JP2020139901A - スティーブンス・ジョンソン症候群及び/又は中毒性表皮壊死症の評価方法、評価のためのデータ取得方法、及び評価用キット - Google Patents

スティーブンス・ジョンソン症候群及び/又は中毒性表皮壊死症の評価方法、評価のためのデータ取得方法、及び評価用キット Download PDF

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真直 木下
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Abstract

【課題】評価対象がスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)及び/又は中毒性表皮壊死症(TEN)に罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを評価することができる評価方法、評価対象がSJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かの評価に用いることができるデータ取得方法、及び評価対象がSJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを評価することができる評価用キットを提供する。【解決手段】評価対象由来の試料における、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかの量を指標として、評価対象がSJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを評価する評価工程を含む評価対象がSJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを評価する方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、評価対象がスティーブンス・ジョンソン症候群及び/又は中毒性表皮壊死症に罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを評価する評価方法、評価対象がスティーブンス・ジョンソン症候群及び/又は中毒性表皮壊死症に罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを評価するためのデータを取得する方法、及び評価対象がスティーブンス・ジョンソン症候群及び/又は中毒性表皮壊死症に罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを評価するための評価用キットに関する。
薬疹とは、内服薬や注射薬などの投薬により皮膚粘膜の障害をきたす疾患である。特に重症薬疹は、全身の広範な表皮壊死を特徴とし、表皮壊死面積により、スティーブンス・ジョンソン症候群(Stevens−Johnson Syndrome、以下、「SJS」と称することがある。)と中毒性表皮壊死症(Toxic epidermal necrolysis、以下、「TEN」と称することがある。)に大別される。SJS及びTENは薬剤による健康障害の中で最重症であり、致死率が5〜30%と高率である。また、救命できても失明など重篤な後遺症を残す患者は多い。
SJS及びTENの病態は、CD8 T細胞による獲得免疫反応と、その後の全身に及ぶ広範な表皮細胞の壊死による生体バリアの崩壊であるが、獲得免疫反応から表皮細胞死に至るまでの一連の発症機序は不明であった。
SJS及びTENの治療としては、発熱や発疹などの初期症状を認めた場合に、原因と推定される医薬品の投与を直ちに中止することが最も重要で最良の治療法であるといわれており、早期診断が非常に重要である。
しかしながら、SJS及びTENに特徴的な症状(水疱、びらん、粘膜疹)が出現する前の発症初期の臨床像では、SJS及びTENと、皮疹のみ出現する通常薬疹とを的確に鑑別することが困難であるという問題がある。
そのため、SJS及び/又はTEN患者を早期に見つけ出し、迅速に治療することができれば、致死や失明に至る患者を減らすことができると考えられ、発症初期でも診断可能であり、簡易かつ迅速に診断できる技術の開発が期待されている。
これまでの技術としては、水疱内容液中のグラニュライシン(Granulysin)、血清中のFasリガンド(Fas ligand)が、SJS及びTENの早期診断の指標となり得ることが示唆されているが、感度などの問題により実用化に至っていない。
したがって、SJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを評価することができる新たな技術の速やかな提供が強く求められているのが現状である。
なお、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(Neutrophil gelatinase−associated lipocalin、以下、「NGAL」と称することがある。)は、癌に対するバイオマーカーとなり得ることが報告されている(例えば、特許文献1参照)が、SJS及び/又はTENのバイオマーカーとなり得ることは知られていない。
特表2009−527735号公報
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、評価対象がSJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを評価することができる評価方法、評価対象がSJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かの評価に用いることができるデータ取得方法、及び評価対象がSJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを評価することができる評価用キットを提供すること目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成するべく鋭意検討を行った結果、SJS及びTENにおける獲得免疫反応から表皮細胞死に至るまでの一連の発症機序を解明し、SJS及びTEN患者では、発症初期から、試料中のNGAL及びカテリシジン抗菌ペプチド(Cathelicidin antimicrobial peptide)LL−37(以下、「カテリシジン抗菌ペプチドLL−37」又は「LL−37」と称することがある。)の量が、SJS及び/又はTENに罹患していない個体由来の試料における量と比べて有意に上昇していることを知見した。
