクを検査することが可能となる。
各マーカータンパク質、抗体を含む各用語の定義は、特に言及しない限り、上記1及び2に記載したものと同一である。
当該抗体が認識するエピトープは、上記マーカータンパク質又はそのペプチド断片を免疫学的方法により定量可能な限り特に限定されない。例えば、上述の各領域内に含まれるエピトープを認識する抗体が用いられる。
上述のように、各マーカータンパク質の全長を好感度で検出し、測定結果への分解断片の影響をできる限り排除する観点から、抗原の捕捉と、捕捉した抗原の検出のために、それぞれ異なるエピトープを認識する抗体を組み合わせて用いることが好ましい。
一態様において、唾液中に含まれる特定のマーカータンパク質又はそのペプチド断片の総量を高感度で測定可能なように、当該マーカータンパク質の全長(例えば、成熟タンパク質の全長)を含むポリペプチドを免疫することにより得られるポリクローナル抗体が用いられる。
本発明の診断薬に含まれる抗体は、標識剤により標識されていてもよい。標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質、ビオチンなどが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、125I、131I、H、14Cなどが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。
上記抗体は、適切な支持体の上に固相化して提供してもよい。支持体としては、当該分野で通常用いられている支持体であれば特に限定されず、例えば、マイクロプレート(例、96穴プレート)、ビーズ、メンブレン(例えば、ナイロン膜)、アレイチップなどが挙げられる。
本発明の診断薬は、唾液採取に用いるチューインガム、パラフィンワックス、ロールワッテ、ガーゼ、採唾器等更に含んでいてもよい。
本発明の診断薬は、免疫学的測定方法の種類に応じて、標識二次抗体、発色基質、ブロッキング液、洗浄緩衝液、ELISAプレート、ブロッティング膜等をさらに含むことができる。
本発明の診断薬に含まれる各構成要素は、適宜、各々別個に(あるいは可能であれば混合した状態で)水もしくは適当な緩衝液(例:TEバッファー、PBSなど)中に適当な濃度となるように溶解されるか、あるいは凍結乾燥された状態で、適切な容器中に収容される。
4.低栄養状態の治療用キット
また、本発明は、上記本発明の診断薬、及びタンパク質補給食品、総合アミノ酸製剤又は分岐鎖アミノ酸含有アミノ酸製剤を組み合わせて含む、キットを提供するものである。本発明のキットは、低栄養状態の治療用キットであり得る。本発明のキットを用いることにより、被験者の低栄養状態リスクを上記本発明の検査方法により予測した上で、低栄養状態(好ましくは、タンパク質摂取量の不足による低栄養状態)にある可能性が高いと判断された患者に対してタンパク質補給食品、総合アミノ酸製剤、又は分岐鎖アミノ酸含有アミノ酸製剤投与による治療を施すことが可能である。
本発明のキットに関連する各用語の定義は、上記1、2及び3の項で述べた通りである。
本明細書中で挙げられた特許及び特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、本明細書での引用により、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
[試験例1] 低栄養モデルラットを用いた低栄養状態の唾液中バイオマーカータンパク質候補の同定
(I.実験方法)
1. 唾液採取
1.1. ラット唾液採取
SD雄性ラットを日本チャールス・リバー(株)より購入し、九州歯科大学内動物施設にて、飼育した。6週齢および12ヵ月齢のラットに、AIN93Gを一部改変した通常食、または通常食のタンパク質含量を20%から1%に変更した低タンパク食をそれぞれ2週間給餌した(表1, 各n=7)。飼育終了後、ネンブタール(60mg/kg, i.p.)麻酔下にて、気管にカニューレを装着し、ピロカルピン(非選択的ムスカリン受容体刺激薬, 5mg/kg, i.p.)およびイソプロテレノール(アドレナリン作動薬, 5mg/kg, i.p.)刺激により分泌された耳下腺唾液および顎下腺/舌下腺唾液を採取した(30分間)。唾液には採取後すぐに、プロテアーゼインヒビターを添加した。耳下腺唾液は、両側の唾液腺導管にテフロンチューブ(ユニークメディカルUT-02)を挿入し、左右の耳下腺唾液からそれぞれ採取した。また、顎下腺/舌下腺唾液は、口腔内に分泌された唾液をピペットで吸い取り採取した。したがって、顎下腺/舌下腺唾液は、小唾液腺も含む耳下腺唾液以外の唾液の総称である。唾液採取終了後、心臓より採血し、ネンブタール深麻酔によりラットを安楽死させた。血液は、抗血液凝固薬(ノンクロット)を添加後に、3000rpmで15分間遠心し、血漿を分離した。富士ドライケムを用いて、血漿中のアルブミン値を測定した。ピロカルピン・イソプロテノールによる刺激後、30分間の唾液採取中に死亡した動物は、除外した。