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 評価対象がSJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを評価する方法であって、
評価対象由来の試料における、NGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかの量を指標として、評価対象がSJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを評価する評価工程を含むことを特徴とする評価方法である。
<2> 前記評価工程において、前記試料中のNGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかの量が、(1)SJS及び/又はTENに罹患していない個体由来の試料におけるNGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかの量に基づく値よりも多い場合、及び(2)SJS及び/又はTEN罹患個体由来の試料におけるNGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかの量に基づく値と同量以上の場合の少なくともいずれかの場合に、評価対象がSJS及び/又はTENに罹患している又は発症する可能性を有すると評価する前記<1>に記載の評価方法である。
<3> 前記試料が、体液である前記<1>から<2>のいずれかに記載の評価方法である。
<4> 前記評価対象が、水疱、びらん、及び粘膜疹の少なくともいずれかの症状が出現していない評価対象である前記<1>から<3>のいずれかに記載の評価方法である。
<5> 前記試料におけるNGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかの量を測定する測定工程を含む前記<1>から<4>のいずれかに記載の評価方法である。
<6> 評価対象がSJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを評価するためのデータを取得する方法であって、
前記評価対象由来の試料におけるNGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかの量を測定する測定工程を含むことを特徴とするデータ取得方法である。
<7> 前記試料が、体液である前記<6>に記載のデータ取得方法である。
<8> 記評価対象が、水疱、びらん、及び粘膜疹の少なくともいずれかの症状が出現していない評価対象である前記<6>から<7>のいずれかに記載のデータ取得方法である。
<9> 評価対象がSJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを評価するためのキットであって、
NGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかの検出手段を含むことを特徴とする評価用キットである。
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、評価対象がSJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを評価することができる評価方法、評価対象がSJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かの評価に用いることができるデータ取得方法、及び評価対象がSJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを評価することができる評価用キットを提供することができる。
図1は、試験例1の血中のNGAL濃度を測定した結果を示す図である。 図2は、試験例2の尿中のNGAL濃度を測定した結果を示す図である。 図3は、試験例3の血中のカテリシジン抗菌ペプチドLL−37濃度を測定した結果を示す図である。
(評価方法)
本発明の評価方法は、評価対象がSJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを評価する方法であって、評価工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
前記SJS及びTENは、全身の広範な表皮壊死を特徴とする重症薬疹であり、表皮壊死面積により、SJS(表皮壊死面積が10%未満)とTEN(表皮壊死面積が10%以上)に区別される。
<評価工程>
前記評価工程は、評価対象由来の試料における、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(Neutrophil gelatinase−associated lipocalin:NGAL)及びカテリシジン抗菌ペプチド(Cathelicidin antimicrobial peptide)LL−37の少なくともいずれかの量を指標として、評価対象がSJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを評価する工程である。
<<評価対象>>
前記評価対象としては、SJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かの評価が必要な対象であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒトが好適に挙げられる。なお、前記評価が求められる対象である限り、ヒト以外の種であってもよい。
本発明の評価方法によれば、SJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを早期に評価することができるので、SJS及び/又はTENに特徴的な症状である水疱、びらん、及び粘膜疹の少なくともいずれかの症状が出現していない評価対象に好適に用いることができる。
<<試料>>
前記試料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、体液などが挙げられる。前記体液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、血液、尿、水疱内容液、涙、唾液などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、血液、尿、及び水疱内容液からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、早期診断の観点から血液及び尿の少なくともいずれかがより好ましく、非侵襲的に簡便に取得できる点で尿が更に好ましい。
前記試料の調製方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
<<NGAL>>
前記NGALのアミノ酸配列等の情報は、公共のデータベース等から容易に入手することができ、例えば、ヒトのNGALのアミノ酸配列は、NCBIにおいて、CAA67574で登録されている。
<<カテリシジン抗菌ペプチドLL−37>>
前記カテリシジン抗菌ペプチドLL−37のアミノ酸配列等の情報は、公共のデータベース等から容易に入手することができ、例えば、ヒトのカテリシジン抗菌ペプチドLL−37のアミノ酸配列は、NCBIにおいて、2LMF_Aで登録されている。
<<評価>>
後述する実施例の項目に示したように、SJS及び/又はTEN患者では、試料中のNGALの量及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の量が著しく上昇する。したがって、評価対象由来の試料における、NGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかの量を指標として、評価対象がSJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを評価することができる。
前記評価工程では、NGALの量及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の量のいずれか一方を指標としてもよいし、両方を指標としてもよいが、より高い精度で評価することができる点で、両者を指標とすることが好ましい。
前記評価工程におけるNGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかの量は、前記評価工程の実施と併せて測定してもよいし、予め測定しておいてもよい。
前記評価工程では、前記試料中のNGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかの量が、(1)SJS及び/又はTENに罹患していない個体由来の試料におけるNGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかの量に基づく値(以下、「基準値(1)」と称することがある。)よりも多い場合、及び(2)SJS及び/又はTEN罹患個体由来の試料におけるNGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかの量に基づく値(以下、「基準値(2)」と称することがある。)と同量以上の場合、の少なくともいずれかの場合に、評価対象がSJS及び/又はTENに罹患している又は発症する可能性を有すると評価することができる。
前記(1)の態様における基準値(1)は、SJS及び/又はTENに罹患していない個体、即ち非罹患個体由来の試料におけるNGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかの量(以下、「正常量」と称することがある。)に基づく値であり、正常量若しくは正常量に近い値を設定することができる。
前記(1)の場合におけるSJS及び/又はTENに罹患していない個体は、評価対象と同一(即ち、評価対象が、SJS及び/又はTENに罹患していないとき)であってもよいし、異なっていてもよい。
なお、前記SJS及び/又はTENに罹患していない個体には、薬疹疾患に罹患していない個体だけではなく、SJS及び/又はTEN以外の薬疹疾患に罹患している個体も含まれる。
前記(2)の態様における基準値(2)は、SJS及び/又はTENに罹患している個体、即ち罹患個体由来の試料におけるNGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかの量(以下、「非正常量」と称することがある。)に基づく値であり、非正常量若しくは非正常量に近い値を設定することができる。
前記(2)の場合におけるSJS及び/又はTEN罹患個体は、評価対象と同一(即ち、評価対象が、SJS及び/又はTENに罹患していたとき)であってもよいし、異なっていてもよい。
前記基準値(1)及び基準値(2)は、前記評価方法を実施する際に併せて測定した量に基づいて設定した値を使用してもよいし、予め設定した値を使用してもよい。
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、試料調製工程、測定工程などが挙げられる。
<<試料調製工程>>
前記試料調製工程は、評価対象由来の試料を調製する工程であり、試料の種類や測定方法等に応じて、公知の方法を適宜選択することができる。
<<測定工程>>
前記測定工程は、前記試料におけるNGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかの量を測定する工程である。
前記試料におけるNGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかの量を測定する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、タンパク質の量を測定する方法、mRNAの量を測定する方法などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、迅速診断に有用である点で、タンパク質の量を測定する方法が好ましい。
前記タンパク質の量を測定する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、免疫学的測定法、質量分析法などが挙げられる。これらの中でも、EIA法、ELISA法といった酵素免疫測定法が、100μL程度の微量の試料で、迅速診断することが可能である点で、有利である。
前記酵素免疫測定法は、公知の手段を適宜選択して実施することができる。
前記mRNAの量を測定する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、PCR法、DNAアレイ法などが挙げられる。
前記試料におけるNGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかの量は、市販されているキットを使用して測定することもできる。
本発明の評価方法によれば、SJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを高い精度で迅速に評価することができ、また、疾患の早期の段階での評価も可能である。
したがって、本発明は、前記評価工程を少なくとも含み、必要に応じて更に前記その他の工程を含む、評価対象がSJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを診断する方法、又は評価対象がSJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かの診断を補助する方法にも関する。