実際に使用したラット唾液サンプルのリストを表2、3に示す。(耳下腺唾液は、2ヵ月齢(通常状態)14検体、2ヵ月齢(低栄養状態)7検体、12ヵ月齢(通常状態)6検体、12ヵ月齢(低栄養状態)3検体 計30検体を使用。顎下腺唾液は、2ヵ月齢(通常状態)7検体、2ヵ月齢(低栄養状態)6検体、12ヵ月齢(通常状態)5検体、12ヵ月齢(低栄養状態)3検体 計21検体を使用。)
2. タンパク質定量
唾液中のタンパク質濃度の定量は、一般的なBradford法を用いて実施した。
3. 唾液タンパク質のプロテオーム解析:
3.1. 還元カルボキシメチル化及びトリプシン消化
約0.05mgのタンパク質を含む唾液サンプルを1.5mLテストチューブに分注し、減圧遠心濃縮機にて乾固させた。その後、0.05% SDS、5mM EDTA、8M 尿素を含む200mMトリス−塩酸緩衝液(pH 8.5、以下“トリス−塩酸緩衝液”) 18.7μlに溶解し、40mM DTT溶液(トリス−塩酸緩衝液に溶解) 1.3μl( 8.0μg、52.0nmol )を加えて55℃で15分、続いて超純水7.5μl、60mMモノヨード酢酸水溶液 2.5μl(27.9μg、150pmol)を添加し遮光下、室温で30分間反応させた。その後、トリス−塩酸緩衝液 17μl、超純水35.5μlを加えた後、トリプシン水溶液(200μg/ ml) 2.5μlを添加し、37℃で24時間酵素消化した。消化後サンプルは分注後-80℃で保存し、iTRAQ修飾直前に溶解した。
3.2. iTRAQ修飾
iTRAQ試薬4種(114, 115, 116, 117)の各容器にエタノール70μlを加えて溶解し、0.6mLテストチューブに分注した。その後、トリス−塩酸緩衝液6.5μl、超純水8.5μl、及び還元カルボキシメチル化後トリプシン消化を行った唾液サンプルを35μl加えて室温で2時間反応させた。反応後、iTRAQ修飾を行った唾液サンプル4種類(114, 115, 116, 117)の溶液を別の0.6mLテストチューブにて混合し、その内18.2μlに0.01%TFA/2%アセトニトリル溶液1281.8μlを加え、2次元ナノLC-MS/MS測定(島津製作所 Prominence nanoシステム)に使用した。質量分析は、エレクトロスプレーイオン化法により行った。
4. 質量分析結果を用いたタンパク質同定
サンプル毎に2次元ナノLC-MS/MS測定を3回ずつ実施し、得られた各MSスペクトル、CIDスペクトルについて、タンパク質同定ソフトMascot ver2.4.1を用いてデータベース検索を行った。
5. iTRAQ法の定量データ解析手法
5.1. ラット唾液中のバイオマーカー候補タンパク質リストの作成
データベース検索の結果をげっ歯類の種類毎にまとめ(ラット、マウス等)、同じタンパク質名がある場合は、ラット由来のものを残した。ラット由来タンパク質がない場合はマウス由来を、ラット、マウス由来タンパク質共にない場合はProtein Score値の最も大きい由来のものを残した。Protein Scoreとは、タンパク質同定の確度を示す値をいい、高いほど確度が高い。
5.2. ラット唾液中のバイオマーカー候補タンパク質の定量結果まとめ
1)全ての実験で、2ヵ月齢の通常食摂取ラット唾液の混合サンプルの値を基準にして、各唾液サンプルのタンパク質相対定量値(iTRAQリポーターイオン強度比)を基準化した。
2)さらに、上記相対定量値について、(i)総タンパク質濃度、(ii)使用唾液量、(iii)総タンパク質濃度及び使用唾液量の3種で補正し、結果を比較し、最適な補正法を検討した。
3)規格化・補正したタンパク質相対定量値の月齢間の比較(2ヵ月齢、12ヵ月齢)、及び栄養状態の比較(通常食摂取、低タンパク食摂取)を行い、個体差に関わらず強度比の差の大きい(変動の大きい)タンパク質と強度比の差の小さい(変動の小さい)タンパク質をバイオマーカー候補として抽出した。
5.3. ラット唾液中に含まれるバイオマーカー候補タンパク質由来ペプチドの絞り込み
決定したバイオマーカー候補タンパク質について、実際に存在しているペプチド配列部分を絞り込むために、実験で観測されたペプチドを以下の手順で抽出した。
1)ラット耳下腺唾液、及び顎下腺唾液サンプルについてiTRAQ法にてタンパク質が同定されたペプチド配列の中から、バイオマーカー候補タンパク質のUniprot IDを持つペプチドのみを抽出し、同じ配列のペプチドが存在する場合は1つにまとめた。