また、本発明は、評価対象がSJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを評価、診断、又は診断補助するためのバイオマーカーであって、NGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかからなるバイオマーカーにも関する。
(データ取得方法)
本発明のデータ取得方法は、評価対象がSJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを評価するためのデータを取得する方法であって、測定工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
<測定工程>
前記データ取得方法における測定工程は、前記評価対象由来の試料におけるNGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかの量を測定する工程であり、上記した本発明の(評価方法)の<その他の工程>における<<測定工程>>の項目に記載したものと同様にして行うことができる。
前記評価対象、及び前記試料は、上記した本発明の(評価方法)における<評価工程>の項目に記載したものと同様とすることができる。
<その他の工程>
前記データ取得方法におけるその他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、試料調製工程などが挙げられる。
<<試料調製工程>>
前記データ取得方法における試料調製工程は、評価対象由来の試料を調製する工程であり、上記した本発明の(評価方法)の<その他の工程>における<<試料調製工程>>の項目に記載したものと同様にして行うことができる。
本発明のデータ取得方法によれば、SJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを高い精度で迅速に評価したり、疾患の早期の段階で評価したりするのに有用なデータを取得することができる。
(評価用キット)
本発明の評価用キットは、評価対象がSJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを評価するためのキットであって、NGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかの検出手段を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の構成を含む。
<検出手段>
前記NGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかの検出手段としては、特に制限はなく、検出する物質の態様に応じて適宜選択することができ、例えば、NGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかのタンパク質検出用抗体、NGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかの遺伝子検出用プライマーセットなどが挙げられる。前記検出手段は、1種単独であってもよいし、2種以上であってもよい。
前記検出手段は、適宜設計・調製したものや市販品を用いることができる。
これらの中でも、酵素免疫測定法によりNGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかを検出できる検出手段が、微量の試料で迅速に測定することができ、各医療機関でも使用することができる点で、好ましい。
前記抗体は、必要に応じて蛍光物質の標識などを含んでいてもよい。また、前記抗体の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体などが挙げられる。
<その他の構成>
前記その他の構成としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、免疫学的測定法に用いる試薬、PCR法に用いる試薬、キットの取扱説明書、SJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを評価するための説明書などが挙げられる。
本発明の評価用キットによれば、SJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを高い精度で迅速に評価することができ、また、疾患の早期の段階での評価も可能である。
したがって、本発明の評価用キットは、SJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かの診断用キット又は診断補助用キットとして用いることもできる。
以下、試験例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の試験例に制限されるものではない。
(試験例1)
健常人(6名)、通常の薬疹患者(15名)、発症初期のSJS患者(12名)、発症初期のTEN患者(3名)の血液を6mL採取した。発症初期のSJS患者(12名)には、SJSの典型症状(水疱、びらん、及び粘膜疹の症状)が出現する前の患者を含む。採取した血液を2,500rpmで15分間遠心した後の上清(血清)を回収した。
前記血清中のNGALの濃度は、Human Lipocalin−2/NGAL ELISA Kit(製品番号:RAB0332、Sigma aldrich社)を用い、添付されているプロトコールに基づいて測定し、解析した。
結果を図1に示す。SJS又はTEN患者(図1中の「SJS/TEN」)の血清中のNGAL濃度は平均32.9ng/mLであり、健常人の平均13.1ng/mLと比較して統計学的に有意に上昇していた(図1中の「**」は、健常人群と比較した際の、Tukey’s testによる統計法に基づいてp値<0.01と統計的有意な変化であることを示す。)。一方、通常の薬疹患者の血清中のNGAL濃度は平均16.6ng/mLであり、健常人と比較して統計学的に有意な上昇はみられなかった。
したがって、血中のNGAL濃度の上昇は、SJS又はTEN患者に特異的であることが確認された。
(試験例2)
NGALは、小さい分泌ポリペプチドであり、プロテアーゼ耐性がある。そのため、血中で安定して存在し、比較的容易に尿へ排出される。そこで、通常の薬疹患者の尿中のNGALの濃度と、SJS患者の尿中のNGALの濃度とを調べた。
通常の薬疹患者(6名)、SJS患者(1名:SJSの典型症状(水疱、びらん、及び粘膜疹の症状)が出現する前の患者)の尿を8mL採取した。採取した尿を500gで5分間遠心した後の上清を回収した。
前記上清中のNGALの濃度は、好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリンキット(U−NGAL・アボット)(アーキテクト社)を用い、添付されているプロトコールに基づいて測定し、解析した。
クレアチニン補正(以下、「Cre補正」と称することがある。)したNGALの濃度を図2に示す。SJS患者の尿中のNGAL濃度は、157μg/g Creであった。これは、通常薬疹患者の平均値の7.3倍であり、著しく上昇していることが確認された。
(試験例3)
健常人(3名)、通常の薬疹患者(11名)、SJS患者(治療前11名、治療開始後2〜4日5名、治療開始後5〜7日7名、治療開始後8〜10日4名、治療開始後11日以降6名)、TEN患者(治療前3名、治療開始後2〜4日3名、治療開始後5〜7日2名、治療開始後8〜10日1名、治療開始後11日以降1名)の血液を6mL採取した。治療前のSJS患者(11名)には、SJSの典型症状(水疱、びらん、及び粘膜疹の症状)が出現する前の患者を含む。採取した血液を2,500rpmで15分間遠心した後の上清(血清)を回収した。
前記血清中のカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の濃度は、Human Antibacterial Peptide LL−37 ELISA Kit(製品番号: CSB−E14948、CUSABIO社)を用い、添付されているプロトコールに基づいて測定し、解析した。
結果を図3に示す。SJS又はTEN患者(図3中の「SJS/TEN」)の血清中のカテリシジン抗菌ペプチドLL−37濃度は、治療前から治療開始後7日の間において、健常人の平均値と比較して統計学的に有意に上昇していた(図3中の「**」は、健常人群と比較した際のTukey’s testによる統計法に基づいてp値<0.01と統計的有意な変化であることを示す。)。
また、治療開始後8日以降では、治療前のSJS又はTEN患者の平均値と比較して統計学的に有意に減少していた(図3中の「##」は、治療前のSJS又はTEN患者群と比較した際のTukey’s testによる統計法に基づいてp値<0.01と統計的有意な変化であることを示す。)。
したがって、血中のカテリシジン抗菌ペプチドLL−37濃度の上昇は、SJS又はTEN患者に特異的であることが確認された。
以上の結果から、評価対象由来の試料におけるNGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかの量を指標として、評価対象がSJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを評価できることが確認された。
本発明によれば、評価対象がSJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを、SJS及び/又はTENに特徴的な水疱、びらん、及び粘膜疹の症状が出現する前のSJS及び/又はTEN発症初期においても評価することができるので、通常の薬疹と誤診され易いSJS及び/又はTEN患者の早期例を適切に診断し、致死や失明に至る患者を減らすことができる。

Claims (9)

  1. 評価対象がスティーブンス・ジョンソン症候群(Stevens−Johnson Syndrome:SJS)及び/又は中毒性表皮壊死症(Toxic epidermal necrolysis:TEN)に罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを評価する方法であって、
    評価対象由来の試料における、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(Neutrophil gelatinase−associated lipocalin:NGAL)及びカテリシジン抗菌ペプチド(Cathelicidin antimicrobial peptide)LL−37の少なくともいずれかの量を指標として、評価対象がSJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを評価する評価工程を含むことを特徴とする評価方法。
  2. 前記評価工程において、前記試料中のNGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかの量が、(1)SJS及び/又はTENに罹患していない個体由来の試料におけるNGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかの量に基づく値よりも多い場合、及び(2)SJS及び/又はTEN罹患個体由来の試料におけるNGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかの量に基づく値と同量以上の場合の少なくともいずれかの場合に、評価対象がSJS及び/又はTENに罹患している又は発症する可能性を有すると評価する請求項1に記載の評価方法。
  3. 前記試料が、体液である請求項1から2のいずれかに記載の評価方法。
  4. 前記評価対象が、水疱、びらん、及び粘膜疹の少なくともいずれかの症状が出現していない評価対象である請求項1から3のいずれかに記載の評価方法。
  5. 前記試料におけるNGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかの量を測定する測定工程を含む請求項1から4のいずれかに記載の評価方法。
  6. 評価対象がSJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを評価するためのデータを取得する方法であって、
    前記評価対象由来の試料におけるNGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかの量を測定する測定工程を含むことを特徴とするデータ取得方法。
  7. 前記試料が、体液である請求項6に記載のデータ取得方法。
  8. 前記評価対象が、水疱、びらん、及び粘膜疹の少なくともいずれかの症状が出現していない評価対象である請求項6から7のいずれかに記載のデータ取得方法。
  9. 評価対象がSJS及び/又はTENに罹患しているか否か又は発症する可能性を有するか否かを評価するためのキットであって、
    NGAL及びカテリシジン抗菌ペプチドLL−37の少なくともいずれかの検出手段を含むことを特徴とする評価用キット。
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