2)還元カルボキシメチル化後トリプシン消化したラット耳下腺唾液、顎下腺唾液、及び舌下腺唾液に含まれるタンパク質の網羅的解析で同定されたバイオマーカー候補タンパク質について、同様に、同定に用いられたペプチド配列をリスト化した。
3)上記、2つの解析結果をまとめ、ラット唾液由来バイオマーカー候補由来タンパク質のペプチドリストとした。
(II.結果)
1. 唾液サンプルのタンパク質定量
ラット耳下腺、顎下腺より摂取した唾液サンプル中の総タンパク質濃度をBradford法により定量した(表4、5)。
表4、5より、最もタンパク質濃度の低い唾液サンプルの総タンパク質量0.05mgに相当する唾液量をプロテオーム解析のサンプル量と規定し、全ての耳下腺、または顎下腺唾液サンプルについて等量で還元カルボキシメチル化、及びトリプシン消化を行った。ラット耳下腺唾液ではラット番号570Lのタンパク質濃度を元に8μl、ラット顎下腺唾液ではラット番号570を元に77μlを使用した。
2. ラット唾液中タンパク質の相対定量値補正法の検討
ラット耳下腺唾液に含まれる5種類のタンパク質(Acidic mammalian chitinase(CHIA_RAT)、Carbonic anhydrase 6 (C4H6_RAT)、Cysteine-rich secretory protein 1(CRIS1_RAT)、 Parotid secretory protein(PSP_RAT)、及びDeoxyribonuclease-1(DNAS1_RAT))の相対定量値を用いて、(i) 総タンパク質濃度、(ii) 使用唾液量、(iii) 総タンパク質濃度及び使用唾液量の3種で最適な補正法を検討した。その結果を図1に示す。
図1の結果より、個体によるばらつきの最も小さい補正法は“(i)総タンパク質濃度”であることが分かった。従って、これ以降、唾液サンプルの相対定量値は総タンパク質濃度で補正を行うこととした。
3. ラット耳下腺唾液中タンパク質の相対定量値を用いた栄養状態の比較
ラット耳下腺唾液中タンパク質の相対定量値を規格化・補正後、栄養状態の比較を行った。結果より、ラット耳下腺唾液において栄養状態の違いで相対定量値に差の見られたタンパク質を表6に示す。
ラット耳下腺唾液において栄養状態で差の見られたタンパク質の相対定量値を図2にまとめた。図2より、栄養状態による相対定量値の差が特に大きいタンパク質が6種(表6中のNo.2、5、9、10、18、21)、差が小さいタンパク質が3種(表6中のNo.6、13、14)存在することが分かった。それぞれのタンパク質について、12ヵ月齢ラット耳下腺唾液の相対定量値をまとめたものを図3に示す。図3より、栄養状態による差の大きいタンパク質6種(Cysteine-rich secretory protein 1、Parotid secretory protein、Acidic mammalian chitinase、Prolactin-inducible protein homolog、Polymeric immunoglobulin receptor、Carbonic anhydrase 6)、及び差の小さいタンパク質3種(Deoxyribonuclease-1、Kalikrein-1及びRibonuclease pancreatic beta-type)の相対定量値は、個体差に関わらず同じ挙動を示すことが確認された。従って、これらのタンパク質は低栄養状態の唾液バイオマーカータンパク質として有用であると考えられた。
[試験例2] ヒト唾液中の低栄養バイオマーカータンパク質の測定
高齢者(ヒト)における、試験例1で同定されたバイオマーカータンパク質候補の唾液中の含有量と既存の低栄養指標との関連を検討し、低栄養マーカーとしての可能性を検証した。
I.方法
1.対象者
(1)選択基準
簡易栄養状態評価票(MNA-SF)で低栄養(0-7ポイント) または栄養状態良好(12-14ポイント)と判定された、65歳以上の高齢者ボランティアを対象として試験を行った。
(2)除外基準
以下のいずれかの基準に該当する者は、試験対象から除外した:
(a) 残歯が13本以下で、歯科医がかみ合わせ不良と認めた者;
(残歯数の者は、唾液分泌量が少なく、採取が困難なため)
(b) 採取した唾液に血液が混じっている者;
(c) 現在歯科治療中の者;
(d) 発熱のある者、又は風邪などの急性感染症にかかっている者;及び
(e) 上記以外で試験担当者が不適当と認めた者。
2.調査項目
(1)全唾液
朝食後に歯磨き又は口腔ケアを行った。2時間後の10〜12時に唾液を採取した。採取前2時間は、絶食及び絶飲水とした。
唾液の採取は、サリベットの唾液採取用チューブを用いて行った。サリベットの脱脂綿を口に含み、1分間咀嚼し、3分以上経過後、チューブを回収し、脱脂綿中に含まれる唾液を遠心分離することにより、唾液を採取した。2本目のチューブ中の唾液を試験に使用した。
唾液中のAcidic mammalian chitinase及びPolymeric immunoglobulin receptorの濃度をELISAにより測定した。使用したELISAキットは以下の通りである。
Acidic mammalian chitinase:CUSABIO EL005348HU
Polymeric immunoglobulin receptor:USCN Life Science SEB074Hu
Acidic mammalian chitinaseについては、唾液サンプルを5倍に希釈してから、ELISAに供した。Polymeric immunoglobulin receptorについては、唾液サンプルを希釈せずに、ELISAに供した。
測定した唾液中の各マーカータンパク質濃度を、唾液中総タンパク質(TP)濃度で補正した。
(2)血液
試験前日の夕食後から絶食し、試験当日の朝食前に採血した。血液中のアルブミン及びプレアルブミン濃度の測定は、歯科医師会の検査担当部へ依頼した。
(3)栄養アセスメント
各対象者について、簡易栄養状態評価表(MNA)を用いて栄養状態を評価した。
II.結果
1.対象者の特性
全部で39名の高齢者を評価した。対照者の特性を以下の表に示す。
2.マーカータンパク質と低栄養(MNA)
唾液中のAcidic mammalian chitinase及びPolymeric immunoglobulin receptorの含有量を、低栄養の対象者(MNA≦7)と、栄養状態が良好な対象者(MNA≧12)との間で比較した。結果を以下の表に示す。
表8に示す通り、Acidic mammalian chitinaseの唾液中含有量は、低栄養の対象者と栄養状態が良好な対象との間で、有意な差を示した。意外なことに、このマーカータンパク質の唾液中含有量は、ラットにおいては、低栄養状態において低下したが(試験例1)、ヒトにおいては、低栄養状態において逆に上昇した。MNAを低栄養の指標とした場合、Polymeric immunoglobulin receptorについては有意な差が認められなかった。
3.マーカータンパク質と低栄養(血中アルブミン濃度)
唾液中のAcidic mammalian chitinase及びPolymeric immunoglobulin receptorの含有量を、低栄養の対象者(Alb<3.5g/dL)と、栄養状態が良好な対象者(Alb≧3.5g/dL)との間で比較した。結果を以下の表に示す。
表9に示す通り、Acidic mammalian chitinase及びPolymeric immunoglobulin receptorの唾液中含有量は、低栄養の対象者と栄養状態が良好な対象との間で、有意な差を示した。意外なことに、これらのマーカータンパク質の唾液中含有量は、ラットにおいては、低栄養状態において低下したが(試験例1)、ヒトにおいては、低栄養状態において逆に上昇した。
4.マーカータンパク質と栄養指標との相関
唾液中のAcidic mammalian chitinase及びPolymeric immunoglobulin receptorの含有量と、各栄養指標(血中アルブミン濃度、血中プレアルブミン濃度、及びMNA)との相関を調べた。結果を以下の表に示す。
唾液中のAcidic mammalian chitinase及びPolymeric immunoglobulin receptorの含有量は、各栄養指標(血中アルブミン濃度、血中プレアルブミン濃度、及びMNA)と負の相関を示した。
本発明によれば、採血等の侵襲なしに、被験者が低栄養状態、特にタンパク質摂取量の不足による低栄養状態にあるか、判定することが可能である。
本発明によれば、被験者が低栄養状態、特にタンパク質摂取量の不足による低栄養状態にあるかを確認した上で、タンパク質補給食品、総合アミノ酸製剤や分岐鎖アミノ酸含有アミノ酸製剤投与、肉、大豆、乳製品等のタンパク質が豊富な食品の摂取、食事指導等の適切な対処をとることが可能である。
本出願は、日本で出願された特願2015-039357(出願日:2015年2月27日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。

Claims (20)

  1. 以下の工程を含む、低栄養状態リスクの検査方法:
    (1)ヒト被験者から単離された唾液における、Acidic mammalian chitinase及びPolymeric immunoglobulin receptorからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質又はそのペプチド断片の含有量を測定すること;並びに
    (2)(1)において測定した含有量と、被験者の低栄養状態リスクとを相関付けること。
  2. 低栄養状態が、タンパク質摂取量の不足によるものである、請求項1記載の検査方法。
  3. 工程(1)におけるタンパク質又はそのペプチド断片の含有量の測定を、免疫学的測定方法により行う、請求項1又は2に記載の検査方法。
  4. 工程(1)において、配列番号1で表されるアミノ酸配列の第22番〜第476番アミノ酸からなるタンパク質又はそのペプチド断片の含有量を少なくとも測定する、請求項1〜3のいずれか1項記載の検査方法。
  5. 工程(1)において、配列番号2で表されるアミノ酸配列の第19番〜第603番アミノ酸からなるタンパク質又はそのペプチド断片の含有量を少なくとも測定する、請求項1〜3のいずれか1項記載の検査方法。
  6. Acidic mammalian chitinase及びPolymeric immunoglobulin receptorからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質に特異的に結合する抗体を含む、低栄養状態リスクの診断薬。
  7. 低栄養状態が、タンパク質摂取量の不足によるものである、請求項6記載の診断薬。
  8. 以下の(A)及び(B)を含む、低栄養状態の治療用キット:
    (A)請求項6又は7に記載の診断薬;及び
    (B)タンパク質補給食品、総合アミノ酸製剤又は分岐鎖アミノ酸含有アミノ酸製剤。
  9. 低栄養状態が、タンパク質摂取量の不足によるものである、請求項8記載のキット。
  10. 低栄養状態リスクの診断に使用するための、Acidic mammalian chitinase及びPolymeric immunoglobulin receptorからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質に特異的に結合する抗体。
  11. 低栄養状態が、タンパク質摂取量の不足によるものである、請求項10記載の抗体。
  12. 低栄養状態リスクの診断薬の製造のための、Acidic mammalian chitinase及びPolymeric immunoglobulin receptorからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質に特異的に結合する抗体の使用。
  13. 低栄養状態が、タンパク質摂取量の不足によるものである、請求項12記載の使用。
  14. 低栄養状態の治療に使用するための、以下の(A)及び(B)を含む組み合わせ:
    (A)請求項6又は7に記載の診断薬;及び
    (B)タンパク質補給食品、総合アミノ酸製剤又は分岐鎖アミノ酸含有アミノ酸製剤。
  15. 低栄養状態が、タンパク質摂取量の不足によるものである、請求項14記載の組み合わせ。
  16. 低栄養状態の治療用キットの製造のための、以下の(A)及び(B)を含む組み合わせの使用:
    (A)請求項6又は7に記載の診断薬;及び
    (B)タンパク質補給食品、総合アミノ酸製剤又は分岐鎖アミノ酸含有アミノ酸製剤。
  17. 低栄養状態が、タンパク質摂取量の不足によるものである、請求項16記載の使用。
  18. 以下の工程を含む、低栄養状態の改善方法:
    (1)ヒト被験者から単離された唾液における、Acidic mammalian chitinase及びPolymeric immunoglobulin receptorからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質又はそのペプチド断片の含有量を測定すること;
    (2)(1)において測定した含有量と、被験者の低栄養状態リスクとを相関付けること;及び
    (3)被験者が低栄養状態にある可能性が高いと判定された場合、当該被験者に対して、栄養療法を施すこと。
  19. 栄養療法が、タンパク質補給食品、総合アミノ酸製剤又は分岐鎖アミノ酸含有アミノ酸製剤の有効量の投与により行われる、請求項18記載の方法。
  20. 低栄養状態が、タンパク質摂取量の不足によるものである、請求項18記載の方法。
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